JP2013184879A - ガラス繊維用集束剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱可塑性樹脂をマトリクスとした複合材において、当該複合材の強度(例えば、引張強度、曲げ強度、圧縮強度、弾性率等)を高めるガラス繊維用集束剤を提供する。
【解決手段】重量平均分子量が40,000〜60,000の第一のポリプロピレン樹脂と、重量平均分子量が90,000〜130,000の第二のポリプロピレン樹脂と、シランカップリング剤と、を含有し、 前記第一のポリプロピレン樹脂の含有される重量に対する前記第二のポリプロピレン樹脂の含有される重量の比率は、0.10以上、1.0未満であることを特徴とするガラス繊維用集束剤。
【選択図】なし
【解決手段】重量平均分子量が40,000〜60,000の第一のポリプロピレン樹脂と、重量平均分子量が90,000〜130,000の第二のポリプロピレン樹脂と、シランカップリング剤と、を含有し、 前記第一のポリプロピレン樹脂の含有される重量に対する前記第二のポリプロピレン樹脂の含有される重量の比率は、0.10以上、1.0未満であることを特徴とするガラス繊維用集束剤。
【選択図】なし
Description
本発明は、ガラス繊維用集束剤に関する。
ガラス繊維と加工性に優れる熱可塑性樹脂との複合材である繊維強化プラスチック(FRTP:Fiberglass Reinforced Thermoplastic)は、自動車部品、家電等、幅広い分野の工業製品に使用されている。そして、ガラス繊維は、その表面を集束剤によってサイジング処理がなされた後、FRTP成形体等の樹脂成形体に用いられる。ここで、ガラス繊維をサイジング処理する集束剤はその組成に関して、例えば、カップリング剤を組成中に含有するもの、異なる分子量のポリプロピレンを含有するものがあることが知られている。
特許文献1には、長繊維強化ポリプロピレン樹脂成形材料に用いられるガラス繊維が、シランカップリング剤(A)と、重量平均分子量が5,000〜23,000のポリプロピレン樹脂(B)と、重量平均分子量が23,000〜50,000のポリプロピレン樹脂(C)とを含有する集束剤で集束されることについて開示がされている。
また、特許文献2には、シランカップリング剤(A)と、重量平均分子量が20,000〜80,000の酸変性ポリプロピレン樹脂(B)とを含む被膜形成剤が付与されたガラス繊維が、ポリプロピレン樹脂(C)98.0〜99.0質量部、及び酸変性ポリプロピレン樹脂(D)1.0〜2.0質量部を含むマトリクス樹脂に含浸されていることを特徴とする長繊維強化ポリプロピレン樹脂成形材料について開示がされている。
ところで、例えばFRTP成形体に代表されるような、ガラス繊維用集束剤によってサイジング処理されたガラス繊維を含む樹脂成形体が例えば強度部材として適用される場合、当該樹脂成形体は通常金属製品の代替品として用いられ、優れた力学的性質が求められる。しかしながら、従来のガラス繊維用集束剤によってサイジング処理されたガラス繊維を含む樹脂成形体は優れた力学的性質を得ることが困難であり、然るべき力学的性質を得るために、例えば当該樹脂成形体の厚みを大きくする等の対策が採られることが一般である。これは、対症療法的な解決策であり、軽量化の観点からは更なる改善が必要である。
発明者らは、ガラス繊維用集束剤によってサイジング処理されたガラス繊維を含む樹脂成形体の力学的性質を高めるためには、当該樹脂成形体に含有されるガラス繊維とマトリクスである熱可塑性樹脂との密着性(接着性)を高めることが必要であり、両者の密着性を高めるためには、ガラス繊維の表面にサイジング処理をする集束剤の改良が必要である点に着目した。
本発明は、ガラス繊維と熱可塑性樹脂であるマトリクスとを含有する樹脂成形体において、当該樹脂成形体の力学的性質を高めるガラス繊維用集束剤を提供することを目的の一つとする。また、本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述によって明らかにする。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るガラス繊維用集束剤は、ガラス繊維の集束に用いられるガラス繊維用集束剤であって、重量平均分子量が40,000〜60,000の第一のポリプロピレン樹脂と、重量平均分子量が90,000〜130,000の第二のポリプロピレン樹脂と、シランカップリング剤と、を含有し、前記第一のポリプロピレン樹脂の前記ガラス繊維用集束剤に含有される重量に対する前記第二のポリプロピレン樹脂の前記ガラス繊維用集束剤に含有される重量の比率は、0.10以上、1.0未満であることを特徴とする。
また、前記ガラス繊維用集束剤における、前記第一のポリプロピレン樹脂、及び前記第二のポリプロピレン樹脂のそれぞれは、酸変性されたポリプロピレン樹脂であることとしてもよい。また、前記シランカップリング剤は、アミノシランであることとしてもよい。また、前記シランカップリング剤は、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物であることとしてもよい。また、前記ガラス繊維は、バサルト繊維であることとしてもよい。
また、上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るガラス繊維は、上記のガラス繊維用集束剤が表面に付着していることを特徴とする。
また、上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るガラス繊維ストランドは、上記のガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維を複数含有することを特徴とする。
また、上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、上記のガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維と、熱可塑性樹脂のマトリクスと、を含有することを特徴とする。
また、上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る樹脂成形体は、上記のガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維と、熱可塑性樹脂のマトリクスと、を含有することを特徴とする。
本発明によれば、ガラス繊維と熱可塑性樹脂であるマトリクスとを含有する樹脂成形体において、当該樹脂成形体の力学的性質を高めるガラス繊維用集束剤を提供することができる。
本実施形態に係るガラス繊維用集束剤は、重量平均分子量が40,000〜60,000の第一のポリプロピレン樹脂と、重量平均分子量が90,000〜130,000の第二のポリプロピレン樹脂と、シランカップリング剤と、を含有し、前記第一のポリプロピレン樹脂のガラス繊維用集束剤に含有される重量に対する前記第二のポリプロピレン樹脂のガラス繊維用集束剤に含有される重量の比率は、0.10以上、1.0未満であることを特徴とする。
本実施形態に係るガラス繊維用集束剤が適用される樹脂成形体は、当該ガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維と、熱可塑性樹脂のマトリクスとを含むものである。本実施形態に係るガラス繊維用集束剤が適用される樹脂成形体は、ガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維を集積等することによってマット状、シート状、あるいは板状(ボード状)等の繊維体にして、当該繊維体に所定の熱可塑性樹脂マトリクスを含浸させる、樹脂成形体の第一の製造方法によって成形されることとしてもよい。
上述の第一の製造方法によって成形された樹脂成形体は、ガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維から構成される繊維体と、当該繊維体に含浸された熱可塑性樹脂マトリクスと、を含む樹脂成形体である。
また、上述の第一の製造方法によって成形される樹脂成形体は、繊維体に熱可塑性樹脂マトリクスを含浸させると同時に所望の形状とすることとしてもよい。あるいは、繊維体に熱可塑性樹脂マトリクスを含浸させることによって、シート状、あるいは板状等の樹脂成形体を仮成形し、その後、当該仮成形された形成体をプレス成形することによって、所望の形状に成形することとしてもよい。
本実施形態に係るガラス繊維用集束剤が適用される樹脂成形体の一例としては、FRTP成形体が挙げられる。FRTP成形体は、ガラス繊維を熱可塑性樹脂のマトリクス中に入れて、強度を向上させた複合材である。すなわち、マトリクスである熱可塑性樹脂を単独で成形した成形体の比強度(密度あたりの引っ張り強さ)よりも、マトリクス中にガラス繊維を入れて成形した形成体の比強度の方が大きくなるように、ガラス繊維が入れられたものである。上述の樹脂成形体の第一の製造方法については、後にさらに詳細に説明を行う。また、樹脂成形体の他の製造方法に関し、後に詳細に説明を行う。
本実施形態のガラス繊維用集束剤に用いられる第一のポリプロピレン樹脂は、プロピレンのみをモノマとする単独重合体であってもよいが、モノマの一部にエチレンが用いられたエチレン−プロピレン共重合体であることとしてもよい。この場合、エチレン−プロピレン共重合体の形成に用いられるモノマのうち、50モル%以上のモノマがプロピレンであるものを、本発明における第一のポリプロピレン樹脂に含まれるものとする。
また、本実施形態のガラス繊維用集束剤に用いられる第一のポリプロピレン樹脂は、プロピレンのみをモノマとする単独重合体であってもよいが、モノマの一部にスチレンが用いられたスチレン−プロピレン共重合体であることとしてもよい。この場合、スチレン−プロピレン共重合体の形成に用いられるモノマのうち、50モル%以上のモノマがプロピレンであるものを、本発明における第一のポリプロピレン樹脂に含まれるものとする。
また、第一のポリプロピレン樹脂は酸変性されているものを用いることとしてもよい。すなわち、第一のポリプロピレン樹脂は酸変性ポリプロピレン樹脂、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、酸変性スチレン−プロピレン共重合体であることとしてもよい。
酸変性ポリプロピレン樹脂としては、例えばポリプロピレンに不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフト重合したもの、プロピレンと不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体とをランダムもしくはブロック共重合したものが挙げられる。この場合、酸変性プロピレン樹脂の形成に用いられるモノマのうち、50モル%以上のモノマがプロピレンであるものを、本発明における第一のポリプロピレン樹脂に含まれるものとする。
酸変性エチレン−プロピレン共重合体としては、例えばエチレン−プロピレン共重合体に不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を更にグラフト重合したもの、エチレンとプロピレンと不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体とをランダムもしくはブロック共重合したものが挙げられる。この場合、酸変性エチレン−プロピレン共重合体の形成に用いられるモノマのうち、50モル%を超えるモノマがプロピレンであるものを、本発明における第一のポリプロピレン樹脂に含まれるものとする。
また、酸変性スチレン−プロピレン共重合体としては、例えばスチレン−プロピレン共重合体に不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を更にグラフト重合したもの、スチレンとプロピレンと不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体とをランダムもしくはブロック共重合したものが挙げられる。この場合、酸変性スチレン−プロピレン共重合体の形成に用いられるモノマのうち、50モル%を超えるモノマがプロピレンであるものを、本発明における第一のポリプロピレン樹脂に含まれるものとする。
第一のポリプロピレン樹脂の酸変性に用いられる不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられ、より好ましくはマレイン酸である。そして、第一のポリプロピレン樹脂の酸変性に用いられる不飽和カルボン酸の誘導体としては、前述の不飽和カルボン酸の無水物、金属塩、エステル等が挙げられる。第一のポリプロピレン樹脂の酸変性に用いられる不飽和カルボン酸の誘導体の具体的な例としては、無水マレイン酸、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、マレイミド、N−ブチルマレイミド、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
また、第一のポリプロピレン樹脂として、酸変性ポリプロピレン樹脂、あるいは酸変性エチレン−プロピレン共重合体等のプロピレンと他の熱可塑性樹脂を形成するモノマとの共重合体の酸変性物が用いられることは、樹脂成形体において力学的性質(例えば、引張り強度、せん断強度、面内せん断応力、弾性率、剛性)を高めるという効果を更に高めることとなり好ましい。
本実施形態の第一のポリプロピレン樹脂として、酸変性ポリプロピレン樹脂、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、あるいは酸変性スチレン−プロピレン共重合体等のプロピレンと他の熱可塑性樹脂を形成するモノマとの共重合体の酸変性物が用いられた場合、酸変性ポリプロピレン樹脂、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、あるいは酸変性スチレン−プロピレン共重合体等のプロピレンと他の熱可塑性樹脂を形成するモノマとの共重合体の酸変性物は、酸変性ポリプロピレン樹脂、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、あるいは酸変性スチレン−プロピレン共重合体等のプロピレンと他の熱可塑性樹脂を形成するモノマとの共重合体の酸変性物の合成に用いられるモノマのうち、プロピレンモノマの量が50モル%未満とならない範囲にて酸を添加して合成されたものであることとしてもよい。
換言すれば、第一のポリプロピレン樹脂として、酸変性率50%以下の酸変性ポリプロピレン樹脂、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、あるいは酸変性スチレン−プロピレン共重合体等のプロピレンと他の熱可塑性樹脂を形成するモノマとの共重合体の酸変性物を用いることとしてもよい。
また、本実施形態に係るガラス繊維用集束剤に用いられる第一のポリプロピレン樹脂の重量平均分子量は、40,000〜60,000であるが、第一のポリプロピレン樹脂の重量平均分子量が40,000〜55,000であることはより好ましい。
本実施形態のガラス繊維用集束剤に用いられる第二のポリプロピレン樹脂は、プロピレンのみをモノマとする単独重合体であってもよいが、モノマの一部にエチレンが用いられたエチレン−プロピレン共重合体であることとしてもよい。この場合、エチレン−プロピレン共重合体の形成に用いられるモノマのうち、50モル%以上のモノマがプロピレンであるものを、本発明における第二のポリプロピレン樹脂に含まれるものとする。
また、本実施形態のガラス繊維用集束剤に用いられる第二のポリプロピレン樹脂は、プロピレンのみをモノマとする単独重合体であってもよいが、モノマの一部にスチレンが用いられたスチレン−プロピレン共重合体であることとしてもよい。この場合、スチレン−プロピレン共重合体の形成に用いられるモノマのうち、50モル%以上のモノマがプロピレンであるものを、本発明における第二のポリプロピレン樹脂に含まれるものとする。
また、第二のポリプロピレン樹脂は酸変性されているものを用いることとしてもよい。すなわち、第二のポリプロピレン樹脂は酸変性ポリプロピレン樹脂、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、酸変性スチレン−プロピレン共重合体であることとしてもよい。
酸変性ポリプロピレン樹脂としては、例えばポリプロピレンに不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフト重合したもの、プロピレンと不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体とをランダムもしくはブロック共重合したものが挙げられる。この場合、酸変性プロピレン樹脂の形成に用いられるモノマのうち、50モル%以上のモノマがプロピレンであるものを、本発明における第二のポリプロピレン樹脂に含まれるものとする。
酸変性エチレン−プロピレン共重合体としては、例えばエチレン−プロピレン共重合体に不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を更にグラフト重合したもの、エチレンとプロピレンと不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体とをランダムもしくはブロック共重合したものが挙げられる。この場合、酸変性エチレン−プロピレン共重合体の形成に用いられるモノマのうち、50モル%を超えるモノマがプロピレンであるものを、本発明における第二のポリプロピレン樹脂に含まれるものとする。
また、酸変性スチレン−プロピレン共重合体としては、例えばスチレン−プロピレン共重合体に不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を更にグラフト重合したもの、スチレンとプロピレンと不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体とをランダムもしくはブロック共重合したものが挙げられる。この場合、酸変性スチレン−プロピレン共重合体の形成に用いられるモノマのうち、50モル%を超えるモノマがプロピレンであるものを、本発明における第二のポリプロピレン樹脂に含まれるものとする。
第二のポリプロピレン樹脂の酸変性に用いられる不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられ、より好ましくはマレイン酸である。そして、第二のポリプロピレン樹脂の酸変性に用いられる不飽和カルボン酸の誘導体としては、前述の不飽和カルボン酸の無水物、金属塩、エステル等が挙げられる。第二のポリプロピレン樹脂の酸変性に用いられる不飽和カルボン酸の誘導体の具体的な例としては、無水マレイン酸、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、マレイミド、N−ブチルマレイミド、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
また、第二のポリプロピレン樹脂として、酸変性ポリプロピレン樹脂、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、あるいは酸変性スチレン−プロピレン共重合体等のプロピレンと他の熱可塑性樹脂を形成するモノマとの共重合体の酸変性物が用いられることは、樹脂成形体において力学的性質を高めるという効果を更に高めることとなり好ましい。
本実施形態の第二のポリプロピレン樹脂として、酸変性ポリプロピレン樹脂、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、あるいは酸変性スチレン−プロピレン共重合体等のプロピレンと他の熱可塑性樹脂を形成するモノマとの共重合体の酸変性物が用いられた場合、酸変性ポリプロピレン樹脂、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、あるいは酸変性スチレン−プロピレン共重合体等のプロピレンと他の熱可塑性樹脂を形成するモノマとの共重合体の酸変性物は、酸変性ポリプロピレン樹脂、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、あるいは酸変性スチレン−プロピレン共重合体等のプロピレンと他の熱可塑性樹脂を形成するモノマとの共重合体の酸変性物の合成に用いられるモノマのうち、プロピレンモノマの量が50モル%未満とならない範囲にて酸を添加して合成されたものであることとしてもよい。
換言すれば、第二のポリプロピレン樹脂として、酸変性率50%以下の酸変性ポリプロピレン樹脂、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、あるいは酸変性スチレン−プロピレン共重合体等のプロピレンと他の熱可塑性樹脂を形成するモノマとの共重合体の酸変性物を用いることとしてもよい。
また、本実施形態に係るガラス繊維用集束剤に用いられる第二のポリプロピレン樹脂の重量平均分子量は、90,000〜130,000であるが、第二のポリプロピレン樹脂の重量平均分子量が100,000〜120,000であることはより好ましい。
第二のポリプロピレン樹脂の重量平均分子量が、130,000を超えるものを採用することは実質的に可能ではある。後述するが、本実施形態のガラス繊維用集束剤は、第二のポリプロピレン樹脂を乳化したものを含むこととしてもよい。この場合、重量平均分子量が、130,000を超える第二のポリプロピレン樹脂の乳化は容易ではないため好ましくない。
重量平均分子量が40,000〜60,000の第一のポリプロピレン樹脂と、重量平均分子量が90,000〜130,000の第二のポリプロピレン樹脂と、二種類のポリプロピレン樹脂を併用することによって、ガラス繊維の集束性に優れ、且つ、ガラス繊維と熱可塑性樹脂であるマトリクスとを含有する樹脂成形体において当該樹脂成形体の力学的性質を高めることとなる。
本実施形態に係るガラス繊維用集束剤においては、前記第一のポリプロピレン樹脂のガラス繊維用集束剤に含有される重量に対する前記第二のポリプロピレン樹脂のガラス繊維用集束剤に含有される重量の比率は、0.10以上、1.0未満である。
また、第一のポリプロピレン樹脂のガラス繊維用集束剤に含有される重量に対する第二のポリプロピレン樹脂のガラス繊維用集束剤に含有される重量の比率が、0.10以上、0.90未満あることはより好ましく、0.10以上、0.7未満であることが特に好ましい。第一のポリプロピレン樹脂のガラス繊維用集束剤に含有される重量に対する第二のポリプロピレン樹脂のガラス繊維用集束剤に含有される重量の比率が、1.0以上、又は、0.10未満の場合には、熱可塑性樹脂をマトリクスとした樹脂成形体において当該樹脂成形体の力学的性質を高める効果が抑制されることとなる。
本実施形態のガラス繊維用集束剤に用いられるシランカップリング剤とは、無機物であるガラス繊維と反応性や親和性を持つ官能基と、樹脂成形体に含まれる有機物であるマトリクス、もしくは、ガラス繊維用集束剤に含まれる第一のポリプロピレン樹脂及び/又は第二のポリプロピレン樹脂に対して反応性や親和性を持つ官能基と、を有するものである。
すなわち、本実施形態のガラス繊維用集束剤に用いられるシランカップリング剤は、樹脂成形体に含有されるガラス繊維の表面と反応して、当該ガラス繊維の表面を、樹脂成形体に含まれるマトリクスと親和性(例えば、濡れ性等)が高いもの、もしくは、反応性のあるものに、又は、ガラス繊維用集束剤に含まれる第一のポリプロピレン樹脂及び/又は第二のポリプロピレン樹脂と反応性のあるものとする。
より詳細に説明を行うと、シランカップリング剤の有するアルコキシ基(−OR:Rは例えばメチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基)は、例えば大気中に含まれる水分によって加水分解してシラノール基となり、シラノール基は無機物であるガラス繊維表面の水酸基との水素結合を介して結合する。そして、シランカップリング剤の有するアルコキシ基に由来するシラノール基と、ガラス繊維表面の水酸基と、の水素結合は、更に脱水縮合反応して強固な共有結合を生成する。
上述の様にシランカップリング剤と化学結合したガラス繊維表面には、樹脂成形体に含まれるマトリクス、もしくは、ガラス繊維用集束剤に含まれる第一のポリプロピレン樹脂及び/又は第二のポリプロピレン樹脂に対し、反応性や親和性を持つシランカップリング剤の有する官能基が配向することとなる。シランカップリング剤における、樹脂成形体に含まれるマトリクス、もしくは、集束剤に含まれる第一のポリプロピレン樹脂及び/又は第二のポリプロピレン樹脂に対して反応性や親和性を持つ官能基は、樹脂成形体に含まれるマトリクス、もしくは、集束剤に含まれる第一のポリプロピレン樹脂及び/又は第二のポリプロピレン樹脂と反応等を行い、結果、樹脂成形体は優れた力学的性質を有するものとなる。
よって、本実施形態のガラス繊維用集束剤に用いられるシランカップリング剤としては、樹脂成形体のマトリクスとして使用される樹脂や、集束剤に含まれる第一のポリプロピレン樹脂及び/又は第二のポリプロピレン樹脂の種類によって、最適なものが選択されることとなるが、例えば、アミノシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン等が好ましい。また、本実施形態のガラス繊維用集束剤は、複数種のシランカップリング剤を含むこととしてもよい。
具体的には、アミノシランとしては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等があげられる。
また、エポキシシランとしては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等があげられる。
また、メタクリルシランとしては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等があげられる。
また、本実施形態のガラス繊維用集束剤に用いられるシランカップリング剤としては、アミノシランが特に好ましい。また、アミノシランは、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物であることは、第一及び/又は第二のポリプロピレンとの結合力が増加し、樹脂成形体の力学的性質が向上するため好ましい。
また、本実施形態のガラス繊維用集束剤に用いられるシランカップリング剤として、アミノシランが用いられる場合、第一及び/又は第二のポリプロピレンの少なくとも何れか一方が、酸変性ポリプロピレン樹脂、あるいは酸変性スチレン−プロピレン共重合体等のプロピレンと他の熱可塑性樹脂を形成するモノマとの共重合体の酸変性物であることは、第一及び/又は第二のポリプロピレンとの結合力が増加し、樹脂成形体の力学的性質が向上するため好ましい。
また、第一及び/又は第二のポリプロピレンの少なくとも何れか一方が、酸変性ポリプロピレン樹脂、あるいは酸変性エチレン−プロピレン共重合体等のプロピレンと他の熱可塑性樹脂を形成するモノマとの共重合体の酸変性物である場合において、シランカップリング剤が、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、およびこれらの混合物からなる群から選択されるアミノシランであることは特に好ましい。
本実施形態のガラス繊維用集束剤に含有されるシランカップリング剤は、第一の変性ポリプロピレン樹脂と第二の変性ポリプロピレン樹脂と合計量100重量部に対し、5.0〜30.0重量部添加されることとしてもよい。また、シランカップリング剤は、第一の変性ポリプロピレン樹脂と第二の変性ポリプロピレン樹脂と合計量100重量部に対し、10.0〜25.0重量部添加されることが好ましく、10.0〜20.0重量部添加されることが特に好ましい。シランカップリング剤が上記の範囲にて集束剤に添加されることによって、本願発明の効果を更に高めることができる。
本実施形態のガラス繊維用集束剤は、上記の第一のポリプロピレン樹脂、第二のポリプロピレン樹脂、及び、シランカップリング剤の他に本発明の効果を損なわない範囲で、ポリプロピレン樹脂以外の熱可塑性樹脂、4級アンモニウム塩等の帯電防止剤、及び、界面活性剤等の潤滑剤を含むこととしてもよい。
本実施形態のガラス繊維用集束剤は、例えば所定量の第一のポリプロピレン樹脂を所定の界面活性剤にて乳化したものと、所定量の第二のポリプロピレン樹脂を所定の界面活性剤にて乳化したものと、所定量のシランカップリング剤と、その他任意成分と、を混合し得ることとしてもよい。また、所定量の第一のポリプロピレン樹脂と所定量の第二のポリプロピレン樹脂との混合物を所定の界面活性剤にて乳化したものと、所定量のシランカップリング剤と、その他任意成分と、を混合し得ることとしてもよい。
また、本実施形態に係るガラス繊維用集束剤を用いて樹脂成形体を成形する場合、ガラス繊維用集束剤に含まれる有効成分が、ガラス繊維の表面に付着量0.1wt%以上、2.0wt%以下で付着することが好ましく、また、付着量0.2wt%以上、0.8wt%以下で付着することが更に好ましい。ここで、ガラス繊維用集束剤に含まれる有効成分とは、ガラス繊維用集束剤に含まれる水等の溶媒(1気圧での沸点が100℃以下のもの)以外の全ての成分である。例えば、ガラス繊維用集束剤が、第一のポリプロピレン樹脂と、第二のポリプロピレン樹脂と、シランカップリング剤と、水と、からなる場合、当該ガラス繊維用集束剤の有効成分は、第一のポリプロピレン樹脂、第二のポリプロピレン樹脂、およびシランカップリング剤いうこととなる。
本発明における付着量は、JIS R7604(1999年)に準拠して求めた。具体的に本発明における付着量は、下記式(1)に従って算出されたものである。なお、JIS R7604(1999年)には3種類の付着率の求め方が記載されているが、どの方法を用いても求められる付着量は同じものである。
100−(ガラス繊維用集束剤を取り除いたガラス繊維の重量/表面処理されたガラス繊維の重量)×100・・・式(1)
すなわち、本実施形態に係るガラス繊維用集束剤には、ガラス繊維用集束剤に含まれる有効成分が、ガラス繊維の表面に上記付着量付着するように配合される。ガラス繊維用集束剤における、ガラス繊維用集束剤に含まれる有効成分の具体的な配合量は、付着対象とされるガラス繊維の表面状態によって適宜変化するが、5wt%〜90wt%の範囲であることとしてもよい。
本実施形態のガラス繊維用集束剤に含まれる有効成分がガラス繊維表面に付着量0.1wt%未満で付着されている場合、ガラス繊維用集束剤に含まれる有効成分がガラス繊維の表面を十分に被覆していないため、結果マトリクスとガラス繊維との密着性が低下し、優れた力学的性質が得られないおそれがあり好ましくない。また、ガラス繊維の集束が不十分となり、ガラス繊維束が毛羽だつおそれもある。
また、本実施形態のガラス繊維用集束剤に含まれる有効成分の、ガラス繊維の表面に付着する付着量の上限について制限はないが、コスト等の観点から2.0wt%を超えない範囲であることが好ましい。また、ガラス繊維用集束剤に含まれる有効成分の付着量が2.0wt%を超えると、樹脂成形体の成形の際に繊維がうまく分散しなく(バラケなく)なるおそれもある。
また、本実施形態のガラス繊維用集束剤に含まれる有効成分のそれぞれは、当該ガラス繊維用集束剤に含有される有効成分それぞれの割合と等しい割合で、ガラス繊維の表面に付着する。例えば、ガラス繊維用集束剤が、3つの有効成分である第一のポリプロピレン、第二のポリプロピレン、シランカップリング剤を含有するものであって、第一のポリプロピレン:第二のポリプロピレン:シランカップリング剤=3:1:0.7の重量割合にて含有するものである場合、当該ガラス繊維用集束剤の3つの有効成分は、ガラス繊維の表面に、第一のポリプロピレン:第二のポリプロピレン:シランカップリング剤=3:1:0.7の重量割合で付着することとなる。
本実施形態のガラス繊維用集束剤が適用される樹脂成形体におけるガラス繊維は、ガラスを溶融し、牽引して繊維状にしたものである。本実施形態のガラス繊維用集束剤が適用される樹脂成形体におけるガラス繊維の材質については、石英ガラスなどの無アルカリガラス等を挙げることができるが特にこれに限定されるものではない。また、ガラス繊維が玄武岩を溶融して繊維化したバサルト繊維であることは樹脂成形体に耐熱性を付与できる、もしくは、コスト面の観点から好ましい。
一般にバサルト繊維は、原料である玄武岩を粉砕・洗浄し、当該粉砕・洗浄物を電気炉やガス炉等を用いて加熱して溶融し、当該溶融物を繊維化し、当該繊維を引き揃えて巻取る工程を経て製造される。そして、玄武岩の粉砕・洗浄物を溶融する温度、繊維化したものを引き揃えて巻取る際の巻取り速度を調整することによって様々な繊維径のバサルト繊維を得ることが可能である。
ここで、本実施形態のガラス繊維用集束剤が適用されるガラス繊維の繊維径は、4〜30μmであるものを好適に用いることができる。4μm未満の場合は、コストが高くなるため好ましくない。また、30μmを超える場合は、樹脂成形体の強度が低下するおそれがあるため好ましくない。ガラス繊維にバサルト繊維が適用される際も同様である。
また、本実施形態のガラス繊維用集束剤が適用されるガラス繊維は、長繊維であることが好ましく、具体的には、1mm以上の繊維長を有する長繊維であるものを好適に用いることができる。本実施形態のガラス繊維用集束剤が適用されるガラス繊維の繊維長が、1mm以上の長繊維の場合は、本願発明の効果を更に高めることができる。ガラス繊維にバサルト繊維が適用される際も同様である。
また、本実施形態のガラス繊維用集束剤が適用される樹脂成形体におけるガラス繊維の体積含有率は、特に限定されないが、例えば、樹脂成形体の全体を100体積部としたとき4.0~60.0体積部であることとしてもよい。樹脂成形体におけるガラス繊維の体積含有率が4.0vоl%未満の場合は、樹脂成形体の力学的性質が低下するおそれがあり、60.0vоl%を超える場合は、樹脂成形体の成形自体が困難となり好ましくない。
本実施形態のガラス繊維用集束剤は、熱可塑性樹脂のマトリクスとしてポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂)が用いられる樹脂成形体に適用されることとしてもよい。また、その他のマトリクス樹脂、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタラート(PBT)樹脂等に用いられることとしてもよい。また、本実施形態のガラス繊維用集束剤は、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタラート(PBT)樹脂等に例示される樹脂を複数含有するマトリクスが用いられる樹脂成形体に適用されることとしてもよい。
また、本実施形態のガラス繊維用集束剤は、熱可塑性樹脂のマトリクスとして、ポリプロピレンを主成分とする熱可塑性樹脂が用いられる樹脂成形体に適用されることが、コスト面、樹脂成形体の加工性の観点において好適である。ここで、ポリプロピレンを主成分とする熱可塑性樹脂とは、マトリクスを構成する熱可塑性樹脂において、ポリプロピレンが50vоl%以上含有されるものをいう。
また、本実施形態のガラス繊維用集束剤は、熱可塑性樹脂のマトリクスとして、酸変性ポリプロピレンを主成分とする熱可塑性樹脂が用いられる樹脂成形体に適用されることが、高強度等の優れた力学的性質を得るにあたり好適である。ここで、酸変性ポリプロピレンを主成分とする熱可塑性樹脂とは、マトリクスを構成する熱可塑性樹脂において、酸変性ポリプロピレンが50vоl%以上含有されるものをいう。
更に、本実施形態のガラス繊維用集束剤は、熱可塑性樹脂のマトリクスとして、ポリプロピレンおよび酸変性ポリプロピレンの混合物を主成分とする熱可塑性樹脂が用いられる樹脂成形体に適用されることとしてもよい。ここで、ポリプロピレンおよび酸変性ポリプロピレンの混合物を主成分とする熱可塑性樹脂とは、マトリクスを構成する熱可塑性樹脂において、ポリプロピレンおよび酸変性ポリプレンの混合物が50vоl%以上含有されるものをいう。
すなわち、本実施形態のガラス繊維用集束剤は、ポリプロピレン、酸変性ポリプレンのうちの少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含有し、ポリプロピレンと酸変性ポリプレンとの合計体積含有率が50vоl%以上であるマトリクスが用いられる樹脂成形体に適用されることとしてもよい。
また、本実施形態のガラス繊維用集束剤が適用される樹脂成形体のマトリクスに用いられる樹脂の重量平均分子量は特に制限がない。また、樹脂成形体における上述のマトリクスは、本発明の効果を損なわない範囲で、複数の樹脂を併用することとしてもよいし、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、もしくは、ポリエステル等の可塑剤、4級アンモニウム塩等の帯電防止剤、及び、界面活性剤等の潤滑剤を含むこととしてもよい。
また、本実施形態のガラス繊維用集束剤が適用される樹脂成形体におけるマトリクスの体積含有率は、特に限定されないが、樹脂成形体の全体を100体積部としたとき、30.0~96.0体積部であることとしてもよい。樹脂成形体におけるマトリクスの体積含有率が30.0vоl%未満の場合は、樹脂成形体の加工性が低下するおそれがあり、96.0vоl%を超える場合は、必然的に樹脂成形体におけるガラス繊維の体積含有率が低下するので、樹脂成形体の力学的性質が低下するおそれがあり好ましくない。
以下、本実施形態のガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維と、熱可塑性樹脂のマトリクスと、を含有する樹脂成形体の製造方法について、下記に詳細に説明を行う。
はじめに、先に説明を行った樹脂成形体の第一の製造方法について、詳細に説明を行う。樹脂成形体の第一の製造方法は、本実施形態のガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維から構成される、繊維体に、熱可塑性樹脂のマトリクスを含浸させる工程を含む樹脂成形体の製造方法である。
上記樹脂成形体の第一の製造方法は、本実施形態のガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維から構成される、繊維体を準備する工程を含むこととしてもよい。また、当該工程は、本実施形態のガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維を集積、積層、もしくは織り込みすることによって繊維体を調製する工程としてもよいし、本実施形態のガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維を集積、積層、もしくは織り込みすることによって調製された繊維体を、予め用意する工程としてもよい。
また、上記繊維体は、織布又は不織布であることとしてもよい。また、上記繊維体は、シート状、マット状あるいは板状(ボード状)等、一定の厚みを有する織布あるいは不織布であることとしてもよい。
また、上記繊維体は、本実施形態のガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維を複数含有する、ガラス繊維ストランドから構成されることとしてもよいし、当該ガラス繊維ストランドを複数束ねたロービングから構成されることとしてもよい。繊維体がガラス繊維ストランド、あるいはロービングから構成されることによって、当該繊維体は、細かなガラス繊維による毛羽だちを抑制することができ、樹脂成形体の製造において当該繊維体の取り扱いが容易となる。
また、上記樹脂成形体の第一の製造方法における、繊維体に熱可塑性樹脂マトリクスを含浸させる工程は、繊維体に熱可塑性樹脂のマトリクスを溶融含浸させる工程、とすることとしてもよいし、繊維体と熱可塑性樹脂の成形体とを積層させて、当該熱可塑性樹脂を溶融することによって繊維体に熱可塑性樹脂のマトリクスを溶融含浸させる工程、とすることとしてもよい。この場合、熱可塑性樹脂の成形体は、例えばシート状、板状(ボード状)であることとしてもよい。
また、樹脂成形体の第一の製造方法は、ガラス繊維用集束剤を調製するガラス繊維用集束剤調製工程と、前記ガラス繊維用集束剤調製工程によって調製された前記ガラス繊維用集束剤をガラス繊維の表面に塗布して、ガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維を得る塗布工程と、前記塗布工程によって得られたガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維から構成される、繊維体を準備する工程と、を含むこととしてもよい。
また、樹脂成形体の第一の製造方法は、ガラス繊維用集束剤を調製するガラス繊維用集束剤調製工程と、前記ガラス繊維用集束剤調製工程によって調製された前記ガラス繊維用集束剤をガラス繊維の表面に塗布して、ガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維を得る塗布工程と、前記塗布工程によって得られたガラス繊維用集束剤が表面に付着している複数(例えば500〜24000本)のガラス繊維を集束し、ガラス繊維ストランドを得るガラス繊維集束工程と、複数のガラス繊維を含むガラス繊維ストランドから構成される、繊維体を準備する工程と、を含むこととしてもよい。また、上記繊維体を準備する工程は、ガラス繊維集束工程によって得られたガラス繊維ストランドを、複数束ねたロービングから構成される繊維体を準備する工程とすることとしてもよい。
また、第一の製造方法によって成形される樹脂成形体は、繊維体に熱可塑性樹脂のマトリクスを含浸させると同時に所望の形状とすることとしてもよい。あるいは、繊維体に熱可塑性樹脂のマトリクスを含浸させることによって、例えば、シート状、あるいは板状の樹脂成形体を仮成形し、その後、当該仮成形された樹脂形成体をプレス成形することによって、所望の形状に成形することとしてもよい。
上述の第一の製造方法によって成形された樹脂成形体は、ガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維から構成される、繊維体と、当該繊維体に含浸された熱可塑性樹脂のマトリクスと、を含む樹脂成形体である。また、上述の第一の製造方法によって得られる樹脂成形体に含まれる繊維体は長繊維のガラス繊維から構成されることとしてもよい。すなわち、第一の製造方法によって得られる樹脂成形体に含まれる繊維体は、繊維長5mm以上のガラス繊維、繊維長10mm以上のガラス繊維、あるいは繊維長100mm以上のガラス繊維から構成されることとしてもよい。
次に、樹脂成形体の他の製造方法について説明を行う。上記第一の製造方法以外の製造方法は、本実施形態のガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維と、溶融した熱可塑性樹脂と、の混合物を成形する工程を含む樹脂成形体の製造方法である。この製造方法における混合物を成形する工程は、例えば、混合物を射出成形する工程とすることとしてもよい。下記に、混合物を成形する工程を、混合物を射出成形する工程とした際に好適に用いられる、第二、第三の製造方法についてそれぞれ詳細に説明を行う。
樹脂成形体の第二の製造方法は、本実施形態のガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維と、溶融した熱可塑性樹脂と、の混合物を射出成形する工程の前に、本実施形態に係るガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維と、熱可塑性樹脂と、をそれぞれ別々に射出成形機に直接投入する材料投入工程を、含むこととしてもよい。また当該材料投入工程は、本実施形態のガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維を複数含有する、ガラス繊維ストランドと、熱可塑性樹脂と、をそれぞれ別々に射出成形機に直接投入する材料投入工程であることとしてもよいし、当該ガラス繊維ストランドを複数束ねたロービングと、熱可塑性樹脂と、をそれぞれ別々に射出成形機に直接投入する材料投入工程であることとしてもよい。
本実施形態に係るガラス繊維用集束剤は、樹脂成形体に含まれる熱可塑性樹脂のマトリクスに対し優れた分散性を有するものである。よって、上述の第二の製造方法における材料投入工程を採用した場合であっても、ガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維を均一に熱可塑性樹脂マトリクス中に分散することとなる。
また、上記樹脂成形体の第二の製造方法は、本実施形態のガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維を所定の長さ(例えば6mm程度であり、50mm以下の範囲で適宜選択される長さ)に切断するガラス繊維切断工程を含むこととしてもよい。また、当該ガラス繊維切断工程は、ガラス繊維ストランド、もしくはロービングを切断することによって、本実施形態のガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維を所定の長さ(例えば6mm程度であり、50mm以下の範囲で適宜選択される長さ)に切断するガラス繊維切断工程とすることとしてもよい。また、ガラス繊維切断工程は、上述した樹脂成形体の第二の製造方法における、材料投入工程の前に行われることとしてもよい。また、ガラス繊維切断工程は、材料投入工程の後、すなわち、射出成形機内にて行われることとしてもよい。
上述の第二の製造方法によって得られる樹脂成形体は、ガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維と、当該ガラス繊維を分散させた熱可塑性樹脂のマトリクスと、を含む樹脂成形体である。また、第二の製造方法によって得られる樹脂成形体に含まれるガラス繊維は、繊維長50mm以下のガラス繊維であることとしてもよい。第二の製造方法によって得られる樹脂成形体に含まれるガラス繊維の繊維長は、切断工程において50mm以下の範囲にて適宜調製することができ、例えば、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、あるいは10mmとすることとしてもよい。
次に、樹脂成形体の第三の製造方法について説明を行う。第三の製造方法は、樹脂成形体を射出形成するための材料として用いられる、樹脂組成物を一旦製造し、当該樹脂組成物を用いて樹脂成形体を成形する製造方法である。樹脂組成物は、本実施形態のガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維と、熱可塑性樹脂のマトリクスと、を含むものである。また、樹脂組成物は、不定形状あるいは粒状、ペレット形状に加工され射出成形用の材料として用いられることとしてもよい。
上記第三の製造方法において用いられる、樹脂成形体を射出成形するための材料として用いられる樹脂組成物の製造方法についてより詳細に説明を行う。樹脂組成物の製造方法は、本実施形態のガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維を準備する工程と、前記ガラス繊維と、溶融した熱可塑性樹脂と、を混合する工程と、前記溶融した熱可塑性樹脂を固化し、前記熱可塑性樹脂に前記ガラス繊維が分散した配合物を得る工程と、を含む。なお、得られた配合物の形状は特に限られず、不定形状であることとしてもよい。
また、樹脂組成物の製造方法は、本実施形態のガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維を複数含有する、ガラス繊維ストランドを準備する工程と、前記ガラス繊維ストランドに含有される前記ガラス繊維と、溶融した熱可塑性樹脂と、を混合する工程と、前記溶融した熱可塑性樹脂を固化し、前記熱可塑性樹脂に前記ガラス繊維が分散した配合物を得る工程と、を含む、としてもよいし、あるいは、前記ガラス繊維ストランドを複数束ねたロービングを準備する工程と、前記ロービングに含有される前記ガラス繊維と、溶融した熱可塑性樹脂と、を混合する工程と、前記溶融した熱可塑性樹脂を固化し、前記熱可塑性樹脂に前記ガラス繊維が分散した配合物を得る工程と、を含む、としてもよい。
また、樹脂組成物の製造方法は、更に、前記配合物を粒状、ペレット形状に加工する工程を含むこととしてもよい。また、樹脂組成物の製造方法において、溶融した熱可塑性樹脂を固化し、前記熱可塑性樹脂に前記ガラス繊維が分散した配合物を得る工程と、配合物を粒状、ペレット形状に加工する工程とは、時間的に略同タイミングで行うこととしてもよい。
また、樹脂組成物の製造方法は、更に、本実施形態のガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維を、所定の長さ(例えば2mm程度であり、6mm以下の範囲で適宜選択される長さ)に切断するガラス繊維切断工程を含むこととしてもよい。また、当該ガラス繊維切断工程は、ガラス繊維ストランド、もしくはロービングを切断することによって、本実施形態のガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維を所定の長さ(例えば2mm程度であり、6mm以下の範囲で適宜選択される長さ)に切断するガラス繊維切断工程とすることとしてもよい。
上述の樹脂組成物の製造方法によって得られる樹脂組成物は、ガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維と、当該ガラス繊維を分散させた熱可塑性樹脂のマトリクスと、を含む樹脂組成物である。また、上述の樹脂組成物の製造方法によって得られる樹脂組成物に含まれるガラス繊維は、繊維長6mm以下のガラス繊維であることとしてもよい。上述の樹脂組成物の製造方法によって得られる樹脂組成物に含まれるガラス繊維の繊維長は、切断工程において6mm以下の範囲にて適宜調製することができ、例えば、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、あるいは6mmとすることとしてもよい。
また、樹脂組成物が粒状、ペレット形状である場合も同様に、当該樹脂組成物に含まれるガラス繊維の繊維長は、6mm以下の範囲にて適宜調製することとしてもよく、例えば、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、あるいは6mmとすることとしてもよい。
また、樹脂組成物におけるガラス繊維の体積含有率は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物の全体を100体積部としたとき4.0~60.0体積部であることとしてもよい。樹脂組成物におけるガラス繊維の体積含有率が4.0vоl%未満の場合は、当該樹脂組成物によって成形される樹脂成形体の力学的性質が低下するおそれがあり、60.0vоl%を超える場合は、当該樹脂組成物を用いた樹脂成形体の成形自体が困難となり好ましくない。
また、樹脂組成物におけるマトリクスの体積含有率は、特に限定されないが、樹脂組成物の全体を100体積部としたとき、30.0~96.0体積部であることとしてもよい。樹脂組成物におけるマトリクスの体積含有率が30.0vоl%未満の場合は、当該樹脂組成物による樹脂成形体の加工性が低下するおそれがあり、96.0vоl%を超える場合は、必然的に樹脂組成物におけるガラス繊維の体積含有率が低下するので、当該樹脂成形体によって成形される樹脂組成物の力学的性質が低下するおそれがあり好ましくない。
樹脂成形体の第三の製造方法は、上記のように製造された、樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂を溶融する工程と、当該樹脂成形物に含まれる、ガラス繊維用集束剤が表面に付着しているガラス繊維と、当該樹脂成形物に含まれる、溶融した前記熱可塑性樹脂と、の混合物を射出成形する工程と、を含む。
上述の第三の製造方法によって得られる樹脂成形体は、ガラス繊維用集束剤が表面に付着している繊維長6mm以下のガラス繊維と、当該ガラス繊維を分散させた熱可塑性樹脂マトリクスと、を含む樹脂成形体であることとしてもよい。当該ガラス繊維の繊維長は、6mm以下の範囲にて適宜調製することができるが、例えば、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、あるいは6mmとすることとしてもよい。また、樹脂成形体は、樹脂組成物のみから成形されることとしてもよく、あるいは、樹脂組成物と樹脂組成物以外の他成分(例えば無機フィラー等)とを混合した材料から成形されることとしてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、これらの実施例は本発明の実施形態を具体的に説明するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
[ガラス繊維用集束剤の調製]
表1に示される化合物をガラス繊維用集束剤の原料として用い、当該原料を表2に示される配合比率(重量%)にて配合されたものをガラス繊維用集束剤として調製した。
表1に示される化合物をガラス繊維用集束剤の原料として用い、当該原料を表2に示される配合比率(重量%)にて配合されたものをガラス繊維用集束剤として調製した。
なお、表1にて示される第一、第二のポリプロピレン樹脂の重量平均分子量は、GPCによって測定した。
[ガラス繊維ストランドの作製]
本実施例ではガラス繊維として繊維径15μm、長繊維のバサルト繊維を採用した。当該バサルト繊維の表面に上記表2に示される集束剤1乃至21のそれぞれを塗布し、各々のガラス繊維用集束剤が表面に付着されたガラス繊維用集束剤付きガラス繊維のそれぞれを、1000本集束することによって、ガラス繊維ストランドを作製した。また、ガラス繊維の表面に付着するガラス繊維用集束剤に含まれる有効成分の付着量は、0.1〜2.0wt%の範囲内になるように調製し、本実施例においては、0.5wt%とした。
本実施例ではガラス繊維として繊維径15μm、長繊維のバサルト繊維を採用した。当該バサルト繊維の表面に上記表2に示される集束剤1乃至21のそれぞれを塗布し、各々のガラス繊維用集束剤が表面に付着されたガラス繊維用集束剤付きガラス繊維のそれぞれを、1000本集束することによって、ガラス繊維ストランドを作製した。また、ガラス繊維の表面に付着するガラス繊維用集束剤に含まれる有効成分の付着量は、0.1〜2.0wt%の範囲内になるように調製し、本実施例においては、0.5wt%とした。
[樹脂成形体の作製、および当該樹脂成形体の評価]
上記によって作製された各々の集束剤に対応するガラス繊維ストランドを用いて、樹脂成形体を作製した。本実施例では上述の第一の製造方法に準じて樹脂成形体を作成した。具体的には、ガラス繊維用集束剤が表面に付着している複数のガラス繊維の束であるガラス繊維ストランドを集積して、マット状にした不織布の繊維体に、熱可塑性樹脂マトリクスであるポリプロピレンを含浸させ、樹脂成形体を成形した。
上記によって作製された各々の集束剤に対応するガラス繊維ストランドを用いて、樹脂成形体を作製した。本実施例では上述の第一の製造方法に準じて樹脂成形体を作成した。具体的には、ガラス繊維用集束剤が表面に付着している複数のガラス繊維の束であるガラス繊維ストランドを集積して、マット状にした不織布の繊維体に、熱可塑性樹脂マトリクスであるポリプロピレンを含浸させ、樹脂成形体を成形した。
また、本実施例における熱可塑性樹脂マトリクスはポリプロピレンを用いたが、熱可塑性樹脂マトリクスは上述のように、例えば酸変性ポリプレン等の他の熱可塑性樹脂を用いることができる。
得られた樹脂成形体を下記表3にまとめて示す。なお、表3に記載されている、面内せん断応力の測定値、力学的性質の評価およびハンドリング性については後述する。
樹脂成形体の力学的性質は、樹脂成形体中のガラス繊維とマトリクスとの密着性が向上することによって向上する。したがって、上記表3に示される各々の樹脂成形体における密着性を評価することによって、いずれの集束剤を含む樹脂成形体が優れた力学的性質を有するものかの評価を行うことができる。
また、本実施例においては、上述の第一の製造方法に準じて樹脂成形体を成形したが、上述の第二の製造方法、第三の製造方法を用いて樹脂成形体を成形した場合であっても、ガラス繊維とマトリクスとの密着性の評価は同様のものとなる。したがって、樹脂成形体の力学的性質は、上述の第一、第二、第三の製造方法のいずれを採用しても同様の結果となる。
そして、樹脂成形体における密着性の評価は、JIS K7019(1999)に記載されている内容に基づいて樹脂試験片の面内せん断応力を測定して得た測定値を用いて評価した。
面内せん断応力の測定に用いられる、樹脂試験片の作製方法についてはJIS K7019(1999)本文および添付書A等に記載がされているが、下記に具体的に説明する。また、樹脂試験片の製造方法は、上記の樹脂成形体の第一の製造方法において、ガラス繊維の繊維方向を一方向に揃えたものであり、樹脂成形体の第一の製造方法の一態様である。
樹脂試験片の作製において、最初に、樹脂材料を構成する熱可塑性マトリクスによって形成された平板を2枚用意する。そして一方の平板上に、複数のガラス繊維をバランスト、かつ対称に配向させて配置する。その後、他方の平板を、ガラス繊維が配置された平板と、ガラス繊維が配置された面と重なるように積層し、200℃、1時間オーブン内で加熱し、更に、冷間プレスを行うことによって樹脂試験板を得る。そして、樹脂試験板から樹脂試験片軸がガラス繊維方向から45度方向となるように樹脂試験板を切断することによって、JIS K7019(1999)の本文、附属書Aにて規定される樹脂試験片は作製された。得られた樹脂試験片は、厚さ2mm±0.2mm、ガラス繊維が試験片軸に対し45度に配向された一方向材である。
また、本実施例における、面内せん断応力の測定において、試験機による樹脂試験片の引張速度は2mm/minとした。
上記のように作製された樹脂試験片の面内せん断応力の測定値が大きいほど、マトリクスとガラス繊維との密着性が高いものである。そして、マトリクスとガラス繊維との密着性が高いものであればあるほど、樹脂成形体の力学的性質も向上するものであるので、前述の面内せん断応力の測定値と対応して、上記表3に示される樹脂成形体が有する力学的性質の優劣を評価した。
具体的には、JIS K7019(1999)に規定されている面内せん断応力の実測値が、10.5MPa以上:◎、10.0以上〜10.5未満:○、9.5以上〜10.0未満:△、9.5以下:×、として上記表3に示される樹脂成形体が有する力学的性質とした。
また、表3に示されるハンドリング性とは、樹脂成形体の製造における、ガラス繊維ストランドから構成される繊維体に熱可塑性樹脂マトリクスを含浸させる含浸工程の行い易さに基づいて評価を行った。そして、当該含浸工程の行い易さは、樹脂成形体の製造に用いられる繊維体の状態に大きく起因する。例えば、樹脂成形体の製造に用いられる繊維体が、所定のガラス繊維用集束剤が用いられることによって硬度が著しく高いものとなった場合、あるいは、所定のガラス繊維用集束剤による集束が不十分であることによって著しく毛羽だったものとなってしまった場合、当該含浸工程に大きな手間がかかってしまう。
以上の点を鑑みて、ハンドリング性の評価は、○:繊維体の硬度が適度に柔らかく、また繊維体を構成するガラス繊維同士が十分に集束しているため含浸工程を容易に行うことができる、△:繊維体の硬度が固く、及び/又は繊維体を構成するガラス繊維同士の一部が十分に集束していないため含浸工程に手間がかかる、×:繊維体の硬度が非常固く、及び/又は繊維体を構成するガラス繊維同士が十分に集束していないため含浸工程に非常に手間がかかる、の3段階で官能的に評価を行った。
表3にて示されるように、樹脂成形体No.FRTP−19乃至21のそれぞれの、面内せん断応力の測定値は約11MPaと高く、他の樹脂成形体の約110〜175%の数値であった。すなわち、重量平均分子量が40,000〜60,000の第一のポリプロピレン樹脂と、重量平均分子量が90,000〜130,000の第二のポリプロピレン樹脂と、シランカップリング剤と、を含有するガラス繊維用集束剤19乃至21が用いられた樹脂成形体No.FRTP−19乃至21の全ては、面内せん断応力の測定値が高く、他の樹脂成形体No.FRTP−1乃至18のそれぞれと比較して際だって優れた力学的性質を有するものであることがわかる。
また、樹脂成形体No.FRTP−19乃至21の製造におけるハンドリング性の評価は高いものであった。すなわち、樹脂成形体No.FRTP−19乃至21の製造においては、高いハンドリング性を維持しており、かつ、製造された樹脂成形体の力学的性質を向上させていることがわかる。
Claims (9)
- ガラス繊維の集束に用いられるガラス繊維用集束剤であって、
重量平均分子量が40,000〜60,000の第一のポリプロピレン樹脂と、
重量平均分子量が90,000〜130,000の第二のポリプロピレン樹脂と、
シランカップリング剤と、を含有し、
前記第一のポリプロピレン樹脂の前記ガラス繊維用集束剤に含有される重量に対する前記第二のポリプロピレン樹脂の前記ガラス繊維用集束剤に含有される重量の比率は、0.10以上、1.0未満である、
ことを特徴とするガラス繊維用集束剤。 - 前記第一のポリプロピレン樹脂、及び前記第二のポリプロピレン樹脂のそれぞれは、酸変性されたポリプロピレン樹脂である、
ことを特徴とする請求項1に記載のガラス繊維用集束剤。 - 前記シランカップリング剤は、アミノシランである、
ことを特徴とする請求項1または2いずれかに記載のガラス繊維用集束剤。 - 前記シランカップリング剤は、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物である、
ことを特徴とする請求項3に記載のガラス繊維用集束剤。 - 前記ガラス繊維は、バサルト繊維である、
ことを特徴とする請求項1乃至4いずれか一項に記載のガラス繊維用集束剤。 - 請求項1〜5のいずれかに記載されたガラス繊維用集束剤が表面に付着している、
ことを特徴とするガラス繊維。 - 請求項6に記載されたガラス繊維を複数含有する、
ことを特徴とするガラス繊維ストランド。 - 請求項6に記載されたガラス繊維と、
熱可塑性樹脂のマトリクスと、を含有する、
ことを特徴とする樹脂組成物。 - 請求項6に記載されたガラス繊維と、
熱可塑性樹脂のマトリクスと、を含有する、
ことを特徴とする樹脂成形体。
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