JP2013194161A - インクジェットインクおよびインクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】水性インクジェットインクを使用して画像を形成した場合においても、擦過性を有する画像、特にハジキのない画像を提供することができるインクジェットインクおよびそれを用いたインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】水と、顔料と、樹脂と、水溶性有機溶剤と、を含有する水性インクジェットインクにおいて、前記樹脂が前記インクジェットインク中で溶解しているアクリルシリコン樹脂と、アクリルシリコン樹脂以外のバインダー樹脂と、を含むことを特徴とするインクジェットインク。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェットインクおよびインクジェット記録方法に関する。
産業用途のインクジェット記録インクとして、塩化ビニルシートなどの非吸水性記録媒体上に直接印字できるインクジェット記録インクが、近年開発されている。これらのインクジェット記録インクは、有機溶剤をベヒクルとした溶剤インクジェット記録インクや、重合性モノマーを主成分とする活性光線硬化型インクジェット記録インクが挙げられる。溶剤インクジェット記録インクは、その溶剤を乾燥させて大気中に蒸発させるため、近年社会的に問題となっているVOC(揮発性有機化合物)が多いという課題がある。また、作業者に対しても、臭気や安全上の影響が懸念され、十分な換気等の設備対応が必要となる。一方、活性光線硬化型インクジェット記録インクは、印字後直ちに硬化させるのでVOCはゼロに近い。しかしながら、使用するモノマーによっては、皮膚感作性を有するものが多い。また、高価な活性光線の照射光源をプリンターに組み込むという制約があり、印刷分野で実用化するという観点では課題を残している。このような背景から、環境負荷が少なく、従来からホーム用途で広く使用されている水性インクジェットインクを用いて非吸水性記録媒体に印字することが望まれる。
一方、長期の耐候性が求められる屋外掲示物や曲面を有する物体への密着性が求められる印字物等において、ポリ塩化ビニル製などの非吸水性記録媒体が使用されている。非吸水性記録媒体は、水性インクジェットインクを吸収しないため、印字物の定着性が低い。
水性インクジェットインクの記録媒体上での定着性を改善するために、水性インクジェットインクにバインダー樹脂を用いることが検討されている(特許文献1参照)。水性インクジェットインクに含まれる顔料はバインダー樹脂があると、記録媒体に固着することができ、定着性が向上する。
しかしながら、バインダー樹脂により水性インクジェットインクの定着性を向上させたとしても、画像表面の擦過性は低く、画像が剥離しやすいという問題があった。
画像表面の擦過性を向上させるために、アクリルシリコン樹脂微粒子を水性インクジェットインクに含有することが検討されている(特許文献2参照)。アクリルシリコン樹脂微粒子は滑り剤として使用され、画像表面の擦過性を向上させることができる。
特開2011−12253号公報 特開2008−284874号公報
しかしながら、アクリルシリコン樹脂微粒子を含む水性インクジェットインクを用いて非吸水性の記録媒体上に画像形成を行うと、画像が点状に抜けたハジキが発生するという問題があった。これは、前記インクジェットインクが表面張力の低いアクリルシリコン樹脂微粒子を含むこと、前記インクジェットインクが低粘度であること、および非吸水性の記録媒体に画像形成することにより生じる。図2(a)に示すように、非吸水性の記録媒体30上に着弾したインク液滴20に含まれるアクリルシリコン樹脂微粒子10は表面張力の高いインク液滴20中に溶解できずに、分散している状態である。その後、図2(b)に示すように、インク液滴20は非吸水性の記録媒体30に吸収されずに水分が蒸発してしまう。インク液滴20中の水分が蒸発することで、アクリルシリコン樹脂微粒子10がインク液滴20中を分散できなくなる。そのため、図2(c)に示すように、表面張力の低いアクリルシリコン樹脂微粒子10’が、アクリルシリコン樹脂微粒子10’よりも表面張力が高く、粘度の低い周囲のインクジェットインク21をはじいてしまうことでハジキが発生する。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、インクジェットインクに含有されるアクリルシリコン樹脂を溶解している状態にすることで、擦過性を有する画像、特にハジキのない画像を提供することを目的とする。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
[1] 水と、顔料と、樹脂と、水溶性有機溶剤と、を含有する水性インクジェットインクにおいて、
前記樹脂が前記インクジェットインク中で溶解しているアクリルシリコン樹脂と、アクリルシリコン樹脂以外のバインダー樹脂と、を含むことを特徴とするインクジェットインク。
[2] 前記アクリルシリコン樹脂のガラス転移温度(Tg)が0〜100℃であることを特徴とする[1]に記載のインクジェットインク。
[3] 前記アクリルシリコン樹脂が、モノマーとして少なくともエチレン性不飽和カルボン酸および/またはその塩と、(メタ)アクリル酸エステルと、片末端にメタクリル基を有するシリコンマクロモノマーと、を含むモノマー組成物を共重合したグラフトポリマーであることを特徴とする[1]または[2]に記載のインクジェットインク。
[4] 前記(メタ)アクリル酸エステルが下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする[3]に記載のインクジェットインク。
一般式(1) CH=C(R)−COO−(R−O)−R
[一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基、Rはエチレン基またはプロピレン基、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは1〜25の数であり、n=1のときにRは1〜6のアルキル基である]
[5] 前記シリコンマクロモノマーがポリシロキサン部をさらに有し、かつ前記シリコンマクロモノマーの重量平均分子量が5.0×10〜3.5×10であることを特徴とする[3]または[4]に記載のインクジェットインク。
[6] 前記バインダー樹脂が水溶性樹脂であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
[7] 前記水溶性樹脂が水溶性アクリル樹脂であることを特徴とする[6]に記載のインクジェットインク。
[8] 前記水溶性アクリル樹脂の酸価が50〜150mgKOH/gであり、ガラス転移温度(Tg)が30〜100℃であり、かつ重合平均分子量(Mw)が2.0×10〜8.0×10であり、
前記水溶性アクリル樹脂は、モノマーとして少なくともメタクリル酸メチルと、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルと、メタクリル酸とを含むモノマー組成物から合成される共重合樹脂であって、
メタクリル酸メチルと、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルとの総質量が共重合樹脂を構成する全モノマーの質量に対して80〜95質量%となる水溶性アクリル樹脂であることを特徴とする[7]に記載のインクジェットインク。
[9] 前記アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素原子の数が2〜8であることを特徴とする[8]に記載のインクジェットインク。
[10] 前記樹脂の総量が前記顔料の質量の1〜10倍であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
[11] 前記水溶性有機溶媒が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、またはこれらの有機溶剤のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルのいずれか1つ以上を含み、
その総質量が前記インクジェットインクの質量に対して5〜30%であることを特徴とする[1]〜[10]のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
[12] [1]〜[11]のいずれか一項に記載のインクジェットインクのインク液滴を、インクジェット記録ヘッドから吐出させて35〜60℃に設定された非吸水性の記録媒体上に付着させる工程と、
前記記録媒体を40〜90℃に加熱して着弾したインク液滴を乾燥させる工程と、を有するインクジェット記録方法。
本発明のインクジェット記録方法によれば、ハジキのない画像であって、かつ擦過性を有する画像を提供することができる。
本発明で使用するインク中で溶解しているアクリルシリコン樹脂の粒度分布の一例を示すグラフである。 溶解していないアクリルシリコン樹脂によるハジキのメカニズムの一例を示す図である。
1.水性インクジェットインクについて
水性インクジェットインクは、少なくとも水と、顔料と、樹脂と、水溶性有機溶剤とを含んでおり、前記樹脂はアクリルシリコン樹脂と、アクリルシリコン樹脂以外のバインダー樹脂とである。
<アクリルシリコン樹脂について>
本発明のインクジェットインクに含まれるアクリルシリコン樹脂は、インク中で溶解することを特徴とする。インク中で溶解するアクリルシリコン樹脂とは、アクリルシリコン樹脂を配合しようとするインクジェットインクの溶媒組成(水溶性有機溶剤の組成)を特定し;特定された組成の溶媒に、固形成分0.001質量%となるようにアクリルシリコン樹脂を配合したときに;配合したアクリルシリコン樹脂の体積平均粒子径が10nm未満となるアクリルシリコン樹脂であると定義される。なお、体積平均粒子径が10nm未満とは、粒子径が測定できないほど十分に小さい場合も含まれる。インク中に、体積平均粒子径が10nm以上のアクリルシリコン樹脂が存在すると、形成画像にハジキが生じやすい。
本発明のインクジェットインクに含まれるアクリルシリコン樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル(I)由来の構造単位(「構造単位(I)」)と、エチレン性不飽和カルボン酸(II)および/またはその塩由来の構造単位(「構造単位(II)」)と、シリコンマクロモノマー(III)由来の構造単位(以下「構造単位(III)」)を必須単位として有し;さらに他の重合性単量体由来の構造単位を有してもよい。
(メタ)アクリル酸エステル(I)は、通常は、(メタ)アクリル酸の脂肪族エステルである。脂肪族エステルとは、アルキルエステル、アルキレンオキサイドを含む脂肪族エステルなどである。アルキレンオキサイドを含む脂肪族エステルは、水および水溶性有機溶媒との親和性が高いため、アクリルシリコン樹脂の水系溶媒への溶解性を高めることができる。好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル(I)は、下記一般式(1)で表される。
一般式(1) CH=C(R)−COO−(R−O)−R
一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基、Rはエチレン基またはプロピレン基、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは1〜25の数であり、n=1のときにRは1〜6のアルキル基である。
本発明で使用するアクリルシリコン樹脂は幹部と枝部とを有することが好ましい。幹部は、構造単位(I)の重合性不飽和基と、構造単位(II)の重合性不飽和基と、シリコンマクロモノマーの重合性不飽和基とに由来する構造部を含む。
アクリルシリコン樹脂の枝部は幹部に結合している。枝部は、シリコンマクロモノマーのシリコン部を含む。シリコン部は、シリコンマクロモノマーの重合性不飽和基を介して、幹部に枝状に結合している。
インクジェットインクに含まれるアクリルシリコン樹脂の枝部をなすシリコン部が、形成画像に優れた耐擦過性や光沢性などを付与する。一方、幹部のカルボキシル基の一部または全部が塩基によって中和されているので、アクリルシリコン樹脂の水に対する溶解性が向上している。また、(メタ)アクリル酸エステル(I)のエステル部位があるので、アクリルシリコン樹脂は、低pHインクあるいは親水性有機溶媒が混合されたインクジェットインクにも溶解することができる。かつ、保存時に凝集や重合体の析出が抑制される。
本発明で使用するアクリルシリコン樹脂の構造単位(I)が上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(I)由来の構造単位である場合、Rは水素原子またはメチル基である。形成画像の耐擦過性を向上させるには、Rがメチル基であり、メタクリル末端を有することが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル(I)のRはエチレン基またはプロピレン基である。形成画像の光沢性を向上させるには、Rがエチレン基であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル(I)のRは水素原子または炭素数1〜6の1価のアルキル基である。なかでも、Rはアルキル基であることが好ましく、メチル基またはエチル基であることがより好ましい。重合時の混合溶媒中への(メタ)アクリル酸エステル(I)の溶解性が良好になり、シリコンマクロモノマーとの共重合がより円滑に行われるためである。さらに、得られるインクジェットインクの粘度が低くなる。
(メタ)アクリル酸エステル(I)のnは1〜25であり、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、2〜5であることが特に好ましい。nが小さい場合は、低pHあるいは親水性有機溶媒を多く混合されたインクジェットインク中での、アクリルシリコン樹脂の保存安定性が低下しやすい。nが25よりも大きいと、他の単量体との共重合性が低下する。
(メタ)アクリル酸エステル(I)の例には、上記の一般式(1)においてnが1〜10のいずれかの数である、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、ペントキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキソキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシ(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシ(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、ペントキシ(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキソキシ(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが含まれ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
上記の一般式(1)のnが2〜5のいずれかの数である、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートおよび/またはエトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートが、入手容易性に優れる点から好ましい。なかでも、メタクリル末端のものが形成画像の耐擦過性の点から好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル(I)の市販品には、新中村化学(株)製「NKエステル Mシリーズ」および「NKエステル AMシリーズ」(商品名)、日本油脂(株)製「ブレンマー PMEシリーズ」および「ブレンマー AMEシリーズ」(商品名)、共栄社化学(株)製「ライトエステルMC」および「ライトエステル130MA」などが知られており、これらの市販品の1種または2種以上を用いてもよい。
本発明で使用するアクリルシリコン樹脂は、エチレン性不飽和カルボン酸由来の構造単位(II)を有する。エチレン性不飽和カルボン酸は(メタ)アクリル酸エステル(I)およびシリコンマクロモノマーと共重合可能であり、カルボキシル基を1個または2個以上有するエチレン性不飽和カルボン酸のいずれもが使用できる。
エチレン性不飽和カルボン酸の例には、(メタ)アクリル酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、ω−カルボキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ω−ヒドロキシモノ(メタ)アクリレートの各種酸無水物付加物、などが含まれ、これらの1種または2種以上を用いることができる。なかでも、入手容易性、シリコンマクロモノマーとの共重合性、カルボン酸導入の効率の良さなどの点から、アクリル酸および/またはメタクリル酸が好ましく、メタクリル酸がより好ましい。
本発明で使用するアクリルシリコン樹脂は、シリコン部を有するシリコンマクロモノマー由来の構造単位(III)に有し、シリコンマクロモノマーは片末端に重合性不飽和基を有する。
シリコンマクロモノマー由来の構造単位(III)は、画像に耐擦過性、光沢を付与する。シリコンマクロモノマーは、その片末端に重合性不飽和基(特に重合性二重結合)を有するシリコンマクロモノマーであればよい。なかでも、シリコンマクロモノマーは、下記の一般式(IIIa)で表されるシリコンマクロモノマーが好ましい。
一般式(IIIa) D−O−[Si(R)(R)−O]−X
一般式(IIIa)中、Dは末端に重合性不飽和結合を有する基(重合性不飽和基)、RおよびRはそれぞれ独立して1価の脂肪族炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基、Xはラジカル重合性を持たない置換基、pは重合度を示す。
一般式(IIIa)で表されるシリコンマクロモノマーは、ジオルガノポリシロキサンよりなるシリコン部の片末端に重合性不飽和基を有する。シリコンマクロモノマーをアクリルシリコン樹脂の共重合成分とすることで、画像の耐擦過性などを高める。一般式(IIIa)において、RおよびRは炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基であることが好ましく、画像の耐擦過性の点からメチル基であることがより好ましい。
上記の一般式(IIIa)において、シリコンマクロモノマーはRおよびRの両方がメチル基であって、かつ片末端に重合性不飽和基が結合したジメチルポリシロキサン系マクロモノマーが好ましい。前記ジメチルポリシロキサン系マクロモノマーにおけるRおよび/またはRの一部がエチル基やその他のアルキル基および/またはフェニル基で置き替わったジオルガノポリシロキサン系マクロモノマーがより好ましく、RおよびRの全てがメチル基であるジメチルポリシロキン系マクロモノマーが更に好ましい。
シリコンマクロモノマー(III)の片末端の重合性不飽和基(例えば上記の一般式(IIIa)におけるD)は、(メタ)アクリル酸エステル(I)、エチレン性不飽和カルボン酸(II)、他の重合性単量体と共重合可能な重合性不飽和基であればいずれでもよい。共重合性能の点、およびシリコンマクロモノマーの製造の容易性などの点から、(メタ)アクリロイル基を端部に有する重合性不飽和基であることが好ましい。
シリコンマクロモノマーの片末端における重合性不飽和基Dの好ましい例は、下記の一般式(IIId)で表される。
一般式(IIId) CH=C(R)−COO−(CH)−(O)−(CH)−Si(R)(R)−
一般式(IIId)中、Rは水素原子またはメチル基、RおよびRは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、アセトキシ基、qはrが0のときに0〜2、rが1のときに2であり、rは0または1である。
シリコンマクロモノマー(III)のもう一方の端部(一般式(IIIa)のX)は、トリアルキルシリル基(例えばトリメチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルブチルシリル基など)などの化学的に安定な基が結合していることが、シリコンマクロモノマー、グラフト共重合体の化学的安定性などの点から好ましい。
シリコンマクロモノマー(III)のもう一方の端部に、シラノール基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アルコキシ基などの活性基が結合していると、シリコンマクロモノマーの化学的安定性が低下しやすい。
本発明で使用するアクリルシリコン樹脂を構成するシリコンマクロモノマー(III)の重量平均分子量は、5.0×10〜3.5×10であることが好ましく、8.0×10〜3.×10であることがより好ましく、1.0×10〜2.0×10であることが特に好ましい。重量平均分子量が前記範囲よりも小さいシリコンマクロモノマーを用いて製造したアクリルシリコン樹脂を、インクジェットインクに添加すると、耐擦過性に優れる画像を形成しにくい。一方、重量平均分子量が前記範囲よりも大きいシリコンマクロモノマーは、他の単量体との共重合性が低下して、未反応の単量体(シリコンマクロモノマーおよび/またはそれ以外の単量体)が残存しやすい。さらに、得られるアクリルシリコン樹脂の水溶化が困難となり、アクリルシリコン樹脂をインクジェットインクに添加したときに、画像にハジキなどを発生させやすい。
なお、本明細書における重量平均分子量(シリコンマクロモノマー、アクリルシリコン樹脂の重量平均分子量)は、ポリスチレンを基準物質とするゲル浸透クロマトグラフによる重量平均分子量をいう。
アクリルシリコン樹脂に含まれるシリコンマクロモノマー(III)は、1種類または2種以上であってもよい。
シリコンマクロモノマーの例には、東亞合成(株)製「AK−5」、「AK−30」および「AK−32」(商品名)、信越化学工業(株)製「X−22−174DK」、「X−24−8201」および「X−22−2426」(商品名)などとして販売されており、これらの市販品を用いてもよい。
アクリルシリコン樹脂は、上記した(メタ)アクリル酸エステル(I)、エチレン性不飽和カルボン酸(塩)(II)およびシリコンマクロモノマー(III)の3種を用いて形成されていてもよい。または(メタ)アクリル酸エステル(I)、エチレン性不飽和カルボン酸(II)およびシリコンマクロモノマー(III)と共に更に他の重合性単量体(以下「他の重合性単量体(IV)または構造単位(IV)」ということがある)を用いて形成されていてもよい。
アクリルシリコン樹脂が、他の重合性単量体(IV)を更に用いて形成されている場合、他の重合性単量体(IV)に由来する構造単位は、一般に幹部の構造単位をなす。
他の重合性単量体(IV)の例には、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸の脂環式炭化水素エステル、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリルアミドビニル、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル化合物、スルホン酸基含有単量体、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドンなどが含まれる。本発明で使用するアクリルシリコン樹脂は、これらの他の重合性単量体(IV)の1種または2種以上に由来の構造単位を有していることができる。
(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが含まれる。
(メタ)アクリル酸の脂環式炭化水素エステルの例には、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロオクチル、(メタ)アクリル酸シクロノニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸アダマンチルなどが含まれる。
(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルの例には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ω−ヒドロキシポリアルキレングリコール(n=2〜25)、(メタ)アクリル酸ω−ヒドロキシポリカプロラクトンなどが含まれる。
芳香族ビニル化合物の例には、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンなどが含まれる。
スルホン酸基含有単量体の例には、(メタ)アクリル酸2−スルホン酸エチル、スチレンスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸、(メタ)アリルオキシ2−ヒドロキシプロピルスルホン酸、(メタ)アクリル酸3−スルホプロピル、イタコン酸ビス(3−スルホプロピル)などが含まれる。
また、本発明で使用するアクリルシリコン樹脂は、少量(一般にアクリルシリコン樹脂を構成する全部単量体の合計モル数に基づいて2モル%以下、特に0.5モル%以下)であれば、1分子中に2個以上のビニル基を有する単量体由来の構造単位を、他の重合性単量体(IV)由来の構造単位として有していてもよい。
2個以上のビニル基を有する単量体の例には、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチレンフスフェイト、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、マレイン酸ジアリルエステル、ポリアリルサッカロースなどの架橋性単量体などが含まれる。
本発明で使用するアクリルシリコン樹脂が、他の重合性単量体(IV)由来の構造単位を有する場合は、上記した重合性単量体のうちでも、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、特にメタクリル酸のアルキルエステル由来の構造単位を有すること好ましい。(メタ)アクリル酸エステル(I)、エチレン性不飽和カルボン酸およびシリコンマクロモノマーとの共重合性が良好で、かつ得られるアクリルシリコン樹脂の形成画像の耐擦過性がより優れるためである。
(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの好ましい例には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチルなどが含まれる。特にメタクリル酸メチルが形成画像の耐擦過性を向上させる。
特に、(メタ)アクリル酸エステル(I)、エチレン性不飽和カルボン酸(II)およびシリコンマクロモノマー(III)と共に、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルを用いることが好ましく、メタクリル酸メチルを用いることがより好ましい。形成したアクリルシリコン樹脂における分子量分布、インクジェットインクの保存安定性、形成画像の耐擦過性に優れるためである。
本発明で使用するアクリルシリコン樹脂は、アクリルシリコン樹脂を構成する全構造単位の合計質量に基づいて、前記構造単位(I)〜(IV)を下記の割合で含有することが好ましい。
アクリルシリコン樹脂における構造単位(I)の含有量が、10〜70質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。前記構造単位(I)が10質量%未満の場合は低pHあるいは親水性有機溶媒が多く混合された場合にインクジェットインクの保存安定性が劣る。一方、70質量%超の場合は形成画像の耐擦過性が劣る。
アクリルシリコン樹脂における構造単位(II)の含有量は10〜30質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。前記構造単位(II)が10質量%未満の場合はアクリルシリコン樹脂の水溶化が困難となる。一方、30質量%超の場合は形成画像の耐水性が劣る。
アクリルシリコン樹脂における構造単位(III)は10〜50質量%であることが好ましく、15〜40質量%であることがより好ましい。前記構造単位(III)が10質量%未満の場合は形成画像の耐擦過性が劣る。一方、50質量%超の場合はアクリルシリコン樹脂の安定な製造が難しくなる。
アクリルシリコン樹脂における構造単位(IV)は0〜70質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。前記構造単位(IV)が少ない場合には形成画像の耐擦過性不足する傾向にある。一方、70質量%超の場合は各種物性のバランスを取るのが困難になる。
各構造単位を前記範囲で含有することによって、アクリルシリコン樹脂を製造する際の重合中および重合後の水性媒体中での安定性が向上する。さらに、形成画像の耐擦過性、光沢がより優れたものとなる。
本発明で使用するアクリルシリコン樹脂は、酸価(アクリルシリコン樹脂のカルボキシル基を塩基で中和する前の酸価)が40〜200mgKOH/gの範囲、更には60〜150mgKOH/g、特に80〜120mgKOH/gの範囲になるように、エチレン性不飽和カルボン酸由来の構造単位(II)の含有割合を調整することが好ましい。塩基で中和する前の酸価が低過ぎると、塩基で中和してもアクリルシリコン樹脂を水溶化することが困難になる。一方、酸価が高すぎると、形成画像の耐水性が低下する。
更に、本発明で使用するアクリルシリコン樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が0〜100℃であることが好ましく、20〜100℃であることがより好ましい。ガラス転移温度(Tg)の測定は示差走査熱量測定(DSC)、熱機械分析(TMA)等で測定することができる。
本発明で使用するアクリルシリコン樹脂の重量平均分子量は、6.0×10〜4.0×10であることが好ましく、8.0×10〜3.0×10であることがより好ましく、1.0×10〜2.0×10であることが特に好ましい。重量平均分子量が低過ぎると、シリコン部の特性が十分に発揮されず、形成画像の耐擦過性が悪化する。一方、重量平均分子量が高すぎると、アクリルシリコン樹脂の水溶化が困難になったり、インクジェットインクの粘性が高くなり取り扱いが難しくなる。
また、アクリルシリコン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は4.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.5以下であることが特に好ましい。分子量分布が大きい場合の物性の悪化は組成によって変わるが、インクジェットインクの保存安定性低下や、形成画像の耐擦過性低下が起こりやすい。なお、重合が不安定(均一溶解していない状態で重合反応が進行する)な場合に分子量分布が高くなる傾向がある。なお、本明細書中のアクリルシリコン樹脂の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)は、シリコンマクロモノマーと同様に、ポリスチレンを基準物質とするゲル浸透クロマトグラフによる重量平均分子量である。
本発明で使用するアクリルシリコン樹脂は、カルボキシル基の全てが中和されていないアクリルシリコン樹脂、およびカルボキシル基の一部または全てが塩基により中和されて塩の形態になっているアクリルシリコン樹脂を包含する。
本発明で使用するアクリルシリコン樹脂はカルボキシル基の一部または全てが塩基により中和されていると水への溶解性がより高まる。
アクリルシリコン樹脂のカルボキシル基の一部または全てが塩基によって中和されて塩の形態になっているものは、アクリルシリコン樹脂が有する全カルボキシル基の50モル%以上、特に75モル%以上が塩の形態になっていることが、インクジェットインクの保存安定性の点から好ましい。
中和に用いる塩基は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物などの無機アルカリ剤、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン類などを用いることができる。アルカリシリコン樹脂の水溶性や、インクジェットインクの保存安定性が強く求められる場合にはアルカリ金属水酸化物を、形成画像の耐水性が強く求められる場合にはアンモニアもしくは低沸点の有機アミンを用いることが望ましい。
アクリルシリコン樹脂の含有量は、インク全体に対して0.1〜2.0質量%であることが好ましい。アクリルシリコン樹脂の含有量が0.1質量%未満であると、画像表面の耐擦性を向上させる機能を十分には得られないことがある。一方、アクリルシリコン樹脂の含有量が2.0質量%超であると、インクジェットインクの粘度が高くなり、射出安定性が低下することがある。
水溶性インクジェットインクを用いて非吸水性の記録媒体に記録を行う場合は、インク液滴が記録媒体に吸収されず、印字物の定着性が低い。そこで、インクジェットインクにバインダー樹脂を含有させることで、記録媒体への定着性を向上させることが行われているが、従来のインク組成では画像表面の擦過性は低く、画像が剥離しやすかった。しかしながら、本発明のインクジェットインクは、前述のアクリルシリコン樹脂を含有しているため、記録媒体への定着性を確保しつつ、擦過性の高い画像を形成することができる。
アクリルシリコン樹脂の製造方法は、マクロモノマー法、イオン重合法、高分子反応による側鎖の導入による方法などが知られている。本発明で使用するアクリルシリコン樹脂は、幹部および枝部の重合度の調整が容易で、しかも幹部に枝部を容易に連結(結合)させることができる点から、マクロモノマー法によって製造することが好ましいがこれに限定されない。
マクロモノマー法は(メタ)アクリル酸エステル(I)、エチレン性不飽和カルボン酸(II)、重量平均分子量5.0×10〜3.5×10のシリコンマクロモノマー(III)および場合により他の重合性単量体(IV)を有機溶媒中で共重合することでアクリルシリコン樹脂を製造する。
均一に重合させるために、一般にエチレン性不飽和カルボン酸(II)のカルボキシル基が中和されていない状態で行うことが望ましい。
本発明で使用するアクリルシリコン樹脂の製造は、重合に用いる各単量体成分および重合により生成した重合体成分が混合溶媒中により安定に溶解して存在する点、各単量体成分の重合率およびアクリルシリコン樹脂の収率がより高くなる点、後に重合体を水溶液にする際に除去しやすい点、入手容易性、および価格などの点が優れる溶媒であればよい。特に限定されないが、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの混合溶媒、メチルエチルケトンとエタノールの混合溶媒、テトラヒドフランとイソプロピルアルコールの混合溶媒、またはテトラヒドフランとエタノールの混合溶媒中で重合反応を行うことができる。
本発明で使用するアクリルシリコン樹脂は、例えばラジカル重合法などで製造される。ラジカル重合開始剤の種類は特に限定されないが、アクリルシリコン樹脂の分子量の制御が容易である点、分解温度が低く取り扱い性に優れる点から、アゾ系重合開始剤および有機過酸化物系重合開始剤が好ましく用いられ、アゾ系重合開始剤がより好ましく用いられる。アゾ系重合開始剤の例には、シアノ系のアゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、非シアノ系のジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートなどが含まれる。有機過酸化物系重合開始剤の例には、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステルなどが含まれる。
ラジカル重合開始剤の含有量は、重合に使用する全単量体の総質量に対して、0.1〜15質量%であることが好ましく、0.3〜10質量%であることがより好ましい。
重合時間は、一般に3〜25時間程度が好ましく、3〜12時間程度がより好ましい。上記の製造工程によって、重量平均分子量が一般に6.0×10〜4.0×104の範囲にある本発明で使用するアクリルシリコン樹脂を得ることができる。
上記の製造方法で得られるアクリルシリコン樹脂の、アクリルシリコン樹脂中に存在するカルボキシル基は、中和されていないカルボキシル基になっている。得られたアクリルシリコン樹脂中に存在するカルボキシル基の一部または全部を塩基によって中和することによって、水溶化することができる。
中和に用いる塩基の例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、アンモニア水、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン類などが含まれる。
アクリルシリコン樹脂の塩基による中和・水溶化は、生成したアクリルシリコン樹脂を重合に用いた有機溶媒中に存在させた状態で行ってもよい。または重合系からアクリルシリコン樹脂を分離・回収した後に、回収したアクリルシリコン樹脂を水に入れ、そこに塩基を加えて中和・水溶化してもよい。一般的には、重合により生成したアクリルシリコン樹脂を含む有機溶媒溶液中に塩基および水を加えて中和・水溶化した後に有機溶媒の全部または一部を蒸留、減圧蒸留、乾燥などの適当な方法で留去する方法が採用されている。水溶化したアクリルシリコン樹脂を溶解した水溶液を簡単に得ることができる。
上記により得られる、アクリルシリコン樹脂のカルボキシル基の一部または全部を塩基によって塩の形態に変えて水溶化したアクリルシリコン樹脂をインクジェットインクに含有することで耐擦過性、光沢などに優れる画像を形成できる。
<バインダー樹脂について>
本発明のインクジェットインクに含まれるバインダー樹脂は、着弾したインク液滴を記録媒体に定着(接着)させる機能を有する。また、バインダー樹脂は、インク皮膜の耐擦性や耐水性を高めるだけでなく、光沢や光学濃度を高める機能を有することも求められている。そのため、バインダー樹脂は、後述する水系溶媒に分散させやすいこと、透明性をある程度有すること、他のインク成分との相溶性を有していることがより好ましい。
本発明のインクジェットインクに用いられるバインダー樹脂は、水系溶媒に対して溶解または分散することができるものであれば特に制限はないが、水系溶媒に対する溶解性や安定性が高いことから、水溶性樹脂を用いることがより好ましい。
本発明に用いることのできる水溶性樹脂は、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、アクリロニトリル−アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。なかでも、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂およびポリウレタン樹脂が好ましく、アクリル樹脂がより好ましい。
アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体であっても、(メタ)アクリル酸エステルと他の共重合モノマーとの共重合樹脂であってもよい。
(メタ)アクリル酸エステルの例には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが含まれる。なかでも、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルは、一種類であっても、二種類以上であってもよい。なかでも、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素原子の数が2〜8であることが好ましく、4〜8であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素原子の数が2以上であると、非吸水性記録媒体に対して強固な定着性を備えることができ、形成画像も強固になる。また、前記炭素原子の数が8以下であるとインクジェットインクの射出がより安定となる。
(メタ)アクリル酸エステルと他の共重合モノマーとの共重合樹脂における他の共重合モノマーの例には、酸性基を有するモノマーが含まれる。酸性基を有するモノマーの例には、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸などが含まれる。なかでも、(メタ)アクリル酸エステルと他の共重合モノマーとの共重合樹脂は、メタアクリル酸メチルと、アクリル酸アルキルエステルまたはメタアクリル酸アルキルエステルと、メタクリル酸とを含むモノマー組成物(酸性基を有するモノマー)とを、共重合反応させて得られる樹脂であることが好ましい。
メタアクリル酸メチルと、アクリル酸アルキルエステルまたはメタアクリル酸アルキルエステルとの総質量は、共重合樹脂を構成する全モノマーに対して80〜95質量%であることが好ましい。前記共重合樹脂を構成する主モノマーの総質量を前記範囲とすることで、前記共重合樹脂の水溶性有機溶剤への溶解性を確保できる。
アクリル樹脂に含まれる酸性基の少なくとも一部は、水系溶媒に対する溶解性を高める観点などから、塩基で中和されていることが好ましい。中和する塩基の例には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物(例えば、NaOH、KOH等);アミン類(例えば、アルカノールアミン、アルキルアミン等);アンモニアなどが含まれる。なかでも、アミン類で中和された樹脂は、記録媒体に定着後のインクから、アミンが水系溶媒と共に蒸発するため、アミンが除去された樹脂の溶解性が低下する。そのような樹脂を含む硬化後のインク皮膜は、耐水性を有するため、好ましい。アミンの例には、アンモニア、トリエチルアミン、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジ−n−ブチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、2−アミノー2−メチル−1−プロパノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−メチルアミノエタノールなどが含まれる。
本発明で水溶性アクリル樹脂を用いる場合、水溶性アクリル樹脂の酸価は、50〜150mgKOH/gであることが好ましい。水溶性アクリル樹脂の酸価が50mgKOH/g未満であると、樹脂の水に対する溶解性が十分ではないため、水系溶媒に対して十分には溶解できないことがある。一方、水溶性アクリル樹脂の酸価が150mgKOH/g超であると、インク皮膜が柔らかくなり、耐擦性が低下する。
本発明における水溶性アクリル樹脂の酸価とは、水溶性樹脂1g中に含まれる酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数を指し、JISK 0070の酸価測定、加水分解酸価測定(全酸価測定)によって測定することができる。
中和塩基の含有量は、水溶性樹脂の酸価および含有量にもよるが、水溶性樹脂に含まれる酸性基の化学当量数に対して0.5〜5倍の化学当量数となるようにすることが好ましい。中和塩基の含有量が、水溶性樹脂に含まれる酸性基の化学当量数に対して0.5倍未満の化学当量数であると、アクリル樹脂の分散性を高める効果が十分には得られないことがある。一方、中和塩基の含有量が水溶性樹脂に含まれる酸性基の化学当量数に対して5倍超の化学当量数であると、インク皮膜の耐水性が低下したり、変色、臭気などを生じたりすることがある。
水溶性アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2.0×10〜8.0×10であることが好ましく、2.5×10〜7.0×10であることがより好ましい。重量平均分子量が2.0×10未満であると、インクの定着能力が小さいため、得られる画像の耐擦性が十分でないことがある。一方、重量平均分子量(Mw)が8.0×10超であると、インクの粘度が高すぎて、ノズルからの射出安定性が低下することがある。
水溶性アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、30〜100℃であることが好ましく、40〜90℃であることがより好ましい。Tgが30℃未満であると、得られる画像の耐擦性が十分でなかったり、ブロッキングが発生したりすることがある。一方、Tgが100℃超であると、乾燥後のインク皮膜が硬すぎて脆くなり、耐擦性が低下することがあると考えられる。
バインダー樹脂の含有量は、インク全体に対して3〜10質量%であることが好ましい。バインダー樹脂の含有量が3質量%未満であると、顔料などを記録媒体上に定着させる機能を十分に得られないことがある。一方、バインダー樹脂の含有量が10質量%超であると、インクの粘度が高くなり、射出安定性が低下することがある。
非吸水性の記録媒体に画像を形成する場合でも、インクジェットインクにバインダー樹脂を含有することでインク液滴の定着性を高めることができる。さらにバインダー樹脂が水溶性アクリル樹脂である場合、水溶性アクリル樹脂はアクリルシリコン樹脂と構造が似ているため、アクリルシリコン樹脂の相溶性が高まる。それにより、アクリルシリコン樹脂の記録媒体への定着性をより高めることができる。
<顔料について>
顔料は、公知の有機顔料または無機顔料であってよい。有機顔料の例には、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、およびキノフタロニ顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ、および酸性染料型レーキ等の染料レーキ;ニトロ顔料;ニトロソ顔料;アニリンブラック;および昼光蛍光顔料等が含まれる。
以下に顔料の具体例を示すが、本発明はこれら例示する化合物に限定されるものではない。
マゼンタまたはレッドおよびバイオレット用の有機顔料の好ましい例には、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド8、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド41、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド148、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントレッド258、C.I.ピグメントレッド282、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23等が含まれる。
オレンジまたはイエローおよびブラウン用の有機顔料の好ましい例には、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー43、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー81、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー194、C.I.ピグメントイエロー199、C.I.ピグメントイエロー213、C.I.ピグメントブラウン22等が含まれる。
グリーンまたはシアン用の有機顔料の好ましい例には、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:5、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー29、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が含まれる。
ブラック用の有機顔料の例には、C.I.ピグメントブラック5、C.I.ピグメントブラック7等が含まれる。ホワイト用の有機顔料の例には、C.I.ピグメントホワイト6等が含まれる。
無機顔料の例には、カーボンブラック、および酸化チタン等が含まれる。
本発明のインクジェットインクは、顔料の分散性を高めるために、顔料分散剤をさらに含んでもよい。顔料分散剤の例には、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩等が含まれる。
顔料は、安定に分散させるために、顔料分散体としてインクジェットインクに添加されることが好ましい。顔料分散体は、水系溶媒中に安定に分散しうるものであればよく、顔料を分散樹脂で分散させた顔料分散体;顔料が水不溶性樹脂で被覆されたカプセル顔料;表面修飾され、分散樹脂を含まなくても分散可能な自己分散顔料などが挙げられる。
顔料を分散樹脂で分散させた顔料分散体に用いられる分散樹脂は、水溶性樹脂であることが好ましい。そのような水溶性樹脂の好ましい例には、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等が含まれる。また顔料の分散樹脂として、前記バインダー樹脂として用いられうる水溶性樹脂を用いて分散してもよい。
顔料を水不溶性樹脂で被覆したカプセル顔料における、水不溶性樹脂は、弱酸性ないし弱塩基性の範囲の水に対して不溶な樹脂である。具体的には、pH4〜10の水溶液に対する溶解度が2%以下である樹脂が好ましい。水不溶性樹脂の例には、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、アクリロニトリル−アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル−アクリル樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン−アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などが含まれる。カプセル顔料の平均粒子径は、インクの保存安定性、発色性などの観点から、80〜200nm程度であることが好ましい。
カプセル顔料(水不溶性樹脂で被覆された顔料微粒子)は、公知の方法で製造することができる。例えば、水不溶性樹脂を有機溶剤(例えばメチルエチルケトンなど)に溶解し、さらに塩基成分を加えて、水不溶性樹脂に含まれる酸性基を部分的もしくは完全に中和する。得られた溶液に、顔料と、イオン交換水とを添加して、混合および分散させる。その後、得られた溶液から有機溶剤を除去して、必要に応じてイオン交換水をさらに加えて、カプセル顔料を調製する。または、顔料と、重合性界面活性剤とを分散させた溶液に、モノマーを添加し、重合反応させて顔料を樹脂で被覆する方法などもある。
前述の分散樹脂および水不溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは3.0×10〜5.0×10であり、より好ましくは7.0×10〜2.0×10である。
分散樹脂および水不溶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−30〜100℃程度であり、より好ましくは−10〜80℃程度である。
顔料と分散樹脂の質量比は、顔料/分散樹脂が100/150〜100/30であることが好ましい。画像の耐久性と、インクジェットインクの射出安定性、保存安定性を高める観点などから、100/100〜100/40であることがより好ましい。
顔料の分散は、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等により行うことができる。
顔料分散体の粗粒分を除去し、顔料微粒子の粒径分布を揃える観点などから、顔料分散体は、インクジェットインクに添加される前に、遠心分離処理またはフィルターによるろ過処理などが施されていてもよい。
自己分散顔料は、市販品であってもよい。自己分散顔料の市販品の例には、CABO−JET200、CABO−JET300(キャボット社製)、ボンジェットCW1(オリエント化学工業(株)社製)等が含まれる。
顔料の含有量は、インク全体に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5.0質量%であることがより好ましい。顔料の含有量が少なすぎると、得られる画像の発色が十分ではなく、多すぎるとインクの粘度が高くなり、射出性が低下しやすい。
<樹脂と顔料の質量比について>
アクリルシリコン樹脂とバインダー樹脂の総質量は、顔料の質量に対して、1〜10倍であることが好ましく、1.5〜5倍であることがより好ましい。樹脂の総質量を前記範囲にすることで、顔料の記録媒体への定着性が高まる。
<水と水溶性有機溶剤の混合物(水系溶媒)について>
本発明における水系溶媒は、水と水溶性有機溶剤の混合物を示す。
本発明における水溶性有機溶剤は、アクリルシリコン樹脂、バインダー樹脂や他のインク成分を均一に分散または溶解できるものを用いることが好ましい。本発明で用いることのできる水溶性有機溶剤の例には、表面張力が低い水溶性有機溶剤などが含まれる。
表面張力が低い水溶性有機溶剤は、非吸水性の記録媒体(例えば塩化ビニルシートなど)や低吸水性の記録媒体(例えば印刷本紙など)上でも、インクを濡れ広がりやすくしうる。表面張力が低い水溶性有機溶剤は、具体的には25℃における表面張力が45mN/m以下である水溶性有機溶剤であることが好ましい。
そのような水溶性有機溶剤は、グリコールエーテル類または1,2−アルカンジオール類であることが好ましい。グリコールエーテル類の例には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルおよびトリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が含まれる。1,2−アルカンジオール類の例には、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、および1,2−ヘプタンジオール等が含まれる。
本発明に用いることができる水系溶媒は、必要に応じて、他の水溶性有機溶剤をさらに含んでもよい。他の水溶性有機溶剤の例には、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)等が含まれる。
本発明に用いることができる水溶性有機溶媒は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、またはこれらの有機溶剤のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオールのいずれか1つ以上を含むことが好ましい。その水溶性有機溶剤の総質量がインク全体に対して5〜30質量%であることが好ましい。5質量%未満であると、記録媒体上でのインクジェットインクの濡れ広がりが十分ではなく、30質量%超であると、インクジェットインクの乾燥性が低く画像が滲みやすい。
本発明のインクジェットインクは水を主成分とする。主成分とした水と水溶性有機溶媒の総含有量は、例えば、インク全体に対して、78.0〜96.8質量%であることが好ましい。水の含有量が多い場合には、アクリルシリコン樹脂における酸性基を増やすことが好ましい。
<その他の成分について>
本発明のインクジェットインクは、必要に応じてその他の成分をさらに含んでもよい。その他の成分の例には、界面活性剤、防カビ剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤、粘度調整剤、浸透剤、pH調整剤、乾燥防止剤(例えば尿素、チオ尿素、エチレン尿素など)等が含まれる。
防腐剤および防黴剤は、長期にわたってインクジェットインクの保存安定性を保つ機能を有する。防腐剤および防黴剤は、特に制限されないが、例えば芳香族ハロゲン化合物(例えば、Preventol CMK)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(例えば、PROXEL GXL)などであってよい。
<インクの物性について>
本発明のインクジェットインクは、水性インクジェットインクとして好ましく用いられる。
本発明のインクジェットインクは射出性の観点から、25℃におけるインク粘度が1〜40mPa・sであることが好ましく、5〜40mPa・sであることがより好ましく、5〜20mPa・sであることがさらに好ましい。
25℃におけるインクの表面張力は、低吸水性の記録媒体や非吸水性の記録媒体上でも、インクを濡れ広がりやすくするために、15mN/m以上35mN/m未満であることが好ましく、20〜30mN/mであることがより好ましい。
2.水性インクジェットインクの製造方法
本発明のインクジェットインクは、あらかじめ顔料分散体を作成し、これに前述のアクリルシリコン樹脂と、バインダー樹脂と、水系溶媒(水と水溶性有機溶剤)とを必要に応じて他の成分とを混合する工程を経て製造される。混合手段は、特に制限されず、スリーワンモーター、マグネチックスターラー、ディスパー、ホモジナイザー、ラインミキサー等であってよい。
3.インクジェット記録装置とそれを用いたインクジェット記録方法
本発明のインクジェット記録方法は、少なくとも以下の2工程を含む。
(1)インクジェットインクのインク液滴を、インクジェット記録ヘッドから吐出させて35〜60℃に設定された記録媒体上に付着させる工程
(2)前記記録媒体を40〜90℃に加熱して着弾したインク液滴を乾燥させる工程
<(1)工程について>
本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット記録ヘッド部でインク液滴を吐出する。インクジェット記録ヘッドは、オンデマンド方式のものでも、コンティニュアス方式のものでも構わない。また、インクジェット記録ヘッドの吐出方式は、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)等など何れの吐出方式であっても構わない。
インクジェット記録ヘッドから吐出されたインク液滴が着弾するときの記録媒体の温度は35〜60℃に設定されることが好ましい。記録媒体の温度を上記範囲とすることで、インク液滴が記録媒体上に着弾した時に適度に濡れ広がり、ドット形状が真円に近い形状となる。そのため、形成画像の粒状感が向上し、ドットの合一による画像の乱れを抑制できる。
記録媒体は、特に制限されず、吸水性の記録媒体(インクの吸収性を有する記録媒体)、や非吸水性の記録媒体(インクの吸収性を有しないか、またはインクの吸水性の低い記録媒体)などでありうる。本発明のインクジェットインクは特に非吸水性の記録媒体に記録した時に、画像の耐擦性が向上する。さらに、ハジキのない高画質な記録画像を形成できる。
吸水性の記録媒体の例には、普通紙、布帛、インクジェット専用紙、インクジェット光沢紙、ダンボール、木材などが含まれる。
非吸水性の記録媒体はインクの吸水性を有しない記録媒体だけでなく、インクの吸水性の低い記録媒体も含有する。非吸水性の記録媒体の例には、印刷本紙などのコート紙、樹脂基材、金属基材、ガラス基材などが含まれる。樹脂基材は、好ましくは疎水性樹脂からなる樹脂基材(プレート、シートおよびフィルムを含む)、該樹脂基材とその他の基材(紙など)との複合基材などであってよい。疎水性樹脂の例には、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが含まれ、好ましくは塩化ビニルである。
ポリ塩化ビニルからなる記録媒体の例には、SOL−371G、SOL−373M、SOL−4701(以上、ビッグテクノス株式会社製)、光沢塩ビ(株式会社システムグラフィ製)、KSM−VS、KSM−VST、KSM−VT(以上、株式会社きもと製)、J−CAL−HGX、J−CAL−YHG、J−CAL−WWWG(以上、株式会社共ショウ大阪製)、BUSMARK V400 F vinyl、LITEcal V−600F vinyl(以上、Flexcon製)、FR2(Hanwha製)LLBAU13713、LLSP20133(以上、桜井株式会社製)、P−370B、P−400M(以上、カンボウプラス株式会社製)、S02P、S12P、S13P、S14P、S22P、S24P、S34P、S27P(以上、Grafityp製)、P−223RW、P−224RW、P−249ZW、P−284ZC(以上、リンテック株式会社製)、LKG−19、LPA−70、LPE−248、LPM−45、LTG−11、LTG−21(以上、株式会社新星製)、MPI3023(株式会社トーヨーコーポレーション製)、ナポレオングロス光沢塩ビ(株式会社二樹エレクトロニクス製)、JV−610、Y−114(以上、アイケーシー株式会社製)、NIJ−CAPVC、NIJ−SPVCGT(以上、ニチエ株式会社製)、3101/H12/P4、3104/H12/P4、3104/H12/P4S、9800/H12/P4、3100/H12/R2、3101/H12/R2、3104/H12/R2、1445/H14/P3、1438/OneWay Vision(以上、Inetrcoat製)、JT5129PM、JT5728P、JT5822P、JT5829P、JT5829R、JT5829PM、JT5829RM、JT5929PM(以上、Mactac製)、MPI1005、MPI1900、MPI2000、MPI2001、MPI2002、MPI3000、MPI3021、MPI3500、MPI3501(以上、Avery製)、AM−101G、AM−501G(以上、銀一株式会社製)、FR2(ハンファ・ジャパン株式会社製)、AY−15P、AY−60P、AY−80P、DBSP137GGH、DBSP137GGL(以上、株式会社インサイト製)、SJT−V200F、SJT−V400F−1(以上、平岡織染株式会社製)、SPS−98、SPSM−98、SPSH−98、SVGL−137、SVGS−137、MD3−200、MD3−301M、MD5−100、MD5−101M、MD5−105(以上、Metamark製)、640M、641G、641M、3105M、3105SG、3162G、3164G、3164M、3164XG、3164XM、3165G、3165SG、3165M、3169M、3451SG、3551G、3551M、3631、3641M、3651G、3651M、3651SG、3951G、3641M(以上、Orafol製)、SVTL−HQ130(株式会社ラミーコーポレーション製)、SP300GWF、SPCLEARAD vinyl(以上、Catalina製)、RM−SJR(菱洋商事株式会社製)、HiLucky、New Lucky PVC(以上、LG製)、SIY−110、SIY−310、SIY−320(以上、積水化学工業株式会社製)、PRINT MI Frontlit、PRINT XL Light weightbanner(以上、Endutex製)、RIJET 100、RIJET 145、RIJET165(以上、Ritrama製)、NM−SG、NM−SM(日栄化工株式会社製)、LTO3GS(株式会社ルキオ製)、イージープリント80、パフォーマンスプリント80(以上、ジェットグラフ株式会社製)、DSE550、DSB 550、DSE 800G、DSE 802/137、V250WG、V300WG、V350WG(以上、Hexis製)、DigitalWhite 6005PE、6010PE(以上、Multifix製)等が含まれる。
<(2)工程について>
インクジェット記録装置は、記録媒体上に着弾したインク液滴の乾燥速度を制御しやすくする観点などから、記録媒体を加熱することが好ましい。
前記加熱は、記録媒体を接触式で加熱する各種ヒーター、加熱ローラーなどであってよいし、記録媒体の表面または裏面を非接触式で加熱するランプ等であってもよい。記録媒体を接触式で加熱する加熱手段は、通常、記録媒体の裏面に配置される。
記録媒体の加熱温度は、その表面温度が40〜90℃となるように設定されることが好ましく、50〜80℃であることがより好ましい。記録媒体の表面温度が40℃未満であると、インク皮膜を十分に乾燥(固化)させることができないことがある。一方、記録媒体の表面温度が90℃超であると、記録媒体が変形して波打ちすることがある。
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。これらの実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
<材料の準備>
(アクリルシリコン樹脂)
サイマック US−450(東亞合成社製、酸価:97mgKOH/g、ガラス転移温度:70℃)
サイマック US−480(東亞合成社製、酸価:48mgKOH/g、ガラス転移温度:0℃)
ボンコート SA−6360(DIC社製、ガラス転移温度:21℃)
AE980 (JSR社製、ガラス転移温度:−14℃)
AE982 (JSR社製、ガラス転移温度:0℃)
動的光散乱法粒度分布計ゼータサイザーナノS(マルバーン社製)を用いて測定したサイマック US−450に含まれるアクリルシリコン樹脂の粒子径分布を図1に示す。
(バインダー樹脂)
本発明で使用するバインダー樹脂は以下のモノマー組成物から構成される。
メタクリル酸メチル(MMA)
アクリル酸エチル(EA)
アクリル酸n−ブチル(BA)
アクリル酸2−エチルヘキシル(EHA)
メタクリル酸n−ブチル(BMA)
メタクリル酸ステアリル(SMA)
メタクリル酸(MAA)
スチレン(St)
本発明で使用するバインダー樹脂の組成および物性を以下の表1に示す。
Figure 2013194161
(バインダー樹脂P−1の合成例)
滴下ロート、還流管、窒素導入管、温度計および攪拌装置を備えたフラスコに、2−プロパノールを186質量部入れて、窒素バブリングしながら加熱還流した。得られた2−プロパノールに、メタクリル酸メチルを76質量部、アクリル酸2−エチルヘキシルを13質量部、およびメタクリル酸を11質量部添加して混合溶液を調製した。得られた混合溶液に、開始剤(AIBN)0.5質量部を溶解させたモノマー溶液を、滴下ロートで2時間かけて滴下した。滴下後、さらに5時間加熱還流を続けた後、放冷し、減圧下で2−プロパノールを留去した。それにより、(メタ)アクリル酸エステルと他の共重合モノマーとの共重合体(アクリル系共重合樹脂)を得た。
(バインダー樹脂P−2〜P−9の合成例)
バインダー樹脂の組成を表1に示されるように変更した以外はP−1と同様の手順でP−2〜P−9のバインダー樹脂を合成した。
(水溶性有機溶剤)
ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(DPGPE)
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE)
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGME)
ジプロピレングリコール(DPG)
2−ピロリジノン(2−PDN)
1,2−ヘキサンジオール(HDO)
<インクの調製>
(顔料分散液の調製)
顔料分散剤としてTEGO Dispers750W(固形分40質量%、エボニックデグサ社製)20質量部を、イオン交換水65質量部に加えた。この溶液に、C.I.ピグメントブルー15:3を15質量部添加して、プレミックスした後、0.5mmジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーにより分散させた。それにより、顔料固形分が15質量%であるシアン顔料分散体を得た。
(インクC−1の調製)
水溶性有機溶剤として、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE)を5質量部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGME)を5質量部、2−ピロリジノン(2−PDN)を10質量部、アクリルシリコン樹脂としてUS−450を0.3質量部、バインダー樹脂として上記合成したP−1を5質量部加えて攪拌し、全量が80質量部となるようにイオン交換水を加えて調製した。得られた溶液を、上記調製したシアン顔料分散体20質量部に加えて攪拌した。得られた溶液を0.8μmのフィルターでろ過して、シアンインクC−1を得た。
(インクC2〜C17の調製)
インクの組成を、表2に示されるように変更した以外はインクC−1と同様にしてインクC−2〜C−17を調製した。
<アクリルシリコン樹脂の物性の測定>
上記方法にて調製したインクC−1〜C−17に含有されるアクリルシリコン樹脂の溶解性を、以下の方法で測定した。
(水系溶媒の調製)
表2に記載された比率で、各水溶性有機溶媒を混合して、混合溶媒を得た。インクC−1の混合溶媒の質量部は20であり、インクC−2の混合溶媒の質量部は25であり、インクC−3の混合溶媒の質量部は20であり、インクC−4の混合溶媒の質量部は30であり、インクC−5の混合溶媒の質量部は23であり、インクC−6の混合溶媒の質量部は25であり、インクC−7の混合溶媒の質量部は25であり、インクC−8の混合溶媒の質量部は25であり、インクC−9の混合溶媒の質量部は25であり、インクC−10の混合溶媒の質量部は30であり、インクC−11の混合溶媒の質量部は35であり、インクC−12の混合溶媒の質量部は35であり、インクC−13の混合溶媒の質量部は20であり、インクC−14の混合溶媒の質量部は20であり、インクC−15の混合溶媒の質量部は25であり、インクC−16の混合溶媒の質量部は20であり、インクC−17の混合溶媒の質量部は20である。これらの混合溶媒にイオン交換水を100質量部になるように加えた。
(溶状)
上記調製した水系溶媒に、各インク組成のアクリルシリコン樹脂を固形分で1.0質量%となるように添加した。得られた溶媒の透明性を下記評価基準にて目視で評価した。下記評価結果を表2に示す。
◎:透明である
○:わずかに白濁している
×:白濁している
(平均粒子径)
上記調製した水系溶媒に、各インク組成のアクリルシリコン樹脂を固形分で0.001質量%となるように添加した。得られた溶媒中のアクリルシリコン樹脂の体積平均粒子径を動的光散乱法粒度分布計ゼータサイザーナノS(マルバーン社製)にて測定した。評価結果を表2に示す。
Figure 2013194161
実施例1
<画像形成方法>
吐出ヘッドとして、KM512MN(コニカミノルタIJ社製)駆動周波数13kHz、最小液滴量14plのものを用いた。そして、吐出ヘッドを4列搭載したオンデマンド型のインクジェットプリンターのインクジェットヘッドの1つに、得られたインク組成を装填した。
そして、インクジェットプリンターに設けられた接触式ヒーター(加熱手段)により、裏面(インクジェットヘッドと対向する面とは反対側の面)から加温して、インク液滴が付着するときの記録媒体を50℃に設定した。その後、インク液滴を乾燥させるために記録媒体の温度を60℃に加熱した。記録媒体は溶剤インクジェットプリンター用の軟質塩化ビニルシート MD5(メタマーク社製)用いて、その上に解像度720dpi×720dpi、10cm×10cmの印字率100%のベタ画像を形成し、記録画像とした。
<画像評価>
(耐擦過性)
印字率100%のベタ画像を、乾いた木綿(カナキン3号)に800gの加重をかけて擦り、下記基準に従って評価した。得られた評価結果を表3に示す。
◎:50回以上擦っても画像は変化しない
○:50回擦った段階で多少の傷が残るが画像濃度には影響せず、実用上問題ない
△:21〜50回擦る間に画像濃度が低下する
×:20回以下擦る間に画像濃度が低下する
(接着性)
印字率100%のベタ画像にセロファンテープを3cm貼り付け、勢いよくはがした後の画像表面を観察し、下記基準に従って評価した。得られた評価結果を表3に示す。
◎:まったく変化がない
○:わずかに跡が残るが、実用上問題ない
△:画像の一部がわずかにはがれて一部濃度が低下する
×:画像の大部分がはがれて記録媒体の白地が見える
(射出性)
25℃、相対湿度30%の条件で、印字率100%のベタ画像を連続10回プリントした。10回目の画像を観察し、下記基準に従って評価した。得られた評価結果を表3に示す。
◎:画像の欠陥(インク射出不良によるスジ)はみられない
○:画像の書き出し部(2mm以下)に、インク射出不良によるかすれがわずかに見られる
△:画像の欠陥(インク射出不良によるスジ)がわずかに見られる
×:インク射出不良により、画像にスジ状の欠損が多くみられる
(ハジキ故障)
印字率100%のベタ画像を目視で観察し、下記基準に従って評価した。得られた評価結果を表3に示す。
◎:印字部分にハジキによる故障はまったくない
○:画像をルーペで拡大すると、ごく僅かに画像のムラが見られるが、画質に影響はない
△:画像を注視すると一部に画像のムラがみられる
×:画像に点々とはじきがみられ、遠くから見ても目立つ
Figure 2013194161
表3に示されるように、実施例1〜12は全ての評価項目において良好な結果が得られることが分かる。これらの中でも、インク中で溶解しているアクリルシリコン樹脂の含有量とバインダー樹脂のガラス転移温度・モノマーの種類・重量平均分子量などが上述の好ましい範囲である実施例は特に良好な結果が得られる(実施例1〜4、6、10、11)。
一方、アクリルシリコン樹脂とバインダー樹脂とを含有していない比較例1と比較例2は耐擦過性および接着性の評価が低下している。これは、バインダー樹脂を含有していないことでインク液滴の記録媒体への定着性が低下することや、アクリルシリコン樹脂を含有していないことで画像の擦過性が低下することが考えられる。
比較例3〜5のアクリルシリコン樹脂は酸価が低く、またアクリルシリコン樹脂を構成するモノマーとして一般式(1)で表されるような溶解性の高いモノマーの量が少ないと考えられる。そのため、比較例3〜5のアクリルシリコン樹脂はインク中に溶解できないと考えられる。そのアクリルシリコン樹脂を含有している比較例3〜5は射出性とはじき故障が低下している。これは、インク中で溶解していないアクリルシリコン樹脂がノズルに付着してしまいノズルの撥水膜と反発しあうことで射出性を低下させることや、インク中で溶解していないアクリルシリコン樹脂が記録媒体上のインクをはじいてしまうためと考えられる。
実施例2
インクC−1とC−15を用いて記録媒体の加熱温度を3段階に変更したこと以外は上記の方法と同様に画像形成を行った。表3に示した評価項目のうち、「耐擦過性」と「接着性」と「ハジキ故障」について、上記と同様の評価基準にて評価を行った。
Figure 2013194161
表4に示されるように、インク中で溶解しているアクリルシリコン樹脂を含有するインクジェットインクを使用した実施例13〜15は、インク中で溶解していないアクリルシリコン樹脂を含有するインクジェットインクを使用した比較例6〜8に比べ、良好な結果が得られた。特に、記録媒体乾燥温度が60℃と80℃の場合は、記録媒体上のインク皮膜を十分に乾燥(固化)させることができたため、全ての評価項目において優れた結果が得られた。
本発明によれば、擦過性を有する画像、特にハジキのない画像を提供することができるインクジェットインクおよびそれを用いたインクジェット記録方法を提供することができる。

Claims (12)

  1. 水と、顔料と、樹脂と、水溶性有機溶剤と、を含有する水性インクジェットインクにおいて、
    前記樹脂が前記インクジェットインク中で溶解しているアクリルシリコン樹脂と、アクリルシリコン樹脂以外のバインダー樹脂と、を含むことを特徴とするインクジェットインク。
  2. 前記アクリルシリコン樹脂のガラス転移温度(Tg)が0〜100℃であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。
  3. 前記アクリルシリコン樹脂が、モノマーとして少なくともエチレン性不飽和カルボン酸および/またはその塩と、(メタ)アクリル酸エステルと、片末端にメタクリル基を有するシリコンマクロモノマーと、を含むモノマー組成物を共重合したグラフトポリマーであることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットインク。
  4. 前記(メタ)アクリル酸エステルが下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする請求項3に記載のインクジェットインク。
    一般式(1) CH=C(R)−COO−(R−O)−R
    [一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基、Rはエチレン基またはプロピレン基、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは1〜25の数であり、n=1のときにRは1〜6のアルキル基である]
  5. 前記シリコンマクロモノマーがポリシロキサン部をさらに有し、かつ前記シリコンマクロモノマーの重量平均分子量が5.0×10〜3.5×10であることを特徴とする請求項3または4に記載のインクジェットインク。
  6. 前記バインダー樹脂が水溶性樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
  7. 前記水溶性樹脂が水溶性アクリル樹脂であることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットインク。
  8. 前記水溶性アクリル樹脂の酸価が50〜150mgKOH/gであり、ガラス転移温度(Tg)が30〜100℃であり、かつ重合平均分子量(Mw)が2.0×10〜8.0×10であり、
    前記水溶性アクリル樹脂は、モノマーとして少なくともメタクリル酸メチルと、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルと、メタクリル酸とを含むモノマー組成物から合成される共重合樹脂であって、
    メタクリル酸メチルと、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルとの総質量が共重合樹脂を構成する全モノマーの質量に対して80〜95質量%となる水溶性アクリル樹脂であることを特徴とする請求項7に記載のインクジェットインク。
  9. 前記アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素原子の数が2〜8であることを特徴とする請求項8に記載のインクジェットインク。
  10. 前記樹脂の総量が前記顔料の質量の1〜10倍であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
  11. 前記水溶性有機溶媒が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、またはこれらの有機溶剤のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルのいずれか1つ以上を含み、
    その総質量が前記インクジェットインクの質量に対して5〜30%であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
  12. 請求項1〜11のいずれか一項に記載のインクジェットインクのインク液滴を、インクジェット記録ヘッドから吐出させて35〜60℃に設定された非吸水性の記録媒体上に付着させる工程と、
    前記記録媒体を40〜90℃に加熱して着弾したインク液滴を乾燥させる工程と、を有するインクジェット記録方法。
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