以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明に係る印刷データ作成装置の一実施形態であるパーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)1、およびPC1を備えた印刷システム100について説明する。印刷システム100は、PC1と印刷装置30とを備える。印刷装置30は公知の布帛用インクジェットプリンタであり、インクヘッド35(図2参照)を走査させることで、記録媒体である布帛に印刷を行うことができる。PC1は、印刷装置30に印刷を実行させるための印刷データを作成することができる。
図1および図2を参照して、印刷装置30の概要について説明する。図1の左下側および右上側は、夫々、印刷装置30の正面側および背面側である。図1の左右方向および上下方向は、夫々、印刷装置30の左右方向および上下方向である。図1に示すように、印刷装置30は、矩形箱状の筐体31を有する。筐体31の前後方向略中央には、一対のガイドレール33が左右方向に延びている。キャリッジ34は、ガイドレール33により、ガイドレール33に沿って左右方向(主走査方向)に移動可能に支持されている。詳細は図示しないが、キャリッジ34は、主走査モータ46(図6参照)およびベルトを含む主走査機構によって主走査方向に走査される。キャリッジ34は、複数のインクヘッド35(図2参照)を下部に備えている。複数のインクヘッド35の配置については、図2を参照して後述する。
筐体31の内部の左右方向略中央下部には、一対のガイドレール37が前後方向に延びている。プラテン支持台38は、ガイドレール37により、ガイドレール37に沿って前後方向(副走査方向)に移動可能に支持されている。詳細は図示しないが、プラテン支持台38は、副走査モータ47(図6参照)およびベルトを含む副走査機構によって副走査方向に走査される。プラテン支持台38の上面の左右方向略中央には、取り替え可能なプラテン39が固定されている。プラテン39は、平面視略五角形の板体であり、その上面に、例えばTシャツ等の布帛を載置するためのものである。
印刷装置30は、インクヘッド35を主走査方向に走査させながらインクを吐出させることで、主走査方向に画素列(ドット列)を形成することができる。印刷装置30は、主走査方向の走査が完了すると、インクヘッド35を副走査方向に走査させた後に、再び主走査方向に画素列を形成する。印刷装置30は、以上の動作を印刷データに従って繰り返し実行することで、記録媒体上に複数の画素列を形成して印刷を行う。
なお、本実施形態の印刷装置30は、キャリッジ34を主走査方向に移動させ、且つプラテン39を副走査方向に移動させることで、キャリッジ34と、プラテン39に保持された記録媒体とを相対的に移動させる。しかし、本発明は、キャリッジ34と記録媒体とを相対的に移動させる印刷装置を用いる場合であれば適用でき、具体的な移動方法は本実施形態の方法に限定されない。つまり、本発明において「キャリッジ34を記録媒体に対して相対的に走査させる」とは、プラテン39を主走査方向に移動させ且つキャリッジ34を副走査方向に移動させる場合、プラテン39のみを主走査方向および副走査方向に移動させる場合、キャリッジ34のみを主走査方向および副走査方向に移動させる場合等も含む。プラテン39のみを移動させる場合、キャリッジ34はインクヘッド35を保持するのみとなる。また、プラテン39を移動させることで記録媒体を移動させる場合に限られず、ローラ等を用いて記録媒体のみを移動させてもよい。
キャリッジ34の構造について説明する。図2に示すように、本実施形態におけるキャリッジ34は複数のインクヘッド35を搭載している。各インクヘッド35の底面には、複数個の微細なノズル36が設けられている。本実施形態では、インクヘッド35の各々に128個のノズル36が設けられているが、図面ではノズル36の個数を簡略化している。インクカートリッジ(図示せず)からインクヘッド35に供給されたインクは、圧電素子の駆動によって、ノズル36から下向きに吐出される。各インクヘッド35における複数のノズル36は、主走査方向に交差する方向(本実施形態では副走査方向)に並べて配置される。
本実施形態における印刷装置30は、キャリッジ34を主走査方向に走査させる間に、白インクとカラーインクを共に記録媒体に吐出させて印刷を行うことができる。つまり、本実施形態における印刷装置30は、図2に示すキャリッジ34を用いることで、白とカラーの同時印刷を実行できる。よって、印刷装置30は短時間で印刷を完了させることができる。キャリッジ34には、白インクを吐出する白インクヘッド35Wと、カラーインクを吐出するカラーインクヘッド35C、35M、35Y、35Kとが共に搭載されている。図2に示す例では、4つの白インクヘッド35Wが主走査方向に並べて配置されている。さらに、4つの白インクヘッド35Wに対して副走査方向にずれた位置に、4つのカラーインクヘッド35C、35M、35Y、35Kが主走査方向に並べて配置されている。カラーインクヘッド35Cはシアンインクを吐出する。カラーインクヘッド35Mはマゼンタインクを吐出する。カラーインクヘッド35Yはイエローインクを吐出する。カラーインクヘッド35Kは黒インクを吐出する。カラーインクは白インクの上に吐出されるため、印刷中には、プラテン39(図1参照)はキャリッジ34に対して図2の下方へ移動する。なお、白インクヘッド35Wとカラーインクヘッド35C、35M、35Y、35Kとは、接触していてもよいし離間していてもよい。
なお、キャリッジ34の具体的な構成は変更できる。例えば、黒インクを吐出するカラーインクヘッド35Kを用いずに、3つのカラーインクヘッド35C、35M、35Yのみを用いてもよい。この場合、シアン、マゼンタ、イエローの3色を混合することで黒色が表現される。また、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック以外のインクを吐出するインクヘッド(例えば、ゴールド、シルバー等のインクを吐出するインクヘッド)がカラーインクヘッドに含まれていてもよい。白インクヘッド35Wの数も4つに限られない。各インクヘッド35に設けられるノズル36の数も変更できる。
印刷装置30では、白インクヘッド35Wはキャリッジ34に着脱可能に装着される。従って、ユーザは、キャリッジ34に装着する白インクヘッド35Wの数を変更することができる。より具体的には、ユーザは、2つの白インクヘッド35Wがキャリッジ34に装着されたモデルを購入した後でも、さらに2つの白インクヘッド35Wをキャリッジ34に追加して装着することで、印刷装置30のモデルを変更することができる。詳細は後述するが、本実施形態に係るPC1は、白インクヘッド35Wの数が異なる複数のモデルの全てに印刷を実行させることができる。さらに、ユーザは、キャリッジ34に装着された複数の白インクヘッドWの一部のみを使用して印刷を実行させることもできる。
PC1が印刷装置30に実行させることが可能な印刷の方式について説明する。PC1は、主走査方向に並ぶ画素列の各々に対して、キャリッジ34を1回走査させることで吐出できるインク量よりも多いインクを印刷装置30に吐出させることができる。白インク等の特定のインクは、キャリッジ34を1回走査させただけでは良好な発色を得られない場合がある。印刷装置30は、キャリッジ34を複数回走査させる過程で各々の画素列を形成する動作(所謂「重ね打ち」)を行うことで、多くのインクを記録媒体に吐出して良好な発色を再現することができる。以下では、同色インクの重ね打ちを行う印刷方式を、重複印刷という。
また、PC1は、重複印刷の1種であるマルチパス方式の印刷を印刷装置30に実行させることもできる。マルチパス方式とは、画素列の各々に対して異なるノズル36を複数回走査させることで印刷を行う方式である。インクの吐出方向および吐出量は、ノズル36毎にばらつく。さらに、インクヘッド35の副走査方向の移動量がばらつく場合もある。従って、1つの画素列を1回の主走査方向の動作(パス)によって完成させていくと、画素列の間にすじ(所謂「横すじ」「バンディング」)が発生して印刷品質が低下する。また、画素列毎のインク量の差も印刷品質の低下の原因となる。印刷装置30は、マルチパス方式の印刷(以下、「マルチパス印刷」という場合もある。)を行うことで、印刷装置30自身が有する種々のばらつきの影響を低減させて、印刷品質を向上することができる。
前述した重複印刷を印刷装置30に実行させるための具体的な方法として、マルチパス方式を用いる第一方法、版全体の印刷を複数回繰り返す第二方法、主走査方向の移動を繰り返した後に副走査方向の移動を行う第三方法等がある。以下、各方法の詳細について、図3から図5を参照して説明する。
第一方法について説明する。一般的に、マルチパス方式の印刷データを作成する場合、間引き処理が行われる。間引き処理とは、インクを吐出すると定められた画素に対して、複数の走査の各々におけるインクの吐出を所定のアルゴリズムに従って間引くことで、インクの吐出量を制御する処理である。各走査においてインクの吐出が間引かれる確率を、間引き率という。各走査における間引き率の総和が100%未満となれば、1回の走査で吐出できるインクの量よりも多くのインク量が吐出される。つまり、マルチパス方式によると、印刷品質を向上させつつ、吐出させるインクの量を増加させることもできる。ただし、走査毎に間引き処理を行うと、PC1の処理負担は増加する。本実施形態のPC1は、処理負担を増加させずにマルチパス方式の印刷データを作成することができる。具体的な処理内容については後述する。
図3は、複数の画素23によって形成される4つの画素列24A、24B、24C、24Dを第一方法によって形成する場合を例示する。印刷装置30は、まず、キャリッジ34(図2参照)を主走査方向に1回走査させて、複数のノズル36のうちの特定のノズルXから画素列24Aにインクを吐出する。次いで、キャリッジ34に対して記録媒体を副走査方向(具体的には、図3の上方)に移動させて、ノズルXから画素列24Bにインクを吐出する。以上の動作を繰り返し、4つの画素列24A〜24Dの各々にノズルXを1回ずつ走査させて印刷を行う。次いで、印刷装置30は、記録媒体をさらに図3の上方に移動させて、ノズルXとは異なるノズルYから画素列24Aにインクを吐出させる。同様に、4つの画素列24B〜24Dの各々にもノズルYを走査させて印刷を完成させる。以上のように、第一方法では、4つの画素列24A〜24Dの各々に対して異なるノズル36が走査される。その結果、種々のばらつきの影響が低下する。
第二方法について説明する。第二方法では、1つの印刷データに従って印刷動作が繰り返される。図4に示すように、複数の画素列24A〜24Dの各々に1つのノズル36(図4ではノズルX)を1回走査させながら印刷領域全体の印刷を行う動作を、単位動作とする。第二方法では、この単位動作を制御するための印刷データが1つ作成される。印刷装置30は、1つの印刷データに従って単位動作を終了させると、キャリッジ34に対する記録媒体の位置を印刷開始位置に戻し、単位動作を繰り返す。その結果、同一のノズルXによって、複数の画素列24A〜24Dの各々に対する重ね打ちが行われる。版全体の印刷を複数回繰り返す第二方法では、印刷データのデータ量が増加することを防止できる。さらに、1回の単位動作で吐出されたインクがある程度乾いた後で、次の単位動作によるインクの吐出が行われる。よって、インクが滲み難く、正確な画像が作成される。
第三方法について説明する。第三方法では、1つの画素列に1つのノズル36を複数回走査させて同一インクを重ね打ちさせた後に、記録媒体に対するキャリッジ34の位置を副走査方向に移動させる。つまり、印刷装置30は、1つの画素列に対する重ね打ちを行った後に、次の画素列に対してインクを吐出する。図5に示す例では、印刷装置30は、まず画素列24Aに対してノズルXを主走査方向に走査させてインクを吐出する。次いで、副走査方向の移動を行うことなく、キャリッジ34を主走査方向に逆行させて、ノズルXを画素列24Aに対して再び走査させる。その後、記録媒体を副走査方向に移動させて、画素列24Bに対する重ね打ちを行う。第三方法でも、印刷データのデータ量が増加することを防止することができる。さらに、重ね打ちされるインクは、先に吐出されたインクが乾く前に吐出されるので、第二方法に比べてインクが滲み広がる。よって、インクが付着しない隙間が減り、インクの色が精度良く表現される。
図6を参照して、印刷装置30の電気的構成について説明する。印刷装置30は、印刷装置30の制御を司るCPU40を備える。CPU40には、ROM41、RAM42、ヘッド駆動部43、モータ駆動部45、表示制御部48、操作処理部50、およびUSBインタフェース52が、バス55を介して接続されている。
ROM41には、印刷装置30の動作を制御するための制御プログラム、初期値等が記憶されている。RAM42には、PC1から受信した印刷データ等の各種データが一時的に記憶される。ヘッド駆動部43は、インクを吐出するインクヘッド35に接続しており、インクヘッド35の各吐出チャンネルに設けられた圧電素子を駆動する。モータ駆動部45は、インクヘッド35を主走査方向に移動させる主走査モータ46と、インクヘッド35を副走査方向に移動させる副走査モータ47とを駆動する。表示制御部48は、CPU40による指示に応じてディスプレイ49の表示を制御する。操作処理部50は、操作パネル51に対する操作入力を検知する。USBインタフェース52は、印刷装置30をPC1等の外部機器に接続する。
図7を参照して、PC1の電気的構成について説明する。PC1は、PC1の制御を司るCPU10を備える。CPU10には、ROM11、RAM12、CD−ROMドライブ13、HDD14、表示制御部16、操作処理部17、およびUSBインタフェース18が、バス19を介して接続されている。
ROM11には、CPU10が実行するBIOS等のプログラムが記憶されている。RAM12は各種情報を一時的に記憶する。CD−ROMドライブ13には、記録媒体であるCD−ROM6が挿入される。CD−ROM6に記録されているデータは、CD−ROMドライブ13によって読み出される。PC1は、CD−ROM6およびインターネット等を介して、本発明に係る印刷データ作成プログラム等を取得し、HDD(ハードディスクドライブ)14に記憶させる。HDD14は不揮発性の記憶装置であり、印刷データ作成プログラムおよび各種テーブル(例えば、図8参照)を記憶している。表示制御部16は、モニタ2の表示を制御する。操作処理部17は、ユーザが操作入力を行うためのキーボード3およびマウス4に接続し、操作入力を検知する。USBインタフェース18は、PC1を印刷装置30等の外部機器に接続する。
図8を参照して、カラーモード変換テーブル21について説明する。カラーモード変換テーブル21は、sRGB形式の256階調で表現された画像データを、CMYKWの256階調で表現される画像データである階調データに変換するためのテーブルである。カラーモード変換テーブル21では、各sRGB値に対応するCMYKW値が各々対応付けられている。カラーモード変換テーブル21は、公知の手法によって作成されてあらかじめPC1のHDD14に記憶されている。なお、テーブルの具体的な構成は変更してもよい。例えば、sRGBからCMYKへの変換を行うテーブルと、sRGBからWへの変換を行うテーブルとを別々に設けてもよい。テーブルを用いずに、計算等によってカラーモードを変換してもよい。
図9から図18を参照して、PC1が実行するメイン処理について説明する。前述したように、PC1のHDD14には印刷データ作成プログラム(プリンタドライバプログラム)が記憶されている。PC1のCPU10は、印刷データの作成指示を入力すると、印刷データ作成プログラムに従ってプリンタドライバを起動し、図9に示すメイン処理を実行する。
メイン処理が実行されると、まず、印刷条件設定処理が行われる(S1)。印刷条件設定処理で設定される印刷条件について説明する。印刷条件設定処理では、使用ヘッド数、解像度、および最大濃度が設定される。
使用ヘッド数とは、印刷装置30のキャリッジ34に搭載されている白インクヘッド35W(図2参照)のうち、1回の主走査方向の走査中にインクを吐出させる白インクヘッド35Wの数である。本実施形態では、キャリッジ34は最大で4つの白インクヘッド35Wを搭載できる。よって、印刷条件設定処理では、「4」「2」「0」のいずれかの値が使用ヘッド数として設定される(図11から図13参照)。なお、設定可能な使用ヘッド数は、キャリッジ34が搭載できる白インクヘッド35Wの数以下であればよい。よって、本実施形態では「3」「1」も使用ヘッド数として設定できるが、この説明は省略する。
解像度は公知の印刷条件であり、画素の密度を示す。本実施形態では、「600dpi×600dpi」および「1200dpi×1200dpi」のいずれかが設定されるが、その他の解像度を設定できてもよい。解像度が高い方が、印刷時間は長くなるが、印刷品質は向上する。
最大濃度とは、白インクを最大量吐出させる領域に対して吐出される白インクの濃度を示すパラメータである。ユーザは、記録媒体の色、所望する印刷品質、白インクのコスト、印刷時間等を考慮して最大濃度を設定することができる。PC1は、単位面積(画素)当たりの各インクの吐出量を決定するために、CMYKWの256階調(0〜255)で表される階調データを取得する。階調値が255である領域に最大量のインクが吐出される。従って、最大濃度は、階調データにおけるWの値が255である領域に吐出される白インクの濃度となる。本実施形態では、主走査方向に並ぶ画素列の各々に対して、1つの白インクヘッド35Wの1つのノズル36を1回走査させることで吐出できる最大量の白インクの濃度を、100%と定める。従って、キャリッジ34に搭載された4つの白インクヘッド35Wの全てを用いて白インクを吐出させる場合、1回の走査で印刷できる白インクの濃度は400%となる。以下では、画素列の各々に対してキャリッジ34を1回走査させることで吐出できる最大の白インクの濃度を単位濃度という。単位濃度は使用ヘッド数に応じて変化し、本実施形態では「単位濃度=使用ヘッド数×100%」となる。例えば、単位濃度が400%である場合、最大濃度が1000%に設定されていれば、印刷装置30は、各画素列に対してキャリッジ34を3回以上走査させる必要がある。なお、単位濃度および最大濃度の単位は適宜設定でき、「%」に限られない。
図10から図13を参照して、印刷条件設定処理について説明する。印刷条件設定処理が開始されると、前回の処理時に設定された使用ヘッド数が、使用ヘッド数の候補値としてHDD14から読み出され、RAM12に記憶される(S21)。使用ヘッド数の候補値に対応する印刷条件入力画面(図11から図13参照)が、モニタ2に表示される(S22)。
図11に示すように、使用ヘッド数の候補値が「4」の場合の印刷条件入力画面61では、使用ヘッド数、解像度、および最大濃度の全てがユーザによって指定できる状態で表示される。また、使用ヘッド数の候補値が「4」の場合、最大濃度は、200%から1000%の範囲の5つの中から指定できる状態で表示される。
図12に示すように、使用ヘッド数の候補値が「2」の場合の印刷条件入力画面62でも、候補値が「4」の場合と同様に、使用ヘッド数、解像度、および最大濃度の全てが指定可能な状態で表示される。しかし、使用ヘッド数の候補値が「2」の場合、最大濃度は200%から800%の範囲の4つのみを指定できる状態で表示され、1000%の表示はグレーアウトされる。つまり、CPU10は、使用ヘッド数に応じて、指定可能な最大濃度の範囲を変更する。より詳細には、CPU10は、指定されている使用ヘッド数が少ない程、最大濃度の範囲の上限が低くなるように、最大濃度の範囲を変更する。使用ヘッド数が少ない状態で高い濃度の印刷を行う場合、走査回数が過度に多くなり、作業効率が大幅に低下する場合がある。CPU10は、指定可能な最大濃度の範囲を使用ヘッド数に応じて変更することで、作業効率が大幅に低下する印刷条件がユーザによって設定されることを防止できる。
図13に示すように、使用ヘッド数の候補値が「0」の場合の印刷条件入力画面63では、使用ヘッド数と解像度が指定可能な状態で表示され、最大濃度の表示はグレーアウトされる。つまり、CPU10は、使用ヘッド数以外の印刷条件のうち、白インクのみに関する印刷条件について、指定可能な状態で表示させることを禁止する。従って、ユーザは、白インクのみに関する印刷条件を指定する必要が無いことを容易に把握し、的確な作業を行うことができる。
図10の説明に戻る。印刷条件入力画面が表示されると(S22)、使用ヘッド数に対応する解像度および最大濃度の初期値が、候補値としてHDD14から取得される(S23)。HDD14には、解像度および最大濃度の初期値が使用ヘッド数に応じて予め記憶されている。初期値は、使用ヘッド数毎に、印刷効率、指定される頻度等を考慮して定めればよい。本実施形態では、最大濃度の初期値は、使用ヘッド数が「4」の場合に600%、使用ヘッド数が「2」の場合に400%とされている。解像度の初期値は、使用ヘッド数に関わらず1200dpi×1200dpiである。使用ヘッド数に応じた初期値が表示されることで、ユーザは、印刷効率等が考慮されて定められた適切な印刷条件を容易に把握できる。なお、指定可能な使用ヘッド数が3種類以上存在する場合、全ての初期値が使用ヘッド数毎に異なる必要はない。次いで、使用ヘッド数、解像度、および最大濃度の候補値が、印刷条件入力画面(図11から図13参照)上に表示される(S24)。ユーザは、現在の候補値以外の値を指定する場合、マウス4(図7参照)等を操作して、所望の値の横に表示されている円形のボタンを選択する。
解像度が指定されたか否かが判断される(S26)。解像度が指定されると(S26:YES)、指定された解像度が候補値としてRAM12に記憶され(S27)、記憶された解像度の候補値が表示される(S24)。解像度が指定されていない場合(S26:NO)、最大濃度が指定されたか否かが判断される(S29)。最大濃度が指定されると(S29:YES)、指定された最大濃度が候補値として記憶され(S30)、表示される(S24)。
最大濃度が指定されていない場合(S29:NO)、印刷条件の候補値を初期値に戻すリセット指示が入力されたか否かが判断される(S32)。印刷条件入力画面61〜63(図11から図13参照)上のリセットボタン65が操作されると、リセット指示が入力されたと判断される。リセット指示が入力されると(S32:YES)、処理はS23へ戻り、その時点の使用ヘッド数の候補値に対応する解像度および最大濃度の初期値が再取得され(S23)、表示される(S24)。つまり、リセット指示が入力されると、CPU10は、使用ヘッド数の候補値を維持したまま、解像度および最大濃度の候補値を、使用ヘッド数の候補値に対応する初期値に戻す。従って、ユーザは、使用ヘッド数よりも頻繁に変更される印刷条件の候補値のみを容易に初期値に戻すことができる。ユーザは、使用ヘッド数を無駄に再度指定する必要がない。
リセット指示が入力されていない場合(S32:NO)、使用ヘッド数が指定されたか否かが判断される(S33)。使用ヘッド数が指定されると(S33:YES)、指定された使用ヘッド数が候補値として記憶される(S34)。処理はS22へ戻り、指定された使用ヘッド数に対応する印刷条件入力画面が表示され(S22)、対応する初期値が取得されて(S23)、表示される(S24)。つまり、使用ヘッド数が変更されると、印刷条件入力画面は、指定された使用ヘッド数に適した画面に変更される。よって、ユーザは、指定した使用ヘッド数に応じて容易に解像度および最大濃度を指定できる。
使用ヘッド数が指定されていない場合(S33:NO)、キャンセル指示が入力されたか否かが判断される(S35)。キャンセルボタン66(図11から図13参照)が操作されてキャンセル指示が入力されると(S35:YES)、処理は終了する。キャンセル指示が入力されていない場合(S35:NO)、OK指示が入力されたか否かが判断される(S36)。OKボタン67(図11から図13参照)が操作されていない場合(S36:NO)、処理はS26の判断へ戻る。
OKボタン67が操作されてOK指示が入力されると(S36:YES)、印刷装置30がキャリッジ34に搭載している白インクヘッド35Wの数(以下、「搭載ヘッド数」という。)が取得される(S37)。搭載ヘッド数を取得する方法には、種々の方法を採用できる。例えば、CPU10は、搭載ヘッド数を出力する指示を印刷装置30に送信し、印刷装置30から出力される搭載ヘッド数を受信することで、搭載ヘッド数を取得してもよい。また、CPU10は、印刷装置30の搭載ヘッド数をあらかじめユーザに入力させてHDD14に記憶しておき、HDD14から搭載ヘッド数を取得してもよい。
搭載ヘッド数が使用ヘッド数の候補値よりも小さいか否かが判断される(S38)。搭載ヘッド数が使用ヘッド数よりも小さい場合(S38:YES)、印刷装置30は、指定された印刷条件で印刷を実行することができない。従って、CPU10はエラーを出力し(S39)、処理はS26の判断へ戻る。その結果、ユーザは、使用ヘッド数の指定を変更すべき旨を容易に把握することができる。エラーの出力方法には、モニタ2にエラー画面を表示させる方法、エラー音を発生させる方法等、種々の方法を採用できる。搭載ヘッド数が使用ヘッド数以上であれば(S38:NO)、RAM12に記憶されている使用ヘッド数、解像度、および最大濃度の候補値が印刷条件として設定され、HDD14に記憶される(S40)。処理はメイン処理(図9参照)へ戻る。
以上説明したように、印刷条件設定処理によると、ユーザは使用ヘッド数を自由に指定して印刷装置30に印刷を実行させることができる。使用ヘッド数が多いと、短時間で印刷が完了する。一方、使用ヘッド数を減らして重複印刷を実行させると、先に吐出された白インクがある程度乾いた後に次の白インクが吐出されるため、滲みの少ない印刷を目的とする場合には印刷品質が向上する。従って、ユーザは、使用ヘッド数を指定することで、多数の白インクヘッド35Wによって短時間で印刷を実行させることもでき、少数の白インクヘッド35Wによってインクの滲みを防止することもできる。また、上記の印刷条件設定処理は、キャリッジ34に搭載されている白インクヘッド35Wの数が異なる複数の印刷装置に対して共通に使用することができる。よって、印刷装置のメーカーおよびユーザは、複数の印刷装置の各々に対して別々にプリンタドライバを用意する必要が無い。さらに、ユーザは、印刷装置30のキャリッジ34に搭載されている白インクヘッド35Wの数が変更された場合でも、使用ヘッド数の指定を変更するだけで容易に印刷データを作成させることができる。
図9に示すように、印刷条件設定処理(S1)が終了すると、sRGB形式の256階調で表現された画像データが取得される(S2)。取得された画像データが、カラーモード変換テーブル21(図8参照)によって、CMYKW形式の256階調で表現される階調データに変換され、記憶される(S3)。印刷条件設定処理(S1)において設定された使用ヘッド数が取得される(S4)。取得された使用ヘッド数に対応する単位濃度Uが取得される(S5)。前述したように、本実施形態では、単位濃度Uは「使用ヘッド数×100%」となる。設定された最大濃度Mが取得される(S6)。
単位濃度Uと最大濃度Mから、必要走査回数nが決定される(S7)。必要走査回数nとは、最大濃度Mの白インクを吐出するために画素列の各々に対してキャリッジ34を走査させる回数である。例えば、単位濃度が400%であり、最大濃度が1000%であれば、必要走査回数nは「3」となる。具体的には、S7では、「K=最大濃度M/単位濃度U」が算出される。算出された値Kが整数であれば、Kが必要走査回数nに決定される。値Kが整数でなければ、値Kの小数点以下を切り捨てた値に1を加えた値が、必要走査回数nに決定される。その結果、最大濃度Mがどのような値に設定されても、適切な必要走査回数nを容易に決定することができる。例えば、ユーザが最大濃度Mの数値を自由に直接入力できる場合、ユーザがマウス4を走査して最大濃度Mの値を細かく変更できる場合等でも、CPU10は、必要走査回数nを正確且つ容易に決定できる。
必要走査回数nが2以上であるか否かが判断される(S8)。2以上であれば(S8:YES)、印刷装置30に重複印刷を実行させる必要がある。この場合、階調値変換処理が行われる(S9)。階調値変換処理では、共通データを作成するために、Wの階調値が変換される。共通データとは、各画素に対する白インクの吐出量を定めるデータであり、重複印刷において実行される複数の走査の各々に共通して使用される。必要走査回数nが2未満(つまり、1)であれば(S8:NO)、処理はそのままS10へ移行する。
図14を参照して、階調値変換処理について説明する。まず、印刷領域を構成する複数の画素の1つが、順に注目画素とされる(S41)。次いで、単位濃度Uと必要走査回数nとを掛けた値に対する最大濃度Mの割合を、注目画素における白インクの階調値Wに掛けることで、階調値Wが変換される(S42)。全画素が注目画素とされたか否かが判断される(S43)。全画素が注目画素とされていなければ(S43:NO)、処理はS41へ戻り、S41〜S43の処理が繰り返される。全画素の階調値Wに対する処理が終了すると(S43:YES)、処理はメイン処理(図9参照)へ戻る。
図9の説明に戻る。S8およびS9の処理が終了すると、CMYKW形式の256階調で表現された階調データに対して誤差拡散処理が行われ、階調値が低階調化される(S10)。必要走査回数nが2以上の場合、低階調化されたWのデータは共通データとなる。誤差拡散処理は、256階調のデータを印刷階調に落とすための公知の処理である。本実施形態では、印刷データは「1:吐出する」「2:吐出しない」の2値で表されるため、階調データは2値のデータに低階調化される。しかし、印刷装置30が多値の印刷データを処理できる場合(例えば、大・中・小の液滴を打ち分けられる場合)には、CPU10は、3値以上のデータに低階調化する場合もある。なお、誤差拡散法以外の手法を用いて低階調化を行ってもよい。次いで、印刷データ作成処理が行われる(S11)。印刷データ作成処理では、低階調化されたCMYKWデータと、設定された印刷条件に従って、印刷装置30を駆動するための印刷データが作成される。印刷データ作成処理が終了すると、メイン処理は終了する。
重複印刷を印刷装置30に実行させる場合、従来の技術では、印刷装置30の動作を制御するための印刷データは走査毎に作成されていた。従って、重複印刷を実行させない場合に比べて、PC1の処理負担は増加し、且つ印刷データのデータ量も増大していた。特に、PC1は、マルチパス方式の印刷データを作成する場合、走査毎に間引き処理を行う必要があった。間引き処理とは、インクを吐出すると定められた画素に対して、複数の走査の各々におけるインクの吐出を所定のアルゴリズムに従って間引くことで、インクの吐出量を制御する処理である。走査毎に間引き処理を行うことで、PC1の処理負担は増加する。間引き処理を行う際に用いられるマスクパターン(間引きパターン)を走査毎に作成する場合には、PC1の処理負担はさらに増加する。本実施形態では、CPU10は、各画素に対する白インクの吐出量を定めるWの共通データを容易に作成することができる。作成された共通データは、重複印刷における各々の走査に共通して使用できるため、データ量が少ない。CPU10は、走査毎にデータを作成する必要が無く、間引き処理を走査毎に実行する必要も無い。よって、CPU10は、少ない処理負担で素早く印刷データを作成することができる。
図15から図18を参照して、印刷データ作成処理について説明する。図15に示すように、まず、必要走査回数nが2以上であるか否かが判断される(S51)。必要走査回数nが1であり、白インクの濃度を単位濃度よりも高くする必要が無い場合には(S51:NO)、従来と同様の方法で印刷データが作成される(S52〜S54)。つまり、使用ヘッド数が「0」でなく、白インクの印刷を実行させる場合には(S52:NO)、CMYKWの印刷データが作成される(S53)。使用ヘッド数が「0」であり、白インクの印刷を実行させない場合には(S52:YES)、CMYKWデータのうちW以外のデータによって、CMYK印刷データが作成される(S54)。印刷データ作成処理は終了する。なお、S53、S54の処理では、マルチパス方式の印刷を実行させる設定がユーザによって予め行われている場合には、印刷装置30をマルチパス方式で駆動する印刷データが作成される。この場合、S53で作成される印刷データは、白インクの濃度を単位濃度Uよりも高くすることを目的として作成されるものではない。つまり、S53で作成される印刷データによると、キャリッジ34の1回の走査で吐出される濃度と同じ濃度の白インクが、マルチパス方式による複数回の走査で吐出される。
必要走査回数nが2以上であり、白インクの重複印刷を実行させる場合には(S51:YES)、使用白ヘッド決定処理が行われる(S56)。使用白ヘッド決定処理では、印刷装置30がキャリッジ34に搭載している白インクヘッド35Wから、各走査でインクを吐出させる(使用する)白インクヘッド35Wが決定される。
図16に示すように、使用白ヘッド決定処理が開始されると、搭載ヘッド数(S37、図10参照)が使用ヘッド数よりも多いか否かが判断される(S71)。搭載ヘッド数が使用ヘッド数と同数である場合(S71:NO)、キャリッジ34に搭載されている全ての白インクヘッド35Wを全ての走査で使用するため、処理はそのまま印刷データ作成処理(図15参照)へ戻る。
搭載ヘッド数が使用ヘッド数よりも多い場合(S71:YES)、ユーザによる使用ヘッドの指定が行われているか否かが判断される(S72)。ユーザは、特定の白インクヘッド35Wに白インクを吐出させる場合、使用する白インクヘッド35Wを予めPC1に入力する。例えば、複数の白インクヘッド35Wの一部が故障している場合、ユーザは、故障していない白インクヘッド35Wを使用ヘッドとして入力することができる。使用ヘッドの指定が行われている場合(S72:YES)、指定された白インクヘッド35Wが、全ての走査で使用する白インクヘッド35Wに決定される(S73)。処理は印刷データ作成処理へ戻る。
使用ヘッドの指定が行われていない場合(S72:NO)、複数回実行される走査毎に、使用ヘッド数と同数の白インクヘッド35Wが、搭載されている複数の白インクヘッド35Wの中からランダムに使用ヘッドとして決定される(S74)。処理は印刷データ作成処理へ戻る。S74の処理が実行されることで、白インクを吐出する白インクヘッド35Wが変更されながら印刷が実行される。よって、PC1は、特定の白インクヘッド35Wが長時間使用されずにインクがノズル36で乾くことを防止し、印刷品質を向上させることができる。インクが詰まる可能性も低下する。
図15の説明に戻る。使用白ヘッド決定処理(S56)が終了すると、印刷方法の選択指示が受け付けられる(S57)。詳細には、「第一方法(マルチパス方式)」「第二方法(滲みの防止を優先)」「第三方法(白の発色を優先)」の3つの重複印刷の印刷方法が、選択可能な状態でモニタ2に表示される。ユーザは、マウス4等を操作して、いずれかの印刷方法を選択する指示をPC1に入力する。第一方法が選択されると(S59:YES)、第一作成処理が行われて(S60)、処理は終了する。詳細は後述するが、第一作成処理では、第一方法による印刷を実行させるための印刷データが共通データから作成される。
選択された印刷方法が第一方法でなく(S59:NO)、第二方法であれば(S62:YES)、第二作成処理が行われて(S63)、処理は終了する。第二作成処理では、白色の版全体の印刷を複数回繰り返し印刷装置30に実行させるCMYKW印刷データが、共通データから作成される(図4参照)。第二方法では、例えば必要走査回数nが4回である場合、白色のみの版の印刷動作が3回繰り返された後、4回目に白色の版とカラーの版の同時印刷が実行されて印刷が完了する。つまり、印刷装置30は、最後の単位動作において、n回目の白色の重ね打ちを行いつつ、重ね打ちされた白色の上にカラーインクを吐出する。なお、CPU10は、白色のみを印刷させる単位動作をn回繰り返させた後で、カラーのみの単位動作を1回実行させることも可能である。第二作成処理によると、PC1は、インクが滲み難く安定した色を発色できる印刷データを作成することができる。
選択された印刷方法が第三方法であれば(S62:NO)、第三作成処理においてCMYKW印刷データが共通データから作成されて(S64)、処理は終了する。第三作成処理で作成される印刷データによると、1つの画素列に対する白インクの印刷をn回の走査で完了させた後に、次の画素列に白インクが吐出される(図5参照)。カラーインクは、既に白インクの印刷が完了した画素列上にカラーインクヘッド35C、35M、35Y、35Kが移動した際に、n回実行される走査のいずれかにおいて吐出される。第三作成処理によって作成された印刷データによると、インクを適度に滲ませて隙間が出来ることを防止し、良好な発色を得ることができる。
図17を参照して、第一作成処理について説明する。まず、第一作成処理で作成されるマルチパス方式用の印刷データの特性について説明する。前述したように、マルチパス印刷では、画素列の各々に対して異なるノズル36が走査されて印刷が実行されるので、種々のばらつきの影響が低下して印刷品質が向上する。マルチパス印刷では、同一の画素列に異なるノズル36を走査させる回数(以下、「パス数」という。)を多くする程(つまり、多くのノズル36を用いて1つの画素列を形成する程)、ばらつきの影響は顕著に低下する。第一作成処理では、上記の特性を利用して印刷品質の向上が図られる。また、マルチパス印刷において設定可能なパス数は、各インクヘッド35が備えるノズル36の数に応じて限定される。詳細には、パス数をノズル36の数の約数としなければ、マルチパス印刷の制御が複雑化する。本実施形態では、各インクヘッド35が備えるノズル36の数は128個であるため、設定可能なパス数は「2、4、8、16・・・」に限定される。よって、必要走査回数nが、マルチパス印刷で設定可能なパス数と一致しない場合には、複数回のマルチパス印刷を組み合わせる方法、マルチパス印刷と通常の印刷とを組み合わせる方法等によって重複印刷を実行させる必要がある。この場合、第一作成処理では、印刷品質と印刷効率を共に考慮して最適な印刷データが作成される。
図17に示すように、第一作成処理が開始されると、印刷単位の番号Rに「1」が設定される(S81)。以下の説明では、マルチパス印刷を実行せずに、1つの画素列に対して各インクヘッド35が備える複数のノズル36のいずれかを1回走査させるシングル方式で印刷が実行される場合、シングル方式における1回の走査を1つの印刷単位とする。さらに、設定可能なパス数だけ実行される各マルチパス方式の複数の走査を、1つの印刷単位とする。例えば、図18に示す例では、4回目〜7回目の4回のマルチパス方式の走査が、印刷単位R=1とされる。2回目・3回目の2回のマルチパス方式の走査が、印刷単位R=2とされる。1回目のシングル方式の走査が、印刷単位R=3とされる。
要処理残数Sに、必要走査回数「n」が設定される(S82)。要処理残数Sとは、必要走査回数nだけ実行される複数の走査のうち、対応する印刷データが未だ作成されていない走査(印刷データを割り当てる必要がある走査)の数である。
次いで、設定可能なパス数のうち、要処理残数S以下である最大のパス数Pが抽出される(S83)。図18に示す例では、設定可能なパス数が「2、4、8・・・」であり、要処理残数Sの最初の値が7となるため、要処理残数S以下のパス数「2、4」のうち最大のパス数「4」が、最初のPの値として抽出される。
設定されている印刷単位の番号Rが「1」であるか否かが判断される(S84)。Rが「1」であれば(S84:YES)、必要走査回数n回だけ実行される複数の走査のうち、最後(n回目)の走査を含む連続したP回の走査が、印刷動作の最後に実行される印刷単位である最終印刷単位に設定される(S85)。最終印刷単位において、単位濃度よりも高い高濃度とする白インクをマルチパス方式で印刷させるためのW印刷データが作成される(S86)。S86の処理では、Wの共通データは複数の走査に共通して使用されるが、各画素列に白インクを吐出するノズル36が走査毎に異なるようにW印刷データが作成される。従って、CPU10は、共通データを用いることで、データ量の少ないW印刷データを、間引き処理を行うことなく容易に作成することができる。次いで、最終印刷単位において、単位濃度以下の通常濃度とするカラーインクをマルチパス方式で印刷させるためのCMYK印刷データが作成される(S87)。S87の処理では、各走査において間引き処理が実行される。間引き処理は公知の処理であるため、この説明は省略する。
次いで、要処理残数Sの値から、印刷データの割り当てが終了した走査回数「P」がマイナスされる(S92)。要処理残数Sが「0」であるか否かが判断される(S93)。Sが「0」でなければ(S93:NO)、印刷単位の番号Rの値に「1」が加算されて(S94)、処理はS83へ戻る。図18に示す例では、2回目に実行されるS83の処理では、要処理残数Sの値が3となる。よって、要処理残数S以下である最大のパス数「2」がPの値とされる。
設定されている印刷単位の番号Rが「1」でなければ(S84:NO)、直前に行われたS83の処理においてパス数Pが抽出されたか否かが判断される(S89)。パス数Pが抽出された場合(S89:YES)、「R−1」の印刷単位(つまり、前回設定された印刷単位)の直前に実行される連続したP回の走査が、印刷単位Rに設定される(S90)。図18に示す例では、印刷単位「2」は、前回設定された印刷単位「1」(最終印刷単位)の直前に実行される2回目および3回目の走査に設定される。次いで、設定された印刷単位Rにおいて、高濃度とする白インクをマルチパス方式で印刷させるためのW印刷データが作成される(S91)。その結果、印刷装置30では複数回(複数組)のマルチパス印刷が実行される。処理はS92へ移行する。
S83の処理においてパス数Pが抽出されなければ、残りの走査ではマルチパス印刷を実行させることができない。つまり、マルチパス方式のみで印刷を完了させる場合、必要走査回数nは、設定可能なパス数のいずれかに一致するか、パス数の和に一致する必要がある。この条件を満たさない場合(S89:NO)、残りの走査(本実施形態では、1番目の走査)をシングル方式で印刷させるためのW印刷データが作成され(S96)、第一作成処理は終了する。よって、PC1は、必要走査回数nに関わらず、良好な印刷品質を得られる印刷データを容易に作成することができる。図18に示す例では、3回目に実行されるS83の処理では、要処理残数Sの値が1となる。よって、印刷単位「3」(1回目の走査)でシングル方式の印刷を実行させるW印刷データが作成される。S93の判断において、要処理残数Sが「0」であれば(S93:YES)、n回実行される全ての走査に対する処理が終了しているため、第一作成処理は終了する。
なお、S96において、シングル方式をマルチパス方式に組み合わせる方法には種々の方法がある。例えば、マルチパス方式の印刷を実行する前に、白インクのノズル36を全ての画素列に1回走査させてもよい。また、最初に実行されるマルチパス方式の最初の主走査方向の走査を、副走査方向の走査を実行させることなく繰り返させることで、シングル方式とマルチパス方式を組み合わせてもよい。図18に示す例では、1回目の走査で、白インクのノズル36のいずれかが、シングル方式で全ての画素列に1回走査される。次いで、パス数が「2」のマルチパス印刷が行われて、白インクのみが2回重ね打ちされる。次いで、パス数が「4」のマルチパス印刷が行われて、白インクの重ね打ちとカラーインクの間引きを伴う印刷とが同時に行われる。なお、白インクヘッド35Wは、カラーインクヘッド35C、35M、35Y、35Kよりも先に印刷領域へ侵入する。よって、カラーインクは、白色の印刷が完了した印刷領域の上に吐出される。
第一作成処理によると、n回実行される複数回の走査のうち、最後の走査を含む複数の走査(最終印刷単位)において、白インク(高濃度インク)とカラーインク(通常濃度インク)が共に吐出される。その結果、白の印刷面の少なくとも最上面がマルチパス印刷で形成されるため、白インクの印刷品質が向上する。最終印刷単位では、カラーインクもマルチパス印刷で吐出されるため、カラーインクの印刷品質も向上する。さらに、白インクを高濃度とするための重複印刷の過程でマルチパス印刷を行うため、キャリッジ34の主走査方向の走査回数を増やす必要が無く、印刷効率も高い。従って、PC1は、設定可能なパス数の最小値(本実施形態では「2」)と、重複印刷の必要走査回数nとが一致しない場合でも、白インクとカラーインクを共に効率よく高品質で印刷装置30に実行させることができる。
第一作成処理によると、複数回のマルチパス印刷を実行させる場合、最終印刷単位で実行されるマルチパス印刷のパス数が、複数回のマルチパス印刷のパス数の中で最大となる。その結果、白インクの最上面とカラーインクとが、パス数がより多いマルチパス印刷で形成される。よって、PC1は、より品質の高い印刷を、効率よく印刷装置30に実行させることができる。また、第一作成処理によると、パス数が多いマルチパス印刷が、より多く実行される。よって、PC1は、パス数が少ない多数組のマルチパス印刷を実行させる場合に比べて印刷品質を向上させることができる。
上記実施形態において、PC1が本発明の「印刷データ作成装置」に相当する。白インクが本発明の「一部のインク」および「高濃度インク」に相当する。カラーインクが「通常濃度インク」に相当する。図9のS7で必要走査回数nを決定するCPU10が、本発明の「決定手段」として機能する。図17に示す第一作成処理を実行するCPU10が「作成手段」として機能する。図9のS7で必要走査回数nを決定する処理が、本発明の「決定ステップ」に相当する。図17に示す第一作成処理を実行する処理が「作成ステップ」に相当する。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、様々な変形が可能であることは言うまでもない。上記実施形態では、印刷条件を設定する処理および印刷データを作成する処理が、印刷装置30の外部機器であるPC1で行われる。つまり、上記実施形態のPC1が、本発明の「印刷データ作成装置」に相当する。しかし、印刷データ作成装置として動作できるのはPC1に限られない。例えば、印刷装置30自身が図9に示すメイン処理を実行してもよい。
図9から図18において説明した処理を、印刷システム100内の複数のデバイスが実行してもよい。例えば、上記実施形態では、搭載ヘッド数が使用ヘッド数の候補値よりも小さい場合、PC1がエラーを出力する(図10のS38、S39参照)。しかし、PC1がエラーを出力する必要は無い。より具体的には、PC1は、図10のS38、39の処理を実行せずに印刷データを作成し、作成した印刷データを印刷装置30に送信する。印刷装置30のCPU40は、受信した印刷データから使用ヘッド数を読み出し、搭載ヘッド数の方が少ない場合に印刷装置30側でエラーを出力してもよい。この場合、印刷装置30は、搭載ヘッド数を予め記憶していてもよいし、白インクヘッド35Wの装着を検出するスイッチ、センサ等によって搭載ヘッド数を取得してもよい。また、メイン処理(図9参照)のうち、印刷条件設定処理(S1)をPC1が実行し、S2〜S11の処理を印刷装置30が実行することも可能である。この場合、PC1は、設定した印刷条件を印刷装置30に送信すればよい。また、2つのPC1を使用し、一方のPC1が印刷条件設定処理(S1)を実行し、他方のPC1がS2〜S11の処理を実行してもよい。以上のように、上記実施形態で説明した各処理は、印刷システム100内のデバイスのいずれで実行されてもよく、複数のデバイスで処理を分担することも可能である。
画像データ等の各種データの形式、階調等を変更できることは言うまでもない。例えば、図9のS2でPC1が取得する画像データの形式は、sRGB形式に限られず、階調も256階調に限られない。同様に、階調データのデータ形式および階調も、CMYKW形式の256階調に限定されることはない。CMYKW以外の色材(例えば、オレンジ等)を用いる場合でも本発明は適用できる。印刷データを多値(3階調以上)とすることも可能である。また、PC1は、sRGB形式の画像データを入力せずに、CMYKW形式の階調データを他のデバイスから直接入力してもよい。
上記実施形態では、白インクの重複印刷を実行することができる印刷システム100を例示した。しかし、本発明を適用できるのは、白インクの重複印刷を実行できる場合に限定されない。白インクと同様に、良好な発色を得るために重複印刷を実行することが望ましいインクを使用する場合であれば、本発明は適用できる。例えば、背景に隙間無く銀色をベタ塗りする場合にも、本発明は適用できる。
上記実施形態の印刷装置30は、全く同一の白インクを吐出する白インクヘッド35Wを複数搭載することができる。しかし、同系色の異なるインクを吐出する複数のインクヘッド35を印刷装置30が搭載する場合でも、本発明は適用できる。例えば、印刷装置30は、インクの色目が僅かに異なる複数の白インクヘッド35Wを装着してもよい。この場合、ユーザは、白インクの色目によって所望の白インクヘッド35Wのみを指定することもでき、複数の白インクヘッド35Wから同時にインクを吐出させることも可能である。各インクヘッド35が備えるノズル36の数が128個に限定されないことは言うまでもない。
上記実施形態では、ユーザによって指定される印刷条件は、使用ヘッド数、解像度、および最大濃度の3つである。しかし、ユーザが指定できる印刷条件は変更できる。例えば、解像度はユーザが指定できなくてもよい。PC1は、上記の3つの印刷条件以外の条件(例えば、画像の明るさ等)をユーザに指定させてもよい。
上記実施形態では、図10のS29等に示すように、最大濃度はユーザによって指定される。従って、ユーザは所望の濃度で白色の印刷を実行させることができる。しかし、最大濃度をユーザに指定させなくても、本発明は実現できる。例えば、PC1は、記録媒体の色、材質等に適した最大濃度を予め記憶しておき、印刷を行う記録媒体に適した最大濃度を自動的に設定してもよい。画像データを作成する際に、画像データに最大濃度のデータが付加されていてもよい。最大濃度が固定値で単位濃度のみが変更される場合でも、本発明は適用できる。また、最大濃度をユーザに指定させる場合、指定の入力を受け付ける方法は適宜変更できる。例えば、PC1は、最大濃度の数値をキーボード3等によってユーザに直接入力させてもよい。PC1は、記録媒体の色等をユーザに入力させて、入力された情報に応じて最大濃度を設定してもよい。解像度の入力についても同様である。
上記実施形態では、ユーザは、印刷条件入力画面61〜63(図11から図13参照)において、使用ヘッド数を直接指定する。しかし、PC1は、搭載ヘッド数が異なる複数の印刷装置30のモデル名等をユーザに指定させて、指定されたモデル名に対応する搭載ヘッド数を使用ヘッド数に設定してもよい。
上記実施形態のPC1は、使用ヘッド数の候補値が「0」である場合、印刷条件入力画面63(図13参照)において最大濃度の表示をグレーアウトさせることで、指定可能な状態で最大濃度を表示することを禁止する(図10のS22参照)。指定可能な最大濃度の範囲を変更する場合にも、グレーアウトの手法が用いられている(図12参照)。しかし、指定可能な状態の表示を制限する方法は、グレーアウトに限定されない。例えば、最大濃度の候補自体を非表示としてもよい。また、ユーザの利便利を考慮すると、上記実施形態のように、印刷条件入力画面61〜63を使用ヘッド数の候補値に応じて変えることが望ましい。しかし、複数の使用ヘッド数に共通の印刷条件入力画面を用いることも可能である。
上記実施形態では、図9のS7において、最大濃度Mの印刷を行うために最低限実行する必要がある走査回数が必要走査回数nとして決定される。従って、PC1は、印刷時間が無駄に長くなることを防止できる。しかし、最低限実行する必要がある走査回数以上の走査回数を必要走査回数nに決定する場合でも、本発明は適用できる。
上記実施形態では、図16のS74において、使用白ヘッドを走査毎にランダムに決定する。その結果、特定の白インクヘッド35Wのノズル36が乾く可能性が低下する。しかし、使用白ヘッドを決定する方法は変更してもよい。例えば、PC1は、走査毎でなく所定回数の走査(例えば5回の走査)が行われる毎に使用白ヘッドを変更してもよい。印刷データを作成する毎に使用白ヘッドを変更してもよい。PC1は、使用白ヘッドをランダムに決定せずに、所定の順番に従って決定してもよい。
上記実施形態のPC1は、図17に示す第一作成処理において、最終印刷単位で実行されるマルチパス印刷のパス数を最大とする。その結果、白の印刷面の最上面がパス数の多いマルチパス印刷で形成され、印刷品質がさらに向上する。さらに、PC1は、パス数がなるべく多いマルチパス印刷をなるべく多く印刷装置30に実行させることで、印刷品質をさらに向上させることができる。しかし、最終印刷単位でマルチパス印刷を実行するだけでも、最後の走査でシングル方式の印刷を行う場合に比べて印刷品質(特に、カラーの印刷品質)は向上する。よって、例えば、複数回実行されるマルチパス印刷のパス数を全て同数とすることも可能である。また、図17に示す第一作成処理の具体的な処理内容は変更してもよい。例えば、最終印刷単位でマルチパス印刷を実行させる処理(S85〜S87参照)を行った後、残りの走査の全てにおいてシングル方式の印刷を実行させる処理(S96)を行うことで、S89〜S94の処理を省略してもよい。
上記実施形態で説明した処理のうち、第一方法の印刷データを作成する処理(具体的には、図9のS7の処理と、図17に示す第一作成処理)のみを適用することも可能である。例えば、共通データを作成せずに、走査毎にマルチパス方式の印刷データを作成する場合でも、白インクとカラーインクを効率良く高品質で印刷装置30に実行させることができる。ユーザが使用ヘッド数を指定できず、使用される白インクヘッド35Wの数が固定されている場合でも、本発明は適用できる。