JP2013194290A - 銅ナノワイヤーの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 特殊な設備を使用せず、常圧下、水中での温和な温度で少量の反応試薬を用いて銅含量1質量%以上の高濃度の条件であっても合成が可能な、銅ナノワイヤーの製造方法を提供すること。
【解決手段】 (1)1価又は2価の銅化合物(a)、塩化物イオン(b)、ポリエチレンイミン骨格(c1)とポリエチレングリコール骨格(c2)とを有する共重合体(C)を含有する水溶液を100℃以下で加熱する工程、
(2)前記(1)で得られた水溶液に2価銅化合物を1価銅化合物に還元する還元剤(d)を加え、100℃以下で加熱する工程、
(3)前記(2)で得られた反応液から固形分を取り出す工程、
を有することを特徴とする銅ナノワイヤーの製造方法。
【選択図】 図3

Description

本発明は、銅ナノワイヤーの製造方法に関し、詳しくは、特定のキャッピングポリマーを用いることで、穏やかな条件下、比較的高い銅イオン濃度であってもその他の試薬を大量に使用せずに効率的に銅ナノワイヤーを得ることができる当該銅ナノワイヤーの製造方法に関するものである。
銀ナノワイヤーは塗布・印刷プロセスで平面上に塗布・印刷するだけで二次元ネットワークパターンを形成できる。このようにして作成した膜は光透過性と導電性とが両立し、しかも屈曲耐性をも有するため、希少金属を用いたITO膜の代替となる実用的な透明導電膜の候補とみなされてきたが、近年、銀ナノワイヤーの有効な工業的合成法が開発されたことによって商業展開が始められている。
銅は銀に対して1000倍の埋蔵量があり、価格も1/100と安価である。銅ナノワイヤーを用いて基板上に膜を形成させると、銀ナノワイヤーと同程度の導電性、透明性を有することが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら銅ナノワイヤーの合成は銀ナノワイヤー合成より困難であり、方法論はいくつか提案されているものの、未だ有効な大量製造法が無いことが工業化の阻害要因の一つとなっている。
例えば銅ナノワイヤーの製造法として、20MPaの超臨界二酸化炭素中で水酸化銅ナノワイヤーを生成し、これを超高真空下の水素ラジカル照射で還元することによって太さ600nmの銅ワイヤーを合成できることが報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかしこの方法は特殊な装置と高エネルギーが必要でスケールアップも困難であり、銅ナノワイヤーが著しく太い点が問題であった。
銀ナノワイヤー製造と同様に銅ナノワイヤー製造でも、銅化合物、還元剤、キャッピング剤の3つを基本構成要素とする自己組織化を利用した湿式合成により、直接結晶性の銅ナノワイヤーを合成する方法が、最も低エネルギーでスケールアップも容易な方法である。一般的に銅ナノワイヤーを含む金属ナノワイヤーの湿式合成において、細く長いナノワイヤーを得るためには、キャッピング剤と緩やかな還元速度の2つが必要とされる。キャッピング剤がワイヤー側面の金属結晶成長を阻害することで軸方向への結晶成長を促し、緩やかな還元で0価金属種を低濃度に保つことによって、無秩序な種結晶生成によるワイヤー選択性低下や、側面方向への結晶成長によるワイヤーの太りを抑制する。
このような考え方を用いて銅ナノワイヤーを製造する方法としては、例えば、酢酸銅と双頭型ペプチド脂質の混合により生成するハイブリッドナノファイバーを水素化ホウ素ナトリウムで還元する方法で、平均径10〜20nmで平均長さが1μm以上の銅ナノワイヤーを生成したことが報告されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この方法では銅濃度が0.06%と低いため大量製造には不向きである。
また、塩化第二銅を原料、グルコースを還元剤、ヘキサデシルアミンをキャッピング剤として、水中で室温24時間、次いで100℃、6時間の加熱処理をすることで非常に細く(24nm)、長い(10〜1,000μm)銅ナノワイヤーが得られることが報告されている(例えば、非特許文献2参照)。しかしながら、前記特許文献2と同様、反応液が非常に希薄である、すなわち銅濃度が0.08%でしかないため、効率的な大量合成が難しいという問題がある。
また、非特許文献1では硝酸銅を原料、ヒドラジンを還元剤、エチレンジアミンをキャッピング剤として、強塩基性水溶液中で80℃、1時間の加熱処理を行うことで90nm太さ、10um長さの銅ナノワイヤーが得られることが報告されている。しかしながらこの方法は1.2gの銅ナノワイヤーを得るために1.2kgという大量の水酸化ナトリウムを用いる必要があり、銅濃度も0.03%と非常に希薄なため、やはり大量生産性に乏しい。
1価塩化銅が水中で0価金属銅と2価塩化銅にゆっくりと不均化する反応は古くから知られているが、非特許文献3ではこれを利用した銅ナノワイヤー合成が報告されている。塩化第一銅を有機溶媒(兼キャッピング剤)であるオレイルアミンに100℃で20分加熱して溶解させ、さらに200℃、30分の加熱処理で不均化反応を起こすことで50nm太さ、10um以上の長さの銅ナノワイヤーを合成するものであり、これは2種類の試薬しか使用しない極めてシンプルな合成法であって、且つ銅濃度が2.6%と前出の方法よりも高い点で優れている。しかしその一方で、大量の有機溶剤を用いること、還元剤を使用しないことにより収率が最大でも50質量%に留まること、高温での処理であること、といった種々の問題点があり、反応の構成がシンプルであるものの、これらの長所と短所はセットになっており、改善が容易ではない。
銀ナノワイヤーは安定で使い易い材料であるが、原料である銀自体が高価であることが市場への普及の障壁となっており、用途は事実上狭い範囲に限定されている。銅ナノワイヤーの原料は安価で豊富であり、機能性フィラーとして大量に使うなどより広範な用途が可能となるため、低エネルギープロセスでの大量供給手段を確立することは産業上大きな価値がある。
特開2011−168817号公報 特開2002−266007号公報
Rathmell et al., Adv.Mater.2010,22,3558−3563. Jin et al.,Angew.Chem.Int.Ed.2011,50,10560−10564. Ye et al.,Chem.Eur.J.2011,17,3074−3077.
前述のように、これまで提供されてきた銅ナノワイヤーの製造方法は、銅濃度が希薄、高温高圧の条件、大量の反応試薬や有機溶媒を用いる、といった大量生産に適さない方法である。上記事情を鑑み、本発明の課題は、特殊な設備を使用せず、常圧下、水中での温和な温度で少量の反応試薬を用いて銅含量1質量%以上の高濃度の条件であっても合成が可能な、銅ナノワイヤーの製造方法を提供することである。
本発明者らは、前述の銅ナノワイヤー合成の原則を踏まえ、上記の課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、第一に、銅ナノワイヤーのキャッピング剤として従来の低分子ではなく、結晶面に吸着し保護するセグメントを有する高分子を使用すること、第二に、アスコルビン酸などの穏和な還元剤を用いて2価銅化合物から1価銅塩化物への還元を行い、この1価銅塩化物の該キャッピング剤の保護下での緩やかな不均化反応で0価金属銅への還元を行うことで、水中、温和な条件下で選択的に銅ナノワイヤーが生成することを見出した。この2点のコンセプトを骨格として肉付けを行い、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、下記工程を有する銅ナノワイヤーの製造方法を提供するものである。
(1)1価又は2価の銅化合物(a)、塩化物イオン(b)、ポリエチレンイミン骨格(c1)とポリエチレングリコール骨格(c2)とを有する共重合体(C)を含有する水溶液を100℃以下で加熱する工程、
(2)前記(1)で得られた水溶液に2価銅化合物を1価銅化合物に還元する還元剤(d)を加え、100℃以下で加熱する工程、
(3)前記(2)で得られた反応液から固形分を取り出す工程
本発明の銅ナノワイヤーの製造方法は、水中、常圧、温和な温度条件で行うことができるため、特殊な設備が不要である。また安価な原料から製造でき、使用する反応試薬の量が少なく銅含量1%以上の高濃度での製造も可能なため、従来法より廃液・廃棄物を格段に少なくすることができ、量産性が高く、しかも低環境負荷である。
また、本発明の製造方法で得られる銅ナノワイヤーは、太さが50nm程度、平均長さは20μm以上、アスペクト比400以上である十分細く長いものであるため、フレキシブルな透明導電膜や配線基盤の材料として好適に用いることができる。またフィラーとして用いることで、少量の添加で二次元的、三次元的なネットワークを形成し、材料に導電性や熱伝導性を持たせることができる。
また銅ナノワイヤーの使用についても、必ずしも高温、高真空、高清浄度のための特殊な設備投資が必要ではない。本発明で得られる銅ナノワイヤーは一本一本が独立しているため、水、溶剤や各種塗料組成物等に容易に分散させることができ、塗布・印刷プロセスを含め、常圧、室温での簡単な施工が可能である。このため産業の広い範囲にわたって、例えば触媒、電磁波シールド、熱伝導材料、接着剤、接合剤、電子回路、各種センサ、建材、ディスプレイ、タッチパネル、太陽電池といった電子材料、磁気材料、光学材料として応用が可能である。
実施例1の生成物である銅ナノワイヤー分散液を減圧乾燥して得た銅ナノワイヤー凝集物の低倍率の走査型電子顕微鏡写真(500倍)である。 実施例1の生成物である銅ナノワイヤーの走査型電子顕微鏡写真(50,000倍)である。 実施例2の生成物である銅ナノワイヤーの走査型電子顕微鏡写真(50,000倍)である。 実施例3の生成物である銅ナノワイヤーの走査型電子顕微鏡写真(20,000倍)である。 実施例4の生成物である銅ナノワイヤーの走査型電子顕微鏡写真(20,000倍)である。 実施例5の生成物である銅ナノワイヤーの走査型電子顕微鏡写真(50,000倍)である。 比較例1の生成物に銅ナノワイヤーが含まれていないことを示す走査型電子顕微鏡写真(2,000倍)である。 比較例2の生成物が非常に太い銅ナノワイヤーであることを示す走査型電子顕微鏡写真(2,000倍)である。
[銅ナノワイヤー、及びその分散液の基本的合成手順]
実際の基本的合成手順を以下に記述する。例えば、塩化第二銅を原料として使用する場合、加熱・攪拌が可能な反応容器に銅原料を入れ、全量の20%程度の水で溶解させて、共重合体(C)、必要により塩基性化合物(e)、全量の70%程度の水、の順に添加して空気中で60〜70℃で30分加熱し、次いで50℃に降温して窒素置換し、アスコルビン酸を全量の10%程度の水に溶解させてから反応容器に添加して加熱を続けることで銅ナノワイヤーが生成する。次いでデカンテーションや遠心分離、濾過といった方法で溶解成分を除去し、必要により水や溶剤で洗浄後、得られた固体成分を目的に応じた媒体(水や溶剤)に再分散させることで銅ナノワイヤーの分散液を得ることができる。
[銅ナノワイヤー生成の基本原理と反応条件]
本発明では塩化第一銅、塩化第二銅、酸化銅などを銅化合物(a)として使用するものであるが、これは反応溶液中では様々な構造、組成を取り、また反応の進行に伴って変化することが分かっている。しかしながら反応途中で生成する銅化合物の構造は、基本的には、塩素を1つあるいは2つ含み、媒体である水、必要により添加される塩基性化合物(e)やキャッピング剤である共重合体(C)が配位しており、1価あるいは2価の化合物であるので、それらをまとめて1価又は2価の銅塩化物と記述する。
本発明の銅ナノワイヤーの製造方法における基本原理は、1価銅塩化物の不均化反応により0価金属銅を生成することである。例えば、2価銅塩化物を比較的弱い還元剤であるアスコルビン酸で還元すると金属銅にはならずに、準安定な1価銅塩化物への還元にとどまる。この1価銅塩化物が0価金属銅と2価銅化合物に不均化する反応速度は緩やかであるため、銅ナノワイヤー形成に好適である。より強力な還元剤を使用した場合(例えば水素化ホウ素リチウムや水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランなど)は、室温でも直ちに金属銅まで還元されてすべてナノ粒子となってしまう。逆に、例えば非特許文献2のようにグルコースのようなより弱い還元剤を使用した場合は、高温と長い反応時間が必要となる。
1価銅塩化物は水にごく少量溶解し、溶解したCuClが不均化反応を起こす。例えば、2価銅塩化物をアスコルビン酸で処理すると、pHが小さい場合はCuClの白色結晶が速やかに析出し、溶解部分は水溶液中の過剰の塩化物イオンのために安定な[CuClとなって不均化を阻害することがある。逆にpHが7より大きい場合は塩基性塩Cu(OH)及びその脱水物であるCuOが生成し、不均化反応によってではなく直接還元によって金属銅が生成するため、ナノワイヤー選択性が低下することがある。
従って、反応中における水溶液のpHは4〜6程度の弱酸性で還元反応を行うことが望ましく、このため必要により、塩基性化合物(e)を添加して調整することが好ましい。例えば、塩化第二銅を原料として使用する場合の経験的な量的関係は、(2×[X]+[AsA])/([EI]+[e])が1.0〜1.3の範囲にあることが望ましい。[X]は2価銅塩化物、[AsA]はアスコルビン酸、[EI]は共重合体(C)中のエチレンイミン単位、[e]は塩基性化合物、のそれぞれのモル濃度である。塩化第一銅、あるいは酸化銅と塩化物イオンを放出できる含塩素化合物を原料に使用する場合は、塩素と銅の比率が異なるため上式の限りではない。
反応温度は常圧の水中で行える範囲であれば良いが、40〜70℃が好適であり、45〜55℃がより好適である。これは、低温側では反応時間が非常に長くなり、例えば40℃未満であれば12時間以上に及ぶからであり、また逆に高温側では還元反応が促進されるためワイヤー選択性が低下するとともにワイヤーが太くなる傾向があるからである。
反応雰囲気については、銅の酸素酸化を防止するため、窒素やアルゴンなどの不活性気体下であることがよい。
[ポリエチレンイミン骨格(c1)とポリエチレングリコール骨格(c2)とを有する共重合体(C)]
本発明において使用する共重合体(C)を構成するポリエチレンイミン鎖(c1)は、該鎖中のエチレンイミン単位が銅およびそのイオンと配位結合が可能であり、金属銅結晶の異方性成長を誘導するキャッピング剤として働く。その構造はエチレンイミン単位を主な繰り返し単位とし、直鎖状、分岐状のいずれであっても良く、市販品・合成品のいずれでも良い。
一般に市販されている分岐状ポリエチレンイミンは3級アミンによって分岐状となっており、本発明で使用する共重合体(C)の原料として用いることができる。分岐度を(3級アミン)/(全てのアミン)のモル比で示すと、工業的な製造面、入手のし易さ等も鑑みると好ましい分岐度の範囲は(15〜40)/(100)である。
前記ポリエチレンイミン骨格(c1)部分の平均分子量としては、低すぎると、共重合体(C)による銅ナノワイヤーの吸着保護能力が低下しやすく、形状の分布やワイヤー選択性が不十分になることがあり、高すぎると銅ナノワイヤーが巨大化しやすく、形状や分散安定性に支障をきたすことがある。従って、数平均分子量としては2,000〜500,000の範囲であることが好ましく、2,000〜50,000の範囲であることがより好ましい。
上記ポリエチレンイミンのホモポリマーを単独でキャッピング剤として使用しても一応は銅ナノワイヤーが生成するが、その形状選択性が低い。このため、ポリエチレングリコール骨格(c2)を導入した2元以上の共重合体(C)を使用することで銅ナノワイヤーの細さ、長さ、形状選択性、分散性が大幅に改善できる。
共重合体(C)中のポリエチレングリコール骨格(c2)の分子量としては、親水性有機溶剤に分散させる場合は、分子量が低すぎると分散安定性が悪化し、高すぎると分散体同士が凝集してしまう可能性が考えられることから、数平均分子量として500〜10,000の範囲であることが好ましく、1,000〜5,000の範囲であることがより好ましい。
前記ポリエチレングリコール骨格(c2)は市販品でも、合成品でも良い。また、他の親水性ポリマーとの共重合体等であっても良い。このとき使用できる親水性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。共重合体を使用する場合においても、全体の分子量が500〜10,000の範囲であることが好ましい。
本発明において使用する共重合体(C)としては、前述のポリエチレンイミン骨格(c1)とポリエチレングリコール骨格(c2)とを有すればよく、その他の骨格を併有する3元共重合体であってもよい。
3元共重合体としては、例えば、前述の2元系共重合体に、更に疎水性セグメントとしてエポキシ樹脂を結合してなるものが挙げられる。エポキシ樹脂由来の構造を含有させることにより、水または親水性溶媒中に分散した場合には、分子内又は分子間相互の強い会合力により、ミセルのコアを形成し、安定なミセルを形成してその中に銅ナノワイヤーを取り込んで安定な分散液を得ることができる。また疎水性有機溶媒中に再分散させる場合には、該溶剤との高い親和性を有することで、分散安定性に優れたものにすることが可能となる。
前記エポキシ樹脂は一般的に市販、又は合成可能な構造であれば特に限定されることなく使用することができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、特開2003−201333号記載のキサンテン型エポキシ樹脂等が挙げられ、単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
また、エポキシ樹脂の分子量としては特に限定されるものではないが、親水性有機溶剤中に再分散させる場合は、低すぎると分散安定性が悪化し、高すぎるとミセル同士が凝集してしまう可能性が考えられ、また疎水性有機溶剤中に分散させる場合は、低すぎるとミセルの分散性が乏しくなり、高すぎると溶媒との親和性が保持できなくなる。これらの観点から、エポキシ樹脂の数平均分子量としては通常100〜200,000であることが好ましく、特に300〜100,000であることが好ましい。
本発明で用いる共重合体(C)の製造方法としては、特に限定されるものではないが、設計どおりの化合物を容易に合成可能である点から、下記の方法によるものが好ましい。
ポリエチレンイミン骨格(c1)は前述したとおり、市販又は合成したものを好適に用いることができる。まず、分岐状ポリエチレンイミン鎖を用いる場合について説明する。
分岐状ポリエチレンイミンの末端は1級アミンとなっているため、ポリエチレングリコール骨格(c2)の末端を1級アミンと反応する官能基に予め変性させて、反応させることによって、本発明で用いる事ができる共重合体(C)を合成することができる。1級アミンと反応する官能基としては、特に限定されるものではなく、例えば、アルデヒド基、カルボキシ基、イソシアネート基、トシル基、エポキシ基、グリシジル基、イソチオシアネート基、ハロゲン、酸クロライド、スルホン酸クロライド等が挙げられる。なかでもカルボキシ基、イソシアネート基、トシル基、エポキシ基、グリシジル基は反応性、取扱い易さ等、製法上有利であり、好ましい官能基である。
また1級アミンと直接反応する官能基でなくとも、種々の処理を行うことによって1級アミンと反応可能な官能基にできるものであれば良く、例えば、ヒドロキシ基を有するポリエチレングリコールを用いるのであれば、これをグリシジル化する等の手法でポリエチレンイミン鎖と反応させても良い。更には、分岐状ポリエチレンイミン鎖の1級アミンを、官能基を有するポリエチレングリコールと反応可能な他の官能基に変換する処理を施した後、これらを反応させて共重合体(C)を合成することも可能である。
ポリエチレンイミン骨格(c1)が直鎖状ポリエチレンイミン鎖の場合は、リビング重合によって、まずポリアシル化エチレンイミン鎖を合成し、引き続き、ポリエチレングリコールを導入することによって高分子化合物を得た後、ポリアシル化エチレンイミン鎖を加水分解して直鎖状ポリエチレンイミン鎖とする方法が挙げられる。
また、本発明で用いる共重合体(C)が例えば3元共重合体であるときの合成方法については、特開2006−213887号公報、特許第4026662号、特許第4026664号等にて既に提供しているので、それらを参照すれば良い。
本発明で用いる共重合体(C)中のポリエチレンイミン骨格(c1)とポリエチレングリコール骨格(c2)の各成分の鎖を構成するモノマーユニットのモル比(c1):(c2)としては特に限定されるものではないが、得られる銅ナノワイヤーの形状とその分散液の分散安定性に優れる点から、通常(c1):(c2)=1:1〜10の範囲であり、特に1:3〜10になるように設計することが好ましい。
上記共重合体(C)の使用割合は特に制限されるものではないが、少なすぎると銅ナノワイヤーの選択性が低下し、多すぎると1価銅塩化物を安定化して反応時間が長くなり収率が低下することが分かっている。したがって使用量は、当該共重合体(C)の構造や組成によって適当に変えるべきものであるが、概して、全体質量(水溶液)に対して0.01〜1質量%の範囲が好ましく、0.1〜0.5質量%の範囲であればより好ましい。また(銅イオン)/(共重合体(C)中のエチレンイミン単位)のモル比は1/0.01〜5の範囲であることが好ましく、1/0.03〜1であることがより好ましい。
[銅化合物]
本発明で用いる銅化合物は、反応系中で1価銅塩化物を生成できるようなものであれば特に限定されることはない。前述した基本原理により、銅ナノワイヤーは必ず1価銅塩化物の不均化反応を経由して進行すると考えられるためである。すなわち塩素を含む銅化合物を単独で用いてもよいし、塩素を含まない銅化合物と、塩化物イオンを放出することのできる含塩素化合物との組み合わせで用いてもよい。
塩素を含む銅化合物としては塩化第二銅CuCl、塩化第一銅CuCl、塩基性塩化銅Cu(OH)Cl(2−x)を好適に使用できる。例えば塩化第二銅を原料とした場合、最初に、後述する塩基性化合物(e)で処理すると淡青色の塩基性塩化銅となり、これを加熱すると脱水反応を起こして黒色の酸化第二銅を含む混合物となる。さらにアスコルビン酸などの酸性の還元剤を添加すると水溶液は弱酸性になるので、塩基性塩である酸化第二銅を含む混合物は一部溶解しつつ還元されて1価銅塩化物となり、これが不均化反応によって銅ナノワイヤーとなる。こういった経路であると想定されるため、いずれの銅塩化物を原料とするかは、銅ナノワイヤー合成反応をどの段階から始めるかというだけの違いであり、実質的には同じ反応である。
このため同様の理由から、反応経路上で生成する、塩素を含まない銅化合物である酸化第二銅CuOや、この前駆体である水酸化銅Cu(OH)も、原料として好適に使用することができる。この場合、塩化物イオン(b)を放出できる含塩素化合物を添加する必要がある。水酸化銅は不安定であるため、工業的入手が容易な酸化第二銅のほうが好ましい。さらに、市販の一般的な酸化第二銅粉末であっても使用できるが、酸化第二銅は水に不溶であるため、結晶サイズは小さいほうが好ましい。
塩素を含まない銅化合物として硫酸銅、酢酸銅、炭酸銅、硝酸銅といった、塩化物イオンまたは水酸化物イオン以外の陰イオンを含むものも使用できる。しかしワイヤー選択性は低下する傾向がある。これは反応系中で複数種類の銅化合物が生成する原因となり、これによって複数の経路で還元反応や不均化反応が起こるためである。さらに酸化第一銅CuOも使用できるが、酸化第二銅よりもワイヤー選択性が低下する傾向がある。
原料である銅化合物の濃度に特に制限は無いが、低すぎれば生産性が低下し、高すぎればワイヤーが太くなり、分散性が悪くなり凝集塊が沈殿するため、銅化合物の濃度(質量%)として0.1〜2%の範囲であることが好ましく、0.5〜1%の範囲であればより好ましい。
[2価銅化合物を1価銅化合物に還元する還元剤(d)]
前述の基本原理から、本発明で用いる還元剤(d)は2価銅化合物を1価に還元するものであり、なおかつ0価まで速やかに還元しない温和なものであれば良い。上記還元剤としては例えば、アスコルビン酸またはそのナトリウム塩、ヒドロキシアセトン、アセトアルデヒド、N,N−ジエチルヒドロキシルアミンが挙げられる。工業的入手が容易で安全である点からアスコルビン酸が好適である。
[塩化物イオン(b)を放出できる含塩素化合物]
塩素を含まない銅化合物を原料として用いる場合には、反応液中に塩化物イオン(b)を放出できる含塩素化合物を用いることが必須となるが、この化合物としては、水溶性の化合物であれば好適に使用することができる。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、第三級アミン塩酸塩、第四級アンモニウム塩化物やその構造を含むポリマー等が挙げられる。特に工業的入手が容易で安価である点から塩化ナトリウムが好適である。
[塩基性化合物(e)]
塩基性化合物(e)の役割は、反応系中の過剰の塩化物イオン(b)によって反応の進行が妨げられるのを阻止することである。すなわち反応液のpHを調整し過剰の塩化物イオン(b)をトラップすることによって、2価銅塩化物の還元の際に難溶性のCuCl結晶の析出を抑制することと、1価銅塩化物の溶解部分が安定な[CuClとなることを防ぐことである。
このため塩基性化合物(e)としては、水に不溶なもの、銅と安定な化合物をつくるもの(例えばピリジン)、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウムのように、塩化物イオン(b)または水酸化物イオン以外の陰イオンを含むものは、反応系中で複数種類の銅化合物が生成する原因となり、これによって複数の経路で還元反応や不均化反応が起こるため、ワイヤー選択性が低下する傾向がある。
したがって、塩基性化合物(e)としては上記以外の化合物を単独もしくは2種以上の混合物として好適に使用することができる。これはブレンステッド塩基であってもルイス塩基であってもよく、また無機塩基であっても有機塩基であってもよく、また高分子であっても低分子であってもよい。上記無機塩基としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどごく一般的な塩基性化合物を好適に使用することができるが、特に工業的入手が容易で安価である点から水酸化ナトリウムが好ましい。
上記有機塩基としてはアンモニア類、脂肪族および芳香族の第一級〜第三級アミン類を用いて銅ナノワイヤーを合成できるが、窒素周りの立体障害の小さい塩基はキャッピング剤と競合して銅ナノワイヤーに吸着するため、第三級アミン類を使用するのが好ましい。これは例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。特に工業的入手が容易で安価である点からトリエチルアミンが好ましい。
上記塩基性化合物(e)はpHを調整するために添加するものであり、調整の必要が無ければ用いなくともよい。例えば塩基性の共重合体(C)を多く使用したり、原料として塩基性酸化物である酸化第二銅を使用したりする場合は、塩基性化合物(e)の必要量は減少する。塩基性化合物(e)の添加量は、反応条件や試薬の種類に合わせて変化させるべきものであるが、一般的には、還元剤を含めて用いる全ての試薬を添加したときに、pHが3〜6の弱酸性になる量であることが好ましく、pH4〜6となる量であることがより好ましい。これは例えば銅イオンに対して塩化物イオン(b)が2倍モル存在する条件で酸性が強ければ、難溶性のCuClが大きな結晶として析出しやすく、また溶解銅成分が安定な[CuClとなって不均化反応を阻害するからであり、塩基性であれば溶解銅成分が塩基性塩となり、この塩化物イオン(b)を含まない塩基性塩は不均化反応によらない直接の金属銅への還元を起こすためワイヤー選択性が低下するからである。以上の機能を発揮するために、1価又は2価の銅化合物(a)に対する塩基性化合物(e)のモル比が4以下の範囲が適当である。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、特に断わりがない限り、「%」「部」は「質量%」「質量部」を表わす。
[走査電子顕微鏡による銅ナノワイヤー(ナノ構造体)の形状分析]
単離乾燥した銅ナノワイヤーを両面テープにてサンプル支持台に固定し、それをキーエンス製表面観察装置VE−9800にて観察した。
合成例1[2元系の共重合体(C−1)の合成例]
1−1 [トシル化ポリエチレングリコールの合成]
クロロホルム150mlにPEGM〔片末端がメトキシ基であるポリエチレングリコール、数平均分子量(Mn)5000〕(アルドリッチ社製)150gとピリジン24gとを混合した溶液と、トシルクロライド 29g(150mmol)とクロロホルム30mlとを均一に混合した溶液をそれぞれ調製した。
PEGMとピリジンの混合溶液を20℃で攪拌しながら、ここにトシルクロライドのトルエン溶液を滴下した。滴下終了後、40℃で2時間反応させた。反応終了後、クロロホルム150ml加えて希釈し、5%HCl水溶液250ml(340mmol)で洗浄後、飽和食塩水と水で洗浄した。得られたクロロホルム溶液を硫酸ナトリウムで乾燥した後、エバポレータで溶媒を留去し、さらに乾燥した。収率は100%であった。H−NMRスペクトルにより各ピークの帰属を行い(2.4ppm:トシル基中のメチル基、3.3ppm:PEGM末端のメチル基、3.6ppm:PEGのEG鎖、7.3〜7.8ppm:トシル基中のベンゼン環)、トシル化ポリエチレングリコールであることを確認した。
1−2 [PEG−分岐PEI構造を有する高分子化合物の合成]
上記1−1で得られたトシル化ポリエチレングリコール23.2gと、分岐状ポリエチレンイミン(日本触媒株式会社製、エポミン SP200)7.6gをDMA180mlに溶解後、炭酸カリウム0.12gを加え、窒素雰囲気下、100℃で6時間反応させた。反応終了後、固形残渣を除去し、酢酸エチル150mlとヘキサン450mlの混合溶媒を加え、沈殿物を得た。該沈殿物をクロロホルム100mlに溶解し、再度酢酸エチル150mlとヘキサン450mlの混合溶媒を加えて再沈させた。これをろ過し、減圧下で乾燥した。H−NMRスペクトルにより各ピークの帰属を行い(2.3〜2.7ppm:分岐PEIのエチレン、3.3ppm:PEG末端のメチル基、3.6ppm:PEGのEG鎖)、PEG−分岐PEI構造を有する2元系の共重合体(C−1)であることを確認した。収率は99%であった。
合成例2[3元系の共重合体(C−2)の合成例]
2−1 [エポキシ樹脂の変性]
EPICLON AM−040−P 37.4g(20mmol)、4−フェニルフェノール2.72g(16mmol)をDMA100mlに溶解後、65%酢酸エチルトリフェニルホスホニウムエタノール溶液0.52mlを加え、窒素雰囲気下、120℃で6時間反応させた。放冷後、多量の水中に滴下し、得られた沈殿物をさらに多量の水で洗浄した。再沈精製物をろ過後減圧乾燥し、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を得た。得られた生成物の収率は100%であった。
H−NMR測定を行いエポキシ基の積分比を考察した結果、ビスフェノールA型エポキシ樹脂1分子にエポキシ環は0.95個残っており、得られた変性エポキシ樹脂は、ビスフェノールA骨格を有する単官能性のエポキシ樹脂であることを確認した。
2−2 [PEG−分岐状PEI−BisAEP構造を有する高分子化合物の合成]
合成例1で得られたPEG−分岐PEI構造を有する共重合体(C−1)20gをメタノール150mlに溶解した溶液に、上記2−1で得られたビスフェノールA型の単官能性エポキシ樹脂4.9g(2.4mmol)をアセトン50mlに溶解した溶液を、窒素雰囲気下で滴下後、50℃で2時間攪拌することで反応を行った。反応終了後、減圧下で溶媒を留去し、さらに減圧乾燥することにより、PEG−分岐状PEI−BisAEP構造を有する3元系の共重合体(C−2)を得た。収率は100%であった。
実施例1
[銅ナノワイヤーの合成:CuCl/NaOHから(Cu0.64%、91mM)]
塩化第二銅2水和物3.4g(20mmol)を蒸留水20gに溶解させ、これに共重合体(C−1)の26.8%水溶液0.9g、1M水酸化ナトリウム水溶液45g(45mmol)を添加した。これらを300mLのガラス製反応容器に移し、反応混合物の質量が180gとなるように蒸留水を添加した。これをメカニカルスターラーで攪拌(60rpm)しながら70℃で30分加熱すると反応混合物は黒色懸濁液となった。容器を窒素置換し、3.52g(20mmol)のL−アスコルビン酸を20gの蒸留水に溶解させたものを加えて、70℃で30分、次いで50℃で2.5時間反応させた。反応が進行するにつれて反応液は赤海老茶色のシルク状光沢を呈した。固体を沈降させて回収し、水、エタノールで洗浄して銅ナノワイヤーを得た(0.78g、収率61%)。
得られた銅ナノワイヤーは太さ50nm、平均長さ20μm以上、アスペクト比400以上といった細く長いものであった(図2参照)。
実施例2
[銅ナノワイヤーの合成:CuCl/TEAから(Cu0.22%、35mM)]
塩化第二銅2水和物0.9g(5.3mmol)を蒸留水20gに溶解させ、これに共重合体(C−1)の26.%水溶液0.7g、トリエチルアミン1.15g(11.4mmol)を添加した。これらを300mLのガラス製反応容器に移し、反応混合物の質量が140gとなるように蒸留水を添加した。これをメカニカルスターラーで攪拌(60rpm)しながら50℃で30分加熱すると反応混合物は黒色懸濁液となった。容器を窒素置換し、0.94g(5mmol)のL−アスコルビン酸を10gの蒸留水に溶解させたものを加えて、50℃で7時間反応させた。反応が進行するにつれて反応液は赤海老茶色のシルク状光沢を呈した。固体を沈降させて回収し、水、エタノールで洗浄して銅ナノワイヤーを得た(0.25g、収率74%)。
実施例3
[銅ナノワイヤーの合成:CuO/NaClから(Cu0.40%、63mM)]
水180g、酸化第二銅1g(13mmol)、共重合体(C−1)の26.8%水溶液0.9g、塩化ナトリウム0.88g(15mmol)を順に反応容器に加え、窒素置換を行い、攪拌しながら70℃に加熱した。この懸濁液に、アスコルビン酸2.3g(13.1mmol)を水20gに溶解させたものを添加して2.5時間攪拌すると赤海老茶色の金属光沢を有する分散液となった。固体を沈降させて回収し、水、エタノールで洗浄して銅ナノワイヤーを得た(0.51g、収率64%)。
実施例4
[銅ナノワイヤーの合成:銅濃度1.06%、166mM]
塩化第二銅2水和物6.8g(40mmol)を蒸留水20gに溶解させ、これに共重合体(C−1)の26.8%水溶液1.85g、1M水酸化ナトリウム水溶液95g(95mmol)を添加した。これらを300mLのガラス製反応容器に移し、反応混合物の質量が200gとなるように蒸留水を添加した。これをメカニカルスターラーで攪拌(60rpm)しながら70℃で30分加熱すると反応混合物は黒色懸濁液となった。容器を窒素置換し、7.04g(40mmol)のL−アスコルビン酸を40gの蒸留水に溶解させたものを加えて、70℃で30分、次いで50℃で5時間反応させた。反応が進行するにつれて反応液は赤海老茶色のシルク状光沢を呈した。固体を沈降させて回収し、水、エタノールで洗浄して銅ナノワイヤーを得た(1.7g、収率67%)。
実施例5
[銅ナノワイヤーの合成:CuClから(銅濃度0.28%、43mM)]
塩化第一銅131mg(1.3mmol)、共重合体(C−2)の5%水溶液10g、蒸留水20g、アスコルビン酸150mg(0.85mmol)を反応容器に入れ、50℃で10時間攪拌した。固体を沈降させて回収し、水、エタノールで洗浄して銅ナノワイヤーを得た(54mg、収率64%)。
比較例1
[銅ナノワイヤーの合成:CuOから(NaCl無し)]
塩化ナトリウムを添加しない以外は、実施例3と同様にして反応を行った。反応液は金属光沢の無い赤褐色の懸濁液となった。生成物は異方性の無い金属銅粒子であり、ワイヤーはまったく得られなかった。
比較例2
[銅ナノワイヤーの合成:PEIホモポリマーをキャッピング剤として使用]
塩化第二銅2水和物225mg(1.3mmol)を蒸留水9gに溶解させ、これにキャッピング剤として分岐状ポリエチレンイミン(日本触媒株式会社製、エポミン SP200)200mgを添加して反応させた後、0.45gのアスコルビン酸を添加して60℃で5時間反応させた。反応が進行するにつれて反応液は青から緑、赤へと変化し、海老茶色の固体が析出し、凝集塊としてすべて沈殿した(10mg、収率12%)。この凝集塊は不定形のロッド状構造体と非常に太い銅ナノワイヤーの混合物であった(図8参照)。

Claims (10)

  1. (1)1価又は2価の銅化合物(a)、塩化物イオン(b)、ポリエチレンイミン骨格(c1)とポリエチレングリコール骨格(c2)とを有する共重合体(C)を含有する水溶液を100℃以下で加熱する工程、
    (2)前記(1)で得られた水溶液に2価銅化合物を1価銅化合物に還元する還元剤(d)を加え、100℃以下で加熱する工程、
    (3)前記(2)で得られた反応液から固形分を取り出す工程、
    を有することを特徴とする銅ナノワイヤーの製造方法。
  2. 前記銅化合物(a)が、塩化第一銅、塩化第二銅又は酸化銅である請求項1記載の銅ナノワイヤーの製造方法。
  3. 前記工程(1)において、更に塩基性化合物(e)を添加する請求項1又は2記載の銅ナノワイヤーの製造方法。
  4. 前記塩基性化合物(e)が、水酸化アルカリ金属化合物、水酸化アルカリ土類金属化合物、および第三級アミンからなる群から選ばれる1種以上の化合物である請求項3記載の銅ナノワイヤーの製造方法。
  5. 前記塩基性化合物(e)が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、及びトリエタノールアミンからなる群から選ばれる1種以上の化合物である請求項3記載の銅ナノワイヤーの製造方法。
  6. 前記工程(1)における水溶液中の、1価又は2価の銅化合物(a)に対する塩基性化合物(e)のモル比が4以下である請求項3〜5の何れか1項記載の銅ナノワイヤーの製造方法。
  7. 前記工程(2)で用いる2価銅化合物を1価銅化合物に還元する還元剤が、アスコルビン酸またはそのナトリウム塩、ヒドロキシアセトン、アセトアルデヒド、及びN,N−ジエチルヒドロキシルアミンからなる群から選ばれる1種以上の還元剤である請求項1〜6の何れか1項記載の銅ナノワイヤーの製造方法。
  8. 前記塩化物イオン(b)が、塩化ナトリウムを添加することによるものである請求項1〜7の何れか1項記載の銅ナノワイヤーの製造方法。
  9. 前記工程(1)における水溶液中の1価又は2価の銅化合物(a)の濃度が、0.1〜2質量%の範囲である請求項1〜8の何れか1項記載の銅ナノワイヤーの製造方法。
  10. 銅ナノワイヤーの太さが20nm〜70nmの範囲であり、且つ長さが5μm〜200μmの範囲である請求項1〜9の何れか1項記載の銅ナノワイヤーの製造方法。
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