JP2013199586A - 帯電防止フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】 低湿度下での導電性、耐水性、耐溶剤性、透明性等が高度に優れ、かつ生産性の高い帯電防止フィルムを提供する。
【解決手段】 下記の成分(A)および(B)を含有する塗布液をポリエステルフィルムの片面に塗布し、乾燥してなる塗布層を有することを特徴とするポリエステルフィルム。(A):主たる繰り返し単位がアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸であり導電性を有するポリアニリン化合物
(B):水性ポリウレタン樹脂
【選択図】 なし
【解決手段】 下記の成分(A)および(B)を含有する塗布液をポリエステルフィルムの片面に塗布し、乾燥してなる塗布層を有することを特徴とするポリエステルフィルム。(A):主たる繰り返し単位がアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸であり導電性を有するポリアニリン化合物
(B):水性ポリウレタン樹脂
【選択図】 なし
Description
本発明は、帯電防止フィルムに関するものであり、さらに詳しくは、低湿度下での導電性、耐水性、耐溶剤性、透明性に優れ、かつ生産性の高い帯電防止フィルムに関するものであり、LCD周辺部材、感熱リボン、受像紙、刷版、キャリアテープ、トレー、マガジン、半導体素子包装用等に使用するのに適した帯電防止フィルムに関するものである。
ポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れ、コストパフォーマンスにも優れるため、各種の用途において基材として使用されているが、ポリエステルフィルムは摩擦、粘着層剥離等の際に帯電しやすく、異物や塵埃の付着、静電気放電障害等の問題が発生する。
一般的に工業用フィルムや包装材料等の帯電防止剤として、界面活性剤やイオン性ポリマーが用いられるが、これらはイオン導電性で帯電防止能が周囲の湿気や水分の影響を受けやすい。特に低湿度下では導電性が低下し所望の帯電防止能が得られなくなる等の欠点がある。
電子導電性化合物は、上記イオン導電性化合物に比べるとより優れた帯電防止性を発現することも可能であり、湿度による影響も受けにくい。電子導電性化合物としては、種々の電子導電性有機化合物、中でもポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリイソチアナフテン、ポリチオフェンなどの導電性高分子化合物が提案されている。
アルコキシ置換ポリアニリンスルホン酸は、優れた導電性、分散性を持ち、工業的に比較的安価に入手できるため導電材料として好適であるが、着色が強く、単独では塗膜とした場合強度が弱く耐水性も劣る。このことに関して、スルホン酸基含有共重合ポリエステル樹脂との併用(特許文献1)、アクリル変性樹脂との併用(特許文献2)等が提案されている。
しかしながら従来の技術では、導電性、導電性と着色のバランス等において必ずしも十分とは言えなかった。また延伸ポリエステルフィルムの場合、フィルムの製膜工程中で塗布を行ういわゆるインラインコーティング法によって塗膜を設けることが生産性、経済性で有利であるが、この場合塗布層がフィルムと共に延伸されることが一般的であるため、このことに対応した塗膜設計が求められる。アルコキシ置換ポリアニリンスルホン酸を含有する塗膜を延伸した場合、導電性の低下や、塗膜の白化が起こりやすく、導電性と透明性の両立が困難である。このインラインコート適性も課題として残されている。
本発明は、上記実状に鑑みなされたものであって、その解決課題は、低湿度下での導電性、耐水性、耐溶剤性、透明性等が高度に優れ、かつ生産性の高い帯電防止フィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記の課題に関して鋭意検討を重ねた結果、特定の種類の化合物の組み合わせからなる塗布層を設けることにより、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、下記の成分(A)および(B)を含有する塗布液をポリエステルフィルムの片面に塗布し、乾燥してなる塗布層を有することを特徴とするポリエステルフィルムに存する。
(A):主たる繰り返し単位がアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸であり導電性を有するポリアニリン化合物
(B):水性ポリウレタン樹脂
(A):主たる繰り返し単位がアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸であり導電性を有するポリアニリン化合物
(B):水性ポリウレタン樹脂
本発明によれば、低湿度下での導電性、耐水性、耐溶剤性、透明性に優れかつ生産性の高い帯電防止フィルムを提供することができる。
本発明の塗布フィルムの基材フィルムは、ポリエステルからなるものである。かかるポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸のようなジカルボン酸またはそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのようなグリコールとを溶融重縮合させて製造されるポリエステルである。これらの酸成分とグリコール成分とからなるポリエステルは、通常行われている方法を任意に使用して製造することができる。
例えば、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとの間でエステル交換反応をさせるか、あるいは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接エステル化させるかして、実質的に芳香族ジカルボン酸のビスグリコールエステル、またはその低重合体を形成させ、次いでこれを減圧下、加熱して重縮合させる方法が採用される。その目的に応じ、脂肪族ジカルボン酸を共重合しても構わない。
例えば、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとの間でエステル交換反応をさせるか、あるいは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接エステル化させるかして、実質的に芳香族ジカルボン酸のビスグリコールエステル、またはその低重合体を形成させ、次いでこれを減圧下、加熱して重縮合させる方法が採用される。その目的に応じ、脂肪族ジカルボン酸を共重合しても構わない。
本発明のポリエステルとしては、代表的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられるが、その他に上記の酸成分やグリコール成分を共重合したポリエステルであってもよく、必要に応じて他の成分や添加剤を含有していてもよい。
本発明におけるポリエステルフィルムには、フィルムの走行性を確保したり、キズが入ることを防いだりする等の目的で粒子を含有させることができる。このような粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、さらに、ポリエステル製造工程時の析出粒子等を用いることができる。
用いる粒子の粒径や含有量はフィルムの用途や目的に応じて選択されるが、平均粒径に関しては、通常は0.01〜5.0μmの範囲である。平均粒径が5.0μmを超えるとフィルムの表面粗度が粗くなりすぎたり、粒子がフィルム表面から脱落しやすくなったりする傾向がある。平均粒径が0.01μm未満では、表面粗度が小さすぎて、十分な易滑性が得られない場合がある。粒子含有量については、ポリエステルに対し、通常0.0003〜1.0重量%、好ましくは0.0005〜0.5重量%の範囲である。粒子含有量が0.0003重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、1.0重量%を超えて添加する場合には、フィルムの透明性が不十分な場合がある。また、適宜、各種安定剤、潤滑剤、帯電防止剤等をフィルム中に加えることもできる。
本発明のフィルムの製膜方法としては、通常知られている製膜法を採用でき、特に制限はない。例えば、まず溶融押出によって得られたシートを、ロール延伸法により、70〜145℃で2〜6倍に延伸して、一軸延伸ポリエステルフィルムを得、次いで、テンター内で先の延伸方向とは直角方向に80〜160℃で2〜6倍に延伸し、さらに、150〜250℃で1〜600秒間熱処理を行うことでフィルムが得られる。さらにこの際、熱処理のゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。
本発明におけるポリエステルフィルムは、単層または多層構造である。多層構造の場合は、表層と内層、あるいは両表層を目的に応じ異なるポリエステルとすることができる。 本発明における帯電防止性塗布層とは、具体的には、塗布層の表面固有抵抗が低く、電荷を漏洩する機構を持つ塗布層のことである。塗布層の表面固有抵抗が低いほど、帯電防止性が良好であるといえる。表面固有抵抗が1×1012Ω以下であれば帯電防止性を持つと言え、1×1010Ω以下であれば、良好な帯電防止性であると言える。
本発明においては帯電防止性塗布層を設けるための塗布液に、主たる繰り返し単位がアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸であり導電性を有するポリアニリン化合物(A)を含有する。
本発明においては帯電防止性塗布層を設けるための塗布液に、主たる繰り返し単位がアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸であり導電性を有するポリアニリン化合物(A)を含有する。
アルコキシ基は低級アルコキシ基であれば特に制限はないがメトキシ基がコスト面、性能面で好ましい。
本発明では、ポリアニリン骨格中の芳香環の実質的に全てにスルホン酸基とアルコキシ基が含有されることが好ましいが、どちらかあるいは両方の置換基を欠く物、別の置換基を有するものが含まれることに特に制限はない。
主たる繰り返し単位がアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸であり導電性を有するポリアニリン化合物(A)の数平均分子量は特に制限はないが、好ましくは5000〜20000である。分子量が高い程導電ネットワークを構築するのに有利だが、高すぎると粘度が上がり、塗工が困難になる。
本発明で用いる主たる繰り返し単位がアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸であり導電性を有するポリアニリン化合物(A)は一般に酸性が強いので塩基性化合物でpHを調整して用いることも可能であり好ましい。この場合の塩基性化合物としてはアンモニア、有機アミン類が好ましい物として例示でき、アンモニアが特に好ましい。
本発明における水性ポリウレタン樹脂(B)とは、ウレタン結合を分子内に有する高分子化合物で、水分散性または水溶性のものである。水分散性または水溶性を付与させるためには、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホニル基、リン酸基、エーテル基等の親水性基をウレタン樹脂に導入することが重要である。前記の親水性基のなかでも、塗膜物性および密着性の点からカルボン酸基またはスルホン酸基が好ましい。
本発明で用いる塗布層の構成成分であるウレタン樹脂を作成する方法の一つに、水酸基とイソシアネートとの反応によるものがある。原料として用いられる水酸基としては、ポリオールが好適に用いられ、例えば、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネート系ポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。
ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
ポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)またはそれらの酸無水物と多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等)の反応から得られるものが挙げられる。
ポリカーボネート系ポリオール類としては、多価アルコール類とジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等とから、脱アルコール反応によって得られるポリカーボネートジオール、例えば、ポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
これらの中でもポリエステルポリオールが好ましく、芳香環を有するポリエステルポリオールがさらに好ましい。
ウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。これらの中では芳香族ポリイソシアネートが好ましい。
ウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用してもよく、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基またはアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。また、アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1 ,8−オクタンジアミン、1 ,9−ノナンジアミン、1 ,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロビリチンシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1 ,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
また、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等を用いて、ウレタン骨格にカルボキシル基を導入し、後に塩基性化合物で中和してウレタンを親水化する手法も良く用いられる。
本発明における塗膜中の化合物(A)の重量は、1mg/m2以上であることが好ましく、3mg/m2以上であることがさらに好ましい。化合物(A)の量がこれより少ないと、帯電防止性が不十分となることが多い。一方、多すぎると着色が強くなるので50mg/m2以下が好ましく、25mg/m2以下がさらに好ましい。
塗膜中に占める化合物(A)の含有割合は、得られる導電層の導電性および透明性から、乾燥後の導電層中、1〜30重量%、好ましくは2〜15重量%、より好ましくは3〜10重量%である。含有量が高い程塗膜の導電率は上がるが、高すぎると透明性が損なわれる傾向が見られた。
最終的な被膜としてみたときの帯電防止性塗布層の塗工量は、通常0.005〜1.5g/m2、好ましくは0.01〜1.0g/m2、さらに好ましくは0.02〜0.5g/m2である。塗工量が0.005g/m2未満の場合は十分な性能が得られない恐れがあり、1.5g/m2を超える塗布層は、外観・透明性の悪化や、フィルムのブロッキング、コストアップを招きやすい。
本発明で使用する塗布液中には、フィルムへの塗布性を改良するため、界面活性剤を含むことができる。
本発明で使用する塗布液中には、必要に応じて、架橋反応性化合物を含んでいてもよい。架橋反応性化合物は主に、他の樹脂や化合物に含まれる官能基との架橋反応や、自己架橋によって、塗布層の凝集性、表面硬度、耐擦傷性、耐溶剤性、耐水性を改良することができる。使用することのできる架橋反応性化合物としては、メラミン系、ベンゾグアナミン系、尿素系などのアミノ樹脂や、イソシアネート系、オキサゾリン系、エポキシ系、グリオキサール系などが好適に用いられる。
さらに必要に応じて、水溶性または水分散性のバインダー樹脂の1種もしくは2種以上を併用することができる。かかるバインダー樹脂としては、例えば、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂等が挙げられる。これらは、それぞれの骨格構造が共重合等により実質的に複合構造を有していてもよい。複合構造を持つバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂グラフトポリエステル、アクリル樹脂グラフトポリウレタン、ビニル樹脂グラフトポリエステル、ビニル樹脂グラフトポリウレタン等が挙げられる。これらの樹脂を含有することで、得られる塗布層の強度や基材フィルムへの密着性を向上することができる。
本発明で使用する塗布液は、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、離型剤、有機粒子、無機粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
本発明における塗布液は、取扱い上、作業環境上、また塗布液組成物の安定性の面から、水溶液または水分散液であることが望ましいが、塗料の生産性、塗工性、乾燥機能力等のこと情から有機溶剤を含有することに特段の制限はない。
本発明による帯電防止性塗布層は、特定の化合物を含有する塗布液をフィルムに塗布することにより設けられる。その際、成膜したポリエステルフィルムに後加工で塗布を行ういわゆるオフラインコーティング、フィルム製膜中に塗布を行うインラインコーティングの何れも可能であるが、インラインコーティングにより設けることが経済性、生産性の観点から好ましい。
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押出ししてから二軸延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸シート、その後に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルムの何れかにコーティングする。これらの中では、一軸延伸フィルムにコーティングした後にテンターにおいて乾燥および横方向への延伸を行い、さらに基材フィルムと共に熱処理をする方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と塗布層塗設を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、コーティング後に延伸を行うために薄膜コーティングが容易であり、コーティング後に施される熱処理が、他のコーティング方法では達成することが難しいほどの高温とすることが可能であるために塗布層の造膜性が向上し、また塗布層とポリエステルフィルムが強固に密着する。
ポリエステルフィルムに塗布液を塗布する方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような塗布技術を用いることができる。具体的には、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、カレンダコーター、押出コーター、バーコーター等のような技術が挙げられる。
なお、塗布剤のフィルムへの塗布性、接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理やコロナ放電処理、プラズマ処理等を施してもよい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法やサンプルの処理方法は下記のとおりである。
(1)塗布層の透明性(塗布層によるヘーズ上昇)、全光線透過率
JIS−K7136に準じて、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−2000によりフィルムのヘーズおよび全光線透過率を測定した。塗布層を設けていないフィルムと塗布層を設けたフィルムのヘーズの差を計算し、塗布層を設けることによるヘーズの上昇を求め、塗布層の透明性として評価した。かかるヘーズの上昇が小さいほど、塗布層の透明性が優れるといえる。特に、本方法においてヘーズの差が0.5%以下であれば透明性に優れ、0.2%以下であれば特に優れているといえる。一方、0.5%を超える場合は透明性がやや劣り、1.0%を超える場合は透明性に劣るといえる。
JIS−K7136に準じて、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−2000によりフィルムのヘーズおよび全光線透過率を測定した。塗布層を設けていないフィルムと塗布層を設けたフィルムのヘーズの差を計算し、塗布層を設けることによるヘーズの上昇を求め、塗布層の透明性として評価した。かかるヘーズの上昇が小さいほど、塗布層の透明性が優れるといえる。特に、本方法においてヘーズの差が0.5%以下であれば透明性に優れ、0.2%以下であれば特に優れているといえる。一方、0.5%を超える場合は透明性がやや劣り、1.0%を超える場合は透明性に劣るといえる。
(2)表面固有抵抗
日本ヒューレット・パッカード社製高抵抗測定器:HP4339Bおよび測定電極:HP16008Bを使用し、23℃,50%RHの測定雰囲気でサンプルを30分間調湿後、表面固有抵抗値を測定した。
日本ヒューレット・パッカード社製高抵抗測定器:HP4339Bおよび測定電極:HP16008Bを使用し、23℃,50%RHの測定雰囲気でサンプルを30分間調湿後、表面固有抵抗値を測定した。
(3)耐水性、耐溶剤性
太平理化工業社ラビングテスター専用治具(5cm×7cm,500g)にシート状コットン(旭化成社製ベンコット)を巻き付け、そこに水または溶剤を2ml染みこませて、帯電防止性塗布層の表面を5往復(15cm長の範囲)拭いてサンプルを調整した。その後、擦った箇所を目視で観察し、下記基準にて評価した。なお溶剤としては、エタノールとトルエンを用いた。
○:擦った箇所に外観の変化が認められない
△:擦った箇所に僅かに塗膜の脱落が見られる
×:擦った箇所に明らかに塗膜の脱落が見られる
太平理化工業社ラビングテスター専用治具(5cm×7cm,500g)にシート状コットン(旭化成社製ベンコット)を巻き付け、そこに水または溶剤を2ml染みこませて、帯電防止性塗布層の表面を5往復(15cm長の範囲)拭いてサンプルを調整した。その後、擦った箇所を目視で観察し、下記基準にて評価した。なお溶剤としては、エタノールとトルエンを用いた。
○:擦った箇所に外観の変化が認められない
△:擦った箇所に僅かに塗膜の脱落が見られる
×:擦った箇所に明らかに塗膜の脱落が見られる
実施例、比較例中で使用したポリエステル原料は次のとおりである。
(ポリエステル1):実質的に粒子を含有しない、極限粘度0.66のポリエチレンテレフタレート
(ポリエステル2):平均粒径3.2μmの非晶質シリカを0.2重量%含有する、極限粘度0.66のポリエチレンテレフタレート
また、塗布組成物としては以下を用いた。
(A1):メトキシ基置換ポリアニリンスルホン酸水溶液(三菱レイヨン株式会社製「aquaPASS−01X」:濃度5重量%)を濃アンモニア水でpH=5に調整したもの(B1):テレフタル酸282重量部、イソフタル酸282重量部、エチレングリコール62重量部、およびネオペンチルグリコール250重量部を成分とするポリエステルポリオールを(B1a)としたとき、(B1a)876重量部、トリレンジイソシアネート244重量部、エチレングリコール81重量部、およびジメチロールプロピオン酸67重量部を構成成分としたポリエステルポリウレタンをアンモニアで中和して水分散させたもの物(濃度20%、25℃での粘度50mPa・s)
(ポリエステル1):実質的に粒子を含有しない、極限粘度0.66のポリエチレンテレフタレート
(ポリエステル2):平均粒径3.2μmの非晶質シリカを0.2重量%含有する、極限粘度0.66のポリエチレンテレフタレート
また、塗布組成物としては以下を用いた。
(A1):メトキシ基置換ポリアニリンスルホン酸水溶液(三菱レイヨン株式会社製「aquaPASS−01X」:濃度5重量%)を濃アンモニア水でpH=5に調整したもの(B1):テレフタル酸282重量部、イソフタル酸282重量部、エチレングリコール62重量部、およびネオペンチルグリコール250重量部を成分とするポリエステルポリオールを(B1a)としたとき、(B1a)876重量部、トリレンジイソシアネート244重量部、エチレングリコール81重量部、およびジメチロールプロピオン酸67重量部を構成成分としたポリエステルポリウレタンをアンモニアで中和して水分散させたもの物(濃度20%、25℃での粘度50mPa・s)
(B2):テレフタル酸315重量部、イソフタル酸299重量部、エチレングリコール74重量部、およびジエチレングリコール265重量部を成分とするポリエステルポリオールを(B2a)としたとき、(B2a)953重量部、イソホロンジイソシアネート267重量部、エチレングリコール56重量部、およびジメチロールプロピオン酸67重量部を構成成分としたポリエステルポリウレタンをアンモニアで中和して水分散させたもの(濃度23%、25℃での粘度30mPa・s)
(C1):下記式に示す、側鎖にポリエチレンオキサイドを有する構造のノニオン性界面活性剤
(C1):下記式に示す、側鎖にポリエチレンオキサイドを有する構造のノニオン性界面活性剤
上記式中のmおよびnは、エチレンオキサイドの付加モル数を示す整数であり、ここではm+n=10となる。
(D1):水性アクリル樹脂、三菱レイヨン株式会社製MX−1845
(E1):テレフタル酸/イソフタル酸/スルホイソフタル酸/エチレングリコール/1,4−ブタンジオールがモル比で55/40/5/65/35である、水分散性スルホン酸基含有共重合ポリエステル樹脂
(D1):水性アクリル樹脂、三菱レイヨン株式会社製MX−1845
(E1):テレフタル酸/イソフタル酸/スルホイソフタル酸/エチレングリコール/1,4−ブタンジオールがモル比で55/40/5/65/35である、水分散性スルホン酸基含有共重合ポリエステル樹脂
比較例1:
ポリエステル1とポリエステル2とを重量比92/8でブレンドし、十分に乾燥した後、280〜300℃に加熱溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電密着法を用いて表面温度40〜50℃の鏡面冷却ドラムに密着させながら冷却固化させて、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを作成した。このフィルムを85℃の加熱ロール群を通過させながら長手方向に3.7倍延伸し、一軸配向フィルムとした。この一軸配向フィルムをテンター延伸機に導き、100℃で幅方向に3.6倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施し、フィルム厚みが50μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。このフィルムの特性を、下記表2に示す。
なお、比較例1においては帯電防止性塗布層を設けていないため、表2に示す結果は、ポリエステルフィルム表面について直接評価を行ったものである。
ポリエステル1とポリエステル2とを重量比92/8でブレンドし、十分に乾燥した後、280〜300℃に加熱溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電密着法を用いて表面温度40〜50℃の鏡面冷却ドラムに密着させながら冷却固化させて、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを作成した。このフィルムを85℃の加熱ロール群を通過させながら長手方向に3.7倍延伸し、一軸配向フィルムとした。この一軸配向フィルムをテンター延伸機に導き、100℃で幅方向に3.6倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施し、フィルム厚みが50μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。このフィルムの特性を、下記表2に示す。
なお、比較例1においては帯電防止性塗布層を設けていないため、表2に示す結果は、ポリエステルフィルム表面について直接評価を行ったものである。
実施例1:
上記比較例1と同様の工程の中で、長手方向への延伸後の一軸配向フィルムの片面に、下記表1に示すとおりの塗布組成物を塗布した。次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、その熱を利用して塗布組成物の乾燥を行い、以降は比較例1と同様にし、フィルム厚みが50μmの基材フィルムの上に0.1g/m2の量の帯電防止性塗布層を積層した塗布フィルムを得た。塗工量は固形分濃度、塗工液消費量、横延伸倍率等から計算した。このフィルムの特性を、表2に示す。なお、塗布層透明性を評価する際、塗布層を設けていないフィルムのヘーズ値としては、比較例1のフィルムヘーズ0.9%を用いた(以下の実施例、比較例においても同様)。
上記比較例1と同様の工程の中で、長手方向への延伸後の一軸配向フィルムの片面に、下記表1に示すとおりの塗布組成物を塗布した。次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、その熱を利用して塗布組成物の乾燥を行い、以降は比較例1と同様にし、フィルム厚みが50μmの基材フィルムの上に0.1g/m2の量の帯電防止性塗布層を積層した塗布フィルムを得た。塗工量は固形分濃度、塗工液消費量、横延伸倍率等から計算した。このフィルムの特性を、表2に示す。なお、塗布層透明性を評価する際、塗布層を設けていないフィルムのヘーズ値としては、比較例1のフィルムヘーズ0.9%を用いた(以下の実施例、比較例においても同様)。
実施例2〜5:
実施例1と同様の工程において、塗布液を表1に示すように変更し塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。
実施例1と同様の工程において、塗布液を表1に示すように変更し塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。
比較例2:
実施例1と同様の工程において、塗布液を表1に示すように変更し、フィルム厚みが50μmの基材フィルムの上に0.04g/m2の量の帯電防止性塗布層を積層した塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。
実施例1と同様の工程において、塗布液を表1に示すように変更し、フィルム厚みが50μmの基材フィルムの上に0.04g/m2の量の帯電防止性塗布層を積層した塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。
比較例3〜4:
実施例1と同様の工程において、塗布液を表1に示すように変更し、フィルム厚みが50μmの基材フィルムの上に0.1g/m2の量の帯電防止性塗布層を積層した塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。
実施例1と同様の工程において、塗布液を表1に示すように変更し、フィルム厚みが50μmの基材フィルムの上に0.1g/m2の量の帯電防止性塗布層を積層した塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。
表1中の塗布量は、最終的に得られた塗布フィルムの面積あたりの、塗布層組成物の固形分重量を意味する。
本発明によれば、導電性、耐水性、耐溶剤性、透明性に優れかつ生産性の高い帯電防止フィルムを提供することができるので産業上の利用価値は高い。
Claims (3)
- 下記の成分(A)および(B)を含有する塗布液をポリエステルフィルムの片面に塗布し、乾燥してなる塗布層を有することを特徴とするポリエステルフィルム。(A):主たる繰り返し単位がアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸であり導電性を有するポリアニリン化合物
(B):水性ポリウレタン樹脂 - 水性ポリウレタン樹脂がポリエステルポリウレタンを主成分とする請求項1に記載のポリエステルフィルム。
- 水性ポリウレタン樹脂がポリオール部分に芳香環を有する請求項1または請求項2に記載のポリエステルフィルム。
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Citations (6)
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-
2012
- 2012-03-26 JP JP2012068744A patent/JP2013199586A/ja active Pending
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