JP6128857B2 - 装飾構造体、回転錘および時計 - Google Patents

装飾構造体、回転錘および時計 Download PDF

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Description

この発明は、装飾構造体、回転錘および時計に関するものである。
一般に、チタンやチタン合金は軽量であり、かつ比強度が大きいという特徴を有し、さらに耐食性などの点で優れた金属であるため、幅広い分野においてチタンやチタン合金の利用量が増大している。例えば、機械式時計に用いられる部品には、落下等による耐衝撃性が高く、高強度、高弾性、高振動吸収性等が求められるため、チタンやチタン合金等は使用に適していると言える。また、チタンやチタン合金は十分な耐食性を有するため、防錆等の後処理は必要ないが、部品がチタンやチタン合金以外の金属である場合、鉄等のような防錆処理が必要になる。防錆処理としては、例えばメッキ等を施すことが考えられるが、メッキが薄膜であるとピンホールを生じやすく耐久性が低下する虞がある。一方、メッキを厚膜にすると、公差の厳しい時計部品においては寸法誤差が大きくなる虞がある。このため、部品をチタンやチタン合金で形成し、陽極酸化処理を施すことにより、防錆処理を必要とせず、且つ発色させて装飾性を高めることができる(例えば、特許文献1参照)。
特開平11−256352号公報
ところで、上述の従来技術にあっては、陽極酸化膜の膜厚の変化によりチタン材料の表面が様々な色彩を呈するが、かかる膜厚の変化には限りがあり、且つ酸化膜の屈折率及びチタン表面での光の反射や吸収等から、例えば鮮やかな赤色を呈しにくい等、色彩の多彩性を確保するのが困難となる虞がある。
本発明は、かかる事情を考慮してなされるものであり、多彩な色を有する装飾構造体、回転錘および時計を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明に係る装飾構造体は、母材と、前記母材上に形成され、規則的な配列である規則配列で配列される複数の凹部を有する下地層と、前記下地層上に形成され、前記下地層が形成される側とは反対側の表面にチタンの酸化膜が形成されるチタン層とを有し、前記酸化膜は、前記規則配列の配列で構造が変形する構造変形部が形成されることを特徴とする。
また、本発明に係る装飾構造体は、前記凹部の間隔が、可視光の半波長から10ミクロンの範囲であり、アスペクト比が5以下であることを特徴とする。
また、本発明に係る装飾構造体は、前記下地層が、それぞれの前記凹部の間に形成される平坦部を有し、前記チタン層は、前記凹部上と前記平坦部上とに同じ膜厚に形成されることを特徴とする。
また、本発明に係る装飾構造体は、前記規則配列が、隣り合う前記凹部同士が周期的な間隔を有する配列であることを特徴とする。
また、本発明に係る回転錘は、上述の装飾構造体が軸中心に回転可能に形成される回転錘体と、前記装飾構造体の外周側に形成される回転重錘とを備え、外部振動により前記軸を中心として回転することを特徴とする。
また、本発明に係る時計は、上述の回転錘を有する時計であって、前記回転錘が内部に回転可能に収容されることを特徴とする。
本発明に係る装飾構造体、回転錘、および時計によれば、不要なチタン材料を減らしつつ、多彩な装飾状態を確保することができる。すなわち、チタン材料を薄膜のチタン膜とすることでその下地となる下地層を形成し、かかる下地層の形状変化を酸化膜の構造変形に利用することで、酸化膜の膜厚の変化に関わるバリエーションに構造変形による構造色のバリエーションを組み合わせることができる。よって、酸化膜の膜厚変化のバリエーションにとらわれない多彩な装飾状態を得ることができるようになる。
本発明の第1実施形態におけるムーブメントを表側からみた平面図である。 本発明の第1実施形態における自動巻機構の概略構成図である。 本発明の第1実施形態における装飾構造体を有する回転錘の平面図である。 本発明の第1実施形態における装飾構造体の模式的な要部拡大平面図である。 (a)本発明の第1実施形態における装飾構造体の断面図である。(b):(a)の領域Bにおける酸化膜による光の反射と干渉の模式図である。 本発明の第2実施形態における装飾構造体の断面図である。 本発明の第3実施形態における装飾構造体の断面図である。 本発明の第4実施形態における装飾構造体の模式的な要部拡大平面図である。 (a):本発明の第1実施形態の製造方法における、ニッケル層形成前に形成した規則的なレジストのパターンの断面図である。(b):(a)レジスト形成後に形成したニッケル層の断面図である。(c):(b)形成後にレジストを除去した後の装飾構造体の断面図である。(d):(c)を形成した後、チタン層を形成した後の装飾構造体の断面図である。 (a):本発明の第3実施形態の製造方法におけるニッケル層を形成する前に母材上に形成したレジストの断面図である。(b):(a)形成後に形成したニッケル層を含む装飾構造体の断面図である。(c):(b)を形成した後、レジストを除去し、チタン層を形成した後の装飾構造体の断面図である。
以下において、本発明の第1実施形態を図1から図5に基づいて説明する。まず、自動巻腕時計について説明する。図1は、自動巻機構を取り外した状態でムーブメントを表側からみた平面図、図2は、自動巻機構の概略構成図である。
図1、図2に示すように、本発明に係る装飾構造体(例えば、後述の回転錘160または回転錘体164)が組み込まれた自動巻腕時計(時計)10は、ムーブメント100と、このムーブメント100を収納する不図示のケーシングとにより構成され、ムーブメント100に不図示の文字板が取り付けられている。ムーブメント100は、基板を構成する地板102と、一番受105と、二番受106と、てんぷ受108と、アンクル受109とを備えている。二番受106は、一番受105と地板102との間に配置される。地板102には巻真案内孔103が形成されており、ここに巻真110が回転可能に組み込まれている。ここで、地板102の両側のうち、文字板が配置される側(図1、図2における紙面奥側)をムーブメント100の裏側と称し、文字板が配置される側とは反対側(図1、図2における紙面手前側)をムーブメント100の表側と称する。ムーブメント100の裏側には、裏輪列と称する輪列や、おしどり140、かんぬき142、及びおしどり押さえ144を含む切換装置が配置されている。この切換装置により、巻真110の軸方向の位置が決定するようになっている。一方、ムーブメント100の表側には、表輪列と称する輪列、表輪列の回転を制御するための脱進・調速装置40、および自動巻機構60等が組み込まれている。表輪列は、香箱車120、二番車124、三番車126、四番車128により構成されている。香箱車120は、一番受105と地板102とにより回転可能に支持されており、不図示のぜんまいを有している。そして、巻真104を回転させると不図示のつづみ車が回転し、さらにきち車、丸穴車(何れも不図示)、及び角穴車118を介してぜんまいが巻き上げられる。さらに、角穴車118の歯部には、板状のこはぜ117が噛合されており、これにより、角穴車118の回転が規制されるようになっている。一方、ぜんまいが巻き戻される際の回転力により香箱車120が回転し、さらに二番車124が回転するように構成されている。二番車124は、二番受106と地板102とにより回転可能に支持されている。二番車124が回転すると、三番車126が回転する。三番車126は、一番受105と地板102とにより回転可能に支持されている。三番車126が回転すると、四番車128が回転する。四番車128は、一番受105と二番受106とにより回転可能に支持されている。四番車128が回転することにより脱進・調速装置40が駆動する。
次に、脱進調速装置について説明する。脱進・調速装置40は、てんぷ136と、がんぎ車134と、アンクル138とを備えている。アンクル138は、アンクル受109と地板102とにより回転可能に支持されている。てんぷ136は、てんぷ受108と地板102とにより回転可能に支持されている。てんぷ136は、てん真136aと、てん輪136bと、ひげぜんまい136cとを有している。このような構成のもと、脱進・調速装置40は、二番車124が1時間に1回転するように制御する。二番車124の回転に基づいて不図示の筒かなが同時に回転するように構成されており、この筒かなに取り付けられた不図示の分針が「分」を表示するようになっている。また、筒かなには、二番車124に対するスリップ機構が設けられている。筒かなの回転に基づいて、日の裏車の回転を介し、筒車(何れも不図示)が12時間に1回転するように構成されている。そして、筒車に取付けられた不図示の時針が「時」を表示するようになっている。さらに、二番車124の回転により、三番車126の回転を介し、四番車128が1分間に1回転するように構成されている。四番車128には、不図示の秒針が取り付けられている。
次に、自動巻機構について説明する。自動巻機構60は、この自動巻機構60を構成する回転錘160をユーザーの腕の動きで動かし、香箱車120の不図示のぜんまいを巻き上げるものである。回転錘160は、ボールベアリング162と、回転錘体164と、回転重錘166とを有している。ボールベアリング162は、内輪と、外輪と、これら外輪と内輪との間に設けられた複数のボール(何れも不図示)とを有しており、内輪がボールベアリング止めねじ168を介して一番受105に固定されている。
次に、図3に基づき、回転錘について説明する。図3は、回転錘の平面図である。図2、図3に示すように、回転錘160の回転錘体164は、陽極酸化処理が可能なチタン(Ti)、及びチタン合金の何れか一方により、平面視略扇状に形成されたものである。回転錘体164の回転中心には、ボールベアリング162が配置され、ボールベアリング162の外輪と回転錘体164とが固定されている。これにより回転錘体が軸中心に回転可能に支持される。
また、回転錘体164の外周縁には、この外周縁に沿うように湾曲した回転重錘166が取り付けられている。回転錘体164と回転重錘166とは締結部材を介して固定されている。また、接着剤や溶接等で固着されてもよい。尚、回転錘体164と回転重錘166とが一体成形されていてもよい。回転錘体164のボールベアリング162の外輪には、回転錘かな178が設けられている。
この回転錘かな178は、一番伝え車182の一番伝え歯車182aに噛合わされる。一番伝え歯車182aは、一番受105と地板102とにより回転可能に支持されている。さらに、一番伝え車182と一番受105との間には、つめレバー180が組み込まれている。つめレバー180は、一番伝え車182の軸心から偏心した形で取り付けられたものであって、引きつめ180a、および押しつめ180bを有している。これら引きつめ180a、および押しつめ180bは、二番伝え車184の二番伝え歯車184aに噛合わされる。二番伝え車184は、二番伝え歯車184aの他に二番伝えかな184bを有している。二番伝え歯車184aは、回転錘体164と一番受105との間に位置している。一方、二番伝えかな184bは、角穴車118と噛み合うようになっている。そして、二番伝え歯車184aに噛合うつめレバー180の引きつめ180a、および押しつめ180bは、二番伝え歯車184aの中心に向かって弾性力により付勢されている。
このような構成のもと、回転錘160が回転すると、回転錘かな178も同時に回転し、回転錘かな178の回転により、一番伝え車182が回転する。この一番伝え車182の軸心から偏心した形で取り付けられているつめレバー180は、一番伝え車182の回転により往復運動を行う。そして、引きつめ180a、および押しつめ180bにより二番伝え車184を一定の方向に回転させる。すると、二番伝え車184の回転により角穴車118が回転し、香箱車120の不図示のぜんまいを巻き上げる。ここで、自動巻腕時計10の不図示のケーシングの裏側は、内部が視認可能なように透明になっている。このため、不図示のケーシングを介して視認される回転錘160の表面が発色されており、自動巻腕時計10のデザイン性が向上されている。
次に、図4、図5に基づき装飾構造体としての回転錘体164について説明する。図4は、図3における回転錘164の一部を模式的に拡大した平面図であり、図5(a)は、図4のA−A’断面図であり、図5(b)は、図5(a)の平坦部Bの概略拡大図である。
ここで回転錘体164は、母材となる真鍮材202の表面にニッケル層204を形成してある。ニッケル層204の上には、ニッケル層204を下地層としてチタン層206が形成されている。さらに、チタン層の表面には陽極酸化膜22が形成されている。チタン層206はチタンまたはチタン合金で形成されている。陽極酸化膜22は、チタン層206の表層を酸化させて形成されている。
ニッケル層204は、間隔幅w、高さhとして、チタン層206と真鍮材202とを連通する凹部208が形成されており、かかる凹部208がニッケル層204の貫通孔となっている。凹部208以外の部分は平坦な面を有する平坦部207となっている。凹部208は、図4、図5のように周期的に連続して形成されている。
凹部208は様々な開口径(ri、rj…)を有するが、本実施形態では略同一(ri=rj)である。また、隣り合う凹部208同士は、様々な間隔(Di、Dj…)を有するが、本実施形態では略同一(Di=Dj)である。このように、凹部208は周期的に連続する規則配列で形成される。本実施形態のように凹部208の開口径を略同一(ri=rj)とし、凹部208間の間隔を略同一(Di=Dj)とすれば、規則配列の周期性は小さくなり、後述するように細かな配色が可能となる。一方、これら開口径や間隔に差を設ければ大きな周期性をもつ規則配列となり、陽極酸化膜22の膜厚変化と組み合わされて更に多彩な色を呈することができる。
本実施形態では、間隔Diは可視光の半波長から10マイクロメートルの範囲であり、凹部208の開口径はおよそ0.1マイクロメートルから50マイクロメートルとなっている。一方、チタン層206の膜厚はおよそ0.1マイクロメートルから5マイクロメートルとなっている。陽極酸化膜22の膜厚は、その表層のおよそ0.05マイクロメートルから0.4マイクロメートルとなっている。これらの構成により、ニッケル層204の凹部208の構造を陽極酸化膜22の窪み22aの構造に反映させることができる。よって、酸化膜の膜厚の変化のバリエーションに加え、凹部208の構造に応じた窪み22aの構造の配置による構造色のバリエーションを組み合わせることができる。よって、酸化膜の膜厚変化のバリエーションに縛られない多彩な装飾状態を得ることができるようになる。かかる窪み22aが、上述の周期的な規則配列で形成される陽極酸化膜22の構造変形部となっており、かかる構造変形部により上述の構造色を付与することができるようになる。
また、望ましくは、間隔Diが1マイクロメートルから5マイクロメートルであり、凹部208の開口径riは1マイクロメートルから5マイクロメートルであり、且つニッケル層204の幅w(凹部208の間隔幅w)と高さhのアスペクト比が5以下とする。これにより、ニッケル層204の凹部208の構造が陽極酸化膜22の窪み22aの構造に更に反映させやすくなる。よって、酸化膜の膜厚の変化のバリエーションに加え、凹部208の構造に応じた窪み22aの構造の配置による構造色のバリエーションを組み合わせることができる。よって、酸化膜の膜厚変化のバリエーションを超える十分に多彩な装飾状態を得ることができるようになる。
また、凹部208は、チタン層206の埋め込み部206aにより埋められており、埋め込み部206aが真鍮材202に接触している。チタン層206は、一方の面側にチタン層206自体が酸化された陽極酸化膜22と、他方の面側にニッケル層204の凹部208を埋め、同じチタンまたはチタン合金で形成される埋め込み部206aとを有している。
チタン層206は、後述するイオンプレーティング法により、ニッケル層204の平坦部207と凹部208との上にほぼ均一な膜厚で形成されている。よって、陽極酸化膜22を含むチタン層206の表面は、凹部208の上部において凹部208の形状に追従して連続して窪んだ窪み22aが形成される。窪み22aの連続性/規則性は凹部208の連続性/規則性と同様であり、周期的に連続した規則的な規則配列を有する凹部208と同様の規則的な規則配列で窪み22a(構造変形部)は形成される。このように形成された表面構造に対し光が入射すると、図5(a)に示すように、入射した光がそれぞれの窪み22aで回折され、回折光はそれぞれ互いに干渉し合い、位相が揃ったある波長の光は特定角度で強め合い、その光の波長が可視光の範囲の波長の場合、上述の規則配列の構造に応じた干渉色(=構造色)として発色して見える。
また、図5(b)に示すように、陽極酸化膜22においては、窪み22aで挟まれた平坦部Bにおいても干渉光が得られる。陽極酸化膜22の表面で反射された光Eとチタン層206表面で反射された光Fが干渉し合い、強められた光の波長が干渉光として反射される。この時、陽極酸化膜22の厚みが可視光の半分程度の時、干渉光の波長が可視光の範囲になり、干渉色として観測される。従って、陽極酸化膜22のみでなく、規則的な凹構造を形成しつつその表面に特定の範囲の厚みを持つ陽極酸化膜22が形成されることにより、窪み22aの構造による干渉色と陽極酸化膜の膜厚による干渉色が組み合わされ、一方のみでは発現させることができない波長の光を強め合うことができる。
以上のような構成により、図5(a)に示すニッケル層204が規則的な規則配列で凹部を有することにより形成される陽極酸化膜22の規則配列における光の回折(構造による干渉色)と、図5(b)に示す陽極酸化膜22による干渉色による色彩(膜厚による干渉色)とが組み合わされる。ニッケル層が凹部を有さず、平坦な上にニッケル層204、チタン層206、陽極酸化膜22が形成された場合とは異なった波長となり、異なった色として表れる。そして、明確に図示していないが、陽極酸化膜22の膜厚を部分々々で変化するようにすることで、凹部208上部の構造変化に基づく色彩変化に、膜厚変化に基づく色彩変化(例えば、グラデーション)を加えることができる。よって、陽極酸化膜22の膜厚変化のみでは得ることができない色彩を得ることができ、発色のバリエーションを更に多彩なものとすることができるようになる。
なお、埋め込み部206はニッケル層204の凹部208とのアンカー効果により接合面積が確保されるので、チタン層206とニッケル層204および/または真鍮材202との接合強度を所望の値に確保できる。このように、チタン層206の表面に酸化膜22が形成されるとともに、かかる酸化膜22の基材となるチタン層206により埋め込み部206aが形成されるので、チタン層206が装飾と接合強度確保とを併せて担うことができる。従って、不要なチタン材料を減らしつつ、減らしたチタン材料が置き換えられた母材である真鍮材202とかかるチタン層206との接合強度が確保されるようになる。よって、上述の色彩の多彩性を、効率的な量のチタン材料により確保することができる。
また、ニッケル層204の膜厚は0.1〜250マイクロメートル以下であるが、好ましくは1〜5マイクロメートル以下であり、凹部の幅に対する深さの比がおよそ5以下となるように開口が形成される。
次に、上述の第1実施形態とは別の第2実施形態について図6を用いて説明する。図6は本実施形態の装飾構造体である回転錘体164の表面付近の断面図を模式的に表した図である。本実施形態の第1実施形態と重複する部分については、同一符号を付して、説明を省略する。本実施形態が、第1実施形態と異なる点は、チタン層206がチタンの化合物で形成されている点である。チタンの化合物とは窒化チタンや炭化チタン等であり、以下では窒化チタンを例に挙げ説明する。
窒化チタン層210は、ニッケル層204が形成される側に形成されている。よって、ニッケル層204の凹部208を埋める埋め込み部206aは、チタンの化合物である窒化チタンにより形成されており、埋め込み部206aが窒化チタン層210の一部を構成している。窒化チタンはイオンプレーティングにおける膜形成時にチタンと共に窒素ガスを導入し窒化チタン膜を形成する。従って、チタン膜のみ形成する場合よりも成膜中にガスを導入することによるチタン粒子の回り込みが増加し、凹部208への付き回り及び埋め込み性が向上する。これにより、チタン層206とニッケル層204および/または真鍮材202との接合強度を更に向上することができ、色彩の多彩性をより安定して確保することができる。尚、窒化チタン層210を形成した後、更に連続してチタン層を形成しているが、窒化チタン層のみとすることもできる。
次に、上述の実施形態と異なる第3実施形態について図7に基づき説明する。図7は、本実施形態の装飾構造体である回転錘体164の表面付近の断面図を模式的に表した図である。本実施形態の第1実施形態と重複する部分については、同一符号を付して、説明を省略する。本実施形態が上述の実施形態と異なる点は、凹部の断面形状が、真鍮材202に向うに従い拡径となる略逆錐状の断面となっている点である。
図7に示すように、本実施形態の凹部308は、真鍮材202側を下面として逆錐状の断面形状となっている。凹部308に埋め込まれるチタン層206の埋め込み部206aは、ニッケル層204の上部が狭窄されていることにより、ニッケル層204や真鍮材202との密着強度がさらに向上するようになっている。よって、色彩の多彩性をさらに安定して確保することができる。また、かかるニッケル層204の構造により、陽極酸化膜22の窪み22b等の構造を更に複雑化できる。よって、窪み22bの構造に基づく干渉色を上述の実施形態に比べ更に深みのある色とすることができ、陽極酸化膜22の膜厚に基づく干渉色との組み合わせにより、さらに多彩な色を呈することができる。
次に、上述の実施形態と異なる第4実施形態について図8に基づき説明する。図8は本発明の第4実施形態における装飾構造体の模式的な要部拡大平面図である。
第1実施形態と異なる点は、ニッケル層の凹部がライン状に形成されているのではなく、島状に形成されている点である。本実施形態の凹部408は、平面視で略円形に形成され、かかる円形の凹部408が、XY方向に略均等な間隔で形成されている。このような構造にすることにより、一定方向だけではなく、三次元的な広がりを持つため、ニッケル層による島(凹部408と平坦部Bにより形成される凸状の部分)の大きさや間隔、形状等を自由度を持って設計することにより、光の反射特性の制御性が更に向上する。よって、更なる多彩な色を得ることができる。また、チタン層とニッケル層及びチタン層と母材との接触面積が更に増加するため、母材からのニッケル層及びニッケル層上のチタン層の剥離をより防止することができる。
次に、上述の第1実施形態の装飾構造体である回転錘体164の製造方法について図9(a)から図9(d)を用いて説明する。図9(a)は本実施形態の回転錘体164の表面付近においてニッケル層及びチタン層を形成する前に表面上に形成した規則的な規則配列を有するパターンの断面図を模式的に表した図である。パターンの形成は例えばフォトリソグラフィを利用し、表面にレジスト等の感光性有機物質を塗布し、フォトマスクに描かれた規則配列を露光により定着させる。その後、不要部分を除去することにより、所定のレジストのパターンが形成される。図9(b)に示すように、レジストパターン形成後、めっきによりニッケル層を形成する。レジストパターンが形成された状態でニッケル層204を形成すると、レジストのパターンの部分にはニッケル層は形成されず、パターンのない部分のみにニッケル層が形成される。その後、図9(c)に示すようにレジストパターンを除去することにより、規則的な配列を有したニッケル層204が形成される。図9(c)に示すように、ニッケル層成長時にレジストのパターンを有することにより、ニッケル層間に凹部208が形成される。この後、図9(d)に示すように、ニッケル層204が成膜された状態で真空中又は不活性雰囲気中においてイオンプレーティングにてチタン層を形成することにより凹部208を埋める埋め込み部206aが形成され、その上部には窪み22aが形成される。このようにレジストパターンを形成した後にニッケル層を形成することによって、凹部208の数をコントロールすることができ、更にニッケル層の厚みと凹部208のアスペクト比をコントロールすることや、より目的に応じた接合強度を得ることができる。その後、電解液中に回転錘体164を浸漬して陽極に接続し、陰極との間を通電する、所謂陽極酸化処理を行う。これにより水が電気分解され、回転錘体164の表面に陽極酸化膜22が形成される。この後、純水で洗浄し、エアブローで回転錘体164を乾燥させ、酸化膜22が形成された回転錘体164が得られる。尚、陽極酸化前に表面に一部マスクを行い、陽極酸化膜の形成されない部分を形成してもよい。また、本実施例においてはチタン層をイオンプレーティングにより形成したが、スパッタや蒸着等のその他の気相法により形成してもよい。また、ニッケル層においてもめっきにより成膜したが、スパッタや蒸着等で形成してもよい。
なお、上述の第2実施形態の製造方法は、ニッケル層204の直上に窒化チタン層210を形成する点が異なる以外は第1実施形態の製造方法と同様である。また、第4実施形態の製造方法は、凹部の配列を決めるレジストパターンが異なる点以外は第1実施形態の製造方法と同様である。
次に、上述の第3実施形態の製造方法について図10(a)〜図10(c)を用いて説明する。図10(a)は本実施形態の回転錘体164の表面付近においてニッケル層及びイオンプレーティングによるチタン層を形成する前の断面図を模式的に表した図である。図10(a)に示すように、ニッケル層204を形成する前に母材上にレジストによりパターン204bを形成しておく。この状態でニッケル層204を形成することにより、図10(b)に示すようにレジストパターン204bの部分にはニッケル層204は形成されない。この後、レジストパターン204bを剥離し、図10(c)に示すように、イオンプレーティングにてチタン層を形成することにより微小開口208を埋める埋め込み部206aを形成することができる。このような微小開口形成方法を採用することにより、微小開口208の数をコントロールすることができ、また、ニッケル層204の厚みと微小開口208のアスペクト比をコントロールすることができる。また、レジストパターンの形状を図10(a)のように逆錐状のテーパーを作成することにより、チタン層をより強固に接合することができる。
なお、上述の実施形態では、母材を真鍮材202としたが、洋白材等時計部品として使用可能な材料であればよい。
また、上述の実施形態では、回転錘体164における所望の表面箇所を陽極酸化した場合を説明したが、回転重錘166を含む回転錘160の表面を陽極酸化して、陽極酸化膜22を形成することもできる。
また、上述の実施形態では、凹部208の底面は母材となっているが、ニッケル層が形成される場合もある。
また、上述の実施形態では、凹部をチタン層206と真鍮材202とを連通する貫通孔としたが、連通せずにニッケル層204の底面を有する有底部とすることができる。
また、上述の実施形態では、構造変形部を窪み22aとして構成したが、これに限定されることなく、チタン層206の表面から盛り上がる突起部とすることもできる。
また、この他、自動巻腕時計10に用いられるさまざまな部品に本発明を適用することができる。例えば、回転錘160の他に、地板102、一番受105、二番受106、てんぷ受108、アンクル受109、各車120〜128、てん輪136b等、さまざまな部品に本発明の適用することができる。さらには、自動巻腕時計10を構成する部品に限らず、酸化膜を形成することで発色させるさまざまな部品に本発明を適用することができる。
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、各実施形態の開示する複数の構成要件における適宜な組み合わせが可能である。
10 自動巻時計(時計)
22 陽極酸化膜(酸化膜)
22a 窪み(構造変形部)
160 回転錘(装飾構造体)
202 真鍮材(母材)
204 ニッケル層(下地層)
208,308,408 凹部
206 チタン層
206a 埋め込み部
207 平坦部
208 凹部
210 窒化チタン層
164 回転錘体(装飾構造体)
166 回転重錘
160 回転錘(装飾構造体)
162 回転軸(軸)

Claims (6)

  1. 母材と、
    前記母材上に形成され、規則的な配列である規則配列で配列される複数の凹部を有する下地層と、
    前記下地層上に形成され、前記下地層が形成される側とは反対側の表面にチタンの酸化膜が形成されるチタン層とを有し、
    前記酸化膜は、前記規則配列の配列で構造が変形する構造変形部を有し、
    前記凹部の断面は、前記母材に向うに従い拡径となるテーパー形状であることを特徴とする装飾構造体。
  2. 前記複数の凹部のうち隣接する凹部の、母材表面上の間隔が1マイクロメートルから5マイクロメートルであることを特徴とする請求項1に記載の装飾構造体。
  3. 前記下地層は、それぞれの前記凹部の間に形成される平坦部を有し、
    前記チタン層は、前記凹部の上方と前記平坦部の上方とに同じ膜厚に形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の装飾構造体。
  4. 前記規則配列は、隣り合う前記凹部同士が周期的な間隔を有する配列であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の装飾構造体。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の装飾構造体が軸中心に回転可能に形成される回転錘体と、前記装飾構造体の外周側に形成される回転重錘とを備え、外部振動により前記軸を中心として回転することを特徴とする回転錘。
  6. 請求項5に記載の回転錘を有する時計であって、
    前記回転錘が内部に回転可能に収容されることを特徴とする時計。
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