JP2013199602A - インクジェット用インク組成物及びインクジェット記録方法 - Google Patents

インクジェット用インク組成物及びインクジェット記録方法 Download PDF

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Abstract

【課題】水や溶剤存在下での紫外線照射による硬化性を維持しつつ、吐出安定性に優れたインクジェット用インク組成物を提供することを目的のひとつとする。
【解決手段】水と、色材と、ラジカル重合性基を有する化合物からなる樹脂エマルジョンと、無機粒子ディスパージョンと、光ラジカル重合開始剤と、を含むインクジェット用インク組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット用インク組成物及びインクジェット記録方法に関する。
インクジェット印刷方法は、ノズルからインクの小滴を吐出して紙面等の被印字面に付着させた後、この付着したインクから溶媒を乾燥させて色材を被印字面に固着させることにより印字を行う方法である。この方法によれば、高解像度、高品位な画像を高速で印刷することができる。
インクジェット印刷で使用される水系インクは、インク中に揮発成分を含まず安全性や環境問題の観点から優れているが、上質紙や普通紙に印字した場合に滲みが発生し易く、また、印刷本紙に印字した場合に乾燥が不十分で高速印刷が困難である、さらにインクを吸収しない被記録媒体、例えば、高分子樹脂フィルム、陶器、ガラス基板上では、印字したインクを定着できない、という問題が生じる。このような問題を解決するため、従来、様々な、水系の紫外線硬化型インクが開示されている。
例えば、特許文献1には、粒径及びゼータ電位を所定範囲とする水系の紫外線硬化型インクジェットインクが開示されている。また、このインクジェットインクは、3つ以上の光官能基を持つ光硬化性モノマーまたはオリゴマーを20質量%以上含有し、エマルション型光重合性化合物を含有することも開示されている。
例えば、特許文献2には、特定の紫外線硬化樹脂を水に乳化・分散させて、粘度を下げてなる、インクジェットプリンター用インクが開示されている。
例えば、特許文献3には、光重合性樹脂と、光ラジカル重合開始剤と、を含有する光重合型の水性インクにおいて、当該光重合性樹脂が、エマルション状態で存在するオリゴマー粒子と、このオリゴマー粒子内に存在するモノマーと、光重合開始剤と、で構成される水性インクが開示されている。
例えば、特許文献4には、光重合性樹脂と、光重合開始剤と、を含有する光重合型の水性インクにおいて、水溶性有機溶剤および界面活性剤を用いることで、10mPa・s以上60mPa・s以下の粘度に調整したインクジェット用インクが開示されている。
特許第4411852号公報 特許第3659658号公報 国際公開第01/057145号パンフレット 特開2010−229179号公報
上述のように、従来技術のインクにおいては、場合により界面活性剤を用いて光硬化型樹脂を水に乳化・分散させて用いたり、エマルション状態のオリゴマー粒子内にモノマー及び光重合開始剤を存在させたりしている。
しかしながら、上述のような従来技術のインクでは、低エネルギーの紫外線照射によって硬化させるために、ラジカル重合性基を有する樹脂エマルジョン(以下、樹脂エマルジョンともいう)の添加量を多くしなければならない。このため、インク中に占める樹脂エマルジョンの固形分濃度が上昇し、それに伴いノズル近傍のインク粘度が上昇するため、吐出安定性の点で問題が生じる。
そこで、本発明は、硬化性を維持しつつ、吐出安定性に優れたインクジェット用インク組成物を提供することを目的のひとつとする。
本願発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、水と、色材と、ラジカル重合性基を有する樹脂エマルジョンと、無機粒子ディスパージョンと、光ラジカル重合開始剤と、を含むインクジェット用インク組成物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は下記のとおりである。
[適用例1]水と、色材と、ラジカル重合性基を有する化合物からなる樹脂エマルジョンと、無機粒子ディスパージョンと、光ラジカル重合開始剤と、を含むインクジェット用インク組成物。
[適用例2]前記ラジカル重合性基を有する化合物のインク組成物中における濃度が6質量%以上20質量%以下であることを特徴とする、上記適用例に記載のインクジェット用インク組成物。
[適用例3]前記無機粒子ディスパージョンが、アルミナ、酸化亜鉛、酸化セリウム、コロイダルシリカの少なくともいずれかであることを特徴とする、上記適用例のいずれか一例に記載のインクジェット用インク組成物。
[適用例4]前記無機粒子ディスパージョンのインク中固形分濃度が0.5質量%以上、3質量%以下であることを特徴とする、上記適用例のいずれか一例に記載のインクジェット用インク組成物。
[適用例5]前記無機粒子ディスパージョンの平均粒子粒径(D50)が、40nm以上500nm以下であることを特徴とする、上記適用例のいずれか一例に記載のインクジェット用インク組成物。
[適用例6]前記ラジカル重合性基を有する化合物が自己乳化能を有する化合物であり、前記樹脂エマルジョンが、自己乳化樹脂エマルジョンであることを特徴とする、上記定期用例のいずれか一例に記載のインクジェット用インク組成物。
[適用例7]さらに前記化合物以外にラジカル重合性基を有する他の化合物を含み、当該他の化合物が、分子内に3個以上の重合性官能基を有する化合物であることを特徴とする、適用例6に記載のインクジェット用インク組成物。
[適用例8]前記ラジカル重合性基を有する化合物は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基、メルカプト基の少なくともいずれかであることを特徴とする、上記適用例のいずれか一例に記載のインクジェット用インク組成物。
[適用例9]さらに水溶性有機溶剤を含み、前記水溶性有機溶剤が極性溶媒及び浸透性溶剤のうち少なくともいずれかを含有する有機溶剤であることを特徴とする、上記適用例のいずれか一例に記載のインクジェット用インク組成物。
[適用例10]前記光ラジカル重合開始剤が、疎水性光重合開始剤であることを特徴とする、上記適用例のいずれか一例に記載のインクジェット用インク組成物。
[適用例11]前記化合物以外にラジカル重合性基を有する他の化合物を含み、当該化合物と、前記光ラジカル重合性開始剤と、を前記樹脂エマルジョン中に内包していることを特徴とする、上記適用例6〜10のいずれか一例に記載のインクジェット用インク組成物。
[適用例12]上記適用例のいずれか一例に記載のインクジェット用インク組成物であって、当該インク組成物を吐出する被記録媒体を過熱する加熱工程を備える記録方法により記録を行うものである、インクジェット用インク組成物。
[適用例13]上記適用例1〜12のいずれか一例に記載のインクジェット用インク組成物を用いたインクジェット記録方法。
光硬化型水性エマルションの紫外線硬化型水性エマルションの一例を巨視的に説明する示す模式図。 光硬化型水性エマルションの紫外線硬化型水性エマルションの一例を微視的に示す説明する模式図。 本発明の一実施形態のインクジェット記録装置の一例のヘッド周辺を示す概念図。
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
本明細書において、「硬化性」とは光に感応して硬化する性質をいう。「吐出安定性」とはドット抜けや飛行曲がりがなく、常に安定したインク滴をノズルから吐出させる性質をいう。「保存安定性」とは、保存前後における粘度が変化しにくい性質をいう。
本明細書において、「記録物」とは、被記録媒体上にインクが記録されて硬化物が形成されるものをいう。なお、本明細書における硬化物は硬化膜や塗膜を含む、硬化された物質を意味する。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートのうち少なくともいずれかを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びそれに対応するメタクリルのうち少なくともいずれかを意味する。
[インクジェット用インク組成物]
本発明の一実施形態は、インクジェット用インク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)に関わる。当該インク組成物は、水と、色材と、ラジカル重合性基を有する樹脂エマルジョンと、無機粒子ディスパージョンと、光ラジカル重合開始剤と、を含むものである。
以下、インクジェット用インク組成物に含まれるか、又は含まれ得る成分を詳細に説明する。
[水]
本実施形態のインク組成物に用いられる水、即ち主溶媒である水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。
[色材]
本実施形態のインク組成物は色材を含む。色材は、顔料及び染料のうち少なくとも一方を用いることができる。
(顔料)
本実施形態において、色材として顔料を用いることにより、インク組成物の耐光性を向上させることができる。この顔料としては、インクジェット用水性顔料インクに通常用いられているものであれば特に制限無く用いることができる。
上記顔料として、例えば、アゾ顔料(例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等の有機顔料;カーボンブラック(例えば、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等)、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等の無機顔料;シリカ、炭酸カルシウム、タルク等の体質顔料等を用いることができる。
上記顔料の具体例として、C.I.ピグメントイエロー 64、74、93、109、110、128、138、139、150、151、154、155、180、185、C.I.ピグメントレッド 122、202、209、C.I.ピグメントバイオレット 19、C.I.ピグメントブルー 15:3、15:4、60、C.I.ピグメントグリーン 7(フタロシアニングリーン)、10(グリーンゴールド)、36、37、C.I.ピグメントブラウン 3、5、25、26、C.I.ピグメントオレンジ 1、2、5、7、13、14、15、16、34、36、38、64、71等が挙げられる。
上記顔料は、分散剤により水に分散させて得られる顔料分散液として、あるいは、顔料粒子表面に化学反応を利用して親水性基を導入した自己分散型の表面処理顔料を水に分散させて得られるか、又は、ポリマーで被覆された顔料を水に分散させて得られる顔料分散液として、インクに添加されることが好ましい。
前者、即ち分散剤により水に分散させて得られる顔料分散液を調製するのに用いられる分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤(にかわ、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、などのタンパク質類、アラビアゴム、トラガントゴムなどの天然ゴム類、サポニンなどのグルコシド類、アルギン酸及びプロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸アンモニウムなどのアルギン酸発酵体メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、エチルヒドロキシセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール類、ポリピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−m−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、などのスチレン−アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩など)や界面活性剤(各種アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤など)を使用することができる。
一方、後者のうち上記の親水性基を導入した自己分散型の表面処理顔料は、顔料の表面にカルボキシル基及びその塩が直接結合するような表面処理により、分散剤なしに水に分散又は溶解が可能とされたものである。具体的には、真空プラズマなどの物理的処理や次亜塩素酸ナトリウムやオゾン等の酸化剤を用いた化学的処理により、官能基または官能基を含んだ分子を顔料の表面にグラフトさせることによって得ることができる。一つの顔料粒子にグラフトされる官能基は単一でも複数種であってもよい。グラフトされる官能基の種類及びその程度は、インク中での分散安定性、色濃度、及びインクジェットヘッド前面での乾燥性等を考慮しながら適宜決定されてよい。
また、後者のうち上記のポリマーで被覆された顔料は、特に限定されないが、例えば、重合性基を有する分散剤を用いて顔料を分散させた後、その分散剤と共重合可能なモノマー(共重合性モノマー)と、光ラジカル重合開始剤と、を用いて水中で乳化重合を行うことにより、得ることができる。このポリマーの中でも、二重結合としてアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、及びアリル基のうち少なくともいずれかを有するモノマーやオリゴマーが、光ラジカル重合開始剤を使用する公知の重合法に従って重合されたものが、好適に使用可能である。上記の乳化重合は、一般的な方法を用いることができ、重合は乳化剤の存在下で水溶性の光ラジカル重合開始剤の熱分解で発生するフリーラジカルにより進行する。
上記顔料分散液を構成する顔料及び分散剤は、それぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
顔料分散液は、色々な種類のメディア上での鮮明な画像形成という有利な効果が得られるため、固形分換算で、インク組成物の総量(100質量%)に対し、0.05〜25質量%含まれることが好ましく、0.1〜20質量%含まれることがより好ましい。
[無機粒子ディスパージョン]
本実施形態のインク組成物は、無機粒子ディスパージョンを含む。この無機粒子ディスパージョンは、特定の粒径であり、水中に分散されたものを指す。本インク組成物中では、その分散性により、インク中に含まれている樹脂エマルジョンが形成するミセルを分散させ、樹脂エマルジョンが形成するミセルの局地的な濃度上昇による増粘を防ぐ役割をしている。この増粘を防ぐことにより、インクジェットインク組成物は安定した吐出が可能である。
上記した樹脂エマルジョンの局地的な濃度上昇による増粘は、以下の理由によって起こる。
特に、自己乳化型の樹脂エマルジョンは濃度により、粒径が異なる。これは樹脂エマルジョンが形成するミセルが高濃度時に、より大きな集合体を作ることに起因し、この際、著しい増粘を起こす。
上記した高濃度時の樹脂エマルジョンが形成するミセルの粒径増大に伴う著しい増粘は、インクジェット吐出口付近でも容易に起こり、これにより吐出が不安定化する。
この際、無機粒子ディスパージョンの添加により、樹脂エマルジョンが形成するミセル粒径増大に伴う増粘を妨げることができる。これは、無機粒子ディスパージョンが、樹脂エマルジョンが形成するミセルが高濃度時、ミセル間隙に入り込むことにより粒径増大を妨げるためである。これにより、吐出不安定化が起こりにくい。
上記無機粒子ディスパージョンの分散方式としては、特に限定されないが、例えば、自己乳化型、分散剤による乳化を含む。
上記無機粒子ディスパージョンは無機化合物により構成されており、水中で安定に分散することができるものを示す。材質としては、特に限定はされないが、例えば、酸化亜鉛、酸化セリウム、アルミナ、コロイダルシリカ等があげられる。中でも、分散性に優れるため、コロイダルシリカを用いるのが最も好ましい。
前記無機粒子ディスパージョンは粒径としては10〜500nmが好ましく、40nm〜500nmがより好ましい。また、樹脂エマルジョンが形成するミセルの間隙に入り込み、樹脂エマルジョン同士が凝集することを防止するという機能上の性質から、樹脂エマルジョンが形成するミセルの粒径と同じかそれ以上が好ましく、それ以上であることがより好ましい。樹脂エマルジョンの形成するミセルの粒径を250nmとした場合、特に粒径が200〜450nmのものを使用するのが好ましい。
インクジェット用インク組成物中の上記無機粒子ディスパージョンの濃度は特に限定はされないが、0.5%〜3%含まれるのが好ましく、0.5〜2%含まれるのがより好ましく、0.5%〜1%含まれるのがさらに好ましい。
[光ラジカル重合開始剤]
本実施形態のインク組成物は、光ラジカル重合開始剤を含む。この光ラジカル重合開始剤は、紫外線等の活性エネルギー線が照射されることによる光開裂や水素引抜き等によって、ラジカル(開始剤ラジカル)が生成し、ラジカル重合性化合物を攻撃することでラジカル重合を引き起こす。
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、特に限定されないが、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ジクロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]2−モルフォリノプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾフィルフォーメート、アゾビスイソブチリロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、及びジ−tert−ブチルペルオキシドが挙げられる。
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン}、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、Speedcure TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、BASF社製)、DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、及びユベクリルP36(UCB社製)等が挙げられる。
本実施の形態に係る光硬化型組成物を紫外線LEDにより硬化させる場合には、350nm以上430nm以下の波長領域に極大吸収波長を有する光重合開始剤を用いることが好ましい。具体的には、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−オキサイド(DAROCUR TPO、BASF社製)、Speedcure TPO(Lambson Group Ltd製)、及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルオキサイド(IRGACURE 819、BASF社製)が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。光ラジカル重合開始剤は、インク組成物の総量(100質量%)に対して、0.1〜10質量%含まれることが好ましく、0.5〜8質量%含まれることがより好ましい。上記の範囲内である場合、硬化性が良好なものとなる。
光ラジカル重合開始剤は、前記樹脂エマルジョン中に内包させることが、ラジカル重合開始効率の点で好ましい。また、光ラジカル重合開始剤は疎水性であることが樹脂エマルジョンに内包させやすい点で好ましい。
[樹脂エマルジョン]
本実施形態のインク組成物において、樹脂エマルジョンはラジカル重合性基を有する化合物により構成される。当該ラジカル重合性基を有する化合物は、所定の構造及び重量平均分子量を有する。この化合物はラジカル重合性基を有し、エマルジョンを形成するものであればよく、乳化能を有する化合物かあるいは、乳化能を有する化合物とともにエマルジョンを構成する化合物であることができる。ラジカル重合性基を有する化合物からなる樹脂エマルジョンを用いることで硬化性の優れるインク組成物とすることができ、また、光ラジカル開始剤を内包させやすくすることができる。特に自己乳化能及び乳化性を有する自己乳化エマルジョンの場合、硬化性が特に優れる点で好ましい。本実施形態のインク組成物は、特に、自己乳化能及び乳化性を有するラジカル重合性基を有する化合物を使用した自己乳化型の樹脂エマルジョンにおいて効果が大きい。
自己乳化型の樹脂エマルジョンにおいて前記化合物は分子中に親水性部分と疎水性部分を有する両親媒性を有する化合物であり、溶媒中ではミセルを形成し安定に分散するものを指す。樹脂エマルジョンの形成するミセルの粒径(平均粒子径D50)は100〜350nmが好ましく、200〜300nmがより好ましい。樹脂エマルジョンのミセルや前述の無機粒子ディスパージョンの平均粒径とは、体積基準とした場合の、累積50%粒子径を意味し、動的光散乱法によって測定される。当該平均粒径は、例えば、マイクロトラックUPA150(Microtrac Inc.社製商品名)を使用して測定することができる。後述する各実施例において、無機粒子ディスパージョン及び樹脂エマルジョンの平均粒径は上記方法で測定を行ったものである。
ラジカル重合性基を有する化合物のラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基、メルカプト基等が挙げられる。
ラジカル重合性基を有する化合物の構造的な特徴としては、ウレタン結合、エステル結合、アミド結合、エーテル結合のいずれかを含むことが好ましい。
[ラジカル重合性基を有する化合物]
本実施形態のインク組成物中において、前述の樹脂エマルジョンは光硬化型水性エマルションとすることが好ましい。樹脂エマルジョンは、少なくとも、ラジカル重合性基を有する化合物から構成され、さらに、前記ラジカル重合性基を有する他の化合物と(以下、他の化合物とも言う)、及び光ラジカル重合開始剤と、から構成され得る。この場合、水や溶媒存在下での紫外線照射による硬化性に優れ、かつ、臭いを効果的に抑制することができる。
本実施形態のインク組成物中の樹脂エマルジョンを構成するラジカル重合性基を有する化合物は、両親媒性化合物が、自己乳化能を有し、自己乳化樹脂エマルジョンを構成し、硬化性が優れる点で好ましい。両親媒性化合物は、親性部分と疎水性部分とを有する化合物である。親水性部分としては、ポリアルキレングリコール残基が好ましく、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル残基がより好ましく、疎水性部分としては、ウレタン結合を生成する際に用いたジイソシアネート残基や、非環式炭化水素又は環式炭化水素残基が好ましい。両親媒性化合物は例えば、後述する一般式(1)(4)(5)、及び一般式(1)(4)(5)の何れかが(メタ)アクリレート残基A1で架橋した架橋ウレタン化合物、の何れかの化合物があげられる。各一般式において親水性部はD1、D2、D3であり、疎水性部はB1、C1である。
ラジカル重合性基を有する化合物として、特に限定されるものではないが、例えば、以下に説明するようなウレタン(メタ)アクリレートを用いることができ、特に、両親媒性ウレタン(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
中でも、両親媒性直鎖型ウレタン(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、さらに、光ラジカル重合開始剤及び、ラジカル重合性基を有する他の化合物としてラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物を内包させることにより、硬化性が優れたものとなり好ましい。上記ウレタン(メタ)アクリレートは両親媒性物質であることから、その分子構造を直鎖型構造にすることにより、安定で分散性に優れ、かつ、低粘度となるという有利な効果を奏する光硬化型水性エマルションを得ることが可能となる。
光硬化型水性エマルションに起因した上述の効果は、以下の理由によってもたらされたものと考えられる。
図1は、光硬化型水性エマルションの紫外線硬化型水性エマルションの一例を巨視的に説明する示す模式図であり、図2は、光硬化型水性エマルションの紫外線硬化型水性エマルションの一例を微視的に示す説明する模式図である。ラジカル重合性基を有する化合物の一例である両親媒性ウレタン(メタ)アクリレートは図1、及び図2に示すように水中で疎水性部をコアに向け親水性部を水相に向けてシェル層を成してミセルを形成し、水中で、ラジカル重合性基を有する他の化合物(図中ではラジカル重合性基を有する化合物と記載)の一例であるラジカル重合性化合物(好ましくはラジカル重合性(メタ)アクリレート)と光ラジカル重合開始剤とを内包したミセルを形成することができると考えられる。
これは、上記ウレタン(メタ)アクリレートの分子構造に起因するものと考えられる。つまり、ミセル形成時において、ウレタン(メタ)アクリレートの分子構造は、主鎖が分岐している場合、又は主鎖の両末端に疎水部をもつ場合と比較して、立体障害が小さく、屈曲したコンフォメーションをとることもないと考えられる。そのため、親水性部を水相に向けて規則正しく密に配向することが可能となると考えられる。したがって、密に配向したミセルであれば、ウレタン結合間の水素結合が有効に働いてミセルの形成強度(パッキング性)が増大するため、ミセルの安定性及び分散性に寄与すると考えられる。
よって、光硬化型水性エマルションは、ラジカル重合性化合物(好ましくはラジカル重合性(メタ)アクリレート)と光ラジカル重合開始剤とをミセル中に含む場合にも、安定性に優れ、良好な光重合性が得られると考えられる。
また、光硬化型水性エマルションは、本技術分野に属する当業者であれば、後記の実施例欄で行った方法を適宜改良・変更することにより、適当な方法を選択することができ、乳化重合法、高圧乳化法、転相乳化法等、公知の方法を採用すればよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて各種公知の乳化剤、分散剤を用いてもよい。
なお、乳化重合法とは、界面活性剤のような両親媒性物質を水相中に添加しておき、そこに油相を加える方法である。高圧乳化法とは、水相、油相及び界面活性剤のような両親媒性物質を予備混合し、ホモジナイザー等の高圧乳化機にて乳化し水性エマルションを得る方法である。転相乳化法とは、界面活性剤のような両親媒性物質を油相中に溶解・分散させ、そこに水相を添加してO/W型エマルションを得るという方法である。乳化の途中で連続相が水から油へと変化(転相)するので、転相乳化と呼ばれる。
このように、特にウレタン(メタ)アクリレートを用いた光硬化型水性エマルションを含有するインク組成物は、粘度が低く、硬化性に優れ、水の存在下でも光硬化可能で、かつ、耐加水分解性に優れる。特に、上記のウレタン(メタ)アクリレートが形成するミセル中にラジカル重合性基を有する化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む形態において、優れた硬化性と、所定濃度の水の存在下においても光硬化するという従来の光硬化型水性エマルションにはない性能と、を得ることができる。また、光硬化型水性エマルションのミセルを形成するウレタン(メタ)アクリレートは、その構造から密に配向でき、さらに、その構造の疎水性部分にウレタン結合(ウレタン基)を有することから、配列したウレタン(メタ)アクリレート間に水素結合による強い結合力が働くと考えられる。そのため、ミセルの内包物が漏出し難く、加水分解し難い安定な乳化物が得られたと考えられる。
この推察は、光硬化性水性エマルションの硬化性を説明するために行ったものであって、本実施形態における光硬化性水性エマルションを限定するものではない。
以下、樹脂エマルジョンを構成するラジカル重合性基を有する化合物の1例であるウレタン(メタ)アクリレートの詳細を説明する。
<ウレタン(メタ)アクリレートの構成>
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、重量平均分子量が1,000〜10,000であって、下記一般式(1)で表される構造を有する。
1−O−(CONH−B1−NHCOO−C1−O)n−CONH−B1−NH−COO−D1 …(1)
(式(1)中、nは1〜30の自然数を表し、A1はヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの残基を表し、B1のジイソシアネートの残基を表し、C1は非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールの残基を表し、D1はポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルの残基を表す。)
ここで、残基とは上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートの原料の構造において、ウレタン結合を形成する官能基を除いた部分のことであり、具体的には、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートではヒドロキシル基を除いた部分(A1で表される。)、ジイソシアネートではイソシアネート基を除いた部分(B1)、非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールではヒドロキシル基を除いた部分(C1)、ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルではヒドロキシル基を除いた部分(D1)である。
上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による分子量分布を測定することによって算出することができる。本明細書における重量平均分子量とは、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量のことであり、GPC(HLC−8220〔商品名〕、東ソー社(TOSOH CORPORATION)製)に、カラム:TSK−gel SuperHZM−M(排除限界分子量:4×106、分子量分画範囲:266〜4×106、理論段数:16,000段/本、充填剤材質:スチレン系共重合体、充填剤粒径:3μm)を3本直列として用いることにより測定される。
上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、1,000〜10,000であり、好ましくは2,000〜8,000である。重量平均分子量が上記範囲内である場合、ミセルを形成しやすく自己乳化性に優れたものとなり、さらに、疎水性物質をミセル内に内包しやすくなるという有利な効果が得られる。これは、上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートとしたことで、親水性と疎水性との良好なバランスが得られたためであると考えられる。
上記一般式(1)中、nは1〜30の自然数を表す。なお、nの具体的な数値は、上記の重量平均分子量を調整することにより決まる。
(ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート)
上記のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートは、上記一般式(1)におけるA1の構造を与える化合物である。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートは、上記一般式(1)への重合性基の導入のために用いられる。具体的にいえば、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基を1個以上有し、かつ、ヒドロキシル基を1個有する化合物であって、このヒドロキシル基がジイソシアネートのうちの一個のイソシアネート基とウレタン化反応することによって(メタ)アクリロイル基がウレタン(メタ)アクリレートの主鎖の片末端に導入される。少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基の導入によって光重合(光硬化)が可能となり、さらに、2個以上の(メタ)アクリロイル基の導入によって光重合速度が高まるとともに、硬化物の硬度が高まるという有利な効果が得られる。
単官能であるモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
2官能であるモノヒドロキシジ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、グリセロールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
3官能以上であるモノヒドロキシポリ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中でも、特に低粘度を有する乳化物を得られるため、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましく、ポリプロピレングリコールモノアクリレートがより好ましい。一方、特に硬化性に優れた乳化物を得られるため、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとして、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのうち少なくともいずれかが好ましい。
上記のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(ジイソシアネート)
上記のジイソシアネートは、上記一般式(1)におけるB1の構造を与える化合物である。当該ジイソシアネートは、一分子内に反応性のイソシアネート基を2個有する有機ジイソシアネートを指す。
分子中にイソシアネート基を3個以上有する有機ポリイソシアネートを用いて合成されたウレタン(メタ)アクリレートは、高分子量となりやすく、粘度が高くなる傾向にある。これらのウレタン(メタ)アクリレートで3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを主骨格にして少なくとも1個の親水性基を有する分子鎖と少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する分子鎖が分岐した構造の分子中に親水性部を持ったものを水に乳化させた乳化物(水性エマルション)も、粘度が高くなる傾向がある。
これに対して、一分子中にイソシアネート基を2個有するジイソシアネートを用いて合成されたウレタン(メタ)アクリレートは、ジイソシアネートに由来する構造とジオールに由来する構造が直線上に配列する直鎖構造となり、上記一般式(1)に表したように片末端にポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル由来の親水性部があり、もう一方の末端に1個以上の(メタ)アクリロイル基と1個のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート由来の構造に分子内に2個のヒドロキシル基を有する非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオール由来の構造がジイソシアネートを介してウレタン結合で結合された疎水部が配置した構造であることから、水への乳化性が特に優れたものとなり、乳化物(水性エマルション)の粘度を上記の従来のウレタン(メタ)アクリレートの乳化物に比べ大幅に下げることができる。
ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、イソホロンジイソシアネートなどの脂環式炭化水素骨格を有するジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族炭化水素骨格を有するジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族炭化水素骨格を有するジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート及び水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの水素添加芳香族炭化水素骨格を有するジイソシアネートが挙げられる。
これらの中でも、ウレタン(メタ)アクリレートの硬化物が日光(紫外線)によって黄変しにくくなるという有利な効果が得られるため、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、及び水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートからなる群より選択される一種以上が好ましい。
上記のジイソシアネートは、一分子内及び分子間において、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオール)
上記の非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールは、上記一般式(1)におけるC1の構造を与える化合物である。当該ジオールは、上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートの疎水部の疎水性の度合いを調整するために導入される。上記ジオールは良好な疎水性を得られるものが選択される。具体例としては、一分子内に2個のヒドロキシル基を有する脂肪族、脂環族、及び芳香族のジオールからなる群より選ばれる1種以上のジオールが好ましく用いられ、中でも良好な疎水性を示すジオールがより好ましい。具体的に言えば、この疎水性に特に優れるため、当該非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールの炭素数は、6〜20であることが好ましい。
また、上記ジオールは、使用目的や使用用途に応じて、当該ウレタン(メタ)アクリレートの剛直性又は柔軟性を制御するのに適するもので、かつ、良好な疎水性を示すものを選択することもできる。
上記の脂肪族ジオールとしては、分子中に芳香族構造及び脂環族構造を有しないジオールであれば、特に限定されず公知のものを使用できる。具体例として、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ペンタデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,19−ノナデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、ポリプロピレングリコール(例えば、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール)、脂肪族ポリカーボネートポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリカプロラクトンジオールなどが挙げられる。
上記の芳香族ジオールとしては、分子中に芳香族構造を有するものであれば、特に限定されず公知のものを使用できる。具体例として、ビフェニル−4,4’−ジオール、1,4−ベンゼンジオール、ビスフェノールA、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA、芳香族ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
上記の脂環族ジオールとしては、分子中に脂環族構造を有するものであれば、特に限定されず公知のものを使用できる。具体例として、水素添加ビスフェノールA、エチレンオキサイド変性水素添加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド変性水素添加ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール、脂環族ポリカーボネートポリオール、脂環族ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
これらの中でも、水への乳化が良好になり、かつ、ウレタン(メタ)アクリレートの硬化物が日光(紫外線)によって黄変しにくくなるため、脂肪族ジオール及び脂環族ジオールが好ましい。脂肪族ジオールの中では、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ペンタデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,19−ノナデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、ポリプロピレングリコール、脂肪族ポリカーボネートポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、及び脂肪族ポリカプロラクトンジオールからなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。また、脂環族ジオールの中では、水素添加ビスフェノールA、エチレンオキサイド変性水素添加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド変性水素添加ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジオール、及びトリシクロデカンジメタノールからなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。
上記のジオールは、一分子内及び分子間において、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル)
上記のポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルは、上記一般式(1)におけるD1の構造を与える化合物である。ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルは、ポリオキシアルキレングリコールの1つのヒドロキシル基がアルキル基で封鎖された化合物であって、下記一般式(2)で表される。
HO−(CH2CH2O)m−R …(2)
(式(2)中、Rはアルキル基であり、mは9〜90の自然数を表す。)
このヒドロキシル基がジイソシアネートのうちの一個のイソシアネート基とウレタン化反応によってウレタン(メタ)アクリレートの主鎖の片末端に導入される。これによって、ウレタン(メタ)アクリレートは直鎖状の主鎖の片末端に親水性部を持ち、もう一方の末端に1個以上の重合性基である(メタ)アクリロイル基と疎水性基とから構成される疎水部が配置する両親媒性物質の構造となるため、水への乳化性が特に優れたものとなる。
また、ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルは、親水性を自由に調整できるという有利な効果が得られるため、分子内にポリオキシエチレン構造を含むことが好ましい。
ポリオキシエチレン構造はオキシエチレン基の繰り返し構造である。オキシエチレン基の平均の繰り返し数、すなわち上記一般式(2)におけるmは、ウレタン(メタ)アクリレートの水への乳化が良好となるように親疎水のバランスを調整して決定され、9〜90の自然数が好ましく、9〜60の自然数がより好ましく、9〜30の自然数がさらに好ましい。
ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコールモノメトキシエーテル、ポリエチレングリコールモノエトキシエーテル等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。
また、ポリオキシエチレン構造に加えて他のポリオキシアルキレン構造も分子内に含むポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルも使用可能である。その際、末端アルキル基側にポリオキシエチレン構造が位置していることが、乳化にとって好ましい。この場合にポリオキシエチレン構造とともに使用できるポリオキシアルキレン構造には、ポリオキシプロピレン構造、ポリオキシテトラメチレン構造が挙げられる。ポリオキシエチレン構造とともに使用するポリオキシアルキレン構造のオキシアルキレン基の繰り返し数は当該ウレタン(メタ)アクリレートの親疎水バランスを考慮して適宜決定される。
ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルの末端アルキル基、すなわち上記一般式(2)のRとしては、炭素数の少ないアルキル基ほど疎水性が一層低下し乳化性に一層優れるため、メチル基、エチル基、又はプロピル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
上記のポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ウレタン(メタ)アクリレートは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、インク組成物として用いる場合に、塗膜を形成でき、かつ、良好な膜強度や密着性等の塗膜性能を得るため、インク組成物の総量(100質量%)に対して、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。
〔架橋ウレタン(メタ)アクリレート〕
本実施形態のインク組成物は、上述のウレタン(メタ)アクリレートとともに、又はこれに代えて、当該ウレタン(メタ)アクリレートを含む構成単位を有する架橋ウレタン(メタ)アクリレートを含み得る。一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートを構成単位として有する架橋ウレタン(メタ)アクリレートにより、硬化性に優れ、かつ、エマルションの保存安定性に一層優れたものとなる。
(架橋剤)
上記の架橋ウレタン(メタ)アクリレートは、上述のウレタン(メタ)アクリレートと2官能以上の架橋剤とを反応させることにより、得ることができる。
架橋剤を用いることにより、ウレタン(メタ)アクリレートを高分子量化することができる。これにより、硬化性に一層優れ、かつ、エマルションの保存安定性に一層優れた架橋ウレタン(メタ)アクリレートを得ることができる。
また、溶剤系や無溶剤系(無溶媒系)でなく、O/Wエマルション中のオイル系(油相)で反応を実施することにより、ゲル化を防止することができる。
上記の2官能以上の架橋剤は、(メタ)アクリロイル基と付加反応するものであるため、疎水性であることが好ましい。換言すれば、上記の2官能以上の架橋剤は、エマルション内の油相において、一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート中の(メタ)アクリロイル基にマイケル付加することで、当該ウレタン(メタ)アクリレートを架橋化する。
このような(メタ)アクリロイル基と反応する架橋剤として、分子内にチオール基やアミノ基などを有するものが挙げられる。中でも、反応を速やかに進行させることができるため、多官能チオール化合物及び多官能アミン化合物のうち少なくともいずれかが好ましく、多官能チオール化合物がより好ましい。
上記2官能以上の架橋剤の具体例として、特に限定されないが、メルカプト基含有化合物及びアミノ基含有化合物が挙げられる。中でも、水への溶解度が低く、かつ、水分散時に油相内に取り込みやすいため、メルカプト基含有化合物が好ましい。
上記メルカプト基含有化合物としては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(以下、「PEMP」ともいう。)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、及びトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)が挙げられる。
上記2官能以上の架橋剤の含有量は、(メタ)アクリロイル基含有樹脂の総質量(100質量%)に対して、3〜10質量%であることが好ましく、5〜8質量%であることがより好ましい。
なお、本明細書における「(メタ)アクリロイル基含有樹脂」とは、上記架橋剤により架橋される(メタ)アクリロイル基を含有する樹脂全てを意味する。したがって、当該(メタ)アクリロイル基含有樹脂には、上記の一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート、及び後述の分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が共に含まれる。
<ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法>
以下、上記ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法を説明する。ウレタン(メタ)アクリレートは、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、前記ジイソシアネートと、前記非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールと、前記ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルと、を反応させることで得られる。より詳細にいえば、ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法は、第1の工程と第2の工程と第3の工程とを含む。
第1の工程では、前記ジイソシアネートと、好ましくは炭素数6〜20である、非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールと、を反応させ下記一般式(1a)で表される、ウレタン結合を有する第1の反応物を得る。
OCN−(B1−NHCOO−C1−O)n−CONH−B1−NCO …(1a)
この第1の工程において、上記ジイソシアネートと、上記炭素数6〜20である非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオールと、のモル比は、好ましくは5:1〜5:4であり、より好ましくは5:2〜5:3である。
第2の工程では、前記第1の反応物と、前記ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルと、を反応させ下記一般式(1b)で表される第2の反応物を得る。
OCN−(B1−NHCOO−C1−O)n−CONH−B1−NH−COO−D1…(1b)
この第2の工程において、上記第1の反応物と、上記ポリオキシアルキレングリコールと、のモル比は、水への乳化が良好となるため、好ましくは1:0.5〜1:1である。
第3の工程では、前記第2の反応物と、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、を反応させる。この第3の工程において、上記第2の反応物と、上記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、のモル比は、好ましくは1:1.5〜1:1であり、より好ましくは1:1.4〜1:1.2である。
<架橋ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法>
架橋ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法は、上記の架橋ウレタン(メタ)アクリレートを製造する方法である。当該製造方法は、上記の第1工程〜第3工程を経て得られた一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートと、上述の2官能以上の架橋剤と、を反応させることにより、当該ウレタン(メタ)アクリレートを架橋するという、第4の工程を含むものである。
また、第4の工程では、上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートに加えて、上述のラジカル重合性基を有する他の化合物も上記2官能以上の架橋剤と反応させてもよく、特に、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。
第4の工程では、前述の定着用ウレタン(メタ)アクリレートをさらに添加してもよい。特に基材がポリ塩化ビニル(以下、単に「PVC」とも言う。)からなる場合、定着用ウレタン(メタ)アクリレートをさらに添加することが好ましい。具体的には、PVC基材を用いた場合、塗膜(後述)にPVC基材への密着性が要求される。そこで、定着用ウレタン(メタ)アクリレートを添加することにより、基材への密着性がより良好なものとなることから、当該定着用ウレタン(メタ)アクリレートの使用は好ましいといえる。
なお、PVC以外、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)からなる基材を用いる場合は、粒子が細分化されるという理由で、硬化性が一層良好になるとともにエマルションの保存安定性に一層優れるため、定着用ウレタン(メタ)アクリレートの含有量(添加量)は低い方がよく、その分だけ分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の含有量が多い方がよい。
第4の工程では、上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート及び(存在する場合は)上記分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の含有量と、上記2官能以上の架橋剤の含有量とが、質量換算で、好ましくは100:1〜100:10、より好ましくは100:5〜100:8である。含有量の比が上記範囲の下限以上であると、硬化性及び保存安定性が一層優れたものとなる。また、含有量の比が上記範囲の上限以下であると、不溶物の発生を防止でき、かつ、系内の(メタ)アクリロイル基の消失を防止して硬化性を一層良好に維持することができる。
このように、上記第4の工程は、上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート、多官能チオールモノマー等の2官能以上の架橋剤と、任意成分としての、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、定着用ウレタン(メタ)アクリレート、好ましくはチオキサントン系を含む光ラジカル重合開始剤、及び蛍光増白剤からなる群より選択される一種以上と、を混合して水を滴下し乳化させる(水分散させる)。得られた乳化液を、例えば80℃で6時間加温することにより、マイケル付加反応が促進されて、架橋ウレタン(メタ)アクリレートが得られる。
このとき、(メタ)アクリロイル基を有する化合物と架橋剤とが反応して、(メタ)アクリロイル基を有する化合物は架橋化する。換言すれば、架橋剤は、ウレタン(メタ)アクリレートとだけ反応するのではなく、(メタ)アクリロイル基を有する化合物と反応するものである。したがって、架橋ウレタン(メタ)アクリレートの構造は、一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート同士が架橋してなる化合物、一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートと内包物である(メタ)アクリロイル基含有化合物とが架橋してなる化合物、及び内包物である(メタ)アクリロイル基含有化合物同士が架橋してなる化合物といった、種々の架橋物が共存し得る。ここで、当該内包物とは、エマルションを形成してミセル構造を得た場合の、ミセル内部に存在する物を意味する。
なお、上述のように(メタ)アクリロイル基を有する化合物と架橋剤とが反応する際、(メタ)アクリロイル基を有する化合物のうち、全てが架橋化する場合と一部が架橋化し残部は架橋せず残留する場合とがある。また、上記マイケル付加反応をさらに促進するため、触媒を用いてもよい。
[その他のラジカル重合性基を有する化合物]
本実施形態のインク組成物の樹脂エマルジョンを構成するラジカル重合性基を有する化合物は、前述の自己乳化能を有する化合物以外の、その他のラジカル重合性記を有する化合物であってもよく、当該化合物は自己乳化能を有しない化合物であってもよい。自己乳化能を有しない化合物である場合は、界面活性剤などの乳化剤とともにエマルジョンを構成することが好ましい。特に、前述の自己乳化能を有するラジカル重合性記を有する化合物とともに、自己乳化能を有しないラジカル重合性基を有する化合物を含んでもよい。その他のラジカル重合性基を有する化合物のうちでも、前述の自己乳化能を有するラジカル重合性基を有する化合物とともに用いるものを、特に、ラジカル重合性基を有する他の化合物と呼ぶ。
その他のラジカル重合性記を有する化合物は、前述の樹脂エマルジョン中に内包されることが好ましい。ラジカル重合性基を有する他の化合物は、特定の波長(域)の紫外線照射により発生した後述の開始剤ラジカルの攻撃を受けて連鎖的に反応する。同時に、これらと同じ均一場に存在する、上記樹脂エマルジョンに含まれる前記ラジカル重合性基を有する化合物のラジカル重合性基も同様に連鎖的に反応する。こうして、インク組成物は被記録媒体上で硬化膜を形成する。
その他のラジカル重合性基を有する化合物におけるラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基、メルカプト基等が挙げられる。
インク組成物に含有される前記ラジカル重合性基を有する他の化合物においては、特に(メタ)アクリロイル基をその構造中に1個以上有するものが好ましく、アクリロイル基をその構造中に有するものがさらに好ましい。ラジカル重合性化合物は、分子量が数百程度の単量体から、二量体から数量体で分子量が数千程度までのオリゴマー、分子量が数万以下のポリマーを含む。
(メタ)アクリロイル基を分子内に1個有するラジカル重合性化合物としては、特に限定されないが、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を分子内に2個有するラジカル重合性基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中でも、その他のラジカル重合性基を有する化合物としては、光重合性に優れるため、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましい。
(メタ)アクリロイル基を分子内に3個以上有するラジカル重合性基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、上記した分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート(ただし、上述のウレタン(メタ)アクリレートを除く。)、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、オリゴ(メタ)アクリレート、アルキド(メタ)アクリレート、及びポリオール(メタ)アクリレート等の分子量が数千程度までのオリゴマーで(メタ)アクリロイル基を3個以上有するもの、分子中に3個以上のアクリロイル基を有する分子量が数千程度までのオリゴマー又は分子量が数万程度までのポリマー、デンドリマータイプの(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その他のラジカル重合性基を有する化合物として、ウレタン(メタ)アクリレートを用いてもよい。これにより、PVC基材上にエマルションを含む塗膜を形成する場合に、当該塗膜の定着性(密着性)がより優れたものとなる。そのため、以下、定着用ウレタン(メタ)アクリレートとも呼ぶ。上述のとおり、ラジカル重合性基を有する他の化合物は、光重合性(硬化性)の優れた化合物を含むのが好ましいため、当該化合物と併せて密着性をより良好にする定着用ウレタン(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。
なお、当該定着用ウレタン(メタ)アクリレートは、前述の一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートと異なるものである。
上記の定着用ウレタン(メタ)アクリレートは、後述するように、ジイソシアネート、芳香族骨格を有したジオール成分、及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートから構成される。
また、上記の定着用ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、1,000〜10,000であることが好ましく、3,000〜8,000であることがより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内である場合、PVC基材に対する塗膜の密着性に優れるとともに、エマルションの安定性も良好なものとなる。
(ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート)
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートは、重合性基の導入のために用いられる。具体的には、本実施形態において使用するヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基を1個以上有し、かつ、ヒドロキシル基を1個有する化合物であって、イソシアネート基とウレタン化反応することによって(メタ)アクリロイル基が定着用ウレタン(メタ)アクリレートの主鎖の両末端に導入される。少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基の導入によって硬化(光重合)が可能となり、さらに、2個以上の(メタ)アクリロイル基の導入によって硬化速度を増大させることができ、かつ、硬化物の硬度を高めることができる。
モノヒドロキシモノ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(ジイソシアネート)
ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、イソホロンジイソシアネート等の脂環式炭化水素骨格を有するジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族炭化水素骨格を有するジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族炭化水素骨格を有するジイソシアネート、並びに水素添加キシリレンジイソシアネート及び水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の水素添加芳香族炭化水素骨格を有するジイソシアネートが挙げられる。
これらの中でも、定着用ウレタン(メタ)アクリレートの硬化物が日光(紫外線)によって黄変しにくくなるため、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、及び水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートからなる群より選択される一種以上が好ましい。
上記のジイソシアネートは、一分子内及び分子間において、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(芳香族骨格を有したジオール成分)
芳香族骨格を有したジオールとしては、分子中に芳香族構造を有していれば、特に限定されず公知のものを使用できる。具体例として、ビフェニル−4,4’−ジオール、1,4−ベンゼンジオール、ビスフェノールA、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA、芳香族ポリカーボネートポリオール、及び芳香族ポリエステルポリオール等が挙げられる。
これらの中でも、PVC基材への密着性が一層良好となるため、芳香族ポリエステルポリオールが好ましい。芳香族ポリエステルポリオールの中では、イソフタレートがより好ましい。
上記のジオールは、一分子内及び分子間において、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、PVC基材への密着性及び水分散後の安定性に一層優れるため、光硬化型水性エマルションの総質量(100質量%)に対して、0.5〜4質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。
上記のラジカル重合性化合物(ラジカル重合性基を有する他の化合物)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
その他のラジカル重合性基を有する化合物は、インク組成物に優れた光重合性(硬化性)を付与するため、インク組成物の総量(100質量%)に対し、1〜60質量%含まれることが好ましく、2〜30質量%含まれることがより好ましい。
[水溶性有機溶剤]
本実施形態のインク組成物は水溶性有機溶剤を含んでもよい。インク組成物が水溶性有機溶剤を含むことにより、開放状態(室温でインクが空気に触れている状態)で放置しても、流動性と再分散性とを長時間維持できるインクジェット用インクを得ることができる。さらに、このようなインク組成物は、インクジェットプリンターを用いての印字中もしくは印字中断後の再起動時に、インクジェットノズルの目詰まりが生じにくくなるため、インクジェットノズルからの吐出安定性に優れたインク組成物が得られる。
この水溶性有機溶剤としては、この種のインク組成物に用いられるものは特に制限無く使用できる。特に、インク組成物に保水性と湿潤性を付与するため、沸点が180℃以上、好ましくは200℃以上の高沸点湿潤剤を用いることが好ましい。高沸点湿潤剤の具体例としては、特に限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、2−ピロリドン等が挙げられる。
水溶性有機溶剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前述したように、これらの水溶性有機溶剤は、インクの硬化反応を阻害してしまうため、インクの信頼性および良好な硬化性を両立するには、インク組成物の総量(100質量%)に対し、1〜30質量%含まれることが好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
[その他の添加剤]
本実施形態のインク組成物は、上記した添加剤以外の添加剤を含んでもよい。その他の添加剤として、特に限定されないが、例えば、浸透溶剤、防黴剤、防腐剤、防錆剤、酸化防止剤、増粘剤、pH調整剤、(定着)樹脂、及び界面活性剤が挙げられる。
上記インク組成物は浸透溶剤を含んでもよい。浸透溶剤を含むことにより、広範囲なメディア上での適切な濡れ広がりという有利な効果が得られる、この浸透性溶剤として、特に限定されないが、1,2−アルカンジオール、アセチレングリコール、アルキレングリコール、アルキレングリコールアルキルエーテル、及びグリコールエーテルが挙げられる。これらの中でも1,2−アルカンジオールを用いることにより印刷本紙及びプラスチックフィルム等のインクを吸収し難いか、又は吸収しない被記録媒体に印字したときに、他の浸透性溶剤を用いたときよりも記録物の凝集ムラを低減させることができる。
1,2−アルカンジオールの具体例としては、特に限定されないが、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、及び4−メチル−1,2−ペンタンジオールが挙げられる。
また、上記インク組成物は界面活性剤を含んでもよい。この界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが特に好ましい。具体例としては、BYK−331、BYK−333、BYK−375、BYK−347、BYK−348、BYK−349、BYK−UV3500、3510、3530、3570(以上、ビックケミー・ジャパン社(BYK Japan KK)製)を挙げることができる。
界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[インクジェット用インク組成物の製造方法]
本実施形態のインク組成物は、水と、色材と、ラジカル重合性基を有する樹脂エマルジョンと、無機粒子ディスパージョンと、光ラジカル重合開始剤と、その他必要な材料を混合して得ることができる。
このように、本実施形態によれば、紫外線照射による硬化性、ドット抜けや飛行曲がり等の吐出安定性、長期放置後のノズル詰まり回復性、インクの保存安定性に優れたインクジェット用インク組成物が得られる。さらにいえば、このインクジェット用インク組成物は、高速印刷及び低粘度を実現し、かつ、安全性及び被記録媒体への対応性にも優れる。
[記録物]
本発明の一実施形態は、記録物に係る。当該記録物は、上記実施形態のインク組成物が、被記録媒体に記録されたものであり、被記録媒体と、その被記録媒体に記録された上記インク組成物の硬化物とを備える。上記記録物は、耐擦過性及び耐ガス性に優れるという特徴を有する。
[インクジェット記録方法]
本発明の一実施形態は、インクジェット記録方法に係る。当該インクジェット記録方法は、上記実施形態のインク組成物を被記録媒体上に吐出する吐出工程と、上記吐出工程により吐出されたインク組成物に、活性エネルギー線を照射して、当該インク組成物を硬化する硬化工程と、を含むものである。このようにして、被記録媒体上で硬化したインク組成物により、硬化膜(塗膜)が形成される。以下、上記の各工程を詳細に説明する。
〔吐出工程〕
上記吐出工程においては、従来公知のインクジェット記録装置を用いることができる。インク組成物の吐出の際は、インク組成物の粘度を、30mPa・s以下とするのが好ましく、2〜20mPa・sとするのがより好ましい。インク組成物の粘度が上記範囲内であると、良好な吐出安定性が実現される。
〔硬化工程〕
次に、上記硬化工程においては、被記録媒体上に吐出されたインク組成物が、活性エネルギー線の照射によって硬化する。
具体的には、活性エネルギー線の照射によって、重合性化合物の重合反応が開始する。また、インク組成物に含まれる光ラジカル重合開始剤が活性エネルギー線の照射により分解して、ラジカル、酸、及び塩基などの開始種を発生し、重合性化合物の重合反応が、その開始種の機能によって促進される。このとき、インク組成物において光ラジカル重合開始剤と共に増感色素が存在すると、系中の増感色素が活性エネルギー線を吸収して励起状態となり、光ラジカル重合開始剤と接触することによって光ラジカル重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
光源(活性エネルギー線源)としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、光硬化型インクジェット用インク組成物の硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。その一方で、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV−LED)及び紫外線レーザーダイオード(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。これらの中でも、UV−LEDが好ましい。
ここで、活性エネルギー線は、第1または第2のラジカル重合性化合物の硬化に好適な発光ピーク波長を有することができる。本実施形態においては、発光ピーク波長が、好ましくは360〜420nmの範囲にある放射線を照射することにより硬化可能であるようなインク組成物を用いる。また、照射エネルギーは、500mJ/cm2以下が好ましい。
上記の場合、上記実施形態のインク組成物の組成に起因して低エネルギー且つ高速での硬化が可能となる。照射エネルギーは、照射時間に照射強度を乗じて算出される。上記実施形態のインク組成物の組成によって照射時間を短縮することができ、この場合、記録速度が増大する。他方、上記実施形態のインク組成物の組成によって照射強度を減少させることもでき、この場合、装置の小型化やコストの低下が実現する。その際の放射線照射には、UV−LEDを用いることが好ましい。このようなインク組成物は、上記波長範囲の放射線照射により分解する光ラジカル重合開始剤、及び上記波長範囲の放射線照射により重合を開始する重合性化合物を含むことにより得られる。なお、発光ピーク波長は、上記の波長範囲内に1つあってもよいし複数あってもよい。複数ある場合であっても上記発光ピーク波長を有する放射線の全体の照射エネルギーを上記の照射エネルギーとする。
〔加熱工程〕
本実施形態において、記録方法は被記録媒体を加熱させる加熱工程を備えてもよい。加熱工程により、吐出工程においてインク組成物が吐出された被記録媒体の温度を高め、インク組成物に含まれる水の蒸発を早めて記録を早く完了させることができる。加熱は、ヒーターで被記録媒体を加熱してもよいし、温風を被記録媒体にあてるものでも良い。加熱工程は吐出工程の前、同時、及び後の少なくとも何れかで行えばよく、また、硬化工程の前、同時、及び後の少なくとも何れかで行えばよい。加熱工程における被記録媒体の温度は、インクの乾燥を早め被記録媒体の熱によるダメージを少なくする点で、35〜70℃が好ましく、35〜60℃がより好ましい。
〔インクジェット記録装置〕
本発明の一実施形態は、インクジェット記録装置に係る。当該インクジェット記録装置は、上記のインクジェット記録方法により記録を行う記録装置である。図3は、本発明の一実施形態のインクジェット記録装置の一例のヘッド周辺を示す概念図である。インクジェット記録装置1は、媒体ロールQから供給されガイドロール6により案内され巻き取りロールRで巻き取られる被記録媒体Pを支持して被記録媒体を加熱するプラテン2を備えている。プラテン2にはヒーター3が備えられている。搬送ローラー4とピンチローラー5は被記録媒体Pを挟持し、図示しないモーターにより搬送ローラー4が回転し被記録媒体Pを搬送方向Yに搬送する。キャリッジ8には、被記録媒体Pにインクを吐出するヘッド10と、被記録媒体Pに照射を行う照射装置11と、取り付け部材9が設けられ、キャリッジレール7に沿って主走査方向Xに移動しながら主走査が行われる。照射装置11の位置は図3のものに限られるものではなく、ヘッド10よりも搬送方向Yの下流側であってもよい。
このように、本実施形態によれば、活性エネルギー線照射による硬化性及びドット抜けや飛行曲がり等の吐出安定性、ノズル詰まり回復性に優れたインクジェット記録方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明の実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
[使用材料]
〔ウレタンアクリレートの合成材料〕
(A:ヒドロキシル基含有アクリレート)
・重量平均分子量が400のポリプロピレングリコールモノアクリレート(ブレンマーAP400〔商品名〕、日油社製)(以下、「PPGアクリレート」という。)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(アロニックスM−305〔商品名〕、東亞合成社製)
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(アロニックスM−403〔商品名〕、東亞合成社製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとして50〜60質量%)
(B:ジイソシアネート)
・イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」という。)
(C:炭素数6〜20である非環式炭化水素又は環式炭化水素のジオール)
・1,12−ドデカンジオール
・重量平均分子量が400のポリプロピレングリコール(ユニオールD−400[商品名]、日油社製)
(D:ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル)
・重量平均分子量が400のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メトキシPEG400〔商品名〕、東邦化学工業社(TOHO Chemical Industry Co.,Ltd.)製)(以下、「メトキシPEG400」という。)
・重量平均分子量が1000のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メトキシPEG1000〔商品名〕、東邦化学工業社製)(以下、「メトキシPEG1000」という。)
・重量平均分子量が2000のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(ユニオックスM−2000〔商品名〕、日油社製)(以下、「メトキシPEG2000」ともいう。)
〔ラジカル重合性基を有する化合物〕
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(アロニックスM−403〔商品名〕、東亞合成社製;ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとして50〜60質量%)
・ポリペンタエリスリトールポリアクリレート(ビスコート802〔商品名〕、大阪有機化学工業社(OSAKA ORGANIC CHEMICAL IND.,LTD.)製)
・デンドリマーアクリレート(ビスコート1000〔商品名〕、大阪有機化学工業社(OSAKA ORGANIC CHEMICAL IND.,LTD.)製)
・10官能ウレタンアクリレート(KU−DPU〔商品名〕、荒川化学工業社製)
・定着用ウレタンアクリレート(製造方法は後述の製造例1を参照)
〔光ラジカル重合開始剤〕
・アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(DAROCUR TPO〔商品名〕、BASF社製、以下、「TPO」ともいう。)
・チオキサントン系光ラジカル重合開始剤(Speedcure DETX〔商品名〕、LAMBSON社製)(以下、単に「DETX」という。)
〔蛍光増白剤〕
・1,4−ビス(2−ベンゾオキサゾリル)ナフタレン)(HOSTALUX KCB〔商品名〕、クラリアントジャパン社(Clariant (Japan) K.K.)製)(以下、単に「KCB」という。)
〔水性ウレタンアクリレート〕
・芳香族ウレタンアクリレートディスパージョン(LR 8983 〔商品名〕BASF社製、固形分40%)
〔顔料分散液〕
・Cab−o−jet−260M(自己分散型マゼンタ顔料分散液、固形分濃度9.96質量%、Cabot Corporation製)
・Cab−o−jet−300(自己分散型ブラック顔料分散液、固形分濃度15質量%、Cabot Corporation製)
〔水溶性有機溶剤〕
・プロピレングリコール
・1,2−ヘキサンジオール
〔界面活性剤〕
・ポリエーテル変性オルガノシロキサン(BYK−348〔商品名〕、BYK社製)
・ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(BYK−333〔商品名〕、BYK社製)
〔無機粒子ディスパージョン〕
・コロイダルシリカ 粒径10〜20nm(スノーテックスC 〔商品名〕、日産化学工業株式会社製)
・コロイダルシリカ 粒径40〜60nm(スノーテックスXL 〔商品名〕、日産化学工業株式会社製)
・コロイダルシリカ 粒径70〜100nm(スノーテックスZL 〔商品名〕、日産化学工業株式会社製)
・コロイダルシリカ 粒径200nm(MP-2040〔商品名〕、日産化学工業株式会社製)
・コロイダルシリカ 粒径450nm(MP4540M〔商品名〕、日産化学工業株式会社製)
・アルミナ 粒径40nm(NANOBYK-3600〔商品名〕、BYK社製)
・酸化セリウム 粒径10nm(NANOBYK-3810〔商品名〕、BYK社製)
・酸化亜鉛 粒径20nm(NANOBYK-3820〔商品名〕、BYK社製)
[ウレタンアクリレートの構造及び合成]
〔ウレタンアクリレートの構造〕
ウレタンアクリレートは、その構造が上記一般式(1)並びに下記一般式(3)、(4)、(5)、及び、それらの何れかをアクリレート残基で架橋した架橋ウレタンアクリレート、のいずれかのウレタンアクリレートが好ましく使用可能である。下記の実施例、及び比較例においては、それらのいずれかを使用した。
1−O−(CONH−B1−NHCOO−C1−O)n−CONH−B1−NH−COO−A1 …(3)
Figure 2013199602
1−O−CONH−B1−NH−COO−D3 …(5)
ここで、A1は1個以上のアクリロイル基を有するヒドロキシル基含有アクリレート由来の構造を表し、B1はジイソシアネート由来の構造を表し、C2はジオール由来の構造を表し、D2及びD3は上記一般式(2)で表されるもののうち片末端メチル基封鎖ポリ(オキシエチレン)グリコール(以下、「ポリオキシエチレングリコールモノメチルエーテル」ともいう。)由来の構造を表す。
(合成例1:ウレタンアクリレート(a)の合成)
攪拌装置、冷却管、滴下ロート、及び空気導入管を備えた反応容器に、444.6質量部のIPDI及び202.3質量部の1,12−ドデカンジオールを仕込み、攪拌を行いながら、0.26質量部のオクチル酸スズを加え、反応容器内の温度を90℃まで昇温し、1.5時間反応させた。その後、700.0質量部のメトキシPEG1000及び0.54質量部のオクチル酸スズを加え、さらに1.5時間反応させた。次いで、当該反応容器に、1300.0質量部のジペンタエリスリトールペンタアクリレート、1.32質量部のメトキノン、及び1.06質量部のオクチル酸スズを仕込み、混合し、空気のバブリング下で反応容器内の温度を85℃まで昇温し、3時間反応させた後、冷却して、上記一般式(1)で表される両親媒性ウレタンアクリレート(a)を得た。このウレタンアクリレート(a)の重量平均分子量は5,600であった。
(合成例2:ウレタンアクリレート(b)の合成)
合成例1と同様の反応容器に、578.0質量部のHMDIの3量体(コロネートHXR、日本ポリウレタン社製)、200.0質量部のメトキシPEG400、及び200.0質量部のメトキシPEG1000を仕込み、攪拌を行いながら、0.39質量部のオクチル酸スズを加え、反応容器内の温度を75℃まで昇温し、1.5時間反応させた。次いで、当該反応容器に、1051.6質量部のペンタエリスリトールトリアクリレート、1.01質量部のメトキノン、及び0.81質量部のオクチル酸スズを仕込み、混合し、空気のバブリング下で反応容器内の温度を80℃まで昇温し、2時間反応させた後、冷却して、ウレタンアクリレート(b)を得た。なお、このウレタンアクリレート(b)は、片末端がアクリロイル基で、かつ、3官能のイソシアネートを用いたウレタンアクリレートであり、上記一般式(4)で表される。このウレタンアクリレート(b)の重量平均分子量は7,400であった。
(合成例3 合成例4:ウレタンアクリレート(c)の合成)
合成例1と同様の反応容器に、444.6質量部のIPDI(2モル)と400.0質量部の重量平均分子量が400のポリプロピレングリコールを仕込み、攪拌を行いながら、0.34質量部のオクチル酸スズを加え、反応容器内の温度を90℃まで昇温し、1.5時間反応させた後、1400.0質量部のメトキシPEG2000及び0.90質量部のオクチル酸スズを加え、さらに1.5時間反応させた。次いで、当該反応容器に、1300質量部のジペンタエリスリトールペンタアクリレート、1.77質量部のメトキノン及び2.13質量部のオクチル酸スズを仕込み、混合し、空気のバブリング下で反応容器内の温度を85℃まで昇温し、3時間反応させた後、冷却して、上記一般式(1)で表される両親媒性ウレタンアクリレート(c)を得た。このウレタンアクリレート(c)の重量平均分子量は9,000であった。
(製造例1:定着用ウレタンアクリレートの合成)
合成例1と同様の反応容器に、444.6質量部のIPDI(2モル)と900.0質量部の芳香族ポリエステルジオール(重量平均分子量900、1モル、YG−108[商品名]、ADEKA社製)を仕込み、攪拌を行いながら、0.27質量部のオクチル酸スズを加え、反応容器内の温度を85℃まで昇温し、2時間反応させた後、当該反応容器に、232.3質量部の2−ヒドロキシエチルアクリレート(2モル)、0.79質量部のメトキノン及び0.63質量部のオクチル酸スズを仕込み、混合し、空気のバブリング下で反応容器内の温度を85℃まで昇温し、2時間反応させた後、冷却して、定着用ウレタンアクリレートを得た。この定着用ウレタンアクリレートの重量平均分子量は5,000であった。
(合成例1:光硬化型水性エマルション(a‐1)の調製)
合成例1と同様の反応容器に、上記で得られた両親媒性ウレタンアクリレート(a)27.5質量部、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート9.2質量部、及び光ラジカル重合開始剤(TPO)3.3質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら60質量部の脱イオン水を加え、40℃で1時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(a)、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート、及び光ラジカル重合開始剤(TPO))が40%の光硬化型水性エマルション(a‐1)を得た。なお、組成表を下記表1に示す。
(合成例2:光硬化型水性エマルション(b‐1)の調製)
合成例1と同様の反応容器に、上記で得られたウレタンアクリレート(b)27.5質量部、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート9.2質量部、及び光ラジカル重合開始剤(TPO)3.3質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら60質量部の脱イオン水を加え、40℃で1時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(b)、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート、及び光ラジカル重合開始剤(TPO))が40%の光硬化型水性エマルション(b‐1)を得た。なお、組成表を下記表1に示す。
(合成例3:光硬化型水性エマルション(c−1)の調製)
合成例1と同様の反応容器に、上記で得られた両親媒性ウレタンアクリレート(c)23.3質量部、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート8.3質量部、定着用ウレタンアクリレート1.7質量部、光ラジカル重合開始剤(TPO)5.0質量部、光ラジカル重合開始剤(DETX)1.7質量部、蛍光増白剤(KCB)0.07質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら60質量部の脱イオン水を加え、50℃で1時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(c)、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート、定着用ウレタンアクリレート、光ラジカル重合開始剤(TPO、DETX)、蛍光増白剤(KCB))が40%の光硬化型水性エマルション(c‐1)を得た。なお、組成表を下記表1に示す。
(合成例4:光硬化型水性エマルション(c−2)の調製)
合成例1と同様の反応容器に、上記で得られた両親媒性ウレタンアクリレート(c)21.6質量部、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート7.7質量部、定着用ウレタンアクリレート1.5質量部、光ラジカル重合開始剤(TPO)5.0質量部、光ラジカル重合開始剤(DETX)1.7質量部を仕込み、攪拌を行いながら容器内の温度を80℃に昇温し、2時間保温した。次に、容器内の温度を50℃まで冷却した後、攪拌しながら2.5質量部の架橋剤(PEMP)を加え、そのまま15分間攪拌を続けた。その後、60質量部の脱イオン水を加え、50℃で1時間保温した後、容器内の温度を80℃に昇温し、6時間保温することにより、不揮発分(両親媒性ウレタンアクリレート(c)、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート、定着用ウレタンアクリレート、光ラジカル重合開始剤(TPO、DETX)、及び架橋剤(PEMP))40%の光硬化型水性エマルション(c−2)を得た。このエマルションをGPC測定したところ、重量平均分子量18,000の架橋ウレタン(メタ)アクリレートが確認された。なお、組成表を下記表1に示す。
Figure 2013199602
[実施例1〜11比較例1〜4]
上記の材料、及び上記合成例1〜4で得られた光硬化型水性エマルションを用いて、下記表2〜3に示す組成(質量部)に従い、各インク組成物を調製した。ここで、表中の「%」は質量%を意味する。インク組成物における樹脂エマルジョンの平均粒径は何れのインク組成物も250nmであった。
Figure 2013199602
Figure 2013199602
[測定項目・評価項目]
〔吐出安定性〕
未吐出期間直後に印字したインクはドット抜け及び飛び散り等が起こるが、その後吐出するインク量が増えると正常な位置に印字できるようになる。インクジェットインクプリンター PX‐G930(セイコーエプソン社製商品名)にそれぞれのインクを充填し、35℃の恒温槽中で60秒間の未吐出期間の後に印字した時に、正常な位置に印字できるまでに必要なドット数を吐出安定性とし、その数が少ないほど吐出安定性が良好であるとした。以下に評価基準を示す。評価結果を表4〜5に示す。
AA:正常な位置に印字できるまでに必要なドット数10未満。
A:正常な位置に印字できるまでに必要なドット数が10以上、20未満。
B:正常な位置に印字できるまでに必要なドット数が20以上、30未満。
C:正常な位置に印字できるまでに必要なドット数が30以上。
〔インクの保存安定性〕
インクを60℃1週間静置して、粘度の変化率によって以下の評価基準によって分けて評価した。評価結果を表4〜5に示す。
AA:粘度の変化率が5%以内。
A:粘度の変化率が5%より大きく、10%以下。
B:粘度の変化率が10%より大きく、20%以下。
C:粘度の変化率が20%より大きい。
〔インクの硬化性〕
綿棒加重タック性評価を行った。具体的には各メディアにバーコーターで塗布厚が20.61μmになるように調製したインクを塗布し50℃で3分間乾燥した後に紫外線を照射した。その際、紫外線ランプはLEDを用いた。その後、塗膜表面を綿棒で擦り、着色のない照射エネルギーを硬化エネルギーとして評価した。評価基準は以下のとおりである。評価結果を表4〜5に示す。
AA:Y,M,C,Bkインクの硬化エネルギーがPETメディアで100mJ/cm2以下で、PVCメディアで300mJ/cm2以下。
A:Y,M,C,Bkインクの硬化エネルギーがPETメディアで100mJ/cm2より大きく300mJ/cm2以下で、PVCメディアで300mJ/cm2より大きく1000mJ/cm2以下。
B:Y,M,C,Bkインクの硬化エネルギーがPETメディアで300mJ/cm2より大きく500mJ/cm2以下で、PVCメディアで1000mJ/cm2より大きい。
C:Y,M,C,Bkインクの硬化エネルギーがPETメディアで500mJ/cm2より大きく、PVCメディアで1000mJ/cm2より大きい。
−:硬化しない。
Figure 2013199602
Figure 2013199602
表4〜5に示すように、実施例1〜14のインク組成は、比較例1のインク組成物と比較して、インクの吐出安定性がいずれも優れていることがわかった。また、実施例1〜3、6〜9、11は吐出安定性、保存安定性及び硬化性がいずれも特に優れていることがわかった。なお、比較例2は樹脂エマルジョンを含まない例であるが、無機粒子ディスパージョンを含まないにも関わらず吐出安定性は良かったが硬化性が劣ることわかった。比較例3も硬化性が劣ることがわかった。なお、比較例2、3は、インク組成物を調整する段階で、インク組成物100質量部に対して光ラジカル重合開始剤(TPO)を1質量部、添加してみたが、光ラジカル重合開始剤が溶解しなかったため、光ラジカル重合開始剤を用いないものとした。なお、吐出安定性試験における恒温槽中の温度を20℃としたこと以外は比較例1と同様にして吐出安定性試験を行ったところ、吐出安定性がBとなったことから、恒温槽の温度が高いほうが、吐出安定性が悪くなることが分かった。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

Claims (13)

  1. 水と、色材と、ラジカル重合性基を有する化合物からなる樹脂エマルジョンと、無機粒子ディスパージョンと、光ラジカル重合開始剤と、を含むインクジェット用インク組成物。
  2. 前記ラジカル重合性基を有する化合物のインク組成物中における濃度が6質量%以上20質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
  3. 前記無機粒子ディスパージョンが、アルミナ、酸化亜鉛、酸化セリウム、コロイダルシリカの少なくともいずれかであることを特徴とする、請求項1あるいは2に記載のインクジェット用インク組成物。
  4. 前記無機粒子ディスパージョンのインク中固形分濃度が0.5質量%以上、3質量%以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット用インク組成物。
  5. 前記無機粒子ディスパージョンの平均粒子粒径(D50)が、40nm以上500nm以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット用インク組成物。
  6. 前記ラジカル重合性基を有する化合物が自己乳化能を有する化合物であり、前記樹脂エマルジョンが、自己乳化樹脂エマルジョンであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェット用インク組成物。
  7. さらに前記化合物以外にラジカル重合性基を有する他の化合物を含み、当該他の化合物が、分子内に3個以上の重合性官能基を有する化合物であることを特徴とする、請求項6に記載のインクジェット用インク組成物。
  8. 前記ラジカル重合性基を有する化合物は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基、メルカプト基の少なくともいずれかであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインクジェット用インク組成物。
  9. さらに水溶性有機溶剤を含み、前記水溶性有機溶剤が極性溶媒及び浸透性溶剤のうち少なくともいずれかを含有する有機溶剤であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のインクジェット用インク組成物。
  10. 前記光ラジカル重合開始剤が、疎水性光重合開始剤であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のインクジェット用インク組成物。
  11. 前記化合物以外にラジカル重合性基を有する他の化合物を含み、当該化合物と、前記光ラジカル重合性開始剤と、を前記樹脂エマルジョン中に内包していることを特徴とする、請求項6〜10のいずれか一項に記載のインクジェット用インク組成物。
  12. 請求項1〜11のいずれか一項に記載のインクジェット用インク組成物であって、当該インク組成物を吐出する被記録媒体を加熱する加熱工程を備える記録方法により記録を行うものである、インクジェット用インク組成物。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載のインクジェット用インク組成物を用いたインクジェット記録方法。
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