JP2013185239A - アルミニウム溶湯接触部材およびその製造方法 - Google Patents

アルミニウム溶湯接触部材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Ni‐Mo‐B系合金のアルミニウム合金溶湯に対する耐溶損性を向上させる。
【解決手段】Ni、MoおよびBを含む合金の表面に、Na、K、Li、Mg、Ca、Sr、RbおよびCsからなる群から選択された少なくとも一の元素の酸化物と、SiOとを含む混合物を接触させた状態で、前記合金を酸素含有雰囲気中で加熱することにより前記合金の表面にNi−Mo酸化物を含む酸化物粒子が凝集した層を形成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯(以下「アルミニウム溶湯」と称する)に対して優れた耐溶損性を有し、溶解または鋳造設備に好適に用いることができるアルミニウム溶湯接触部材、並びにその製造方法に関する。
アルミニウム溶湯に接触する部材には、アルミニウム溶湯に対する高い耐溶損性が要求される。断続的にアルミニウム合金溶湯に接触する部材(例えばダイカストマシンのプランジャスリーブ、プランジャチップ、鋳抜きピン等)の少なくとも表面層を構成するために、アルミニウム溶湯に対して比較的高い耐溶損性を有するNi‐Mo‐B系合金(Ni‐Mo‐B系サーメットとも呼ばれる)が用いられている(例えば特許文献1〜5を参照)。Ni‐Mo‐B系合金は、典型的には、Niまたはその合金(例えばNi−Si−Mo合金またはNi−Si合金)からなる結合層とこの結合層中に分散したNi−Mo硼化物からなる分散層とを有する金属組織を有している。Ni‐Mo‐B系合金は、構造用鋼、金型鋼などの常用の鉄鋼材料と比べれば比較的良好な耐溶損性を示すが、常にアルミニウム合金溶湯に接触している部材に使用すると短期間で溶損してしまう。
Ni‐Mo‐B系合金の表面を酸化させて酸化膜を形成することにより、耐溶損性が向上することが知られている。しかし、この場合も、常時アルミニウム合金溶湯に接触した使用に耐えるほどに満足できる耐溶損性を得ることはできない。
前記Ni‐Mo‐B系合金の耐溶損性を向上させるために、前記Ni‐Mo‐B系合金の表面にセラミックス皮膜を形成する技術もまた知られている。セラミックス皮膜は、例えば、物理的落着法(PVD)や化学的蒸着法(CVD)などにより形成された窒化チタンや室化クロムの薄膜からなる。セラミックス皮膜そのものの耐溶損性は、断続的にアルミニウム合金溶湯に接触した使用に耐える程度はある。しかしながら、アルミニウム合金溶湯に断続的に接触する部材にはその表面に急激な温度変化が発生するので、セラミックス皮膜には熱衝撃に耐える強度が要求される。強度向上の観点からはセラミックス皮膜の膜厚は厚いことが望ましいのであるが、セラミックスとNi‐Mo‐B系合金との熱膨張係数には大きな差があるため、セラミックス皮膜の膜厚が大きくなるほどセラミックス皮膜とNi‐Mo‐B系合金の界面に生じる熱応力が高くなりセラミックス皮膜は剥離しやすくなる。また、セラミックスは脆性で切欠き感受性が高く、わずかな成膜上の欠陥も割れの原因となりうる。以上のことから、Ni‐Mo‐B系合金にセラミックス皮膜を形成したとしても、セラミックス皮膜の信頼性が十分ではなく、このためアルミニウム溶湯接触部材全体としての耐溶損性には不安がある。
上記の問題があるため、Ni‐Mo‐B系合金はアルミニウム合金溶湯に常に接触している部材に用いる場合に、満足できる寿命を達成することができていない。
特開2002‐69562号公報 特開2003‐155527号 特開2003‐293013号 特開2004‐17144号 特開2004‐18995号
本発明はNi‐Mo‐B系合金のアルミニウム合金溶湯に対する耐溶損性を向上させる表面処理技術を提供するものである。
本発明は、Ni、MoおよびBを含む合金の表面に、Na、K、Li、Mg、Ca、Sr、RbおよびCsからなる群から選択された少なくとも一の元素の酸化物と、SiOとを含む混合物を接触させた状態で、前記合金を酸素含有雰囲気中で加熱することにより前記合金の表面にNi−Mo酸化物を含む酸化物粒子が凝集した層を形成することを特徴とするアルミニウム溶湯接触部材の製造方法を提供する。
前記合金の表面に前記混合物を接触させることは、前記少なくとも一の元素の酸化物の粒子と、SiOの粒子とが混合された混合粉末を粉末の状態で前記合金の表面に接触させることにより行うことができる。
前記合金の表面に前記混合物を接触させることは、前記少なくとも一の元素の酸化物とSiOとを分散媒中に分散させて得たスラリーを前記合金の表面に塗布することにより行うこともできる。
また、上記の方法により前記合金の表面に形成されたNi−Mo酸化物を含む酸化物粒子を前記合金の表面から除去することにより得られた前記酸化物粒子からなる原料粉末を、Ni、MoおよびBを含む別の合金の表面に接触させた状態で前記別の合金を酸素含有雰囲気中で加熱することにより前記別の合金の表面にNi−Mo酸化物を含む酸化物粒子が凝集した層を形成することも可能である。
さらに本発明は、Ni、MoおよびBを含む合金と、前記合金の表面に形成されたNi−Mo酸化物を含む酸化物粒子が凝集した層と、を備え、上記のいずれかの製造方法により製造されたアルミニウム溶湯接触部材を提供する。前記アルミニウム溶湯接触部材は、鉄鋼材料または鋳鉄材料からなる基材をさらに備えて構成することができ、この場合、Ni、MoおよびBを含む合金が前記基材の表面を覆う被覆層として設けられる。前記基材へのNi、MoおよびBを含む合金の被覆は、溶射、焼結同時複合化等により行うことができる。もちろん、上記のような基材を用いることなく、Ni、MoおよびBを含む合金(例えば焼結法により形成)およびその表面の酸化物粒子が凝集した層のみからアルミニウム溶湯接触部材を構成することができる。
Ni−Mo酸化物はアルミニウム溶湯に対して濡れ性が悪く、しかも耐溶損性に優れているため、下地のNi、MoおよびBを含む合金が溶損するまでの時間を大幅に延ばすことができる。
本発明によるアルミニウム溶湯接触部材の表面の酸化物粒子のSEM写真(二次電子線像)である。 鉄鋼基材、Ni‐Mo‐B系合金およびその表面の酸化物粒子層の積層構造を示す概略断面図である。 試験装置を示す概略図である。 試験後の試験片Aの外観写真である。 第2方法を説明する概略図である。
以下に本発明について詳細に説明する。本発明によるアルミニウム溶湯接触部材は、Ni‐Mo‐B系合金(Ni、MoおよびBを含む合金)の最表面に酸化物粒子(詳細後述)が凝集した層を形成することを特徴としている。図1には、本発明によるアルミニウム溶湯接触部材の表面にある酸化物粒子層の表面のSEM写真が示されている。
背景技術の項において説明したように、Ni‐Mo‐B系合金を酸素含有雰囲気中で加熱すると酸化層が生じる。この酸化層は、X線回折の結果により、MoO、MoO、NiO、B、Ni、NiMoO等の酸化物微粒子により構成されていることがわかっている。
発明者の研究によって、Ni−Mo酸化物であるNiMoOはアルミニウム溶湯に対して濡れ性が悪く、耐溶損性に優れており、酸化物粒子層中のNiMoOの比率を増すことにより、下地のNi‐Mo‐B系合金が溶損するまでの時間を著しく延ばすことができることが見いだされた。しかしながら、従来方法でNi‐Mo‐B系合金を大気中で加熱することにより形成した酸化物粒子層には以下の問題があることがわかった。すなわち、基材中のMo、Bが酸化されることでMoO、Bが生成される。このBはNiとなり安定化し、緻密な膜が生成される。しかし、このとき、NiMoOの生成は抑制されてしまう。Niが多く、NiMoOが僅かにしか生成されていない酸化物粒子膜は満足しうる耐溶損性を持たない。
発明者はNiMoOの含有比率を増大させる手法について研究を行った結果、Ni‐Mo‐B系合金にガラス状のSiOを接触させて酸素含有雰囲気(例えば大気中)で加熱することによりNiMoOの含有比率を増大させることができることを見いだした。そのメカニズムは、初期に形成されたBがSiOと融合してSiO‐Bとなり、Bが安定して存在できるようになるのでNiの生成が抑制され、Niの生成が抑制されると、代わってNiMoOの生成が促進され、生成される酸化物粒子層はNiMoOを主体としたものになる、というものであると推定される。
ところで、ガラス状のSiOをその融点である1600℃付近まで加熱した状態にしないと、実用的な反応速度でNi‐Mo‐B系合金との間の上記反応は生じない。一方、Ni‐Mo‐B系合金を加熱すると、約900℃でNi結合層に液相が生じ、Ni‐Mo‐B系合金に望まれる金属組織が変化してしまう。この問題を解決するため、Ni‐Mo‐B系合金に接触させるガラス状SiOにNa、K、Li、Ba、Mg、Ca、Sr、Rb、Csの中の1種類以上のアルカリ元素(I族元素)の酸化物(アルカリ酸化物)またはアルカリ土類元素(II族元素)の酸化物(アルカリ土類酸化物)を添加することとした。上記のアルカリ酸化物またはアルカリ土類酸化物は、ガラスに取り込まれるとSiOの網目構造の結合を切断してガラスの融点を下げる働きがある。このことはガラス成形分野ではよく知られており、本発明ではこれを利用している。そしてSiOへのBの拡散はガラスの融点に近づくほど速くなるので、ガラス状SiOにアルカリ酸化物またはアルカリ土類酸化物が含まれるとより低い温度でNiMoOの生成が促進される。これにより、NiMoOを主体とする酸化物粒子層(具体的には、NiMoOを主体としてその他にMoO、MoO、NiO、B、Niから構成されている酸化物粒子層)が厚く安定して生成されるので、高い耐溶損性を得ることができる。そして、Ni‐Mo‐B系合金の金属組織の望ましくない変化は防止されるか最小限に抑制される。
上記の酸化物粒子層は、具体的には、ガラス状SiOおよび上記のアルカリ酸化物及び/又はアルカリ土類酸化物を含有するスラリーをNi‐Mo‐B系合金の表面に塗布して、酸素含有雰囲気で加熱することにより生成することができる。加熱温度は、400℃〜900℃の範囲とすることが好ましい。加熱温度の下限は、実用上十分な反応速度が得られるために必要な温度であり、添加されるアルカリ酸化物/アルカリ土類酸化物の組成によっても異なるが、概ね上記の400℃である。加熱温度の上限は、Ni‐Mo‐B系合金のNi結合層に液相が生じない温度であり、Ni‐Mo‐B系合金の組成によっても多少変動するが、概ね上記の900℃である。但しNi‐Mo‐B系合金の下に基材(例えば鉄鋼材料)があり、当該基材に熱的に悪影響を与えたく無い場合には、加熱温度の上限はこれに拘束される。
上記のスラリーは、具体的には、ガラス状SiOの粉末と、上記のアルカリ酸化物及び/又はアルカリ土類酸化物の粉末と、任意添加物として適当な不定形耐火物(耐火物粉末)とを適当な分散媒、例えば水に溶くことにより調整することができる。このようなスラリーを用いることにより、Ni‐Mo‐B系合金の形状が複雑であったとしても、ディップ法を用いることにより容易にNi‐Mo‐B系合金の表面全域にスラリーの塗布が可能である。また、スラリーの加熱も大気雰囲気で行うことが可能である。従って、比較的廉価にNi‐Mo‐B系合金のアルミニウム溶湯に対する耐溶損性を向上させることができる。
また、上記の酸化物粒子層は、粒子が凝集して形成されていることから、急激な温度変化を受けた場合でも、背景技術の項で説明したような物理的蒸着法(PVD法)や化学的蒸着法(CVD)で得られた被膜とは異なり、割れや剥離が生じ難い。従って、アルミニウム溶湯に連続的に接触させる場合および断続的に接触させる場合の両方において、高い耐久性が確保される。
また、上記のスラリーを用いる第1方法に代えて、第2方法として、上記のようにして作成した酸化物粒子層付きのNi‐Mo‐B系合金から前記酸化物粒子層を除去することにより得られた酸化物粒子の粉末(原料粉末7)を、別のNi‐Mo‐B系合金の表面に接触させた状態で、酸素含有雰囲気中で加熱することにより、当該別のNi‐Mo‐B系合金の表面に酸化物粒子層を形成することができる。具体的には、図5に示すように、上記原料粉末7をるつぼ8内に充填し、原料粉末7内にNi‐Mo‐B系合金9を挿入し、酸素含有雰囲気例えば大気中で、適当な酸化温度である400℃〜900℃、例えば725℃で、所定時間例えば24時間加熱することにより、Ni‐Mo‐B系合金9の表面に、NiMoOを主体とする酸化物粒子層を形成することができる。なお、筒形部材(例えばスリーブ)の内周面に酸化物粒子層を形成したい場合には、筒形部材の内部空間に原料粉末7を充填し、筒形部材の両端を閉塞した状態で上記と同様の条件で加熱を行えばよい。なおこのとき、原料粉末7の節約のため、筒形部材の内部空間に円柱状の中子を挿入し、中子外周面と筒形部材の内周面との間に原料粉末7を充填してもよい。また、原料粉末7を含むスラリーを作成し、このスラリーをNi‐Mo‐B系合金を塗布し、乾燥した後に、加熱してもよい。
上記の第2方法によればNi‐Mo‐B系合金の表面にNiMoOを主体とする酸化物が接触しているため、酸化により生成されたBがさらにNiとなることはなく、BはNiMoOのバインダーとして安定に存在する。これにより、Ni‐Mo‐B系合金の表面にはNiが生成されることなく、NiMoOが生成されることになる。すなわち、この方法も、前述したスラリーを用いた方法も、Bが安定に存在できるようにすることにより、Niの生成を抑制し、NiMoOの生成を促進させる点において共通している。
また、上記のスラリーを用いる第1方法に代えて、第3方法として、ガラス状SiO粉末と、前述したアルカリ酸化物及び/又はアルカリ土類酸化物の粉末とを混合してなる混合粉末を粉末の状態のまま(すなわちスラリーの状態にしないで)Ni‐Mo‐B系合金の表面に接触させた状態で、上記と同様の条件で酸素含有雰囲気下において加熱することにより、Ni‐Mo‐B系合金の表面に、NiMoOを主体とする酸化物粒子層を形成することもできる。この第3方法においても、上記の第2方法と同様にして粉末をNi‐Mo‐B系合金の表面に接触させた状態にすることができる。なお、原料をスラリー化する(第1方法)か、粉末のまま用いる(第3方法)かは、製造上の都合により決定することができる。
なお、上記のNi‐Mo‐B系合金としては、特定の組成のものに限定はされず、例えば先行技術文献の項に記載された特許文献1〜5に開示されたような任意のNi‐Mo‐B系合金(Ni‐Mo‐B系サーメットとも呼ばれる)を用いることができる。このようなNi‐Mo‐B系合金は、典型的には、特許文献1〜5にも記載されているようにSiを更に含んでおり、Niまたはその合金(例えばNi−Si−Mo合金またはNi−Si合金)からなる結合層と当該結合層中に分散したNi−Mo硼化物からなる分散層とを有する金属組織を有している。また、Ni‐Mo‐B系合金は、特許文献2に記載されているように耐食性の向上のためCrを含んでいてもよいし、また、焼結性向上のため微量(例えば0.1wt%程度)のCを含んでいてもよい。
本発明の効果を確認するために行った実験の結果を示す。
3種類の丸棒試験片(寸法:φ10mm×L100mm)を作製した。各試験片(A〜C)の作製条件は以下の通りである。
[試験片A]
炭素鋼(ここではS25Cを用いた)の表面にNi‐Mo‐B−Si合金(組成は重量%で、Mo:23%、B:3%、Si:4%)の被覆層を形成し、その表面にSiO‐5wt%NaOスラリーを塗布して、常温で24時間乾燥後に大気中で720℃加熱を24時間行なった。従って、試験片A表面には本発明に基づく酸化物粒子層が形成された。酸化物粒子層の表面のSEM写真が図1に示され、また、図2には積層構造の概略断面図が示されており、符号1が酸化物粒子層、符号2がNi‐Mo‐B−Si合金層、符号3が炭素鋼からなる基材をそれぞれ示している。ここに示した製造方法は、先に説明した第1方法に対応する。
[試験片B]
炭素鋼(ここではS25Cを用いた)の表面にNi‐Mo‐B−Si合金(組成は重量%で、Mo:23%、B:3%、Si:4%)の被覆層を形成し、常温で24時間乾燥後に大気中で720℃加熱を24時間行なった。すなわち、試験片Bは、試験片Aに対してスラリー塗布を行わなかった点が異なり、その結果、試験片B表面にはNi主体の酸化膜が形成された。
[試験片C]
炭素鋼(ここではS25Cを用いた)の表面にNi‐Mo‐B−Si合金(組成は重量%で、Mo:23%、B:3%、Si:4%)の被覆層を形成し、その表面にPVD処理により室化チタンをコーティングした。
以上の3種類の試験片について、下記の実験方法にて溶損試験を行った。図3に示すように、るつぼ4内で、アルミニウム合金AC4CH(JIS H5202「アルミニウム合金鋳物」に記載のAl−Si−Mg合金)を溶解した。治具5に試験片(上記の試験片A〜C)6を取り付け、試験片6をアルミニウム合金溶湯に浸漬した。溶湯温度は720℃である。168時間の浸漬後、試験片をアルミニウム合金溶湯から引き上げ、その後、試験片に付着していた試験片をハンマ打撃により除去した。この手順を最大で5回繰り返した。すなわち、浸漬時間は最大で840時間である。なお、各回の浸漬では、それぞれ新しく溶解した溶湯を用いた。
結果を以下に記す。表面にNi主体の酸化膜が形成された試験片B(比較例)は、168時間浸漬後に跡形も無く溶損していた。室化チタンコーティングした試験片C(比較例)は、168時間の浸漬でアルミニウムと反応した形跡が見られ、ハンマで打撃を加えても試験片から完全にはアルミニウム合金を除去できなかった。試験片Cを再度アルミニウム合金溶湯に浸漬したところ、336時間後には跡形も無く溶損していた。
これに対して、試験片A(発明の実施例)は、840時間の溶場浸漬後にも、168時間ごとのハンマ打撃を受けたにもかかわらず、試験前の形状を維持しており、アルミニウム合金との反応も見られなかった。また、試験片に付着したアルミニウム合金は容易に除去することができた。試験後の本発明品の外観写真を図4に示す。すなわち、試験片Aの仕様でアルミニウム溶湯接触部材を作成すれば、アルミニウム合金溶湯に対する優れた非漏れ性、および良好な離型性を達成できることがわかった。
さらに別の実施例として、先に説明した第3方法に対応する試験片を作成した。具体的には、炭素鋼(ここではS25Cを用いた)の表面にNi‐Mo‐B−Si合金(組成は重量%で、Mo:23%、B:3%、Si:4%)の被覆層を形成した。また、500μm以下のNaO粉末および直径が500μm以下のSiO粉末を用意し、これらを重量比でNaO:SiOが5:95となるように調合して均一に混合して混合粉末を得た。この混合粉末に上記炭素鋼の表面に形成されたNi‐Mo‐B−Si合金の被覆層を接触させた状態で、大気中で720℃加熱を24時間行なった。この第3方法に基づいて作成された試験片も、第1方法に基づいて作成された試験片(試験片A)とほぼ同じ性能を有することが確認されている。
1 酸化物粒子層
2 Ni‐Mo‐B‐Si合金層
3 基材
4 るつぼ
5 治具
6 試験片
7 粉末
8 るつぼ
9 Ni‐Mo‐B系合金

Claims (6)

  1. Ni、MoおよびBを含む合金の表面に、Na、K、Li、Mg、Ca、Sr、RbおよびCsからなる群から選択された少なくとも一の元素の酸化物と、SiOとを含む混合物を接触させた状態で、前記合金を酸素含有雰囲気中で加熱することにより前記合金の表面にNi−Mo酸化物を含む酸化物粒子が凝集した層を形成することを特徴とするアルミニウム溶湯接触部材の製造方法。
  2. 前記合金の表面に前記混合物を接触させることは、前記少なくとも一の元素の酸化物の粒子と、SiOの粒子とが混合された混合粉末を粉末の状態で前記合金の表面に接触させることにより行われることを特徴とする、請求項1記載のアルミニウム溶湯接触部材の製造方法。
  3. 前記合金の表面に前記混合物を接触させることは、前記少なくとも一の元素の酸化物とSiOとを分散媒中に分散させて得たスラリーを前記合金の表面に塗布することにより行われることを特徴とする、請求項1記載のアルミニウム溶湯接触部材の製造方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載された方法により前記合金の表面に形成されたNi−Mo酸化物を含む酸化物粒子を前記合金の表面から除去することにより得られた前記酸化物粒子からなる原料粉末を、Ni、MoおよびBを含む別の合金の表面に接触させた状態で前記別の合金を酸素含有雰囲気中で加熱することにより前記別の合金の表面にNi−Mo酸化物を含む酸化物粒子が凝集した層を形成することを特徴とするアルミニウム溶湯接触部材の製造方法。
  5. Ni、MoおよびBを含む合金と、
    前記合金の表面に形成されたNi−Mo酸化物を含む酸化物粒子が凝集した層と、を備え、
    請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法により製造されたことを特徴とするアルミニウム溶湯接触部材。
  6. 鉄鋼材料または鋳鉄材料からなる基材をさらに備え、前記Ni、MoおよびBを含む合金が前記基材の表面を覆う被覆層として設けられている、請求項5記載のアルミニウム溶湯接触部材。
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