JP2013164566A - 調光フィルムおよび調光フィルム用導電フィルム - Google Patents

調光フィルムおよび調光フィルム用導電フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】電波透過性に優れ、面内の表面抵抗率のばらつきを抑えた導電層を有する調光フィルム、および調光フィルム用導電フィルムを提供する。
【解決手段】2枚の導電性樹脂基材のそれぞれの導電層が対向して挟持される調光層を有する調光フィルムである。そして、前記導電性樹脂基材は、樹脂基材と、平均長さが1μm以上0.5mm以下且つ平均太さが1nm以上20nm以下のカーボンナノチューブを含有する導電層と、を有する。前記調光層は、樹脂マトリックス及び前記樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液を含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、調光機能を有する調光フィルム、および調光フィルム用導電フィルムに関する。
電界を印加していない状態では、懸濁液中に分散されている光調整粒子のブラウン運動により、入射光の大部分が光調整粒子により反射、散乱又は吸収され、ごく一部分だけが透過し、一方、電界を印加した状態では、光調整粒子が分極を起こし、電界に対して平行に配列され、光調整粒子と光調整粒子の間を光が透過するライトバルブすなわち調光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、液状の光調整懸濁液を硬化性の高分子樹脂の溶液と混合し、重合による相分離法、溶媒揮発による相分離法、又は温度による相分離法等を利用して調光フィルムを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また電波透過性を有する調光フィルムとして、有機バインダー樹脂及び導電性高分子を含有してなる透明導電層を有する調光フィルムが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
米国特許第1,955,923号明細書 特開2002−189123号公報 国際公開第11/093332号パンフレット
しかしながら、特許文献3に記載された、有機バインダー樹脂及び導電性高分子を含有してなる透明導電層を有する調光フィルムでは、1GHz〜5.8GHz程度の電波透過性に優れるものの、500MHz程度の周波数領域における電波透過性については更なる改善が必要であった。また、この調光フィルムにおいて、500MHz程度での電波透過性を高めようとすると、導電層の面内において表面抵抗率のばらつきが大きくなることが明らかとなった。
そこで本発明は、電波透過性に優れ、面内の表面抵抗率のばらつきを抑えた導電層を有する調光フィルム、および調光フィルム用導電フィルムを提供することを課題とする。
本発明者等は鋭意検討した結果、導電層に、特定長さ及び特定太さのカーボンナノチューブを用いることにより、上記課題を解決できることを見出した。即ち本発明は以下の通りである。
<1> 樹脂基材と、及び平均長さが1μm以上0.5mm以下且つ平均太さが1nm以上20nm以下のカーボンナノチューブを含有する導電層と、を有する導電性樹脂基材を2枚と、
前記2枚の導電性樹脂基材のそれぞれの導電層が対向して挟持される、樹脂マトリックス及び前記樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液を含む調光層と、
を有する調光フィルム。
<2> 前記導電層の表面抵抗率が10kΩ/□以下である前記<1>に記載の調光フィルム。
<3> 前記導電層の表面抵抗率が1000Ω/□以上10kΩ/□以下である前記<1>又は<2>に記載の調光フィルム。
<4> 500MHz以上の周波数領域における電波シールド性が5dB以下である前記<1>〜<3>のいずれか一項に記載の調光フィルム。
<5> 平均長さが1μm以上0.5mm以下且つ平均太さが1nm以上20nm以下のカーボンナノチューブを含む導電層と、樹脂基材と、を有する調光フィルム用導電フィルム。
本発明によれば、電波透過性に優れ、面内の表面抵抗率のばらつきを抑えた導電層を有する調光フィルム、および調光フィルム用導電フィルムを提供することができる。
本発明に係る導電性樹脂基材(導電フィルム)の一態様を示す断面構造概略図である。 本発明に係る導電性樹脂基材(導電フィルム)の他の一態様を示す断面構造概略図である。 本発明に係る導電性樹脂基材(導電フィルム)の他の一態様を示す断面構造概略図である。 本発明に係る導電性樹脂基材(導電フィルム)の他の一態様を示す断面構造概略図である。 本発明の調光フィルムの一実施形態を示す断面構造概略図である。 (a)は調光フィルムの電界が印加されていない状態を説明する調光フィルムの概略断面図であり、(b)は、このときの光調整懸濁液内の拡大図である。 (a)は調光フィルムの電界が印加されている状態を説明する調光フィルムの概略断面図であり、(b)は、このときの光調整懸濁液内の拡大図である。 調光フィルムの端部の一態様を示す概略断面図である。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
<調光フィルム>
本発明の調光フィルムは、樹脂基材と導電層とを有する導電性樹脂基材の2枚と、前記2枚の導電性樹脂基材のそれぞれの導電層が対向して挟持される調光層と、を有する。前記調光層は、樹脂マトリックス及び前記樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液を含む。そして、前記導電層は、平均長さが1μm以上0.5mm以下且つ平均太さが1nm以上20nm以下のカーボンナノチューブ(以下「CNT」と略称する場合がある)を含有する。前記調光フィルムは必要に応じてその他の部材を更に有していてもよい。
調光フィルムを構成する導電層が、平均長さ1μm以上0.5mm以下且つ平均太さ1nm以上20nm以下のカーボンナノチューブを含有することで、電波透過性に優れ、そして面内の表面抵抗率のばらつきが抑えられる。これは、例えば以下のように考えられる。
導電層にポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体などの導電性高分子を用いる場合に比べて、カーボンナノチューブを用いる場合の方が、導電層の表面抵抗率を調節しやすい。これは、カーボンナノチューブを用いた導電層における表面抵抗率は、カーボンナノチューブの長さおよび太さを制御することにより調節することができることに起因する。したがって、導電層にカーボンナノチューブを用いると、表面抵抗率の調節により電波透過性を高めることが可能となる。
特に、500MHz程度の周波数領域における高電波透過性を達成すべく表面抵抗率を特定の範囲に調節しようとすると、ポリチオフェン誘導体などの導電性高分子を含む導電層では表面抵抗率が低くなりすぎる。そのため、導電性高分子の含有量を低減したり、導電層の厚みを薄くしたりしなければならず、面内での表面抵抗率のばらつきが大きくなることが明らかとなった。これに対して、カーボンナノチューブでは、平均長さを1μm以上0.5mm以下とし、且つ平均太さを1nm以上20nm以下とすることで、500MHz程度の周波数領域における高電波透過性に適した特定範囲の表面抵抗率を実現でき、且つ導電層内のCNTの局在化を抑えることができる。その結果、電波透過性に優れ、且つ面内の表面抵抗率のばらつきが抑えられるものと考えられる。なお、導電層の面内の表面抵抗率にばらつきが生じると、駆動時に光透過率のムラが発生しやすくなる。これは、表面抵抗率に差があると、駆動時に着色状態から透明状態に素早く変化する部分と遅く変化する部分が生じるためと考えることができる。
以下、各層構成及び調光フィルムについて説明する。
〔導電性樹脂基材〕
導電性樹脂基材は、樹脂基材と導電層とを有する。前記導電層は、平均長さが1μm以上0.5mm以下且つ平均太さが1nm以上20nm以下のカーボンナノチューブを含有する。なお、導電性樹脂基材は、下記調光層を付設せずに、調光フィルム用導電フィルムとして用いてもよい。
(樹脂基材)
樹脂基材としては特に制限されず適用することができる。好ましくは、光透過率が80%以上である樹脂基材を用いる場合である。なお、光透過率はJIS K7105の全光線透過率の測定法に準処して測定することができる。
具体的な樹脂基材としては、高分子フィルム等を使用することができる。前記高分子フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、アクリル樹脂系のフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等の樹脂フィルムが挙げられ、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETフィルム」ともいう)が、透明性に優れ、成形性、接着性、加工性等に優れるので好ましい。
樹脂基材の厚みは特に制限はない。例えば、高分子フィルムの場合には10μm〜200μmが好ましい。
(導電層)
導電層は、平均長さ1μm以上0.5mm以下且つ平均太さ1nm以上20nm以下のカーボンナノチューブを含有する。
前記CNTの平均長さは、1μm以上0.5mm以下であり、2μm以上0.5mm以下であることが好ましく、3μm以上0.5mm以下であることがより好ましい。CNTの平均長さが1μm未満の場合、導電層の表面抵抗率が高くなって調光フィルムが駆動し難くなる。CNTの平均長さが0.5mmを超えるとCNTを回収する際にCNTを均一の長さに保つのが困難になり、また、CNTの溶媒への分散が困難になる。
また、CNTの平均太さは1nm以上20nm以下であり、1nm以上18nm以下であることが好ましく、1nm以上16nm以下であることがより好ましい。CNTの平均太さが1nm未満の場合、電波透過性を向上させ難くなり、20nmを超えると面内の表面抵抗率のばらつきが大きくなる。また、20nmを超えると、導電性の低い多層カーボンナノチューブ(MWCNT)になり易くなるため、表面抵抗率が上昇する。
CNTの平均長さは、走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」ともいう)を用いて得られるCNT画像において、それぞれのCNTの長さ方向の画素数を、任意に選択した10個のCNTについて計測し、その算術平均値として算出される。またCNTの平均太さは、透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」ともいう)を用いて得られるCNT画像において、それぞれのCNTの直径方向の画素数を、任意に選択した10個のCNTについて計測し、その算術平均値として算出される。
なお、走査型電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡による観察は、観察対象のCNTが個別に識別可能な条件で行なう。具体的には導電層を形成するCNTを水等の溶媒に分散してCNT分散液を調製し、これを支持体に塗布、乾燥することで観察用試料が得られる。このときCNT分散液の濃度を適宜調整(例えば、希釈)することで観察対象のCNTが個別に識別可能な観察用試料が作製される。
なお、導電層等からCNTを取り出してCNT分散液を調製する場合には、必要に応じて界面活性剤等を用いることができる。このような界面活性剤は適宜選択して使用することができ、例えば、両性イオン界面活性剤の3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)とアニオン系界面活性剤のコール酸ナトリウムの混合物(質量比で1/4)、3−(テトラデシルジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホナート(Z3−14)及びミリスチン酸ナトリウム(質量比で1/4)が挙げられる。
前記CNTは、いわゆる単層カーボンナノチューブ(SWCNT)であることが好ましい。CNTとしてSWCNTを用いることで、導電層の表面抵抗率が低下し、より優れた調光性能と電波透過性とを両立することができる。
前記CNTは、市販のものから適宜選択して用いてもよく、またWO2008/029927号公報、WO2009/110591号公報等に記載の方法に準じて製造してもよい。WO2008/029927号公報、WO2009/110591号公報等に記載の方法に準じることで平均長さが1μm以上0.5mm以下で、平均太さが1nm以上20nm以下であるCNT(好ましくはSWCNT)を効率的に製造することができる。
前記CNTの製造方法としては、具体的には例えば以下の通りである。
カーボンナノチューブの製造方法では、触媒が担持された支持体を用い、該支持体上に原料ガスを流通させることでカーボンナノチューブの合成(合成工程)を行う。また、カーボンナノチューブの製造方法の好適な一実施形態は、支持体への触媒担持(触媒担持工程)、カーボンナノチューブの合成(合成工程)、カーボンナノチューブの分離(分離工程)、カーボンナノチューブの回収(カーボンナノチューブ回収工程)を、好ましくは支持体を加熱状態に保ったまま行う方法であり、より好ましくは各工程を繰り返して行う方法である。なお、支持体として、予め触媒を担持させたものを用意してもよく、このような場合には、触媒担持工程を省略してもよい。好ましくはカーボンナノチューブを熱CVD法により合成する。この熱CVD法は、高温にして気化された原料を、その蒸気の気相中、或いは基材表面で化学反応させることにより、固体材料を形成する方法である。
化学反応を起こさせるエネルギーを、基材や反応容器壁から熱エネルギーの形で与えるものが熱CVD法として知られている。特に、用いる支持体の状態の違いにより、支持体の設置の仕方を変えることが望ましい。支持体にハニカム状、多孔質状、ファイバー状、チューブ状、ワイヤー状、網状、格子状、スポンジ状、板状、層状等の構造物を用いるときは、支持体は反応器内に固定して設置され、高温に加熱される。その表面に触媒原料などを供給して、支持体の表面に触媒の担持を行い、そして、炭素源などを供給してカーボンナノチューブの合成を行なう。
支持体に粉末状、ビーズ状等の粒子を用いる場合、反応器内に粒子を充填する。この粒子からなる粒子層中を触媒原料、炭素源などのガスを流通させることで、固定層状態ないし流動層状態の粒子表面に触媒の担持、カーボンナノチューブの合成を行なう。特に流動層熱CVD法の場合は、支持体粒子はキャリアガス等によって、反応器内にて流動化した状態を形成している。この雰囲気に、触媒原料、炭素源などを供給して、支持体の表面に触媒の担持、カーボンナノチューブの合成を行う。この場合、支持体としては、これらのガス流と一緒に反応器から排出されない程度の重さを持つ粒子を用いることができる。
上述の各工程及びその繰り返しは、支持体を100℃以上、1200℃以下の温度に保持した状態で行うことが好ましい。更に、各工程及びその繰り返しにおいて、支持体の温度の変動が500℃以下であることが好ましい。支持体の温度の好ましい下限を100℃としたのは、触媒の担持やカーボンナノチューブの分離などの工程において、反応器内に液体状態の水を導入しないことを意図している。液体状態の水の導入を避けることで、カーボンナノチューブ合成条件を整えるための時間的および熱的損失を抑えることができる。支持体の温度の好ましい上限を1200℃としたのは、炭素源が熱分解して煤になる温度以下にすることを意図している。この温度は、炭素源の種類によって異なる。また、カーボンナノチューブ及び水素をより効率的に合成する観点から、支持体は600℃以上、1000℃以下の温度に保持することがより好ましい。
上述の各工程を繰り返し行う場合、その繰り返しの周期は、10秒以上10時間以内であるとよい。繰り返しの周期中のカーボンナノチューブの合成時間は、繰り返し周期の時間の10%以上、99.99%以下であるとよい。繰り返しの周期中のカーボンナノチューブの分離と触媒再担持の時間は、数十秒でよい。カーボンナノチューブの合成の時間範囲は、カーボンナノチューブの長さをどの程度にするかの目的に応じて変わる。合成時間が長ければ、長いカーボンナノチューブの合成ができる。この合成時間は、材料の種類、必要なカーボンナノチューブの長さによって、決定されるものであり、上述の値に限定されるものではない。同様に、カーボンナノチューブの分離、触媒の再担持、支持体の再生に必要な時間は、材料の種類、加熱温度等によって、決定されるものであるため、上述の値に限定されるものではない。
触媒担体(担体層)は、Si、Al、Mg、Zr、Ti、O、N、C、Mo、Ta及びWの中から選択される1以上の元素を含む。例えば、触媒担体は、SiO、AlやMgO等の酸化物、SiやAlN等の窒化物、SiC等の炭化物で形成されているとよい。特にAl又はAl−SiOの複合酸化物が好ましい。触媒担体の原料は、反応器に、気体状態で供給される。触媒担体の原料が常温の液体又は固体の場合、これを気体化させて、反応器に、気体状態で供給することもできる。供給された気体状態の触媒担体の原料は、支持体上に接触して、担持され、支持体上に触媒担体を形成する。
触媒は、成分にV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、W及びAuの中から選択される1以上の元素を含むものがよい。また、触媒は、上述した触媒担体(担体層)又は触媒担体を兼ねた支持体の上に形成される。触媒の大きさは、直径が0.4nm以上15nm以下であることが好ましい。触媒はFeまたはCoであることが好ましい。
触媒担体と触媒との組み合わせとしては、カーボンナノチューブの生産性の観点から、触媒担体がAlであり、触媒がFeであることが好ましい。また、直径が小さいカーボンナノチューブを効率的に得る観点からは、触媒担体がAlであり、触媒がCoであることが好ましい。
前記炭素源を含む原料ガスは、炭素源は、炭素原子及び水素原子を含有し、加熱状態で分解されるものである。炭素源は、アルキン・アルケン(オレフィン炭化水素)、アルカン(パラフィン炭化水素)、アルコール類、エーテル類、アルデヒド類、ケトン類、芳香族炭化水素、熱分解性高分子及び石油の中から選択される1以上を含むとよい。これらの中でも、炭素源は、アルキン、アルケン、アルカン及び芳香族炭化水素のような、炭素原子及び水素原子のみからなる炭化水素であることが好ましく、反応性の高いアセチレンであることがより好ましい。炭素源は、反応器内に、気体状態で供給されるとよい。炭素源は、常温の液体又は固体の原料を反応器に供給して、反応器内の加熱雰囲気の熱によって原料を蒸発させて供給することもできる。炭素源は、炭素源のみからなる気体として供給してもよく、キャリアガス等の気体と混合して供給してもよい。
炭素源を含む原料ガスを、好ましくは0.001MPa(0.01気圧)から1.013MPa(10気圧)で支持体上に流通させることで熱CVD法を行う。具体的には、炭素源を含む気体を0.001MPa(0.01気圧)から1.013MPa(10気圧)で前述した触媒に送気させることで、カーボンナノチューブの合成を行う。このとき、好ましくは、炭素源蒸気を、水素、アルゴン、窒素等のキャリアガスに混合して、前述した触媒に送気する。
なお、カーボンナノチューブの長さは、上記製造方法において、例えば、合成時間を調節することで制御できる。例えば、上記製造方法において、合成時間を短くすると、短いカーボンナノチューブを得ることができ、合成時間を長くすると、長いカーボンナノチューブを得ることができる。また、カーボンナノチューブの太さは、上記製造方法において、使用する触媒の種類、大きさ等を調節することで制御できる。
導電層の平均厚みは、導電性と電波透過性の観点から、1nm〜5,000nmであることが好ましく、1nm〜500nmであることがより好ましく、1nm〜100nmであることがさらに好ましい。なお、導電層の平均厚みは、瞬間分光光度計(例えば、フィルメトリクス(株)製:F−20)を用いて5点の厚みを測定し、その算術平均値として算出される。
またCNTを含む導電層の表面抵抗率は、電波透過性の観点から、1000Ω/□〜10000Ω/□であることが好ましく、1200Ω/□〜9000Ω/□であることがより好ましく、1500Ω/□〜8000Ω/□であることが更に好ましい。
導電性樹脂基材におけるCNTの付与量は、導電層の表面抵抗率が上記範囲内となるように適宜調節することが好ましい。具体的には、1mg/m〜100mg/mとすることが好ましく、1mg/m〜50mg/mとすることがより好ましく、1mg/m〜20mg/mとすることがさらに好ましい。
導電層の面内の表面抵抗率のばらつきは、90Ω/□以下であることが好ましく、70Ω/□以下であることがより好ましく、50Ω/□以下であることがさらに好ましい。なお、導電層の面内の表面抵抗率のばらつきは、導電層上の150mm×150mmの範囲を等間隔に25mmごとに49点の表面抵抗率を測定し、その標準偏差σとして算出する。
導電層は、光透過率が80%以上である透明導電層とすることが好ましく、85%以上の光透過率であることがより好ましい。
導電層の作製方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用できる。例えば、CNTを含む塗布液を樹脂基材上に塗布して塗布層を形成し、これを乾燥処理することで形成することができる。塗布方法としては、バーコーター法、マイヤーバーコーター法、アプリケーター法、ドクターブレード法、ロールコーター法、ダイコーター法、コンマコーター法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を挙げることができる。塗布方法は、1種単独で、または組み合わせて用いることができる。
塗布液に含まれる液状媒体としては、CNTを分散し、導電層形成後に乾燥処理等により除去できるものであればよい。具体的には、水;イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエタノール、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド等の有機溶剤;などを挙げることができ、これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また液状媒体は、必要に応じて界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及び両性イオン界面活性剤のいずれであってもよい。中でもアニオン性界面活性剤及び両性イオン界面活性剤の少なくとも一方を用いることが好ましく、アニオン性界面活性剤及び両性イオン界面活性剤を組み合わせて用いることがより好ましい。アニオン性界面活性剤としては、コール酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム等を挙げることができる。また両性イオン性界面活性剤としては、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)、3−(テトラデシルジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(Z3−14)等を挙げることができる。
(導電性樹脂基材におけるその他の層)
導電性樹脂基材は、前記樹脂基材及び導電層に加えて、さらにその他の層を有してもよい。その他の層としては、絶縁層、プライマー層などを挙げることができる。
前記絶縁層は、導電層よりも調光層側に設けることができる。絶縁層を更に有することで、調光フィルムにおいて導電性樹脂基材の間隔が狭い場合においても、異物質の混入等により発生し得る短絡現象を防止することができる。絶縁層を構成する材料は絶縁層を形成可能であれば特に制限されず、通常用いられる材料から適宜選択して用いることができる。前記絶縁層の厚さは、例えば、数nm〜1μmとすることができる。
前記プライマー層は、導電性樹脂基材の調光層に接する面に設けることができる。ププライマー層を有することで調光層と導電性樹脂基材の密着性が向上し、より優れた調光性能を発揮することができる。前記プライマー層は2枚の導電性樹脂基材の両方が有していてもよく、一方の導電性樹脂基材のみが有していてもよい。
前記プライマー層は、ペンタエリスリトール骨格を含有するウレタン(メタ)アクリレートを含有する材料、分子内に水酸基を有する(メタ)アクリレートを含有する材料、金属酸化物微粒子を有機バインダー樹脂に分散させた材料、分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステル、アミノ基を有するシランカップリング剤等からなる薄膜で形成されるのが好ましい。プライマー層の平均厚みは特に制限されない。例えば調光層と導電性樹脂基材の密着性の観点から、1nm〜500nmであることが好ましい。なおプライマー層の平均厚みは瞬間分光光度計(例えば、フィルメトリクス(株)製:F−20)を用いて5点の厚みを測定し、その算術平均値として算出される。
前記導電性樹脂基材にプライマー層を形成する方法(以下、「プライマー処理」ともいう)は特に制限されず、通常用いられる方法から適宜選択することができる。例えば、樹脂基材上に設けた導電層の上(更に前記絶縁層を有する場合には、その絶縁層の上)にプライマー層を形成する材料を付与し、必要に応じて乾燥処理、硬化処理を行うことでプライマー層を形成することができる。プライマー層を形成する材料を付与する方法としては、バーコーター法、マイヤーバーコーター法、アプリケーター法、ドクターブレード法、ロールコーター法、ダイコーター法、コンマコーター法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等の塗布法を挙げることができる。これらの方法を1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。尚、プライマー層となる塗膜は必要に応じて導電性樹脂基材の片面のみ(好ましくは、調光層に接する側)に形成してもよいし、含浸法やディップコート法によって両面に形成してもよい。
前記プライマー層を形成する材料は、必要に応じて溶剤を含んでいてもよい。プライマー層を形成する材料が溶剤を含む場合、プライマー層を形成する材料を導電性樹脂基材に付与した後に乾燥処理することが好ましい。プライマー層形成に用いる溶剤としては、プライマー層を形成する材料を溶解あるいは分散し、プライマー層形成後に乾燥等により除去できるものであればよい。例えば、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール溶剤;シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン溶剤;アニソール、トルエン等の芳香族溶剤;ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤;テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチルジグリコール、ジメチルジグリコール等のエーテル溶剤;エチルアセテート、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル等のエステル溶剤;を用いることができる。これら溶剤は1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(導電性樹脂基材(調光フィルム用導電フィルム))
本発明に係る導電性樹脂基材(調光フィルム用導電フィルム)の層構成としては、樹脂基材と、該樹脂基材の調光層側に導電層を備えれば特に制限されない。本発明に係る導電性樹脂基材の層構成の例を図1〜図4に示す。
図1に記載の導電性樹脂基材では、調光層(図示せず)側から順に、導電層5a及び樹脂基材5bを備える。図2に記載の導電性樹脂基材では、調光層(図示せず)側から順に、プライマー層5c、導電層5a及び樹脂基材5bを備える。図3に記載の導電性樹脂基材では、調光層(図示せず)側から順に、絶縁層5d、導電層5a及び樹脂基材5bを備える。図4に記載の導電性樹脂基材では、調光層(図示せず)側から順に、プライマー層5c、絶縁層5d、導電層5a及び樹脂基材5bを備える。
本発明の調光フィルムにおける2枚の導電性樹脂基材は、図1〜図4などの層構成の導電性樹脂基材を適宜組み合わせて用いることができる。
本発明に係る導電性樹脂基材は、図1〜図4などに示される積層体全体としての光透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
〔調光層〕
調光層は、樹脂マトリックス及び前記樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液を含み、一般に調光材料を用いて形成することが可能である。前記調光材料は、樹脂マトリックスとしての、エネルギー線を照射することにより硬化する高分子媒体と、光調整粒子が流動可能な状態で分散媒中に分散した光調整懸濁液とを含有する。光調整懸濁液中の分散媒は、高分子媒体及びその硬化物である樹脂マトリックスと相分離しうるものであることが好ましい。すなわち高分子媒体と分散媒とが、互いに非相溶性又は部分相溶性であるものを組み合わせて用いることが好ましい。前記調光材料を用いて、長さと太さを制御したCNTを含有してなる導電層を有する導電性樹脂基材の2枚の間に、導電層が調光層に対向するように、高分子媒体から形成された樹脂マトリックス中に光調整懸濁液が分散した調光層を挟持させることにより、本発明の調光フィルムが得られる。
すなわち、本発明の調光フィルムの調光層では、液状の光調整懸濁液が、高分子媒体が硬化した固体状の樹脂マトリックス内に微細な液滴の形態で分散されている。このとき光調整懸濁液に含まれる光調整粒子は、棒状又は針状であることが好ましい。このような調光フィルムに電界を印加すると、樹脂マトリックス中に分散されている光調整懸濁液の液滴中に浮遊分散されている、電気的双極子モーメントをもつ光調整粒子が、電界に対し平行に配列されることにより、液滴が入射光に対して透明な状態に転換され、視野角度による散乱、又は透明性低下が殆どない状態で入射光を透過させる。
(高分子媒体)
本発明において用いられる高分子媒体としては、(A)(メタ)アクリロイル基を有する樹脂及び(B)光重合開始剤を含み、紫外線、可視光線、電子線等のエネルギー線を照射することにより硬化するものが挙げられる。(A)(メタ)アクリロイル基を有する樹脂としては、ポリシロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等が合成容易性、調光性能、耐久性等の点から好ましい。これらの樹脂は、置換基として、(メタ)アクリロイル基に加えて、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;などを有することが、調光性能、耐久性等の点から好ましい。なお、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を意味する。
前記ポリシロキサン系樹脂の具体例としては、例えば、特公昭53−36515号公報、特公昭57−52371号公報、特公昭58−53656号公報、特公昭61−17863号公報に記載の樹脂を挙げることができる。
前記(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサン系樹脂(以下、単に「ポリシロキサン系樹脂」ともいう)は、例えば、両末端シラノールポリジメチルシロキサン、両末端シラノールポリジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、両末端シラノールポリジメチルジフェニルシロキサン等の両末端シラノールシロキサンポリマーと、トリメチルメトキシシラン等のトリアルキルアルコキシシランと、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シラン化合物等とを、2−エチルヘキサン錫等の有機錫系触媒の存在下で、脱水縮合反応及び脱アルコール反応させて合成される。またポリシロキサン系樹脂の形態としては、無溶剤型が好ましく用いられる。すなわち、ポリシロキサン系樹脂の合成に溶剤を用いた場合には、合成反応後に溶剤を除去することが好ましい。
前記ポリシロキサン系樹脂中の(メタ)アクリロイル基を有する構造単位の含有率は、ポリシロキサン系樹脂全体の1.3質量%〜5.0質量%であることが好ましく、1.5質量%〜4.5質量%であることがより好ましい。
前記ポリシロキサン系樹脂中の(メタ)アクリロイル基を有する構造単位の含有率を、ポリシロキサン系樹脂全体の1.3質量%〜5.0質量%とするためには、ポリシロキサン系樹脂の製造方法において、(メタ)アクリロイル基含有シラノール化合物をポリシロキサン系樹脂の縮合原料の総量(シラノール基含有シロキサン系モノマー、及びオリゴマーの少なくとも一方、(メタ)アクリロイル基含有シラノール化合物及び必要により添加するエンドキャップ剤の合計総量)の2.3質量%〜6.9質量%とすることにより達成可能である。
前記ポリシロキサン系樹脂の重量平均分子量は、35,000〜60,000であることが好ましく、37,000〜58,000であることがより好ましく、40,000〜55,000であることがさらに好ましい。前記ポリシロキサン樹脂の重量平均分子量を上記範囲とするには、例えば、重合工程においてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で重量平均分子量の測定を行いながら35,000〜60,000になった時点で重合反応を停止すればよい。なお、重量平均分子量はGPCにより測定した分子量分布に対して標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した値として与えられる。
前記(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系樹脂(以下、単に「アクリル系樹脂」ともいう)は、例えば以下のようにして得ることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレン等の主鎖形成用モノマーと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸イソシアネートエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリロイル基導入用官能基含有モノマー等とを共重合して、プレポリマーを一旦合成する。次いで、このプレポリマーの(メタ)アクリロイル基導入用官能基と反応させるべく(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸イソシアネートエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸等のモノマーを前記プレポリマーに付加反応させることにより得ることができる。
また前記(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、公知の方法で容易に製造できるものが挙げられる。例えば、ポリエステル主鎖を形成可能なモノマーと、これらと共重合可能で、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーとを共重合することで得ることができる。またポリエステル主鎖を有するプレポリマーに(メタ)アクリロイル基導入用官能基を有する化合物を反応させて得てもよい。
尚、(A)(メタ)アクリロイル基を有する樹脂に含まれる(メタ)アクリロイル基濃度は、NMRの水素の積分強度比から求められる。また、仕込み原料の樹脂への転化率がわかる場合は、計算によっても求められる。
高分子媒体に用いる(B)光重合開始剤としては、光照射により分解してラジカルを発生して重合性化合物の重合を開始し得るものであればよい。光重合開始剤は通常用いられる化合物から適宜選択することができる。光重合開始剤としては例えば、ケトン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、オキシムエステルを挙げることができる。具体的には、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、(1−ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルケトン等を挙げることができる。
(B)光重合開始剤の含有量は、上記の(A)樹脂100質量部に対して0.1質量部〜20質量部であることが好ましく、0.2質量部〜10質量部であることがより好ましい。
前記高分子媒体は、上記の(A)(メタ)アクリロイル基を有する樹脂の他に、その他の樹脂として、有機溶剤可溶型樹脂又は熱可塑性樹脂を更に含んでいてもよい。その他の樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等を挙げることができる。その他の樹脂の重量平均分子量は特に制限されない。例えば、1,000〜100,000とすることができる。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した分子量分布に対して標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した値として与えられる。
前記高分子媒体中には、ジブチル錫ジラウレート等の着色防止剤などの添加物を必要に応じて添加してもよい。さらに高分子媒体は、溶剤を含んでもよい。溶剤としては、テトラヒドロフラン等のエーテル溶剤;トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素溶剤;エタノール、メタノール等のアルコール溶剤;エチルアセテート、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル等のエステル溶剤;などを用いることができる。
(光調整懸濁液)
本発明に係る光調整懸濁液は、分散媒中に光調整粒子が流動可能に分散されてなる。
−分散媒−
光調整懸濁液に含まれる分散媒としては、上記高分子媒体及びその硬化物である樹脂マトリックスと相分離するものを用いることが好ましい。より好ましくは、光調整粒子を流動可能な状態で分散させる役割を果たし、また、光調整粒子に選択的に付着被覆して、分散媒が高分子媒体との相分離する際に光調整粒子が相分離された液滴相に移動するように作用する分散媒である。また、導電性がなく、高分子媒体とは親和性がなく、調光フィルムとした際に高分子媒体から形成される樹脂マトリックスとの屈折率が近似した分散媒であることがさらに好ましい。このような性質を有する分散媒として、液状共重合体を使用することが好ましい。
分散媒としては、例えば、フルオロ基及び水酸基の少なくとも一方を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーが好ましく、フルオロ基及び水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーがより好ましく、フルオロ基を有する構成単位及び水酸基を有する構成単位を含む(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーが更に好ましい。このような共重合体を使用すると、フルオロ基及び水酸基の少なくとも一方を有する構成単位部分が、光調整粒子に親和性があり、残りの構成単位は高分子媒体中で光調整懸濁液が液滴として安定に維持するために作用しやすいことから、光調整懸濁液内に光調整粒子が分散しやすく、分散媒及び高分子媒体の相分離の際に光調整粒子が相分離される液滴内に誘導されやすい。
このようなフルオロ基及び水酸基の少なくとも一方を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーとしては、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸3,5,5−トリメチルヘキシル/アクリル酸2−ヒドロキシプロピル/フマール酸共重合体、アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸ブチル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸ヘキシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸オクチル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸デシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸ウンデシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸ドデシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸トリデシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸テトラデシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸ヘキサデシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、及びメタクリル酸オクタデシル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体等が挙げられる。
これらの(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が、1,000〜20,000であることが好ましく、2,000〜10,000であることがより好ましい。
これらの(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーの原料となるフルオロ基含有モノマーの使用量は、原料であるモノマー総質量の6質量%〜12質量%であることが好ましく、より効果的には7質量%〜8質量%である。フルオロ基含有モノマーの使用量が12質量%以下の場合には、屈折率の上昇が抑えられ、光透過率に優れる傾向がある。
また、これらの(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーの原料となる、水酸基含有モノマーの使用量は、原料であるモノマー総質量の0.5質量%〜22.0質量%であることが好ましく、より効果的には1質量%〜8質量%である。水酸基含有モノマーの使用量が22.0質量%以下の場合には、屈折率の上昇が抑えられ、光透過率に優れる傾向がある。
分散媒の屈折率は、前記高分子媒体から形成される樹脂マトリックスの屈折率と近似していることが好ましく、分散媒の屈折率は具体的には、1.467〜1.477であることが好ましく、1.469〜1.475であることがより好ましく、1.470〜1.474であることが更に好ましい。また前記樹脂マトリックスの屈折率と分散媒の屈折率との差は、好ましくは0.005以下、より好ましくは0.003以下である。樹脂マトリックスの屈折率と分散媒の屈折率との差が0.005以下の場合には、調光フィルムの濁度が低くなり、透明性に優れた調光フィルムとなる。
(光調整粒子)
光調整粒子としては、例えば、光調整粒子の前駆体であるピラジン−2,3−ジカルボン酸・2水和物、ピラジン−2,5−ジカルボン酸・2水和物、ピリジン−2,5−ジカルボン酸・1水和物からなる群の中から選ばれた1つの物質と、ヨウ素と、ヨウ化物とを反応させて作ったポリヨウ化物の針状小結晶が好ましく用いられる。光調整粒子は、高分子媒体、又は高分子媒体中の樹脂成分(即ち上記の(A)(メタ)アクリロイル基を有する樹脂等)と親和性が低く、また光調整粒子の分散性を高めることができる高分子分散剤の存在下で調製される。使用しうる高分子分散剤としては、例えば、ニトロセルロースが挙げられる。ヨウ化物としては、ヨウ化カルシウム等が挙げられる。
このようにして得られるポリヨウ化物としては、例えば、下記一般式
CaI(C)・xHO (x:1〜2)
CaI(C・rHO (p:3〜7、q:1〜2、r:1〜3)
で表されるものが挙げられる。これらのポリヨウ化物は針状結晶であることが好ましい。
また、調光フィルム用光調整懸濁液に用いる光調整粒子として米国特許第2,041,138号明細書(E.H.Land)、米国特許第2,306,108号明細書(Landら)、米国特許第2,375,963号明細書(Thomas)、米国特許第4,270,841号明細書(R.L.Saxe)及び英国特許第433,455号明細書に開示されている光調整粒子も、使用することができる。これらの特許明細書によって公知とされたポリヨウ化物の結晶は、ピラジンカルボン酸、又はピリジンカルボン酸の1つを選択して、ヨウ素、塩素又は臭素と反応させることにより、ポリヨウ化物、ポリ塩化物又はポリ臭化物等のポリハロゲン化物とすることによって作製されている。これらのポリハロゲン化物は、ハロゲン原子が無機質又は有機質と反応した錯化合物で、これらの詳しい製法は、例えば、サックスの米国特許第4,422,963号明細書に開示されている。
高分子分散剤としては、ニトロセルロースのような高分子物質を使用することが好ましい。これにより光調整粒子を合成する過程において、均一な大きさの光調整粒子を形成させることができる。また特定の分散媒内での光調整粒子の分散性を向上させることができる。但し、ニトロセルロースを用いると、ニトロセルロースで被覆された結晶が得られ、このような結晶を光調整粒子として用いる場合、光調整粒子が相分離の時に分離される液滴内に浮遊せず、樹脂マトリックス内に残存することがある。しかし、高分子媒体である(A)(メタ)アクリロイル基を有する樹脂として、(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサン系樹脂を用いると、光調整粒子が樹脂マトリックス内に残存することを抑制できる。すなわち、(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサン系樹脂を用いる場合には、調光フィルム製造の際に光調整粒子が相分離により形成された微細な液滴内へ容易により分散、浮遊し、その結果、より優れた可変能力を得ることができる。
光調整粒子の粒子サイズは、調光フィルムとしたときの印加電圧に対する応答時間と、光調整懸濁液中の凝集及び沈殿との関係から、以下のサイズが好ましい。
光調整粒子の平均長径は、225nm〜625nmが好ましく、250nm〜550nmがより好ましく、300nm〜500nmがさらに好ましい。
光調整粒子の短径に対する長径の比率、すなわちアスペクト比の平均値は3〜8が好ましく、3.3〜7がより好ましく、3.6〜6が更に好ましい。
前記光調整粒子の長径と短径は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡等の電子顕微鏡で光調整粒子を撮影し、撮影した画像より任意に50個の光調整粒子を抽出し、各光調整粒子の長径及び短径のそれぞれの算術平均値として算出することができる。ここで、長径とは、上記撮影した画像により二次元視野内に投影された光調整粒子について、最も長い部分の長さとする。また、短径とは、上記長径に直交する最も長い部分の長さとする。
また、前記光調整粒子の粒子径を評価する方法として、光子相関法や動的光散乱法の原理を用いた粒度分布計を用いることができる。この方法では直接粒子の大きさや形状を計測するのではなく、粒子を球状と仮定して相当径を評価することになり、SEM観察とは異なる値となる。特に、シスメックス株式会社製ゼータサイザーナノシリーズを用い、Z averageとして出力される相当径を粒子径とした場合に、光調整粒子の平均粒子径(以下、「粒度分布測定により求められる平均粒子径」ともいう)は135nm〜220nmが好ましく、140nm〜210nmがより好ましく、145nm〜205nmが更に好ましい。
このZ average値は、例えば光相関法や動的光散乱法に基づいた、ゼータサイザーナノシリーズとは異なる粒度分布計の測定値や、上述の透過型電子顕微鏡等の電子顕微鏡で測定される光調整粒子の長径、短径とよい相関を示すことが知られおり、粒子径を評価する指標として適当である。
前記光調整粒子は、光調整懸濁液の全質量中に、1質量%〜15質量%含有することが好ましく、2質量%〜10質量%含有することがより好ましい。1質量%以上の場合には、調光フィルムとした際の遮光効果が大きくなり好適である。また、15質量%以下の場合には、調光フィルム製造の際にエネルギー線による高分子媒体の硬化阻害が抑えられる。
また、前記分散媒は、光調整懸濁液の全質量中に、30質量%〜99質量%含有することが好ましく、50質量%〜96質量%含有することがより好ましい。30質量%以上の場合には高分子媒体の硬化の阻害が抑制される。99質量%以下の場合には、遮光効果が大きくなる。
また調光材料は、光調整懸濁液を、高分子媒体100質量部に対して、1質量部〜100質量部含有することが好ましく、4質量部〜70質量部含有することがより好ましく、6質量部〜60質量部含有することがさらに好ましく、8質量部〜50質量部含有することが特に好ましい。光調整懸濁液の含有量が1質量部以上の場合には、遮光効果に優れ、100質量部以下の場合には高分子媒体の硬化の阻害が抑えられる。
〔調光フィルム〕
本発明の調光フィルムの構成について図面を参照しながら説明する。図5には本発明の調光フィルムの一実施形態についての概略断面図を示す。図5に示す調光フィルムでは、2枚の導電性樹脂基材4の間に挟持された調光層1を備える。前記導電性樹脂基材4は、樹脂基材5bの調光層1側に導電層5aを有する。前記調光層1は樹脂マトリックス2と前記樹脂マトリックス2中に分散した調光懸濁液の液滴3を有している。また図5に示す調光フィルムでは、2枚の導電性樹脂基材4が、それぞれの導電層5aが対向するように配置されて調光層1を挟持している。さらに導電層5aはスイッチ8を介して電源7に接続され、調光フィルムが動作可能に構成されている。なお、図5で示す調光フィルムでは、図1の層構成を有する導電性樹脂基材4としているが、図2、3又は4の層構成を有する導電性樹脂基材に換えてもよい。
本発明の調光フィルムの電波シールド性は、500MHz以上の周波数領域において5dB以下であることが好ましく、3.5dB以下であることがさらに好ましい。
電波シールド性は、例えば、100kHz〜1GHzの周波数領域の場合は、KEC法によって測定することでき、1GHz〜18GHzの周波数領域の場合は、カバー透過減衰量測定システムによって測定することができる。
<調光フィルムの作製方法>
調光フィルムを得るためには、まず、液状の光調整懸濁液を、高分子媒体と混合し、光調整懸濁液が高分子媒体中に液滴状態で分散した混合液である調光材料を調製する。
具体的には、以下のようにして調光材料を調製する。光調整粒子を溶媒に分散した液と光調整懸濁液の分散媒とを混合し、ロータリーエバポレーター等で溶媒を留去し、光調整懸濁液を作製する。次いで、光調整懸濁液及び高分子媒体を混合し、光調整懸濁液が高分子媒体中に液滴状態で分散した混合液(調光材料)とする。調光材料は、前記高分子媒体100質量部に対して、前記光調整懸濁液を通常1質量部〜100質量部、好ましくは4質量部〜70質量部、より好ましくは6質量部〜60質量部混合して調製する。
この調光材料を、前記導電性樹脂基材の導電層上に一定な厚さで塗布して、塗布層を形成する。調光材料の塗布には、例えば、バーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ロールコーター、ダイコーター、コンマコーター等の公知の塗工手段を用いることができる。調光材料は、導電性樹脂基材に設けたプライマー層面に塗布してもよく、又は、一方にプライマー層を有さない導電性樹脂基材を用いる場合には、導電層に直接塗布することもできる。なお、塗布する際は、必要に応じて、調光材料を適当な溶剤で希釈してもよい。溶剤を用いる場合には、導電性樹脂基材に調光材料を塗布した後で乾燥処理することが好ましい。
調光材料の塗布に用いる溶剤としては、テトラヒドロフラン等のエーテル溶剤;トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素溶剤;エタノール、メタノール等のアルコール溶剤;エチルアセテート、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル等のエステル溶剤;などを用いることができる。液状の光調整懸濁液が、固体の樹脂マトリックス中に微細な液滴形態で分散されている調光層を形成するためには、調光材料をホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等で混合して高分子媒体中に光調整懸濁液を微細に分散させる方法、高分子媒体中の樹脂成分の重合による相分離法、溶媒揮発による相分離法、温度による相分離法等を利用することができる。
調光材料を塗布した後、又は必要に応じて調光材料に含有される溶剤を乾燥除去した後、高圧水銀灯等を用いて紫外線を照射して高分子媒体を硬化させる。その結果、高分子媒体が硬化して形成される樹脂マトリックス中に、光調整懸濁液が液滴状に分散されている調光層が形成される。高分子媒体と光調整懸濁液との混合比率を様々に変えることにより、調光層の光透過率を調節することができる。
樹脂マトリックス中に分散されている光調整懸濁液の液滴の大きさ(平均液滴径)は、通常0.5μm〜100μm、好ましくは0.5μm〜20μm、より好ましくは1μm〜5μmである。液滴の大きさは、光調整懸濁液を構成している各成分の濃度、光調整懸濁液及び高分子媒体の粘度、光調整懸濁液中の分散媒の高分子媒体に対する相溶性等により調整することができる。
平均液滴径は、例えば、SEMを用いて、調光フィルムの一方の面方向から写真等の画像を撮影し、任意に選択した50個の液滴直径を測定し、その平均値として算出することができる。また、調光フィルムの光学顕微鏡での視野画像をデジタルデータとしてコンピュータに取り込み、画像処理インテグレーションソフトウェアを使用し算出することも可能である。
このようにして導電性樹脂基材上に形成された調光層の上に、もう一方の導電性樹脂基材を密着させることにより、調光フィルムが得られる。
また前記調光材料を、導電性樹脂基材上に一定な厚さで塗布し、必要に応じて調光材料中の溶剤を乾燥除去した後、もう一方の導電性樹脂基材でラミネートした後に、紫外線を照射して高分子媒体を硬化させて調光層を形成し、調光フィルムを得ることもできる。
更には、2枚の導電性樹脂基材の両方の導電層又はプライマー層上にそれぞれ調光層を形成し、その調光層同士が密着するようにして積層してもよい。
調光層の厚みは、5μm〜1,000μmが好ましく、20μm〜200μmがより好ましい。
<調光フィルムによる調光>
本発明の調光フィルムは、電界の形成により任意に光透過率を調節できる。この調光フィルムは、電界が形成されていない場合には、光の散乱が抑制された鮮明な着色状態を維持し、電界が形成されると透明な状態に転換される。この能力は、20万回以上の可逆的反復特性を示す。
調光フィルムを作動させるための使用電源は交流で、10ボルト〜100ボルト(実効値)、30Hz〜500kHzの周波数範囲とすることができる。本発明の調光フィルムは、電界に対する応答時間を、消色時には1秒〜50秒以内、着色時には1秒〜100秒以内とすることができる。
また、紫外線耐久性は、750W紫外線等を利用した紫外線照射試験の結果、250時間が経過した後にも安定な可変特性を示し、−50℃〜90℃で長時間放置した場合にも、初期の可変特性を維持することが可能である。
従来技術である液晶を使用した調光フィルムの製造において、水を用いたエマルションによる方法を使用すると、液晶が水分と反応して光調整特性を失うことが多く、同一の特性のフィルムを製造しにくいという課題がある。しかし、本発明においては、液晶ではなく、光調整粒子が光調整懸濁液内に分散されている液状の光調整懸濁液を使用するため、液晶を利用した調光フィルムとは異なり、電界が印加されていない場合にも光の散乱が抑制され、鮮明度が優れて視野角の制限のない着色状態を示す。そして、光調整粒子の含量、液滴形態や層厚を調節したり、又は電界強度を調節したりすることにより、光可変度を任意に調節できる。
また、本発明の調光フィルムは、液晶を用いないことから、紫外線露光による色調変化及び可変能力の低下、大型製品特有の導電性樹脂基材の周辺部と中央部間に生ずる電圧降下に伴う応答時間差も解消される。
次に本発明の調光フィルムの一態様の動作状態について図6及び図7を参照しながら説明する。なお図6及び図7では、一例として導電層5a及び樹脂基材5bを有する導電性樹脂基材を備える調光フィルムを図示している。図6(a)は、調光フィルムの電界が印加されていない状態を説明する調光フィルムの概略断面図であり、図6(b)は、このときの光調整懸濁液内の拡大図である。図7(a)は、調光フィルムの電界が印加されている状態を説明する概略断面図であり、図7(b)は、このときの光調整懸濁液内の拡大図である。
電界が印加されていないときには、図6(b)に示すように光調整懸濁液内の光調整粒子はブラウン運動によりランダムな方向を向いている。そのため図6(a)に示すように、光調整粒子の光吸収、2色性効果による鮮明な着色状態を示す。電界が印加された状態では、図7(b)に示すように、液滴又は液滴連結体の中の光調整粒子が電界に平行に配列される。これにより図7(a)に示すように調光フィルムを可視光である入射光11が透明可能な状態に転換される。
図8には、調光フィルムの端部の状態の一例を示す。なお図8では、一例として導電層5a及び樹脂基材5bを有する導電性樹脂基材を備える調光フィルムを図示している。図8に示すように調光フィルムの端部においては、導電性樹脂基材4に挟持された調光層1の一部が除去され、導電層5aの表面の一部がタップ領域12として露出している。タップ領域12には導線13が電気的に接続されている。導線13にスイッチと電源(図示せず)を接続することで調光フィルムを動作させることができる。
また、本発明の調光フィルムは調光層が硬化したフィルム状態であるので、液状の光調整懸濁液をそのまま使用する従来技術による調光硝子の問題点が解消される。即ち、2枚の導電性樹脂基材の間への液状の懸濁液の注入の困難性、製品の上下間の水圧差による下部の膨張現象、風圧等の外部環境による基材間隔の変化による局部的な色相変化、導電性樹脂基材の間の密封材の破壊による調光材料の漏洩が解決される。
また、液晶を利用した従来技術による調光窓の場合には、液晶が紫外線により容易に劣化し、またネマチック液晶の熱的特性によりその使用温度の範囲も狭い。更に、光学特性面においても、電界が印加されていない場合には光散乱による乳白色の半透明な状態を示し、電界が印加される場合にも、完全には鮮明化せず、乳濁状態が残存する課題がある。従って、このような調光窓では、既存の液晶表示素子で動作原理として利用されている光の遮断及び透過による調光機能が不十分である。しかし、本発明の調光フィルムでは、このような課題が解決できる。
本発明の調光フィルムは、例えば、室内外の仕切り(パーティッション)、建築物用の窓硝子/天窓、電子産業及び映像機器に使用される各種平面表示素子、各種計器板と既存の液晶表示素子の代替品、光シャッター、各種室内外広告及び案内標示板、航空機/鉄道車両/船舶用の窓硝子、自動車用の窓硝子/バックミラー/サンルーフ、眼鏡、サングラス、サンバイザーの用途に好適に使用することができる。
本発明の調光フィルムの適用法としては、調光フィルムをそのままの状態で直接使用することも可能である。また用途によっては、例えば、本発明の調光フィルムを2枚の基材に挟持させて使用したり、基材の片面に貼り付けて使用したりしてもよい。前記基材としては、例えば、ガラスや、上記樹脂基材と同様の高分子フィルムを使用することができる。
なお、本発明の調光フィルムは、電波透過性に優れることから、調光フィルムで囲まれた空間内部でも、テレビや携帯電話、電波を利用したリモコン装置、あるいはETC等を充分機能させることができる。特に、500MHz近辺の周波数領域は、例えば、UHF(地上波デジタル/地上波アナログUHF)バンドやアマチュア無線に利用されていることから、本発明の調光フィルムは、例えば、UHFバンドを利用する環境下での使用に適している。
以下、本発明を実施例及びその比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
<光調整粒子の製造例>
ヨウ素(JIS試薬特級、和光純薬工業(株)製)と酢酸イソアミル(試薬特級、和光純薬工業(株)製)から8.5質量%ヨウ素の酢酸イソアミル溶液(以下「ヨウ素溶液」と称する)を調製した。またニトロセルロース1/4LIG(商品名:ベルジュラックNC社製)と酢酸イソアミルから20.0質量%硝酸セルロースの酢酸イソアミル溶液(以下「硝酸セルロース溶液」と称する)を調製した。更に、ヨウ化カルシウム水和物(化学用、和光純薬工業(株)製)を加熱乾燥して無水化した後、酢酸イソアミルに溶解させ、20.9質量%ヨウ化カルシウム溶液を調製した。
300mlの四口フラスコに撹拌機と冷却管を備え、前記ヨウ素溶液の65.6g、前記硝酸セルロース溶液の82.93gを加え、水浴温度を35℃〜40℃として四口フラスコを加熱した。四口フラスコ内容物の温度が35℃〜40℃となった後、脱水メタノール(試薬特級、和光純薬工業(株)製)を7.41g、精製水(和光純薬工業(株)製)を0.525g加えて撹拌した。そこに、前記ヨウ化カルシウム溶液を15.6g、次いでピラジン−2,5−ジカルボン酸(日化テクノサービス(株)製)を3.70g加えた。水浴温度を42℃〜44℃として4時間撹拌した後、放冷し、光調整粒子を含む合成液を得た。
得られた光調整粒子は、粒度分布測定(サブミクロン粒子アナライザ(製品名:N4MD、ベックマン・コールタ社製)で測定)で求められる平均粒子径が185nm、SEM観察による平均長径は310nm、平均アスペクト比は4.4であった。なお、SEMによる観察では、50個の光調整粒子から、長径及びアスペクト比の平均値を求めた。
また、得られた合成液を9260Gで5時間遠心分離後、傾斜して上澄み液を除き、底部に残存した沈殿にこの沈殿の質量の5倍の酢酸イソアミルを加え、超音波で沈殿を分散し、液全体の質量を測定した。この分散した液を1g金属プレートに秤量し、120℃1時間で乾燥後、再び質量を測定し、不揮発分比率を求めた。この不揮発分比と液全体の質量から全不揮発分量、すなわち沈殿収量4.15gを求めた。
<光調整懸濁液の製造例>
前記の「光調整粒子の製造例」で得た光調整粒子45.5g(固形分)を、光調整懸濁液の分散媒としてのアクリル酸ブチル(和光特級、和光純薬工業(株)製)/メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(工業用、共栄社化学工業(株)製)/アクリル酸2−ヒドロキシエチル(和光1級、和光純薬工業(株)製)の共重合体(モノマーモル比:18/1.5/0.5、重量平均分子量:3,800、屈折率1.4719)50gに加え、撹拌機により30分間混合した。次いで酢酸イソアミルを、ロータリーエバポレーターを用いて133Paの減圧下で80℃、3時間減圧除去して、光調整懸濁液を製造した。得られた光調整懸濁液は、光調整粒子の沈降及び凝集現象のない安定な液状であった。
<エネルギー線硬化型ポリシロキサン系樹脂の製造例>
ディーンスタークトラップ、冷却管、撹拌機、加熱装置を備えた四つ口フラスコに、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン(商品名:KBM−5102、信越化学工業(株)製)15.0g、蒸留水1.9g、酢酸(和光純薬工業(株)製)0.04g、質量比でエタノール/メタノール=9/1の混合溶媒8.9gを仕込み、65℃に昇温して5時間反応させた。反応溶液を40℃以下まで冷却した後、100Paに減圧して70℃まで昇温して2時間、脱溶工程を行った。その後、室温まで冷却してアルコキシシランの一部をシラノールへ変換した化合物14.0gを得た。また、シラノールへの変換率は54.5%であった。
なお、アルコキシシランのシラノールへの変換率は、赤外分光測定における水酸基由来のピーク(3435cm−1付近)の強度(A)とアルコキシ基由来のピーク(2835cm−1付近)の強度(B)から変換率=A/(A+B)×100により求められる。ジメトキシシランをシラノールに変換後の赤外分光測定より、強度(A)がAbs=0.250、強度(B)がAbs=0.211であったことから、変換率は54.5%と算出した。
ディーンスタークトラップ、冷却管、撹拌機、加熱装置を備えた四つ口フラスコに、両末端シラノールポリジメチルシロキサン(商品名:X−21−3114、信越化学工業(株)製)48.0g、両末端シラノールポリジメチルジフェニルシロキサン(商品名:X−21−3193B、信越化学工業(株)製)170.0g、前記で得られたKBM−5102のメトキシ基の一部をシラノールに変換したもの9.0g、ビス(2−エチルヘキサン酸)錫(商品名:KCS−405T、城北化学工業(株)製)0.01gを仕込み、ヘプタン中100℃で5時間還流し、反応を行った。温度を50℃まで冷却した後、トリメチルメトキシシラン(商品名:KBM−31、信越化学工業(株)製)109.0gを添加し、再び85℃において2時間還流してエンドキャップ反応させた。
次いで温度を75℃に冷却してリン酸ジエチル(別名:エチルアシッドホスフェート、(商品名:JP−502、城北化学工業(株)製)0.01g(脱水縮合触媒ビス(2−エチルヘキサン酸)錫と同質量)を添加し20分攪拌した後、30℃まで冷却した。次いでメタノールを210g、エタノールを90g添加し20分攪拌した。12時間静置した後、アルコール層を除去した。残渣を100Paに減圧して115℃に昇温し5時間、脱溶処理を行い、重量平均分子量46,700、粘度16,000mPa・s、屈折率1.4744のポリシロキサン樹脂148.8gを得た。
このとき、ポリシロキサンを構成する原料シロキサン及びシラン化合物総量に対するKBM−5102のメトキシ基をシラノールに変換したものの割合は、4.2質量%であった。また、エチレン性不飽和結合濃度から、この樹脂の3−アクリロキシプロピルメチルシロキサン構造単位の含有率は、1.9質量%であった。
<調光材料の製造例>
上記「エネルギー線硬化型ポリシロキサン系樹脂の製造例」で得たエネルギー線硬化型ポリシロキサン系樹脂7.0g、光重合開始剤としてのビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(商品名:イルガキュア819、BASFジャパン(株)製)0.2g、前記「光調整懸濁液の製造例」で得た光調整懸濁液3.0gを添加し、1分間機械的に混合し、調光材料を製造した。
<カーボンナノチューブの製造例>
支持体としてアルミナビーズを用い、その上にAl担体を担持した。Al担体は、アルミナビーズ上にスパッタ成膜した。アルミナビーズは、直径0.5mmであった。Al担体(担体層)の平均厚みは、15nmであった。そして、Al担体の上に、Feを触媒として担持した。この担持は、スパッタ担持により行った。Al担体の上に担持したFeは、平均厚み1.5nmであった。この支持体を反応器に入れ、C(1.1体積%)/H(26体積%)/HO(0.06体積%)/Ar(balance)の常圧の原料ガスを、反応器に供給しながら、流動層状態にてカーボンナノチューブを合成した。
反応器内の反応部分の温度は、820℃であった。常圧の原料ガスの供給は、反応器の容積1mあたり6.7m/s(室温換算で1.8m/s)の供給量で10分間行ない、カーボンナノチューブを合成した。カーボンナノチューブを合成後に、カーボンナノチューブの付着したアルミナビーズを反応器から取り出し、カーボンナノチューブを回収した。流動層でカーボンナノチューブの合成をした結果、合成されたカーボンナノチューブは、平均長さ12.0μm、平均太さ11nmであった。
得られたCNTの平均長さ及び平均太さは、以下のようにして測定した。なお、カーボンナノチューブの直径は、触媒の種類、その大きさを調節することで、カーボンナノチューブの長さは、合成時間を調節することで、表1に記載の平均長さ及び平均太さを有するカーボンナノチューブを製造した。
(CNT平均長さの測定)
CNT平均長さについては、導電層ではCNT同士が複雑に絡み合っているため、導電層を用いて測定することは困難である。そこでCNT平均長さは以下のようにして測定した。CNT分散液の希薄溶液を作製し、アプリケーターを用いてPETフィルム上に塗布、乾燥して、各CNTが個別に識別できる孤立状態にあるサンプルを作製した。得られたサンプルをSEMで観察し、このときに得られた画像から、任意に選択された10個のCNTについて、その長さ方向のピクセル数(画素数)をそれぞれ計測して各CNTの長さとし、その算術平均値としてCNT平均長さを算出した。
(CNT平均太さの測定)
各分散液のCNT平均太さについては、以下の方法で測定した。分散液の希薄溶液を基板上にスピンコートし、各CNTが孤立状態にあるサンプルを作製した。得られたサンプルをTEMで観察し、このときに得られた画像中から任意に選択された10個のCNTについて、直径方向のピクセル数(画素数)をそれぞれ計測して各CNTの直径とし、それらの算術平均値として、CNT平均太さを算出した。
[実施例1]
(導電性樹脂基材の製造)
平均長さ12.0μm、平均太さが11nmのCNT(上記合成品)を超純水に0.01質量%となるように分散剤(両性イオン界面活性剤の3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)とアニオン系界面活性剤のコール酸ナトリウムの混合物(質量比で1:4))を用いて分散させた。これをアプリケーターを用いて、樹脂基材であるPETフィルム(コスモシャインA4300、東洋紡績(株)製、厚み125μm)に塗布した。塗布後、90℃の防爆乾燥機で5分乾燥させた後、多量の超純水に10分間浸漬し、余分な分散剤を水洗した。フィルムを引き上げた後、表面についた水滴をエア・ブローで吹き飛ばして導電層を形成し、導電性樹脂基材を得た。導電層の平均厚みは、25nmであった。
導電層の表面抵抗率は1500Ω/□であった。また、表面抵抗率の面内バラツキは20Ω/□であった。なお、導電層の表面抵抗率および表面抵抗率の面内バラツキは、以下のようにして測定した。
(表面抵抗率の測定方法)
表面抵抗率は低抵抗率計ロレスタ−EP((株)ダイアインスルメンツ製)を用いて四探針プローブで測定した。
(表面抵抗率の面内バラツキの測定)
表面抵抗率の面内バラツキについては、導電層上の150mm×150mmの範囲を等間隔に25mmごとに49点の表面抵抗率を測定し、その標準偏差σを面内バラツキの尺度とした。
(プライマー層形成用塗布液の調製)
AY42−151(ペンタエリスリトール骨格を含有するウレタン(メタ)アクリレートを含有する材料、商品名、東レ・ダウコーニング(株))を1.5質量%、1−メトキシ−2−プロパノール/イソプロピルアルコール=7/3(質量比)の混合溶媒を98.5質量%の割合となるように混合し、プライマー層形成用塗布液を調製した。
(プライマー層付き導電性樹脂基材の製造)
上記で得られた導電性樹脂基材の導電層上に、前記プライマー層形成用塗布液を、マイクログラビア法(メッシュ#150)を用いて、全面塗布した。50℃/30秒、60℃/30秒、70℃/1分の条件で順次乾燥した後、UV照射4000mJ/cm(メタルハライドランプ)で光硬化して、導電層上にプライマー層を形成した。得られたプライマー層の平均厚みは、74nmであった。このプライマー層を有する導電性樹脂基材を2枚作製した。
なお、プライマー層の厚みは、瞬間分光光度計F−20(フィルメトリクス(株)製)を用いて5点の厚みを測定し、その算術平均値として算出測定した。
(調光フィルムの製造)
前記「プライマー層付き導電性樹脂基材の製造」で得られたプライマー層付き導電性樹脂基材のプライマー層上に、前記「調光材料の製造例」で得られた調光材料を全面塗布して塗布層を形成した。次いでその塗布層上に、もう一枚のプライマー層付き導電性樹脂基材をプライマー層が調光材料の塗布層に対向するように積層して密着させた。次いでメタルハライドランプを用いて4000mJ/cmの紫外線を前記積層した導電性樹脂基材のPET側から照射して、塗布層を紫外線硬化させた。これにより、紫外線硬化した樹脂マトリックス内に光調整懸濁液が球形の液滴として分散形成された調光層が形成された。形成された調光層の厚みは90μmであった。2つの導電性樹脂基材に調光層が挟まれた調光フィルムの総厚みは340μmであった。光調整懸濁液の液滴の大きさ(平均液滴径)は、3μmであった。光調整懸濁液の液滴の大きさは以下の方法で測定した。
(光調整懸濁液の液滴の大きさの測定方法)
調光フィルムの一方の面方向からSEM写真を撮影し、任意に選択した50個の液滴直径を測定し、その平均値として算出した。
(試験体の作製)
図8に示すように、導電層5aの一部を露出させてタップ領域12を形成するために、上記で得られた調光フィルムの端部から調光層1及びプライマー層(図示せず)の一部を除去した。露出した導電層5aのタップ領域12に電圧印加用の導線13を接続して調光フィルムの試験体を作製した。得られた試験体について、以下のような評価を行なった。評価結果を表1及び表2に示す。
(調光性能の評価)
分光式色差計SZ−Σ90(日本電色工業(株)製)を使用し、標準A光源、視野角2度で測定したY値(%)を光透過率とした。なお、試験体の電界印加時と未印加時の光透過率をそれぞれ測定した。
前記試験体は、交流電圧を印加しない場合(未印加時)の光透過率(Toff)は1.0%であった。また、50Hzの交流電圧100V(実効値)の電圧を印加したときの調光フィルムの光透過率(Ton)は48%であった。電界印加時と電界未印加時の光透過率の比が48と大きく、良好な調光性能を示した。
(電波透過性)
得られた試験体の電波透過性について、以下のようにして電波シールド性を測定することで評価した。電波シールド性(dB)が小さいほど電波透過性が高いことになる。
・電波シールド性の測定方法:100kHz〜1GHz
関西電子工業振興センターにて、大きさ200mm×200mm、厚さ340μmの試験片について、KEC法を用いて電波シールド性(dB)を測定した。
・電波シールド性の測定方法:1GHz〜18GHz
キーコム(株)にて、レーダ用レドームを用いて、350mm×350mm、厚さ340μmの試験片について、カバー透過減衰量測定システムにより電波シールド性(dB)を測定した。
[実施例2]
平均長さ10.0μm、平均太さ13nmのCNTを用いて導電層を形成したことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。
導電層の表面抵抗率は3000Ω/□であり、表面抵抗率の面内バラツキは20Ω/□であった。
[実施例3]
平均長さ7.0μm、平均太さ13nmのCNTを用いて導電層を形成したことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。
導電層の表面抵抗率は4000Ω/□であり、表面抵抗率の面内バラツキは20Ω/□であった。
[実施例4]
平均長さ3.5μm、平均太さ15nmのCNTを用いて導電層を形成したことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。
導電層の表面抵抗率は5000Ω/□であり、表面抵抗率の面内バラツキは30Ω/□であった。
[実施例5]
平均長さ3.0μm、平均太さ16nmのCNTを用いて導電層を形成したことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。
導電層の表面抵抗率は8000Ω/□であり、表面抵抗率の面内バラツキは40Ω/□であった。
[比較例1]
平均長さ0.8μm、平均太さ28nmのCNTを用いて導電層を形成したことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。
導電層の表面抵抗率は14kΩ/□であり、表面抵抗率の面内バラツキは100Ω/□であった。この導電性樹脂基材を用いて作製した調光フィルムは電圧を印加しても駆動しなかった。
[比較例2]
平均長さ0.2μm、平均太さ42nmのCNTを用いて導電層を形成したことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。
導電層の表面抵抗率は25kΩ/□であり、表面抵抗率の面内バラツキは300Ω/□であった。この導電性樹脂基材を用いて作製した調光フィルムは電圧を印加しても駆動しなかった。
[比較例3]
(ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/PSS)含有導電性樹脂基材の製造)
PETフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績(株)製、厚み125μm)に、導電性高分子として、ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(CLEVIOS S V3、H.C.スタルク(株)製、ポリスチレンスルホン酸(式a上部)に示される構造単位を有する重量平均分子量:40,000と、チオフェンユニット(式a下部):5〜10量体の混合物)、有機バインダー樹脂としてペンタエリスリトールトリアクリレート混合物(商品名:アロニックスM−305、東亞合成(株)製))を、導電性高分子30質量%(固形分換算)、有機バインダー樹脂70質量%となるように1,2−プロパンジオール・エタノール・水混合溶剤(質量比で40:40:20)に分散させ、アプリケーター法を用いてギャップ6μmの条件で塗布し、空気中で100℃/1min乾燥後、UV照射500mJ/cm(メタルハライドランプ)で光硬化して導電層を作製し、導電性樹脂基材を得た。
導電層の表面抵抗率は1200Ω/□であり、表面抵抗率の面内バラツキは100Ω/□であった。
(調光フィルムの製造)
前記導電性樹脂基材の上に、前記「調整材料の製造例」で得た調光材料を全面塗布して塗布層を形成した。次いでその塗布層上に、もう一枚の前記導電性樹脂基材を導電性樹脂基材が調光材料の塗布層に対向するように積層して密着させた以外は実施例1と同様にして調光フィルムを作製し各種の測定を行った。
[比較例4]
導電層を塗布する際のアプリケーターのギャップを3μmにしたことを除いては、比較例3と同様にして調光フィルムを作製した。
導電層の表面抵抗率は1850Ω/□であり、表面抵抗率の面内バラツキは250Ω/□であった。
[比較例5]
導電性高分子20質量%(固形分換算)、有機バインダー樹脂80質量%となるようにした以外、比較例3と同様にして調光フィルムを作製した。
導電層の表面抵抗率は4000Ω/□であったが、表面抵抗率の面内バラツキが1000Ω/□を超えており、実用上問題があった。

表1に示すとおり、実施例1〜5では表面抵抗率の面内バラツキが低く抑えられていたが、比較例3〜5では表面抵抗率の面内バラツキが大きくなっていた。また、実施例1〜5では調光フィルムは正常に駆動したが、比較例1及び2では駆動しなかった。
表2に示すとおり、実施例1〜5では、良好な電波透過性を示した。
1 調光層
2 樹脂マトリックス
3 液滴
4 導電性樹脂基材
5a 導電層
5b 樹脂基材
5c プライマー層
5d 絶縁層
7 電源
8 スイッチ
9 分散媒
10 光調整粒子
11 入射光
12 タップ領域
13 導線

Claims (5)

  1. 樹脂基材と、平均長さが1μm以上0.5mm以下且つ平均太さが1nm以上20nm以下のカーボンナノチューブを含有する導電層と、を有する導電性樹脂基材を2枚と、
    前記2枚の導電性樹脂基材のそれぞれの導電層が対向して挟持される、樹脂マトリックス及び前記樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液を含む調光層と、
    を有する調光フィルム。
  2. 前記導電層の表面抵抗率が10kΩ/□以下である請求項1に記載の調光フィルム。
  3. 前記導電層の表面抵抗率が1000Ω/□以上10kΩ/□以下である請求項1又は請求項2に記載の調光フィルム。
  4. 500MHz以上の周波数領域における電波シールド性が5dB以下である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の調光フィルム。
  5. 平均長さが1μm以上0.5mm以下且つ平均太さが1nm以上20nm以下のカーボンナノチューブを含む導電層と、樹脂基材と、を有する調光フィルム用導電フィルム。
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