JP2013159537A - コンクリートの保護方法及びこれにより得られるコンクリート構造 - Google Patents

コンクリートの保護方法及びこれにより得られるコンクリート構造 Download PDF

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Abstract

【課題】コンクリートの素地を生かしながら、コンクリートを保護する有効な方法を提供する。
【解決手段】コンクリートからなる基材の表面に下塗層、中塗層及び上塗層を順次配設するコンクリートの保護方法であって、前記下塗層は、加水分解性の官能基を有するシラン化合物を含有する水性乳濁液を用いて形成されたものであり、前記中塗層は、ガラス転移温度が20℃以下のアクリル系樹脂と、架橋剤と、水膨潤性合成無機層状珪酸塩とを含有する中塗層用組成物を用いて形成され、前記水膨潤性合成無機層状珪酸塩の含有量は、前記アクリル系樹脂を100質量部としたときに、1〜50質量部であることを特徴とするコンクリートの保護方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、コンクリート素地を生かした保護方法及びこのコンクリートの保護方法により得られるコンクリート構造に関する。更に詳しくは、コンクリートの中性化の抑制に優れるコンクリートの素地を生かした保護方法により得られるコンクリート構造に関する。
コンクリートは、耐久性に優れた材料であるが、中性化による耐久性の低下が指摘されている。コンクリートの中性化は、空気中の二酸化炭素が、本来アルカリ性であるコンクリートの表面から浸入し、アルカリ性を消失(中性化)させる現象である。
鉄筋コンクリート構造物は、セメントコンクリートと鉄筋からなる複合構造であり、鉄筋はコンクリート中のアルカリ性により保護(不動体の形成)されている。しかし、中性化が鉄筋に達すると、鉄筋の不動体が破壊され、鉄筋の腐食が急激に進み。鉄筋の錆による体積膨張によりコンクリートにひび割れが発生し、この劣化が加速度的に進み、やがて構造物の寿命を迎えることとなる。
鉄筋コンクリート構造物を中性化から保護するためには、コンクリート表面から鉄筋表面までの深さ(鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さ)を確保する必要があり、建築基準法においては、柱、梁、及び耐力壁では30mmと規定されている。
打設したコンクリート表面をそのまま仕上げ面とするコンクリートを打放しコンクリートと呼び、コンクリートの素地を生かした仕上げ方法として数多くの建物で使用されている。打放しコンクリートは、そのまま実用に供される場合もあるが、経年での劣化を防止するために、この表面にシラン系の浸透性吸水防止材やアクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂又はフッ素樹脂系のクリヤ塗料が塗装される。
しかし、シラン系の吸水防止材は、シランモノマーやオリゴマーが浸透し、形成する疎水層により吸水を防止するものの、成膜成分がないために中性化防止性に劣る。一方、クリヤ塗料は、水分による濡れ色を防止するシランモノマーやオリゴマー系の浸透性吸水防止材を塗布後、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂やフッ素樹脂系のクリヤ塗料を塗布するものである。下記特許文献1には、下塗り材、中塗り材、及び上塗り材からなるコンクリートの打放し感を損なうことなく保護層を形成する塗装仕上げ方法が開示されている。更に、特許文献2には、クリヤタイプの溶剤系のアクリルウレタン樹脂プライマー組成物からなる下塗層、アクリル系樹脂と水膨潤性合成無機層状珪酸塩からなる中塗層及びクリヤタイプの溶剤系のアクリルシリコン系樹脂組成物からなる上塗層より構成されるコンクリートの防食方法が示されている。
特開平9−118574号公報 特開2011−20891号公報
特許文献1に記載の塗装仕上げ方法は、塗装による濡れ肌色やムラを防止し、コンクリートの打放し感を保持しながら、屋外での汚染物による汚れを防止しながらセメント系基材の保護を目的とするものであるが、コンクリートの耐久性を左右する中性化防止性能については言及されていない。一方、特許文献2に記載のコンクリートの防食方法では、コンクリートの中性化の防止効果が示されているものの、下塗層が溶剤系塗料であることから、コンクリート素地が濡れ色となり、打放しコンクリートとしての仕上りが得られない。
本発明は、上記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、コンクリート素地の質感を変えることなく、二酸化炭素の遮断性に優れ、コンクリートの中性化を抑制することができるコンクリートの保護方法、及びコンクリートの保護方法により得られるコンクリート構造物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、コンクリートからなる基材の表面に下塗層、中塗層、及び上塗層を順次配設するにあたり、特定の下塗層用組成物及び中塗層用組成物を用いることにより、コンクリートの素地を生かしたままで、中性化を効果的に抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
1.コンクリートからなる基材の表面に下塗層、中塗層及び上塗層を順次配設するコンクリートの保護方法であって、前記下塗層は、加水分解性の官能基を有するシラン化合物を含有する水性乳濁液を用いて形成されたものであり、前記中塗層は、ガラス転移温度が20℃以下のアクリル系樹脂と、架橋剤と、水膨潤性合成無機層状珪酸塩とを含有する中塗層用組成物を用いて形成され、前記水膨潤性合成無機層状珪酸塩の含有量は、前記アクリル系樹脂を100質量部としたときに、1〜50質量部であることを特徴とするコンクリートの保護方法。
2.上記加水分解性の官能基を有するシラン化合物は、アルキルアルコキシシランであることを特徴とする請求項1に記載のコンクリートの保護方法。
3.上記中塗層用組成物に含有されるアクリル系樹脂は、アクリル系樹脂粒子が水系媒体に分散されたエマルションである分散体であり、前記エマルションのpHは、6.0〜8.0であることを特徴とする上記1又は2に記載のコンクリートの保護方法。
4.上記中塗層用組成物に含有される水膨潤性合成無機層状珪酸塩は、合成フッ素ヘクトライト、及び合成フッ素マイカから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記1乃至3のいずれかに記載のコンクリート保護方法。
5.上記上塗層は、ガラス転移温度が30℃以下の樹脂を含有する上塗層用組成物から形成される上記1乃至4のいずれかに記載のコンクリートの保護方法。
6.上記1乃至5のいずかれに記載のコンクリートの保護方法により得られたコンクリート構造であって、上記コンクリートからなる基材の表面に、上記下塗層、中塗層及び上塗層が順次配設されてなることを特徴とするコンクリート構造。
本発明のコンクリートの保護方法は、コンクリートからなる基材の表面に下塗層、中塗層及び上塗層を順次配設するコンクリートの保護方法であって、前記下塗層は、加水分解性の官能基を有するシラン化合物を含有する水性乳濁液を用いて形成されたものであり、前記中塗層は、ガラス転移温度が20℃以下のアクリル系樹脂と、架橋剤と、水膨潤性合成無機層状珪酸塩とを含有する中塗層用組成物を用いて形成され、前記水膨潤性合成無機層状珪酸塩の含有量は、前記アクリル系樹脂を100質量部としたときに、1〜50質量部である。そのため、コンクリート素地の表面が濡れ色になることがなく、コンクリートに対する付着性及びコンクリートの中性化の抑制に優れるコンクリートの防食方法とすることができる。
また、上記中塗層用組成物に含有されるアクリル系樹脂は、アクリル系樹脂粒子が水系媒体に分散されたエマルションである分散体であり、前記エマルションのpHが、6.0〜8.0である場合には、耐吸水白化性に優れる中塗層とすることができ、結果的にコンクリート素地の質感を維持することができる。
また、上記中塗層に含有される水膨潤性合成無機層状珪酸塩が、合成フッ素ヘクトライト、及び合成フッ素マイカから選ばれる少なくとも1種である場合には、コンクリートの中性化の抑制により優れるコンクリートの保護方法とすることができる。
また、上記上塗層が、ガラス転移温度が30℃以下の樹脂を含有する上塗層用組成物から形成される場合には、よりコンクリート素地のひび割れに対する追従性に優れるコンクリート保護方法とすることができる。
更に、本発明のコンクリート構造は、本発明のコンクリートの保護方法により得られるコンクリート構造であるため、本発明のコンクリート保護方法と同様の作用効果が奏される。
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「塗膜」とは、下塗層用組成物、中塗層用組成物、及び上塗層用組成物を塗布等により形成させた硬化前の膜を意味し、「下塗層」、「中塗層」、「上塗層」及び「硬化膜」とは、上記塗膜において、乾燥・硬化が終了した後の膜を意味する。また、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの一方又は両方を含む意味に用いる。
[1]コンクリートの保護方法
本発明に係るコンクリートの保護方法は、コンクリートからなる基材の表面に下塗層、中塗層及び上塗層を順次配設するコンクリートの保護方法であって、前記下塗層は、加水分解性の官能基を有するシラン化合物を含有する水性乳濁液を用いて形成されたものであり、前記中塗層は、ガラス転移温度が20℃以下のアクリル系樹脂と、架橋剤と、水膨潤性合成無機層状珪酸塩とを含有する中塗層用組成物を用いて形成され、前記水膨潤性合成無機層状珪酸塩の含有量は、前記アクリル系樹脂を100質量部としたときに、1〜50質量部であることを特徴とする。
上記下塗層、中塗層、及び上塗層は、この順にコンクリート基材の表面(上面)に配設されればよい。すなわち、基材の表面に下塗層が配設され、そして、下塗層の表面に中塗層が配設され、更に中塗層の表面に上塗層が配設されるように、順次連続するように配設されてもよく、下塗層と中塗層と上塗層の各層の間に、更に他層(中間層)を介して配設さていてもよい。すなわち、下塗層の配設(工程)と中塗層の配設(工程)との間、中塗層の配設(工程)と上塗層の配設(工程)との間には、それぞれ中間層を形成する工程を備えてもよい。
(1)基材
上記基材はコンクリートである。コンクリートとは、セメントと水との水和反応により得られる硬化物であれば特に限定されない。このコンクリートとしては、例えば、セメントに水、粗骨材(砂利)、細骨材(砂)等を混合し、セメントの水和反応により硬化して得られたコンクリート、プレキャストコンクリート、軽量気泡コンクリート及びオートクレーブ養生の軽量気泡コンクリート、粗骨材(砂利)を含まないモルタル、セメントと無機質繊維等とを原料とするフレキシブル板並びにセメント系の押出し成形体等が挙げられる。また、上記コンクリートには、内部に鉄筋等を備えた鉄筋コンクリートや表面にシラン系浸透性吸水防止材等が塗工されたコンクリートも含まれる。
本発明のコンクリートの保護方法は、コンクリートの中性化の抑制に優れることから、内部に鉄筋等を備えた鉄筋コンクリート造及びプレキャストコンクリート造等の構造物の内外壁に対して効果的に使用することができる。
(2)下塗層の配設
上記下塗層は、コンクリート基材の表面に形成される。この下塗層は、施工用表面であるコンクリートからなる基材等に対して浸透して、疎水層を形成し、中塗層を配設した時に濡れ色に変化することを防止すると共に、降雨時にコンクリート基材表面の巣穴周りが濡れ色になることを防止し、コンクリート基材からの水分の浸入があった際にもコンクリート基材が濡れ色に変化することを防止する役目を担っている。更に、中塗層を配設する上で、当該中塗層用組成物の塗工時の基材への吸い込み防止及び基材と中塗層用組成物との付着性を発現させる役目を果たすものである。
下塗層は、基材の表面に下塗層用組成物を塗布し、コンクリート基材に浸透させ、その後、乾燥させて、溶媒を除去する。下塗層用組成物に含まれる加水分解性シラン化合物の官能基が加水分解し、基材の水酸基と縮合反応することにより、下塗層用組成物からなる疎水層を形成することができる。また、上記乾燥は、加熱乾燥であってもよいし、自然乾燥でもよい。
上記下塗層の形成において用いられる下塗層用組成物は、加水分解性の官能基を有するシラン化合物を含有する水性乳濁液である。この下塗層用組成物の溶媒としては、水、イソプロピルアルコール、又はミネラルスピリット等が使用されている。
本発明で使用する加水分解性シラン化合物は(以下、「シラン化合物」ともいう)は、下記一般式(1)で表わされる化合物及び/又は当該化合物のオリゴマーからなるものであり、基材に対して吸水性及び撥水性を付与する成分である。オリゴマーは、下記一般式(1)で表わされる化合物の2量体以上の縮合物であり、好ましいオリゴマーは、2〜10量体である。10量体を超えるオリゴマーを使用する場合は、得られる組成物の吸水防止性能が低下することがある。
n Si(R’)4-n ・・・(1)
ここで、式(1)において、Rは加水分解を起こし難く、安定な疎水基であり、炭素数1〜30のアルキル基、置換アルキル基又はアリール基である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基及びエイコシル基等を挙げることができる。置換アルキル基としては、ハロゲン化アルキル基、芳香族置換アルキル基等が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、上記アルキル基のフッ素化物、塩素化物及び臭素化物等があり、具体的には3−クロロプロピル基、6−クロロヘキシル基及び6,6,6−トリフルオロヘキシル基等を挙げることができる。芳香族置換アルキル基としては、ベンジル基、4−クロロベンジル基及び4−ブロモベンジル基等のハロゲン置換ベンジル基等を挙げることができる。アリール基としては、フェニル基、トリル基、メシチル基及びナフチル基等が挙げられる。R’は、加水分解性基であり、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、ヒロシキル基及びカルボキシル基である。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基等が挙げられ、ハロゲン原子としては、塩素原子又は臭素原子が好ましい。これらの中でも、組成物の基材に対する吸水防止機能に優れる点で、アルコキシ基が好ましい。シラン化合物が複数個のR又はR’を持つ場合は、それぞれは同一であっても異なっていても良い。nは1又は2である。nが0のものは、得られる組成物の塗膜の撥水性及び吸水防止性が十分でないという問題がある。
シラン化合物の具体例としては、下記に示す化合物又はこれらのオリゴマーが好適なものとして挙げることができる。例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチル−トリ−n−プロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチル−トリ−n−プロポキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピル−トリ−n−プロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリイソプロポキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン及びエイコシルトリメトキシシラン、6−クロロヘキシルトリメトキシシラン及び6,6,6−トリフルオロヘキシルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、4−クロロベンジルトリメトキシシラン、4−クロロベンジルトリエトキシシラン及びブロモベンジルトリ−n−プロポキシシラン、ドデシルトリクロロシラン、ドデシルトリブロモシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン及びジイソブチルジメトキシシラン等が挙げられる。
本発明では、式(1)において、Rが炭素数1〜10のアルキル基、R’が炭素数1〜6のアルコキシ基であるアルキルアルコキシシランが好ましく、より好ましいのは、nが1のシラン化合物であるアルキルトリアルコキシシランであり、更に好ましくは、Rが炭素数5〜10のアルキルトリエトキシシランである。これらのシラン化合物を使用することにより、保存安定性に優れ、粒子径の小さいエマルションが得られるからである。
これらシラン化合物は、2種以上を併用することもできる。
本発明で使用されるシラン化合物は、製造時の不純物である加水分解物、縮合物(二量体、三量体等)や残留触媒等を含んでいるものであってもよい。
本発明において、下塗層用組成物中のシラン化合物の割合は5〜60質量%が好ましく、より好ましくは8〜45質量%であり、更に好ましくは10〜30質量%である。シラン化合物の割合が5質量%に満たない場合は、基材への浸透性が低下し、他方60質量%を越えると貯蔵時の安定性が低下する場合がある。水性乳濁液中のシラン化合物の平均粒子径は、10μm以下に調整することが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、 1μm以下であることが更に好ましい。粒子径が10μmを越えるものは、得られる水性乳濁液が分離し易い不安定なものとなる場合がある。
シラン化合物の水性乳濁液においては、シラン化合物を水性エマルションないしはそれに近い状態にする目的で、乳化剤を配合する。当該乳化剤としては、ノニオン性、アニオン性及びカチオン性の何れのタイプのものも使用可能である。これらの中でもノニオン性乳化剤を使用したシラン化合物の水性分散液は乳化安定性が優れており好ましい。ア二オン性及びカチオン性乳化剤を使用する場合には、加水分解縮合反応が比較的早く発生し効力が低下してしまうので、調製後速やかに使用することが好ましい。ノニオン性乳化剤としては、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)=4〜22のタイプのもの、又はそれらの混合物が好適に使用される。具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート及びポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等が挙げられる。ア二オン性及びカチオン性乳化剤のHLBとしては1.5〜22のものが好ましく、より好ましくは4〜15である。乳化剤はシラン化合物に対して0.1〜50質量%に範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜20質量%である。0.1質量%未満では、乳濁液が分離し易く、50質量%を超えると得られた組成物の性能が低下し易い。乳化剤の種類及び濃度は、使用する加水分解性シラン化合物により変化するため、乳化剤を使用するに当たっては、実験的に検討し決定することが好ましい。これら乳化剤は2種以上を併用することもできる。
シラン化合物と乳化剤から調整した水性乳濁液は、pHによって加水分解反応を起こし、その性能を低下させる恐れがある。このような加水分解性の成分を含有する乳濁液を安定化させるために、乳濁液のpHを特定範囲内に緩衝化し、シラン化合物の安定性を保持するための緩衝剤を使用することが望ましい。水性乳濁液のpHの範囲としては6.0〜8.0が好ましく、そのpH範囲で水性乳濁液は加水分解反応に対して安定化する。本発明で好ましい緩衝剤の例としては、有機酸、無機酸、塩基及びそれらの塩類が挙げられ、具体的な化合物としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、ほう酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、モノ−,ジ−あるいはトリエタノールアミン、アニリン、ケイ酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、安全性、低価格等の面から、炭酸水素ナトリウムが最も好ましい。
緩衝剤は単独、又は2種以上を併用することができる。緩衝剤の量は、前記目的を達成するために広範囲に設定することができるが、一般的には乳濁液中の濃度が0.01〜5質量%であるのが好ましい。乳濁液中の濃度が前記範囲内であれば、シラン化合物が安定化する。
本発明のシラン化合物の水性乳濁液の分散媒である水は、脱イオン水,水道水等が使用可能である。
本発明のシラン化合物の水性乳濁液には、上記成分の他に目的に応じて各種の添加剤を添加することも可能である。例えば、乳濁液中における黴の発生を防ぐ防カビ剤、殺菌剤、殺生物剤、消泡剤、潤滑剤、レベリング剤、濡れ向上剤、増粘剤、触媒、染料、防腐剤、撥水付与剤としてフッ素ポリマー及びシリコーンポリマー、カップリング剤等を適宜添加することができる。
シラン化合物の水性乳濁液の製造方法としては、乳化剤を必要に応じて水に分散させ、これにシラン化合物を加え、高速撹拌して乳化する方法等が挙げられる。
シラン化合物の水性乳濁液は、下塗層としてコンクリート基材に配設されるが、後述する中塗層用組成物と混合して使用することもできる。
上記下塗層形成においては、上記下塗層用組成物を基材表面に塗工し、コンクリート基材中に浸透させ、その後、乾燥することにより、コンクリート基材の表層に疎水性の下塗層が形成される。上記下塗層用組成物の塗布方法(塗工)としては、特に限定されない。例えば、刷毛、ローラー刷毛、吹付け等の塗料を塗装する際に一般的に使用される方法を用いることができる。
下塗層用組成物のコンクリート基材に対する塗布量はシラン化合物として、2.5〜300g/m2が好ましく、より好ましくは、4〜180g/m2であり、更に好ましくは8〜120g/m2である。下塗層用組成物の塗布量が上記範囲にあると、塗布後の乾燥性及び浸透性のバランスが得られる。また、下塗層用組成物の塗布は、1層塗りでもよく、2層塗り、3層塗り等の多層塗りでもよく、基材の緻密性に応じて、塗布量と塗布回数を決めることが望ましい。下塗層用組成物はコンクリート基材に浸透するため、下塗層の厚さの上限は、通常、100μm以下である。
(3)中塗層の配設
中塗層は、アクリル系樹脂と、架橋剤と水膨潤性合成無機層状珪酸塩とを含有する中塗層用組成物を用いて、コンクリートからなる基材に、上述の下塗層を形成させた上面に形成される。
中塗層の形成は、アクリル系樹脂と、架橋剤と、水膨潤性合成無機層状珪酸塩とを含有する中塗層用組成物をコンクリートの基材に塗布して塗膜を形成させ、その後、その塗膜を乾燥させて、媒体を除去して硬化膜を形成させる(あるいはアクリル系樹脂と、架橋剤と水膨潤性合成無機層状珪酸塩とを含有する中塗層用組成物からなる塗膜を硬化させ、硬化膜を形成させる)ことにより、コンクリートからなる基材上の下塗層の上面に形成される。また、上記乾燥は、加熱乾燥であってもよいし、自然乾燥でもよい。前記のように形成された中塗層は、通常透明である。
上記アクリル系樹脂と、架橋剤と水膨潤性合成無機層状珪酸塩とを含有する中塗層用組成物としては、分散媒体中にアクリル系樹脂粒子、架橋剤及び水膨潤性合成無機層状珪酸塩が分散されたエマルションである分散体(以下、「分散体(X)」という)を用いることができる。この分散体(X)の分散媒体は水系媒体が好ましい。
また、上記アクリル系樹脂粒子とは、固体、半固体(ゲル状)及び液体のうちの少なくとも1種の状態で、粒状となった重合体である(以下、同様)。
上記アクリル系樹脂としては、アクリル系樹脂粒子が水系媒体に分散されたエマルションである分散体(以下、「分散体(Y)」という)を好適に用いることができる。この分散体(Y)は、上記アクリル系樹脂粒子が水系媒体中に分散している乳濁液である。
分散体(Y)において、水系媒体に分散されているアクリル系樹脂粒子の平均粒径は、動的光散乱法 周波解析式の装置(ナノトラックUPA−250、日機装製)で測定することができ、0.5μm以下が好ましく、より好ましくは0.01〜0.3μmであり、更に好ましくは0.02〜0.2μmである。アクリル系樹脂粒子の平均粒径が、0.5μmより大きいと、得られる中塗層の二酸化炭素遮蔽性が低下する場合がある。
上記アクリル系樹脂としては、疎水性樹脂が好ましい。この疎水性樹脂とは、水を分散媒として、疎水性樹脂が分散質とされるエマルションを形成することができる樹脂である。
疎水性樹脂は、疎水性単量体由来の構成単位を有する。また、疎水性樹脂は、疎水性以外の親水性単量体由来の構成単位を含有することができる。疎水性単量体由来の構成単位及び親水性単量体由来の構成単位の含有量は、疎水性樹脂の全構成単位を100質量%とした場合に、好ましくは50〜99.9質量%及び0.1〜50質量%であり、より好ましくは60〜99.8質量%及び0.2〜40質量%であり、更に好ましくは70〜99.5質量%及び0.5〜30質量%である。疎水性単量体由来の構成単位の含有量(割合)が、50質量%未満であると、形成された中塗層の耐水性が劣る場合がある。一方、疎水性単量体由来の構成単位の含有量が、多すぎるとアクリル系樹脂と、水膨潤性合成無機層状珪酸塩とを含有する組成物の分散安定性が不十分となる場合がある。
なお、疎水性単量体とは、20℃における水への溶解度が2質量%以下の単量体を意味し、親水性単量体とは20℃における水への溶解度が2質量%を超える単量体を意味する。
アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル共重合体、スチレン−アクリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等のビニル系重合体が挙げられる。これらのうち、コンクリートのひび割れに対する追従性、及び耐候性の点から、アクリル共重合体が好ましい。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記アクリル共重合体としては、芳香環を有する単量体由来の構成単位、シクロヘキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構成単位、炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位、及び炭素数が4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位からなる群から選ばれる単量体由来の構成単位を有する共重合体であることが好ましい。
また、芳香環を有する単量体由来の構成単位、シクロヘキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構成単位、炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位、及び炭素数が4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構成単位からなる群から選ばれる単量体単位のアクリル共重合体における含有量は、塗膜性能の点から、全構成単位を100質量%としたときに、30〜99質量%が好ましく、60〜98質量%がより好ましい。また、上記の群に含まれないその他の単量体由来の構成単位のアクリル共重合体における含有量は、塗膜性能の点から、全構成単位を100質量%としたときに、1〜70質量%であることが好ましく、2〜40質量%がより好ましい。
芳香環を有する単量体としては、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2、4−ジメチルスチレン、2、4−ジイソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、tert−ブトキシスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ハロゲン化スチレン、スチレンスルホン酸及びその塩、α−メチルスチレンスルホン酸及びその塩等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
シクロヘキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、2−エチル(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
炭素数が4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルペンチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記の群に含まれないその他の単量体としては、上記の群に含まれる単量体と重合可能なビニル系の不飽和化合物であれば、特に限定されない。例えば、エチレン性不飽和カルボン酸、酸無水物、ビニルエーテル単量体、ビニルエステル単量体、共役ジエン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
酸無水物単量体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
ビニルエーテル単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
ビニルエステル単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
上記単量体は公知の方法で重合し、分散体(Y)を製造することができる。分散体(Y)のpHは、単量体やラジカル重合開始剤の種類により決定されるが、本発明で用いられる分散体(Y)のpHは6.0〜8.0であることが好ましく、6.5〜7.5であることがより好ましい。分散体(Y)のpHが6.0未満であると、最適な塗料粘度が得られない場合があり、8.0を超えると、吸水白化しやすくなる場合がある。なお、吸水白化とは、成膜後の中塗層が雨水などの水分を吸水して膨潤し、白くなる現象である。これが乾燥すると元の透明な塗膜に戻るが、本現象は塗膜が変色したという不具合として捉えられたり、本現象の繰返しにより中塗層の劣化が進む可能性があるため、好ましくない。
pHを調整する際には、通常、塩基性材料が用いられる。この塩基性材料としては、アルカリ金属化合物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ土類金属化合物(水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等)、アンモニア、有機アミン化合物(モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等)等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、これらの化合物は、単独で用いてもよいが、水に溶解させてなる水溶液として用いてもよい。また、これらのうち、アンモニアが特に好ましい。
中塗層用組成物に含まれるアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、20℃以下であることが好ましく、より好ましくは−40℃〜18℃の範囲内であり、特に好ましくは−20〜15℃の範囲である。Tgが高すぎる(20℃を超える)場合には、アクリル系樹脂粒子の融着性が低下し、中塗層の二酸化炭素遮断性が低下することに加え、コンクリートのひび割れに対する追従性が劣る場合がある。中塗層のコンクリートのひび割れに対する追従性は、ゼロスパンテンション伸び量で評価することができ、当該伸び量が0.3mm未満の場合は、ひび割れに追従しない。その結果、二酸化炭素遮断性が得ることができない。また、Tgが低すぎる(−40℃未満である)場合には、成膜後の中塗層表面の粘着性が高くなり、屋外での乾燥工程中に汚れ物質が付着する場合がある。
ここでアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、アクリル系樹脂を構成する単量体の単一重合体の既知のTgから、下式により算出したものである。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+…・・+Wn/Tgn
ここで、アクリル系樹脂は、n種類の単量体より重合された共重合体とし、Tg1とは共重合体を構成する単量体1のTgであり、Tgnは単量体nのTgである。また、W1は共重合体を構成する単量体1の、共重合体を構成する全単量体における質量分率であり、Wnは単量体nの単量体の質量分率である。
なお、上記単一重合体のTgとしては、POLYMER HANDBOOK(JOHN WILLY&SONNS、INC)に記載の値を採用した。
上記分散体(Y)において、アクリル系樹脂粒子は、水系分散体にアニオン型乳化剤もしくはノニオン型乳化剤で分散されていることが好ましい。特にアニオン型乳化剤が好ましい。乳化剤としては一般の低分子乳化剤の他に、高分子乳化剤、反応性乳化剤でもよく、自己乳化型樹脂でも構わない。
上記アニオン型乳化剤としては、脂肪酸塩、アルキルアルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ロジン酸塩等が挙げられる。また、ノニオン型乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル型、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル型、ソルビタン脂肪酸エステル型、グリセリン脂肪酸エステル型、ポリオキシエチレンアルキルアミン型、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル型、アルキルアルカノールアミド型等が挙げられる。これらの乳化剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
中塗層に含まれるアクリル系樹脂の含有量は、中塗層用組成物の全体量に対して、30〜99質量%であることが好ましく、40〜95質量%であることがより好ましい。前記アクリル樹脂の含有量がこの範囲内であれば、下塗層への付着性が良好な中塗層とすることができる。
本発明に使用される中塗層用組成物は、架橋剤を含有する。架橋剤は、疎水性樹脂が反応性の官能基を有するものである場合、該官能基と反応して架橋構造をつくることができる成分である。架橋剤を含有する中塗層用組成物は、二酸化炭素の遮蔽性や耐吸水白化性に優れた中塗層皮膜を形成することができる。
架橋剤としては、疎水性樹脂が有する反応性官能基と反応または配位し得る官能基を1分子中に2個以上有する化合物が使用でき、具体的には、メチロール基を有するメラミン−ホルムアルデヒド縮合物、アルデヒド基を有するグリオキザール、エポキシ基を有するポリグリシジルエーテル、多価金属を有し疎水性樹脂が有する反応性の官能基と配位結合及び共有結合を形成するもの(炭酸ジルコニウム等)、水溶液中でカチオン性を示しアニオン性官能基とイオン結合を形成するもの(ポリアミドアミンポリ尿素樹脂等)、カルボキシ基と付加反応を起こすオキサゾリン基を有するもの等があげられる。
架橋される皮膜の性能の面からはメラミンが架橋剤として好ましく、低温での架橋性、保存安定性、更に有害なホルマリンが発生しないことを考慮すればオキサゾリン基含有重合体が架橋剤として好ましい。
架橋剤の配合は、アクリル系樹脂100質量部に対して、0.01〜30質量部が好ましく、0.1〜20質量部であることがより好ましく、0.5〜10質量部であることが更に好ましい。架橋剤の配合量が前記範囲内であれば、コンクリートのひび割れに対する追従性を維持しつつ、二酸化炭素の遮断性や耐吸水白化性に優れる中塗層とすることができる。
本発明に使用される中塗層用組成物は、更に、水膨潤性合成無機層状珪酸塩(以下、「層状珪酸塩」ともいう)を含有する。この層状珪酸塩は、二酸化炭素遮蔽性を付与するものである。
上記層状珪酸塩は、2層の珪酸四面体層が、マグネシウム又はアルミニウムを含む八面体層を間にはさんだ、サンドイッチ型の3層構造となって1枚の板状結晶層を形成し、この板状結晶層が積層されて層状となったものである。
上記板状結晶層の大きさは、通常、1枚の厚さが1nm程度であり、また、厚さ方向に対して垂直方向に形成される面の大きさ(長さ)が、縦方向と横方向との平均値として100nm〜100μm程度である。
また、面の平均長さに対する厚みであるアスペクト比(面の平均長さ/厚み)としては、通常、10〜100,000であり、好ましくは100以上であり、より好ましくは1,000以上である。
上記珪酸四面体層は、負の電荷を有しているが、この負の電荷は、通常、板状結晶層の間に存在するナトリウムイオン及びリチウムイオン等の金属カチオンにより中和されている。
また、層状珪酸塩は、上記のように珪酸層が有する負の電荷に由来するカチオンを有し、このカチオンは容易に他のカチオンと交換することができる。このカチオンの交換容量が、30〜150meq/100g(層状珪酸塩100gあたりのミリ当量数)であるものが好ましい。カチオン交換容量が小さすぎても大きすぎても後述する膨潤が不十分になる場合がある。また、金属カチオンとしては、ナトリウムイオンが好ましく、カリウムイオンや多価の金属カチオンの割合が多い場合はイオン交換性や水膨潤性が著しく低いので好ましくない。
また、水膨潤性とは、結晶層内に水分子を引き入れることにより、水を吸って膨潤する性質をいう。この水膨潤性の大きさは、日本ベントナイト工業会標準試験方法 JBAS−104−77に準じた方法で測定することができる。
層状珪酸塩の水膨潤性の値としては、好ましくは10ml/2g〜80ml/2gであり、より好ましくは15ml/2g〜70ml/2gである。層状珪酸塩の水膨潤性の値が、上記範囲内にあると、水中で板状結晶層の各層間が効率よく広がり、単層または数層にまで水を分散することができる。即ち、数μmの大きさの層状珪酸塩粒子が、結晶層内に水分子を引き入れることにより、厚さ1〜数nm程度の薄片にまで分散(膨潤)することができる。水膨潤性の値が小さすぎても大きすぎても、層状珪酸塩が疎水性樹脂に均一に分散(膨潤)されない場合がある。
水膨潤性合成無機層状珪酸塩としては、合成スメクタイト類、合成ベントナイト類、合成雲母類等が挙げられる。これらの中でもアンモニアガス放散の抑制性能及びアクリル系樹脂との混合安定性等の点から、水膨潤性の合成フッ素ヘクトライト、合成フッ素化マイカ等を主成分とするものが好ましく、更に、合成フッ素ヘクトライトが特に好ましい。このような層状珪酸塩は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、層状珪酸塩としては、市販品を用いることができる。この市販品としては、例えば、合成フッ素ヘクトライト主成分としては、ラポート社製のラポナイトシリーズ、トピー工業社製のNHTシリーズ等が挙げられる。また、合成フッ素化マイカ主成分としては、トピー工業社製のNTSシリーズ、コープケミカル社製ソマシフシリーズ等が挙げられる。
水中で分散した状態における層状珪酸塩の平均粒子径は、好ましくは1〜50μmであり、より好ましくは3〜50μmであり、更に好ましくは3〜20μmである。平均粒子径が、1μm未満の場合には、層状珪酸塩同士が凝集する割合が多くなる場合があり、中塗層用組成物中に均一に分散されず、得られる塗膜が二酸化炭素遮蔽性の不十分なものとなる場合がある。また、50μmを超える場合は、平滑性が失われ、塗膜の外観が悪くなる場合がある。
上記平均粒子径の測定方法としては、回折/散乱法による方法、動的光散乱法による方法、電気抵抗変化による方法、液中顕微鏡撮影後画像処理による方法等が挙げられる。これらのうち回折/散乱法による方法が好ましい。この回折/散乱法による粒度分布・平均粒子径測定は、膨潤してへき開した層状珪酸塩をイオン交換水中に分散した液について、光を透過させたときに得られる回折/散乱パターンをミー散乱理論等を用いてパターンに最も矛盾の無い粒度分布を計算することによりなされる。
上記回折/散乱による粒度分布・平均粒子測定ができる市販の装置としては、レーザー回折・光散乱による粒度測定装置(LS230コールター社製)、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD3000、島津製作所製)、レーザー回折・光散乱式粒度分布測定装置(LA910、LA700、LA500、堀場製作所瀬尾、及びマイクロトラックSPA、日機装製MT3000)等が挙げられる。
層状珪酸塩の質量割合は、アクリル系樹脂100質量部に対して、1〜50質量部であり、好ましくは2〜30質量部であり、2〜10質量部がより好ましい。
層状珪酸塩の質量割合が1質量部未満では、二酸化炭素遮断性が不十分であり、中性化を抑制することができない。一方、前記の質量割合が50質量部を超えると、中塗層用組成物の粘度が非常に高くなり、作業性に劣る場合がある。
中塗層用組成物としては、アクリル系樹脂を含有する分散体(Y)と層状珪酸塩とを混合して得られた分散体(X)を用いることができる。また、層状珪酸塩としては、層状珪酸塩が水系媒体に分散された分散体を用いることもできる。
また、中塗層用組成物の固形分濃度は、好ましくは15〜85質量%であり、より好ましくは20〜75質量%であり、更に好ましくは25〜65質量%である。固形分濃度が上記範囲内にある場合、得られる中塗層用組成物の乾燥硬化性及び施工作業性に優れる。
中塗層用組成物の塗布方法は、特に限定されない。例えば、刷毛、ローラー刷毛、吹付け等の塗料を塗装する際に一般的に使用される方法を用いることができる。
また、塗膜を形成させる場合の塗膜の厚さは、乾燥時における中塗層の厚さ(得られる中塗層の膜厚)が、50μm以上、好ましくは55〜700μm、より好ましくは55〜500μmとなるように塗布される。膜厚が、上記範囲にあると、コンクリートのひび割れ追従性及びコンクリートの中性化抑制に優れる。また、塗膜の形成は、1層塗りでもよく、2層塗り、3層塗り等の多層塗りでもよい。
その後、中塗層用組成物からなる塗膜の乾燥が行われ、中塗層(硬化膜)が得られる。乾燥温度は、通常−10℃〜50℃である。
中塗層用組成物には、上記のアクリル系樹脂、架橋剤及び層状珪酸塩以外のその他添加剤を含有することができる。この添加剤としては、乳化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、可塑剤、増粘剤、レベリング剤、濡れ向上剤、分散剤、着色剤(顔料等)、消泡剤、成膜助剤、水性シラン系浸透性吸水防止材、付着性付与剤、防カビ剤、防腐剤、有機・無機質充填材(フィラー)等が挙げられる。
コンクリート素地上の下地補修用モルタルによる補修部分を、周りのコンクリート素地の色や状態と合わせるために、下塗層配設後に、所定の色の着色剤(顔料等)を中塗層用組成物に少量添加したものを配設することができ、これの乾燥後に着色剤を添加しない透明な中塗層を配設することができる。更に、下塗層、及び透明な中塗層を配設した後に、着色剤(顔料等)を添加した中塗層を配設し、その後に中塗層、又は上塗層を配設することもできる。
(4)上塗層の配設
上記の上塗層は、上述の中塗層の上面に配設される。この上塗層は、中塗層表面に直接配設してもよく、更に他層(中間層)を介して配設してもよい。
上塗層の配設は、中塗層の上面に上塗層用組成物を塗布し、上塗層用組成物からなる塗膜を配設させるものであり、上塗層用組成物は、中塗層と同等あるいはそれよりも硬い皮膜である。その後、乾燥させ媒体を除去して硬化膜を配設させる。また、上記乾燥は、加熱乾燥でもよく、自然乾燥でもよい。前記のように形成された上塗層は、通常透明である。
上記上塗層において用いられる上塗層用組成物は、透明であり、且つ、耐水性を備える皮膜を形成するものであれば、特に限定されず、土木・建築分野においてクリヤ塗料、透明塗料等と言われる公知の組成物、例えば、アクリル酸エステル樹脂系組成物、スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂系組成物、アクリルウレタン樹脂系組成物、ウレタン樹脂系組成物、アクリルシリコーン樹脂系組成物、シリコーン樹脂系組成物、フッ素樹脂系組成物等を用いることができる。これらのうち、アクリルウレタン樹脂系組成物、ウレタン樹脂系組成物等の硬化性の組成物が好ましい。
尚、この上塗層用組成物は、水系、弱溶剤系、及び溶剤系のいずれでもよいが、作業性や得られる上塗層の耐水性等の観点から、弱溶剤系、又は溶剤系であることが好ましい。また、着色顔料を添加した着色組成物も使用することができる。
上記上塗層用組成物としては、好ましくは、(平均で)2個以上の水酸基を有する重合体と、多価アルコールと、平均2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートを含有する組成物である。
上記重合体としては、エチレン性不飽和化合物よりなる単位を2種以上含む共重合体であれば、特に限定されず、ランダム共重合体でも、ブロック共重合体でも、グラフト共重合体でもよい。
上記共重合体としては、(平均で)2個以上の水酸基を有するポリオール、(平均で)2以上の水酸基を有する(メタ)アクリル重合体等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、特に好ましい重合体は、(平均で)2個以上の水酸基を有する(メタ)アクリル重合体であり、水酸基価が10〜400mgKOH/gであり、かつ、数平均分子量が2,000〜200,000である水酸基を有するエチレン性不飽和化合物よりなる単位の1種以上を含む共重合体(水酸基を有するエチレン性不飽和化合物よりなる単位と、アルキルエステル結合を有するエチレン性不飽和化合物よりなる単位とからなる共重合体、水酸基を有するエチレン性不飽和化合物よりなる単位と、アルキルエステル結合を有するエチレン性不飽和化合物よりなる単位と、芳香族ビニル化合物よりなる単位と、他の化合物よりなる単位とからなる共重合体等)である。
水酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレート、多価アルコールのモノ又はポリアクリレート等を含むことが好ましく、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記重合体を構成する水酸基を有するエチレン性不飽和化合物よりなる単位の含有割合は、重合体を構成する全単位の合計を100質量%とした場合に、5〜50質量%が好ましく、この範囲であれば、硬化反応が十分に進行し、得られる上塗層の耐薬品性や引張物性に優れる。
他のエチレン性不飽和化合物としては、アルキルエステル結合を有するエチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、脂環族ビニル化合物、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物、酸無水物基を有するエチレン性不飽和化合物、アルコキシ基を有するエチレン性不飽和化合物、アミノ基を有するエチレン性不飽和化合物、アミド基を有するエチレン性不飽和化合物、スルホン酸基を有するエチレン性不飽和化合物、ニトリル基を有する不飽和化合物、アルコキシポリアルキレングリコールのモノアクリル酸エステル又はモノメタクリル酸エステル、ビニルエステル等が挙げられる。これらは、組み合わせて用いることができる。
アルキルエステル結合を有するエチレン性不飽和化合物は、−COOR基(Rは脂肪族炭化水素基)を有する化合物であり、アクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましく、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、炭素数が9以上(特に、10〜16)のアクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましく、炭素数が9以上のアクリル酸アルキルエステルのみであってよいし、該アクリル酸アルキルエステルと、他のアクリル酸アルキルエステル(炭素数が4〜8のアクリル酸アルキルエステル)及び/又は炭素数5以上のメタクリル酸アルキルエステルとの組合せであってもよい。アルキルエステル結合を有するエチレン性不飽和化合物よりなる単位の含有割合は、重合体を構成する全単位の合計を100質量%とした場合に、50〜95質量%が好ましく、この範囲であれば、付着性、柔軟性、外観性等に優れた上塗層を得ることができる。炭素数が9以上のアクリル酸アルキルエステルの使用割合は、アルキルエステル結合を有するエチレン性不飽和化合物全量に対し、1〜60質量%以上が好ましい。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられ、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。芳香族ビニル化合物よりなる単位の含有割合は、重合体を構成する全単位の合計を100質量%とした場合に、10〜40質量%が好ましい。
又、上記重合体を構成する単位以外の他の化合物を使用することできる。
上記上塗層用組成物は、いずれも、好ましくは有機溶剤系組成物であることから、上記重合体は、溶液重合、高温連続重合等により製造されたものを用いることが好ましい。
溶液重合を適用する場合には、通常、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、ハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等の重合開始剤が用いられる。この重合開始剤の使用量は、単量体全量を100質量部とした場合、好ましくは0.01〜10質量部である。
重合溶媒は、生成する共重合体を溶解可能なものであれば、特に限定されず、トルエン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等の酢酸エステル、アセトン等のケトン類等が挙げられる。重合溶媒の使用量は、得られる共重合体の固形分が10〜90質量%となる量であることが好ましい。
溶液重合により重合体を製造する場合、単量体の使用方法は、特に限定されないが、好ましくは、予め、一部の単量体を反応系に収容して重合を開始し、重合反応の進行とともに残りの単量体を連続添加又は分割添加しながら更に重合を行う方法である。この方法によると、多分散度の小さな重合体を製造することができる。尚、重合温度は、単量体の種類、重合開始剤の種類及びその分解温度又は半減期、重合溶媒の沸点等により選択されるが、通常、50℃〜120℃である。
また、高温連続重合により上記重合体を製造する場合、特開昭57−502171号公報、特開昭59−6207号公報、特開昭60−215007号公報等に開示された方法を適用することができる。この方法の一例としては、加圧可能な反応器を溶媒で満たし、加圧下で所定温度に設定した後、単量体のみ、又は、単量体及び重合溶媒の混合物からなる原料成分を一定の供給速度で反応器へ供給し、該原料成分の供給量に見合う量の反応液を抜き出す方法が挙げられる。
上記原料成分が、単量体及び重合溶媒の混合物である場合、反応開始時に、予め、反応器に収容された溶媒と、上記重合溶媒は同一であっても、異なっていてもよい。これら溶媒及び重合溶媒は、上記溶液重合において用いられる有機溶媒として例示した化合物であってよいし、そのほか、エチレングリコール等のアルコールを使用又は併用することができる。尚、上記原料成分における重合溶媒の含有割合は、単量体全量100質量部に対して、好ましくは200質量部以下である。
尚、上記原料成分は、重合開始剤を含有してよいし、含有されなくてもよい。上記原料成分に、重合開始剤を含有させる場合、その配合量は、単量体全量100質量部に対して、好ましくは0.001〜5質量部である。
上記高温連続重合における重合温度は、好ましくは150℃〜350℃である。この重合温度が150℃未満であると、得られる共重合体の分子量が大きくなりすぎる場合、反応速度が遅くなってしまう場合等がある。一方、350℃を超えると、生成した重合体の分解反応が発生して重合溶液が着色することがある。
反応系の圧力は、重合温度と、使用する単量体及び重合溶媒の各沸点に依存するものであり、重合反応に影響を及ぼさないが、前記重合温度を維持できる圧力であればよい。反応系における単量体の滞留時間は、好ましくは2〜60分である。この滞留時間が短すぎると、未反応の単量体が残留する場合がある。一方、長すぎると、生産性が低下することがある。
上記高温連続重合によれば、低分子量で、比較的低粘度の共重合体を得ることができる。また、溶液重合に比べて、多分散度の低い共重合体を得ることができる。更に、この重合方法は、熱重合開始剤を用いる必要がないか、又は、熱重合開始剤を用いる場合でも少量の使用で目的の分子量の共重合体が得られるため、熱や光によりラジカル種を発生するような不純物をほとんど含有しない純度の高い共重合体を得ることができる。従って、上塗層を耐候性に優れたものとすることができる。
上塗層用組成物に含まれる多価アルコールとしては、アルコール性水酸基を(平均で)2個以上有し、かつ、分子量が2,000以下の低分子量多価アルコールの飽和化合物及び不飽和化合物のいずれでもよく、脂肪族化合物、脂環族化合物及び芳香族化合物のいずれでもよい。又、これらは、1種のみ含有されてよいし、2種以上が含有されてもよい。
エチレングリコール等の2価アルコール、グリセリン等の3価アルコール、エリスリトール等の4価アルコール、アドニトール等の5価アルコール、ソルビトール等の6価アルコール、その他、ダイマージオール;水添ダイマージオール;ポリエチレングリコール、等に、アルキレンオキサイドを付加して得られたグリセリン変性ポリオール、2価アルコールに、アルキレンオキサイドを付加させて得られたポリエーテルジオール等のポリエーテルポリオール;ひまし油変性ポリオール等の、多価カルボン酸と、多価アルコールとを反応させて得られた縮合物、環状エステル(ラクトン)の開環重合物、多価カルボン酸と、多価アルコールと、環状エステルとを反応させて得られた生成物等のポリエステルポリオール等を用いることもできる。
尚、上記ダイマージオールとしては、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸や、トール油、綿実油、大豆油等から得られる乾性油脂肪酸又は半乾性油脂肪酸等を2分子加熱重合して製造されたダイマー酸を還元して得られた、通常、炭素数が30〜42の不飽和化合物を用いることができる。
また、付着性、低温安定性、柔軟性、強度、作業性等の観点から、上記上塗層用組成物に含有される多価アルコールは、水酸基価の異なる2種の多価アルコールを含むことが好ましい。具体的には、水酸基価が110〜250mgKOH/gの多価アルコール、及び水酸基価が250mgKOH/gを超えて1,200mgKOH/g以下の多価アルコールである。尚、上記範囲外の水酸基価を有する多価アルコールを更に用いてもよい。
上記前者の多価アルコールとしては、ダイマージオール、水添ダイマージオール等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、後者の多価アルコールとしては、エチレングリコール等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記の2種類の多価アルコールは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記水酸基価が異なる化合物の含有割合は特に限定されない。上記多価アルコールの含有量は、上記重合体を100質量部とした場合に、通常、1〜100質量部であり、得られる上塗層の機械的物性及び耐候性に優れる。
上塗層用組成物に含まれる有機ポリイソシアネートとしては、平均2個以上のイソシアネート基を有するものであれば、特に限定されず、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート及び芳香族ポリイソシアネートのいずれでもよい。また、上記組成物に、1種のみ含有されてよいし、2種以上が含有されてもよい。
上記有機ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族のジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族のジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート等の芳香族のジイソシアネート、ヘキサメチレントリイソシアネート等の脂肪族のトリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環族のトリイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4"−トリイソシアネート等の芳香族のトリイソシアネートが挙げられ、更に上記化合物のビウレット体、イソシアヌレート体、カルボジイミド変性物、二量体、三量体等を用いることもできる。
本発明においては、有機溶剤で希釈する必要がなく、常温で液状を示す化合物が好ましく、耐候性に優れることから、脂肪族又は脂環族のポリイソシアネートを用いることが特に好ましい。
上記有機ポリイソシアネートの含有量は、このイソシアネートのイソシアネート基のモル数と、上記重合体の水酸基のモル数及び上記多価アルコールの水酸基のモル数の和との比NCO/OHが、通常、0.5〜2となるように、選択される。上記比が小さいと、上塗層の強度が十分でない場合がある。一方、上記比が大きすぎると、上塗層が硬化不良を起こしたり、上塗層が脆くなることがある。
尚、上記上塗層用組成物の調製に際しては、予め、有機ポリイソシアネート以外の原料成分を混合して得られた主材を準備しておき、該上塗層用組成物の使用前に、上記主材に有機ポリイソシアネートが配合され、十分に混合される。
上記上塗層用組成物は、上記成分に加えて、硬化触媒、硬化促進剤、消泡剤、加水分解防止剤、酸化防止剤、成膜助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、脱水剤、レベリング剤、表面調整剤、分散剤、付着付与剤、アルコキシシリケート及びその縮合体等の耐汚染性付与剤、シリカ粉末等の無機系やアクリルビーズ等の有機系の艶消し剤、増粘剤、着色剤(顔料等)、防かび剤、有機溶剤、無機や有機質の充填剤(フィラー)等を含有してもよい。
上記硬化触媒としては、2個以上の水酸基を有する重合体及び多価アルコールと、平均2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートとの反応による硬化を促進するものであれば、特に限定されず、例えば、トリエチルアミン等のアミン類、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物、重炭酸ソーダ等の無機塩等が挙げられる。これらのうち、反応性に優れる有機金属化合物を用いることが好ましい。
上記硬化触媒の含有量は、上記重合体100質量部に対して、好ましくは0.001〜5質量部である。
上記上塗層用組成物の固形分は、特に限定されないが、通常、30〜90質量%である。固形分が高くても、塗工性に不具合を生じるような粘度の上昇を招くことがなく、作業性に優れる。
この上塗層用組成物を用いて得られる硬化物のガラス転移温度(Tg)は、30℃以下が好ましく、中塗層のガラス温度よりも高いことが望ましい。ガラス転移温度が上記範囲内にあると、コンクリートのひび割れに対する追従性に優れ、かつ、二酸化炭素を遮蔽することができ、コンクリートの中性化の抑制に優れる。
上記上塗層配設工程において、上記上塗層は、上記上塗層用組成物の塗布及び乾燥により配設することができる。塗布方法としては、刷毛、ローラー刷毛、スプレー等の塗料を塗装する際に一般的に使用される方法を用いることができる。
上塗層用組成物による塗膜の形成は、1層塗りでもよく、2層塗り、3層塗り等の多層塗りでもよい。
その後、上塗層用組成物による塗膜の乾燥が行われ、硬化皮膜が得られる。
この上塗層用組成物の塗布及び乾燥に要する時間の合計は、通常、0.5〜48時間である。
上記上塗層配設工程において、配設される上記上塗層の厚さは、30μm以上、好ましくは40〜500μmとなるように塗布される。上塗層の膜厚が、上記範囲にあると、コンクリートのひび割れ追従性、及びコンクリートの中性化抑制に優れる。
[2]コンクリート構造
本発明のコンクリート構造は、本発明のコンクリートの保護方法により得られたコンクリート構造であって、上記コンクリートからなる基材の上面に、上記下塗層、上記中塗層、及び上記上塗層と、が順次配設されてなることを特徴とする。
コンクリート構造における基材の材質、並びに下塗層、中塗層、及び上塗層の材質及び膜厚等については、上記コンクリートの保護方法における上記の各々の記載をそのまま適用することができる。また、基材の表面と下塗層との間、下塗層と中塗層との間、及び中塗層と上塗層との間にその他の層を設けることができることについても、上記コンクリートの保護方法の場合と同様である。
コンクリート構造は、コンクリートからなる基材の上面に、下塗層、中塗層、及び上塗層と、が順次配設されていることから、コンクリートのひび割れに対する追従性、及びコンクリートに対する付着性に優れ、並びにコンクリートの中性化の抑制に優れるコンクリート構造とすることができる。
コンクリート構造は、建築物の内外壁を構成するコンクリートからなる基材の上面に、上記の下塗層用組成物を塗布し、その後、乾燥させ、溶媒を除去する。下塗層用組成物に含まれる加水分解性シラン化合物の官能基が加水分解し、基材の水酸基と縮合反応することにより、下塗層用組成物からなる疎水層を形成することができる。次いで、下塗層の表面に上記の中塗層用組成物を塗布し、その後、乾燥させ、媒体を除去して中塗層を形成させ、次いで、中塗層の表面に上記の上塗層用組成物を塗布し、その後、乾燥させ、媒体を除去して上塗層を形成することにより、構築することができる。
尚、コンクリート構造における「コンクリート」、「下塗層」、「中塗層」及び「上塗層」については、それぞれ、上記コンクリートの保護方法における「コンクリート」、「下塗層」、「中塗層」及び「上塗層」の説明を適用することができる。
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。なお、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
下塗層用組成物としては、下塗Aとして、加水分解性の官能基を有するシラン化合物の水性乳濁液として、ヘキシルトリエトキシシランモノマーを主成分とし,シラン濃度20%,平均粒子径0.3μmのシラン化合物の水性乳濁液を、下塗Bとして、弱溶剤系アクリルウレタン樹脂下塗材である東亞合成社製、商品名「クリアウオールCP−100「下塗用」」(固形分58%)を使用した。
上塗層用組成物としては、弱溶剤系アクリルシリコン樹脂上塗材である東亞合成社製、商品名「アクリセプトクリアトップ」(ガラス転移点15℃、固形分40%)を使用した。
中塗層用組成物の原料としては、下記のものを使用した。
(1)下記アクリル樹脂Aが水に分散された分散体A(固形分濃度40%)
(2)下記アクリル樹脂Bが水に分散された分散体B(固形分濃度40%)
(3)下記アクリル樹脂Cが水に分散された分散体C(固形分濃度40%)
(1−1)アクリル樹脂Aは、スチレン、アクリル酸2−エチルヘキシル及びメタクリル酸からなる単量体を重合して得られた共重合体であり、各単量体由来の構成単位の質量割合(スチレン:アクリル酸2−エチルヘキシル:及びメタクリル酸)は、45:50:5である。また、このアクリル樹脂AのTgは−9℃であり、平均粒子径は0.10μmである。
(2−1)アクリル樹脂Bは、メタクリル酸メチル、アクリル酸2−エチルヘキシル及びメタクリル酸からなる単量体を重合して得られた共重合体であり、各単量体由来の構成単位の質量割合(メタクリル酸メチル:アクリル酸2-エチルヘキシル:及びメタクリル酸)は、61:34:5である。また、このアクリル樹脂BのTgは、20℃であり、平均粒子径は0.11μmである。
(3−1)アクリル樹脂Cは、スチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸2−エチルヘキシル及びメタクリル酸からなる単量体を重合して得られた共重合体であり、各単量体由来の構成単位の質量割合(スチレン:メタクリル酸メチル:アクリル酸2−エチルヘキシル:メタクリル酸)は、45:25:25:5である。また、このアクリル樹脂CのTgは、38℃であり、平均粒子径は0.11μmである。
架橋剤としては、オキサゾリン基含有重合体(日本触媒社製 商品名「エポクロスWS−500」)を用いた。
層状珪酸塩としては、平均粒子径11μm、厚み5nm(アスペクト比;約2,200)の合成フッ素ヘクトライトの8%水分散ゾル(トピー工業社製 商品名「NHT−8」)を用いた。
フレキシブル板の表面に実施例及び比較例に示す水準を塗布し、23℃、60%の恒温恒湿室にて7日間養生して試験体とした。
実施例1
(1)下塗層の形成
下記評価方法に従って、基材として、フレキシブル板の表面に、上記下塗層用組成物として下塗Aを、刷毛を用いて200g/m2塗布し、その後、23℃で24時間乾燥させた。
(2)中塗層の形成
上記アクリル樹脂A分散体、架橋剤及び層状珪酸塩を混合し、中塗層用組成物とした。また、中塗層用組成物における架橋剤と層状珪酸塩の配合量は、アクリル樹脂A分散体に含有されているアクリル樹脂A100部に対して、架橋剤を2部及び層状珪酸塩を4部とした。そして、上記(1)で形成した下塗層の表面に、上記の中塗層用組成物を、刷毛を用いて塗布し、290μmの厚さ(塗布厚)で塗膜を形成し、その後、23℃で24時間乾燥させて、厚さ90μmの中塗層を形成した。
(3)上塗層の形成
上記上塗層用組成物「アクリセプトクリアトップ」を、上記(2)で形成した中塗層の表面に、刷毛を用いて塗布し、120μmの厚さ(塗布厚)で塗膜を形成し、その後23℃で24時間乾燥させて、厚さ45μmの上塗層を形成した。
実施例2
実施例1における中塗層用組成物の層状珪酸塩の配合量をアクリル樹脂A分散体に含有されているアクリル樹脂A100部に対して、層状珪酸塩を10部とした以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。
実施例3
実施例1における中塗層用組成物の層状珪酸塩の配合量をアクリル樹脂A分散体に含有されているアクリル樹脂A100部に対して、層状珪酸塩を45部とした以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。
実施例4
実施例1で使用した中塗層用組成物に代えて、上記アクリル樹脂B分散体、架橋剤及び層状珪酸塩を混合し中塗層用組成物とし、この中塗層用組成物における層状珪酸塩の配合量をアクリル樹脂B分散体に含有されているアクリル樹脂B100部に対して4部とした以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。
以上、実施例1〜4に使用した下塗層用組成物、及び中塗層用組成物の含有量を表1に記載する。
Figure 2013159537
比較例1
実施例1で形成させた下塗層を形成させず、基材の表面に実施例1における中塗層用組成物、及び上塗層用組成物による塗膜を形成させて試験体を作製した。
比較例2
実施例1におけるアクリル系樹脂の架橋剤の配合量をアクリル樹脂A分散体に含有されているアクリル樹脂A100部に対して、架橋剤を0とした以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。
比較例3
実施例1における中塗層用組成物の層状珪酸塩の配合量をアクリル樹脂A分散体に含有されているアクリル樹脂A100部に対して、層状珪酸塩を0部とした以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。
比較例4
実施例1における中塗層用組成物の層状珪酸塩の配合量をアクリル樹脂A分散体に含有されているアクリル樹脂A100部に対して、層状珪酸塩を0.5部とした以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。
比較例5
実施例1で使用した中塗層用組成物に代えて、上記アクリル樹脂C分散体、架橋剤及び層状珪酸塩を混合し中塗層用組成物とし、この中塗層用組成物における層状珪酸塩の配合量をアクリル樹脂B分散体に含有されているアクリル樹脂B100部に対して4部とした以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。
比較例6
実施例1における中塗層用組成物の層状珪酸塩の配合量をアクリル樹脂A分散体に含有されているアクリル樹脂A100部に対して、層状珪酸塩を55部とした以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。
比較例7
実施例1における上塗層用組成物層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。
比較例8
実施例1における上記下塗層用組成物として下塗Bとした以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。なお、下塗層用組成物は、刷毛を用いて塗布し、その後23℃で24時間乾燥させて、厚さ60μmの上塗層を形成した。
以上、比較例1〜8に使用した下塗層用組成物、中塗層用組成物、及び上塗層用組成物の含有量を表2、3に記載する。
Figure 2013159537
Figure 2013159537
上記のようにして得られた試験体を用いて以下の評価方法に従って、作業性、仕上り性、吸水白化性、汚染性、付着性、中性化深さ及びゼロスパンテンション伸び量を評価した。実施例1〜4及び比較例1〜8における下記評価の評価結果を表1〜3に併記する。
(1)作業性評価
基材表面に上記実施例1〜4及び比較例1〜8を、ローラー刷毛を用いて塗布し、平滑に塗装できる場合を○、凹凸ができる場合を×として評価した。
(2)仕上り性評価
基材表面に上記実施例1〜4及び比較例1〜8により、硬化膜を成膜させた試験体を用いて、仕上り性を評価した。上記により得られた養生後の試験体の仕上り外観を目視により観察した。上記実施例および比較例を塗布していないフレキシブル板と比べて、外観変化がほとんどないまたは少しであるものを○、濡れ色(黒色)となり大きく変化しているものを×として評価した。
(3)吸水白化性評価
基材表面に上記実施例1〜4及び比較例1〜8により、硬化膜を成膜させた試験体を用いて、吸水白化性を評価した。上記により得られた養生後の試験体を水温23℃の水中に7日間浸漬した後の試験体の外観を目視により観察した。外観変化のないものを○、わずかな濁りがあるものを△、白色に変化しているものを×として評価した。
(4)汚染性評価
基材表面に上記実施例1〜4及び比較例1〜8により、硬化膜を成膜させた試験体を用いて、汚染性を評価した。カーボンブラック(カーボンブラックFW−200、エボニックデグサ社製」(粒径0.002〜0.028μm)をイオン交換水に分散させ5%懸濁液を作製した。上記により得られた養生後の試験体の表面に懸濁液を吹付け塗布し、50℃で1時間加熱し、23℃まで冷却した後に流水下でカーボンブラックを洗い落とした。水分を除去した後に試験体の外観を目視により観察した。外観変化のないものを○、カーボンブラックで黒く汚れているものを×として評価した。
(5)付着性評価
基材表面に上記実施例1〜4及び比較例1〜8により、硬化膜を形成させた試験体を用いて、硬化膜の付着性を評価した。上記により得られた養生後の試験体及び養生後に水温23℃の水中に7日間浸漬した後の試験体について、JIS K 5600−5−6の付着性、クロスカット法に準拠して、付着性試験を行った。硬化膜に対するクロスカットは縦横2mm間隔で25個の四角(正方形)を形成し、クロスカットされた硬化膜に対して、セロテープ(登録商標)を付着させて、セロテープに付着させた硬化膜の剥離を行い、剥がれた硬化膜の個数を測定し、付着性の評価をした。剥がれがない場合は「25/25」であり、全て剥がれた場合には「0/25」である。剥がれが少ないもの程、付着性に優れていることを示す。
(6)中性化深さ評価
JIS A 1153に準じて作製したコンクリート表面に、上記実施例1〜4及び比較例1〜8により、2〜3層の硬化膜を形成させたコンクリートの試験体を用いて、コンクリートの中性化抑制効果の評価をした。上記により得られた試験体を、温度20±2℃、相対湿度60±5%、二酸化炭素濃度5±0.2%の環境下で26週放置した。そして、上記条件で26週放置された試験体を、3層の硬化膜が形成されたコンクリート表面に対して、垂直に切断した。その切断面に、95%エタノール90mlにフェノールフタレイン1gを溶かして、100mlとしたフェノールフタレイン溶液を試吹きかけ、コンクリート表面から紫色に変色しなかった部分の深さを測定した。その深さ(コンクリート表面からの深さ)を中性化深さとして、コンクリートの中性化抑制の評価とした。この中性化された深さ(中性化深さ)が小さいほど中性化が抑制されたことを示す。
(7)ゼロスパンテンション伸び量評価
フレキシブル板の表面に上記実施例1〜4及び比較例1〜8により、硬化膜を形成させた試験体を用いて、硬化膜のゼロスパンテンション伸び量を評価した。上記により得られた養生後の試験体について、ポリマーセメント系塗膜防水工事施工指針(案)・同解説(日本建築学会)に準拠して、フレキシブル板の塗膜が形成されていない裏側の中央部に切込みを入れ、フレキシブル板の両端を引張試験機に固定し、5mm/minの速度で引張り、塗膜にピンホール等が発生した時のフレキシブル板の開き幅をゼロスパンテンション伸び量として測定した。なお、このゼロスパンテンション伸び量が大きいもの程、ひび割れ追従性に優れていることを示す。

Claims (6)

  1. コンクリートからなる基材の表面に下塗層、中塗層及び上塗層を順次配設するコンクリートの保護方法であって、
    前記下塗層は、加水分解性の官能基を有するシラン化合物を含有する水性乳濁液を用いて形成されたものであり、
    前記中塗層は、ガラス転移温度が20℃以下のアクリル系樹脂と、架橋剤と、水膨潤性合成無機層状珪酸塩とを含有する中塗層用組成物を用いて形成され、前記水膨潤性合成無機層状珪酸塩の含有量は、前記アクリル系樹脂を100質量部としたときに、1〜50質量部であることを特徴とするコンクリートの保護方法。
  2. 上記加水分解性の官能基を有するシラン化合物は、アルキルアルコキシシランであることを特徴とする請求項1に記載のコンクリートの保護方法。
  3. 上記中塗層用組成物に含有されるアクリル系樹脂は、アクリル系樹脂粒子が水系媒体に分散されたエマルションである分散体であり、前記エマルションのpHは、6.0〜8.0であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリートの保護方法。
  4. 上記中塗層用組成物に含有される水膨潤性合成無機層状珪酸塩は、合成フッ素ヘクトライト、及び合成フッ素マイカから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンクリート保護方法。
  5. 上記上塗層は、ガラス転移温度が30℃以下の樹脂を含有する上塗層用組成物から形成される請求項1乃至4のいずれかに記載のコンクリートの保護方法。
  6. 請求項1乃至5のいずかれに記載のコンクリートの保護方法により得られたコンクリート構造であって、上記コンクリートからなる基材の表面に、上記下塗層、中塗層及び上塗層が順次配設されてなることを特徴とするコンクリート構造。


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