JP2013197366A - 積層セラミックコンデンサ - Google Patents

積層セラミックコンデンサ Download PDF

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Abstract

【課題】低温で焼成しても高温環境下(180℃以上)やめっき工程に対して信頼性の高い絶縁抵抗特性を持つ積層セラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】チタン酸バリウム系化合物を主成分とする誘電体セラミック相と、内部電極とが交互に積層されてなる積層セラミックコンデンサにおいて、前記誘電体セラミック相は、粒子と粒界とを備え、前記粒界は、チタン原子量がバリウム原子量よりも多く、かつ、リチウム原子を含むことを特徴とすることにより、リチウムの粒内への固溶を抑制することで、低温で焼成しても信頼性が高い、積層セラミックコンデンサを提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、積層セラミックコンデンサに関するものである。
近年、モバイル機器やパソコン等電気製品の小型化、高機能化に伴い、積層セラミックコンデンサは、小型、高容量化が求められている。積層セラミックコンデンサの静電容量は、誘電体セラミック相が薄いほど、またその層数が多いほど高容量化する。このため、誘電体セラミック相の薄層化が進んでいる。
積層セラミックコンデンサは、誘電体セラミック相と内部電極を同時に焼成する。誘電体に比較し、内部電極の焼結温度が低いため、誘電体セラミック相は、低温(1100℃以下)で焼成することが求められる。誘電体セラミック相が薄いほど、内部電極金属の焼結過程で起こる球状化の影響が大きくなるため、より一層低温で焼成することが求められる。
例えば、特許文献1では、特定の添加物を添加することで、1μm以下に薄層化した場合であっても、所望の誘電特性や温度特性を確保しつつ信頼性を向上することが提案されている。特許文献1では、BaTiO系化合物からなる主成分粉末と、焼成によりLi酸化物となるLi化合物及び焼成によりTi酸化物となるTi化合物を少なくとも含む複数の副成分粉末とを用意し、前記複数の副成分粉末をそれぞれ所定量秤量し、主成分粉末と混合してセラミック原料粉末を作製し、該セラミック原料粉末を成形した後、焼成することが提案されている。
特開2010−208905号公報
しかしながら、上述の特許文献1のような積層セラミックコンデンサは、1100℃以下の低温で焼成すると、絶縁抵抗特性の高温環境(180℃以上)での信頼性が低下し、さらにめっき工程にる絶縁抵抗特性の劣化が生じる問題があった。
本発明は、上記問題を改善するために、低温で焼成しても高温環境下(180℃以上)やめっき工程に対して信頼性の高い絶縁抵抗特性を持つ積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者らは、誘電体セラミック相組成とその微細構造を種々検討した。
本発明は、チタン酸バリウム系化合物を主成分とする誘電体セラミック相と、内部電極とが交互に積層されてなる積層セラミックコンデンサにおいて、前記誘電体セラミック相は、粒子と粒界とを備え、前記粒界は、チタン原子量がバリウム原子量よりも多く、かつ、リチウム原子を含むことを特徴とする。
これによって、リチウムの粒内への固溶が抑制され、低温で焼成しても高温環境下(180℃以上)やめっき工程に対して信頼性の高い絶縁抵抗特性を持つ積層セラミックコンデンサを得ることができる。
さらに、本発明の積層セラミックコンデンサは、粒界のチタン原子量に対するバリウム原子量の比は、0.5以上0.95以下の範囲であることを特徴とすることが好ましい。
これにより、粒界に高濃度にチタン原子が存在し、リチウム原子の粒内への固溶を防止することができる。また、積層セラミックコンデンサの高温環境でのより高い絶縁抵抗特性の信頼性を得ることができる。
また、さらに、本発明の積層セラミックコンデンサは、前記粒界のリチウム原子量が、チタン原子量を100とした場合に、0.01原子%以上2原子%以下であることが好ましい。
このときのこの規定の範囲では、リチウム原子は、粒界に存在しやすくなり、粒内には存在しにくい。これにより、積層セラミックコンデンサの高温環境下(180℃以上)やめっき工程に対しての絶縁抵抗特性の信頼性がより一層向上することができる。
また、さらに、本発明の積層セラミックコンデンサの誘電体セラミック相は、チタン原子量に対するバリウム原子量の比が、0.8以上1.0未満の範囲であることが好ましい。
このため、誘電体セラミック相全体の組成において、チタン原子量の比率がバリウム原子量より多いことから、積層セラミックコンデンサの焼成温度がより低く、かつより一層高い絶縁抵抗特性の信頼性を得ることができる。
本発明によれば、低温で焼成しても高温環境下(180℃以上)やめっき工程に対して信頼性の高い絶縁抵抗特性を持つ積層セラミックコンデンサを提供することができる。
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図 本実施形態に係る誘電体セラミック相の模式図
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図面において、同一または同等の要素には、同一の符号を付与し、重複する説明は、省略する。
図1は、本実施形態の積層セラミックコンデンサを模式的に示す断面図である。図1に示す積層セラミックコンデンサ1は、誘電体セラミック相2と内部電極3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。外部電極の表面には、めっきが施されていてもよい。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
図2は、誘電体セラミック相2の模式図である。つまり、図1に示す本実施形態に係る誘電体セラミック相2の微細構造の模式図である。図2に示すように誘電体セラミック相2の微細構造は、粒子5と粒界6を有する。
本実施形態に係る誘電体セラミック相2は、チタン酸バリウムを主成分とする。チタン酸バリウムを主成分とする誘電体セラミック相2とは、成分の50%以上がチタン酸バリウムであることを言う。チタン酸バリウムのバリウム原子(Ba)の一部がカルシウム原子(Ca)やストロンチウム原子(Sr)に置き換わっても構わない。また、チタン原子(Ti)の一部がジルコニウム原子(Zr)やハフニウム原子(Hf)に置換されても良い。一般式ABO(ペロブスカイト型結晶構造)で表される化合物で構成されている。
誘電体セラミック相2の粒子5の形状は略球形が好ましく、その直径は、1μm以下である。粒子5と粒子5の間が粒界6となる。粒界6の厚みは好ましくは、20nm以下である。より好ましくは10nm以下である。
そして、本実施形態となる積層セラミックコンデンサ1の誘電体セラミック相2においては、粒子5が少なくともBaとTiを含み、粒界6が少なくともBaとTiを含み、粒界6のTi量がBa量よりも多く、かつ、リチウム原子(Li)を含むことが好ましい。このため、粒子5内へのLiの固溶を抑制し、低温で焼成しても、高い信頼性の積層セラミックコンデンサを提供できる。
誘電体セラミック相2は、具体的には、組成式(Ba1−x−yCaSr)・(Ti1−mZr)Oで表され、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物であることが好ましい。(0≦x<0.2、0≦y<0.2、0≦m<0.3)また、一般式ABOで示される場合、Aサイト原子として、少なくともBaが含まれ、Bサイト原子として、少なくともTiが含まれている。ここでいうBa量は、Aサイト原子として、Baを置換したCa、Srも含む。また、ここでいうTi量には、Tiを置き換えたZrも含む。本実施形態の誘電体セラミック相2では、Ti量に対するBa量の比は、0.8以上1.0未満であることが好ましい。これによって、液相生成温度が低下し、低温焼成効果を得ることができる。
さらに、粒界6のTi量に対するBa量の比は、0.5以上0.95以下の範囲であることが好ましい。より好ましくは、0.6以上0.9以下である。粒界6のBa量に対するTi量を上記の範囲に抑えることで、粒界6のLiが粒界6に高濃度に存在することができ、粒子5内へのLiの固溶を抑制することができる。つまり、TiがLiと共に存在し、粒子5内への固溶を抑制し、信頼性を向上することができる。
さらに、粒子5では、Liが含まれない方が好ましい。これは、添加したLiが粒子5内部に固溶すると、そのイオン半径の大きさからBサイトに置換されるために、酸素空孔を生成する。酸素空孔は、電界下で移動するため、信頼性低下の原因となる傾向にある。
粒界6のLi量が、Ti量を100とした場合に、0.01原子%以上2原子%以下であることが好ましい。Li量がTi量100とした場合に0.01原子%以下では、低温焼成効果が不十分となる。2原子%を超えると、静電容量が低下する傾向にある。
こうして、LiとTiが粒界6に高濃度に存在することで、誘電体セラミック相2全体としては、Ba量に対するTi量が大きくなり、積層セラミックコンデンサにおいて高信頼性を得ることができる。
Liが粒界にTiと共に存在しない場合、Li−O等の異相が生成し、これがめっき液と反応して、特にめっき工程後に絶縁抵抗特性の劣化を生じ信頼性を低下させる。
誘電体セラミック相2は、Ti量に対するBa量の比が、0.8以上1.0未満の範囲であることが、信頼性の向上の観点で好ましい。
Li添加量は、ABOで表される誘電体化合物100モルとして、0.2原子%以上、10原子%以下であることが望ましい。0.2原子%以下では、低温焼成効果が小さく、10原子%より多い場合では、静電容量が劣化する傾向がある。
なお、本実施形態における誘電体セラミック相2は、必要に応じて、その他の成分が含有されていてもよい。
たとえばRで表される希土類酸化物(ただし、R元素は、Sc、Y、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選ばれる少なくとも1つ)が含有されてもよい。その含有量はABOで表される誘電体化合物100モルに対して、希土類元素換算で、好ましくは0.1〜3モルである。該希土類酸化物の含有量を上記の範囲とすることで、低い焼成温度と高い比誘電率とを両立させやすいという利点がある。
たとえば、Mgの酸化物が含有されていてもよい。その含有量は、ABOで表される誘電体化合物100モルに対して、Mg元素換算で、好ましくは0.1モル以上3モル以下である。該酸化物の含有量を上記の範囲とすることで、誘電体セラミック相2の粒子の結晶粒子径を容易に制御でき、目的とする該誘電体磁器組成物(誘電体セラミック相)の微細組織を所望のものにできるという利点がある。
また、たとえば、Mn、Cr、Co、FeおよびCuから選ばれる少なくとも1つの元素の酸化物が含有されていてもよい。これらの酸化物の含有量は、ABOで表される化合物100モルに対して、各元素換算で、好ましくは0.1モル以上1モル以下である。該酸化物の含有量を上記の範囲とすることで、還元雰囲気で焼成しても、耐還元性が得られるという利点がある。なお、該酸化物のなかでも特性の改善効果が大きいという点から、Mnの酸化物および/またはCrの酸化物を用いることが好ましい。
また、たとえば、V、MoおよびWから選ばれる少なくとも1つの元素の酸化物が含有されていてもよい。これらの酸化物の含有量は、ABOで表される化合物100モルに対して、各元素換算で、好ましくは0.01モル以上0.5モル以下である。該酸化物の含有量を上記の範囲とすることで、目的とする該誘電体磁器組成物の微細組織を所望のものにできるという利点がある。なお、該酸化物のなかでも特性の改善効果が大きいという点から、Vの酸化物を用いることが好ましい。
また、たとえば、Siを含む化合物が含有されていてもよい。これらの化合物の含有量は、ABOで表される化合物100モルに対して、Si元素換算で、好ましくは3モル以下である。該化合物の含有量を上記の範囲とすることで、焼成温度や保持時間を容易に制御しつつ特性の悪化を抑制することができ、目的とする該誘電体磁器組成物の微細組織を所望のものにできるという利点がある。なお、Siを含む化合物としては、Siの酸化物、または、Siと、Al、BaおよびCaから選ばれる少なくとも1つと、の複合酸化物が好ましい。
誘電体セラミック相2の厚みは特に限定はしないが、所望の特性や用途等に応じて適宜決定すればよい。
本実施形態では、誘電体セラミック相2の主成分(誘電体化合物であるABO)の結晶粒子5の径は30nm以上1000nm以下で有ることが望ましい。更には誘電体セラミック相2の厚みに対して1/3以下であることがより、好ましい。
図1に示す内部電極3に含有される導電材は特に限定されないが、安価な卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、ニッケルまたは銅及びそれらの合金が好ましい。
誘電体セラミック相2と内部電極3からなるコンデンサ素子本体10の両端に外部電極4が付与される。
図1に示す外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本実施形態では、耐還元性の誘電体セラミック相2を用いた場合、安価なニッケルや銅またはこれらの合金を用いることができる。
該外部電極4の表面にさらにめっきが施される。このようなめっきは、ニッケルめっきの上にさらにスズめっきをするのが一般的である。
焼付け後の銅とスズめっきを含む外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常のシート法により誘電体素子本体を作製し、これを焼成しコンデンサ素子本体10を得た後、外部電極を塗布して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
まず、誘電体セラミック相2を形成するための誘電体原料を準備し、これを塗料化して、誘電体セラミック相用ペーストを調製する。
誘電体原料として、まずABOとしての原料と、前述の添加物元素を含む化合物の原料と、Li化合物とを準備する。これらの原料としては、上記した成分の酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができる。また、焼成により上記の酸化物や複合酸化物となる各種化合物、たとえば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。
なお、ABOの原料は、いわゆる固相法の他、各種液相法(たとえば、シュウ酸塩法、水熱合成法、アルコキシド法、ゾルゲル法など)により製造されたものなど、種々の方法で製造されたものを用いることができる。
ABOとしての原料粉末としては、平均粒子径が30nm以上1000nm以下のものを用いることが好ましい。粒子径が30nmより小さい場合には、焼成による結晶成長を制御することが困難となるため焼結体粒子径が不均一になりやすく、望まれるような比誘電率も得られない。他方、1000nm以上では誘電体セラミック相2の薄層化ができない上に、焼成に必要な温度が高くなりすぎる。
添加物元素を含む化合物の原料としては、特に制限されず、典型的なRの酸化物の固形粉末であってもよいし、溶液状であってもよい。たとえば、R元素のアルコキシド、錯体、塩を溶媒に添加したものなどが挙げられる。
尚、添加物を事前にボールミル等を使用して混合したのち、500℃以上で熱処理した後、粉砕して使用することもできる。この方法により、添加物を均一に作成することができる。
Li化合物の原料としては、特に制限されず、固形粉末であってもよいし、溶液状であってもよい。固形物を用いる場合には少なくとも、ABOの原料粉末と同等以下の平均粒子径のものを用いることが望ましい。また、ABOの原料粉末を100モルとしたLi化合物量は、Li原子換算で0.2原子%以上10原子%以下の範囲で加えることが望ましい。
Li化合物としては、Liともう一つの陽イオンMを含む酸化物Liであることが望ましい。Liにおける陽イオンMは、B、Al、Si、P、Ti、V、Mn、Co、Zr、Mo、およびWのいずれでもよいが、Tiが特に好適である。ここでのa、b及びcは、0を含まない任意の数である。特に、LiとTiを予め反応させ、化合物として添加することで、Liが粒界に存在し易くなるため、より好ましい。
また、誘電体セラミック相2に上記の成分以外の成分が含有される場合には、該成分の原料を準備する。これらの原料としては、それらの成分の酸化物やその混合物、複合酸化物、あるいは焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物を用いることができる。また、溶液原料を用いてもよい。
次に、本実施形態では、ABOの原料と、添加物元素の化合物の原料と、Li化合物とを混合して、溶液状の原料混合物を得る。この原料混合物においては、ABOの原料と、添加物元素の酸化物の原料と、Li化合物とが溶媒中で均一に分散していることが好ましい。混合は、たとえばボールミルを用いて4〜48時間程度行う。また、このとき、分散剤を添加してもよい。
添加物として添加する希土類やリチウム化合物等がABOの原料の誘電体に対して粒径が充分に小さくない場合には事前に遠心バレルや振動ミル、ミキサー等で予備粉砕を行っても良い。
得られた原料混合物(誘電体原料)を塗料化して誘電体相用ペーストを調製する。このとき、溶液原料として添加しなかった他の成分の原料を添加してもよい。誘電体相用ペーストは、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
内部電極用ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。導電材料の粒径は0.5μm以下であることが好ましい。
外部電極用ペーストは、上記した内部電極用ペーストと同様にして調製すればよい。
シート工法により、誘電体セラミック相用ペーストを用いてグリーンシートを形成する。このグリーンシートに内部電極を付与し、積層セラミックコンデンサのコンデンサの機能部分となる内装用のグリーンシートと、グリーンシートだけでコンデンサとしての非機能部分となる外装用のグリーンシートを作成する。
機能部分となる内装用のグリーンシートと、非機能部分である外装用グリーンシートの厚みは同じであっても良いが、外装用グリーンシートの厚みは積層時間の短縮の為に内装用グリーンシートの1〜50倍の厚みであっても構わない。
内装用のグリーンシートと外装用グリーンシートとを積層し、熱圧着プレス若しくは静水圧プレスを用いて圧着し、所定形状に切断してグリーンチップとする。
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、保持温度を好ましくは200〜800℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜24時間とする。また、脱バインダ雰囲気は、空気もしくは還元性雰囲気とする。
脱バインダ後、グリーンチップの焼成を行い、コンデンサ素子本体10を得る。焼成では、昇温速度を好ましくは200℃/時間以上とする。焼成時の保持温度は、好ましくは1100℃以下、より好ましくは1000℃未満であり、その保持時間は、好ましくは10時間以下である。
焼成雰囲気は、還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、NとHとの混合ガスを加湿して用いることができる。
また、焼成時の酸素分圧は、内部電極用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、10−18〜10−11MPaとすることが好ましい。焼成時の降温速度は、好ましくは50〜1000℃/時間である。
還元性雰囲気中で焼成した後、コンデンサ素子本体には更にアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体セラミック相2を再酸化するための処理であり、これにより絶縁抵抗の寿命を著しく長くすることができるので、信頼性が向上する。
アニール雰囲気中の酸素分圧は、10−10〜10−5MPaとすることが好ましい。また、アニールの際の保持温度は、1000℃以下、特に700〜900℃とすることが好ましい。なお、アニールは昇温過程および降温過程だけから構成してもよい。また、焼成とアニールは連続で行っても良い。
これ以外のアニール条件としては、温度保持時間を好ましくは0〜20時間、アニール時の降温速度を好ましくは50〜500℃/時間とする。また、アニールの雰囲気ガスとしては、たとえば、加湿したNガス等を用いることが好ましい。
上記した脱バインダ処理、焼成およびアニールにおいて、Nガスや混合ガス等を加湿するには、たとえばガスを水中に通せばよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。
脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体10に、たとえばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを塗布して焼成し、外部電極4を形成する。そして、必要に応じ、外部電極4の表面に、めっき等により被覆層を形成する(めっき工程)。
このようにして製造された本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
本発明の内容を実施例及び比較例を参照してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[積層セラミックコンデンサの作製方法]
(実施例1)
まず、ABOの原料としてBaTiO粉末を、副成分の原料として、Y、MgCO、MnCO、V、CaSiOの各粉末とを、それぞれ準備した。
副成分の材料をボールミルを用いて20時間混合した。混合用の溶剤としては、キシレンを用いた。ボールミル内部には、ジルコニアのボールを使用した。混合した副材料を防爆用の乾燥機を用いて、150℃で乾燥した後、解砕後、1000℃3時間の熱処理を行った。熱処理後、混合と同様にボールミルを用いて、20時間解砕した。
Liを含む副成分の原料としては、LiTi12となるように所定量の炭酸リチウムと酸化チタンを800℃2時間熱処理を行い粉末を準備した。
次に、BaTiO粉末と副成分の原料とLiを含む副成分の原料とを、ボールミルを用いて、20時間混合し、原料混合物を誘電体原料として作製した。
なお、各副成分の添加量は、焼成後の誘電体磁器組成物において主成分であるBaTiO100モルに対して、各原子換算で、Liを含む副成分の原料が0.5モル、Yが1.0モル、MgOが0.5モル、MnOが0.2モル、Vが0.1モル、CaOが1.5モル、SiOが1.5モルを用いた。
次いで、得られた誘電体原料:100重量部と、ポリビニルブチラール樹脂:10重量部と、可塑剤としてのジオクチルフタレート(DOP):5重量部と、溶媒としてのアルコール:100重量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体セラミック相用ペーストを得た。
また、上記とは別に、Ni電極ペーストを準備した。
そして、上記にて作製した誘電体セラミック相用ペーストを用いて、PETフィルム上にグリーンシートを形成した。次いで、この上に内部電極用ペーストを用いて、内部電極を所定パターンで印刷した後、PETフィルムからシートを剥離し、内部電極を有するグリーンシートを作製した。次いで、内部電極を有するグリーンシートを複数枚積層し、加圧接着することによりグリーン積層体とし、このグリーン積層体を所定サイズに切断することにより、グリーンチップを得た。
次いで、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、コンデンサ素子本体となる焼結体を得た。
脱バインダ処理条件は、昇温速度:20℃/時間、保持温度:300℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。
焼成条件は、昇温速度:300℃/時間、保持温度:1000℃、温度保持時間:2時間、降温速度:300℃/時間とした。なお、雰囲気ガスは、加湿したNと1%Hの混合ガスとし、酸素分圧が2×10−15MPaとなるようにした。
アニール条件は、昇温速度:300℃/時間、保持温度:900℃、温度保持時間:5時間、降温速度:300℃/時間、雰囲気ガス:加湿したNガス(酸素分圧:2×10−8MPa)とした。なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスを水の中を通すことで加湿した。
次いで、得られた焼結体の端面をサンドブラストにて研磨した後、外部電極として銅ペーストを塗布し焼き付けた後、めっき工程によりニッケルめっき及びスズめっきを行ない、実施形態で図1に示す積層セラミックコンデンサと同じ構造のコンデンサ素子本体の試料を得た。得られたコンデンサ素子本体のサイズは、2.0mm×1.2mm×0.5mmであり、誘電体セラミック相の厚み2.5μm、内部電極の層の厚み1μm、内部電極に挟まれた誘電体セラミック相の層数は10とした。
また、サンドブラスト後の試料については、外部電極を塗布せず、インジウムガリウム合金を塗布して、外部電極塗布前の積層セラミックコンデンサとしてその特性を測定した。またその他に、サンドブラスト後の試料に外部電極を塗布して、めっき工程前の積層セラミックコンデンサとして、さらにめっきを実施した試料をめっき工程後の積層セラミックコンデンサとして得た。
得られた各積層セラミックコンデンサ試料について、絶縁抵抗特性は、高抵抗測定器を用いて、10Vでの30秒値の絶縁抵抗を測定した。また、誘電率については、LCRメータにて1kHz1Vrmsで容量を測定し算出した。
高温環境下での絶縁抵抗特性の信頼性の評価には、100個のめっき工程後の積層セラミックコンデンサの絶縁抵抗(初期値)を測定した後、高温環境の180℃において、100Vの電圧を100時間印加する。高温負荷試験後室温に取り出し、その絶縁抵抗値が初期値より1桁以上低下したものを、高温環境下での絶縁抵抗特性の信頼性が得られていなかった不良数として評価し、その結果を表1に示す。
めっき工程後の絶縁抵抗特性の信頼性の評価には、外部電極塗布前の積層セラミックコンデンサとめっき工程後の積層セラミックコンデンサの絶縁抵抗値をそれぞれ100個準備し測定した。そして、めっき工程前後の絶縁抵抗値が1桁以上低下した積層セラミックコンデンサをめっき工程に対して絶縁抵抗特性の信頼性が劣化した(得られなかった)としてその試料数を評価し、その結果を表1に示す。
焼結体の組成分析は、焼結体を集束イオンビーム(FIB,Focused Ion Beam)を用いて加工した後、走査型透過電子顕微鏡(STEM,Scanning Transmission Electron Microscopy)及び電子エネルギー損失分光法(EELS,Electron Energy−Loss Spectroscopy)を用いて行い、誘電体セラミック相の粒子と粒界を含む広い範囲での分析から得られたTiに対するBa比(Ba/Ti)を、誘電体セラミック相全体のTiに対するBa比(Ba/Ti)とし、粒界に分析範囲を絞った分析から得られたBa比(Ba/Ti)及びLi元素量を、粒界のBa比(Ba/Ti)及びLi元素量とした分析結果を、表1に合わせ示す。
(実施例2)
アニール条件の保持温度を850℃、温度保持時間を3時間としたこと以外は、実施例1と同様にして積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。これを、実施例2の積層セラミックコンデンサとし、実施例1と同様に評価し、表1に合わせ示す。
(実施例3)
アニール条件の保持温度を850℃、温度保持時間を2時間としたこと以外は、実施例1と同様にして積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。これを、実施例3の積層セラミックコンデンサとし、実施例1と同様に評価し、表1に合わせ示す。
(実施例4)
アニール条件の保持温度を800℃、温度保持時間を2時間としたこと以外は、実施例1と同様にして積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。これを、実施例4の積層セラミックコンデンサとし、実施例1と同様に評価し、表1に合わせ示す。
(実施例5)
副成分の添加量のうちLiを含む副成分(LiTi12)の原料を0.1モルとしたこと以外は、実施例4と同様にして積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。これを、実施例5の積層セラミックコンデンサとし、実施例1と同様に評価し、表1に合わせ示す。
(実施例6)
副成分の添加量のうちLiを含む副成分(LiTi12)の原料を1.0モルとしたこと以外は、実施例4と同様にして積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。これを、実施例6の積層セラミックコンデンサとし、実施例1と同様に評価し、表1に合わせ示す。
(実施例7)
副成分の添加量のうちLiを含む副成分(LiTi12)の原料を2.5モルとしたこと以外は、実施例4と同様にして積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。これを、実施例7の積層セラミックコンデンサとし、実施例1と同様に評価し、表1に合わせ示す。
(実施例8)
副成分にさらに、炭酸リチウム(LiCO)を5モル添加したこと以外は、実施例7と同様にして積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。これを、実施例8の積層セラミックコンデンサとし、実施例1と同様に評価し、表1に合わせ示す。
(実施例9)
副成分にさらに、LiCOを10モル添加したこと以外は、実施例7と同様にして積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。これを、実施例9の積層セラミックコンデンサとし、実施例1と同様に評価し、表1に合わせ示す。
(実施例10)
焼成条件の保持温度を1050℃とし、雰囲気ガスに加湿したNと5%Hの混合ガスで酸素分圧が4×10−16MPaとなるようにしたこと以外は、実施例4と同様にして積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。これを、実施例10の積層セラミックコンデンサとし、実施例1と同様に評価し、表1に合わせ示す。
(実施例11)
焼成条件の保持温度を1050℃とし、雰囲気ガスに加湿したNと3%Hの混合ガスで酸素分圧が1×10−15MPaとなるようにしたこと以外は、実施例4と同様にして積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。これを、実施例11の積層セラミックコンデンサとし、実施例1と同様に評価し、表1に合わせ示す。
(実施例12)
焼成条件の保持温度を1000℃とし、雰囲気ガスに加湿したNと3%Hの混合ガスで酸素分圧が2×10−16MPaとなるようにしたこと以外は、実施例4と同様にして積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。これを、実施例12の積層セラミックコンデンサとし、実施例1と同様に評価し、表1に合わせ示す。
(実施例13)
副成分としてさらに主成分であるBaTiO100モルに対して、炭酸バリウムの原料を5モル添加した。そして、焼成条件の保持温度を1000℃とし、雰囲気ガスに加湿したNと0.1%Hの混合ガスで酸素分圧が2×10−13MPaとなるようにしたこと以外は、実施例4と同様にして積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。これを、実施例13の積層セラミックコンデンサとし、実施例1と同様に評価し、表1に合わせ示す。
(実施例14)
副成分としてさらに主成分であるBaTiO100モルに対して、酸化チタンの原料を5モル添加した。そして、焼成条件の保持温度を1100℃とし、雰囲気ガスに加湿したNと0.1%Hの混合ガスで酸素分圧が5×10−12MPaとなるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。これを、実施例14の積層セラミックコンデンサとし、実施例1と同様に評価し、表1に合わせ示す。
(比較例1)
Liを含む副成分の原料としてLiCOを2モル添加したこと以外は、実施例4と同様にして積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。これを、比較例1の積層セラミックコンデンサとし、実施例1と同様に評価し、表1に合わせ示す。
(比較例2)
Liを含む副成分を用いず、副成分としてさらに主成分であるBaTiO100モルに対して、酸化チタンの原料を5モル添加した。そして、焼成条件の保持温度を1100℃とし、雰囲気ガスに加湿したNと1%Hの混合ガスで酸素分圧が5×10−14MPaとなるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。これを、比較例2の積層セラミックコンデンサとし、実施例1と同様に評価し、表1に合わせ示す。
(比較例3)
Liを含む副成分を用いず、副成分としてさらに主成分であるBaTiO100モルに対して、炭酸バリウムの原料を5モル添加した。そして、焼成条件の保持温度を1100℃とし、雰囲気ガスに加湿したNと5%Hの混合ガスで酸素分圧が2×10−15MPaとなるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。これを、比較例3の積層セラミックコンデンサとし、実施例1と同様に評価し、表1に合わせ示す。
Figure 2013197366
実施例1〜14から、焼成後の誘電体セラミック相の粒界で、Ti量がBa量よりも多く、かつ、リチウム原子を含む特定の組成を有することにより、1100℃以下の低温で焼成しても、高温負荷寿命における特性劣化が抑えられることがわかった。つまり、高温環境下(180℃以上)で信頼性の高い絶縁抵抗特性を持つことができる。また、めっき工程による絶縁抵抗特性の劣化も抑制できることがわかった。すなわち、めっき工程に対して信頼性の高い絶縁抵抗特性を持つことがわかった。
比較例1は、粒界のTi量がBa量よりも少なく、Li−Oの異相が生成していることが確認された。これにより、めっき工程による絶縁抵抗特性の劣化や高温環境下で絶縁特性の信頼性の低下が生じることがわかった。
実施例1〜14は、誘電体セラミック相の粒子内へのLiの固溶が抑制されていることも確認された。これによって、絶縁抵抗特性の高温環境下の高い信頼性が得られたと考えられる。
さらに、実施例3〜13の積層セラミックコンデンサの粒界において、Ti量に対するBa量の比は、0.5以上0.95以下範囲であることにより、より一層、信頼性が高いことが確認された。
さらに、実施例1〜8、10〜14の積層セラミックコンデンサは、粒界のリチウム原子量が、0.01原子%以上2原子%以下であった。このため、Liが粒内に存在せず、コンデンサとして高温環境下やめっき工程に対する絶縁抵抗特性の信頼性がより高く得られたと考えられる。さらに、これらは、誘電率が3000以上得られることが確認され、積層セラミックコンデンサにおいて高い容量が得られるという点で好ましいことが確認された。
さらに、実施例3〜8及び実施例11、12は、高温環境及びめっき工程後の絶縁抵抗特性の劣化においてより効果があることがわかった。
低温で焼成しても高温環境下(180℃以上)やめっき工程に対して信頼性の高い絶縁抵抗特性を持つ積層セラミックコンデンサを得られる。さらに、セラミックコンデンサの製造方法として、低温で焼成できることから大幅な製造コスト削減とCOの排出量抑制とを達成することができる。
1 積層セラミックコンデンサ
2 誘電体セラミック相
3 内部電極
4 外部電極
10 コンデンサ素子本体
5 粒子
6 粒界

Claims (4)

  1. チタン酸バリウム系化合物を主成分とする誘電体セラミック相と、内部電極とが交互に積層されてなる積層セラミックコンデンサにおいて、
    前記誘電体セラミック相は、粒子と粒界とを備え、
    前記粒界は、チタン原子量がバリウム原子量よりも多く、かつ、リチウム原子を含むことを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
  2. 前記粒界のチタン原子量に対するバリウム原子量の比は、0.5以上0.95以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
  3. 前記粒界のリチウム原子量が、0.01原子%以上2原子%以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサ。
  4. 前記誘電体セラミック相は、チタン原子量に対するバリウム原子量の比が、0.8以上1.0未満の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の積層セラミックコンデンサ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105793938A (zh) * 2013-12-10 2016-07-20 株式会社村田制作所 层叠陶瓷电容器以及层叠陶瓷电容器的制造方法

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