JP2013157317A - 燃料電池用触媒ペースト組成物およびそれを用いた触媒層、接合体 - Google Patents

燃料電池用触媒ペースト組成物およびそれを用いた触媒層、接合体 Download PDF

Info

Publication number
JP2013157317A
JP2013157317A JP2012286730A JP2012286730A JP2013157317A JP 2013157317 A JP2013157317 A JP 2013157317A JP 2012286730 A JP2012286730 A JP 2012286730A JP 2012286730 A JP2012286730 A JP 2012286730A JP 2013157317 A JP2013157317 A JP 2013157317A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
meth
functional group
carbon
resin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2012286730A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6127506B2 (ja
Inventor
Naoki Deguchi
直幹 出口
Koichiro Miyajima
浩一郎 宮嶋
Kinya Shiraishi
欣也 白石
Jun Kaneda
潤 金田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Artience Co Ltd
Original Assignee
Toyo Ink SC Holdings Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyo Ink SC Holdings Co Ltd filed Critical Toyo Ink SC Holdings Co Ltd
Priority to JP2012286730A priority Critical patent/JP6127506B2/ja
Publication of JP2013157317A publication Critical patent/JP2013157317A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6127506B2 publication Critical patent/JP6127506B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells

Landscapes

  • Fuel Cell (AREA)
  • Inert Electrodes (AREA)

Abstract

【課題】炭素系触媒材料の分散性が良好で低粘度であり、優れた電気化学的特性、保存安定性、塗工性を備えた燃料電池用触媒ペースト組成物及び触媒インキ組成物を提供する。また、これらの組成物を用いることにより、塗工した際の塗工ムラやピンホールの発生が極めて少ない燃料電池用触媒層とそれを具有する燃料電池用電極膜接合体と、電池性能に優れた燃料電池を提供する。
【解決手段】炭素系触媒材料と分散剤とを含んでなる燃料電池用触媒ペースト組成物であって、分散剤が、塩基性官能基を有する樹脂、酸性官能基を有する樹脂、塩基性官能基を有する顔料誘導体、酸性官能基を有する顔料誘導体およびこれらの混合物からなる群から選ばれた分散剤である請求項1記載の燃料電池用触媒ペースト組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、燃料電池用の触媒ペースト組成物、触媒インキ組成物に係り、それらを用いた触媒層、電極膜接合体および燃料電池に関する。
燃料電池は、電気化学システムを用いて化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換できるシステムであり、高効率であるため次世代エネルギーとして期待されている。特に、固体高分子型燃料電池は自動車用、定置用、小型モバイル用に活発に開発が進められている。従来、これらの固体高分子型燃料電池の電極触媒には、高い酸素還元活性を有する白金や白金合金等を用いる白金系触媒が用いられているが、コスト、資源量、供給安定性の面から、白金系触媒以外の触媒(非白金系触媒と呼ぶ)の開発が求められている。しかし、現状の非白金系触媒の性能は、白金系触媒に比べて十分ではないため、白金の使用量を大幅に低減した触媒や、白金を使用しない非白金系触媒の技術開発が進められている。
そのような非白金系触媒として、例えば、特許文献1では、高分子金属錯体に炭素添加物を混合し熱処理した炭素化物に、窒素をドープした炭素材料が提案されている。このような窒素をドープした炭素材料は、酸素還元活性を有する非白金系触媒として利用することができる。また、特許文献2では、表面処理した炭素材料にイオン交換性官能基をグラフト化反応により導入した炭素材料が、非白金系触媒として使用できることが提案されている。
しかし、特許文献1の炭素材料では、熱処理前の高分子金属錯体と炭素材料とを均一に混合分散することが困難であるため、炭素化物中の金属元素や窒素元素の導入率が低いため触媒活性は低いことや、使用できる高分子金属錯体の構造が限定されるという欠点を有する。また、炭素材料に、窒素原子をアロイ化する方法としては、炭素材料に含窒素有機化合物を含浸させて焼成する方法、炭素材料の表面を窒素原子含有ポリマーで被覆した後焼成する方法等が知られているが、前者の方法では、焼成時に含窒素有機化合物が揮発して、カーボンアロイ材料への窒素導入率を高くする事が困難であること、後者の方法では、カーボン材料の表面全体を被覆することや、被覆の厚みを制御することが難しく、被覆が厚くなりやすいことから導電性の高い材料を安定に製造する事が出来ないという欠点がある。
一方、特許文献2の炭素触媒では、導入されるイオン交換性官能基は、プロトン伝導部位として導入されるため、触媒活性点として寄与するものではなく、またイオン交換性官能基の導入後に焼成しないことから、炭素構造が不規則になり、酸素還元性能や導電性に劣るという欠点がある。
また、前述の非白金系触媒は、白金系触媒よりも、経済的でコスト優位性が高く、また触媒が被毒されることなく耐久性に優れるという長所を有するが、非白金系触媒の触媒性能を高めるためには、触媒の比表面積を大きくする必要がある。また、非白金系触媒を分散して組成物とする際、非白金系触媒が凝集を引き起こし易いため、組成物中の分散安定性を高める必要がある。また、これら組成物を塗工する場合、触媒の凝集が起こると塗膜にピンホールが生じたり、好適な電極膜を得ることができず、電流量の低下や起電力の低下を引き起こしてしまうという問題がある。このような技術課題があるが、これを解決する手段が見出せていなかった。
特開2008−282725号公報 特開2009−295441号公報
本発明が解決しようとする課題は、炭素系触媒材料の分散性が良好で低粘度であり、優れた電気化学的特性、保存安定性、塗工性を備えた燃料電池用触媒ペースト組成物及び触媒インキ組成物を提供することである。また、これらの組成物を用いることにより、塗工した際の塗工ムラやピンホールの発生が極めて少ない燃料電池用触媒層とそれを具有する燃料電池用電極膜接合体と、電池性能に優れた燃料電池を提供することである。
本発明者らは、前記諸問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
第一の発明は、非白金系炭素系触媒材料と分散剤とを含んでなる燃料電池用触媒ペースト組成物に関する。
第二の発明は、分散剤が、塩基性官能基を有する樹脂、酸性官能基を有する樹脂、塩基性官能基を有する顔料誘導体、酸性官能基を有する顔料誘導体およびこれらの混合物からなる群から選ばれた分散剤である前記燃料電池用触媒ペースト組成物に関する。
第三の発明は、塩基性官能基を有する樹脂および/または酸性官能基を有する樹脂が、ポリビニル系樹脂またはポリエステル系樹脂である前記燃料電池用触媒ペースト組成物に関する。
第四の発明は、塩基性官能基を有する顔料誘導体および/または酸性官能基を有する顔料誘導体が、有機色素誘導体、アントラキノン誘導体、アクリドン誘導体、トリアジン誘導体およびこれらの混合物からなる群から選ばれた顔料誘導体である前記燃料電池用触媒ペースト組成物に関する。
第五の発明は、前記燃料電池用触媒ペースト組成物と、水素イオン伝導性ポリマーもしくは撥水性材料の少なくとも一方を含んでなる燃料電池用触媒インキ組成物に関する。
第六の発明は、前記燃料電池用触媒インキ組成物から形成されてなる燃料電池用触媒層もしくは燃料電池用撥水層。に関する。
第七の発明は、前記固体高分子電解質膜と、前記燃料電池用触媒層もしくは燃料電池用撥水層のうち少なくとも一方と、ガス拡散層を具備してなる燃料電池用電極膜接合体に関する。
第八の発明は、前記燃料電池用電極膜接合体を具備してなる燃料電池に関する。
本発明によれば、炭素系触媒材料の分散性が良好で低粘度であり、優れた電気化学的特性、保存安定性、塗工性を備えた燃料電池用触媒ペースト組成物及び触媒インキ組成物を提供することが可能となるため、これらの組成物を用いることにより、塗工した際の塗工ムラやピンホールの発生が極めて少ない燃料電池用触媒層とそれを具有する燃料電池用電極膜接合体を得ることが可能となる。したがって、電池性能に優れた燃料電池を提供することが可能となる。
以下、詳細に本発明について説明する。尚、本明細書では、「燃料電池用触媒ペースト組成物」を、「触媒ペースト組成物」あるいは「ペースト組成物」、「燃料電池用触媒インキ組成物」を「触媒インキ組成物」あるいは「インキ組成物」ということがある。また、これら「燃料電池用触媒ペースト組成物」と「燃料電池用触媒インキ組成物」を併せて、単に「組成物」ということがある。また、「樹脂」を「重合体」ということがある。
<燃料電池用触媒ペースト組成物>
本発明のペースト組成物中に含まれる炭素系触媒材料、分散剤、及び溶剤の割合は、特に限定されるものではなく、広い範囲内で適宜選択され得る。
分散剤の含有量は、触媒ペースト組成物中の炭素系触媒材料に対し、0.01〜10重量%、好ましくは0.02〜5重量%である。この範囲の含有量とすることにより、炭素系触媒材料の分散安定性を十分に達成できると同時に、炭素系触媒材料の凝集を効果的に防止でき、かつ触媒層表面への分散剤の析出を防止できる。
また、溶剤は、触媒ペースト組成物を100重量%としたとき、60〜99重量部%、好ましくは65〜97重量%である。
<非白金系炭素系触媒材料>
非白金系炭素系触媒材料(以下、炭素系触媒材料ともいう)とは、炭素(C)原子の集合体を主体とした多成分系からなり、それらの構成単位間に物理的・化学的な相互作用(結合)を有し、異種元素、たとえば窒素(N)、ホウ素(B)、リン(P)などのヘテロ原子や遷移金属が含まれる触媒材料で、従来公知のものを使用することができる。
ヘテロ原子と遷移金属を含有することは、酸素還元活性を有するうえで重要な意味をなす。一般的に炭素系触媒材料の場合、その触媒活性点として、炭素材料表面に遷移金属を中心に、例えば、4個の窒素が平面上に並んだ構造(遷移金属−N4構造と呼ぶ)中の遷移金属や、炭素材料表面のエッジ部に導入されたヘテロ原子近傍の炭素原子などが挙げられ、本発明における炭素系触媒材料においても、ヘテロ原子と遷移金属元素の存在は重要である。
このような炭素系触媒材料は、従来公知の白金を担持させた炭素材料と比べて、耐久性に優れた酸素還元触媒能を有し、燃料電池用電極触媒として好適に使用することが可能となる。炭素系触媒材料は、カソード、アノードの両方に使用することができるが、カソードとして通常用いられることが多い。
本発明に係る炭素系触媒材料においては、窒素又はホウ素等のドープ量(炭素系触媒材料中の窒素又はホウ素等の含有量)が、それぞれ0.1〜40モル%であるときに、酸素還元に関して良好な電極活性を示す。また、窒素とホウ素とを同時にドープしたときには、両者の相互作用により、より一層高い電極活性を示す。また、窒素とホウ素の双方をドープする場合には、原子比(B/N)は、0.2〜0.4、好ましくは0.06〜1.5であり、またモル比((B+N)/C)は、好ましくは0.03〜0.4である。これらの範囲内において、活性の高い炭素系触媒材料を得ることができる。
<炭素材料>
本発明における炭素系触媒材料の構成成分である炭素材料としては、カーボンブラック(ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ミディアムサーマルカーボンブラック)、活性炭、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、グラフェンナノプレートレット、ナノポーラスカーボン、炭素繊維等が挙げられる。炭素材料は、種類やメーカーによって、粒子径、形状、BET比表面積、細孔容積、細孔径、嵩密度、DBP吸油量、表面酸塩基度、表面親水度、導電性など様々な物性やコストが異なるため、使用する用途や要求性能に合わせて最適な材料を選択する。
市販の炭素材料としては、例えば、
ケッチェンブラックEC−300J、及びEC−600JD等のアクゾ社製ケッチェンブラック;
トーカブラック#4300、#4400、#4500、及び#5500等の東海カーボン社製ファーネスブラック;
プリンテックスL等のデグサ社製ファーネスブラック;
Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULT
RA、Conductex SC ULTRA、975 ULTRA、PUER BLACK100、115、及び205等のコロンビヤン社製ファーネスブラック;
#2350、#2400B、#2600B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、及び#5400B等の三菱化学社製ファーネスブラック;
MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、及びBlackPearls2000等のキャボット社製ファーネスブラック;
Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、及びSuperP−Li等のTIMCAL社製ファーネスブラック;
デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35等の電気化学工業社製アセチレンブラック;
VGCF、VGCF−H、VGCF−X等の昭和電工社製カーボンナノチューブ;
名城ナノカーボン社製カーボンナノチューブ;
xGnP−C−750、xGnP−M−5等のXGSciences社製グラフェンナノプレートレット;
Easy−N社製ナノポーラスカーボン;
カイノール炭素繊維、カイノール活性炭繊維などの群栄化学工業社製炭素繊維;
等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
<ヘテロ原子、遷移金属のドープ原料>
本発明における炭素系触媒材料として、窒素やホウ素等のヘテロ原子や、遷移金属をドープする際に使用される原料としては、ヘテロ原子及び/又は遷移金属を含有する材料であれば使用可能であり、有機化合物(色素、ポリマーなど)、無機化合物(金属単体、金属酸化物、金属塩など)を問わないものである。遷移金属としては、コバルト、鉄、ニッケル、マンガン、銅、チタン、バナジウム、クロム、亜鉛、スズ、アルミニウム、マグネシウムから選ばれる一種以上を含有することが好ましい。
その中でも、窒素を含有した芳香族化合物であり、遷移金属を分子中に含有することができるフタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、テトラアザアヌレン系化合物等は、炭素系触媒材料中に効率的に窒素と遷移金属をドープしやすいため好ましい。また、上記芳香族化合物は、電子吸引性官能基や電子供与性官能基を導入されていても問題ない。特に、フタロシアニン系化合物は、様々な遷移金属を含んだ化合物が存在し、コスト的にも安価であるため、原料としては特に好ましいものであり、中でも、コバルトフタロシアニン系化合物、ニッケルフタロシアニン系化合物、鉄フタロシアニン系化合物は、高い酸素還元活性も有することで知られていることから、それらより合成した炭素系触媒材料は、安価で高い酸素還元活性を有する炭素系触媒材料となるためより好ましいものである。
(a) 窒素がドープされた炭素系触媒材料の製造方法
窒素がドープされた炭素系触媒材料を製造するには、まず、窒素源としての、フタロシアニン、アクリロニトリル、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、メラミンなどの含窒素化合物と、フラン樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂の前駆体とを混合し、加熱反応させて、窒素化合物含有熱硬化性樹脂を得る。
例えば、含窒素化合物としてフタロシアニンを用い、熱硬化性樹脂の前駆体としてフルフリルアルコールを用いる場合には、これらの混合物に塩酸等の酸を添加し、好ましくは80〜200℃の範囲内の温度で加熱して、重合反応させることで、窒素化合物含有熱硬化性樹脂であるフタロシアニン含有フラン樹脂を得ることができる。上述した窒素のドープ量を0.1〜40モル%にするためには、フルフリルアルコールとメラミン又はフタロシアニンの配合比をC:N(モル比)を1:(0.07〜3)、好ましくは1:(0.1〜0.5)にする。
次いで、得られたフタロシアニン含有フラン樹脂を、窒素やヘリウム等の不活性ガス雰囲気下、所定の温度で熱処理して炭素化する。この熱処理温度は炭素化可能な温度であれば、特に制限はないが、好ましい温度は400〜1500℃、より好ましい温度は500〜1200℃である。次いで、好ましくは遊星型ボールミル等の分散機で、微粉砕することにより、窒素がドープされた平均粒径45μm以下、好ましくは0.1μm以下の炭素系触媒材料を得ることができる。
また、窒素がドープされた炭素系触媒材料の別の製造方法としては、炭素材料としてアセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ、導電性炭素繊維、活性炭などを用い、窒素原子を有する化合物と混合して上記と同様に所定の温度で熱処理して炭素化することで得ることができる。この際、上記炭素材料は単独で用いても良いし、いくつかを混合してから用いることができる。
(b) ホウ素がドープされた炭素系触媒材料の製造方法
ホウ素がドープされた炭素系触媒材料を製造するには、まず、ホウ素源としての、BF3メタノール錯体又はBF3テトラヒドロフラン(THF)錯体等の含ホウ素化合物と、フラン樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂の前駆体とを混合し、加熱反応させて、ホウ素化合物含有熱硬化性樹脂を得る。
例えば、含ホウ素化合物としてBF3メタノール錯体を用い、熱硬化性樹脂の前駆体としてフルフリルアルコールを用いる場合には、好ましくは80〜200℃の範囲内の温度で加熱して、重合反応させることで、BF3含有フラン樹脂を得ることができる。上述したホウ素原子のドープ量を0.1〜40モル%にするためには、フルフリルアルコールとBF3の配合比をC:B(モル比)で1:(0.1〜1)、好ましくは1:(0.15〜0.6)にする。
次いで、得られたBF3含有フラン樹脂を、窒素やヘリウム等の不活性ガス雰囲気下、上記(a)で述べた所定温度で熱処理して炭素化する。次いで、好ましくは遊星型ボールミル等のボールミルで、微粉砕することにより、ホウ素原子がドープされた平均粒径45μm以下、好ましくは0.1μm以下の炭素系触媒材料を得ることができる。
(c) 窒素及びホウ素がドープされた炭素系触媒材料の製造方法(熱重合法)
窒素及びホウ素がドープされた炭素系触媒材料を製造するには、まず、含ホウ素化合物および含窒素化合物と、フラン樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂の前駆体とを混合した後、加熱反応させて、ホウ素−窒素化合物含有熱硬化性樹脂を得る。
例えば、含ホウ素化合物としてBF3メタノール錯体を、含窒素化合物としてメラミンをそれぞれ用い、熱硬化性樹脂の前駆体としてフルフリルアルコールを用いる場合には、好ましくは80〜200℃の範囲内の温度で加熱して、重合反応させることで、BF3含有フラン樹脂を得ることができる。上述した窒素原子及びホウ素原子のドープ量をそれぞれ0.1〜40原子%にし、かつB/Nの原子比を0.2〜0.4にするためには、フルフリルアルコールとメラミンとBF3メタノール錯体の配合比をC:N:B(モル比)で1:(0.04〜2):(0.02〜1)、好ましくは1:(0.3〜0.7):(0.4〜1.5)にする。次いで、得られたフラン樹脂を窒素やヘリウム等の不活性ガス雰囲気下、上記(a)で述べた所定の温度で炭素化することにより、窒素及びホウ素がドープされた炭素系触媒材料を得ることができる。
(d) 窒素及びホウ素がドープされた炭素系触媒材料の製造方法(亜臨界法)
窒素及びホウ素がドープされた炭素系触媒材料を製造する別の方法としては、次の亜臨界法がある。この方法では、まず、フルフリルアルコール又はレゾール型フェノール樹脂の溶液に、含窒素化合物と、ホウ素源としてのBF3メタノール錯体又はBF3テトラヒドロフラン(THF)錯体等の含ホウ素化合物とを溶解して、重合反応を行う。
例えば、フルフリルアルコールのメタノール溶液、含窒素化合物としてのメラミン、及び含ホウ素化合物としてのBF3メタノール錯体を用いた場合には、200〜350℃のメタノール亜臨界又は超臨界条件下で、フルフリルアルコールの重合反応を行う。上述した窒素及びホウ素のそれぞれのドープ量を0.1〜40モル%にするためには、フルフリルアルコールとメラミンとBF3メタノール錯体の配合比をC:N:B(モル比)で、1:(0.2〜0.8):(0.1〜0.4)、好ましくは1:(0.3〜0.7):(0.15〜0.4)にする。次いで、得られた重合物を窒素やヘリウム等の不活性ガス雰囲気下、上記(a)で述べた所定温度で炭素化することにより、窒素及びホウ素がドープされた炭素系触媒材料を得ることができる。
本発明に係る炭素系触媒材料の第二の形態は、ゾルゲル法で作られた平均粒径10〜100nmのカーボン超微粒子を前駆体として用いる形態である。ここで、カーボン超微粒子は、以下のようにして製造される。まず、フェノールとホルムアルデヒドと炭酸ナトリウムのような塩基触媒を含む水溶液を調製する。この水溶液を所定の温度で所定の時間保持することにより、フェノールとホルムアルデヒドを反応させると、反応溶液中で高分子超微粒子が生成される。所定の温度は60〜90℃が好ましく、80〜90℃が更に好ましい。また所定の時間は1〜20時間が好ましく、8〜18時間が更に好ましい。次にこの反応溶液を液体窒素温度に冷却して、凍結し、乾燥することにより高分子超微粒子を回収する。更に続いて回収した高分子超微粒子を100〜250℃で0.5〜10時間、好ましくは200〜230℃で3〜6時間加熱硬化させる。この硬化した高分子超微粒子を上記(a)で述べた炭素化熱処理条件で加熱することにより炭素化して平均粒径10〜100nm、好ましくは10〜30nmのカーボン超微粒子を得ることができる。このような超微粒子を得るためには、フェノールとホルムアルデヒドと炭酸ナトリウムの配合重量比(フェノール:ホルムアルデヒド:炭酸ナトリウム)を1:(1〜2):(0.05〜0.2)、好ましくは1:(1.4〜1.6):(0.05〜0.1)にする。
<分散剤>
本発明では、分散剤が、塩基性官能基を有する樹脂、酸性官能基を有する樹脂、塩基性官能基を有する顔料誘導体、酸性官能基を有する顔料誘導体およびこれらの混合物からなる群から選ばれた分散剤であることが重要である。これらの分散剤を使用することによって、触媒活性や導電性を阻害することなく、分散安定性に優れた触媒ペースト組成物を提供することができる。本発明の触媒ペースト組成物は、優れた分散安定性を示すだけでなく、保存安定性に優れ、水素イオン伝導性ポリマーや撥水性材料を後添加する際にも、その分散状態を維持したまま混合分散することができる。また、水素イオン伝導性ポリマーとの濡れ性を改善できる。よって、塗膜中での炭素系触媒材料と水素イオン伝導性ポリマーとの密着性や、触媒活性点への水素イオン伝導性も向上できるため、触媒インキ組成物に好適に使用できる。
本発明において分散剤として使用できる塩基性官能基又は上記酸性官能基を有する有機化合物は、それらの官能基によって炭素系触媒材料の表面に作用又は吸着できるものであれば、その骨格は特に限定されない。しかし、電子伝導性が重要となる電池性能の観点から、好適な塩基性官能基を有する有機化合物として、塩基性官能基を有する顔料誘導体(I−1)、塩基性官能基を有する樹脂(I−2)が挙げられる。また、好適な酸性官能基を有する有機化合物の一例として、酸性官能基を有する顔料誘導体(II−1)、酸性官能基を有する樹脂(II−2)が挙げられる。塩基性官能基を有する顔料誘導体の内、好ましい形態として、塩基性官能基を有する有機色素誘導体(I−1)、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体等の各種誘導体が挙げられる。また、好適な酸性官能基を有する顔料誘導体の内、好ましい形態として、酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するアントラキノン誘導体、酸性官能基を有するアクリドン誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体等の各種誘導体が挙げられる。
特に限定するものではないが、本発明の好ましい一実施形態において、分散剤は、上記塩基性官能基を有する顔料誘導体(I−1)または上記酸性官能基を有する顔料誘導体(II−1)のいずれかを必須成分として含む。また、本発明の好ましい別の実施形態において、分散剤は、上記塩基性官能基を有する樹脂(I−2)および上記酸性官能基を有する樹脂(II−2)のいずれかを必須成分として含む。さらに、本発明の好ましい別の実施形態において、分散剤は、上記各種誘導体(I−1)又は(II−1)に加えて、上記塩基性官能基を有する樹脂(I−2)又は上記酸性官能基を有する樹脂(II−2)を含む。以下、各々の顔料誘導体および樹脂について詳細に説明する。
<塩基性官能基を有する顔料誘導体(I−1)>
塩基性官能基を有する顔料誘導体は、塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体を含有してよい。
とりわけ、下記式(1)で示されるトリアジン誘導体、又は下記式(6)で示される有機色素誘導体を使用することが好ましい。
上記式(1)において、
1は、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−CH2NHCOCH2NH−、又は−X2−Y1−X3−であり、
2は、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−NHCO−、又は−NHSO2−であり、
3は、それぞれ独立に−NH−、又は−O−であり、
1は、炭素数1〜20で構成された、置換又は未置換のアルキレン基、置換又は未置換のアルケニレン基、又は、置換又は未置換のアリーレン基であり、
Pは、下記式(2)、(3)、又は(4)のいずれかで示される置換基であり、
Qは、−O−R2、−NH−R2、ハロゲン基、−X1−R1、又は下記式(2)、(3)、若しくは(4)のいずれかで示される置換基であり、
2は、水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルケニル基、又は、置換又は未置換のアリール基であり、
1は、有機色素残基、置換又は未置換の複素環残基、置換又は未置換の芳香族環残基、又は下記式(5)で示される基であり、
1は、1〜4の整数である。
上記式(2)〜(4)において、
4は、直接結合、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2NHCONHCH2−、−CH2−、又は−X5−Y2−X6−であり、
5は、−NH−、又は−O−であり、
6は、直接結合、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2NHCONHCH2−、又は−CH2−であり、
2は、炭素数1〜20で構成された、置換又は未置換のアルキレン基、置換又は未置換のアルケニレン基、又は、置換又は未置換のアリーレン基であり、
vは、1〜10の整数であり、
3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルケニル基、置換又は未置換のアリール基、又はR3とR4とで一体となって、更なる窒素、酸素、若しくは硫黄原子を含む、置換又は未置換の複素環残基であり、
5、R6、R7、及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルケニル基、又は、置換又は未置換のアリール基であり、
9は、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルケニル基、又は、置換又は未置換のアリール基である。
上記式(5)において、
Tは、−X8−R10、又はW1であり、
Uは、−X9−R11、又はW2であり、
1、及びW2は、それぞれ独立に、−O−R20、−NH−R20、ハロゲン基、又は上記式(2)、(3)、若しくは(4)のいずれかで示される置換基であり、
20は、水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルケニル基、又は、置換又は未置換のアリール基であり、
7は、−NH−、又は−O−であり、
8、及びX9は、それぞれ独立に、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、又は−CH2NHCOCH2NH−であり、
3は、炭素数1〜20で構成された、置換又は未置換のアルキレン基、置換又は未置換のアルケニレン基、又は、置換又は未置換のアリーレン基であり、
10、及びR11は、それぞれ独立に、有機色素残基、置換又は未置換の複素環残基、又は、置換又は未置換の芳香族環残基である。
上記式(1)のR1、並びに、上記式(5)のR10、及びR11で表される有機色素残基の具体例として、ジケトピロロピロール系色素;アゾ、ジスアゾ、及びポリアゾ等のアゾ系色素;フタロシアニン系色素;ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、及びビオラントロン等のアントラキノン系色素;;キナクリドン系色素;ジオキサジン系色素;ぺリノン系色素;ぺリレン系色素;チオインジゴ系色素;イソインドリン系色素;イソインドリノン系色素;キノフタロン系色素;スレン系色素;並びに、金属錯体系色素が挙げられる。とりわけ、金属による電池の短絡を抑制する効果を高める観点からは、金属錯体系色素ではない有機色素残基の使用が好ましい。
上記式(1)のR1、並びに、上記式(5)のR10、及びR11で表される複素環残基及び芳香族環残基の具体例として、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラジン、トリアジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アントラキノン、及びアクリドン等が挙げられる。これらの複素環残基、及び芳香族環残基は、アルキル基(メチル基、エチル基、ブチル基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、及びジブチルアミノ基等)、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、及びブトキシ基等)、ハロゲン(塩素、臭素、及びフッ素等)、フェニル基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、又はハロゲン等で置換されていてもよい)、並びに、フェニルアミノ基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、又はハロゲン等で置換されていてもよい)等の置換基を有していてもよい。
上記式(2)及び(3)中のR3、及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルケニル基、置換又は未置換のアリール基、又はR3とR4とで一体となって更なる窒素、酸素、若しくは硫黄原子を含む置換基を有してもよい複素環残基である。
式(1)〜(5)のY1、Y2、及びY3は、それぞれ独立に、炭素数20以下の置換又は未置換のアルキレン基、アルケニレン基、又はアリーレン基を表すが、好ましくは置換又は未置換のフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、又は炭素数が10以下の側鎖を有していてもよいアルキレン基が挙げられる。
式(6)において、
Zは、下記式(7)、(8)、及び(9)で示される群から選ばれる少なくとも1つのものであり、n2は、1〜4の整数であり、R12は、有機色素残基、置換又は未置換の複素環残基、又は、置換又は未置換の芳香族残基である。
上記式(7)〜(9)において、
10は、直接結合、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2NHCONHCH2−、−CH2−、又は−X11−Y4−X12−であり、
11は、−NH−、又は−O−であり、
12は、直接結合、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2NHCONHCH2−、又は−CH2−であり、
4は、炭素数1〜20で構成された、置換又は未置換のアルキレン基、置換又は未置換のアルケニレン基、又は、置換又は未置換のアリーレン基であり、
1は、1〜10の整数であり、
13、及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルケニル基、置換又は未置換のフェニル基、又はR3とR4とで一体となって更なる窒素、酸素、若しくは硫黄原子を含む置換又は未置換の複素環残基であり、
15、R16、R17、及びR18は、それぞれ独立に、水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルケニル基、又は、置換又は未置換のアリール基であり、
19は、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルケニル基、又は、置換又は未置換のアリール基である。
式(6)のR12で表される有機色素残基の具体例として、ジケトピロロピロール系色素;アゾ、ジスアゾ、及びポリアゾ等のアゾ系色素;フタロシアニン系色素;ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、及びビオラントロン等のアントラキノン系色素;キナクリドン系色素;ジオキサジン系色素;ぺリノン系色素;ぺリレン系色素;チオインジゴ系色素;イソインドリン系色素;イソインドリノン系色素;キノフタロン系色素;スレン系色素;並びに、金属錯体系色素等が挙げられる。とりわけ、金属による電池の短絡を抑制する効果を高めるためには、金属錯体系色素ではない有機色素残基を使用することが好ましい。
又、式(6)のR12で表される複素環残基及び芳香族環残基としては、例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アントラキノン、及びアクリドン等が挙げられる。これらの複素環残基及び芳香族環残基は、アルキル基(メチル基、エチル基、及びブチル基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、及びジブチルアミノ基等)、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、及びブトキシ基等)、ハロゲン(塩素、臭素、及びフッ素等)、フェニル基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、及びハロゲン等で置換されていてもよい)、並びに、フェニルアミノ基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、及びハロゲン等で置換されていてもよい)等の置換基を有していてもよい。
又、式(7)及び(8)中のR13、及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルケニル基、置換又は未置換のフェニル基、又はR13とR14とで一体となって更なる窒素、酸素、若しくは硫黄原子を含む、置換又は未置換の複素環残基である。
上記式(2)〜(4)、並びに上記式(6)〜(8)で示される置換基を形成するために使用されるアミン成分の具体例として、以下が挙げられる。
ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、N,N−エチルイソプロピルアミン、N,N−エチルプロピルアミン、N,N−メチルブチルアミン、N,N−メチルイソブチルアミン、N,N−ブチルエチルアミン、N,N−tert−ブチルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、N,N−sec−ブチルプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、N,N−イソブチル−sec−ブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、ジオクチルアミン、N,N−メチルオクタデシルアミン、ジデシルアミン、ジアリルアミン、N,N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N,N−メチルヘキシルアミン、ジオレイルアミン、ジステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノアミルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノヘキシルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノペンチルアミン、N,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノエチルアミン、N,N−ジブチルアミノブチルアミン、N,N−ジイソブチルアミノペンチルアミン、N,N−メチルーラウリルアミノプロピルアミン、N,N−エチルーヘキシルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノエチルアミン、N,N−ジオレイルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノブチルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリン酸、イソニペコチン酸、イソニコペチン酸メチル、イソニコペチン酸エチル、2−ピペリジンエタノール、ピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−ブチルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、及び1−シクロペンチルピペラジン等。
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、又は塩基性官能基を有するトリアジン誘導体の合成方法としては、特に限定されるものではなく、周知の方法を適用することができる。例えば、特開昭54−62227号公報、特開昭56−118462号公報、特開昭56−166266号公報、特開昭60−88185号公報、特開昭63−305173号公報、特開平3−2676号公報、又は特開平11−199796号公報等に記載されている方法を適用することができる。上記公報による開示を参照することにより、本明細書の一部に組み込むものとする。
塩基性官能基を有する各種誘導体は、例えば、有機色素、アントラキノン、若しくはアクリドンに、下記式(10)〜(13)で示される置換基を導入した後、これら置換基と、アミン成分とを反応させることによって、合成することができる。
式(10):
−SO2Cl
式(11):
−COCl
式(12):
−CH2NHCOCH2Cl
式(13):
−CH2Cl
上記アミン成分としては、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N−メチルピペラジン、ジエチルアミン、若しくは4−[4−ヒドロキシ−6−[3−(ジブチルアミノ)プロピルアミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ]アニリン等を使用することができる。
又、例えば、上記式(10)で示される置換基を導入する場合には、有機色素、アントラキノン、若しくはアクリドンをクロロスルホン酸に溶解して、塩化チオニル等の塩素化剤を反応させる。その際、反応温度、反応時間等の条件を調整することによって、有機色素、アントラキノン、若しくはアクリドンに導入する上記式(10)で示される置換基の数をコントロールすることができる。
又、上記式(11)で示される置換基を導入する場合には、まずカルボキシル基を有する有機色素、アントラキノン、若しくはアクリドンを公知の方法で合成した後、ベンゼン等の芳香族溶媒中で塩化チオニル等の塩素化剤を反応させる方法等が挙げられる。
上記式(10)〜(13)で示される置換基とアミン成分との反応時には、式(10)〜(13)で示される置換基の一部が加水分解して、塩素がヒドロキシル基に置換することがある。その場合、式(10)で示される置換基はスルホン酸基となり、式(11)で示される置換基はカルボン酸基となる。各々の酸基は、いずれも遊離酸のままでよい。又は、それぞれ、1〜3価の金属若しくは、上記のアミンと塩を形成していてもよい。
又、有機色素がアゾ系色素である場合は、式(7)〜(9)、又は下記式(14)で示される置換基を予めジアゾ成分又はカップリング成分に導入し、その後カップリング反応を行うことによってアゾ系色素誘導体を製造することもできる。
式(14)において、
13は、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−CH2NHCOCH2NH−、又は−X14−Y5−X15−であり、
14は、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−NHCO−、又は−NHSO2−であり、
15は、それぞれ独立に、−NH−、又は−O−であり、
5は、炭素数1〜20で構成された、置換又は未置換のアルキレン基、置換又は未置換のアルケニレン基、又は、置換又は未置換のアリーレン基であり、
1は、上記式(2)、(3)、又は(4)のいずれかで示される置換基であり、
2は、−O−R24、−NH−R24、ハロゲン基、−X1−R25、又は上記式(2)、(3)、若しくは(4)のいずれかで示される置換基であり、
24は、水素原子、置換又は未置換のアルキル基又は、置換又は未置換のアルケニル基、又は置換又は未置換のアリール基であり、
25は、有機色素残基、置換又は未置換の複素環残基、置換又は未置換の芳香族環残基、又は上記式(5)で示される基である。
又、塩基性官能基を有するトリアジン誘導体は、例えば、塩化シアヌルを出発原料とし、塩化シアヌルの少なくとも1つの塩素に上記式(7)〜(9)、又は式(14)で示される置換基を形成するアミン成分(例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、若しくはN−メチルピペラジン等)を反応させ、次いで塩化シアヌルの残りの塩素と種々のアミン又はアルコール等を反応させることによって得られる。
上記の塩基性官能基を有する各種誘導体の効果の1つとして、添加した誘導体が炭素系触媒材料表面に作用(例えば吸着)することにより、分散効果を発揮するものと考えられる。炭素系触媒材料の場合、粒子表面の疎水性が高いため、塩基性官能基を有する各種誘導体の吸着作用効果が更に向上し、より分散効果も発揮すると考えられる。
すなわち、塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、又は塩基性官能基を有するトリアジン誘導体を溶剤中に完全ないしは一部溶解させ、その溶液中に炭素系触媒材料を添加し、混合することによって、これら誘導体の炭素系触媒材料への作用(例えば吸着)が進み、炭素系触媒材料表面に作用(例えば吸着)した誘導体が有する塩基性官能基の極性により、炭素系触媒材料表面の溶剤に対する濡れが促進され、炭素系触媒材料の凝集が解しやすくなるものと考えられる。
本発明の好ましい実施形態では、塩基性官能基を有する各種誘導体を、後述する塩基性官能基を有する樹脂(I−2)と併用する。また、本発明の好ましい別の実施形態では、塩基性官能基を有する各種誘導体を、酸性化合物と組み合わせて使用する。酸性化合物としては、後述する酸性官能基を有する樹脂(II−2)、又は後述する無機酸又は分子量300以下の有機酸であってよい。
上記実施形態のように、塩基性官能基を有する各種誘導体に加えて、塩基性官能基を有する樹脂、又は酸性化合物を適切に組み合わせることによって、炭素系触媒材料の分散安定性を更に高めることができる。また、上記酸性官能基を有する樹脂、又は塩基性官能基を有する樹脂を介して、炭素系触媒材料とバインダー成分である水素イオン伝導性ポリマー等との密着性も向上するため、燃料電池用電極膜接合体としたとき触媒インキ組成物と固体高分子電解質膜の密着性に加えて、炭素系触媒材料の触媒活性点への水素イオン伝導性も向上すると考えられる。
特に、後述する塩基性官能基を有する樹脂(I−2)を併用した場合には、上記塩基性官能基を有する誘導体同様、塩基性官能基が炭素系触媒材料表面に作用(例えば吸着)することによって、炭素系触媒材料表面の溶剤への濡れが促進され、樹脂の立体障害による反発により炭素系触媒材料の分散安定性を更に増すと考えられる。
また、酸性化合物として後述する酸性官能基を有する樹脂(II−2)を併用した場合には、酸性官能基と上記誘導体が有する塩基性官能基の相互作用(例えば酸−塩基相互作用)によって、炭素系触媒材料と樹脂成分との密着性が向上するとともに、炭素系触媒材料の分散安定性が更に増すと考えられる。
また、酸性化合物として、無機酸又は分子量300以下の有機酸を併用した場合には、それら酸性化合物と上記誘導体が有する塩基性官能基との相互作用(例えば中和によるイオン対の形成(造塩)、及びイオン対(塩)の分極ないしは解離等)によって、炭素系触媒材料表面の静電反発が促進されるため、炭素系触媒材料の分散安定性が更に増すと考えられる。このような実施形態について、以下にさらに詳細に説明する。
<酸性化合物:無機酸、分子量300以下の有機酸>
本発明の触媒ペースト組成物では、塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種類以上の誘導体を用いて、炭素系触媒材料の良好な分散及び分散安定性を得るために、更に分散助剤として酸性化合物を添加することが好ましい。このとき用いる酸性化合物としては、特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸の様な無機酸や、カルボン酸類、燐酸類、スルホン酸類の様な有機酸等が使用できる。中でも、電極作製時の乾燥工程で分解又は揮発する酸性化合物の使用が好ましく、分子量が300以下好ましくは200以下の有機酸の使用が望ましい。又、炭素系触媒材料との反応性が低い酸の使用が好ましく、とりわけ有機酸、特にカルボン酸類が好ましい。具体的には、例えば、蟻酸、酢酸、フルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びシトラコン酸等が挙げられる。
これらの無機酸や分子量300以下の有機酸は、塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、又は塩基性官能基を有するトリアジン誘導体の塩基性官能基と作用し、例えば、中和によるイオン対の形成(造塩)、及びイオン対(塩)の分極ないしは解離等を引き起こす。その結果、これら塩基性官能基を有する誘導体の溶解性が向上するとともに、これら塩基性官能基を有する誘導体が作用(例えば吸着)した炭素系触媒材料表面に電気的な相互作用が誘起され、炭素系触媒材料の解凝集が促進されるものと思われる。ここで、相互作用とは、例えば、炭素系触媒材料表面に吸着した塩基性官能基を有する誘導体由来のカチオン同士の静電反発、又、解離した酸アニオンによって形成される電気二重層による静電反発等を想定している。
以上のように、本発明の一実施形態では、上記塩基性官能基を有する誘導体及び、好ましくは無機酸、又は分子量300以下の有機酸の使用により、炭素系触媒材料表面に直接、官能基を導入(共有結合)せず、更に分散樹脂を使用することなく、良好な分散を得ることができる。そのことによって、炭素系触媒材料の導電性を落とすことなく良好な分散を得ることができる。そして、炭素系触媒材料が良好に分散した本発明の触媒ペースト組成物を用いることによって、炭素系触媒材料が均一に分散したカソード電極またはアノード電極を作製することができる。
以上説明したように、少なくとも上記塩基性官能基を有する各種誘導体を含む触媒ペースト組成物を調製し、そのようなペースト組成物に水素イオン伝導性ポリマー、もしくは、撥水性材料を添加して本発明の触媒インキ組成物とすることができる。更に触媒インキ組成物を使用してカソード極を作製した場合、炭素系触媒材料の表面に塩基性官能基を有する誘導体が存在することになる。そのことにより、炭素系触媒材料を均一に分散させる効果と相まって、カソード電極における酸素に対する触媒活性を向上することができる。
<塩基性官能基を有する樹脂(I−2)>
本発明の触媒ペースト組成物は、炭素系触媒材料の良好な分散及び分散安定性を得るために、塩基性官能基を有する樹脂を含有してもよい。好ましい塩基性官能基としては、一級、ニ級、及び三級のアミノ基あるいはアミド基である。塩基性官能基を有する樹脂としては、分散安定性の観点から、以下に説明する3種の樹脂、すなわち、重合体(G1)、重合体(G2)及びビニルアミド系樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂を使用することが好ましい。
上記塩基性官能基を有する樹脂は、炭素系触媒材料を互いに結着するか、又は、炭素系触媒材料を電極膜接合体に結着するためのバインダーとしても機能する。このような塩基性官能基を有する樹脂は、後述する酸性官能基を有する各種誘導体(II−1)、すなわち、酸性官能基を有する有機色素誘導体及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の化合物(x”)と併用することによって、炭素系触媒材料の分散安定性、及び燃料電池用電極膜接合体の密着性を向上させることができる。
上述の実施形態では、炭素系触媒材料表面に作用(例えば吸着)した酸性官能基を有する誘導体の酸性官能基と、塩基性官能基を有する樹脂の塩基性官能基とが相互作用(例えば、酸−塩基相互作用)する。又は、酸性官能基を有する誘導体と、塩基性官能基を有する樹脂とが相互作用(例えば酸−塩基相互作用)し、その一方で炭素系触媒材料表面に吸着する。そのことによって、上述の実施形態では、上記塩基性官能基を有する樹脂の炭素系触媒材料表面への吸着が促進され、炭素系触媒材料と樹脂成分との密着性が向上すると共に、樹脂の立体障害による反発によって、炭素系触媒材料の分散安定性が向上することができると考えられる。又、炭素系触媒材料と、水素イオン伝導性ポリマーとの密着性や炭素系触媒材料の触媒活性点への水素イオン伝導性も向上するため、例えば、使用する水素イオン伝導性ポリマー分の量を減らすことも期待できる。以下、塩基性官能基を有する樹脂の具体例として、本発明において好適に使用できる3種の樹脂、重合体(G1)、重合体(G2)及びビニルアミド系樹脂について説明する。
<塩基性官能基を有する樹脂(G1)>
本発明で用いることのできる塩基性官能基を有する樹脂(G1)は、片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のヒドロキシル基と、及びジイソシアネート(B1)のイソシアネート基とを反応してなる両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C1)のイソシアネート基と、並びに、ポリアミン(D1)及びモノアミン(E1)の一級及び/又は二級アミノ基と、を反応させることによって合成される。
ビニル重合体(A)由来の側鎖にグラフトされたビニル重合体部位は、広範囲にわたる炭素系触媒材料及び溶剤との親和性に優れ、溶剤親和性部位として機能し、主鎖のウレア結合部位が、酸性官能基を有する有機色素誘導体、又は酸性官能基を有するトリアジン誘導体との相互作用能力に優れ、誘導体を介して酸性に偏った炭素系触媒材料の表面への吸着基として機能する。さらに、吸着性をより向上させるために、主鎖にアミノ基を導入することも可能である。
以下、塩基性官能基を有する重合体(G1)の各構成要素について説明する。
<片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)>
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)(以下、ビニル重合体(A1)と略記する場合がある。)は、分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a11)の存在下に、エチレン性不飽和単量体(a12)をラジカル重合することで得ることができる。ビニル重合体(A1)のビニル重合体部位は、炭素系触媒材料に親和性の高い部位であり、下記式(15)で表される。
上記式(15)において、
501は、化合物(a11)からヒドロキシル基とチオール基とを除く残基であり、
502は、エチレン性不飽和単量体(a12)から二重結合部位及びR503を除く残基であり、
503は、水素原子又はメチル基であり、
501は、2以上の整数、好ましくは3〜200の整数である。
ここで,R501がビニル重合体(A1)でいう、末端領域となる。
<分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a11)>
分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a11)(以下、化合物(a11)と表記する場合がある。)としては、分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物であれば特に限定されず、例えば、1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)、2−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,2−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
目的とする片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)の分子量にあわせて、化合物(a11)とエチレン性不飽和単量体(a12)と、任意に重合開始剤とを混合して加熱することでビニル重合体(A1)を得ることができる。エチレン性不飽和単量体(a12)100重量部に対して、化合物(a11)を0.5〜30重量部用い、塊状重合又は溶液重合を行うことが好ましい。エチレン性不飽和単量体(a12)100重量部に対する化合物(a11)の使用量は、より好ましくは、1〜20重量部、更に好ましくは2〜15重量部、特に好ましくは2〜10重量部である。反応温度は、40〜150℃、好ましくは50〜110℃である。上記化合物(a11)の使用量が0.5重量部未満であると、ビニル重合体部位の分子量が高すぎて、炭素系触媒材料及び溶剤に対する親和性部位として、その絶対量が増えてしまい、分散性の効果自体が低下する場合がある。一方、上記使用量が30重量%を超えると、ビニル重合体部の分子量が低すぎて、炭素系触媒材料及び溶剤に対する親和性部位として、その立体反発の効果がなくなると共に、炭素系触媒材料の凝集を抑えることが困難になる場合がある。
<重合開始剤>
重合の際、エチレン性不飽和単量体(a12)100重量部に対して、任意に0.001〜5重量部の重合開始剤を使用することができる。重合開始剤としては、アゾ系化合物及び有機過酸化物を用いることができる。アゾ系化合物の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、及び2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。有機過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、及びジアセチルパーオキシド等があげられる。これらの重合開始剤は、単独で、もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
<重合溶剤>
溶液重合の場合には、重合溶媒として、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、及びジエチレングリコールジエチルエーテル等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。これらの重合溶媒は、2種類以上混合して用いても良いが、最終用途で使用する溶剤であることが好ましい。
<エチレン性不飽和単量体(a12)>
エチレン性不飽和単量体(a12)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、及びフェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート類;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、及びオキセタン(メタ)アクリレート等の複素環式(メタ)アクリレート類;メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、及びエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、及びアクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びN,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類;並びに、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類等が挙げられる。
又、上記アクリル系単量体と併用できる単量体として、スチレン、及びα−メチルスチレン等のスチレン類;エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、及びイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;並びに、酢酸ビニル、及びプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類等が挙げられる。
又、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を併用することもできる。カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びクロトン酸等から1種又は2種以上を選択することができる。
<重合条件及びその他>
本発明においては、上記に例示したエチレン性不飽和単量体(a12)の中でも、分散性及び耐性の観点から、メチルメタクリレートが好ましく使用できる。炭素系触媒材料及び溶剤との親和性の観点から、メチルメタクリレートとブチルメタクリレート又はt−ブチルメタクリレートとを併用することがより好ましい。エチレン性不飽和単量体(a2)として、メチルメタクリレートを使用し、ブチルメタクリレートを使用しない場合には、エチレン性不飽和単量体(a12)の合計100重量%中、メチルメタクリレートの割合が30〜100重量%であることが好ましく、50〜100重量%であることがより好ましい。又、エチレン性不飽和単量体(a12)として、メチルメタクリレートとブチルメタクリレート又はt−ブチルメタクリレートとを併用する場合、両者の合計は、エチレン性不飽和単量体(a12)の30〜100重量%を占めることが好ましく、50〜100重量%を占めることがより好ましい。エチレン性不飽和単量体(a12)として、メチルメタクリレートを使用した場合、さらには、メチルメタクリレートとブチルメタクリレート又はt−ブチルメタクリレートとを併用した場合には、分散性がより良好となる。メチルメタクリレートとブチルメタクリレート又はt−ブチルメタクリレートの共重合部位は、分散性等の基本物性を保持する一方で、バインダー樹脂や分散溶媒との親和性もよく、汎用性が高い。
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)の、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)としては、500〜30,000であることが好ましく、1,000〜15,000であることがより好ましく、1,000〜8,000であることが特に好ましい。該重量平均分子量が500未満では、溶媒親和部による立体反発の効果が少なくなるとともに、炭素系触媒材料の凝集を防ぐことが困難となり、分散安定性が不十分となる場合がある。又30,000を超えると、溶媒親和部の絶対量が増えてしまい、分散性の効果自体が低下する場合がある。さらに、触媒ペースト組成物の粘度が高くなる場合がある。
上記の塩基性官能基を有する樹脂の重量平均分子量が500〜30,000であれば、炭素系触媒材料の凝集を防ぐことにより、触媒ペースト組成物の粘度上昇を抑えることに有利である。
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のガラス転移温度(Tg)は、塗膜の耐性が向上するという点から、50〜200℃が好ましく、50〜120℃がより好ましい。
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のTgは、下記のFoxの式で算出した値を用いた。なお、分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a11)由来の骨格もビニル重合体(A1)中に存在するが、ガラス転移温度を計算する以下の計算では除いている。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
上記計算式において、W1からWnは、使用している各単量体の重量分率を示し、Tg1からTgnは、各単量体から得られるそれぞれのホモポリマーのガラス転移温度(単位は絶対温度「K」)を示す。
算出に使用する主なホモポリマーのTgを下記に例示する。
メチルメタクリレート:105℃(378K)
ブチルメタクリレート:20℃(293K)
t−ブチルメタクリレート:107℃(380K)
ラウリルメタクリレート:−65℃(208K)
2−エチルヘキシルメタクリレート:−10℃(263K)
シクロヘキシルメタクリレート:66℃(339K)
ブチルアクリレート:−45℃(228K)
エチルアクリレート:−20℃(253K)
ベンジルメタクリレート:54℃(327K)
スチレン:100℃(373K)
<ジイソシアネート(B1)>
塩基性官能基を有する重合体(G1)の構成要素であるジイソシアネート(B1)としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、芳香族含有ジイソシアネート(b11)、脂肪族含有ジイソシアネート(b12)、芳香脂肪族含有ジイソシアネート(b13)、及び脂環族含有ジイソシアネート(b14)等が挙げられる。
芳香族含有ジイソシアネート(b11)としては、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、及び1,3−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン等が挙げられる。
脂肪族含有ジイソシアネート(b12)としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
芳香脂肪族含有ジイソシアネート(b13)としては、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、及び1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
脂環族含有ジイソシアネート(b14)としては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、及びメチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート等を挙げることができる。
以上、列挙したジイソシアネート(B1)は、必ずしもこれらに限定されるものではなく、2種類以上を併用して使用することもできる。
本発明に用いられるジイソシアネート(B)としては、3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート、IPDI)が難黄変性であるために好ましい。
<ポリアミン(D1)>
塩基性官能基を有する樹脂(G1)の構成要素であるポリアミン(D1)としては、少なくとも2つの一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物であり、イソシアネート基と反応しウレア結合を生成するために用いられる。このようなアミンとしてジアミン(d11)が挙げられる。
二つの一級アミノ基有するジアミン(d11)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、エチレンジアミン、プロピレンジアミン[別名:1,2−ジアミノプロパン又は1,2−プロパンジアミン]、トリメチレンジアミン[別名:1,3−ジアミノプロパン又は1,3−プロパンジアミン]、テトラメチレンジアミン[別名:1,4−ジアミノブタン]、2−メチル−1,3−プロパンジアミン、ペンタメチレンジアミン[別名:1,5−ジアミノペンタン]、ヘキサメチレンジアミン[別名:1,6−ジアミノヘキサン]、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、及びトリレンジアミン等の脂肪族ジアミン;イソホロンジアミン、及びジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン等の脂環式ジアミン;並びに、フェニレンジアミン、及びキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等を挙げることができる。
又、二つの二級アミノ基を有するジアミン(d11)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、及びN,N’−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン等を挙げることができる。
又、一級及び二級アミノ基を有するジアミン(d11)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、N−メチルエチレンジアミン[別名:メチルアミノエチルアミン]、N−エチルエチレンジアミン[別名:エチルアミノエチルアミン]、N−メチル−1,3−プロパンジアミン[別名:N−メチル−1,3−ジアミノプロパン又はメチルアミノプロピルアミン]、N,2−メチル−1,3−プロパンジアミン、N−イソプロピルエチレンジアミン[別名:イソプロピルアミノエチルアミン]、N−イソプロピル−1,3−ジアミノプロパン[別名:N−イソプロピル−1,3−プロパンジアミン又はイソプロピルアミノプロピルアミン]、及びN−ラウリル−1,3−プロパンジアミン[別名:N−ラウリル−1,3−ジアミノプロパン又はラウリルアミノプロピルアミン]等挙げることができる。
ポリアミンは少なくとも2つの一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物であり、一級及び/又は二級アミンがイソシアネート基と反応してウレア基を生成する、このウレア基が炭素系触媒材料への吸着部位になるが、ポリアミン(D1)が、両末端に2つの一級及び/又は二級アミノ基を有し、さらに、両末端以外に二級及び/又は三級アミノ基を有する化合物である場合には、炭素系触媒材料に対する吸着性が上がるため、特に好ましい。
このようなポリアミン(D1)としては、以下の様な両末端に2つの一級及び/又は二級アミノ基を有し、さらに、両末端以外に二級及び/又は三級アミノ基を有するポリアミン(d12)が挙げられる。
ポリアミン(d12)としては、メチルイミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン〕、ラウリルイミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)ラウリルアミン〕、イミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)アミン〕、N,N’−ビスアミノプロピル−1,3−プロピレンジアミン、及びN,N‘−ビスアミノプロピル−1,4−ブチレンジアミン等を挙げることができ、2つの1級アミノ基と1つの3級アミノ基を有するメチルイミノビスプロピルアミン、及びラウリルイミノビスプロピルアミンは、ジイソシアネートとの反応を制御し易いため好ましい。
2つの1級アミノ基と1つの2級アミノ基を有するイミノビスプロピルアミンは、炭素系触媒材料への吸着性が良く好ましい。
又、ポリアミン(D1)としては、2つ以上の一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体(d13)も使用することができる。
一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体(d13)としては、一級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体や二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体、例えば、ビニルアミンやアリルアミンの単独重合体(いわゆるポリビニルアミンやポリアリルアミン)、あるいはそれらと他のエチレン性不飽和単量体との共重合体、及び、エチレンイミンの開環重合体や塩化エチレンとエチレンジアミンとの重縮合体やオキサゾリドン−2の開環重合体(いわゆるポリエチレンイミン)から選ばれることが好ましい。重合体中における一級及び/又は二級アミノ基の含有率としては、重合体を基準として、単量体単位で10〜100重量%が好ましく、20〜100重量%がより好ましい。含有率が10重量%以上であれば、炭素系触媒材料の凝集を防ぎ、触媒ペースト組成物の粘度の上昇を抑えることに効果的である。
一級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体や二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、及びフマル酸等の不飽和カルボン酸;スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、クロロメチルスチレン、インデン、及びビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル;グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の官能基を有する(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の三級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、n−ブチル(メタ)アクリルアミド、tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、及びtert−オクチル(メタ)アクリルアミド等のアルキル(メタ)アクリルアミド;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の置換アルキル(メタ)アクリルアミド;1,3−ブタジエン、及びイソプレン等のジエン化合物;片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー、及び片末端メタクリロイル化ポリエチレングリコール等の重合性オリゴマー(マクロモノマー);並びにシアン化ビニル等を挙げることができる。
一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体の、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)としては、300〜75,000であることが好ましく、300〜20,000であることがより好ましく、500〜5,000であることが特に好ましい。該重量平均分子量が300〜75,000であれば、炭素系触媒材料の凝集を防ぐことにより、触媒ペースト組成物の粘度上昇を抑えることに効果的である。
<モノアミン(E1)>
塩基性官能基を有する樹脂(G1)の構成要素であるアミン化合物としては、ポリアミン(D1)の他に、さらにモノアミン(E1)も使用することができる。モノアミン(E1)としては、分子内に第一級アミノ基又は第二級アミノ基を1個有するモノアミン化合物であり、モノアミン(E1)は、ジイソシアネート(B1)とポリアミン(D1)の反応において高分子量化しすぎるのを抑えるため、反応停止剤として使用される。モノアミン(E1)は、分子内に第一級アミノ基又は第二級アミノ基以外の他の極性官能基を有しても良い。このような極性官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シアノ基、ニトロキシル基等が挙げられる。
モノアミン(E1)としては、従来公知のものが使用でき、具体的には、アミノメタン、アミノエタン、1−アミノプロパン、2−アミノプロパン、1−アミノブタン、2−アミノブタン、1−アミノペンタン、2−アミノペンタン、3−アミノペンタン、イソアミルアミン、N−エチルイソアミルアミン、1−アミノヘキサン、1−アミノヘプタン、2−アミノヘプタン、2−オクチルアミン、1−アミノノナン、1−アミノデカン、1−アミノドデカン、1−アミノトリデカン、1−アミノヘキサデカン、ステアリルアミン、アミノシクロプロパン、アミノシクロブタン、アミノシクロペンタン、アミノシクロヘキサン、アミノシクロドデカン、1−アミノ−2−エチルヘキサン、1−アミノ−2−メチルプロパン、2−アミノ−2−メチルプロパン、3−アミノ−1−プロペン、3−アミノメチルヘプタン、3−イソプロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−イソブトキシプロピルアミン、2−エチルヘキシロキシプロピルアミン、3−デシロキシプロピルアミン、3−ラウリロキシプロピルアミン、3−ミリスチロキシプロピルアミン、2−アミノメチルテトラヒドロフラン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−プロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジsec−ブチルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリニックアシッド、イソニペコチックアシッド、メチルイソニペコテート、エチルイソニペコテート、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンブチリックアシッド塩酸塩、4−ピペリジノール、ピロリジン、3−アミノピロリジン、3−ピロリジノール、インドリン、アニリン、N−ブチルアニリン、o−アミノトルエン、m−アミノトルエン、p−アミノトルエン、o−ベンジルアニリン、p−ベンジルアニリン、1−アニリノナフタレン、1−アミノアントラキノン、2−アミノアントラキノン、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、5−アミノイソキノリン、o−アミノジフェニル、4−アミノジフェニルエーテル、β−アミノエチルベンゼン、2−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、o−アミノアセトフェノン、m−アミノアセトフェノン、p−アミノアセトフェノン、ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、3−ベンジルアミノプロピオニックアシッドエチルエーテル、4−ベンジルピペリジン、α−フェニルエチルアミン、フェネシルアミン、p−メトキシフェネシルアミン、フルフリルアミン、p−アミノアゾベンゼン、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、アリルアミン、及びジフェニルアミン等が挙げられる。
中でも、剛直性のない脂肪族アミンで第二級アミノ基のみを有するモノアミン化合物は、分散性も良好であり好ましい。
第二級アミノ基のみを有する脂肪族モノアミン化合物としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−プロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジsec−ブチルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール、4−ピペリジノール、ピロリジン、3−アミノピロリジン、及び3−ピロリジノール等が挙げられる。
又、三級アミノ基は、イソシアネート基と反応する活性水素を有していないため、一級又は二級アミノ基と、三級アミノ基とを有するジアミンは、モノアミン(E1)として使用することができ、本発明に分散剤の重合体末端に、炭素系触媒材料への吸着能を向上させる効果がある三級アミノ基を導入することができる。
一級又は二級アミノ基と、三級アミノ基とを有するジアミンとしては、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、及びN,N,2,2−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン等の一級アミノ基と三級アミノ基とを有するジアミン;並びに、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン等の二級アミノ基と三級アミノ基とを有するジアミンを挙げることができる。
これらのモノアミン(E1)化合物は、一種類又は二種類以上混合して用いてもよい。なお、一級アミノ基とイソシアネート基が反応した後のウレア結合の活性水素は、反応性が低く、分散剤の重合条件では、それ以上イソシアネート基と反応し、分子量が大きくなることはない。
<ウレタンプレポリマー(C1)>
塩基性官能基を有する重合体(G1)の構成要素であるウレタンプレポリマー(C1)は片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のヒドロキシル基と、ジイソシアネート(B1)のイソシアネート基と、を反応して得られる。
例えば、ビニル重合体(A1)のモル数をα、ジイソシアネート(B1)のモル数をβとした場合、α/β=α/(α+1)の時、理論上、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーが得られる。αを正の整数とすると、αが大きくなるほど分子量が高くなる。実際の構造制御については、詳しくは後述する。
<合成触媒(F1)>
ウレタンプレポリマー(C1)の合成時には、公知の触媒(F1)を使用することができる。例えば、三級アミン系化合物、及び有機金属系化合物を挙げることができる。
三級アミン系化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、及びジアザビシクロウンデセン(DBU)を挙げることができる。
有機金属系化合物としては錫系化合物、及び非錫系化合物を挙げることができる。
錫系化合物としては、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、及び2−エチルヘキサン酸錫を挙げることができる。
上記非錫系化合物としては、例えば、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン系、オレイン酸鉛;2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、及びナフテン酸鉛等の鉛系;2−エチルヘキサン酸鉄、及び鉄アセチルアセトネート等の鉄系;安息香酸コバルト、及び2−エチルヘキサン酸コバルト等のコバルト系;ナフテン酸亜鉛、及び2−エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛系;並びに、ナフテン酸ジルコニウム等のジルコニウム系を挙げることができる。
上記触媒の中でも、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、及び2−エチルヘキサン酸錫等が反応性や衛生性の点で好ましい。
上記3級アミン系化合物、及び有機金属系化合物等の触媒は、場合によっては単独でも使用できるが、併用することもでる。
ウレタンプレポリマー(E)合成時に用いる有機金属化合物触媒は、後述のアミンとの更なる反応においても、該反応を著しく促進する。
<合成溶剤>
ウレタンプレポリマー(C1)の合成時には公知の溶剤が好適に使用される。溶剤の使用は反応制御を容易にする役割を果たす。
かかる目的で使用される溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びジエチレングリコールジエチルエーテル等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。
ウレタンプレポリマー(C1)の溶解性、溶剤の沸点等、アミンの溶解性の点から特に酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、又はこれらの混合溶剤が好ましい。
又、溶剤を使用した場合のウレタンプレポリマー反応系内の濃度は、ウレタンプレポリマーの固形分濃度に換算して、反応制御の観点から、好ましくは30〜95重量%であり、粘度制御の観点から、さらに好ましくは40〜90重量%である。30重量%未満では、反応が遅くなり、未反応物が残ることがあるため好ましくない。95重量%を超えると、反応が部分的に急激に進む場合があり、分子量等のコントロールが難しくなるため好ましくない。
<合成条件>
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のヒドロキシル基とジイソシアネート(B1)のイソシアネート基とを反応させてウレタンプレポリマー(C1)を調製するウレタン化反応には、種々の方法を適用することができる。代表的な方法は、1)全量仕込みで反応する場合と、2)片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A)及び必要に応じて、溶剤をフラスコに仕込み、ジイソシアネート(B1)を滴下した後、必要に応じて触媒を添加する方法に大別される。反応を精密に制御する場合は2)の方法が好ましい。ウレタンプレポリマー(C1)を得る反応の温度は120℃以下が好ましい。更に好ましくは50〜110℃である。110℃より高くなると反応速度の制御が困難になり、所定の分子量と構造を有するウレタンプレポリマーが得られなくなる。ウレタン化反応は、触媒の存在下、50〜110℃で1〜20時間にわたって行うことが好ましい。
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)とジイソシアネート(B1)の配合比は、片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のモル比率を整数αとした時、ジイソシアネート(B1)のモル比率がα+1で、理論上、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C1)が合成できる。αの最小が1なので、ビニル重合体(A1)に対するジイソシアネート(B1)の配合モル比率(α+1)/αは2以下となる。ジイソシアネートをさらに増やした場合、ウレタンプレポリマー(C1)と過剰のジイソシアネート(B)の混合物中のイソシアネート基の全てを、ポリアミン(D1)とモノアミン(E1)の一級及び/又は二級アミノ基と反応するように設計すれば、過剰のジイソシアネート(B1)を分散剤分子の中に取り込むことが可能である。通常のウレタンプレポリマー(C1)を合成する場合、ポリオールを残さないために、次工程のポリアミンによる鎖延長を見込んで、過剰のポリイソシアネートを配合する場合が多い。しかし、過剰なジイソシアネート(B1)由来の重合体の構成単位や過剰なジイソシアネート(B1)の加水分解物由来の不純物が、炭素系触媒材料の分散性や経時安定性に悪影響を与える可能性が高い。
従って、片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)に対するジイソシアネート(B1)の配合モル比は、ウレタンプレポリマー(C1)の生産性の観点から、1.01〜3.00が好ましく、1.30〜2.30がより好ましく、1.50〜2.00が最も好ましい。上記配合モル比が小さすぎると、分散剤が高分子量になり、実用上問題がある。又、前述通り、上記配合モル比が2.00より大きいと、ビニル重合体(A1)由来のビニル重合部を持たないジイソシアネート(B1)及びそれ由来のウレタン部位が増え、分散性に悪影響を及ぼす。
<塩基性官能基を有する樹脂(G1)の製造方法及び合成条件等>
塩基性官能基を有する重合体(G1)は、分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a11)の存在下、エチレン性不飽和単量体(a12)をラジカル重合してなる、片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)を製造する第一の工程と、上記片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のヒドロキシル基とジイソシアネート(B1)のイソシアネート基とを反応してなる両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C1)を製造する第二の工程と、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C1)のイソシアネート基とポリアミン(D1)及びモノアミン(E2)の一級及び/又は二級アミノ基とを反応させる第三の工程とを含む方法によって製造することができる。
塩基性官能基を有する重合体(G1)において、ウレタンプレポリマー(C1)、ポリアミン(D1)、及びモノアミン(E1)、からウレタンウレア樹脂、又は末端に一級又は二級のアミノ基を有するポリウレタンウレアを得るためのウレア反応は、
1)ウレタンプレポリマー(C1)溶液をフラスコに仕込み、ポリアミン(D1)、及びモノアミン(E1)を滴下する方法、
2)ポリアミン(D1)、及びモノアミン(E1)、及び必要に応じて溶剤からなる溶液をフラスコに仕込み、ウレタンプレポリマー(C1)溶液を滴下する方法、に大別される。
安定して反応を実施できる方法を適宜選択して合成を行ってよいが、反応に問題がなければ、操作がより容易な上記1)の方法が好ましい。ウレア反応の温度は、100℃以下が好ましい。更に好ましくは70℃以下である。70℃でも反応速度は大きく、制御できない場合は、50℃以下が更に好ましい。100℃より高くなると反応速度の制御が困難であり、所定の分子量と構造を有するウレタンウレア樹脂を得ることは難しい。
又、ウレタンプレポリマー(C1)、及びポリアミン(D1)、さらに必要に応じてモノアミン(E1)との配合比は、特に限定されず、用途と要求性能により任意に選択される。
反応の終点は、滴定によるイソシアネート%測定、IR測定によるイソシアネートピークの消失により判断する。
塩基性官能基を有する重合体(G1)の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは1,500〜50,000、特に好ましくは1,500〜20,000である。重量平均分子量が1,000未満であれば、分散性が低下する場合があり、100,000を超えると樹脂間の相互作用が強くなり、組成物の増粘が起きる場合がある。又、得られた重合体のアミン価は、1〜100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは2〜50mgKOH/g、さらに好ましくは3〜30mgKOH/gである。アミン価が1mgKOH/g未満であれば、炭素系触媒材料と吸着する官能基が不足するため、炭素系触媒材料の分散に寄与することが困難になる場合があり、100mgKOH/gを超えると、炭素系触媒材料同士の凝集が起こり、粘度低下効果の不足や塗膜に不具合を生じさせる場合がある。
<塩基性官能基を有する樹脂(G2)>
本発明で用いることのできる塩基性官能基を有する重合体(G2)は、片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の(メタ)アクリロイル基と、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を含むポリアミン(B2)の一級及び/又は二級アミノ基と、を反応してなる、アミノ基を有する重合体(C2)の一級及び/又は二級アミノ基と、2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基とを反応させることによって合成される。
すなわち、重合体(A2)由来の溶媒親和性部位と、ポリアミン(C2)の一級及び/又は二級アミノ基と、ポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基と、を反応してなる、アミノ基及びウレア結合部位を有する炭素系触媒材料への吸着性部位を有する構造となっている。上記アミノ基及びウレア結合部位を有する炭素系触媒材料への吸着部位が、酸性官能基を有する有機色素誘導体、又は酸性官能基を有するトリアジン誘導体との相互作用能力に優れ、更に、誘導体を介して酸性に偏った炭素系触媒材料表面に対する吸着性に優れ、分散安定化を図ることが可能である。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、及び「(メタ)アクリロイルオキシ」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、及び「アクリロイルオキシ及び/又はメタクリロイルオキシ」を表すものとする。
<片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)>
本発明における重合体(A)の重量平均分子量は500〜30,000が好ましく、これによって、立体反発効果に優れ、高い分散性及び保存安定性を得ることが可能である。重合体(A)の重量平均分子量はさらに好ましくは2,000から20,000であり、最も好ましくは5,000から10,000である。500未満では、溶媒親和性ブロックによる立体反発効果が少なくなるため、好ましくない場合がある。また、30,000を超える場合は、分散体の粘度が高くなり好ましくない場合がある。
本発明における重合体(A)は、ポリエステル(A21)、又はビニル重合体(A22)であることが好ましい。これらは溶剤への親和性が良好であり、また、分子量を調整することが容易である。また、片末端領域の(メタ)アクリロイル基は、一級及び/又は二級アミノ基との反応制御の観点から、比較的低温で反応が進むアクリロイル基が好ましい。
<ポリエステル(A21)>
ポリエステル(A21)は、公知の方法で製造することができ、例えば、(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコールを開始剤としてラクトン及び/又はラクチドを開環重合することで容易に得ることができる。
<(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコール>
開環重合の開始剤として使用する(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコールとしては、特に限定はなく、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、及び2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる、ヒドロキシル基の反応性の観点から、4−ヒドロキシブチルアクリレート、及び2−ヒドロキシエチルアクリレートからなる群から選ばれる1種類以上を使用するのが好ましい。
<ラクトン及びラクチド>
ラクトンとしては、特に限定はなく、具体的にはβ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、及びアルキル置換されたε−カプロラクトン等が挙げられるが、開環重合性の観点から、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、及びアルキル置換されたε−カプロラクトンからなる群から選ばれる1種類以上を使用するのが好ましい。
ラクトンは、上記例示に限定されることなく用いることができ、また単独で用いても、2種類以上を併用して用いても構わない。
ラクチドとしては、下記式(16)で示されるものが好ましい(グリコリドを含む)。
式(16)において、
1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、又は、飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝の炭素原子数1〜20のアルキル基であり、
3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は、飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝の炭素原子数1〜9の低級アルキル基である。
特に好適なラクチドは、ラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)及びグリコリド(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)である。
上記ラクトン及びラクチドは、単独で用いても、2種以上併用しても構わない。ラクトンとラクチドとでは、溶媒親和性の観点から、ラクトンを使用することが好ましい。
開始剤1モルに対するラクトン及び/又はラクチドの重合モル数は、3〜60モルの範囲が好ましく、更には10〜40モルが好ましく、最も好ましくは15〜30モルである。3モル未満では、分子量が小さくなり、溶媒親和性部位として、十分機能しない。60モルを超えると、分子量が大きくなりすぎて、炭素系触媒材料の分散剤として使用した時に、組成物の粘度が高くなり、問題が発生しやすくなる。
<開環重合触媒>
開環重合触媒としては、公知のものを制限なく使用することができるが、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨード、テトラブチルアンモニウムヨード、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、及びベンジルトリメチルアンモニウムヨード等の四級アンモニウム塩;
テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムヨード、テトラブチルホスホニウムヨード、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリメチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリメチルホスホニウムヨード、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、及びテトラフェニルホスホニウムヨード等の四級ホスホニウム塩;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸カリウム、及び安息香酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩;ナトリウムアルコラート、及びカリウムアルコラート等のアルカリ金属アルコラート;トリエチルアミン、及びトリフェニルアミン等の三級アミン類;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキシド、及びジオクチル錫オキシド等の有機錫化合物;アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等の有機アルミニウム化合物;テトラ−n−ブチルチタネート、上記ダイマー、テトライソブチルチタネート、テトラステアリルチタネート、及びジイソプロポキシ・ビス(トリエタノールアミネート)チタン等の有機チタネート化合物;並びに、塩化亜鉛等の亜鉛化合物等が挙げられる。
開環重合触媒の使用量は、ラクトン及び/又はラクチド100重量%に対して、0.1ppm〜3000ppm、好ましくは1ppm〜1000ppmである。触媒量が3000ppmを超えると、樹脂の着色が激しくなる場合がある。逆に、触媒の使用量が0.1ppm未満ではラクトン及び/又はラクチドの開環重合速度が極めて遅くなるので好ましくない場合がある。
<合成条件>
ラクトン及び/又はラクチドの開環重合温度は、100℃〜220℃、好ましくは、110℃〜210℃の範囲で行う。反応温度が100℃未満では反応速度がきわめて遅くなる場合がある。一方、重合温度が220℃を超えるとラクトン及び/又はラクチドの付加反応以外の副反応、例えば、ラクトン付加体のラクトンモノマーへの解重合、環状のラクトンダイマーやトリマーの生成等が起こりやすい場合がある。
<ラジカル重合禁止剤>
(メタ)アクリロイル基を有する化合物を重合する際には、ラジカル重合禁止剤を添加し、乾燥空気流下で反応を行うことが好ましい。ラジカル重合禁止剤としては、公知のものを制限なく使用することができるが、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、及びフェノチアジン等が好ましい。これらを単独もしくは併用で、(メタ)アクリロイル基を有するアルコール100重量%に対して、0.01重量%〜6重量%、好ましくは、0.05重量%〜1.0重量%の範囲で用いる。
ポリエステル(A21)は、(メタ)アクリロイル基を有さないモノアルコールを開始剤としてラクトンを開環重合して得られた片末端にヒドロキシル基を有するポリエステルに、ヒドロキシル基と反応し得る基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させることでも得ることができる。
<ヒドロキシル基と反応し得る基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物>
ヒドロキシル基と反応し得る基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、イソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどが挙げられる。
又、ポリエステル(A21)の調製では、最初に(メタ)アクリロイル基を有さないモノアルコールを開始剤としてラクトンを開環重合して、片末端にヒドロキシル基を有するポリエステルを調製した後に、上記ポリエステルと二塩基酸無水物基を一個有する化合物を反応させて、片末端にカルボキシル基を有するポリエステルを調製する。次いで、上記カルボキシル基を有するポリエステルと、エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させるか、エポキシ基が開環して得られたヒドロキシル基と反応し得る基及び上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させることによって実施することができる。この場合、片末端領域に2個の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(A21)が得られる。
<(メタ)アクリロイル基を有さないモノアルコール>
(メタ)アクリロイル基を有さないモノアルコールとしては、ヒドロキシル基を一個有する化合物であればいかなる化合物でも構わない。
例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、イソペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、イソノナノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−ミリスチルアルコール、セチルアルコール、1−ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、及びオレイルアルコールなどの脂肪族モノアルコール;ベンジルアルコール、フェノキシエチルアルコール、及びパラクミルフェノキシエチルアルコール等の芳香環含有モノアルコール;並びに、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、及びテトラジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。
<二塩基酸無水物基を一個有する化合物>
二塩基酸無水物基を一個有する化合物は、二塩基酸無水物基を一個有する化合物であればいかなる化合物でも構わない。
例えば、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、シクロヘキセン1−2−ジカルボン酸無水物、ジシクロ[2,2,2]−オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、フタル酸無水物、ナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸無水物、アントラセン−1,2−ジカルボン酸無水物、及びアントラセン−2,3−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。又、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、環状アルキル基、複素環、芳香環、及びハロゲン等の置換基を有する上記ニ塩基酸無水物も挙げられる。
<エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物>
エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、グリシジルアクリレート、メチルグリシジルアクリレート、3,2−グリシドキシエチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレート、3,4−エポキシブチルアクリレート、及び4,5−エポキシペンチルアクリレート等が挙げられる。
又、ポリエステル(A21)は、(メタ)アクリロイル基を有さないモノカルボン酸を開始剤としてラクトンを開環重合して得られた片末端にカルボキシル基を有するポリエステルに、更に、上記エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させ、更に、エポキシ基が開環して得られたヒドロキシル基と反応し得る、ヒドロキシル基と反応し得る基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させることでも得ることができる。この場合、片末端領域に2個の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(A21)が得られる。
<(メタ)アクリロイル基を有さないモノカルボン酸>
(メタ)アクリロイル基を有さないモノカルボン酸は、(メタ)アクリロイル基を有しない、カルボキシル基を有する化合物であればいかなる化合物でも構わない。
例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸等が挙げられる。
<ビニル重合体(A22)>
片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(A22)は、片末端領域に1個又は2個のヒドロキシル基を有するビニル重合体(a23)に、ヒドロキシル基と反応し得る基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a24)を反応させることで得ることができる。
片末端領域に1個又は2個のヒドロキシル基を有するビニル重合体(a23)(以下、ビニル重合体(a23)と略記する場合がある。)は、分子内に1個又は2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s)の存在下に、エチレン性不飽和単量体(a21)をラジカル重合することで得ることができる。分子内に1個又は2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s)のチオール基が連鎖移動剤として働き、S原子を介してビニル重合体(a23)が合成されるので、その分子量は、エチレン性不飽和単量体(a21)に対する上記化合物(s)の使用量によってビニル重合体(a23)の分子量を上記範囲に調整することが容易であり、その結果、溶剤への親和性も好適に調整することができる。
<分子内に1個又は2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s)>
分子内に1個又は2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s)としては、例えば、 1−メルカプトエタノール、及び2−メルカプトエタノール等の分子内に1個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s1);並びに、1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)、2−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,2−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等の分子内に2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s2)が挙げられる。
本発明では、分子内に2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s2)であることが好ましく、さらに好ましくは3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)である。
分子内に2個のヒドロキシル基と1個のチオール基を有する化合物(s2)を用いることによって、最終的に得られる分散剤が、複数のアミノ基を有する炭素系触媒材料への吸着部位と、複数の溶媒親和性部位とを有する理想的な構造となる。
<エチレン性不飽和単量体(a21)>
エチレン性不飽和単量体(a21)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)、ターシャリブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びイソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、及びテトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロキシ変性ポリジメチルシロキサン(シリコーンマクロマー)類;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、及び3−メチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート類;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート類;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル(メタ)アクリレート、及びポリエチレングリコールモノステアリルエーテル(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート類;アクリル酸、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、及びクロトン酸等の不飽和カルボン酸類;上記カルボン酸のカプロラクトン付加物(付加モル数1〜5)類;2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、及びω−カルボキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート類;スチレン、及びα−メチルスチレン等のスチレン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリル酸ビニル、及び(メタ)アクリル酸アリル等のビニル類;
エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、(メタ)アクリルアミド、及びN−ビニルホルムアミド等のアミノ基を有しないアミド類;並びに、アミノ基を有しないアクリロニトリル等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。
本発明においては、上記に例示したエチレン性不飽和単量体(a21)の中でも、下記式(17)で表わされるエチレン性不飽和単量体(a22)を使用することが好ましい。下記式(17)で表されるエチレン性不飽和単量体(a22)の使用量は、エチレン性不飽和単量体(a21)全体に対して20重量%〜100重量%が好ましく、20〜70重量%がより好ましい。式(17)で表される単量体を用いると、溶媒親和性が良くなり、分散性が良好になる。20重量%未満では、溶媒親和性を向上させる効果が不十分である。
式(17)において、R5は、炭素原子数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である。
<化合物(s)の使用量>
上記化合物(s)を連鎖移動剤として、目的とするビニル重合体(a23)の分子量にあわせて、エチレン性不飽和単量体(a21)と、任意に重合開始剤とを混合して加熱することでビニル重合体(a23)を得ることができる。化合物(s)は、エチレン性不飽和単量体(a21)100重量部に対して、0.8〜30重量部を用い、塊状重合または溶液重合を行うのが好ましく、より好ましくは1.5〜15重量部、さらに好ましくは2〜9重量部、特に好ましくは5〜9重量部である。1重量部未満では、分子量が大きくなり、分散体の粘度が高くなり好ましくない場合がある。30重量部を超えると、分子量が小さくなり、溶媒親和性ブロックによる立体反発効果が少なくなるため、好ましくない場合がある。
反応温度は40〜150℃、好ましくは50〜110℃である。40℃未満では、十分に重合が進行せず、150℃を超えると、高分子量化が進む等、分子量のコントロールが困難になる。
<ラジカル重合開始剤>
ラジカル重合の際、エチレン性不飽和単量体(a21)100重量部に対して、任意に0.001〜5重量部の重合開始剤を使用することができる。
重合開始剤としては、例えば、
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、及び2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等のアゾ系化合物および有機過酸化物;並びに、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、及びジアセチルパーオキシド等の有機過酸化物な等が挙げられ、これらの重合開始剤は、単独で、もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
<ヒドロキシル基と反応し得る基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a24)>
ヒドロキシル基と反応し得る基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a24)としては、イソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどが挙げられる。
<重合溶剤>
ポリエステル(A21)及びビニル重合体(A22)は、無溶剤、又は、必要に応じて溶剤を使用して合成することができる。
溶液重合の場合には、重合溶媒として、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及びN−メチルピロリドン等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。これらの重合溶媒は、2種類以上混合して用いても良い。重合反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま次の工程の溶剤として使用するか、又は製品の一部として使用することもできる。
<ポリアミン(B2)>
ポリアミン(B2)は、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物であり、一級及び/又は二級アミンが片末端領域に(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の(メタ)アクリロイル基に付加反応し、アミノ基を有する重合体(C2)を生成する。さらに、アミノ基を有する重合体(C2)の一級及び/又は二級アミンの内、一部又は全部をポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基と反応させてウレア基を生成する。すなわち、片末端領域に存在するアミノ基及びウレア結合が炭素系触媒材料への吸着部位になる。このようなポリアミン(B2)としてジアミン(b21)が挙げられる。また、ポリアミン(B2)が、両末端に2個の一級及び/又は二級アミノ基を有し、さらに、両末端以外に二級及び/又は三級アミノ基を有する化合物である場合には、炭素系触媒材料に対しての吸着性が向上するため、特に好ましい。
2個の一級アミノ基を有するジアミン(b21)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、エチレンジアミン、プロピレンジアミン[別名:1,2−ジアミノプロパン又は1,2−プロパンジアミン]、トリメチレンジアミン[別名:1,3−ジアミノプロパン又は1,3−プロパンジアミン]、テトラメチレンジアミン[別名:1,4−ジアミノブタン]、2−メチル−1,3−プロパンジアミン、ペンタメチレンジアミン[別名:1,5−ジアミノペンタン]、ヘキサメチレンジアミン[別名:1,6−ジアミノヘキサン]、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、及びトリレンジアミン等の脂肪族ジアミン;イソホロンジアミン、及びジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン等の脂環式ジアミン;並びに、 フェニレンジアミン、及びキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等を挙げることができる。
又、2個の二級アミノ基を有するジアミン(b21)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、及びN,N’−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン等を挙げることができる。
又、一級及び二級アミノ基を有するジアミン(b21)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、 N−メチルエチレンジアミン[別名:メチルアミノエチルアミン]、N−エチルエチレンジアミン[別名:エチルアミノエチルアミン]、N−メチル−1,3−プロパンジアミン[別名:N−メチル−1,3−ジアミノプロパン又はメチルアミノプロピルアミン]、N,2−メチル−1,3−プロパンジアミン、N−イソプロピルエチレンジアミン[別名:イソプロピルアミノエチルアミン]、N−イソプロピル−1,3−ジアミノプロパン[別名:N−イソプロピル−1,3−プロパンジアミン又はイソプロピルアミノプロピルアミン]、及びN−ラウリル−1,3−プロパンジアミン[別名:N−ラウリル−1,3−ジアミノプロパン又はラウリルアミノプロピルアミン]等挙げることができる。
又、一級及び三級アミノ基を有するジアミン(b21)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、N,N−ジメチルエチレンジアミン[別名:ジメチルアミノエチルアミン]、N,N−ジエチルエチレンジアミン[別名:ジエチルアミノエチルアミン]、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン[別名:N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン又はジメチルアミノプロピルアミン]等挙げることができる。
両末端に2個の一級及び/又は二級アミノ基を有し、さらに、両末端以外に二級及び/又は三級アミノ基を有するポリアミン(b22)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、メチルイミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン〕、ラウリルイミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)ラウリルアミン〕、イミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)アミン〕、N,N’−ビスアミノプロピル−1,3−プロピレンジアミン、及び、N,N’−ビスアミノプロピル−1,4−ブチレンジアミン等を挙げることができ、2個の一級アミノ基と1個の三級アミノ基を有するメチルイミノビスプロピルアミン、及びラウリルイミノビスプロピルアミンは、ジイソシアネートとの反応制御がし易く好ましい。
2個の一級アミノ基と1個の二級アミノ基を有するイミノビスプロピルアミンは、炭素系触媒材料への吸着性が良く好ましい。
又、ポリアミン(B2)としては、2個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体(b23)も使用することができる。
一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体(b23)としては、一級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体や二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体、例えば、ビニルアミンやアリルアミンの単独重合体(いわゆるポリビニルアミンやポリアリルアミン)、あるいはそれらと他のエチレン性不飽和単量体との共重合体、及び、エチレンイミンの開環重合体や塩化エチレンとエチレンジアミンとの重縮合体やオキサゾリドン−2の開環重合体(いわゆるポリエチレンイミン)から選ばれることが好ましい。重合体中における一級及び/又は二級アミノ基の含有率としては、重合体を基準として、単量体単位で10〜100重量%が好ましく、20〜100重量%がより好ましい。含有率が10重量%以上であれば、炭素系触媒材料の凝集を防ぎ、粘度の上昇を抑えることに効果的である。
一級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体や二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、及びフマル酸等の不飽和カルボン酸;スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、クロロメチルスチレン、インデン、及びビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル;グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の官能基を有する(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の三級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、n−ブチル(メタ)アクリルアミド、tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、及びtert−オクチル(メタ)アクリルアミド等のアルキル(メタ)アクリルアミド;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の置換アルキル(メタ)アクリルアミド;1,3−ブタジエン、及びイソプレン等のジエン化合物;片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー、及び片末端メタクリロイル化ポリエチレングリコール等の重合性オリゴマー(マクロモノマー);並びにシアン化ビニル等を挙げることができる。
一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体の、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)としては、300〜75,000であることが好ましく、300〜20,000であることがより好ましく、500〜5,000であることが特に好ましい。該重量平均分子量が300〜75,000であれば、炭素系触媒材料の凝集を防ぐことにより、触媒ペースト組成物の粘度上昇を抑えることに効果的である。
<モノアミン>
分散剤を構成するアミン化合物としては、ポリアミン(B2)の他に、さらにモノアミンも使用することができる。モノアミンとしては、分子内に第一級アミノ基又は第二級アミノ基を1個有するモノアミン化合物であり、モノアミンは、重合体(A2)とポリアミン(B)の反応において高分子量化しすぎるのを抑えるため、反応停止剤として使用される。モノアミンは、分子内に第一級アミノ基又は第二級アミノ基以外の他の極性官能基を有しても良い。このような極性官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シアノ基、ニトロキシル基等が挙げられる。
モノアミンとしては、従来公知のものが使用でき、具体的には、アミノメタン、アミノエタン、1−アミノプロパン、2−アミノプロパン、1−アミノブタン、2−アミノブタン、1−アミノペンタン、2−アミノペンタン、3−アミノペンタン、イソアミルアミン、N−エチルイソアミルアミン、1−アミノヘキサン、1−アミノヘプタン、2−アミノヘプタン、2−オクチルアミン、1−アミノノナン、1−アミノデカン、1−アミノドデカン、1−アミノトリデカン、1−アミノヘキサデカン、ステアリルアミン、アミノシクロプロパン、アミノシクロブタン、アミノシクロペンタン、アミノシクロヘキサン、アミノシクロドデカン、1−アミノ−2−エチルヘキサン、1−アミノ−2−メチルプロパン、2−アミノ−2−メチルプロパン、3−アミノ−1−プロペン、3−アミノメチルヘプタン、3−イソプロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−イソブトキシプロピルアミン、2−エチルヘキシロキシプロピルアミン、3−デシロキシプロピルアミン、3−ラウリロキシプロピルアミン、3−ミリスチロキシプロピルアミン、2−アミノメチルテトラヒドロフラン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−プロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジsec−ブチルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリニックアシッド、イソニペコチックアシッド、メチルイソニペコテート、エチルイソニペコテート、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンブチリックアシッド塩酸塩、4−ピペリジノール、ピロリジン、3−アミノピロリジン、3−ピロリジノール、インドリン、アニリン、N−ブチルアニリン、o−アミノトルエン、m−アミノトルエン、p−アミノトルエン、o−ベンジルアニリン、p−ベンジルアニリン、1−アニリノナフタレン、1−アミノアントラキノン、2−アミノアントラキノン、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、5−アミノイソキノリン、o−アミノジフェニル、4−アミノジフェニルエーテル、β−アミノエチルベンゼン、2−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、o−アミノアセトフェノン、m−アミノアセトフェノン、p−アミノアセトフェノン、ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、3−ベンジルアミノプロピオニックアシッドエチルエーテル、4−ベンジルピペリジン、α−フェニルエチルアミン、フェネシルアミン、p−メトキシフェネシルアミン、フルフリルアミン、p−アミノアゾベンゼン、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、アリルアミン、及びジフェニルアミン等が挙げられる。
<アミノ基を有する重合体(C2)>
アミノ基を有する重合体(C2)は、下記式(18)に示すように、ポリアミン(B2)の一級又は二級のアミノ基が、片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の(メタ)アクリロイル基に対して、付加反応することによって得られる。この反応は、一般にMichael付加反応と呼ばれている。重合体(A2)及びポリアミン(B2)の配合を調整することにより、イソシアネート基と反応し得る一級又は二級のアミノ基を有する構造にすることができる。
式(18)において、X1は、重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y1は、ポリアミン(B2)の内、一級及び二級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、R7は、水素原子、又はアルキル基である。
例えば、下記式(19)のように、片末端領域に1個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の分子1個に対し、一級アミノ基を2個有するジアミン(B2)の分子1個を反応させた場合、理論上、一級アミノ基1個と二級アミノ基1個とを有する重合体(C2)の分子1個が得られる。
式(19)において、X1は、重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y2は、ポリアミン(B2)の内、一級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基である。
又、例えば、下記式(20)のように、片末端領域に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の分子1個に対し、一級アミノ基1個と二級アミノ基1個を有するジアミン(B2)の分子2個を反応させた場合、理論上、二級アミノ基4個を有する重合体(C2)の分子1個が得られる。
式(20)において、X2は、重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y2は、ポリアミン(B2)の内、一級及び二級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、R8は、アルキル基である。
更に、例えば、下記式(21)のように、片末端領域に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の分子n個に対し、一級アミノ基2個を有するジアミン(B)の分子(n+1)個を反応させた場合、理論上、一級アミノ基2個と二級アミノ基2n個とを有する重合体(C2)の分子1個が得られる。(nは、正の整数である。)
式(21)において、X2は、重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y2は、ポリアミン(B2)の内、一級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、nは、正の整数である。
又、例えば、下記式(22)のように、片末端領域に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の分子n個に対し、二級アミノ基2個を有するジアミン(B2)の分子(n+1)個を反応させた場合、理論上、二級アミノ基2個と三級アミノ基2n個とを有する重合体(C2)の分子1個が得られる。(nは、正の整数である。)
式(22)において、X2は、重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y2は、ポリアミン(B2)の内、二級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、R8は、アルキル基であり、nは、正の整数である。
理論上としたのは、上記4例は、一級アミノ基が、二級アミノ基より反応性が高いため、必ず優先的に反応すると仮定したが、実際には、反応条件等により、一級アミノ基が残っていても、先に二級アミノ基が反応する場合もある。そのため、一部、予想とは異なる構造の重合体(C2)が得られる場合もある。しかし、上記付加反応は、ほぼ量論的に反応が進行するので、大部分が目的とする構造の重合体(C2)が得られ、その後の反応や、最終的な分散剤としての機能に問題はない。
<合成条件>
片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)と、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B2)と、からアミノ基を有する重合体(C2)を得るためのマイケル反応は、1)全量仕込みで反応する方法、2)ポリアミン(B2)及び必要に応じて溶剤からなる溶液をフラスコに仕込み、重合体(A2)溶液を滴下する方法に大別される。安定して反応が実施できる方法を適宜選択して合成を行ってよいが、反応に問題がなければ、反応制御(分子設計制御)がより容易な上記2)の方法を適用することが好ましい。
マイケル反応の温度は、70℃以下が好ましい。更に好ましくは60℃以下である。60℃でも反応速度は大きく、制御できない場合は、50℃以下が更に好ましい。70℃より高くなると反応速度の制御が困難であり、所定の分子量と構造を有する重合体(C2)を得ることは難しくなる傾向がある。
又、片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B2)の配合比は、特に限定されず、用途と要求性能に応じて任意に選択される。反応の終点は、滴定に因るアミン%測定により判断する。
<アミノ基及びウレア結合を有する分散剤>
塩基性官能基を有する重合体(G2)は、アミノ基及びウレア結合を有する分散剤であり、アミノ基を有する重合体(C2)の一級又は二級のアミノ基と、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基を反応して得られる。アミノ基を有する重合体(C2)の一級又は二級のアミノ基は、反応させるポリイソシアネートの量を調整することにより、一部又は全部がウレア結合を形成し、残りは分散剤中にアミノ基として存在する。
また、アミノ基を有する重合体(C2)は一級又は二級のアミノ基以外にも三級アミノ基を有している場合は、三級アミノ基はイソシアネート基と反応せず、そのまま炭素系触媒材料吸着基として分散剤中に残る。
例えば、下記式(23)のように、一級アミノ基1個と二級アミノ基2個を有する重合体(C2)の分子2個に対し、ジイソシアネート(D2)の分子1個を反応させた場合、理論上、一級アミノ基が、イソシアネート基と反応してウレア結合を形成し、二級アミノ基4個とウレア結合2個とを有する分散剤が得られる。下記式(23)中のW1及びW2が、ポリアミン(B2)及び/又は重合体(C2)由来の三級アミノ基を有する場合、上記分散剤は、三級アミノ基も有する。
式(23)において、X1は、重合体(C2)の前駆体である重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、W1、及びW2は、重合体(C2)の前駆体であるポリアミン(B2)の内、一級及び二級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、Z1は、ポリイソシアネート(D2)の内、イソシアネート基を除いた部分である。
又、例えば、下記式(24)のように、二級アミノ基1個を有する重合体(C2)の分子2個に対し、ジイソシアネート(D2)の分子1個を反応させた場合、理論上、二級アミノ基が、イソシアネート基と反応してウレア結合を形成し、ウレア結合を有する分散剤が得られる。下記式(24)中のW3が、ポリアミン(B2)及び/又は重合体(C2)由来の三級アミノ基を有する場合、上記分散剤は、三級アミノ基も有する。上記分散剤は、活性水素を有するアミノ基は有しない。
式(24)において、X1は、重合体(C2)の前駆体である重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、W3は、重合体(C2)の前駆体であるポリアミン(B2)の内、一級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、Z1は、ポリイソシアネート(D2)の内、イソシアネート基を除いた部分である。
更に、例えば、下記式(25)のように、上記式(23)の生成物である、一級アミノ基2個と二級アミノ基2n個とを有する重合体(C2)の分子(m+1)個に対し、ジイソシアネート(D2)の分子m個を反応させた場合、理論上、一級アミノ基とイソシアネート基とが反応してウレア結合を形成し、一級アミノ基2個と二級アミノ基(2nm+2n)個とウレア結合2m個とを有する分散剤が得られる。下記式(25)中のY2が、ポリアミン(B2)及び/又は重合体(C2)由来の三級アミノ基を有する場合、上記分散剤は、三級アミノ基も有する。(n及びmは、正の整数である。)
式(25)において、X2は、重合体(C2)の前駆体である重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y2は、重合体(C2)の前駆体であるポリアミン(B2)の内、一級アミノ基を除いた部分であり、W4は、重合体(C2)の内、アミノ基を有する部位を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、Z1は、ポリイソシアネート(D2)の内、イソシアネート基を除いた部分であり、n及びmは、正の整数である。
又、例えば、下記式(26)のように、一級アミノ基1個を有するポリアミン(B2)の分子2個と(メタ)アクリロイル基2個を有する重合体(A2)の分子1個とを反応して得られる、重合体(A2)由来の部分から見て両末端領域に、二級アミノ基を1個ずつ、合わせて2個を有する重合体(C2)の分子(m+1)個に対し、ジイソシアネート(D2)の分子m個を反応させた場合、理論上、上記二級級アミノ基とイソシアネート基とが反応してウレア結合を形成し、ポリウレア鎖から見て両末端領域に、二級アミノ基を1個ずつ、合わせて2個有する分散剤が得られる。(mは、正の整数である。)
式(26)において、X2は、重合体(C2)の前駆体である重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y3は、ポリアミン(B2)の内、一級アミノ基を除いた部分であり、W5は、重合体(C2)の内、アミノ基を有する部位を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、Z1は、ポリイソシアネート(D2)の内、イソシアネート基を除いた部分であり、mは、正の整数である。
理論上としたのは、上記4例は、一級アミノ基が、二級アミノ基より反応性が高いため、必ず優先的に反応すると仮定したが、実際には、反応条件等により、一級アミノ基が残っていても、先に二級アミノ基が反応する場合もある。そのため、一部、予想とは異なる構造の分散剤が得られる場合もある。しかし、上記反応は、ほぼ量論的に反応が進行するので、大部分が目的とする構造の重合体(C2)が得られ、分散剤としての機能に問題はない。
以上のように、アミノ基を有する重合体(C2)とポリイソシアネート(D2)との反応比を変えることによって、分散剤の分子量やアミノ基(一級、二級、及び/又は三級)並びにウレア結合の量を調整することができる。
<ポリイソシアネート(D2)>
ポリイソシアネート(D2)としては、従来公知のものを使用することができるが、分散体の低粘度効果から、ジイソシアネートであることが好ましく、例えば、芳香族系ジイソシアネート(d21)、脂肪族系ジイソシアネート(d22)、芳香族−脂肪族系ジイソシアネート(d23)、脂環族系ジイソシアネート(d24)、これらジイソシアネートのニ量体(ウレトジオン)、これらジイソシアネートの三量体(イソシアヌレート)とモノアルコールとの反応物、及びこれらジイソシアネートとジオールとの反応物(両末端イソシアネートのウレタンプレポリマー)等が挙げられる。
芳香族系ジイソシアネート(d21)としては、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエ−テルジイソシアネ−ト、ジアニシジンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、及び1,3−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン等を挙げることができる。
脂肪族系ジイソシアネート(d22)としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記する場合がある。)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
芳香族−脂肪族系ジイソシアネート(d23)としては、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、及び1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
脂環族系ジイソシアネート(d24)としては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(以下、IPDIと略記する場合がある。)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、及びメチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート等を挙げることができる。
以上、列挙したジイソシアネート(D2)は、必ずしもこれらに限定されるものではなく、2種類以上を併用して使用することもできる。
本発明に用いられるジイソシアネート(D2)としては、3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート、IPDI)が難黄変性であるために好ましい。
又、分散剤の分子量を上げる目的で、1分子内に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネ−ト(d25)を使用しても良く、芳香族系ポリイソシアネ−ト、脂肪族系ポリイソシアネ−ト、芳香族−脂肪族系ポリイソシアネ−ト、及び脂環族系ポリイソシアネ−ト等を挙げることができる。
1分子に3個以上イソシアネート基を有するポリイソシアネート(d25)として、具体的には、上記ジイソシアネートのイソシアヌレート体、及び上記ジイソシアネートのビウレット体等のジイソシアネートの三量体、上記ジイソシアネートのポリオールアダクト体、二種以上の上記ジイソシアネートの共重合体、芳香族系トリイソシアネート、並びに、ポリメリック型の芳香族系イソシアネートオリゴマー等が挙げられる。
1分子に3個以上イソシアネート基を有するポリイソシアネート(d25)としては、例えば、トリレンジイソシアネート(以下、TDI略記する場合がある。)のイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記する場合がある。)のイソシアヌレート体、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略記する場合がある。)のイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記する場合がある。)のイソシアヌレート体、HDIのビウレット体、HDIのトリメチロールプロパン(以下、TMPと略記する場合がある。)アダクト体、TDIのTMPアダクト体、及びTDI/HDIコポリマー等のジイソシアネート変性物;2,4,6−トリイソシアネ−トトルエン、1,3,5−トリイソシアネ−トベンゼン、及び4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネ−ト等の芳香族系トリイソシアネート;並びに、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(別名MDIオリゴマー)等のポリメリック型芳香族系イソシアネートオリゴマー)等が挙げられる。
<合成条件>
アミノ基を有する重合体(C2)とポリイソシアネート(D2)との反応は、1)全量仕込みで反応する場合と、2)重合体(C2)溶液をフラスコに仕込み、ポリイソシアネート(D2)を滴下する方法に大別されるが、反応を精密にする場合は2)が好ましい。ウレア化反応の温度は、70℃以下が好ましい。更に好ましくは60℃以下である。60℃でも反応速度は大きく、制御できない場合は、50℃以下が更に好ましい。70℃より高くなると反応速度の制御が困難であり、所定の分子量と構造を有する分散剤を得ることが難しくなる傾向がある。
また、アミノ基を有する重合体(C2)に対するポリイソシアネート(D2)の配合比は、重合体(C2)の活性水素を有するアミノ基(一級及び二級アミノ基)当量を〔C2〕、ポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基当量を〔D2〕とすると、〔D2〕/〔C2〕は0.25〜1.00で、イソシアネート基の全てを、活性水素を有するアミノ基と反応させるとことが好ましく、最終合成物である分散剤の設計(炭素系触媒材料吸着部位と溶剤親和性部位のバランス)の観点から、0.35〜0.9がより好ましく、最終合成物である分散剤を使った触媒ペースト組成物の分散安定性の観点から、0.5〜0.8が最も好ましい。
上記配合当量比が0.25より小さいと、最終製品である分散剤中のウレア結合の量が少なくなり、分散性が悪くなる場合がある。又、配合当量比が1.00より大きいと、反応活性が高いイソシアネート基が残り、水等と反応し、高分子量化して粘度が高くなることがあり、好ましくない。又、上記配合当量が、1.00であると、例えば、活性水素を有するアミノ基を2個有するポリアミン(C2)とイソシアネート基を2個有するジイソシアネート(D2)との反応では、理論上、分子量が無限大となるため、分子量制御の観点で、好ましくない。
更に、三級アミノ基、及びウレア結合に加えて一級及び/又は二級アミノ基(活性水素を有するアミノ基)が、分散剤骨格中に存在すると、炭素系触媒材料に対する吸着性が向上し、溶剤親和性部位とのバランスも良くなり、分散性及びその経時安定性も良くなる。
即ち、上記のように、配合当量比が、0.35〜0.9、好ましくは0.5〜0.8の時、三級アミノ基、ウレア結合、活性水素を有するアミノ基、及び溶剤親和部位のバランスが良くなり、優れた分散安定性を示す。
本発明の組成物を構成する塩基性官能基を有する重合体(G2)は、片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)を製造する第一の工程と、上記片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の(メタ)アクリロイル基と、1以上の一級及び/又は二級アミノ基を含むポリアミン(B2)の一級及び/又は二級アミノ基と、を反応する、アミノ基を有する重合体(C2)を製造する第二の工程と、並びに、アミノ基を有する重合体(C2)の一級及び/又は二級アミノ基と、少なくとも2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基とを反応させる第三の工程とを含む製造法により製造することができる。
各工程の合成方法及び条件等は前述のとおりである。
本発明の組成物を構成する塩基性官能基を有する重合体(G2)の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは1,500〜50,000、特に好ましくは2,000〜30,000である。重量平均分子量が、1,000未満であれば、触媒ぺースト組成物の安定性が低下する場合があり、100,000を超えると樹脂間の相互作用が強くなり、触媒ペースト組成物の増粘が起きる場合がある。又、得られた分散剤のアミン価は、5〜100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは10〜70mgKOH/g、さらに好ましくは20〜50mgKOH/gである。アミン価が5mgKOH/g未満であれば炭素系触媒材料と吸着する官能基が不足し、炭素系触媒材料分散に寄与することが困難になる場合があり、100mgKOH/gを超えると、炭素系触媒材料同士の凝集が起こり、粘度低下効果の不足や塗膜外観に不具合を生じさせる場合がある。
<ビニルアミド系樹脂>
本発明の触媒ペースト組成物は、炭素系触媒材料の良好な分散及び分散安定性を得るために、ビニルアミド系樹脂を含有してもよい。ビニルアミド系樹脂は、一般的にアニオン種と吸着相互作用を持つことが知られている。ビニルアミド系樹脂は、厳密に言えば、塩基性官能基を有する樹脂には該当しないが、そのpHが僅かに塩基性を示すため、本明細書では塩基性官能基を有する樹脂として取り扱う。
使用するビニルアミド系樹脂としては、特に限定はされないが、例えば、ポリビニルアセトアミド、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、アルキル化ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンのグラフト共重合体、及びビニルピロリドンとコモノマーとの共重合体等が挙げられる。
ビニルピロリドンと共重合できるコモノマーとしては、α−オレフィン、酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、エチレン、スチレン、無水マレイン酸、アクリル酸、硫酸ビニルナトリウム、塩化ビニル、ビニルピロリジン、トリメチルシロキシビニルシラン、プロピオン酸ビニル、ビニルカプロラクタム、メチルビニルケトン等が挙げられる。
又、上記ビニルアミド系樹脂を、有機酸、又は無機酸で処理した酸変性物等も用いることができる。
上記ビニルアミド系樹脂の中でも、特に、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−1−ブテン共重合体、若しくはビニルピロリドン−スチレン共重合体等のほぼ中性のビニルアミド樹脂、又は、有機酸、若しくは無機酸で処理したポリビニルピロリドンの酸変性物が好適に用いられる。
ビニルアミド系樹脂が、炭素系触媒材料の分散に効果があるのは、使用される溶媒が水又は水系溶媒、溶剤系のいずれにおいても溶媒に対する濡れ性に優れるために、炭素系触媒材料と溶媒との相互作用を円滑に進め、炭素系触媒材料同士の凝集が極めて少なくなるためであると推察される。特に極性が高い溶媒を用いる場合、分散効果が極めて高くなる。
<ビニルアミド系樹脂及び、塩基性又は酸性官能基を有する各種誘導体の併用効果>
本発明の触媒ペースト組成物は、炭素系触媒材料の良好な分散及び分散安定性を更に得るために、ビニルアミド系樹脂に、塩基性又は酸性官能基を有する各種誘導体を併用することが好ましい。上記塩基性又は酸性官能基を有する各種誘導体(以下、単に誘導体と略す場合がある)の効果の1つとして、ビニルアミド系樹脂が溶剤との濡れ性を高めるために、更に添加した誘導体が炭素系触媒材料表面に作用(例えば吸着)することにより、相乗効果により分散が進むものと考えられる。
よって本発明では、上記ビニルアミド系樹脂及び、塩基性又は酸性官能基を有する各種誘導体の使用により、炭素系触媒材料表面に直接、官能基を導入(共有結合)せず、更に分散樹脂を使用することなく、良好な分散を得ることができる。これらのことから、炭素系触媒材料の導電性を低下させることなく良好な分散を得ることができる。そして炭素系触媒材料が良好に分散した本発明の触媒ペースト組成物を用いることにより、炭素系触媒材料が均一に分散した燃料電池用電極膜接合体を作製することができる。
又、本発明の触媒ペースト組成物を使用した触媒インキ組成物では、炭素系触媒材料表面に官能基を有する各種誘導体が存在しているため炭素系触媒材料の水素イオン伝導性ポリマーに対する濡れ性が向上し、上述の均一分散効果とあいまって触媒インキ組成物としての保存安定性や塗工性が向上する。
塩基性官能基を有する樹脂は、上記記載の3つのタイプのみに限定されるものでなく、3つのタイプ以外のポリビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ホルマリン縮合物、シリコーン系、及びこれらの複合系ポリマー等が挙げられる。更に、これらの塩基性官能基を有する樹脂は2種類以上を併用することもできる。
<その他の市販の塩基性官能基を有する樹脂>
市販の塩基性官能基を有する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
ビックケミー社製の塩基性官能基を有する樹脂としては、Disperbyk−108、109、112、116、130、161、162、163、164、166、167、168、180、182、183、184、185、2000、2001、2050、2070、2150、又はBYK−9077が挙げられる。
日本ルーブリゾール社製の塩基性官能基を有する樹脂としては、SOLSPERSE9000、13240、13650、13940、17000、18000、19000、20000、24000SC、24000GR、28000、31845、32000、32500、32600、33500、34750、35100、35200、37500、38500、又は39000が挙げられる。
エフカアディティブズ社製の塩基性官能基を有する樹脂としては、EFKA4008、4009、4010、4015、4020、4046、4047、4050、4055、4060、4080、4300、4330、4400、4401、4402、4403、4406、4500、4550、4560、4570、4580、又は4800が挙げられる。
味の素ファインテクノ社製の塩基性官能基を有する樹脂としては、アジスパーPB711、アジスパーPB821、又はアジスパーPB822が挙げられる。
楠本化成社製の塩基性官能基を有する樹脂としては、ディスパロン1850、1860、又はDA−1401が挙げられる。
共栄社化学製の塩基性官能基を有する樹脂としては、フローレンDOPA−15B、フローレンDOPA−17等が挙げられる。
<酸性官能基を有する顔料誘導体(II−1)>
本発明の触媒ペースト組成物は、炭素系触媒材料の良好な分散及び分散安定性を得るために、酸性官能基を有する有機化合物として、酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するアントラキノン誘導体、酸性官能基を有するアクリドン誘導体、または酸性官能基を有するトリアジン誘導体から1種類以上選ばれる誘導体を含有してもよい。
とりわけ、下記式(27)で示されるトリアジン誘導体、又は下記式(30)で示される有機色素誘導体の使用が好ましい。
式(27)において、
101は、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−CH2NHCOCH2NH−、又は−X103−Y101−X104−であり、
102、及びX104は、それぞれ独立に、−NH−、又は−O−であり、
103は、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−NHCO−、又は−NHSO2−であり、
101は、炭素数1〜20で構成された、置換又は未置換のアルキレン基、置換又は未置換のアルケニレン基、又は、置換又は未置換のアリーレン基であり、

101は、−SO3M、−COOM、又は−P(O)(−OM)2であり、
101は、1〜3価のカチオンの一当量であり、
101は、−O−R102、−NH−R102、ハロゲン基、−X101−R101、又は−X102−Y101−Z101であり、
102は、水素原子、置換又は未置換のアルキル基、又は、置換又は未置換のアルケニル基であり、
101は、1〜4の整数であり、
101は、有機色素残基、置換又は未置換の複素環残基、置換又は未置換の芳香族環残基、又は下記式(28)で表される基である。
式(28)において、
201は、−NH−、又は−O−であり、
202、及びX203は、それぞれ独立に、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、又は−CH2NHCOCH2NH−であり、
201、及びR202は、それぞれ独立に、有機色素残基、置換又は未置換の複素環残基、置換又は未置換の芳香族環残基、又は−Y201−Z201であり、
201は、炭素数1〜20で構成された、置換又は未置換のアルキレン基、置換又は未置換のアルケニレン基、又は、置換又は未置換のアリーレン基であり、
201は、−SO3201、−COOM201、又は−P(O)(−OM2012であり、
201は、1〜3価のカチオンの一当量である。
式(27)のR101、並びに、式(28)のR201及びR202で表される有機色素残基としては、例えばジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、又金属錯体系色素等が挙げられる。とりわけ、金属による電池の短絡を抑制する効果を高めるためには、金属錯体系色素ではない有機色素残基の使用が好ましく、中でもアゾ系色素、ジケトピロロピロール系色素、無金属フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、又はジオキサジン系色素の使用が分散性に優れるため好ましい。
式(27)のR101、並びに、式(28)のR201及びR202で表される複素環残基および芳香族環残基としては、例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、又はアントラキノン等が挙げられる。とりわけ、少なくともS、N、Oのヘテロ原子のいずれかを含む複素環残基の使用が分散性に優れるため好ましい。
式(27)のY101及び式(28)のY201は、炭素数20以下の置換又は未置換のアルキレン基、アルケニレン基またはアリーレン基を表すが、好ましくは置換又は未置換のフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、又は炭素数が10以下の側鎖を有していてもよいアルキレン基が挙げられる。
式(27)のQ101中に含まれるR102で表される置換又は未置換のアルキル基、アルケニル基は、好ましくは炭素数20以下のものであり、更に好ましくは炭素数が10以下の側鎖を有していてもよいアルキル基が挙げられる。置換基を有しているアルキル基又はアルケニル基とは、アルキル基又はアルケニル基の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、若しくは臭素原子等のハロゲン基、ヒドロキシル基、又はメルカプト基等で置換されたものである。
式(27)のM101及び式(28)のM201は、1〜3価のカチオンの一当量を表し、例えば、水素原子(プロトン)、金属カチオン、又は4級アンモニウムカチオンのいずれかを表す。また、分散剤構造中にMを2つ以上有する場合、Mはプロトン、金属カチオン、又は4級アンモニウムカチオンのいずれかひとつのみでも良いし、これらの組み合わせでも良い。
金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、ニッケル、又はコバルト等が挙げられる。
4級アンモニウムカチオンとしては、式(29)で示される構造を有する単一化合物または、混合物である。
式(29)において、R301、R302、R303、及びR304は、水素、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルケニル基、又は、置換又は未置換のアリール基のいずれかである。
式(29)のR301、R302、R303、及びR304は、それぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。また、R301、R302、R303、及びR304が、炭素原子を有する場合、炭素数は1〜40、好ましくは1〜30、更に好ましくは1〜20である。炭素数が40を超えると電極の導電性が低下する場合がある。
4級アンモニウムの具体例としては、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ヒドロキシエチルアンモニウム、ジヒドロキシエチルアンモニウム、2−エチルヘキシルアンモニウム、ジメチルアミノプロピルアンモニウム、ラウリルアンモニウム、又はステアリルアンモニウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
式(30)において、
401、直接結合、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−CH2NHCOCH2NH−、−X402−Y−、又は−X402−Y−X403−であり、
402は、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−NHCO−、又は−NHSO2−であり、
403は、−NH−、又は−O−であり、
401は、炭素数1〜20で構成された、置換又は未置換のアルキレン基、置換又は未置換のアルケニレン基、又は、置換又は未置換のアリーレン基であり、
401は、−SO3401、−COOM401、又は−P(O)(−OM4012であり、
401は、1〜3価のカチオンの一当量であり、
401は、有機色素残基であり、
401は、1〜4の整数である。
式(30)のR401で表させる有機色素残基としては、例えばジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、又は金属錯体系色素等が挙げられる。R9で表させる有機色素残基には、一般的には色素と呼ばれていない淡黄色のアントラキノン残基を含む。とりわけ、金属による電池の短絡を抑制する効果を高めるためには、金属錯体系色素ではない有機色素残基の使用が好ましく、中でもアゾ系色素、ジケトピロロピロール系色素、無金属フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、又はジオキサジン系色素の使用が分散性に優れるため好ましい。
式(30)の式中のM401は、1〜3価のカチオンの一当量を表し、例えば、水素原子(プロトン)、金属カチオン、又は4級アンモニウムカチオンのいずれかを表す。また、分散剤構造中にMを2つ以上有する場合、M401はプロトン、金属カチオン、又は4級アンモニウムカチオンのいずれかひとつのみでも良いし、これらの組み合わせでも良い。
金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、ニッケル、又はコバルト等が挙げられる。
4級アンモニウムカチオンとしては、式(29)で示される構造を有する単一化合物または、混合物である。
式(29)において、R301、R302、R303、及びR304は、水素、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルケニル基、又は、置換又は未置換のアリール基のいずれかである。
式(29)のR301、R302、R303、及びR304は、それぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。また、R301、R302、R303、及びR304が、炭素原子を有する場合、炭素数は1〜40、好ましくは1〜30、更に好ましくは1〜20である。炭素数が40を超えると電極の導電性が低下する場合がある。
4級アンモニウムの具体例としては、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ヒドロキシエチルアンモニウム、ジヒドロキシエチルアンモニウム、2−エチルヘキシルアンモニウム、ジメチルアミノプロピルアンモニウム、ラウリルアンモニウム、又はステアリルアンモニウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
上記分散剤の合成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特公昭39−28884号公報、特公昭45−11026号公報、特公昭45−29755号公報、特公昭64−5070号公報、又は特開2004−217842号公報等に記載されている方法で合成することができる。上記公報による開示を参照することにより、本明細書の一部として組み込むものとする。
上記の酸性官能基を有する各種誘導体の効果のひとつとして、添加した誘導体が炭素系触媒材料表面に作用(例えば吸着)することにより、分散効果を発揮するものと考えられる。
すなわち、酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種類以上の誘導体(以下、「酸性官能基を有する誘導体」あるいは「誘導体」と略記する場合がある。)を、溶剤又は水中に完全ないしは一部溶解させ、その溶液中に炭素系触媒材料を添加、混合する。そのことによって、これら誘導体の炭素系触媒材料への作用(例えば吸着)が進み、炭素系触媒材料表面に作用(例えば吸着)した誘導体が有する酸性官能基の極性により、炭素系触媒材料表面の溶剤又は水に対する濡れが促進され、炭素系触媒材料の凝集が解しやすくなるものと考えられる。
又、上記誘導体が有する酸性官能基と、アミンなどのカチオン成分とを相互作用(例えば中和によるイオン対の形成(造塩)、及びイオン対(塩)の分極ないしは解離等)させることにより、炭素系触媒材料表面の静電反発が促進され、炭素系触媒材料の分散安定性が更に増すと考えられる。
又、上記誘導体が有する酸性官能基と、上記塩基性官能基を有する樹脂の塩基性官能基との相互作用(例えば酸−塩基相互作用)により、炭素系触媒材料と樹脂成分との密着性が向上するとともに、炭素系触媒材料の分散安定性が更に増すと考えられる。
更に、上記塩基性官能基を有する樹脂を介して、炭素系触媒材料とバインダー成分である水素イオン伝導性ポリマーとの密着性も向上するため、触媒インキ組成物として塗工、転写して作製される燃料電池用電極膜接合体とした時の固体高分子電解質膜との密着性に加えて、炭素系触媒材料の触媒活性点への水素イオン伝導性も向上すると考えられる。
<II−2.酸性官能基を有する樹脂>本発明の触媒ペースト組成物は、炭素系触媒材料の良好な分散及び分散安定性を得るために、酸性官能基を有する樹脂を含有している。又、好ましい酸性官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、及び燐酸基である。酸性官能基を有する樹脂は、分散安定性の観点から、以下に示す3タイプの樹脂(H1)〜(H3)が好ましい。
上記酸性官能基を有する樹脂は、炭素系触媒材料同士を結着する、又は、炭素系触媒材料を触媒インキ組成物としたとき、触媒インキ層として水素イオン伝導性ポリマー膜に結着するためのバインダーとしても機能する。上記酸性官能基を有する樹脂を、塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体と併用することによって、炭素系触媒材料の分散安定性及び、触媒インキ組成物とした時の塗工性や水素イオン伝導性固体電解質膜への密着性を更に向上させることができる。尚、水素イオン伝導性固体電解質膜は、触媒インキ組成物のバインダに用いられる水素イオン伝導性ポリマーと同じ構造のポリマーを用いることが多いが、少なくとも水素イオン伝導性ポリマーと親和性が高いものが好ましい。代表的なものとして、ナフィオン電解質膜が挙げられる。
すなわち、炭素系触媒材料表面に作用(例えば吸着)した塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、若しくは塩基性官能基を有するトリアジン誘導体の塩基性官能基と、酸性官能基を有する樹脂の酸性官能基との相互作用(例えば酸−塩基相互作用)、又は、塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、若しくは塩基性官能基を有するトリアジン誘導体と、酸性官能基を有する樹脂が相互作用(例えば酸−塩基相互作用)しつつ、炭素系触媒材料表面に吸着する。そのことにより、酸性官能基を有する樹脂の炭素系触媒材料表面への吸着が促進され、炭素系触媒材料と樹脂成分との密着性が向上すると共に、樹脂の立体障害による反発により、炭素系触媒材料の分散安定性が向上するものと考えられる。又、炭素系触媒材料とバインダー成分である水素イオン伝導性ポリマーとの密着性や、炭素系触媒材料の触媒活性点への水素イオン伝導性も向上するため、例えば、使用するバインダー量を減らすことも期待できる。以下、本発明において酸性官能基を有する樹脂として好適な樹脂(H1)〜(H3)について説明する。
<酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(H1)>
酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(H1)を製造するための第一の工程は、式(31)に示すように、分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(s)の存在下、エチレン性不飽和単量体(m)をラジカル重合して、片末端に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(a)を製造する工程である。分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(s)のチオール基が連鎖移動剤として働き、エチレン性不飽和単量体(m)が重合した溶媒親和性ビニル重合体部位(M)の末端に、S原子を介して2つのヒドロキシル基が導入されたビニル重合体(a)が合成される。
分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(s)としては、例えば、1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)、2−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,2−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(s)を、目的とするビニル重合体(a)の分子量にあわせて、エチレン性不飽和単量体(m)と、任意に重合開始剤とを混合して加熱することでビニル重合体(a)を得ることができる。好ましくは、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、1〜30重量部のヒドロキシル基とチオール基とを有する化合物(s)を用い、塊状重合又は溶液重合を行う。反応温度は40〜150℃、好ましくは50〜110℃、反応時間は3〜30時間、好ましくは5〜20時間である。
重合の際、エチレン性不飽和単量体(m)100重量部に対して、任意に0.001〜5重量部の重合開始剤を使用することができる。重合開始剤としては、アゾ系化合物及び有機過酸化物を用いることができる。アゾ系化合物の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、及び2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等があげられる。
有機過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、及びジアセチルパーオキシド等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で、若しくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
溶液重合の場合には、重合溶媒として、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びN−メチルピロリドン等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。これらの重合溶媒は、2種類以上混合して用いても良い。
エチレン性不飽和単量体(m)としては、以下に示す一般的なエチレン性不飽和単量体(m1)が挙げられる。一般的なエチレン性不飽和単量体(m1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂肪族環を有する(メタ)アクリレート類;テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート等のヘテロ環を有する(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、及びフェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート類;メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、及びエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、及びアクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びN,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、及びイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;並びに、酢酸ビニル、及びプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類等が挙げられる。しかし、特に上記重合体に限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて使用しても、必要に応じて、以下に示す単量体を併用しても良い。
エチレン性不飽和単量体(m)の一つとして、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(m2)を併用することもできる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(m2)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロトン酸、アクリル酸二量体、アクリル酸のカプロラクトン付加物(付加モル数は1〜5)、及びメタクリル酸のカプロラクトン付加物(付加モル数は1〜5)等から1種又は2種以上を選択することができる。
本発明においては、上記に例示したエチレン性不飽和単量体(m)の中でも、ベンジル(メタ)アクリレートを単量体全体の20重量%〜70重量%使用するのが好ましい。20重量%未満では、溶媒親和性が低くなり、十分な立体反発効果が得られず、顔料分散性が低下する場合があり、70重量%を超えると、分散剤自身の溶剤への溶解性が向上するため顔料への吸着が不十分になったり、溶媒親和部同士の絡み合いによって、顔料組成物の粘度が高くなったりする場合がある。
又、本発明においては、更に上記に例示したエチレン性不飽和単量体(m)と共に、ブロックイソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体(m3)、オキセタン基を有するエチレン性不飽和単量体(m4)、及びt−ブチル基を有するエチレン性不飽和単量体(m5)の少なくとも1つから選ばれるエチレン性不飽和単量体用いて、ビニル重合体(a)を製造することが出来る。これらの単量体を使用することにより、単量体中の架橋性官能基(それぞれブロックイソシアネート基、オキセタン基、t−ブチル基)が、加熱により架橋するため、本発明による触媒インキ組成物を用いて電極膜接合体とするとき、熱プレスによる熱硬化した後に、耐薬品性、耐溶剤性、耐熱性、耐アルカリ性を更に向上することができる。
ブロックイソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体(m3)としては、例えば、カレンズMOI−BM、及びカレンズMOI−BP(昭和電工製)等が挙げられる。オキセタン基を有するエチレン性不飽和単量体(m4)としては、例えば、ETERNACOLL OXMA(宇部興産製)等が挙げられる。t−ブチル基を有するエチレン性不飽和単量体(m5)としては、例えば、t−ブチルメタクリレート、及びt−ブチルアクリレート等が挙げられる。
単量体の有するブロックイソシアネート基は、ヒドロキシル基と併用するとヒドロキシル基と架橋反応するためより好ましく、オキセタン基はカルボキシル基と併用するとカルボキシル基と架橋反応するためより好ましく、t−ブチル基は、ヒドロキシル基と併用するとヒドロキシル基と架橋反応し、オキセタン基と併用するとオキセタン基と架橋反応するためより好ましい。
カルボキシル基を組み合わせる場合、硬化性分散剤中には、テトラカルボン酸二無水物(b)由来のカルボキシル基を硬化性部位として利用できるが、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体をエチレン性不飽和単量体(m2)として併用することで、硬化性分散剤にカルボキシル基を容易に導入することができる。
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(m2)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロトン酸、アクリル酸二量体、アクリル酸のカプロラクトン付加物(付加モル数は1〜5)、及びメタクリル酸のカプロラクトン付加物(付加モル数は1〜5)等から1種又は2種以上を選択することができる。
又、ヒドロキシル基を組み合わせる場合、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(m6)をエチレン性不飽和単量体として併用することでも硬化性分散剤にヒドロキシル基を導入することができる。
ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(m6)としては、ヒドロキシル基を有し、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体であればどのようなものでも構わないが、例えば、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2(又は3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2(又は3、又は4)−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、及びグリセロール(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、及びN−(2−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等のN−(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−(又は3−)ヒドロキシプロピルビニルエーテル、及び2−(又は3−、又は4−)ヒドロキシブチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類;並びに、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−(又は3−)ヒドロキシプロピルアリルエーテル、及び2−(又は3−、又は4−)ヒドロキシブチルアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル類が挙げられる。
又、上記のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、N−(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド類、ヒドロキシアルキルビニルエーテル類、及びヒドロキシアルキルアリルエーテル類にアルキレンオキサイド又はラクトンを付加して得られるエチレン性不飽和単量体も、本発明で用いるヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和単量体として用いることができる。付加されるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−、1,4−、2,3−又は1,3−ブチレンオキサイド、並びに、これらの2種以上の併用系が用いられる。2種以上のアルキレンオキサイドを併用するときの結合形式はランダム及び/又はブロックのいずれでもよい。付加されるラクトンとしては、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、炭素原子数1〜6のアルキル基で置換されたε−カプロラクトン、並びに、これらの2種以上の併用系が用いられる。アルキレンオキサイドとラクトンを両方とも付加したものでも構わない。
本発明においては、ビニル重合体(a)に不飽和結合を導入することも出来る。ビニル重合体(a)に不飽和結合を導入する方法としては、ビニル重合体(a)中にヒドロキシル基を導入し、後からイソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体(m7)を反応させる方法、ビニル重合体(a)中にカルボキシル基を導入し、後からエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(m8)を反応させる方法、ビニル重合体(a)中にエポキシ基を導入し、後からカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(m2)を反応させる方法が挙げられる。
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体(m7)としては、カレンズMOI(昭和電工製 2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)、及びカレンズAOI(昭和電工製 2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート)等が、挙げられる。エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(m8)としては、グリシジル(メタ)アクリレート、及びサイクロマーM100(ダイセル化学工業製 3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート)等が挙げられる。
酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(H2)製造のための第二の工程は、下記式(32)に示すように、第一の工程で得られた片末端に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(a)と、テトラカルボン酸二無水物(b)とを反応させる工程である。
片末端に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(a)のモル比をα、テトラカルボン酸二無水物(b)のモル比をβとすると、理論上、α=βでは、分子量が無限大に大きくなるので、α>βあるいはα<βとして、α/βの比率を変えて、目的とする分子量にコントロールすることが多い。例えば、α=β+1の場合、両末端がヒドロキシル基となり、それ以上分子量が大きくならず、酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(H2−1)を安定に合成することができる。一方、β=α+1の場合、両末端が酸無水物基となり、安定性が悪くなるため、酸無水物基を加水分解して、末端をカルボキシル基とした酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(H2−2)を合成することができる。
次に、酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(H2)の第二の製造工程における各構成要素について説明する。
本発明に使用するテトラカルボン酸二無水物(b)は、片末端に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(a)と反応してエステル結合を形成し、かつ、生成するポリエステル主鎖上にペンダントカルボキシル基を残すことができる。式(32)の生成物中に残っている酸無水物基を加水分解すれば、この反応による生成物は、構造式中のX1部分にカルボキシル基を2個又は3個を有しており、この複数のカルボキシル基が炭素系触媒材料への吸着部位として有効である。
しかしながら、X0に結合しているカルボキシル基が1個のみである場合では、高い分散性、流動性、及び保存安定性を発現せず好ましくない。本発明におけるX0は、テトラカルボン酸ニ無水物(b)が片末端に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(a)と反応した後の反応残基である。好ましくは、下記式(33)、又は式(34)で示されるテトラカルボン酸二無水物が、ヒドロキシル基を有するビニル重合体(a)と反応した後の反応残基である。
上記式(33)において、kは1又は2である。
上記式(34)において、Q0は、直接結合、−O−,−CO−,−COOCH2CH2OCO−,−SO2−,−C(CF32−,下記式(35)又は(36)で表される基である。
本発明では、片末端に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(a)とテトラカルボン酸二無水物(b)とを反応させることにより、上記式(32)における生成物中のX0に結合する複数のカルボキシル基部分がへ炭素系触媒材料の吸着部として機能し、ビニル重合体部分が溶媒親和部として機能する。
片末端に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(a)の重量平均分子量は、1,000〜10,000が好ましく、この部位が分散媒である溶剤への親和性部分となる。ビニル重合体(a)の重量平均分子量が1,000未満では、溶媒親和部による立体反発の効果が少なくなるとともに、炭素系触媒材料の凝集を防ぐことが困難となり、分散安定性が不十分となる場合がある。又、10、000を超えると、溶媒親和部の絶対量が増えてしまい、分散性の効果自体が低下する場合がある。更に、触媒ペースト組成物の粘度が高くなる場合がある。
ビニル重合体(a)は、分子量を上記範囲に調整することが容易であり、かつ、溶剤への親和性も良好である。酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(H1)の第一の工程で説明したように、片末端に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(a)の重量平均分子量は、エチレン性不飽和単量体(m)に対する分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(s)の使用重量、反応温度、反応時間、エチレン性不飽和単量体(m)に対する必要に応じて使用する重合開始剤の使用重量、必要に応じて使用する重合溶剤の種類、及び重合時のエチレン性不飽和単量体(m)濃度によりコントロールできる。
テトラカルボン酸ニ無水物(b)としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、及びビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物等の脂肪族テトラカルボン酸無水物;並びに、ピロメリット酸無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸無水物、及び3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチル−1−ナフタレンコハク酸無水物等の芳香族テトラカルボン酸無水物が挙げられる。
本発明で使用できるテトラカルボン酸二無水物(b)は上記に例示した化合物に限らず、カルボン酸無水物基を2つ持てばどのような構造をしていてもかまわない。これらは単独で用いても、併用してもかまわない。更に、本発明に好ましく使用されるものは、触媒ペースト組成物の低粘度化の観点から式(34)又は式(35)で表されるような、芳香族テトラカルボン酸無水物であり、更に好ましくは芳香族環を二つ以上有するテトラカルボン酸無水物である。又、分子中にカルボン酸無水物基を1つ有する化合物や3つ以上有する化合物を併用して使用することができる。
上記酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(H1)を調製する第二の工程で使用する触媒としては、公知の触媒であってよい。触媒としては3級アミン系化合物が好ましく、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、及び1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等が挙げられる。
本発明で用いることのできる酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(H1)は、上述の原料のみで製造することも可能であるが、高粘度になり反応が不均一になる等の問題を回避するために、溶剤を用いることが好ましい。溶剤としては、公知のものを使用できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アセトニトリル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びN−メチルピロリドン等が挙げられる。反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま製品の一部として使用することもできる。
本発明で用いることのできる酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(H1)は、片末端に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(a)、テトラカルボン酸二無水物(b)を反応させることで得られる。テトラカルボン酸無水物(b)中の酸無水物基とビニル重合体(a)中のヒドロキシル基とのモル比は、ビニル重合体(a)のモル比をα、テトラカルボン酸二無水物(b)のモル比をβとすると、2β/2α=β/α=0.3〜1.2が、好ましく、更に好ましくはβ/α=0.5〜1.0、最も好ましくはβ/α=0.6〜0.8の場合である。β/α>1で反応させる場合は、残存する酸無水物基を必要量の水で加水分解して使用してもよい。0.3未満であると、炭素系触媒材料への吸着部である酸無水物残基が少なくなる場合があり、又、樹脂の酸価も低くなる場合もある。又、1.2を超えるとポリエステルが高分子量化を起こしてしまい、触媒ペースト組成物として使用した時に、樹脂間の相互作用が強くなり逆に増粘が起きる場合がある。
酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(H1)の第二の工程の反応温度は80℃〜180℃、好ましくは、90℃〜160℃の範囲で行う。反応温度が80℃以下では反応速度が遅く、180℃以上ではカルボキシル基がエステル化反応してしまい、酸価の減少や、ゲル化を起こしてしまう場合がある。反応の停止は、赤外吸収で酸無水物の吸収がなくなるまで反応させるのが理想であるが、ポリエステルの酸価が5〜200の範囲に入ったとき、又は、水酸基価が20〜200の範囲に入った時に反応を止めてもよい。
得られた酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(H2)の重量平均分子量は、好ましくは、2,000〜25,000である。重量平均分子量が2,000未満であれば触媒ペースト組成物の安定性が低下する場合がある。一方、25,000を超えると樹脂間の相互作用が強くなり、触媒ペースト組成物の粘度増加が生じる場合がある。又、得られた酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(H1)の酸価は、5〜200mgKOH/gが好ましい。更に好ましくは、5〜150mgKOH/gであり、特に好ましくは、5〜100mgKOH/gである。酸価が5未満では、炭素系触媒材料への吸着能が低下し、分散性に問題がでる場合があり、200mgKOH/gを超えると、樹脂間の相互作用が強くなり触媒ペースト組成物の粘度が高くなる場合がある。
<酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(H2)>
本発明で用いることのできる酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(H2)は、下記式(1)で表される構造を有する限り、その化学構造及び製造方法は特に限定されるものではない。その製造方法は、例えば、モノアルコールを開始剤として、ラクトンを開環重合して片末端にヒドロキシル基を有するポリエステルを製造する第一の工程と、該片末端にヒドロキシル基を有するポリエステルと、テトラカルボン酸二無水物を反応させる第二の工程とからなる方法であることが好ましい。
式(37):
(HOOC−)m−R21−(−COO−[−R23−COO−]n−R22t
上記式(37)において、R21は、4価のテトラカルボン酸化合物残基であり、R22は、モノアルコール残基であり、R23は、ラクトン残基であり、mは、2又は3であり、nは、1〜50の整数であり、tは、(4−m)である。
本発明において、上記式(37)で表される酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(H3)として好ましい化合物は、R21が、後述する式(38)〜(42)で示される基であり、R22が、炭素原子数8〜20の脂肪族アルキル基、又は分子量200〜1500の末端のエーテル基若しくはエステルポリオキシアルキレン(アルキレン部分の炭素原子数が2〜4)基であり、R23が、ヘキサメチレン基、ペンタメチレン基、又はアルキル置換されたヘキサメチレン基であり、mが、2又は3であり、nが、3〜20の整数であり、そしてtが、(4−m)である樹脂である。
なお、上記式(37)で表される酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(H3)において、R21は、下記式(38)〜(40)で示される基のいずれかであることが好ましい。
上記式(40)において、A0は、直接結合、−O−、−CO−、−COOCH2CH2OCO−、−SO2−、−C(CH32−、−C(CF32−、下記式(41)又は(42)で示される基である。
酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(H2)の製造に用いることのできるモノアルコールとしては、ヒドロキシル基を一つ有する化合物であれば、特に限定されない。脂肪族モノアルコールとしては、例えば、好ましくは炭素原子数1〜30(より好ましくは炭素原子数1〜25)の直鎖状若しくは分岐状の置換若しくは非置換の飽和脂肪族モノアルコール、あるいは炭素原子数1〜30(より好ましくは炭素原子数1〜25)の置換若しくは非置換の飽和脂環式モノアルコールを挙げることができる。飽和脂肪族モノアルコール又は飽和脂環式モノアルコールの置換基としては、例えば、カルボキシル基を挙げることができる。
脂肪族モノアルコールを例示すると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、イソペンタノール、1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、イソノナノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−ミリスチルアルコール、セチルアルコール、1−ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、及びオレイルアルコール等を挙げることができる。脂環式モノアルコールとしては、例えば、シクロヘキサノール等を挙げることができる。
脂肪族モノアルコールとしては、分岐脂肪族モノアルコールが好ましく、例えば、2−エチルヘキサノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、及び2−ヘキシルデカノール等の炭素原子数8〜20のものが好ましい。
上記モノアルコールとしては、炭素原子数6〜30(より好ましくは炭素原子数6〜25)の置換若しくは非置換の芳香族モノアルコール、例えば、フェノール又はクミルフェノールを用いることもできる。又、炭素原子数1〜6の脂肪族基部分を有し、炭素原子数6〜10の芳香族基で置換された飽和脂肪族モノアルコール、例えば、ベンジルアルコールを用いることもできる。
更に、上記モノアルコールとして、片末端にヒドロキシル基を有するモノアルキレングリコールモノエーテル又は片末端にヒドロキシル基を有するポリアルキレングリコールモノエーテルを用いることもできる。これらのモノアルキレングリコールモノエーテル又はポリアルキレングリコールモノエーテルとしては、好ましくは、モノ若しくはポリエチレングリコール又はモノ若しくはポリプロピレングリコールの炭素原子数1〜8のアルキルモノエーテルを挙げることができ、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、及びテトラジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルを挙げることができる。
更に、酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(H2)の製造に用いることのできるモノアルコールとしては、エチレン性不飽和二重結合1つ又はそれ以上を有するモノアルコールを挙げることができる。上記エチレン性不飽和二重結合の例としては、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基を挙げることができ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。これらは、1つの化合物中に異なる種類の二重結合を有する化合物であることができる。
上記のエチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールとしては、例えば、エチレン性不飽和二重結合1つ、2つ、又は3つ以上を有する不飽和モノアルコール化合物を用いることができる。エチレン性不飽和二重結合の数が1つのモノアルコールとしては、(メタ)アクリル酸の炭素原子数1〜8のヒドロキシアルキルエステル、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチル2−(ヒドロキシメチル)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、及び1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
エチレン性不飽和二重結合の数が2つのモノアルコールとしては、例えば、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、又はグリセリンジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。エチレン性不飽和二重結合の数が3つのモノアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレン性不飽和二重結合の数が5つのモノアルコールとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートを挙げることができる。
先に例示した脂肪族モノアルコール、芳香族モノアルコール、及びエチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールのヒドロキシル基を開始基として、アルキレンオキサイドを付加重合して得られるアルコール、すなわち、片末端をエーテル化又はエステル化したポリアルキレングリコールも、酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(H2)の製造に用いることができる。付加重合に用いるアルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、又は1,2−、1,4−、2,3−若しくは1,3−ブチレンオキサイド、あるいはこれらの2種以上の混合物を用いることができる。2種以上のアルキレンオキサイドを併用するときの結合形式はランダム及び/又はブロックのいずれでもよい。アルキレンオキサイドの付加数は、一分子中、通常1〜300、好ましくは2〜250、特に好ましくは5〜100である。
アルキレンオキサイドの付加は、公知方法、例えばアルカリ触媒の存在下、100〜200℃の温度で行うことができる。こうして得られる付加重合生成物の市販品としては、日本油脂社製ユニオックスシリーズ、又は日本油脂社製ブレンマーシリーズ等がある。
具体的に例示すると、ユニオックスM−400、M−550、M−2000、ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、AE−90、AE−200、AE−400、PP−1000、PP−500、PP−800、AP−150、AP−400、AP−550、AP−800、50PEP−300、70PEP−350B、AEPシリーズ、55PET−400、30PET−800、55PET−800、AETシリーズ、30PPT−800、50PPT−800、70PPT−800、APTシリーズ、10PPB−500B、及び10APB−500B等がある。
酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(H2)の製造に用いることができるモノアルコールは、上記例示に限定されることなく、ヒドロキシル基を一つ有する化合物であればいかなる化合物も用いることができ、又、単独で用いても、2種類以上を併用することもできる。
上記モノアルコールのうち、例えば4−メチル−2−ペンタノール、イソペンタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、イソノナノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、若しくは2−ヘキシルデカノール等の分岐脂肪族モノアルコール、又は片末端にヒドロキシル基を有するポリアルキレングリコールを用いることで、結晶性が低下し、室温で液状になる場合があるので、作業性の点と、他の樹脂との相溶性の点で好ましい。
上記モノアルコールを開始剤として、ラクトンを開環重合することによって、片末端にヒドロキシル基を有し、上記樹脂型分散剤の製造に用いることができるポリエステルを得ることができる。上記開環重合に用いることができるラクトンは、好ましくは4員環〜10員環、より好ましくは5員環〜7員環のラクトンであり、環構成炭素原子は、置換されているかあるいは非置換であることができる。環構成炭素原子の置換基としては、炭素原子数1〜4のアルキル基を挙げることができる。又、環内にエチレン結合1つ又はそれ以上を含む不飽和ラクトン、又は芳香族化合物(例えば、ベンゼン)との縮合ラクトンも用いることができる。
好適なラクトンとして、具体的には、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、及びアルキル置換されたε−カプロラクトンを挙げることができ、このうちδ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、又はアルキル置換されたε−カプロラクトンを使用するのが開環重合性の点で好ましい。アルキル置換基としては、例えば、炭素原子数1〜4のアルキル基、特に、メチル基又はエチル基を挙げることができ、これらのアルキル置換基1つ又はそれ以上で置換されていることができる。
上記ラクトンは、上記例示に限定されることなく用いることができ、又、単独で用いても、2種類以上を併用することもできる。2種類以上を併用することで結晶性が低下し、室温で液状になる場合があるので、作業性の点と、他の樹脂との相溶性の点で好ましい。
上記モノアルコールと上記ラクトンとの開環重合は、公知方法、例えば、脱水管及びコンデンサーを接続した反応器に、上記モノアルコール、上記ラクトン、及び重合触媒を仕込み、窒素気流下で行うことができる。上記モノアルコールとして低沸点のモノアルコールを用いる場合には、オートクレーブを用いて加圧下で反応させることができる。又、上記モノアルコールとしてエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を使用する場合は、重合禁止剤を添加し、乾燥空気流下で反応を行うことが好ましい。
上記モノアルコール1モルに対する上記ラクトンの付加モル数は、1〜50モル、好ましくは、3〜20モル、最も好ましくは4〜16モルである。付加モル数が、1モルより少ないと、炭素系触媒材料を分散させる効果を得ることができず、50モルより大きいと分子量が大きくなりすぎ、炭素系触媒材料の分散性や触媒インキ組成物の流動性の低下を招く。
上記開環重合用の重合触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨード、テトラブチルアンモニウムヨード、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、及びベンジルトリメチルアンモニウムヨード等の四級アンモニウム塩; テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムヨード、テトラブチルホスホニウムヨード、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリメチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリメチルホスホニウムヨード、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、及びテトラフェニルホスホニウムヨード等の四級ホスホニウム塩; トリフェニルフォスフィン等のリン化合物; 酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸カリウム、及び安息香酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩; ナトリウムアルコラート、及びカリウムアルコラート等のアルカリ金属アルコラート; 三級アミン類; 有機錫化合物; 有機アルミニウム化合物; 有機チタネート化合物; 並びに、塩化亜鉛等の亜鉛化合物等を挙げることができる。触媒の使用量は0.1ppm〜3000ppm、好ましくは1ppm〜1000ppmである。触媒量が3000ppm以上となると、酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(H3)の着色が激しくなり、製品の安定性に悪影響を与える。逆に、触媒の使用量が0.1ppm以下では環状エステルの開環重合速度が極めて遅くなるので好ましくない。
上記開環重合反応は、無溶剤で実施するか、又は適当な脱水有機溶媒を使用することもできる。上記開環重合反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除いて用いることもできる。
上記開環重合反応は、好ましくは100℃から220℃、より好ましくは110℃〜210℃の範囲で行う。反応温度が100℃未満では反応速度がきわめて遅く、210℃を超えるとラクトンの付加反応以外の副反応、例えばラクトン付加体のラクトンモノマーへの分解、環状のラクトンダイマーやトリマーの生成等が起こりやすい。
エチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールを使用する場合に使用されるラジカル重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、及びフェノチアジン等が好ましく、これらを単独で用いるかあるいは併用することができ、使用量は、好ましくは0.01%〜6%、より好ましくは0.05%〜1.0%の範囲である。
本発明で用いる酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(H2)は、上記の第一の工程で得られた片末端にヒドロキシル基を有するポリエステルのヒドロキシル基と、テトラカルボン酸二無水物とを反応させる(第二の工程)ことにより得ることが好ましい。
第二の工程で使用されるテトラカルボン酸二無水物としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物、複素環式テトラカルボン酸二無水物、及び多環式テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。
具体的には、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物;1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、及びビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物;並びに、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、及び5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物等の複素環式テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。
更に、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二酸無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、及び3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチル−1−ナフタレンコハク酸二無水物等の多環式テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、特に、芳香族環2つ以上を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、特には、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、及び9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物が好ましい。
酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(H2)の製造に用いることができるテトラカルボン酸二無水物は、上記に例示した化合物に限らず、分子内にカルボン酸無水物部位を2つ有すればどのような構造であってもかまわない。これらは単独で用いても、併用してもかまわない。更に、酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(H2)の製造に好適に用いることができるテトラカルボン酸二無水物は、触媒ペースト組成物の低粘度化の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物であり、更に好ましくは芳香族環2つ以上(特には2〜4)を有するテトラカルボン酸二無水物である。
第二の工程での反応比率は、片末端にヒドロキシル基を有するポリエステルのヒドロキシル基のモル数〈H〉に対する、テトラカルボン酸無水物の無水環のモル数〈N〉の比率〔〈H〉/〈N〉〕が、好ましくは0.5<〈H〉/〈N〉<1.2、更に好ましくは0.7<〈H〉/〈N〉<1.1、最も好ましくは〈H〉/〈N〉=1である。〈H〉/〈N〉<1で反応させる場合は、残存する酸無水物を必要量の水で加水分解して使用してもよい。
第二の工程には触媒を用いてもかまわない。触媒としては、3級アミン系化合物としては、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、及び1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等を挙げることができる。
第一の工程、第二の工程ともに無溶剤で行ってもよいし、適当な脱水有機溶媒を使用してもよい。反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま製品の一部として使用することもできる。
反応温度は80℃〜180℃、好ましくは、90℃〜160℃の範囲で行う。反応温度が80℃以下では反応速度が遅く、180℃以上ではハーフエステル化したものが、再度環状無水物を生成し、反応が終了しにくくなる場合がある。
上記式(1)において、nは好ましくは1〜30の整数、より好ましくは2〜20の整数である。上記式(1)において、nとtとの少なくとも一方が2以上である場合には、上記式(1)に存在する複数のR23は、全てが同じ基であるか、複数種の基を含むことができる。
酸性官能基を有する樹脂は、上記(H1)〜(H2)の2つのタイプのみに限定されるものでなく、2タイプ以外のポリビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ホルマリン縮合物、シリコーン系、及びこれらの複合系ポリマー等であってもよい。更に、これらの酸性官能基を有する樹脂は2種類以上を併用することもできる。
<その他の市販の酸性官能基を有する樹脂(H3)>
市販の酸性官能基を有する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。これらは単独で用いても、併用してもかまわない。
ビックケミー社製の酸性官能基を有する樹脂としては、Anti−Terra−U、U100、203、204、205、Disperbyk−101、102、106、107、110、111、140、142、170、171、174、180、2001、BYK−P104、P104S、P105、9076、及び220S等が挙げられる。
日本ルーブリゾール社製の酸性官能基を有する樹脂としては、SOLSPERSE3000、21000、26000、36000、36600、41000、41090、43000、44000、及び53095等が挙げられる。
エフカアディティブズ社製の酸性官能基を有する樹脂としては、EFKA4510、4530、5010、5044、5244、5054、5055、5063、5064、5065、5066、5070、及び5071等が挙げられる。
味の素ファインテクノ社製の酸性官能基を有する樹脂としては、アジスパーPN411、及びアジスパーPA111等が挙げられる。
ELEMENTIS社製の酸性官能基を有する樹脂としては、NuosperseFX−504、600、605、FA620、2008、FA−196、及びFA−601等が挙げられる。
ライオン社製の酸性官能基を有する樹脂としては、ポリティA−550、及びポリティPS−1900等が挙げられる。
楠本化成社製の酸性官能基を有する樹脂としては、ディスパロン2150、KS−860、KS−873SN、1831、1860、PW−36、DA−1200、DA−703−50、DA−7301、DA−325、DA−375、及びDA−234等が挙げられる。
BASFジャパン社製の酸性官能基を有する樹脂としては、JONCRYL67、678、586、611、680、682、683、690、52J、57J、60J、61J、62J、63J、70J、HPD−96J、501J、354J、6610、PDX−6102B、7100、390、711、511、7001、741、450、840、74J、HRC−1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX−7630、352J、252D、538J7640、7641、631、790、780、及び7610等が挙げられる。
三菱レイヨン社製の酸性官能基を有する樹脂としては、ダイヤナールBR−60、64、73、77、79、83、87、88、90、93、102、106、113、及び116等が挙げられる。
<燃料電池用触媒インキ組成物>
本発明の触媒インキ組成物中に含まれる炭素系触媒材料、分散剤および水素イオン伝導性ポリマーもしくは撥水性材料の割合は、限定されるものではなく、広い範囲内で適宜選択され得る。
触媒インキ組成物の調製方法も特に制限は無い。調製は、各成分を同時に分散しても良いし、触媒ペースト組成物を分散後、水素イオン伝導性ポリマー成分や撥水性材料を添加してもよく、使用する炭素系触媒材料、水素イオン伝導性ポリマーもしくは撥水性材料や、溶剤種により最適化することができる。但し、触媒ペースト組成物を先に作製し、水素イオン伝導性ポリマーもしくは撥水性材料を後添加して触媒インキ組成物を作製すると、分散時間の短縮などコストダウンに大きく貢献することができる。
例えば、本発明の触媒インキ組成物では、炭素系触媒材料を100重量部に対して、分散剤が0.01〜10重量部、好ましくは0.02〜5重量部、水素イオン伝導性ポリマーが10〜300重量部、好ましくは20〜250重量部、また、撥水性材料は5〜100重量部、好ましくは10〜90重量部である。
<水素イオン伝導性ポリマー>
水素イオン伝導性ポリマーは公知である。水素イオン伝導性ポリマーとしては、パーフルオロスルホン酸系等のフッ素系イオン交換樹脂、スルホン酸基などの強酸性官能基を導入したオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。例えば電気陰性度の高いフッ素原子を導入する事で化学的に非常に安定し、スルホン酸基の乖離度が高く、高いイオン導電性が実現できる。このような水素イオン伝導性ポリマーの具体例としては、デュポン社製の「Nafion」、旭硝子(株)製の「Flemion」、旭化成(株)製の「Aciplex」、ゴア(Gore)社製の「Gore Select」等が挙げられる。通常、水素イオン伝導性ポリマーは、ポリマーを5〜30重量%程度含むアルコール水溶液として使用される。アルコールとしては、例えば、メタノール、プロパノール、エタノールジエチルエーテル等が使用される。
<撥水性材料>
撥水性材料としては、カソード側の触媒層において酸素と水素イオンが反応して水を生じる、この余剰水の排水性がよく、ガス拡散性を妨げないものであればよい。撥水性材料の表面張力としては水の表面張力(約72dyn/cm)より低いものが良く、例えば、フッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンが使用できるが、中でもフッ素系樹脂が好ましい。フッ素系樹脂としてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などが挙げられる。
<溶剤>
溶剤としては、水または水と親和性が高い溶剤であれば特に限定されない。特に、アルコールが好適に使用できる。このようなアルコールとしては、例えば、沸点80〜200℃程度の1価のアルコールないし多価アルコールが利用でき、好ましくは炭素数が4以下のアルコール系溶剤が挙げられる。具体的には、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられる。アルコールは、1種単独で又は2種以上混合して使用される。これらの1価のアルコールの中でも、2−プロパノール、1−ブタノール及びt−ブタノールが好ましい。多価アルコールとしては具体的には、水素イオン伝導性ポリマーとの相溶性及び触媒インキ組成物とした場合の乾燥効率の問題から、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール等が好ましく、中でもプロピレングリコールが特に好ましい。
<燃料電池用触媒層および燃料電池用電極膜接合体>
燃料電池用触媒層は、上記触媒インキ組成物を電極基材(カーボンペーパーなど)に直接塗布及び乾燥することにより形成されてもよく、また触媒インキ組成物をテフロン(登録商標)シート等の剥離可能な転写シート(基材)に塗布乾燥して形成した触媒層転写シートを作製し、その後、固体高分子電解質膜に転写することにより形成されてもよい。
燃料電池用触媒層は、上記触媒インキ組成物を転写シート(テフロン(登録商標)シートなど)に塗布するか、または電極基材に直接塗布し、その後乾燥することにより製造する場合、塗布方法は通常の塗布方法を用いることができる。塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スプレー、ディップコーター、スピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷等の一般的な方法を適用できる。
塗布した後、乾燥することにより、塗膜(燃料電池用触媒層)が形成される。乾燥温度は、通常40〜120℃程度、好ましくは75〜95℃程度である。また、乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、通常5分〜2時間程度、好ましくは30分〜1時間程度である。塗布乾燥後の燃料電池用触媒層の厚みは、通常5μm〜80μm程度、好ましくは10μm〜70μm程度がよい。
上記の燃料電池用触媒層を固体高分子電解質膜に転写する場合の加圧レベルは、転写不良を避けるために、通常0.5Mpa〜20Mpa程度、好ましくは1Mpa〜10Mpa程度がよい。また、この加圧操作の際に、転写不良を避けるために、加圧面を加熱するのが好ましい。加熱温度は、固体高分子電解質膜の破損、変性等を避けるために、通常200℃以下、好ましくは120〜150℃程度がよい。
本発明における燃料電池用電極膜接合体とは、水素イオン伝導性の固体高分子電解質膜の片面もしくは両面に、燃料電池用触媒層が密着して形成され、さらに、その片面もしくは両面に、カーボンペーパー等の電極基材が密着して具備したものを意味する。
燃料電池用電極膜接合体の製造方法としては、電極基材上に予め形成された燃料電池用触媒層を、固体高分子電解質膜の片面もしくは両面に熱圧着することで燃料電池用電極膜接合体を作製してもよいし、転写基材上に予め形成された燃料電池用触媒層を、転写によって固体高分子電解質膜上に形成後、電極基材を熱圧着することで燃料電池用電極膜接合体を作製してもよい。この際、使用する電極基材は、予め燃料電池触媒層が形成されたものを使用することもできる。
上記の燃料電池用電極膜接合体において、電極基材と燃料電池用触媒層及び固体高分子電解質膜間を熱圧着する場合の加圧レベルは、通常0.1Mpa〜100Mpa程度、好ましくは1Mpa〜20Mpa程度がよい。また、加熱温度としては、固体高分子電解質膜の破損、変性等を避けるために、通常200℃以下、好ましくは120〜150℃程度がよい。
本発明の電極膜接合体は、触媒層の電極基材と接触する側に微多孔質の層を含んでいてもよい。この層は、触媒層の一部として取り扱われたり、あるいは撥水層やMPL(micro porous layer、マイクロポーラスレイヤー)とも呼ばれ、触媒層へのガス供給の均一化や、導電性の向上に加え、カソード側で発電時に発生する水の排水性を向上させる等の役割を持つ。撥水層あるいはMPLは、例えば、炭素材料や炭素系触媒材料と、撥水性材料を含むインキ組成物をカーボンペーパー基材上に塗工後、300℃程度で焼成することにより形成でき、本発明の触媒ペースト組成物も好適に使用できる。
<固体高分子電解質膜>
固体高分子電解質膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂等が挙げられる。電気陰性度の高いフッ素原子を導入する事で化学的に非常に安定し、スルホン酸基の乖離度が高く、高いイオン導電性が実現できる。このような水素イオン伝導性高分子電解質の具体例としてはデュポン社製の「Nafion」、旭硝子(株)製の「Flemion」、旭化成(株)製の「Aciplex」、ゴア(Gore)社製の「Gore Select」等を用いて形成した膜が挙げられる。電解質膜の膜厚は、通常20μm〜250μm程度、好ましくは20μm〜80μm程度である。
<電極基材(ガス拡散層)>
電極基材は、公知であり、燃料極又は空気極を構成する各種の電極基材を使用できる。電極基材は導電性を有する材料であれば良いが、好ましくは炭素繊維からなるカーボンペーパーなどがよい。
また、電極基材はガス拡散層あるいはGDLとも呼ばれ、カソード側では空気中の酸素を取り入れ、アノード側では水素を取り込めるように気体が通過および拡散できるような多孔質または繊維状のものであることが好ましい。更に電子の出し入れが必要なため導電性を有する材料を用いらなければならない。通常使用されるのはカーボンペーパー基材などである。
<転写基材>
転写基材は触媒インキ組成物を塗布することで燃料電池用触媒層を形成し、転写基材上にある触媒層をナフィオンなどの固体高分子電解質膜に転写するためのフィルム基材である。転写基材としては、安価で入手が容易な高分子フィルムが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等がより好ましい。転写基材の厚さは、取り扱い性及び経済性の観点から、通常6μm〜100μm程度、好ましくは10μm〜50μm程度、より好ましくは15μm〜30μm程度とするのがよい。
<燃料電池>
本発明の燃料電池は、従来の燃料電池と比べ、燃料電池用触媒ペースト組成物や燃料電池用触媒インキ組成物の分散性に優れるため炭素系触媒材料が酸素ガスなどの気体と好適に接触できることで酸素還元電位や酸素還元電流密度(単に電流密度ということがある)が向上し、塗工ムラやピンホールが少ないため耐久性に優れるという利点がある。
以下に、燃料電池の性能を評価する方法の一例を示す。燃料電池用電極膜接合体を4cm角の試料とし、その両側からガスケットを2枚、次いでグラファイトプレートであるセパレータを2枚はさみ、更に両側から集電板を2枚装着して単セルとして作製する。カソード(空気極)側から加湿した酸素ガスを供給し、アノード(燃料極)側から加湿した水素ガスを供給して電池特性を測定する。
以上述べたように、本発明の燃料電池用触媒ペースト組成物や燃料電池用触媒インキ組成物を用いて作製される燃料電池用触媒層は、酸素ガスなどの気体との接触が起こりやすくなることが考えられ、その結果、酸素還元電位や電流密度が向上し、塗工ムラやピンホールが少なく、耐久性に優れるという利点がある。したがって、本発明の燃料電池用触媒層および燃料電池用電極膜接合体を用いて作製された燃料電池は、従来の燃料電池と比べて、経済的でコスト優位性が高く、また触媒が被毒されることなく耐久性に優れるという長所を有する。
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中、特に断りの無い限り、「部」とは「重量部」、「%」とは「重量%」を意味する。
分散剤に関し、「塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体」の記載は、以下、「塩基性官能基を有する誘導体」と略記することがある。又、「酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体」の記載は、以下、「酸性官能基を有する誘導体」と略記することがある。さらに、『「塩基性官能基を有する各種誘導体」又は「酸性官能基を有する各種誘導体」』の記載は、「塩基性官能基又は酸性官能基を有する誘導体」と略記することがある。
酸性官能基を有する樹脂の「重合平均分子量(Mw)」は、装置としてHLC−8320GPC(東ソー株式会社製)を使用して測定を行ったポリスチレン換算値である。
又、塩基性官能基を有する樹脂の「重合平均分子量(Mw)」は、装置としてHLC−8320GPC(東ソー株式会社製)を使用し、さらにカラムとして SUPER−AW3000を使用し、溶離液として30mMトリエチルアミン及び10mM LiBrのN,N−ジメチルホルムアミド溶液を用いて測定を行って得られたポリスチレン換算値である。
酸価は、「JIS K 2501-2003石油製品及び潤滑油-中和価試験方法」に基づいて測定した。試料を、キシレンとジメチルホルムアミド(1+1)を混合した滴定溶剤に溶かし、電位差滴定法により0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液で滴定し、滴定曲線上の変曲点を終点とした。水酸化カリウム溶液の終点までの滴定量から、酸価を算出した。又、アミン価は、ASTM D 2074の方法によって得られた測定値である。
<分散剤>
<塩基性官能基を有する化合物:塩基性官能基を有する誘導体>
表1〜4に示す分散剤A〜Oであり、より詳細には以下のように分類される。
・塩基性官能基を有する有機色素誘導体:A、B、C、D、E、H
・塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体:F、L
・塩基性官能基を有するアクリドン誘導体:G
・塩基性官能基を有するトリアジン誘導体:H、I、J、K、L、M、N、O
<塩基性官能基、及び酸性官能基を持たない化合物>
表5に示す分散剤P、Qであり、本発明では比較検討のために使用する。
<塩基性官能基を有する化合物:塩基性官能基を有する樹脂>
・塩基性官能基を有する樹脂 重合体G1タイプ
G1−1:アミノ基を有するポリビニル系重合体;重量平均分子量は13500、アミン価27.5mg KOH/g。
G1−2:アミノ基を有するポリビニル系重合体;重量平均分子量は21600、アミン価17.4mg KOH/g。
G1−3:アミノ基を有するポリビニル系重合体;重量平均分子量は11900、アミン価25.2mg KOH/g。
上記重合体G1−1〜G1−3の調製方法は以下のとおりである。
<アミノ基を有するビニル系樹脂 重合体G1−1の調製>
<ビニル重合体A1−1の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート 500部、チオグリセロール 28部と、N−メチル−2−ピロリドン 528部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を90℃に加熱して、AIBN 0.50部を添加した後7時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認後、室温まで冷却して、重量平均分子量4200の、片末端領域に2つの遊離ヒドロキシル基を有するビニル重合体A−1の固形分50%溶液を得た。
<重合体G1−1の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ビニル重合体A1−1の固形分50%溶液 1022部と、イソホロンジイソシアネート 45.2部と、触媒としてジブチル錫ジラウレート 0.11gを仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を100℃に加熱して、3時間反応した後、40℃まで冷却して、イミノビスプロピルアミン 26.7部、N−メチル−2−ピロリドン 363.3部の混合液中に30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、室温まで冷却して反応を終了した。固形分を40%に調整し、重合体G1−1の淡黄色透明溶液を得た。重合体G1−1の重量平均分子量は13500であり、アミン価27.5mg KOH/gであった。
<アミノ基を有するビニル系樹脂 重合体G1−2の調製>
<ビニル重合体A1−2の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、n−ブチルメタクリレート 500部と、チオグリセロール 28部と、N−メチル−2−ピロリドン 528部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を90℃に加熱して、AIBN 0.50部を添加した後7時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認後、室温まで冷却して、重量平均分子量4800の、片末端領域に2つの遊離ヒドロキシル基を有するビニル重合体A1−2の固形分50%溶液を得た。
<重合体G1−2の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ビニル重合体(A1−2)の固形分50%溶液 1056部と、イソホロンジイソシアネート 115.1部と、触媒としてジブチル錫ジラウレート 0.12gを仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を100℃に加熱して、3時間反応した後、40℃まで冷却して、イミノビスプロピルアミン 25.5部と、2−アミノ−2−メチル−プロパノール 11.5部と、N−メチル−2−ピロリドン 492.0部の混合液中に30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、室温まで冷却して反応を終了した。固形分を40%に調整し、重合体G1−2の淡黄色透明溶液を得た。重合体G1−2の重量平均分子量は21600であり、アミン価17.4mg KOH/gであった。
<アミノ基を有するビニル系樹脂 重合体G1−3の調製>
<ビニル重合体A1−3の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート 400部と、ブチルアクリレート 100部と、チオグリセロール 56部と、N−メチル−2−ピロリドン 556部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を90℃に加熱して、AIBN 0.50部を添加した後7時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認後、室温まで冷却して、重量平均分子量3000の、片末端領域に2つの遊離ヒドロキシル基を有するビニル重合体A1−3の固形分50%溶液を得た。
<重合体G1−3の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ビニル重合体A1−3の固形分50%溶液 1112部と、イソホロンジイソシアネート 230.2部と、触媒としてジブチル錫ジラウレート 0.13gを仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を100℃に加熱して、3時間反応した後、40℃まで冷却して、メチルイミノビスプロピルアミン 56.4部と、ジブチルアミン 33.4部と、N−メチル−2−ピロリドン 757.9部の混合液中に30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、室温まで冷却して反応を終了した。固形分を40%に調整し、重合体G1−3の淡黄色透明溶液を得た。重合体G1−3の重量平均分子量は11900であり、アミン価25.2mg
KOH/gであった。
・塩基性官能基を有する樹脂 重合体G2タイプ
G2−1:アミノ基を有するポリエステル系重合体;重量平均分子量13000、アミン価36mgKOH/g。
G2−2:アミノ基を有するポリエステル系重合体;重量平均分子量27000、アミン価41mgKOH/g。
G2−3:アミノ基を有するポリビニル系重合体;重量平均分子量15200、アミン価94mgKOH/g。
上記重合体G2−1〜G2−3の調製方法は以下のとおりである。<アミノ基を有するポリエステル系重合体G2−1の調製>
<片末端にアクリロイル基を有するポリエステルA2−1の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、4−ヒドロキシブチルアクリレート20.8部とε−カプロラクトン379部、触媒としてモノブチルスズ(IV)オキシド0.1部、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1部を仕込み、乾燥空気流下、120℃で4時間加熱、撹拌し固形分測定により95%が反応したことを確認し反応を終了し、N−メチル−2−ピロリドン171部を加えて希釈し、更に、固形分70重量%に調整して、重量平均分子量6500の、片末端に1つのアクリロイ基を有するポリエステルA2−1の固形分70重量%溶液を得た。
<重合体G2−1の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、イミノビスプロピルアミン18.9部と、N−メチル−2−ピロリドン248部を仕込み、50℃に加熱してポリエステルA2−1の固形分70重量%溶液571部を30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、イソホロンジイソシアネート16.0部、N−メチル−2−ピロリドン112部の混合液を30分かけて滴下し、更に2時間反応し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて、固形分30重量%に調整して、重量平均分子量13000、アミン価36mgKOH/gの重合体G2−1の固形分30重量%溶液を得た。
<アミノ基を有するポリエステル系重合体G2−2の調製>
<重合体G2−2の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルイミノビスプロピルアミン23.9部と、N−メチル−2−ピロリドン248部を仕込み、50℃に加熱してポリエステルA2−1の固形分70重量%溶液571部を30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、イソホロンジイソシアネート18.3部、N−メチル−2−ピロリドン207部の混合液を30分かけて滴下し、更に2時間反応し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて、固形分30重量%に調整して、重量平均分子量27000、アミン価41mgKOH/gの重合体G2−2の固形分30重量%溶液を得た。
<アミノ基を有するビニル系重合体G2−3の調製>
<片末端にアクリロイル基を有するビニル重合体A2−2の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート400部とブチルアクリレート100部、N−メチル−2−ピロリドン100部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール27.5部に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5部を溶解した溶液を添加して、10時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認し、N−メチル−2−ピロリドン427部を加えて希釈したのち、乾燥空気流下でアクリロイルオキシエチルイソシアネート32.6部、DBTDL 1部、メチルハイドロキノン0.3部を加え、さらに2時間加熱攪拌し、更に、固形分50重量%に調整して、重量平均分子量4500の、片末端に2つのアクリロイル基を有するビニル重合体A2−2の固形分50重量%溶液を得た。
<重合体G2−3の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、イミノビスプロピルアミン27.8部と、N−メチル−2−ピロリドン184部を仕込み、50℃に加熱してビニル重合体A2−2の固形分70重量%溶液500部を30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、イソホロンジイソシアネート15.7部、N−メチル−2−ピロリドン121部の混合液を30分かけて滴下し、更に2時間反応し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて、固形分30重量%に調整して、重量平均分子量15200、アミン価94mgKOH/gの重合体G2−3の固形分30重量%溶液を得た。
・上記重合体G1およびG2タイプ以外の塩基性官能基を有する樹脂G3
G3−1:アジスパーPB821、味の素ファインテクノ社製、アミノ基を有する樹脂
G3−2:SOLSPERSE24000GR、日本ルーブリゾール社製、アミノ基を
有する樹脂
・ビニルアミド系樹脂
G3−3:PVP K−30(ISPジャパン社製、商品名):ポリビニルピロリドン(PVPと略記)、重量平均分子量約4〜8万。
G3−4:PNVA GE191(昭和電工社製、商品名):ポリN−ビニルアセトアミド(PNVAと略)重量平均分子量約1〜3万。
<酸性官能基を有する化合物:酸性官能基を有する誘導体>
表6〜10に示す分散剤Da〜Dsであり、より詳細には以下のように分類される。・酸性官能基を有する有機色素誘導体:Da、Dk、Dl、Dm、Dn、Do、Dp、Dq、Dr、Ds・酸性官能基を有するトリアジン誘導体:Da、Db、Dc、Dd、De、Df、Dg、Dh、Di、Dj、Dp、Dr
酸性官能基を有する誘導体Dm:触媒ペースト組成物の調製時に、スルホン酸体(造塩なし)に1当量のアンモニアを添加し、アンモニウム造塩物とした。
酸性官能基を有する誘導体Ds:触媒ペースト組成物の調製時に、スルホン酸体(造塩なし)に1当量のアンモニアを添加し、アンモニウム造塩物とした。
<酸性化合物:無機酸、分子量300以下の有機酸>
無機酸、及び分子量300以下の有機酸に関しては、後述する表11に示した化合物を、表11に示した組成に従って添加した。
<酸性化合物:酸性官能基を有する樹脂>
・酸性官能基を有するポリビニル系樹脂H1タイプ
<カルボキシル基を有するポリビニル系樹脂H1−1の調製>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、n−ブチルメタクリレート100部とベンジルメタクリレート100部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール12部に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を溶解した溶液を添加して、10時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認した。ピロメリット酸無水物19部、N−メチル−2−ピロリドン231部、触媒として1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン0.40部を追加し、120℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し、反応を終了し、固形分50%のカルボキシル基を有するポリビニル系樹脂H1−1溶液を得た。得られたポリビニル系樹脂H1−1の重量平均分子量(Mw)は8,500、酸価は43mgKOH/gであった。
<カルボキシル基を有するポリビニル系樹脂H1−2の調製>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート180部とメタクリル酸20部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール12部に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を溶解した溶液を添加して、10時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認した。ピロメリット酸無水物19部、N−メチル−2−ピロリドン231部、触媒として1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン0.40部を追加し、120℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了し、固形分50%のカルボキシル基を有するポリビニル系樹脂H1−2溶液を得た。得られたポリビニル系樹脂H1−2の重量平均分子量(Mw)は8,600、酸価は93mgKOH/gであった。
<カルボキシル基を有するポリビニル系樹脂H1−3の調製>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、エチルアクリレート160部とメチルメタクリレート30部とメタクリル酸10部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール12部に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を溶解した溶液を添加して、10時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認した。ピロメリット酸無水物19部、N−メチル−2−ピロリドン231部、触媒として1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン0.40部を追加し、120℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了し、固形分50%のカルボキシル基を有するポリビニル系樹脂H2−3溶液を得た。得られたポリビニル系樹脂H1−3の重量平均分子量(Mw)は8,400、酸価は70mgKOH/gであった。
・酸性官能基を有するポリエステル系樹脂H2タイプ<カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂H2−1の調製>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、及び攪拌機を備えた反応容器に、1−ドデカノール62.6部、ε−カプロラクトン287.4部、及び触媒としてモノブチルスズ(IV)オキシド0.1部を仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で4時間加熱、撹拌した。固形分測定により98%が反応したことを確認したのち、無水ピロメリット酸36.6部を加え、120℃で2時間反応させカルボキシル基を有するポリエステル系樹脂(H2−1)を得た。得られたポリエステル系樹脂H2−1は、常温で白色ワックス状固体であった。
<カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂H2−2の調製>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、及び攪拌機を備えた反応容器に、メトキシPEG400(片末端メトキシ化ポリエチレングリコール;分子量400)169.0部、ε−カプロラクトン96.4部、δ−バレロラクトン84.6部、及び触媒としてモノブチルスズ(IV)オキシド0.1部を仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で4時間加熱、撹拌した。固形分測定により98%が反応したことを確認したのち、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物62.2部を加え、120℃で2時間反応させカルボキシル基を有するポリエステル系樹脂H2−2を得た。得られたポリエステル系樹脂H2−2は、常温で淡黄色透明液体であった。
・上記H1〜H2タイプ以外の酸性官能基を有する樹脂H3H3−1:Disperbyk−111(ビックケミー社製、商品名):燐酸基を有する樹脂H3−2:アクアロンEC N100 エチルセルロース(ハーキュレス社製)H3−3:カルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム社製 CMC1380)<炭素系触媒材料の製造例>[製造例1:炭素系触媒材料X1の調製]
ポリビニルピリジン(アルドリッチ製:Mw:6万)を出発原料としてポリビニルピリジン鉄(II)錯体10gを得、これとケッチェンブラックEC300(ライオン社製)10gを、乳鉢により、乾式混合20分行い、その後、電気炉にて窒素雰囲気下(0.5L/min)、800℃1時間(昇温1.5時間)で焼成した。焼成物を、乳鉢によって、乾式粉砕し、150メッシュのふるいで分級した。更に金属除去のため、37%塩酸中で、撹拌とデカンテーションを3回繰り返し、最後に電気炉に窒素雰囲気下(0.5L/min)、700℃、1時間(昇温2時間)で熱処理し、乾式粉砕し150メッシュで分級して炭素系触媒材料X1を得た。
[製造例2:炭素系触媒材料X2の調製]
含窒素化合物である無金属フタロシアニン13.1gをフラン樹脂の前駆体であるフルフリルアルコール10gに混合し、1M−塩酸を10g添加し、この混合物をオーブン中80℃で加熱することによりフタロシアニン含有フラン樹脂を得た。これを、さらに、窒素雰囲気下、オーブン中で室温から10℃/分の速度で昇温し、1000℃で1時間保持することにより熱処理した。これによりフタロシアニン含有フラン樹脂の炭素化物を得た。この炭素化物を遊星型ボールミル(レッチェ社製、PM100)で粉砕して、窒素原子が13.4モル%ドープされた平均粒径0.1μmの炭素系触媒材料X2を得た。
[製造例3:炭素系触媒材料X3の調製]
鉄フタロシアニン(山陽色素社製)とケッチェンブラック(ライオン社製EC−300J)を、重量比1:1で秤量し、乳鉢にて乾式混合を行い前駆体とした。
上記前駆体粉末を、アルミナ製るつぼに充填し、電気炉にて窒素雰囲気下、700℃で2時間熱処理を行い、炭素系触媒材料X3を得た。
[製造例4:炭素系触媒材料X4の調製]
コバルトフタロシアニン(東京化成工業社製)とケッチェンブラック(ライオン社製EC−600JD)を、重量比0.5:1で秤量し、乳鉢にて乾式混合を行い前駆体とした。
上記前駆体粉末を、アルミナ製るつぼに充填し、電気炉にて窒素雰囲気下、800℃で2時間熱処理を行い、炭素系触媒材料X4を得た。
<触媒ペースト組成物の調製>[実施例1−1]
炭素系触媒材料X1を8重量部、溶剤としてブタノール(キシダ化学社製)71.96重量部、分散剤としてポリビニルピロリドンPVP K−30(ISPジャパン社製)0.04重量部(炭素系触媒材料を100重量部に対して0.5重量部)を配合し、ディスパー(プライミクス、TKホモディスパー)にて攪拌混合することで本発明の触媒ペースト組成物1(固形分濃度10重量%)を調製した。
[実施例2−1〜実施例108−1]
炭素系触媒材料、溶剤、および分散剤の種類と組成を、表11、12、13および表14に変更した以外は、実施例1−1と同様にして触媒ペースト組成物を調整した。
[比較例1−1〜8−1 触媒ペースト組成物の調製]
分散剤を使用しない以外は、実施例1−1と同様にして、触媒ペースト組成物を調製した。
[比較例9−1〜13−1 触媒ペースト組成物の調製]
分散剤として、表5に記載の塩基性および酸性官能基を有しない分散剤P、Qを用い、表12に記載の添加量とする以外は、実施例1−1と同様にして、触媒ペースト組成物を調製した。
[比較例14−1〜17−1 触媒ペースト組成物の調製]
分散剤として、下記の比較樹脂を用いた以外は、実施例1−1と同様にして、触媒ペースト組成物を調製した。
比較樹脂:PTFE 30−J(三井・デュポンフロロケミカル社製):60%ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)水系分散体
<触媒ペースト組成物の評価>
触媒ペースト組成物は、粘度と粒径によって分散性を評価した。
粘度は、E型粘度計(東機産業社製、「RE80型粘度計」)を使用し、50rpmの回転速度で、温度25℃において測定した。
粒径は、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)を用いて体積粒度分布を測定し、粒径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに50%となるところの平均粒径(D50)を粒径とした。
表15および表16に触媒インキ組成物の分散性評価の結果を示す。粘度が低く、粒径が小さいものほど、分散性が優れていることを示す。
[実施例1−2 触媒インキ組成物の調製]
実施例1−1で得た触媒ペースト組成物に、20重量%ナフィオン(Nafion)溶液(水素イオン伝導性ポリマー、デュポン社製、溶剤:水及び1−プロパノール)20重量部を添加し、ディスパー(プライミクス社製、T.Kホモディスパー)にて攪拌混合することで触媒インキ組成物(固形分濃度12重量%、触媒インキ組成物100重量%としたときの炭素系触媒材料と水素イオン伝導性ポリマーの合計した割合)を調製した。
[実施例2−2〜実施例108−2、比較例1−2〜比較例17−2]
実施例1−1で得た触媒ペースト組成物を、それぞれ、実施例2−1〜実施例108−1、比較例1−1〜比較例17−1で得た触媒ペースト組成物に変更した以外は、実施例1−2と同様にして、それぞれ、触媒インキ組成物を調整した。
<触媒インキ組成物の評価>
触媒インキ組成物は、下記に示す電気化学的評価、保存安定性評価、分散性評価によって評価した。
(電気化学的評価)
触媒インキ組成物の電気化学的評価は、RRDE−3A回転リーディング電極装置を用いて、リニアスイープボルタンメトリー測定で酸素還元開始電位(酸素還元電位)と、酸素還元電流(電流値)を実施した。リニアスイープボルタンメトリーの測定手順を以下に示す。触媒インキ組成物をエタノールによって希釈し、固形分濃度が1重量%となるよう測定用試料を調製した。この試料を5μL採取し、回転電極のガラス状炭素上に塗付し、飽和水蒸気雰囲気下で乾燥させた。乾燥させた回転電極を作用極、Ag/AgCl電極を参照極、白金線を対極とし、電解液である0.5M−硫酸中、窒素ガスで30分脱気してベースラインを測定した。次いで、酸素で30分脱気した。掃引速度5mV/s、回転速度2000rpmで、0.8V vs Ag/AgClから−0.2V vs Ag/AgClの範囲で測定を行った。尚、酸素還元電位は、酸素還元電流密度10μA/cm2の時のデータを読み取り、酸素還元電流密度は酸素還元電位0.05Vの時のデータを読み取った。電圧はすべて可逆水素電極を基準とした電位に換算した。
触媒インキ組成物の電気化学的評価の結果を表17および表18に示す。酸素還元電位が高く、酸素還元電流値密度が高いものほど、酸素還元触媒能が優れていることを示す。
(保存安定性評価)
触媒インキ組成物の保存安定性は、調製直後の粘度(初期粘度)と、50℃、3日保存後の粘度(経時粘度)をそれぞれ測定し、それらの粘度変化率(経時粘度/初期粘度)によって評価した。粘度は、いずれもE型粘度計(東機産業社製、「RE80型粘度計」)を使用し、50rpmの回転速度で、温度25℃において測定した。
触媒インキ組成物の保存安定性評価の結果を表17および表18に示す。粘度変化率が小さいもの程、保存安定性が優れていることを示す。尚、本発明の触媒インキ組成物は、いずれも沈殿物の発生が認められず、20℃、3ヶ月保存後においても、粘度の上昇は認められず、保存後の塗工性も良好で、均一な塗膜が得られることを確認した。
(分散性評価)
分散性は、グラインドゲージによる判定(JIS K5600−2−5に準ず)よって触媒インキ組成物の粒度を求め、30μm以上の凝集物が無い場合、分散性が良好であると評価した。本発明の触媒インキ組成物はいずれも10〜20μmであり、分散性は良好であったのに対して、比較例1−2〜17−2で得た触媒インキ組成物は、いずれも30μm以上の凝集物が確認され、分散性が劣っていることを確認した。
<燃料電池用触媒層の作成>
[実施例1−3 燃料電池用触媒層1の作成]
実施例1−2で得た触媒インキ組成物を、ドクターブレードにより、乾燥後の炭素系触媒材料の目付け量が2mg/cm2になるようにテフロン(登録商標)フィルム上に塗布し、大気雰囲気下、95℃で15分間乾燥することにより、本発明のカソード用燃料電池用触媒層1を作製した。
[実施例2−3〜実施例108−3、比較例1−3〜比較例17−3]
実施例1−2で得た触媒インキ組成物を、それぞれ実施例2−2〜実施例108−2、比較例1−2〜比較例17−2で得た触媒インキ組成物に変更した以外は、実施例1−3と同様にして、それぞれ、カソード用燃料電池用触媒層1を作成した。
(塗工性評価)燃料電池用触媒層は、下記に示す塗工性評価によって評価した。テフロン(登録商標)フィルム上に形成された燃料電池用触媒層1を、ビデオマイクロスコープVHX−900(キーエンス社製)にて500倍で観察し、塗工ムラ(ムラ:触媒層の濃淡により評価)およびピンホール(触媒層が塗布されていない欠陥の有無により評価)について、下記の基準で判定した。結果を表21および表22に示す。
(ムラ)
○:触媒層の濃淡が確認されない(良好)。
△:触媒層の濃淡が2〜3箇所あるが極めて微小領域である(実用上問題ない)。
×:触媒層の濃淡が多数確認される、または濃淡の縞の長さが5mm以上のもの1個以上(不良)。
(ピンホ−ル)
○:ピンホールが1つも確認されない(良好)。
△:ピンホールが2〜3個あるが極めて微小である(不良)。
×:ピンホールが多数確認される、または直径1mm以上のピンホールが1個以上(極めて不良)。
[アノード用燃料電池用触媒層4の作製]
ここでは、燃料電池用電極膜接合体の作成に使用するアノード用燃料電池用触媒層の作成方法について以下に述べる。
炭素系触媒材料の代わりに、白金触媒担持カーボン4重量部(田中貴金属社製、白金量46%)、溶剤としてブタノール(キシダ化学社製)56重量部、および水20重量部をディスパー(プライミクス、TKホモディスパー)にて攪拌混合することで触媒ペースト組成物(固形分濃度4重量%)を調製した。次いで、20重量%ナフィオン(Nafion)溶液(水素イオン伝導性ポリマー、デュポン社製、溶剤:水及び1−プロパノール)20重量部を添加し、ディスパー(プライミクス製、T.Kホモディスパー)にて攪拌混合することで触媒インキ組成物(固形分濃度8重量%、触媒インキ組成物100重量%とした触媒インキ組成物を作製した。得られた触媒インキ組成物を白金触媒担持カーボンの目付け量が0.46mg/cm2になるようにテフロン(登録商標)フィルム上に塗布し、大気雰囲気中95℃の条件で15分間乾燥することにより、アノード用燃料電池用触媒層4を作製した。
[実施例1−4 燃料電池用電極膜接合体の作製]
実施例1−3で作製したカソード用燃料電池用触媒層1と、アノード用燃料電池用触媒層4とを、それぞれ固体高分子電解質膜(Nafion212、デュポン社製、膜厚50μm)の両面に密着して、150℃、5Mpaの条件で狭持した後、テフロン(登録商標)フィルムを剥離した。次いで、更に両側から電極基材(ガス拡散層GDL、炭素繊維からなるカーボンペーパ、TGP-H-090、東レ(株)製)を密着させ、本発明の燃料電池用電極膜接合体(GDL/触媒層/固体高分子電解質膜/触媒層/GDL)を作製した。
[実施例2−4〜実施例108−4、比較例1−4〜比較例17−4]
実施例1−3で作製した燃料電池用触媒層1の代わりに、それぞれ実施例2−3〜実施例108−3、比較例1−3〜比較例17−3で得た燃料電池用触媒層1に変更した以外は、実施例1−4と同様にして、燃料電池用電極膜接合体を作製した。
実施例1−4〜実施例108−4で作製した本発明の燃料電池用電極膜接合体(GDL/触媒層/固体高分子電解質膜/触媒層/GDL)は、転写後の触媒層のひび割れや欠けがなく均一な電極膜が形成されていた。一方、比較例1−4〜比較例17−4で作製した燃料電池用電極膜接合体は、いずれも転写時にひび割れや欠けが生じるなどの状態が悪いものであった。
[実施例1−5 燃料電池(単セル)の作製]
実施例1−4で得られた燃料電池用電極膜接合体を4cm角の試料とし、その両側からガスケット2枚、次いでグラファイトプレートであるセパレータ2枚ではさみ、更に両側から集電板を2枚装着して燃料電池(単セル)として作製した。測定はAuto PEMシリース゛「PEFC評価システム」東陽テクニカ製で実施した。カソード(空気極)側から加湿した酸素ガスを供給し、アノード(燃料極)側から加湿した水素ガスを供給して電池特性を測定した。
[実施例2−5〜実施例108−5、比較例1−5〜比較例17−5]
実施例1−5で使用した実施例1−4の燃料電池用電極膜接合体の代わりに、それぞれ実施例2−4〜実施例108−4、比較例1−4〜比較例17−4で得た燃料電池用電極膜接合体に変更した以外は、実施例1−5と同様にして燃料電池の単セルをそれぞれ作製した。
(燃料電池(単セル)の評価)
実施例1−5〜実施例108−5及び比較例1−5〜比較例17−5で作製した単セルの電流−電圧特性を測定することにより、電池性能を評価した。この結果を以下に示す。実施例1−5で作製した単セルでは、開放電圧は0.85V、短絡電流密度1000mA/cmであり、実施例2−5〜108−5で作製した単セルでも、開放電圧は0.8V〜0.85V、短絡電流密度600〜1200mA/cmであった。これに対し、比較例1−5〜17−5で作成した単セルは、開放電圧0.7V〜0.77V、短絡電流密度400mA/cm〜600mA/cmであった。
<ガス拡散層に直接塗工して燃料電池用触媒層を作成する方法>
以下では、ガス拡散層に本発明の触媒インキ組成物を直接塗工して燃料電池用触媒層を作成する方法について例示する。
[実施例1−1B 触媒ペースト組成物の調製]
実施例1−1において、ブタノールを31.96重量部に変更した以外は、実施例1−1と同様にして固形分濃度20重量%の触媒ペースト組成物を得た。
[実施例2−1B〜実施例108−1B]
実施例2−1〜実施例108−1において、ブタノールを31.96重量部に変更した以外は、実施例2−1〜実施例108−1と同様にして、それぞれ、固形分濃度20重量%の触媒ペースト組成物を得た。
[比較例1−1B〜比較例17−1B]
比較例1−1〜比較例17−1において、ブタノールを31.96重量部に変更した以外は、実施例1−1Bと同様にして、固形分濃度20重量%の触媒ペースト組成物を得ようとしたが、沈殿が生じてしまい、触媒ペースト組成物を得ることはできなかった。固形分濃度を高くしようとした結果、炭素系触媒材料の凝集が起こって沈降が生じてしまったものと思われる。
[実施例1−2B 触媒インキ組成物の調製]
実施例1−1Bで調整した触媒ペースト組成物に、更に20重量%ナフィオン(Nafion)溶液(水素イオン伝導性ポリマー、デュポン社製、溶剤:水及び1−プロパノール)20重量部を添加し、ディスパー(プライミクス製、T.Kホモディスパー)にて攪拌混合することで触媒インキ組成物(固形分濃度20重量%、触媒インキ組成物100重量%としたときの炭素系触媒材料と水素イオン伝導性ポリマーの合計した割合)を調製した。粘度は104mPa・sであった。
[実施例2−2B〜実施例108−2B]
実施例1−1Bで得た触媒ペースト組成物を、それぞれ、実施例2−1B〜実施例108−1Bで得た触媒ペースト組成物に変更した以外は、実施例1−2Bと同様にして、それぞれ、触媒インキ組成物を調整した。粘度は、いずれも80〜120mPa・sであった。
[実施例1−3B 燃料電池用触媒層2の作製]
実施例1−2Bで得た触媒インキ組成物を、ドクターブレードにより、乾燥後の炭素系触媒材料の目付け量が2mg/cm2になるように電極基材(炭素繊維からなるカーボンペーパ、TGP-H-090、東レ社製)上に塗布し、大気雰囲気中95℃、15分間乾燥して、本発明のカソード用燃料電池用触媒層2を作製した。塗工ムラなく、またカーボンペーパーからの液だれもなく良好な燃料電池用触媒層2を形成できた。
[実施例2−3B〜実施例108−3B]
実施例1−2Bで得た触媒インキ組成物を、それぞれ実施例2−2B〜実施例108−2Bで得た触媒インキ組成物に変更した以外は、実施例1−3Bと同様にして、それぞれ、カソード用燃料電池用触媒層2を作成した。
[実施例1−4B 燃料電池用電極膜接合体の作製]
実施例1−3Bで作製したカソード用燃料電池用触媒層2(カーボンペーパーに触媒インキ組成物が固着)とアノード用燃料電池用触媒層4を用いて、固体高分子電解質膜(Nafion212、デュポン社製、膜厚50μm)と接触するようにして150℃、5Mpaの条件で狭持した後、アノード側のテフロン(登録商標)フィルムを剥離し、更にアノード側から電極基材(炭素繊維からなるカーボンペーパ、TGP-H-090、東レ(株)製)すなわちガス拡散層GDLを密着し、本発明の燃料電池用電極膜接合体(GDL/触媒層/固体高分子電解質膜/触媒層/GDL)を作製した。
[実施例2−4B〜実施例108−4B]
実施例1−3Bの燃料電池用触媒層2の代わりに、それぞれ実施例2−3B〜実施例108−3Bで得た燃料電池用触媒層2に変更した以外は、実施例1−4Bと同様にして、燃料電池用電極膜接合体を作製した。
[実施例1−5B 燃料電池の作製]
実施例1−4Bで得られた燃料電池用電極膜接合体を4cm角の試料とし、その両側からガスケット2枚、次いでグラファイトプレートであるセパレータ2枚ではさみ、更に両側から集電板を2枚装着して燃料電池(単セル)として作製した。測定はAuto PEMシリース゛「PEFC評価システム」東陽テクニカ製で実施した。カソード(空気極)側から加湿した酸素ガスを供給し、アノード(燃料極)側から加湿した水素ガスを供給して電池特性を測定した。
[実施例2−5B〜実施例108−5B]
実施例1−5Bで使用した実施例1−4Bの燃料電池用電極膜接合体の代わりに、それぞれ実施例2−4B〜実施例108−4Bで得た燃料電池用電極膜接合体に変更した以外は、実施例1−5Bと同様にして燃料電池を作製した。
<燃料電池単セル評価>
実施例1−5B〜実施例108−5Bで作製した単セルについて、それぞれ電流−電圧特性を測定することにより、電池性能を評価した。この結果を以下に示す。実施例1−5Bで作製した単セルでは、開放電圧は0.87V、短絡電流密度1200mA/cmであり、実施例2−5B〜実施例108−5Bで作製した単セルでも、開放電圧は0.8V〜0.88V、短絡電流密度700〜1400mA/cmであった。
[実施例1−2C 撥水性材料を含む触媒インキ組成物の調製]
実施例1−1で得た触媒ペースト組成物に、20重量%PTFE分散溶液(PTFE 30−J;三井・デュポンフロロケミカル社製、60%ポリテトラフルオロエチレン水系分散体をイオン交換水にて希釈して使用)20重量部を添加し、ディスパー(プライミクス社製、T.Kホモディスパー)にて攪拌混合することで撥水性材料を含む触媒インキ組成物(固形分濃度12重量%、触媒インキ組成物100重量%としたときの炭素系触媒材料と撥水性材料の合計した割合)を調製した。粘度は24mPa・sであった。また、3日経過後の粘度は26mPa・sであった。
[実施例2−2C〜実施例108−2C]
20重量%ナフィオン分散溶液を20重量%PTFE分散溶液に変更した以外は、実施例2−1〜実施例108−1と同様にして、それぞれ、固形分濃度12重量%の撥水性材料を含む触媒インキ組成物を得た。粘度はいずれも20〜30mPa・sであった。また、3日経過後の粘度も大きな変化が見られず、粘度変化率は130%以下と保存安定性は良好であった。
[比較例1−2C〜比較例17−2C]
比較例1−1〜比較例17−1において、20重量%ナフィオン分散溶液を20重量%PTFE分散溶液に変更した以外は、実施例1−2Cと同様にして、撥水性材料を含む触媒インキ組成物を得た。粘度は、いずれも25〜60mPa・sであり、実施例2−2C〜108−2Cのものよりもやや高かった。また、3日経過後の粘度には大きな変化が見られ、粘度変化率は180%以上で、一部沈降もみられた。
[実施例1−3C 燃料電池用触媒層5(撥水層)の作製]
実施例1−2Cで得た撥水性材料を含む触媒インキ組成物を、ドクターブレードにより、乾燥後の炭素系触媒材料の目付け量が1mg/cmになるように電極基材(炭素繊維からなるカーボンペーパ、TGP-H-090、東レ社製)上に塗布し、大気雰囲気中300℃、60分間焼成して、本発明のカソード用燃料電池用触媒層5を作製した。塗工ムラなく良好な燃料電池用触媒層5を形成できた。
[実施例1−3C〜実施例108−3C]
実施例1−2Cで得た撥水性材料を含む触媒インキ組成物を、それぞれ実施例2−2C〜実施例108−2Cで得た撥水性触媒インキ組成物に変更した以外は、実施例1−3Cと同様にして、それぞれ、カソード用燃料電池用触媒層5を作成した。
[比較例1−3C〜比較例17−3C]
実施例1−2Cで得た撥水性材料を含む触媒インキ組成物を、それぞれ比較例1−2C〜比較例17−2Cで得た撥水性触媒インキ組成物に変更した以外は、実施例1−3Cと同様にして、それぞれ、カソード用燃料電池用触媒層5を作製した。得られた触媒層は塗工ムラやヒビワレが多く見られた。。
[実施例1−4C 燃料電池用電極膜接合体の作製]
実施例1−3で作製したカソード用燃料電池用触媒層1と、アノード用燃料電池用触媒層4とを、それぞれ固体高分子電解質膜(Nafion212、デュポン社製、膜厚50μm)の両面に密着して、150℃、5Mpaの条件で狭持した後、テフロン(登録商標)フィルムを剥離した。次いで、アノード側には電極基材(ガス拡散層GDL、炭素繊維からなるカーボンペーパ、TGP-H-090、東レ(株)製)を密着させ、カソード側には実施例1−3Cで作製したカソード用燃料電池用触媒層5を密着させることで、本発明の燃料電池用電極膜接合体(GDL/触媒層/固体高分子電解質膜/触媒層/GDL)を作製した。
[実施例2−4C〜実施例108−4C]
実施例1−3で作製した燃料電池用触媒層1の代わりに、それぞれ実施例2−3〜実施例108−3で得た燃料電池用触媒層1に変更し、また、カソード側には、実施例1−3Cで作製したカソード用燃料電池用触媒層5の代わりに、それぞれ実施例2−3C〜実施例108−3Cで得た燃料電池用触媒層5を密着させた以外は、実施例1−4Cと同様にして、燃料電池用電極膜接合体を作製した。
[比較例1−4C〜比較例17−4C]
実施例1−3で作製した燃料電池用触媒層1の代わりに、それぞれ比較例1−3〜実施例17−3で得た燃料電池用触媒層1に変更し、また、カソード側には、実施例1−3Cで作製したカソード用燃料電池用触媒層5の代わりに、それぞれ比較例1−3C〜比較例17−3Cで得た燃料電池用触媒層5を密着させた以外は、実施例1−4Cと同様にして、燃料電池用電極膜接合体を作製した。
実施例1−4C〜実施例108−4Cで作製した本発明の燃料電池用電極膜接合体(GDL/触媒層/固体高分子電解質膜/触媒層/GDL)は、転写後の触媒層のひび割れや欠けがなく均一な電極膜が形成されていた。一方、比較例1−4C〜比較例17−4Cで作製した燃料電池用電極膜接合体は、いずれも転写時にひび割れや欠けが生じるなどの状態が悪いものであった。
[実施例1−5C 燃料電池(単セル)の作製]
実施例1−4Cで得られた燃料電池用電極膜接合体を4cm角の試料とし、その両側からガスケット2枚、次いでグラファイトプレートであるセパレータ2枚ではさみ、更に両側から集電板を2枚装着して燃料電池(単セル)として作製した。測定はAuto PEMシリース゛「PEFC評価システム」東陽テクニカ製で実施した。カソード(空気極)側から加湿した酸素ガスを供給し、アノード(燃料極)側から加湿した水素ガスを供給して電池特性を測定した。
[実施例2−5C〜実施例108−5C、比較例1−5C〜比較例17−5C]
実施例1−5Cで使用した実施例1−4Cの燃料電池用電極膜接合体の代わりに、それぞれ実施例2−4C〜実施例108−4C、比較例1−4C〜比較例17−4Cで得た燃料電池用電極膜接合体に変更した以外は、実施例1−5Cと同様にして燃料電池の単セルをそれぞれ作製した。
(燃料電池(単セル)の評価)
実施例1−5C〜実施例108−5C及び比較例1−5C〜比較例17−5Cで作製した単セルの電流−電圧特性を測定することにより、電池性能を評価した。この結果を以下に示す。実施例1−5Cで作製した単セルでは、開放電圧は0.88V、短絡電流1200mA/cmであり、実施例2−5C〜108−5Cで作製した単セルでも、開放電圧は0.81V〜0.88V、短絡電流800〜1400mA/cmであった。これに対し、比較例1−5C〜17−5Cで作成した単セルは、開放電圧0.7〜0.77V、短絡電流300mA/cm〜600mA/cmといずれも低性能であった。

Claims (8)

  1. 非白金系炭素系触媒材料と分散剤とを含んでなる燃料電池用触媒ペースト組成物。
  2. 分散剤が、塩基性官能基を有する樹脂、酸性官能基を有する樹脂、塩基性官能基を有する顔料誘導体、酸性官能基を有する顔料誘導体およびこれらの混合物からなる群から選ばれた分散剤である請求項1記載の燃料電池用触媒ペースト組成物。
  3. 塩基性官能基を有する樹脂および/または酸性官能基を有する樹脂が、ポリビニル系樹脂またはポリエステル系樹脂である請求項2記載の燃料電池用触媒ペースト組成物。
  4. 塩基性官能基を有する顔料誘導体および/または酸性官能基を有する顔料誘導体が、有機色素誘導体、アントラキノン誘導体、アクリドン誘導体、トリアジン誘導体およびこれらの混合物からなる群から選ばれた顔料誘導体である請求項2記載の燃料電池用触媒ペースト組成物。
  5. 請求項1〜4記載の燃料電池用触媒ペースト組成物と、水素イオン伝導性ポリマーもしくは撥水性材料の少なくとも一方を含んでなる燃料電池用触媒インキ組成物。
  6. 請求項5記載の燃料電池用触媒インキ組成物から形成されてなる燃料電池用触媒層もしくは燃料電池用撥水層。
  7. 固体高分子電解質膜と、請求項6記載の燃料電池用触媒層もしくは燃料電池用撥水層のうち少なくとも一方と、ガス拡散層を具備してなる燃料電池用電極膜接合体。
  8. 請求項7に記載の燃料電池用電極膜接合体を具備してなる燃料電池。
JP2012286730A 2012-01-05 2012-12-28 燃料電池用触媒ペースト組成物およびそれを用いた触媒層、接合体 Active JP6127506B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012286730A JP6127506B2 (ja) 2012-01-05 2012-12-28 燃料電池用触媒ペースト組成物およびそれを用いた触媒層、接合体

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012000677 2012-01-05
JP2012000677 2012-01-05
JP2012286730A JP6127506B2 (ja) 2012-01-05 2012-12-28 燃料電池用触媒ペースト組成物およびそれを用いた触媒層、接合体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013157317A true JP2013157317A (ja) 2013-08-15
JP6127506B2 JP6127506B2 (ja) 2017-05-17

Family

ID=49052260

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012286730A Active JP6127506B2 (ja) 2012-01-05 2012-12-28 燃料電池用触媒ペースト組成物およびそれを用いた触媒層、接合体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6127506B2 (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015092437A (ja) * 2013-11-08 2015-05-14 東洋インキScホールディングス株式会社 燃料電池電極形成用組成物、およびそれを用いた燃料電池
KR101530989B1 (ko) * 2013-11-22 2015-06-25 한국전기연구원 질소가 도핑된 활성탄 전극재의 제조방법 그리고 이를 이용한 전극 및 전기 이중층 커패시터
JP2015122289A (ja) * 2013-12-25 2015-07-02 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 固体酸化物形燃料電池および該電池の反応抑止層形成用組成物
JP2017183172A (ja) * 2016-03-31 2017-10-05 東洋インキScホールディングス株式会社 燃料電池用触媒ペースト組成物、及び燃料電池
JP2020006129A (ja) * 2018-06-27 2020-01-16 東洋インキScホールディングス株式会社 酵素電池が搭載されたおむつ並びにシステム

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009026744A (ja) * 2007-06-18 2009-02-05 Toyo Ink Mfg Co Ltd 電池用組成物
JP2009255053A (ja) * 2008-03-21 2009-11-05 Sumitomo Chemical Co Ltd 電極触媒の製造方法および電極触媒
JP2009277360A (ja) * 2008-05-12 2009-11-26 Japan Carlit Co Ltd:The 触媒担体及び触媒体並びにそれらの製造方法
JP2010129528A (ja) * 2008-12-01 2010-06-10 Toyo Ink Mfg Co Ltd 電池用組成物
WO2011001717A1 (ja) * 2009-06-29 2011-01-06 凸版印刷株式会社 燃料電池用電極触媒層の製造方法、それを用いた燃料電池用電極触媒層

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009026744A (ja) * 2007-06-18 2009-02-05 Toyo Ink Mfg Co Ltd 電池用組成物
JP2009255053A (ja) * 2008-03-21 2009-11-05 Sumitomo Chemical Co Ltd 電極触媒の製造方法および電極触媒
JP2009277360A (ja) * 2008-05-12 2009-11-26 Japan Carlit Co Ltd:The 触媒担体及び触媒体並びにそれらの製造方法
JP2010129528A (ja) * 2008-12-01 2010-06-10 Toyo Ink Mfg Co Ltd 電池用組成物
WO2011001717A1 (ja) * 2009-06-29 2011-01-06 凸版印刷株式会社 燃料電池用電極触媒層の製造方法、それを用いた燃料電池用電極触媒層

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015092437A (ja) * 2013-11-08 2015-05-14 東洋インキScホールディングス株式会社 燃料電池電極形成用組成物、およびそれを用いた燃料電池
KR101530989B1 (ko) * 2013-11-22 2015-06-25 한국전기연구원 질소가 도핑된 활성탄 전극재의 제조방법 그리고 이를 이용한 전극 및 전기 이중층 커패시터
JP2015122289A (ja) * 2013-12-25 2015-07-02 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 固体酸化物形燃料電池および該電池の反応抑止層形成用組成物
JP2017183172A (ja) * 2016-03-31 2017-10-05 東洋インキScホールディングス株式会社 燃料電池用触媒ペースト組成物、及び燃料電池
JP2020006129A (ja) * 2018-06-27 2020-01-16 東洋インキScホールディングス株式会社 酵素電池が搭載されたおむつ並びにシステム
JP2023024453A (ja) * 2018-06-27 2023-02-16 東洋インキScホールディングス株式会社 酵素電池が搭載されたおむつ並びにシステム
JP7380810B2 (ja) 2018-06-27 2023-11-15 東洋インキScホールディングス株式会社 酵素電池が搭載されたおむつ並びにシステム

Also Published As

Publication number Publication date
JP6127506B2 (ja) 2017-05-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101669807B1 (ko) 리튬이차전지용 정극합제 페이스트
JP5320972B2 (ja) リチウム二次電池用正極合剤ペースト
JP6127506B2 (ja) 燃料電池用触媒ペースト組成物およびそれを用いた触媒層、接合体
JP5287032B2 (ja) 電池用組成物
JP6638846B1 (ja) 分散剤、分散体、電極、および樹脂組成物
JP5369549B2 (ja) 負極合材およびそれを用いたリチウム二次電池
JP7119612B2 (ja) 多孔質電極用組成物、多孔質電極およびそれを用いた電池
JP5369548B2 (ja) 負極合材およびそれを用いたリチウム二次電池
JP5369652B2 (ja) 電池用組成物
JP2013229263A (ja) 電気化学素子用組成物および電気化学素子用電極
JP6834524B2 (ja) 微生物燃料電池に用いられる電極形成用組成物、電極、及び微生物燃料電池
JP5286994B2 (ja) 電池用組成物
JP5369667B2 (ja) リチウム二次電池用正極合剤ペースト
JP5515249B2 (ja) リチウム二次電池用正極合剤ペースト
JP7318294B2 (ja) アノード電極用炭素材料、組成物、電極、およびそれを用いた生物燃料電池
JP6051929B2 (ja) 二次電池電極形成用組成物、二次電池電極、及び二次電池
JP5396776B2 (ja) リチウム二次電池用正極合剤ペースト
EP4321544A1 (en) Carbon material dispersion
Zhou et al. Biobased aliphatic polyurethane vitrimer with superior mechanical performance and fluorescence-based defect diagnostic function
JP2020098725A (ja) バイオ燃料電池アノード用触媒インキ材料、バイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物、バイオ燃料電池アノード、バイオ燃料電池デバイス
JP7063156B2 (ja) 電池電極形成用組成物、電極、及び微生物燃料電池デバイス
JP7083233B2 (ja) 導電性配線シート
TW202234734A (zh) 用於鋰離子蓄電裝置之電極黏合劑及漿料組合物
JP5505152B2 (ja) 分散体
JP5987775B2 (ja) 燃料電池用触媒ペースト組成物、触媒インキ組成物、触媒層もしくは撥水層、電極膜接合体、燃料電池

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150730

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160518

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160607

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160727

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20161213

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170106

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170314

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170327

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6127506

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250