JP2022125712A - パラジウム抽出剤およびパラジウムの分離方法 - Google Patents

パラジウム抽出剤およびパラジウムの分離方法 Download PDF

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Abstract

【課題】パラジウム抽出剤、および該抽出剤を用いたパラジウムの分離方法を提供する。【解決手段】下記一般式(1)で示されるチオエーテル基を2個含有するチオジベンゼンを有効成分とすることを特徴とするパラジウム抽出剤。TIFF2022125712000007.tif5686(式(1)中、R1およびR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、直鎖でも分岐していてもよい炭素数1~12の鎖式炭化水素基から選ばれる基を表す。)【選択図】なし

Description

本発明は、パラジウム抽出剤およびパラジウムの分離方法に関する。
パラジウム、白金、ロジウムの3種白金族金属の多くは自動車排ガス触媒に使用されている。排ガス規制並びその強化の世界的な広がり、また、これら3種白金族金属の需要の高まりにより、これらは安定確保が難しい金属資源となっている。その需要の高まりに伴って使用済み自動車排ガス触媒も増加の一途を辿っている。これら金属は高価であり、資源として貴重な金属であることから、使用後には回収してリユースすることが行われている。白金族金属を一定量供給するためには、金属精錬工程(一次資源)および使用済み製品(二次資源)からの白金族金属の分離精製を高効率化することが非常に重要である。
白金族金属の分離工程おける精製には、電解析出法、イオン交換法、沈殿法が提案されているが、選択性、経済性及び操作性の点から、溶媒抽出法が広く採用されている。この溶媒抽出法用途に使用する様々な抽出剤が開発され利用されている。現在、公知のパラジウム抽出剤として用いられているのがジアルキルスルフィド(DAS)であり(例えば、特許文献1、2)、前者はアンモニア水溶液による逆抽出できることが特徴である。
特開平10-130744 特開2005-146326
実工程での溶媒抽出法による白金族金属の分離精製においては、一次資源または二次資源に混在する白金族金属を含有する成分は塩酸/塩素ガスあるいは王水を用いて浸出した酸性溶液とされ、この酸性溶液に対して、抽出処理が行われる。この条件下で、DASを使用した場合には、パラジウム、白金、ロジウム、ベースメタルを含む酸性溶液からにパラジウムを選択的に抽出するものの、望まない金属も少なからず抽出されるほか、抽出速度が遅いという問題もある。
以上、本発明は、(1)白金及びロジウム、ベースメタル等が混在する溶液から選択的にパラジウムを抽出することが可能であり、(2)短時間でパラジウムを抽出することが可能である、パラジウム抽出剤、および、該抽出剤を用いたパラジウムの分離方法を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、特定のピンサー型構造の化合物を有効成分とするパラジウム抽出剤により、上記課題を解決可能であることを見出した。
第1の本発明は、下記一般式(1)で示されるチオエーテル基を2個含有するチオジベンゼンを有効成分とすることを特徴とするパラジウム抽出剤である。
Figure 2022125712000001
(式(1)中、RおよびRは、互いに同一であっても異なっていてもよく、直鎖でも分岐していてもよい炭素数1~12の鎖式炭化水素基から選ばれる基を表す。)
第2の本発明は、パラジウムが存在する酸性水溶液からなる水相と、第1の本発明のパラジウム抽出剤を含有する有機相とを接触させることにより、パラジウムを前記有機相に抽出する、パラジウムの分離方法。
第2の本発明において、前記水相が、少なくともパラジウムを含む多種の金属が混在する廃棄物を酸処理により水溶液化した酸浸出液であることが好ましい。
本発明のパラジウム抽出剤、および、該抽出剤を用いたパラジウムの分離方法によると、(1)白金及びロジウム、ベースメタル等が混在する溶液から選択的にパラジウムを抽出することが可能であり、(2)短時間でパラジウムを抽出することが可能である。
実施例のパラジウム抽出実験における、振とう時間に対するPd(II)の抽出率(E%)を示すグラフである。 実施例の塩酸濃度の異なる塩酸浴中のパラジウム単独溶液からの抽出実験の結果を示すグラフである。 実施例の模擬溶液からのパラジウムの選択的抽出実験の結果を示すグラフである。 実施例の自動車排ガス触媒を酸浸出した溶液からのパラジウムの選択的抽出実験の結果を示すグラフである。
<パラジウム抽出剤>
本発明のパラジウム抽出剤は、下記一般式(1)で示されるチオエーテル基を2個含有するチオジベンゼンを有効成分とすることを特徴とする。
Figure 2022125712000002
(式(1)中、RおよびRは、互いに同一であっても異なっていてもよく、直鎖でも分岐していてもよい炭素数1~12の鎖式炭化水素基から選ばれる基を表す。)
ピンサー型金属錯体は、触媒(有機合成反応)、蛍光材料、電極材料として利用されてきたが、抽出剤用途としての研究はこれまでほとんどされてきていない。本発明者らは、特定のピンサー型配位子の構造を有する本発明のパラジウム抽出剤が、ピンサー型配位子の特性である「ピンサー配位子の金属をカニばさみする特性」を利用することにより、パラジウム抽出剤として優れた選択性および迅速性を発揮できることを見出したものである。
本発明のパラジウム抽出剤は、式(1)で示される所定のチオジベンゼン構造を有効成分とする。ここで、「有効成分とする」とは、パラジウム抽出剤中に、該成分以外に、例えば、溶媒や各種添加剤が含まれていていてもよいという意味である。
本件発明のピンサー型抽出剤は、白金族元素のパラジウム、白金、ロジウム及びその他ベース金属が含まれる溶液からパラジウムを高抽出率で分離できる。抽出剤の骨格は架橋部に硫黄元素を有するチオジベンゼンにチオエーテル基を2か所に導入した化合物であり(式(1))、パラジウム抽出剤として新規化合物である。この抽出剤はパラジウムをキレートにより抽出することが可能である。本件発明のジチオエーテル基含有ジベンゼン抽出剤は、使用済み自動車排ガス触媒の浸出液からパラジウムを高選択・高効率・迅速的に抽出できることが実証できた。
一般式(1)において、一分子中のR、Rは同一であっても異なっていてもよいが、合成のしやすさの点から、同一であることが好ましい。R、Rは分岐していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、好ましくは炭素数1~12の直鎖または分岐のアルキル基であり、より好ましくは炭素数6~10の直鎖または分岐のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数7~9の直鎖または分岐のアルキル基であり、さらに好ましくは、炭素数7~9の直鎖のアルキル基である。
<パラジウムの分離方法>
本発明のパラジウムの分離方法は、上記したパラジウム抽出剤を含有する有機相を準備する工程、パラジウムが存在する酸性水溶液からなる水相を準備する工程、水相と有機相とを接触させることにより、パラジウムを前記有機相に抽出する工程、を備えている。
(パラジウム抽出剤を含有する有機相)
パラジウム抽出剤を含有する有機相に使用する溶媒は、非水溶性の溶媒であり、2種以上の溶媒を組み合わせて使用してもよい。非水溶性の溶媒としては、一般式(I)で表されるチオエーテル基を2個含有するチオジベンゼン化合物を溶解することができれば特に制限はなく、石油、ケロシン等の鉱油;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化溶媒等が挙げられる。中でも、溶解性の点から、ドデカン、トルエン、ケロシンが好ましい。
有機相における、一般式(I)で表されるチオエーテル基を2個含有するチオジベンゼン化合物の濃度は該化合物の溶解度によって上限が限定される以外は特に制限はないが、あまりに濃度が低いとパラジウム抽出効果が得られないため、通常0.1mM~1Mの範囲で使用される。
(パラジウムが存在する酸性水溶液からなる水相)
パラジウムを含む酸性水溶液における、酸の濃度、例えば、塩酸濃度、硝酸濃度、または、塩酸-硝酸混合溶液の濃度は、好ましくは2M以下5M以上であり、より好ましくは1M以下6M以上であり、さらに好ましくは0.5M以下7M以上であり、さらに好ましくは8M以上であり、特に好ましくは0.1M以下9M以上である。
酸性水溶液に含まれる酸としては、水溶性であれば特に制限はなく、無機酸を使用することができる。無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、過酸化水素等が挙げられる。また、2種類以上の酸が含まれていても良い。金属の溶解性の観点から、塩酸、硝酸、または、これらの混合物が好ましい。
パラジウムを含む酸性水溶液中におけるパラジウムの濃度は特に制限はなく、通常は50~1000ppm程度である。
本発明のパラジウムの分離方法において、前記パラジウムを含む酸性水溶液は、少なくともパラジウムを含む多種の金属が混在する廃棄物を酸処理により水溶液化した酸浸出液であることが好ましく、このような酸浸出液を対象とすることにより、本発明のパラジウム抽出剤の優れた認識性、選択制、効率性、迅速性をより発揮させることが可能となる。少なくともパラジウムを含む多種の金属が混在する廃棄物としては、例えば、自動車排ガス触媒を挙げることができる。
酸浸出液に含まれるパラジウム以外の金属としては、特に限定されず、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、3B金属等が含まれていても良く、中でも本発明のパラジウムの抽出剤の選択性を発揮する点から、白金、ロジウム、ランタン、レアアース、ジルコニウム、および、ベースメタルから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。これにより、希少性が高く有用なパラジウムをリサイクル利用することができる。また、パラジウムを分離した後の酸浸出液に含まれるパラジウムの量を大きく低減させることができるため、パラジウムを除去する操作としても利用できる。よって、本発明は、廃棄物を酸処理により水溶液化した酸浸出液からパラジウム以外の有用金属を単離する際の、前処理としても利用できる。
(抽出条件)
抽出温度は使用する溶媒の沸点以下であれば特に制限はなく、通常、室温付近で行われる。抽出操作はパラジウム抽出剤を含有する有機相とパラジウムを含む酸性水溶液からなる水相とを振とう、撹拌などにより互いに接触させることにより行われる。振とうは通常毎分100~500回程度行えばよい。
また、本発明のパラジウム抽出剤は短時間でパラジウムを抽出することが可能であり、振とう時間は、30分で過半数のパラジウムを抽出可能であり、1時間程度でほぼ全量の抽出が可能となる。また、抽出剤や酸性水溶液の条件によって、適宜、振とう時間を調整することができる。振とう時間としては、下限が好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましは30分以上、特に好ましくは1時間以上であり、上限は好ましくは3時間以下、より好ましくは2時間以下である。
<ジオクチルチオエーテル基を有するチオジベンゼン抽出剤の合成>
(1)1,1´-N,N-ジメチルカルバモイルチオ‐2,2´-スルファンジイル-4,4´-tert‐ブチルベンゼンの合成法
Figure 2022125712000003
100mLナスフラスコに2,2-チオビス[4‐tert‐ブチルO-N,N-ジメチルチオカルバモイルベンゼン](1.26g,2.5mmol)とジフェニルエーテル(60mL)を熱溶媒とし、235℃で窒素雰囲気下、15時間反応させた。反応終了後、減圧蒸留にてジフェニルエーテルを留去した。得られた茶褐色固体をヘキサン:酢酸エチル=1:2の溶出液を使用し、シリカゲルを充填したカラムを用いて、フラッシュカラムクロマトグラフィーにて精製することで、目的物の固体を得た(収率:69.5%)。目的物の構造はH NMR測定によって確認した。
得られた目的物の分析結果は以下のとおりであった。
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS) δ7.50 (d, 2H, ArH), 7.27 (dd, 2H, ArH), 7.22(d, 2H, ArH), 3.08 (s, 6H, -S-(C=O)-N-(CH3)2), 2.99 (s, 6H, -S-(C=O)-N-(CH3)2), 1.22(q, 18H, -CH3))
(2)2,2´-スルファンジイル-4,4´-tert-ブチルジベンゼンチオールの合成法
Figure 2022125712000004
200mLフラスコにリチウムアルミニウムヒドリド(0.75g,19.8mmol)を量り採った後、脱水処理したテトラヒドロフラン(30mL)を加えた。滴下漏斗で脱水処理したテトラヒドロフラン(20mL)に溶解した1,1´-N,N-ジメチルカルバモイルチオ‐2,2´-スルファンジイル‐4,4´-tert‐ブチルベンゼン(1.0g,1.98mmol)を1滴ずつゆっくり滴下し撹拌した後、室温で窒素雰囲気下、1時間攪拌した。反応終了後、氷浴下、2N塩酸(140mL)を少量ずつ加えて、クエンチし、一晩攪拌した。酢酸エチルで目的成分の抽出(20mL×5)を行った後、水(20mL×2)と飽和食塩水(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで有機層を脱水した。酢酸エチルを減圧蒸留にて除去することで得られた茶色油状物をヘキサン:酢酸エチル=10:1の溶出液とシリカゲルを充填したカラムを使用し、フラッシュカラムクロマトグラフィーより精製することで、無色透明油状物を得た(収率:76.6%)。目的物の構造はH NMR測定によって確認した。
得られた目的物の分析結果は以下のとおりであった。
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS) δ 7.33 (d, 2H, ArH), 7.18 (d, 2H, ArH), 7.12 (d, 2H, ArH), 3.99 (s, 2H, -SH), 1.19 (q, 18H, -CH3))
(3)1,1´-オクチルスルファニル-2,2´-スルファンジイル-4,4´-tert-ブチルベンゼン(化合物1)の合成法
Figure 2022125712000005
2,2´-スルファンジイル-4,4´-tert-ブチルジベンゼンチオール(0.2g,0.55mmol)、水酸化カリウム(0.09g,1.65mmol)、エタノール(30mL)を100mLの2口フラスコに投入し、1-ブロモオクタン(0.29mL,1.65mmol)を滴下し、窒素気流下、2時間還流させた。氷浴にて冷却し、3N HCl(1mL)を加えて中和した。溶媒を留去後、反応物にジクロロエタン(10mL×5)を加えて抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。その後、目的成分をヘキサン:アセトン(100:1)の溶出液とシリカゲルを充填したカラムを使用し、フラッシュカラムクロマトグラフィーより精製することで、目的物(化合物1)である黄色透明油状物を得た(収率64.7%)。
得られた目的物(化合物1)のH NMRの測定結果は以下のとおりであった。
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS) δ 7.28 (d, 2H, ArH), 7.20(dd, 2H, ArH), 7.05(d, 2H, ArH), 2.90 (t, 4H, -S-CH2), 1.64 (t, 4H, -S-CH2-CH2), 1.40 (t, 4H, -S-CH2-CH2-CH2), 1.26 (m, 16H, -S-CH2-CH2-CH2 CH2 CH2 CH2 -CH3), 1.19 (s, 18H, tert-butyl) ,0.87 (t, 18H, -S-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3))
<パラジウムの抽出実験>
(1)パラジウム抽出能力の検討(抽出時間の評価)
本実施例では、水相にPd(II)(1mM)を含むHCl溶液(0.1M)、有機相に上記で合成した抽出剤(化合物1)(1mM)をトルエンで希釈した溶液を調製した。両液を10mLずつ遠沈管に採取し、300rpmで任意の時間、振とうさせた。振とう後は、3500rpmで3分間遠心分離を行い、溶液中の各金属濃度をICP発光分光分析で測定し抽出率を求めた。抽出率(E%)は以下の式I、式IIを用いて求めた。
E%=[M]org/[M]aq,init×100 (式I)
[M]org=[M]aq,init-[M]aq (式II)
なお、上記式Iおよび式IIにおける各定義は以下の通りである。
[M]aq,init:抽出前の水相中の金属濃度
[M]aq:抽出後の水相中の金属濃度
[M]org:抽出後の有機相中の金属濃度
振とう時間に対するPd(II)の抽出率(E%)の変化を図1に示す。縦軸が抽出率(E%)で横軸が振とう時間(時間)である。
図1より、振とう時間0.5時間で約60%の抽出率を示し、1時間後にはほとんどのPd(II)が抽出されたことが分かった。また、1時間以降は、抽出率が約100%維持された。
(2)塩酸濃度の異なる塩酸浴中のパラジウム単独溶液からの抽出実験(高抽出率を維持できる塩酸濃度の評価)
本実施例では、塩酸濃度を変化させたパラジウムを単独で含有する酸性溶液からの抽出実験を行った。抽出剤(化合物1)はトルエンの希釈剤に溶解させ、1mMとし有機相とした。これら有機相10mLに、図2に示した0.1M~10.0M塩酸を用いて1mMの濃度に調製したパラジウムの各単独溶液を水相として等体積加え、3時間、激しく振とう(300rpm)することで、有機相へパラジウムの抽出を行った。その後、上記(1)と同様に遠心分離を行い、水相中のパラジウム濃度をICP発光分析装置にて分析し、その得られた結果をもとに抽出率(E%)を上記の式Iと式IIにて算出した。
塩酸濃度を変えた際の抽出率の変化を図2に示す。縦軸が抽出率(%)で横軸が塩酸濃度(M)である。1.0~7.0M塩酸濃度の範囲では、抽出率が低いものの、その他の塩酸濃度では、94%以上の抽出率を示した。以上より、上記、1.0~7.0M塩酸濃度以外を適用することで、効果的にパラジウムを抽出できると結論づけることができる。
なお、図2における、各プロットの横軸の値(M)は、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および、10である。
(3)自動車排ガス触媒に含まれる金属を選定して調製した模擬溶液(13種の金属を含有する溶液)からのパラジウムの選択的抽出(パラジウム選択性の評価)
自動車排ガス触媒に含まれる13種の金属を選定し、各金属が100ppmになるように調製した0.1M HCl溶液(模擬溶液)を準備した。抽出剤(化合物1)を1mMになるようにトルエンに溶解した有機相10mLと、上記模擬溶液(水相)を10mLとを50mL遠沈管に量り取り、300rpmで6時間振とうさせた。その後、上記(1)と同様に遠心分離を行い、水相中の各金属の濃度をICP発光分析装置にて分析し、得られた結果をもとに抽出率(E%)を上記の式Iと式IIにて求めた。
各金属の抽出率(E%)を示したのが図3である。縦軸が抽出率(E%)で横軸が各金属イオンである。
図3に示すように、パラジウムを99%で抽出できており、他の金属種の抽出率は5.0%以下であり、パラジウムに対して高い選択性を示すことが示された。この結果から、抽出剤(化合物1)を1mMとしたトルエン溶液と13種の金属を含む模擬溶液とを接触させると、パラジウムは9割以上抽出でき、効果的に分離できることができる。
(4)自動車排ガス触媒を酸浸出した溶液からのパラジウムの選択的抽出(パラジウム選択性の評価)
工場より排出された少なくともパラジウムを含み、その他多種の金属が混在する廃棄物を酸処理により水溶液化した浸出液(粉末化した使用済みの自動車触媒を11.7M塩酸と1vol%過酸化水素にて浸出した浸出液)の原液(Al(III):8720ppm、Ca(II):1000ppm、Cr(III):106ppm、Cu(II):61ppm、Fe(III):2147ppm、Mg(II):1960ppm、Ni(II):170ppm、Pd(II):472ppm、Pt(IV):934ppm、Rh(III):71ppm、La(III):128pm、Ce(III):7160ppm)を10mL(水相)と、抽出剤(化合物1)をトルエンに希釈して4mMとした有機相を10mLとを混合し、これら有機相と水相とを、6時間激しく振とう(300rpm)し、その後、水相中の各金属の濃度をICP発光分析装置にて分析し、その得られた結果をもとに抽出率(E%)を上記の式Iと式IIにて求めた。
各金属の抽出率(E%)を示したのが図4である。縦軸が抽出率(E%)で横軸が各金属イオンである。
図4に示すように、パラジウムを92%程度で選択的に抽出できており、他の金属種はほとんど抽出されておらず、パラジウムに対して高い選択性を示すことが示された。この結果から、抽出剤(化合物1)を4mMとしたトルエン溶液と自動車排ガス触媒の酸浸出溶液とを接触させると、パラジウムは9割以上抽出でき、効果的に分離することができる。

Claims (3)

  1. 下記一般式(1)で示されるチオエーテル基を2個含有するチオジベンゼンを有効成分とすることを特徴とするパラジウム抽出剤。
    Figure 2022125712000006
    (式(1)中、RおよびRは、互いに同一であっても異なっていてもよく、直鎖でも分岐していてもよい炭素数1~12の鎖式炭化水素基から選ばれる基を表す。)
  2. パラジウムが存在する酸性水溶液からなる水相と、請求項1に記載のパラジウム抽出剤を含有する有機相とを接触させることにより、パラジウムを前記有機相に抽出する、パラジウムの分離方法。
  3. 前記水相が、少なくともパラジウムを含む多種の金属が混在する廃棄物を酸処理により水溶液化した酸浸出液である、請求項2に記載のパラジウムの分離方法。
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