JP5263241B2 - 積層フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、各種の上塗り剤に対する密着性の優れた塗布層を有するポリエステルフィルムに関するものである。
二軸延伸ポリエステルフィルムは、透明性、寸法安定性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、ガスバリヤー性、耐薬品性などに優れ、包装材料、製版材料、表示材料、転写材料、窓貼り材料などを始め、メンブレンスイッチや、フラットディスプレイ等に用いられる反射防止フィルム、拡散シート、プリズムシート等の光学フィルム、透明タッチパネルなどに使用されている。しかし、かかる用途においてポリエステルフィルム上に他の材料を塗布積層する場合に、使用される材料によっては接着性が悪いという欠点がある。
二軸延伸ポリエステルフィルムの接着性を改良する方法の一つとして、ポリエステルフィルムの表面に各種樹脂を塗布し、易接着性能を持つ塗布層を設ける方法が知られている。
例えば、特許文献1〜3などではポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、あるいは特定の架橋剤の使用などが開示されている。
しかしながら、このような既存の易接着性の塗布層では、上塗り層の種類によっては、その接着性が依然として十分ではない場合がある。例えば近年上塗り剤として、いわゆる無溶剤型のUV硬化塗料が使用されることが増えてきている。しかし、かかる無溶剤型の上塗り剤は、溶剤系の上塗り剤に比べて易接着層への浸透、膨潤効果が低く、接着性が不十分となりやすい。特許文献4では特定のポリウレタン樹脂からなる塗布層が開示されており、接着性の向上が図られている。しかし上述のような無溶剤型の上塗りに対しては、この様な塗布層でも接着性が必ずしも十分ではなくなってきている。
特開平8−281890号公報 特開平11−286092号公報 特開2000−229395号公報 特開平2−158633号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、上塗り剤に対する易接着性の優れた塗布層を有するポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記の課題に関して鋭意検討を重ねた結果、特定の種類の化合物を含有する塗布層を設けることにより、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステルフィルムの表面に易接着性塗布層と活性エネルギー線硬化樹脂層とを順次に備えてなる積層フィルムであって、上記の易接着性塗布層は、塗布延伸法により形成され、ポリカーボネート構造とカルボキシル基とを有する、ガラス転移点が10℃以下のポリウレタン樹脂を含有し、更に、オキサゾリン基を有するポリマー型の架橋剤を含有することを特徴とする積層フィルムに存する。
本発明によれば、上塗り剤に対する易接着性の優れた塗布層を有するポリエステルフィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の塗布フィルムの基材フィルムは、ポリエステルからなるものである。かかるポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸のようなジカルボン酸またはそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのようなグリコールとを溶融重縮合させて製造されるポリエステルである。これらの酸成分とグリコール成分とからなるポリエステルは、通常行われている方法を任意に使用して製造することができる。
例えば、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとの間でエステル交換反応をさせるか、あるいは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接エステル化させるかして、実質的に芳香族ジカルボン酸のビスグリコールエステル、またはその低重合体を形成させ、次いでこれを減圧下、加熱して重縮合させる方法が採用される。その目的に応じ、脂肪族ジカルボン酸を共重合しても構わない。
本発明のポリエステルとしては、代表的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられるが、その他に上記の酸成分やグリコール成分を共重合したポリエステルであってもよく、必要に応じて他の成分や添加剤を含有していてもよい。
本発明におけるポリエステルフィルムには、フィルムの走行性を確保したり、キズが入ることを防いだりする等の目的で粒子を含有させることができる。このような粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、さらに、ポリエステル製造工程時の析出粒子等を用いることができる。
用いる粒子の粒径や含有量はフィルムの用途や目的に応じて選択されるが、平均粒径に関しては、通常は0.01〜5.0μmの範囲である。平均粒径が5.0μmを超えるとフィルムの表面粗度が粗くなりすぎたり、粒子がフィルム表面から脱落しやすくなったりする。平均粒径が0.01μm未満では、表面粗度が小さすぎて、十分な易滑性が得られない場合がある。粒子含有量については、ポリエステルに対し、通常0.0003〜1.0重量%、好ましくは0.0005〜0.5重量%の範囲である。粒子含有量が0.0003重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、1.0重量%を超えて添加する場合には、フィルムの透明性が不十分な場合がある。なおフィルムの透明性、平滑性などを特に確保したい場合には、実質的に粒子を含有しない構成とすることもできる。また、適宜、各種安定剤、潤滑剤、帯電防止剤等をフィルム中に加えることもできる。
本発明のフィルムの製膜方法としては、通常知られている製膜法を採用でき、特に制限はない。例えば、まず溶融押出によって得られたシートを、ロール延伸法により、70〜145℃で2〜6倍に延伸して、一軸延伸ポリエステルフィルムを得、次いで、テンター内で先の延伸方向とは直角方向に80〜160℃で2〜6倍に延伸し、さらに、150〜250℃で1〜600秒間熱処理を行うことでフィルムが得られる。さらにこの際、熱処理のゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。
本発明におけるポリエステルフィルムは、単層または多層構造である。多層構造の場合は、表層と内層、あるいは両表層や各層を目的に応じ異なるポリエステルとすることができる。
本発明のポリエステルフィルムは少なくとも片面に塗布層を有するが、フィルムの反対面に同様のあるいは他の塗布層や機能層を設けていても、本発明の概念に当然含まれるものである。
本発明の塗布層は、フィルムの製膜中に塗布層を設ける、いわゆるインラインコーティング、特に塗布後に延伸を行う塗布延伸法により設けられる。
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押出ししてから二軸延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸シート、その後に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルムの何れかにコーティングする。特に塗布延伸法としては、一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。
かかる方法によれば、製膜と塗布層塗設を同時に行うことができるため、製造コスト上のメリットがあり、コーティング後に延伸を行うために、薄膜で均一なコーティングとなるために接着性能が安定する。また、二軸延伸される前のポリエステルフィルム上を、まず易接着樹脂層で被覆し、その後フィルムと塗布層を同時に延伸することで、基材フィルムと塗布層が強固に密着することになる。
また、ポリエステルフィルムの二軸延伸は、テンターによりフィルム端部を把持しつつ横方向に延伸することで、フィルムが長手/横手方向に拘束されており、熱固定において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。それゆえ、コーティング後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、塗布層の造膜性が向上し、また塗布層とポリエステルフィルムが強固に密着する。易接着性ポリエステルフィルムとして、塗布層の均一性、造膜性の向上および塗布層とフィルムの密着は好ましい特性を生む場合が多い。
この場合、用いる塗布液は、取扱い上、作業環境上、安全上の理由から水溶液または水分散液であることが望ましいが、水を主たる媒体としており、本発明の要旨を越えない範囲であれば、有機溶剤を含有していてもよい。
次に、本発明においてフィルムに設ける塗布層について述べる。
本発明におけるポリカーボネート構造を有するポリウレタンとは、ポリウレタンの主要な構成成分のポリオールのひとつとしてポリカーボネート類を使用したものである。
本発明におけるポリカーボネート構造を有するポリウレタンの、ポリイソシアネート成分の例としては、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどがある。
ポリカーボネート類以外のポリオール成分の例としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールのようなポリエーテル類、ポリエチレンアジペート、ポリエチレン−ブチレンアジペート、ポリカプロラクトンのようなポリエステル類、アクリル系ポリオール、ひまし油などがある。
鎖長延長剤、あるいは架橋剤の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、水などがある。
ポリカーボネートポリオールは、例えば、ジフェニルカーボネートとジオールからの反応や、ジアルキルカーボネートとジオールからの反応、アルキレンカーボネートとジオールからの反応などで得られる。ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン等がある。
ポリカーボネートジオールは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量で、300〜5000であることが好ましい。
本発明におけるポリカーボネートを構成成分とするポリウレタンは、溶剤を媒体とするものであってもよいが、好ましくは水を媒体とするものである。ポリウレタンを水に分散または溶解させるには、乳化剤を用いる強制乳化型、ポリウレタン樹脂中に親水性基を導入する自己乳化型あるいは水溶型等がある。特に、ポリウレタン樹脂の骨格中にイオン基を導入しアイオノマー化した自己乳化タイプが、液の貯蔵安定性や得られる塗布層の耐水性、透明性、接着性に優れており好ましい。
また、導入するイオン基としては、カルボキシル基、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、4級アンモニウム等、種々のものが挙げられるが、カルボキシル基が好ましい。ウレタン樹脂にカルボキシル基を導入する方法としては、重合反応の各段階の中で種々の方法が取り得る。例えば、プレポリマー合成時に、カルボキシル基を持つ樹脂を共重合成分として用いたり、ポリオールやポリイソシアネート、鎖延長剤などの一成分としてカルボキシル基を持つ成分を用いたりすることができる。特に、カルボキシル基含有ジオールを用いて、この成分の仕込み量によって所望の量のカルボキシル基を導入する方法が好ましい。
例えば、ウレタン樹脂の重合に用いるジオールに対して、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)ブタン酸等を共重合させることができる。
また、このカルボキシル基はアンモニア、アミン、アルカリ金属類、無機アルカリ類等で中和した塩の形にするのが好ましい。特に好ましいものは、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンである。
かかるポリウレタン樹脂は、塗布後の乾燥工程において中和剤が外れたカルボキシル基を、他の架橋剤による架橋反応点として用いることができる。これにより、塗布前の液の状態での安定性に優れる上、得られる塗布層の耐久性、耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性等をさらに改善することが可能となる。
特に本発明で用いるポリウレタンとしては、ポリカーボネートおよびポリオール、ポリイソシアネート、反応性水素原子を有する鎖長延長剤およびイソシアネート基と反応する基、およびアニオン性基を少なくとも1個有する化合物からなる樹脂が好ましい。また、樹脂中にカルボキシル基を含有する。この場合のカルボキシル基は、前述の自己乳化のためのイオン性基として含有するカルボキシル基であってもよい。
ポリウレタン中のアニオン性基の量は、0.05〜8重量%が好ましい。少ないアニオン性基量では、ポリウレタンの水溶性あるいは水分散性が悪く、多いアニオン性基量では、塗布後の塗布層の耐水性が劣ったり、吸湿してフィルムが相互に固着しやすくなったりすることがあるからである。
ポリウレタン中のポリカーボネート成分の含有量は、通常20〜95重量%であり、好ましくは40〜90重量%である。かかる含有量が20重量%未満では、ポリウレタンの接着性改良効果に乏しくなることがあり、95重量%を超えると、塗布性が悪化することがある。
なお、本発明におけるポリウレタン樹脂は、ガラス転移点(以下、Tgと記載することがある)が通常10℃以下である。Tgが10℃より高いものは、易接着性が不十分となることがある。ここで言うTgの測定は、ポリウレタン樹脂の乾燥皮膜を作成し、動的粘弾性測定を行い、E’’が最大となる温度を指す。
また、上記のようなTgの低いポリウレタンを含有する塗布層は、ロール状に巻いた際に、フィルムの表裏が張り付く、いわゆるブロッキングが起こりやすくなる傾向がある。ブロッキングを防止するために、塗布層の構成成分として、架橋剤を併用する方法が通常行われているが、架橋剤によってブロッキングを防止する手法は、本発明における、Tgの上限を規定したポリカーボネートを含むポリウレタン樹脂による、易接着性の向上の効果を阻害することがあり注意が必要である。
通常用いられる架橋剤としては、メラミン、ベンゾグアナミンなどのアミノ樹脂系、オキサゾリン系、カルボジイミド系、エポキシ系、イソシアネート系など、また、他のポリマー骨格中に、上述のような架橋反応性の官能基を共重合した、いわゆるポリマー型架橋剤などが例示されるが、本発明で架橋剤を使用する場合は、易接着性を低下させないことが重要である。
易接着性を維持しつつ塗布層を架橋するためには、塗布層中における架橋の密度を高くしすぎないことが必要である。このためには、架橋剤の使用量を多くしすぎないことか、官能基量の少ない架橋剤を使用すると良い。
ここで官能基量とは、架橋剤分子の重量あたりに、架橋官能基がどの程度あるかを表す。例えば、架橋剤の構造を13C−NMRで帰属し、官能基の量比をH−NMRで求めて、架橋剤の分子量あたりの架橋官能基の比率を求めることができる。
官能基量が高い架橋剤を使用する場合は、少量にとどめておくべきである。官能基量の低い架橋剤は、その使用量の多寡によらず特性が安定しやすく好ましい。本発明においては、特に官能基量が10mmol/gを超える架橋剤は、塗布層全体に対し20重量%以下の量とする。
一方、ポリマー型架橋剤は官能基量が低く、使用しやすい。本発明においてもっとも好ましい様態は、カルボキシル基を含有するポリウレタンに対し、オキサゾリン基を有するポリマー型の架橋剤を使用することである。
また、本発明では、ブロッキングを防止するために、塗布層全体の3重量%以上の粒子を含有すると好適である。含有量がこの比率以下だと、ブロッキングを防止する効果が不十分となりやすい。また含有量があまりに多すぎると、ブロッキングの防止効果は高いものの、塗布層の透明性が低下したり、塗布層の連続性が損なわれ塗膜強度が低下したりすることがあり、また易接着性が低下することがある。具体的には、15重量%以下、さらには10重量%以下が好適である。この手法によることで、易接着性能と耐ブロッキング性能を両立することが可能となる。
粒子としては例えば、シリカやアルミナ、酸化金属等の無機粒子、あるいは架橋高分子粒子等の有機粒子等を用いることができる。特に、塗布層への分散性や得られる塗膜の透明性の観点からは、シリカ粒子が好適である。
粒子の粒径は、小さすぎるとブロッキング防止の効果が得られにくく、大きすぎると塗膜からの脱落などが起き易い。平均粒径として、塗布層の厚さの1/2〜10倍程度が好ましい。さらに、粒径が大きすぎると、塗布層の透明性が劣ることがあるので、平均粒径として、300nm以下、さらには150nm以下であることが好ましい。ここで述べる粒子の平均粒径は、粒子の分散液をマイクロトラックUPA(日機装社製)にて、個数平均の50%平均径を測定することで得られる。
塗布層中に占める、前記ポリウレタン樹脂の比率は限定されない。これは、ポリウレタンを主たる成分として塗布層を構成しても構わないが、その他の易接着性の樹脂を主成分とする塗布層に、該ポリウレタンを混合するだけでも接着性が向上するためであり、目的とする特性の出る範囲で適宜選択できる。ただし量が少量過ぎると、その効果が得られにくいため、下限は20%、あるいは40%、さらに好ましくは50%以上とすると効果が高い。
易接着性の塗布層を設けるための塗布液中には、必要に応じて上記述べた成分以外を含むことができる。例えば、界面活性剤、その他のバインダー、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等である。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
ポリエステルフィルムに塗布液を塗布する方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような塗布技術を用いることができる。具体的には、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、カレンダコーター、押出コーター、バーコーター等のような技術が挙げられる。
なお、塗布剤のフィルムへの塗布性、接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理やコロナ放電処理、プラズマ処理等を施してもよい。
ポリエステルフィルム上に設けられる塗布層の塗工量は、最終的な被膜としてみた際に、通常0.002〜1.0g/m、好ましくは0.005〜0.5g/m、さらに好ましくは0.01〜0.2g/mである。塗工量が0.002g/m未満の場合は十分な接着性能が得られない恐れがあり、1.0g/mを超える塗布層は、外観・透明性の悪化や、フィルムのブロッキング、コストアップを招きやすい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法は下記のとおりである。
(1)接着性:
ポリエステルフィルムの塗布層上に、下記に示すとおりの活性エネルギー線硬化樹脂組成物を硬化後の厚さが3μmになるように塗布し、160W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し、照射距離150mmにて約10秒間照射し硬化を行って、<ポリエステルフィルム/易接着性塗布層/活性エネルギー線硬化樹脂層>という構成の積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの活性エネルギー線硬化樹脂層に、1インチ幅に碁盤目が100個になるようクロスカットを入れ、直ちに、同一箇所について3回、セロテープ(登録商標)による急速剥離テストを実施し、剥離面積によりその密着性を評価した。判定基準は以下のとおりである。
◎:碁盤目剥離個数=0
○:1≦碁盤目剥離個数≦10
△:11≦碁盤目剥離個数≦20
×:21<碁盤目剥離個数
××:全面が剥離
・硬化樹脂組成物:1,9−ノナンジオールジアクリレート100部と、チバスペシャルティケミカルズ製IRGACURE184を4部とからなる組成物
(2)耐ブロッキング性:
測定するポリエステルフィルムを2枚用意し、それぞれの塗布層同士を重ね合わせて、12cm×10cmの面積をプレスする。条件は、40℃、80%RH、10kg/cm、20時間。その後、フィルム同士をASTM−D−1893に規定された方法に準じて剥離し、その剥離荷重を測定する。剥離荷重が軽いものほどブロッキングしにくく良好と言える。荷重が150g/10cm未満であれば問題ないと言え、100g/10cm未満であれば良好であると言える。荷重が150g/10cmを超えるものは実用上問題となる場合が出てくる。
(3)透明性:
JIS−K7136に準じて、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−2000によりフィルムのヘーズを測定し、塗布層を設けていないフィルムと塗布層を設けたフィルムのヘーズの差を計算し、塗布層を設けることによるヘーズの上昇を求めた。塗布層を設けていないフィルムに対して、塗布層を設けることによるヘーズの上昇が小さいほど、塗布層の透明性が優れるといえる。
(4)ガラス転移点(Tg):
ポリウレタン樹脂の溶液もしくは水分散液を、乾燥後の膜厚が500μmになるように、テフロン(登録商標)製のシャーレ内で乾燥させ皮膜を得る。乾燥条件は、室温で1週間乾燥させた後、120℃で10分間さらに乾燥させる。得られた皮膜を幅5mmに切り出し、アイティー計測制御(株)製動的粘弾性測定装置(DVA−200型)にチャック間20mmとなるように測定装置にセットし、−100℃から200℃まで、10℃/分の速度で昇温させながら、周波数10Hzで測定する。E’’が最大となる点をTgとした。
実施例、比較例中で使用したポリエステル原料は次のとおりである。
(ポリエステル1):実質的に粒子を含有しない、極限粘度0.66のポリエチレンテレフタレート
(ポリエステル2):平均粒径2.5μmの非晶質シリカを0.6重量部含有する、極限粘度0.66のポリエチレンテレフタレート
また、塗布組成物としては以下を用いた。ただし、文中「部」とあるのは、樹脂固形分での重量比を表す。
(U1):1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートからなる数平均分子量が2000のポリカーボネートポリオールを400部、ネオペンチルグリコールを10.4部、イソホロンジイソシアネート58.4部、ジメチロールブタン酸が74.3部からなるプレポリマーをトリエチルアミンで中和し、イソホロンジアミンで鎖延長して得られる、Tgが−30℃のポリウレタン樹脂の水分散体。
(U2):1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートからなる数平均分子量が800のポリカーボネートポリオールを320部、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート505.7部、ジメチロールブタン酸が148.6部からなるプレポリマーをトリエチルアミンで中和し、イソホロンジアミンで鎖延長して得られる、Tgが7℃のポリウレタン樹脂の水分散体。
(U3):カルボキシル基を有する、Tgが−20℃の水分散型ポリカーボネートポリウレタン樹脂であるRU−40−350(スタール製)
(U4):カルボキシル基を有する、Tgが35℃の水分散型ポリカーボネートポリウレタン樹脂であるタケラックW−511(三井化学ポリウレタン社製)
(U5):1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートからなる数平均分子量が400のポリカーボネートポリオールを180部、テレフタル酸およびエチレングリコールからなるポリエステルポリオールを520部、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)を420.4部、ジメチロールブタン酸が121.8部からなるプレポリマーをトリエチルアミンで中和し、イソホロンジアミンで鎖延長して得られる、Tgが60℃のポリウレタン樹脂の水分散体。
(U6):3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸からなる数平均分子量が3000のポリエステルポリオールを400部、ネオペンチルグリコールを41.7部、イソホロンジイソシアネート133部、ジメチロールブタン酸が29.7部からなるプレポリマーをトリエチルアミンで中和し、イソホロンジアミンで鎖延長して得られる、Tgが−47℃のポリウレタン樹脂の水分散体。
(F1):平均粒径0.07μmのシリカゾル水分散体
(F2):平均粒径0.44μmのシリカゾル水分散体
(C1):オキサゾリン基がアクリル系樹脂にブランチされたポリマー型架橋剤であるエポクロス WS−500(日本触媒社製)。オキサゾリン基量=4.5mmol/g
(C2):メトキシメチロールメラミンであるベッカミン J−101(大日本インキ化学工業製)。官能基(メトキシ、メチロール、イミノ基)量=18mmol/g
実施例1:
ポリエステル1とポリエステル2とを重量比で95/5でブレンドし、十分に乾燥した後、280〜300℃に加熱溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電密着法を用いて表面温度40〜50℃の鏡面冷却ドラムに密着させながら冷却固化させて、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを作成した。このフィルムを85℃の加熱ロール群を通過させながら長手方向に3.7倍延伸し、一軸配向フィルムとした。この一軸配向フィルムの片面に、表1に示すとおりの塗布組成物を塗布した。次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、その熱を利用して塗布組成物の乾燥を行いつつ、100℃で幅方向に4.0倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施し、フィルム厚みが100μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に0.04g/mの量の塗布層を設けた塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。
実施例2〜11、参考例1及び2、比較例1〜5:
実施例1と同様の工程において、塗布液を表1に示すように変更し、フィルム厚みが1
00μmの基材フィルムの上に表1に示す量の塗布層を設けた塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。
Figure 0005263241
比較例6:
実施例1と同様の工程において、塗布層を設けずに二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。このフィルムに実施例1と同様の成分比率の塗布液を、乾燥後の塗布量が0.04g/mになるように、オフラインでバーコート方式にて塗布し、ドライヤー設定温度100℃で5秒間熱処理して、塗布フィルムを得た。このフィルムの特性は、表2に示すように、易接着層の乾燥、硬化の不足のためと見られる接着性の不足があった。
比較例7:
比較例6において、ドライヤー設定温度を180℃とした以外は同様にして塗布フィルムを得た。このフィルムは、ドライヤー内でフィルムが収縮してしわが入り平面性にきわめて劣るものとなった。その他の特性を表2に示す。
Figure 0005263241
本発明のフィルムは、優れた密着性を必要とする用途における二軸延伸ポリエステルフィルムとして、好適に利用することができる。

Claims (1)

  1. ポリエステルフィルムの表面に易接着性塗布層と活性エネルギー線硬化樹脂層とを順次に備えてなる積層フィルムであって、上記の易接着性塗布層は、塗布延伸法により形成され、ポリカーボネート構造とカルボキシル基とを有する、ガラス転移点が10℃以下のポリウレタン樹脂を含有し、更に、オキサゾリン基を有するポリマー型の架橋剤を含有することを特徴とする積層フィルム。
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