JP2013170146A - 有害生物防除剤及び有害生物防除方法 - Google Patents

有害生物防除剤及び有害生物防除方法 Download PDF

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Abstract

【課題】人体や植物に対する安全性が高く、かつ防除効果及び安定性に優れた有害生物防除剤を提供すること。
【解決手段】カプリン酸モノグリセリルと、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルからなる群より選ばれる1種又は2種以上と、水とを含有することを特徴とする有害生物防除剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、農業病害虫、園芸病害虫等といった有害生物を防除する有害生物防除剤に関し、詳細には、人体や植物に対する安全性が高く、かつ防除効果及び安定性に優れた有害生物防除剤に関する。
従来、有害生物の防除にはピレスロイド系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、等の各種合成殺虫剤が用いられてきた。
上記の合成殺虫剤の中には、人体や植物への安全性が十分に高くないもの、病害虫による薬剤抵抗性の発達が問題とされているもの、等があり、これらの問題を解消するための手段について種々検討がなされている。例えば、人体に対する安全性が高く、散布性の良好な殺虫、殺ダニ、植物用抗菌剤として、グリセリンモノC10〜18脂肪酸エステルを有効成分としたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特開平10−316509号公報
しかしながら、上記の従来技術では有害生物の防除効果が十分ではなく、依然として改良の余地があった。本発明はかかる問題を解決することを目的としたものである。
本発明者は、種々検討をした結果、下記の有害生物防除剤により上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は下記の構成からなる有害生物防除剤及び有害生物の防除方法からなるものである。
〔1〕カプリン酸モノグリセリルと、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルからなる群より選ばれる1種又は2種以上と、水とを含有することを特徴とする有害生物防除剤。
〔2〕カプリン酸モノグリセリルと、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルからなる群より選ばれる1種又は2種以上と、水とを含有する有害生物防除剤を、有害生物又は有害生物の生息し得る場所に適用することを特徴とする有害生物の防除方法。
本発明によれば、農業病害虫、園芸病害虫等といった各種有害生物に対し優れた防除効果を発揮し、かつ、人体や植物に対する安全性が高く、防除剤自体の安定性に優れた有害生物防除剤、前記有害生物防除剤を用いた有害生物の防除方法を提供することができる。
図1は、試験例1(方法4)の試験方法を示す概略図である。
本発明の有害生物防除剤(以下「本発明の防除剤」とも称する。)は、カプリン酸モノグリセリルを有効成分として含有するものである。
そして本発明の防除剤は、害虫に対しては、カプリン酸モノグリセリルが害虫の気門から効率よく浸透していき、害虫の気管を閉塞することで殺虫するものと考えられる。また病原菌に対しては、カプリン酸モノグリセリルが細胞膜に浸透し、溶菌あるいは原形質の流出を引き起こして殺菌するものと考えられる。
本発明の防除剤においてカプリン酸モノグリセリルの含有量は、防除剤全体に対して0.03質量%以上が好ましく、0.05〜0.5質量%がより好ましい。カプリン酸モノグリセリルの含有量がかかる範囲であれば、防除効果が十分発揮され、かつ薬害のおそれもなく、好ましい。
さらに本発明の防除剤は、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(以下「PEG脂肪酸エステル」とも称する)、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(以下「POEソルビタン脂肪酸エステル」とも称する。)及びポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル(以下「POEスチリルフェニルエーテル」とも称する)(以下、これらの化合物を「本発明のエステル・エーテル類」とも称する)からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有する。
これら本発明のエステル・エーテル類の1種又は2種以上を含有することにより、カプリン酸モノグリセリルの各種病害虫に対する防除効果を顕著に増大する。
本発明の防除剤は、カプリン酸モノグリセリルと本発明のエステル・エーテル類との含有量を、加成則により得られるHLBが約12〜18となるように調整することが好ましい。HLBをかかる範囲とすることで、本発明の防除剤の防除効果を高め、また防除剤全体の安定性を向上することができる。
これはカプリン酸モノグリセリルと本発明のエステル・エーテル類とが会合体を形成することで、カプリン酸モノグリセリルが水を含有する本発明の防除剤中にあっても安定に分散し、各種病害虫に対して優れた防除効果が発揮されるためと考えられる。
本発明のエステル・エーテル類である、上記のPEG脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びPOEソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素鎖長が炭素数8〜18のものが好ましく、8〜14のものがさらに好ましい。炭素鎖長がかかる範囲であれば、植物のクチクラ層との親和性がよくなり、植物に対する展着性及び浸透性がよくなる。
本発明のエステル・エーテル類としては、PEG脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル、及びPOEスチリルフェニルエーテルからなる群より選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
PEG脂肪酸エステルとしては、例えば、PEGカプリン酸エステル、PEGカプリル酸エステル、PEGラウリン酸エステル、PEGミリスチン酸エステル、等が挙げられる。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖カプリル酸エステル、ショ糖カプリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、等が挙げられる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、カプリル酸ポリグリセリル、カプリン酸ポリグリセリル、ラウリン酸ポリグリセリル、ミリスチン酸ポリグリセリル、等が挙げられる。
POEソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、POEソルビタンカプリレート、POEソルビタンカプレート、POEソルビタンラウレート、POEソルビタンミリステート、等が挙げられる。
POEスチリルフェニルエーテルとしては、例えば、POEモノスチリルフェニルエーテル、POEジスチリルフェニルエーテル、POEトリスチリルフェニルエーテル等が挙げられる。
本発明の防除剤において、本発明のエステル・エーテル類の含有量は、防除剤全体に対して0.03質量%以上が好ましく、0.05〜1質量%がより好ましい。またカプリン酸モノグリセリルと本発明のエステル・エーテル類との割合(質量比)は1:1〜1:10が好ましい。
かかる範囲とすることで、各種病害虫に対する防除効果に優れ、防除剤中にあってカプリン酸モノグリセリルの分散性が良好となり、また防除剤の処理面での汚染がなく、植物への薬害の影響がないことから好ましい。
さらに本発明の防除剤は、前記各成分の溶媒として機能する水を含有する。そして本発明の防除剤は水系であるため、植物への薬害の影響がない。
本発明の防除剤には、前記各成分及び水の他に、本発明の効果を損なわない限り、例えば、溶解助剤、効力増強剤、酸化防止剤、殺虫剤、殺菌剤、防黴剤、着香料、着色料、等の成分を配合してもよい。
本発明の防除剤が適用される有害生物としては、例えば、農園芸害虫、衛生害虫、不快害虫、貯穀害虫等の害虫、及び植物病原菌、等が挙げられる。
農園芸害虫としては、例えば、ゾウムシ、ハムシ、ニジュウヤホシテントウ、等の甲虫目、アブラムシ、コナジラミ、カメムシ、ウンカ、ヨコバイ、カイガラムシ、グンバイムシ、等のカメムシ目、アザミウマ、等のアザミウマ目、ヨトウ、アオムシ、ウワバ、オオタバコガ、ドクガ、ヒトリガ、メイガ、ウラナシジミ、ヤガ、シャクトリムシ、イラガ、ハマキムシ、スズメガ、コナガ、ケムシ、等のチョウ目、ハモグリバエ、ミバエ、タネバエ、等のハエ目、ハダニ、コナダニ、サビダニ、ホコリダニ、等のダニ目、ハバチ、等のハチ目、及びこれらの幼虫、等が挙げられる。
衛生害虫としては、例えば、蚊、ハエ、ゴキブリ、アブ、ノミ、ナンキンムシ、ヌカカ、ユスリカ、シラミ、ダニ、及びこれらの幼虫、等が挙げられる。
不快害虫としては、例えば、カメムシ、ユスリカ、チョウバエ、アリ、クロアリ、シロアリ、クモ、ダンゴムシ、ハチ、ゲジゲジ、ケムシ、ヤスデ、シバンムシ、アリガタバチ、キクイムシ、シミ、イガ、コイガ、カツオブシムシ、ヌカカ、ヨコバイ、及びこれらの幼虫、等が挙げられる。
貯穀害虫としては、例えば、ノシメマダラメイガ、コクヌストモドキ、コクゾウムシ、ヒララキクイムシ、ジンサンシバムシ、タバコシバンムシ、及びこれらの幼虫、等が挙げられる。
植物病原菌としては、例えば、うどん粉病、灰色かび病、等の原因菌、等が挙げられる。
本発明の防除剤は、有害生物に噴霧、塗布等することにより、また有害生物が生息し得る場所、例えば、農作物、栽培畑、果樹園、一般家庭内、倉庫、厨房、家具、押入れ、玄関、洗面所、等に、噴霧、塗布等することにより適用できる。
また本発明の防除剤は、そのまま使用してもよいし、固体、もしくはゲル剤や液剤、等の濃厚分散体として供給し、使用時に水等で希釈して有害生物又は有害生物の生息し得る場所に適用することができる。
なお後述する試験例5〜7の結果からも理解されるように、本発明の防除剤は、疎水性物質(例えば、ピレトリン、シフルトリン、カプリン酸、等)を併用すると、有害生物に対する防除効果が低下する傾向がみられることから、従来、有害生物の防除に用いられていたピレスロイド系殺虫剤や脂肪酸等を併用しない方がよい。
このことから本発明の防除剤において、殺虫剤、殺菌剤や防腐剤等を併用する際には、親水性物質から選択して用いるのがよい。そのようなものとして、例えば、殺虫剤としてはジノテフラン、イミダクロプリド、アセタミプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、ニテンピラム、等のネオニコチノイド系殺虫剤等が挙げられる。尚、この他でも親水性物質であれば、各種の殺虫剤、殺菌剤や防腐剤等を用いることができる。
この原因については明らかではないが、例えば、カプリン酸モノグリセリル及びポリグリセリン脂肪酸エステルと、ピレトリン(疎水性物質)とを含有する場合、カプリン酸モノグリセリルは、ポリグリセリン脂肪酸エステルと共にピレトリンを取り囲み会合体を形成し、その疎水性基はピレトリンの方向(会合体の内側)を向いているためであると推測される。
一方、ピレトリンを含有しない場合、カプリン酸モノグリセリルが疎水性物質の分散等に影響しないことから、カプリン酸モノグリセリルが有する本来の防除効果を発揮するためと考えられる。
以下に実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<試験例1>
下記条件に基づき、(方法1)〜(方法4)に従って防除効果を確認した。
防除剤の処方:
カプリン酸モノグリセリル 0.05質量%
POEソルビタンラウレート 0.20質量%
水 99.75質量%
計 100.00質量%
(方法1)
自然に生息している供試虫に十分濡れる程度に前記防除剤をトリガースプレーヤーT−95(キャニヨン社製)で約3ml処理し、その後、プラスチックカップ(直径85mm、深さ40mm)に餌と共に移して致死の観察を行い、反復試験の結果から致死率(%)を算出した。
(方法2)
プラスチックカップ(直径85mm、深さ40mm)内に供試虫を放し、十分濡れる程度に防除剤をトリガースプレーヤーT−95(キャニヨン社製)で約3ml処理し、その後、別のプラスチックカップに餌と共に移して致死の観察を行い、反復試験の結果から致死率(%)を算出した。
(方法3)
50mm×50mm×20mmの網カゴに入れた供試虫を、防除剤に5秒間浸し、その後、別のプラスチックカップに餌と共に移して致死の観察を行い、反復試験の結果から致死率(%)を算出した。
(方法4)
図1に概略図を示したとおり、水を約150ml充填したプラスチックカップの蓋に切り込みを入れ、50mm×50mmにカットした脱脂綿の一部を通した。そして吸水した脱脂綿の上に直径40mmにカットしたキャベツ又はキュウリの葉片を置き、その上に供試虫を放飼した後、農薬散布器DIK−7322(大起理化工業社製)にて、ターンテーブル回転数9rpm、散布圧0.02MPa、散布量8mLの条件で上記防除剤を散布し、致死の観察を行い、反復試験の結果から致死率(%)を算出した。
表1に、供試虫、方法、供試虫数と反復回数又は各試験回の供試虫数、及び致死率(%)を示す。
Figure 2013170146
表1より、本発明の防除剤は、農園芸害虫、衛生害虫および不快害虫の各種有害生物に対して高い防除効果を発揮することがわかった。また汎用の合成殺虫剤と比べても、本発明の防除剤は防除対象の範囲が広いことがわかる。
<試験例2>
下記条件において上記(方法4)にしたがって、葉片上の供試虫20頭に各処方の防除剤を散布し、防除効果を確認した。試験は3回行い、平均の致死率(%)を表2に示した。
供試虫:モモアカアブラムシ成虫
葉片:キャベツ
防除剤の処方:
カプリン酸モノグリセリル 0.05質量%
本発明のエステル・エーテル類 0.20質量%
(表2に示すもの)
水 99.75質量%
計 100.00質量%
また、防除剤の安定性を調べるために、遮光および40℃の条件下で3カ月間静置し、外観を目視で確認した。結果を表2に示す。
Figure 2013170146
上記試験の結果から、本発明のエステル・エーテル類を含有した実施例の結果はいずれも致死率(%)が高く、特に脂肪酸の炭素鎖長が炭素数8〜14の本発明のエステル・エーテル類を含有した実施例2−1〜2−4、2−6、及び2−7は致死率(%)が高い。また、POEトリスチリルフェニルエーテルについても、実施例2−9、2−10の結果から効果があることがわかる。さらに、実施例2−6と2−7との対比から、同じ骨格でも炭素鎖が同一の場合はHLBが高い方が防除効果に優れることがわかった。一方、本発明のエステル・エーテル類を含有せず、POE硬化ヒマシ油を用いた比較例2−1、2−2では、効果が低いものであった。
一般的に水系において、含有される有効成分の粒子が細かく、粒子の衝突が少なくなって凝集がしにくくなると、その水系の安定性は高くなり、外観は透明を呈してくる。
本発明の防除剤においても、カプリン酸モノグリセリル(HLB6.5)と、脂肪酸の炭素鎖が8〜14である本発明のエステル・エーテル類を用いる際には、その加成則により得られるHLBを約12よりも大きくすると系の安定性が高まり、本発明の防除剤の透明性も高まる傾向がある。
<試験例3>
下記条件に基づき、各植物に防除剤を散布し、薬害発生の有無を確認した。
供試植物:野菜(4〜8葉期の苗)
キュウリ、トマト、ナス、レタス、キャベツ、バジル、オクラ、インゲン、ネギ
防除剤の処方:
カプリン酸モノグリセリル 0.05質量%
ラウリン酸ペンタグリセリル 0.20質量%
水 99.75質量%
計 100.00質量%
(方法)
30cmの距離から植物の葉が十分濡れる程度に、上記防除剤をトリガースプレーヤーT−95(キャニヨン社製)で10〜20mLを散布した。
(結果)
いずれの植物においても葉の変色や縮れは見られず、薬害は発生しなかった。
<試験例4>
下記処方の防除剤を、40℃、5ヶ月間、暗所にて静置し、均一な系を維持していることを目視により確認した。
防除剤処方:
カプリン酸モノグリセリル 0.05質量%
ラウリン酸ペンタグリセリル 0.20質量%
水 99.75質量%
計 100.00質量%
<試験例5>
下記条件において上記<試験例1>の(方法4)にしたがって、葉片上の供試虫20頭に各処方の防除剤を散布し、防除効果を確認した。試験は3回行い、平均致死率(%)を表3に示した。
供試虫:モモアカアブラムシ成虫
葉片:キャベツ(φ40mm)
防除剤処方:下記表3
Figure 2013170146
処方2と処方3の結果を比較すると、カプリン酸モノグリセリルと本発明のエステル・エーテル類(ラウリン酸ペンタグリセリル)を組み合わせることで、従来の殺虫剤であるピレトリンと本発明のエステル・エーテル類(ラウリン酸ペンタグリセリル)を組み合わせたものよりも致死率(%)が著しく高くなることがわかる。
一方、処方1と処方2の対比から、処方2にカプリン酸モノグリセリルを添加しても致死率(%)の増強はほとんどみられず、処方1と処方3との対比から、ピレトリン(疎水性物質)を添加したことにより、致死率(%)が大幅に低下したことがわかる。
<試験例6>
下記条件に基づき、害虫に各処方の防除剤を散布し、防除効果を確認した。
供試虫:ハスモンヨトウ幼虫
防除剤処方:下記表4
(方法)
プラスチックカップ(直径85mm、深さ40mm)に供試虫10頭を入れ、20cmの距離から上記防除剤をトリガースプレーヤーT−95(キャニヨン社製)で約3mL散布した。次に供試虫を別のプラスチックカップに移し、毎分ノックダウン虫数を計数してKT90(分)を算出し、その結果を表4に示した。
Figure 2013170146
カプリン酸モノグリセリルと本発明のエステル・エーテル類(POEソルビタンラウレート)を組み合わせた処方6は、従来の殺虫剤であるピレトリン(疎水性物質)と本発明のエステル・エーテル類(POEソルビタンラウレート)を配合した処方5よりもKT90(分)が著しく早く、その効力差は約7.5倍であった。
一方、処方4と処方5の対比から、処方5にカプリン酸モノグリセリルを添加してもKT90(分)はほとんど差がみられず、処方4の方が遅くなる結果となった。
以上の試験結果から、カプリン酸モノグリセリルとピレトリンを併用することで防除効果が高まることはなく、KT90(分)を早めるためには、むしろピレトリンを併用しない方がよいと考えられる。
<試験例7>
下記条件に基づき、葉片上の害虫に各処方の防除剤を散布し、防除効果を確認した。
供試虫:ワタアブラムシ成虫
葉片:キュウリ(φ40mm)
防除剤処方:下記表5
(方法)
試験例2と同様に行い、致死率を算出した。結果を表5に示す。
Figure 2013170146
処方10は致死率(%)が100%であるのに対して、シフルトリン(疎水性物質)を添加した処方7、カプリン酸(疎水性物質)を添加した処方8では、致死率の低下がみられた。一方、ジノテフラン(親水性物質)を添加した処方9では、致死率の低下はみられなかった。
このことから、疎水性物質は防除効果を低下させることが示唆され、本発明の防除剤において、疎水性物質は配合禁忌にあたるものと考えられた。
<試験例8>
カプリン酸モノグリセリルの含有量を変化させて防除効果を確認した。防除剤処方を表6に示すものとした以外は、試験例7と同様に防除効果を確認した。結果を表6に示す。
Figure 2013170146
上記結果より、カプリン酸モノグリセリルの含有量が0.03質量%以上であれば防除効果が十分に得られること、及び含有量が大きくなるに連れて防除効果が高くなることがわかる。一方、含有量が大きくても防除効果の低下はみられないが、植物への薬害の影響を鑑みると、1.0質量%以下が好ましいと言える。
<試験例9>
下記条件に基づき、害虫に対する防除効果、植物に対する発病予防効果を確認した。
下記に示す処方の防除剤を調製し、表7に示す各種植物に害虫又は病害を発生させ、植物が十分に濡れる程度に防除剤を散布し、一定期間経過した状態で無処理区と比較して防除効果を調べた。
防除剤処方:
カプリン酸モノグリセリル 0.05質量%
POEソルビタンラウレート 0.20質量%
プロピレングリコールモノメチルエーテル 0.20質量%
水 99.55質量%
計 100.00質量%
・防除価の算出方法
病害の場合:
植物1株あたり任意に20葉を選択し、以下の指数にしたがい発病の程度を調査し発病度を求め、さらに防除価を算出した。試験は3区、5反復で実施した。
発病度=Σ(指数別発病葉数×指数)÷(調査葉数×4)×100
指数
0:発病を認めない
1:病班面積5%未満
2:病班面積5%以上25%未満
3:病班面積25%以上50%未満
4:病班面積50%以上
防除価=(1−検体発病度/無処理発病度)×100
・害虫の場合
植物1株あたりの生息虫数を調査し、以下の式に従い防除価を算出した。試験は3区、5反復で実施した。
防除価=100−{(散布3日後処理区生息虫数−散布前処理区生息虫数)/(散布前の無処理区生息虫数−散布3日後無処理区生息虫数)×100}
Figure 2013170146
上記の試験結果より、フィールドにおいても各種の病害および害虫に対して高い防除価が得られ、本発明の防除剤が、広い範囲の有害生物の防除効果に優れていることが明らかとなった。

Claims (2)

  1. カプリン酸モノグリセリルと、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルからなる群より選ばれる1種又は2種以上と、水とを含有することを特徴とする有害生物防除剤。
  2. カプリン酸モノグリセリルと、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルからなる群より選ばれる1種又は2種以上と、水とを含有する有害生物防除剤を、有害生物又は有害生物の生息し得る場所に適用することを特徴とする有害生物の防除方法。
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