[概略構成]
先ず、第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の概略構成について図1乃至図4に基づき説明する。図1は第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の外観斜視図である。図2はシートベルト用リトラクタ1の側面図である。図3及び図4はシートベルト用リトラクタ1をユニット別に分解した斜視図である。
図1乃至図4に示すように、シートベルト用リトラクタ1は、車両のウエビング3を巻き取るための装置であって、ハウジングユニット5と、巻取ドラムユニット6と、プリテンショナユニット7と、巻取バネユニット8と、ロックユニット9とから構成されている。
ロックユニット9は、メカニズムカバー97(図8参照)に一体に形成された各ナイラッチ9A及び各係止フック9Bによって、ハウジングユニット5を構成するハウジング11の一方の側壁部12に固設されている。そして、ロックユニット9は、ウエビング3の急激な引き出しや車両の急激な加速度の変化に反応してウエビング3の引き出しを停止するロック機構を構成する。また、巻取バネユニット8は、バネケース93(図8参照)の外周部から突出した3個の板状の係止片8A(図9参照)を介して、後述のようにロックユニット9の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側に固設されている(図10参照)。
また、プリテンショナユニット7は、平面視略コの字状に形成されたハウジング11の側壁部12に相対向する他方の側壁部13に、プリテンショナユニット7の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側から挿通される各ネジ15によってネジ止めされる。また、プリテンショナユニット7は、プリテンショナユニット7の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側から側壁部13に挿通されるストッパーピン16と、該ストッパーピン16に側壁部13の巻取ドラムユニット6の回転軸方向内側から挿入されるプッシュナット18によって固定される。
そして、ウエビング3が巻装される巻取ドラムユニット6は、ハウジングユニット5の側壁部12に固設されたロックユニット9と、側壁部13に固定されたプリテンショナユニット7との間に回転自在に支持される。また、巻取ドラムユニット6は、ロックユニット9の外側に固設された巻取バネユニット8によって、ウエビング3の巻取方向に常時付勢されている。
[ハウジングユニットの概略構成]
次に、ハウジングユニット5の概略構成について図3乃至図5に基づいて説明する。図5はハウジングユニット5の分解斜視図である。
図3乃至図5に示すように、ハウジングユニット5は、ハウジング11と、ブラケット21と、プロテクタ22と、パウル23と、パウルリベット25と、捩りコイルバネ26と、センサカバー27と、車両加速度センサ28と、連結部材32、33と、リベット61とから構成されている。
また、ハウジング11は、車体に固定される背板部31と、その背板部31の両側縁部から相対向する各側壁部12、13が延出されて、平面視略コの字状にスチール材等で形成されている。また、各側壁部12、13は、巻取ドラムユニット6の回転軸方向に長い横長細板状の各連結部材32、33によって互いに連結されている。また、背板部31の中央部には、開口部が形成され、軽量化及びウエビング3の収容量の規制等が図られている。
また、側壁部12には巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ35が、所定隙間(例えば、約0.5mmの隙間である。)を形成しつつ挿入される貫通孔36が形成されている。この貫通孔36の内側周縁部は、巻取ドラムユニット6側へ中心軸方向内側に所定深さ窪んで、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ35に対向するように構成されている。
また、この貫通孔36の斜め下側(図5中、斜め左下側である。)のパウル23の各係合歯23A、23Bを含む先端側の部分37に対向する周縁部から、該パウル23の回動方向外側へ(パウル23のラチェットギヤ35から離反する回動方向である。)、この先端側の部分37が収容される深さに切り欠かれた切欠部38が形成されている。この切欠部38の背板部31側の横側には、パウル23を回転可能に取り付けるための貫通孔41が形成されている。また、切欠部38の貫通孔41側のパウル23が当接する部分には、該貫通孔41と同軸に円弧状の案内部38Aが形成されている。
一方、スチール材等で形成されたパウル23の案内部38Aに当接して摺動する部分には、側壁部12の厚さ寸法にほぼ等しい高さで、この案内部38Aと同じ曲率半径の円弧状に窪んだ段差部37Aが形成されている。また、パウル23の回動軸方向外側(図5中、手前側である。)の側面の先端部には、ロックユニット9を構成するクラッチ111のガイド孔142(図8参照)に挿入される案内ピン42が立設されている。
また、パウル23の基端部にはパウルリベット25が挿通される貫通孔43が形成されると共に、この貫通孔43の周縁部から側壁部12の貫通孔41に回動可能に挿通される円筒状のボス部45が、側壁部12の厚さ寸法にほぼ等しい高さで立設されている。そして、パウル23は、ボス部45が側壁部12の貫通孔41にハウジング11の内側から挿通された状態で、側壁部12の外側から貫通孔43に嵌入されたパウルリベット25によって、回動可能に固定される。これにより、パウル23の各係合歯23A、23Bとラチェットギヤ35の外周面に形成されたラチェットギヤ部35Aとが、側壁部12の外側面とほぼ同一面になるように配置される。
また、パウルリベット25の頭部は、貫通孔41よりも大きい外径で所定厚さ(例えば、厚さ約1.5mmである。)の円板状に形成されている。そして、リターンスプリングの一例として機能する捩りコイルバネ26は、巻き数が1巻きでパウルリベット25の頭部の周囲を囲むように配置され、一端側26Aがパウル23の案内ピン42に取り付けられている。また、捩りコイルバネ26の線径は、パウルリベット25の頭部の高さのほぼ半分の寸法である(例えば、線径約0.6mmである。)。従って、捩りコイルバネ26の1巻き分のバネ高さは、パウルリベット25の頭部の高さとほぼ同じ高さに設定されている。
また、捩りコイルバネ26の他端側26Bは、側壁部12上を摺接可能に一端側26Aの側壁部12側を通った後、側壁部12の内側方向(図5中、側壁部12の裏側方向である。)へ略直角に折り曲げられて、側壁部12に形成された取付孔46に挿通されている。また、この他端側26Bの端部は、略U字形に折り曲げられて側壁部12の内側面に当接され、抜け止め部を構成している。これにより、パウル23は、捩りコイルバネ26によって切欠部38の奥側方向へ(図4中、反時計方向である。)回動するように付勢され、各係合歯23A、23Bを含む先端側の部分37が切欠部38の奥側に当接される。従って、パウル23は、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されている。
また、図3乃至図5に示すように、側壁部12の貫通孔36の下方(図5中、下方向である。)には、貫通孔36の中心軸の下方(図5中、下方向である。)から背板部31側の部分に、略四角形の開口部47が形成されている。また、この開口部47には、開口部47とほぼ同じ断面略四角形の浅い略箱体状のセンサカバー27が外側(図5中、手前側である。)から嵌入される。そして、樹脂製のセンサカバー27は、開口側周縁部に形成された鍔部が開口部47の外側周縁部(図5中、手前側周縁部である。)に当接されると共に、センサカバー27の図5中、上下方向両端面に突設された一対の係止爪27A(図5中、上側端面の係止爪27Aを図示している。)が開口部47の図5中、上下方向両端部の奥側に嵌入されて弾性的に係止される。
また、車両加速度センサ28は、鉛直方向上側(図5中、上側である。)に開放される略箱形で底面部にすり鉢状の載置部が形成された樹脂製のセンサーホルダ51と、スチール等の金属で球状体に形成されて載置部上に移動可能に載置された慣性質量体52と、慣性質量体52の鉛直方向上側に載置されてパウル23に対して反対側の端縁部(図5中、右端縁部である。)をセンサーホルダ51によって鉛直方向上下(図5中、上下方向である。)に揺動可能に支持される樹脂製のセンサレバー53とから構成されている。
そして、車両加速度センサ28をセンサカバー27へ嵌入して、センサーホルダ51のセンサカバー27内の両側壁部に対向する両側面部に設けられた一対の係止爪51A(図5中、一方の係止爪51Aを図示している。)をセンサカバー27の各係止孔27Bに嵌入して係止することによって、車両加速度センサ28がセンサカバー27を介してハウジング11に取り付けられる。
また、側壁部12には、上端縁部(図5中、上側端縁部である。)の両隅と、貫通孔36の下方(図5中、下方向である。)との3箇所に、ロックユニット9の各ナイラッチ9Aが嵌入されて取り付けられる各取付孔55が形成されている。また、側壁部12の左右側縁部の中央部(図5中、上下方向中央部である。)には、ロックユニット9の各係止フック9Bが弾性的に係止される各係止片56が、巻取ドラムユニット6の回転軸に対して直交するように張り出して形成されている。
また、側壁部13には、巻取ドラムユニット6が挿通される貫通孔57が中央部に形成されている。また、側壁部13には、下端縁部(図3中、下側端縁部である。)の略中央及び連結部材33側の角部と、上端縁部(図3中、上側端縁部である。)の略中央部に、各ネジ15がネジ止めされる各ネジ孔58がプリテンショナユニット7側方向へのバーリングによって形成されている。また、側壁部13には、上端縁部(図3中、上側端縁部である。)の連結部材32側の角部にストッパーピン16が挿通される貫通孔59が形成されている。
また、背板部31の上端縁部(図3中、上側端縁部である。)に各リベット61によって取り付けられるブラケット21は、スチール材等で形成されて、背板部31の上端縁部から略直角に連結部材32側方向に延出された延出部に、ウエビング3が引き出される背板部31の幅方向に長い横長の貫通孔62が形成され、ナイロン等の合成樹脂で形成された横長枠状のプロテクタ22が嵌め込まれている。また、背板部31の下端部(図3中、下端部である。)には、車両の締結片(不図示)に取り付ける際に、ボルトが挿通されるボルト挿通孔63が形成されている。
[巻取ドラムユニットの概略構成]
次に、巻取ドラムユニット6の概略構成について図3、図4、図6及び図7に基づいて説明する。図6は巻取ドラムユニット6の軸心を含む断面図である。図7は巻取ドラムユニット6の分解斜視図である。
図6及び図7に示すように、巻取ドラムユニット6は、巻取ドラム65と、トーションバー66と、ワイヤ67と、ラチェットギヤ35とから構成されている。
図3、図4、図6及び図7に示すように、巻取ドラム65は、アルミダイカストや亜鉛ダイカスト等により形成されて、プリテンショナユニット7側の端面部が閉塞された略円筒状に形成されている。また、巻取ドラム65の軸心方向のプリテンショナユニット7側の端縁部には、外周部から径方向に延出され、更に略直角外側方向(図6中、左側方向である。)に延出されたフランジ部68が形成されている。また、このフランジ部68の内周面には、車両衝突時に各クラッチパウル167(図12参照)が係合してピニオンギヤ155(図12参照)の回転が伝達される内歯ギヤ69が形成されている。
また、巻取ドラム65のプリテンショナユニット7側の端面部中央位置には、円筒状のボス72が立設されている。このボス72は、後述のポリアセタール等の合成樹脂材により形成されたベアリング169(図12、図14参照)に嵌入され、ボス72の基端部がベアリング169に当接される。そして、巻取ドラムユニット6の一端側は、ベアリング169を介してプリテンショナユニット7を構成するピニオンギヤ155のボス部155D(図13、図14参照)に回転可能に支持される。
また、巻取ドラム65の内側には、中心軸に沿って徐々に細くなるように抜き勾配が形成された軸孔65Aが形成されている。この軸孔65A内のフランジ部68側端部には、スチール材等により形成されるトーションバー66の一端部に形成されるスプライン66Aが圧入されるスプライン溝74が形成されている。
また、トーションバー66は、スチール材等により形成され、断面円形の棒状をした軸部66Cと、この軸部66Cの両端部に形成された各スプライン66A、66Bとから構成されている。そして、トーションバー66のスプライン66A側を巻取ドラム65の軸孔65Aに挿入してフランジ部68に当接するまでスプライン溝74へ圧入することによって、トーションバー66が巻取ドラム65内に相対回転不能に圧入固定される。
また、巻取ドラム65の軸方向のロックユニット9側の端縁部には、端縁部から少し軸方向内側の外周面から径方向に延出された正面視略円形のフランジ部75が形成されている。また、このフランジ部75から軸心方向外側の部分には、少し外径が細くなった円筒状の段差部76が形成されている。この段差部76は軸孔65A内に圧入されたトーションバー66の他端側のスプライン66Bを所定隙間を形成して囲むように設けられている。
また、フランジ部75の軸方向外側面に形成された正面視略円形の段差部76の外周部には、ステンレス材等の金属材からなる断面円形の線材状のワイヤ67の一端の屈曲部67Aが嵌入保持される保持側屈曲路77が一体形成されている。
この保持側屈曲路77は、図7に示すように、フランジ部75の軸方向外側面から突出する正面視半径方向内側向きの略台形状に形成された凸部78と、段差部76の外周の凸部78に対向する凹部79と、この凹部79の正面視反時計方向側(図7中、反時計方向側である。)の端部から少し離れた段差部76の外周面から正面視反時計方向に傾斜した斜め内側方向へ形成された溝部81と、段差部76の凹部79と溝部81との間の外周面とによって形成されている。
また、ラチェットギヤ35は、アルミダイカストや亜鉛ダイカスト等により形成され、軸断面略リング状で外周部にラチェットギヤ部35Aが形成され、その内側中央位置に円筒状の固定ボス82が立設されている。固定ボス82の内周面には、トーションバー66の他端側に形成されるスプライン66Bが圧入されるスプライン溝82Aが形成されている。また、ラチェットギヤ部35Aの内周部は、巻取ドラム65の段差部76が嵌挿可能な内径に形成されている。
また、ラチェットギヤ35は、ラチェットギヤ部35Aの巻取ドラム65側の端面部から全周に渡って、該巻取ドラム65のフランジ部75の外径よりも半径方向外側へ正面視リング状に延出され、更に、所定中心角度(例えば、中心角度約60度である。)の外周部から半径方向外側へ正面視先端側が狭い略台形状に延出されたフランジ部83が形成されている。また、フランジ部83の外径は、巻取ドラム65のフランジ部68の外径とほぼ同じ大きさに形成されている。
また、このフランジ部83の半径方向外側へ延出された正面視先端側が狭い略台形状の台形状部83Aの巻取ドラム65側の内側面には、台形状部83Aから回転軸方向外側に突出して、ワイヤ67の正面視略逆U字状の屈曲部67Bが嵌め込まれる正面視略山形の凸部84(図9参照)が略中央部に形成されている。
また、フランジ部83の巻取ドラム65側の内側面には、巻取ドラム65のフランジ部75の外径よりも少し大きい内径で立設されると共に、台形状部83Aの外周部に沿って立設された正面視略卵形のフランジ部85が形成されている。また、このフランジ部85の内周部と凸部84の外周部とによって、ワイヤ67が摺動案内されて引き出される正面視略逆U字状の変形付与屈曲路が形成されている。
従って、先ず、ワイヤ67の一端側の略S字状に屈曲されている屈曲部67Aを巻取ドラム65のフランジ部75と段差部76に形成された保持側屈曲路77内に嵌入する。また、ワイヤ67の屈曲部67Aに連続して形成される正面視略逆U字状の屈曲部67Bを、フランジ部75の外周よりも外側に突出させる。また、ワイヤ67の屈曲部67Bに連続して形成される円弧状の屈曲部67Cを、段差部76の外周面に沿って配置する。
続いて、ラチェットギヤ35の巻取ドラム65への取り付けは、先ず、巻取ドラム65のフランジ部75の外周よりも外側に突出しているワイヤ67の正面視略逆U字状の屈曲部67Bを、ラチェットギヤ35のフランジ部83の台形状部83Aに設けられた凸部84の外周部に形成された変形付与屈曲路内に嵌入する。
また、同時に、ラチェットギヤ35の固定ボス82を巻取ドラム65の段差部76内に挿入して、トーションバー66の他端側に形成されたスプライン66Bを当該固定ボス82のスプライン溝82Aに圧入する。これにより、巻取ドラム65のフランジ部75とラチェットギヤ35の各フランジ部83、85との間に、ワイヤ67が配置されると共に、ラチェットギヤ35がトーションバー66を介して巻取ドラム65に対して相対回転不能に装着される。
[巻取バネユニットの概略構成]
次に、巻取バネユニット8の概略構成について図3、図4、図8乃至図11に基づいて説明する。
図8及び図9は、ラチェットギヤを含む巻取バネユニット8及びロックユニット9の分解斜視図である。図10はバネケース93の取り付けを説明する断面図である。図11は巻取バネユニット8及びロックユニット9を含む要部拡大断面図である。
図2、図3、図8、図9及び図11に示すように、巻取バネユニット8は、渦巻バネ91と、この渦巻バネ91の外側端91Aが内側周縁部の底面から立設されたリブ92に固定されると共に、この渦巻バネ91を収容するバネケース93と、渦巻バネ91の内側端91Bが連結されてバネ力が付勢されるバネシャフト94とから構成されている。また、バネケース93は、ロックユニット9を構成するメカニズムカバー97側の端縁部に、ほぼ全周に渡って所定深さ(例えば、深さ約2.5mmである。)の溝部93Aが形成されている。
また、バネケース93のメカニズムカバー97側の端縁部には、外周部の3箇所から正面視略長方形の板状の各係止片8Aが、メカニズムカバー97の略中央部に形成された貫通孔99の中心軸99Aに対して同心状に突設されている。また、各係止片8Aの貫通孔99の中心軸99Aに対して半径方向外側の外周面は、同心円上に位置するように形成されている。
また、図8及び図9に示すように、バネケース93の下端縁部に位置する係止片8Aには、貫通孔99の中心軸99Aに対して反時計方向側の端縁部に連続して断面四角形の固定部8Bが連設されている。また、固定部8Bの略中央部には、貫通孔99の中心軸99Aに平行な貫通孔8Cが形成されると共に、この貫通孔8Cの該中心軸99A方向外側の端部を塞ぐように固定ピン8Dが一体的に形成されている。
また、固定ピン8Dの軸径は、貫通孔8Cの内径とほぼ同じ径に形成され、固定ピン8Dを所定荷重以上でメカニズムカバー97側へ押すことによって、貫通孔8C内に押し込むことができる。また、固定ピン8Dの長さは、固定部8Bの厚さよりも長くなるように形成されている。
一方、図8乃至図10に示すように、メカニズムカバー97は、外周部の各係止片8Aに対向する3箇所から、断面略矩形の厚板状の保持部98が、巻取バネユニット8側に突設されている。また、各保持部98の基端部には、貫通孔99の中心軸99Aに対して反時計回り方向に切り欠かれて、奥側端部が閉塞された断面略長方形の嵌合溝部98Aが形成されている。
また、各嵌合溝部98Aの貫通孔99の中心軸99Aに対して半径方向外側の底面部は、バネケース93の各係止片8Aの半径方向外側端縁部よりも少し大きい半径(例えば、約0.2mm〜0.5mm大きい半径である。)の同心円上に位置するように形成されている。また、各嵌合溝部98Aの中心軸99A方向の幅寸法は、各係止片8Aの厚さ寸法とほぼ同じ寸法に形成され、後述のように、各係止片8Aは各嵌合溝部98A内に嵌入されるように構成されている(図10参照)。
また、メカニズムカバー97は、巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側の周縁部に沿って所定高さ(例えば、高さ約2mmである。)で立設された略リング状のリブ部97Aが設けられている。リブ部97Aは、溝部93Aに対応した位置に設けられており、リブ部97Aの内径及び外径は、溝部93Aの内径及び外径に対して、溝部93Aにリブ部97Aが嵌入された状態でそれぞれ所定の隙間(例えば、隙間約0.1mm〜0.3mmである。)を形成するように設けられている。
また、図8及び図9に示すように、リブ部97Aの下端縁部に対向する保持部98の中心軸99Aに対して時計方向側の近傍には、後述のように、バネケース93をメカニズムカバー97に取り付けた際に、固定ピン8Dに対向する位置に、断面円形の固定用孔100が形成されている。
この固定用孔100の内径は、バネケース93の固定ピン8Dの外径よりも所定寸法(例えば、約0.1mm〜0.3mmである。)だけ小さくなるように形成され、固定ピン8Dを圧入できるように設けられている。また、固定用孔100の奥側、つまり、ハウジング11の側壁部12側の周縁部には、奥側が閉塞された円筒状のボス101が立設されている。また、この円筒状のボス101の内径は、固定用孔100と同じ直径の断面円形に形成されると共に、固定用孔100に対して同軸に形成されている。
ここで、巻取バネユニット8をメカニズムカバー97へ取り付ける取付方法について説明する。
図9に示すように、先ず、渦巻バネ91の外側端91Aをバネケース93の内側に立設されたリブ92に嵌入して、バネケース93内に収納して、渦巻バネ91の内側端91Bにバネシャフト94の取付溝94Cを嵌め込む。また、図8及び図9に示すように、バネシャフト94は、バネケース93の底面部93Bの略中心位置に立設されたピン95が、底面部の貫通孔94Aに挿入されて、底面部側がピン95の周縁部に回転可能に当接される。
そして、図8に示すように、バネケース93の外周部の3箇所から半径方向外側に突設された各係止片8Aを、メカニズムカバー97の保持部98の正面視時計方向側の端縁部に対向するように位置させる。また、図8及び図11に示すように、メカニズムカバー97の貫通孔99から突出するロッキングギヤ107の回転軸部119の先端部119Aは、断面矩形状に形成されると共に、中心軸に沿って、ピン95が挿入される軸孔119Bが形成されている。
続いて、図9及び図11に示すように、メカニズムカバー97の貫通孔99から突出するロッキングギヤ107の回転軸部119の先端部119Aを、バネシャフト94の断面矩形状に形成された筒孔94B内に嵌入して、ロッキングギヤ107の回転軸部119を当該バネシャフト94に対して相対回転不能に連結する。また同時に、図10に示すように、バネケース93の溝部93A内に、メカニズムカバー97の周縁部に立設されたリブ部97Aを嵌入する。
そして、図10に示すように、バネケース93をウエビング引出方向、つまり、正面視反時計方向(図10中、矢印96方向である。)へ回転させて、バネケース93の各係止片8Aをメカニズムカバー97の各保持部98の嵌合溝部98A内に嵌入して、各嵌合溝部98Aの奥側に当接させる。これにより、バネケース93がメカニズムカバー97の貫通孔99の中心軸99Aに対して、半径方向及び軸方向に移動しないように位置決めされる。
その後、この状態で、バネケース93の固定ピン8Dを押圧して、固定部8Bの貫通孔8Cとメカニズムカバー97の固定用孔100とに圧入することによって、巻取バネユニット8がメカニズムカバー97に対して相対回転不能に固定され、巻取バネユニット8がメカニズムカバー97の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側に当接された状態で取り付けられる。
これにより、メカニズムカバー97の周縁部に立設されたリブ部97Aが、バネケース93の溝部93Aに嵌入されて、バネケース93内への粉塵や埃等の侵入が防止される。また、図11に示すように、バネシャフト94におけるメカニズムカバー97の底面部側が、ピン95の周縁部に回転可能に当接された状態で、バネシャフト94のロックユニット9側の端部と、メカニズムカバー97の略中央部に形成された貫通孔99の背面側周縁部との間に所定隙間(例えば、隙間約0.3mmである。)が形成されている。
また、同時に、バネシャフト94の筒孔94Bの底面と、ロッキングギヤ107の回転軸部119の先端部119Aとの間にも所定隙間(例えば、隙間約0.3mmである。)が形成されている。従って、バネシャフト94は、バネケース93とメカニズムカバー97との間において、所定隙間分だけ、中心軸99Aの軸方向に移動可能に設けられている。
[ロックユニットの概略構成]
次に、ウエビング3の急激な引き出しや車両の急激な加速度の変化に反応してウエビング3の引き出しを停止するロック機構を構成するロックユニット9の概略構成について図8、図9及び図11に基づいて説明する。
図8、図9及び図11に示すように、ロックユニット9は、メカニズムカバー97、ロッキングギヤ107、ロックアーム108、センサスプリング109、クラッチ111及びパイロットレバー112で構成されている。尚、第1実施形態おいては、ロックユニット9を構成する各部材のうち、センサスプリング109を除いた部材は、合成樹脂で成形されており、互いに接触した場合の部材間の摩擦係数は小さなものである。
図8、図9及び図11に示すように、メカニズムカバー97は、ハウジング11の側壁部12側が開口された略円形の底面部104を有する略箱体状のメカニズム収容部113が形成され、ロッキングギヤ107やクラッチ111等を収容するように構成されている。また、メカニズムカバー97は、ハウジング11にセンサカバー27を介して取り付けられた車両加速度センサ28に対向する角部(図9中、左下角部である。)に、断面略四角形の凹形状に形成されたセンサ収容部114が、メカニズム収容部113に連続するように設けられている。
そして、メカニズムカバー97を各ナイラッチ9A及び各係止フック9Bによって側壁部12に取り付けた場合には、車両加速度センサ28のセンサーホルダ51がセンサ収容部114に嵌入されて、センサレバー53が鉛直方向上下(図9中、上下方向である。)に揺動可能に収納されるように構成されている。また、メカニズムカバー97のメカニズム収容部113の下端部略中央部(図9中、下端部略中央部である。)には、当該メカニズム収容部113とセンサ収容部114とが連通するように開設された開口部115が形成されている。
この開口部115は、車両加速度センサ28のセンサレバー53の先端縁部から上方向(図9中、上方向である。)に向けて突設されたロック爪53Aの先端部が鉛直方向上下(図9中、上下方向である。)に進退可能に形成され、通常時には、ロック爪53Aの先端部は、パイロットレバー112の受け板部148の近傍に位置している。そして、所定値を超える加速度によって慣性質量体52が移動してセンサレバー53が鉛直方向上側へ回動された場合には、ロック爪53Aは開口部115を介してパイロットレバー112の受け板部148に当接して、パイロットレバー112を鉛直方向上側へ回動させるように構成されている。
また、メカニズム収容部113の略円形の底面部104には、中央部に形成された貫通孔99の周縁部から円筒状の支持ボス117が立設されている。この支持ボス117のロッキングギヤ107側の先端部の外周は、全周に渡って先端側へ所定角度(例えば、約30°の傾斜角である。)で傾斜した先細りの面取り部117Aが形成されている。また、この支持ボス117には、ロッキングギヤ107の円板状の底面部118の中央部に、メカニズムカバー97に対向する背面側から突出する円筒状の回転軸部119が嵌入され、摺動回転可能に支持される。
ロッキングギヤ107は、円板状の底面部118の全周からクラッチ111側へ円環状に立設されて、外周部にパイロットレバー112に係合するロッキングギヤ歯107Aが形成されている。このロッキングギヤ歯107Aは、ロッキングギヤ107がウエビング引出方向へ回転した時のみ、パイロットレバー112の係合爪部112Aと係合するように形成されている。
また、図8、図9及び図11に示すように、ロッキングギヤ107の底面部118の中央部には、ラチェットギヤ35のロッキングギヤ107側端面の中央部に立設された軸部102が嵌入される貫通孔が形成されている。また、円筒状の基台部120が、この貫通孔のメカニズムカバー97側の周縁部からロッキングギヤ歯107Aの軸方向高さとほぼ同じ高さに立設されている。そして、ロッキングギヤ107の円筒状の回転軸部119は、この円筒状の基台部120のメカニズムカバー97側端縁部から、この基台部120よりも小さいと共に、支持ボス117の内径にほぼ等しい外径でメカニズムカバー97側へ同軸に延設されている。また、回転軸部119のメカニズムカバー97側端縁部は閉塞されて、断面矩形状の先端部119Aが同軸に延設されている。
従って、基台部120及び回転軸部119の内部には、ロッキングギヤ107のラチェットギヤ35側端面に開口して、ラチェットギヤ35のメカニズムカバー97側端面の中央部に立設された軸部102が嵌入される断面円形状の軸孔部120Aが形成されている。また、軸孔部120Aの内周面には、複数のリブ120Bが、軸方向に沿って半径方向に同じ高さで立設され、ラチェットギヤ35の軸部102の外周面に当接するように設けられている。また、軸部102は、全長のうちの基端部側の約半分の部分が円錐台に形成されると共に、先端側の約半分の部分が円錐台に連続する円柱状に形成されている。
また、回転軸部119の基端部の周囲には、円環状のリブ121が、クラッチ111の略円板状の板部137の厚さ寸法にほぼ等しい高さで同軸に立設されて、挿入溝121Aが形成されている。この円環状のリブ121の内側周壁部は、支持ボス117の先端部の傾斜角以上の角度(例えば、約45°の傾斜角である。)で半径方向外側へ傾斜している。また、円環状のリブ121の内側に形成された挿入溝121Aの底面部の外径は、支持ボス117の先端部の外径とほぼ同じ径に形成されている。
更に、円環状のリブ121の外径は、クラッチ111の板部137の中央部に形成された貫通孔138の内径とほぼ同じ径に形成されると共に、基台部120の外径よりも小さい径に形成されている。また、クラッチ111の貫通孔138のロッキングギヤ107側の端縁部には、全周に渡って円環状のリブ138Aが所定高さ(例えば、高さ約0.5mmである。)で立設されている。
これにより、ロッキングギヤ107の円環状のリブ121をクラッチ111の貫通孔138に嵌入して、円環状のリブ138Aをリブ121の外周側基端部に当接させた後、回転軸部119をメカニズムカバー97の支持ボス117に挿通して、円環状のリブ121の半径方向内側に形成された挿入溝121Aの底面部に支持ボス117の先端部を当接させることによって、ロッキングギヤ107の背面側から突出する回転軸部119がほぼ全高さに渡って支持ボス117に対して同軸に取り付けられて軸支される。また、ロッキングギヤ107の円環状のリブ121は、貫通孔138に摺動回転可能に嵌入され、クラッチ111はロッキングギヤ107とメカニズムカバー97との間に一定の回転範囲内で回転可能に収容される。
また、図8、図9及び図11に示すように、ロッキングギヤ107のラチェットギヤ35側の端面には、4個の断面が円周方向に長い略長方形の筒状に突出した凸部122が、等中心角度で、回転軸107Bから半径方向外側へ所定距離(例えば、距離約14mmである。)離れた同心円上に位置するように立設されている。尚、1個の凸部122は、半径方向外側の周縁部が一部切り欠かれている。また、ロッキングギヤ107の底面部118には、円周方向に隣接する1組の凸部122の間のほぼ中央位置に、所定内径(例えば、内径約3.5mmである。)の位置決孔123が形成されている。
また、ラチェットギヤ35のロッキングギヤ107に対向する端面部には、ロッキングギヤ107の凸部122とほぼ同じ形状の円周方向に長い断面略長方形の4個の貫通孔124が、等中心角度で、回転軸107Bから半径方向外側へ所定距離(例えば、距離約14mmである。)離れた各凸部122に対向する位置に形成されている。
また、ラチェットギヤ35のロッキングギヤ107に対向する端面部には、円周方向に隣接する1組の貫通孔124の間で、位置決孔123に対向する位置に、位置決孔123の内径にほぼ等しい外径に形成された位置決めピン125が立設されている。また、ラチェットギヤ35の回転軸方向外側の端面に立設された軸部102の高さは、ロッキングギヤ107の軸孔部120Aの深さにほぼ等しくなるように形成されている。また、ロッキングギヤ107の軸孔部120Aの深さは、軸部102の先端が回転軸部119の先端部119Aの先端よりも、回転軸方向内側に位置するように形成されている。
従って、ラチェットギヤ35の軸部102をロッキングギヤ107の軸孔部120Aに嵌入すると共に、ラチェットギヤ35の位置決めピン125をロッキングギヤ107の位置決孔123に嵌入し、同時に、ロッキングギヤ107の各凸部122をラチェットギヤ35の各貫通孔124に嵌入する。これにより、ラチェットギヤ35の回転軸方向外側の端面に、ロッキングギヤ107が当接された状態で、ラチェットギヤ35にロッキングギヤ107が同軸に相対回転不能に取り付けられると共に、ラチェットギヤ35の軸部102がロッキングギヤ107の回転軸部119を介してメカニズムカバー97の支持ボス117内に位置して軸支される。
また、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ35が、ロッキングギヤ107の回転軸部119の先端部119Aを介して、巻取バネユニット8のバネシャフト94に同軸に相対回転不能に取り付けられる。従って、巻取ドラムユニット6は巻取バネユニット8を介して、ウエビング巻取方向へ常に回動付勢される。
また、図8、図9及び図11に示すように、ロッキングギヤ107の底面部118のクラッチ111側の面には、基台部120に隣接して円柱状の支持ボス127が、ロッキングギヤ歯107Aよりも低い高さで立設されている。そして、基台部120を囲むように略弓形に形成された合成樹脂製のロックアーム108は、長手方向略中央部の基台部120側の端縁部に形成された貫通孔128に、この支持ボス127が回転可能に嵌挿され、回動可能に軸支される。
また、ロッキングギヤ107の底面部118には、支持ボス127に対して半径方向外側の近傍位置に、断面逆L字形の弾性係止片129が、メカニズムカバー97側へ立設されている。この弾性係止片129は、ロックアーム108の貫通孔128の横側に形成された略扇形で段差部を有する窓部130に挿入され、基台部120の軸心回りに回動可能に弾性的に係止される。
そして、センサスプリング109の一端側をロックアーム108のバネ支持ピン132に嵌め込む。また同時に、センサスプリング109の他端側をロッキングギヤ107の基台部120の周縁部において、該基台部120の軸心に対して直交するウエビング引出方向へ立設された不図示のバネ支持ピンに嵌め込むことによって、ロックアーム108は支持ボス127の軸心に対してウエビング引出方向側(図8中、反時計方向である)へ回動するように所定荷重で付勢される。そして、ロックアーム108は、クラッチ111のクラッチギヤ134に係合する係合爪135側の端縁部が、ロッキングギヤ107の基台部120から半径方向外側に突出するように形成された不図示のストッパに当接されている。
一方、ロックアーム108がセンサスプリング109の付勢力に抗してウエビング巻取方向(図8中、時計方向である)へ回動されてクラッチギヤ134に係合した場合には、係合爪135の係合部とは反対側の端縁部が、ロッキングギヤ107の底面部118に立設された断面紡錘形の回り止め141と所定隙間(例えば、隙間約0.3mmである。)を形成するように構成されている。
また、図8、図9及び図11に示すように、クラッチ111はロッキングギヤ107とメカニズムカバー97とに挟まれた状態で、メカニズム収容部113に一定の回転範囲内で回転可能に収容される。このクラッチ111のロッキングギヤ107側には、貫通孔138に対して同軸に、ロッキングギヤ107のロッキングギヤ歯107Aが外周部に形成された円環状のリブの内周径よりも少し小さい外径を有する円環状のリブ部139が立設されている。
このリブ部139の内周面には、ロックアーム108の係合爪135が係合するクラッチギヤ134が形成されている。このクラッチギヤ134は、ロッキングギヤ107が、貫通孔138の軸心に対してウエビング引出方向への回転した時のみ、ロックアーム108の係合爪135と係合するように形成されている。
また、クラッチ111の略円板状の板部137の外周部には、リブ部139を囲むように円環状の外側リブ部143が立設されている。また、この外側リブ部143のラチェットギヤ35側の端縁部には、貫通孔138の中心軸に対して半径方向外側へ延出されると共に、ラチェットギヤ35側へ少し傾斜するように延出されたフランジ部144がほぼ全周に渡って形成されている。
また、外側リブ部143のパウル23に対向する角部(図8中、左下角部である。)には、外側リブ部143の外周面から鉛直方向下方(図8中、下方向である。)へ延出されたガイドブロック部145が設けられている。このガイドブロック部145には、パウル23の各係合歯23A、23Bを含む先端部の側面に立設された案内ピン42がラチェットギヤ35側から遊嵌される略細長状のガイド孔142が形成されている。
このガイド孔142は、クラッチ111のパウル23に対向する角部に、ウエビング引出方向(図9中、上下方向である。)とほぼ平行な長溝状に形成されている。これにより、クラッチ111がウエビング引出方向(図9中、反時計方向である。)へ回動された場合には、案内ピン42がガイド孔142に沿って移動され、パウル23の各係合歯23A、23Bがラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aへ近づくように回動される。
また、パウル23は、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されており、クラッチ111は、ガイド孔142に遊嵌されたパウル23の案内ピン42により付勢されている。この付勢力によってクラッチ111は、ガイド孔142において、クラッチ111の回転半径方向で最もラチェットギヤ35から離反する位置にある端縁部(図9中、ガイド孔142の下側端縁部である。)に、パウル23の案内ピン42が当接する状態の回転姿勢になるように付勢されることで、ウエビング引出方向とは反対方向に回転付勢されている。従って、パウル23及び捩りコイルバネ26によってクラッチ付勢機構が構成される。
そして同時にパウル23は、通常時には、ガイド孔142において、クラッチ111の半径方向で最もラチェットギヤ35から離反する位置にある端縁部(図9中、ガイド孔142の下側端縁部である。)に、パウル23の案内ピン42が当接して回動を規制されるため、側壁部12に形成された切欠部38の奥側近傍に位置するように保持されている。
また、クラッチ111の外側リブ部143の下端縁部(図9中、下端縁部である。)には、ガイドブロック部145のラチェットギヤ35側端面部からセンサ収容部114の上方(図9中、上方向である。)に対向する部分まで、フランジ部144から半径方向外側へ略円弧状に延出された板状の延出部146が形成されている。また、図8及び図9に示すように、延出部146のガイドブロック部145に対して反対側の端縁部の近傍位置には、パイロットレバー112の円筒状の軸部147に嵌挿されて軸支する円柱状の取付ボス149が、外側リブ部143の高さとほぼ同じ高さでメカニズムカバー97側へ立設されている。
[ロック機構の動作]
次に、巻取ドラムユニット6のウエビング引出方向への回転をロックするロック機構の動作について説明する。ここで、ロック機構は、ウエビング3の急な引き出しに対して作動する「ウエビング感応式ロック機構」と、車両の揺れや傾きなどに起因して生ずる加速度に感応して作動する「車体感応式ロック機構」との2種類のロック機構として動作する。
[ウエビング感応式ロック機構の動作説明]
先ず、「ウエビング感応式ロック機構」のロック動作について説明する。ロックアーム108は、ロッキングギヤ107の支持ボス127によって回動自在に支持されているため、ウエビング3の引出加速度が所定加速度(例えば、約2.0Gである。尚、1G≒9.8m/s2とする。)を超えた場合には、ロッキングギヤ107のウエビング引出方向への回転に対してロックアーム108に慣性遅れが生じる。
このため、ロッキングギヤ107のストッパに当接していたロックアーム108は、センサスプリング109の付勢力に抗して初期位置を維持するため、当該ロッキングギヤ107に対して支持ボス127を中心に回動され、係合爪135が回り止め141の近傍まで回動される。そのため、ロックアーム108の係合爪135は、ロッキングギヤ107の回転軸に対して半径方向外側へ回動されて、クラッチ111のクラッチギヤ134に係合する。
そして、ウエビング3の引き出しが所定加速度を超えて継続された場合には、ロッキングギヤ107が更にウエビング引出方向へ回転されるため、ロックアーム108の係合爪135は、クラッチギヤ134に係合した状態で、ウエビング引出方向へ回動される。
従って、ロックアーム108によってクラッチギヤ134がウエビング引出方向へ回動されるため、クラッチ111は、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されているパウル23の案内ピン42による付勢力に抗して、ロッキングギヤ107のリブ121の軸心回り、つまり、回転軸部119の軸心回りにウエビング引出方向へ回動される。
これにより、ウエビング3の引き出しが所定加速度を超えて更に継続された場合には、クラッチ111は捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されているパウル23の案内ピン42による付勢力に抗して、ウエビング引出方向へ更に回動される。このため、パウル23の案内ピン42は、当該クラッチ111のガイド孔142によって案内されて、当該パウル23は捩りコイルバネ26の付勢力に抗して、ラチェットギヤ35に係合される。これにより、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされる。
[車体感応式ロック機構の動作説明]
次に、「車体感応式ロック機構」のロック動作について説明する。車両加速度センサ28の球状体の慣性質量体52は、センサーホルダ51のすり鉢状の底面部に載置されているため、車体の揺れや傾きなどによる加速度が所定加速度(例えば、約2.0Gである。)を超えた場合には、センサーホルダ51の底面部を移動してセンサレバー53を鉛直方向上側へ回動させる。
このため、センサレバー53のロック爪53Aが、クラッチ111の延出部146に立設された取付ボス149に回転自在に取り付けられているパイロットレバー112の受け板部148に当接して、当該パイロットレバー112を鉛直方向上側へ回動させる。従って、パイロットレバー112は取付ボス149の軸心回りに時計方向に回動され、当該パイロットレバー112の係合爪部112Aは、ロッキングギヤ107の外周部に形成されたロッキングギヤ歯107Aに係合する。
そして、パイロットレバー112がロッキングギヤ107のロッキングギヤ歯107Aに係合した状態で、ウエビング3が引き出された場合には、当該ロッキングギヤ107がウエビング引出方向へ回動される。また、ロッキングギヤ107のウエビング引出方向への回転は、パイロットレバー112及び取付ボス149等を介してクラッチ111へ伝達される。
このため、ロッキングギヤ107のウエビング引出方向への回転に伴って、当該クラッチ111は、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されているパウル23の案内ピン42による付勢力に抗して、ロッキングギヤ107のリブ121の軸心回り、つまり、回転軸部119の軸心回りにウエビング引出方向へ回動される。
これにより、ウエビング3の引き出しが更に継続された場合には、クラッチ111は、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されているパウル23の案内ピン42による付勢力に抗して、ウエビング引出方向へ更に回動される。このため、パウル23の案内ピン42は、当該クラッチ111のガイド孔142に案内されて、当該パウル23の各係合歯23A、23Bは、ラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合される。これにより、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされる。
[プリテンショナユニットの概略構成]
次に、プリテンショナユニット7の概略構成について図3、図4、図12乃至図20に基づいて説明する。図12及び図13はプリテンショナユニット7の分解斜視図である。図14は図2のX1−X1矢視要部拡大断面図である。図15はプリテンショナユニット7の内部構造を示す断面図である。図16及び図17は保持プレート157の側面図である。図18及び図19はピニオンギヤ155の支持状態を説明する側面図である。図20は図19のピニオンギヤ155のボス部155Dと内側軸受孔165の半円弧状部165Aとの当接状態を示す一部切り欠き図である。
プリテンショナユニット7は、車両衝突時等の緊急時に巻取ドラム65をウエビング巻取方向に回転させて、ウエビング3の弛みを除去し、乗員を座席にしっかりと拘束するように構成されている。
図3、図4、図12乃至図15に示すように、プリテンショナユニット7は、ガス発生部材151と、パイプシリンダ152と、ピストン153と、ピニオンギヤ155と、クラッチ機構156と、保持プレート157と、ベースブロック158とを備えている。
ガス発生部材151は、火薬等のガス発生剤を含んでおり、図示省略の制御部からの着火信号によりガス発生剤を着火させて当該ガス発生剤の燃焼でガスを発生させるように構成されている。
また、パイプシリンダ152は、直線状のピストン案内筒部152Aの一端部にガス導入部152Bが連接されたL字状の筒部材に形成されている。このガス導入部152Bにはガス発生部材151が収納される。従って、ガス発生部材151により発生したガスは、ガス導入部152Bからピストン案内筒部152A内に導入される。また、ピストン案内筒部152Aのガス導入部152B側における長手方向中間部には、開口部159が形成され、ピニオンギヤ155のピニオンギヤ歯155Aの一部が配設される。
このパイプシリンダ152は、断面略U字形の保持プレート157の奥側に下側から嵌入されて、ハウジング11の側壁部13に当接して固定されるベースプレート部157Aと、奥側の断面半円弧状の背板部157Bと、外側のカバープレート部157Cとによって保持プレート157の奥側に弾性的に挟持される。そして、パイプシリンダ152は、保持プレート157の開放側から奥側のパイプシリンダ152側へ嵌入されて係止されたベースブロック158によって保持プレート157の奥側方向へ押圧された状態で、各ネジ15によって側壁部13の外側面に取り付け固定される。
また、ピストン案内筒部152Aの上端部には、プリテンショナユニット7を側壁部13に取り付けると共に、ピストン153の抜け止め及びパイプシリンダ152の抜け止め、回転止めとして機能するストッパーピン16を挿通可能な一対の貫通孔152Cが相対向して形成されている。
ピストン153は、スチール材等の金属部材で形成されて、ピストン案内筒部152Aの上端側から挿入可能な断面略長方形で、全体として長尺状の形状を有している。また、ピストン153のピニオンギヤ155側の側面には、ピニオンギヤ歯155Aに噛合するラック153Aが形成されている。また、ピストン153のガス発生部材151側の端面は、ピストン案内筒部152Aの断面形状に応じた円形端面153Bに形成されている。この円形端面153Bには、ゴム材等によって形成されたシールプレート161が取り付けられている。
このピストン153は、プリテンショナユニット7が作動する前、つまり、ガス発生部材151によりガスが発生しない通常時の待機状態の場合には、ラック153Aがピニオンギヤ歯155Aと非噛合状態となる位置まで、ピストン案内筒部152Aの奥側に挿入配置される。また、ピストン案内筒部152Aの奥側端縁部には、通常時にはピストン153のガス発生部材151側の端部外周面によって閉塞されるガス抜き孔152Dが、ベースブロック158の下端部に対向するように設けられている。
ピニオンギヤ155は、スチール材等で形成された略円筒状部材であり、その外周部にはラック153Aに噛合可能なピニオンギヤ歯155Aが形成されている。また、ピニオンギヤ歯155Aの軸心方向カバープレート部157C側の端部から外側方向に延出される円筒状の支持部155Bが形成されている。この支持部155Bは、ピニオンギヤ歯155Aの歯底円の直径を外径とすると共に、カバープレート部157Cの略中央部に形成された外側軸受孔162に回転可能に挿入されて、当該外側軸受孔162から僅かに外側へ突出する長さに形成されている。
また、ピニオンギヤ歯155Aの軸心方向ベースプレート部157A側の端部には、ピニオンギヤ歯155Aの歯先円の直径よりも若干大きい外径のフランジ状に形成されたフランジ部163が設けられている。更に、このフランジ部163から軸心方向巻取ドラムユニット6側へ、フランジ部163の外径よりも少し小さい外径で略円筒状に突出されるボス部155Dが設けられ、当該フランジ部163と所定高さ(例えば、ベースプレート部157Aの板厚にほぼ等しい高さである。)の段差が形成されている。
また、ボス部155Dの基端部には、フランジ部163とほぼ同じ外径で、当該フランジ部163に対してベースプレート部157Aの板厚にほぼ等しい隙間を形成するようにボス部155Dの外周面から半径方向外側へ全周に渡ってフランジ状に延出されたフランジ部164が設けられている。また、このボス部155Dのフランジ部164よりも軸心方向巻取ドラムユニット6側の外周面には、フランジ部164の外径よりも若干小さい外径を有する3個ずつのスプラインが、中心角120度間隔で軸心方向全幅に渡って形成されている。
図12、図13、図16及び図17に示すように、断面略U字形の保持プレート157の縦長平板状のベースプレート部157Aは、上下方向中央部が巻取ドラム65のフランジ部68をほぼ覆うように略円形に形成されると共に、その中央部にはピニオンギヤ155のピニオンギヤ歯155A及びフランジ部163を挿通可能な内側軸受孔165が形成されている。
図17に示すように、この内側軸受孔165の上側約半分の部分には、ピニオンギヤ155のボス部155Dの外径とほぼ等しい内径の略半円弧状に形成された半円弧状部165Aが設けられている。つまり、内側軸受孔165は、プリテンショナユニット7が作動した際に、ピストン153が移動する方向側に半円弧状部165Aが形成されている。また、この半円弧状部165Aの中心軸は、プリテンショナユニット7をハウジング11の側壁部13に取り付けた際に、巻取ドラムユニット6の回転軸上に位置する。
また、内側軸受孔165の半円弧状部165Aに連続する下側約半分の部分には、ピニオンギヤ155のピニオンギヤ歯155A及びフランジ部163の外径よりも大きい内径の略半円弧状に形成された拡大部165Bが設けられている。更に、拡大部165Bの背板部157B側端縁部には、後述のようにクラッチ機構156のパウルガイド168に立設されたピストン位置決めピン175が挿通される縦長四角形の切欠部165Cが形成されている。
図12、図13、図16及び図17に示すように、断面U字形の背板部157Bは、ベースプレート部157Aの側縁部から連続して形成されて、パイプシリンダ152のピストン案内筒部152Aの外径にほぼ等しい溝幅を有するように形成されている。また、ベースプレート部157Aの背板部157Bの下端部に連続する角部は、背板部157B側へ切り起こされて、ベースプレート部157Aと同一平面上に位置するように直角外側方向へ折り曲げられ、ネジ15が挿通される貫通孔が形成されている。
また、背板部157Bの長手方向中央部と下端部には、長手方向に対して直交するように外側方向へ窪む一対の補強溝176が、それぞれ形成されている。また、背板部157Bの上部の相対向する側面部には、パイプシリンダ152の各貫通孔152Cに対向する位置に、ストッパーピン16が挿通される一対の貫通孔177が形成されている。
また、カバープレート部157Cは、背板部157Bの巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側の側縁部から、ベースプレート部157Aに対して平行になるように連続して形成され、ベースプレート部157Aの上下端縁部とほぼ同じ幅の正面視縦長四角形の板状に形成されると共に、その中央部にはピニオンギヤ155の支持部155Bを挿通可能な外側軸受孔162が形成されている。
図16及び図17に示すように、この外側軸受孔162の上側約半分の部分には、ピニオンギヤ155の支持部155Bの外径とほぼ等しい内径の略半円弧状に形成された半円弧状部162Aが設けられている。つまり、外側軸受孔162は、プリテンショナユニット7が作動した際に、ピストン153が移動する方向側に半円弧状部162Aが形成されている。また、この半円弧状部162Aの中心軸は、内側軸受孔165の半円弧状部165Aの中心軸上に位置している。従って、半円弧状部162Aの中心軸は、プリテンショナユニット7をハウジング11の側壁部13に取り付けた際に、巻取ドラムユニット6の回転軸上に位置する。
また、外側軸受孔162の半円弧状部162Aに連続する下側約半分の部分には、ピニオンギヤ155の支持部155Bの外径にほぼ等しい直径を内径とする半円弧を所定距離(例えば、距離約3mmである。)だけ半径方向外側へ移動させた略半楕円形状に形成された拡大部162Bが設けられている。
また、カバープレート部157Cは、ベースプレート部157Aの内側軸受孔165に対向する中央部に、ピニオンギヤ155のピニオンギヤ歯155Aの外径よりも大きい半径の略半円形状の平板部178が形成されている。また、この平板部178の上下方向には、保持プレート157の背板部157B側に挿入されたピストン案内筒部152Aのピニオンギヤ155側の外周面を押さえるように、該ピニオンギヤ155の回転軸方向内側へ所定深さ窪む各凹部179A、179Bが形成されている。
各凹部179A、179Bは、平板部178の周縁部からそれぞれ上下方向両端縁部までの全幅に渡って、ピニオンギヤ155の回転軸方向内側へ所定深さ窪むと共に、底面部はベースプレート部157Aに対して平行な平板状に形成されている。
従って、図18及び図19に示すように、パイプシリンダ152は、ピストン案内筒部152Aを保持プレート157の各凹部179A、179Bと背板部157Bとの間に嵌挿することによって、ピストン案内筒部152Aの長手方向に対して直角方向の位置決めがされる。また、各凹部179A、179Bは、中央に外側軸受孔162が設けられる略半円形状の平板部178に沿って段差を設けて形成されることで、プリテンショナユニット7作動時等に外側軸受孔162の周辺が変形するのを抑制するための補強として機能する。
ここで、ピニオンギヤ155の保持プレート157への取り付けは、図12乃至図14、図18、図19に示すように、先ず、保持プレート157のベースプレート部157Aに形成された内側軸受孔165の拡大部165Bに、ピニオンギヤ歯155A及びフランジ部163を挿通する。そして、支持部155Bをカバープレート部157Cに形成された外側軸受孔162の拡大部162Bに嵌挿する。
その後、ピニオンギヤ155の支持部155Bの外周面を外側軸受孔162の半円弧状部162Aに当接させると共に、ピニオンギヤ155の各フランジ部163、164の間に内側軸受孔165の半円弧状部165Aを嵌入してボス部155Dの外周面に当接させる。これにより、ピニオンギヤ155は、回転軸方向に移動しないように位置決めされた状態で、保持プレート157のベースプレート部157Aとカバープレート部157Cとの間に回転可能に配置される。
図12及び図13に示すように、クラッチ機構156は、スチール材等で形成されたパウルベース166と、スチール材等で形成された3個のクラッチパウル167と、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されて、パウルベース166のベースプレート部157A側に当接される略円環状のパウルガイド168と、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されて、パウルベース166の巻取ドラム65側に当接されて、パウルガイド168と共に当該パウルベース166及び各クラッチパウル167を挟持する略円環状のベアリング169とから構成されている。
パウルベース166の中央部には、ピニオンギヤ155のボス部155Dが嵌め込まれるようにスプラインが圧入されるスプライン溝が中心角約120度間隔で3個ずつ形成された嵌合孔171が設けられている。そして、保持プレート157の外側軸受孔162と内側軸受孔165との間に挿通されたピニオンギヤ155の、内側軸受孔165から突出したボス部155Dが、パウルガイド168を挟んでパウルベース166の嵌合孔171に圧入されることによって、パウルベース166がピニオンギヤ155に対して相対回転不能に取り付けられる。つまり、パウルベース166とピニオンギヤ155とは一体回転するように構成されている。
また、ベアリング169の中央部には、巻取ドラム65のボス72の外径にほぼ等しい内径の貫通孔169Aが形成されている。更に、この貫通孔169Aと同一内径で、且つ、ピニオンギヤ155のボス部155Dの内径にほぼ等しい外径の円筒状の軸受部169Bが、貫通孔169Aのパウルベース166側の周縁部から連続して突出するように立設されている。
そして、ピニオンギヤ155のボス部155Dが、パウルベース166の嵌合孔171に圧入された状態で、ベアリング169の中央部に立設された円筒状の軸受部169Bが、円筒状に形成されたボス部155D内に嵌め込まれて、ポリアセタール等の合成樹脂材により形成されたベアリング169が取り付けられる。
また、図14に示すように、ベアリング169には、巻取ドラム65のプリテンショナユニット7側の端面部中央位置に立設されたボス72が回転可能に嵌入される。このパウルベース166には、各クラッチパウル167が収容姿勢で支持されている。収容姿勢は、各クラッチパウル167の全体をパウルベース166の外周縁部内に収めた姿勢である。
パウルガイド168は、略円環状の部材であり、パウルベース166及び各クラッチパウル167に対向する位置に配設されている。このパウルガイド168のベースプレート部157A側の側面には、細長い3個の位置決突起172が半径方向に沿って中心角約120度間隔で突設されている。そして、各位置決突起172がベースプレート部157Aの内側軸受孔165の周縁部に形成された各位置決め孔173に嵌入され、待機状態においては、パウルガイド168がベースプレート部157Aに回転不能な状態で取付固定される。
これにより、クラッチ機構156とピニオンギヤ155とが、ベースプレート部157Aに配設固定されると共に、ピニオンギヤ155のピニオンギヤ歯155Aが、図15に示す位置に常に位置決め固定される。また、パウルガイド168のベースプレート部157A側の側面に立設された断面略L字型の細長いピストン位置決めピン175が、内側軸受孔165の切欠部165Cに挿通されて、ピストン案内筒部152Aの開口部159内に位置するピストン153の上側端面、つまり、移動方向側の端面に当接される。
また、図14及び図15に示すように、パウルガイド168がベースプレート部157Aに回転不能な状態で取付固定された際には、ピニオンギヤ155の回転軸と巻取ドラムユニット6の回転軸とが一致する。また同時に、ピニオンギヤ155の支持部155Bの外周面が、カバープレート部157Cの外側軸受孔162の半円弧状部162Aに当接され、また、ボス部155Dの外周面がベースプレート部157Aの内側軸受孔165の半円弧状部165Aに当接されて、当該ピニオンギヤ155が回転可能に支持される。また、ピニオンギヤ歯155Aの一部が、ピストン案内筒部152Aの開口部159内に配設されている。
また、パウルガイド168のパウルベース166側の面には、各クラッチパウル167に対応して各姿勢変更用突起部168Aが突設されている。そして、プリテンショナユニット7の作動によってパウルベース166とパウルガイド168とが相対回転すると、各クラッチパウル167が姿勢変更用突起部168Aにそれぞれ当接して、収容姿勢から係止姿勢に姿勢変更されるようになっている。係止姿勢は、クラッチパウル167の先端部をパウルベース166及びパウルガイド168の外周縁部外方へ突出させた姿勢である。
また、各クラッチパウル167が係止姿勢に姿勢変更すると、巻取ドラム65に係合する。具体的には、各クラッチパウル167がパウルベース166及びパウルガイド168の外周縁部外方へ突出した場合には、巻取ドラム65のフランジ部68の内周面に形成された内歯ギヤ69に係合可能とされている。
そして、各クラッチパウル167が係止姿勢に姿勢変更すると、各クラッチパウル167の先端部が内歯ギヤ69に係合し、これにより、パウルベース166が巻取ドラム65を回転させるようになる。尚、クラッチパウル167と内歯ギヤ69との係合は、巻取ドラム65をウエビング巻取方向へ回転させる、一方向のみへの係合構造である。
また、一度係合すると各クラッチパウル167が互いに変形を伴って内歯ギヤ69に噛み込むので、係合後、巻取ドラム65がウエビング引出方向へ回転すると、ピニオンギヤ155を、プリテンショナユニット7が作動する際とは逆の方向に、クラッチ機構156を介して回転させて、ピストン153を作動方向とは逆方向に押し戻す。そして、ピストン153のラック153Aと、ピニオンギヤ155のピニオンギヤ歯155Aとの噛み合いが外れる位置までピストン153が押し戻されると、ピニオンギヤ155はピストン153から外れるので、巻取ドラム65はピストン153に対して自由回転できるようになる。
図12乃至図15に示すように、ベースブロック158は、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されている。また、ベースブロック158は、パイプシリンダ152のピストン案内筒部152Aのほぼ全長に渡って相対向する略直方体状に形成されて、保持プレート157のベースプレート部157Aとカバープレート部157Cとの間に嵌入されている。
また、ベースブロック158のピニオンギヤ155に対向する上下方向中央部分は、ピニオンギヤ歯155Aの回転軸方向の幅とほぼ同じ厚さに形成されると共に、ピニオンギヤ歯155Aの外径よりも少し大きい内径で、パイプシリンダ152に対して内側方向へ側面視略半円形状に窪むように形成されたギヤ収納部181が設けられている。また、ベースブロック158は、側面部がカバープレート部157Cの各凹部179A、179Bに相対向する部分の厚さは、各凹部179A、179Bとベースプレート部157Aとの距離にほぼ等しい厚さに形成されている。
また、ベースブロック158のパイプシリンダ152に相対向する側面部には、ギヤ収納部181の上下方向両端縁部から上下端縁部までのそれぞれの略中央部分に、全幅に渡って所定深さ窪む各凹部182、183が形成されている。また、各凹部182、183には、各凹部182、183の底面部のベースプレート部157A側の側縁部からパイプシリンダ152側へ、各側縁部に対して斜め前方向へ延出されて、各凹部182、183の底面部側へ弾性変形可能な弾性押圧片185が、それぞれに設けられている。
また、各凹部182、183には、各凹部182、183の底面部のベースプレート部157A側の側縁部からパイプシリンダ152側へ、ベースプレート部157Aに平行に延出されて、カバープレート部157C側へ弾性変形可能な弾性係止片186が、それぞれに設けられている。また、ベースブロック158のギヤ収納部181から下側の部分は、ベースプレート部157A側に開放された略箱形に形成され、パイプシリンダ152側の側面部の下端部には、横長四角形の貫通孔187が形成されて、更に、ギヤ収納部181のベースプレート部157A側の側縁部には所定幅の切欠部188が形成されている。
そして、ベースブロック158を保持プレート157の開放側から奥側のパイプシリンダ152側へ嵌入して配置した場合には、図19に示すように、各弾性係止片186はベースプレート部157Aに形成された各係止孔189に係合される。また、図15に示すように、各弾性押圧片185は、パイプシリンダ152のピストン案内筒部152Aに当接されて手前側に弾性変形されて、パイプシリンダ152を保持プレート157の奥側方向へ押圧した状態で、ベースプレート部157Aとカバープレート部157Cとに挟持される。
また、ピストン案内筒部152Aの下端部に形成されたガス抜き孔152Dとベースブロック158の下端部に形成された貫通孔187が相対向して配置され、ガス抜き孔152Dが貫通孔187を介して、ギヤ収納部181に形成された切欠部188とベースプレート部157Aとによって形成される開口部に連通される。そして、ベースブロック158は、保持プレート157に挟持された状態で、凹部182の上側と凹部183の下側に厚さ方向に沿って形成された各貫通孔191に挿通される各ネジ15によって側壁部13の外側面に取り付け固定される。
次に、車両衝突時等において、上記のように構成されたプリテンショナユニット7が作動してウエビング3を巻き取る動作について図14乃至図20に基づいて説明する。
図15に示すように、車両衝突時等において、プリテンショナユニット7のガス発生部材151が作動した場合には、発生したガスの圧力によりピストン153が、ピストン位置決めピン175を破断してピストン案内筒部152Aの先端側に向けて(矢印192方向である。)移動すると共に、ラック153Aと噛み合ったピニオンギヤ歯155Aを有するピニオンギヤ155が回転する(図15中、反時計方向へ回転する。)。
また、図15に示すように、ピニオンギヤ155には、ピニオンギヤ歯155Aとラック153Aとの噛み合いによって、ピストン153の移動方向(矢印192方向である。)に対して少しパイプシリンダ152のピストン案内筒部152Aから離れるように斜め上側方向(例えば、ピストン153の移動方向に対して斜め上側へ約20度傾いた矢印193方向である。)へ押圧される。
このため、図16乃至図20に示すように、ピニオンギヤ155の支持部155Bとボス部155Dも、少しパイプシリンダ152のピストン案内筒部152Aから離れるように斜め上側方向(例えば、ピストン153の移動方向に対して斜め上側へ約20度傾いた矢印193方向である。)へ押圧される。
そのため、ピニオンギヤ155は、支持部155Bとボス部155Dの外周面が、カバープレート部157Cの外側軸受孔162の半円弧状部162Aと、ベースプレート部157Aの内側軸受孔165の半円弧状部165Aにそれぞれ押圧された状態でスムーズに回転する。また、外側軸受孔162の半円弧状部162Aと内側軸受孔165の半円弧状部165Aの中心は、巻取ドラムユニット6の回転軸上に位置しているため、ピニオンギヤ155は、巻取ドラムユニット6の回転軸に対して同軸上で回転可能に支持される。
このように、ピニオンギヤ155の支持部155Bとボス部155Dとを、カバープレート部157Cの外側軸受孔162の半円弧状部162Aと、ベースプレート部157Aの内側軸受孔165の半円弧状部165Aとで回転可能に支持するにあたり、保持プレート157が、カバープレート部157Cとベースプレート部157Aとを、背板部157Bにより連続させた断面U字型に形成されているので、プリテンショナユニット7作動時における、ベースプレート部157Aに対するカバープレート部157Cのズレや、浮き上がりによる外側軸受孔162と内側軸受孔165との中心軸のズレが、簡易な構造で抑制され、ピニオンギヤ155がスムーズに回転する。
また、プリテンショナユニット7作動時に、ピニオンギヤ歯155Aとラック153Aとの噛み合いによって、ピストン153を介してパイプシリンダ152がピニオンギヤ155から離れる方向に押圧されても、パイプシリンダ152を、カバープレート部157Cとベースプレート部157Aとに連続して設けられた背板部157Bによって押さえることにより、簡易な構造でパイプシリンダ152の移動や変形が抑制され、ピニオンギヤ歯155Aとラック153Aとの噛み合いが維持される。
また、図14に示すように、ピニオンギヤ155は、各フランジ部163、164の間に嵌入されたベースプレート部157Aの内側軸受孔165の半円弧状部165Aが、ボス部155Dの外周面に当接された状態で回転駆動される。これにより、ピニオンギヤ155は、各フランジ部163、164を介して回転軸方向への移動が規制された状態で、ピストン153によって回転駆動される。
また、車両衝突時等において、車両加速度センサ28の慣性質量体52が、センサーホルダ51の底面部を移動してセンサレバー53を鉛直方向上側へ回動させるため、上記の通り、センサレバー53のロック爪53Aが、パイロットレバー112を鉛直方向上側へ回動させる。そして、パイロットレバー112の係合爪部112Aが、ロッキングギヤ107の外周部に形成されたロッキングギヤ歯107Aに当接される。
尚、パイロットレバー112の係合爪部112Aとロッキングギヤ歯107Aとの係合は、巻取ドラム65をウエビング引出方向へ回転させない方向に作動する、一方向のみへの係合構造である。従って、プリテンショナユニット7が作動している際に、パイロットレバー112の係合爪部112Aがロッキングギヤ歯107Aに当接しても、巻取ドラム65は、ウエビング巻取方向へスムーズに回転する。
そして、図15に示すように、ピニオンギヤ155が回転すると、当該ピニオンギヤ155と一緒にパウルベース166が回転する。この際、パウルガイド168の各位置決突起172が破断されるまで、当該パウルガイド168に対してパウルベース166が相対回転することになる。このため、パウルガイド168に形成された各姿勢変更用突起部168Aがクラッチパウル167に当接して、各クラッチパウル167が係止姿勢に変更される。
これにより、各クラッチパウル167の先端部が、巻取ドラム65の内歯ギヤ69に係合して、ピストン153がピストン案内筒部152Aの先端側へ移動しようとする力が、ピニオンギヤ155、パウルベース166、各クラッチパウル167及び内歯ギヤ69を介して巻取ドラム65に伝達されて、巻取ドラム65がウエビング巻取方向へ回転駆動され、ウエビング3が巻取ドラム65に巻き取られる。
次に、車両衝突時等において、プリテンショナユニット7の作動後、引き続いて、ウエビング3が引き出される際の動作について図14乃至図20に基づいて説明する。
図15に示すように、車両衝突時等において、プリテンショナユニット7の作動後、引き続いて、ウエビング3が引き出され(図15中、矢印195方向である。)、巻取ドラム65がウエビング引出方向へ回転された場合には、パイロットレバー112の係合爪部112Aが、ロッキングギヤ107の外周部に形成されたロッキングギヤ歯107Aに係合して、クラッチ111がウエビング引出方向へ回動される。このため、当該クラッチ111のガイド孔142に案内されたパウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合される。
従って、車両衝突時等において、プリテンショナユニット7の作動後、引き続いて、ウエビング3が引き出された場合には、パウル23とラチェットギヤ部35Aとの係合によって、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ35は、ウエビング3の引き出し方向へ回転するのが抑止される。尚、パウル23とラチェットギヤ部35Aとの係合は、巻取ドラム65をウエビング引出方向へ回転させる、一方向のみへの係合構造である。
また、車両衝突時等において、プリテンショナユニット7の作動後、引き続いて、ウエビング3が引き出され(図15中、ウエビング引出方向は矢印195方向である。)、巻取ドラム65がウエビング引出方向へ回転された場合には、図15に示すように、ピニオンギヤ155は、ベアリング169を介してウエビング3の引出方向に対して平行な上側方向(図15中、矢印196方向である。)へ押圧される。
このため、図16乃至図20に示すように、ピニオンギヤ155の支持部155Bとボス部155Dも、上側方向(矢印196方向である。)へ押圧される。そのため、ピニオンギヤ155の支持部155Bとボス部155Dの外周面は、カバープレート部157Cの外側軸受孔162の半円弧状部162Aと、ベースプレート部157Aの内側軸受孔165の半円弧状部165Aにそれぞれ押圧される。
[エネルギー吸収]
続いて、車両衝突時等でプリテンショナユニット7の作動後、パウル23とラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aとの係合が未だ維持されている状態で、乗員が車両に対して相対的に前側へ移動した場合には、ウエビング3に大きな引き出し力が作用する。そして、ウエビング3に作用する引出力が予め設定された所定値を超えて引き出された場合には、巻取ドラム65にウエビング引出方向への回転トルクが作用する。
そして、ラチェットギヤ35はパウル23によって回転が阻止されているため、ラチェットギヤ35のスプライン溝82Aに圧入されたトーションバー66のスプライン66Bは、ウエビング引出方向への回転が阻止される。そのため、巻取ドラム65に作用するウエビング引出方向への回転トルクによって、トーションバー66の巻取ドラム65の軸孔65Aの奥側に圧入固定されたスプライン66A側が回転され、トーションバー66の軸部66Cの捻れ変形が開始される。このトーションバー66の軸部66Cの捻れ変形に伴って巻取ドラム65がウエビング引出方向に回転し、「第1のエネルギー吸収機構」としてのトーションバー66の捻れ変形による衝撃エネルギーの吸収がなされる。
また同時に、巻取ドラム65が回転された場合には、パウル23とラチェットギヤ35とは係合されているため、このラチェットギヤ35と巻取ドラム65との相互間においても相対回転が生じる。それにより、巻取ドラム65の回転に伴ってワイヤ67とラチェットギヤ35との相互間においても相対回転が生じ、巻取ドラム65の保持側屈曲路77に屈曲部67Aが保持されたワイヤ67が、ラチェットギヤ35のフランジ部85の内周部と凸部84の外周部とによって形成された変形付与屈曲路を摺動案内されて、塑性変形されながら引き出される。これにより、「第2のエネルギー吸収機構」としてのワイヤ67の引き出し抵抗による衝撃エネルギーの吸収がなされる。
また、トーションバー66の軸部66Cの捻れ変形に伴って巻取ドラム65がウエビング引出方向に回転した場合には、上記の通り、クラッチ機構156の各クラッチパウル167が互いに変形を伴って内歯ギヤ69に噛み込んで係合しているため、巻取ドラム65がウエビング引出方向へ回転すると、ピニオンギヤ155もクラッチ機構156を介してウエビング引出方向(図15中、反時計方向である。)へ回転される。
また、図16乃至図20に示すように、ピニオンギヤ155は上側方向(矢印196方向である。)へ押圧されているため、支持部155Bとボス部155Dの外周面が、カバープレート部157Cの外側軸受孔162の半円弧状部162Aと、ベースプレート部157Aの内側軸受孔165の半円弧状部165Aにそれぞれ押圧された状態でスムーズに回転する。また、外側軸受孔162の半円弧状部162Aと内側軸受孔165の半円弧状部165Aの中心は、巻取ドラムユニット6の回転軸上に位置しているため、ピニオンギヤ155は、巻取ドラムユニット6の回転軸に対して同軸上で回転可能に支持される。
また、図14に示すように、ピニオンギヤ155は、各フランジ部163、164の間に嵌入されたベースプレート部157Aの内側軸受孔165の半円弧状部165Aが、ボス部155Dの外周面に当接された状態で回転駆動される。これにより、ピニオンギヤ155は、各フランジ部163、164を介して回転軸方向への移動が規制された状態で、クラッチ機構156を介して回転駆動される。
以上詳細に説明した通り、第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1では、ピニオンギヤ155の、内側軸受孔165から突出したボス部155Dを、パウルガイド168及び各クラッチパウル167を挟んだ状態でパウルベース166の嵌合孔171に圧入すると共に、パウルガイド168の各位置決突起172をベースプレート部157Aの各位置決め孔173に嵌入することによって、ピニオンギヤ155のボス部155Dが半径方向に位置規制された状態で固定される。また、ピニオンギヤ155の各フランジ部163、164の間に内側軸受孔165の半円弧状部165Aが嵌入される。
これにより、ピニオンギヤ155の各フランジ部163、164の間に嵌入された内側軸受孔165の半円弧状部165Aによって、当該ピニオンギヤ155の回転軸方向への位置ずれ抑止することができ、ピニオンギヤ155の回転軸方向への位置ずれを簡易な構成で抑止することができる。
また、ピニオンギヤ155は、内側軸受孔165から突出するボス部155Dが、クラッチ機構156のパウルベース166及びパウルガイド168を介して、半径方向への移動が規制されると共に、巻取ドラム65と同軸に位置規制されるため、簡易な構成で当該ピニオンギヤ155の半径方向外側への位置ずれを抑止しつつ、巻取ドラム65と同軸に配置することができ、部品点数の削減化を図ることができる。
また、プリテンショナユニット7が作動して、ピニオンギヤ155がピストン153の移動によって回転駆動された際に、支持部155Bを外側軸受孔162の半円弧状部162Aに当接させると共に、ボス部155Dを内側軸受孔165の半円弧状部165Aの内周面に確実に当接させて、巻取ドラム65の回転軸と同軸にスムーズに回転させることができる。また、プリテンショナユニット7の作動後、引き続いて、ウエビング3が引き出された際にも、支持部155Bを外側軸受孔162の半円弧状部162Aに当接させると共に、ボス部155Dを内側軸受孔165の半円弧状部165Aの内周面に確実に当接させて、巻取ドラム65の回転軸と同軸にスムーズに回転させることができる。
また、ピニオンギヤ155の各フランジ部163、164の回転軸方向の間隔は、内側軸受孔165が形成されたベースプレート部157Aの板厚にほぼ等しい隙間に形成されているため、ピニオンギヤ155の回転軸方向への位置ずれ及びガタツキを確実に抑止することができる。また、ピニオンギヤ155の各フランジ部163、164は、ピニオンギヤ155に鍛造等の一体成形によって設けられるため、別部品として設ける必要がなく、部品点数の削減化及び組立工数の削減化を図ることができる。
また、ピニオンギヤ155の各フランジ部163、164は、フランジ状に形成されているため、各フランジ部163、164の薄型化を容易に行うことができ、ピニオンギヤ155の軸方向寸法を小型化できる共に、構造の簡易化を図ることができる。また、内側軸受孔165は、半円弧状部165Aと拡大部165Bとによって形成されるため、内側軸受孔165の形状の簡素化を図ることができると共に、内側軸受孔165の拡大部165Bの部分を広くすることが可能となる。
また、ピニオンギヤ155のピニオンギヤ歯155A及びフランジ部163を内側軸受孔165の拡大部165Bに挿通して、支持部155Bをカバープレート部157Cの外側軸受孔162の拡大部162Bに嵌挿した後、各フランジ部163、164の間に内側軸受孔165の半円弧状部165Aを嵌入する。そして、支持部155Bを外側軸受孔162の半円弧状部162Aに当接させると共に、ボス部155Dを内側軸受孔165の半円弧状部165Aに当接させる。
続いて、この状態で、内側軸受孔165から突出するボス部155Dをパウルベース166の嵌合孔171に圧入固定することによって、ピニオンギヤ155がクラッチ機構156を介して保持プレート157に回転可能に配置される。これにより、作業者は、ピニオンギヤ155を容易に保持プレート157に装着することができ、作業効率の向上を図ることができる。
また、ピニオンギヤ155に作用する軸方向及び半径方向の荷重を外側軸受孔162の半円弧状部162Aと内側軸受孔165の半円弧状部165Aで支持することが可能となり、保持プレート157の薄型化、軽量化を図ることができる。また、ピニオンギヤ155のフランジ部163は、ピニオンギヤ歯155Aの巻取ドラム65側の端縁部にフランジ状に形成されているため、ピニオンギヤ歯155Aとピストン153のラック153Aとの噛み合い時におけるピニオンギヤ歯155Aのラック153Aに対する軸方向のズレを簡易な構造で抑制することができると共に、ピニオンギヤ歯155Aの機械的強度を容易に確保することができる。
また、クラッチ機構156とピニオンギヤ155とが、ベースプレート部157Aに配設固定された際には、パウルガイド168のベースプレート部157A側の側面に立設された断面略L字型の細長いピストン位置決めピン175が、内側軸受孔165の切欠部165Cに挿通されて、ピストン153の上側端面、つまり、移動方向側の端面に当接される。
これにより、プリテンショナユニット7の非作動時において、パイプシリンダ152内に収容されたピストン153の当該パイプシリンダ152の長手方向への移動を確実に抑止でき、ピストン153のラック153Aとピニオンギヤ155のピニオンギヤ歯155Aとの接触を防止することができる。また、プリテンショナユニット7が作動して、ピストン153がガスの圧力で押圧駆動された場合には、ピストン位置決めピン175はピストン153によって破断されるため、ピストン153を介してピニオンギヤ155を効率よく回転駆動することができる。
次に、第2実施形態に係るシートベルト用リトラクタ201について図21乃至図30に基づいて説明する。尚、以下の説明において、上記図1乃至図20に示す第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の構成等と同一符号は、第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
図21はシートベルト用リトラクタ201の側面図である。図22及び図23は保持プレート205の側面図である。図24は図23の内側軸受孔208及び外側軸受孔209を拡大表示した要部拡大図である。図25及び図26はプリテンショナユニット202の作動時におけるピニオンギヤ155の支持状態を説明する側面図である。図27は図26のピニオンギヤ155のボス部155Dと内側軸受孔208の半円弧状部208Aとの当接状態を示すフランジ部164を切り欠いた一部切り欠き図である。
図28及び図29はプリテンショナユニット202が作動した後、ウエビング3の引き出し時におけるピニオンギヤ155の支持状態を説明する側面図である。図30は図29のピニオンギヤ155のボス部155Dと内側軸受孔208の半円弧状部208Bとの当接状態を示すフランジ部164を切り欠いた一部切り欠き図である。
この第2実施形態に係るシートベルト用リトラクタ201の概略構成は、第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1とほぼ同じ構成である。
但し、第2実施形態に係るシートベルト用リトラクタ201は、図21に示すように、プリテンショナユニット7に替えて、プリテンショナユニット7を巻取ドラムユニット6の回転軸回り、つまり、ピニオンギヤ155の軸心回りに正面視反時計方向へ約165度回転した位置に、プリテンショナユニット202が取付固定されている点で異なっている。このため、図21に示すように、ハウジング11は、側壁部13に替えて、側壁部203が設けられている点でも異なっている。
プリテンショナユニット202及びハウジング11の概略構成について図21乃至図27に基づいて説明する。
図21に示すように、プリテンショナユニット202は、プリテンショナユニット7とほぼ同じ構成で、パイプシリンダ152、ピストン153、シールプレート161、クラッチ機構156、ベースブロック158、及び、保持プレート157に替えて保持プレート205から構成されている。
また、ハウジング11の側壁部203は、側壁部13とほぼ同じ構成であるが、プリテンショナユニット7をピニオンギヤ155の軸心回りに正面視反時計方向へ約165度回転した位置に、プリテンショナユニット202が取付固定されている。このため、ウエビング引出方向側の端縁部(図21中、上側端縁部である。)に、ウエビング引出方向へ正面視略三角形状に延出された延出部203Aが形成されている。
そして、図21に示すように、プリテンショナユニット202は、ピストン153の移動方向が、ウエビング引き出し方向(矢印206方向である。)に対して、斜め下側方向となるように、パイプシリンダ152の先端側が側壁部203の左下角部にストッパーピン16によって取り付けられている。また、プリテンショナユニット202は、側壁部203の上側端縁部に形成された延出部203Aと下端部に各ネジ15によってネジ止めされている。
図22乃至図24に示すように、断面U字形の保持プレート205は、断面U字形の保持プレート157とほぼ同じ構成であるが、ベースプレート部157Aの中央部には、内側軸受孔165に替えて、ピニオンギヤ155のピニオンギヤ歯155A及びフランジ部163を挿通可能な内側軸受孔208が形成されている。また、カバープレート部157Cの中央部には、外側軸受孔162に替えて、ピニオンギヤ155の支持部155Bを挿通可能な外側軸受孔209が設けられている。
図23及び図24に示すように、内側軸受孔208の背板部157B側の約半分の部分には、ピニオンギヤ155のピニオンギヤ歯155A及びフランジ部163の外径よりも大きい内径の背板部157B側に突出する略半円弧状に形成された拡大部208Cが設けられている。また、クラッチ機構156のパウルガイド168の各位置決突起172をベースプレート部157Aの各位置決め孔173に嵌入して位置決め固定した場合には、パウルガイド168に立設されたピストン位置決めピン175が、拡大部208Cの背板部157B側端縁部に挿通される(図26参照)。
また、内側軸受孔208の拡大部208Cに対して反対側の部分には、拡大部208Cのピストン移動方向側(図23中、矢印211方向側である。)の端部に連続して、1/4円弧よりも少し大きい略半円弧状に形成された半円弧状部208Aが設けられている。この半円弧状部208Aは、ピニオンギヤ155のボス部155Dの外径とほぼ等しい内径に形成されると共に、プリテンショナユニット202をハウジング11の側壁部203に取り付けた際に、内周面の中心軸212が巻取ドラムユニット6の回転軸上に位置するように形成されている。
また、内側軸受孔208の拡大部208Cに対して反対側の部分のウエビング引出方向側(図23中、矢印206方向側である。)には、拡大部208Cのウエビング引出方向側の端部と半円弧状部208Aのウエビング引出方向側の端部とを接続するように、1/4円弧よりも少し大きい略半円弧状に形成された半円弧状部208Bが設けられている。
この半円弧状部208Bは、ピニオンギヤ155のボス部155Dの外径とほぼ等しい内径に形成されると共に、内周面の中心軸213が半円弧状部208Aの中心軸212からウエビング引出方向へ距離L1(例えば、距離L1は約0.5mmである。)だけ離間するように形成されている。これにより、各半円弧状部208A、208Bの拡大部208C側の端部間の距離を、ピニオンギヤ155のボス部155Dの外径よりも大きくなるように設定することができる。
また、半円弧状部208Aと半円弧状部208Bとは、中心軸212と中心軸213とが離間する分だけ半円弧状部が離れている部分を、接線となる直線により滑らかに接続されている。これにより、ボス部155Dが内側軸受孔208の内周部分に押し付けられながら、半円弧状部208Aと半円弧状部208Bを移動する際に、スムーズに移動することができる。
また、半円弧状部208Aと拡大部208C、及び半円弧状部208Bと拡大部208Cとは、接続部分がほぼエッジ状になるようにできるだけ小さい円弧(例えば、半径1.2mmの円弧である。)によって接続されている。これにより、各半円弧状部208A、208Bの内周部の周方向長さをできるだけ長くすることができる。
また、図22乃至図24に示すように、外側軸受孔209の背板部157B側の約半分の部分には、ピニオンギヤ155の支持部155Bの外径とほぼ等しい内径の略半円弧状に形成された拡大部209Cが設けられている。また、外側軸受孔209の拡大部209Cに対して反対側の部分には、拡大部209Cのピストン移動方向側(図22中、矢印211方向側である。)の端部に連続して、1/4円弧よりも少し大きい略半円弧状に形成された半円弧状部209Aが設けられている。
この半円弧状部209Aは、ピニオンギヤ155の支持部155Bの外径とほぼ等しい内径に形成されると共に、プリテンショナユニット202をハウジング11の側壁部203に取り付けた際に、内周面の中心軸212が巻取ドラムユニット6の回転軸上に位置するように形成されている。従って、外側軸受孔209の半円弧状部209Aと内側軸受孔208の半円弧状部208Aは、中心軸212に対して同軸上に位置している。
また、外側軸受孔209の拡大部209Cに対して反対側の部分のウエビング引出方向側(図22中、矢印206方向側である。)には、拡大部209Cのウエビング引出方向側の端部と半円弧状部209Aのウエビング引出方向側の端部とを接続するように、1/4円弧よりも少し大きい略半円弧状に形成された半円弧状部209Bが設けられている。
この半円弧状部209Bは、ピニオンギヤ155の支持部155Bの外径とほぼ等しい内径に形成されると共に、内周面の中心軸213が半円弧状部209Aの中心軸212からウエビング引出方向へ距離L1(例えば、距離L1は約0.5mmである。)だけ離間するように形成されている。従って、外側軸受孔209の半円弧状部209Bと内側軸受孔208の半円弧状部208Bは、中心軸213に対して同軸上に位置している。また、各半円弧状部209A、209Bの拡大部209C側の端部間の距離を、ピニオンギヤ155の支持部155Bの外径よりも大きくなるように設定することができる。
また、半円弧状部209Aと半円弧状部209Bとは、中心軸212と中心軸213とが離間する分だけ半円弧状部が離れている部分を、接線となる直線によりスムーズに接続されている。これにより、支持部155Bが外側軸受孔209の内周部分に押し付けられながら、半円弧状部208Aと半円弧状部208Bとを移動する際に、スムーズに移動することができる。
また、半円弧状部209Aと拡大部209C、及び半円弧状部209Bと拡大部209Cとは、接続部分がほぼエッジ状になるようにできるだけ小さい円弧(例えば、半径1.2mmの円弧である。)によって接続されている。これにより、各半円弧状部209A、209Bの内周部の周方向長さをできるだけ長くすることができる。
ここで、ピニオンギヤ155の保持プレート205への取り付けは、図25乃至図27に示すように、先ず、保持プレート205のベースプレート部157Aに形成された内側軸受孔208の拡大部208Cに、ピニオンギヤ歯155A及びフランジ部163を挿通する。そして、支持部155Bをカバープレート部157Cに形成された外側軸受孔209の拡大部209Cに嵌挿する。
その後、ピニオンギヤ155の支持部155Bの外周面を外側軸受孔209の半円弧状部209Aに当接させると共に、ピニオンギヤ155の各フランジ部163、164の間に内側軸受孔208の半円弧状部208Aを嵌入してボス部155Dの外周面に当接させる。これにより、ピニオンギヤ155は、回転軸方向に移動しないように位置決めされた状態で、保持プレート205のベースプレート部157Aとカバープレート部157Cとの間に回転可能に配置される。
そして、ピニオンギヤ155の内側軸受孔208から突出したボス部155Dが、パウルガイド168を挟んでパウルベース166の嵌合孔171に圧入されることによって、パウルベース166がピニオンギヤ155に対して相対回転不能に取り付けられる。また、パウルガイド168の各位置決突起172がベースプレート部157Aの内側軸受孔208の周縁部に形成された各位置決め孔173に嵌入され、待機状態においては、パウルガイド168がベースプレート部157Aに回転不能な状態で取付固定される。
続いて、パウルベース166に各クラッチパウル167が収容姿勢で支持された状態で、ベアリング169の中央部に立設された円筒状の軸受部169Bが、円筒状に形成されたボス部155D内に嵌め込まれて、ベアリング169が取り付けられる。また、パウルガイド168のベースプレート部157A側の側面に立設された断面略L字型の細長いピストン位置決めピン175が、内側軸受孔208の拡大部208Cに挿通されて、ピストン案内筒部152Aの開口部159内に位置するピストン153の上側端面、つまり、移動方向側の端面に当接される。
従って、パウルガイド168がベースプレート部157Aに回転不能な状態で取付固定された際には、ピニオンギヤ155の回転軸と巻取ドラムユニット6の回転軸とが一致する。また同時に、ピニオンギヤ155の支持部155Bの外周面が、カバープレート部157Cの外側軸受孔209の半円弧状部209Aに当接され、また、ボス部155Dの外周面がベースプレート部157Aの内側軸受孔208の半円弧状部208Aに当接され、当該ピニオンギヤ155が回転可能に支持される。また、ピニオンギヤ歯155Aの一部が、ピストン案内筒部152Aの開口部159内に配設されている。
次に、車両衝突時等において、上記のように構成されたプリテンショナユニット202が作動してウエビング3を巻き取る際のピニオンギヤ155の動作について図22乃至図27に基づいて説明する。
図22乃至図27に示すように、車両衝突時等において、プリテンショナユニット202のガス発生部材151が作動した場合には、発生したガスの圧力によりピストン153が、ピストン位置決めピン175を破断してピストン案内筒部152Aの先端側に向けて(矢印211方向である。)移動すると共に、ラック153Aと噛み合ったピニオンギヤ歯155Aを有するピニオンギヤ155が回転する(図25中、反時計方向へ回転する。)。
また、ピニオンギヤ155には、ピニオンギヤ歯155Aとラック153Aとの噛み合いによって、ピストン153の移動方向(矢印211方向である。)に対して少しパイプシリンダ152のピストン案内筒部152Aから離れるように斜め下側方向(例えば、ピストン153の移動方向に対して斜め下側へ約20度傾いた矢印215方向である。)へ押圧される。
このため、図25乃至図27に示すように、ピニオンギヤ155の支持部155Bとボス部155Dも、少しパイプシリンダ152のピストン案内筒部152Aから離れるように斜め下側方向(例えば、ピストン153の移動方向に対して斜め下側へ約20度傾いた矢印215方向である。)へ押圧される。
そのため、ピニオンギヤ155は、支持部155Bとボス部155Dの外周面が、カバープレート部157Cの外側軸受孔209の半円弧状部209Aと、ベースプレート部157Aの内側軸受孔208の半円弧状部208Aにそれぞれ押圧された状態でスムーズに回転する。また、外側軸受孔209の半円弧状部209Aと内側軸受孔208の半円弧状部208Aの中心軸212は、巻取ドラムユニット6の回転軸上に位置しているため、ピニオンギヤ155は、巻取ドラムユニット6の回転軸に対して同軸上で回転可能に支持される。
また、ピニオンギヤ155は、各フランジ部163、164の間に嵌入されたベースプレート部157Aの内側軸受孔208の半円弧状部208Aが、ボス部155Dの外周面に当接された状態で回転駆動される。これにより、ピニオンギヤ155は、各フランジ部163、164を介して回転軸方向への移動が規制された状態で、巻取ドラムユニット6の回転軸に対して同軸上でピストン153によって回転駆動される。
次に、車両衝突時等において、プリテンショナユニット202の作動後、引き続いて、ウエビング3が引き出される際のピニオンギヤ155の動作について図22乃至図24と図28乃至図30に基づいて説明する。
車両衝突時等において、プリテンショナユニット202の作動後、引き続いて、ウエビング3が引き出された場合には、パウル23とラチェットギヤ部35Aとの係合によって、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ35は、ウエビング3の引き出し方向へ回転するのが抑止される。
また、図22乃至図24と図28乃至図30に示すように、車両衝突時等において、プリテンショナユニット202の作動後、引き続いて、ウエビング3が引き出され(図21、図28中、ウエビング引出方向は矢印206方向である。)、巻取ドラム65がウエビング引出方向へ回転された場合には、ピニオンギヤ155は、ベアリング169を介してウエビング3の引出方向に対して平行な上側方向(図22乃至図24と図28乃至図30中、矢印216方向である。)へ押圧される。
このため、ピニオンギヤ155の支持部155Bとボス部155Dも、上側方向(矢印216方向である。)へ押圧される。そのため、ピニオンギヤ155の支持部155Bとボス部155Dの外周面は、カバープレート部157Cの外側軸受孔209の半円弧状部209Bと、ベースプレート部157Aの内側軸受孔208の半円弧状部208Bにそれぞれ押圧される。
また、巻取ドラム65に作用するウエビング引出方向への回転トルクによるトーションバー66の軸部66Cの捻れ変形に伴って、巻取ドラム65がウエビング引出方向に回転した場合には、クラッチ機構156の各クラッチパウル167が互いに変形を伴って内歯ギヤ69に噛み込んで係合しているため、巻取ドラム65がウエビング引出方向へ回転すると、ピニオンギヤ155もクラッチ機構156を介してウエビング引出方向(図29中、反時計方向である。)へ回転される。
また、図28乃至図30に示すように、ピニオンギヤ155は上側方向(矢印216方向である。)へ押圧されているため、支持部155Bとボス部155Dの外周面が、カバープレート部157Cの外側軸受孔209の半円弧状部209Bと、ベースプレート部157Aの内側軸受孔208の半円弧状部208Bにそれぞれ押圧された状態でスムーズに回転する。また、外側軸受孔209の半円弧状部209Bと内側軸受孔208の半円弧状部208Bの中心軸213と、巻取ドラムユニット6の回転軸とが離間する距離L1は小さいため(例えば、距離L1は約0.5mmである。)、ピニオンギヤ155は、巻取ドラムユニット6の回転軸に対してほぼ同軸上で回転可能に支持される。
また、図29及び図30に示すように、ピニオンギヤ155は、各フランジ部163、164の間に嵌入されたベースプレート部157Aの内側軸受孔208の半円弧状部208Bが、ボス部155Dの外周面に当接された状態で回転駆動される。これにより、ピニオンギヤ155は、各フランジ部163、164を介して回転軸方向への移動が規制された状態で、巻取ドラムユニット6の回転軸に対してほぼ同軸上でクラッチ機構156を介して回転駆動される。
以上詳細に説明した通り、第2実施形態に係るシートベルト用リトラクタ201では、ピニオンギヤ155の内側軸受孔208から突出したボス部155Dを、パウルガイド168及び各クラッチパウル167を挟んだ状態でパウルベース166の嵌合孔171に圧入すると共に、パウルガイド168の各位置決突起172をベースプレート部157Aの各位置決め孔173に嵌入することによって、ピニオンギヤ155のボス部155Dが半径方向に位置規制された状態で固定される。また、ピニオンギヤ155の各フランジ部163、164の間に内側軸受孔208の各半円弧状部208A、208Bが嵌入される。
これにより、ピニオンギヤ155の各フランジ部163、164の間に嵌入された内側軸受孔208の各半円弧状部208A、208Bによって、当該ピニオンギヤ155の回転軸方向への位置ずれ抑止することができ、ピニオンギヤ155の回転軸方向への位置ずれを簡易な構成で抑止することができる。
また、ピニオンギヤ155は、内側軸受孔208から突出するボス部155Dが、クラッチ機構156のパウルベース166及びパウルガイド168を介して、半径方向への移動が規制されると共に、巻取ドラム65と同軸に位置規制されるため、簡易な構成で当該ピニオンギヤ155の半径方向外側への位置ずれを抑止しつつ、巻取ドラム65と同軸に配置することができ、部品点数の削減化を図ることができる。
また、プリテンショナユニット202が作動して、ピニオンギヤ155がピストン153の移動によって回転駆動された際に、支持部155Bを外側軸受孔209の半円弧状部209Aに当接させると共に、ボス部155Dを内側軸受孔208の半円弧状部208Aの内周面に確実に当接させて、巻取ドラム65の回転軸と同軸にスムーズに回転させることができる。
また、プリテンショナユニット202の作動後、引き続いて、ウエビング3が引き出された際にも、支持部155Bを外側軸受孔209の半円弧状部209Aに連続してウエビング引出方向側に形成された半円弧状部209Bに当接させると共に、ボス部155Dを内側軸受孔208の半円弧状部208Aに連続してウエビング引出方向側に形成された半円弧状部208Bの内周面に確実に当接させて、巻取ドラム65の回転軸とほぼ同軸にスムーズに回転させることができる。
また、ピニオンギヤ155の各フランジ部163、164の回転軸方向の間隔は、内側軸受孔208が形成されたベースプレート部157Aの板厚にほぼ等しい隙間に形成されているため、ピニオンギヤ155の回転軸方向への位置ずれ及びガタツキを確実に抑止することができる。また、ピニオンギヤ155の各フランジ部163、164は、ピニオンギヤ155に鍛造等の一体成形によって設けられるため、別部品として設ける必要がなく、部品点数の削減化及び組立工数の削減化を図ることができる。
また、ピニオンギヤ155の各フランジ部163、164は、フランジ状に形成されているため、各フランジ部163、164の薄型化を容易に行うことができ、ピニオンギヤ155の軸方向寸法を小型化できる共に、構造の簡易化を図ることができる。また、内側軸受孔208は、連続して形成された各半円弧状部208A、208Bと背板部157B側へ突出する略半円弧状の拡大部208Cとによって形成されるため、内側軸受孔208の形状の簡素化を図ることができると共に、内側軸受孔208の拡大部208Cの部分を容易に広くすることが可能となる。
また、ピニオンギヤ155のピニオンギヤ歯155A及びフランジ部163を内側軸受孔208の拡大部208Cに挿通して、支持部155Bをカバープレート部157Cの外側軸受孔209の拡大部209Cに嵌挿した後、各フランジ部163、164の間に内側軸受孔208の半円弧状部208Aを嵌入する。そして、支持部155Bを外側軸受孔209の半円弧状部209Aに当接させると共に、ボス部155Dを内側軸受孔208の半円弧状部208Aに当接させる。
続いて、この状態で、内側軸受孔208から突出するボス部155Dをパウルベース166の嵌合孔171に圧入固定することによって、ピニオンギヤ155がクラッチ機構156を介して保持プレート205に回転可能に配置される。これにより、作業者は、ピニオンギヤ155を容易に保持プレート205に装着することができ、作業効率の向上を図ることができる。
また、ピニオンギヤ155に作用する軸方向及び半径方向の荷重を内側軸受孔208の各半円弧状部208A、208Bと外側軸受孔209の各半円弧状部209A、209Bで支持することが可能となり、保持プレート205の薄型化、軽量化を図ることができる。また、ピニオンギヤ155のフランジ部163は、ピニオンギヤ歯155Aの巻取ドラム65側の端縁部にフランジ状に形成されているため、ピニオンギヤ歯155Aとピストン153のラック153Aとの噛み合い時におけるピニオンギヤ歯155Aのラック153Aに対する軸方向のズレを簡易な構造で抑制することができると共に、ピニオンギヤ歯155Aの機械的強度を容易に確保することができる。
また、クラッチ機構156とピニオンギヤ155とが、ベースプレート部157Aに配設固定された際には、パウルガイド168のベースプレート部157A側の側面に立設された断面略L字型の細長いピストン位置決めピン175が、内側軸受孔208の拡大部208Cに挿通されて、ピストン153の上側端面、つまり、移動方向側の端面に当接される。
これにより、プリテンショナユニット7の非作動時において、パイプシリンダ152内に収容されたピストン153の当該パイプシリンダ152の長手方向への移動を確実に抑止でき、ピストン153のラック153Aとピニオンギヤ155のピニオンギヤ歯155Aとの接触を防止することができる。また、プリテンショナユニット7が作動して、ピストン153がガスの圧力で押圧駆動された場合には、ピストン位置決めピン175はピストン153によって破断されるため、ピストン153を介してピニオンギヤ155を効率よく回転駆動することができる。
尚、本発明は前記第1実施形態及び第2実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
[他の第1実施形態]
(A)例えば、第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1において、クラッチ機構156を介してピニオンギヤ155を保持プレート157に取付固定した際に、ピニオンギヤ155の支持部155Bの外周面と外側軸受孔162の半円弧状部162Aの内周面との間、及び、ボス部155Dの外周面と内側軸受孔165の半円弧状部165Aの内周面との間に、それぞれ僅かな隙間(例えば、隙間は、約0.1mmである。)を形成するようにしてもよい。これにより、振動時において、ピニオンギヤ155の支持部155B及びボス部155Dと各半円弧状部162A、165Aの内周面との接触を抑止することができ、異音の発生を抑制することができる。
[他の第2実施形態]
(B)また例えば、第2実施形態に係るシートベルト用リトラクタ201において、クラッチ機構156を介してピニオンギヤ155を保持プレート205に取付固定した際に、ピニオンギヤ155の支持部155Bの外周面と外側軸受孔209の半円弧状部209Aの内周面との間、及び、ボス部155Dの外周面と内側軸受孔208の半円弧状部208Aの内周面との間に、それぞれ僅かな隙間(例えば、隙間は、約0.1mmである。)を形成するようにしてもよい。これにより、振動時において、ピニオンギヤ155の支持部155B及びボス部155Dと各半円弧状部209A、208Aの内周面との接触を抑止することができ、異音の発生を抑制することができる。
[他の第3実施形態]
(C)また例えば、第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1において、保持プレート157をベースプレート部157Aだけで構成し、背板部157B及びカバープレート部157Cとを別体に形成して、背板部157Bとカバープレート部157Cとでカバー部材を構成するようにしてもよい。そして、ベースプレート部157Aの巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側にパイプシリンダ152とベースブロック158を配置して、その外側にカバー部材で覆うように重ね合わせてハウジング11の側壁部13に各ネジ15及びストッパーピン16により取付固定するようにしてもよい。
この場合、ピニオンギヤ155のフランジ部164及びピニオンギヤ歯155Aを、ベースプレート部157Aの回転軸方向外側から、内側軸受孔165の拡大部165Bに挿通して、各フランジ部163、164の間に内側軸受孔165の半円弧状部165Aを嵌入させた状態で、ピニオンギヤ155を内側軸受孔165に取り付けてもよい。
これにより、外側軸受孔162をピニオンギヤ155の支持部155Bの外径にほぼ等しい内径を有する円形状に形成することが可能となり、ピニオンギヤ155の半径方向への移動を容易に規制することが可能となる。また、上記第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の効果を奏することができる。
[他の第4実施形態]
(D)また例えば、第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1において、ピニオンギヤ155に支持部155Bを設けず、カバープレート部157Cに外側軸受孔162を設けないと共に、カバープレート部157Cでピニオンギヤ155の回転軸方向を押さえない構成にしてもよい。この場合には、ピニオンギヤ155の各フランジ部163、164の間に嵌入されたベースプレート部157Aの内側軸受孔165の半円弧状部165Aによって、簡易な構造で、当該ピニオンギヤ155の回転軸方向への位置ずれを抑止すると共に、半円弧状部165Aによって、簡易な構造でピニオンギヤ155を回転可能に支持することができる。
[他の第5実施形態]
(E)また例えば、第2実施形態に係るシートベルト用リトラクタ201において、保持プレート205のベースプレート部157Aだけで構成し、背板部157B及びカバープレート部157Cとを別体に形成して、背板部157Bとカバープレート部157Cとでカバー部材を構成するようにしてもよい。そして、ベースプレート部157Aの巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側にパイプシリンダ152とベースブロック158を配置して、その外側にカバー部材で覆うように重ね合わせてハウジング11の側壁部203に各ネジ15及びストッパーピン16により取付固定するようにしてもよい。
この場合、ピニオンギヤ155のフランジ部164及びピニオンギヤ歯155Aを、ベースプレート部157Aの回転軸方向外側から、内側軸受孔208の拡大部208Cに挿通して、各フランジ部163、164の間に内側軸受孔208の半円弧状部208Aを嵌入させた状態で、ピニオンギヤ155を内側軸受孔208に取り付けてもよい。
これにより、外側軸受孔209を各半円弧状部209A、209Bの背板部157B側の端縁部を接続して、ピニオンギヤ155の支持部155Bの外径にほぼ等しい内径を有する略円形状に形成することが可能となり、ピニオンギヤ155の半径方向への移動を容易に規制することが可能となる。また、上記第2実施形態に係るシートベルト用リトラクタ201の効果を奏することができる。
[他の第6実施形態]
(F)また例えば、第2実施形態に係るシートベルト用リトラクタ201において、ピニオンギヤ155に支持部155Bを設けず、カバープレート部157Cに外側軸受孔209を設けないと共に、カバープレート部157Cでピニオンギヤ155の回転軸方向を押さえない構成にしてもよい。この場合には、ピニオンギヤ155の各フランジ部163、164の間に嵌入されたベースプレート部157Aの内側軸受孔208の半円弧状部208Aによって、簡易な構造で、当該ピニオンギヤ155の回転軸方向への位置ずれを抑止すると共に、半円弧状部208Aと半円弧状部208Bによって、簡易な構造でピニオンギヤ155を回転可能に支持することができる。
[他の第7実施形態]
(G)また例えば、第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1及び第2実施形態に係るシートベルト用リトラクタ201において、ピニオンギヤ155には、フランジ部163のみを設け、フランジ部164を設けないようにしてもよい。これにより、シートベルト用リトラクタ1では、ピニオンギヤ155がクラッチ機構156を介して巻取ドラム65と同軸に位置規制された際に、フランジ部163の少なくとも一部分が、内側軸受孔165の半円弧状部165Aの軸方向外側軸受孔162側の周縁部に対向するため、当該ピニオンギヤ155の回転軸方向巻取ドラム65側への位置ずれを簡易な構成で抑止することができる。
また、シートベルト用リトラクタ201では、ピニオンギヤ155がクラッチ機構156を介して巻取ドラム65と同軸に位置規制された際に、フランジ部163の少なくとも一部分が、内側軸受孔208の各半円弧状部208A、208Bの軸方向外側軸受孔209側の周縁部に対向するため、当該ピニオンギヤ155の回転軸方向巻取ドラム65側への位置ずれを簡易な構成で抑止することができる。
また、各シートベルト用リトラクタ1、201において、ピニオンギヤ155は、内側軸受孔165から突出するボス部155Dが、クラッチ機構156によって半径方向への移動が規制されると共に、巻取ドラム65と同軸に位置規制されるため、簡易な構成で当該ピニオンギヤ155の半径方向外側への位置ずれを抑止しつつ、巻取ドラム65と同軸に配置することができる。