JP2013156156A - 装飾部品の製造方法、時計用針、時計 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表面にメッキ層が形成された装飾面を有する時計用の時針(装飾部品)の製造方法であって、母材40の表面のうち、装飾面が形成される装飾施工面以外の面を取付治具60に当接させ、取付治具60に母材40を取り付ける母材取付工程S20と、母材取付工程S20の後、メッキ層のうち最下層の下地メッキ層(第一メッキ層)を装飾施工面に形成する第一メッキ工程S40と、を備え、第一メッキ工程S40は、取付治具60に母材40を取り付けた状態で取付治具60ごと行うことを特徴としている。
【選択図】図9
Description
特許文献1に記載の時計用外装部品は、具体的には以下のように形成されている。
まず、時計用外装部品の材料表面に鏡面仕上げ加工を施す。次に、材料表面に4層からなる下地層を電解メッキにより形成する。最後に、下地層の上に、Pd−Znからなる被覆層を電解メッキにより形成する。
また、一般に、電解メッキによるメッキ工程は、電極を構成するハンガーに装飾部品母材を吊るした状態でメッキ浴槽に浸漬し、電流を流して金属イオンを装飾部品母材に付着させることにより行われる。
鏡面仕上げ工程を行った後、メッキ工程を行う前に、取付治具から装飾部品母材を取り外し、ハンガーに装飾部品母材を吊るす必要がある。このとき、装飾部品母材に作業者の手が触れたり、装飾部品母材がハンガーや他の部材等と接触したりするなどして、装飾部品母材表面に汚損や疵を発生させるおそれがある。
装飾部品母材表面の汚損や疵は、メッキ層の色調のくもりや凹凸の原因となる。これにより、良好な装飾面が形成できず、装飾部品の製造不良が発生するおそれがある。
また、第一メッキ工程を行う際、取付治具ごとハンガーに吊るしてメッキ浴槽に浸漬できる。これにより、従来技術のように複数の装飾部品母材を個々にハンガーに吊るす作業が必要ないので、第一メッキ工程が容易となり、装飾部品の製造効率を向上できる。
また、第一メッキ工程を行う際、取付治具ごとハンガーに吊るしてメッキ浴槽に浸漬できる。これにより、従来技術のように複数の装飾部品母材を個々にハンガーに吊るす作業が必要ないので、第一メッキ工程が容易となり、装飾部品の製造効率を向上できる。
一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。ムーブメントに文字板、針を取り付けて、時計ケースの中に入れて完成品にした状態を時計の「コンプリート」と称する。時計の基板を構成する地板の両側のうち、時計ケースのガラスのある方の側、すなわち、文字板のある方の側をムーブメントの「裏側」又は「ガラス側」又は「文字板側」と称する。地板の両側のうち、時計ケースの裏蓋のある方の側、すなわち、文字板と反対の側をムーブメントの「表側」又は「裏蓋側」と称する。
図1に示すように、時計1のコンプリート1aは、時に関する情報を示す目盛り3などをもつ文字板2を備えている。また、時を示す時針4a、分を示す分針4bおよび秒を示す秒針4cを含む針4(請求項の「時計用針」に相当。)を備えている。
機械式時計のムーブメント100は、基板を構成する地板102を有している。地板102の巻真案内穴102aには、巻真110が回転可能に組み込まれている。この巻真110は、おしどり190、かんぬき192、かんぬきばね194および裏押さえ196を含む切換装置によって、軸線方向の位置が決められている。
そして巻真110を回転させると、つづみ車(不図示)の回転を介してきち車112が回転する。きち車112の回転により丸穴車114および角穴車116が順に回転し、香箱車120に収容されたぜんまい(不図示)が巻き上げられる。
アンクル142は一対のつめ石142aを備えている。てんぷ140は、てん真140a、てん輪140bおよびひげぜんまい140cを備えている。
また、筒かなの回転に基づいて日の裏車(不図示)の回転を介して筒車(不図示)が回転し、この筒車に取り付けられた時針4a(図1参照)が「時」を表示するようになっている。
続いて、時刻を指し示す機能とともに、時計1の装飾部品としての機能も有する針4(図1参照)について説明する。なお、時針4a、分針4bおよび秒針4cは、基本的な構成が同一である。したがって、以下では、時針4aについてのみ説明をし、分針4bおよび秒針4cについては説明を省略している。
図4は、図3のA−A線に沿った断面図である。
図3に示すように、時針4aは平板状の部材であり、図4に示すように、例えば真鍮等からなる母材40(請求項の「装飾部品母材」に相当。)の表面にメッキ層30が形成されている。
時針4aの貫通孔22aよりも長手方向の他方側(図3における右側)は、コンプリート状態にしたとき、文字板2の目盛り3(図1参照)を指し示す先細り形状に形成された指示部21となっている。指示部21の長さは、基端部22の長さよりも長く形成されている。
装飾面25は、時計1のコンプリート(図1参照)を形成したとき、時計ケースのガラス側に面して配置される。すなわち、装飾面25は、外側から視認できるように配置される。
下地メッキ層30aの材料としては、例えば、母材40を形成する真鍮との密着性に優れた、パラジウム(Pd)を主成分とする材料が採用される。下地メッキ層30aは、例えば0.2μm程度の厚さに形成されている。下地メッキ層30aは、仕上げメッキ層30bの外観品質を高めるとともに、母材40と仕上げメッキ層30bとの密着性を高めている。
仕上げメッキ層30bの材料としては、例えば、優美な金属光沢を有する、ロジウム(Rh)を主成分とする材料が採用される。仕上げメッキ層30bは、例えば0.1μm程度の厚さに形成されている。仕上げメッキ層30bは、時針4aの耐食性を高めるとともに、時針4aに高級感を付与している。
続いて、上述した装飾部品である時針4aの製造方法について、製造工程のフローチャートを参照しながら以下に説明する。
図5は、時針4aの製造工程のフローチャートである。
図5に示すように、時針4aの製造工程は、プレス工程S10と、母材取付工程S20と、鏡面仕上げ工程S30と、第一メッキ工程S40と、母材取り外し工程S50と、第二メッキ工程S60と、を備えている。以下に、各工程の詳細を説明する。
図6は、プレス工程S10の説明図である。
時針4a(図3参照)の製造工程では、まず、板部材15をプレス金型で打ち抜いて時針4aの母材40を形成するプレス工程S10を行う。なお、図6において、時針4aの一方側主面20a(図4参照)に対応する母材40の一方側主面40aは紙面表側に配置され、時針4aの他方側主面20b(図4参照)に対応する母材40の他方側主面40bは紙面裏側に配置される。
図6に示すように、プレス工程S10では、最初に、真鍮等の金属板材料をコイル状にしたフープ材(不図示)を切断して、時針4aの外形よりも大きな矩形状の板部材15を形成する。
最後に、時針4aの外形に対応した形状となるように板部材15を打ち抜く。これにより、長手方向の一方側(図6における左側)に基端部42を有し、他方側(図6における右側)に指示部41を有する、時針4aの母材40を形成できる。板部材15から母材40を打ち抜いた時点でプレス工程S10が終了する。
図7は、母材取付工程S20の説明図である。
次に、図7に示すように、母材40を取付治具60に取り付ける母材取付工程S20を行う。以下では、最初に、母材40を取り付ける取付治具60について説明をし、その後、母材取付工程S20について説明をする。
取付治具60は、軸方向から見て略円盤状の部材であり、例えば、母材40と同じ真鍮により形成されている。
取付治具60の一方側(図7における上側)の主面60aには、母材40が載置される載置部61が、軸方向に突出して形成されている。載置部61は、軸方向から見て母材40の外形と略同一の形状に形成されており、長手方向が取付治具60の径方向に沿うように形成されている。載置部61は、取付治具60の軸方向から見て、周方向に略等ピッチ(本実施形態では約30°ピッチ)に、放射状に複数個(本実施形態では12個)形成されている。したがって、本実施形態の取付治具60には、12個の母材40が取付可能となっている。
図8は、鏡面仕上げ工程S30の説明図である。
続いて、母材40の装飾施工面45を鏡面仕上げ加工する鏡面仕上げ工程S30を行う。以下では、最初に、鏡面仕上げ装置70について説明をし、その後、鏡面仕上げ工程S30について説明をする。
ターンテーブル71は、取付治具60と同心に形成された円板状の部材であり、中心軸まわりに回転可能に形成されている。したがって、取付治具60をターンテーブル71の主面に、ターンテーブル71と同軸に取り付けることで、取付治具60が中心軸まわりに回転可能となっている。
切削工具72の刃先は、母材40の一方側主面40aに当接可能な第一切削刃と、母材40に形成される傾斜面43に対応した角度で第一切削面に対して傾斜した第二切削刃と、により形成されている。
切削工具72は、スライド治具72aに取り付けられており、取付治具60の径方向(図8における上下方向、以下「第一方向F」という。)に沿って、直線的にスライド移動可能に形成されている。さらに、スライド治具72aは、第一方向Fに直交する方向(図8における左右方向、以下「第二方向S」という。)に沿って、直線的にスライド移動可能に形成されている。
以降、上記工程を繰り返し、12個の母材40全ての一方側主面40aおよび傾斜面43を鏡面仕上げし、装飾施工面45を形成した時点で、鏡面仕上げ工程S30が終了する。
図9は、第一メッキ工程S40の説明図である。
続いて、母材40の表面にパラジウム(Pd)を主成分とする下地メッキ層30a(図4参照)を形成する第一メッキ工程S40を行う。
図9に示すように、第一メッキ工程S40は、取付治具60に12個の母材40を取り付けたままの状態で取付治具60ごと、例えば電解メッキ法により行っている。具体的には、まず、陰極となる電極ハンガー75の先端に形成された鉤部75aを取付治具60の治具貫通孔65に挿通して、取付治具60を電極ハンガー75に吊り下げる。次に、電極ハンガー75に取付治具60を吊り下げた状態でメッキ浴槽77に移動し、メッキ浴槽77内に貯留されたパラジウム(Pd)が主成分の下地メッキ液78に、取付治具60ごと12個の母材40を浸漬する。そして、電源79により、電極ハンガー75と下地メッキ液78との間に電圧を印加することで、12個の母材40の表面に下地メッキ層30aが形成される。なお、導電材料からなる取付治具60の表面にも下地メッキ層30a(パラジウムメッキ)が形成される。
また、第一メッキ工程S40では、取付治具60ごと複数の母材40を電極ハンガー75に吊るしている。したがって、一回の作業で多くの母材40を電極ハンガー75に吊るすことができるので、従来技術と比較して第一メッキ工程S40が容易となり、時針4a(図1参照)の製造効率が向上する。
母材40の装飾施工面45に下地メッキ層30aを形成した時点で、第一メッキ工程S40が終了する。
続いて、取付治具60から母材40を取り外す、母材取り外し工程S50を行う。
母材取り外し工程S50は、母材40が接着固定された取付治具60を、シンナー等の溶剤(不図示)に浸漬する。取付治具60を溶剤中に所定時間放置することで、溶剤が下地メッキ層30aを透過して接着剤66に到達し、接着剤66に浸透して溶解する。さらに、取付治具60に形成された位置決め孔62からも溶剤が浸入して接着剤66に到達し、接着剤66に浸透して溶解する。これにより、複数の母材40を取付治具60の載置部61から一度に剥離できる。
全ての母材40が取付治具60から剥離した時点で、母材取り外し工程S50が終了する。
図11は、第二メッキ工程S60の説明図である。
続いて、母材40の表面にロジウム(Rh)を主成分とする仕上げメッキ層30b(図4参照)を形成する第二メッキ工程S60を行う。
図11に示すように、第二メッキ工程S60は、取付治具60(図10参照)から母材40を取り外した状態で、例えば第一メッキ工程S40と同様に電解メッキ法により行っている。具体的には、取付治具60(図10参照)から取り外した母材40の貫通孔42aに、陰極となる母材用電極ハンガー85の先端に形成された鉤部85aを挿通して、母材40を母材用電極ハンガー85に吊り下げる。なお、母材用電極ハンガー85は複数設けられており、複数の母材40を吊り下げている。
仕上げメッキ層30bを形成した時点で、第二メッキ工程S60が終了する。
本実施形態によれば、取付治具60に母材40を取り付けたままの状態で取付治具60ごと第一メッキ工程S40を行うので、母材40を取付治具60から外すことなく、第一メッキ工程S40を行うことができる。したがって、母材取付工程S20の後、第一メッキ工程S40の前に、母材40に作業者の手が触れたり、母材40が取付治具60以外の他の部品と接触したりするのを防止できる。これにより、母材40の装飾施工面45の汚損や疵の発生を抑制できるので、良好な装飾面25を形成でき、時針4aの製造不良の発生を防止できる。
また、第一メッキ工程S40を行う際、取付治具60ごと電極ハンガー75に吊るしてメッキ浴槽77に浸漬できる。これにより、従来技術のように複数の母材40を個々にハンガーに吊るす作業が必要ないので、第一メッキ工程S40が容易となり、時針4aの製造効率を向上できる。
さらに、本実施形態によれば、良好な装飾面25を有する時計用の針4を備え、外観品質に優れた時計1を、低コストに提供できる。
さらに、装飾面25のメッキ層30の層数は、実施形態の二層に限定されることはない。例えば、一層のみで装飾面25に光沢を付与できるメッキ材料を採用する場合には、メッキ層30は一層であってもよい。また、メッキ層30は、必要に応じて三層以上であってもよい。
ここで、仕上げメッキ層30bの材料として採用したロジウム(Rh)は、パラジウム(Pd)と比較して、溶剤等により剥離して除去し難い材料である。このため、第一メッキ工程S40と同様に、第二メッキ工程S60を行った場合、ロジウム(Rh)で形成された仕上げメッキ層30bを取付治具60から溶剤等により剥離して除去するのが困難であった。このため、母材取り外し工程S50により取付治具60から母材40を取り外した後、第二メッキ工程S60により母材40に仕上げメッキ層30bを形成する必要があった。
しかし、仕上げメッキ層30bを形成する材料に、溶剤等により剥離できる材質を採用した場合には、第一メッキ工程S40により下地メッキ層30aを形成した後、取付治具60に母材40を取り付けたままの状態で、第二メッキ工程S60により仕上げメッキ層30bを形成してもよい。
これにより、第二メッキ工程S60は、第一メッキ工程S40と同様に母材40を取り付けたままの状態で取付治具60ごと行うので、第二メッキ工程S60における母材40の装飾施工面45の汚損や疵の発生を確実に防止できる。したがって、仕上げメッキ層30bを形成した場合であっても、良好な装飾面25を形成でき、時針4aの製造不良の発生を確実に防止できる。また、第二メッキ工程S60においても、第一メッキ工程S40と同様に、取付治具60ごと電極ハンガー75に吊るしてメッキ浴槽77に浸漬できる。これにより、複数の母材40を、個々に母材用電極ハンガー85に吊るす作業が必要ないので、第二メッキ工程S60が容易となり、時針4aの製造効率を向上できる。
Claims (6)
- 表面に少なくとも一層のメッキ層が形成された装飾面を有する装飾部品の製造方法であって、
装飾部品母材の表面のうち、前記装飾面が形成される装飾施工面以外の面を取付治具に当接させ、前記取付治具に前記装飾部品母材を取り付ける母材取付工程と、
前記母材取付工程の後、前記メッキ層のうち最下層の第一メッキ層を前記装飾施工面に形成する第一メッキ工程と、
を備え、
前記第一メッキ工程は、前記取付治具に前記装飾部品母材を取り付けた状態で前記取付治具ごと行うことを特徴とする装飾部品の製造方法。 - 請求項1に記載の装飾部品の製造方法であって、
前記母材取付工程の後、前記第一メッキ工程の前に、前記装飾施工面を鏡面仕上げする鏡面仕上げ工程を備え、
前記鏡面仕上げ工程は、前記取付治具に前記装飾部品母材を取り付けた状態で行うことを特徴とする装飾部品の製造方法。 - 請求項1または2に記載の装飾部品の製造方法であって、
前記第一メッキ工程の後、前記取付治具から前記装飾部品母材を取り外す母材取り外し工程と、
前記母材取り外し工程の後、前記第一メッキ層に重ねて第二メッキ層を形成する第二メッキ工程を備え、
前記第二メッキ工程は、前記取付治具から前記装飾部品母材を取り外した状態で行うことを特徴とする装飾部品の製造方法。 - 請求項1または2に記載の装飾部品の製造方法であって、
前記第一メッキ工程の後、前記第一メッキ層に重ねて第二メッキ層を形成する第二メッキ工程を備え、
前記第二メッキ工程は、前記取付治具に前記装飾部品母材を取り付けた状態で前記取付治具ごと行うことを特徴とする装飾部品の製造方法。 - 請求項1に記載の装飾部品の製造方法により、前記装飾部品として形成された時計用針。
- 請求項5に記載の時計用針を備えたことを特徴とする時計。
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