JP2011167595A - 水素製造用改質触媒及びその製造方法、並びに該触媒を用いた水素製造方法 - Google Patents

水素製造用改質触媒及びその製造方法、並びに該触媒を用いた水素製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低温での水蒸気改質反応でも高い水素製造性能を有し、かつ硫黄被毒や炭素析出による改質触媒、改質器及びその下流に位置するユニットへの悪影響を抑制し、水素製造の開始に要する起動時間を短縮して効果的に水素を製造することが可能な水素製造用改質触媒を提供する。
【解決手段】ジルコニウムを含有する無機複合酸化物担体に、活性金属成分としてルテニウム、ロジウム、白金から選ばれる少なくとも1種の貴金属、および助触媒成分としてニッケル、コバルトから選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含有し、比表面積が310m2/g以上で、前記貴金属が分散度60%以上で前記無機複合酸化物担体中に分散されていることを特徴とする水素製造用改質触媒である。
【選択図】図1

Description

本発明は、水素製造用改質触媒及びその製造方法、並びに該触媒を用いた水素製造方法に関し、特には、石油系炭化水素を燃料油とする燃料電池用水素の製造において、低温且つ少ない貴金属使用量で水蒸気改質反応を効果的に進行させることができ、水素製造の開始に要する起動時間を短縮して効果的に水素を製造することが可能な水素製造用改質触媒及びその製造方法、並びに該触媒を用いた水素製造方法に関するものである。
近年、環境意識が高まる中で、環境負荷の少ない水素を利用したエネルギーに注目が集まっている。水素を利用したエネルギー技術の一つとして、地球温暖化の原因と言われる二酸化炭素の直接排出やオゾン層破壊を伴うことなく水素と酸素の反応から電気エネルギーを取り出すことができる燃料電池が注目されている。該燃料電池の水素源としては、天然ガス、液体燃料、石油系炭化水素など様々な原料が研究されており、特に、LPガス、ナフサ、ガソリン、灯油などに代表される石油系炭化水素は、広域かつ多量に流通していることから、水素源として有望視されている。
上記炭化水素から水素を得るには、水蒸気改質触媒の存在下、水蒸気改質反応を行うことが一般的であり、該水蒸気改質触媒としては、アルミナ等の担体にニッケルを担持したニッケル系触媒が知られている。しかしながら、ニッケル系触媒は炭素析出による活性低下を引き起こし易い欠点を有し、また、炭素数の多い炭化水素を原料としたときは多量の水蒸気の共存が必要となって水蒸気原単位が運転コストを引き上げるため、石油系炭化水素には技術的にも経済的にも適用が難しいとされる。一方で、ルテニウム、ロジウムといった貴金属を用いた貴金属系触媒は、炭素析出抑制効果を有し水蒸気の使用量を低減できることから、炭化水素用の改質触媒として近年注目されている。しかしながら、これらの貴金属系触媒は炭素析出抑制効果には優れるものの、硫黄による触媒被毒を受け易く、硫黄被毒を受けると炭素析出抑制効果が低下してしまう。
灯油などの石油系炭化水素から構成される燃料油には、ベンゾチオフェン化合物、ジベンゾチオフェン化合物といった重質で脱硫の困難な硫黄化合物が含まれるため、燃料油からこれらの難脱硫性硫黄化合物を完全に除去することは難しい。燃料油に含まれるこれらの難脱硫性硫黄化合物が微量であっても、水素製造を長時間行うと改質触媒はこれらの硫黄化合物による影響を積算的に受ける。そして、改質触媒が硫黄被毒を受けると、改質触媒への炭素析出が促されるという問題がある(非特許文献1)ことから、石油系炭化水素から構成される燃料油を用いる水素製造では、硫黄被毒とそれが促す炭素析出によって改質触媒の性能低下を受け易いという問題があった。
一般に、燃料電池用の水素を製造するには、改質触媒を充填した改質器において通常550〜800℃の高温下で水蒸気改質反応及び/又は部分酸化反応を行う。かかる改質器を具える燃料電池システムにおいては、燃料油を改質するために必要な温度が低いほうが予熱量は小さくなり、水素製造に要する昇温時間が短くなることで、システムの起動時間を短縮することができるので有利である。しかしながら、従来の改質触媒を用いて低い温度条件で水蒸気改質反応を行うと、燃料油が水素に転化される反応が十分な反応速度で進行せず、燃料油から副反応によって転化した炭素が改質触媒に析出して触媒の寿命を著しく損ない、また、燃料油から転化した炭素によって改質器の閉塞が発生したり、改質触媒の下流に位置するユニットに析出した炭素による汚染が生じるなどの問題があった。これらの問題を回避するためには、例えば、水素製造の起動時においては改質触媒及び改質器の温度が燃料油からの水素転化に必要な反応速度を得るために十分高い温度に達するのを待たなければならないので、燃料電池における水素製造の開始に必要な改質触媒の温度上昇を待つために発電開始までに要する時間(起動時間)が長くなり、電力の需要に対する燃料電池での発電供給が遅れるという問題があった。また、改質触媒及び改質器が高い温度に曝されることによって、熱劣化により改質触媒の性能が低下し、触媒寿命が短くなり、また、改質器はその耐久性低下を防ぐために耐熱性の高い高価な材料が必要となるのでコストが増加するという問題があった。また、貴金属系触媒、例えば、ルテニウム触媒を用いた400〜525℃の低温水蒸気改質では反応律速段階が表面反応となる(非特許文献2)ことから、反応速度の遅い低温条件において表面積の小さい改質触媒を用いると、この反応律速を解消することができないので、水素の製造に多量の触媒が必要になるなどの問題があった。
このように、灯油などの石油系炭化水素から構成される燃料油を用いて低い温度で水素製造を行うには、反応速度の遅い低温条件でも燃料油から水素への転化を少量で効率的に進めることができ、かつ硫黄被毒の影響を受けても炭素析出を起こし難い性能を有する改質触媒が必要であった。
燃料油の改質に際して炭素析出を抑制する改質触媒としては、例えば、特開昭60−147242号公報(特許文献1)にあるような、白金族金属の少なくとも1種よりなる活性主成分及び銀と希土類元素の1種とよりなり、かつ銀と希土類元素を、活性主成分に対しそれぞれ原子比で0.1以上含有してなる助触媒を触媒担体に担持してなる水蒸気改質用触媒が提案されている。しかしながら、この触媒は石油系炭化水素から構成される灯油などの燃料油に適用されたものではなく、担体にα−アルミナ、β−アルミナ及びチタニアが用いられるため、比表面積が小さく、反応速度の遅い低温条件での水蒸気改質反応に適したものではない。
また、特開2007−703号公報(特許文献2)にあるような、水酸化物を前駆体としてなる活性成分を高分散で担体に担持させた触媒が提案されている。しかしながら、この触媒は700〜800℃の高い温度条件での水蒸気改質反応に適用するためのもので、比表面積は5〜80m2/gと低く、550℃より低い温度条件での水蒸気改質反応に適用されたものではない。
また、特開2007−98385号公報(特許文献3)にあるような、無機酸化物担体上に、ルテニウムを触媒基準、金属換算で0.5〜10質量%と、アルカリ金属を触媒基準、金属換算で0.5〜10質量%含み、ルテニウム分散度が50%以上であり、EPMAにより、触媒断面の中心を通るように触媒外表面から他の外表面まで一方向にアルカリ金属及びルテニウムについて線分析測定したときに、ルテニウムが存在する領域にアルカリ金属も多く存在することを特徴とする水素製造用触媒が提案されている。しかしながら、この触媒にはアルカリ金属として実質カリウムが使用されており、カリウムは揮発性が高い金属であるため、使用中に流動するガス流によって触媒からカリウムが流出して改質触媒の下流に位置するユニットや他の触媒を汚染する恐れがある(非特許文献3)。
また、水素製造を経済的に行うためには、含浸担持法などを用いて活性金属成分である貴金属やニッケルを担体表面に高分散で付着させて効率的に利用するのが一般的である。しかしながら、活性金属成分を外部から導入する金属担持方法では、活性金属成分と担体表面の間に形成される結合力が弱く、担体上に活性金属成分が高分散で導入された状態であっても、スチームが共存する改質反応条件下に長時間曝されると、担体表面上で活性金属成分がシンタリング(凝集)を起こして当初の高分散状態での触媒性能を維持することが難しくなり、触媒機能が早期に低下して劣化し易いという問題があった。
例えば、特開2000−61307号公報(特許文献4)にあるような、60%以上の高い分散度で活性金属成分であるルテニウムを担持し、長期間維持する実用強度を備えた高分散型水蒸気改質触媒と、該触媒に接触させて水蒸気/炭素比2.8〜10、原料供給量10h-1以下、反応圧力を2気圧以上に保つ水素製造方法が提案されている。しかしながら、この触媒及び方法は750〜900℃の高温加圧条件での水蒸気改質反応に適用するためのもので、550℃より低い温度条件での水蒸気改質反応に適用されたものではない。また、改質反応条件下に供された後の触媒におけるルテニウムの分散度は明らかではないが、担体の外部から担持によって導入された微粒のルテニウムがその高い分散度を保持することができるのは反応初期の短時間に限定されるものと推察される。
この問題に対しては、例えば、特許第4211900号公報(特許文献5)にあるような、ハイドロタルサイト(多孔性複合水酸化物の水和物)のAlをScとRh又はYとRhに置換した金属微粒子担持炭化水素改質用触媒が提案されている。しかしながら、この触媒の調製法は水溶性塩を水に溶解させて調製した混合溶液のpHを変化させて沈殿を生成させる、いわゆる共沈法を利用したものであるが、各金属元素の加水分解速度の違いによって沈殿の生成速度が異なると、沈殿生成が速い成分が先に沈殿して均一な組成の沈殿を得ることができず、触媒内に活性金属成分が高分散で導入できないという問題があった。
また、特許第4358405号公報(特許文献6)にあるような、アルミナ担体にルテニウム成分、ジルコニア成分、アルカリ金属成分、アルカリ土類金属成分及び/又は希土類金属成分、並びに、コバルト成分及び/又はニッケル成分を担持してなる炭化水素改質用触媒が提案されている。しかしながら、この触媒は焼成や反応時の高温下における劣化を抑制するためのもので、550℃より低い温度条件での水蒸気改質反応に適用されたものではない。また、アルミナ担体への各種金属成分の導入が担持による方法であるので、スチームが共存する改質反応条件下に長時間曝されて担体表面上で活性金属成分がシンタリング(凝集)を起こし、当初の高分散状態での触媒性能を維持することが難しくなるという問題があった。
特開昭60−147242号公報 特開2007−703号公報 特開2007−98385号公報 特開2000−61307号公報 特許第4211900号公報 特許第4358405号公報
燃料協会誌,68,39(1989) J. Jpn. Inst. Energy,85(4),307(2006) Oil Gas Journal,74,(7),73(1976)
上述のように、石油系炭化水素を燃料油とする燃料電池用水素の製造において、従来の技術で提供される水素製造用改質触媒及び水素製造方法では、低温での改質反応により水素を製造する際の問題を解決することはできなかった。これは、従来の技術が主に反応速度が比較的速い、高温での水蒸気改質反応を想定したものであり、温度が低く反応速度が遅い条件での水蒸気改質反応では表面反応が律速となることを十分に考慮していなかったためである。また、水素製造を長期間経済的に行うには、触媒に活性金属成分である貴金属を高分散で導入し、かつ触媒製造時の焼成処理や水素製造使用時の還元雰囲気下を経た後でもその高い分散性を保持できるよう触媒に導入された微粒の活性金属成分の安定性を高める方策が必要であるが、従来の方法で提供される水素製造用改質触媒はこれらの全てを満たすことができなかった。
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、ベンゾチオフェン化合物、ジベンゾチオフェン化合物等の重質で脱硫の困難な硫黄化合物を含有する石油系炭化水素を燃料油とする燃料電池用水素の製造において、低温での水蒸気改質反応でも高い水素製造性能を有し、かつ硫黄被毒や炭素析出による改質触媒、改質器及びその下流に位置するユニットへの悪影響を抑制し、水素製造の開始に要する起動時間を短縮して効果的に水素を製造することができる、高機能な水素製造用改質触媒及びその製造方法、並びに該触媒を用いた水素製造方法を提供することにある。
本発明者らは、従来の改質反応温度よりも温度が低く反応速度が遅い条件での炭化水素の水蒸気改質反応は表面反応が律速となることに着目して鋭意検討した結果、担体成分にジルコニウムを含有させ、かつこれを担体内に均一に導入することによって低温での水蒸気改質反応における触媒活性の低下を抑制することができ、活性金属成分が担体に高分散かつ頑強に固定されるので熱的安定性が高まって焼成や反応時に生じるシンタリングの影響を低減することができ、また、担体の結晶子径を小さくすることによって比表面積が大きくなり、かつ導入された活性金属成分の担体表面への露出が容易になって水蒸気改質反応に供される水素製造用燃料油と触媒の接触効率を高めることができ、これらの複合的効果を有する触媒を用いることによって、低温での水蒸気改質反応でも効率的に水素を製造できる上、触媒の硫黄被毒や炭素析出による改質触媒、改質器及びその下流に位置するユニットへの悪影響を抑制でき、また、水素製造の開始に要する起動時間を短縮して効率的に水素を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の水素製造用改質触媒は、ジルコニウムを含有する無機複合酸化物担体に、活性金属成分としてルテニウム、ロジウム、白金から選ばれる少なくとも1種の貴金属、および助触媒成分としてニッケル、コバルトから選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含有し、比表面積が310m2/g以上で、前記貴金属が分散度60%以上で前記無機複合酸化物担体中に分散されていることを特徴とする。
本発明の水素製造用改質触媒の好適例においては、前記無機複合酸化物担体がアルミナを含み、かつ該アルミナの結晶子径が3nm以下である。
また、本発明の水素製造用改質触媒の製造方法は、
ジルコニウムと、ジルコニウム以外の金属を1種以上含む複合酸化物前駆体、および活性金属成分を含む活性金属前駆体を、有機多座配位子を用いて溶解させて均一溶液を調製する工程と、
助触媒成分を含む助触媒前駆体の水溶液を前記均一溶液に加えて加水分解させ、加水分解生成物を得る工程と、
酸素存在下、400〜800℃で、前記加水分解生成物を焼成する工程と
を含むことを特徴とする。
本発明の水素製造用改質触媒の製造方法の好適例においては、前記有機多座配位子が、ポリオール、アセトアセテート、ポリカルボン酸から選ばれる少なくとも1種を含む。ここで、前記有機多座配位子が、炭素数5以上のジオールを含むことが更に好ましい。
また、本発明の水素製造方法は、上述の水素製造用改質触媒を具備する改質部に水素製造用燃料油とスチームを供給し、該改質部の触媒層の入口温度を520℃以下として水蒸気改質反応を行い、水素を含有する生成物を得ることを特徴とする。
本発明の水素製造方法の好適例においては、前記水素製造用燃料が灯油留分である。
本発明によって提供された水素製造用改質触媒及び該触媒を用いた水素製造方法によって、低温での水蒸気改質反応を効果的に進め、かつ触媒活性の低下を抑制し、かつ改質触媒、改質器及びその下流に位置するユニットへの悪影響を抑制することで、従来よりも低温で改質反応を開始させることが可能となり、起動に必要な時間の短い燃料電池システムの運用が可能となる。また、本発明によれば、改質反応の活性劣化やコーキングによる改質器の閉塞を抑制し、長期の水素製造が可能となる。また、本発明によれば、改質温度の低下によって、改質触媒の熱劣化による性能低下を低減し、高温耐久性の高い高価な材料を用いることなく改質器の耐久性を向上させ、改質器構造の簡易化や材料のコスト低減、平衡シフト反応を用いた低温改質プロセスへの適用等、経済的な水素製造を実施することが可能な水蒸気改質触媒を提供することができる。
実施例で用いた水素製造装置の構成の概略図である。
以下、本発明の内容をさらに詳細に説明する。本発明の水素製造用改質触媒は、ジルコニウムを含有する無機複合酸化物担体に、活性金属成分としてルテニウム、ロジウム、白金から選ばれる少なくとも1種の貴金属、および助触媒成分としてニッケル、コバルトから選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含有し、比表面積が310m2/g以上で、前記貴金属が分散度60%以上で前記無機複合酸化物担体中に分散されていることを特徴とする。
本発明の水蒸気改質触媒は、ジルコニウムを触媒担体に均一かつ微小に含有することによって、低温での水蒸気改質反応における触媒活性の低下を抑制することができる。また、本発明の水蒸気改質触媒は、比表面積が大きく、水蒸気改質反応に供される水素製造用燃料油と効率的に接触することができる。更に、本発明の水蒸気改質触媒においては、活性金属成分である貴金属を60%以上の高い分散度で無機複合酸化物担体中に導入することで貴金属の粒子が小さくなり、貴金属を効率的に触媒作用させることができる。また、本発明の水蒸気改質触媒においては、貴金属と共に助触媒成分を含有することで、貴金属の分散性が向上し、触媒活性が著しく向上する。また、該助触媒成分は、貴金属に対する楔として作用することで、貴金属の結晶化を抑制し、改質反応中に進行する貴金属の分散度の低下を抑制して、触媒の劣化を抑止するものと考えられる。また更に、有機多座配位子を用いて活性金属成分を触媒内部に高分散状態で均一に導入することで、活性金属成分が担体内に頑強に固定されて安定性が高まり、焼成や反応時に生じるシンタリングの影響を低減することができる。そして、これらの複合的効果によって、低温での水蒸気改質反応における律速段階である表面反応を効果的に進めることで、石油系炭化水素を燃料油とする低温での水蒸気改質反応による水素製造を効果的に行うことができる。
本発明の水素製造用改質触媒は、ゾルゲル調製法を利用して調製されることが好ましい。ゾルゲル法で調製された無機複合酸化物は、ジルコニウムの含有量が高くてもジルコニウムが均一に分散し、かつ400〜800℃で焼成処理を行った後でも310m2/g以上の高い比表面積を有することが可能となる。例えば、本発明の水素製造用改質触媒は、ジルコニウムと、ジルコニウム以外の金属を1種以上含む複合酸化物前駆体、および活性金属成分を含む活性金属前駆体を、有機多座配位子を用いて溶解させて均一溶液を調製し、該均一溶液に助触媒成分を含む助触媒前駆体の水溶液を加え加水分解させて、加水分解生成物を得、酸素存在下、400〜800℃で、該加水分解生成物を焼成して製造することができる。この方法によれば、特定金属成分の沈殿を抑制して担体中にジルコニウムを高分散で導入することができ、また、金属酸化物形成の際に焼結による比表面積の低下を防止して、310m2/g以上の高い比表面積を有するジルコニウム含有複合酸化物触媒が得られる。
ここで、ジルコニウムとジルコニウム以外の金属を1種以上含む複合酸化物前駆体、および活性金属成分を含む活性金属前駆体を、有機多座配位子と共に均一に溶解させることによって、複数の金属に有機多座配位子が配位した架橋錯体が溶液中に形成される。この架橋錯体を形成することによって、活性金属成分が他の金属成分より先に沈殿することを抑制することができ、また、金属に架橋配位した有機多座配位子が焼成処理において高い温度まで残存することで、焼結による比表面積の低下、及び活性金属成分の昇華による減少と分散性の低下を抑止し、活性金属成分を均一かつ高分散で導入することが可能となる。そして、これらの効果によって、310m2/g以上の高い比表面積及び貴金属の分散度が60%以上の高い分散性の双方の特性を有するジルコニウム含有複合酸化物触媒を調製することができる。
尚、前記有機多座配位子は、溶媒として用いて、これに複合酸化物前駆体と活性金属前駆体を溶解させてもよいし、溶媒に有機多座配位子、複合酸化物前駆体、活性金属前駆体をそれぞれ溶解させてもよい。この際に用いる溶媒としては、アルコールやエステル、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸t‐ブチル等が挙げられる。有機多座配位子と共に複合酸化物前駆体を溶解させると、複合酸化物前駆体と有機多座配位子との間で配位子交換反応が進む。そして、配位子交換反応が進むと、複数の金属に有機多座配位子が配位した架橋錯体が溶液中に生成する。なお、この配位子交換反応は可逆反応なので、反応蒸留で複合酸化物前駆体から分離する成分を除去しながら行うと、配位子交換反応の進行を促進することができる。
前記無機複合酸化物担体に含まれるジルコニウムは、触媒活性の低下の抑制には効果があるが、ジルコニウムの含有量が高いほど無機複合酸化物担体の比表面積が小さくなる。従って、無機複合酸化物担体に対するジルコニウムの含有量は、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。ジルコニウムの含有量が0.1質量%未満ではジルコニウム成分の添加効果が十分に得られず、一方、50質量%を超えると無機複合酸化物担体の比表面積が減少して所定の比表面積の触媒を得ることが困難となるので、いずれも好ましくない。なお、ジルコニウムを含有することによって触媒活性の低下が抑制される理由は不明であるが、活性金属成分とジルコニウムの親和力が高く、本発明に基づいて均一かつ微小に分散したジルコニウムによって導入された活性金属成分が安定化すると考える。また、担体内部に分散したジルコニウムが担体中の酸素原子を活性化して、触媒に付着した炭素質の酸化(ガス化)を促進し、触媒劣化の原因となるコーク付着を抑制すると考える。従って、前記無機複合酸化物担体は、ジルコニウムを含有しながら触媒の比表面積を310m2/g以上とするために、ジルコニウムの他に、金属酸化物を含むことが好ましく、該金属酸化物としてはアルミナ、酸化ケイ素から選ばれる1種以上の金属酸化物を含むことが好ましく、特にはアルミナを含むことが好ましい。無機複合酸化物担体が高い比表面積を有するためにアルミナを含む場合、該アルミナは、結晶子径が3nm以下であることが好ましく、非晶質であることが更に好ましい。アルミナの結晶子径が3nmより大きいと比表面積が減少して所定の比表面積の触媒が得られ難くなるため好ましくない。また、酸化ケイ素を含む場合も、該酸化ケイ素は非晶質であることが好ましい。ここで、非晶質とは、X線回折(XRD)において回折ピークが検出されない非結晶性(アモルファス)の状態にあることを示す。また、結晶子径は、X線回折などの公知の分析方法で測定することができる。
従って、本発明に用いる複合酸化物前駆体は、ジルコニウムとジルコニウム以外の金属として、アルミニウムとケイ素から選ばれる1種以上を含む化合物であることが好ましく、該複合酸化物前駆体としては、これら金属の無機塩及び有機塩、例えば酸化物塩、硝酸塩、ハロゲン化物塩、炭酸塩、有機酸塩などを用いることができるが、上述の配位子交換反応で分離する成分を反応蒸留で除去しやすい金属アルコキシドを用いるのが好ましい。
例えば、ジルコニウムの酸化物前駆体としては、塩化ジルコニウム(IV)、臭化ジルコニウム(IV)、ヨウ化ジルコニウム(IV)、酸化ジルコニウム(IV)、オキシ塩化ジルコニウム、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウム(IV)n−プロポキシド、ジルコニウム(IV)テトライソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウム(IV)テトラブトキシド、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム(IV)などを用いることができるが、ジルコニウム(IV)エトキシド又はジルコニウム(IV)テトライソプロポキシドを用いるのが好ましい。
また、アルミナの酸化物前駆体としては、ヨウ化アルミニウム、塩基性炭酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、2−エチルヘキサン酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムt−ブトキシドなどを用いることができるが、アルミニウムエトキシド又はアルミニウムイソプロポキシドを用いるのが好ましい。
また、酸化ケイ素の酸化物前駆体としては、四塩化ケイ素、臭化ケイ素(IV)、ヨウ化ケイ素(IV)、2−エチルヘキサン酸ケイ素、オルトケイ酸テトラエチル、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどを用いることができるが、オルトケイ酸テトラエチル又はテトラプロポキシシランを用いるのが好ましい。
本発明に用いる有機多座配位子としては、1分子あたり金属に配位できる官能基を複数有する有機化合物、例えば、ポリオール、ポリカルボン酸、アセトアセテート、アミノアルコール、ケトアルコールなどが挙げられる。金属への配位力は有機多座配位子の官能基の数や種類によって異なるが、金属への配位力の強すぎる有機多座配位子を用いると、この後で行う加水分解処理において加水分解の進行が遅くなるので好ましくない。有機多座配位子と金属の配位力は、金属に直接配位する原子の周りの嵩高さによって影響を受けるので、金属に直接配位する原子の周りが嵩高い有機多座配位子を用いると金属に有機多座配位子が強く配位することを立体的に抑制することができる。従って、上記有機多座配位子としては、炭素数5以上のジオールが好ましく、特には、炭素数6のジオールであるピナコール及び2−メチル−2,4−ペンタンジオールが好ましい。
本発明の水素製造用改質触媒は、活性金属成分としてルテニウム、ロジウム、白金から選ばれる少なくとも1種の貴金属を含有し、また、助触媒成分としてニッケル、コバルトから選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含有する。なお、貴金属としてはルテニウム及びロジウムが好ましく、また、遷移金属としてはコバルトが特に好ましい。
上記貴金属の含有量は担体の比表面積にも依存するが、概して触媒質量に対して金属として0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.3〜3質量%である。貴金属含有量が0.05質量%よりも少ないと触媒上の反応活性点として機能する貴金属の総量が減少して充分な触媒活性が得られなくなり、また、10質量%よりも多いとコストが増加するので好ましくない。該貴金属の原料(前駆体)としては貴金属塩化物などの貴金属化合物を用いることができる。例えば、貴金属としてルテニウムを含有する場合、ルテニウム活性成分の前駆体としては、三塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム、ルテニウム(III)2,4−ペンタンジオネートなどのルテニウム化合物を用いることができ、特に好ましくは三塩化ルテニウム(無水物又は水和物)を用いる。また、貴金属としてロジウムを含有する場合は、塩化ロジウム、臭化ロジウム、硝酸ロジウム、ロジウム(III)2,4−ペンタンジオネートなどのロジウム化合物を前駆体として用いることができ、貴金属として白金を含有する場合は、塩化白金、臭化白金、白金(II)2,4−ペンタンジオネートなどの白金化合物を前駆体として用いることができる。
ここで、上記貴金属の分散度は、貴金属に対する化学吸着量を測定する公知の方法により測定することができる。この方法としては、例えばCOガスを用いるパルスインジェクション法を用いることができ、以下、該パルスインジェクション法について説明する。まず、触媒を入れた測定セルにCOガスのパルスを連続的に注入すると、初めの数パルスまではCOが貴金属の表面に吸着され、セルから流出するCO量は注入したCO量より低下するが、貴金属の表面にCOが吸着され定常状態になると、注入したCOのほとんどが流出するようになる。そして、定常時に流出するCO量から初めの吸着時のCO量を引き、その差分の和をCO吸着量として求めることができる。このようにして求められたCO吸着量から、貴金属に吸着したCOのモル数を算出する。また、このようにして算出されたCOの吸着量のモル数と貴金属のモル数から、下記式(1)により貴金属の分散度が求められる。
貴金属分散度(%)=(触媒1g当たりに吸着したCO分子のモル数÷触媒1g当たりに含まれる貴金属のモル数)×100 ・・・ 式(1)
上記貴金属分散度は、実際の改質反応に作用する貴金属の活性点の割合を示すものであり、この値が大きいほど活性金属成分である貴金属が触媒中に高分散で分布していることを示す。
また、助触媒成分としての上記遷移金属の含有量は、上記貴金属に対する原子モル比で好ましくは0.1〜3.0、さらに好ましくは0.1〜1.0、特に好ましくは0.2〜0.5である。上記遷移金属の貴金属に対する原子モル比が0.1未満であると上述の助触媒効果が充分に現れず、また、3.0を超えると余剰の遷移金属が逆に貴金属の触媒機能を損なうことになるので好ましくない。該遷移金属の原料(前駆体)としては、遷移金属硝酸塩などの遷移金属化合物を用いることができる。例えば、遷移金属としてコバルトを含有する場合、コバルト助触媒成分の前駆体としては、硝酸コバルト、炭酸コバルト、酢酸コバルト、水酸化コバルト、塩化コバルトなどのコバルト化合物を一種又は複数種用いることができ、特に好ましくは硝酸コバルトを用いる。また、遷移金属としてニッケルを含有する場合、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、酢酸ニッケル、水酸化ニッケル、塩化ニッケルなどのニッケル化合物を前駆体として用いることができる。
上述の方法で生成したジルコニウム含有架橋錯体が溶解する溶液中に、助触媒成分を含む助触媒前駆体の水溶液を添加して架橋錯体の加水分解を行うことで、加水分解生成物の固形沈殿物を得ることができる。このとき架橋錯体の加水分解は70〜130℃の温和な条件で行い、加水分解反応の急激な進行を抑えることが好ましい。なお、温度が70℃未満では加水分解反応が進み難く、また、130℃を超えると加水分解が急激に進んで特定成分のみの沈殿が発生し易く、得られるジルコニウム含有酸化物の均一性が損なわれるのでいずれも好ましくない。
上述の方法で生成した加水分解生成物の固形沈殿物を回収し、好ましくは100〜150℃で乾燥処理を行って加水分解生成物の脱水又は脱アルコール反応によって高分子化(ゲル化)を進める。加水分解生成物を高分子化することによって、焼成の際に高温まで有機多座配位子が残り易くなり、これが担体金属の焼結を抑制することで焼成後に高い比表面積を有する複合酸化物を得ることができる。
上述の処理を行った加水分解生成物を、酸素含有雰囲気下で焼成処理することによってジルコニウム含有複合酸化物が得られる。ここで、酸素含有雰囲気としては、酸素、空気などが挙げられる。なお、焼成処理を400℃未満の温度で行うと安定な酸化物に変換することができず、また、800℃より高い温度で行うと焼結によって結晶化や金属酸化物粒子径の増大によってジルコニウム含有複合酸化物の比表面積を低下させることになるので、いずれも好ましくない。そのため、焼成処理の温度は400〜800℃、好ましくは500〜700℃である。また、有機多座配位子の燃焼で発生する水や二酸化炭素を効果的に除去するために、送風下で焼成処理することが好ましい。
本発明の水素製造用改質触媒は、比表面積が310m2/g以上、好ましくは320m2/g以上である。比表面積が大きいほど接触効率が高くなり反応性が向上する。また、比表面積が310m2/g未満では反応律速を十分に解消することができないので好ましくない。尚、触媒の比表面積は、窒素吸着法で求めることができる。
本発明の触媒の形状としては、特に限定されるものではないが、例えば、球状、円柱状、角柱状、打錠状、針状、膜状、ハニカム構造状などが挙げられる。また、触媒の成型には、特に限定されるものではないが、例えば、加圧成型、押出成型、転動造粒成型、プレス成型などの成型方法が利用できる。
上記の方法でジルコニウム含有複合酸化物担体に導入された活性金属成分には活性化のために還元処理を行うが、還元処理に液相還元剤を用いると改質反応の使用に際しての触媒の前処理還元、又は反応初期の発熱等の負荷を低減することができ、貴金属の還元処理によって生じる貴金属分散度の低下を抑制することができるので好ましい。液相還元処理の方法としては、例えば、ギ酸、ギ酸のアルカリ金属塩、ホルマリン、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤を用いて1〜20質量%の水溶液を調製し、室温〜100℃の温度に加温した後に触媒を投入して行う方法が挙げられる。
本発明の水素製造用改質触媒は、希土類金属を添加することによって触媒活性が更に向上し、かつ炭素析出を抑制して低い温度での水素製造における触媒寿命を更に向上させることもできる。該希土類金属としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、イッテルビウムなどが使用でき、ランタン、セリウムを用いるのが好ましく、ランタンを用いるのがさらに好ましい。これら希土類金属は、いずれか1種を単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの希土類金属の原料(前駆体)としては、酸化物の他に塩化物、硝酸塩、酢酸塩などの希土類金属化合物を使用することができる。
なお、上記希土類金属は、該希土類金属の前駆体を加水分解用の水溶液に添加することで、触媒に含有させることができる。また、該希土類金属は、上述した触媒に含浸法で導入してもよく、この場合、希土類金属を触媒の表面に選択的に分布させることができる。希土類金属を触媒の表面に選択的に分布させることによって、少量の添加量で大きな効果が得られ、かつ希土類金属が触媒の表面を被覆することによって触媒の機械的強度や耐熱性が向上する。希土類金属を触媒に含浸法で導入するには、触媒に上記希土類金属化合物を含む溶液を浸漬させればよい。このとき溶媒としては、水が好ましい。また、含漬させる際は、ポアフィリング法が好ましい。
上記希土類金属の量は、触媒の表面積に対して0.1〜5μmol/m2であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5μmol/m2である。希土類金属の量が触媒の表面積に対して5μmol/m2を超えると、希土類金属の被覆によって担体の表面露出が少なくなり触媒活性が低下してしまうので好ましくない。また、希土類金属の量が0.1μmol/m2より少ないと、その添加効果が低くなるのでいずれも好ましくない。触媒に含まれる希土類金属の量は、加水分解用の水溶液中における希土類金属化合物の濃度や、触媒に含浸する溶液中における希土類金属化合物の濃度を調整することにより前記範囲とすることができる。
上記の方法で得られた改質触媒は、改質反応の前に改めて還元処理を行うことが好ましいが、改質反応で生じる反応ガス中の水素との接触の結果として還元されるため必ずしも必要ではない。
本発明の触媒製造方法で得られた改質触媒を用いた水素製造方法は、該改質触媒を具備する改質部に上記の水素製造用燃料油を供給して水蒸気改質反応を行い、水素を含有する生成物を得る。ここで、改質部の触媒層の入口温度を520℃以下、好ましくは400〜520℃、さらに好ましくは450〜500℃として、水蒸気改質反応を開始することができる。なお、400℃より低い温度で開始すると水素製造に十分な水蒸気改質反応速度を得られず、水素製造に多量の改質触媒が必要となるので好ましくない。水素製造用改質触媒を用いる反応形式としては、固定床式、移動床式、流動床式などが挙げられ、特に制約を受けるものではない。また、水素製造用改質触媒を用いる反応器も特に制約を受けるものではない。
本発明の水素製造用改質触媒は、520℃以下の水蒸気改質反応に用いたときに、特に本発明の効果を発揮することができるが、520℃を超える温度の水蒸気改質反応及び/又は部分酸化改質反応による水素製造に用いることもできる。従って、本発明の水素製造用改質触媒を用いた水素製造方法は、水蒸気改質触媒層の入口温度を常に520℃以下の温度条件に維持することに限定されるものではなく、必要に応じてその入口温度を520℃以上に上げることができる。例えば、定常運転時の改質触媒層の入口温度が最終的には520℃を超える場合であっても、改質部の起動時など入口温度が520℃以下の非定常な状態から本発明を適用することによって起動時間を短縮することができる。また、水素製造方法における改質触媒層の出口温度は特に制約を受けるものではないが、好ましくは400〜800℃、さらに好ましくは450〜750℃である。
また、本発明の水素製造用改質触媒は、単独あるいは他の触媒と併用して使用することもできる。例えば、燃料電池用の水素製造において、燃料油である石油系炭化水素を本発明の水素製造方法を用いて予め低い温度でメタンを含む水素含有ガスに変換する予備改質を行った後、得られた水素含有ガスを引き続き下流の改質部にて高い温度で改質処理を行い、メタンから水素への転化を更に進めて水素生成量を増加させることもできる。
本発明の水素製造方法における燃料油の液空間速度(以下、LHSV)は、燃料油の種類にも依存するが、通常0.01〜10hr-1、好ましくは0.1〜5hr-1である。LHSVが極端に低いと供給される原料の量に対して必要以上の大きさを有する改質器を使うことになり、或いは原料を供給するポンプ又はマスフローに必要以上の微少量制御が求められるので好ましくない。また、LHSVが極端に高いと改質器内における燃料油と触媒層との接触時間が短くなって反応が進まなくなるので好ましくない。
燃料油中の炭素量に対する水の供給量のモル比(以下、スチーム/カーボン比)は、燃料油の性状や触媒の種類などにも依存するが、通常0.5〜10mol/mol、好ましくは1〜5mol/molである。スチーム/カーボン比が極端に低いと水蒸気改質反応に必要なスチームが不足し、また、コーク析出が促進され触媒の性能低下が著しく加速されるので好ましくない。また、スチーム/カーボン比が極端に高いと余剰スチームの生成・回収に要するコストが大きくなるので好ましくない。燃料油と水との混合は、特に方法の制約を受けないが、それぞれを気化器で加熱してガス状化したものを混合器で混合する方法、或いはどちらか一方を気化器で加熱してガス状化したものをもう一方の液体に送り込んで混合ガスを生成させる方法などが挙げられる。混合が不十分で原料と水が不均一な状態で改質器に送られると水蒸気改質反応が触媒層で均一に進まず、触媒層の温度分布や水素の生成量が不安定になるので好ましくない。
また、反応圧力は、燃料油の種類にも依存するが、通常0〜10MPa、好ましくは0〜5MPaである。反応圧力が5MPaを超えると、高価な耐圧材や機器類を使用した設備が必要となるので経済的に好ましくない。
本発明に使用する燃料油は、通常、石油系炭化水素油を含むものを原料油とし、これを脱硫処理して得られるものであり、好ましくは硫黄含有量が硫黄換算で0.05質量ppm以下かつジベンゾチオフェン類化合物の含有量が硫黄換算で0.02質量ppm以下、より好ましくは硫黄含有量が0.05質量ppm以下かつジベンゾチオフェン類化合物の含有量が0.01質量ppm以下、特に好ましくはジベンゾチオフェン類化合物を実質含まないものである。硫黄含有量が0.05質量ppm及び/又はジベンゾチオフェン類化合物が0.02質量ppmを超えると硫黄による触媒の被毒が進み、炭素析出を促すので好ましくない。尚、これらの硫黄含有量は紫外蛍光分析法、ジベンゾチオフェン類化合物の含有量はGC−ICP−MSにて測定されたものである。
原料油となる石油系炭化水素油としてはガソリン、ナフサ、灯油、軽油などがあるが、これらの中では取り扱い上灯油が好ましく、さらに好ましくはJISで規定される灯油またはその相当品が好ましい。また、原料油の脱硫処理の方法は、一般に工業的に利用されている水素化脱硫や吸着分離などの公知の技術を単独または複数用いることができる。例えば、水素化脱硫の一例としては、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステンなどの遷移金属を含む水素化精製触媒を用いて、反応温度200〜400℃、水素/油容積比50〜1000Nm3/m3、液空間速度0.1〜10hr-1、圧力1〜15MPa−Gなどの反応条件で脱硫処理する方法が挙げられる。
原料油の脱硫処理で得られる燃料油は、好ましくは蒸留初留点が140℃以上かつ蒸留終点が300℃以下で、より好ましくは蒸留初留点が140〜180℃で、95容量%留出点が270℃以下で、かつ蒸留終点が290℃以下であり、より一層好ましくは蒸留初留点が140〜170℃で、95容量%留出点が230〜270℃で、かつ蒸留終点が240〜290℃であり、特に好ましくは95%容量留出点が260〜270℃で、かつ蒸留終点が270〜290℃である。蒸留初留点が140℃よりも低いと、引火性が高くなり、取り扱いが難しくなるので好ましくない。また、蒸留終点が300℃よりも高くなると、低い温度での水素への改質が困難になるので好ましくない。また、95%容量留出点が270℃を超えると、ジベンゾチオフェン類化合物の含有量が増え、特にアルキル置換基数の多いアルキルジベンゾチオフェン類化合物の含有量が増えるので好ましくない。尚、これらの蒸留性状はJIS K 2254に定める「石油製品−蒸留試験方法」に基づいて測定されたものである。
また、本発明に使用する燃料油は、構成する炭化水素の組成については特に制限されないが、好ましくは直鎖脂肪族飽和炭化水素の含有量が25質量%未満であり、さらに好ましくは直鎖脂肪族飽和炭化水素の含有量が25質量%未満で、かつ炭素数18以上の直鎖脂肪族飽和炭化水素の含有量が0.5質量%以下である。直鎖脂肪族飽和炭化水素の含有量が25質量%以上では、低い温度での水素製造において直鎖脂肪族飽和炭化水素が未改質留分として残り易くなるので好ましくない。また、炭素数18以上の直鎖脂肪族飽和炭化水素の含有量が0.5質量%を超えると、低い温度での水素製造において未改質の炭化水素が生成物中に残り易くなるので好ましくない。尚、直鎖脂肪族飽和炭化水素の含有量はガスクロマトグラフィーで測定されたものである。
本発明に使用する燃料油は、芳香族含有量が20容積%以下であることが好ましく、さらに好ましくは16〜18容積%であり、かつ二環以上の芳香族化合物の含有量が1.0容積%以下である。芳香族含有量が20容積%を超えると、改質触媒の劣化が著しく進み、また、低い温度での水素への改質が困難になるので好ましくない。また、本発明の水素製造用燃料油は、オレフィン化合物を含まないことが好ましい。ここで、オレフィン化合物を含まないとは、分析において量的に検出されないことを意味する。オレフィンが含まれると改質触媒に炭素が析出し易くなり触媒の水素製造性能が著しく低下するので好ましくない。尚、芳香族含有量、二環以上の芳香族化合物の含有量及びオレフィン化合物の含有量は石油学会規定JPI−5S−49に定める炭化水素タイプ分析に基づいて測定されたものである。
本発明においては、上述した燃料油を単独で、または他の炭化水素と混合して水素製造の原燃料に使用することができる。
本発明は水蒸気改質反応に係わる水素製造装置での種々な態様で実施することが可能であり、例えば、製油所などの水素プラントや定置型分散電源における燃料電池用水素製造システムなどで実施可能である。
以下に実施例を挙げて本発明の効果をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
[触媒の調製]
<実施例1(触媒A)>
アルミニウムイソプロポキシド490gと、ジルコニウム(IV)テトライソプロポキシド(イソプロパノール付加体)186gを、2−メチル−2,4−ペンタンジオール720gに脱水雰囲気下で均一に溶解させ、110℃で生成するイソプロパノールを蒸留除去しながら4時間反応蒸留を行った後、三塩化ルテニウム3.51gを加えて減圧下でイソプロパノールを除去した後、硝酸コバルト(II)六水和物1.54gおよび硝酸ランタン六水和物13.2gを水500gに溶解させた水溶液を加えて80℃で24時間加水分解を行った。加水分解後に得られた沈殿物を130℃で24時間ゲル化反応を行い、得られたゲルを95℃で真空減圧乾燥した後、130℃で16時間乾燥、引き続き酸素存在下600℃で3時間焼成を実施し、ヒドラジン炭酸塩水溶液を用いて40℃で液相還元処理を行った後、150℃で10時間乾燥して得られた触媒粉を成形器に入れて、4kgf/cm2で5分間プレス成形したものを粉砕して、16〜24メッシュの大きさに篩い分けしたものを回収して、触媒Aを得た。
<実施例2(触媒B)>
実施例1の方法において、三塩化ルテニウムの代わりにルテニウム(III)2,4−ペンタンジオネート3.65gを使用した以外は実施例1と同様の方法で調製し、触媒Bを得た。
<比較例1(触媒C)>
アルミニウムイソプロポキシド490gと、ジルコニウム(IV)テトライソプロポキシド(イソプロパノール付加体)186gを、2−メチル−2,4−ペンタンジオール720gに脱水雰囲気下で均一に溶解させ、110℃で生成するイソプロパノールを蒸留除去しながら4時間反応蒸留を行った後、減圧下でイソプロパノールを除去した後、水500gを加えて80℃で加水分解を行った。加水分解後に得られた白色沈殿物を130℃でゲル化反応を行い、得られた白色のゲルを95℃で真空減圧乾燥した後、600℃で焼成して、担体C 175gを得た。得られた担体C 125gに、硝酸ランタン六水和物13.2gが溶解した水溶液180mlをポアフィリング法により含浸した後、110℃で16時間乾燥、引き続き酸素存在下600℃で3時間焼成を実施した。得られたランタン含有担体に、三塩化ルテニウム3.51gと硝酸コバルト(II)六水和物1.54gが溶解した水溶液180mlをポアフィリング法で含浸した後、150℃で16時間乾燥した。得られた触媒にヒドラジン炭酸塩水溶液を用いて40℃で液相還元処理を行い、150℃で10時間乾燥し、得られた触媒粉を成形器に入れて、4kgf/cm2で5分間プレス成形したものを粉砕して、16〜24メッシュの大きさに篩い分けしたものを回収して、触媒Cを得た。
<比較例2(触媒D)>
2mm径のアルミナ担体D(比表面積120m2/g、細孔容積0.36ml/g)415gに、塩化ジルコニウム(IV)34gを水に溶かして全量をポアフィリング法により含浸した後、110℃で16時間乾燥、引き続き酸素存在下650℃で3時間焼成を実施して得られたジルコニウム含有担体に、三塩化ルテニウム17.5gと硝酸コバルト(II)六水和物10.2gが溶解した水溶液150mlをポアフィリング法で含浸した後、150℃で16時間乾燥した。得られた触媒にヒドラジン炭酸塩水溶液を用いて40℃に加温して液相還元処理を行い、液相から取り出して150℃で10時間乾燥し、触媒Dを得た。
<比較例3(触媒E)>
実施例2の方法において、アルミニウムイソプロポキシドの使用量を600gとし、ジルコニウム(IV)テトライソプロポキシド(イソプロパノール付加体)を使用しない以外は実施例2と同様の方法で調製し、触媒Eを得た。
上記のようにして得られた触媒の特性を表1に示す。なお、表1の比表面積は窒素吸着法で測定された値である。また、担体中のジルコニウム含有量及びアルミナ含有量、並びに貴金属含有量、コバルト量及びランタン量は湿式質量分析(ICP−MS)法で測定された値である。また、アルミナ結晶子径はX線回折によって測定されたγ−アルミナの(400)面回折ピーク(2θ=66°)から求めた値である。また、貴金属分散度は一酸化炭素を用いたガス吸着分析法(金属分散度測定装置 BEL−METAL−3SP(日本BEL社製)を使用)でそれぞれ測定された値を用いて下記式(1)で算出した。
貴金属分散度(%)=(触媒1g当たりに吸着したCO分子のモル数÷触媒1g当たりに含まれる貴金属のモル数)×100 ・・・ 式(1)
なお、式(1)中の触媒に吸着したCO分子のモル数は、触媒試料を50ml/分の水素気流下で400℃で30分間、続いて50ml/分のヘリウム気流下で400℃で20分間前処理を行った後、50℃にてヘリウムガス気流下でCOパルスを注入したときのCO吸着量V50を基に、貴金属が担体表面に球体として担持されて1個の貴金属原子に1つのCO分子が吸着するとみなして、下記式(2)で求めた。
触媒に吸着したCO分子のモル数(mol/g)=V50/W×(273/(273+t))×(P/101.325)/(22.4×103) ・・・ 式(2)
50:測定温度50(℃)におけるCO吸着量(ml)
W:触媒の試料量(g)
P:測定時の圧力(kPa)
t:測定温度(℃)
Figure 2011167595
[触媒の評価]
JIS 1号灯油を市販のコバルト−モリブデン系脱硫触媒を用いてLHSV=1.0h-1、370℃、水素/油=500Nm3/m3、圧力5MPaの条件で370℃の水素化脱硫処理を行い、引き続き市販の酸化亜鉛吸着剤を用いてLHSV=1.0h-1、350℃、圧力5MPaの条件で吸着処理を行い、脱硫灯油を得た。これらのJIS 1号灯油及び脱硫灯油の性状を表2に示す。
尚、これらの油中の硫黄含有量は紫外蛍光分析法、ジベンゾチオフェン類化合物の含有量はGC−ICP−MSで測定されたものである。また、蒸留性状はJIS K 2254に定める「石油製品−蒸留試験方法」に基づいて測定されたものである。また、直鎖脂肪族飽和炭化水素の含有量はガスクロマトグラフィーで測定されたものである。また、芳香族含有量、二環以上の芳香族化合物の含有量およびオレフィン化合物の含有量は石油学会規定JPI−5S−49に定める炭化水素タイプ分析に基づいて測定されたものである。
Figure 2011167595
次に、上記脱硫灯油を原料とし、図1に示す水素製造装置で、上記触媒の活性を評価した。図1は、本発明の実施例で用いた水素製造装置の構成の概略図である。図示例の水素製造装置は、原料の脱硫灯油を貯蔵する燃料油タンクT110と、水を貯蔵する水タンクT120と、それぞれの液体を加熱気化する気化器EV110及びEV120と、加熱気化したそれぞれの液体を混合する混合器M130と、水蒸気改質反応で水素を含む改質ガスを生成する改質器R140と、水蒸気改質反応で生成した改質ガスの一部を採取しその組成を分析するための分析計A150と、改質ガスを冷却して気液に分離する気液分離器S160と、気液分離器S160で分離した液体を回収する液回収タンクT170を備える。改質器R140はその内部に改質触媒を収納する。この他にも温度や流量の制御機器や各部の加熱のための加熱器を備える(図示せず)。
燃料油タンクT110及び水タンクT120内の液体は、ポンプ又はマスフローによってその流量を制御することができ、それぞれの気化器EV110及びEV120へと供給される。原料及び水は、それぞれの気化器EV110及びEV120で加熱気化されて、混合器M130内で十分に混合された後、改質触媒を収納する改質器R140へ供給される。改質器R140内における水蒸気改質反応で生成した改質ガスの一部は、分析計A150に送られ、水蒸気改質反応で生成するガス組成を分析することができる。
実施例1〜2、比較例1〜3で得られた触媒A〜E 15.0mlを、図1に示す水素製造装置の改質器R140にそれぞれ充填し、原料を供給せずに改質器R140を昇温速度10℃/分で加熱を行い、改質触媒層の入口温度及び出口温度がそれぞれ500℃、550℃になるまで昇温を行った。
次に、表2に示す脱硫灯油を原料として、原料及び水の供給をそれぞれ35.6g/h、109.8g/h(原料のLHSV=3.0h-1、スチーム/カーボン比=2.5mol/mol)として改質触媒層の入口温度及び出口温度がそれぞれ500℃、550℃になるように温度制御を行った状態で、大気圧条件で336時間反応を行った。
上述の評価反応中に得られた反応生成物はガスの状態でサンプリングし、ガスクロマトグラフィーで反応生成物の組成を分析した。改質反応における各触媒の触媒活性は、下記式(3)で求められるC1転化率を指標に評価した。
C1転化率(%)=(反応生成物に含まれるC1化合物のモル数)÷(原料の脱硫灯油に含まれる炭素原子の総モル数)×100 ・・・ 式(3)
評価反応を所定時間行った後は、改質器の加熱を停止すると同時に水及び原料の供給を停止する停止操作を行い、水素製造を停止した。水素製造の停止後に改質器の温度が室温まで低下した状態で、水素製造後の触媒をそれぞれの改質器から抜き出して触媒に付着した炭素付着量の分析を行った。
各触媒を用いた評価反応における24時間後と288時間後のC1転化率とその比、評価反応後の触媒に付着した炭素付着量及び改質器内壁面への炭素質の析出状況をそれぞれ表3に示す。尚、これらの炭素付着量は湿式質量分析(ICP−MS)法で測定された値である。
Figure 2011167595
触媒Aは、触媒C及び触媒Dに比べて活性金属である貴金属含有量が少なくても、高いC1転化率を示した。また、触媒Bは、ジルコニウム成分を含有しない触媒Eに比べてC1転化率の経時劣化が少なく、触媒を長時間使用した後も高いC1転化率を示した。以上の結果から、本発明によって提供される水素製造用改質触媒は、500℃での水素製造において高い性能を発揮する触媒であることが分かる。また、本発明の水素製造用改質触媒を用いることによって、水素製造後の触媒に付着する炭素量が抑制されて、500℃での水蒸気改質反応においても炭素析出による改質触媒の性能低下、及び改質器への悪影響が抑制されることが分かる。
これらの実施例から、本発明の水素製造用改質触媒によって、低温での改質反応の開始が可能となり、起動に要する時間の短い燃料電池システムの運用、改質器構造の簡易化や材料のコスト低減による経済的な水素製造を実施することが可能となることが分かる。
本発明によって提供される水素製造用改質触媒及び該触媒を用いた水素製造方法によって、低い温度での水蒸気改質反応を効果的に進め、かつ触媒活性の低下を抑制し、かつ改質触媒、改質器およびその下流に位置するユニットへの悪影響を抑制することで、低い温度での改質反応の開始が可能となり、起動に要する時間の短い燃料電池システムの運用が可能となる。また、改質触媒の活性劣化やコーキングによる改質器の閉塞を抑制し、長期の水素製造が可能となる。また、改質温度の低下によって、改質触媒の熱劣化による性能低下を低減し、高温耐久性の高い高価な材料を用いることなく改質器の耐久性向上、改質器構造の簡易化や材料のコスト低減、平衡シフト反応を用いた低温改質プロセスへの適用等、経済的な水素製造を実施することが可能な水蒸気改質触媒を提供することができる。
T110 燃料油タンク
T120 水タンク
EV110 原料気化器
EV120 水気化器
M130 混合器
R140 改質器
A150 分析計
S160 気液分離器
T170 液回収タンク

Claims (7)

  1. ジルコニウムを含有する無機複合酸化物担体に、活性金属成分としてルテニウム、ロジウム、白金から選ばれる少なくとも1種の貴金属、および助触媒成分としてニッケル、コバルトから選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含有し、比表面積が310m2/g以上で、前記貴金属が分散度60%以上で前記無機複合酸化物担体中に分散されていることを特徴とする水素製造用改質触媒。
  2. 前記無機複合酸化物担体がアルミナを含み、かつ該アルミナの結晶子径が3nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の水素製造用改質触媒。
  3. ジルコニウムと、ジルコニウム以外の金属を1種以上含む複合酸化物前駆体、および活性金属成分を含む活性金属前駆体を、有機多座配位子を用いて溶解させて均一溶液を調製する工程と、
    助触媒成分を含む助触媒前駆体の水溶液を前記均一溶液に加えて加水分解させ、加水分解生成物を得る工程と、
    酸素存在下、400〜800℃で、前記加水分解生成物を焼成する工程と
    を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の水素製造用改質触媒の製造方法。
  4. 前記有機多座配位子が、ポリオール、アセトアセテート、ポリカルボン酸から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項3に記載の水素製造用改質触媒の製造方法。
  5. 前記有機多座配位子が、炭素数5以上のジオールを含むことを特徴とする請求項4に記載の水素製造用改質触媒の製造方法。
  6. 請求項1又は2に記載の水素製造用改質触媒を具備する改質部に水素製造用燃料油とスチームを供給し、該改質部の触媒層の入口温度を520℃以下として水蒸気改質反応を行い、水素を含有する生成物を得ることを特徴とする水素製造方法。
  7. 前記水素製造用燃料油が灯油留分であることを特徴とする、請求項6に記載の水素製造方法。
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