JP2013202568A - 水素の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 炭化水素などの水素源を原料とする水素製造用改質触媒による水蒸気改質反応において、脱硫工程の機能が低下して一時的/継続的に硫黄分が取りきれない場合が発生しても、水素の製造を継続することができる耐硫黄性に優れた水素の製造方法を提供すること。
【解決手段】 炭化水素化合物類を含有する水素原料を、水素製造用改質触媒で改質して水素を得る工程を有し、水素製造用改質触媒が、アルミナを含有し、希土類金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を担持した無機複合酸化物担体と、この担体に担持されたニッケル及び白金族金属と、を備える触媒であって、該触媒は、ニッケル及び白金族金属が同じ担体に担持されており、白金族金属としてロジウムを含有し、エレクトロンプローブマイクロアナライザー(EPMA)により触媒断面の中心を通る担体直径方向にロジウムの線分析測定を行ったときに、検出された全ロジウムの特性X線強度に対する担体外表面から担体直径の10%以内の距離の範囲に検出されたロジウムの特性X線強度の割合が90%以上かつ担体外表面から担体直径の20%以内の距離の範囲に検出されたロジウムの特性X線強度の割合が95%以上であり、硫黄化合物の含有濃度が硫黄原子質量換算で0.3ppm以上である水素原料を改質する期間、及び/又は、供給された硫黄化合物の積算量が触媒1gあたりの硫黄原子質量換算で1mg以上となった水素製造用改質触媒で水素原料を改質する期間を含むことを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、水素の製造方法に関し、特には、炭化水素などの水素源を原料とする燃料電池システムにおける水素の製造方法に関する。
近年、環境意識が高まる中で、環境負荷の少ない水素を利用したエネルギーに注目が集まっている。水素を利用したエネルギー技術の一つとして、地球温暖化の原因と言われる二酸化炭素の直接排出やオゾン層破壊を伴うことなく水素と酸素の反応から電気エネルギーを取り出すことができる燃料電池が注目されている。燃料電池の水素源としては、天然ガス、液体燃料、石油系炭化水素など様々な原料が研究されており、特に、都市ガス、LPガス、ナフサ、ガソリン、灯油などに代表される炭化水素は、供給インフラが構築されて広域かつ多量に流通していることから、水素源として有望視されている。これらの炭化水素を原料とする燃料電池システムにおける水素製造は、システムの起動・停止を含めた様々な状態において効率的に行われることが求められる。
上記炭化水素から水素を得るには、水素製造用改質触媒の存在下、水蒸気改質反応を行うことが一般的である。水素製造用改質触媒としては、ニッケル触媒や貴金属触媒が知られている(特許文献1及び2を参照)。これらの触媒は、硫黄によって触媒被毒を受けて触媒機能が低下する。特に貴金属触媒は硫黄被毒の影響を受け易い。これを防ぐために、原燃料に含有される硫黄分は、水素製造を行う前に脱硫触媒を使った脱硫工程で、通常は0.05ppm以下まで硫黄濃度を低減している。
特開昭57−4232号公報 特公昭53−12917号公報
しかし、脱硫工程の脱硫触媒が徐々に機能低下し、脱硫工程で硫黄分が除去しきれなくなる場合がある。また、燃料電池のように頻繁な起動停止が行われる水素製造システムでは、起動停止の際に脱硫工程が頻繁に非定常状態になるため、水素原料の脱硫が十分に行われない期間が度々発生することがある。この場合には、一時的又は継続的な硫黄のスリップが起こり、改質触媒の硫黄被毒が進行してしまう。これを回避するために脱硫触媒の増量やガードリアクターの設置などの方法があるが、これらはコストや設置スペースの増大につながる。
本発明は、炭化水素などの水素源を原料とする水素製造用改質触媒による水蒸気改質反応において、脱硫工程の機能が低下して一時的又は継続的に硫黄分が取りきれない場合が発生しても、水素の製造を継続することができる耐硫黄性に優れた水素の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術が有する課題を鑑みて鋭意検討した結果、白金族金属とニッケルを、同一の特定の担体上に含有させて、白金族金属がロジウムを含有し、かつロジウムが担体表層に分布する水素製造用改質触媒が、硫黄分を含有する原料を用いた水蒸気改質反応においても水素を効率的に製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、炭化水素化合物類を含有する水素原料を、水素製造用改質触媒で改質して水素を得る工程を有し、
水素製造用改質触媒が、アルミナを含有し、希土類金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を担持した無機複合酸化物担体と、この担体に担持されたニッケル及び白金族金属と、を備える触媒であって、該触媒は、ニッケル及び白金族金属が同じ担体に担持されており、白金族金属としてロジウムを含有し、エレクトロンプローブマイクロアナライザー(EPMA)により触媒断面の中心を通る担体直径方向にロジウムの線分析測定を行ったときに、検出された全ロジウムの特性X線強度に対する担体外表面から担体直径の10%以内の距離の範囲に検出されたロジウムの特性X線強度の割合が90%以上かつ担体外表面から担体直径の20%以内の距離の範囲に検出されたロジウムの特性X線強度の割合が95%以上であり、
硫黄化合物の含有濃度が硫黄原子質量換算で0.3ppm以上である水素原料を改質する期間、及び/又は、供給された硫黄化合物の積算量が触媒1gあたりの硫黄原子質量換算で1mg以上となった水素製造用改質触媒で水素原料を改質する期間を含むことを特徴とする水素の製造方法を提供する。
上記水素製造用改質触媒は、ニッケルの担持量がアルミナ100質量部に対してニッケル原子換算で1〜30質量部であり、ロジウムの担持量がアルミナ100質量部に対してロジウム原子換算で0.01〜3質量部であることが好ましい。
また、上記水素製造用改質触媒は、白金族金属の担持量がアルミナ100質量部に対して白金族金属原子換算で0.01〜3質量部であることが好ましい。
更に、上記水素製造用改質触媒は、希土類金属酸化物が酸化セリウムであり、アルカリ土類金属酸化物が酸化ストロンチウムであり、白金族金属がロジウム及び白金であることが好ましい。
本発明によれば、炭化水素などの水素源を原料とする水素製造用改質触媒による水蒸気改質反応において、脱硫工程の機能が低下して一時的又は継続的に硫黄分が取りきれない場合が発生しても、水素の製造を継続することができる耐硫黄性に優れた水素の製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態に係る燃料電池システムの一例を示す概念図である。 触媒A又は触媒Bを用いた水蒸気改質反応の経過時間とプロパン反応速度との関係を示す図である。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本実施形態の水素の製造方法は、炭化水素化合物類を含有する水素原料を、水素製造用改質触媒で改質して水素を得る工程を有し、硫黄化合物の含有濃度が硫黄原子質量換算で0.3ppm以上である水素原料を改質する期間(a)、及び/又は、供給された硫黄化合物の積算量が触媒1gあたりの硫黄原子質量換算で1mg以上となった水素製造用改質触媒で水素原料を改質する期間(b)を含む。
硫黄化合物とは、水素原料に含まれる、硫黄原子を分子内に含有する化合物を指す。
水素原料の硫黄化合物の含有濃度とは、GC−SCD分析によって測定される硫黄原子の質量値を指す。また、水素製造用改質触媒に供給された硫黄化合物の積算量とは、GC−SCD分析によって測定された硫黄原子質量が水素製造用改質触媒に供給されたときの積算値を指す。
まず、本実施形態の方法に用いられる水素製造用改質触媒について説明する。
本実施形態の水素製造用改質触媒は、アルミナを含有し、希土類金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を担持した無機複合酸化物担体と、この担体に担持されたニッケル及び白金族金属と、を備える触媒であって、触媒は、ニッケル及び白金族金属が同じ担体に担持されており、白金族金属としてロジウムを含有し、エレクトロンプローブマイクロアナライザー(EPMA)により触媒断面の中心を通る担体直径方向にロジウムの線分析測定を行ったときに、検出された全ロジウムの特性X線強度に対する担体外表面から担体直径の10%以内の距離の範囲に検出されたロジウムの特性X線強度の割合が90%以上かつ担体外表面から担体直径の20%以内の距離の範囲に検出されたロジウムの特性X線強度の割合が95%以上であることを特徴とする。
本実施形態の水素製造用改質触媒は、ニッケルとロジウムを含む白金族金属とが同じ担体に担持されており、さらにはロジウムが担体の表層に特定の割合以上分布することによって、高価なロジウムの使用量を抑えつつ、硫黄化合物が含まれた水素原料が供給されたときの触媒の性能低下を抑制することができる。
触媒の性能低下が抑制される効果の原因は明確ではないが、ニッケルと、ロジウムを含む白金族金属とが同一担体上に存在することによって、(1)共存するニッケルが白金族金属への硫黄付着を抑制することで硫黄による白金族金属の性能低下を緩和する、(2)ロジウムを含む白金族金属上で活性化された水素分子が隣接するニッケルにスピルオーバーで供給されてニッケルの硫黄被毒によるニッケルの水素化能の低下を緩和する、などの複合的作用が促進されることが理由として考えられる。
上述の効果を効率的に得るには、担体に担持された全ロジウム含有量のうち、担体の外表面から担体の中心方向に向かって担体直径の10%以内の距離の担体表層部に90質量%以上のロジウムが分布し、かつ20%以内の距離の担体表層部に95質量%以上のロジウムが分布することが好ましい。上記10%以内の距離の担体表層部に含まれるロジウムの割合が90質量%未満、或いは、上記20%以内の距離の担体表層部に含まれるロジウムの割合が95質量%未満であると、担体表層での触媒反応に機能しにくい担体内部に存在するロジウムの割合が多くなりすぎ、上述した効果が得られにくくなり、また高価なロジウムの使用量を抑えることができないので好ましくない。
担体に含まれるロジウムの質量分布は、エレクトロン・プローブ・マイクロアナライザー(EPMA)によって触媒断面の中心を通る担体直径方向にロジウムの線分析測定を行ったときに、検出されるロジウムの特性X線強度の分布から求めることができる。具体的には、触媒断面の中心を通る担体直径方向にロジウムの線分析測定を行ったときに検出された全ロジウムの特性X線強度(cps)をI100、担体外表面から担体直径の10%以内の距離の範囲に検出されたロジウムの特性X線強度(cps)をI10、担体外表面から担体直径の20%以内の距離の範囲に検出されたロジウムの特性X線強度(cps)をI20とすると、下記式によって担体に担持されたロジウムの分布の割合をそれぞれ算出することができる。なお、R10は、担体の外表面から担体の中心方向に向かって担体直径の10%以内の距離の担体表層部に含まれるロジウムの含有割合(質量%)を示し、R20は、担体の外表面から担体の中心方向に向かって担体直径の20%以内の距離の担体表層部に含まれるロジウムの含有割合(質量%)を示す。
10=I10÷I100×100
20=I20÷I100×100
本実施形態の水素製造用改質触媒における担体は、アルミナを含有し、希土類金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を担持した無機複合酸化物担体である。
アルミナとしては、特に組成や構造による制約を受けるものではないが、α−アルミナ、γ−アルミナ、及びこれらのアルミナと、シリカ、チタニア、ジルコニア等から選ばれる無機金属酸化物との混合物が挙げられる。アルミナのB.E.T.比表面積については特に限定されないが、担持されるニッケルおよび白金族金属が十分に分散できるようにB.E.T.比表面積が3〜200m/gであることが好ましい。B.E.T.比表面積が3m/gより小さいと、ニッケルおよび白金族金属が担体表層で十分に分散できず所定の触媒活性や触媒寿命が得られにくくなり、一方、B.E.T.比表面積が200m/gより大きいと、表面の空隙比率が高く十分な担体強度が得られにくくなるので好ましくない。
希土類金属酸化物としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム及びイッテルビウムなどから選択される1種又は2種以上の希土類金属の酸化物が挙げられる。希土類金属は、特にランタン、セリウムが好ましい。これらの希土類金属の酸化物は、塩化物、硝酸塩、酢酸塩などの希土類金属化合物を前駆体として焼成により得ることができる。
希土類金属酸化物の担持量は、アルミナ100質量部に対して2〜30質量部であることが好ましく、5〜20質量部であることがより好ましく、10〜18質量部であることがさらにより好ましい。希土類金属酸化物の上記担持量が30質量部より多いと、アルミナに対して過剰量に存在して、その含有量に比した添加効果が得られないので好ましくない。一方、希土類金属酸化物の上記担持量が2質量部よりも少ないと、その添加効果が低くなるので好ましくない。
アルカリ土類金属酸化物としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムなどから選択される1種又は2種以上のアルカリ土類金属の酸化物が挙げられる。アルカリ土類金属は、特にマグネシウム、ストロンチウム、バリウムが好ましい。これらのアルカリ土類金属の酸化物は、塩化物、硝酸塩、酢酸塩などのアルカリ土類金属化合物を前駆体として焼成により得ることができる。
アルカリ土類金属酸化物の担持量は、アルミナ100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜8質量部であることがより好ましく、1〜8質量部であることがさらにより好ましい。アルカリ土類金属酸化物の上記担持量が10質量部より多いと、アルミナに対して過剰量に存在して、その含有量に比した添加効果が得られないので好ましくない。一方、アルカリ土類金属酸化物の上記担持量が0.1質量部よりも少ないと、その添加効果が低くなるので好ましくない。
本実施形態における希土類金属酸化物に含まれる希土類元素と、アルカリ土類金属酸化物に含まれるアルカリ土類元素の組み合わせは、ストロンチウムとセリウム、マグネシウムとセリウム、バリウムとセリウム、ストロンチウムとランタン、及びバリウムとランタンから選択される少なくとも1種であることが好ましい。特に好ましくは、ストロンチウムとセリウム、バリウムとセリウムの組み合わせである。
ニッケルの担持量は、アルミナ100質量部に対してニッケル原子換算で1〜30質量部であることが好ましく、3〜25質量部であることがより好ましく、5〜20質量部であることがさらにより好ましい。ニッケルの上記担持量が30質量部より多いと、アルミナに対して過剰量に存在して、その含有量に比した添加効果が得られないので好ましくない。一方、ニッケルの上記担持量が1質量部よりも少ないと、その添加効果が低くなるので好ましくない。
本実施形態の水素製造用改質触媒は、白金族金属としてロジウムを含有する。すなわち、上記無機複合酸化物担体には少なくともニッケルとロジウムとが担持される。ロジウムの担持量は、アルミナ100質量部に対してロジウム原子換算で0.01〜3質量部であることが好ましく、0.05〜1質量部であることがより好ましく、0.05〜0.5質量部であることがさらにより好ましい。ロジウムの上記担持量が3質量部より多いと、高価なロジウム金属がアルミナに対して過剰量に存在して、その含有量に比した添加効果が得られないだけでなく、触媒価格が高額になるので好ましくない。一方、ロジウムの上記担持量が0.01質量部よりも少ないと、その添加効果が低くなるので好ましくない。
白金族金属は、ロジウムのほかに、ルテニウム、パラジウム及び白金などから選択される1種又は2種以上の白金族金属を含有することもできる。ロジウムも含めた白金族金属の総担持量は、アルミナ100質量部に対して白金族原子換算で0.01〜3質量部であることが好ましい。白金族原子の上記総担持量が3質量部より多いと、アルミナに対して過剰量に存在して、その含有量に比した添加効果が得られないだけでなく、触媒価格が高額になるので好ましくない。一方、白金族原子の上記総担持量が0.01質量部よりも少ないと、その添加効果が低くなるので好ましくない。
本実施形態の水素製造用改質触媒は、白金族金属としてパラジウム及び/又は白金を含有することが好ましい。この場合、これらの金属が安定剤として機能し、ニッケルの安定性を高めることができる。パラジウム及び/又は白金の担持量は、アルミナ100質量部に対して白金族原子換算で0.005〜0.2質量部であることが好ましく、0.01〜0.1質量部であることがより好ましい。
更に、ニッケルの安定性向上の観点から、水素製造用改質触媒は白金族金属として白金を含有することが好ましい。この場合、ロジウムに対する白金のモル比(Pt/Rh)が0.05〜0.5mol/molであることが好ましい。白金を係る範囲のモル比となるように担持させることにより、導入する白金族金属の使用量を抑制することができる。
本実施形態の水素製造用改質触媒においては、発明効果がより効果的に得られる組み合わせとして、希土類金属酸化物が酸化セリウムであり、アルカリ土類金属酸化物が酸化ストロンチウムであり、白金族金属がロジウム及び白金であることが好ましい。
本実施形態に係る水素製造用改質触媒において、ニッケル、白金族金属、希土類金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を担体に担持させる方法としては、特に制限はなく、通常の含浸法、ポアフィル法など公知の方法を用いることができる。通常、金属塩もしくは金属錯体として水や有機物などを含有する溶媒に溶解させた後、アルミナを含有する担体に含浸させる。含有させる金属塩もしくは金属錯体は、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、アセト酢酸塩などを用いることができる。含浸の回数や工程に関しては特に制限はなく、一度又は数度に分けて含有させることができる。ニッケルとロジウムは、同じ溶媒に溶解させた後、同時に触媒に含有させることが好ましい。また、水素製造用改質触媒が白金族金属としてロジウム以外の金属を含有する場合、ニッケル、ロジウム及び他の白金族金属は、同じ溶媒に溶解させた後、同時に触媒に含有させることが好ましい。
各金属を含有させた後の乾燥処理は、その条件については特に制限されないが、例えば、空気中、100℃以上で行うことが挙げられる。
本実施形態の水素製造用改質触媒が上述のEPMAによるロジウムの線分析測定において所定のX線強度分布を有するには、触媒にロジウムを導入する前、具体的には担体にロジウムを担持する前に、アルミナを含有し、希土類金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を担持した無機複合酸化物担体若しくはその前駆体を、酸素の存在下で650〜1200℃の温度で予め焼成処理する方法が挙げられる。焼成温度は、700℃以上が好ましく、750℃以上がより好ましく、1000℃以下が好ましく、900℃以下がより好ましい。
無機複合酸化物担体の前駆体としては、例えば、アルミナを含む担体に上記希土類金属化合物を含浸したものを酸素の存在下400〜800℃で焼成し、これに上記アルカリ土類金属化合物を含浸したもの、アルミナを含む担体に上記希土類金属化合物及び上記アルカリ土類金属化合物を含浸したものなどが挙げられる。
上記の焼成処理を行うことで、後に触媒に導入されるロジウムが、無機複合酸化物担体の直径方向に対して担体表層に分布しやすくなり、また無機複合酸化物担体のシンタリングが引き金となって生じるロジウムの凝集による触媒性能の減少を抑制することができる。650℃よりも低い温度では、ロジウムを導入した後でロジウムが無機複合酸化物担体の内部方向に分布しやすくなるだけでなく、無機複合酸化物担体に含まれるアルミナの熱凝集が進みやすくなり、それがロジウムの凝集を引き起こし易くなるので好ましくない。一方、1200℃よりも高い温度で焼成処理を行うと、無機複合酸化物担体のB.E.T.比表面積が減少してしまうので好ましくない。
ロジウム導入後は、前述の無機複合酸化物担体若しくはその前駆体の焼成処理温度より低い温度で乾燥または焼成処理を行うことで、導入したロジウムが無機複合酸化物担体の表面に分布して固定化される。ロジウム導入後に無機複合酸化物担体の焼成処理温度よりも高い温度で乾燥または焼成処理を行うと、無機複合酸化物担体のシンタリングが引き金となって無機複合酸化物担体の表面に分布するロジウムの凝集が進み、触媒性能の減少が起こるので好ましくない。ロジウム導入後の乾燥または焼成温度は、前述の無機複合酸化物担体若しくはその前駆体の焼成処理温度に基づき設定することができるが、好ましくは100℃以上650℃未満の範囲であり、より好ましくは130〜600℃の範囲である。100℃よりも低い温度では、水分の脱離が不十分となって導入したロジウムが無機複合酸化物担体の表面で固定化されないので好ましくない。
本実施形態に係る水素製造用改質触媒は、必要に応じて還元処理や金属固定化処理を行うことができる。処理方法は特に制限はなく、例えば、水素流通下での気相還元処理や液相還元処理を行うことができる。
本実施形態に係る水素製造用改質触媒の形態については特に制限はなく、例えば、アルミナを含有する担体の形状をそのまま利用することができる。もしくは、打錠成形し粉砕後所定の範囲で整粒した触媒、粉末あるいは球形、リング状、タブレット状、円筒状などに成形した触媒として用いることができる。
水素原料の改質は、例えば、上記水素製造用改質触媒の存在下に、酸素及びスチームから選択される少なくとも1種を含むガスと、炭化水素化合物類を含有する水素原料とを供給して、部分酸化反応、自己熱改質反応及び水蒸気改質反応から選択される少なくとも1つの水素製造反応により水素原料から水素を含有する生成物を得る方法が挙げられる。
本実施形態においては、同一の炭化水素からより多くの水素を効率的に製造することができる点で、スチームを含むガスと、炭化水素化合物類を含有する水素原料とを供給して、水蒸気改質反応を行うことが好ましい。
水素製造用改質触媒を用いる反応形式としては、固定床式、移動床式、流動床式などが挙げられ、特に制約を受けるものではない。また、水素製造用改質触媒を用いる反応器も特に制約を受けるものではない。
水素製造反応において原料となる炭化水素化合物類は、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜6の有機化合物を含有する。具体的には、飽和脂肪族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などを挙げることができ、また飽和脂肪族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素については、鎖状、環状の形状を問わず使用することができる。このような炭化水素化合物類は置換基を含むことができる。置換基としては、鎖状、環状のどちらをも使用でき、例として、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基及びアラルキル基等を挙げることができる。また、これらの炭化水素化合物類はヒドロキシ基、アルコキシ基、ヒドロキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基などのヘテロ原子を含有する置換基により置換されていてもよい。
炭化水素化合物類の具体例としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの鎖状の飽和脂肪族炭化水素とその構造異性体、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテンなどの鎖状の不飽和脂肪族炭化水素とその構造異性体、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの環状炭化水素とその構造異性体、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ビフェニルなどの芳香族炭化水素などを挙げることができる。また、これらを単品または混合物として含有する材料を使用することができる。例えば、都市ガス、天然ガス、LPG、ナフサ、ガソリン、灯油、軽油などを挙げることができる。
またヘテロ原子を含有する置換基を有する炭化水素化合物類として、アルコール類、エーテル類、バイオ燃料等を含む原料も使用できる。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノールなどを挙げることができ、エーテル類としては、例えば、ジメチルエーテルなどを挙げることができ、バイオ燃料としては、例えば、バイオガス、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオジェットなどを挙げることができる。
また、上記原料に水素、水、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素、窒素などを含む原料も使用できる。例えば、原料の前処理として水素化脱硫を実施する場合、反応に用いた水素の残留分を特に分離することなくそのまま使用することもできる。
本実施形態においては、上記の水素製造用改質触媒を用いることにより、硫黄化合物の含有濃度が硫黄原子質量換算で0.3ppm以上である水素原料を改質する期間(a)があっても水素を効率よく製造することができる。耐硫黄性と水素製造の安定性とを両立する観点から、期間(a)で供給される水素原料の硫黄化合物の含有濃度は硫黄原子質量換算で0.3ppm以上8ppm以下であることが好ましく、0.3ppm以上3ppm以下であることがより好ましい。
また、上記の水素製造用改質触媒を用いることにより、水素製造用改質触媒に供給された硫黄化合物の積算量が触媒1gあたりの硫黄原子質量換算で1mg以上になった後でも水素を効率よく製造することができる。耐硫黄性と水素製造の安定性とを両立する観点から、上記積算量が1mg以上3000mg以下であることが好ましく、1mg以上2000mg以下であることがより好ましい。
燃料電池の水素製造においては、通常、原料中の硫黄分を脱硫工程で脱硫したのち水蒸気改質により水素が製造される。このような燃料電池に本実施形態に係る水素の製造方法を適用した場合、脱硫行程で脱硫触媒の機能低下や非定常状態(燃料電池の起動や停止)などが発生して、脱硫工程の機能が低下して一時的/継続的に硫黄分が取りきれない場合が発生しても、少ない貴金属量で水素製造を継続することができる。これにより、脱硫剤機能低下を補填するための触媒増量やガードリアクターなど付帯設備を備え付ける必要がなく、水素製造のコストを削減することができる。
本実施形態において、水素製造用改質触媒に導入される流通原料の空間速度は、ガス空間速度(以下GHSVと記す)が、好ましくは10〜10,000h−1、より好ましくは50〜5,000h−1、さらに好ましくは100〜3,000h−1の範囲である。GHSVが10,000h−1よりも高いと、原料と触媒の接触時間が十分に確保できないので反応転化が進まず好ましくない。一方、GHSVが10h−1よりも低いと、触媒量に対する水素製造量が少なく水素製造効率が低くなるので好ましくない。また液空間速度(以下LHSVと記す)では、好ましくは0.05〜5.0h−1、より好ましくは0.1〜2.0h−1、さらに好ましくは0.2〜1.0h−1の範囲である。LHSVが5.0h−1よりも高いと、原料と触媒の接触時間が十分に確保できないので反応転化が進まず好ましくない。一方、LHSVが0.05h−1よりも低いと、触媒量に対する水素製造量が少なく水素製造効率が低くなるので好ましくない。
本実施形態の水素製造方法の反応温度は特に限定されるものではないが、好ましくは200〜1000℃、より好ましくは250〜900℃、さらに好ましくは250〜850℃の範囲である。1000℃よりも高い温度では、触媒に含有される金属の凝集が進みやすく触媒の早期性能低下を伴うので好ましくない。一方、200℃よりも低い温度では、水素製造に十分な反応速度を得られないので好ましくない。
本実施形態の水素製造方法の反応圧力は特に限定されるものではないが、好ましくは大気圧〜20MPa、より好ましくは大気圧〜5MPa、さらに好ましくは大気圧〜1MPaである。大気圧よりも低い圧力や、20MPaよりも高い圧力でも実施することは可能であるが、その場合は製造設備が減圧および高圧に対応する必要があり、経済的に好ましくない。
本実施形態において、水蒸気改質反応を行うに際し、水蒸気改質反応に導入するスチームの量は、原料炭化水素化合物類に含まれる炭素原子モル数に対する水分子モル数の比(スチーム/カーボン比:以下S/Cと記す)が、好ましくは0.3〜10、より好ましくは0.5〜5、さらに好ましくは1.5〜3.5、特に好ましくは2.0〜3.0の範囲となるように設定される。S/Cが0.3より小さい場合は水蒸気改質反応に必要なスチームが不足し、また、コーク析出が促進され触媒の性能低下が著しく加速されるので好ましくない。一方、S/Cが10より大きい場合は、スチーム供給に要するエネルギーや余剰スチームの生成・回収に要するコストが大きくなるので好ましくない。
また本実施形態においては、本実施形態に係る水素製造用改質触媒を用いることで、部分酸化反応及びオートサーマル反応など酸素が共存する状態においても、水素を効率的に製造できることができる。これらの反応に導入する酸素の量は、原料炭化水素化合物類に含まれる炭素原子モル数に対する酸素分子モル数の比(酸素/カーボン比:以下O/Cと記す)が、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.3以下である。O/Cが0.8より大きい場合は、二酸化炭素および水の生成反応が進み、水素の生成量が減少するので好ましくない。
本実施形態の水素製造方法によれば、本実施形態に係る水素製造用改質触媒による水素製造反応によって、都市ガス、天然ガス、LPG、LNG、ナフサ、ガソリン、灯油等の炭化水素燃料から、水素を主成分として含む改質ガスを得ることができる。また、水素製造反応で得られた水素を含有する混合ガスは、固体酸化物形燃料電池のような場合であれば、そのまま燃料電池用の燃料として用いることができる。また、リン酸形燃料電池や固体高分子形燃料電池のように、一酸化炭素の除去が必要な場合には、一酸化炭素除去工程を併用することにより燃料電池用の燃料として好適に用いることができる。
次に、本実施形態に係る水素の製造方法が実施される水素製造装置及び燃料電池システムについて説明する。
本実施形態の水素製造装置は、上述した本実施形態に係る水素製造用改質触媒を有する改質部、並びに、当該改質部に、酸素及びスチームから選択される少なくとも1種を含むガスと、炭化水素化合物類が含まれる水素原料とを供給する供給部を備え、部分酸化反応、自己熱改質反応及び水蒸気改質反応から選択される少なくとも1つの反応により水素原料から水素を含有する生成物を得るものである。
本実施形態の水素製造装置においては、改質部に、硫黄化合物の含有濃度が硫黄原子質量換算で0.3ppm以上である水素原料が供給される場合、及び/又は、改質部の水素製造用改質触媒に供給された硫黄化合物の積算量が触媒1gあたりの硫黄原子質量換算で1mg以上となる水素原料が供給される場合を有する。
本実施形態に係る燃料電池システムは、上記水素製造装置と燃料電池スタックを備え、例えば、図1の構成を備える。図1は本実施形態の燃料電池システムの一例を示す概略図である。
図1において、燃料タンク3内の燃料は燃料ポンプ4を経て脱硫器5に流入する。脱硫器5内には例えば銅−亜鉛系あるいはニッケル−亜鉛系の収着剤などを充填することができる。この時、必要であれば改質器7の下流、シフト反応器9の下流及び一酸化炭素選択酸化反応器10の下流、及びアノードオフガスの少なくともいずれかからの水素含有ガスを添加できる。脱硫器5で脱硫された燃料は水タンク1から水ポンプ2を経た水と混合した後、気化器6に導入されて気化され、改質器7に送り込まれる。
改質器7の触媒として本実施形態の触媒を用い、改質器7内に充填される。改質器反応管は燃料タンク3からの燃料(炭化水素化合物類が含まれる水素原料)及びアノードオフガスを燃料とするバーナー18により加温され、好ましくは200〜1000℃、より好ましくは300〜900℃、さらに好ましくは400〜800℃の範囲に調節される。
本実施形態において、供給部20は、水タンク1、水ポンプ2、燃料タンク3、及び脱硫器5から構成されているが、改質部7に酸素及びスチームから選択される少なくとも1種を含むガスと、炭化水素化合物類が含まれる水素原料とを供給するものであれば、他の構成を有していてもよい。
このようにして製造された水素と一酸化炭素を含有する改質ガスは、シフト反応器9、一酸化炭素選択酸化反応器10を順次通過させることで燃料電池の特性に影響を及ぼさない程度まで一酸化炭素濃度が低減される。これらの反応器に用いる触媒の例としては、シフト反応器9には鉄−クロム系触媒および/あるいは銅−亜鉛系触媒、一酸化炭素選択酸化反応器10にはルテニウム系触媒等を挙げることができる。
上述した水蒸気改質用触媒、水素製造装置及び燃料電池システムによれば、炭化水素などの水素源を原料とする水素製造において、安価で耐久が高く、幅広い条件で水素を効率的に製造することが可能となる。
また、脱硫器5で脱硫触媒の機能低下や非定常状態(燃料電池の起動や停止)などが発生して、脱硫器5の機能が低下して一時的/継続的に硫黄分が取りきれない場合が発生しても、水素製造を継続することができる。そのため、本実施形態に係る燃料電池システムによれば、脱硫器5の機能低下を補填するための触媒増量やガードリアクターなど付帯設備を備え付ける必要がなく、より長期にわたって電力供給が可能となる。
以下に実施例を挙げて本発明の効果をさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
[触媒の調製]
<実施例1(触媒A)>
細孔容積0.43ml/g、B.E.T.比表面積182m/gで直径2〜3mmの球形に成形されたγ−アルミナ担体を、150℃で6時間乾燥した後、硝酸セリウムを含む水溶液を含浸させ、150℃で4時間乾燥した後、空気下400℃で4時間焼成した。これに硝酸ストロンチウムを含む水溶液を含浸させ、150℃で4時間乾燥した後、空気の雰囲気下800℃で4時間焼成処理を行って、γ−アルミナ担体100質量部に対して酸化セリウムの担持量が12質量部、酸化ストロンチウムの担持量が5質量部の割合となる酸化物担体を得た。
次に、得られた酸化物担持担体に対して、硝酸ニッケル、塩化白金酸及び硝酸ロジウムを含む水溶液を含浸させ、150℃で4時間乾燥した後、大気中600℃で3時間焼成した。その結果、γ−アルミナ担体100質量部に対して酸化セリウムの担持量が12質量部、酸化ストロンチウムの担持量が5質量部、ニッケルの担持量が酸化ニッケル換算で10質量部、白金の担持量が白金原子換算で0.05質量部、ロジウムの担持量がロジウム原子換算で0.2質量部の触媒を得た。これを「触媒A」とした。
EPMA測定は、測定する触媒を樹脂包埋して、測定面を研磨した後にカーボン蒸着処理を行ったサンプルを、電子プローブマイクロアナライザー(日本電子株式会社製電子線アナライザーJXA−8900R)を用いて、加速電圧20kV、プローブ電流0.1μA、ビーム径10μmφ、ステップ幅10μmの線分析条件で行った。
[ロジウムの分布の評価]
担体の外表面から担体の中心方向に向かって担体直径の10%以内の距離の担体表層部に含まれるロジウムの含有割合(質量%)(表中「表層10%以内のRh含有率」と記す)R10、及び、担体の外表面から担体の中心方向に向かって担体直径の20%以内の距離の担体表層部に含まれるロジウムの含有割合(質量%)(表中「表層20%以内のRh含有率」と記す)R20をそれぞれ下記式に従って算出した。
10=I10÷I100×100
20=I20÷I100×100
上記式中、I100は、検出された全ロジウムの特性X線強度(cps)を示し、I10は、担体外表面から担体直径の10%以内の距離の範囲に検出されたロジウムの特性X線強度(cps)を示し、I20は、担体外表面から担体直径の20%以内の距離の範囲に検出されたロジウムの特性X線強度(cps)をそれぞれ示す。
触媒AのI10、I20、I100、R10、及びR20をそれぞれ表1に示す。
<比較例1(触媒B)>
細孔容積0.43ml/g、B.E.T.比表面積182m/gで直径2〜3mmの球形に成形されたγ−アルミナ担体を、150℃で6時間乾燥した後、硝酸セリウムを含む水溶液を含浸させ、150℃で4時間乾燥した後、空気下400℃で4時間焼成した。これに硝酸バリウムを含む水溶液を含浸して、150℃で4時間乾燥した後、空気下600℃で3時間焼成処理を行った。
次に、得られた酸化物担持担体に対して、硝酸ロジウム含む水溶液を含浸させ、150℃で4時間乾燥した後、大気中600℃で3時間焼成した。その結果、γ−アルミナ担体100質量部に対して酸化セリウムの担持量が12質量部、酸化バリウムの担持量が4質量部、ロジウムの担持量がロジウム原子換算で0.2質量部の触媒を得た。これを「触媒B」とした。
[硫黄分を含有する原料を用いた水蒸気改質反応による触媒評価]
上記の触媒を、固定床のマイクロリアクターを用いて450℃での水蒸気改質反応で評価した。触媒5ccを反応管(内径約9.52mm)に充填して、これを管状電気炉内に設置して、大気圧で反応温度450℃、スチーム/カーボン比(モル比)2.5の条件で、硫黄原子質量として0.35質量ppmの硫黄化合物(硫黄分)を含有するプロパンガスを原料としてGHSV2800h−1で導入した。なお、プロパンガスに含まれる硫黄化合物の硫黄原子質量は、GC−SCD(島津−ANTEK製7090型)による分析で求めた。
0、1、20、40時間後の反応生成ガスをそれぞれガスクロマトグラムで分析して、反応生成ガスに含まれる炭素成分のモル数を基準に、下記式(1)で求められるプロパン転化率を算出して、原料のプロパン転化率を求めた。
プロパン転化率(%)=(反応生成ガスに含まれるC1化合物のモル数)÷(反応生成ガスに含まれる炭素原子の総モル数)×100 ・・・ 式(1)
なお、式(1)において「C1化合物」とは炭素数1の化合物の総称であり、具体的にはCO、CO、CHのことを意味する。
更に上記で得られたプロパン転化率に基づき、下記式(2)で求められる反応速度を算出した。
反応速度(mol/sec/ml)=プロパンの供給モル速度(mol/sec)×プロパン転化率(%)÷100÷触媒量(ml)・・・式(2)
Figure 2013202568

図1は、触媒A又は触媒Bを用いた水蒸気改質反応の経過時間とプロパン反応速度との関係を示す図である。図1に示されるように、硫黄分を含有する原料を用いた水蒸気改質反応において、触媒Aは、触媒Bに比べ高い反応速度が維持されることが分かる。
炭化水素などの水素源を原料とする水素製造用改質触媒による水蒸気改質反応において、脱硫工程の機能が低下して一時的/継続的に硫黄分が取りきれない場合が発生しても、水素の製造を継続することができる耐硫黄性に優れた水素の製造方法を提供することができる。
1…水タンク、2…水ポンプ、3…燃料タンク、4…燃料ポンプ、5…脱硫器、6…気化器、7…改質器、8…空気ブロアー、9…シフト反応器、10…一酸化炭素選択酸化反応器、11…アノード、12…カソード、13…固体高分子電解質、14…電気負荷、15…排気口、16…固体高分子形燃料電池、17…加温用バーナー、20…供給部。

Claims (4)

  1. 炭化水素化合物類を含有する水素原料を、水素製造用改質触媒で改質して水素を得る工程を有し、
    前記水素製造用改質触媒が、アルミナを含有し、希土類金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を担持した無機複合酸化物担体と、前記担体に担持されたニッケル及び白金族金属と、を備える触媒であって、該触媒は、前記ニッケル及び前記白金族金属が同じ担体に担持されており、前記白金族金属としてロジウムを含有し、エレクトロンプローブマイクロアナライザー(EPMA)により触媒断面の中心を通る担体直径方向にロジウムの線分析測定を行ったときに、検出された全ロジウムの特性X線強度に対する担体外表面から担体直径の10%以内の距離の範囲に検出されたロジウムの特性X線強度の割合が90%以上かつ担体外表面から担体直径の20%以内の距離の範囲に検出されたロジウムの特性X線強度の割合が95%以上であり、
    硫黄化合物の含有濃度が硫黄原子質量換算で0.3ppm以上である前記水素原料を改質する期間、及び/又は、供給された硫黄化合物の積算量が触媒1gあたりの硫黄原子質量換算で1mg以上となった前記水素製造用改質触媒で前記水素原料を改質する期間を含むことを特徴とする水素の製造方法。
  2. 前記水素製造用改質触媒は、前記ニッケルの担持量が前記アルミナ100質量部に対してニッケル原子換算で1〜30質量部であり、前記ロジウムの担持量が前記アルミナ100質量部に対してロジウム原子換算で0.01〜3質量部であることを特徴とする請求項1に記載の水素の製造方法。
  3. 前記水素製造用改質触媒は、前記白金族金属の担持量が前記アルミナ100質量部に対して白金族金属原子換算で0.01〜3質量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素の製造方法。
  4. 前記水素製造用改質触媒は、前記希土類金属酸化物が酸化セリウムであり、前記アルカリ土類金属酸化物が酸化ストロンチウムであり、前記白金族金属がロジウム及び白金であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の水素の製造方法。
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