JP2013166996A - パラジウム抽出剤及びパラジウムの分離方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】パラジウムの選択性および抽出速度が高く、アンモニアによる逆抽出が可能なパラジウム抽出剤、およびそれを用いたパラジウムの分離方法を提供する
【解決手段】下記式(I)で示される硫黄含有ジアミド化合物からなる、又は該硫黄含有ジアミドを含有することを特徴とするパラジウム抽出剤である。
Figure 2013166996

(式中R,R’,R’’およびR’’’はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、n−ブチル基、sec−ブチル基、またはiso−ブチル基を表す)また、パラジウムを含有する酸性の被処理液と、有機溶媒に前記パラジウム抽出剤を溶解させてなる抽出溶液とを接触させることにより、パラジウムを抽出溶液に抽出する抽出工程を備えることを特徴とするパラジウムの分離方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、パラジウム抽出剤及びパラジウムの分離方法に関し、詳しくは、パラジウムの選択性、抽出速度に優れ、アンモニアによる効率の良い逆抽出が可能なパラジウム抽出剤およびそれを用いたパラジウムの分離方法に関するものである。
工業用触媒や自動車用排ガス浄化触媒、多くの電化製品に白金やパラジウムなどの白金族金属が用いられている。これらの白金族金属は高価であり、資源としても貴重であることから、従来から使用後には回収してリサイクルすることが行われてきている。また最近では資源の保全を考えて、回収リサイクルすることの重要性が一層高まってきている。
従来、白金族金属の回収には、沈殿分離法、イオン交換法、電解析出法、溶媒抽出法などの多くの方法が提案され、また実施されている。これらの方法の中では溶媒抽出法が選択性、経済性及び操作性の点から広く採用されている。
溶媒抽出法によるパラジウム分離には、白金、ロジウムおよびベースメタルから選択的分離が可能であることが要求される。現在最も広く使用されているパラジウム抽出剤の一つにジアルキルスルフィド(DAS)がある(例えば、特許文献1)。DASは、パラジウム、白金及びロジウムを含む酸溶液からパラジウムを選択的に抽出し、アンモニア水溶液を用いて逆抽出を行うことで、抽出液からパラジウムを回収することが可能である。しかし、DAS単独では、パラジウムの抽出速度が小さく、また耐酸化性が良くないという問題がある。
パラジウムに対する選択性が高くかつ迅速に抽出可能な抽出剤として、硫黄含有ジアミド化合物が提案され、該化合物群に属する種々の誘導体が合成され、それぞれの効果が検討されている(特許文献2)。特許文献2に記載されている、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニル−チオジグリコールアミドやN,N’−ジメチル−N,N’−ジオクチル−チオジグリコールアミドは、パラジウムを選択的かつ短時間(数分間以内)に抽出することのできる抽出剤である。
一方、チオ尿素を用いなくても、アンモニア水溶液での逆抽出が可能な硫黄含有ジアミド化合物として、N,N,N’,N’−テトラ−n−オクチル−チオグリコールアミド(TOTDGA)が示されている(非特許文献1)。
さらに、既存の抽出剤の問題点を解消しうる新たな抽出剤として、スルフィド含有モノアミド化合物も提案されている(特許文献3)。特許文献3記載の化合物は、チオ尿素を必要とせず、アンモニア水溶液により容易に逆抽出することが可能である。
特開平10−102156号公報 特許第4448937号 特開2010−59533号公報
Minerals Engineering 21 (2008) 483−488
しかしながら、特許文献2記載の化合物は、アンモニア水溶液による逆抽出が困難であり、逆抽出工程に際し、チオ尿素含有塩酸溶液を使用する必要がある。チオ尿素含有塩酸溶液の使用は、逆抽出後のパラジウムの回収を煩雑にすることから、工業的な回収工程には不利となる。また、非特許文献1記載の化合物は、パラジウムを選択的に抽出するがパラジウムの抽出速度がそれほど早くなく、パラジウムを全量抽出するには15分以上の時間を要する上、アンモニア水溶液での逆抽出が可能であるもののパラジウムが高濃度な条件等ではアンモニアによる逆抽出効率がDASより悪く、工業用に適した抽出剤ではなかった。
一方、特許文献3記載の化合物は、製造コストや製造工程の安全性に問題があり、工業的な実用化において未だ改善の余地があった。
このように、実用化に適したパラジウム抽出剤としては、(1)白金,ロジウムおよびベースメタル等からパラジウムを選択的に分離可能であること、(2)迅速な抽出が可能であること、(3)アンモニアによる逆抽出が可能かつ効率も良いこと、(4)製造コストや安全性に問題がないことが必要であるが、これまで(1)〜(4)の全ての条件を満たした実用的なパラジウム抽出剤は見出されていなかった。
そこで本発明の目的は、パラジウムの選択性に優れ抽出速度も早く、アンモニアによる逆抽出が可能かつ効率も良いパラジウム抽出剤、およびそれを用いたパラジウムの分離方法を提供することにある。
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。
これまでパラジウム抽出剤として、ジアルキルスフィド(DAS)では、ジオクチルスルフィド(DOS)やジヘキシルスルフィド(DHS)が用いられ、硫黄含有ジアミド化合物ではN,N’−ジメチル−N,N’−ジオクチル−チオジグリコールアミド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニル−チオジグリコールアミドやN,N,N’,N’−テトラ−n−オクチル−チオグリコールアミド等が検討されてきた。
上記の化合物は、全て、オクチルやフェニル等の疎水性が高い置換基を含んでいるが、
この理由は、水相に溶解しているパラジウムを有機相に抽出するという抽出剤の特性上、抽出剤として用いるためには、疎水性が高く水溶媒とエマルジョンを形成しないことが第一条件であり、疎水性の高い置換基を導入することが必須であるという技術的常識に基づくものである。したがって、疎水性が低いと考えられる化合物、例えば置換基が低級アルキル基であるような化合物などは抽出剤としての検討の対象から除外されていた。
本発明者等は、パラジウム抽出剤の検討に当たり、N置換部分の長さの異なる種々の硫黄含有ジアミド化合物の溶解度を測定した。その結果、N置換部分がテトラエチル基、テトラプロピル基である誘導体は水に易溶であり、抽出剤に不適当であったが、驚くべきことにテトラブチル体ではテトラプロピル体に比較して溶解度は80分の1程度であり、水に難溶であることが判明した。
すなわち、N,N,N’,N’−テトラ−n−ブチル−チオグリコールアミド、N,N,N’,N’−テトラ−iso−ブチル−チオグリコールアミドおよびN,N,N’,N’−テトラ−sec−ブチル−チオグリコールアミドは、短いアルキル鎖長を持つ誘導体であるにも関わらず、抽出剤として十分使用可能な疎水性を持つことを見出した。また、該化合物は、パラジウムを選択的かつきわめて迅速に抽出する性質も有することが明らかになった。
さらに、本発明者等は、上記のブチル置換基を有する化合物が、これまで知られている硫黄含有ジアミド化合物ではいずれも容易ではなかった、アンモニア水溶液によるパラジウムの逆抽出がDASよりも効率的に行えることを見出した。また、上記ブチル置換基を有する化合物は工業的にも安全で安価に合成できるものである。
本発明は、上記検討をもとに完成された以下の[1]〜[4]にかかるものである。
[1]下記式(I)で示される硫黄含有ジアミド化合物からなる、または該硫黄含有ジアミド化合物を含有することを特徴とするパラジウム抽出剤。
Figure 2013166996
(式中R,R’,R’’およびR’’’はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、n−ブチル基、sec−ブチル基、またはiso−ブチル基を表す)
[2]パラジウムを含有する酸性の被処理液と、有機溶媒に[1]のパラジウム抽出剤を溶解させてなる抽出溶液とを接触させることにより、パラジウムを抽出溶液に抽出する抽出工程を備えることを特徴とするパラジウムの分離方法。
[3]さらに、パラジウムを抽出した前記抽出液と、アンモニア水溶液とを接触させることにより、パラジウムを回収する回収工程を備える[2]のパラジウムの分離方法。
[4]前記回収工程において、チオ尿素を用いない[3]のパラジウムの分離方法。
本発明により、パラジウムの選択性が高く、抽出速度も早く、アンモニアによる逆抽出を効率的に行う事が可能なパラジウム抽出剤、およびそれを用いたパラジウムの分離方法を提供することが可能となる。
実施例1における各金属の抽出結果を示すグラフである。 実施例2における各抽出剤による経時的なパラジウムの抽出率を示すグラフである。
本発明は、パラジウム抽出剤として、下記式(I)で示される硫黄含有ジアミド化合物を用いることを特徴とするものである。
Figure 2013166996
(式中R,R’,R’’およびR’’’はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、n−ブチル基、sec−ブチル基、またはiso−ブチル基を表す)
式(I)中のRとR’、R’’とR’’’は異なっていても、(R、R’)と(R’’、R’’’)が異なっていても良いが、二級アミンの合成のしやすさ、非対称ジアミドを合成する難しさ、得られるジアミドの性能の違いが無いことから、R,R’,R’’およびR’’’が同一であることが好ましい。
またパラジウム抽出剤として式(I)で示される硫黄含有ジアミド化合物だけを用いても良いし、DAS等他のパラジウム選択的な抽出剤と混合して用いてもよい。
本発明のパラジウムの分離方法は、上記式(I)で表される硫黄含有ジアミド化合物を用いる方法である。即ち、パラジウムを含有する酸性の被処理液と、有機溶媒に本発明のパラジウム抽出剤を溶解させてなる抽出溶液とを接触させることにより、パラジウムを抽出溶液に抽出する抽出工程を備えることを特徴とするものである。
本発明の上記式(I)で示される硫黄含有ジアミド化合物からなる抽出剤は疎水性の有機溶媒に溶解して用いる。有機溶媒としては疎水性であれば特に限定されず公知の物を使用することができる。有機溶媒としては、例えば、n−ドデカン等の脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素と2−エチル−1−ヘキサノールなどの高級アルコールの混合溶媒、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン等の芳香族炭化水素、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、酢酸エチルなどのエステル類などが挙げられる。溶液中の抽出剤の濃度は常温で酸性水溶液と有機溶媒に溶けない不溶物や第三相を生じさせないように適宜調整すればよいが、概して0.01mol/L以上5mol/L以下の範囲で決められる。
また前記抽出溶液が上記式(I)で表される硫黄含有ジアミド化合物のみを用いる場合のモル数は、好ましくは前記被処理溶液中のパラジウムのモル数の2倍以上であり、より好ましくは5倍以上である。抽出溶液は予め調製しておくことが好ましい。
また、前記パラジウム抽出剤を用いたパラジウムの分離回収の対象となる被処理液は、酸性条件下でパラジウムを少なくとも含む、塩酸、硫酸、硝酸等の酸性水溶液であればよく、該被処理溶液が、パラジウムの他に、ロジウム、白金等の白金族金属や鉄、銅等のベースメタルを含んでいてもよい。被処理溶液の好ましい酸濃度は、0.01〜3mol/L、より好ましい濃度は、0.1〜1mol/Lであり、また、好ましいパラジウム濃度は0.01mmol/L〜1mol/L、より好ましくは0.1mmol/L〜0.1mol/Lである。
上記被処理液と抽出溶液との接触は、例えば両液を混合・攪拌することにより行うことができる。混合・攪拌は温度を調整する必要はなく、室温で行うことができる。また、攪拌時間は充分な混合状態であれば極めて短時間で終了する。通常は2分以上であれば充分であるが、確実性を期すために15分以上行っても全く問題は無い。
上記接触により、パラジウムは抽出溶液、即ち有機相に完全に移動する。通常、有機相から逆抽出を行い、パラジウムを水性溶液に回収する。逆抽出は、チオ尿素含有塩酸溶液を用いる方法、アンモニア水溶液を用いる方法等により行うことができる。チオ尿素含有塩酸溶液の使用は、逆抽出後のパラジウムの回収を煩雑にすることから、工業的な回収工程には不利となる。従って、アンモニア水溶液を用いる方法により逆抽出(回収工程)を行うことが好ましい。
即ち、本発明のパラジウムの分離方法は、好適には、さらに、パラジウムを抽出した前記抽出液と、アンモニア水溶液とを接触させることにより、パラジウムを回収する回収工程を含むものである。
上記回収工程で用いるアンモニア水溶液のアンモニア濃度は、好ましくは10〜40%、より好ましくは15〜28%、特に好ましくは25〜28%であり、必要モル数としては有機相中のパラジウムのモル数の4倍以上であり、より好ましくは10倍以上である。アンモニア水溶液は予め調製しておくことが好ましい。前記抽出液とアンモニア水溶液との接触は、例えば両液の混合・攪拌により行うことができる。混合・攪拌は温度を調整する必要はなく、室温で行うことができる。この逆抽出も充分な混合状態であれば極めて短時間に平衡に達し、攪拌時間としては通常は2分以上であれば充分であるが、確実性を期すために15分以上行っても全く問題は無い。また、攪拌時間は好ましくは2分以上であり、より好ましくは15分以上である。
以下、参考例および実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの参考例、実施例によって制限されるものではない。
[参考例]
<硫黄含有ジアミド誘導体の溶解度の測定>
N,N,N’,N’−テトラ−エチル−チオジグリコールアミド(TETDGA)、N,N,N’,N’−テトラ−n−プロピル−チオジグリコールアミド(TnPTDGA)、N,N,N’,N’−テトラ−n−ブチル−チオジグリコールアミド(TnBTDGA)、N,N,N’,N’−テトラ−n−ヘキシル−チオジグリコールアミド(TnHTDGA)、N,N’−ジメチル−N,N’−ジオクチル−チオジグリコールアミドを用いて酸性水溶液に対する溶解度の比較を行った。
(飽和液の調整方法)
全量50mLの遠沈管、または全量10mLの試験管に試料と3N HClを加えて25℃で飽和液を作成した後、遠沈管や試験管を回転振とう機で50rpm、24時間の条件で振とうした。振とう後、溶け残った試料があることを確認し、1000rpm、20分の条件で遠心分離を行い、遠心分離後、飽和溶液を回収した。
(溶解度の測定)
回収した飽和溶液0.5〜1mlに70vol%アセトニトリルまたは、50vol%アセトニトリル1〜7mlを加えた後、飽和液と同量の3N NaOHを加えて中和処理を行った。高速液体クロマトグラフィー(ODSpak F−411A,4.6x 150mm,0.8ml/min,UV220nm)を用いて、TETDGA、TnPTDGAでは、移動相:アセトニトリル/水(50/50)、TnBTDGAでは移動相:アセトニトリル/水(70/30)、TnHTDGA、及びN,N’−ジメチル−N,N’−ジオクチル−チオジグリコールアミドでは移動相:アセトニトリル/水(90/10)の条件で定量分析を行った。定量結果を表1に示す。溶解度は、3N HCl100 mLに溶けていた試料の量で表記する。
Figure 2013166996
(3N HClの比重:1.0433g/L)
上記表1に示すように、N置換テトラヘキシル体等、長鎖のアルキル基を持つ化合物の溶解度は、0.0010g/100mL以下であり、強い疎水性を有していた。
一方、テトラエチル体であるTETDGAの溶解度は9.5g/100mL、テトラn−プロピル体であるTnPTDGAは4.4g/100mLと水に容易に溶けるため、いずれも抽出剤としては不適当な化合物であることが明らかとなった。
しかし、テトラn−ブチル体であるTnBTDGAの溶解度は、0.055g/Lであり、抽出剤として用いることが可能であることが見出された。テトラn−ブチル体とテトラnプロピルの溶解度の差は80倍もあり、硫黄含有ジアミド誘導体においては、炭素数1つの違いで溶解度が大きく変化することが分かった。このように、アルキル基の長さがC4のテトラアルキル置換化合物は、低級アルキル基を置換基として有するにも関わらず、抽出剤として十分な疎水性を有することが判明した。
[実施例1]
<パラジウムに対する抽出選択性>
本実施例では、抽出剤として、N,N,N’,N’−テトラ−n−ブチル−チオジグリコールアミド(TnBTDGA)、N,N,N’,N’−テトラ−sec−ブチル−チオジグリコールアミド(TsBTDGA)及びN,N,N’,N’−テトラ−iso−ブチル−チオジグリコールアミド(TiBTDGA)、すなわち上記一般式(I)で表わされる化合物を用いた。
上記のTnBTDGA、TsBTDGA及びTiBTDGAを、80vol%n−ドデカン/20vol%2−エチルヘキサノール混合溶媒に溶解して、0.1mol/Lとした。これらの有機溶媒に、50mg/Lのパラジウム、白金、ロジウム、鉄、銅、亜鉛及びニッケルを含む等体積の1mol/L塩酸溶液を加え、60分間激しく振とうすることで、有機相へ金属の抽出を行った。
抽出率は振とう前後の水相の金属濃度をICP発光分光器で測定して求めた。図1に金属抽出率のグラフを示す。
図1にみられるように、いずれの化合物もパラジウム以外の金属はほとんど抽出せず、パラジウムに対する高い抽出選択性が示された。
[実施例2]
<パラジウムの抽出時間依存性>
本実施例では、上記化合物の他、比較のため、公知の抽出剤として、ジ−n−ヘキシルスルフィド(DHS)、及び硫黄含有ジアミド化合物であるN,N,N’,N’−テトラ−n−オクチル−チオジグリコールアミド(TOTDGA)を用いた。
上記のTnBTDGA、TsBTDGA及びTiBTDGA、DHS、及びTOTDGAの各々を、80vol%n−ドデカン/20vol%2−エチルヘキサノール混合溶媒に溶解して、0.1mol/Lとした。これらの有機溶媒に、100mg/Lのパラジウムを含む等体積の3mol/L塩酸溶液を加え、縦型振盪器で激しく振とうすることで、有機相へパラジウムの抽出を行った。
抽出率は振とう前後の遠心分離した水相の金属濃度をICP発光分光器で測定して求めた。振とう時間を変えた際の抽出率の変化を図2に示す。
図2に示すとおり、抽出剤としてTnBTDGA、TsBTDGA及びTiBTDGAを用いた場合は、抽出直後(抽出時間:2分以内)にパラジウムをほぼ全量抽出したが、TOTDGA及びDHSを用いた場合では、パラジウム全量抽出にそれぞれ15分及び240分要した。
上記結果から、パラジウムの抽出時間に関しては、TnBTDGA、TsBTDGA及びTiBTDGAが従来型抽出剤に比べ極めて速いことが明らかになった。
[実施例3]
<逆抽出試験>
上記のTnBTDGA、TsBTDGA及びTiBTDGA、DHS、及びTOTDGAの各々を、80vol%n−ドデカン/20vol%2−エチルヘキサノール混合溶媒に溶解して、0.1mol/Lとした。これらの有機溶媒に、5g/Lのパラジウムを含む等体積の1mol/L塩酸溶液を加え、60分間激しく振とうすることで、有機相へほぼ全量のパラジウムの抽出を行った。
次に、パラジウム抽出後の有機相と等体積の28%アンモニア水溶液を加え、30分間激しく振とうすることで、水相へのパラジウムの逆抽出を行った。結果を下記表2に示す。
Figure 2013166996
逆抽出試験の結果、TOTDGAは現在抽出剤として一般的に使われているDHSの逆抽出率60%よりかなり低い値となったが、TnBTDGA、TsBTDGA及びTiBTDGAの逆抽出率はそれぞれ、75%、75%、65%となり、DHSの逆抽出率60%を上回る値を示し、TnBTDGA、TsBTDGA及びTiBTDGAがパラジウムの抽出速度のみならずアンモニアによる逆抽出においても優れていることが示された。
このように本発明の化合物は、パラジウムの選択性が高く、抽出速度も早く、アンモニア水溶液を用いる逆抽出も効率良く行うことができる。これらのことから、連続抽出にも用いることができ、工業的に有用である。また、テトラブチル体であることから、合成、取り扱いが容易であるという利点もある。

Claims (4)

  1. 下記式(I)で示される硫黄含有ジアミド化合物からなる、又は該硫黄含有ジアミド化合物を含有することを特徴とするパラジウム抽出剤。
    Figure 2013166996
    (式中R,R’,R’’およびR’’’はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、n−ブチル基、sec−ブチル基、またはiso−ブチル基を表す)
  2. パラジウムを含有する酸性の被処理液と、有機溶媒に請求項1記載のパラジウム抽出剤を溶解させてなる抽出溶液とを接触させることにより、パラジウムを抽出溶液に抽出する抽出工程を備えることを特徴とするパラジウムの分離方法。
  3. さらに、パラジウムを抽出した前記抽出液と、アンモニア水溶液とを接触させることにより、パラジウムを回収する回収工程を備える請求項2記載のパラジウムの分離方法。
  4. 前記回収工程において、チオ尿素を用いない請求項3記載のパラジウムの分離方法。
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