[概略構成]
先ず、第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の概略構成について図1乃至図3に基づき説明する。図1は第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の外観斜視図である。図2及び図3はシートベルト用リトラクタ1をユニット別に分解した斜視図である。
図1乃至図3に示すように、シートベルト用リトラクタ1は、車両のウエビング3を巻き取るための装置であって、ハウジングユニット5と、巻取ドラムユニット6と、プリテンショナユニット7と、巻取バネユニット8と、ロックユニット9とから構成されている。
ロックユニット9は、メカニズムカバー111(図14参照)に一体に形成された各ナイラッチ9A及び各係止フック9Bによって、ハウジングユニット5を構成するハウジング11の一方の側壁部12に固設されている。そして、ロックユニット9は、ウエビング3の急激な引き出しや車両の急激な加速度の変化に反応してウエビング3の引き出しを停止するロック機構10(図17参照)を構成する。また、巻取バネユニット8は、バネケース107(図14参照)の外周部から突出した3個の板状の係止片8A(図15参照)を介して、後述のようにロックユニット9の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側に固設されている(図16参照)。
また、プリテンショナユニット7は、平面視略コの字状に形成されたハウジング11の側壁部12に相対向する他方の側壁部13に、プリテンショナユニット7の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側から挿通される各ネジ15によってネジ止めされる。また、プリテンショナユニット7は、プリテンショナユニット7の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側から側壁部13に挿通されるストッパーピン16と、該ストッパーピン16に側壁部13の巻取ドラムユニット6の回転軸方向内側から挿入されるプッシュナット18によって固定される。
そして、ウエビング3が巻装される巻取ドラムユニット6は、ハウジングユニット5の側壁部12に固設されたロックユニット9と、側壁部13に固定されたプリテンショナユニット7との間に回転自在に支持される。また、巻取ドラムユニット6は、ロックユニット9の外側に固設された巻取バネユニット8によって、ウエビング3の巻取方向に常時付勢されている。
[ハウジングユニットの概略構成]
次に、ハウジングユニット5の概略構成について図2乃至図4に基づいて説明する。
図4はハウジングユニット5の分解斜視図である。
図2乃至図4に示すように、ハウジングユニット5は、ハウジング11と、ブラケット21と、プロテクタ22と、パウル23と、パウルリベット25と、捩りコイルバネ26と、センサカバー27と、車両加速度センサ28と、連結部材32、33と、リベット61とから構成されている。
また、ハウジング11は、車体に固定される背板部31と、その背板部31の両側縁部から相対向する各側壁部12、13が延出されて、平面視略コの字状にスチール材等で形成されている。また、各側壁部12、13は、巻取ドラムユニット6の回転軸方向に長い横長細板状の各連結部材32、33によって互いに連結されている。また、背板部31の中央部には、開口部が形成され、軽量化及びウエビング3の収容量の規制等が図られている。
また、側壁部12には巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ35が、所定隙間(例えば、約0.5mmの隙間である。)を形成しつつ挿入される貫通孔36が形成されている。この貫通孔36の内側周縁部は、巻取ドラムユニット6側へ中心軸方向内側に所定深さ窪んで、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ35に対向するように構成されている。
また、この貫通孔36の斜め下側(図4中、斜め左下側である。)のパウル23の各係合歯23A、23Bを含む先端(他方の端部)側の部分37に対向する周縁部から、該パウル23の回動方向外側へ(パウル23のラチェットギヤ35から離反する回動方向である。)、この先端側の部分37が収容される深さに切り欠かれた切欠部38が形成されている。この切欠部38の背板部31側の横側には、パウル23を回転可能に取り付けるための貫通孔41が形成されている。また、切欠部38の貫通孔41側のパウル23が当接する部分には、該貫通孔41と同軸に円弧状の案内部38Aが形成されている。
一方、スチール材等で形成されたパウル23の案内部38Aに当接して摺動する部分には、側壁部12の厚さ寸法にほぼ等しい高さで、この案内部38Aと同じ曲率半径の円弧状に窪んだ段差部37Aが形成されている。また、パウル23の回動軸方向外側(図4中、手前側である。)の側面の先端部には、ロックユニット9を構成するクラッチ125のガイド孔156(図14参照)に挿入される案内ピン42が立設されている。
また、パウル23の基端部(一方の端部)にはパウルリベット25が挿通される貫通孔43が形成されると共に、この貫通孔43の周縁部から側壁部12の貫通孔41に回動可能に挿通される円筒状のボス部45が、側壁部12の厚さ寸法にほぼ等しい高さで立設されている。そして、パウル23は、ボス部45が側壁部12の貫通孔41にハウジング11の内側から挿通された状態で、側壁部12の外側から貫通孔43に嵌入されたパウルリベット25によって、回動可能に固定される。これにより、パウル23の各係合歯23A、23Bとラチェットギヤ35の外周面に形成されたラチェットギヤ部35Aとが、側壁部12の外側面とほぼ同一面になるように配置される。
また、パウルリベット25の頭部は、貫通孔41よりも大きい外径で所定厚さ(例えば、厚さ約1.5mmである。)の円板状に形成されている。そして、リターンスプリングの一例として機能する捩りコイルバネ26は、巻き数が1巻きでパウルリベット25の頭部の周囲を囲むように配置され、一端側26Aがパウル23の案内ピン42に取り付けられている。また、捩りコイルバネ26の線径は、パウルリベット25の頭部の高さのほぼ半分の寸法である(例えば、線径約0.6mmである。)。従って、捩りコイルバネ26の1巻き分のバネ高さは、パウルリベット25の頭部の高さとほぼ同じ高さに設定されている。
また、捩りコイルバネ26の他端側26Bは、側壁部12上を摺接可能に一端側26Aの側壁部12側を通った後、側壁部12の内側方向(図4中、側壁部12の裏側方向である。)へ略直角に折り曲げられて、側壁部12に形成された取付孔46に挿通されている。また、この他端側26Bの端部は、略U字形に折り曲げられて側壁部12の内側面に当接され、抜け止め部を構成している。これにより、パウル23は、捩りコイルバネ26によって切欠部38の奥側方向へ(図3中、反時計方向である。)回動するように付勢され、各係合歯23A、23Bを含む先端側の部分37が切欠部38の奥側に当接される。従って、パウル23は、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されている。
また、図2乃至図4に示すように、側壁部12の貫通孔36の下方(図4中、下方向である。)には、貫通孔36の中心軸の下方(図4中、下方向である。)から背板部31側の部分に、略四角形の開口部47が形成されている。また、この開口部47には、開口部47とほぼ同じ断面略四角形の浅い略箱体状のセンサカバー27が外側(図4中、手前側である。)から嵌入される。そして、樹脂製のセンサカバー27は、開口側周縁部に形成された鍔部が開口部47の外側周縁部(図4中、手前側周縁部である。)に当接されると共に、センサカバー27の図4中、上下方向両端面に突設された一対の係止爪27A(図4中、上側端面の係止爪27Aを図示している。)が開口部47の図4中、上下方向両端部の奥側に嵌入されて弾性的に係止される。
また、車両加速度センサ28は、鉛直方向上側(図4中、上側である。)に開放される略箱形で底面部にすり鉢状の載置部が形成された樹脂製のセンサーホルダ51と、スチール等の金属で球状体に形成されて載置部上に移動可能に載置された慣性質量体52と、慣性質量体52の鉛直方向上側に載置されてパウル23に対して反対側の端縁部(図4中、右端縁部である。)をセンサーホルダ51によって鉛直方向上下(図4中、上下方向である。)に揺動可能に支持される樹脂製のセンサレバー53とから構成されている。
そして、車両加速度センサ28をセンサカバー27へ嵌入して、センサーホルダ51のセンサカバー27内の両側壁部に対向する両側面部に設けられた一対の係止爪51A(図4中、一方の係止爪51Aを図示している。)をセンサカバー27の各係止孔27Bに嵌入して係止することによって、車両加速度センサ28がセンサカバー27を介してハウジング11に取り付けられる。
また、側壁部12には、上端縁部(図4中、上側端縁部である。)の両隅と、貫通孔36の下方(図4中、下方向である。)との3箇所に、ロックユニット9の各ナイラッチ9Aが嵌入されて取り付けられる各取付孔55が形成されている。また、側壁部12の左右側縁部の中央部(図4中、上下方向中央部である。)には、ロックユニット9の各係止フック9Bが弾性的に係止される各係止片56が、巻取ドラムユニット6の回転軸に対して直交するように張り出して形成されている。
また、側壁部13には、巻取ドラムユニット6が挿通される貫通孔57が中央部に形成されている。また、側壁部13には、下端縁部(図2中、下側端縁部である。)の略中央及び連結部材33側の角部と、上端縁部(図2中、上側端縁部である。)の背板部31側の角部に、各ネジ15がネジ止めされる各ネジ孔58がプリテンショナユニット7側方向へのバーリングによって形成されている。また、側壁部13には、上端縁部(図2中、上側端縁部である。)の連結部材32側の角部にストッパーピン16が挿通される貫通孔59が形成されている。
また、背板部31の上端縁部(図2中、上側端縁部である。)に各リベット61によって取り付けられるブラケット21は、スチール材等で形成されて、背板部31の上端縁部から略直角に連結部材32側方向に延出された延出部に、ウエビング3が引き出される背板部31の幅方向に長い横長の貫通孔62が形成され、ナイロン等の合成樹脂で形成された横長枠状のプロテクタ22が嵌め込まれている。また、背板部31の下端部(図2中、下端部である。)には、車両の締結片(不図示)に取り付ける際に、ボルトが挿通されるボルト挿通孔63が形成されている。
[巻取ドラムユニットの概略構成]
次に、巻取ドラムユニット6の概略構成について図2、図3、図5乃至図13に基づいて説明する。図5は巻取ドラムユニット6の軸心を含む断面図である。図6は巻取ドラムユニット6の分解斜視図である。図7は巻取ドラム65をラチェットギヤ35の取り付け側から見た正面図である。図8は図7のX2−X2矢視の一部切り欠き断面図である。図9は固定ネジ78を含む巻取ドラム65の正面図である。図10は図9のX3−X3矢視断面図である。図11は図9のX4−X4矢視断面図である。図12はラチェットギヤ35の斜視図である。図13は図5のX1−X1矢視断面図である。
図5及び図6に示すように、巻取ドラムユニット6は、巻取ドラム65と、トーションバー66と、ワイヤ67と、ラチェットギヤ35とから構成されている。
図2、図3、図5及び図6に示すように、巻取ドラム65は、アルミダイカストや亜鉛ダイカスト等により形成されて、プリテンショナユニット7側の端面部が閉塞された略円筒状に形成されている。また、巻取ドラム65の軸心方向のプリテンショナユニット7側の端縁部には、外周部から径方向に延出され、更に略直角外側方向(図5中、左側方向である。)に延出されたフランジ部68が形成されている。また、このフランジ部68の内周面には、車両衝突時に各クラッチパウル202(図19参照)が係合してピニオンギヤ185(図19参照)の回転が伝達される内歯ギヤ69が形成されている。
また、巻取ドラム65のプリテンショナユニット7側の端面部中央位置には、円筒状のボス72が立設されている。このボス72は、後述のポリアセタール等の合成樹脂材により形成されたベアリング205(図19参照)に嵌入され、ボス72の基端部がベアリング205に当接される。これにより、巻取ドラムユニット6の一端側は、ベアリング205を介してプリテンショナユニット7を構成するピニオンギヤ185のボス部185D(図19参照)に回転可能に支持される。従って、巻取ドラムユニット6は、プリテンショナユニット7とロックユニット9とによって回転軸方向のガタツキを防止して回転可能に支持される。
また、巻取ドラム65の内側には、中心軸に沿って徐々に細くなるように抜き勾配が形成された軸孔65Aが形成されている。また、図5、図7及び図8に示すように、この軸孔65A内のフランジ部68側端部の内周面には、断面略台形状の5個の突出部68A〜68Eが、周方向一定間隔で半径方向内側へリブ状に突設されている。
また、図5、図6及び図11に示すように、巻取ドラム65は、ウエビング3を挿通するスリット70が、回転軸に平行に開口されている。このスリット70のウエビング挿入口70Aには、巻取ドラム65の回転軸に対して当該スリット70の半径方向内側の側面の外側端縁部に沿って、該巻取ドラム65の半径方向内側へ窪むように形成された中心角約90度の断面略円弧状の載置部70Bが、ウエビング挿入口70Aの軸方向全幅に渡って形成されている。
また、図5及び図6に示すように、トーションバー66は、スチール材等により形成され、断面円形の棒状をした軸部66Cと、この軸部66Cの両端部に形成された各連結部66A、66Bとから構成されている。トーションバー66の巻取ドラム65への挿入側端部に設けられた連結部66Aは、軸方向所定長さ(例えば、軸方向約6mmの長さである。)の円柱の外周面から約60度の等中心角度毎に断面等脚台形状の6個の凸部75が、円周方向に所定間隔(例えば、中心角度約30度の間隔である。)を空けて突設されている。
また、各凸部75の最外径は、軸孔65A内のフランジ部68側端部の内径にほぼ等しくなるように形成されている。また、各凸部75の周方向の両側面のそれぞれの半径方向に対する傾き角度は、45度よりも小さい所定角度(例えば、約30度の傾き角度である。)に形成されている。
図7及び図8に示すように、軸孔65A内に設けられた突出部68Eは、ウエビング挿入口71Aに形成された載置部73の半径方向内側の背面部に軸方向全幅に渡って形成され、当該軸孔65Aのウエビング挿入口70Aの側壁部を形成している。また、残りの各突出部68A〜68Dは、該突出部68Eから約60度の等中心角度毎に、軸孔65Aの内周面から軸方向に沿って突設されている。また、各突出部68A〜68Dの軸方向長さは、トーションバー66の連結部66Aの軸方向の幅よりも大きくなるように(例えば、約2倍の長さである。)形成されている(図5参照)。
また、軸孔65A内に設けられた各突出部68B〜68Eのウエビング3の巻き取り方向(図7中、矢印74方向である。)側の側面部には、軸孔65Aに挿入された連結部66Aの各凸部75の側面部に当接可能に所定高さ(例えば、高さ約0.3mmである。)突出する軸方向に細長い断面略三角形状の各突条部76B〜76Eが形成されている。
つまり、各突条部76B〜76Eから対向する各突出部68A〜68Dまでの距離は、連結部66Aの各凸部75の周方向の幅よりも短くなるように形成されている。また、各突条部76B〜76Eの軸方向の長さは、連結部66Aの軸方向の幅よりも少し短くなるように(例えば、約1mm短い。)形成されている。
また、図6及び図8に示すように、巻取ドラム65の載置部70Bのフランジ部68側端部の近傍には、ウエビング巻取方向(図7中、矢印74方向である。)側の外周面に、巻取ドラム65の回転軸方向に対して交差する方向に所定深さ窪む断面略四角形の取付凹部77が形成されている。
尚、図10に示すように、取付孔79は、軸方向が巻取ドラム65の回転軸方向に対して垂直に交差するように形成されているが、軸方向が巻取ドラム65の回転軸方向に対して所定角度だけ傾いて(例えば、傾斜角は約30度である。)交差するように形成してもよい。
また、取付凹部77の底面部の略中央位置には、スチール材等により形成された固定ネジ78がねじ込まれる取付孔79が、巻取ドラム65の回転軸方向に対して交差する方向に形成されて、軸孔65A内の突出部68Dのウエビング巻取方向側(図7中、矢印74方向側である。)の側面部に貫通している。
また、取付孔79の内径は、固定ネジ78の外径よりも所定寸法(例えば、約1.0mmである。)小さくなるように形成されている。尚、取付孔79に固定ネジ78が嵌め合わされる雌ネジを形成するようにしてもよい。また、取付孔79の軸孔65A内のフランジ部68側端部からの軸方向の距離は、トーションバー66の連結部66Aの軸方向の幅よりも小さい距離になるように形成されている。
また、巻取ドラム65の外周部に形成された取付凹部77の深さは、取付孔79にねじ込まれた固定ネジ78の頭部を、当該取付凹部77内に収納可能な深さに形成されている。また、図8に示すように、突出部68Dのウエビング巻取方向側の側面部に設けられた突条部76Dの上端部は、取付孔79の周縁部に接続されている。
また、各突出部68A〜68Eは、トーションバー66の巻取ドラム65への挿入側端部に形成された連結部66Aの各凸部75の間に嵌合可能に突設されている。また、各突出部68A〜68Eの半径方向内側の内周面の内径は、連結部66Aの凸部75間の外周面の外径にほぼ等しくなるように形成されている。
これにより、図5、図6、図9乃至図11に示すように、トーションバー66の連結部66A側を巻取ドラム65の軸孔65Aに挿入して、各突出部68A〜68E間へ圧入した場合には、連結部66Aの各凸部75は、各突条部76B〜76Eを押し潰しつつ嵌入されて、仮固定される。従って、連結部66Aの各凸部75は、各突条部76B〜76Eによってウエビング巻取方向(図11中、矢印80方向である。)へ押圧されて、相対向する各突出部68A〜68Eのウエビング引出方向(図11中、矢印80の反対側方向である。)側の側面部に当接され、巻取ドラム65内に相対回転不能に仮固定される。
そして、巻取ドラム65の取付凹部77の底面部に形成された取付孔79に固定ネジ78をねじ込んで、トーションバー66の連結部66Aの凸部75に当接させて、軸孔65Aの軸方向に対して交差する方向、即ち、周方向に押圧して固定する。つまり、トーションバー66の連結部66Aの各凸部75は、固定ネジ78によって、相対向する各突出部68A〜68Eのウエビング引出方向側の側面部に当接した状態で押圧され、巻取ドラム65内に周方向及び軸方向に相対移動不能に固定される。
また、図5乃至図8に示すように、巻取ドラム65の軸方向のロックユニット9側の端縁部には、端縁部から少し軸方向内側の外周面から径方向に延出された正面視略円形のフランジ部81が形成されている。また、このフランジ部81から軸心方向外側の部分には、少し外径が細くなった円筒状の段差部82が形成されている。この段差部82は軸孔65A内に圧入されたトーションバー66の他端側の連結部66Bを所定隙間を形成して囲むように設けられている。
また、フランジ部81の軸方向外側面に形成された正面視略円形の段差部82の外周部には、ステンレス材等の金属材からなる断面円形の線材状のワイヤ67の一端の屈曲部67Aが嵌入保持される保持側屈曲路83が一体形成されている。
この保持側屈曲路83は、図6乃至図8に示すように、フランジ部81の軸方向外側面から突出する正面視半径方向内側向きの略台形状に形成された凸部85と、段差部82の外周の凸部85に対向する凹部86と、この凹部86の正面視反時計方向側(図7中、反時計方向側である。)の端部から少し離れた段差部82の外周面から正面視反時計方向に傾斜した斜め内側方向へ形成された溝部87と、段差部82の凹部86と溝部87との間の外周面とによって形成されている。
また、図7に示すように、凸部85と凹部86の半径方向に対して斜めに傾斜した溝部87側(図7中、反時計方向側である。)の対向面には、保持側屈曲路83の深さ方向に沿って1組の対向するリブ88が設けられている。また、凸部85と凹部86の半径方向に対して斜めに傾斜した溝部87に対して反対側(図7中、時計方向側である。)の対向面には、半径方向外側のワイヤ67の出口側端部と半径方向内側の奥側端部とに、それぞれ保持側屈曲路83の深さ方向に沿って2組の対向する各リブ89、91が設けられている。
また、溝部87の対向面には、保持側屈曲路83の深さ方向に沿って1組の対向するリブ92が設けられている。また、相対向する各リブ88〜92間の距離は、ワイヤ67の外径よりも小さくなるように形成されている。尚、各リブ88〜92の保持側屈曲路83の底面部からの高さは、ワイヤ67の外径以上の高さに形成されている。
そして、図6及び図13に示すように、ワイヤ67の一端の屈曲部67Aは、各リブ88〜92を押し潰しつつ保持側屈曲路83に嵌入されて固定保持される。また、ワイヤ67の屈曲部67Aに連続して形成される正面視略逆U字状の屈曲部67Bは、フランジ部81の外周よりも外側に突出するように形成されている。そして、ワイヤ67の屈曲部67Bに連続して形成される屈曲部67Cは、段差部82の外周面に沿った円弧状に形成されている。
従って、ワイヤ67の屈曲部67Aは、保持側屈曲路83の出口側端部でワイヤ67の軸線方向に沿って配置された2組の各リブ89、91によって挟持されるため、当該屈曲部67Aから連続する屈曲部67Bの当該保持側屈曲路83の出口側に対する傾きをほぼ一定にすることができる。
また、ラチェットギヤ35は、図5、図6及び図12に示すように、アルミダイカストや亜鉛ダイカスト等により形成され、軸断面略リング状で外周部にラチェットギヤ部35Aが形成され、その内側中央位置に円筒状の固定ボス95が立設されている。固定ボス95の内周面には、トーションバー66のラチェットギヤ35への挿入側端部に設けられた連結部66Bと相似形の断面形状に形成されて、当該連結部66Bが圧入される嵌合凹部95Aが形成されている。また、ラチェットギヤ部35Aの内周部は、巻取ドラム65の段差部82が嵌挿可能な内径に形成されている。
ここで、図6に示すように、トーションバー66のラチェットギヤ35への挿入側端部に設けられた連結部66Bは、軸方向所定長さ(例えば、軸方向約5mmの長さである。)の円柱の外周面から約60度の等中心角度毎に断面台形状の6個の凸部96が、円周方向に連続するように突設されている。また、各凸部96の最外径は、各凸部75の最外径とほぼ同じ直径になるように形成され、各凸部96の半径方向の高さは、各凸部75の半径方向の高さとほぼ同じ高さに形成されている。
また、各凸部96の周方向両側面の基端部は、同心円上に位置すると共に、周方向に隣接する各側面の基端部は接続されるように形成されている。また、図12に示すように、ラチェットギヤ35の嵌合凹部95Aの各凸部96のウエビング巻取方向側の側面に対向する内周面には、半径方向内側へ立設された3個のリブ95B(図12中、2個のリブ95Bが示されている。)が、周方向一定間隔で回転軸方向に沿って立設されている。
また、図5、図6及び図12に示すように、ラチェットギヤ35は、ラチェットギヤ部35Aの巻取ドラム65側の端面部から全周に渡って、該巻取ドラム65のフランジ部81の外径よりも半径方向外側へ正面視リング状に延出され、更に、所定中心角度(例えば、中心角度約60度である。)の外周部から半径方向外側へ正面視先端側が狭い略台形状に延出されたフランジ部97が形成されている。また、フランジ部97の外径は、巻取ドラム65のフランジ部68の外径とほぼ同じ大きさに形成されている。
また、このフランジ部97の半径方向外側へ延出された正面視先端側が狭い略台形状の台形状部97Aの巻取ドラム65側の内側面には、台形状部97Aから回転軸方向外側に突出して、ワイヤ67の正面視略逆U字状の屈曲部67Bが嵌め込まれる正面視略山形の凸部98が略中央部に形成されている。
また、フランジ部97の巻取ドラム65側の内側面には、巻取ドラム65のフランジ部81の外径よりも少し大きい内径で立設されると共に、台形状部97Aの外周部に沿って立設された正面視略卵形のフランジ部99が形成されている。また、このフランジ部99の内周部と凸部98の外周部とによって、ワイヤ67が摺動案内されて引き出される正面視略逆U字状の変形付与屈曲路101が形成されている(図13参照)。また、フランジ部99の外周部には、装着されたワイヤ67が視認可能なように、2箇所に円周方向に切り欠かれた各窓部103が形成されている。
ここで、ワイヤ67のラチェットギヤ35及び巻取ドラム65への取り付けについて図5、図6及び図13に基づいて説明する。
図6及び図13に示すように、先ず、ワイヤ67の一端側の略S字状に屈曲されている屈曲部67Aを巻取ドラム65のフランジ部81と段差部82に形成された保持側屈曲路83内に、各リブ88〜92を潰しながら嵌入する。また、ワイヤ67の屈曲部67Aに連続して形成される正面視略逆U字状の屈曲部67Bを、フランジ部81の外周よりも外側に突出させる。
また、ワイヤ67の屈曲部67Bに連続して形成される円弧状の屈曲部67Cを、段差部82の外周面に沿って配置する。これにより、ワイヤ67の一端側の屈曲部67Aが、巻取ドラム65のフランジ部81と段差部82に形成された保持側屈曲路83内に嵌入されて固定保持されると共に、ワイヤ67の屈曲部67Cがフランジ部81に対向した状態で配置される。
続いて、ラチェットギヤ35の巻取ドラム65への取り付けは、先ず、巻取ドラム65のフランジ部81の外周よりも外側に突出しているワイヤ67の正面視略逆U字状の屈曲部67Bを、ラチェットギヤ35のフランジ部97の台形状部97Aに設けられた凸部98の外周部に形成された変形付与屈曲路101内に嵌入する。
また、同時に、ラチェットギヤ35の固定ボス95を巻取ドラム65の段差部82内に挿入して、トーションバー66のラチェットギヤ35への挿入側端部に設けられた連結部66Bを当該固定ボス95の嵌合凹部95A内に各リブ95Bを潰しながら圧入する。これにより、ワイヤ67が巻取ドラム65のフランジ部81とラチェットギヤ35のフランジ部97との間に配置されると共に、ラチェットギヤ35がトーションバー66を介して巻取ドラム65に装着される。
[巻取バネユニットの概略構成]
次に、巻取バネユニット8の概略構成について図2、図3、図14乃至図16、図18に基づいて説明する。
図14及び図15は、ラチェットギヤ35を含む巻取バネユニット8及びロックユニット9の分解斜視図である。図16はバネケース107の取り付けを説明する断面図である。図18は巻取バネユニット8及びロックユニット9を含む要部拡大断面図である。
図2、図3、図14、図15及び図18に示すように、巻取バネユニット8は、渦巻バネ105と、この渦巻バネ105の外側端105Aが内側周縁部の底面から立設されたリブ106に固定されると共に、この渦巻バネ105を収容するバネケース107と、渦巻バネ105の内側端105Bが連結されてバネ力が付勢されるバネシャフト108とから構成されている。また、バネケース107は、ロックユニット9を構成するメカニズムカバー111側の端縁部に、ほぼ全周に渡って所定深さ(例えば、深さ約2.5mmである。)の溝部107Aが形成されている。
また、バネケース107のメカニズムカバー111側の端縁部には、外周部の3箇所から正面視略長方形の板状の各係止片8Aが、メカニズムカバー111の略中央部に形成された貫通孔113の中心軸113Aに対して同心状に突設されている。また、各係止片8Aの貫通孔113の中心軸113Aに対して半径方向外側の外周面は、同心円上に位置するように形成されている。
また、図14及び図15に示すように、バネケース107の下端縁部に位置する係止片8Aには、貫通孔113の中心軸113Aに対して反時計方向側の端縁部に連続して断面四角形の固定部8Bが連設されている。また、固定部8Bの略中央部には、貫通孔113の中心軸113Aに平行な貫通孔8Cが形成されると共に、この貫通孔8Cの該中心軸113A方向外側の端部を塞ぐように固定ピン8Dが一体的に形成されている。
また、固定ピン8Dの軸径は、貫通孔8Cの内径とほぼ同じ径に形成され、固定ピン8Dを所定荷重以上でメカニズムカバー111側へ押すことによって、貫通孔8C内に押し込むことができる。また、固定ピン8Dの長さは、固定部8Bの厚さよりも長くなるように形成されている。
一方、図14乃至図16に示すように、メカニズムカバー111は、外周部の各係止片8Aに対向する3箇所から、断面略矩形の厚板状の保持部112が、巻取バネユニット8側に突設されている。また、各保持部112の基端部には、貫通孔113の中心軸113Aに対して反時計回り方向に切り欠かれて、奥側端部が閉塞された断面略長方形の嵌合溝部112Aが形成されている。
また、各嵌合溝部112Aの貫通孔113の中心軸113Aに対して半径方向外側の底面部は、バネケース107の各係止片8Aの半径方向外側端縁部よりも少し大きい半径(例えば、約0.2mm〜0.5mm大きい半径である。)の同心円上に位置するように形成されている。また、各嵌合溝部112Aの中心軸113A方向の幅寸法は、各係止片8Aの厚さ寸法とほぼ同じ寸法に形成され、後述のように、各係止片8Aは各嵌合溝部112A内に嵌入されるように構成されている(図16参照)。
また、メカニズムカバー111は、巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側の周縁部に沿って所定高さ(例えば、高さ約2mmである。)で立設された略リング状のリブ部111Aが設けられている。リブ部111Aは、溝部107Aに対応した位置に設けられており、リブ部111Aの内径及び外径は、溝部107Aの内径及び外径に対して、溝部107Aにリブ部111Aが嵌入された状態でそれぞれ所定の隙間(例えば、隙間約0.1mm〜0.3mmである。)を形成するように設けられている。
また、図14及び図15に示すように、リブ部111Aの下端縁部に対向する保持部112の中心軸113Aに対して時計方向側の近傍には、後述のように、バネケース107をメカニズムカバー111に取り付けた際に、固定ピン8Dに対向する位置に、断面円形の固定用孔114が形成されている。
この固定用孔114の内径は、バネケース107の固定ピン8Dの外径よりも所定寸法(例えば、約0.1mm〜0.3mmである。)だけ小さくなるように形成され、固定ピン8Dを圧入できるように設けられている。また、固定用孔114の奥側、つまり、ハウジング11の側壁部12側の周縁部には、奥側が閉塞された円筒状のボス115が立設されている。また、この円筒状のボス115の内径は、固定用孔114と同じ直径の断面円形に形成されると共に、固定用孔114に対して同軸に形成されている。
ここで、巻取バネユニット8をメカニズムカバー111へ取り付ける取付方法について説明する。
図15に示すように、先ず、渦巻バネ105の外側端105Aをバネケース107の内側に立設されたリブ106に嵌入して、バネケース107内に収納して、渦巻バネ105の内側端105Bにバネシャフト108の取付溝108Cを嵌め込む。また、図14及び図15に示すように、バネシャフト108は、バネケース107の底面部107Bの略中心位置に立設されたピン109が、底面部の貫通孔108Aに挿入されて、底面部側がピン109の周縁部に回転可能に当接される。
そして、図14に示すように、バネケース107の外周部の3箇所から半径方向外側に突設された各係止片8Aを、メカニズムカバー111の保持部112の正面視時計方向側の端縁部に対向するように位置させる。また、図14及び図18に示すように、メカニズムカバー111の貫通孔113から突出するロッキングギヤ121の回転軸部133の先端部133Aは、断面矩形状に形成されると共に、中心軸に沿って、ピン109が挿入される軸孔133Bが形成されている。
続いて、図15及び図18に示すように、メカニズムカバー111の貫通孔113から突出するロッキングギヤ121の回転軸部133の先端部133Aを、バネシャフト108の断面矩形状に形成された筒孔108B内に嵌入して、ロッキングギヤ121の回転軸部133を当該バネシャフト108に対して相対回転不能に連結する。また同時に、図16に示すように、バネケース107の溝部107A内に、メカニズムカバー111の周縁部に立設されたリブ部111Aを嵌入する。
そして、図16に示すように、バネケース107をウエビング引出方向、つまり、正面視反時計方向(図16中、矢印110方向である。)へ回転させて、バネケース107の各係止片8Aをメカニズムカバー111の各保持部112の嵌合溝部112A内に嵌入して、各嵌合溝部112Aの奥側に当接させる。これにより、バネケース107がメカニズムカバー111の貫通孔113の中心軸113Aに対して、半径方向及び軸方向に移動しないように位置決めされる。
その後、この状態で、バネケース107の固定ピン8Dを押圧して、固定部8Bの貫通孔8Cとメカニズムカバー111の固定用孔114とに圧入することによって、巻取バネユニット8がメカニズムカバー111に対して相対回転不能に固定され、巻取バネユニット8がメカニズムカバー111の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側に当接された状態で取り付けられる。
これにより、メカニズムカバー111の周縁部に立設されたリブ部111Aが、バネケース107の溝部107Aに嵌入されて、バネケース107内への粉塵や埃等の侵入が防止される。また、図18に示すように、バネシャフト108におけるメカニズムカバー111の底面部側が、ピン109の周縁部に回転可能に当接された状態で、バネシャフト108のロックユニット9側の端部と、メカニズムカバー111の略中央部に形成された貫通孔113の背面側周縁部との間に所定隙間(例えば、隙間約0.3mmである。)が形成されている。
また、同時に、バネシャフト108の筒孔108Bの底面と、ロッキングギヤ121の回転軸部133の先端部133Aとの間にも所定隙間(例えば、隙間約0.3mmである。)が形成されている。従って、バネシャフト108は、バネケース107とメカニズムカバー111との間において、所定隙間分だけ、中心軸113Aの軸方向に移動可能に設けられている。
[ロックユニットの概略構成]
次に、ウエビング3の急激な引き出しや車両の急激な加速度の変化に反応してウエビング3の引き出しを停止するロック機構10を構成するロックユニット9の概略構成について図14、図15、図17及び図18に基づいて説明する。図17はロックユニット9のメカニズムカバー111の底面部等の一部を切り欠いた一部切り欠き断面図である。
図14、図15、図17及び図18に示すように、ロックユニット9は、メカニズムカバー111、ロッキングギヤ121、ロックアーム122、センサスプリング123、クラッチ125及びパイロットレバー126で構成されている。尚、第1実施形態においては、ロックユニット9を構成する各部材のうち、センサスプリング123を除いた部材は、合成樹脂で成形されており、互いに接触した場合の部材間の摩擦係数は小さなものである。
図14、図15、図17及び図18に示すように、メカニズムカバー111は、ハウジング11の側壁部12側が開口された略円形の底面部118を有する略箱体状のメカニズム収容部127が形成され、ロッキングギヤ121やクラッチ125等を収容するように構成されている。また、メカニズムカバー111は、ハウジング11にセンサカバー27を介して取り付けられた車両加速度センサ28に対向する角部(図15中、左下角部である。)に、断面略四角形の凹形状に形成されたセンサ収容部128が、メカニズム収容部127に連続するように設けられている。
そして、メカニズムカバー111を各ナイラッチ9A及び各係止フック9Bによって側壁部12に取り付けた際には、車両加速度センサ28のセンサーホルダ51がセンサ収容部128に嵌入されて、センサレバー53が鉛直方向上下(図15中、上下方向である。)に揺動可能に収納されるように構成されている。また、メカニズムカバー111のメカニズム収容部127の下端部略中央部(図15中、下端部略中央部である。)には、当該メカニズム収容部127とセンサ収容部128とが連通するように開設された開口部129が形成されている。
この開口部129は、車両加速度センサ28のセンサレバー53の先端縁部から上方向(図15中、上方向である。)に向けて突設されたロック爪53Aの先端部が鉛直方向上下(図15中、上下方向である。)に進退可能に形成され、通常時には、ロック爪53Aの先端部は、パイロットレバー126の受け板部162の近傍に位置している(図17参照)。そして、所定値を超える加速度によって慣性質量体52が移動してセンサレバー53が鉛直方向上側へ回動された場合には、ロック爪53Aは開口部129を介してパイロットレバー126の受け板部162に当接して、パイロットレバー126を鉛直方向上側へ回動させるように構成されている。
また、メカニズム収容部127の略円形の底面部118には、中央部に形成された貫通孔113の周縁部から円筒状の支持ボス131が立設されている。この支持ボス131のロッキングギヤ121側の先端部の外周は、全周に渡って先端側へ所定角度(例えば、約30°の傾斜角である。)で傾斜した先細りの面取り部131Aが形成されている。また、この支持ボス131には、ロッキングギヤ121の円板状の底面部132の中央部に、メカニズムカバー111に対向する背面側から突出する円筒状の回転軸部133が嵌入され、摺動回転可能に支持される。
ロッキングギヤ121は、円板状の底面部132の全周からクラッチ125側へ円環状に立設されて、外周部にパイロットレバー126に係合するロッキングギヤ歯121Aが形成されている。このロッキングギヤ歯121Aは、ロッキングギヤ121がウエビング引出方向へ回転した時のみ、パイロットレバー126の係合爪部126Aと係合するように形成されている。
また、図14、図15、図17及び図18に示すように、ロッキングギヤ121の底面部132の中央部には、ラチェットギヤ35のロッキングギヤ121側端面の中央部に立設された軸部116が嵌入される貫通孔が形成されている。また、円筒状の基台部134が、この貫通孔のメカニズムカバー111側の周縁部からロッキングギヤ歯121Aの軸方向高さとほぼ同じ高さに立設されている。そして、ロッキングギヤ121の円筒状の回転軸部133は、この円筒状の基台部134のメカニズムカバー111側端縁部から、この基台部134よりも小さいと共に、支持ボス131の内径にほぼ等しい外径でメカニズムカバー111側へ同軸に延設されている。また、回転軸部133のメカニズムカバー111側端縁部は閉塞されて、断面矩形状の先端部133Aが同軸に延設されている。
従って、基台部134及び回転軸部133の内部には、ロッキングギヤ121のラチェットギヤ35側端面に開口して、ラチェットギヤ35のメカニズムカバー111側端面の中央部に立設された軸部116が嵌入される断面円形状の軸孔部134Aが形成されている。また、軸孔部134Aの内周面には、複数のリブ134Bが、軸方向に沿って半径方向に同じ高さで立設され、ラチェットギヤ35の軸部116の外周面に当接するように設けられている。また、軸部116は、全長のうちの基端部側の約半分の部分が円錐台に形成されると共に、先端側の約半分の部分が円錐台に連続する円柱状に形成されている。
また、回転軸部133の基端部の周囲には、円環状のリブ135が、クラッチ125の略円板状の板部151の厚さ寸法にほぼ等しい高さで同軸に立設されて、挿入溝135Aが形成されている。この円環状のリブ135の内側周壁部は、支持ボス131の先端部の傾斜角以上の角度(例えば、約45°の傾斜角である。)で半径方向外側へ傾斜している。また、円環状のリブ135の内側に形成された挿入溝135Aの底面部の外径は、支持ボス131の先端部の外径とほぼ同じ径に形成されている。
更に、円環状のリブ135の外径は、クラッチ125の板部151の中央部に形成された貫通孔152の内径とほぼ同じ径に形成されると共に、基台部134の外径よりも小さい径に形成されている。また、クラッチ125の貫通孔152のロッキングギヤ121側の端縁部には、全周に渡って円環状のリブ152Aが所定高さ(例えば、高さ約0.5mmである。)で立設されている。
これにより、ロッキングギヤ121の円環状のリブ135をクラッチ125の貫通孔152に嵌入して、円環状のリブ152Aをリブ135の外周側基端部に当接させた後、回転軸部133をメカニズムカバー111の支持ボス131に挿通して、円環状のリブ135の半径方向内側に形成された挿入溝135Aの底面部に支持ボス131の先端部を当接させることによって、ロッキングギヤ121の背面側から突出する回転軸部133がほぼ全高さに渡って支持ボス131に対して同軸に取り付けられて軸支される。また、ロッキングギヤ121の円環状のリブ135は、貫通孔152に摺動回転可能に嵌入され、クラッチ125はロッキングギヤ121とメカニズムカバー111との間に一定の回転範囲内で回転可能に収容される。
また、図14、図15及び図18に示すように、ロッキングギヤ121のラチェットギヤ35側の端面には、4個の断面が円周方向に長い略長方形の筒状に突出した凸部136が、等中心角度で、回転軸121Bから半径方向外側へ所定距離(例えば、距離約14mmである。)離れた同心円上に位置するように立設されている。尚、1個の凸部136は、半径方向外側の周縁部が一部切り欠かれている。また、ロッキングギヤ121の底面部132には、円周方向に隣接する1組の凸部136の間のほぼ中央位置に、所定内径(例えば、内径約3.5mmである。)の位置決孔137が形成されている。
また、ラチェットギヤ35のロッキングギヤ121に対向する端面部には、ロッキングギヤ121の凸部136とほぼ同じ形状の円周方向に長い断面略長方形の4個の貫通孔138が、等中心角度で、回転軸121Bから半径方向外側へ所定距離(例えば、距離約14mmである。)離れた各凸部136に対向する位置に形成されている。
また、ラチェットギヤ35のロッキングギヤ121に対向する端面部には、円周方向に隣接する1組の貫通孔138の間で、位置決孔137に対向する位置に、位置決孔137の内径にほぼ等しい外径に形成された位置決めピン139が立設されている。また、ラチェットギヤ35の回転軸方向外側の端面に立設された軸部116の高さは、ロッキングギヤ121の軸孔部134Aの深さにほぼ等しくなるように形成されている。また、ロッキングギヤ121の軸孔部134Aの深さは、軸部116の先端が回転軸部133の先端部133Aの先端よりも、回転軸方向内側に位置するように形成されている。
従って、ラチェットギヤ35の軸部116をロッキングギヤ121の軸孔部134Aに嵌入すると共に、ラチェットギヤ35の位置決めピン139をロッキングギヤ121の位置決孔137に嵌入し、同時に、ロッキングギヤ121の各凸部136をラチェットギヤ35の各貫通孔138に嵌入する。これにより、ラチェットギヤ35の回転軸方向外側の端面に、ロッキングギヤ121が当接された状態で、ラチェットギヤ35にロッキングギヤ121が同軸に相対回転不能に取り付けられると共に、ラチェットギヤ35の軸部116がロッキングギヤ121の回転軸部133を介してメカニズムカバー111の支持ボス131内に位置して軸支される。
また、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ35が、ロッキングギヤ121の回転軸部133の先端部133Aを介して、巻取バネユニット8のバネシャフト108に同軸に相対回転不能に取り付けられる。従って、巻取ドラムユニット6は巻取バネユニット8を介して、ウエビング巻取方向へ常に回動付勢される。
また、図14、図15、図17及び図18に示すように、ロッキングギヤ121の底面部132のクラッチ125側の面には、基台部134に隣接して円柱状の支持ボス141が、ロッキングギヤ歯121Aよりも低い高さで立設されている。そして、基台部134を囲むように略弓形に形成された合成樹脂製のロックアーム122は、長手方向略中央部の基台部134側の端縁部に形成された貫通孔142に、この支持ボス141が回転可能に嵌挿され、回動可能に軸支される。
また、ロッキングギヤ121の底面部132には、支持ボス141に対して半径方向外側の近傍位置に、断面逆L字形の弾性係止片143が、メカニズムカバー111側へ立設されている。この弾性係止片143は、ロックアーム122の貫通孔142の横側に形成された略扇形で段差部を有する窓部144に挿入され、基台部134の軸心回りに回動可能に弾性的に係止される。
また、図17に示すように、ロッキングギヤ121は、基台部134の外周面から半径方向外側へ延出されたリブ部に、センサスプリング123の一端側が嵌め込まれるバネ支持ピン145が、該基台部134の軸心に対して直交するウエビング引出方向へ立設されている。また、ロックアーム122のバネ支持ピン145に対向する側壁には、センサスプリング123の他端側が嵌め込まれるバネ支持ピン146が立設されている。
従って、図15及び図17に示すように、各バネ支持ピン145、146にセンサスプリング123の両端を嵌め込むことによって、ロックアーム122は支持ボス141の軸心に対してウエビング引出方向側(図17中、反時計方向である)へ回動するように所定荷重で付勢される。そして、ロックアーム122は、クラッチ125のクラッチギヤ148に係合する係合爪149側の端縁部が、ロッキングギヤ121の基台部134から半径方向外側に突出するように形成されたストッパ154に当接されている。
一方、後述のようにロックアーム122がセンサスプリング123の付勢力に抗してウエビング巻取方向(図17中、時計方向である)へ回動されてクラッチギヤ148に係合した場合には、係合爪149の係合部とは反対側の端縁部が、ロッキングギヤ121の底面部132に立設された断面紡錘形の回り止め155と所定隙間(例えば、隙間約0.3mmである。)を形成するように構成されている。
また、図14、図15、図17及び図18に示すように、クラッチ125はロッキングギヤ121とメカニズムカバー111とに挟まれた状態で、メカニズム収容部127に一定の回転範囲内で回転可能に収容される。このクラッチ125のロッキングギヤ121側には、貫通孔152に対して同軸に、ロッキングギヤ121のロッキングギヤ歯121Aが外周部に形成された円環状のリブの内周径よりも少し小さい外径を有する円環状のリブ部153が立設されている。
このリブ部153の内周面には、ロックアーム122の係合爪149が係合するクラッチギヤ148が形成されている。このクラッチギヤ148は、ロッキングギヤ121が、貫通孔152の軸心に対してウエビング引出方向への回転した時のみ、ロックアーム122の係合爪149と係合するように形成されている。
また、クラッチ125の略円板状の板部151の外周部には、リブ部153を囲むように円環状の外側リブ部157が立設されている。また、この外側リブ部157のラチェットギヤ35側の端縁部には、貫通孔152の中心軸に対して半径方向外側へ延出されると共に、ラチェットギヤ35側へ少し傾斜するように延出されたフランジ部158がほぼ全周に渡って形成されている。
また、外側リブ部157のパウル23に対向する角部(図14中、左下角部である。)には、外側リブ部157の外周面から鉛直方向下方(図14中、下方向である。)へ延出されたガイドブロック部159が設けられている。このガイドブロック部159には、パウル23の各係合歯23A、23Bを含む先端部の側面に立設された案内ピン42がラチェットギヤ35側から遊嵌される略細長状のガイド孔156が形成されている。
このガイド孔156は、図17に示すように、クラッチ125のパウル23に対向する角部に、ウエビング引出方向(図17中、上下方向である。)とほぼ平行な長溝状に形成されている。これにより、クラッチ125がウエビング引出方向(図17中、反時計方向である。)へ回動された場合には、案内ピン42がガイド孔156に沿って移動され、パウル23の各係合歯23A、23Bがラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aへ近づくように回動される。
また、パウル23は、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されており、クラッチ125は、ガイド孔156に遊嵌されたパウル23の案内ピン42により付勢されている。この付勢力によってクラッチ125は、ガイド孔156において、クラッチ125の回転半径方向で最もラチェットギヤ35から離反する位置にある端縁部(図17中、ガイド孔156の下側端縁部である。)に、パウル23の案内ピン42が当接する状態の回転姿勢になるように付勢されることで、ウエビング引出方向とは反対方向に回転付勢されている。従って、パウル23及び捩りコイルバネ26によってクラッチ付勢機構169が構成される。
そして同時にパウル23は、通常時には、ガイド孔156において、クラッチ125の半径方向で最もラチェットギヤ35から離反する位置にある端縁部(図17中、ガイド孔156の下側端縁部である。)に、パウル23の案内ピン42が当接して回動を規制されるため、側壁部12に形成された切欠部38の奥側近傍に位置するように保持されている。
また、クラッチ125の外側リブ部157の下端縁部(図15中、下端縁部である。)には、ガイドブロック部159のラチェットギヤ35側端面部からセンサ収容部128の上方(図15中、上方向である。)に対向する部分まで、フランジ部158から半径方向外側へ略円弧状に延出された板状の延出部160が形成されている。また、図14、図15及び図17に示すように、延出部160のガイドブロック部159に対して反対側の端縁部の近傍位置には、パイロットレバー126の円筒状の軸部161に嵌挿される細い円柱状の取付ボス163が、外側リブ部157の高さとほぼ同じ高さでメカニズムカバー111側へ立設されている。
ここで、図14、図15及び図17に示すように、パイロットレバー126は、円筒状の軸部161と、板状の係合爪部126Aと、薄板状の受け板部162と、薄板状の連結板部164とから構成されている。軸部161の軸方向長さは、延出部160に立設された取付ボス163の高さとほぼ同じ寸法に形成されている。また、板状の係合爪部126Aは、ロッキングギヤ121側へ先端部が斜めに屈曲された回動軸方向視略L字形に形成されている。また、板状の係合爪部126Aは、パイロットレバー126が自重により回動して、鉛直方向下方への回転規制がされた場合に、ほぼ水平になるように、軸部161の外周面からガイド孔156側へ、該軸部161の長さよりも短い幅で、所定長さ突設されている。
また、薄板状の受け板部162は、係合爪部126Aに対向するように軸部161の外周面から接線方向ガイド孔156側へ突設され、先端部が係合爪部126Aの先端側とほぼ平行になるように斜めに曲げられている。また、薄板状の連結板部164は、係合爪部126Aと受け板部162の先端部を連結するように形成されている。また、係合爪部126Aの基端部の近傍には、パイロットレバー126のロッキングギヤ121側方向への回転、つまり、鉛直方向上側への回転を規制する上方向回り止め部165が、軸部161の外周面から半径方向外側へ突設されている。また、上方向回り止め部165は、係合爪部126Aの幅とほぼ同じ幅寸法で、係合爪部126Aの基端部に対してほぼ直角になるように所定高さ(例えば、高さ約1.5mmである。)突設されている。
また、軸部161の受け板部162に対して接線方向反対側には、パイロットレバー126のセンサレバー53側方向への回転、つまり、鉛直方向下側への回転を規制する下方向回り止め部166が、軸部161の外周面から半径方向外側へ突設されている。また、この下方向回り止め部166は、軸部161のラチェットギヤ35に対して反対側の端面側から受け板部162の回転軸方向の幅よりも狭い回転軸方向の幅寸法で、受け板部162の基端部に対向するように所定高さ(例えば、高さ約1.5mmである。)突設されている。
また、図17に示すように、延出部160の取付ボス163に対向する端縁部には、パイロットレバー支持ブロック171が外側リブ部157とほぼ同じ高さでメカニズムカバー111側へ突設されている。また、パイロットレバー支持ブロック171の取付ボス163に対向する内側面は、取付ボス163と同軸で、且つ、パイロットレバー126の軸部161の外周面の半径よりも少し大きい(例えば、約0.1mm大きい。)曲率半径の正面視略半円形状の滑らかな曲面に形成されている。
また、図17に示すように、外側リブ部157のパイロットレバー126の係合爪部126Aに対向する位置には、鉛直方向上下に貫通する開口部172が、周方向所定幅で、板部151の端縁部よりも内側まで所定寸法切り欠かれて形成されている。この開口部172は、係合爪部126Aがセンサレバー53のロック爪53Aに押圧されて回動された場合に、開口部172内に進入してロッキングギヤ歯121Aに係合可能に形成されている。
そして、図17に示すように、パイロットレバー126が、自重により鉛直方向下側(図14中、下方向である。)へ回動した場合には、下方向回り止め部166がパイロットレバー支持ブロック171に当接して、鉛直方向下側(図14中、下方向である。)への回転角度が規制される。また、通常時には、パイロットレバー126の受け板部162とセンサレバー53のロック爪53Aとの間に隙間が形成されている。
また、センサレバー53が鉛直方向上側(図14中、上方向である。)へ回動されて、ロック爪53Aによってパイロットレバー126が鉛直方向上側へ回動された場合には、パイロットレバー126の係合爪部126Aが、ロッキングギヤ121に当接して、ロッキングギヤ歯121Aに係合する。また、パイロットレバー126の係合爪部126Aがロッキングギヤ歯121Aに係合された状態で、ロッキングギヤ121がウエビング引出方向(図14中、反時計方向である。)へ回転した場合には、係合爪部126Aには、取付ボス163側方向の荷重が加わる。
そして、係合爪部126Aに加わった荷重によって、係合爪部126Aのロッキングギヤ121側へ斜めに屈曲された先端部分が、軸部161側へ弾性変形して更に回動された場合には、該パイロットレバー126の上方向回り止め部165が、パイロットレバー支持ブロック171に当接される。また、係合爪部126Aに加わった荷重によって、取付ボス163が撓んだ場合には、軸部161の外周面が、パイロットレバー支持ブロック171の内側面に当接する。これにより、係合爪部126Aに加わった当該押圧荷重を、上方向回り止め部165及び軸部161を介してパイロットレバー支持ブロック171で支持することができる。
次に、巻取バネユニット8及びロックユニット9をハウジング11の側壁部12に取り付けた状態について図17に基づいて説明する。
図17に示すように、ロックユニット9は、巻取バネユニット8をメカニズムカバー111の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側に取り付けた状態で、各ナイラッチ9A及び各係止フック9Bによって側壁部12の外側に取り付けられる。
また、ロッキングギヤ121の軸孔部134Aにラチェットギヤ35の軸部116が嵌入されると共に、ロッキングギヤ121の位置決孔137にラチェットギヤ35の位置決めピン139が嵌入され、更に、ロッキングギヤ121の各凸部136がラチェットギヤ35の各貫通孔138に嵌入される。
これにより、ロッキングギヤ121がラチェットギヤ35の回転軸方向外側の端面に当接された状態で、当該ロッキングギヤ121がラチェットギヤ35に同軸に相対回転不能に取り付けられる。また、ロッキングギヤ121の回転軸部133は、メカニズムカバー111の支持ボス131に嵌入されて、回転軸部133の基端部が支持ボス131の先端部に当接された状態で回転可能に支持されている。
[ロック機構の動作]
次に、ロック機構10の動作について図17に基づいて説明する。図17においてウエビング3の引き出し方向は矢印173方向である。また、図17において、反時計方向の回転方向がウエビング3が引き出される時の巻取ドラムユニット6の回転方向(ウエビング引出方向)である。また、ロック機構10の動作の説明上、必要に応じて図面の一部を切り欠いて表示している。
ここで、ロック機構10は、ウエビング3の急な引き出しに対して作動する「ウエビング感応式ロック機構」と、車両の揺れや傾きなどに起因して生ずる加速度に感応して作動する「車体感応式ロック機構」との2種類のロック機構として動作する。また、「ウエビング感応式ロック機構」および「車体感応式ロック機構」では、共にパウル23の動作は共通である。このため、図17において、パウル23とラチェットギヤ35との関係を示す部分については、その一部を切り欠いた状態として表示している。また、ロックアーム122とクラッチギヤ148との関係を示す部分、及びセンサスプリング123を示す部分を切り欠いて示している。
[ウエビング感応式ロック機構の動作説明]
先ず、「ウエビング感応式ロック機構」のロック動作について図17に基づいて説明する。図17に示すように、ロックアーム122は、ロッキングギヤ121の支持ボス141によって回動自在に支持されているため、ウエビング3の引出加速度が所定加速度(例えば、約2.0Gである。尚、1G≒9.8m/s2とする。)を超えた場合には、ロッキングギヤ121のウエビング引出方向への回転に対してロックアーム122に慣性遅れが生じる。
このため、ストッパ154に当接していたロックアーム122は、センサスプリング123の付勢力に抗して初期位置を維持するため、当該ロッキングギヤ121に対して支持ボス141を中心に時計方向に回動され、回り止め155の近傍まで回動される。そのため、ロックアーム122の係合爪149は、ロッキングギヤ121の回転軸に対して半径方向外側へ回動されて、クラッチ125のクラッチギヤ148に係合する。
そして、ウエビング3の引き出しが所定加速度を超えて継続された場合には、ロッキングギヤ121が更にウエビング引出方向(反時計方向である。)へ回転されるため、ロックアーム122の係合爪149は、クラッチギヤ148に係合した状態で、ウエビング引出方向へ回動される。
従って、ロックアーム122によってクラッチギヤ148がウエビング引出方向へ回動されるため、クラッチ125は、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されているパウル23の案内ピン42による付勢力に抗して、ロッキングギヤ121のリブ135の軸心回り、つまり、回転軸部133の軸心回りにウエビング引出方向へ回動される。
これにより、ウエビング3の引き出しが所定加速度を超えて更に継続された場合には、クラッチ125は捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されているパウル23の案内ピン42による付勢力に抗して、ウエビング引出方向へ更に回動される。このため、パウル23の案内ピン42は、当該クラッチ125のガイド孔156によって案内されて、当該パウル23は捩りコイルバネ26の付勢力に抗して、ラチェットギヤ35に係合される。これにより、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされる。
ここで、図10及び図11に示すように、ラチェットギヤ35がパウル23によってウエビング引出方向(図11中、矢印80の方向と反対方向である。)への回転が阻止された場合には、ラチェットギヤ35の嵌合凹部95Aに圧入されたトーションバー66の連結部66Bは、ウエビング引出方向への回転が阻止される。これにより、トーションバー66の連結部66Aの各凸部75は、固定ネジ78によって、相対向する各突出部68A〜68Eのウエビング引出方向側の側面部に当接した状態で押圧されているため、巻取ドラム65は、各突出部68A〜68Eを介して、ウエビング引出方向への回転をタイムラグ無く、ロックされる。
[車体感応式ロック機構の動作説明]
次に、「車体感応式ロック機構」のロック動作について図17に基づいて説明する。図17に示すように、車両加速度センサ28の球状体の慣性質量体52は、センサーホルダ51のすり鉢状の底面部に載置されているため、車体の揺れや傾きなどによる加速度が所定加速度(例えば、約2.0Gである。)を超えた場合には、センサーホルダ51の底面部を移動してセンサレバー53を鉛直方向上側へ回動させる。
このため、センサレバー53のロック爪53Aが、クラッチ125の延出部160に立設された取付ボス163に回転自在に取り付けられているパイロットレバー126の受け板部162に当接して、当該パイロットレバー126を鉛直方向上側へ回動させる。従って、パイロットレバー126は取付ボス163の軸心回りに時計方向に回動され、当該パイロットレバー126の係合爪部126Aは、クラッチ125の開口部172内に進入して、ロッキングギヤ121の外周部に形成されたロッキングギヤ歯121Aに係合する。このとき、上方向回り止め部165とパイロットレバー支持ブロック171との間には、所定隙間(例えば、隙間約0.1mmである。)が形成されている。
そして、パイロットレバー126がロッキングギヤ121のロッキングギヤ歯121Aに係合した状態で、ウエビング3が引き出された場合には、当該ロッキングギヤ121がウエビング引出方向(反時計方向である。)へ回動される。また、ロッキングギヤ121のウエビング引出方向への回転は、パイロットレバー126、取付ボス163及びパイロットレバー支持ブロック171を介してクラッチ125へ伝達される。
このため、ロッキングギヤ121のウエビング引出方向への回転に伴って、当該クラッチ125は、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されているパウル23の案内ピン42による付勢力に抗して、ロッキングギヤ121のリブ135の軸心回り、つまり、回転軸部133の軸心回りにウエビング引出方向へ回動される。
これにより、ウエビング3の引き出しが更に継続された場合には、クラッチ125は、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されているパウル23の案内ピン42による付勢力に抗して、ウエビング引出方向へ更に回動される。このため、パウル23の案内ピン42は、当該クラッチ125のガイド孔156に案内されて、当該パウル23の各係合歯23A、23Bは、ラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合される。これにより、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされる。
ここで、図10及び図11に示すように、ラチェットギヤ35がパウル23によってウエビング引出方向(図11中、矢印80の方向と反対方向である。)への回転が阻止された場合には、ラチェットギヤ35の嵌合凹部95Aに圧入されたトーションバー66の連結部66Bは、ウエビング引出方向への回転が阻止される。これにより、トーションバー66の連結部66Aの各凸部75は、固定ネジ78によって、相対向する各突出部68A〜68Eのウエビング引出方向側の側面部に当接した状態で押圧されているため、巻取ドラム65は、各突出部68A〜68Eを介して、ウエビング引出方向への回転をタイムラグ無く、ロックされる。
[プリテンショナユニットの概略構成]
次に、プリテンショナユニット7の概略構成について図2、図3、図19及び図20に基づいて説明する。図19はプリテンショナユニット7の分解斜視図である。図20はプリテンショナユニット7の内部構造を示す断面図である。
プリテンショナユニット7は、車両衝突時等の緊急時に巻取ドラム65をウエビング巻取方向に回転させて、ウエビング3の弛みを除去し、乗員を座席にしっかりと拘束するように構成されている。
図19及び図20に示すように、プリテンショナユニット7は、ガス発生部材181と、パイプシリンダ182と、ピストン183と、ピニオンギヤ185と、クラッチ機構186と、ベアリング205を備えている。
ガス発生部材181は、火薬等のガス発生剤を含んでおり、図示省略の制御部からの着火信号によりガス発生剤を着火させて当該ガス発生剤の燃焼でガスを発生させるように構成されている。
また、パイプシリンダ182は、直線状のピストン案内筒部182Aの一端部にガス導入部182Bが連接されたL字状の筒部材に形成されている。このガス導入部182Bにはガス発生部材181が収納される。従って、ガス発生部材181により発生したガスは、ガス導入部182Bからピストン案内筒部182A内に導入される。また、ピストン案内筒部182Aの一側部における長手方向中間部には、開口部187が形成され、後述のようにピニオンギヤ185のピニオンギヤ歯185Aの一部が配設される。
このパイプシリンダ182は、ハウジング11の側壁部13側のベースプレート188と、外側のカバープレート191とによって挟持されると共に、これらの間でベースブロック192とカバープレート191とによって挟持された状態で、各ネジ15によって側壁部13の外面に取り付け固定される。
また、ピストン案内筒部182Aの上端部には、プリテンショナユニット7を側壁部13に取り付けると共に、ピストン183の抜け止め及びパイプシリンダ182の抜け止め、回転止めとして機能するストッパーピン16を挿通可能な一対の貫通孔182Cが相対向して形成されている。
ピストン183は、スチール材等の金属部材で形成されて、ピストン案内筒部182Aの上端側から挿入可能な断面略長方形で、全体として長尺状の形状を有している。また、ピストン183のピニオンギヤ185側の側面には、ピニオンギヤ歯185Aに噛合するラック183Aが形成されている。また、ピストン183のガス発生部材181側の端面は、ピストン案内筒部182Aの断面形状に応じた円形端面183Bに形成されている。この円形端面183Bには、ゴム材等によって形成されたシールプレート193が取り付けられている。
このピストン183は、その長手方向に沿って長い断面矩形状の貫通孔183Cが形成され、両側面部が連通されている。また、シールプレート193のガスを受圧する受圧側面から貫通孔183Cに連通するガス抜き孔195が、ピストン183とシールプレート193に形成されている。このピストン183は、図20に示すように、プリテンショナユニット7が動作する前、つまり、ガス発生部材181によりガスが発生しない通常時の待機状態の場合には、ラック183Aがピニオンギヤ歯185Aと非噛合状態となる位置まで、ピストン案内筒部182Aの奥側に挿入配置される。
ピニオンギヤ185は、スチール材等で形成された円柱状部材であり、その外周部にはラック183Aに噛合可能なピニオンギヤ歯185Aが形成されている。また、ピニオンギヤ歯185Aよりカバープレート191側へ延出された円筒状の支持部185Bが形成されている。この支持部185Bが側壁部13に取り付けられるカバープレート191に形成された支持孔196に回転可能に嵌入される。
そして、支持部185Bが支持孔196に回転可能に嵌入された状態では、ピニオンギヤ歯185Aの一部が、ピストン案内筒部182Aの開口部187内に配設されている。そして、図20に示すように、ピストン183が通常時の待機状態よりピストン案内筒部182Aの先端側に移動すると、ラック183Aがピニオンギヤ歯185Aに噛合して、ピニオンギヤ185がウエビング巻取方向へ回転する。
また、このピニオンギヤ185の回転は、クラッチ機構186を介して巻取ドラム65に伝達される。
即ち、ピニオンギヤ185の軸心方向の側壁部13側の端部には、軸心方向に沿って突出する円筒状のボス部185Dが形成されている。このボス部185Dの外周面には、基端部の外径を有する6個の突起から構成されたスプラインが形成されている。このボス部185Dはベースプレート188に形成された貫通孔197に回転可能に嵌入されて、巻取ドラム65側に突出配置される。
また、クラッチ機構186は、通常時においてピニオンギヤ185に対して巻取ドラム65を自由回転させる状態(クラッチパウル202が収納された状態)から、プリテンショナユニット7の作動時において、ピニオンギヤ185の回転を巻取ドラム65に伝達する状態(クラッチパウル202が突出した状態)へ切り替え可能に構成されている。
クラッチ機構186は、スチール材等で形成されたパウルベース201と、スチール材等で形成された4個のクラッチパウル202と、略円環状のパウルガイド203と、略円環状のベアリング205とから構成されている。このパウルガイド203は、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されて、パウルベース201のベースプレート188側に当接される。また、ベアリング205は、パウルベース201の巻取ドラム65側に当接されて、パウルガイド203と共に当該パウルベース201及び各クラッチパウル202を挟持する。
パウルベース201の中央部には、ピニオンギヤ185のボス部185Dが嵌め込まれるように6個のスプライン溝が形成された嵌合孔206が設けられている。そして、ピニオンギヤ185のボス部185Dが、ベースプレート188及びパウルガイド203を挟んで、パウルベース201の嵌合孔206に圧入されることによって、パウルベース201がピニオンギヤ185に対して相対回転不能に取り付けられる。つまり、パウルベース201とピニオンギヤ185とは一体回転するように構成されている。
また、ベアリング205は、外周部からパウルガイド203側へ突出した複数の弾性係止片205Aによって、パウルガイド203の外周部に係止されるように構成されている。また、ベアリング205の中央部には、巻取ドラム65のボス72の外径にほぼ等しい内径の貫通孔205Bが形成されている。更に、この貫通孔205Bと同一内径で、且つ、ピニオンギヤ185のボス部185Dの内径にほぼ等しい外径の円筒状の軸受部205Cが、貫通孔205Bのパウルベース201側の周縁部から連続して突出するように立設されている。
そして、ピニオンギヤ185のボス部185Dが、パウルベース201の嵌合孔206に圧入された場合には、ベアリング205の中央部に立設された円筒状の軸受部205Cが、ボス部185Dに嵌め込まれる。また、ベアリング205には、巻取ドラム65のプリテンショナユニット7側の端面部中央位置に立設されたボス72が回転可能に嵌入される。このパウルベース201には、各クラッチパウル202が収容姿勢で支持されている。収容姿勢は、各クラッチパウル202の全体をパウルベース201の外周縁部内に収めた姿勢である。
パウルガイド203は、略円環状の部材であり、パウルベース201及び各クラッチパウル202に対向する位置に配設されている。このパウルガイド203のベースプレート188側の側面には4個の位置決突起(不図示)が突設されており、各位置決突起がベースプレート188の各位置決め孔188Aに嵌入されて、待機状態において、パウルガイド203がベースプレート188に回転不能な状態で取付固定される。
また、パウルガイド203のパウルベース201側の面には、各クラッチパウル202に対応して各姿勢変更用突起部203Aが突設されている。そして、プリテンショナユニット7の作動によってパウルベース201とパウルガイド203とが相対回転すると、各クラッチパウル202が姿勢変更用突起部203Aにそれぞれ当接して、収容姿勢から係止姿勢に姿勢変更されるようになっている。係止姿勢は、クラッチパウル202の先端部をパウルベース201の外周縁部外方へ突出させた姿勢である。
また、各クラッチパウル202が係止姿勢に姿勢変更すると、巻取ドラム65に係合する。具体的には、ベアリング205を介してクラッチ機構186は、巻取ドラム65のボス72に嵌入され、巻取ドラム65を回転可能に支持しており、各クラッチパウル202がパウルベース201の外周縁部外方へ突出した場合には、フランジ部68の内周面に形成された内歯ギヤ69に係合可能とされている。
そして、各クラッチパウル202が係止姿勢に姿勢変更すると、各クラッチパウル202の先端部が内歯ギヤ69に係合し、これにより、パウルベース201が巻取ドラム65を回転させるようになる。尚、クラッチパウル202と内歯ギヤ69との係合は、巻取ドラム65をウエビング巻取方向へ回転させる、一方向のみへの係合構造である。
また、一度係合すると各クラッチパウル202が互いに変形を伴って内歯ギヤ69に噛み込む。このため、各クラッチパウル202が内歯ギヤ69に係合した後、巻取ドラム65がウエビング引出方向へ回転すると、ピニオンギヤ185を、プリテンショナユニット7が作動する際とは逆の方向に、クラッチ機構186を介して回転させて、ピストン183を作動方向とは逆方向に押し戻す。
そして、ピストン183のラック183Aと、ピニオンギヤ185のピニオンギヤ歯185Aとの噛み合いが外れる位置までピストン183が押し戻されると、ピニオンギヤ185はピストン183から外れるので、巻取ドラム65はピストン183に対して自由回転できるようになる。
次に、上記のように構成されたプリテンショナユニット7が作動してウエビング3を巻き取る動作について図20及び図21に基づいて説明する。図21は車両衝突時のパウル23の動作を示す説明図である。
図20に示すように、車両衝突時等において、プリテンショナユニット7のガス発生部材181が作動した場合には、発生したガスの圧力によりピストン183がピストン案内筒部182Aの先端側に向けて移動すると共に、ラック183Aと噛み合ったピニオンギヤ歯185Aを有するピニオンギヤ185が回転する(図20中、反時計方向へ回転する。)。
また、車両衝突時等において、車両加速度センサ28の慣性質量体52が、センサーホルダ51の底面部を移動してセンサレバー53を鉛直方向上側へ回動させるため、上記の通り、センサレバー53のロック爪53Aが、パイロットレバー126を鉛直方向上側へ回動させる。そして、パイロットレバー126の係合爪部126Aが、ロッキングギヤ121の外周部に形成されたロッキングギヤ歯121Aに当接される。
尚、パイロットレバー126の係合爪部126Aとロッキングギヤ歯121Aとの係合は、巻取ドラム65をウエビング引出方向へ回転させない方向に作動する、一方向のみへの係合構造である。従って、プリテンショナユニット7が作動している際に、パイロットレバー126の係合爪部126Aがロッキングギヤ歯121Aに当接しても、巻取ドラム65は、ウエビング巻取方向へスムーズに回転する。
そして、図20に示すように、ピニオンギヤ185が回転すると、当該ピニオンギヤ185と一緒にパウルベース201が回転する。この際、パウルガイド203に対してパウルベース201が相対回転することになるため、パウルガイド203に形成された各姿勢変更用突起部203Aがクラッチパウル202に当接して、各クラッチパウル202が係止姿勢に変更される。
これにより、各クラッチパウル202の先端部が、巻取ドラム65の内歯ギヤ69に係合して、ピストン183がピストン案内筒部182Aの先端側へ移動しようとする力が、ピニオンギヤ185、パウルベース201、各クラッチパウル202及び内歯ギヤ69を介して巻取ドラム65に伝達されて、巻取ドラム65がウエビング巻取方向へ回転駆動され、ウエビング3が巻取ドラム65に巻き取られる。
また、車両衝突時等において、プリテンショナユニット7の作動後、引き続いて、ウエビング3が引き出され、巻取ドラム65がウエビング引出方向へ回転された場合には、パイロットレバー126の係合爪部126Aが、ロッキングギヤ121の外周部に形成されたロッキングギヤ歯121Aに係合して、クラッチ125がウエビング引出方向へ回動される。このため、図21に示すように、当該クラッチ125のガイド孔156に案内されたパウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合される。
従って、車両衝突時等において、プリテンショナユニット7の作動後、引き続いて、ウエビング3が引き出された場合には、パウル23とラチェットギヤ部35Aとの係合によって、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ35は、ウエビング3の引き出し方向へ回転するのが抑止される。尚、パウル23とラチェットギヤ部35Aとの係合は、巻取ドラム65をウエビング引出方向へ回転させる、一方向のみへの係合構造である。
[エネルギー吸収]
次に、車両衝突時等でプリテンショナユニット7の作動後、パウル23とラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aとの係合が未だ維持されている状態で、乗員が車両に対して相対的に前側へ移動した場合には、ウエビング3に大きな引き出し力が作用する。そして、ウエビング3に作用する引き出し力が予め設定された所定値を超えて引き出された場合には、巻取ドラム65にウエビング引出方向への回転トルクが作用する。
そして、ラチェットギヤ35はパウル23によって回転が阻止されているため(図21参照)、ラチェットギヤ35の嵌合凹部95Aに圧入されたトーションバー66の連結部66Bは、ウエビング引出方向への回転が阻止される。また、上記の通り、図10及び図11に示すように、トーションバー66の連結部66Aの各凸部75は、固定ネジ78によって、相対向する各突出部68A〜68Eのウエビング引出方向側の側面部に当接した状態で押圧され、固定されている。
そのため、巻取ドラム65に作用するウエビング引出方向への回転トルクによって、トーションバー66の巻取ドラム65の軸孔65Aの奥側に固定された連結部66A側が、各突出部68A〜68Eを介して、巻取ドラム65と一体的に回転され、トーションバー66の軸部66Cの捻れ変形がタイムラグ無く、開始される。このトーションバー66の軸部66Cの捻れ変形に伴って巻取ドラム65がウエビング引出方向に回転し、「第1のエネルギー吸収機構」としてのトーションバー66の捻れ変形による衝撃エネルギーの吸収がなされる。
また同時に、巻取ドラム65が回転された場合には、パウル23とラチェットギヤ35とは係合されているため、このラチェットギヤ35と巻取ドラム65との相互間においても相対回転が生じる。それにより、巻取ドラム65の回転に伴ってワイヤ67とラチェットギヤ35との相互間においても相対回転が生じ、「第2のエネルギー吸収機構」としてのワイヤ67による衝撃エネルギーの吸収がなされる。
[ワイヤの引き出し動作]
ここで、ワイヤ67によって衝撃エネルギーを吸収する際の、当該ワイヤ67の動作について図13、図22乃至図24に基づいて説明する。図22乃至図24はワイヤ67を引き出す動作説明図である。
図13に示すように、巻取ドラム65とラチェットギヤ35との初期状態においては、巻取ドラム65の保持側屈曲路83を構成する凸部85と凹部86のワイヤ67の出口側端部は、フランジ部97の台形状部97Aに突設された凸部98の外周部に形成された変形付与屈曲路101の引き出し側端部の近くに位置している。
そして、ワイヤ67の略S字状の屈曲部67Aは、巻取ドラム65の凸部85と凹部86と溝部87とによって構成された保持側屈曲路83内に嵌入されて固定保持されている。また、ワイヤ67の屈曲部67Aに連続する正面視略逆U字状の屈曲部67Bは、台形状部97Aに突設された凸部98の外周部に形成された変形付与屈曲路101内に嵌入されている。これにより、保持側屈曲路83のワイヤ67の出口側端部と、変形付与屈曲路101の引き出し側端部とがワイヤ67を介してほぼ一直線状になるように対向している。
そして、図13、図22乃至図24に示すように、ウエビング3の引き出しによって巻取ドラム65がウエビング引出方向(矢印X5方向である。)に回転した場合には、ラチェットギヤ35はパウル23によって回転が阻止され(図21参照)、巻取ドラム65の回転に伴って段差部82がラチェットギヤ35の台形状部97Aに対してウエビング引出方向(矢印X5方向である。)に相対回転されていく。
これにより、段差部82の保持側屈曲路83に屈曲部67Aが固定保持されたワイヤ67が、台形状部97Aの外周部から突出するフランジ部99と台形状部97Aの中央部に突出する凸部98によって形成される正面視略逆U字状の変形付与屈曲路101から順次しごかれながら、矢印X6方向に引き出されて、段差部82の外周面に巻き取られる。尚、この際には、ワイヤ67の引き出しと同時に、巻取ドラム65の回転に伴ってトーションバー66も捻れ変形している。
また、正面視略逆U字状の変形付与屈曲路101をワイヤ67が変形しながら通過する際に、ワイヤ67は、変形付与屈曲路101の引き出し側端部の段差部82の回転方向(矢印X5方向である。)側の側面部と、凸部98の外周面とに摺動しながら通過する。これにより、凸部98とワイヤ67との相互間に摺動抵抗が生じると共に、ワイヤ67自体による屈曲抵抗が生じ、これら摺動抵抗と屈曲抵抗による引出抵抗によってワイヤ67による衝撃エネルギーの吸収がなされる。
そして、図24に示すように、巻取ドラム65の回転に伴って、ワイヤ67の屈曲部67Cの端部が、変形付与屈曲路101から離脱した時点で、このワイヤ67による衝撃エネルギーの吸収作用は終了し、以降は巻取ドラム65の回転に伴ってトーションバー66の捻れ変形による衝撃エネルギーの吸収のみとなる。
以上詳細に説明した通り、第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1では、巻取ドラム65の取付凹部77の底面部に形成された取付孔79に固定ネジ78をねじ込んで、トーションバー66の連結部66Aの凸部75に当接させて、軸孔65Aの軸方向に対して交差する方向、即ち、周方向に押圧して固定する。つまり、トーションバー66の連結部66Aの各凸部75は、固定ネジ78によって、相対向する各突出部68A〜68Eのウエビング引出方向側の側面部に当接した状態で押圧され、巻取ドラム65内に周方向及び軸方向に相対移動不能に固定される。
これにより、固定ネジ78を取付孔79にねじ込んで、トーションバー66の連結部66Aの各凸部75を、相対向する各突出部68A〜68Eのウエビング引出方向側の側面部に押圧して、固定することができ、トーションバー66の連結部66Aと巻取ドラム65との間における周方向及び軸方向のガタツキの発生を簡易な構成で確実に抑止することができる。
また、連結部66Aの各凸部75は、ロック機構10が作動してラチェットギヤ35のウエビング引出方向への回転が阻止された際に、各突出部68A〜68Eを介してウエビングの引き出し方向への荷重を受ける側の側面部を、固定ネジ78によって当該各突出部68A〜68Eのウエビング引出方向側の側面部に当接されて、固定されている。
これにより、急ブレーキ時等の緊急時に、ラチェットギヤ35のウエビング引出方向への回転が阻止された場合に、トーションバー66を介して巻取ドラム65のウエビング引出方向への回転をタイムラグ無く、確実に阻止することができる。
更に、車両衝突時等の緊急時に、プリテンショナユニット7の作動後、パウル23とラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aとの係合が未だ維持されている状態で、巻取ドラム65にウエビング引出方向への大きな回転トルクが作用した場合には、トーションバー66の連結部66Aは、各突出部68A〜68Eを介して、巻取ドラム65と一体的に回転され、トーションバー66の軸部66Cの捻れ変形をタイムラグ無く、開始することができる。従って、車両衝突時等の緊急時に、プリテンショナユニット7の作動後、トーションバー66の軸部66Cの捻れ変形による衝撃エネルギーの吸収をタイムラグ無く、開始することができる。
また、取付孔79にねじ込まれた固定ネジ78の頭部は、巻取ドラム65の外周部に形成された取付凹部77内に収納されて、巻取ドラム65の外周部よりも内側に配置される。これにより、ウエビング3を巻取ドラム65に対して同心状にスムーズに巻回することができると共に、巻取ドラム65の軽量化を図ることができる。
各突出部68B〜68Eのウエビング3の巻き取り方向側の側面部に形成された各突条部76B〜76Eは、連結部66Aの各凸部75の周方向両側面部のうち、固定ネジ78が当接するウエビング引出方向側の側面部に当接するように設けられている。これにより、各突出部68B〜68E間に圧入された連結部66Aの各凸部75は、各突条部76B〜76Eによって、ウエビング巻取方向側へ押圧されるため、トーションバー66の巻取ドラム65への仮組み付けが可能となり、組立作業の迅速化を図ることができる。
また、各突条部76B〜76Eは、連結部66Aの各凸部75の周方向両側面部のうち、固定ネジ78が当接するウエビング引出方向側の側面部に当接して、押圧するため、連結部66Aと各突出部68A〜68Eとの間における周方向及び軸方向のガタツキの発生を抑制するための補助構造となり、固定ネジ78の小型化を図ることができる。