JP2013170313A - 金属表面処理剤用水性バインダ組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】クロメートフリーで、塗装性及び液安定性に優れ、かつ耐食性、密着性、導電性に優れた表面処理皮膜を形成可能な金属表面処理剤用の水性バインダ組成物を提供する。
【解決手段】アミノ基含有シランカップリング剤(a)と、エポキシ基含有シランカップリング剤(b)との反応生成物(A)、アルコキシシラン化合物(c)の加水分解生成物(B)、リン酸などの安定化剤(C)及び水を含有する、pH4.0〜10.0のバインダ組成物であって、反応生成物(A)は、(b)成分に基づく未反応のエポキシ基を実質的に有さず、かつ前記(a)及び(b)成分に基づく加水分解性基の全てが実質的にシラノール基に加水分解されてなることを特徴とする金属表面処理剤用水性バインダ組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、金属基材の表面を処理するのに適した、塗装性および貯蔵安定性に優れ、かつ耐食性、密着性、導電性に優れた表面処理皮膜を形成可能な金属表面処理剤用の水性バインダ組成物、この水性バインダ組成物を含有する金属表面処理剤、この金属表面処理剤による金属材料の表面処理方法、並びに上記水性バインダ組成物の製造方法に関する。
一般的に金属材料表面への密着性に優れ、金属材料表面に耐食性などを付与する技術として、金属材料表面に、クロム酸、重クロム酸又はそれらの塩を主成分として含有する処理液によりクロメート処理を施す方法、リン酸塩処理を施す方法、主としてクロメートフリーの無機成分により処理を施す方法、シランカップリング剤による処理を施す方法などが知られており、実用に供されている。
クロメートフリーの無機成分による処理を施す技術としては、バナジウム化合物と、ジルコニウム、チタニウム、モリブデン、タングステン、マンガン及びセリウムから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属化合物とを含有する金属表面処理剤が特許文献1に開示されている。しかしながら、処理皮膜の耐食性、導電性が劣るといった問題があった。
シランカップリング剤を用いる技術としては、アミノ基含有シランカップリング剤とエポキシ基含有シランカップリング剤とを反応させてなるアルコキシシリルを多く有するアルコキシシロキサンと、ポリシロキサンとを含有する、有機溶剤系の表面処理剤が特許文献2に提案されており、この表面処理剤から、基材に対する密着性が改善されたシロキサンフィルムを形成できることが示されている。しかしながら、この表面処理剤は、有機溶剤系であるため、安全衛生上や環境面での問題があり、これらの面で好適な水系とするには液安定性の問題があった。
また、特許文献3には、水性媒体と、(A)特定の2価以上の金属イオン、(B)特定のフルオロ酸、リン酸及び酢酸から選ばれる酸成分、(C)特定の官能基を有するシランカップリング剤及び(D)特定の水溶性フェノール樹脂系重合体とを含有する金属材料用表面処理組成物が開示されている。しかしながら、この表面処理組成物は、液安定性、塗装性が充分でなく、また、処理皮膜の導電性が劣るといった問題があった。
さらに、特許文献4には、リン酸系化合物(A)、フルオロ酸(B)、アミノ基含有シランカップリング剤とエポキシ基含有シランカップリング剤の混合物(C)が配合された金属材料表面処理用組成物が開示されている。しかしながら、この組成物は、液安定性、処理皮膜の導電性が未だ充分ではないという問題があった。
また、特許文献5には、(a)反応性有機基含有シランカップリング剤と該反応性有機基と反応性の基を2個以上有する有機化合物との反応生成物である、官能基であるトリアルコキシシリル基(シラノール基)を2個以上有する化合物、並びに(b)有機酸、リン酸及び錯フッ化物から選ばれる化合物を含有する金属材料用表面処理剤が提案されている。しかしながら、この組成物は、液安定性、処理皮膜の導電性が未だ充分ではないという問題があった。
上記したように、これら従来の技術は、塗装性および液安定性に優れること、かつ耐食性、密着性、導電性に優れた処理皮膜を形成すること、クロメートフリーであることの全てを満足できる水性金属表面処理剤ではなく、実用化に至って依然として問題を抱えている。
特開2002−30460号公報 特開平11−43647号号公報 特開平11−106945号公報 特開2006−213958号公報 特開2001−49453号公報
本発明は、従来技術の有する前記課題を解決して、クロメートフリーであり、塗装性および液安定性に優れ、かつ耐食性、密着性、導電性に優れた表面処理皮膜を形成可能な金属表面処理剤用の水性バインダ組成物を提供することを目的とするものである。また、この水性バインダ組成物を含有する金属表面処理剤、この金属表面処理剤を用いた金属材料の表面処理方法、並びに上記バインダ組成物の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、これらの従来技術の抱える問題点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、アミノ基を有するシランカップリング剤とエポキシ基を有するシランカップリング剤との反応生成物、特定のアルコキシシラン化合物の加水分解生成物、特定の安定化剤及び水を含有せしめてなる組成物であって、該反応生成物は、実質的にエポキシ基を有さず、また、該反応生成物及び上記特定のアルコキシシラン化合物の加水分解生成物は、加水分解性基、アルコキシシリル基の全てが実質的に加水分解されてシラノール基となったバインダ組成物は、液安定性に優れるとともに、表面処理剤用バインダとして適した、耐食性、密着性、導電性に優れた皮膜を形成できること、また、このバインダ組成物を含有する金属表面処理剤が、塗装性および液安定性に優れ、金属材料表面の処理に用いることにより、耐食性、密着性、導電性に優れた皮膜を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)と、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)とを反応させてなる反応生成物(A)と、
下記式
(R)4−n−Si−(X)
(式中、Rは、反応性を有さない置換基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、Xは、アルコキシル基を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示される少なくとも1種のアルコキシシラン化合物(c)の加水分解生成物(B)と、有機酸、無機リン酸及び硝酸系酸化合物から選ばれる少なくとも一種の安定化剤(C)と、水とを含有せしめてなる、pH4.0〜10.0のバインダ組成物であって、上記シランカップリング剤(a)は、シランカップリング剤(b)中のエポキシ基1当量に対し、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の活性水素の量が1.0〜5.0当量となる割合で配合され、反応生成物(A)の少なくとも一部は、上記アミノ基とエポキシ基とが化学結合しており、反応生成物(A)は、シランカップリング剤(b)に基づく未反応のエポキシ基を実質的に有さず、かつ前記シランカップリング剤(a)及びシランカップリング剤(b)に基づく加水分解性基の全てが実質的にシラノール基に加水分解されており、該加水分解生成物(B)/該反応生成物(A)の配合割合が、該加水分解生成物(B)/該反応生成物(A)の固形分質量比が0.01〜2.0となる割合であり、しかも上記安定化剤(C)の量が、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の中和当量が0.1〜2.0の範囲内となる量であることを特徴とする金属表面処理剤用水性バインダ組成物に関する。
また、本発明は、上記金属表面処理剤用水性バインダ組成物及び防錆剤を含有することを特徴とする金属表面処理剤に関する。
さらに本発明は、上記金属表面処理剤を、金属材料表面に塗布し、乾燥して、金属材料表面に、乾燥皮膜重量0.05〜3.0g/mの表面処理皮膜を形成することを特徴とする金属材料の表面処理方法に関する。
また、本発明は、下記工程1〜3を有することを特徴とする、pHが4.0〜10.0である金属表面処理剤用水性バインダ組成物の製造方法、
工程1:水性媒体中で、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)と、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)とを反応させて反応生成物(A)の水性液を製造する工程、
工程2:水性媒体中で、下記式
(R)4−n−Si−(X)
(式中、Rは、反応性を有さない置換基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、Xは、アルコキシル基を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示される少なくとも1種のアルコキシシラン化合物(c)を加水分解して加水分解生成物(B)の水性液を製造する工程、及び
工程3:工程1で得た反応生成物(A)の水性液と工程2で得た加水分解生成物(B)の水性液とを、該加水分解生成物(B)/該反応生成物(A)の固形分質量比が0.01〜2.0となるように混合し、かつ有機酸、無機リン酸及び硝酸系酸化合物から選ばれる少なくとも一種の安定化剤(C)の量が、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の中和当量0.1〜2.0の範囲内のとなるよう生成物混合水性液を調製する工程、
該工程1において、上記シランカップリング剤(a)は、シランカップリング剤(b)中のエポキシ基1当量に対し、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の活性水素の量が1.0〜5.0当量となる割合で配合され、反応生成物(A)の少なくとも一部は、上記アミノ基とエポキシ基とが化学結合され、反応生成物(A)は、シランカップリング剤(b)に基づく未反応のエポキシ基を実質的に有さず、かつ前記シランカップリング剤(a)及びシランカップリング剤(b)に基づく加水分解性基の全てが実質的にシラノール基に加水分解反応されたものである、に関する。
さらに本発明は、下記工程を有することを特徴とする、pHが4.0〜10.0である金属表面処理剤用水性バインダ組成物の製造方法、
工程1:水性媒体中で、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)と、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)とを反応させて反応生成物(A)の水性液を製造する工程、
工程1A:工程1で得た反応生成物(A)の水性液を脱溶剤して有機溶剤量が3質量%以下の反応生成物(A)の水性液を得る工程、
工程2:水性媒体中で、下記式
(R)4−n−Si−(X)
(式中、Rは、反応性を有さない置換基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、Xは、アルコキシル基を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示される少なくとも1種のアルコキシシラン化合物(c)を加水分解して加水分解生成物(B)の水性液を製造する工程、
工程2A:工程2で得た加水分解生成物(B)の水性液を脱溶剤して有機溶剤量が3質量%以下の加水分解生成物(B)の水性液を得る工程、
及び
工程3A:工程1Aで得た反応生成物(A)の水性液と工程2Aで得た加水分解生成物(B)の水性液とを、該加水分解生成物(B)/該反応生成物(A)の固形分質量比が0.01〜2.0となるように混合し、かつ有機酸、無機リン酸及び硝酸系酸化合物から選ばれる少なくとも一種の安定化剤(C)の量が、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の中和当量0.1〜2.0の範囲内のとなるよう生成物混合水性液を調製する工程、
該工程1において、上記シランカップリング剤(a)は、シランカップリング剤(b)中のエポキシ基1当量に対し、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の活性水素の量が1.0〜5.0当量となる割合で配合され、反応生成物(A)の少なくとも一部は、上記アミノ基とエポキシ基とが化学結合され、反応生成物(A)は、シランカップリング剤(b)に基づく未反応のエポキシ基を実質的に有さず、かつ前記シランカップリング剤(a)及びシランカップリング剤(b)に基づく加水分解性基の全てが実質的にシラノール基に加水分解反応されたものである、に関する。
本発明の金属表面処理剤用水性バインダ組成物においては、シランカップリング剤に基づく加水分解性基が実質的に全てシラノール基に加水分解され、また、シラノール基の縮合が適度に抑制されるとともに、未反応のエポキシ基を実質的に有さない(A)成分と、アルコキシシラン化合物(c)を加水分解反応させてなる加水分解生成物(B)成分と、特定の安定化剤(C)と、水とを含有せしめてなるものであって、(B)成分の存在によって(A)成分の安定性が向上されており、液安定性に優れ、金属表面処理剤用のバインダとして優れた性能を発揮できるものである。
本発明の金属表面処理剤用水性バインダ組成物を用いた金属表面処理剤は、塗装性および液安定性に優れ、かつ耐食性、密着性、導電性に優れた、皮膜中に6価クロムなどの公害規制物質を含まないクロメートフリー金属表面処理皮膜を形成することができる。
また、本発明の表面処理用組成物を用いた表面処理方法により、金属材料の表面に、両立が困難であった耐食性と導電性の両者ともに優れ、かつ密着性にも優れた皮膜を形成することができる。かかる本発明は、環境保全や表面処理された金属材料のリサイクル性などにも寄与できるものである。
さらに、本発明の金属表面処理剤用水性バインダ組成物の製造方法において、脱溶剤工程を有する場合には、シランカップリング剤やアルコキシシラン化合物の加水分解によって生じたアルコールなどを除去でき、バインダ組成物を非危険物とできるとともに、固形分割合の向上を行うことができ、また、特定の安定化剤を含有することにより、脱溶剤工程、及び脱溶剤工程後においても水性バインダ組成物の液安定性を保持できるものである。
以下に、本発明に係る金属表面処理剤用水性バインダ組成物、およびこのバインダ組成物を用いた金属表面処理剤、さらには、この金属表面処理剤を使用した金属材料の表面処理方法、また、上記水性バインダ組成物の製造方法について詳細に説明する。
まず、金属表面処理剤用水性バインダ組成物について説明する。
金属表面処理剤用水性バインダ組成物
本発明の金属材料表面処理用バインダ組成物は、2種以上のシランカップリング剤を反応させてなる反応生成物(A)と、下記式
(R)4−n−Si−(X)
(式中、Rは、反応性を有さない置換基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、Xは、アルコキシル基を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示される少なくとも1種のアルコキシシラン化合物(c)の加水分解生成物(B)と、安定化剤(C)と、水とを含有せしめてなる、pH4.0〜10.0好ましくはpH6.0〜10.0のバインダ組成物である。
反応生成物(A)
本発明組成物における反応生成物(A)は、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)と、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)とを付加反応及び加水分解反応させてなるものである。
上記反応生成物(A)の少なくとも一部は、上記アミノ基とエポキシ基とが付加反応により化学結合している。シランカップリング剤(b)中のエポキシ基は付加反応に消費され、反応生成物(A)は、シランカップリング剤(b)に基づく未反応のエポキシ基を実質的に有さない。また、反応生成物(A)においては、シランカップリング剤(a)及びシランカップリング剤(b)に基づく加水分解性基の全てが実質的にシラノール基に加水分解されたものである。反応生成物(A)は、重量平均分子量500〜20000、好ましくは1000〜10000を有することが好適である。
本明細書において、「加水分解性基」と「アルコキシシリル基」との両者の包括して、「加水分解性官能基」ということがある。
本明細書において、「加水分解性基の全てが実質的にシラノール基に加水分解」される、又は「アルコキシシリル基の全てが実質的にシラノール基に加水分解」されるとは、核磁気共鳴スペクトル分析(NMR)において、加水分解性官能基のピークが認められない状態を意味し、通常、「加水分解性官能基のうちの95%以上がシラノール基に加水分解」されていることを表す。また、本明細書において、「未反応のエポキシ基を実質的に有さない」とは、核磁気共鳴スペクトル分析(NMR)において未反応のエポキシ基のピークが認められない状態を意味し、通常、「エポキシ基のうち未反応のエポキシ基の割合が5%以下」であることを表す。
また、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel GMHHR−L」(商品名、東ソー社製)を1本使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、 移動相:ジメチルホルムアミド(トリエタノールアミン0.5質量%含む)、測定温度:25℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
シランカップリング剤(a)(以下、「(a)成分」と略称することがある。)は、1分子中に少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤である限り、特に制限されるものではない。上記加水分解性基は、特に制限されるものではないが、好適なものとして、珪素元素に直接結合するアルコキシシリル基を挙げることができる。
シランカップリング剤(a)の具体例としては、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。なかでもN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランを好適に使用することができる。
シランカップリング剤(b)(以下、「(b)成分」と略称することがある。)は、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤である限り、特に制限されるものではない。上記加水分解性基は、特に制限されるものではないが、好適なものとして、珪素元素に直接結合するアルコキシシリル基を挙げることができる。
シランカップリング剤(b)の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。なかでもγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを好適に使用することができる。
反応生成物(A)の生成に用いられるシランカップリング剤(a)とシランカップリング剤(b)との配合割合は(b)成分中のエポキシ基1当量に対し、(a)成分中のアミノ基の活性水素の量が1.0〜5.0当量、好ましくは1.5〜4.0当量、さらに好ましくは2.0〜3.5当量となる割合で配合される。
(a)成分が、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシランである場合は、1分子中にアミノ基が2個の活性水素を有するため、3−アミノプロピルトリメトキシシラン1モルは、活性水素基2当量を有する。また、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランの場合は、1分子中に2個の活性水素を有する1級アミノ基と1個の活性水素を有する2級アミノ基を有し、1分子中に合計で3個の活性水素を有するため、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン1モルは、活性水素基3当量を有することとなる。
反応生成物(A)は、水性媒体中で、シランカップリング剤(a)とシランカップリング剤(b)とを付加反応及び加水分解反応させることによって得ることができる。また、反応生成物(A)は、有機溶剤中又は無溶剤下で、(a)成分と(b)成分とを付加反応させ、さらに、この付加反応物を、酸中和剤を含有する水性媒体中で加水分解反応させることによって得ることもできる。
本明細書において、「水性媒体」とは、水、又は水を80重量%以上含有する水とその他液体との混和液であって、(a)成分、(b)成分、及び(a)成分と(b)成分との反応生成物(A)や、アルコキシシラン化合物(c)及びこの加水分解生成物(B)を溶解又は分散できる液体を意味する。上記混和液におけるその他液体としては、有機溶剤、中和剤及び/又は界面活性剤などを挙げることができる。
上記混和液における有機溶剤としては、水溶性の有機溶剤を好適に使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテルなどを挙げることができる。
上記混和液における中和剤としては、例えば、酸中和剤として、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2−エチルへキサン酸、乳酸、コハク酸、グルタル酸、クエン酸、メタクリル酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ヒドロキシメタンビスホスホン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸;塩酸、硫酸、リン酸、硝酸などの無機酸を挙げることができ、塩基性中和剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水などの無機塩基性化合物;モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、N,N−ジメチルアミノエタノールなどのアミン化合物を挙げることができる。
上記混和液における界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子系界面活性剤、反応性界面活性剤等、公知の界面活性剤を使用することができる。
前記水性媒体が含有する酸中和剤としては、上記混和液における酸中和剤として挙げたものを使用することができる。
加水分解生成物(B)
本発明組成物における加水分解生成物(B)は、下記式
(R)4−n−Si−(X)
(式中、Rは、反応性を有さない置換基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18、好ましくは1〜4の炭化水素基を表し、Xは、アルコキシル基を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示される少なくとも1種のアルコキシシラン化合物(c)の加水分解生成物(B)である。
上記アルコキシシラン化合物(c)(以下、「(c)成分」と略称することがある。)としては、トリアルコキシシラン化合物、ジアルコキシシラン化合物、モノアルコキシシラン化合物であることができるが、水性媒体中への溶解性の点などから、トリアルコキシシラン化合物を80質量%以上含有するもの、なかでもトリアルコキシシラン化合物からなるものが好適である。
上記トリアルコキシシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、エチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどを挙げることができる。これらのうち、特にメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、エチルトリス(メトキシエトキシ)シランが好ましい。
上記モノ−もしくはジ−アルコキシシラン化合物としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシランなどのモノアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、ジプロピルトリメトキシシランなどのジアルコキシシランなどを挙げることができる。
加水分解生成物(B)は、上記アルコキシシラン化合物(c)を、例えば、酸中和剤を含有する水性媒体中で加水分解反応させることによって得ることができる。加水分解生成物(B)は、アルコキシシラン化合物(c)に基づく加水分解性基の全てが実質的にシラノール基に加水分解されたものであることが好ましい。加水分解生成物(B)は、一部縮合していてもよく、重量平均分子量として、好ましくは100〜5000、さらに好ましくは100〜2000を有することが好適である。
本発明の水性バインダ組成物において、反応生成物(A)と加水分解生成物(B)との配合割合は、加水分解生成物(B)/反応生成物(A)の固形分質量比が0.01〜2.0、好ましくは0.03〜1.0、さらに好ましくは0.05〜0.5となる割合である。
安定化剤(C)
安定化剤(C)は、本発明の水性バインダ組成物の液安定性の向上に寄与する成分であり、水性バインダ組成物や水性バインダ組成物を用いた金属表面処理剤中における反応生成物(A)及び加水分解生成物(B)のシラノール基の縮合反応を抑制し、液安定性を向上させるものである。また、安定化剤(C)は、表面処理剤から形成される表面処理皮膜の耐食性の向上に役立つ場合もある。
安定化剤(C)は、有機酸、無機リン酸及び硝酸系酸化合物から選ばれる少なくとも1種の酸である。
上記有機酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2−エチルへキサン酸、乳酸、コハク酸、グルタル酸、クエン酸、メタクリル酸などの有機カルボン酸;アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ヒドロキシメタンビスホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸などの有機ホスホン酸;p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの有機スルホン酸などを挙げることができる。
上記無機リン酸としては、リン酸(オルトリン酸)、縮合リン酸及び亜リン酸などを挙げることができる。縮合リン酸はメタリン酸及びポリリン酸を包含する。メタリン酸は環状のリン酸縮合物であって、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸等を包含し、ポリリン酸は鎖状のリン酸縮合物であって、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸等を包含する。
上記安定化剤(C)として使用できる硝酸系酸化合物としては、硝酸、亜硝酸を挙げることができる。
上記安定化剤(C)のうち、なかでも、蟻酸、酢酸、乳酸、リン酸、硝酸が好適である。これらの安定化剤は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記安定化剤(C)の配合量は、反応生成物(A)の製造に用いられるシランカップリング剤(a)中のアミノ基1当量に対して、0.1〜2.0当量、好ましくは0.2〜1.0当量であることが各成分の溶解性や水性バインダ組成物の液安定性の面から好適である。なかでも安定化剤(C)の一部として、リン酸を、反応生成物(A)の製造に用いられるシランカップリング剤(a)中のアミノ基1当量に対して、0.03〜0.6当量、好ましくは0.05〜0.5当量含有することが水性バインダ組成物の液安定性の面から好適である。
本明細書において、前記加水分解反応及び付加反応によって得られる反応生成物(A)や加水分解反応によって得られる加水分解生成物(B)は、水性媒体中に溶解ないしは分散された液の状態で得られるが、この反応生成物(A)及び加水分解生成物(B)の水性媒体中に存在する酸中和剤は、上記安定化剤(C)の条件である、有機酸、無機リン酸及び硝酸系酸化合物から選ばれる少なくとも1種の酸であることを満たせば、そのまま本発明組成物における安定化剤(C)とすることができる。
反応生成物(A)及び加水分解生成物(B)を混合した水性媒体が、上記安定化剤(C)を上記量的範囲内で含有し、かつpHが4.0〜10.0の範囲であれば、さらに安定化剤(C)を追加配合することなく、そのまま、本発明の水性バインダ組成物として使用することもできる。一方、反応生成物(A)及び加水分解生成物(B)を混合した水性媒体において、上記安定化剤(C)の量が上記量的範囲内より少ない場合、上記量的範囲内とするため、安定化剤(C)を追加配合することが必要である。
上記反応生成物(A)及び加水分解生成物(B)を混合し、安定化剤(C)量を上記量的範囲に調整した生成物混合水性液は、必要に応じてpH調整して、本発明の水性バインダ組成物として使用することができるが、この生成物混合水性液を脱溶剤することがより好ましい。脱溶剤前に、生成物混合水性液に水を配合して希釈してもよい。この脱溶剤の工程は、液安定性が悪化しやすい工程であるが、脱溶剤工程の前に反応生成物(A)及び加水分解生成物(B)を混合した水性媒体における安定化剤(C)量を上記量的範囲に調整することによって、液の安定性を保持することができたものである。
この脱溶剤の条件は、上記生成物混合水性液中の、加水分解によって生成したアルコールなどの有機溶剤を除去でき、かつ液安定性に支障がない限り、特に制限されるものではなく、通常、50〜90℃の温度で0.5〜20時間程度減圧蒸留することが好適である。脱溶剤工程による液pHの変化は小さいが、脱溶剤中や脱溶剤後のバインダ組成物のpHを安定化剤(C)の添加によって調整することができる。
また、反応生成物(A)の水性媒体と加水分解生成物(B)の水性媒体とを、それぞれ別々に脱溶剤した後、両者を混合して本発明の水性バインダ組成物とすることもできる。
本発明の金属材料表面処理用バインダ組成物は、pH4.0〜10.0、好ましくはpH6.0〜10.0の範囲内である。また、本発明のバインダ組成物は、固形分割合が、5〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
さらに本発明のバインダ組成物は、有機溶剤量が3質量%以下であって、バインダ組成物が引火点を有さない非危険物であること好適である。また、本発明のバインダ組成物は、固形分濃度10質量%としたとき、測定温度20℃、B型回転粘度計にて60rpmの条件にて測定した液粘度が、2.5mPa・s以下であることが、液流動性の点から好ましい。
金属表面処理剤用水性バインダ組成物の製造方法
本発明の、pHが4.0〜10.0である金属表面処理剤用水性バインダ組成物は、例えば、下記製造方法(I)や後記製造方法(II)によって得ることができる。
製造方法(I)
本発明の金属表面処理剤用水性バインダ組成物の製造方法(I)は、下記工程1〜3を有する。
工程1:水性媒体中で、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)と、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)とを反応させて反応生成物(A)の水性液を製造する工程、
工程2:水性媒体中で、下記式
(R)4−n−Si−(X)
(式中、Rは、反応性を有さない置換基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、Xは、アルコキシル基を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示される少なくとも1種のアルコキシシラン化合物(c)を加水分解して加水分解生成物(B)の水性液を製造する工程、及び
工程3:工程1で得た反応生成物(A)の水性液と工程2で得た加水分解生成物(B)の水性液とを、該加水分解生成物(B)/該反応生成物(A)の固形分質量比が0.01〜2.0となるように混合し、かつ有機酸、無機リン酸及び硝酸系酸化合物から選ばれる少なくとも一種の安定化剤(C)の量が、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の中和当量0.1〜2.0の範囲内のとなるよう生成物混合水性液を調製する工程。
該工程1において、上記シランカップリング剤(a)は、シランカップリング剤(b)中のエポキシ基1当量に対し、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の活性水素の量が1.0〜5.0当量となる割合で配合され、反応生成物(A)の少なくとも一部は、上記アミノ基とエポキシ基とが化学結合され、反応生成物(A)は、シランカップリング剤(b)に基づく未反応のエポキシ基を実質的に有さず、かつ前記シランカップリング剤(a)及びシランカップリング剤(b)に基づく加水分解性基の全てが実質的にシラノール基に加水分解反応されたものである。工程1で得られる反応生成物(A)は、重量平均分子量500〜20000を有することが好ましい。
工程1
上記工程1において、上記シランカップリング剤(a)、シランカップリング剤(b)は、前記本発明の水性バインダ組成物の反応生成物(A)の項で説明したものと同じものを使用することができる。
上記シランカップリング剤(a)は、シランカップリング剤(b)中のエポキシ基1当量に対し、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の活性水素の量が1.0〜5.0当量、好ましくは1.5〜4.0当量、さらに好ましくは2.0〜3.5当量となる割合で配合される。
また、工程1の水性媒体には、シランカップリング剤(a)のアミノ基1.0当量に対して0.1〜1.0当量、好ましくは0.1〜0.5当量となる量の酸中和剤が配合されていることが溶解性などの点から好ましい。
工程1において、反応生成物(A)の水性液は、前記シランカップリング剤(a)とシランカップリング剤(b)とを、水性媒体中で、又は有機溶剤中もしくは無溶剤下で反応させる工程を経て製造することができる。
本発明の製造方法、工程1において、まず、水性媒体中で付加反応及び加水分解反応を行う工程を経て反応生成物(A)の水性液を製造する方法について、代表的な製造方法である、製法1と製法2について説明する。
〔反応生成物(A)の水性液の製法1〕
反応生成物(A)の水性液の製法1は、水性媒体中に、アミノ基を有する(a)成分を添加し、(a)成分に基づく加水分解性基を加水分解させた後、酸中和剤を配合し、ついエポキシ基を有する(b)成分を添加し加水分解反応及び付加反応させて、反応生成物(A)の水性液を得る方法である。
この製法1において、(a)成分は、アミノ基を有し、一般的に水溶性を有するので、上記水性媒体は、水であることができるが、必要に応じて溶解性向上、pH調整などのため、酸中和剤、有機溶剤及び/又は界面活性剤などを含有する混和液であってもよい。
上記製法1において、水性媒体中に(a)成分を添加すると、加水分解反応により発熱するので、急激な反応を防止するため、(a)成分の添加を徐々に行うことが好ましい。急激な反応が起こると、加水分解反応によって生じたシラノール基の縮合反応が急激に起こりやすく、粒子化、ゲル化が生じやすくなる。
水性媒体中での(a)成分に基づく加水分解性基の加水分解反応によりシラノール基が生成する。その後、この生成した反応物溶液に酸中和剤を配合し、ついで、(b)成分を添加する。上記生成した反応物溶液を酸中和するのに用いられる酸中和剤の量は、中和後の反応物溶液中において、シランカップリング剤(a)のアミノ基1.0当量に対して0.1〜1.0当量、好ましくは0.1〜0.5当量となる量が好適である。水性媒体中に予め酸中和剤が配合されている場合には、反応物溶液への酸中和剤の配合量を上記中和当量範囲となるよう調整すればよい。この酸中和剤の配合により、通常、得られる反応生成物(A)の水性液のpHを4〜10とすることが好ましく、pH6〜10とすることがさらに好ましい。上記反応物溶液に(b)成分を添加する時点において、(a)成分の加水分解性基の全部又は多くが加水分解されていることが好ましいが、加水分解性基の一部のみが加水分解されていてもよい。
上記酸中和された反応物溶液に(b)成分を添加した液は、(a)成分に基づくアミノ基と、(b)成分に基づくエポキシ基との付加反応、及び加水分解性基の加水分解反応が行われ、反応生成物(A)の水性液を得ることができる。これらの反応は、20〜100℃で0.5〜20時間、好ましくは40〜90℃で1〜10時間程度にて行うことが好適である。
〔反応生成物(A)の水性液の製法2〕
反応生成物(A)の水性液の製法2は、酸中和剤を含有する水性媒体中にて、エポキシ基を有する(b)成分の加水分解性基を加水分解させた後、アミノ基を有する(a)成分を添加して加水分解反応及び付加反応させて、反応生成物(A)の水性液を得る方法である。
この製法2において、(b)成分は、一般に水への溶解性が劣るため、酸中和剤を含有する水性媒体を使用することが好ましい。水性媒体が酸中和剤を含有することによって、加水分解性基の加水分解を促進でき、反応物の水溶解性を向上することができる。
上記製法2において、水性媒体中に(b)成分を添加する際には、急激な反応を防止するため、(b)成分の添加を徐々に行うことが好ましい。水性媒体中に(b)成分を添加すると、(b)成分中の加水分解性基の加水分解が進行しシラノール基が生成する。この生成した反応物において、(b)成分の加水分解性基の全部又は多くが加水分解されていることが好ましいが、加水分解性基の一部のみが加水分解されていてもよい。
ついで、上記反応物溶液に、(a)成分を添加し、(a)成分に基づくアミノ基と、(b)成分に基づくエポキシ基との付加反応、及び加水分解性基の加水分解反応を行い、反応生成物(A)の水性液を得ることができる。
(a)成分添加後の上記反応は、通常、20〜100℃で0.5〜20時間、好ましくは40〜90℃で1〜10時間程度にて行うことが好適である。上記反応物溶液に(a)成分を添加した際において、液中に配合されている酸中和剤の量は、(a)成分のアミノ基1.0当量に対して0.1〜1.0当量、好ましくは0.1〜0.5当量となる量であることが好適である。この酸中和剤の配合により、通常、反応生成物(A)の水性液のpHを4〜10とすることが好ましく、pH6〜10とすることがさらに好ましい。
つぎに、(a)成分と(b)成分とを無溶媒で又は有機溶剤中で反応させる工程を経てシラン反応物(c)の水性液を製造する製法3について説明する。
〔反応生成物(A)の水性液の製法3〕
反応生成物(A)の水性液の製法3は、有機溶剤中で又は無溶剤下で、シランカップリング剤(a)と、シランカップリング剤(b)とを、アミノ基とエポキシ基との反応に基づき付加反応させ、ついで該付加反応物を、水及び酸中和剤を含有する水性媒体中に溶解ないし分散させ、加水分解反応させて、反応生成物(A)の水性液を得る方法である。
上記製法3は、まず、(a)成分と(b)成分とを、有機溶剤中で又は無溶剤下で、アミノ基とエポキシ基との反応に基づき付加反応させる。この付加反応は発熱反応であり、急激な反応を抑制することが好ましく、例えば、両者を徐々に混合し混合終了後、例えば、30分間〜2時間程度撹拌して、反応が収まってきた段階で、60〜90℃で1〜20時間程度加熱して付加反応を行うことが好適である。有機溶剤中で反応させる場合には、有機溶剤としては、水溶性で、かつ後工程での脱溶剤が容易であるものが好ましく、具体例として、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどの低沸点水溶性溶剤を挙げることができる。
上記付加反応終了後、付加反応物を、酸中和剤を含有する水性媒体中に溶解ないし分散させ、加水分解反応させることによって反応生成物(A)の水性液を得ることができる。上記加水分解反応は、付加反応物を、酸中和剤を含有する水性媒体中に溶解ないし分散させ、例えば、20〜100℃で0.5〜20時間、好ましくは40〜90℃で1〜10時間程度反応させることによって行うことができる。上記付加反応物に配合される水性媒体中の酸中和剤の量は、使用される(a)成分のアミノ基1.0当量に対して、通常、0.1〜1.0当量、好ましくは0.1〜0.5当量となる量であることが好適である。この酸中和剤により、通常、得られる反応生成物(A)の水性液のpHを4〜10とすることが好ましく、pH6〜10とすることがさらに好ましい。
上記製法1〜3などによって得られる反応生成物(A)の水性液は、水性液に基づき、反応生成物(A)の固形分が3〜30質量%、好ましくは5〜20質量%の範囲内であることが好適である。
工程2
工程2において、上記アルコキシシラン化合物(c)は、前記本発明の水性バインダ組成物の加水分解生成物(B)の項で説明したものと同じものを使用することができる。
加水分解生成物(B)は、水性媒体中でアルコキシシラン化合物(c)を加水分解反応させることによって得ることができる。
上記加水分解反応は、必要に応じて酸中和剤を含有する、水性媒体中に溶解ないし分散させ、通常、pH2〜8の条件下で、例えば、20〜100℃で0.5〜20時間、好ましくは40〜90℃で1〜10時間程度反応させることによって行うことができる。アルコキシシラン化合物(c)が溶解し難い場合には、アルコキシシラン化合物(c)の溶解性を向上させるため水性媒体中にメタノールなどの低沸点アルコール溶剤を配合することが好ましい。
このようにして得られる加水分解生成物(B)の水性液は、水性液に基づき、加水分解生成物(B)の固形分が3〜30質量%、好ましくは5〜20質量%の範囲内であることが好適である。
工程3
上記工程3において、安定化剤(C)は、前記本発明の水性バインダ組成物の安定化剤(C)の項で説明したものと同じものを使用することができる。
工程3は、上記工程1で得た反応生成物(A)の水性液と、上記工程2で得た加水分解生成物(B)の水性液とを、前記所定割合で混合し、かつ安定化剤(C)の量を前記所定量に調整して、生成物混合水性液を調製する工程である。
反応生成物(A)の水性液と加水分解生成物(B)の水性液との配合割合は、該加水分解生成物(B)/該反応生成物(A)の固形分質量比が0.01〜2.0、好ましくは0.03〜1.0、さらに好ましくは0.05〜0.5となる割合である。
安定化剤(C)の量は、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の中和当量が0.1〜2.0、好ましくは0.2〜1.0の範囲内となるよう調整される。また、安定化剤(C)の一部として、リン酸を、反応生成物(A)の製造に用いられるシランカップリング剤(a)中のアミノ基1当量に対して、好ましくは0.03〜0.6当量、さらに好ましくは0.05〜0.5当量含有することが、得られる生成物混合水性液の液安定性などの面から好適である。
上記工程1〜3により得られる生成物混合水性液を、本発明のバインダ組成物とすることができるが、さらに下記工程4を経ることにより、生成物混合水性液中の有機溶剤量が低減され、引火点を有さない非危険物であるバインダ組成物とすることができる。
工程4
工程4は、上記工程3で調製された生成物混合水性液を脱溶剤して、バインダ組成物における固形分割合が、5〜30質量%であり、かつバインダ組成物における有機溶剤量が3質量%以下であって、バインダ組成物が引火点を有さない非危険物とする工程である。
上記工程3で調製された生成物混合水性液は、脱溶剤する前に、必要に応じて、水を混合して希釈してもよい。
脱溶剤工程は、液安定性が悪化しやすい工程であるが、本発明製造方法においては、脱溶剤工程の前に、工程3において生成物混合水性液は、安定化剤(C)量が調整されることによって、液の安定性を保持することができるものである。
この脱溶剤の条件は、生成物混合水性液中の、加水分解によって生成したアルコールなどの有機溶剤を除去でき、液安定性に支障がない限り、特に制限されるものではなく、通常、50〜90℃の温度で0.5〜20時間程度減圧蒸留することが好適である。脱溶剤工程による液pHの変化は小さいが、脱溶剤中や脱溶剤後の生成物混合水性液であるバインダ組成物のpHが上記範囲外となる場合には、安定化剤(C)(中和剤)の添加によってpHを調整することができる。
上記製造方法(I)において、工程4の後、必要に応じて、固形分調整、pH調整のため、水、中和剤などを配合することができる。
製造方法(II)
上記製造方法(I)の工程3において、前記工程1で得られる反応生成物(A)の水性液と、上記工程2で得られる加水分解生成物(B)の水性液とを混合するが、本発明の金属表面処理剤用水性バインダ組成物の製造方法(II)においては、この両者の水性液を混合する前に、反応生成物(A)の水性液及び加水分解生成物(B)の水性液のそれぞれを、別々に脱溶剤する工程を有する製造方法である。
本発明の金属表面処理剤用水性バインダ組成物の製造方法(II)は、下記工程1、1A、2、2A及び3Aを有する。
工程1:上記製造方法(I)における工程1と同じ工程、
工程1A:工程1で得た反応生成物(A)の水性液を脱溶剤して有機溶剤量が3質量%以下の反応生成物(A)の水性液を得る工程、
工程2:上記製造方法(I)における工程2と同じ工程、
工程2A:工程2で得た加水分解生成物(B)の水性液を脱溶剤して有機溶剤量が3質量%以下の加水分解生成物(B)の水性液を得る工程、及び
工程3A:工程1Aで得た反応生成物(A)の水性液と工程2Aで得た加水分解生成物(B)の水性液とを、該加水分解生成物(B)/該反応生成物(A)の固形分質量比が0.01〜2.0となるように混合し、かつ有機酸、無機リン酸及び硝酸系酸化合物から選ばれる少なくとも一種の安定化剤(C)の量が、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の中和当量0.1〜2.0の範囲内のとなるよう生成物混合水性液を調製する工程。
上記工程1Aにおいて、脱溶剤前に、工程1で得た反応生成物(A)の水性液に、必要に応じて、水、安定化剤(C)などを混合することができる。
上記工程2Aにおいて、脱溶剤前に、工程2で得た加水分解生成物(B)の水性液に、必要に応じて、水、安定化剤(C)などを混合することができる。
上記工程3Aは、前記製造方法(I)の工程3において、工程1で得た反応生成物(A)の水性液のかわりに、工程1Aで得た脱溶剤後の反応生成物(A)の水性液を使用し、かつ工程2で得た加水分解生成物(B)の水性液のかわりに、工程2Aで得た脱溶剤後の加水分解生成物(B)の水性液を使用する以外は、前記製造方法(I)の工程3と同様の工程である。
本発明の製造方法(I)又は(II)によって得られるバインダ組成物のpHは、4.0〜10.0、好ましくはpH6.0〜10.0の範囲内である。また、本発明製造方法によるバインダ組成物は、その固形分割合が、5〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%の範囲内であることがさらに好適である。
また、本発明のバインダ組成物を製造する他の方法として、例えば、上記製造方法(II)において、工程2Aを除いた製造方法、すなわち、脱溶剤した反応生成物(A)の水性液と、脱溶剤していない加水分解生成物(B)の水性液を混合する製造方法を挙げることができ、また、上記製造方法(II)において、工程1Aを除いた製造方法、すなわち、脱溶剤していない反応生成物(A)の水性液と、脱溶剤した加水分解生成物(B)の水性液を混合する製造方法などを挙げることができる。
金属表面処理剤
本発明の金属表面処理剤は、上記金属表面処理剤用バインダ組成物及び防錆剤を含有するものである。
上記防錆剤としては、マンガン、コバルト、亜鉛、マグネシウム、ニッケル、チタン、バナジウム、ジルコニウム、スズ、カルシウム、珪素、タングステン、モリブデン、ハフニウム及びアルミニウムなどの金属の金属化合物;無機リン酸、有機リン酸を挙げることができる。かかる金属化合物としては、例えば炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、フルオロ酸及びその塩、酸化物等であることができる。これらの金属化合物は、無水物であっても存在する場合の水和物であってもよい。
上記金属化合物の代表例として、塩基性炭酸ジルコニウム(ZrCO・ZrO・8HO)、炭酸ジルコニウムアンモニウム、硫酸ニッケル、硝酸ジルコニウム、硫酸バナジル、硫酸ジルコニウム、硝酸アルミニウム、酢酸ニッケル、酢酸ジルコニウム、酸化バナジウム、メタバナジン酸アンモニウム;六フッ化チタン酸( HTiF)、六フッ化ジルコニウム酸(HZrF)、六フッ化ケイ酸(HSiF)、六フッ化ハフニウム酸(HHfF)、六フッ化アルミニウム酸(HAlF)、四フッ化ホウ酸(HBF)等のフルオロ酸、これらのフルオロ酸の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、アミン塩、亜鉛塩など)が挙げられる。上記金属化合物のうち、なかでも、チタン、バナジウム、ジルコニウムの金属化合物が好適である。
防錆剤として使用することができる無機リン酸の具体例としては、リン酸(オルトリン酸)、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリンなどを挙げることができ、有機リン酸の具体例としては、アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシメタン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸等を挙げることができる。これらのうち、なかでも、リン酸、ヒドロキシメタンビスホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸が好適である。
これらの防錆剤として使用し得る上記金属化合物、無機リン酸、有機リン酸は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
金属表面処理剤における上記防錆剤の配合量は、耐食性、導電性及び表面処理剤の安定性の面から、反応生成物(A)と加水分解生成物(B)との合計固形分100質量部に対して、0.1〜100質量部であることが好ましく、0.5〜60質量%であることがより好ましい。
本発明の金属表面処理剤は、前記水性バインダ組成物及び上記防錆剤を必須成分として含有するものであり、さらに必要に応じ、有機樹脂成分、ワックス成分、充填剤、有機溶剤などを含有することができる。
上記有機樹脂成分は、得られる皮膜の耐食性向上などを目的に配合されるものであり、例えば、水溶性又は水分散性のフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などの有機樹脂成分を挙げることができる。有機樹脂成分を配合する場合、その配合量は、耐食性、導電性などの点から、金属表面処理剤の全固形分に基づいて、固形分量として、0.1〜30質量%、好ましくは0.3〜20質量%の範囲内であることが適している。
上記ワックス成分は、得られる皮膜表面に潤滑性を付与する成分であり、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリエチレンなどのポリオレフィンワックス、ラノリン系ワックス、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス及びカルナウバワックスなどを挙げることができる。これらは、1種で又は2種以上を混合して使用することができる。ワックスを配合する場合、その配合量は、成型加工性、耐食性などの点から、金属表面処理剤の全固形分に対して、固形分量として、0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜5質量%の範囲内であることが適している。
金属表面処理剤に必要に応じて配合できる充填剤としては、ジルコニアゾル、アルミナゾル、シリカゾル(コロイダルシリカ水分散液)等を挙げることができる。また、本発明の金属表面処理剤の水性媒体は、通常、水であるが、例えば、乾燥速度を調整したり、塗工性をよくするため等の目的で少量(例えば水性媒体全体の5質量%以下)のメタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール等の有機溶媒を含有する水性媒体であってもよい。この有機溶媒は、水性バインダ組成物を得る際に行う脱溶剤工程において、残留するアルコールなどの有機溶剤であっても、金属表面処理剤を得る際に後添加するものであってもよい。
本発明の表面処理剤は、建浴用組成物(濃縮液)及び作業用組成物(希釈液)の両方を包含する。建浴用組成物における全固形分濃度は10〜40質量%であるのが好ましく、15〜30質量%であるのがより好ましい。作業用組成物における全固形分濃度は、1〜40質量%であるのが好ましく、5〜30質量%であるのがより好ましい。
本発明の表面処理剤を作業用組成物として用いる場合、固形分濃度を10質量%としたとき、測定温度20℃、B型回転粘度計にて60rpmの条件にて測定した粘度が、10mPa・s以下であることが、表面処理剤の塗装性の面から好適である。
また、本発明の表面処理剤は、pHが、5.0〜10.0の範囲が好ましく、6.0〜9.0の範囲であることがより好ましい。その際、pH調整剤としては、表面処理用組成物のpHを上げる場合には、アンモニア水、アミン化合物、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩等が用いられ、pHを下げる場合には、前記した酸中和剤として例示した酸で調整することが好ましい。pHが低すぎると、基材表面との反応性が過多になるので、得られる皮膜の成膜性、導電性が不良になる傾向にある。またpHが高すぎると、表面処理用組成物の安定性が低下し、また、得られる皮膜の耐食性が低下する傾向がある。
金属材料の表面処理方法
本発明の表面処理方法は、上記金属表面処理剤を、金属材料表面に塗布し、乾燥して、金属材料表面に、乾燥皮膜重量0.05〜3.0g/m、好ましくは0.1〜1.0g/m、さらに好ましくは0.2〜0.8g/mの乾燥質量を有する表面処理皮膜を形成することを特徴とする。
乾燥後の皮膜質量が0.05g/m未満の場合、金属材料を被覆することが困難になり、耐食性が不十分になる。また乾燥後の皮膜質量が3.0g/mを超えると、導電性が低下する傾向がある。
上記金属表面処理剤を塗布する方法は、特に制限されるものではなく、例えば浸漬法、スプレー法、ロールコート法などを用いることができる。金属材料表面上に形成された表面処理剤層の乾燥は加熱乾燥が好ましく、特に制限されるものではないが、通常、加熱温度50〜250℃程度で1〜60秒程度乾燥させることが好ましい。
本発明の金属表面処理剤を塗布する金属材料は、特に制限されるものではなく、例えば、鉄板、亜鉛めっき鋼板、亜鉛合金(例えば、鉄−亜鉛、アルミニウム−亜鉛、ニッケル−亜鉛合金など)めっき鋼板、スズめっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板等が挙げられる。該金属材料の種類のみならず、寸法、形状などにも特に制限はない。本発明の金属表面処理剤によって表面処理する金属材料としては、なかでも亜鉛めっき鋼板、亜鉛合金めっき鋼板を好適に使用することができる。
本発明の金属表面処理剤が貯蔵安定性に優れる理由は、2種以上の互いに反応する反応性基を有するシランカップリング剤の混合物をバインダ成分に用いた組成物においては、貯蔵中に、反応性基同士が反応して貯蔵安定性を低下させることがあるが、本発明の表面処理剤においては、シランカップリング剤が有するアミノ基とエポキシ基とを予め反応させ、未反応のエポキシ基が実質的に残存しない反応生成物(A)を用いるため、貯蔵中にアミノ基とエポキシ基とが反応して貯蔵安定性を低下させることがないこと、また、バインダ成分が、安定化剤(C)によって安定化されており、加水分解されて生成したシラノール基の縮合が抑制されることによるものであると考えられる。本発明者らは、シラノール基が、安定化剤(B)であるリン酸系酸化合物や硝酸系酸化合物などに配位して安定化し、シラノール基同士の反応が抑制されるものと考えている。
本発明の金属表面処理剤を塗布した金属表面を加熱し乾燥すると、シランカップリング剤の反応生成物(A)や加水分解生成物(B)中のシラノール基同士の脱水縮合によりシロキサン結合を有する連続皮膜が形成される。上記生成したシロキサン結合を有する難溶性化合物を含む皮膜によるバリアー効果が発揮されるので金属材料の耐食性が向上するとともに、シロキサン結合に基づく皮膜であるため、導電性の低下を抑制できるものと考えられる。また、シランカップリング剤やアルコキシシラン化合物の加水分解で生じたシラノール基は、金属材料表面と反応してオキサン結合を形成し密着性を向上させるとともに耐食性の向上に寄与するものである。
次に実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものでない。「部」及び「%」は、特に断りがない限りいずれも質量基準によるものとする。
反応生成物(A)の製造
製造例1
還流冷却器、温度計、攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、脱イオン水850部を配合し、氷浴で冷却しながらN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン53部を徐々に投入し溶解させた。ついで、この内容物に酢酸23部を配合して中和した後、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン57部を投入し、30分間攪拌して溶解させた後、89%リン酸水溶液11部を加え、ついで80℃で5時間加熱し反応を完了させ反応生成物の水性液を得た。1H−NMR測定結果からこの反応生成物にはエポキシ基は残存していないことを確認した。反応生成物の水性液における中和当量は1.0である。
ついで、この反応生成物の水性液に脱イオン水300部を加えて溶解させた後、60〜70℃で、減圧蒸留にて1000部となるまで濃縮した。このようにして加水分解で生じたアルコールを水分とともに留去した後、200メッシュのフィルターでろ過し、脱溶剤した反応生成物水性液A1を得た。
反応生成物水性液A1において、固形分は10%、pH6.1であり、ガスクロマトグラフによって測定したアルコール濃度は1.5%未満で、引火点は観測されなかった。反応生成物水性液A1の固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されていた。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は3当量である。反応生成物水性液A1の樹脂固形分の重量平均分子量は約4000であった。
製造例2
還流冷却器、温度計、攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、脱イオン水850部と酢酸19部を配合し、攪拌しながら、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン61部を徐々に投入し、10分間攪拌して溶解させた。ついで、この中にN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン57部を徐々に投入し30分間攪拌して溶解させた後、89%リン酸水溶液6部を加え、ついで80℃で5時間加熱し反応を完了させ反応生成物の水性液を得た。1H−NMR測定結果からこの反応生成物にはエポキシ基は残存していないことを確認した。反応生成物の水性液における中和当量は0.7である。
ついで、この反応生成物の水性液に脱イオン水300部を加えて溶解させた後、60〜70℃で減圧蒸留にて1000部となるまで濃縮した。このようにして加水分解で生じたアルコールを水分とともに留去し、200メッシュのフィルターでろ過し、脱溶剤した反応生成物水性液A2を得た。
反応生成物水性液A2において、固形分は10%、pH6.7であった。ガスクロマトグラフによって測定したアルコール濃度は1.5%未満であり、引火点は観測されなかった。反応生成物水性液A2の固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されていた。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は3当量である。反応生成物水性液A2の樹脂固形分の重量平均分子量は約4000であった。
製造例3
還流冷却器、温度計、攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン57部を配合し、これにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン61部を撹拌下にて3時間かけて滴下した。滴下により発熱したが、40℃以下となるよう保持し、滴下終了後、1時間、撹拌下にて熟成、放冷した後、加熱し80℃で5時間反応させた。ついで、酢酸28部と脱イオン水850部を配合して30分間攪拌して反応後の内容物を溶解、加水分解反応させ、ついで89%リン酸水溶液6部を加えてさらに30分間攪拌し、溶解させて反応生成物の水性液を得た。1H−NMR測定結果から、この反応生成物にはエポキシ基は残存していないことを確認した。反応生成物の水性液における中和当量は1.0である。
ついで、この反応生成物の水性液に脱イオン水300部を加えて溶解させた後、60〜70℃で、減圧蒸留にて1000部となるまで濃縮して、加水分解で生じたアルコールを水分とともに留去し、ついで、200メッシュのフィルターでろ過し、脱溶剤した反応生成物水性液A3を得た。
反応生成物水性液A3において、固形分は10%、pH6.5であった。ガスクロマトグラフによって測定した反応生成物水性液A3中のアルコール濃度は1.5%未満であり、引火点は観測されなかった。反応生成物水性液A3の固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されていた。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は3当量である。反応生成物水性液A3の樹脂固形分の重量平均分子量は約4500であった。
製造例4
製造例3において、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランの配合量57部を62部に、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの配合量61部を56部に変更し、酢酸の配合量28部を30部に変更する以外は製造例3と同様の操作を行い、反応生成物の水性液を得た。
反応生成物の水性液は、1H−NMR測定結果から、エポキシ基は残存していないことを確認した。反応生成物の水性液における中和当量は1.0である。
この反応生成物の水性液に脱イオン水を加え、減圧蒸留にて脱溶剤して得た反応生成物水性液A4において、固形分は10%、pH6.5であった。ガスクロマトグラフによって測定した反応生成物水性液A4中のアルコール濃度は1.5%未満であり、引火点は観測されなかった。反応生成物水性液A4の固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されていた。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は3.5当量である。反応生成物水性液A4の樹脂固形分の重量平均分子量は約4000であった。
製造例5
製造例1において、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン53部を3−アミノプロピルトリエトキシシラン65部に変更し、酢酸の配合量23部を7部に、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの配合量61部を70部に、89%リン酸水溶液の配合量6部を3部に変更する以外は、製造例1と同様の操作を行い、反応生成物の水性液を得た。
反応生成物の水性液は、1H−NMR測定結果から、エポキシ基は残存していないことを確認した。反応生成物の水性液における中和当量は0.5である。
この反応生成物の水性液に脱イオン水を加え、減圧蒸留にて脱溶剤して得た反応生成物水性液A5において、固形分は10%、pH7.1であった。ガスクロマトグラフによって測定した反応生成物水性液A5中のアルコール濃度は1.5%未満であり、引火点は観測されなかった。反応生成物水性液A5の固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されていた。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのエポキシ基1当量に対する、3−アミノプロピルトリエトキシシランのアミノ基の活性水素の量は2.0当量である。反応生成物水性液A5の樹脂固形分の重量平均分子量は約3000であった。
製造例6
製造例2において、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン61部をγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン72部に変更する以外は、製造例2と同様の操作を行い、反応生成物の水性液を得た。
反応生成物の水性液は、1H−NMR測定結果から、エポキシ基は残存していないことを確認した。反応生成物の水性液における中和当量は0.7である。
この反応生成物の水性液に脱イオン水を加え、減圧蒸留にて脱溶剤して得た反応生成物水性液A6において、固形分は10%、pH6.7であった。ガスクロマトグラフによって測定した反応生成物水性液A6中のアルコール濃度は1.5%未満であり、引火点は観測されなかった。反応生成物水性液A6の固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されていた。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は3.0当量である。反応生成物水性液A6の樹脂固形分の重量平均分子量は約4000であった。
製造例7
製造例1において、最初に配合する脱イオン水850部を856部に変更し、かつ反応生成物の水性液に脱イオン水300部を添加せず、かつ減圧蒸留による脱溶剤を行わない以外は、製造例1と同様にして反応生成物水性液A7を得た。
反応生成物水性液A7は、1H−NMR測定結果から、エポキシ基は残存していないことを確認した。反応生成物水性液A7における中和当量は1.0であり、pH6.1であった。反応生成物水性液A7の固形分は10%であった。ガスクロマトグラフによって測定した反応生成物水性液A7中のアルコール濃度は5.0%であり、引火点は76℃であった。反応生成物水性液A7の固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されていた。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は3.0当量である。反応生成物水性液A7の樹脂固形分の重量平均分子量は約3500であった。
下記表1に製造例1〜7で得た反応生成物水性液の配合、性状などを示す。表1においては水の配合量の記載は省略する。
Figure 2013170313
製造例8
ビーカー中に、脱イオン水100部、酢酸1部を配合し攪拌した。室温にて、この液中に、メチルトリメトキシシラン27部を攪拌しながら徐々に添加し、添加終了後、30分間攪拌し、無色透明の液体を得た。この液体をナス型フラスコに移し、脱イオン水128部を加えて希釈し、ロータリー型エバポレータで、内容物が128部になるまで濃縮して、メチルトリメトキシシランの加水分解生成物の水性液B1を得た。得られた水性液B1は、固形分10%、pH4であった。
製造例9
ビーカー中に、脱イオン水80部、メタノール20部、酢酸1部を配合し攪拌した。室温にて、この液中に、プロピルトリメトキシシラン22部を攪拌しながら徐々に添加し、添加終了後、30分間攪拌し、無色透明の液体を得た。この液体をナス型フラスコに移し、脱イオン水123部を加えて希釈し、ロータリー型エバポレータで、内容物が123部になるまで濃縮して、プロピルトリメトキシシランの加水分解生成物の水性液B2を得た。得られた水性液B2は、固形分10%、pH4であった。
製造例10
ビーカー中に、脱イオン水80部、エタノール20部、酢酸1部を配合し、攪拌した。室温にて、この液中に、メチルトリエトキシシラン38部を攪拌しながら徐々に添加し、添加終了後、30分間攪拌し、無色透明の液体を得た。この液体をナス型フラスコに移し、脱イオン水139部を加えて希釈し、ロータリー型エバポレータで、内容物が123部になるまで濃縮して、メチルトリエトキシシランの加水分解生成物の水性液B3を得た。得られた水性液B3は、固形分10%、pH4であった。
製造例11
ビーカー中に、脱イオン水100部、酢酸1部を配合し攪拌した。室温にて、この液中に、メチルトリメトキシシラン27部を攪拌しながら徐々に添加し、添加終了後、30分間攪拌し、無色透明の液体である、メチルトリメトキシシランの加水分解生成物の水性液B4を得た。得られた水性液B4は、固形分10%、pH2であった。
下記表2に製造例8〜11で得た加水分解生成物の水性液の配合、性状などを示す。
Figure 2013170313
実施例1
製造例1で得た反応生成物水性液A1の量100部に対し、製造例8で得た加水分解生成物水性液B1を5部配合し混合し、pHが6.0未満の場合にはアンモニア水を添加してpH6.0に調整し固形分10%の水性バインダ組成物を得た。
実施例2〜16及び比較例1
実施例1において、下記表3に示す種類及び配合とする以外、実施例1と同様に行い、各水性バインダ組成物を得た。
実施例17
製造例7で得た反応生成物水性液A7の量100部に対し、製造例11で得た加水分解生成物水性液B4を20部徐々に配合、混合し、無色透明の液体を得た。この液体をナス型フラスコに移し、脱イオン水50部を加えて希釈し、ロータリー型エバポレータで、内容物が120部になるまで濃縮し、pHが6.0未満の場合にはアンモニア水を添加してpH6.0に調整し固形分10%の水性バインダ組成物を得た。
比較例2
製造例8で得た加水分解生成物水性液B1そのものを水性バインダ組成物とした。
比較例3
製造例1で得た反応生成物水性液A1そのものを水性バインダ組成物とした。
水性バインダ組成物の貯蔵試験
実施例1〜17ならびに比較例1〜3で作成した水性バインダ組成物を、各々20℃、30℃、40℃、50℃の各温度で30日間貯蔵し、液状態を、液外観、液粘度に基づき下記基準で貯蔵安定性を評価した。その結果を下記表3に示す。初期の液状態も併せて記載する。液粘度は、測定温度20℃、B型回転粘度計にて60rpmの条件で測定した。
○:液外観は無色〜単黄色透明で、かつ粘度2.5mPa・s以下
△:液外観はわずかな濁り、沈殿物もしくは浮遊物が見られる、又は粘度が2.5mPa・sを超えるが著しい増粘やゲル化は認めらない。
×:液外観はかなりの濁り、沈殿物もしくは浮遊物が見られる、又は著しい増粘もしくはゲル化が認められる。
Figure 2013170313
金属表面処理剤の調製
実施例18〜22ならびに比較例4〜6
金属表面処理剤の配合及び液安定性を下記表4に示す。下記表4に示す配合組成となるように各成分を配合し、酢酸又はアンモニア水を用いてpH7.0に調整して各金属表面処理剤を得た。
Figure 2013170313
Figure 2013170313
上記表4における貯蔵安定性は、所定の温度で1週間貯蔵した後の液外観及び液粘度に基づいて下記基準で評価した。液粘度は、測定温度20℃、B型回転粘度計にて60rpmの条件で測定した。
○:透明、粘度10mPa・s以下
△:液外観はわずかな濁り、沈殿物もしくは浮遊物が見られる、又は粘度が10mPa・sを超えるが著しい増粘やゲル化は認めらない。
×:液外観はかなりの濁り、沈殿物もしくは浮遊物が見られる、又は著しい増粘もしくはゲル化が認められる。
表面処理板の製造
実施例40〜67ならびに比較例7及び8
板厚0.6mm両面電気亜鉛めっき鋼板(EG材、片面の目付量20g/m)の表面を、アルカリ脱脂剤(日本シービーケミカル社製、商品名「ケミクリーナー561B」)を溶解した濃度2%の水溶液を使用して、温度60℃の条件で2分間スプレー処理により脱脂することにより表面に付着しているゴミや油を除去し、水洗したのちに乾燥した。得られた脱脂処理した亜鉛めっき鋼板に、下記表4に示すように前記実施例及び比較例で得た各金属表面処理剤をロールコート法により塗布し、素材到達温度が100℃になるように20秒間焼付けて表面処理板を得た。金属表面処理剤は、製造後、初期のもの及び20℃で7日間貯蔵後のものを使用した。
各実施例及び比較例で調製した金属表面処理剤を用いて作成した各表面処理板について下記試験方法に基づき耐食性及び導電性の試験を行った。その試験結果を下記表5に示す。また、各表面処理板について、後記密着性試験を行った結果は、いずれの表面処理板においても表面処理皮膜の剥離が認められず良好であった。
Figure 2013170313
試験方法:
耐食性:得られた各表面処理板について、各表面処理板の端面部及び裏面部をシールし、JIS Z 2371による塩水噴霧試験(SST)を行った。試験時間120時間及び240時間での錆の発生程度下記基準により評価した。
a:錆発生が認められない。
b:錆発生が全面積の5%未満。
c:錆発生が全面積の5%以上でかつ10%未満。
d:錆発生が全面積の10%以上でかつ50%未満。
e:錆発生が全面積の50%以上。
導電性:三菱化学アナリテック(株)製ロレスタGP、ASP端子を用いて、表面処理板の任意の10箇所の表面抵抗値を測定し、10−4Ω以下を示す回数で評価した。
a :10回全て
b :6〜9回
c :1〜5回
d :0回。
密着性試験:各表面処理板の表面処理皮膜面に、カッターナイフにて素地に達するように、10mm四方に1mm×1mmの正方形が100個となるよう碁盤目を作成した。この碁盤目部が外側に押出されるように、エリクセン試験(7mm押し出し)を行った後、押出された加工部にセロハン粘着テープを密着させ、瞬時に剥離させた時に、表面処理皮膜の剥離の程度を評価した。

Claims (11)

  1. 少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)と、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)とを反応させてなる反応生成物(A)と、
    下記式
    (R)4−n−Si−(X)
    (式中、Rは、反応性を有さない置換基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、Xは、アルコキシル基を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示される少なくとも1種のアルコキシシラン化合物(c)の加水分解生成物(B)と、有機酸、無機リン酸及び硝酸系酸化合物から選ばれる少なくとも一種の安定化剤(C)と、水とを含有せしめてなる、pH4.0〜10.0のバインダ組成物であって、上記シランカップリング剤(a)は、シランカップリング剤(b)中のエポキシ基1当量に対し、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の活性水素の量が1.0〜5.0当量となる割合で配合され、反応生成物(A)の少なくとも一部は、上記アミノ基とエポキシ基とが化学結合しており、反応生成物(A)は、シランカップリング剤(b)に基づく未反応のエポキシ基を実質的に有さず、かつ前記シランカップリング剤(a)及びシランカップリング剤(b)に基づく加水分解性基の全てが実質的にシラノール基に加水分解されており、該加水分解生成物(B)/該反応生成物(A)の配合割合が、該加水分解生成物(B)/該反応生成物(A)の固形分質量比が0.01〜2.0となる割合であり、しかも上記安定化剤(C)の量が、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の中和当量が0.1〜2.0の範囲内となる量であることを特徴とする金属表面処理剤用水性バインダ組成物。
  2. 反応生成物(A)が、酸中和剤を含有する水性媒体中で、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)と、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)とを付加反応及び加水分解反応させてなるものである請求項1記載の水性バインダ組成物。
  3. シランカップリング剤(a)が、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン及び3−アミノプロピルトリエトキシシランから選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性バインダ組成物。
  4. シランカップリング剤(b)がγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランから選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性バインダ組成物。
  5. 上記アルコキシシラン化合物(c)が、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、エチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、フェニルトリメトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランから選ばれる少なくとも1種のトリアルコキシシランである請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性バインダ組成物。
  6. バインダ組成物における固形分割合が、5〜30質量%であり、かつバインダ組成物が引火点を有さない非危険物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性バインダ組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属表面処理剤用水性バインダ組成物及び防錆剤を含有することを特徴とする金属表面処理剤。
  8. 請求項7記載の金属表面処理剤を、金属材料表面に塗布し、乾燥して、金属材料表面に、乾燥皮膜重量0.05〜3.0g/mの表面処理皮膜を形成することを特徴とする金属材料の表面処理方法。
  9. 下記工程1〜3を有することを特徴とする、pHが4.0〜10.0である金属表面処理剤用水性バインダ組成物の製造方法、
    工程1:水性媒体中で、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)と、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)とを反応させて反応生成物(A)の水性液を製造する工程、
    工程2:水性媒体中で、下記式
    (R)4−n−Si−(X)
    (式中、Rは、反応性を有さない置換基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、Xは、アルコキシル基を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示される少なくとも1種のアルコキシシラン化合物(c)を加水分解して加水分解生成物(B)の水性液を製造する工程、及び
    工程3:工程1で得た反応生成物(A)の水性液と工程2で得た加水分解生成物(B)の水性液とを、該加水分解生成物(B)/該反応生成物(A)の固形分質量比が0.01〜2.0となるように混合し、かつ有機酸、無機リン酸及び硝酸系酸化合物から選ばれる少なくとも一種の安定化剤(C)の量が、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の中和当量0.1〜2.0の範囲内のとなるよう生成物混合水性液を調製する工程、
    該工程1において、上記シランカップリング剤(a)は、シランカップリング剤(b)中のエポキシ基1当量に対し、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の活性水素の量が1.0〜5.0当量となる割合で配合され、反応生成物(A)の少なくとも一部は、上記アミノ基とエポキシ基とが化学結合され、反応生成物(A)は、シランカップリング剤(b)に基づく未反応のエポキシ基を実質的に有さず、かつ前記シランカップリング剤(a)及びシランカップリング剤(b)に基づく加水分解性基の全てが実質的にシラノール基に加水分解反応されたものである。
  10. 工程3の次に、下記工程4を有することを特徴とする請求項9記載の水性バインダ組成物の製造方法、
    工程4:工程3で調製された生成物混合水性液を脱溶剤して、バインダ組成物における固形分割合が、5〜30質量%であり、かつバインダ組成物における有機溶剤量が3質量%以下であって、バインダ組成物が引火点を有さない非危険物とする工程。
  11. 下記工程を有することを特徴とする、pHが4.0〜10.0である金属表面処理剤用水性バインダ組成物の製造方法、
    工程1:水性媒体中で、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)と、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)とを反応させて反応生成物(A)の水性液を製造する工程、
    工程1A:工程1で得た反応生成物(A)の水性液を脱溶剤して有機溶剤量が3質量%以下の反応生成物(A)の水性液を得る工程、
    工程2:水性媒体中で、下記式
    (R)4−n−Si−(X)
    (式中、Rは、反応性を有さない置換基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、Xは、アルコキシル基を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示される少なくとも1種のアルコキシシラン化合物(c)を加水分解して加水分解生成物(B)の水性液を製造する工程、
    工程2A:工程2で得た加水分解生成物(B)の水性液を脱溶剤して有機溶剤量が3質量%以下の加水分解生成物(B)の水性液を得る工程、
    及び
    工程3A:工程1Aで得た反応生成物(A)の水性液と工程2Aで得た加水分解生成物(B)の水性液とを、該加水分解生成物(B)/該反応生成物(A)の固形分質量比が0.01〜2.0となるように混合し、かつ有機酸、無機リン酸及び硝酸系酸化合物から選ばれる少なくとも一種の安定化剤(C)の量が、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の中和当量0.1〜2.0の範囲内のとなるよう生成物混合水性液を調製する工程、
    該工程1において、上記シランカップリング剤(a)は、シランカップリング剤(b)中のエポキシ基1当量に対し、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の活性水素の量が1.0〜5.0当量となる割合で配合され、反応生成物(A)の少なくとも一部は、上記アミノ基とエポキシ基とが化学結合され、反応生成物(A)は、シランカップリング剤(b)に基づく未反応のエポキシ基を実質的に有さず、かつ前記シランカップリング剤(a)及びシランカップリング剤(b)に基づく加水分解性基の全てが実質的にシラノール基に加水分解反応されたものである。
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