JP2011020891A - コンクリートの防食方法及びこのコンクリートの防食方法により得られるコンクリート構造 - Google Patents

コンクリートの防食方法及びこのコンクリートの防食方法により得られるコンクリート構造 Download PDF

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Abstract

【課題】二酸化炭素の遮蔽性に優れ、及びコンクリートのひび割れ追従性に優れ、並びにコンクリートの中性化を抑制することができるコンクリートの防食方法、及びこのコンクリートの防食方法により得られるコンクリート構造を提供する。
【解決手段】コンクリートからなる基材2の表面に下塗層3、中塗層4、及び上塗層5を順次配設するコンクリートの防食方法であって、中塗層4は、ガラス転移温度が20℃以下のアクリル系樹脂と、水膨潤性合成無機層状珪酸塩と、を含有する中塗層用組成物を用いて、乾燥時の膜厚が50μm以上となるように形成され、上記水膨潤性合成無機層状珪酸塩の含有量は、上記アクリル系樹脂の質量を100質量部としたときに、1〜50質量部であるコンクリートの防食方法。また、コンクリート構造は、このコンクリート防食方法により得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、コンクリートの防食方法及びこのコンクリートの防食方法により得られるコンクリート構造に関する。更に詳しくは、本発明は、コンクリートの中性化の抑制に優れるコンクリートの防食方法、及びこのコンクリートの防食方法により得られるコンクリート構造に関する。
コンクリートは耐久性に優れた材料であるが、コンクリートは中性化されることにより耐久性が低下するという問題がある。コンクリートの中性化とは、大気中に存在する二酸化炭素が、本来アルカリ性であるコンクリートの表面から侵入して、コンクリート内部を中性化(炭酸化)させる現象である。
鉄筋コンクリートによる構造物は、コンクリートと、コンクリート内部の鉄筋と、から構成されている。この鉄筋は、コンクリートが有するアルカリ性により、通常、腐食から保護(不動体が形成)されているが、鉄筋周りのコンクリートが中性化すると、鉄筋の不動体膜が損傷して、鉄筋の腐食が急激に進む。従って、鉄筋コンクリートによる構造物(建築物)では、コンクリート内部の鉄筋部分まで中性化された場合に、建物の寿命と見なされる。そして、コンクリート表面から鉄筋部分までの長さ(鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さ)は、建築基準法において、柱、梁、及び耐力壁では3cmとされている。従って、コンクリートの表面から3cm以内までにコンクリートの中性化を抑制する必要がある。
また、コンクリートは、硬化時に乾燥による収縮が生じ、それによってコンクリートにひび割れが生じる場合がある。このひび割れの幅の許容値は、約0.3mmとされている。このひび割れ部からも二酸化炭素が浸透するため、0.3mm程度のひび割れに追従できる、コンクリート表面を覆う膜等が必要である。
これまで、コンクリートの中性化防止は、JIS A 6909「建築用仕上塗材」に分類される、砂壁状塗材、単層・複層仕上材でも効果があるとされてきたが、二酸化炭素に対する遮蔽性、及びひび割れ追従性は十分とはいえない。
また、下記特許文献1には、コンクリートの表面に皮膜層を形成するコンクリートの防食方法であって、該皮膜層がエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物の硬化により形成されたものであり、かつ該皮膜層の23℃、相対湿度60%RHにおける二酸化炭素透過係数が0.1cc-mm/m・day・atm以下であるコンクリートの防食方法が開示されている。
特開2003−342084号公報
特許文献1に記載のコンクリートの防食方法は、コンクリートの表面に、皮膜層として特定のエポキシ樹脂と特定エポキシ樹脂硬化剤を主成分として形成される硬化膜層を用いるものである。このコンクリートの防食方法では、二酸化炭素に対する遮蔽性の効果は、ある程度は有するものの、コンクリートの中性化抑制、及びコンクリートのひび割れ追従性について、満足できていないのが現状である。
本発明は、上記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素の遮蔽性に優れ、及びコンクリートのひび割れ追従性に優れ、並びにコンクリートの中性化を抑制することができるコンクリートの防食方法、及びこのコンクリートの防食方法により得られるコンクリート構造を提供することを目的とする。
本発明は以下のとおりである。
1.コンクリートからなる基材の表面に下塗層、中塗層、及び上塗層を順次配設するコンクリートの防食方法であって、
上記中塗層は、ガラス転移温度が20℃以下のアクリル系樹脂と、水膨潤性合成無機層状珪酸塩と、を含有する中塗層用組成物を用いて、乾燥時の膜厚が50μm以上となるように形成され、
上記水膨潤性合成無機層状珪酸塩の含有量は、上記アクリル系樹脂の質量を100質量部としたときに、1〜50質量部であることを特徴とするコンクリートの防食方法。
2.上記上塗層は、ガラス転移温度が30℃以下の樹脂を含有する上塗層用組成物から形成される上記1.に記載のコンクリートの防食方法。
3.上記上塗層の膜厚は、50μm以上である上記1.又は上記2.に記載のコンクリートの防食方法。
4.上記水膨潤性合成無機層状珪酸塩は、合成フッ素ヘクトライト、及び合成フッ素マイカから選ばれる少なくとも1種である上記1.乃至3.のいずれかに記載のコンクリートの防食方法。
5.上記1.乃至4.のいずれかに記載のコンクリートの防食方法により得られたコンクリート構造であって、
上記コンクリートからなる基材の表面に、上記下塗層、上記中塗層、及び上記上塗層と、が順次配設されてなることを特徴とするコンクリート構造。
本発明のコンクリートの防食方法は、コンクリートからなる基材の表面に下塗層、中塗層、及び上塗層を順次配設し、上記中塗層が、ガラス転移温度が20℃以下のアクリル系樹脂と、水膨潤性合成無機層状珪酸塩と、を含有する中塗層用組成物を用いて、乾燥時の膜厚が50μm以上となるように形成され、水膨潤性合成無機層状珪酸塩の含有量が、上記アクリル系樹脂の質量を100質量部としたときに、1〜50質量部であることから、下塗層、中塗層及び上塗層の、コンクリートのひび割れに対する追従性、及びコンクリートに対する付着性に優れ、並びにコンクリートの中性化の抑制に優れるコンクリートの防食方法とすることができる。
また、上塗層が、ガラス転移温度が30℃以下の樹脂を含有する上塗層用組成物から形成される場合には、よりコンクリートのひび割れに対する追従性に優れるコンクリートの防食方法とすることができる。
また、上塗層の膜厚が、50μm以上である場合には、よりコンクリートのひび割れに対する追従性に優れるコンクリートの防食方法とすることができる。
また、水膨潤性合成無機層状珪酸塩は、合成フッ素ヘクトライト、及び合成フッ素マイカから選ばれる少なくとも1種である場合には、よりコンクリートの中性化の抑制に優れるコンクリートの防食方法とすることができる。
更に、本発明のコンクリート構造は、本発明のコンクリート防食方法により得られるコンクリート構造であるため、本発明のコンクリート防食方法と同様の作用効果が奏される。
本発明のコンクリートの防食方法により得られたコンクリート構造の模式的な説明図である。
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「塗膜」とは、下塗層組成物、中塗層組成物、及び上塗層組成物を塗布等により形成させた、硬化前の膜を意味し、「下塗層」、「中塗層」、「上塗層」及び「硬化膜」とは上記塗膜において、乾燥・硬化が終了した後の膜を意味する。また、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの一方又は両方を含む意味に用いる。
[1]コンクリートの防食方法
本発明のコンクリートの防食方法は、コンクリートからなる基材の表面に下塗層、中塗層、及び上塗層を順次配設するコンクリートの防食方法であって、上記中塗層は、ガラス転移温度が20℃以下のアクリル系樹脂と水膨潤性合成無機層状珪酸塩(以下、単に「層状珪酸塩」ともいう。)と、を含有する中塗層用組成物を用いて、乾燥時の膜厚が50μm以上となるように形成され、上記水膨潤性合成無機層状珪酸塩の含有量は、上記アクリル系樹脂の質量を100質量部としたときに、1〜50質量部であることを特徴とする。
上記下塗層、上記中塗層、及び上記上塗層は、この順に基材の表面(上面)に配設されればよい。即ち、基材の表面に下塗層が配設され、そして、下塗層の表面に中塗層が配設され、更に、中塗層の表面に上塗層が配設されるように、順次連続するように配設されてもよく、下塗層と中塗層と上塗層との各層の間に、更に他層(中間層)を介して配設さていてもよい。即ち、下塗層の配設(工程)と中塗層の配設(工程)との間、中塗層配設(工程)と上塗層配設(工程)との間、にはそれぞれ、中間層を形成する工程を備えてもよい。
(1)基材
上記基材はコンクリートである。コンクリートとは、セメントと水との水和反応により得られた硬化物であれば特に限定されない。このコンクリートとしては、例えば、セメントに水、砂利、砂等を混合し、セメントの水和反応により硬化して得られたコンクリート、プレキャストコンクリート、軽量気泡コンクリート及びオートクレーブ養生の軽量気泡コンクリート、砂利を含まないモルタル、セメントと石綿等とを原料とするスレート、並びにセメント系の押し出し成形体等が挙げられる。また、上記コンクリートには、内部に鉄筋等を備えたコンクリート及び表面に塗材が塗工されたコンクリートも含まれる。
本発明のコンクリートの防食方法は、コンクリートの中性化の抑制に優れることから、内部に鉄筋等を備えた鉄筋コンクリート造、及びプレキャストコンクリート造等の構造物の内外壁に対して効果的に使用することができる。
(2)下塗層の配設
上記下塗層は、基材の表面に配設される。この下塗層は、施工用表面であるコンクリートからなる基材等の表面を平滑にし、更に、中塗層を配設する上で、中塗層組成物の塗工性、及び基材と中塗層との密着性及び接着性を発現させる役目を果たすものである。
下塗層の配設(形成)は、基材の表面に下塗層用組成物を塗布し、下塗層用組成物からなる塗膜を形成させ、その後、その塗膜を乾燥させて、媒体を除去して硬化膜を形成させる(あるいは、下塗層用組成物からなる塗膜を硬化させ、硬化膜を形成させる)ことにより、基材の表面に配設することができる。また、上記乾燥は、加熱乾燥であってもよいし、自然乾燥でもよい。
上記下塗層の形成において用いられる下塗層用組成物は、基材の表面を構成する材料との親和性に優れるものであれば、特に限定されない。この下塗層用組成物としては、公知の組成物を用いることができ、例えば、エポキシ樹脂組成物、アクリルウレタン樹脂組成物、アクリル樹脂組成物、ウレタン樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂組成物、ビニルエステル樹脂組成物等が挙げられる。これらのうち、エポキシ樹脂組成物、アクリル樹脂組成物、ウレタン樹脂組成物等が好ましい。また、上記組成物としては、硬化型(湿気硬化型、熱硬化型、光硬化型等)等とすることができ、得られる下塗層が該組成物による硬化皮膜であることが好ましい。
また、この下塗層用組成物は、水系組成物、有機溶剤系組成物及び無溶剤系組成物のいずれでもよい。
尚、上記水系組成物とは水系媒体による分散体である。この水系媒体とは、水を含む媒体であり、水のみであってよいし、水を含む混合物であってもよい(以下、「水系媒体」に関し同様である。)
上記エポキシ樹脂組成物としては、例えば、エポキシ化合物と、硬化剤(ポリアミン化合物等)とを含有する組成物を用いることができる。
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ポリアミン化合物としては、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、ポリアミドポリアミン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記エポキシ樹脂組成物は、通常、エポキシ化合物を含有する主剤液、及び、硬化剤を含有する硬化剤液の2液型組成物として、各液の粘度を所望の範囲(例えば、5〜3000mPa・s)に調整して使用される。粘度が上記の範囲であれば、基層(下地)への塗工性(濡れ性)に優れる。
上記アクリルウレタン樹脂組成物としては、例えば、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含む単量体、及び/又は、該単量体を用いてなる重合体と、有機ポリイソシアネートと、を含有する組成物を用いることができる。
上記ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等のヒドロキシアルキルメタクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート、グリセリンモノアクリレート等の多価アルコールのモノ又はポリアクリレート;ペンタエリスリトールトリメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート等の多価アルコールのモノ又はポリメタクリレート;ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリブチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールポリブチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリブチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールポリブチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノメタクリレート等のポリアルキレングリコール(アルキレングリコール単位数は、2以上。)のモノアクリル酸エステル又はモノメタクリル酸エステル;シクロヘキセンオキシドとアクリル酸との付加物等のエポキシドと、アクリル酸との付加物;シクロヘキセンオキシドとメタクリル酸との付加物等のエポキシドと、メタクリル酸との付加物、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−ビニルベンジルアルコール、イソプロペニルフェノール、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含む単量体を用いてなる重合体としては、ヒドロキシル基を有するアクリル重合体、ヒドロキシル基を有するメタクリル重合体等が挙げられる。
上記有機ポリイソシアネートとしては、2個以上のイソシアネート基を有するものであれば、脂肪族化合物、脂環族化合物及び芳香族化合物のいずれでもよい。
上記有機ポリイソシアネートの含有量は、このイソシアネートのイソシアネート基のモル数と、上記エチレン性不飽和化合物のヒドロキシル基のモル数、上記単量体を用いてなる重合体のヒドロキシル基のモル数、必要に応じて用いられるポリオール等のヒドロキシル基のモル数の和との比NCO/OHが、通常、0.5〜2となるように、選択される。
上記アクリルウレタン樹脂組成物は、必要に応じて、多価アルコール等のポリオール、シランカップリング剤、希釈剤等、上記添加剤を含有したものとすることができる。
上記多価アルコールは、飽和化合物及び不飽和化合物のいずれでもよく、更に、脂肪族化合物、脂環族化合物及び芳香族化合物のいずれでもよい。
上記アクリルウレタン樹脂組成物は、上記エポキシ樹脂組成物と同様、通常、有機ポリイソシアネート以外の原料成分を含有する主剤液、及び、有機ポリイソシアネートを含有する硬化剤液の2液型組成物として、プライマー層形成用組成物の使用前に、十分に混合して使用される。
上記下塗層用組成物として、エポキシ樹脂組成物及びアクリルウレタン樹脂組成物を用いる場合のいずれにおいても、各組成物の固形分濃度は、特に限定されないが、通常、10〜60質量%である。
上記下塗層用組成物は、公知の添加剤、例えば、成膜助剤、硬化促進剤、凍結安定剤、防腐剤、防かび剤、シランカップリング剤、消泡剤、希釈剤等を含有することができる。
特に、上記エポキシ樹脂組成物を下塗層用組成物に使用する場合には、必要に応じて、シランカップリング剤、希釈剤等、上記添加剤を含有したものが好ましい。
上記シランカップリング剤としては、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記下塗層形成においては、上記下塗層用組成物を基材表面に塗工し、その後、乾燥することにより、下塗層が形成される。上記下塗層用組成物の塗布方法(塗工)としては、特に限定されない。例えば、刷毛、ロール刷毛、レーキ、コテ及びエアースプレーによる塗布(塗装)等が挙げられる。塗工は複数回行ってもよい。
その後、下塗層用組成物からなる塗膜の乾燥が行われ、下塗層(硬化膜)が得られる。乾燥温度は、通常、−10℃〜50℃である。
下塗層用組成物の塗膜を形成させる場合の塗膜の厚さは、乾燥時における下塗層の厚さ(得られる下塗層の膜厚)が、好ましくは0.1〜500μmであり、より好ましくは5〜300μmであり、更に好ましくは20〜200μmとなるように塗布される。下塗層の膜厚が、上記範囲にあると、コンクリートとの密着性及びコンクリートのひび割れ追従性に優れる。
例えば、下塗層用組成物の塗膜の厚さとしては、好ましくは0.2〜1000μmであり、より好ましくは10〜600μmであり、更に好ましくは40〜400μmである。
また、下塗層用組成物による塗膜の形成は、1層塗りでもよく、2層塗り、3層塗り等の多層塗りでもよく、斑点状のスパッタ塗装であってもよい。
ただし、基材が多孔質である場合、下塗層用組成物が基材の内部に浸透するために基材表面に設計された厚さの被膜を形成しない場合もある。
上記下塗層用組成物の塗布に要する時間は、通常、1〜5分間/m程度であり、乾燥のために放置する時間は、通常、0.5〜48時間程度である。
上記下塗層用組成物の塗膜の乾燥を、指触等により確認した後、中塗層の形成へと進められる。
(3)中塗層の配設
上記中塗層は、上述の下塗層の上面に配設される。この下塗層は、基材の表面に直接配設されてもよく、更に他層(中間層)を介して配設されてもよい。通常、下塗層の表面に配設される。
中塗層の配設は、下塗層の上面(表面)に中塗層用組成物を塗布し、中塗層用組成物からなる塗膜を形成させ、その後、その塗膜を乾燥させて、媒体を除去して硬化膜を形成させる(あるいは、中塗層用組成物からなる塗膜を硬化させ、硬化膜を形成させる)ことにより、下塗層の上面に配設される。また、上記乾燥は、加熱乾燥であってもよいし、自然乾燥でもよい。
また、下塗層の表面に中塗層用組成物を塗布する場合、この下塗層としては、下塗層用組成物を塗布された塗膜であってもよく、塗膜が硬化した下塗層(硬化膜)であってもよい。
上記中塗層用組成物は、ガラス転移温度が20℃以下のアクリル系樹脂と、層状珪酸塩と、を含有する。
この中塗層用組成物としては、分散媒体中にアクリル系樹脂粒子、及び層状珪酸塩が分散されたエマルションである分散体(以下。「分散体(x)」という。)を用いることができる。この分散体(x)の分散媒体は水系媒体が好ましい。
また、上記アクリル系樹脂粒子とは、固体、半固体(ゲル状)及び液体のうちの少なくとも1種の状態で、粒状となった重合体である(以下、同様。)。
上記アクリル系樹脂としては、アクリル系樹脂粒子が水系媒体に分散されたエマルションである分散体(以下、「分散体(y)」という。)を好適に用いることができる。この分散体(y)は、上記アクリル系樹脂粒子が水系媒体中に分散している乳濁液である。
分散体(y)において、水系媒体に分散されているアクリル系樹脂粒子の平均粒径は、0.5μm以下が好ましく、より好ましくは0.02〜0.3μmであり、更に好ましくは0.03〜0.2μmである。アクリル系樹脂粒子の平均粒径が、0.5μmより大きいと、得られる中塗層の二酸化炭素遮蔽性が低下する場合がある。
上記アクリル系樹脂としては、疎水性樹脂が好ましい。この疎水性樹脂とは、水を分散媒として、疎水性樹脂が分散質とされるエマルションを形成することができる樹脂である。
疎水性樹脂は、疎水性単量体由来の構成単位を有する。また、疎水性樹脂は、疎水性以外の親水性単量体由来の構成単位を含有することができる。疎水性単量体由来の構成単位、及び親水性単量体由来の構成単位の含有量は、疎水性樹脂の全構成単位を100質量%とした場合に、好ましくは50〜99.9質量%及び0.1〜50質量%であり、より好ましくは60〜99.8質量%及び0.2〜40質量%であり、更に好ましくは70〜99.5質量%及び0.5〜30質量%である。疎水性単量体由来の構成単位の含有量(割合)が、50質量%未満であると、形成された中塗層の耐水性が劣る場合がある、一方、疎水性単量体由来の構成単位の含有量が、多すぎると中塗層用組成物の分散安定性が不十分となる場合がある。
尚、疎水性単量体とは、20℃における水への溶解度が2質量%以下の単量体を意味し、親水性単量体とは20℃における水への溶解度が2質量%を超える単量体を意味する。
アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル共重合体、スチレン−アクリル共重合体、エポキシ樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等のビニル系重合体が挙げられる。これらのうち、コンクリートのひび割れ追従性、及び耐候性の点から、アクリル共重合体が好ましい。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記アクリル共重合体としては、芳香環を有する単量体由来の構成単位、シクロヘキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構成単位、及び炭素数が4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位からなる群から選ばれる単量体由来の構成単位を有する共重合体であることが好ましい。
また、芳香環を有する単量体由来の構成単位、シクロヘキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構成単位、及び炭素数が4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構成単位からなる群から選ばれる単量体単位の、アクリル共重合体における含有量は、全構成単位を100質量%としたときに、30〜99質量%が好ましく、60〜98質量%がより好ましい。また、上記の群に含まれないその他の単量体由来の構成単位のアクリル共重合体における含有量は、全構成単位を100質量%としたときに、1〜70質量%であることが好ましく、2〜40質量%がより好ましい。
芳香環を有する単量体としては、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、tert−ブトキシスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ハロゲン化スチレン、スチレンスルホン酸及びその塩、α−メチルスチレンスルホン酸及びその塩等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
シクロヘキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、2−エチル(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
炭素数が4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルペンチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記の群に含まれないその他の単量体としては、上記の群に含まれる単量体と重合可能なビニル系の不飽和化合物であれば、特に限定されない。例えば、炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸、酸無水物、ビニルエーテル単量体、ビニルエステル単量体、共役ジエン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
酸無水物単量体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
また、これらの酸(エチレン性不飽和カルボン酸及び酸無水物単量体)は、無機アルカリ剤、有機アミン類あるいはアンモニア等により中和されていても良い。
上記無機アルカリ剤としては、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられる。
また、上記有機アミン類としては、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミン等が挙げられる。
ビニルエーテル単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
ビニルエステル単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
この中塗層及び中塗層用組成物におけるアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、20℃以下であり、より好ましくは−40℃〜18℃の範囲内であり、特に好ましくは−20〜15℃の範囲である。Tgが高すぎる(20℃を超える)場合には、コンクリートのひび割れに対する追従性が劣る場合がある。また、Tgが低すぎる(−40℃未満である)場合には二酸化炭素を十分に遮蔽することができない場合があり、高いコンクリートの中性化の抑制性能が発揮されない場合がある。
ここでアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、アクリル系樹脂を構成する単量体の単一重合体の既知のTgから、下式により算出したものである。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+…・・+Wn/Tgn
ここで、アクリル系樹脂は、n種類の単量体より重合された共重合体とし、Tg1とは共重合体を構成する単量体1のTgであり、Tgnは単量体nのTgである。また、W1は共重合体を構成する単量体1の、共重合体を構成する全単量体における質量分率であり、Wnは単量体nの単量体の質量分率である。
なお、上記単一重合体のTgとしては、POLYMER HANDBOOK(JOHN WILLY&SONNS,INC)に記載の値を採用した。
上記分散体(y)において、アクリル系樹脂粒子は、水系分散体にアニオン型乳化剤もしくはノニオン型乳化剤で分散されていることが好ましい。特にアイニオン型乳化剤が好ましい。乳化剤としては一般の低分子乳化剤の他に、高分子乳化剤、反応性乳化剤でもよく、自己乳化型樹脂でも構わない。
上記アニオン型系乳化剤としては、脂肪酸塩、アルキルアルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ロジン酸塩等が挙げられる。また、ノニオン型乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル型、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル型、ソルビタン脂肪酸エステル型、グリセリン脂肪酸エステル型、ポリオキシエチレンアルキルアミン型、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル型、アルキルアルカノールアミド型等が挙げられる。これらの乳化剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記層状珪酸塩は、中塗層用組成物から得られる中塗層に、二酸化炭素遮蔽性を奏する効果を付与する。
層状珪酸塩は、2層の珪酸四面体層が、マグネシウム又はアルミニウムを含む八面体層を間にはさんだ、サンドイッチ型の3層構造となって1枚の板状結晶層を形成し、この板状結晶層が積層されて層状となったものである。
上記板状結晶層の大きさは、通常、1枚の厚さが1nm程度であり、また、厚さ方向に対して垂直方向に形成される面の大きさ(長さ)が、縦方向と横方向との平均値として100nm〜100μm程度である。
また、面の平均長さに対する厚みであるアスペクト比(面の平均長さ/厚み)としては、通常、10〜100,000であり、好ましくは100以上であり、より好ましくは1,000以上である。
上記珪酸四面体層は、負の電荷を有しているが、この負の電荷は、通常、板状結晶層の間に存在するナトリウムイオン及びリチウムイオン等の金属カチオンにより中和されている。
また、層状珪酸塩は、上記のように珪酸層が有する負の電荷に由来するカチオンを有し、このカチオンは容易に他のカチオンと交換することができる。このカチオンの交換容量が、30〜150meq/100g(層状珪酸塩100gあたりのミリと当量数)であるものが好ましい。カチオン交換容量が小さすぎても大きすぎても後述する膨潤が不十分になる場合がある。また、金属カチオンとしては、ナトリウムイオンが好ましく、カリウムイオンや多価の金属カチオンの割合が多い場合はイオン交換性や水膨潤性が著しく低いので好ましくない。
また、水膨潤性とは、結晶層内に水分子を引き入れることにより、水を吸って膨潤する性質をいう。この水膨潤性の大きさは、日本ベントナイト工業会標準試験方法 JBAS−104−77に準じた方法で測定することができる。
層状珪酸塩の水膨潤性の値としては、好ましくは10ml/2g〜80ml/2gであり、より好ましくは15ml/2g〜70ml/2gである。層状珪酸塩の水膨潤性の値が、上記範囲内にあると、水中で板状結晶層の各層間が効率よく広がり、単層または数層にまで水を分散することができる。即ち、数μmの大きさの層状珪酸塩粒子が、結晶層内に水分子を引き入れることにより、厚さ1〜数nm程度の薄片にまで分散(膨潤)することができる。水膨潤性の値が小さすぎても大きすぎても、層状珪酸塩が疎水性樹脂に均一に分散(膨潤)されない場合がある。
水膨潤性合成無機層状珪酸塩としては、合成スメクタイト類、合成ベントナイト類、合成雲母類等が挙げられる。これらの中でもコンクリートの中性化防止性能、及びアクリル系樹脂との混合安定性等の点から、水膨潤性の合成フッ素ヘクトライト、合成フッ素化マイカ等を主成分とするものが好ましく、更に、合成フッ素ヘクトライトが特に好ましい。このような層状珪酸塩は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いても良い。
また、層状珪酸塩としては、市販品を用いることができる。この市販品としては、例えば、合成フッ素ヘクトライト主成分としては、ラポート社製のラポナイトシリーズ、トピー工業写生のNHTシリーズ等が挙げられる。また、合成フッ素化マイカ主成分としては、トピー工業社製のNTSシリーズ、コープケミカル社製ソマシフシリーズ等が挙げられる。
水中で分散した状態における層状珪酸塩の平均粒子径は、好ましくは1〜50μmであり、より好ましくは5〜50μmであり、更に好ましくは5〜20μmである。平均粒子径が、1μm未満の場合には、層状珪酸塩同士が凝集する割合が多くなる場合があり、中塗層用組成物中に均一に分散されず、得られる塗膜が二酸化炭素遮蔽性の不十分なものとなる場合がある。また、50μmを超える場合は、中塗層の平滑性が失われ、外観が悪くなる場合がある。
上記平均粒子径の測定方法としては、回折/散乱法による方法、動的光散乱法による方法、電気抵抗変化による方法、液中顕微鏡撮影後画像処理による方法等が挙げられる。これらのうち回折/散乱法による方法が好ましい。この回折/散乱法による粒度分布・平均粒子径測定は、膨潤してへき開した層状珪酸塩をイオン交換水中に分散液について、光を透過させたときに得られる回折/散乱パターンをミー散乱理論などを用いてパターンに最も矛盾の無い粒度分布を計算することによりなされる。
上記回折/散乱による粒度分布・平均粒子測定ができる市販の装置としては、レーザー回折・光散乱による粒度測定装置(LS230コールター社製)、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD3000、島津製作所製)、レーザー回折・光散乱式粒度分布測定装置(LA910,LA700,LA500,堀場製作所瀬尾、及びマイクロトラックSPA,日機装製MT3000)等が挙げられる。
層状珪酸塩の質量割合は、アクリル系樹脂100質量部に対して、1〜50質量部であり、好ましくは2〜30質量部であり、3〜20質量部がより好ましい。層状珪酸塩の質量割合が上記範囲内であれば、得られる中塗層の二酸化炭素遮蔽性が優れ、コンクリートの中性抑制に優れる。
中塗層用組成物としては、アクリル系樹脂を含有する分散体(y)と層状珪酸塩とを混合して得られた分散体(x)を用いることができる。また、層状珪酸塩としては、層状珪酸塩が水系媒体に分散された分散体を用いることもできる。
また、中塗層用組成物の固形分濃度は、好ましくは15〜85質量%であり、より好ましくは20〜75質量%であり、更に好ましくは25〜65質量%である。固形分濃度が上記範囲内にある場合、得られる中塗層の乾燥硬化性、及び中塗層を得るための施工作業性に優れる。
中塗層用組成物の下塗層上面への塗布方法は、特に限定されない。例えば、刷毛、ロール刷毛、レーキ、コテ及びエアースプレーによる塗布(塗装)等が挙げられる。
また、中塗層用組成物の塗膜を形成させる場合の塗膜の厚さは、乾燥時における中塗層の厚さ(得られる中塗層の膜厚)が、50μm以上、好ましくは55〜700μm、より好ましくは55〜500μmとなるように塗布される。中塗層の膜厚が、上記範囲にあると、コンクリートのひび割れ追従性、及びコンクリートの中性化抑制に優れる。
また、中塗層用組成物による塗膜の形成は、1層塗りでもよく、2層塗り、3層塗り等の多層塗りでもよく、斑点状のスパッタ塗装であってもよい。
また、中塗層の厚さは、50μm以上が必要であるが、50μmとなるように、二回以上に分けて中塗層用組成物を塗布し、複数の塗膜を形成させて、複数の硬化膜からなる中塗層を配設することが好ましい。これにより、二酸化炭素に対する遮蔽性が向上する。
その後、中塗層用組成物からなる塗膜の乾燥が行われ、中塗層(硬化膜)が得られる。乾燥温度は、通常、−10℃〜50℃である。
中塗層は、上記アクリル系樹脂及び層状珪酸塩を含有する。このアクリル系樹脂は、中塗層を100質量%とした場合に、30〜99質量%、好ましくは40〜97質量%含有される。また、層状珪酸塩は、アクリル系樹脂100質量部に対して、1〜50質量部であり、好ましくは2〜30質量部であり、3〜20質量部がより好ましい。
更に、中塗層には、上記の樹脂及び層状珪酸塩以外のその他添加剤を含有することができる。この添加剤としては、中塗層用組成物に含有される化合物であり、上記のとおり、乳化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、増粘剤、レベリング剤、着色剤(顔料等)、消泡剤、防かび剤、フィラー(珪砂、ゴムチップ等)等が挙げられる。
上記中塗層の形成において、中塗層用組成物の塗布に要する時間は、1〜5分間/m程度であり、乾燥又は硬化のための放置時間は、通常、1〜48時間である。
上記中塗層用組成物の塗膜の乾燥を、指触等により確認した後、上塗層の形成へと進められる。
(4)上塗層の配設
上記上塗層は、上述の中塗層の上面に配設される。この上塗層は、中塗層表面に直接配設してもよく、更に他層(中間層)を介して配設してもよい。通常、中塗層の表面に配設される。
上塗層の配設は、中塗層の上面に上塗層用組成物を塗布し、上塗層用組成物からなる塗膜を形成させ、その後、乾燥させ媒体を除去して硬化膜を形成させる(あるいは、中塗層用組成物からなる塗膜を硬化させ、硬化膜を形成させる)ことにより、中塗層の上面に配設される。また、上記乾燥は、加熱乾燥であってもよいし、自然乾燥でもよい。
また、中塗層の表面に上塗層用組成物を塗布する場合、この中塗層としては、中塗層用組成物を塗布された塗膜(硬化前)であってもよく、塗膜が硬化した硬化膜であってもよい。
上塗層の配設において用いられる上塗層用組成物は、中塗層と同等あるいはそれよりも硬い皮膜を形成するものであり、土木・建築分野においてトップコート用組成物として用いられている公知の組成物を用いることができる。例えば、アクリル系樹脂を含有するアクリル系樹脂組成物が挙げられる。このアクリル系樹脂組成物としては、具体的には、アクリルシリコン樹脂組成物、アクリル樹脂組成物、アクリルウレタン樹脂組成物等が挙げられる。これらのうち、アクリルシリコン樹脂組成物及びアクリルウレタン樹脂組成物が好ましい。
尚、この上塗層用組成物は、水系組成物、有機溶剤系組成物及び無溶剤系組成物のいずれでもよい。
上記上塗層用組成物は、公知の添加剤、例えば、硬化促進剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、増粘剤、着色剤(顔料等)、消泡剤、防かび剤、フィラー(珪砂、ゴムチップ等)等を含有することができる。
上塗層用組成物の固形分濃度は、特に限定されないが、好ましくは20〜100質量%、より好ましくは30〜70質量%である。
上塗層用組成物を用いて得られた硬化膜の伸び率は、JIS A6021−2000 「建築用塗膜防水材 6.3引張性能」に準拠した方法で測定し、温度20℃の条件において、好ましくは30〜400%である。
この上塗層及び上塗層用組成物におけるアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは30℃以下(通常、−100℃以上)であり、より好ましくは27℃以下であり、更に好ましくは25℃以下である。ガラス転移温度が上記範囲内にあると、コンクリートのひび割れに対する追従性に優れ、且つ二酸化炭素を遮蔽することができ、コンクリートの中性化の抑制に優れる。
また、アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、アクリル系樹脂を構成する単体体の既知のTgから、上述の式により算出することができる。
また、上塗層用組成物としては、市販品を用いることができる。この市販品としては、東亞合成社製(商品名)「アロンMDカラ−Si」、東亞合成社製(商品名)「アロンMDカラーU」、東亞合成社製(商品名)「クリアウオールCT−300[上塗用]」等が挙げられる。
上塗層用組成物の基材上面への塗布方法は、特に限定されない。例えば、刷毛、ロール刷毛、レーキ、コテ、及びエアースプレーによる塗布(塗装)等が挙げられる。
また、上塗層用組成物の塗膜を形成させる場合の塗膜の厚さは、乾燥時における上塗層の厚さ(得られる上塗層の膜厚)が、50μm以上、好ましくは60〜700μm、より好ましくは70〜500μmとなるように塗布される。上塗層の膜厚が、上記範囲にあると、コンクリートのひび割れ追従性、及びコンクリートの中性化抑制に優れる。
例えば、上塗層用組成物の塗膜の厚さとしては、好ましくは80〜2000μmであり、より好ましくは100〜1500μmであり、更に好ましくは120〜1000μmである。
また、上塗層用組成物による塗膜の形成は、1層塗りでもよく、2層塗り、3層塗り等の多層塗りでもよく、斑点状のスパッタ塗装であってもよい。
その後、上塗層用組成物からなる塗膜の乾燥が行われ、上塗層(硬化膜)が得られる。乾燥温度は、通常、−10℃〜50℃である。
上塗層の形成において、上塗層用組成物の塗布に要する時間は、通常、1〜5分間/m程度であり、乾燥又は硬化のための放置時間は、通常、0.5〜48時間程度である。
[2]コンクリート構造
本発明のコンクリート構造は、本発明のコンクリートの防食方法により得られたコンクリート構造であって、上記コンクリートからなる基材の上面に、上記下塗層、上記中塗層、及び上記上塗層と、が順次配設されてなることを特徴とする。
このコンクリート構造1は、例えば、図1に示されるように、基材2の上面に、下塗層3、中塗層4、及び上塗層5と、が順次連続的に形成されている。
コンクリート構造1における基材2の材質、並びに下塗層3、中塗層4、及び上塗層5の材質及び膜厚等については、上記コンクリートの防食方法における上記の各々の記載をそのまま適用することができる。また、基材2の表面と下塗層3との間、下塗層3と中塗層4との間、及び中塗層4と上塗層5との間にその他の層を設けることができることについても、上記コンクリートの防食方法の場合と同様である。
コンクリート構造は、コンクリートからなる基材の上面に、下塗層、中塗層、及び上塗層と、が順次配設されていることから、コンクリートのひび割れに対する追従性、及びコンクリートに対する付着性に優れ、並びにコンクリートの中性化の抑制に優れるコンクリート構造とすることができる。
コンクリート構造は、建築物の内外壁を構成するコンクリートからなる基材の上面に、上記の下塗層用組成物を塗布し、その後、乾燥させ、媒体を除去して中塗層を形成し、次いで、下塗層の表面に上記の中塗層用組成物を塗布し、その後、乾燥させ、媒体を除去して中塗層を形成させ、次いで、中塗層の表面に上記の上塗層用組成物を塗布し、その後、乾燥させ、媒体を除去して上塗層を形成することにより、構築することができる。
尚、コンクリート構造における「コンクリート」、「下塗層」、「中塗層」及び「上塗層」については、それぞれ、上記コンクリートの防食方法における「コンクリート」、「下塗層」、「中塗層」及び「上塗層」の説明を適用することができる。
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
下塗層用組成物としては、下記のものを使用した。
(D1):水性プライマー組成物、東亞合成株式会社製、商品名「アロン水性プライマー」(エポキシ樹脂組成物、固形分濃度55%)
(D2):溶剤系プライマー組成物、東亞合成株式会社製、商品名「クリアウオールCP-100[下塗用]」(アクリルウレタン樹脂組成物、固形分58%)
上塗層用組成物としては、下記のものを使用した。
(E1):Tgが20℃であるアクリルシリコン系樹脂(主材)を含有する有機溶剤系組成物、東亞合成株式会社製、商品名「アロンMDカラーSi」(固形分濃度50%)
(E2):Tgが15℃であるアクリルシリコン系樹脂(主材)を含有する有機溶剤系組成物、東亞合成社製、(商品名)「クリアウオールCT−300[上塗用]」(固形分濃度50%)
中塗層用組成物の原料としては、下記のものを使用した。
(1)下記アクリル樹脂Aが水に分散された分散体A(固形分濃度40%)。
(2)下記アクリル樹脂Bが水に分散された分散体B(固形分濃度40%)。
(3)下記アクリル樹脂Cが水に分散された分散体C(固形分濃度40%)。
(1−1)アクリル樹脂Aは、スチレン、アクリル酸2-エチルヘキシル、及びメタクリル酸からなる単量体を重合して得られた共重合体であり、各単量体由来の構成単位の質量割合(スチレン:アクリル酸2−エチルヘキシル:及びメタクリル酸)は、45:50:5である。また、このアクリル樹脂AのTgは−9℃であり、平均粒子径は0.10μmである。
(2−1)アクリル樹脂Bは、メタクリル酸メチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、及びメタクリル酸からなる単量体を重合して得られた共重合体であり、各単量体由来の構成単位の質量割合(メタクリル酸メチル:アクリル酸2-エチルヘキシル:及びメタクリル酸)は、61:34:5である。また、このアクリル樹脂BのTgは、20℃であり、平均粒子径は0.11μmである。
(3−1)アクリル樹脂Cは、スチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、及びメタクリル酸からなる単量体を重合して得られた共重合体であり、各単量体由来の構成単位の質量割合(スチレン:メタクリル酸メチル:アクリル酸2-エチルヘキシル:メタクリル酸)は、45:25:25:5である。また、このアクリル樹脂CのTgは、38℃であり、平均粒子径は0.11μmである。
水膨潤性無機層状珪酸塩(層状珪酸塩)としては、下記のものを使用した。
(1)層状珪酸塩(I):平均粒子径11μm、厚み5nm(アスペクト比約2,200)の合成フッ素ヘクトライト(トピー工業社製(商品名)「NHT−8」)。
(2)層状珪酸塩(II):平均粒子径12μm、厚み5nm(アスペクト比約2,400)の合成フッ素マイカ(トピー工業社製(商品名)「NTS−10」)。
実施例1
(1)下塗層の形成
下記評価方法に従って、コンクリート及びスレートの2種類の基材の表面に、上記下塗層用組成物(D1)「アロン水性プライマー」を、刷毛を用いて塗布し、90μmの厚さ(塗布厚)で塗膜を形成し、その後、20℃で24時間乾燥させて、厚さ40μmの下塗層を形成した。
(2)中塗層の形成
上記アクリル樹脂A分散体、及び層状珪酸塩(I)を混合し中塗層用組成物とした。また、中塗層用組成物における層状珪酸塩(I)の配合量は、アクリル樹脂A分散体に含有されているアクリル樹脂A100部に対して、層状珪酸塩(I)を4.0部とした。そして、上記(1)で形成した下塗層の表面に、上記により得られた中塗層用組成物を、刷毛を用いて塗布し、200μmの厚さ(塗布厚)で塗膜を形成し、その後、20℃で24時間乾燥させて、厚さ75μmの中塗層を形成した。
(3)上塗層の形成
上記(2)で形成した中塗層の表面に、上記上塗層用組成物(E1)「アロンMDカラーSi」を、刷毛を用いて塗布し、300μmの厚さ(塗布厚)で塗膜を形成し、その後、20℃で24時間乾燥させて、厚さ150μmの上塗層を形成し、試験体(コンクリート構造)を作製した。
実施例2
実施例1における中塗層の厚さ75μmに代えて、中塗層の厚さが150μmとなるように中塗層用組成物による塗膜を形成させた以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。実施例2における下塗層、中塗層及び上塗層の厚さ(膜厚)は、それぞれ、40μm、150μm及び150μmであった。
実施例3
実施例1で使用した中塗層用組成物における層状珪酸塩(I)の配合量を、アクリル樹脂A100部に対して4.0部に代えて、アクリル樹脂A100部に対して6.0部とした以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。実施例3における下塗層、中塗層及び上塗層の厚さ(膜厚)は、それぞれ、40μm、75μm及び150μmであった。
実施例4
実施例1で使用した中塗層用組成物における層状珪酸塩(I)の配合量を、アクリル樹脂A100部に対して4.0部に代えて、アクリル樹脂A100部に対して10.0部とした以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。実施例4における下塗層、中塗層及び上塗層の厚さ(膜厚)は、それぞれ、40μm、75μm及び150μmであった。
実施例5
実施例1で使用した中塗層用組成物に代えて、上記アクリル樹脂B分散体、及び層状珪酸塩(I)を混合し中塗層用組成物とし、この中塗層用組成物における層状珪酸塩(I)の配合量をアクリル樹脂B分散体に含有されているアクリル樹脂B100部に対して4.0部とした中塗層用組成物とした以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。実施例5における下塗層、中塗層及び上塗層の厚さ(膜厚)は、それぞれ、40μm、75μm及び150μmであった。
実施例6
実施例1で使用した中塗層用組成物に代えて、上記アクリル樹脂A分散体、層状珪酸塩(II)を混合し中塗層用組成物とし、この中塗層用組成物における層状珪酸塩(II)の配合量をアクリル樹脂A分散体に含有されているアクリル樹脂B100部に対して4.0部とした中塗層用組成物とした以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。実施例6における下塗層、中塗層及び上塗層の厚さ(膜厚)は、それぞれ、40μm、75μm及び150μmであった。
実施例7
実施例1で使用した下塗層用組成物(D1)に代えて、下塗層用組成物(D2)「クリアウオールCP−100[下塗用]」を使用し、また上塗層用組成物(E1)に代えて、上塗層用組成物(E2)「クリアウオールCT−300[上塗用]」を使用した以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。実施例7における下塗層、中塗層及び上塗層の厚さ(膜厚)は、それぞれ、40μm、75μm及び150μmであった。
以上、実施例1〜7に使用した下塗層用組成物、中塗層用組成物、上塗層用組成物、水膨潤性合成無機層状珪酸塩の含有量、並びに、下塗層、中塗層及び上塗層の各膜厚を表1に記載する。
Figure 2011020891
比較例1
下塗層用組成物により塗膜を形成させないことにより、実施例1で形成させた下塗層を形成させず、基材(コンクリート、及びスレート)の表面に中塗層を形成させ、更に、中塗層の厚さ75μmに代えて、中塗層の厚さが20μmとなるように中塗層用組成物による塗膜を形成させた以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。比較例1における中塗層及び上塗層の厚さ(膜厚)は、それぞれ、20μm及び40μmであった。
比較例2
実施例1における中塗層の厚さ75μmに代えて、中塗層の厚さが20μmとなるように中塗層用組成物による塗膜を形成させ、更に、上塗層の厚さ150μmに代えて、上塗層の厚さが40μmとなるように上塗層用組成物による塗膜を形成させた以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。比較例2における下塗層、中塗層及び上塗層の厚さ(膜厚)は、それぞれ、40μm、20μm及び40μmであった。
比較例3
下塗層用組成物により塗膜を形成させないことにより、実施例1で形成させた下塗層を形成させず、基材(コンクリート、及びスレート)の表面に中塗層を形成させ、更に、実施例1で使用した中塗層用組成物における層状珪酸塩(I)の配合量を、アクリル樹脂A100部に対して4.0部に代えて、アクリル樹脂A100部に対して0.1部とした以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。比較例3における中塗層及び上塗層の厚さ(膜厚)は、それぞれ、75μm及び150μmであった。
比較例4
下塗層用組成物により塗膜を形成させないことにより、実施例1で形成させた下塗層を形成させず、基材(コンクリート、及びスレート)の表面に中塗層を形成させ、更に、実施例1で使用した中塗層用組成物に代えて、上記アクリル樹脂C分散体、及び層状珪酸塩(I)を混合し中塗層用組成物とし、この中塗層用組成物における層状珪酸塩(I)の配合量をアクリル樹脂C分散体に含有されているアクリル樹脂C100部に対して4.0部とした中塗層用組成物とした以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。比較例4における中塗層及び上塗層の厚さ(膜厚)は、それぞれ、75μm及び150μmであった。
以上、比較例1〜4に使用した下塗層用組成物、中塗層用組成物、上塗層用組成物、水膨潤性合成無機層状珪酸塩の含有量、並びに、下塗層、中塗層及び上塗層の各膜厚を表2に記載する。
Figure 2011020891
上記のようにして得られた試験体を用いて以下の評価方法に従って、コンクリートの中性化抑制、ひび割れ追従性及び付着性を評価した。実施例1〜7及び比較例1〜4における下記評価の評価結果を表1及び表2併記する。
(1)コンクリートの中性化抑制評価
JIS A 1153に準じて作成したコンクリート表面に、上記実施例1〜7及び比較例1〜4により、2〜3層の硬化膜を形成させたコンクリートの試験体を用いて、コンクリートの中性化抑制効果の評価をした。上記により得られた試験体を、温度20±2℃、相対湿度60±5%、二酸化炭素濃度5±0.2%の環境下で26週放置した。そして、上記条件で26週放置された試験体を、3層の硬化膜が形成されたコンクリート表面に対して、垂直に切断した。その切断面に、95%エタノール90mlにフェノールフタレイン1gを溶かして、100mlとしたフェーノール溶液を試吹きかけ、コンクリート表面から紫色に変色しなかった部分の長さを測定した。その長さ(コンクリート表面からの深さ)を中性化がされた深さとして、コンクリートの中性化抑制の評価とした。この中性化された深さ(中性化深さ)が小さいほど中性化が抑制されたことを示す。
(2)ひび割れ追従性評価
スレート板表面に上記実施例1〜7及び比較例1〜4により、2〜3層の硬化膜を形成させたスレートの試験体を用いて、硬化膜のひび割れ追従性の評価をした。上記により得られた試験体が有する、硬化膜(2層又は3層の硬化膜)について、50mm×50mm(縦×横)の大きさで正方形に切り込みを入れた。その後、切り込まれた50mm×50mmの正方形の硬化膜の中心部分であって、被膜が形成されていないスレートの裏側のスレート板に対し切り込みを入れた。そして、スレート板の裏側の切り込み部分について、スレート板のみが、折り離されるように、スレート板を折ることにより、スレート板のみが切り込み部分で折り離されたものを作製した。これを、「ポリマーセメント系塗膜防水工事施工指針(案)・同解説(日本建築学会)」に準じて両端を5mm/minで引っ張り、塗膜が最初に破断したときの長さをひび割れ追従幅とし、ひび割れ追従性の評価をした。このひび割れ追従幅が大きいものほどひび割れ追従性に優れていることを示す。
(3)付着性評価
スレート板表面に上記実施例1〜7及び比較例1〜4により、2〜3層の硬化膜を形成させたスレートの試験体を用いて、硬化膜の付着性の評価をした。上記により得られた試験体を、水温23℃の水中に7日間浸漬した後、JIS K 5600−5−6(付着性、クロスカット法)に準じて、付着性試験を行った。硬化膜に対するクロスカットは縦横2mm間隔で25個の四角(正方形)を作成し、クロスカットされた硬化膜に対して、セロテープ(登録商標)を付着させて、セロテープ(登録商標)に付着させた硬化膜の剥離を行い、剥がれた硬化膜の個数を測定し、付着性の評価をした。剥がれが無い場合は25/25であり、全て剥がれた場合は0/25である。剥がれが少ないものほど付着性に優れていることを示す。
表1及び表2のより、下塗層、中塗層及び上塗層の3層が配設され、更に中塗層に含有される樹脂のTgが20℃以下であり、且つ水膨潤性合成無機層状珪酸塩を1〜50質量部含有する実施例1〜7は、いずれも中性化深さが小さく(5.8mm以下)、コンクリートの中性化抑制に優れていることが分かる。また、実施例1〜7は、ひび割れ追従性が大きく(0.7mm以上)、コンクリートのひび割れ追従性に優れていることが分かる。更に、実施例1〜7は、付着性に優れ(全て25/25)、コンクリートの表面に密着し、二酸化炭素に対する遮蔽性に優れていることが分かる。
一方、下塗層が配設されていない、比較例1、3及び4では、付着性が劣っている。
また、中塗層の厚さが、50μm以下である比較例1及び2では、中性化深さが大きく(12.0mm以上)、コンクリートの中性化抑制に劣っていることが分かる。
また、比較例3では、中塗層の厚さが、50μm以上であるが、水膨潤性合成無機層状珪酸塩の含有量が0.1部と少ないため、中性化深さが大きく(12.0mm以上)、コンクリートの中性化抑制に劣っていることが分かる。
1;コンクリートの防食方法が施されたコンクリート構造、2;基材、3;下塗層、4;中塗層、5;上塗層。

Claims (5)

  1. コンクリートからなる基材の表面に下塗層、中塗層、及び上塗層を順次配設するコンクリートの防食方法であって、
    上記中塗層は、ガラス転移温度が20℃以下のアクリル系樹脂と、水膨潤性合成無機層状珪酸塩と、を含有する中塗層用組成物を用いて、乾燥時の膜厚が50μm以上となるように形成され、
    上記水膨潤性合成無機層状珪酸塩の含有量は、上記アクリル系樹脂の質量を100質量部としたときに、1〜50質量部であることを特徴とするコンクリートの防食方法。
  2. 上記上塗層は、ガラス転移温度が30℃以下の樹脂を含有する上塗層用組成物から形成される請求項1に記載のコンクリートの防食方法。
  3. 上記上塗層の膜厚は、50μm以上である請求項1又は2に記載のコンクリートの防食方法。
  4. 上記水膨潤性合成無機層状珪酸塩は、合成フッ素ヘクトライト、及び合成フッ素マイカから選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至3のいずれかに記載のコンクリートの防食方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載のコンクリートの防食方法により得られたコンクリート構造であって、
    上記コンクリートからなる基材の表面に、上記下塗層、上記中塗層、及び上記上塗層と、が順次配設されてなることを特徴とするコンクリート構造。
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