JP2013158678A - 排ガス浄化フィルタ及びその製造方法 - Google Patents

排ガス浄化フィルタ及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】隔壁に捕集されたパティキュレートを効率良く燃焼除去することができる排ガス浄化フィルタ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】ハニカム体基材と、その少なくとも隔壁21に担持された炭素系物質燃焼触媒3とを有する排ガス浄化フィルタ及びその製造方法である。排ガス浄化フィルタにおいては、排ガスが流入する流入セルに面する隔壁21の壁面213上及びこの壁面213から壁厚の半分の深さa/2までの領域に、ハニカム体基材に担持された炭素系物質燃焼触媒3の総重量の80%以上が担持されている。
【選択図】図3

Description

本発明は、ハニカム体基材と、該ハニカム体基材に担持された炭素系物質燃焼触媒とを有する排ガス浄化フィルタ及びその製造方法に関する。
に関する。
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中のパティキュレート(以下、適宜、PMという)を捕集して排ガスの浄化を行う排ガス浄化フィルタが知られている。このような排ガス浄化フィルタとしては、例えば、ハニカム体基材に、PMの燃焼を促進する炭素系物質燃焼触媒を担持したものが用いられる。ハニカム体基材としては、格子状に配設された多孔質の隔壁と、その隔壁に囲まれて軸方向に形成された複数のセルとを有し、これらのセルのうち、排ガスが流入する流入セルの下流側の端部と排ガスを排出する排出セルの上流側の端部とが栓部により閉塞されたものが用いられている。例えば特許文献1には、炭化珪素を主成分とし、さらに焼結助剤を含有するハニカム体基材が示されている。
上記構成の排ガス浄化フィルタにおいては、排ガスが流入セルに流入し、多孔質の隔壁を通過した後、排出セルから排出される。このとき、排ガス中のPMが多数の細孔を有する隔壁に捕集されることにより、排ガスが浄化される。また、隔壁に捕集されたPMは、所定のタイミングで燃焼除去される。このとき、上述のようにPMの燃焼を促進する炭素系物質燃焼触媒を隔壁に担持させておくことにより、触媒反応によって隔壁に捕集されたPMを効率よく燃焼させ、除去することができる。
上記排ガス浄化フィルタは、例えば次のようにして作製される。
まず、炭素系物質燃焼触媒を水等の液体に分散させて触媒スラリーを作製する。そして、該触媒スラリーに上記ハニカム体基材を浸漬する。これにより、上記ハニカム体基材の多孔質の隔壁に上記触媒スラリーを含浸させることができる。次いで、上記触媒スラリーが含浸された上記ハニカム体基材を乾燥し、加熱する。これにより、上記炭素系物質燃焼触媒が上記ハニカム体基材に担持され、上記排ガス浄化フィルタを得ることができる。
国際公開WO2006/035645号パンフレット
上記排ガス浄化フィルタにおいて、PMを含んだ排ガスは、上記流入セル側から導入されて多孔質の上記隔壁を通過するため、PMの多くは上記隔壁の上記流入セル側に捕集される。また、上記隔壁に捕集されたPMの燃焼時にも、高温の排ガスが上記流入セル側から導入される。そのため、PMの燃焼は、上記排出セル側よりも上記流入セル側においてより活発に進行する。
しかしながら、従来の排ガス浄化フィルタにおいては、上記ハニカム体基材の上記隔壁の全体にわたって均一に上記炭素系物質燃焼触媒が担持されていた。そのため、多量の炭素系物質燃焼触媒が求められる上記隔壁の上記流入セル側においては触媒量が不十分となるおそれがあり、上記隔壁の排出セル側においては必要以上に多量の炭素系物質燃焼触媒が担持されていた。したがって、従来の排ガス浄化フィルタにおいては、炭素系物質燃焼触媒の総担持量を十分にPMの燃焼性能に生かすことができなかった。そこで、より効率良くPMの燃焼を行うことができる排ガス浄化フィルタの開発が求められていた。
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであって、隔壁に捕集されたパティキュレートを効率良く燃焼除去することができる排ガス浄化フィルタ及びその製造方法を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、格子状に配設された多孔質の隔壁と該隔壁に囲まれて軸方向に伸びる複数のセルとを有する柱状のハニカム体基材と、該ハニカム体基材の少なくとも上記隔壁に担持された炭素系物質燃焼触媒とを有する排ガス浄化フィルタにおいて、
上記ハニカム体基材における複数の上記セルのうち、排ガスが流入する流入セルの下流側の端部と排ガスを排出する排出セルの上流側の端部とは、栓部により閉塞されており、
上記流入セルに面する上記隔壁の壁面上及び上記流入セルに面する上記壁面から壁厚の半分の深さまでの領域に、上記ハニカム体基材に担持された上記炭素系物質燃焼触媒の総重量の80%以上が担持されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタにある(請求項1)。
本発明の他の態様は、格子状に配設された多孔質の隔壁と該隔壁に囲まれて軸方向に伸びる複数のセルとを有する柱状のハニカム体基材と、該ハニカム体基材の少なくとも上記隔壁に担持された炭素系物質燃焼触媒とを有する排ガス浄化フィルタの製造方法において、
上記ハニカム体基材における複数の上記セルのうち、排ガスが流入する流入セルの下流側の端部と排ガスを排出する排出セルの上流側の端部とが栓部により閉塞された上記ハニカム体基材を準備し、該ハニカム体基材を、上記炭素系物質燃焼触媒を含有していない液体に浸漬し、該液体を上記隔壁の細孔内に含浸させる液体含浸工程と、
該液体含浸工程後の上記ハニカム体基材を、上記炭素系物質燃焼触媒を含有する触媒スラリーに浸漬し、該触媒スラリーを上記ハニカム体基材の少なくとも上記隔壁に付着させる触媒スラリー浸漬工程と、
上記流入セルの上流側の端面に気体を吹き付けると共に、上記排出セルの下流側の端面から吸引を行うことにより、上記流入セルに面する上記隔壁の表面及び上記流入セルに面する上記隔壁の壁面から壁厚の半分の深さまでの領域において上記隔壁の上記細孔内に上記触媒スラリーを含浸させると共に、上記排出セルに面する上記隔壁の壁面から壁厚の半分の深さまでの領域において上記隔壁の上記細孔内に存在する上記液体及び上記排出セルに面する上記隔壁に付着する上記触媒スラリーを少なくとも部分的に除去する触媒含浸工程と、
該触媒含浸工程後の上記ハニカム体基材を加熱し、上記炭素系物質燃焼触媒を上記ハニカム体基材の上記隔壁に担持させる加熱工程とを有することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法にある(請求項4)。
上記排ガス浄化フィルタにおいては、上記隔壁の全体にわたって均一に上記炭素系物質燃焼触媒が担持されているのではなく、上記隔壁における上記流入セル側により多くの炭素系物質燃焼触媒が偏って担持されている。即ち、上記のごとく、上記流入セルに面する壁面上及び上記流入セルに面する上記壁面から壁厚の半分の深さまでの領域に、上記ハニカム体基材に担持された上記炭素系物質燃焼触媒の総重量の80%以上が担持されている。そのため、PMの堆積が起こり易く、より活発にPMの燃焼が起こる上記流入セル側において、十分にPMの燃焼除去を行うことができる。一方、PMの燃焼に影響の少ない排出セル側においては、炭素系物質燃焼触媒の担持量を少なくすることができる。したがって、上記排ガス浄化フィルタにおいては、触媒の総担持量を増やすことなく、効率的にPMの燃焼除去を行うことが可能になる。
上記排ガス浄化フィルタの製造方法においては、上記液体含浸工程と、上記触媒スラリー浸漬工程と、上記触媒含浸工程と、上記加熱工程とを行う。
上記液体含浸工程においては、上記炭素系物質燃焼触媒を含有していない液体に上記ハニカム体基材を浸漬する。これにより、上記ハニカム体基材の上記隔壁の細孔内に上記液体を含浸させる。
次いで、上記触媒スラリー浸漬工程においては、上記炭素系物質燃焼触媒を含有する触媒スラリーに上記ハニカム体基材を浸漬する。これにより、上記触媒スラリーを上記ハニカム体基材の少なくとも上記隔壁の表面に付着させることができる。上記液体含浸工程を行った後の上記ハニカム体基材においては、上記隔壁における上記排出セル側の細孔内には上記液体が存在し、細孔を塞いでいる。したがって、上記液体含浸工程後に上記触媒スラリー浸漬工程を行うと、上記隔壁の細孔内への上記触媒スラリーの浸入が抑制され、上記のごとく、上記触媒スラリーの大部分は上記隔壁の表面に付着する。
次に、上記触媒含浸工程においては、上記流入セルの上流側の端面に気体を吹き付けると共に、上記排出セルの下流側の端面から吸引を行う。これにより、上記流入セルに面する上記隔壁の表面及び上記流入セルに面する上記隔壁の壁面から壁厚の半分の深さまでの領域において上記隔壁の上記細孔内に上記触媒スラリーを含浸させると共に、上記排出セルに面する上記隔壁の壁面から壁厚の半分の深さまでの領域において上記隔壁の上記細孔内に存在する上記液体及び上記排出セルに面する上記隔壁に付着する上記触媒スラリーを少なくとも部分的に除去する。
次に、上記加熱工程においては、上記ハニカム体基材を加熱する。これにより、上記ハニカム体基材の上記隔壁に含浸された上記触媒スラリー中の上記炭素系物質燃焼触媒を上記隔壁に担持させることができる。上記触媒含浸工程においては、上記触媒スラリーを上記隔壁の上記流入セル側に偏るように含浸させている。そのため、上記加熱工程後においては、上記炭素系物質燃焼触媒を上記隔壁の上記流入セル側に偏って担持させることができる。
上記製造方法によって得られる上記排ガス浄化フィルタは、効率的に炭素系物質燃焼触媒の燃焼除去を行うことができる。
実施例1における、排ガス浄化フィルタの外観を示す説明図。 実施例1における、排ガス浄化フィルタの軸方向の断面構造を示す説明図。 実施例1における、排ガス浄化フィルタの隔壁の拡大断面を示す説明図。 実施例1における、ハニカム体基材の軸方向の断面構造を示す説明図。 実施例1における、ハニカム体基材を液体に浸漬する様子を示す説明図。 実施例1における、液体を含浸させたハニカム体基材の隔壁の拡大断面を示す説明図。 実施例1における、ハニカム体基材を触媒スラリーに浸漬する様子を示す説明図。 実施例1における、触媒スラリーを隔壁の表面に付着させたハニカム体基材の隔壁の拡大断面を示す説明図。 実施例1における、触媒含浸工程後のハニカム体基材の隔壁の拡大断面を示す説明図。 複数のハニカム体基材を側面において接合する様子を示す説明図。 複数のハニカム体基材を側面において接合した接合型のハニカム基材に炭素系物質燃焼触媒が担持された接合型の排ガス浄化フィルタの外観を示す説明図。
次に、本発明の好ましい実施形態について説明する。
上記排ガス浄化フィルタは、上記ハニカム体基材と上記炭素系物質燃焼触媒とを有する。上記ハニカム体基材の外形は、円柱状又は角柱状などにすることができる。
また、上記排ガス浄化フィルタは、そのまま排ガス浄化用に使用することもできるが、炭素系物質燃焼触媒を隔壁に担持した複数のハニカム体基材を側面同士で接合した接合型として用いることができる。
上記排ガス浄化フィルタにおいては、上記流入セルに面する上記隔壁の壁面上及び上記流入セルに面する上記壁面から壁厚の半分の深さまでの領域(以下、適宜「流入セル側領域」という)に、上記ハニカム体基材に担持された上記炭素系物質燃焼触媒の総重量の80%以上が担持されている。
上記隔壁の上記流入セル側領域に担持された炭素系物質燃焼触媒の量が、上記ハニカム体に担持された炭素系物質燃焼触媒の総重量の80%未満の場合には、PMの燃焼にあまり寄与しない触媒量が多くなり、触媒担持量の割には効率良くPMの燃焼を行うことができなくなるおそれがある。
上記ハニカム体に担持された触媒の総重量に対する上記流入セル側領域に担持された触媒量(重量)の割合は、次のようにして調べることができる。
即ち、電子線マイクロアナライザ(EPMA、Electron Probe Micro Analyzer)を用いて壁面を元素マッピングする。そして、触媒を構成する元素から得られる特性X線の総強度に対する流入セル側領域の特性X線強度割合を調べる。
上記ハニカム体基材は、例えばα−アルミナ、コージェライト、SiC、チタン酸アルミニウム等により構成することができる。
好ましくは、上記ハニカム体基材の少なくとも上記隔壁はαアルミナを主成分とし、上記炭素物質燃焼触媒は、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源とゼオライトとの混合物、又はソーダライトを温度600℃以上で焼成してなるアルカリ触媒であることが好ましい(請求項2、請求項5)。
この場合には、上記アルカリ触媒からなる上記炭素物質燃焼触媒がPMに対して優れた燃焼促進特性を示すと共に、該炭素系物質燃焼触媒が上記ハニカム体基材の上記隔壁の材質(αアルミナ)と高温において反応することを防止することができる。そのため、上記炭素系物質燃焼触媒の活性が低下してしまうことを抑制し、安定に排ガスの浄化を行うことが可能になる。また、上記アルカリ触媒からなる上記炭素系物質燃焼触媒は、水分存在下においても、アルカリが溶出し難く、触媒活性が低下し難くなる。
また、上記排ガス浄化フィルタにおいて、上記ハニカム体基材には、不可避的不純物を除き貴金属が担持されていないことが好ましい。
上記ハニカム体基材においては、上記隔壁だけでなく、上記ハニカム体基材の全体がαアルミナを主成分とすることが好ましい。
α−アルミナを主成分とする上記ハニカム体基材を作製する際には、使用するα−アルミナ自体に不可避不純物が混入していたり、後述のごとくアルカリ土類金属の酸化物等の添加剤を添加したりすることができる。この場合には、上記ハニカム体基材の隔壁又はハニカム体基材の全体は、99.0wt%以上がαアルミナからなることが好ましい。より好ましくは99.6wt%以上、さらに好ましくは99.7wt%以上、さらにより好ましくは99.8wt%以上がαアルミナからなることがよい。
上記隔壁は、αアルミナ100質量部に対して、アルカリ土類金属の酸化物を0.03〜0.4質量部含有することが好ましい。
この場合には、上記ハニカム体基材の強度を向上させることができる。アルカリ土類金属の酸化物の含有量が少なすぎる場合には、その添加による強度の向上効果が十分に得られなくなるおそれがある。したがって、アルカリ土類金属の酸化物の含有量は、上述のごとく0.03質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。一方、アルカリ土類金属の酸化物の含有量が多すぎる場合には、上記ハニカム体基材の強度がかえって低下するおそれがある。したがって、アルカリ土類金属の酸化物の含有量は、上述のごとく0.4質量部以下が好ましく、0.3質量部以下がより好ましく、0.2質量部以下がさらに好ましい。
上記アルカリ土類金属の酸化物としては、1種又は2種以上を用いることができる。
好ましくは、上記アルカリ土類金属は、少なくともMg及び/又はCaであることがよい。この場合には、上記アルカリ土類金属の酸化物を含有することによる上述の強度の向上効果をより顕著に得ることができる。
次に、上記ハニカム体基材は、多孔質であり、好ましくは気孔率が40〜70%で、平均細孔径が10〜20μmで、A軸強度が2MPa以上であることがよい(請求項3、請求項6)。
気孔率が40%未満の場合又は平均細孔径が10μm未満の場合には、上記ハニカム体基材の圧力損失が増大してしまうおそれがある。一方、気孔率が70%を超える場合には、上記ハニカム体基材の強度を十分に確保することが困難になるおそれがある。また、平均細孔径が20μmを超える場合には、上記ハニカム体基材をPMがすり抜けやすくなり、PMを十分に捕集することが困難になるおそれがある。上記ハニカム体基材の気孔率は、50〜60%であることがより好ましく、平均細孔径は12〜18μmであることがより好ましい。
また、A軸強度が2MPa未満の場合には、上記排ガス浄化フィルタのDPFコンバータへのキャニング、即ち、上記排ガス浄化フィルタのケースへの収容時に、ハニカム体基材に破損が起こり易くなるおそれがある。また、熱衝撃割れが発生し易くなるおそれがある。より好ましくは、A軸強度は4MPa以上であることがよい。
上記ハニカム体基材の気孔率及び平均細孔径は、水銀圧入法の原理に基づいた水銀ポロシメータにより測定することができる。平均細孔径は、水銀ポロシメータで求めた細孔分布における積算値50%での細孔径である。
また、上記ハニカム体基材のA軸強度は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格であるJASO規格M505−87に規定されている圧縮強度を示す。ハニカム体基材の流路方向、すなわち横断面に対して垂直方向に圧縮荷重を負荷したときの破壊強度である。
α−アルミナを主成分とする上記ハニカム体基材は、下記の混合工程と成形工程と焼成工程とを行うことにより製造することができる。
上記混合工程においては、粗大粒子と微細粒子とαアルミナ前駆体粒子と有機バインダと水とを混合して原料混合物からなる坏土を作製する。
上記粗大粒子は、αアルミナからなるメジアン径20〜60μmの粒子である。粗大粒子のメジアン径が20μm未満の場合又は60μmを超える場合には、ハニカム体基材の平均細孔径が小さくなりすぎて、ハニカム体基材の圧力損失が増大するおそれがある。上記粗大粒子のメジアン径は25〜55μmが好ましく、30〜50μmがより好ましい。
また、上記微細粒子は、αアルミナからなるメジアン径2μm以下の粒子である。微細粒子のメジアン径が2μmを超える場合には、後述の焼成工程におけるαアルミナの焼結が不十分となり、上記ハニカム体基材の強度が不十分になるおそれがある。上記微細粒子のメジアン径は1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。また、原料コストが高くなるという観点から、上記微細粒子のメジアン径は、0.05μm以上であることが好ましい。
メジアン径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
また、上記αアルミナ前駆体粒子は、焼成後にαアルミナを生成する物質からなる。具体的には、例えば、水酸化アルミニウム、γアルミナ、θアルミナ、塩化アルミニウム、及び水素化アルミニウム等を用いることができる。これらの物質のうち1種又は2種以上を用いることができる。好ましくは、上記αアルミナ前駆体粒子は、水酸化アルミニウムからなることがよい。
また、上記αアルミナ前駆体粒子としては、例えばメジアン径が1〜10μmのものを用いることができる。
上記混合工程においては、上記粗大粒子100質量部に対して、上記微細粒子を5〜30質量部、及び上記αアルミナ前駆体粒子を0.5〜15質量部混合することが好ましい。
上記微細粒子が5質量部未満の場合又は上記αアルミナ前駆体粒子が0.5質量部未満の場合には、後述の焼成工程におけるαアルミナの焼結が不十分となり、気孔率を高くして作製した上記ハニカム体基材の強度が不十分になるおそれがある。一方、上記微細粒子が30質量部を超える場合には、上記ハニカム体基材の平均細孔径が小さくなりすぎて、上記ハニカム体基材の圧力損失が増大してしまうおそれがある。また、上記αアルミナ前駆体粒子が15質量部を超える場合には、上記ハニカム体基材の平均細孔径が小さくなりすぎて、上記ハニカム体基材の圧力損失が増大してしまうおそれがある。より好ましくは、上記粗大粒子100質量部に対する上記微細粒子の添加量は8〜20質量部であることがよく、上記αアルミナ前駆体粒子の添加量は1〜10質量部であることがよい。
上記混合工程においては、上記粗大粒子と、上記微細粒子と、上記αアルミナ前駆体とを水等の分散媒中で混合し、粘土状の原料混合物からなる坏土を作製する。後述の成形工程において、所望の形状に成形し易くするために、上記原料混合物には上記有機バインダを混合し、所望の粘度に調整することができる。
また、上記混合工程においては、上記原料混合物にアルカリ土類金属をさらに添加し、該アルカリ土類金属の添加量は、上記粗大粒子と上記微細粒子と上記αアルミナ前駆体粒子との合計100質量部に対して、アルカリ土類金属の酸化物換算量で、0.03〜0.4質量部であることが好ましい。
この場合には、上記アルカリ土類金属が焼結助剤としての役割を果たし、後述の焼成工程後に得られる上記ハニカム体基材の強度を向上させることができる。アルカリ土類金属の添加量が少なすぎたり多すぎたりする場合には、強度の向上効果が十分に得られなくなるおそれがある。上記アルカリ土類金属の添加量は、0.1質量部以上、0.3質量部以下がより好ましい。さらに好ましくは0.2質量部以下がよい。なお、上記混合工程において添加したアルカリ土類金属は、アルカリ土類金属の酸化物として、焼成後のハニカム体基材に含有される。
上記原料混合物に添加するアルカリ土類金属としては、アルカリ土類金属から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。好ましくは、上記アルカリ土類金属は、少なくともMg及び/又はCaであることがよい。
この場合には、上記アルカリ土類金属の酸化物を含有することによる上述のハニカム体基材の強度の向上効果をより顕著に得ることができる。
また、上記混合工程において添加する上記アルカリ土類金属は、アルカリ土類金属の酸化物、酸化物以外の化合物、又は塩等として、上記原料混合物に添加することができる。
好ましくは、上記混合工程においては、上記アルカリ土類金属として、アルカリ土類金属の塩を添加することが好ましい。
この場合には、上記坏土中において、上記アルカリ土類金属を均一に分散させることができる。そのため、後述の焼成工程において成形体の焼成を均一に進行させることができ、焼成工程後に得られるハニカム体基材の強度のばらつきを小さくすることができる。それ故、上記ハニカム体基材全体の強度を向上させることができる。アルカリ土類金属の塩としては、硝酸塩、酢酸塩などを用いることが好ましい。
また、上記アルカリ土類金属の塩は、水溶液として上記原料混合物に添加することができる。この場合には、上記坏土中におけるアルカリ土類金属の分散性をより一層向上させることができる。
上記成形工程においては、上記坏土を上記ハニカム体基材の形状に成形してハニカム成形体を得る。このとき、格子状に配設された隔壁と、該隔壁に囲まれて軸方向に伸びる複数のセルとを有するハニカム形状に成形する。
上記焼成工程においては、上記ハニカム成形体を焼成する。
上記焼成工程においては、焼成最高温度1200〜2000℃で焼成を行うことが好ましい。
上記焼成最高温度が1200℃未満の場合には、αアルミナの焼結が十分に進行せず、上記ハニカム体基材の強度を十分に確保することが困難になるおそれがある。一方、2000℃を超える場合には、αアルミナが軟化或いは溶融し、上記ハニカム体基材の所望の平均細孔径及び気孔率を確保することが困難になるおそれがある。
上記焼成工程においては、昇温時における温度1200℃未満において雰囲気ガスの酸素濃度を5体積%以下に調整することが好ましい。
温度1200℃未満における酸素濃度が5体積%を超える場合には、αアルミナが焼結を開始する温度1200℃よりも低い温度で、上記粗大粒子、上記微細粒子、及び上記αアルミナ前駆体粒子を保持する有機バインダが燃焼してしまうおそれがある。そのため、上記ハニカム成形体の構造を、焼成後に保持させることが困難になるおそれがある。
また、上記ハニカム体基材の複数のセルのうち、排ガスが流入する流入セルの下流側の端部と排ガスを排出する排出セルの上流側の端部とを栓部により閉塞させる場合には、例えば上記焼成工程後に栓部を形成することができる。栓部は、例えばシリカ−アルミナ複合材料により形成することができる。また、上記焼成工程を行う前の上記ハニカム成形体に対して、栓部を形成することもできる。
ハニカム体基材は、外形を略円柱状にすることができる。
上記成形工程において、略円柱状の最終製品と同形状のハニカム成形体を成形し、上記焼成工程においてハニカム成形体を焼成することにより、最終製品のハニカム体基材を得ることもできる。一方、成形工程においては、四角柱状のハニカム成形体を成形し、焼成を行い、四角柱状のハニカム体基材を複数作製し、これらを接合し、外形を研磨することにより略円柱形状の接合型のハニカム体基材とすることもできる。
次に、上記ハニカム体基材と、該ハニカム体基材の隔壁に担持された炭素系物質燃焼触媒とを有する上記排ガス浄化フィルタの製造方法について説明する。
上記排ガス浄化フィルタの製造方法においては、液体含浸工程と、触媒スラリー浸漬工程と、触媒含浸工程と、加熱工程とを行う。
上記液体含浸工程においては、上記炭素系物質燃焼触媒を含有していない液体に上記ハニカム体基材を浸漬する。これにより、上記ハニカム体基材の上記隔壁の細孔内に上記液体を含浸させる。上記液体としては、例えば水を用いることができる。
上記触媒スラリー浸漬工程においては、上記液体含浸工程後の上記ハニカム体基材を、上記炭素系物質燃焼触媒を含有する触媒スラリーに浸漬する。
上記液体含浸工程を行った後の上記ハニカム体基材においては、上記隔壁の細孔内に上記液体が存在し、細孔を塞いでいる。したがって、上記触媒スラリー浸漬工程を行うと、上記隔壁の細孔内への上記触媒スラリーの浸入が抑制され、少なくとも上記隔壁の表面に上記触媒スラリーを付着させることができる。
上記触媒スラリーは、上記炭素系物質燃焼触媒を水等の液体に分散させることにより作製することができる。また、上記触媒スラリーには、上記炭素系物質燃焼触媒の他に、アルミナゾルなどの無機バインダ及び分散材等を添加することができる。
上記触媒含浸工程においては、上記流入セルの上流側の端面に気体を吹き付けると共に、上記排出セルの下流側の端面から吸引を行う。これにより、上記流入セルに面する上記隔壁の表面及び上記流入セルに面する上記隔壁の壁面から壁厚の半分の深さまでの領域において上記隔壁の上記細孔内に上記触媒スラリーを含浸させる。一方、上記流入セルに面する上記隔壁の壁面から壁厚の半分を超える深さの領域、換言すれば、上記排出セルに面する上記隔壁の壁面から壁厚の半分の深さまでの領域(以下、適宜「排出セル側領域」という)において上記隔壁の上記細孔内に存在する上記液体及び上記隔壁に付着する上記触媒スラリーを少なくとも部分的に除去する。
上記触媒含浸工程において、上記気体としては、室温の例えば空気や窒素ガスなどの不活性ガスを用いることができる。
上記触媒含浸工程においては、吸引側の上記端面における気体の流速(風速)を5〜80m/sにすることが好ましい(請求項7)。
流速が5m/s未満の場合には、上記流入セル側だけでなく上記排出セル側においても上記液体の残留量が多くなりすぎてしまうおそれがある。その結果、十分量の炭素系物質燃焼触媒を上記流入セル側に偏らせて担持させることが困難になるおそれがある。また、隔壁全体にわたっても、十分量の炭素系物質燃焼触媒を担持させることが困難になるおそれがある。一方、流速が80m/sを超える場合には、上記排出セル側だけでなく上記流入セル側においても上記触媒スラリーがほとんど除去されてしまうおそれがある。その結果、十分量の炭素系物質燃焼触媒を上記流入セル側に偏らせて担持させることが困難になるおそれがある。
次に、上記加熱工程においては、触媒含浸工程後の上記ハニカム体基材を加熱することにより、上記炭素系物質燃焼触媒を上記ハニカム体基材の上記隔壁に担持させる。
加熱は、例えば温度300〜800℃で行うことができる。
また、上記触媒含浸工程と上記加熱工程との間に、上記ハニカム体基材を乾燥させる乾燥工程を行うことができる。
(実施例1)
次に、図面を用いて排ガス浄化フィルタの実施例について説明する。
図1及び図2に示すごとく、本例の排ガス浄化フィルタ1は、四角形格子状に配設された隔壁21と隔壁21に囲まれて軸方向に伸びる複数のセル22とを有する柱状のハニカム体基材2と、このハニカム体基材2の少なくとも隔壁21に担持された炭素系物質燃焼触媒とを有する。図1及び図2においては、炭素系物質燃焼触媒の記載を省略している。
ハニカム体基材2はαアルミナを主成分する。ハニカム体基材2における複数のセル22のうち、排ガスが流入する流入セル221の下流側の端部24と排ガスを排出する排出セル222の上流側の端部23とは、栓部25により閉塞されている。栓部25は、ハニカム体基材2の両端面23、24において隣り合うセル22の開口部を交互に閉塞し、いわゆる市松模様状に配設されている。そして、流入セル221の上流側の端部23と、排出セル222の下流側の端部24は開口しており、開口部26が形成されている。
図2及び図3に示すごとく、隔壁21は、多孔質であり、α−アルミナからなるセラミックス領域211と、細孔212とが存在している。隔壁21の壁面213上及び細孔212内には炭素系物質燃焼触媒3が担持されている。本例の排ガス浄化フィルタ1においては、流入セル221に面する隔壁21の壁面213上及び流入セル221に面する壁面213から壁厚aの半分の深さa/2までの領域に、ハニカム体基材2に担持された炭素系物質燃焼触媒3の総重量の80%以上が担持されている。
炭素物質燃焼触媒3は、ソーダライトとアルカリ金属元素源(炭酸カリウム)との混合物を焼成してなるアルカリ触媒である。
本例の排ガス浄化フィルタの作製にあたっては、まず、以下のようにしてハニカム体基材を作製した。
具体的には、まず、αアルミナからなるメジアン径45μmの粗大粒子100質量部と、αアルミナからなるメジアン径0.2μmかつ最大粒径0.5μmの微細粒子10質量部と、水酸化アルミニウムからなるメジアン径5μmの前駆体粒子5.5質量部とを乾式混合した。次いで、原料混合物に水、有機バインダ、及び保湿材を添加し、さらに硝酸マグネシウム水溶液を添加して混合することにより、原料混合物を粘土状にして坏土を得た(混合工程)。本例においては、硝酸マグネシウム水溶液の添加量を、粗大粒子、微細粒子、及び前駆体粒子の合計量に対して、酸化マグネシウム換算量で1500ppmにして坏土を作製した。
次いで、坏土を押し出し成形し、切断することにより、円筒形状の外周壁と、この外周壁内において四角形格子状に配設された多孔質の隔壁と、該隔壁に囲まれて軸方向に伸びる複数のセルとを有するハニカム構造のハニカム成形体を得た(成形工程)。本例においては、直径φ30mm×長さL50mmの円柱状のハニカム成形体を作製した。
次いで、電気炉内でハニカム成形体を最高温度1650℃で焼成した。具体的には、まず、窒素循環させることで電気炉内を酸素濃度0.5体積%の雰囲気に調整し、この雰囲気下でハニカム成形体を昇温速度50℃/時間で加熱し、温度1200℃に達したところで、電気炉内への窒素循環を停止した。次いで、電気炉内に大気を導入させることにより電気炉内の酸素濃度を増加させながら、ハニカム成形体を昇温速度50℃/時間で加熱し、温度1650℃に達したところで10時間保持した(焼成工程)。このようにして、ハニカム体基材2を得た(図1及び図2参照)。
次に、上記のようにして得られたハニカム体基材2について、平均細孔径及び気孔率を測定した。
平均細孔径及び気孔率の測定には、水銀圧入法の原理に基づいた水銀ポロシメータとして、(株)島津製作所製のオートポアIV9500を採用した。測定にあたっては、ハニカム体基材の細孔への水銀の圧入時における接触角を140°、表面張力を480dynes/cm、圧力を0.0045〜420MPaに設定することができる。また、測定ステップ(μm)を、200、150、70、40、20、10、5.0、2.0、1.0、0.5、0.1、0.05、0.03に設定することができる。なお、この測定ステップは、細孔径のことである。
このようにして、ハニカム体基材について細孔径とその容積分布が得られる。平均細孔径は、水銀ポロシメータで求めた細孔分布における積算値50%での細孔径である。
また、気孔率は、αアルミナの真比重を3.98として、全細孔容積÷(全細孔容積+1/3.98)×100という式に基づいて算出することができる。
本例のハニカム体基材の平均細孔径は14.5μmであり、気孔率は54%であった。
また、ハニカム体基材について、A軸強度を測定した。
具体的には、まず、各試料から直径φ15mm×長さL15mmのサイズの円柱状の測定サンプルをくり抜いた。そして、オートグラフを用いて、社団法人自動車技術会発行の自動車規格であるJASO規格M505−87に規定されている圧縮強度(A軸強度)を測定した。その結果、本例のハニカム体基材のA軸強度は18.5MPaであった。
次いで、アルミナ材料に、水、有機バインダ、及び保湿剤を添加して混合し、粘土状の栓部形成材料を作製した。そして、栓部形成材料により、ハニカム体基材の各セルの両端面の開口部のうちの一方をそれぞれ塞ぐと共に、ハニカム体基材の一方の端面において、セルの開口部を交互に塞いだ。次いで、電気炉を用いて、ハニカム体基材を大気雰囲気で昇温速度200℃/時間で最高温度1600℃まで昇温させ、この最高温度で3時間加熱する熱処理を行った。
このようにして、図4に示すごとく、複数のセル22のうち、排ガスが流入する流入セル221の下流側の端部24と排ガスを排出する排出セル222の上流側の端部25とが栓部25により閉塞されたハニカム体基材2を得た。
次に、ハニカム体基材2に担持させる炭素系物質燃焼触媒を以下のようにして作製した。
具体的には、まず、ソーダライト(3(Na2O・Al23・2SiO2)・2NaOH)100質量部と炭酸カリウム10質量部とを水に投入し、水中で混合した。次いで、混合液を温度150℃で加熱し、水分を蒸発させることより、固形分(ソーダライトと炭酸カリウムとの混合物)を得た。次に、この固形分を温度850℃で焼成した。具体的には、固形分を昇温速度50℃/時間で加熱し、温度850℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、焼成物をメジアン径2μm以下、かつ最大粒径20μm以下にまで粉砕し、粉末状の炭素系物質燃焼触媒を得た。
次に、以下のようにして、炭素系物質燃焼触媒をハニカム体基材に担持させた。
具体的には、まず、図5に示すごとく、ハニカム体基材2を液体4に浸漬した(液体含浸工程)。液体4としては水を用いた。これにより、図6に示すごとく、ハニカム体基材の多孔質の隔壁21に液体4を含浸させた。液体4は、隔壁21の全体にわたって含浸される。
次に、炭素物質燃焼触媒(アルカリ触媒)、無機バインダ、及び分散材を水に添加し、撹拌することにより、触媒スラリー5を作製した(図7参照)。次いで、図7に示すごとく、触媒スラリー5に、液体含浸工程後のハニカム体基材2を浸漬した(触媒スラリー浸漬工程)。
これにより、図8に示すごとく、流入セルに面する隔壁21の壁面213上及び排出セルに面する隔壁21の壁面214上に、触媒スラリー5を付着させた。隔壁21の細孔212内にはすでに液体4が存在しており、触媒スラリー5の浸入は抑制される。
次いで、図4に示すごとく、流入セル221の上流側の端面23からハニカム体基材2に空気10を吹き付けると共に、ハニカム体基材2の排出セル222の下流側の端面24から空気10の吸引を行った(触媒含浸工程)。本例においては、吸引側の端面24における風速を40m/sにして触媒含浸工程を行った。これにより、図9に示すごとく、流入セルに面する隔壁21の壁面213上及び流入セルに面する隔壁21の壁面213から壁厚aの半分の深さ2/aまでの領域(流入セル側領域)において隔壁21の細孔212内に触媒スラリー5を含浸させた。一方、排出セル222に面する隔壁21の壁面214から壁厚の半分の深さ2/aまでの領域(排出セル側領域)においては、隔壁21の細孔212内に存在していた液体4及び壁面214に付着していた触媒スラリー5をほとんど除去した。これにより、隔壁21の排出セル側領域における細孔212内には液体が存在しない空の空間が存在している。
次に、熱風発生機を用いて、ハニカム体基材に温度200℃の熱風を送り、ハニカム体基材中の残留水分を完全に除去した(乾燥工程)。次いで、電気炉中で、ハニカム体基材を大気雰囲気で昇温速度200℃/時間で最高温度650℃まで昇温させ、この最高温度でハニカム体基材を3時間加熱する熱処理を行った(加熱工程)。
このようにして、αアルミナからなるハニカム体基材に炭素系物質燃焼触媒が担持された排ガス浄化フィルタを得た。本例において、炭素系物質燃焼触媒の担持量は、排ガス浄化フィルタ1Lあたりに40gである。また、本例の排ガス浄化フィルタにおいて、ハニカム体基材に担持された炭素系物質燃焼触媒の総担持量に対する上記流入セル側領域に担持された炭素系物質燃焼触媒量3の割合を上述の方法により求めたところ、88%であった。
次に、本例の排ガス浄化フィルタの作用効果について説明する。
本例の排ガス浄化フィルタ1においては、隔壁の全体にわたって均一に炭素系物質燃焼触媒が担持されているのではなく、図1〜図3に示すごとく、隔壁21における流入セル221側により多くの炭素系物質燃焼触媒3が偏って担持されている。即ち、流入セル221に面する壁面213上及びその壁面213から壁厚の半分の深さ2/aまでの領域に、ハニカム体基材2に担持された炭素系物質燃焼触媒3の総重量の80%以上が担持されている。そのため、PMの堆積が起こり易く、より活発にPMの燃焼が起こる流入セル221側において、十分にPMの燃焼除去を行うことができる。一方、PMの燃焼に影響の少ない排出セル222側においては、炭素系物質燃焼触媒3の担持量を少なくすることができる。したがって、排ガス浄化フィルタ1においては、触媒3の総担持量を増やすことなく、効率的にPMの燃焼除去を行うことが可能になる。
また、ハニカム体基材2の隔壁21はαアルミナを主成分とし、炭素物質燃焼触媒3は、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源とゼオライトとの混合物、又はソーダライトを温度600℃以上で焼成してなるアルカリ触媒である。そのため、アルカリ触媒からなる炭素物質燃焼触媒3がPMに対して優れた燃焼促進特性を示すと共に、炭素系物質燃焼触媒3がハニカム体基材2の隔壁21の材質(αアルミナ)と高温において反応することを防止することができる。そのため、炭素系物質燃焼触媒3の活性が低下してしまうことを抑制し、安定に排ガスの浄化を行うことが可能になる。また、アルカリ触媒からなる炭素系物質燃焼触媒3は、水分存在下においても、アルカリが溶出し難く、触媒活性が低下し難くなる。
また、隔壁21は、αアルミナ100質量部に対して、アルカリ土類金属の酸化物を0.03〜0.4質量部含有する。そのため、ハニカム体基材2は優れた強度を示すことができる。
また、本例の排ガス浄化フィルタ1の製造方法においては、上記液体含浸工程と、上記触媒スラリー浸漬工程と、上記触媒含浸工程と、上記加熱工程とを行う。
液体含浸工程においては、炭素系物質燃焼触媒を含有していない液体4にハニカム体基材2を浸漬する(図5参照)。これにより、ハニカム体基材2の隔壁21の細孔212内に液体4を含浸させることができる(図6参照)。
次いで、触媒スラリー浸漬工程においては、炭素系物質燃焼触媒を含有する触媒スラリー5にハニカム体基材2を浸漬する(図7参照)。これにより、図8に示すごとく、ハニカム体基材2の少なくとも壁面213、214上に触媒スラリー5を付着させることができる。上記液体含浸工程を行った後のハニカム体基材2においては、隔壁21における細孔212内には液体4が存在し、細孔212を塞いでいる(図6参照)。したがって、触媒スラリー浸漬工程を行うと、隔壁21の細孔212内への触媒スラリー5の浸入が抑制され、上述ごとく壁面213、214に触媒スラリー5を付着させることができる(図8参照)。
また、触媒含浸工程においては、流入セル221の上流側の端面23に気体10を吹き付けると共に、排出セル222の下流側の端面24から吸引を行っている(図4参照)。これにより、流入セル221に面する隔壁21の壁面213上及び流入セル221に面する壁面213から壁厚の半分の深さa/2までの領域において隔壁21の細孔212内に触媒スラリー5を含浸させる(図9参照)。一方、排出セル222に面する隔壁21の壁面214から壁厚の半分の深さa/2までの領域においては、隔壁21の細孔212内に存在する液体4及び壁面214に付着していた触媒スラリーはほとんど除去される(図9参照)。
本例においては、吸引側の端面における気体の流速(風速)を5〜80m/sにして触媒含浸工程を行っている。そのため、流入セル側領域においては隔壁21に触媒スラリー5を含浸させると共に、排出セル側領域における隔壁21に存在する液体4及び触媒スラリー5を選択的に除去させることが容易になる(図8及び図9参照)。
また、加熱工程においては、ハニカム体基材2を加熱する。これにより、ハニカム体基材2の隔壁21に含浸された触媒スラリー5中の炭素系物質燃焼触媒3を隔壁21に担持させることができる(図2、図3、及び図9参照)。
上記触媒スラリー浸漬工程においては、触媒スラリー5を隔壁21の流入セル側に偏るように含浸させているため(図9参照)、上記加熱工程後においては、炭素系物質燃焼触媒3を隔壁21の流入セル側に偏って担持させることができる(図3参照)。
このように、本例によれば、隔壁21に捕集されたパティキュレートを効率良く燃焼除去することができる排ガス浄化フィルタ1を提供することができる。
(実施例2)
本例は、複数のハニカム体基材を側面において接合してなる接合型のハニカム体基材と、該ハニカム体基材の隔壁に担持された炭素系物質燃焼触媒とを有する接合型の排ガス浄化フィルタの例である。
図11に示すごとく、本例の排ガス浄化フィルタ7は、格子状に配設された多孔質の隔壁61と、これらの隔壁61に囲まれて軸方向に伸びる複数のセル62とを有する複数のハニカム体基材60を側面において接合してなる接合型のハニカム体基材6と、該ハニカム体基材6の隔壁61に担持された炭素系物質燃焼触媒(図示略)とを有する。
接合型のハニカム体基材6を構成する各ハニカム体基材60は、実施例1と同様にαアルミナを主成分とし、排ガスが流入する流入セルの下流側の端部と排ガスを排出する排出セルの上流側の端部とを栓部65により閉塞されている。ハニカム体基材60は、実施例1のハニカム体基材と同様の構成を有している。
また、各ハニカム体基材60の隔壁61には、実施例1と同様に炭素系物質燃焼触媒が流入セル側に偏って担持されている。
本例の接合型の排ガス浄化フィルタの作製にあたっては、まず、ハニカム体基材を複数準備する。具体的には、図10に示すごとく、格子状に配設された多孔質の隔壁61と、これらの隔壁61に囲まれて軸方向に伸びる複数のセル62とを有する角柱状のハニカム体基材60を複数準備した。ハニカム体基材60としては、実施例1と同様に、排ガスが流入する流入セルの下流側の端部と排ガスを排出する排出セルの上流側の端部とを栓部65により閉塞させたものを用いる。ハニカム体基材60は、全体形状を角柱状に変更した点を除いて、実施例1と同様にして作製することができる。
次に、実施例1と同様にして、各ハニカム体基材60に炭素系物質燃焼触媒を担持させた。
次いで、図10に示すごとく、炭素系物質燃焼触媒を担持させた各ハニカム体基材6を互いに側面66において接合させて、接合型のハニカム体基材を得た。その後、図11に示すごとく、接合型のハニカム体基材6の外周を切削等により円柱形状に加工し、接合型の排ガス浄化フィルタ7を得た。図11においては、図面作成の便宜のため、接合型のハニカム体基材を構成する一部のハニカム体基材60を除いては、各ハニカム体基材60のセル、隔壁、及び栓部などの構成を省略して示してある。
本例において作製した接合型の排ガス浄化フィルタ7は、接合型のハニカム体基材を用いている点を除いては、実施例1と同様の構成を有しており、実施例1と同様の作用効果を示すことができる。
なお、本例においては、各ハニカム体基材60に炭素系物質燃焼触媒を担持させた後に、上述のように接合を行って、接合型の排ガス浄化フィルタ7を作製したが、各ハニカム体基材60を予め接合させて接合型のハニカム体基材6を作製した後に、炭素系物質燃焼触媒を担持させて排ガス浄化フィルタ7を作製することもできる。
1 排ガス浄化フィルタ
2 ハニカム体基材
21 隔壁
212 細孔
213 壁面(流入セル側)
214 壁面(排出セル側)
22 セル
221 流入セル
222 排出セル
3 炭素物質燃焼触媒

Claims (7)

  1. 格子状に配設された多孔質の隔壁(21、61)と該隔壁(21、61)に囲まれて軸方向に伸びる複数のセル(22、62)とを有する柱状のハニカム体基材(2、6、60)と、該ハニカム体基材(2、6、60)の少なくとも上記隔壁に担持された炭素系物質燃焼触媒(3)とを有する排ガス浄化フィルタ(1、7)において、
    上記ハニカム体基材(2、6、60)における複数の上記セル(22、62)のうち、排ガスが流入する流入セル(221)の下流側の端部(24)と排ガスを排出する排出セル(222)の上流側の端部(23)とは、栓部(25、65)により閉塞されており、
    上記流入セル(221)に面する上記隔壁(21、61)の壁面(213)上及び上記流入セル(221)に面する上記壁面(213)から壁厚の半分の深さまでの領域に、上記ハニカム体基材(2、6、60)に担持された上記炭素系物質燃焼触媒(3)の総重量の80%以上が担持されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ(1、7)。
  2. 請求項1に記載の排ガス浄化フィルタ(1、7)において、上記ハニカム体基材(2、6、60)の少なくとも上記隔壁(21、61)はαアルミナを主成分とし、上記炭素物質燃焼触媒(3)は、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源とゼオライトとの混合物、又はソーダライトを温度600℃以上で焼成してなるアルカリ触媒であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ(1、7)。
  3. 請求項1又は2に記載の排ガス浄化フィルタ(1、7)において、上記ハニカム体基材(2、6、60)は、気孔率が40〜70%で、平均細孔径が10〜20μmで、A軸強度が2MPa以上であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ(1、7)。
  4. 格子状に配設された多孔質の隔壁(21、61)と該隔壁(21、61)に囲まれて軸方向に伸びる複数のセル(22、62)とを有する柱状のハニカム体基材(2、6、60)と、該ハニカム体基材(2、6、60)の少なくとも上記隔壁(21、61)に担持された炭素系物質燃焼触媒(3)とを有する排ガス浄化フィルタ(1、7)の製造方法において、
    上記ハニカム体基材(2、6、60)における複数の上記セル(22、62)のうち、排ガスが流入する流入セル(221)の下流側の端部(24)と排ガスを排出する排出セル(222)の上流側の端部(23)とが栓部(25、65)により閉塞された上記ハニカム体基材(2、6、60)を準備し、該ハニカム体基材(2、6、60)を、上記炭素系物質燃焼触媒(3)を含有していない液体(4)に浸漬し、該液体(4)を上記隔壁(21、61)の細孔(212)内に含浸させる液体含浸工程と、
    該液体含浸工程後の上記ハニカム体基材(2、6、60)を、上記炭素系物質燃焼触媒(3)を含有する触媒スラリー(5)に浸漬し、該触媒スラリー(5)を上記ハニカム体基材(2、6、60)の少なくとも上記隔壁に付着させる触媒スラリー浸漬工程と、
    上記流入セル(221)の上流側の端面(23)に気体(10)を吹き付けると共に、上記排出セル(222)の下流側の端面(24)から吸引を行うことにより、上記流入セル(221)に面する上記隔壁(21、61)の表面及び上記流入セル(221)に面する上記隔壁(21、61)の壁面(213)から壁厚の半分の深さまでの領域において上記隔壁(21、61)の上記細孔(212)内に上記触媒スラリー(5)を含浸させると共に、上記排出セル(222)に面する上記隔壁(21、61)の壁面(214)から壁厚の半分の深さまでの領域において上記隔壁(21、61)の上記細孔(212)内に存在する上記液体(4)及び上記排出セルに面する上記隔壁に付着する上記触媒スラリーを少なくとも部分的に除去する触媒含浸工程と、
    該触媒含浸工程後の上記ハニカム体基材(2、6、60)を加熱し、上記炭素系物質燃焼触媒(3)を上記ハニカム体基材(2、6、60)の上記隔壁(21、61)に担持させる加熱工程とを有することを特徴とする排ガス浄化フィルタ(1、7)の製造方法。
  5. 請求項4に記載の製造方法において、上記ハニカム体基材(2、6、60)の少なくとも上記隔壁(21、61)はαアルミナを主成分とし、上記炭素物質燃焼触媒(3)は、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源とゼオライトとの混合物、又はソーダライトを温度600℃以上で焼成してなることを特徴とする排ガス浄化フィルタ(1、7)の製造方法。
  6. 請求項4又は5に記載の製造方法において、上記ハニカム体基材(2、6、60)は、気孔率が40〜70%で、平均細孔径が10〜20μmで、A軸強度が2MPa以上であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ(1、7)の製造方法。
  7. 請求項4〜6のいずれか一項に記載の製造方法において、上記触媒含浸工程においては、吸引側の上記端面(24)における気体(10)の流速を5〜80m/sにすることを特徴とする排ガス浄化フィルタ(1、7)の製造方法。
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