以下、本発明に係るシートベルト用リトラクタについて具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
[概略構成]
先ず、本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の概略構成について図1乃至図3に基づき説明する。図1は本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の外観斜視図である。図2及び図3はシートベルト用リトラクタ1をユニット別に分解した斜視図である。
図1乃至図3に示すように、シートベルト用リトラクタ1は、車両のウエビング3を巻き取るための装置であって、ハウジングユニット5と、巻取ドラムユニット6と、プリテンショナユニット7と、巻取バネユニット8と、ロックユニット9とから構成されている。
また、ロックユニット9は、メカニズムカバー71(図5参照)に一体に形成された各ナイラッチ9A及び各係止フック9Bによって、ハウジングユニット5を構成するハウジング11の一方の側壁部12に固設されている。そして、ロックユニット9は、後述のようにウエビング3の急激な引き出しや車両の急激な加速度の変化に反応してウエビング3の引き出しを停止するロック機構10を構成する(図10参照)。また、巻取バネユニット8は、バネケース67(図5参照)の外周部から突出した3個の板状の係止片8A(図6参照)を介して、後述のようにロックユニット9の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側に固設されている(図8参照)。
また、プリテンショナユニット7は、平面視略コの字状に形成されたハウジング11の側壁部12に相対向する他方の側壁部13に、プリテンショナユニット7の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側から挿通される各ネジ15によってネジ止めされる。また、プリテンショナユニット7は、プリテンショナユニット7の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側から側壁部13に挿通されるストッパーピン16と、該ストッパーピン16に側壁部13の巻取ドラムユニット6の回転軸方向内側から挿入されるプッシュナット18によって固定される。
そして、ウエビング3が巻装される巻取ドラムユニット6は、ハウジングユニット5の側壁部12に固設されたロックユニット9と、側壁部13に固定されたプリテンショナユニット7との間に回転自在に支持される。また、巻取ドラムユニット6は、ロックユニット9の外側に固設された巻取バネユニット8によって、ウエビング3の巻取方向に常時付勢されている。
[ハウジングユニットの概略構成]
次に、ハウジングユニット5の概略構成について図2乃至図4に基づいて説明する。
図4はハウジングユニット5の分解斜視図である。
図2乃至図4に示すように、ハウジングユニット5は、ハウジング11と、ブラケット21と、プロテクタ22と、パウル23と、パウルリベット25と、捩りコイルバネ26と、センサカバー27と、車両加速度センサ28と、連結部材32、33と、リベット61とから構成されている。
また、ハウジング11は、車体に固定される背板部31と、その背板部31の両側縁部から相対向する各側壁部12、13が延出されて、平面視略コの字状にスチール材等で形成されている。また、各側壁部12、13は、巻取ドラムユニット6の回転軸方向に長い横長細板状の各連結部材32、33によって互いに連結されている。また、背板部31の中央部には、開口部が形成され、軽量化及びウエビング3の収容量の規制等が図られている。
また、側壁部12には巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ35が、所定隙間(例えば、約0.5mmの隙間である。)を形成しつつ挿入される貫通孔36が形成されている。この貫通孔36の内側周縁部は、巻取ドラムユニット6側へ中心軸方向内側に所定深さ窪んで、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ35に対向するように構成されている。
また、この貫通孔36の斜め下側(図4中、斜め左下側である。)のパウル23の各係合歯23A、23Bを含む先端(他方の端部)側の部分37に対向する周縁部から、該パウル23の回動方向外側へ(パウル23のラチェットギヤ35から離反する回動方向である。)、この先端側の部分37が収容される深さに切り欠かれた切欠部38が形成されている。この切欠部38の背板部31側の横側には、パウル23を回転可能に取り付けるための貫通孔41が形成されている。また、切欠部38の貫通孔41側のパウル23が当接する部分には、該貫通孔41と同軸に円弧状の案内部38Aが形成されている。
一方、スチール材等で形成されたパウル23の案内部38Aに当接して摺動する部分には、側壁部12の厚さ寸法にほぼ等しい高さで、この案内部38Aと同じ曲率半径の円弧状に窪んだ段差部37Aが形成されている。また、パウル23の回動軸方向外側(図4中、手前側である。)の側面の先端部には、ロックユニット9を構成するクラッチ85のガイド孔116(図5、図10参照)に挿入される案内ピン42が立設されている。
また、パウル23の基端部(一方の端部)にはパウルリベット25が挿通される貫通孔43が形成されると共に、この貫通孔43の周縁部から側壁部12の貫通孔41に回動可能に挿通される円筒状のボス部45が、側壁部12の厚さ寸法にほぼ等しい高さで立設されている。そして、パウル23は、ボス部45が側壁部12の貫通孔41にハウジング11の内側から挿通された状態で、側壁部12の外側から貫通孔43に嵌入されたパウルリベット25によって、回動可能に固定される。これにより、パウル23の各係合歯23A、23Bとラチェットギヤ35の外周面に形成されたラチェットギヤ部35Aとが、側壁部12の外側面とほぼ同一面になるように配置される。
また、パウルリベット25の頭部は、貫通孔41よりも大きい外径で所定厚さ(例えば、厚さ約1.5mmである。)の円板状に形成されている。そして、リターンスプリングの一例として機能する捩りコイルバネ26は、巻き数が1巻きでパウルリベット25の頭部の周囲を囲むように配置され、一端側26Aがパウル23の案内ピン42に取り付けられている。また、捩りコイルバネ26の線径は、パウルリベット25の頭部の高さのほぼ半分の寸法である(例えば、線径約0.6mmである。)。従って、捩りコイルバネ26の1巻き分のバネ高さは、パウルリベット25の頭部の高さとほぼ同じ高さに設定されている。
また、捩りコイルバネ26の他端側26Bは、側壁部12上を摺接可能に一端側26Aの側壁部12側を通った後、側壁部12の内側方向(図4中、側壁部12の裏側方向である。)へ略直角に折り曲げられて、側壁部12に形成された取付孔46に挿通されている。また、この他端側26Bの端部は、略U字形に折り曲げられて側壁部12の内側面に当接され、抜け止め部を構成している。これにより、パウル23は、捩りコイルバネ26によって切欠部38の奥側方向へ(図3中、反時計方向である。)回動するように付勢され、各係合歯23A、23Bを含む先端側の部分37が切欠部38の奥側に当接される。従って、パウル23は、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されている。
また、図2乃至図4に示すように、側壁部12の貫通孔36の下方(図4中、下方向である。)には、貫通孔36の中心軸の下方(図4中、下方向である。)から背板部31側の部分に、略四角形の開口部47が形成されている。また、この開口部47には、開口部47とほぼ同じ断面略四角形の浅い略箱体状のセンサカバー27が外側(図4中、手前側である。)から嵌入される。そして、樹脂製のセンサカバー27は、開口側周縁部に形成された鍔部が開口部47の外側周縁部(図4中、手前側周縁部である。)に当接されると共に、センサカバー27の図4中、上下方向両端面に突設された一対の係止爪27A(図4中、上側端面の係止爪27Aを図示している。)が開口部47の図4中、上下方向両端部の奥側に嵌入されて弾性的に係止される。
また、車両加速度センサ28は、鉛直方向上側(図4中、上側である。)に開放される略箱形で底面部にすり鉢状の載置部が形成された樹脂製のセンサーホルダ51と、スチール等の金属で球状体に形成されて載置部上に移動可能に載置された慣性質量体52と、慣性質量体52の鉛直方向上側に載置されてパウル23に対して反対側の端縁部(図4中、右端縁部である。)をセンサーホルダ51によって鉛直方向上下(図4中、上下方向である。)に揺動可能に支持される樹脂製のセンサレバー53とから構成されている。
そして、車両加速度センサ28をセンサカバー27へ嵌入して、センサーホルダ51のセンサカバー27内の両側壁部に対向する両側面部に設けられた一対の係止爪51A(図4中、一方の係止爪51Aを図示している。)をセンサカバー27の各係止孔27Bに嵌入して係止することによって、車両加速度センサ28がセンサカバー27を介してハウジング11に取り付けられる。
また、側壁部12には、上端縁部(図4中、上側端縁部である。)の両隅と、貫通孔36の下方(図4中、下方向である。)との3箇所に、ロックユニット9の各ナイラッチ9Aが嵌入されて取り付けられる各取付孔55が形成されている。また、側壁部12の左右側縁部の中央部(図4中、上下方向中央部である。)には、ロックユニット9の各係止フック9Bが弾性的に係止される各係止片56が、巻取ドラムユニット6の回転軸に対して直交するように張り出して形成されている。
また、側壁部13には、巻取ドラムユニット6が挿通される貫通孔57が中央部に形成されている。また、側壁部13には、下端縁部(図2中、下側端縁部である。)の略中央及び連結部材33側の角部と、上端縁部(図2中、上側端縁部である。)の背板部31側の角部に、各ネジ15がネジ止めされる各ネジ孔58がプリテンショナユニット7側方向へのバーリングによって形成されている。また、側壁部13には、上端縁部(図2中、上側端縁部である。)の連結部材32側の角部にストッパーピン16が挿通される貫通孔59が形成されている。
また、背板部31の上端縁部(図2中、上側端縁部である。)に各リベット61によって取り付けられるブラケット21は、スチール材等で形成されて、背板部31の上端縁部から略直角に連結部材32側方向に延出された延出部に、ウエビング3が引き出される背板部31の幅方向に長い横長の貫通孔62が形成され、ナイロン等の合成樹脂で形成された横長枠状のプロテクタ22が嵌め込まれている。また、背板部31の下端部(図2中、下端部である。)には、車両の締結片(不図示)に取り付ける際に、ボルトが挿通されるボルト挿通孔63が形成されている。
[巻取バネユニットの概略構成]
次に、巻取バネユニット8の概略構成について図2、図3、図5乃至図8、図11に基づいて説明する。
図5及び図6は、ラチェットギヤを含む巻取バネユニット8及びロックユニット9の分解斜視図である。図7及び図8は、バネケース67の取り付けを説明する断面図である。図11はシートベルト用リトラクタ1の巻取バネユニット8及びロックユニット9を含む要部拡大断面図である。
図2、図3、図5、図6及び図11に示すように、巻取バネユニット8は、渦巻バネ65と、この渦巻バネ65の外側端65Aが内側周縁部の底面から立設されたリブ66に固定されると共に、この渦巻バネ65を収容するバネケース67と、渦巻バネ65の内側端65Bが連結されてバネ力が付勢されるバネシャフト68とから構成されている。また、バネケース67は、ロックユニット9を構成するメカニズムカバー71側の端縁部に、ほぼ全周に渡って所定深さ(例えば、深さ約2.5mmである。)の溝部67Aが形成されている。
また、バネケース67のメカニズムカバー71側の端縁部には、外周部の3箇所から正面視略長方形の板状の各係止片8Aが、メカニズムカバー71の略中央部に形成された貫通孔73の中心軸73Aに対して同心状に突設されている。また、各係止片8Aの貫通孔73の中心軸73Aに対して半径方向外側の外周面は、同心円上に位置するように形成されている。
また、図6及び図7に示すように、バネケース67の下端縁部に位置する係止片8Aには、貫通孔73の中心軸73Aに対して反時計方向側の端縁部に連続して断面四角形の固定部8Bが連設されている。また、固定部8Bの略中央部には、貫通孔73の中心軸73Aに平行な貫通孔8Cが形成されると共に、この貫通孔8Cの該中心軸73A方向外側の端部を塞ぐように固定ピン8Dが一体的に形成されている。
また、固定ピン8Dの軸径は、貫通孔8Cの内径とほぼ同じ径に形成され、固定ピン8Dを所定荷重以上でメカニズムカバー71側へ押すことによって、貫通孔8C内に押し込むことができる。また、固定ピン8Dの長さは、固定部8Bの厚さよりも長くなるように形成されている。
一方、メカニズムカバー71は、外周部の各係止片8Aに対向する3箇所から、断面略矩形の厚板状の保持部72が、巻取バネユニット8側に突設されている。また、図5及び図7に示すように、各保持部72の基端部には、貫通孔73の中心軸73Aに対して反時計回り方向に切り欠かれて、奥側端部が閉塞された断面略長方形の嵌合溝部72Aが形成されている。
また、各嵌合溝部72Aの貫通孔73の中心軸73Aに対して半径方向外側の底面部は、バネケース67の各係止片8Aの半径方向外側端縁部よりも少し大きい半径(例えば、約0.2mm〜0.5mm大きい半径である。)の同心円上に位置するように形成されている。また、各嵌合溝部72Aの中心軸73A方向の幅寸法は、各係止片8Aの厚さ寸法とほぼ同じ寸法に形成され、後述のように、各係止片8Aは各嵌合溝部72A内に嵌入されるように構成されている(図8参照)。
また、メカニズムカバー71は、巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側の周縁部に沿って所定高さ(例えば、高さ約2mmである。)で立設された略リング状のリブ部71Aが設けられている。リブ部71Aは、溝部67Aに対応した位置に設けられており、リブ部71Aの内径及び外径は、溝部67Aの内径及び外径に対して、溝部64Aにリブ部71Aが嵌入された状態でそれぞれ所定の隙間(例えば、隙間約0.1mm〜0.3mmである。)を形成するように設けられている。
また、図5乃至図7に示すように、リブ部71Aの下端縁部に対向する保持部72の中心軸73Aに対して時計方向側の近傍には、後述のように、バネケース67をメカニズムカバー71に取り付けた際に、固定ピン8Dに対向する位置に、断面円形の固定用孔74が形成されている。
この固定用孔74の内径は、バネケース67の固定ピン8Dの外径よりも所定寸法(例えば、約0.1mm〜0.3mmである。)だけ小さくなるように形成され、固定ピン8Dを圧入できるように設けられている。また、固定用孔74の奥側、つまり、ハウジング11の側壁部12側の周縁部には、奥側が閉塞された円筒状のボス75が立設されている。また、この円筒状のボス75の内径は、固定用孔74と同じ直径の断面円形に形成されると共に、固定用孔74に対して同軸に形成されている。
ここで、巻取バネユニット8をメカニズムカバー71へ取り付ける取付方法について説明する。
図6に示すように、先ず、渦巻バネ65の外側端65Aをバネケース67の内側に立設されたリブ66に嵌入して、バネケース67内に収納して、渦巻バネ65の内側端65Bにバネシャフト68の取付溝68Cを嵌め込む。また、図5及び図6に示すように、バネシャフト68は、バネケース67の底面部の略中心位置に立設されたピン69が、底面部の貫通孔68Aに挿入されて、底面部側がピン69の周縁部に回転可能に当接される。
そして、図7に示すように、バネケース67の外周部の3箇所から半径方向外側に突設された各係止片8Aを、メカニズムカバー71の保持部72の正面視時計方向側の端縁部に対向するように位置させる。また、図5及び図11に示すように、メカニズムカバー71の貫通孔73から突出するロッキングギヤ81の回転軸部93の先端部93Aは、断面矩形状に形成されると共に、中心軸に沿って、ピン69が挿入される軸孔93Bが形成されている。
続いて、図6及び図11に示すように、メカニズムカバー71の貫通孔73から突出するロッキングギヤ81の回転軸部93の先端部93Aを、バネシャフト68の断面矩形状に形成された筒孔68B内に嵌入して、ロッキングギヤ81の回転軸部93を当該バネシャフト68に対して相対回転不能に連結する。また同時に、図7に示すように、バネケース67の溝部67A内に、メカニズムカバー71の周縁部に立設されたリブ部71Aを嵌入する。
そして、図7及び図8に示すように、バネケース67をウエビング引出方向、つまり、正面視反時計方向(図7中、矢印70方向である。)へ回転させて、バネケース67の各係止片8Aをメカニズムカバー71の各保持部72の嵌合溝部72A内に嵌入して、各嵌合溝部72Aの奥側に当接させる。これにより、バネケース67がメカニズムカバー71の貫通孔73の中心軸73Aに対して、半径方向及び軸方向に移動しないように位置決めされる。
その後、この状態で、バネケース67の固定ピン8Dを押圧して、固定部8Bの貫通孔8Cとメカニズムカバー71の固定用孔74とに圧入することによって、巻取バネユニット8がメカニズムカバー71に対して相対回転不能に固定され、巻取バネユニット8がメカニズムカバー71の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側に当接された状態で取り付けられる。
これにより、メカニズムカバー71の周縁部に立設されたリブ部71Aが、バネケース67の溝部67Aに嵌入されて、バネケース67内への粉塵や埃等の侵入が防止される。また、図11に示すように、バネシャフト68におけるメカニズムカバー71の底面部側が、ピン69の周縁部に回転可能に当接された状態で、バネシャフト68のロックユニット9側の端部と、メカニズムカバー71の略中央部に形成された貫通孔73の背面側周縁部との間に所定隙間(例えば、隙間約0.3mmである。)が形成されている。
また、同時に、バネシャフト68の筒孔68Bの底面と、ロッキングギヤ81の回転軸部93の先端部93Aとの間にも所定隙間(例えば、隙間約0.3mmである。)が形成されている。従って、バネシャフト68は、バネケース67とメカニズムカバー71との間において、所定隙間分だけ、中心軸73Aの軸方向に移動可能に設けられている。
[ロック機構の概略構成]
次に、ウエビング3の急激な引き出しや車両の急激な加速度の変化に反応してウエビング3の引き出しを停止するロック機構10を構成するロックユニット9の概略構成について図5、図6、図9乃至図18に基づいて説明する。
図9はロックユニット9のロックアームを含む組立断面図である。図10はロックユニット9のメカニズムカバー71の底面部等の一部を切り欠いた一部切り欠き断面図である。図12はクラッチの外側斜視図である。図13はクラッチの内側斜視図である。図14はクラッチを斜め下から見た斜視図である。図15及び図16はパイロットレバーの斜視図である。図17はパイロットレバーの通常時の状態を示す要部拡大図である。図18はパイロットレバーがロッキングギヤに係合した状態を示す要部拡大図である。
図5、図6、図9乃至図11に示すように、ロックユニット9は、メカニズムカバー71、ロッキングギヤ81、ロックアーム82、センサスプリング83、クラッチ85及びパイロットレバー86で構成されている。尚、本実施形態においては、ロックユニット9を構成する各部材のうち、センサスプリング83を除いた部材は、合成樹脂で成形されており、互いに接触した場合の部材間の摩擦係数は小さなものである。
メカニズムカバー71は、ハウジング11の側壁部12側が開口された略円形の底面部を有する略箱体状のメカニズム収容部87が形成され、ロッキングギヤ81やクラッチ85等を収容するように構成されている。また、メカニズムカバー71は、ハウジング11にセンサカバー27を介して取り付けられた車両加速度センサ28に対向する角部(図6中、左下角部である。)に、断面略四角形の凹形状に形成されたセンサ収容部88が設けられている。
そして、メカニズムカバー71を各ナイラッチ9A及び各係止フック9Bによって側壁部12に取り付けた場合には、車両加速度センサ28のセンサーホルダ51がセンサ収容部88に嵌入されて、センサレバー53が鉛直方向上下(図6中、上下方向である。)に揺動可能に収納されるように構成されている。また、メカニズムカバー71のメカニズム収容部87の下端部略中央部(図6中、下端部略中央部である。)には、当該メカニズム収容部87とセンサ収容部88とが連通するように開設された開口部89が形成されている。
この開口部89は、車両加速度センサ28のセンサレバー53の先端縁部から上方向(図6中、上方向である。)に向けて突設されたロック爪53Aの先端部が鉛直方向上下(図6中、上下方向である。)に進退可能に形成され、通常時には、ロック爪53Aの先端部は、パイロットレバー86の受け板部122(図10参照)の近傍に位置している。そして、後述のように、所定値を超える加速度によって慣性質量体52が移動してセンサレバー53が鉛直方向上側へ回動された場合には、ロック爪53Aは開口部89を介してパイロットレバー86の受け板部122に当接して、パイロットレバー86を鉛直方向上側へ回動させるように構成されている(図27参照)。
また、メカニズム収容部87の略円形の底面部には、中央部に形成された貫通孔73の周縁部から円筒状の支持ボス91が立設されている。この支持ボス91のロッキングギヤ81側の先端部の外周は、全周に渡って先端側へ所定角度(例えば、約30°の傾斜角である。)で傾斜した先細りの面取り部91Aが形成されている。また、この支持ボス91には、ロッキングギヤ81の円板状の底面部92の中央部に、メカニズムカバー71に対向する背面側から突出する円筒状の回転軸部93が嵌入され、摺動回転可能に支持される。
ロッキングギヤ81は、円板状の底面部92の全周からクラッチ85側へ円環状に立設されて、外周部にパイロットレバー86に係合するロッキングギヤ歯81Aが形成されている。このロッキングギヤ歯81Aは、ロッキングギヤ81がウエビング引出方向へ回転した時のみ、パイロットレバー86の係合爪部86Aと係合するように形成されている(図16参照)。
また、図5、図6、図10及び図11に示すように、ロッキングギヤ81の底面部92の中央部には、ラチェットギヤ35のロッキングギヤ81側端面の中央部に立設された軸部76が嵌入される貫通孔が形成されている。また、円筒状の基台部94が、この貫通孔のメカニズムカバー71側の周縁部からロッキングギヤ歯81Aの軸方向高さとほぼ同じ高さに立設されている。そして、ロッキングギヤ81の円筒状の回転軸部93は、この円筒状の基台部94のメカニズムカバー71側端縁部から、この基台部94よりも小さいと共に、支持ボス91の内径にほぼ等しい外径でメカニズムカバー71側へ同軸に延設されている。また、回転軸部93のメカニズムカバー71側端縁部は閉塞されて、断面矩形状の先端部93Aが同軸に延設されている。
従って、基台部94及び回転軸部93の内部には、ロッキングギヤ81のラチェットギヤ35側端面に開口して、ラチェットギヤ35のメカニズムカバー71側端面の中央部に立設された軸部76が嵌入される断面円形状の軸孔部94Aが形成されている。また、軸孔部94Aの内周面には、複数のリブ94Bが、軸方向に沿って半径方向に同じ高さで立設され、ラチェットギヤ35の軸部76の外周面に当接するように設けられている。また、軸部76は、全長のうちの基端部側の約半分の部分が円錐台に形成されると共に、先端側の約半分の部分が円錐台に連続する円柱状に形成されている。
また、回転軸部93の基端部の周囲には、円環状のリブ95が、クラッチ85の略円板状の板部111の厚さ寸法にほぼ等しい高さで同軸に立設されて、挿入溝95Aが形成されている。この円環状のリブ95の内側周壁部は、支持ボス91の先端部の傾斜角以上の角度(例えば、約45°の傾斜角である。)で半径方向外側へ傾斜している。また、円環状のリブ95の内側に形成された挿入溝95Aの底面部の外径は、支持ボス91の先端部の外径とほぼ同じ径に形成されている。
更に、円環状のリブ95の外径は、クラッチ85の板部111の中央部に形成された貫通孔112の内径とほぼ同じ径に形成されると共に、基台部94の外径よりも小さい径に形成されている。また、クラッチ85の貫通孔112のロッキングギヤ81側の端縁部には、全周に渡って円環状のリブ112Aが所定高さ(例えば、高さ約0.5mmである。)で立設されている。
これにより、ロッキングギヤ81の円環状のリブ95をクラッチ85の貫通孔112に嵌入して、円環状のリブ112Aをリブ95の外周側基端部に当接させた後、回転軸部93をメカニズムカバー71の支持ボス91に挿通して、円環状のリブ95の半径方向内側に形成された挿入溝95Aの底面部に支持ボス91の先端部を当接させることによって、ロッキングギヤ81の背面側から突出する回転軸部93がほぼ全高さに渡って支持ボス91に対して同軸に取り付けられて軸支される。また、ロッキングギヤ81の円環状のリブ95は、貫通孔112に摺動回転可能に嵌入され、クラッチ85はロッキングギヤ81とメカニズムカバー71との間に一定の回転範囲内で回転可能に収容される。
また、図5、図6及び図11に示すように、ロッキングギヤ81のラチェットギヤ35側の端面には、4個の断面が円周方向に長い略長方形の筒状に突出した凸部96が、等中心角度で、回転軸81Bから半径方向外側へ所定距離(例えば、距離約14mmである。)離れた同心円上に位置するように立設されている。尚、1個の凸部96は、半径方向外側の周縁部が一部切り欠かれている。また、ロッキングギヤ81の底面部には、円周方向に隣接する1組の凸部96の間のほぼ中央位置に、所定内径(例えば、内径約3.5mmである。)の位置決孔97が形成されている。
また、ラチェットギヤ35のロッキングギヤ81に対向する端面部には、ロッキングギヤ81の凸部96とほぼ同じ形状の円周方向に長い断面略長方形の4個の貫通孔98が、等中心角度で、回転軸81Bから半径方向外側へ所定距離(例えば、距離約14mmである。)離れた各凸部96に対向する位置に形成されている。
また、ラチェットギヤ35のロッキングギヤ81に対向する端面部には、円周方向に隣接する1組の貫通孔98の間で、位置決孔97に対向する位置に、位置決孔97の内径にほぼ等しい外径に形成された位置決めピン99が立設されている。また、ラチェットギヤ35の回転軸方向外側の端面に立設された軸部76の高さは、ロッキングギヤ81の軸孔部94Aの深さにほぼ等しくなるように形成されている。また、ロッキングギヤ81の軸孔部94Aの深さは、軸部76の先端が回転軸部93の先端部93Aの先端よりも、回転軸方向内側に位置するように形成されている。
従って、ラチェットギヤ35の軸部76をロッキングギヤ81の軸孔部94Aに嵌入すると共に、ラチェットギヤ35の位置決めピン99をロッキングギヤ81の位置決孔97に嵌入し、同時に、ロッキングギヤ81の各凸部96をラチェットギヤ35の各貫通孔98に嵌入する。これにより、ラチェットギヤ35の回転軸方向外側の端面に、ロッキングギヤ81が当接された状態で、ラチェットギヤ35にロッキングギヤ81が同軸に相対回転不能に取り付けられると共に、ラチェットギヤ35の軸部76がロッキングギヤ81の回転軸部93を介してメカニズムカバー71の支持ボス91内に位置して軸支される。
また、ロッキングギヤ81の各凸部96の外周面には、半径方向外側に突出した図示しないリブが、ラチェットギヤ35の回転軸方向に沿って立設されている。そして、ロッキングギヤ81の各凸部96は、ラチェットギヤ35の各貫通孔98に、各リブを押し潰しつつ圧入されて取り付けられる。これにより、ロッキングギヤ81をラチェットギヤ35にガタツキ無く取り付けることができると共に、ロッキングギヤ81がラチェットギヤ35に保持されるため、組立作業の効率化を図ることができる。
また、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ35が、ロッキングギヤ81の回転軸部93の先端部93Aを介して、巻取バネユニット8のバネシャフト68に同軸に相対回転不能に取り付けられる。従って、巻取ドラムユニット6は巻取バネユニット8を介して、ウエビング巻取方向へ常に回動付勢される。
尚、各凸部96は筒状に形成したが、断面が円周方向に長い略長方形の中実状に突出するように形成してもよい。また、ラチェットギヤ35の各凸部96に対向する位置に、円周方向に長い断面略長方形の4個の貫通孔98を設けたが、この貫通孔98と断面形状が同じで、内側方向に各凸部96の高さ以上の深さで窪む4個の凹部を設けるようにしてもよい。
また、図5、図6、図9乃至図11に示すように、ロッキングギヤ81の底面部92のクラッチ85側の面には、基台部94に隣接して円柱状の支持ボス101が、ロッキングギヤ歯81Aよりも低い高さで立設されている。そして、基台部94を囲むように略弓形に形成された合成樹脂製のロックアーム82は、長手方向略中央部の基台部94側の端縁部に形成された貫通孔102に、この支持ボス101が回転可能に嵌挿され、回動可能に軸支される。
また、ロッキングギヤ81の底面部92には、支持ボス101に対して半径方向外側の近傍位置に、断面逆L字形の弾性係止片103が、メカニズムカバー71側へ立設されている。この弾性係止片103は、ロックアーム82の貫通孔102の横側に形成された略扇形で段差部を有する窓部104に挿入され、基台部94の軸心回りに回動可能に弾性的に係止される。
また、図9及び図10に示すように、ロッキングギヤ81は、基台部94の外周面から半径方向外側へ延出されたリブ部に、センサスプリング83の一端側が嵌め込まれるバネ支持ピン105が、該基台部94の軸心に対して直交するウエビング引出方向へ立設されている。また、ロックアーム82のバネ支持ピン105に対向する側壁には、センサスプリング83の他端側が嵌め込まれるバネ支持ピン106が立設されている。
従って、図9及び図10に示すように、各バネ支持ピン105、106にセンサスプリング83の両端を嵌め込むことによって、ロックアーム82は支持ボス101の軸心に対してウエビング引出方向側へ(図9中、矢印107方向である)回動するように所定荷重で付勢される。そして、ロックアーム82は、クラッチ85のクラッチギヤ108に係合する係合爪109側の端縁部が、ロッキングギヤ81の基台部94から半径方向外側に突出するように形成されたストッパ114に当接されている。
一方、後述のようにロックアーム82がセンサスプリング83の付勢力に抗してウエビング巻取方向(図9中、矢印107に対して反対方向である)へ回動されてクラッチギヤ108に係合した場合には、係合爪109の係合部とは反対側の端縁部が、ロッキングギヤ81の底面部92に立設された断面紡錘形の回り止め115と所定隙間(例えば、隙間約0.3mmである。)を形成するように構成されている(図20参照)。
また、図5、図6、図9乃至図14に示すように、クラッチ85はロッキングギヤ81とメカニズムカバー71とに挟まれた状態で、メカニズム収容部87に一定の回転範囲内で回転可能に収容される。このクラッチ85のロッキングギヤ81側には、貫通孔112に対して同軸に、ロッキングギヤ81のロッキングギヤ歯81Aが外周部に形成された円環状のリブの内周径よりも少し小さい外径を有する円環状のリブ部113が立設されている。
このリブ部113の内周面には、ロックアーム82の係合爪109が係合するクラッチギヤ108が形成されている(図20参照)。このクラッチギヤ108は、後述のようにロッキングギヤ81が、貫通孔112の軸心に対してウエビング引出方向への回転した時のみ、ロックアーム82の係合爪109と係合するように形成されている(図20参照)。
また、クラッチ85の略円板状の板部111の外周部には、リブ部113を囲むように円環状の外側リブ部117が立設されている。また、この外側リブ部117のラチェットギヤ35側の端縁部には、貫通孔112の中心軸に対して半径方向外側へ延出されると共に、ラチェットギヤ35側へ少し傾斜するように延出されたフランジ部118がほぼ全周に渡って形成されている。
また、外側リブ部117のパウル23に対向する角部(図9中、左下角部である。)には、外側リブ部117の外周面から鉛直方向下方(図5中、下方向である。)へ延出されたガイドブロック部119が設けられている。このガイドブロック部119には、パウル23の各係合歯23A、23Bを含む先端部の側面に立設された案内ピン42がラチェットギヤ35側から遊嵌される略細長状のガイド孔116が形成されている。
このガイド孔116は、図10に示すように、外側リブ部117のパウル23に対向する角部に、ウエビング引出方向(図10中、上下方向である。)とほぼ平行な長溝状に形成されている。これにより、後述のようにクラッチ85がウエビング引出方向(図9中、矢印107方向である。)へ回動された場合には、案内ピン42がガイド孔116に沿って移動され、パウル23の各係合歯23A、23Bがラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aへ近づくように回動される(図20〜図22参照)。
また、パウル23は、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されており、クラッチ85は、ガイド孔116に遊嵌されたパウル23の案内ピン42により付勢されている。この付勢力によってクラッチ85は、ガイド孔116において、クラッチ85の回転半径方向で最もラチェットギヤ35から離反する位置にある端縁部(図9中、ガイド孔116の下側端縁部である。)に、パウル23の案内ピン42が当接する状態の回転姿勢になるように付勢されることで、ウエビング引出方向とは反対方向に回転付勢されている。従って、パウル23及び捩りコイルバネ26によってクラッチ付勢機構129が構成される。
そして同時にパウル23は、通常時には、ガイド孔116において、クラッチ85の半径方向で最もラチェットギヤ35から離反する位置にある端縁部(図9中、ガイド孔116の下側端縁部である。)に、パウル23の案内ピン42が当接して回動を規制されるため、側壁部12に形成された切欠部38の奥側近傍に位置するように保持されている。
また、クラッチ85の外側リブ部117の下端縁部(図6中、下端縁部である。)には、ガイドブロック部119のラチェットギヤ35側端面部からセンサ収容部88の上方(図6中、上方向である。)に対向する部分まで、フランジ部118から半径方向外側へ略円弧状に延出された板状の延出部120が形成されている。また、図9、図10、図12乃至図14に示すように、延出部120のガイドブロック部119に対して反対側の端縁部の近傍位置には、パイロットレバー86の円筒状の軸部121(図15参照)に嵌挿される細い円柱状の取付ボス123が、外側リブ部117の高さとほぼ同じ高さでメカニズムカバー71側へ立設されている。
ここで、図9、図10、図15及び図16に示すように、パイロットレバー86は、円筒状の軸部121と、板状の係合爪部86Aと、薄板状の受け板部122と、薄板状の連結板部124とから構成されている。軸部121の軸方向長さは、延出部120に立設された取付ボス123の高さとほぼ同じ寸法に形成されている。また、板状の係合爪部86Aは、ロッキングギヤ81側へ先端部が斜めに屈曲された回動軸方向視略L字形に形成されている。また、板状の係合爪部86Aは、パイロットレバー86が自重により回動して、鉛直方向下方への回転規制がされた場合に、ほぼ水平になるように、軸部121の外周面からガイド孔116側へ、該軸部121の長さよりも短い幅で、所定長さ突設されている。
また、薄板状の受け板部122は、係合爪部86Aに対向するように軸部121の外周面から接線方向ガイド孔116側へ突設され、先端部が係合爪部86Aの先端側とほぼ平行になるように斜めに曲げられている。また、薄板状の連結板部124は、係合爪部86Aと受け板部122の先端部を連結するように形成されている。また、係合爪部86Aの基端部の近傍には、パイロットレバー86のロッキングギヤ81側方向への回転、つまり、鉛直方向上側への回転を規制する上方向回り止め部125が、軸部121の外周面から半径方向外側へ突設されている。また、上方向回り止め部125は、係合爪部86Aの幅とほぼ同じ幅寸法で、係合爪部86Aの基端部に対してほぼ直角になるように所定高さ(例えば、高さ約1.5mmである。)突設されている。
また、係合爪部86Aのロッキングギヤ81に対向する端面部(図15中、上端面部である。)には、先端部がロッキングギヤ81側へ斜めに屈曲された部分から係合爪部86Aの基端部まで、リブ部86Bが長手方向に沿って幅方向略中央部に立設されている。このリブ部86Bは、係合爪部86Aの幅の約半分の幅で、先端部がロッキングギヤ81側へ斜めに屈曲された部分から長手方向略中央部まで低い一定高さ(例えば、一定高さ約1mmである。)で立設され、更に、長手方向略中央部から連続して上方向回り止め部125の基端部まで回動軸方向視略三角形状に立設されている。
従って、係合爪部86Aは、リブ部86Bによって、ロッキングギヤ81側へ斜めに屈曲された部分から長手方向略中央部までのロッキングギヤ81側方向への曲げ強度が、先端部分のロッキングギヤ81側方向への曲げ強度よりも大きくなるように形成されている。また、係合爪部86Aは、リブ部86Bによって、長手方向略中央部から係合爪部86Aの軸部121側の基端部までのロッキングギヤ81側方向への曲げ強度が、ロッキングギヤ81側へ斜めに屈曲された部分から長手方向略中央部までのロッキングギヤ81側方向への曲げ強度よりも大きくなるように形成されている。
また、軸部121の受け板部122に対して接線方向反対側には、パイロットレバー86のセンサレバー53側方向への回転、つまり、鉛直方向下側への回転を規制する下方向回り止め部126が、軸部121の外周面から半径方向外側へ突設されている。また、この下方向回り止め部126は、軸部121のラチェットギヤ35に対して反対側の端面側から受け板部122の回転軸方向の幅よりも狭い回転軸方向の幅寸法で、受け板部122の基端部に対向するように所定高さ(例えば、高さ約1.5mmである。)突設されている。
また、軸部121の受け板部122の基端部から下方向回り止め部126の基端部までの外周面には、半径方向所定深さ(例えば、深さ約0.5mmである。)で軸方向略中央部まで窪んだ断面略扇形の凹部127が形成されている。また、この凹部127の軸方向中央部側の端縁部には、板状の凸部128が、凹部127の周方向全幅に渡って、半径方向外側へ所定高さ(例えば、高さ約1.5mmである。)の同心円弧状に突設されている。
また、図9、図10、図12乃至図14に示すように、延出部120の取付ボス123に対向する端縁部には、パイロットレバー支持ブロック131が外側リブ部117とほぼ同じ高さでメカニズムカバー71側へ突設されている。このパイロットレバー支持ブロック131の取付ボス123に対向する内側には、図14に示すように、外側リブ部117の外周面から鉛直方向下方に延出されて、後述のようにパイロットレバー86がロッキングギヤ81側へ回動された際に、上方向回り止め部125が当接される上方向規制端面部132が形成されている。
また、図14に示すように、パイロットレバー支持ブロック131の取付ボス123に対向する内側には、更に、上方向規制端面部132から延出部120の鉛直方向下方側端縁部まで延出されて、取付ボス123と同軸で、且つ、パイロットレバー86の軸部121の外周面の半径よりも少し大きい(例えば、約0.1mm大きい。)曲率半径の正面視略半円形状の滑らかな曲面に形成された荷重受け面133が設けられている。
また、図12及び図14に示すように、パイロットレバー支持ブロック131の鉛直方向下方側の端縁部には、延出部120側へ所定高さ切り欠かれた段差部135が形成されて、後述のようにパイロットレバー86が自重で回動された際に、下方向回り止め部126が当接される下方向規制端面部136が形成されている。また、段差部135の延出部120からの高さは、下方向回り止め部126よりも低くなるように形成されている。
また、延出部120の取付ボス123に対して鉛直方向下方に対向する端縁部には、先端部に係止突起137Aが形成された断面逆L字型の弾性係止片137が、取付ボス123に対して半径方向外側へ弾性変形可能に立設されている。この弾性係止片137は、パイロットレバー86の軸部121の外周面に突設された凸部128に対して所定隙間(例えば、約0.3mmの隙間である。)を形成して対向すると共に、先端部に形成された係止突起137Aが、凸部128よりも少し高くなるように(例えば、約0.2mm高い。)立設されている。
また、図9、図10、図12乃至図14に示すように、外側リブ部117のパイロットレバー86の係合爪部86Aに対向する位置には、鉛直方向上下に貫通する開口部138が、周方向所定幅で、板部111の端縁部よりも内側まで所定寸法切り欠かれて形成されている。この開口部138は、後述のように、係合爪部86Aがセンサレバー53のロック爪53Aに押圧されて回動された場合に、開口部138内に進入してロッキングギヤ歯81Aに係合可能に形成されている(図18参照)。
従って、図17及び図18に示すように、パイロットレバー86の係合爪部86Aを開口部138に対向させて、軸部121を取付ボス123に嵌挿して、延出部120に当接するまで押し込むことによって、弾性係止片137の係止突起137Aが凸部128に対して所定隙間(例えば、隙間約0.2mmである。)を形成して対向するため、パイロットレバー86が取付ボス123から抜けることを防止できる。
また、係止突起137Aは、軸部121に形成された凹部127の周面に対して所定隙間(例えば、隙間やく0.2mmである。)を形成して対向すると共に、軸部121の外周面とパイロットレバー支持ブロック131の荷重受け面133との間には所定隙間139(例えば、約0.1mmの隙間である。)が形成されているため、パイロットレバー86は鉛直方向上下にスムーズに回動する。
そして、図17に示すように、パイロットレバー86が、自重により鉛直方向下側(図17中、下方向である。)へ回動した場合には、下方向回り止め部126がパイロットレバー支持ブロック131の下方向規制端面部136に当接して、鉛直方向下側(図17中、下方向である。)への回転角度が規制される。また、通常時には、パイロットレバー86の受け板部122とセンサレバー53のロック爪53Aとの間に隙間が形成されている。
また、図18に示すように、センサレバー53が鉛直方向上側(図18中、上方向である。)へ回動されて、ロック爪53Aによってパイロットレバー86が鉛直方向上側へ回動された場合には、パイロットレバー86の係合爪部86Aが、ロッキングギヤ81に当接して、ロッキングギヤ歯81Aに係合する。また、パイロットレバー86の係合爪部86Aがロッキングギヤ歯81Aに係合された状態で、ロッキングギヤ81がウエビング引出方向(矢印141方向である。)へ回転した場合には(図27参照)、係合爪部86Aには、取付ボス123側方向(矢印142方向である。)の荷重が加わる。
そして、係合爪部86Aに加わった荷重によって、係合爪部86Aのロッキングギヤ81側へ斜めに屈曲された先端部分が、軸部121側へ弾性変形して更に回動された場合には、該パイロットレバー86の上方向回り止め部125が、パイロットレバー支持ブロック131の上方向規制端面部132に当接される。また、係合爪部86Aに加わった荷重によって、取付ボス123が撓んだ場合には、軸部121の外周面が、パイロットレバー支持ブロック131の荷重受け面133に当接する。
従って、係合爪部86Aに加わった当該押圧荷重を、上方向回り止め部125及び軸部121を介してパイロットレバー支持ブロック131で支持することができる。これにより、パイロットレバー86及び取付ボス123を小さくしても、係合爪部86Aに加わった押圧荷重を支持する上方向回り止め部125、軸部121及び取付ボス123の変形や破損を防止できる。
また、図6、図9、図10、図12及び図13に示すように、クラッチ85のフランジ部118には、ガイドブロック部119の貫通孔112に対してほぼ反対側に、貫通孔112の中心軸に対して所定中心角度(例えば、中心角度約60度である。)で外側リブ部117まで切り欠かれた切欠部145が形成されている。また、切欠部145の貫通孔112の中心軸に対して周方向の両端部間には、リブ状の弾性リブ146が、一方の端部から他方の端部まで、フランジ部118の幅よりも狭い幅で、貫通孔112の中心軸に対して同心の円弧状に形成されている。
また、この弾性リブ146の周方向中央部には、フランジ部118の外径よりも半径方向外側へ所定高さ(例えば、高さ約1.2mmである。)突出する断面略U字状に形成されたクラッチ側突起部146Aが設けられている。更に、リブ状の弾性リブ146は、周方向中央部に形成されたクラッチ側突起部146Aが半径方向内側へ押圧された場合には、クラッチ側突起部146Aがフランジ部118の外径よりも半径方向内側へ移動できるように弾性変形可能に形成されている。
また、図6、図9及び図10に示すように、メカニズムカバー71のメカニズム収容部87のクラッチ85のフランジ部118に対向する内壁部は、貫通孔73の中心軸73Aに対して同心状に形成され、フランジ部118と所定隙間(例えば、約1.5mmの隙間である。)を形成して対向している。
また、メカニズム収容部87の内壁部には、クラッチ85の弾性リブ146に対向する部分に、後述のようにクラッチ85がウエビング引出方向へ回動されて、パウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合する場合に、クラッチ側突起部146Aが乗り越えられる位置に、リブ状の固定側突起部148が中心軸73A方向に沿って立設されている(図22参照)。この固定側突起部148は、メカニズム収容部87の内壁部から半径方向内側へ所定高さ(例えば、高さ約1.2mmである。)突出する断面略半円状に形成されている。
尚、クラッチ85の切欠部145は、ガイドブロック部119の貫通孔112に対してほぼ反対側のフランジ部118の部分に限らず、延出部120の貫通孔112に対してほぼ反対側のフランジ部118の部分や、パイロットレバー支持ブロック131の貫通孔112に対してほぼ反対側のフランジ部118の部分等に設けて、弾性リブ146を形成するようにしてもよい。
また、メカニズム収容部87の内壁部に形成される固定側突起部148は、各々の弾性リブ146に対向する内壁部の部分に、パウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合する場合に、クラッチ側突起部146Aが乗り越えられる位置に設けるようにしてもよい。
次に、ロック機構10の動作について図19乃至図37に基づいて説明する。各図においてウエビング3の引き出し方向は矢印151方向であり、ウエビング3の引き込み方向は矢印152方向である。また、各図において、反時計方向の回転方向がウエビング3が引き出される時の巻取ドラムユニット6の回転方向(ウエビング引出方向)である。また、ロック機構10の動作の説明上、必要に応じて図面の一部を切り欠いて表示している。
ここで、ロック機構10は、ウエビング3の急な引き出しに対して作動する「ウエビング感応式ロック機構」と、車両の揺れや傾きなどに起因して生ずる加速度に感応して作動する「車体感応式ロック機構」との2種類のロック機構として動作する。また、「ウエビング感応式ロック機構」および「車体感応式ロック機構」では、共にパウル23の動作は共通である。このため、図19乃至図37において、パウル23とラチェットギヤ35との関係を示す部分については、その一部を切り欠いた状態として表示している。
[ウエビング感応式ロック機構の動作説明]
先に、「ウエビング感応式ロック機構」の動作について図19乃至図25に基づいて説明する。図19乃至図25は、「ウエビング感応式ロック機構」の動作を説明する説明図である。「ウエビング感応式ロック機構」では、パウル23とラチェットギヤ35との関係を示す部分に加えて、ロックアーム82とクラッチギヤ108との関係を示す部分、及びセンサスプリング83の動きを示す部分を切り欠いて示している。
[ロック動作]
先ず、「ウエビング感応式ロック機構」のロック動作について図19乃至図22に基づいて説明する。図19及び図20に示すように、ロックアーム82は、ロッキングギヤ81の支持ボス101によって回動自在に支持されているため、ウエビング3の引出加速度が所定加速度(例えば、約2.0Gである。尚、1G≒9.8m/s2とする。)を超えた場合には、ロッキングギヤ81のウエビング引出方向(矢印153方向である。)への回転に対してロックアーム82に慣性遅れが生じる。
このため、ストッパ114に当接していたロックアーム82は、センサスプリング83の付勢力に抗して初期位置を維持するため、当該ロッキングギヤ81に対して支持ボス101を中心に時計方向(矢印155方向である。)に回動され、回り止め115の近傍まで回動される。そのため、ロックアーム82の係合爪109は、ロッキングギヤ81の回転軸に対して半径方向外側へ回動されて、クラッチ85のクラッチギヤ108に係合する。
そして、図20及び図21に示すように、ウエビング3の引き出しが所定加速度を超えて継続された場合には、ロッキングギヤ81が更にウエビング引出方向(矢印153方向である。)へ回転されるため、ロックアーム82の係合爪109は、クラッチギヤ108に係合した状態で、ウエビング引出方向(矢印153方向である。)へ回動される。
従って、ロックアーム82によってクラッチギヤ108がウエビング引出方向(矢印156方向である。)へ回動されるため、クラッチ85は、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されているパウル23の案内ピン42による付勢力に抗して、ロッキングギヤ81のリブ95の軸心回り、つまり、回転軸部93の軸心回りにウエビング引出方向(矢印156方向である。)へ回動される。
これにより、クラッチ85のウエビング引出方向(矢印156方向である。)への回動に伴って、パウル23の案内ピン42は、当該クラッチ85のガイド孔116によって案内されるため、当該パウル23は捩りコイルバネ26の付勢力に抗して、ラチェットギヤ35側へ回動される(矢印157方向である。)。また、クラッチ85のガイド孔116に対して直径方向ほぼ反対側のフランジ部118に、半径方向内側へ弾性変形可能に設けられた弾性リブ146のクラッチ側突起部146Aも、当該クラッチ85の回動に伴って、メカニズムカバー71のメカニズム収容部87の内周壁に立設された固定側突起部148側へ回動される。
そして、図22に示すように、ウエビング3の引き出しが所定加速度を超えて更に継続された場合には、クラッチ85は捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されているパウル23の案内ピン42による付勢力に抗して、ウエビング引出方向(矢印156方向である。)へ更に回動される。このため、パウル23の案内ピン42は、当該クラッチ85のガイド孔116によって更に案内されて、当該パウル23は捩りコイルバネ26の付勢力に抗して、ラチェットギヤ35に係合される。これにより、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされる。
また、クラッチ85の弾性リブ146は、クラッチ側突起部146Aがメカニズム収容部87の内周壁に立設された固定側突起部148側へ更に回動されるため、当該固定側突起部148に当接して押圧されて、半径方向内側へ弾性変形され、スムーズに固定側突起部148を乗り越える。そして、クラッチ85は、パウル23の各係合歯23A、23Bが、ラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに当接して、パウル23の回動が停止されるため、弾性リブ146のクラッチ側突起部146Aが固定側突起部148を乗り越えた位置で、ウエビング引出方向(矢印156方向である。)への回動が停止される。
また、クラッチ85の外周部から半径方向外側へ突出するように設けられた弾性リブ146のクラッチ側突起部146Aが、半径方向内側へ弾性変形して、メカニズム収容部87の内周壁に立設された固定側突起部148を乗り越えて、固定側突起部148のウエビング引き出し方向側の側面に当接、または、近接して位置している。
[ロック解除動作]
続いて、「ウエビング感応式ロック機構」のロック解除動作について図23乃至図25に基づいて説明する。図23に示すように、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされた後、ウエビング3に加わる引き出し方向の引張力が緩められて、ウエビング3が僅かに巻き込まれた場合には(例えば、矢印152方向に5mm程度である。)、巻取バネユニット8の付勢力によって、巻取ドラムユニット6がウエビング巻取方向(矢印158方向である。)へ僅かに回転される。
これにより、ロッキングギヤ81は、ラチェットギヤ35に対して相対回転不能に結合されているため、ラチェットギヤ35と一体となってウエビング巻取方向(矢印159方向である。)へ僅かに回転される。一方、クラッチ85は、弾性リブ146のクラッチ側突起部146Aが固定側突起部148を乗り越えた状態で、当接するため、ウエビング巻取方向(矢印159方向である。)への回転が、ロッキングギヤ81の回転に対して相対的に遅れる。
従って、図23に示すように、クラッチ85の回転軸に対して半径方向外側の外周部に一体形成された弾性リブ146から突出するように設けられたクラッチ側突起部146Aと、ハウジング11の側壁部12に対して固定されたメカニズムカバー71のメカニズム収容部87の内周壁に半径方向内側へ立設されて、クラッチ85のウエビング引出方向への回転時にクラッチ側突起部146Aと当接可能に突出する固定側突起部148とによって、クラッチ85のウエビング巻取方向への回転を、ロッキングギヤ81の回転に対して相対的に遅らせる回転差付与機構149を構成することができる。
そのため、ロッキングギヤ81がクラッチ85のウエビング巻取方向への回転に対して相対的に先行してウエビング巻取方向へ回転し、ロックアーム82の係合爪109の係合側角部とクラッチギヤ108との間に、ロックアーム82がクラッチギヤ108との係合を解除する回動方向へ回転可能な隙間が生じる。また、ラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aとパウル23の各係合歯23A、23Bとの間にも、パウル23がラチェットギヤ35との係合を解除する回動方向へ回転可能な隙間が生じる。
そして、図24に示すように、ロックアーム82は、クラッチギヤ108との係合を解除する方向へ回動可能となるため、センサスプリング83の付勢力によって、支持ボス101を中心に反時計方向(矢印161方向である。)へ回動される。そして、ロックアーム82は、クラッチギヤ108との係合が解除されると共に、ストッパ114に当接した初期位置の状態に戻る。
続いて、図24及び図25に示すように、パウル23は、ラチェットギヤ35との係合を解除する回動方向へ回転可能となるため、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向(矢印162方向である。)へ回動し、ラチェットギヤ35との係合が解除される。また、同時に、パウル23の捩りコイルバネ26の付勢力による回動に伴って、パウル23の案内ピン42がガイド孔116をロック作動時とは逆方向に移動するため、クラッチ85はウエビング巻取方向(矢印163方向である。)へ回動付勢される。
これにより、クラッチ85の弾性リブ146は、クラッチ側突起部146Aがメカニズム収容部87の内周壁に立設された固定側突起部148に当接して押圧され、半径方向内側へ弾性変形して、この固定側突起部148をスムーズに乗り越える。その後、クラッチ85は、パウル23の捩りコイルバネ26の付勢力による回動に伴って、ウエビング巻取方向(矢印163方向である。)へ回動し、案内ピン42がガイド孔116の最もラチェットギヤ35から離反する位置にある端縁部(図25中、ガイド孔116の下側端縁部である。)に当接した通常状態の基準回転姿勢に戻る。
また、パウル23の各係合歯23A、23Bとラチェットギヤ35との係合が解除されて、当該パウル23がラチェットギヤ35から離間するため、パウル23による巻取ドラムユニット6のロック状態が解除され、ウエビング3の引き出しが可能になる。従って、ウエビング3の僅かな巻き取り量で、巻取ドラムユニット6の回転のロックを解除することができる。
[車体感応式ロック機構の動作説明]
次に、「車体感応式ロック機構」の動作について図26乃至図37に基づいて説明する。図26乃至図32は、「車体感応式ロック機構」の動作を説明する説明図である。図33乃至図37は、「車体感応式ロック機構」のパウル23の同期ズレが発生した時の動作を説明する説明図である。「車体感応式ロック機構」では、パウル23とラチェットギヤ35との関係を示す部分に加えて、パイロットレバー86とロッキングギヤ81との関係を示す部分、及び車両加速度センサ28のセンサーホルダ51及びセンサレバー53の部分を切り欠いて示している。
[通常ロック動作]
先ず、「車体感応式ロック機構」の通常ロック動作について図26乃至図29に基づいて説明する。図26及び図27に示すように、車両加速度センサ28の球状体の慣性質量体52は、センサーホルダ51のすり鉢状の底面部に載置されているため、車体の揺れや傾きなどによる加速度が所定加速度(例えば、約2.0Gである。)を超えた場合には、センサーホルダ51の底面部を移動してセンサレバー53を鉛直方向上側へ回動させる。
このため、センサレバー53のロック爪53Aが、クラッチ85の延出部120に立設された取付ボス123に回転自在に取り付けられているパイロットレバー86の受け板部122に当接して、当該パイロットレバー86を鉛直方向上側へ回動させる。従って、パイロットレバー86は取付ボス123の軸心回りに時計方向(矢印164方向である。)に回動され、当該パイロットレバー86の係合爪部86Aは、クラッチ85の開口部138(図10参照)内に進入して、ロッキングギヤ81の外周部に形成されたロッキングギヤ歯81Aに係合する。このとき、上方向回り止め部125とパイロットレバー支持ブロック131の上方向規制端面部132との間には、所定隙間(例えば、隙間約0.1mmである。)が形成されている。
そして、図27及び図28に示すように、パイロットレバー86がロッキングギヤ81のロッキングギヤ歯81Aに係合した状態で、ウエビング3が引き出された場合には、当該ロッキングギヤ81がウエビング引出方向(矢印165方向である。)へ回動される。また、ロッキングギヤ81のウエビング引出方向への回転は、パイロットレバー86、取付ボス123及びパイロットレバー支持ブロック131を介してクラッチ85へ伝達される。
このため、ロッキングギヤ81のウエビング引出方向への回転に伴って、当該クラッチ85は、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されているパウル23の案内ピン42による付勢力に抗して、ロッキングギヤ81のリブ95の軸心回り、つまり、回転軸部93の軸心回りにウエビング引出方向(矢印166方向である。)へ回動される。
これにより、クラッチ85のウエビング引出方向(矢印166方向である。)への回動に伴って、パウル23の案内ピン42は、当該クラッチ85のガイド孔116に案内されるため、当該パウル23はラチェットギヤ35側へ回動される(矢印167方向である。)。また、クラッチ85のガイド孔116に対して直径方向ほぼ反対側のフランジ部118に、半径方向内側へ弾性変形可能に設けられた弾性リブ146のクラッチ側突起部146Aも、当該クラッチ85の回動に伴って、メカニズムカバー71のメカニズム収容部87の内周壁に立設された固定側突起部148側へ回動される。
そして、図29に示すように、ウエビング3の引き出しが更に継続された場合には、クラッチ85は、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されているパウル23の案内ピン42による付勢力に抗して、ウエビング引出方向(矢印166方向である。)へ更に回動される。このため、パウル23の案内ピン42は、当該クラッチ85のガイド孔116に案内されて、当該パウル23の各係合歯23A、23Bは、ラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合される。これにより、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされる。
また、クラッチ85の弾性リブ146は、クラッチ側突起部146Aがメカニズム収容部87の内周壁に立設された固定側突起部148側へ更に回動されるため、当該固定側突起部148に当接して押圧されて、半径方向内側へ弾性変形され、スムーズに固定側突起部148を乗り越える。そして、クラッチ85は、パウル23の各係合歯23A、23Bが、ラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに当接して、パウル23の回動が停止されるため、弾性リブ146のクラッチ側突起部146Aが固定側突起部148を乗り越えた位置で、ウエビング引出方向(矢印166方向である。)への回動が停止される。
また、クラッチ85の外周部から半径方向外側へ突出するように設けられた弾性リブ146のクラッチ側突起部146Aが、半径方向内側へ弾性変形して、メカニズム収容部87の内周壁に立設された固定側突起部148を乗り越えて、固定側突起部148のウエビング引き出し方向側の側面に当接、または、近接して位置している。
[ロック解除動作]
続いて、「車体感応式ロック機構」のロック解除動作について図30乃至図32に基づいて説明する。図30に示すように、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされた後、ウエビング3に加わる引き出し方向の引張力が緩められて、ウエビング3が僅かに巻き込まれた場合には(例えば、矢印152方向に5mm程度である。)、巻取バネユニット8の付勢力によって、巻取ドラムユニット6がウエビング巻取方向(矢印168方向である。)へ僅かに回転される。また、この時、車両の加速度が所定値以下であれば、車両加速度センサ28の慣性質量体52は、センサーホルダ51のすり鉢状の底面中央部に位置する通常時に戻る。
これにより、ロッキングギヤ81は、各凸部96によってラチェットギヤ35に対して相対回転不能に結合されているため、ラチェットギヤ35と一体となってウエビング巻取方向(矢印169方向である。)へ僅かに回転される。一方、クラッチ85は、弾性リブ146のクラッチ側突起部146Aが固定側突起部148を乗り越えた状態で、当接するため、ウエビング巻取方向(矢印169方向である。)への回転が、ロッキングギヤ81の回転に対して相対的に遅れる。
従って、図30に示すように、クラッチ85の回転軸に対して半径方向外側の外周部に一体形成された弾性リブ146から突出するように設けられたクラッチ側突起部146Aと、ハウジング11の側壁部12に対して固定されたメカニズムカバー71のメカニズム収容部87の内周壁に半径方向内側へ立設されて、クラッチ85のウエビング引出方向への回転時にクラッチ側突起部146Aと当接可能に突出する固定側突起部148とによって、クラッチ85のウエビング巻取方向への回転を、ロッキングギヤ81の回転に対して相対的に遅らせる回転差付与機構149を構成することができる。
そのため、ロッキングギヤ81がクラッチ85のウエビング巻取方向への回転に対して相対的に先行してウエビング巻取方向へ回転し、パイロットレバー86の係合爪部86Aの先端部とロッキングギヤ歯81Aとの間に、パイロットレバー86がロッキングギヤ歯81Aとの係合を解除する回動方向へ回転可能な隙間が生じる。また、ラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aとパウル23の各係合歯23A、23Bとの間にも、パウル23がラチェットギヤ35との係合を解除する回動方向へ回転可能な隙間が生じる。
そして、図31に示すように、パイロットレバー86は、係合爪部86Aとロッキングギヤ81との係合を解除する方向へ回動可能となるため、自重により鉛直方向下方(矢印171方向である。)へ回動される。そして、パイロットレバー86は、ロッキングギヤ81との係合が解除されると共に、パイロットレバー86の下方向回り止め部126がパイロットレバー支持ブロック131の下方向規制端面部136に当接した初期位置の状態に戻る。
続いて、図31及び図32に示すように、パウル23は、ラチェットギヤ35との係合を解除する回動方向へ回転可能となるため、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向(矢印172方向である。)へ回動し、ラチェットギヤ35との係合が解除される。また、同時に、パウル23の捩りコイルバネ26の付勢力による回動に伴って、パウル23の案内ピン42がガイド孔116をロック作動時とは逆方向に移動するため、クラッチ85はウエビング巻取方向(矢印173方向である。)へ回動付勢される。
これにより、クラッチ85の弾性リブ146は、クラッチ側突起部146Aがメカニズム収容部87の内周壁に立設された固定側突起部148に当接して押圧され、半径方向内側へ弾性変形して、この固定側突起部148をスムーズに乗り越える。その後、クラッチ85は、パウル23の捩りコイルバネ26の付勢力による回動に伴って、ウエビング巻取方向(矢印173方向である。)へ回動し、案内ピン42がガイド孔116の最もラチェットギヤ35から離反する位置にある端縁部(図32中、ガイド孔116の下側端縁部である。)に当接した通常状態の基準回転姿勢に戻る。
また、パイロットレバー86は自重により車両加速度センサ28側へ回動され、受け板部122がセンサレバー53のロック爪53Aの近傍に位置する通常状態に戻る。そして、パウル23の各係合歯23A、23Bとラチェットギヤ35との係合が解除されて、当該パウル23がラチェットギヤ35から離間するため、パウル23による巻取ドラムユニット6のロック状態が解除され、ウエビング3の引き出しが可能になる。従って、ウエビング3の僅かな巻き取り量で、巻取ドラムユニット6の回転のロックを解除することができる。
[パウルの同期ズレ発生時のロック動作]
ここで、「車体感応式ロック機構」のパウル23の同期ズレが発生した時のロック動作について図28、図33乃至図37に基づいて説明する。図28及び図33に示すように、パイロットレバー86の係合爪部86Aがロッキングギヤ81のロッキングギヤ歯81Aに係合した状態で、ウエビング3が引き出された場合には、当該ロッキングギヤ81がウエビング引出方向(矢印165方向である。)へ回動される。また、ロッキングギヤ81のウエビング引出方向への回転に伴って、クラッチ85がウエビング引出方向(矢印166方向である。)へ回動されると共に、パウル23がラチェットギヤ35側へ回動される(矢印167方向である。)。
そして、クラッチ85の弾性リブ146は、クラッチ側突起部146Aがメカニズム収容部87の内周壁に立設された固定側突起部148側へ回動されるため、当該固定側突起部148に当接して押圧されて、半径方向内側へ弾性変形され、スムーズに固定側突起部148を乗り越える。
続いて、図33及び図34に示すように、クラッチ85は、パウル23の各係合歯23A、23Bが、ラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに当接して、パウル23の回動が停止されるため、ウエビング引出方向(矢印166方向である。)への回動がロックされる。
一方、パウル23の各係合歯23A、23Bと、当該各係合歯23A、23Bに係合するラチェットギヤ部35Aの各歯との間には、図33に示すように、未だ僅かな隙間があるため、ウエビング3の引き出しが継続された場合には、ラチェットギヤ35はロックが完了するまでウエビング引出方向(矢印175方向である。)へ回動する。また同時に、ロッキングギヤ81がラチェットギヤ35と一体的に回動して、ロッキングギヤ歯81Aに係合したパイロットレバー86の係合爪部86Aを押圧する。
このため、パイロットレバー86が取付ボス123の軸心回りに時計方向へ、更に回動されて、上方向回り止め部125がパイロットレバー支持ブロック131の上方向規制端面部132に当接されて、鉛直方向上方への回動が規制される。また同時に、取付ボス123がパイロットレバー支持ブロック131側に撓んで、パイロットレバー86の軸部121がパイロットレバー支持ブロック131の荷重受け面133に当接される。
そして、図34乃至図36に示すように、ラチェットギヤ35は、パウル23の各係合歯23A、23Bの先端部が、ラチェットギヤ部35Aの各歯に当接してロック動作が完了するまで、ウエビング引出方向(矢印175方向である。)へ更に回動される。また、同時に、パイロットレバー86の係合爪部86A、及び、連結板部124を介して連結されている受け板部122が、ロッキングギヤ歯81Aによって軸部121側方向へ押圧されて、軸部121側へ弾性変形して、半径方向外側へ突出する略U字状に撓ませられる。このとき、回動軸方向視略L字形に形成された係合爪部86Aの先端部が、主にロッキングギヤ81側へ斜めに屈曲された部分において、軸部121側へ弾性変形される。
また、図36に示すように、クラッチ85のパイロットレバー86が進入する開口部138は、係合爪部86A、及び、連結板部124を介して連結されている受け板部122が、軸部121側へ弾性変形して、半径方向外側へ突出する略U字状に撓んでも当接しない大きさに形成されている。また、パイロットレバー86の係合爪部86Aの先端部は、弾性変形して、半径方向外側へ突出する略U字状に撓むにつれて、ロッキングギヤ歯81Aに対して半径方向外側へ(矢印176方向である。)ずれていく。
従って、図35乃至図37に示すように、パイロットレバー86の係合爪部86A、及び、連結板部124を介して連結されている受け板部122の軸部121側への弾性変形が、係合爪部86Aがロッキングギヤ歯81Aから外れる弾性変形量に達した場合には、当該係合爪部86Aの先端部が、ロッキングギヤ歯81Aから半径方向外側へ外れる。
そして、図37に示すように、ロッキングギヤ歯81Aから外れたパイロットレバー86は、係合爪部86A、及び、連結板部124を介して連結されている受け板部122の弾性変形が解除されて、通常状態の形状に戻る。また、パイロットレバー86は、係合爪部86Aとロッキングギヤ81との係合が解除されるため、自重により鉛直方向下方(矢印177方向である。)へ回動され、パイロットレバー86の下方向回り止め部126が、パイロットレバー支持ブロック131の下方向規制端面部136に当接した初期位置の状態に戻る。
また、パウル23の各係合歯23A、23Bの先端部が、ラチェットギヤ部35Aの各歯に当接してロック動作が完了される。これにより、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされる。
また、クラッチ85の外周部から半径方向外側へ突出するように設けられた弾性リブ146のクラッチ側突起部146Aが、半径方向内側へ弾性変形して、メカニズム収容部87の内周壁に立設された固定側突起部148を乗り越えて、固定側突起部148のウエビング引き出し方向側の側面に当接、または、近接して位置している。
尚、パイロットレバー86の係合爪部86A、及び、連結板部124を介して連結されている受け板部122の軸部121側への弾性変形が、係合爪部86Aがロッキングギヤ歯81Aから外れる弾性変形量に達していない場合にも、クラッチ85の外周部から半径方向外側へ突出するように設けられた弾性リブ146のクラッチ側突起部146Aが、半径方向内側へ弾性変形して、メカニズム収容部87の内周壁に立設された固定側突起部148を乗り越えて、固定側突起部148のウエビング引き出し方向側の側面に当接、または、近接して位置している。
従って、「車体感応式ロック機構」のロック解除動作時において、回転差付与機構149によってウエビング3の僅かな巻き取り量で、パイロットレバー86とロッキングギヤ81との係合が解除されると共に、巻取ドラムユニット6の回転のロックを解除することができる。
[巻取ドラムユニットの概略構成]
次に、巻取ドラムユニット6の概略構成について図2、図3、図38乃至図43に基づいて説明する。図38は巻取ドラムユニット6の軸心を含む断面図である。図39は巻取ドラムユニット6の分解斜視図である。図40は巻取ドラム181をラチェットギヤ35の取り付け側から見た正面図である。図41はラチェットギヤ35の斜視図である。図42はラチェットギヤ35の内側正面図である。図43は図38のX1−X1矢視断面図である。
図38及び図39に示すように、巻取ドラムユニット6は、巻取ドラム181と、トーションバー182と、ワイヤ183と、ラチェットギヤ35とから構成されている。
図2、図3、図38及び図39に示すように、巻取ドラム181は、アルミダイカストや亜鉛ダイカスト等により形成されて、プリテンショナユニット7側の端面部が閉塞された略円筒状に形成されている。また、巻取ドラム181の軸心方向のプリテンショナユニット7側の端縁部には、外周部から径方向に延出され、更に略直角外側方向(図38中、左側方向である。)に延出されたフランジ部185が形成されている。また、このフランジ部185の内周面には、後述のように車両衝突時に各クラッチパウル232(図44参照)が係合してピニオンギヤ215(図44参照)の回転が伝達される内歯ギヤ186が形成されている。
また、巻取ドラム181のプリテンショナユニット7側の端面部中央位置には、円筒状のボス187が立設されている。このボス187は、後述のポリアセタール等の合成樹脂材により形成されたベアリング235(図44参照)に嵌入され、ボス187の基端部がベアリング235に当接される。これにより、巻取ドラムユニット6の一端側は、ベアリング235を介してプリテンショナユニット7を構成するピニオンギヤ215のボス部215D(図44参照)に回転可能に支持される。従って、巻取ドラムユニット6は、プリテンショナユニット7とロックユニット9とによって回転軸方向のガタツキを防止して回転可能に支持される。
また、巻取ドラム181の内側には、中心軸に沿って徐々に細くなるように抜き勾配が形成された軸孔181Aが形成されている。また、図38及び図40に示すように、この軸孔181A内のフランジ部185側端部の内周面には、断面略台形状の5個の突出部188A〜188Eが、周方向一定間隔で半径方向内側へリブ状に突設されている。また、トーションバー182は、スチール材等により形成され、断面円形の棒状をした軸部182Cと、この軸部182Cの両端部に形成された各スプライン182A、182Bとから構成されている。
また、各突出部188A〜188Eは、スチール材等により形成されるトーションバー182の一端部に形成されたスプライン182Aの各突起部の間に嵌合可能に突設されている。これにより、図38及び図39に示すように、トーションバー182のスプライン182A側を巻取ドラム181の軸孔181Aに挿入して各突出部188A〜188E間へ圧入することによって、トーションバー182は巻取ドラム181内に相対回転不能に圧入固定される。
また、図38乃至図40に示すように、巻取ドラム181の軸方向のロックユニット9側の端縁部には、端縁部から少し軸方向内側の外周面から径方向に延出された正面視略円形のフランジ部189が形成されている。また、このフランジ部189から軸心方向外側の部分には、少し外径が細くなった円筒状の段差部191が形成されている。この段差部191は軸孔181A内に圧入されたトーションバー182の他端側のスプライン182Bを所定隙間を形成して囲むように設けられている。
また、フランジ部189の軸方向外側面に形成された正面視略円形の段差部191の外周部には、ステンレス材等の金属材からなる断面円形の線材状のワイヤ183の一端の屈曲部183Aが嵌入保持される保持側屈曲路192が一体形成されている。
この保持側屈曲路192は、図39及び図40に示すように、フランジ部189の軸方向外側面から突出する正面視半径方向内側向きの略台形状に形成された凸部193と、段差部191の外周の凸部193に対向する凹部194と、この凹部194の正面視反時計方向側(図40中、反時計方向側である。)の端部から少し離れた段差部191の外周面から正面視反時計方向に傾斜した斜め内側方向へ形成された溝部195と、段差部191の凹部194と溝部195との間の外周面とによって形成されている。
また、図39及び図40に示すように、凸部193と凹部194の半径方向に対して斜めに傾斜した溝部195側(図40中、反時計方向側である。)の対向面には、保持側屈曲路192の深さ方向に沿って1組の対向するリブ196が設けられている。また、凸部193と凹部194の半径方向に対して斜めに傾斜した溝部195に対して反対側(図40中、時計方向側である。)の対向面には、半径方向外側のワイヤ183の出口側端部と半径方向内側の奥側端部とに、それぞれ保持側屈曲路192の深さ方向に沿って2組の対向する各リブ197、198が設けられている。
また、溝部195の対向面には、保持側屈曲路192の深さ方向に沿って1組の対向するリブ199が設けられている。また、図40及び図43に示すように、相対向する各リブ196〜199は、保持側屈曲路192に嵌入されるワイヤ183を挟んで、このワイヤ183の軸線に対して直交する面上で相対向するように、保持側屈曲路192の深さ方向に沿って立設されている。また、相対向する各リブ196〜199間の距離は、ワイヤ183の外径よりも小さくなるように形成されている。尚、各リブ196〜199の保持側屈曲路192の底面部からの高さは、ワイヤ183の外径以上の高さに形成されている。
そして、図39及び図43に示すように、ワイヤ183の一端の屈曲部183Aは、各リブ196〜199を押し潰しつつ保持側屈曲路192に嵌入されて固定保持される。また、ワイヤ183の屈曲部183Aに連続して形成される正面視略逆U字状の屈曲部183Bは、フランジ部189の外周よりも外側に突出するように形成されている。そして、ワイヤ183の屈曲部183Bに連続して形成される屈曲部183Cは、段差部191の外周面に沿った円弧状に形成されている。
従って、ワイヤ183の屈曲部183Aは、保持側屈曲路192の出口側端部でワイヤ183の軸線方向に沿って配置された2組の各リブ197、198によって挟持されるため、当該屈曲部183Aから連続する屈曲部183Bの当該保持側屈曲路192の出口側に対する傾きをほぼ一定にすることができる。
また、ラチェットギヤ35は、図38、図39、図41及び図42に示すように、アルミダイカストや亜鉛ダイカスト等により形成され、軸断面略リング状で外周部にラチェットギヤ部35Aが形成され、その内側中央位置に円筒状の固定ボス201が立設されている。固定ボス201の内周面には、トーションバー182の他端側に形成されるスプライン182Bが圧入されるスプライン溝201Aが形成されている。また、ラチェットギヤ部35Aの内周部は、巻取ドラム181の段差部191が嵌挿可能な内径に形成されている。
尚、トーションバー182の他端側に形成されるスプライン182Bの最大外径は、該トーションバー182の一端側に形成されるスプライン182Aの外径よりも少し小さい径に形成されている。
また、ラチェットギヤ35は、ラチェットギヤ部35Aの巻取ドラム181側の端面部から全周に渡って、該巻取ドラム181のフランジ部189の外径よりも半径方向外側へ正面視リング状に延出され、更に、所定中心角度(例えば、中心角度約60度である。)の外周部から半径方向外側へ正面視先端側が狭い略台形状に延出されたフランジ部202が形成されている。また、フランジ部202の外径は、巻取ドラム181のフランジ部185の外径とほぼ同じ大きさに形成されている。
また、このフランジ部202の半径方向外側へ延出された正面視先端側が狭い略台形状の台形状部202Aの巻取ドラム181側の内側面には、台形状部202Aから回転軸方向外側に突出して、ワイヤ183の正面視略逆U字状の屈曲部183Bが嵌め込まれる正面視略山形の凸部203が略中央部に形成されている。
また、フランジ部202の巻取ドラム181側の内側面には、巻取ドラム181のフランジ部189の外径よりも少し大きい内径で立設されると共に、台形状部202Aの外周部に沿って立設された正面視略卵形のフランジ部205が形成されている。また、このフランジ部205の内周部と凸部203の外周部とによって、ワイヤ183が摺動案内されて引き出される正面視略逆U字状の変形付与屈曲路206が形成されている(図43参照)。また、フランジ部205の外周部には、装着されたワイヤ183が視認可能なように、2箇所に円周方向に切り欠かれた各窓部207が形成されている。
また、図41乃至図43に示すように、変形付与屈曲路206が後述のように保持側屈曲路192に対して相対回転する際に(図48参照)、ワイヤ183が引き出される変形付与屈曲路206の引き出し側端部には、相対向する側面部にそれぞれ突条の各リブ208、209が、変形付与屈曲路206の深さ方向に沿って立設されている。
一方のリブ208は、ワイヤの引き出し時に保持側屈曲路192が、変形付与屈曲路206に対して相対回転する回転方向側(図43中、反時計方向側である。)とは反対側の側面の引き出し側端部に立設されている。また、他方のリブ209は、変形付与屈曲路206のワイヤ183を挟んでリブ208に対向する側面に、このリブ208よりもワイヤ183の軸線方向奥側(図42中、半径方向外側である。)に立設されている。
また、各リブ208、209間のワイヤ183の軸線に対して直交する方向の距離は、ワイヤ183の外径とほぼ同じになるように形成されている。従って、ワイヤ183が当該変形付与屈曲路206を通過する際には、少なくとも正面視略山形の凸部203の頂点で屈曲変形され、引き出し抵抗が発生する。尚、各リブ208、209間のワイヤ183の軸線に対して直交する方向の距離は、ワイヤ183の外径よりも僅かに狭い距離になるように形成してもよい。
ここで、ワイヤ183のラチェットギヤ35及び巻取ドラム181への取り付けについて図38、図39及び図43に基づいて説明する。
図39及び図43に示すように、先ず、ワイヤ183の一端側の略S字状に屈曲されている屈曲部183Aを巻取ドラム181のフランジ部189と段差部191に形成された保持側屈曲路192内に、各リブ196〜199を潰しながら嵌入する。また、ワイヤ183の屈曲部183Aに連続して形成される正面視略逆U字状の屈曲部183Bを、フランジ部189の外周よりも外側に突出させる。
また、ワイヤ183の屈曲部183Bに連続して形成される円弧状の屈曲部183Cを、段差部191の外周面に沿って配置する。これにより、ワイヤ183の一端側の屈曲部183Aが、巻取ドラム181のフランジ部189と段差部191に形成された保持側屈曲路192内に嵌入されて固定保持されると共に、ワイヤ183の屈曲部183Cがフランジ部189に対向した状態で配置される。
続いて、ラチェットギヤ35の巻取ドラム181への取り付けは、先ず、巻取ドラム181のフランジ部189の外周よりも外側に突出しているワイヤ183の正面視略逆U字状の屈曲部183Bを、ラチェットギヤ35のフランジ部202の台形状部202Aに設けられた凸部203の外周部に形成された変形付与屈曲路206内に、各リブ208、209により位置決めしつつ嵌入する。
また、同時に、ラチェットギヤ35の固定ボス201を巻取ドラム181の段差部191内に挿入して、トーションバー182の他端側に形成されたスプライン182Bを当該固定ボス201のスプライン溝201Aに圧入する。これにより、巻取ドラム181のフランジ部189とラチェットギヤ35の各フランジ部202、205との間に、ワイヤ183が配置されると共に、ラチェットギヤ35が巻取ドラム181に装着される。
[プリテンショナユニットの概略構成]
次に、プリテンショナユニット7の概略構成について図2、図3、図44及び図45に基づいて説明する。図44はプリテンショナユニット7の分解斜視図である。図45はプリテンショナユニット7の内部構造を示す断面図である。
プリテンショナユニット7は、車両衝突時等の緊急時に巻取ドラム181をウエビング巻取方向に回転させて、ウエビング3の弛みを除去し、乗員を座席にしっかりと拘束するように構成されている。
図44及び図45に示すように、プリテンショナユニット7は、ガス発生部材211と、パイプシリンダ212と、ピストン213と、ピニオンギヤ215と、クラッチ機構216と、ベアリング235を備えている。
ガス発生部材211は、火薬等のガス発生剤を含んでおり、図示省略の制御部からの着火信号によりガス発生剤を着火させて当該ガス発生剤の燃焼でガスを発生させるように構成されている。
また、パイプシリンダ212は、直線状のピストン案内筒部212Aの一端部にガス導入部212Bが連接されたL字状の筒部材に形成されている。このガス導入部212Bにはガス発生部材211が収納される。従って、ガス発生部材211により発生したガスは、ガス導入部212Bからピストン案内筒部212A内に導入される。また、ピストン案内筒部212Aの一側部における長手方向中間部には、開口部217が形成され、後述のようにピニオンギヤ215のピニオンギヤ歯215Aの一部が配設される。
このパイプシリンダ212は、ハウジング11の側壁部13側のベースプレート218と、外側のカバープレート221とによって挟持されると共に、これらの間でベースブロック222とカバープレート221とによって挟持された状態で、各ネジ15によって側壁部13の外面に取り付け固定される。
また、ピストン案内筒部212Aの上端部には、プリテンショナユニット7を側壁部13に取り付けると共に、ピストン213の抜け止め及びパイプシリンダ212の抜け止め、回転止めとして機能するストッパーピン16を挿通可能な一対の貫通孔212Cが相対向して形成されている。
ピストン213は、スチール材等の金属部材で形成されて、ピストン案内筒部212Aの上端側から挿入可能な断面略長方形で、全体として長尺状の形状を有している。また、ピストン213のピニオンギヤ215側の側面には、ピニオンギヤ歯215Aに噛合するラック213Aが形成されている。また、ピストン213のガス発生部材211側の端面は、ピストン案内筒部212Aの断面形状に応じた円形端面213Bに形成されている。この円形端面213Bには、ゴム材等によって形成されたシールプレート223が取り付けられている。
このピストン213は、その長手方向に沿って長い断面矩形状の貫通孔213Cが形成され、両側面部が連通されている。また、シールプレート223のガスを受圧する受圧側面から貫通孔213Cに連通するガス抜き孔225が、ピストン213とシールプレート223に形成されている。このピストン213は、図45に示すように、プリテンショナユニット7が動作する前、つまり、ガス発生部材211によりガスが発生しない通常時の待機状態の場合には、ラック213Aがピニオンギヤ歯215Aと非噛合状態となる位置まで、ピストン案内筒部212Aの奥側に挿入配置される。
ピニオンギヤ215は、スチール材等で形成された円柱状部材であり、その外周部にはラック213Aに噛合可能なピニオンギヤ歯215Aが形成されている。また、ピニオンギヤ歯215Aよりカバープレート221側へ延出された円筒状の支持部215Bが形成されている。この支持部215Bが側壁部13に取り付けられるカバープレート221に形成された支持孔226に回転可能に嵌入される。
そして、支持部215Bが支持孔226に回転可能に嵌入された状態では、ピニオンギヤ歯215Aの一部が、ピストン案内筒部212Aの開口部217内に配設されている。そして、図45に示すように、ピストン213が通常時の待機状態よりピストン案内筒部212Aの先端側に移動すると、ラック213Aがピニオンギヤ歯215Aに噛合して、ピニオンギヤ215がウエビング巻取方向へ回転する。
また、このピニオンギヤ215の回転は、クラッチ機構216を介して巻取ドラム181に伝達される。
即ち、ピニオンギヤ215の軸心方向の側壁部13側の端部には、軸心方向に沿って突出する円筒状のボス部215Dが形成されている。このボス部215Dの外周面には、基端部の外径を有する6個の突起から構成されたスプラインが形成されている。このボス部215Dはベースプレート218に形成された貫通孔227に回転可能に嵌入されて、巻取ドラム181側に突出配置される。
また、クラッチ機構216は、通常時においてピニオンギヤ215に対して巻取ドラム181を自由回転させる状態(クラッチパウル232が収納された状態)から、プリテンショナユニット7の作動時において、ピニオンギヤ215の回転を巻取ドラム181に伝達する状態(クラッチパウル232が突出した状態)へ切り替え可能に構成されている。
クラッチ機構216は、スチール材等で形成されたパウルベース231と、スチール材等で形成された4個のクラッチパウル232と、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されて、パウルベース231のベースプレート218側に当接される略円環状のパウルガイド233と、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されて、パウルベース231の巻取ドラム181側に当接されて、パウルガイド233と共に当該パウルベース231及び各クラッチパウル232を挟持する略円環状のベアリング235とから構成されている。
パウルベース231の中央部には、ピニオンギヤ215のボス部215Dが嵌め込まれるように6個のスプライン溝が形成された嵌合孔236が設けられている。そして、ピニオンギヤ215のボス部215Dが、ベースプレート218及びパウルガイド233を挟んで、パウルベース231の嵌合孔236に圧入されることによって、パウルベース231がピニオンギヤ215に対して相対回転不能に取り付けられる。つまり、パウルベース231とピニオンギヤ215とは一体回転するように構成されている。
また、ベアリング235は、外周部からパウルガイド233側へ突出した複数の弾性係止片235Aによって、パウルガイド233の外周部に係止されるように構成されている。また、ベアリング235の中央部には、巻取ドラム181のボス187の外径にほぼ等しい内径の貫通孔235Bが形成されている。更に、この貫通孔235Bと同一内径で、且つ、ピニオンギヤ215のボス部215Dの内径にほぼ等しい外径の円筒状の軸受部235Cが、貫通孔235Bのパウルベース231側の周縁部から連続して突出するように立設されている。
そして、ピニオンギヤ215のボス部215Dが、パウルベース231の嵌合孔236に圧入された場合には、ベアリング235の中央部に立設された円筒状の軸受部235Cが、ボス部215Dに嵌め込まれる。また、ベアリング235には、巻取ドラム181のプリテンショナユニット7側の端面部中央位置に立設されたボス187が回転可能に嵌入される。このパウルベース231には、各クラッチパウル232が収容姿勢で支持されている。収容姿勢は、各クラッチパウル232の全体をパウルベース231の外周縁部内に収めた姿勢である。
パウルガイド233は、略円環状の部材であり、パウルベース231及び各クラッチパウル232に対向する位置に配設されている。このパウルガイド233のベースプレート218側の側面には4個の位置決突起(不図示)が突設されており、各位置決突起がベースプレート218の各位置決め孔218Aに嵌入されて、待機状態において、パウルガイド233がベースプレート218に回転不能な状態で取付固定される。
また、パウルガイド233のパウルベース231側の面には、各クラッチパウル232に対応して各姿勢変更用突起部233Aが突設されている。そして、プリテンショナユニット7の作動によってパウルベース231とパウルガイド233とが相対回転すると、各クラッチパウル232が姿勢変更用突起部233Aにそれぞれ当接して、収容姿勢から係止姿勢に姿勢変更されるようになっている。係止姿勢は、クラッチパウル232の先端部をパウルベース231の外周縁部外方へ突出させた姿勢である。
また、各クラッチパウル232が係止姿勢に姿勢変更すると、巻取ドラム181に係合する。具体的には、ベアリング235を介してクラッチ機構216は、巻取ドラム181のボス187に嵌入され、巻取ドラム181を回転可能に支持しており、各クラッチパウル232がパウルベース231の外周縁部外方へ突出した場合には、フランジ部185の内周面に形成された内歯ギヤ186に係合可能とされている。
そして、各クラッチパウル232が係止姿勢に姿勢変更すると、各クラッチパウル232の先端部が内歯ギヤ186に係合し、これにより、パウルベース231が巻取ドラム181を回転させるようになる。尚、クラッチパウル232と内歯ギヤ186との係合は、巻取ドラム181をウエビング3の巻取方向へ回転させる、一方向のみへの係合構造である。
また、一度係合すると各クラッチパウル232が互いに変形を伴って内歯ギヤ186に噛み込むので、係合後、巻取ドラム181がウエビング引出方向へ回転すると、ピニオンギヤ215を、プリテンショナユニット7が作動する際とは逆の方向に、クラッチ機構216を介して回転させて、ピストン213を作動方向とは逆方向に押し戻す。そして、ピストン213のラック213Aと、ピニオンギヤ215のピニオンギヤ歯215Aとの噛み合いが外れる位置までピストン213が押し戻されると、ピニオンギヤ215はピストン213から外れるので、巻取ドラム181はピストン213に対して自由回転できるようになる。
次に、上記のように構成されたプリテンショナユニット7が作動してウエビング3を巻き取る動作について図45及び図46に基づいて説明する。図46は車両衝突時のパウル23の動作を示す説明図である。
図45に示すように、車両衝突時等において、プリテンショナユニット7のガス発生部材211が作動した場合には、発生したガスの圧力によりピストン213がピストン案内筒部212Aの先端側に向けて移動すると共に、ラック213Aと噛み合ったピニオンギヤ歯215Aを有するピニオンギヤ215が回転する(図45中、反時計方向へ回転する。)。
また、車両衝突時等において、車両加速度センサ28の慣性質量体52が、センサーホルダ51の底面部を移動してセンサレバー53を鉛直方向上側へ回動させるため、上記の通り、センサレバー53のロック爪53Aが、パイロットレバー86を鉛直方向上側へ回動させる。そして、パイロットレバー86の係合爪部86Aが、ロッキングギヤ81の外周部に形成されたロッキングギヤ歯81Aに当接される。
尚、パイロットレバー86の係合爪部86Aとロッキングギヤ歯81Aとの係合は、巻取ドラム181をウエビング3の引出方向へ回転させない方向に作動する、一方向のみへの係合構造である。従って、プリテンショナユニット7が作動している際に、パイロットレバー86の係合爪部86Aがロッキングギヤ歯81Aに当接しても、巻取ドラム181は、ウエビング3の巻取方向へスムーズに回転する。
そして、図45に示すように、ピニオンギヤ215が回転すると、当該ピニオンギヤ215と一緒にパウルベース231が回転する。この際、パウルガイド233に対してパウルベース231が相対回転することになるため、パウルガイド233に形成された各姿勢変更用突起部233Aがクラッチパウル232に当接して、各クラッチパウル232が係止姿勢に変更される。
これにより、各クラッチパウル232の先端部が、巻取ドラム181の内歯ギヤ186に係合して、ピストン213がピストン案内筒部212Aの先端側へ移動しようとする力が、ピニオンギヤ215、パウルベース231、各クラッチパウル232及び内歯ギヤ186を介して巻取ドラム181に伝達されて、巻取ドラム181がウエビング3の巻取方向へ回転駆動され、ウエビング3が巻取ドラム181に巻き取られる。
また、車両衝突時等において、プリテンショナユニット7の作動後、引き続いて、ウエビング3が引き出され、巻取ドラム181がウエビング引出方向へ回転された場合には、パイロットレバー86の係合爪部86Aが、ロッキングギヤ81の外周部に形成されたロッキングギヤ歯81Aに係合して、クラッチ85がウエビング引出方向へ回動される。このため、図46に示すように、当該クラッチ85のガイド孔116に案内されたパウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合される。
従って、車両衝突時等において、プリテンショナユニット7の作動後、引き続いて、ウエビング3が引き出された場合には、パウル23とラチェットギヤ部35Aとの係合によって、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ35は、ウエビング3の引き出し方向へ回転するのが抑止される。尚、パウル23とラチェットギヤ部35Aとの係合は、巻取ドラム181をウエビング3の引出方向へ回転させる、一方向のみへの係合構造である。
[エネルギー吸収]
次に、車両衝突時等でプリテンショナユニット7の作動後、パウル23とラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aとの係合が未だ維持されている状態で、乗員が車両に対して相対的に前側へ移動した場合には、ウエビング3に大きな引き出し力が作用する。そして、ウエビング3に作用する引出力が予め設定された所定値を超えて引き出された場合には、巻取ドラム181にウエビング引出方向への回転トルクが作用する。
そして、巻取ドラム181に作用するウエビング引出方向への回転トルクによって、トーションバー182の巻取ドラム181の軸孔181Aの奥側に圧入固定されたスプライン182A側が回転され、トーションバー182の軸部182Cの捻れ変形が開始される。このトーションバー182の軸部182Cの捻れ変形に伴って巻取ドラム181がウエビング3の引出方向に回転し、「第1のエネルギー吸収機構」としてのトーションバー182の捻れ変形による衝撃エネルギーの吸収がなされる。
また同時に、巻取ドラム181が回転された場合には、パウル23とラチェットギヤ35とは係合されているため、このラチェットギヤ35と巻取ドラム181との相互間においても相対回転が生じる。それにより、巻取ドラム181の回転に伴ってワイヤ183とラチェットギヤ35との相互間においても相対回転が生じ、「第2のエネルギー吸収機構」としてのワイヤ183による衝撃エネルギーの吸収がなされる。
[ワイヤの引き出し動作]
ここで、ワイヤ183によって衝撃エネルギーを吸収する際の、当該ワイヤ183の動作について図43、図47乃至図50に基づいて説明する。図47乃至図50はワイヤ183を引き出す動作説明図である。
図43に示されるように、巻取ドラム181とラチェットギヤ35との初期状態においては、巻取ドラム181の保持側屈曲路192を構成する凸部193と凹部194のワイヤ183の出口側端部は、フランジ部202の台形状部202Aに突設された凸部203の外周部に形成された変形付与屈曲路206の引き出し側端部の近くに位置している。
そして、ワイヤ183の略S字状の屈曲部183Aは、巻取ドラム181の凸部193と凹部194と溝部195とによって構成された保持側屈曲路192内に嵌入されて固定保持されている。また、また、ワイヤ183の屈曲部183Aに連続する正面視略逆U字状の屈曲部183Bは、台形状部202Aに突設された凸部203の外周部に形成された変形付与屈曲路206内に嵌入されている。
また、ワイヤ183は、略S字状の屈曲部183Aが、保持側屈曲路192を構成する凸部193と凹部194の相対向する側面部に設けられた各リブ197、198によって挟持されている。また、屈曲部183Aに連続する正面視略逆U字状の屈曲部183Bは、凸部203の引き出し側端部の側面部に設けられたリブ208と、台形状部202Aの外周部に立設されたフランジ部205のリブ208よりも奥側に立設されたリブ209によって変形付与屈曲路206内で位置決めされている。
これにより、保持側屈曲路192のワイヤ183の出口側端部と、変形付与屈曲路206の引き出し側端部とがワイヤ183を介して一直線状になるように対向している。また、変形付与屈曲路206の引き出し側端部のリブ208に対向する側面部とワイヤ183との間には所定隙間(例えば、隙間約0.2mmである。)が形成されると共に、リブ209に対向する凸部203の外周面とワイヤ183との間にも所定隙間(例えば、隙間約0.2mmである。)が形成されている。
そして、図47乃至図50に示すように、ウエビング3の引き出しによって巻取ドラム181がウエビング引出方向(矢印X2方向である。)に回転した場合には、ラチェットギヤ35はパウル23によって回転が阻止され(図46参照)、巻取ドラム181の回転に伴って段差部191がラチェットギヤ35の台形状部202Aに対してウエビング引出方向(矢印X2方向である。)に相対回転されていく。
これにより、段差部191の保持側屈曲路192に屈曲部183Aが固定保持されたワイヤ183が、台形状部202Aの外周部から突出するフランジ部205と台形状部202Aの中央部に突出する凸部203によって形成される正面視略逆U字状の変形付与屈曲路206から順次しごかれながら、矢印X3方向に引き出されて、段差部191の外周面に巻き取られる。尚、この際には、ワイヤ183の引き出しと同時に、巻取ドラム181の回転に伴ってトーションバー182も捻れ変形している。
また、正面視略逆U字状の変形付与屈曲路206をワイヤ183が変形しながら通過する際に、ワイヤ183は、変形付与屈曲路206の引き出し側端部のリブ208に対向する段差部191の回転方向(矢印X2方向である。)の側面部と、リブ208よりもワイヤ183の軸線方向奥側に設けられたリブ209に対向する凸部203の外周面とに摺動しながら通過する。これにより、凸部203とワイヤ183との相互間に摺動抵抗が生じると共に、ワイヤ183自体による屈曲抵抗が生じ、これら摺動抵抗と屈曲抵抗による引出抵抗によってワイヤ183による衝撃エネルギーの吸収がなされる。
そして、図50に示すように、巻取ドラム181の回転に伴って、ワイヤ183の屈曲部183Cの端部が、変形付与屈曲路206から離脱した時点で、このワイヤ183による衝撃エネルギーの吸収作用は終了し、以降は巻取ドラム181の回転に伴ってトーションバー182の捻れ変形による衝撃エネルギーの吸収のみとなる。
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1では、ウエビング3の急な引き出しによってロックアーム82がクラッチギヤ108に係合した場合や、車両加速度センサ28が作動して、パイロットレバー86がロッキングギヤ歯81Aに係合した場合には、クラッチ85がウエビング引き出し方向へ回動される。そして、パウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合した場合には、クラッチ85の外周部から半径方向外側へ突出するように設けられた弾性リブ146のクラッチ側突起部146Aが、半径方向内側へ弾性変形して、メカニズム収容部87の内周壁に立設された固定側突起部148を乗り越えて、固定側突起部148のウエビング引き出し方向側の側面に当接、または、近接して位置している。
その後、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされた後、ウエビング3に加わる引き出し方向の引張力が緩められて、ウエビング3が僅かに巻き込まれた場合には、巻取バネユニット8の付勢力によって、巻取ドラムユニット6がウエビング巻取方向へ僅かに回転される。また、ロッキングギヤ81は、ラチェットギヤ35と一体となってウエビング巻取方向へ僅かに回転される。
一方、クラッチ85は、弾性リブ146のクラッチ側突起部146Aが固定側突起部148を乗り越えた状態で、当接するため、ウエビング巻取方向への回転が、ロッキングギヤ81の回転に対して相対的に遅れる。そのため、ロッキングギヤ81はクラッチ85のウエビング巻取方向への回転に対して相対的に先行してウエビング巻取方向へ回転する。
これにより、クラッチギヤ108に係合していたロックアーム82の係合爪109の係合側角部とクラッチギヤ108との間、または、ロッキングギヤ歯81Aに係合していたパイロットレバー86の係合爪部86Aの先端部とロッキングギヤ歯81Aとの間に、ロックアーム82またはパイロットレバー86が、それぞれの係合を解除する回動方向へ回転可能な隙間が生じる。
従って、ロッキングギヤ81とクラッチ85との連結が解除可能とされると共に、ラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aとパウル23の各係合歯23A、23Bとの間にも、パウル23がラチェットギヤ35との係合を解除する回動方向へ回転可能な隙間が生じて、ラチェットギヤ35とパウル23との係合が解除可能とされる。
その後、クラッチ85は、パウル23及びパウル23の捩りコイルバネ26により構成されるクラッチ付勢部材の付勢力による回動に伴って、ウエビング巻取方向へ回動し、通常状態の基準回転姿勢に戻る。同時に、パウル23とラチェットギヤ35との係合が解除されて、パウル23がラチェットギヤ35から離間するため、パウル23による巻取ドラムユニット6のロック状態が解除される。
これにより、クラッチ85とロッキングギヤ81とを連結した状態でウエビング巻取方向へ回転させる際に、クラッチ側突起部146Aと固定側突起部148との当接によって、ロッキングギヤ81をクラッチ85に先行してウエビング巻取方向へ確実に回転させることができる。従って、僅かなウエビング3の巻き取り量でも、ロッキングギヤ81とクラッチ85との連結を確実に解除して、ロック状態を解除することが可能となり、エンドロックを確実に防止することができる。
また、クラッチ85の回転軸に対して半径方向外側の外周部に一体形成された弾性リブ146から突出するように設けられたクラッチ側突起部146Aと、ハウジング11の側壁部12に対して固定されたメカニズムカバー71のメカニズム収容部87の内周壁に半径方向内側へ立設されて、クラッチ85のウエビング引出方向への回転時にクラッチ側突起部146Aと当接可能に突出する固定側突起部148とによって、クラッチ85のウエビング巻取方向への回転を、ロッキングギヤ81の回転に対して相対的に遅らせる回転差付与機構149を構成することができ、当該回転差付与機構149の簡素化を図り、部品点数の削減化を図ることができる。
また、弾性リブ146及びクラッチ側突起部146Aは、固定側突起部148に当接して押圧された半径方向内側へ弾性変形可能に設けられるため、パウル23がラチェットギヤ35に係合する際に、弾性リブ146及びクラッチ側突起部146Aが弾性変形して、スムーズに固定側突起部148を乗り越えることができ、パウル23がラチェットギヤ35に係合するロック感度に影響を与えずに回転差付与機構149を設けることができる。
更に、クラッチ85がウエビング巻取方向へ回動して通常時の回転姿勢になる際に、弾性リブ146及びクラッチ側突起部146Aが半径方向内側へ弾性変形して、スムーズに固定側突起部148を乗り越えることができ、クラッチ85を基準回転姿勢になるようにウエビング巻取方向へ回動付勢するパウル23及び捩りコイルバネ26によって構成されるクラッチ付勢機構129の小型化及び簡素化を図ることができる。
また、本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1では、クラッチ付勢機構129は、パウル23及び捩りコイルバネ26によって構成したが、クラッチ85にウエビング巻取方向へ回動付勢する付勢部材を直接取り付けて構成するようにしてもよい。例えば、コイルバネの一端をクラッチ85の外側リブ部117の上端縁部等に取り付け、コイルバネの他端をハウジング11の側壁部12、または、側壁部12に固定された固定部材に取り付けるようにしてもよい。
そして、クラッチ85がウエビング引出方向へ回転された場合には、当該コイルバネが圧縮または引っ張られるようにすることで、クラッチ85を基準回転姿勢になるようにウエビング巻取方向へ回動付勢するようにしてもよい。この場合には、ウエビング巻取方向へ回動付勢されたクラッチ85のガイド孔116によって、パウル23の案内ピン42がラチェットギヤ35から離反する方向へ案内されて、パウル23がラチェットギヤ35から離反する方向へ回動されるため、捩りコイルバネ26を削除することができる。
また、本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1では、弾性リブ146及びクラッチ側突起部146Aと固定側突起部148は、クラッチ85の回転軸に対して半径方向外側に設けることができるため、巻取ドラムユニット6の回転軸方向におけるシートベルト用リトラクタ1の薄型化を図ることができる。更に、固定側突起部148をメカニズムカバー71と一体的に形成することができ、回転差付与機構149の部品点数の更なる削減化及び簡素化を図ることができる。
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。例えば、以下のようにしてもよい。また、以下の説明において、上記図1乃至図50に示す前記実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の構成等と同一符号は、該前記実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
[他の第1実施形態]
(A)先ず、他の第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ241について図51に基づいて説明する。図51は他の第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ241のロックユニット9のメカニズムカバー71の底面部等の一部を切り欠いた一部切り欠き断面図である。
他の第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ241の概略構成は、前記実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の構成とほぼ同じ構成である。
但し、図51に示すように、クラッチ242は、クラッチ85とほぼ同じ構成であるが、弾性リブ146に替えて、板バネ245がフランジ部118に形成された切欠部145に取り付けられている。具体的には、切欠部145の周方向両端部に、軸方向に立設された各挿入溝部243A、243Bを一体形成し、フランジ部118に対して同心の円弧状に形成された板バネ245の両端部が、各挿入溝部243A、243Bに嵌入保持されている。
また、板バネ245の軸方向の幅は、フランジ部118の軸方向の幅よりも狭い幅になるよう形成されている。また、板バネ245の長手方向中央部には、フランジ部118の外径よりも半径方向外側へ所定高さ(例えば、高さ約1.2mmである。)突出する断面略U字状に形成されたクラッチ側突起部245Aが、板厚方向に突出するように曲げ形成されている。そして、板バネ245は、長手方向中央部に形成されたクラッチ側突起部245Aが半径方向内側へ押圧された場合には、クラッチ側突起部245Aがフランジ部118の外径よりも半径方向内側へ移動できるように弾性変形可能に形成されている。
また、メカニズム収容部87の内壁部には、クラッチ85の板バネ245に対向する部分に、クラッチ242がウエビング引出方向へ回動されて、パウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合する場合に、クラッチ側突起部245Aが乗り越えられる位置に、リブ状の固定側突起部148が立設されている。尚、板バネ245の軸方向の幅は、外側リブ部117の軸方向の幅よりも狭い幅になるよう形成してもよい。
従って、パウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合した場合には、クラッチ242の外周部から半径方向外側へ突出するように設けられた板バネ245のクラッチ側突起部245Aが、半径方向内側へ弾性変形して、メカニズム収容部87の内周壁に立設された固定側突起部148を乗り越えて、固定側突起部148のウエビング引き出し方向側の側面に当接、または、近接して位置している。
その後、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされた後、ウエビング3に加わる引き出し方向の引張力が緩められて、ウエビング3が僅かに引き込まれた場合には、巻取バネユニット8の付勢力によって、巻取ドラムユニット6がウエビング巻取方向へ僅かに回転される。また、ロッキングギヤ81は、ラチェットギヤ35と一体となってウエビング巻取方向へ僅かに回転される。
一方、クラッチ242は、板バネ245のクラッチ側突起部245Aが固定側突起部148を乗り越えた状態で、当接するため、ウエビング巻取方向への回転が、ロッキングギヤ81の回転に対して相対的に遅れる。これにより、クラッチ242とロッキングギヤ81とを連結した状態でウエビング巻取方向へ回転させる際に、クラッチ側突起部245Aと固定側突起部148との当接によって、ロッキングギヤ81をクラッチ242のウエビング巻取方向への回転に対して相対的に先行してウエビング巻取方向へ確実に回転させることができる。従って、僅かなウエビング3の巻き取り量でも、ロッキングギヤ81とクラッチ242との連結を確実に解除して、エンドロックを確実に防止することができる。
また、クラッチ242の回転軸に対して半径方向外側の外周部に取り付けられた板バネ245から突出するように曲げ形成されたクラッチ側突起部245Aと、ハウジング11の側壁部12に対して固定されたメカニズムカバー71のメカニズム収容部87の内周壁に半径方向内側へ立設されて、クラッチ242のウエビング引出方向への回転時にクラッチ側突起部245Aと当接可能に突出する固定側突起部148とによって、クラッチ242のウエビング巻取方向への回転開始を、ロッキングギヤ81の回転開始に対して相対的に遅らせる回転差付与機構246を構成することができ、当該回転差付与機構246の簡素化を図り、部品点数の削減化を図ることができる。
また、クラッチ242の切欠部145に板バネ245を取り付けることによって、クラッチ側突起部245Aを半径方向内側へ弾性変形させる押圧荷重を安定化させることができ、回転差付与機構246によるロッキングギヤ81とクラッチ242との連結の解除を更に安定化して、エンドロックをより確実に防止することができる。
[他の第2実施形態]
(B)次に、他の第2実施形態に係るシートベルト用リトラクタ251について図52に基づいて説明する。図52は他の第2実施形態に係るシートベルト用リトラクタ251のロックユニット9のメカニズムカバー252の底面部等の一部を切り欠いた一部切り欠き断面図である。
他の第2実施形態に係るシートベルト用リトラクタ251の概略構成は、前記実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の構成とほぼ同じ構成である。
但し、図52に示すように、メカニズムカバー252は、メカニズムカバー71とほぼ同じ構成であるが、固定側突起部148に替えて、ラチェットギヤ35の回転軸方向に対して半径方向外側へ膨出する膨出部253が設けられている。また、膨出部253の半径方向内側には、側壁部12からラチェットギヤ35の回転軸方向外側へ略直角に曲げ起こされると共に、クラッチ85の回動方向の両側面が、クラッチ85の回転軸方向に対してほぼ半径方向に沿うように曲げ起こされた固定側突起部255が設けられている。
また、この固定側突起部255は、クラッチ85の回転軸方向に対して半径方向内側の側面が、固定側突起部148の半径方向内側の端面とほぼ同じ位置となるように折り曲げ形成されている。また、固定側突起部255は、クラッチ85がウエビング引出方向へ回動されて、パウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合する場合に、クラッチ側突起部146Aが乗り越えられる位置に設けられている。
従って、パウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合した場合には、クラッチ85の外周部から半径方向外側へ突出するように設けられた弾性リブ146のクラッチ側突起部146Aが、半径方向内側へ弾性変形して、メカニズム収容部87内に曲げ起こされた固定側突起部255を乗り越えて、固定側突起部255のウエビング引き出し方向側の側面に当接、または、近接して位置している。
その後、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされた後、ウエビング3に加わる引き出し方向の引張力が緩められて、ウエビング3が僅かに引き込まれた場合には、巻取バネユニット8の付勢力によって、巻取ドラムユニット6がウエビング巻取方向へ僅かに回転される。また、ロッキングギヤ81は、ラチェットギヤ35と一体となってウエビング巻取方向へ僅かに回転される。
一方、クラッチ85は、弾性リブ146のクラッチ側突起部146Aが固定側突起部255を乗り越えた状態で、当接するため、ウエビング巻取方向への回転が、ロッキングギヤ81の回転に対して相対的に遅れる。これにより、クラッチ85とロッキングギヤ81とを連結した状態でウエビング巻取方向へ回転させる際に、クラッチ側突起部146Aと固定側突起部255との当接によって、ロッキングギヤ81をクラッチ85のウエビング巻取方向への回転に対して相対的に先行してウエビング巻取方向へ確実に回転させることができる。従って、僅かなウエビング3の巻き取り量でも、ロッキングギヤ81とクラッチ85との連結を確実に解除して、エンドロックを確実に防止することができる。
また、クラッチ85の回転軸に対して半径方向外側の外周部に取り付けられた弾性リブ146から突出するように設けられたクラッチ側突起部146Aと、ハウジング11の側壁部12に対して固定されたメカニズムカバー252の膨出部253内に折り曲げ形成されて、クラッチ85のウエビング引出方向への回転時にクラッチ側突起部146Aと当接可能に設けられた固定側突起部255とによって、クラッチ85のウエビング巻取方向への回転開始を、ロッキングギヤ81の回転開始に対して相対的に遅らせる回転差付与機構256を構成することができ、当該回転差付与機構256の簡素化を図り、部品点数の削減化を図ることができる。
尚、クラッチ85に替えて他の第1実施形態のクラッチ242を取り付けるようにしてもよい。これにより、板バネ245の長手方向中央部に形成されたクラッチ側突起部245Aを半径方向内側へ弾性変形させる押圧荷重を安定化させることができ、回転差付与機構256によるロッキングギヤ81とクラッチ242との連結の解除を更に安定化して、エンドロックをより確実に防止することができる。また、回転差付与機構256の機械的寿命を飛躍的に延長することができる。
[他の第3実施形態]
(C)次に、他の第3実施形態に係るシートベルト用リトラクタ261について図53に基づいて説明する。図53は他の第3実施形態に係るシートベルト用リトラクタ261のロックユニット9のメカニズムカバー262の底面部等の一部を切り欠いた一部切り欠き断面図である。
他の第3実施形態に係るシートベルト用リトラクタ261の概略構成は、前記実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の構成とほぼ同じ構成である。
但し、図53に示すように、メカニズムカバー262は、メカニズムカバー71とほぼ同じ構成であるが、固定側突起部148に替えて、ラチェットギヤ35の回転軸方向に対して半径方向外側へ膨出する膨出部263が設けられている。また、膨出部263の半径方向内側には、側壁部12からラチェットギヤ35の回転軸方向へ略直角に立設された細い円柱状の固定側突起部265が設けられている。
また、この固定側突起部265は、クラッチ85がウエビング引出方向へ回動されて、パウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合する場合に、クラッチ側突起部146Aが乗り越えられる位置に設けられている。
従って、パウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合した場合には、クラッチ85の外周部から半径方向外側へ突出するように設けられた弾性リブ146のクラッチ側突起部146Aが、半径方向内側へ弾性変形して、メカニズム収容部87内に立設された細い円柱状の固定側突起部265を乗り越えて、固定側突起部265のウエビング引き出し方向側の外周面に当接、または、近接して位置している。
その後、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされた後、ウエビング3に加わる引き出し方向の引張力が緩められて、ウエビング3が僅かに巻き込まれた場合には、巻取バネユニット8の付勢力によって、巻取ドラムユニット6がウエビング巻取方向へ僅かに回転される。また、ロッキングギヤ81は、ラチェットギヤ35と一体となってウエビング巻取方向へ僅かに回転される。
一方、クラッチ85は、弾性リブ146のクラッチ側突起部146Aが固定側突起部265を乗り越えた状態で、当接するため、ウエビング巻取方向への回転が、ロッキングギヤ81の回転に対して相対的に遅れる。これにより、クラッチ85とロッキングギヤ81とを連結した状態でウエビング巻取方向へ回転させる際に、クラッチ側突起部146Aと固定側突起部265との当接によって、ロッキングギヤ81をクラッチ85のウエビング巻取方向への回転に対して相対的に先行してウエビング巻取方向へ確実に回転させることができる。従って、僅かなウエビング3の巻き取り量でも、ロッキングギヤ81とクラッチ85との連結を確実に解除して、エンドロックを確実に防止することができる。
また、クラッチ85の回転軸に対して半径方向外側の外周部に取り付けられた弾性リブ146から突出するように設けられたクラッチ側突起部146Aと、ハウジング11の側壁部12に対して固定されたメカニズムカバー262の膨出部263内に立設されて、クラッチ85のウエビング引出方向への回転時にクラッチ側突起部146Aと当接可能に設けられた細い円柱状の固定側突起部265とによって、クラッチ85のウエビング巻取方向への回転開始を、ロッキングギヤ81の回転開始に対して相対的に遅らせる回転差付与機構266を構成することができ、当該回転差付与機構266の簡素化を図り、部品点数の削減化を図ることができる。
尚、クラッチ85に替えて他の第1実施形態のクラッチ242を取り付けるようにしてもよい。これにより、板バネ245の長手方向中央部に形成されたクラッチ側突起部245Aを半径方向内側へ弾性変形させる押圧荷重を安定化させることができ、回転差付与機構246によるロッキングギヤ81とクラッチ242との連結の解除を更に安定化して、エンドロックをより確実に防止することができる。また、回転差付与機構266の機械的寿命を飛躍的に延長することができる。
[他の第4実施形態]
(D)次に、他の第4実施形態に係るシートベルト用リトラクタ271について図54に基づいて説明する。図54は他の第4実施形態に係るシートベルト用リトラクタ271のロックユニット9のメカニズムカバー275の底面部等の一部を切り欠いた一部切り欠き断面図である。
他の第4実施形態に係るシートベルト用リトラクタ271の概略構成は、前記実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の構成とほぼ同じ構成である。
但し、図54に示すように、クラッチ272は、クラッチ85とほぼ同じ構成であるが、弾性リブ146に替えて、リブ状のクラッチ側突起部273が、切欠部145の周方向中央部に、回転軸方向に沿って外側リブ部117上に立設されている。このクラッチ側突起部273は、外側リブ部117の外周面からフランジ部118の外径とほぼ同じ高さになるように半径方向外側へ突出する断面略三角形状に形成されている。
また、メカニズムカバー275は、メカニズムカバー71とほぼ同じ構成であるが、固定側突起部148に替えて、両端部が略直角に折り曲がってメカニズム収容部87の内周壁に接続されるように一体形成されたリブ状の弾性リブ276が設けられている。また、弾性リブ276は、クラッチ272の切欠部145に対向するように設けられると共に、フランジ部118の外径とほぼ同じ同心円上に位置するように形成されている。
また、この弾性リブ276の周方向中央部には、フランジ部118の外周よりも半径方向内側へ所定高さ(例えば、高さ約1.2mmである。)突出する断面略U字状に形成された固定側突起部276Aが設けられている。更に、リブ状の弾性リブ276は、周方向中央部に形成された固定側突起部276Aが半径方向外側へ押圧された場合には、固定側突起部276Aがフランジ部118の外径よりも半径方向外側へ移動できるように弾性変形可能に形成されている。
そして、クラッチ272がウエビング引出方向へ回動されて、パウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合する場合に、クラッチ側突起部273が固定側突起部276Aを乗り越えられる位置に、リブ状の弾性リブ276がメカニズム収容部87の内周壁に設けられている。
従って、パウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合した場合には、クラッチ272のクラッチ側突起部273が、メカニズム収容部87の内周部から半径方向内側へ突出するように設けられた弾性リブ276の固定側突起部276Aを押圧して半径方向外側へ弾性変形させて、この固定側突起部276Aを乗り越えて、固定側突起部276Aのウエビング引き出し方向側の側面に当接、または、近接して位置している。
その後、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされた後、ウエビング3に加わる引き出し方向の引張力が緩められて、ウエビング3が僅かに巻き込まれた場合には、巻取バネユニット8の付勢力によって、巻取ドラムユニット6がウエビング巻取方向へ僅かに回転される。また、ロッキングギヤ81は、ラチェットギヤ35と一体となってウエビング巻取方向へ僅かに回転される。
一方、クラッチ272は、クラッチ側突起部273が固定側突起部276Aを乗り越えた状態で、当接するため、ウエビング巻取方向への回転が、ロッキングギヤ81の回転に対して相対的に遅れる。これにより、クラッチ272とロッキングギヤ81とを連結した状態でウエビング巻取方向へ回転させる際に、クラッチ側突起部273と固定側突起部276Aとの当接によって、ロッキングギヤ81をクラッチ272のウエビング巻取方向への回転に対して相対的に先行してウエビング巻取方向へ確実に回転させることができる。従って、僅かなウエビング3の巻き取り量でも、ロッキングギヤ81とクラッチ272との連結を確実に解除して、エンドロックを確実に防止することができる。
また、メカニズム収容部87の内周部に設けられた弾性リブ276から突出するように設けられた固定側突起部276Aと、クラッチ272の切欠部145の周方向中央部に設けられて、クラッチ272のウエビング引出方向への回転時に固定側突起部276Aと当接可能に突出するリブ状のクラッチ側突起部273とによって、クラッチ272のウエビング巻取方向への回転を、ロッキングギヤ81の回転に対して相対的に遅らせる回転差付与機構277を構成することができ、当該回転差付与機構277の簡素化を図り、部品点数の削減化を図ることができる。また、クラッチ側突起部273の形状を簡素化することができ、クラッチ272の成形性を向上させることができる。
[他の第5実施形態]
(E)次に、他の第5実施形態に係るシートベルト用リトラクタ281について図55に基づいて説明する。図55は他の第5実施形態に係るシートベルト用リトラクタ281のロックユニット9のメカニズムカバー285の底面部等の一部を切り欠いた一部切り欠き断面図である。
他の第5実施形態に係るシートベルト用リトラクタ281の概略構成は、前記実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の構成とほぼ同じ構成である。
但し、図55に示すように、クラッチ282は、クラッチ85とほぼ同じ構成であるが、切欠部145及び弾性リブ146に替えて、細い円柱状のクラッチ側突起部283が、フランジ部118から板部111側へ立設されている。また、クラッチ側突起部283の高さは、外側リブ部117の高さとほぼ同じ高さになるように形成されている。
また、メカニズムカバー285は、メカニズムカバー71とほぼ同じ構成であるが、固定側突起部148に替えて、板バネ286が取り付けられている。具体的には、メカニズム収容部87の外側リブ部117に対向する内周壁部から、クラッチ282の回動に伴うクラッチ側突起部283の周方向の移動領域を内側に挟むように一対のバネ支持部287が半径方向内側へ立設されている。また、一対のバネ支持部287はフランジ部118と軸方向に所定隙間を形成している。
また、この一対のバネ支持部287には、周方向に相対向する面から、各々周方向内側へ各挿入溝部288A、288Bが形成されている。そして、メカニズム収容部87の内周壁に対して同心の円弧状に形成された板バネ286の両端部が、各挿入溝部288A、288Bに嵌入保持され、該板バネ286はフランジ部118の外周に対して軸方向に対向している。
また、板バネ286の軸方向の幅は、外側リブ部117の軸方向の幅よりも狭い幅になるよう形成されている。また、板バネ286の長手方向中央部には、フランジ部118の外径よりも半径方向内側へ所定高さ(例えば、高さ約1.2mmである。)突出する断面略U字状に形成された固定側突起部286Aが、板厚方向に突出するように曲げ形成されている。更に、板バネ286は、長手方向中央部に形成された固定側突起部286Aが半径方向外側へ押圧された場合には、固定側突起部286Aがフランジ部118の外周に対向するまで半径方向外側へ移動できるように弾性変形可能に設けられている。
そして、クラッチ272がウエビング引出方向へ回動されて、パウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合する場合に、クラッチ側突起部283が固定側突起部286Aを乗り越えられる位置に、板バネ286がメカニズム収容部87の内周壁に取り付けられている。
従って、パウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合した場合には、クラッチ282のクラッチ側突起部283が、メカニズム収容部87の内周壁に取り付けられた板バネ286の固定側突起部286Aを押圧して半径方向外側へ弾性変形させて、この固定側突起部286Aを乗り越えて、固定側突起部286Aのウエビング引き出し方向側の側面に当接、または、近接して位置している。
その後、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされた後、ウエビング3に加わる引き出し方向の引張力が緩められて、ウエビング3が僅かに巻き込まれた場合には、巻取バネユニット8の付勢力によって、巻取ドラムユニット6がウエビング巻取方向へ僅かに回転される。また、ロッキングギヤ81は、ラチェットギヤ35と一体となってウエビング巻取方向へ僅かに回転される。
一方、クラッチ282は、クラッチ側突起部283が固定側突起部286Aを乗り越えた状態で、当接するため、ウエビング巻取方向への回転が、ロッキングギヤ81の回転に対して相対的に遅れる。これにより、クラッチ282とロッキングギヤ81とを連結した状態でウエビング巻取方向へ回転させる際に、クラッチ側突起部283と固定側突起部286Aとの当接によって、ロッキングギヤ81をクラッチ282のウエビング巻取方向への回転に対して相対的に先行してウエビング巻取方向へ確実に回転させることができる。従って、僅かなウエビング3の巻き取り量でも、ロッキングギヤ81とクラッチ282との連結を確実に解除して、エンドロックを確実に防止することができる。
また、メカニズム収容部87の内周壁に取り付けられた板バネ286から突出するように曲げ形成された固定側突起部286Aと、クラッチ282のフランジ部118に立設されて、クラッチ282のウエビング引出方向への回転時に固定側突起部286Aと当接可能に設けられたクラッチ側突起部283とによって、クラッチ282のウエビング巻取方向への回転を、ロッキングギヤ81の回転に対して相対的に遅らせる回転差付与機構289を構成することができ、当該回転差付与機構289の簡素化を図り、部品点数の削減化を図ることができる。
尚、シートベルト用リトラクタ281は、メカニズムカバー285に替えて、上記シートベルト用リトラクタ271のメカニズムカバー275を取り付けるようにしてもよい。これにより、弾性リブ276及び固定側突起部276Aを一体形成することができ、部品点数の削減化を図ることができる。
また、上記シートベルト用リトラクタ271は、メカニズムカバー275に替えて、シートベルト用リトラクタ281のメカニズムカバー285を取り付けるようにしてもよい。これにより、板バネ286の長手方向中央部に形成された固定側突起部286Aを半径方向外側へ弾性変形させる押圧荷重を安定化させることができ、回転差付与機構277によるロッキングギヤ81とクラッチ272との連結の解除を更に安定化して、エンドロックをより確実に防止することができる。また、回転差付与機構277の機械的寿命を飛躍的に延長することができる。
[他の第6実施形態]
(F)次に、他の第6実施形態に係るシートベルト用リトラクタ291について図56乃至図58に基づいて説明する。図56は他の第6実施形態に係るシートベルト用リトラクタ291のクラッチ292の斜視図である。図57は他の第6実施形態に係るシートベルト用リトラクタ291のメカニズムカバー297の内側斜視図である。図58は他の第6実施形態に係るシートベルト用リトラクタ291のクラッチ側突起部293Aを含む要部横断面図である。
他の第6実施形態に係るシートベルト用リトラクタ291の概略構成は、前記実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の構成とほぼ同じ構成である。
但し、図56及び図58に示すように、クラッチ292は、クラッチ85とほぼ同じ構成であるが、弾性リブ146に替えて、片持ち状の弾性リブ293が、フランジ部118に形成された切欠部145に設けられている。具体的には、切欠部145の周方向両端部から外側リブ部117の高さよりも少し低い高さまで、フランジ部118の半径方向全幅に渡って、略直角に延出された各延出部295A、295Bが設けられている。
また、弾性リブ293は、各延出部295A、295Bのうち、クラッチ292のウエビング引出方向側(矢印296方向側である。)の延出部295Aの上端部から略直角に延出部295Bの近くまで延出されている。また、弾性リブ293は、外側リブ部117の外周面と所定隙間(例えば、隙間約0.5mmである。)を形成しつつ、該外側リブ部117の外周面と同心円弧状に延出され、回転軸方向内側へ弾性変形可能に設けられている。また、弾性リブ293の延出部295B側の先端部には、略半球状のクラッチ側突起部293Aが、板部111とほぼ同じ高さになるように回転軸方向外側へ突出して形成されている。
また、図57及び図58に示すように、メカニズムカバー297は、メカニズムカバー71とほぼ同じ構成であるが、メカニズム収容部87の内周壁に立設されたリブ状の固定側突起部148に替えて、メカニズム収容部87の底面部298に短いリブ状の固定側突起部299が立設されている。
具体的には、メカニズム収容部87の底面部298の弾性リブ293に対向する部分に、クラッチ292がウエビング引出方向(矢印296方向である。)へ回動されて、パウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合する場合に、クラッチ側突起部293Aが乗り越えられる位置に、短いリブ状の固定側突起部299が貫通孔73の半径方向に沿って立設されている。また、固定側突起部299は、メカニズム収容部87の内周壁と、クラッチ292の外側リブ部117の外周面とのそれぞれ間に所定隙間(例えば、隙間約0.5mmである。)を形成するように立設されている。
従って、パウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合した場合には、クラッチ292に設けられた弾性リブ293のクラッチ側突起部293Aが、切欠部145側へ弾性変形して、メカニズム収容部87の底面部298に立設された短いリブ状の固定側突起部299を乗り越えて、固定側突起部299のウエビング引き出し方向側の側壁面に当接、または、近接して位置している。
その後、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされた後、ウエビング3に加わる引き出し方向の引張力が緩められて、ウエビング3が僅かに引き込まれた場合には、巻取バネユニット8の付勢力によって、巻取ドラムユニット6がウエビング巻取方向へ僅かに回転される。また、ロッキングギヤ81は、ラチェットギヤ35と一体となってウエビング巻取方向へ僅かに回転される。
一方、クラッチ292は、弾性リブ293のクラッチ側突起部293Aが固定側突起部299を乗り越えた状態で、当接するため、ウエビング巻取方向への回転が、ロッキングギヤ81の回転に対して相対的に遅れる。これにより、クラッチ292とロッキングギヤ81とを連結した状態でウエビング巻取方向へ回転させる際に、クラッチ側突起部293Aと固定側突起部299との当接によって、ロッキングギヤ81をクラッチ292のウエビング巻取方向への回転に対して相対的に先行してウエビング巻取方向へ確実に回転させることができる。従って、僅かなウエビング3の巻き取り量でも、ロッキングギヤ81とクラッチ292との連結を確実に解除して、エンドロックを確実に防止することができる。
また、クラッチ292の回転軸に対して半径方向外側の外周部に設けられた弾性リブ293の先端部から回転軸方向外側へ突出するように設けられたクラッチ側突起部293Aと、ハウジング11の側壁部12に対して固定されたメカニズムカバー297のメカニズム収容部87内の底面部298に立設されて、クラッチ292のウエビング引出方向への回転時にクラッチ側突起部293Aと当接可能に設けられた短いリブ状の固定側突起部299とによって、クラッチ292のウエビング巻取方向への回転を、ロッキングギヤ81の回転に対して相対的に遅らせる回転差付与機構300を構成することができ、当該回転差付与機構300の簡素化を図り、部品点数の削減化を図ることができる。
また、クラッチ側突起部293Aと固定側突起部299は、互いに当接するように巻取ドラム181の回転軸方向に突出させて設けることができるため、巻取ドラム181の回転軸方向におけるサイズへの影響を抑えつつ、巻取ドラム181の回転軸に対する半径方向におけるシートベルト用リトラクタ291の小型化を図ることができる。
[他の第7実施形態]
(G)次に、他の第7実施形態に係るシートベルト用リトラクタ301について図59乃至図61に基づいて説明する。図59は他の第7実施形態に係るシートベルト用リトラクタ301のクラッチ302の斜視図である。図60は他の第7実施形態に係るシートベルト用リトラクタ301のハウジング311の斜視図である。図61は他の第7実施形態に係るシートベルト用リトラクタ301のクラッチ側突起部303Aを含む要部横断面図である。
他の第7実施形態に係るシートベルト用リトラクタ301の概略構成は、前記実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の構成とほぼ同じ構成である。
但し、図59及び図61に示すように、クラッチ302は、クラッチ85とほぼ同じ構成であるが、弾性リブ146に替えて、片持ち状の弾性リブ303が、フランジ部118に形成された切欠部145に設けられている。具体的には、切欠部145の周方向両端部から側壁部12に形成された略半球状に突出する固定側突起部305よりも少し高い高さまで、フランジ部118の半径方向全幅に渡って、略直角に延出された各延出部306A、306Bが設けられている。
また、弾性リブ303は、各延出部306A、306Bのうち、クラッチ302のウエビング引出方向側(矢印307方向側である。)の延出部306Aの上端部から略直角に延出部306Bの近くまで延出されている。また、弾性リブ303は、外側リブ部117の外周面と所定隙間(例えば、隙間約0.5mmである。)を形成しつつ、該外側リブ部117の外周面と同心円弧状に延出され、回転軸方向外側へ弾性変形可能に設けられている。また、弾性リブ303の延出部306B側の先端部には、略半球状のクラッチ側突起部303Aが、フランジ部118とほぼ同じ高さになるように回転軸方向内側へ突出して形成されている。
また、図60及び図61に示すように、メカニズムカバー308は、メカニズムカバー71とほぼ同じ構成であるが、メカニズム収容部87の内周壁には、リブ状の固定側突起部148が設けられていない。また、ハウジング311は、ハウジング11とほぼ同じ構成であるが、メカニズムカバー71のリブ状の固定側突起部148に替えて、側壁部12の貫通孔36の周縁部に、貫通孔36の軸方向外側へ突出する略半球状の固定側突起部305が設けられている。
具体的には、側壁部12の貫通孔36の周縁部のうち、クラッチ302の切欠部145に対向する部分において、クラッチ302がウエビング引出方向(矢印307方向である。)へ回動されて、パウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合する場合に、クラッチ側突起部303Aが乗り越えられる位置に、固定側突起部305が略半球状に突出するように形成されている。また、略半球状の固定側突起部305は、メカニズム収容部87の内周壁と、クラッチ302の外側リブ部117の外周面とのそれぞれ間に所定隙間(例えば、隙間約0.5mmである。)を形成して突出している。
従って、パウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合した場合には、クラッチ302に設けられた弾性リブ303のクラッチ側突起部303Aが、回転軸方向外側へ弾性変形して、ハウジング311の側壁部12に突出するように形成された略半球状の固定側突起部305を乗り越えて、固定側突起部305のウエビング引き出し方向側の面に当接、または、近接して位置している。
その後、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされた後、ウエビング3に加わる引き出し方向の引張力が緩められて、ウエビング3が僅かに巻き込まれた場合には、巻取バネユニット8の付勢力によって、巻取ドラムユニット6がウエビング巻取方向へ僅かに回転される。また、ロッキングギヤ81は、ラチェットギヤ35と一体となってウエビング巻取方向へ僅かに回転される。
一方、クラッチ302は、弾性リブ303のクラッチ側突起部303Aが固定側突起部305を乗り越えた状態で、当接するため、ウエビング巻取方向への回転が、ロッキングギヤ81の回転に対して相対的に遅れる。これにより、クラッチ302とロッキングギヤ81とを連結した状態でウエビング巻取方向へ回転させる際に、クラッチ側突起部303Aと固定側突起部305との当接によって、ロッキングギヤ81をクラッチ302のウエビング巻取方向への回転に対して相対的に先行してウエビング巻取方向へ確実に回転させることができる。従って、僅かなウエビング3の巻き取り量でも、ロッキングギヤ81とクラッチ302との連結を確実に解除して、エンドロックを確実に防止することができる。
また、クラッチ302の回転軸に対して半径方向外側の外周部に設けられた弾性リブ303の先端部から回転軸方向内側へ突出するように設けられたクラッチ側突起部303Aと、ハウジング311の側壁部12に設けられて、クラッチ302のウエビング引出方向への回転時にクラッチ側突起部303Aと当接可能に設けられた略半球状の固定側突起部305とによって、クラッチ302のウエビング巻取方向への回転を、ロッキングギヤ81の回転に対して相対的に遅らせる回転差付与機構312を構成することができ、当該回転差付与機構312の簡素化を図り、部品点数の削減化を図ることができる。
また、クラッチ側突起部303Aと固定側突起部305は、互いに当接するように巻取ドラム181の回転軸方向に突出させて設けることができるため、巻取ドラム181の回転軸方向におけるサイズへの影響を抑えつつ、巻取ドラム181の回転軸に対する半径方向におけるシートベルト用リトラクタ301の小型化を図ることができる。