JP2011125840A - アミド含有3級アミン化合物及びそれを用いた白金族金属分離回収 - Google Patents
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Abstract
【課題】塩素系酸溶液中のロジウムの抽出分離に関して、ロジウムに対して高抽出率が得られる新規分離試薬及びこれを用いる白金族金属の分離回収方法、さらにアミド含有3級アミン化合物の提供。
【解決手段】下記の構造式で示されるアミド含有3級アミン分離試薬からなる有機相と白金族金属を含有する酸溶液を接触させ、ロジウム、白金及びパラジウムを前記有機相により抽出し、有機相により抽出した金属を、高濃度塩酸溶液により、ロジウムを選択的に水溶液に逆抽出し、高濃度硝酸溶液によりパラジウム及び白金を逆抽出する。
(式中、R1、R2及びR3のうち1つ又は全てが、所定のアミド基であり、該アミド基以外のR1〜R3は、炭素数が1〜18の分岐してもよい鎖式炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜14の芳香族炭化水素基から選ばれる基である。)
【選択図】なし
【解決手段】下記の構造式で示されるアミド含有3級アミン分離試薬からなる有機相と白金族金属を含有する酸溶液を接触させ、ロジウム、白金及びパラジウムを前記有機相により抽出し、有機相により抽出した金属を、高濃度塩酸溶液により、ロジウムを選択的に水溶液に逆抽出し、高濃度硝酸溶液によりパラジウム及び白金を逆抽出する。
(式中、R1、R2及びR3のうち1つ又は全てが、所定のアミド基であり、該アミド基以外のR1〜R3は、炭素数が1〜18の分岐してもよい鎖式炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜14の芳香族炭化水素基から選ばれる基である。)
【選択図】なし
Description
本発明は、アミド含有3級アミン化合物、その白金族金属抽出剤(分離剤)としての使用及びそれを用いた白金族金属分離回収方法に関するものである。
工業用触媒、自動車用排ガス浄化触媒に加え多くの電化製品に白金、パラジウム、ロジウムなどの白金族金属が用いられている。これらの白金族金属は高価であることから、従来から使用後には回収してリサイクルされているが、その技術は十分とは言えない。また最近では資源の保全を考えて、リサイクルすることの重要性が一層増加している。
従来、白金族金属の回収には、沈殿分離法(特許文献1)、イオン交換法(特許文献2)、電解析出法(特許文献3)、溶媒抽出法などの多くの方法が提案され、また実施されている。これらの方法の中では溶媒抽出法が経済性及び操作性の点から広く採用されている。
しかしながら、溶媒抽出法による白金族金属の分離において、ロジウムはその有効な分離試薬が存在しないことから、他金属を分離した後の抽残液より回収されてきた(特許文献4〜6)。しかし、白金族金属の中で最も高価なロジウムをプロセスの最後まで残留させることは経済的にも効率が悪い。
しかしながら、溶媒抽出法による白金族金属の分離において、ロジウムはその有効な分離試薬が存在しないことから、他金属を分離した後の抽残液より回収されてきた(特許文献4〜6)。しかし、白金族金属の中で最も高価なロジウムをプロセスの最後まで残留させることは経済的にも効率が悪い。
また、溶媒抽出法によるパラジウム/白金相互分離では、硫黄含有有機化合物ジアルキルスルフィド(DAS)によるパラジウムの選択的抽出が広く用いられてきた(特許文献7)。一般に、DASのうち、ジヘキシルスルフィド(DHS)が用いられるが、抽出速度の点で難があり、スルフィド基が酸化されやすいことが指摘されている。
本発明者らは、白金族金属の中のパラジウムの抽出剤として、従来のDHSに代えて、チオグリコールアミド、3,3′−チオジプロピオンアミド、又は3,6−ジチアオクタンジアミドなどの硫黄含有ジアミド化合物を用いることにより、従来から用いられてきたDHSを用いる場合と比較して、パラジウムを短時間で抽出し、且つ他の白金族金属及びベースメタルとの分離が可能であり、高効率にパラジウムの分離回収を行うことができることを見いだしているが(特許文献8)、該抽出剤では、ロジウムを選択的に抽出することはできない。
本発明者らは、白金族金属の中のパラジウムの抽出剤として、従来のDHSに代えて、チオグリコールアミド、3,3′−チオジプロピオンアミド、又は3,6−ジチアオクタンジアミドなどの硫黄含有ジアミド化合物を用いることにより、従来から用いられてきたDHSを用いる場合と比較して、パラジウムを短時間で抽出し、且つ他の白金族金属及びベースメタルとの分離が可能であり、高効率にパラジウムの分離回収を行うことができることを見いだしているが(特許文献8)、該抽出剤では、ロジウムを選択的に抽出することはできない。
本発明者らは、アミド基を2個含有した3級アミン化合物N−n−ヘキシル-ビス(N−メチル−N−n−オクチルエチルアミド)アミン(HBMOEAA)が塩酸溶液中のパラジウム、白金、ロジウムに対し高い抽出率を示し、かつ抽出後の有機相と高濃度塩酸を接触させると、ロジウムのみが選択的に逆抽出でき、さらに高濃度硝酸溶液との接触ではパラジウム、白金も逆抽出可能なことを明らかにした(特許文献9)。しかし、ロジウムに対する抽出率及び硝酸溶液による白金の逆抽出率は十分とは言えない。このような抽出率や逆抽出率は、その値の僅かな向上でも経済的寄与が非常に大きいため、さらなる向上が求められている。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、これまで溶媒抽出の分野において極めて困難であったロジウムをより高い抽出率で選択的に分離回収可能な分離試薬(分離剤)及びこれを導入した高効率の白金族金属分離回収方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アミド基を1個又は3個含む3級アミン化合物と白金族金属を含有する酸溶液とを接触させると、白金族金属を抽出可能で、特にアミド基を3個含む3級アミン化合物ではロジウムについてこれまでにない高抽出率が得られ、さらに白金族金属抽出後の有機相と高濃度塩酸溶液とを接触させることでロジウムを選択的に逆抽出でき、また高濃度硝酸溶液との接触では他の白金族金属も逆抽出でき、特にアミド基を1個含む3級アミン化合物は高濃度硝酸溶液との接触させた際の白金逆抽出率が高いという知見を得た。
本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものであり、以下のとおりのものである。
(1)下記の一般式で示されるアミド含有三級アミン化合物を有効成分とすることを特徴とする白金族金属分離試薬。
(式中、R1、R2及びR3のうち1つ又は全てが、
で表されるアミド基であり、該アミド基以外のR1〜R3、及びR4〜R6は、炭素数1〜18の分岐してもよい鎖式炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜14の芳香族炭化水素基から選ばれる基である。)
(2)R1、R2及びR3のうち1つが上記[化2]で表されるアミド基であり、該アミド基以外のR1〜R3は、炭素数1〜11の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R4は、炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R5は、炭素数6〜10の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R6は、炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基である(1)に記載の白金族金属分離試薬。
(3)R1、R2及びR3の全てが上記[化2]で表されるアミド基であり、R4は、炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R5は、炭素数6〜10の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R6は、炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基である(1)に記載の白金族金属分離試薬。
(4)N−ジ−n−ヘキシル−(N−メチル−N−n−オクチル−エチルアミド)アミンを有効成分とすることを特徴とする白金族金属分離試薬。
(5)トリス(N−メチル−N−n−オクチル−エチルアミド)アミンを有効成分とすることを特徴とする白金族金属分離試薬。
(6)ロジウム、白金及びパラジウムを含有する酸性の水相と、(1)〜(5)のいずれかに記載の白金族金属分離試薬を含有する有機相を接触させることにより、ロジウム、白金及びパラジウムを前記有機相に抽出することを特徴とする白金族金属の分離方法。
(7)(6)に記載の有機相に抽出したロジウム、白金及びパラジウムを、高濃度塩酸溶液により逆抽出して、ロジウムを含む水溶液を得ることを特徴とするロジウムの回収方法。
(8)(6)に記載の有機相に抽出したロジウム、白金及びパラジウムを、高濃度硝酸溶液により逆抽出して、ロジウム、白金、及びパラジウムを含む水溶液を得ることを特徴とするロジウム、白金、及びパラジウムの回収方法。
(9)すくなくともロジウム、白金及びパラジウムを含有する被処理溶液から白金族金属を分離回収する方法において、
すくなくともロジウム、白金及びパラジウムを含有する酸性の被処理溶液と、(1)〜(5)のいずれかに記載の白金族金属分離試薬を含有する有機相とを接触させて、前記酸性の被処理溶液からロジウム、白金及びパラジウムを分離する工程(第1工程)、
得られたロジウム、白金及びパラジウムを含有する前記有機相に、高濃度塩酸溶液を接触させてロジウムを回収する工程(第2工程)、
ロジウム分離後の前記有機相に、高濃度硝酸溶液を接触させて白金及びパラジウムを回収する工程(第3工程)、
得られた白金及びパラジウムを含有する水溶液に、チオジグリコールアミド分離試薬を含有する有機相と接触させてパラジウムを分離し、白金を水溶液に残す工程(第4工程)、及び
得られたパラジウムを含有する前記有機相に、チオ尿素を含む塩酸溶液又はアンモニア溶液を接触させてパラジウムを回収する工程(第5工程)
を含むことを特徴とするロジウム、白金及びパラジウムの分離回収方法。
(10)下記の一般式で示されるアミド含有3級アミン化合物。
(式中、R1は、
で表されるアミド基であり、R2及びR3は炭素数1〜11の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R4は炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R5は炭素数6〜10の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R6は炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基である。)
(11)下記の一般式で示されるアミド含有3級アミン化合物。
(式中、R1、R2及びR3は、
で表されるアミド基であり、R4は、炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R5は炭素数6〜10の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R6は炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基である。)
(1)下記の一般式で示されるアミド含有三級アミン化合物を有効成分とすることを特徴とする白金族金属分離試薬。
(2)R1、R2及びR3のうち1つが上記[化2]で表されるアミド基であり、該アミド基以外のR1〜R3は、炭素数1〜11の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R4は、炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R5は、炭素数6〜10の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R6は、炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基である(1)に記載の白金族金属分離試薬。
(3)R1、R2及びR3の全てが上記[化2]で表されるアミド基であり、R4は、炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R5は、炭素数6〜10の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R6は、炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基である(1)に記載の白金族金属分離試薬。
(4)N−ジ−n−ヘキシル−(N−メチル−N−n−オクチル−エチルアミド)アミンを有効成分とすることを特徴とする白金族金属分離試薬。
(5)トリス(N−メチル−N−n−オクチル−エチルアミド)アミンを有効成分とすることを特徴とする白金族金属分離試薬。
(6)ロジウム、白金及びパラジウムを含有する酸性の水相と、(1)〜(5)のいずれかに記載の白金族金属分離試薬を含有する有機相を接触させることにより、ロジウム、白金及びパラジウムを前記有機相に抽出することを特徴とする白金族金属の分離方法。
(7)(6)に記載の有機相に抽出したロジウム、白金及びパラジウムを、高濃度塩酸溶液により逆抽出して、ロジウムを含む水溶液を得ることを特徴とするロジウムの回収方法。
(8)(6)に記載の有機相に抽出したロジウム、白金及びパラジウムを、高濃度硝酸溶液により逆抽出して、ロジウム、白金、及びパラジウムを含む水溶液を得ることを特徴とするロジウム、白金、及びパラジウムの回収方法。
(9)すくなくともロジウム、白金及びパラジウムを含有する被処理溶液から白金族金属を分離回収する方法において、
すくなくともロジウム、白金及びパラジウムを含有する酸性の被処理溶液と、(1)〜(5)のいずれかに記載の白金族金属分離試薬を含有する有機相とを接触させて、前記酸性の被処理溶液からロジウム、白金及びパラジウムを分離する工程(第1工程)、
得られたロジウム、白金及びパラジウムを含有する前記有機相に、高濃度塩酸溶液を接触させてロジウムを回収する工程(第2工程)、
ロジウム分離後の前記有機相に、高濃度硝酸溶液を接触させて白金及びパラジウムを回収する工程(第3工程)、
得られた白金及びパラジウムを含有する水溶液に、チオジグリコールアミド分離試薬を含有する有機相と接触させてパラジウムを分離し、白金を水溶液に残す工程(第4工程)、及び
得られたパラジウムを含有する前記有機相に、チオ尿素を含む塩酸溶液又はアンモニア溶液を接触させてパラジウムを回収する工程(第5工程)
を含むことを特徴とするロジウム、白金及びパラジウムの分離回収方法。
(10)下記の一般式で示されるアミド含有3級アミン化合物。
(11)下記の一般式で示されるアミド含有3級アミン化合物。
本発明(1)〜(9)によれば、上記一般式で示されるアミド含有3級アミン化合物を分離試薬として用いることで、ロジウム、白金及びパラジウムからなる白金族金属を含有する酸性の被処理溶液から、ロジウム、白金、及びパラジウムを抽出することができ、さらに、金属抽出後の分離試薬含有溶液を、高濃度塩酸溶液と接触させることでロジウムを選択的に回収可能であり、続いてロジウム分離後の分離試薬含有溶液を、高濃度硝酸溶液と接触させることで白金及びパラジウムの分離回収も行うことができる。アミド基を2個有する3級アミン化合物と比較すると、特にアミド基を3個有する3級アミン化合物はロジウムに対する抽出率が極めて高く、アミド基を1個有する3級アミン化合物は、高濃度硝酸溶液と接触させることによる白金の逆抽出率が高いため、経済的寄与が非常に大きい。
本発明(1)〜(9)は、ロジウム、白金及びパラジウムからなる白金族金属を含有する酸性溶液から、これらの白金族金属を分離する分離試薬として、下記の一般式で示されるアミド含有3級アミン化合物を用いるものである。
(前記式中、R1、R2及びR3の1つ又は全てが
で表されるアミド基であり、該アミド基以外のR1〜R3、及びR4〜R6は、炭素数が1〜18の分岐してもよい鎖式炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜14の芳香族炭化水素基から選ばれる基である。)
分離試薬(抽出剤)としてのアミド含有3級アミン化合物において、R1〜R3における[化2]の置換基の数は、ロジウムの選択的抽出力の観点からすると、少なくとも1、最も好ましくは3である。一方、高濃度硝酸によるパラジウム及び白金の逆抽出率では、最も好ましいのは1である。
該アミド基以外のR1〜R3は、好ましくは炭素数1〜18の分岐してもよい鎖式炭化水素基、より好ましくは炭素数1〜11の分岐してもよい鎖式炭化水素基である。R4は、好ましくは炭素数1〜18の分岐してもよい鎖式炭化水素基、より好ましくは炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基である。R5は、好ましくは炭素数1〜18の分岐してもよい鎖式炭化水素基、より好ましくは炭素数3〜13の分岐してもよい鎖式炭化水素基、さらにより好ましくは炭素数6〜10の分岐してもよい鎖式炭化水素基である。R6は、このましくは炭素数1〜18の分岐してもよい鎖式炭化水素基、より好ましくは炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基である。
前記鎖式炭化水素基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、イソプロピル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、2−エチルヘキシル、ビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、2−メチルアリル、1−ペプチニル、1−ヘキセニル、1−ヘプテニル、1−オクテニル、2−メチル−1−プロペニル等が、脂環式炭化水素基の例としては、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘキサトリエニル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル等が、芳香族炭化水素基の例としては、フェニル、ナフチル、アントリル、トリル、キシリル、クメニル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミル、ビフェニリル、フェナントリル等がそれぞれ挙げられる。
該アミド基以外のR1〜R3は、好ましくは炭素数1〜18の分岐してもよい鎖式炭化水素基、より好ましくは炭素数1〜11の分岐してもよい鎖式炭化水素基である。R4は、好ましくは炭素数1〜18の分岐してもよい鎖式炭化水素基、より好ましくは炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基である。R5は、好ましくは炭素数1〜18の分岐してもよい鎖式炭化水素基、より好ましくは炭素数3〜13の分岐してもよい鎖式炭化水素基、さらにより好ましくは炭素数6〜10の分岐してもよい鎖式炭化水素基である。R6は、このましくは炭素数1〜18の分岐してもよい鎖式炭化水素基、より好ましくは炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基である。
前記鎖式炭化水素基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、イソプロピル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、2−エチルヘキシル、ビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、2−メチルアリル、1−ペプチニル、1−ヘキセニル、1−ヘプテニル、1−オクテニル、2−メチル−1−プロペニル等が、脂環式炭化水素基の例としては、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘキサトリエニル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル等が、芳香族炭化水素基の例としては、フェニル、ナフチル、アントリル、トリル、キシリル、クメニル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミル、ビフェニリル、フェナントリル等がそれぞれ挙げられる。
上記一般式で示される分離試薬としてのアミド含有3級アミンの具体例としては、上記一般式[化1]中、R1=R4R5NC(O)R6、R2=R3=n−C6H13、R4=CH3、R5=n−C8H17、R6=CH2である、N−ジ−n−ヘキシル−(N−メチル−N−n−オクチル−エチルアミド)アミン、R1=R2=R3=R4R5NC(O)R6、R4=CH3、R5=n−C8H17、R6=CH2であるトリス(N−メチル−N−n−オクチル−エチルアミド)アミン等が挙げられる。
なお、上記一般式で示されるアミド基を1個又は2個含有した3級アミンは、Helvetica Chimica Acta vol.63,p2264−2270(1980年)(以下「非特許文献1」という)に、アミド基を3個含有した3級アミンは、Journal of Molecular Structure vol.657,p177−183(2003年)(以下「非特許文献2」という)に、記載されたものを参考にして合成することができる。
本願は、また、新規な2種のアミド含有3級アミン化合物を提供する。
第1のアミド含有3級アミン化合物は、前記[化1]において、R1が[化2]で表されるアミド基であり、R2及びR3は炭素数1〜11、好ましくは4〜8の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R4は炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R5は炭素数6〜10の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R6は炭素数1〜6、好ましくは1〜3の分岐してもよい鎖式炭化水素基である。
第2のアミド含有3級アミン化合物は、前記[化1]において、R1、R2及びR3は、前記[化2]で表されるアミド基であり、R4は炭素数1〜6、好ましくは1〜3の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R5は炭素数6〜10の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R6は炭素数1〜6、好ましくは1〜3の分岐してもよい鎖式炭化水素基である。
なお、上記一般式で示されるアミド基を1個又は2個含有した3級アミンは、Helvetica Chimica Acta vol.63,p2264−2270(1980年)(以下「非特許文献1」という)に、アミド基を3個含有した3級アミンは、Journal of Molecular Structure vol.657,p177−183(2003年)(以下「非特許文献2」という)に、記載されたものを参考にして合成することができる。
本願は、また、新規な2種のアミド含有3級アミン化合物を提供する。
第1のアミド含有3級アミン化合物は、前記[化1]において、R1が[化2]で表されるアミド基であり、R2及びR3は炭素数1〜11、好ましくは4〜8の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R4は炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R5は炭素数6〜10の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R6は炭素数1〜6、好ましくは1〜3の分岐してもよい鎖式炭化水素基である。
第2のアミド含有3級アミン化合物は、前記[化1]において、R1、R2及びR3は、前記[化2]で表されるアミド基であり、R4は炭素数1〜6、好ましくは1〜3の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R5は炭素数6〜10の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R6は炭素数1〜6、好ましくは1〜3の分岐してもよい鎖式炭化水素基である。
以下、本発明の上記分離試薬を用いた、ロジウム、白金及びパラジウムからなる白金族金属を含む溶液から、ロジウム、白金及びパラジウムの分離回収方法について、図面を用いて説明する。
図1及び図2は、それぞれ、前述の従来型分離回収プロセス及び本発明の方法による分離回収プロセスの概要を示すものである。
図1及び図2は、それぞれ、前述の従来型分離回収プロセス及び本発明の方法による分離回収プロセスの概要を示すものである。
図1に示すように、従来型の分離回収プロセスにおいては、ロジウム、白金及びパラジウムからなる白金族金属を含有する酸性の被処理溶液に、ジアルキルスルフィド等のパラジウム抽出剤を含有する有機相を接触させてパラジムを抽出し、ついでパラジウムが抽出された後の白金とロジウムを含有する液に、トリブチルリン酸等の白金抽出剤を含有する有機相を接触させて白金を抽出し、残った抽出残液からロジウムを回収するものである。この方法によれば、白金族金属のなかで最も高価なロジウムが最後まで残留することになる。
これに対し、図2に示すように、本発明の分離回収プロセスは、上記一般式で示されるアミド含有3級アミン化合物からなる分離試薬を用いることにより、ロジウム、白金及びパラジウムからなる白金族金属を含有する酸性の被処理溶液から、ロジウム、白金、及びパラジウムを分離する分離試薬を含有する抽出溶液を用いることにより、該抽出溶液の有機相に抽出することができる。
次いで、この金属抽出後のロジウム、白金、及びパラジウムを含有する有機相と、高濃度塩酸溶液と接触させることで、逆抽出により、ロジウムのみを最初に選択的に分離することが可能となる。
続いて、ロジウム分離後の有機相を、高濃度硝酸溶液と接触させることで、逆抽出により、白金及びパラジウムの分離回収を行うことができる。
また、前記ロジウム、白金、及びパラジウムを含有する有機相と、高濃度硝酸溶液とを接触させた場合には、逆抽出により、白金、パラジウム及びロジウムの分離回収を行うことができる。
なお、前記高濃度塩酸溶液及び高濃度硝酸溶液の「高濃度」とは、前記酸性の被処理溶液における酸濃度に比べて、高い濃度であることを意味している。
次いで、この金属抽出後のロジウム、白金、及びパラジウムを含有する有機相と、高濃度塩酸溶液と接触させることで、逆抽出により、ロジウムのみを最初に選択的に分離することが可能となる。
続いて、ロジウム分離後の有機相を、高濃度硝酸溶液と接触させることで、逆抽出により、白金及びパラジウムの分離回収を行うことができる。
また、前記ロジウム、白金、及びパラジウムを含有する有機相と、高濃度硝酸溶液とを接触させた場合には、逆抽出により、白金、パラジウム及びロジウムの分離回収を行うことができる。
なお、前記高濃度塩酸溶液及び高濃度硝酸溶液の「高濃度」とは、前記酸性の被処理溶液における酸濃度に比べて、高い濃度であることを意味している。
本発明の上記一般式[化1]で示されるアミド含有3級アミン化合物からなる分離試薬を用いて、ロジウム、白金及びパラジウムからなる白金族金属を含有する酸性溶液から、ロジウム、白金、及びパラジウムを抽出するには、該分離試薬を含有する抽出溶液を予め調製しておく必要があるが、該抽出溶液は、分離試薬を、疎水性有機溶媒、例えば、n−ドデカンなどの脂肪族炭化水素、2−エチル−1−ヘキサノールなどのアルコール、クロロホルムなどの脂肪族塩化物、ベンゼンなどの芳香族炭化水素などに溶解させることにより調製できる。これらの溶媒中の分離試薬濃度は適宜定めることができる。
一方、本発明のロジウム、白金及びパラジウムの分離回収方法に用いられる被処理溶液は、ロジウム、白金及びパラジウムからなる白金族金属を少なくとも含む溶液であればよく、例えば、被処理溶液が、ロジウム、白金及びパラジウムからなる白金族金属以外の金属が含まれていてもよい。
被処理溶液に、白金族金属以外の金属が含まれている場合には、ロジウム、白金、及びパラジウムからなる白金族金属及びその他の金属を含有する塩酸性溶液を中和して、この溶液中に共存する白金族金属以外の金属を沈殿物として分離除去する。
この不純物中和除去工程は、pHを2.8〜3.3とするものであり、より好ましくは抜気などにより過剰の酸化剤を除去した後pHを調整することにより行われる。
以上の前処理により得られる溶液は、ロジウム、白金、及びパラジウムなどの白金族金属を含有するが、該白金族金属を含む塩酸溶液は、次の工程で、これと接触させる前記抽出溶液中の上記一般式[化1]で示されるアミド含有3級アミン化合物のモル濃度に対して、1/2以下のモル濃度の白金族金属が含まれるように調製される。
被処理溶液に、白金族金属以外の金属が含まれている場合には、ロジウム、白金、及びパラジウムからなる白金族金属及びその他の金属を含有する塩酸性溶液を中和して、この溶液中に共存する白金族金属以外の金属を沈殿物として分離除去する。
この不純物中和除去工程は、pHを2.8〜3.3とするものであり、より好ましくは抜気などにより過剰の酸化剤を除去した後pHを調整することにより行われる。
以上の前処理により得られる溶液は、ロジウム、白金、及びパラジウムなどの白金族金属を含有するが、該白金族金属を含む塩酸溶液は、次の工程で、これと接触させる前記抽出溶液中の上記一般式[化1]で示されるアミド含有3級アミン化合物のモル濃度に対して、1/2以下のモル濃度の白金族金属が含まれるように調製される。
以下、本発明の方法について、工程順に更に詳しく説明する。
(第1工程)
前記ロジウム、白金、及びパラジウムからなる白金族金属を含有する塩酸溶液からなる水相と、前記アミド含有3級アミン化合物からなる白金族金属分離試薬を含有する抽出溶液の有機相とを接触させ、水相中のロジウム、白金、及びパラジウムを有機相へ抽出することにより、ロジウム、白金、及びパラジウムを分離する。
(第1工程)
前記ロジウム、白金、及びパラジウムからなる白金族金属を含有する塩酸溶液からなる水相と、前記アミド含有3級アミン化合物からなる白金族金属分離試薬を含有する抽出溶液の有機相とを接触させ、水相中のロジウム、白金、及びパラジウムを有機相へ抽出することにより、ロジウム、白金、及びパラジウムを分離する。
(第2工程)
次に、前記の操作により得られたロジウム、白金、及びパラジウムを含有する前記白金族分離試薬溶液(抽出溶液)の有機相と、高濃度塩酸溶液とを接触させて、ロジウムを回収する。該工程では、前記有機相と、高濃度塩酸溶液と接触させることにより、前記有機相に分離された白金族金属のうち、ロジウムのみが逆抽出され、水溶液として回収することができる。該高濃度塩酸溶液としては、前記第1工程の塩酸溶液に比べて、充分に高い濃度の塩酸溶液であることが望ましい。
次に、前記の操作により得られたロジウム、白金、及びパラジウムを含有する前記白金族分離試薬溶液(抽出溶液)の有機相と、高濃度塩酸溶液とを接触させて、ロジウムを回収する。該工程では、前記有機相と、高濃度塩酸溶液と接触させることにより、前記有機相に分離された白金族金属のうち、ロジウムのみが逆抽出され、水溶液として回収することができる。該高濃度塩酸溶液としては、前記第1工程の塩酸溶液に比べて、充分に高い濃度の塩酸溶液であることが望ましい。
(第3工程)
前記の操作で得られたロジウム分離後の分離試薬を含有する有機相に、高濃度硝酸溶液を接触させて白金及びパラジウムを回収する。該工程では、有機相中に残された白金及びパラジウムは、その有機相と、高濃度硝酸溶液とを接触させることで逆抽出され、白金及びパラジウムを含有する水溶液として回収することができる。該高濃度硝酸溶液においても、前記第1工程の塩酸溶液に比べて、充分に高い濃度の硝酸溶液であることが望ましい。
前記の操作で得られたロジウム分離後の分離試薬を含有する有機相に、高濃度硝酸溶液を接触させて白金及びパラジウムを回収する。該工程では、有機相中に残された白金及びパラジウムは、その有機相と、高濃度硝酸溶液とを接触させることで逆抽出され、白金及びパラジウムを含有する水溶液として回収することができる。該高濃度硝酸溶液においても、前記第1工程の塩酸溶液に比べて、充分に高い濃度の硝酸溶液であることが望ましい。
(第4工程)
前記の操作により得られる白金及びパラジウムを含有する硝酸溶液に、チオジグリコールアミド分離試薬(特許文献8に記載のパラジウム抽出剤)を含有する有機相と接触させ、パラジウムを分離し、白金を水溶液にのこす。該工程では、前記第3工程で分離されたパラジウムと白金が、耐酸化性に優れたチオジグリコールアミドを含有する有機溶媒と接触させることで、パラジウムのみを選択的に有機相に抽出して分離することができ、残った白金は硝酸溶液中から回収できる。
前記の操作により得られる白金及びパラジウムを含有する硝酸溶液に、チオジグリコールアミド分離試薬(特許文献8に記載のパラジウム抽出剤)を含有する有機相と接触させ、パラジウムを分離し、白金を水溶液にのこす。該工程では、前記第3工程で分離されたパラジウムと白金が、耐酸化性に優れたチオジグリコールアミドを含有する有機溶媒と接触させることで、パラジウムのみを選択的に有機相に抽出して分離することができ、残った白金は硝酸溶液中から回収できる。
(第5工程)
前記の操作により得られたパラジウムを含有する有機相と、チオ尿素を含む塩酸溶液又はアンモニア溶液を接触させて、パラジウムを回収する。該工程では、前工程で得られた分離試薬を含有する有機相に含有されているパラジウムを、チオ尿素含有塩酸溶液又はアンモニア溶液と接触させることにより逆抽出し、パラジウムを含有する水溶液として回収することができる。
前記の操作により得られたパラジウムを含有する有機相と、チオ尿素を含む塩酸溶液又はアンモニア溶液を接触させて、パラジウムを回収する。該工程では、前工程で得られた分離試薬を含有する有機相に含有されているパラジウムを、チオ尿素含有塩酸溶液又はアンモニア溶液と接触させることにより逆抽出し、パラジウムを含有する水溶液として回収することができる。
以下に本発明の特徴を更に具体的に明らかにするための実施例を示すが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
(実施例1:分離試薬の合成)
分離試薬(A):N−ジ−n−ヘキシル−(N−メチル−N−n−オクチル−エチルアミド)アミン(上記一般式[化1]中、R1=R4R5NC(O)R6、R2=R3=n−C6H13、R4=CH3、R5=n−C8H17、R6=CH2であるアミド含有三級アミン)を、前記非特許文献1を参考にして、下記の方法で合成した。
(実施例1:分離試薬の合成)
分離試薬(A):N−ジ−n−ヘキシル−(N−メチル−N−n−オクチル−エチルアミド)アミン(上記一般式[化1]中、R1=R4R5NC(O)R6、R2=R3=n−C6H13、R4=CH3、R5=n−C8H17、R6=CH2であるアミド含有三級アミン)を、前記非特許文献1を参考にして、下記の方法で合成した。
N−メチルオクチルアミンを溶解したジエチルエーテル溶液を−2℃に冷却し、ジエチルエーテルに溶解したクロロアセチルクロライドを滴下して加えた。その後、反応溶液を室温に戻し、3時間攪拌した。反応溶液を1mol/L塩酸水溶液、水で順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン:酢酸エチル=23:2流出部よりN−メチル−N−オクチル−クロロアセトアミドを得た。
N−ジ−n−ヘキシルアミン及びトリエチルアミンを溶解したクロロホルム溶液に、クロロホルムに溶解した上記のN−メチル−N−オクチル−クロロアセトアミドを滴下して加えた。その後、反応溶液を室温で66時間、55℃で15時間攪拌した。反応溶液を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。クロロホルムを留去し、得られた残渣をヘキサンに滴下して30分撹拌後、室温で静置した。析出した白色結晶をろ別し、ろ液を濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン:酢酸エチル=97:3流出部より(A)を得た。
N−ジ−n−ヘキシルアミン及びトリエチルアミンを溶解したクロロホルム溶液に、クロロホルムに溶解した上記のN−メチル−N−オクチル−クロロアセトアミドを滴下して加えた。その後、反応溶液を室温で66時間、55℃で15時間攪拌した。反応溶液を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。クロロホルムを留去し、得られた残渣をヘキサンに滴下して30分撹拌後、室温で静置した。析出した白色結晶をろ別し、ろ液を濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン:酢酸エチル=97:3流出部より(A)を得た。
得られた(A)の分析結果を以下に示す。
IR (neat,νcm-1) : 1650 (C=O).
Elementary analysis: Found: C=74.12%; H=13.02%; N=7.55%.
Calcurated for C23H48N2O・1/4H2O: C=74.03%; H=13.10% ;N=7.51%.
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,σppm):0.88(9H,3CH2CH3); 1.2 to 1.4 (22H,CONC2H4C5H10CH3 and 2NC2H5C3H6CH3); 1.4 to 1.6 (6H,2 CH2NCH2CH2CH2 and CONCH2CH2CH2); 2.47 (4H,2 CH2NCH2CH2); 2.9 and 3.1 (3H,NCH3); 3.25(2H,CONCH2CH2); 3.33 and 3.42(2H,NCH2CO).
IR (neat,νcm-1) : 1650 (C=O).
Elementary analysis: Found: C=74.12%; H=13.02%; N=7.55%.
Calcurated for C23H48N2O・1/4H2O: C=74.03%; H=13.10% ;N=7.51%.
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,σppm):0.88(9H,3CH2CH3); 1.2 to 1.4 (22H,CONC2H4C5H10CH3 and 2NC2H5C3H6CH3); 1.4 to 1.6 (6H,2 CH2NCH2CH2CH2 and CONCH2CH2CH2); 2.47 (4H,2 CH2NCH2CH2); 2.9 and 3.1 (3H,NCH3); 3.25(2H,CONCH2CH2); 3.33 and 3.42(2H,NCH2CO).
アミド基を2個含有した3級アミン化合物HBMOEAA:N−n−ヘキシル−ビス(N−メチル−N−n−オクチル−エチルアミド)アミン(上記一般式[化1]中、R1=R2=R4R5NC(O)R6、R3=n−C6H13、R4=CH3、R5=n−C8H17、R6=CH2であるアミド含有三級アミン)を、前記非特許文献1を参考にして、下記の方法で合成した。
ヘキシルアミン及びトリエチルアミンを溶解したクロロホルム溶液に、クロロホルムに溶解した上記のN−メチル−N−n−オクチル−クロロアセトアミドを滴下して加えた。その後、反応溶液を室温で120時間、50℃で15時間攪拌した。反応溶液を0.5mol/L塩酸、2.5wt%Na2CO3水溶液、水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。クロロホルムを留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン:酢酸エチル=22:3流出部より未反応のN−メチル−N−n−オクチル-クロロアセトアミドを回収し、続いてヘキサン:酢酸エチル=7:3流出部よりHBMOEAAを得た。
得られたHBMOEAAの分析結果を以下に示す。
IR (neat,νcm-1): 1648 (C=O).
Elementary analysis:Found: C=70.55%; H=11.99%; N=8.72%.
Calcurated for C28H57N3O2・1/2H2O: C=70.54%; H=12.26% ;N=8.81%.
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,σppm):
0.87(9H,3CH2CH3);1.2 to 1.4(26H,10CH2CH2 and 3CH3CH2);1.4 to 1.6 (6H,NCH2CH2 and 2CONCH2CH2);2.67(2H,NCH2C2H5);2.89 and 3.03(6H,2NCH3);3.32(4H,2CONCH2);3.49(4H,2NCH2CO).
IR (neat,νcm-1): 1648 (C=O).
Elementary analysis:Found: C=70.55%; H=11.99%; N=8.72%.
Calcurated for C28H57N3O2・1/2H2O: C=70.54%; H=12.26% ;N=8.81%.
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,σppm):
0.87(9H,3CH2CH3);1.2 to 1.4(26H,10CH2CH2 and 3CH3CH2);1.4 to 1.6 (6H,NCH2CH2 and 2CONCH2CH2);2.67(2H,NCH2C2H5);2.89 and 3.03(6H,2NCH3);3.32(4H,2CONCH2);3.49(4H,2NCH2CO).
分離試薬(B):トリス(N−メチル−N−n−オクチル−エチルアミド)アミン(上記一般式[化1]中、R1=R2=R3=R4R5NC(O)R6、R4=CH3、R5=n−C8H17、R6=CH2であるアミド含有三級アミン)を、前記非特許文献2を参考にして、下記の方法で合成した。
ジメチルフォルムアミドを微量添加したニトリロ三酢酸を含むベンゼン溶液に、塩化オキサリルを滴下して加えた。その後、反応溶液を室温で6時間攪拌後、ベンゼンと塩化オキサリルを減圧蒸留で除去した。N−メチルオクチルアミンを含むベンゼン溶液に反応溶液を加え40℃で8時間撹拌後、析出物をろ過し、減圧蒸留で溶媒を除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン:酢酸エチル=5:1流出部より(B)を得た。
得られた(B)の分析結果を以下に示す。
IR(neat,νcm-1) : 1645 (C=O).
Elementary analysis:Found: C=69.70%; H=11.77%; N=9.88%.
Calcurated for C33H66N4O3: C=69.92%; H=11.74% ;N=9.88%.
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,σppm):
0.87 (9H,3CH2CH3); 1.2 to 1.4 (30H,3NC2H4C5H10CH3); 1.5 (6H, 3CONCH2CH2CH2); 2.9 and 3.1 (9H,3NCH3); 3.3(6H,3CONCH2CH2); 3.6 (6H,3NCH2CO).
IR(neat,νcm-1) : 1645 (C=O).
Elementary analysis:Found: C=69.70%; H=11.77%; N=9.88%.
Calcurated for C33H66N4O3: C=69.92%; H=11.74% ;N=9.88%.
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,σppm):
0.87 (9H,3CH2CH3); 1.2 to 1.4 (30H,3NC2H4C5H10CH3); 1.5 (6H, 3CONCH2CH2CH2); 2.9 and 3.1 (9H,3NCH3); 3.3(6H,3CONCH2CH2); 3.6 (6H,3NCH2CO).
(実施例2)
実施例1で得られた分離試薬(A)、(B)を用いて、以下のようにして、ロジウム、白金及びパラジウムを分離した。
上記試薬(A)、(B)を、それぞれクロロホルムにより希釈して、0.5mol/Lとした。
この有機溶媒に、白金、パラジウム及びロジウムをそれぞれ100mg/L含む等体積の塩酸溶液を加え、30分間激しく振とうすることで、有機相に金属の抽出を行った。抽出率は振とう前後の水相の金属濃度をICP発光分光器で測定して求めた。図3及び図4にそれぞれ試薬(A)及び(B)による、白金、パラジウム及びロジウムの抽出率の塩酸濃度依存性を示す。
いずれの抽出剤も塩酸濃度0.5〜10mol/Lにおいて、パラジウム及び白金はほぼ全量抽出した。ロジウムに関しては分離試薬(A)では、塩酸濃度0.5mol/Lにおいては70%以上の抽出率を示したが、塩酸濃度の増加に伴い抽出率は減少した。分離試薬(B)を用いると、1〜3mol/L塩酸からの抽出において90%以上の極めて高い抽出率が得られた。この抽出率は、湿式製錬分野で多くみられる塩素系酸溶液からのロジウム抽出の中でも極めて高い。
実施例1で得られた分離試薬(A)、(B)を用いて、以下のようにして、ロジウム、白金及びパラジウムを分離した。
上記試薬(A)、(B)を、それぞれクロロホルムにより希釈して、0.5mol/Lとした。
この有機溶媒に、白金、パラジウム及びロジウムをそれぞれ100mg/L含む等体積の塩酸溶液を加え、30分間激しく振とうすることで、有機相に金属の抽出を行った。抽出率は振とう前後の水相の金属濃度をICP発光分光器で測定して求めた。図3及び図4にそれぞれ試薬(A)及び(B)による、白金、パラジウム及びロジウムの抽出率の塩酸濃度依存性を示す。
いずれの抽出剤も塩酸濃度0.5〜10mol/Lにおいて、パラジウム及び白金はほぼ全量抽出した。ロジウムに関しては分離試薬(A)では、塩酸濃度0.5mol/Lにおいては70%以上の抽出率を示したが、塩酸濃度の増加に伴い抽出率は減少した。分離試薬(B)を用いると、1〜3mol/L塩酸からの抽出において90%以上の極めて高い抽出率が得られた。この抽出率は、湿式製錬分野で多くみられる塩素系酸溶液からのロジウム抽出の中でも極めて高い。
前記のパラジウム、白金及びロジウムを2mol/L塩酸溶液から抽出した有機相を分取し、水相として等体積の10mol/L塩酸溶液を加え、30分間振盪し、抽出された金属の逆抽出を行った。その際の逆抽出率を表1に示す。
逆抽出率の値は試薬(A),(B)とも同様であり、パラジウム及び白金の逆抽出率はいずれも小さくほとんど逆抽出されていない。一方、ロジウムでは約90%の高い逆抽出率が得られた。
逆抽出率の値は試薬(A),(B)とも同様であり、パラジウム及び白金の逆抽出率はいずれも小さくほとんど逆抽出されていない。一方、ロジウムでは約90%の高い逆抽出率が得られた。
前記のロジウム逆抽出後の有機相を分取し、水相として等体積の10mol/L硝酸溶液を加え、30分間振盪し、抽出された金属の逆抽出を行った。その際のパラジウム及び白金の逆抽出率を表2に示す。
試薬(A)におけるパラジウム及び白金の逆抽出率はそれぞれ約80%、60%と高い値となった。試薬(B)ではパラジウムが約50%、白金が約30%と若干小さい逆抽出率を示した。アミド基を2個含有した3級アミン化合物HBMOEAAでは、パラジウムが約80%、白金が約40%であった。また、ロジウムの逆抽出率は試薬(A)、(B)及びHBMOEAAとも90〜100%であった。
試薬(A)におけるパラジウム及び白金の逆抽出率はそれぞれ約80%、60%と高い値となった。試薬(B)ではパラジウムが約50%、白金が約30%と若干小さい逆抽出率を示した。アミド基を2個含有した3級アミン化合物HBMOEAAでは、パラジウムが約80%、白金が約40%であった。また、ロジウムの逆抽出率は試薬(A)、(B)及びHBMOEAAとも90〜100%であった。
(実施例3)
3級アミンの一種であるトリ−n−オクチルアミン(TOA)((n−C8H17)3N)及びアミド基を2個有するN,N′−ジメチル−N,N′−ジフェニル−マロンアミド(MA)({C6H5(CH3)NC(O)}2CH2)、N,N′−ジメチル−N,N′−ジ−n−オクチル−チオジグリコールアミド(TDGA)({n−C8H17(CH3)NC(O)CH2}2S)、N,N′−ジメチル−N,N′−ジ−n−オクチル−ジグリコールアミド(DGA)({n−C8H17(CH3)NC(O)CH2}2O)及びHBMOEAAと、上記試薬(A)、(B)とのロジウム抽出率の比較を行った。いずれの抽出剤もクロロホルムにより希釈して、0.5mol/Lとした。抽出実験及び抽出率測定は上記実施例2と同様に行った。ロジウム抽出率の他の抽出剤との比較結果を図5に示す。
試薬(A)、(B)がロジウムを抽出可能な塩酸濃度3mol/L以下においても、HBMOEAA以外の分離試薬ではロジウムをほとんど抽出していない。
以上の結果より、3級アミンでアミド基を含有していない化合物又はアミド基を含有するが3級アミンでない化合物は、ロジウムを抽出することが困難であり、ロジウムの抽出剤はアミド基を含有した3級アミンであることが必要であり、特にアミド基を3個有する3級アミンが極めて高いロジウム抽出率を示すことが分かった。
3級アミンの一種であるトリ−n−オクチルアミン(TOA)((n−C8H17)3N)及びアミド基を2個有するN,N′−ジメチル−N,N′−ジフェニル−マロンアミド(MA)({C6H5(CH3)NC(O)}2CH2)、N,N′−ジメチル−N,N′−ジ−n−オクチル−チオジグリコールアミド(TDGA)({n−C8H17(CH3)NC(O)CH2}2S)、N,N′−ジメチル−N,N′−ジ−n−オクチル−ジグリコールアミド(DGA)({n−C8H17(CH3)NC(O)CH2}2O)及びHBMOEAAと、上記試薬(A)、(B)とのロジウム抽出率の比較を行った。いずれの抽出剤もクロロホルムにより希釈して、0.5mol/Lとした。抽出実験及び抽出率測定は上記実施例2と同様に行った。ロジウム抽出率の他の抽出剤との比較結果を図5に示す。
試薬(A)、(B)がロジウムを抽出可能な塩酸濃度3mol/L以下においても、HBMOEAA以外の分離試薬ではロジウムをほとんど抽出していない。
以上の結果より、3級アミンでアミド基を含有していない化合物又はアミド基を含有するが3級アミンでない化合物は、ロジウムを抽出することが困難であり、ロジウムの抽出剤はアミド基を含有した3級アミンであることが必要であり、特にアミド基を3個有する3級アミンが極めて高いロジウム抽出率を示すことが分かった。
本発明は、金属精錬分野、及び自動車廃ガス用触媒や電気製品の使用済み製品を対象とした白金族金属リサイクル産業における、白金族金属分離精製工程において、分離試薬及び回収方法として期待されるものである。
Claims (11)
- R1、R2及びR3のうち1つが上記[化2]で表されるアミド基であり、該アミド基以外のR1〜R3は、炭素数1〜11の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R4は、炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R5は、炭素数6〜10の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R6は、炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基である請求項1に記載の白金族金属分離試薬。
- R1、R2及びR3の全てが上記[化2]で表されるアミド基であり、R4は、炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R5は、炭素数6〜10の分岐してもよい鎖式炭化水素基であり、R6は、炭素数1〜6の分岐してもよい鎖式炭化水素基である請求項1に記載の白金族金属分離試薬。
- N−ジ−n−ヘキシル−(N−メチル−N−n−オクチル−エチルアミド)アミンを有効成分とすることを特徴とする白金族金属分離試薬。
- トリス(N−メチル−N−n−オクチル−エチルアミド)アミンを有効成分とすることを特徴とする白金族金属分離試薬。
- ロジウム、白金及びパラジウムを含有する酸性の水相と、請求項1〜5のいずれか1項に記載の白金族金属分離試薬を含有する有機相を接触させることにより、ロジウム、白金及びパラジウムを前記有機相に抽出することを特徴とする白金族金属の分離方法。
- 請求項6に記載の有機相に抽出したロジウム、白金及びパラジウムを、高濃度塩酸溶液により逆抽出して、ロジウムを含む水溶液を得ることを特徴とするロジウムの回収方法。
- 請求項6に記載の有機相に抽出したロジウム、白金及びパラジウムを、高濃度硝酸溶液により逆抽出して、ロジウム、白金、及びパラジウムを含む水溶液を得ることを特徴とするロジウム、白金、及びパラジウムの回収方法。
- すくなくともロジウム、白金及びパラジウムを含有する被処理溶液から白金族金属を分離回収する方法において、
すくなくともロジウム、白金及びパラジウムを含有する酸性の被処理溶液と、請求項1〜5のいずれか1項に記載の白金族金属分離試薬を含有する有機相とを接触させて、前記酸性の被処理溶液からロジウム、白金及びパラジウムを分離する工程(第1工程)、
得られたロジウム、白金及びパラジウムを含有する前記有機相に、高濃度塩酸溶液を接触させてロジウムを回収する工程(第2工程)、
ロジウム分離後の前記有機相に、高濃度硝酸溶液を接触させて白金及びパラジウムを回収する工程(第3工程)、
得られた白金及びパラジウムを含有する水溶液に、チオジグリコールアミド分離試薬を含有する有機相と接触させてパラジウムを分離し、白金を水溶液に残す工程(第4工程)、及び
得られたパラジウムを含有する前記有機相に、チオ尿素を含む塩酸溶液又はアンモニア溶液を接触させてパラジウムを回収する工程(第5工程)
を含むことを特徴とするロジウム、白金及びパラジウムの分離回収方法。
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