JP5366319B2 - デテント脱進機およびそれを有する機械式時計 - Google Patents

デテント脱進機およびそれを有する機械式時計 Download PDF

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Description

本発明は、デテント脱進機と、デテント脱進機を有する機械式時計に関するものである。特に、本発明は、てんぷのエネルギー損失を低減しつつ薄型化を図ることができるように構成したデテント脱進機と、このような新規なデテント脱進機を有する機械式時計に関する。
古くから機械式時計の脱進機の1つのタイプとして「デテント脱進機」(クロノメータ脱進機)が知られている。デテント脱進機の代表的な機構形態として、スプリング型デテント脱進機(Spring Detent Escapement)と、ピボット型デテント脱進機(Pivoted Detent Escapement)とが従来から広く知られている(例えば、下記非特許文献1参照)。
図32を参照すると、従来のスプリング型デテント脱進機800は、がんぎ車810と、てんぷ820と、デテントレバー840と、板状ばねで構成された復帰ばね830とを備えている。振り石812が、てんぷ820の大つばに固定されている。止め石832が、デテントレバー840に固定されている。
図33を参照すると、従来のピボット型デテント脱進機900は、がんぎ車910と、てんぷ920と、デテントレバー930と、螺旋ばね(渦巻きばね)で構成された復帰ばね940とを備えている。振り石912が、てんぷ920の大つばに固定されている。止め石932が、デテントレバー930に固定されている。
これらの2つのタイプの脱進機に共通する特徴として、現在広く普及しているクラブツースレバー型脱進機と異なり、がんぎ車から直接的に、てんぷに動力を伝達するため、脱進機における動力(伝達トルク)の損失を小さくすることができるという利点を挙げることができる。
従来の第一タイプのデテント脱進機は、デテントレバーと、螺旋ばね(渦巻きばね)と、板状ばねとを備えている(例えば、下記特許文献1参照)。
従来の第二タイプのデテント脱進機は、第1フィンガ(14)を担持する大ローラ(4)と、第2フィンガ(11)と停止ツメ石(7)を担持する制止部材(6)と、制止部材(6)の位置制御を行う小ローラ(23)とを備えている。このデテント脱進機は戻しばねを備えていない(例えば、下記特許文献2参照)。
従来の第三タイプのデテント脱進機は、ガンギ車(1)と、テンプと、停止つめ(21)を支持するデテント(11)と、テンプに固定された制限プレート(5)を備えている。このデテント脱進機は、内端がデテント(11)と統合されたテンプばね(12)を備えている(例えば、下記特許文献3参照)。
従来のアンクル、がんぎ車などの電鋳部品を製造する方法においては、マスクを有する基板にエッチング穴を形成する工程と、軸部品の下軸部の先端を含む下軸部の部分を基板のエッチング穴に挿入する工程と、軸部品の一部を挿入した基板に対して電鋳加工を行い、軸部品と一体に電鋳金属部を形成する工程とを含んでいる(例えば、下記特許文献4〜7参照)。
スイス特許第CH3299号公報(第1〜2頁、図1、図2) 特開2005−181318号公報(第4〜7頁、図1〜図3) 特表2009−510425号公報(第5〜7頁、図1) 特開2005−181318号公報(要約、第7〜8頁、図1) 特開2006−169620号公報(要約、第5〜8頁、図1) 特開2007−70678号公報(要約、第5〜9頁、図1、図2) 特開2007−70709号公報(要約、第5〜8頁、図1、図2)
ジョージ・ダニエル著、「The Practical Watch Escapement」、Premier Print Limited、1994年(第1版発行)、第39〜47頁
従来のピボット型デテント脱進機、および、従来のスプリング型デテント脱進機においては、以下のような課題があった。具体的には、てんぷが初期位置から回転し、てんぷに設けられたハズシ石が板ばねに接触して、板ばねががんぎ車から離れる方向に撓む。この板ばねの撓みにより、デテントレバー及びそこに備えられた止め石もがんぎ車から離れる方向に回転し、止め石ががんぎ車の回転を解除する。その後、てんぷが自由振動を行い、再び逆回転して、てんぷのハズシ石が板ばねの先端に接触し、てんぷが上記の初期位置に戻る。このような動作が繰り返される。
従来のピボット型デテント脱進機では、てんぷの回転中心とデテントレバーの支点とを通る仮想線に沿って、板ばねが備えられているため、上記のてんぷの逆回転時において、てんぷのハズシ石と板ばねの先端との接触時間が長くなり、てんぷのエネルギーロスを低減させることができないという問題が生じていた。
一方、上記仮想線に対して板ばねを斜めに設ければ、てんぷの逆回転時においててんぷのハズシ石と板ばねの先端との接触時間が短くなり、てんぷのエネルギーロスを低減させることができる。ところが、上記仮想線に対して板ばねを斜めに設けるためには、デテントレバーに対して板ばねを交差させなければならず、その交差部分では、デテントレバー及び板ばねの両方の厚みが存在することとなり、脱進機の全体を薄型化することができない。
そこで、本発明は上記点に鑑みてなされたものであり、てんぷの逆回転時におけるてんぷのエネルギーロスを低減させるとともに、全体の薄型化をすることができるデテント脱進機を提供することを目的とする。
本発明は、がんぎ車と、がんぎ車の歯部と接触可能な振り石および外し石を有するてんぷと、がんぎ車の歯部と接触可能な止め石を有する作動レバーとを含む時計用のデテント脱進機において、前記作動レバーは、前記止め石を支持する止め石支持アームと、前記外し石と接触可能な部分を含む片作動ばねと、前記片作動ばねの先端にある外し石接触部の位置を定めるための片作動ばね支持アームとを有するように構成した。前記作動レバーは、前記止め石が、前記がんぎ車に近づく方向と、前記止め石が、前記がんぎ車から遠ざかる方向の2方向に回転可能なように構成されている。前記片作動ばねは、その先端部分が、前記てんぷの回転中心と、前記作動レバーの回転中心とを結ぶ直線である作動基準直線を基準としたときに、前記がんぎ車がある側と反対側において、前記てんぷの回転中心から遠ざかるにつれて、前記作動基準直線からの距離が増加するように角度をなして配置されている。
前記片作動ばねの変形ばね部は、前記止め石支持アームと、前記片作動ばね支持アームとの間に配置されている。この構成により、てんぷが戻るときのエネルギーロスを低減し、かつ、薄型のデテント脱進機を実現することができる。
本発明のデテント脱進機において、前記片作動ばね支持アームの下面と、前記片作動ばねの下面は、前記がんぎ車の回転中心軸線、および、前記てんぷの回転中心軸線に対して垂直な1つの平面内に配置されるのが好ましい。この構成により、薄型のデテント脱進機を実現することができる。
本発明のデテント脱進機において、前記片作動ばねの変形ばね部の前記外し石接触部に続く部分は、前記作動基準直線に対して、5度から45度の範囲内にある角度をなすように構成されるのが好ましい。この構成により、てんぷが戻るときのエネルギーロスを低減し、かつ、薄型のデテント脱進機を実現することができる。
本発明のデテント脱進機において、前記止め石支持アームは、前記作動基準直線に対して、前記片作動ばね支持アームと反対の側に位置するように構成するのがよい。この構成により、止め石支持アームと片作動ばね支持アームのバランスをとることができる。すなわち、作動レバーの重心の位置を作動レバーの回転中心に近づけて、重心位置バランスを補正することができる。この構成により、時計の縦姿勢の方向違いによる歩度の誤差影響を低減することができる。
本発明のデテント脱進機において、前記止め石支持アームの幅は、前記片作動ばね支持アームの幅より大きく形成され、或いは、前記止め石支持アームの厚さは、前記片作動ばね支持アームの厚さより厚く形成されるのがよい。この構成により、止め石支持アームと片作動ばね支持アームのバランスをとることができる。すなわち、作動レバーの重心の位置を作動基準直線上に配置して、或いは、作動レバーの重心の位置を作動基準直線に近づけて、重心位置バランスを補正することができる。
本発明のデテント脱進機において、前記止め石支持アーム、および、前記片作動ばね支持アームのうちの少なくとも一方は、前記作動レバーの慣性モーメントを低減させるために、肉抜きされた部分を含むのがよい。この構成により、作動レバーの慣性モーメントを効果的に低減させることができる。
また、本発明のデテント脱進機において、前記片作動ばね支持アームは、前記作動基準直線からみて凸になるような1以上の曲線部を含む形状に形成されるのがよい。この構成により、片作動ばね支持アームと止め石支持アームの干渉を確実に避けることができ、片作動ばね支持アーム先端部分から片作動ばねの支点までの距離を最短にすることができるとともに、作動レバーの慣性モーメントを低減させることができる。
また、本発明のデテント脱進機において、前記片作動ばね支持アームは、先端部分から根元部分に向うにつれて断面積が大きくなるように構成されるのがよい。この構成により、片作動ばね支持アームの慣性モーメントを低減させることができ、また、片作動ばね支持アームの根元部分の破損を防ぐことができる。
本発明のデテント脱進機において、前記止め石支持アームの幅は、前記片作動ばね支持アームより細く形成され、かつ、前記片作動ばね支持アームは肉抜きされた部分を含むように構成するのがよい。この構成により、止め石支持アームと片作動ばね支持アームのバランスをとることができる。すなわち、作動レバーの重心の位置を作動基準直線上に配置して、或いは、作動レバーの重心の位置を作動基準直線に近づけて、重心位置バランスを補正することができる。この構成により、時計の縦姿勢の方向違いによる歩度の誤差影響を低減することができる。また、肉抜きを形成することによって、作動レバーの慣性モーメントを低減することができる。
本発明のデテント脱進機は、さらに、前記止め石が前記がんぎ車に近づく方向に前記作動レバーを回転させる力を前記作動レバーに加えるための復帰ばねを備え、前記復帰ばねは、前記作動レバーの回転中心に対して、前記止め石支持アームおよび前記片作動ばね支持アームの反対側に位置するようにように構成するのがよい。この構成により、止め石支持アームと片作動ばね支持アームのバランスをとることができる。すなわち、作動レバーの重心の位置を作動レバーの回転中心に近づけて、重心位置バランスを補正することができる。この構成により、時計の縦姿勢の方向違いによる歩度の誤差影響を低減することができる。
本発明のデテント脱進機において、前記復帰ばねの初期位置を調整するための復帰ばね調整偏心ピンが設けられるのが好ましい。この構成により、復帰ばねの初期位置を容易に迅速確実に調整することができる。
本発明のデテント脱進機において、前記片作動ばねの外し石接触部を前記片作動ばね支持アームに押し付けるための片作動ばね規制レバーが前記作動レバーに設けられるのが好ましい。この構成により、作動レバーの初期位置を容易に迅速確実に調整することができる。
さらに、本発明は、機械式時計の動力源を構成するぜんまいと、前記ぜんまいが巻き戻されるときの回転力により回転する表輪列と、前記表輪列の回転を制御するための脱進機とを備えるように構成された機械式時計において、前記脱進機が、上記のデテント脱進機で構成されることを特徴としている。この構成により、薄型で調整が容易な機械式時計を実現することができる。また、本発明の機械式時計は、脱進機の力の伝達効率が良いので、現在機械式時計の脱進機として広く普及しているクラブツースレバー脱進機に対して、ぜんまいを小さくすることができ、或いは、同じサイズの香箱を用いて長時間持続の時計を達成することができる。
従来のデテント脱進機においては、てんぷの戻り時に片作動ばねと外し石の噛み合い量を減らし、てんぷのエネルギー損失を低減するために、片作動ばねと作動レバーを同一平面でなく2層に分けて互いに交差させる構造を採用していた。本発明のデテント脱進機においては、てん真の回転中心と、作動レバーの回転中心とを結ぶ直線に対して或る角度をなし、かつ、同一平面内に配置されるように、片作動ばね支持アームおよび片作動ばねを設けている。したがって、本発明のデテント脱進機においては、てんぷのエネルギー損失を低減することができ、デテント脱進機を搭載した時計ムーブメントの薄型化を図ることができる。
また、本発明のデテント脱進機は、止め石支持アームを上記片作動ばね支持アームの反対側に湾曲させるように構成している。また、本発明のデテント脱進機の1つの好ましい構造においては、止め石支持アームの厚さを片作動ばね支持アームの厚さと異なるように構成している。また、本発明のデテント脱進機の1つの好ましい構造においては、止め石支持アームの一部、および、片作動ばね支持アームの一部のうちの少なくとも一方を肉抜きするように構成している。この構成により、作動レバーを軽量化することができ、作動レバーの慣性モーメントを小さくすることができる。また、本発明のデテント脱進機の1つの好ましい構造においては、復帰ばねは、作動レバーの回転中心に対して、止め石支持アームおよび片作動ばね支持アームの反対側に位置するように配置されている。この構成により、作動レバーの慣性モーメントを小さくすることができる。
上記のように構成することにより、作動レバーの重心位置を作動レバー軸(回転中心)の上に配置することができ、あるいは、作動レバーの重心位置を作動レバー軸(回転中心)の付近に配置することができる。作動レバーの重心位置が作動レバー軸に近づくほど、作動レバーの慣性モーメントは小さくなり作動レバーは回転しやすくなる。したがって、この構成により、ムーブメントを縦姿勢にしたときの姿勢の差による作動レバーの原位置復帰を速くすることができ、且つ、縦姿勢にした際の姿勢に差による作動レバーの原位置復帰のタイミング誤差を低減させることが出来る。これによって、姿勢が異なっても、止め石とがんぎ車の歯部の噛み合い量を確保することができる。
従来のデテント脱進機、特にスプリングデテントにおいては、作動レバーが復帰バネ部に対して大きく、いわゆる頭でっかちになり、重心位置が作動レバー回転中心にないことから、がんぎ車の解除の時にも、重力の影響を受け、がんぎ車を解除しやすい姿勢と、がんぎ車を解除しにくい姿勢が生じていた。このため、姿勢の差により、てんぷのエネルギー損失が生じていた。これに対して、本発明のデテント脱進機においては、止め石支持アーム、および、片作動ばね支持アームのバランスをとることにより、作動レバーの重心位置を作動レバー軸(作動レバーの回転中心軸)の付近の位置に配置することができる。これにより、縦姿勢時において、姿勢の差による作動レバーの慣性モーメントの影響を小さくすることができる。
本発明のデテント脱進機の実施形態において、脱進機の構造を示す表平面図である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、脱進機の構造を示す裏平面図である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、脱進機の構造を示す斜視図である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーの構造を示す斜視図(その1)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーの構造を示す斜視図(その2)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーの構造を示す斜視図(その3)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーの構造を示す斜視図(その4)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーの構造を示す斜視図(その5)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーの構造を示す斜視図(その6)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーの構造を示す斜視図(その7)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーの構造を示す平面図(その8)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーの構造を示す平面図(その9)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーの構造、及び、与圧調整機構を持つ復帰ばねの構造を示す平面図(その10)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーの構造、及び、与圧調整機構を持つ復帰ばねの構造を示す平面図(その11)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーの構造を示す平面図(その12)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーの製造工程の一部を説明する原理図(その1)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーの製造工程の一部を説明する原理図(その2)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーを製造する電鋳加工の概略を説明する原理図である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、脱進機の作動状態を示す平面図(その1)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、脱進機の作動状態を示す平面図(その2)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、脱進機の作動状態を示す平面図(その3)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、脱進機の作動状態を示す平面図(その4)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、脱進機の作動状態を示す平面図(その5)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、脱進機の作動状態を示す平面図(その6)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、脱進機の作動状態を示す平面図(その7)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、脱進機の作動状態を示す平面図(その8)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、脱進機の作動状態を示す平面図(その9)であり、(a)は全体平面図であり、(b)は部分拡大平面図である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、脱進機の作動状態を示す平面図(その10)である。 図29(a)は、作動レバーの与圧調整機構の構造を示す平面図であり、図29(b)は、図29(a)の線A−Aにおける断面図である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーの片作動ばね規制レバーとピンの構造を示す斜視図である。 本発明のデテント脱進機を用いた機械式時計の実施形態において、ムーブメントを裏蓋側から見たときの表輪列、脱進機などの概略構造を示す平面図である。 従来のスプリング型デテント脱進機の構造を示す斜視図である。 従来のピボット型デテント脱進機の構造を示す斜視図である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーを作るための第二の製造工程の一部を説明する原理図(その1)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーを作るための第二の製造工程の一部を説明する原理図(その2)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーを作るための第二の製造工程の一部を説明する原理図(その3)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーを作るための第三の製造工程において、基板に作動レバーを形成する工程を説明する原理図である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーを作るための第三の製造工程の一部を説明する原理図(その1)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーを作るための第三の製造工程の一部を説明する原理図(その2)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーを作るための第三の製造工程の一部を説明する原理図(その3)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーを作るための第三の製造工程の一部を説明する原理図(その4)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーを作るための第三の製造工程の一部を説明する原理図(その5)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーを作るための第三の製造工程の一部を説明する原理図(その6)である。 本発明のデテント脱進機の実施形態において、作動レバーを作るための第三の製造工程の一部を説明する原理図(その7)である。
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。ムーブメントに文字板、針を取付けて、時計ケースの中に入れて完成品にした状態を時計の「コンプリート」と称する。時計の基板を構成する地板の両側のうちで、時計ケースのガラスのある方の側、すなわち、文字板のある方の側をムーブメントの「裏側」又は「ガラス側」又は「文字板側」と称する。地板の両側のうちで、時計ケースの裏蓋のある方の側、すなわち、文字板と反対の側をムーブメントの「表側」又は「裏蓋側」と称する。ムーブメントの「表側」に組み込まれる輪列を「表輪列」と称する。ムーブメントの「裏側」に組み込まれる輪列を「裏輪列」と称する。
(1)本発明のデテント脱進機の構成:
図1から図3を参照すると、本発明のデテント脱進機100は、がんぎ車110と、がんぎ車110の歯部112と接触可能な振り石122および外し石124を有するてんぷ120と、がんぎ車110の歯部112と接触可能な接触平面132Bを含む止め石132を有する作動レバー130とを含む。
作動レバー130は、止め石132を支持する止め石支持アーム131と、外し石124と接触可能な部分を含む片作動ばね140と、片作動ばね140の外し石接触部140Gの位置を定めるための片作動ばね支持アーム133と、復帰ばね150を有している。片作動ばね140の一方の端部は作動レバー130に固定され、復帰ばね150の一方の端部は作動レバー130に固定される。或いは、片作動ばね140および復帰ばね150は、作動レバー130と一体に形成される。
作動レバー130は、止め石132が、がんぎ車110に近づく方向と、止め石132が、がんぎ車110から遠ざかる方向の2方向に回転可能なように構成されている。片作動ばね140の支点140Bは、作動レバー130の回転中心130Aに対して解除側にある位置に配置される。片作動ばねの変形ばね部140Dは、止め石支持アーム131と、片作動ばね支持アーム133との間に配置される。片作動ばね140は、その先端部分が、てんぷ120の回転中心120Aと、作動レバー130の回転中心130Aとを結ぶ直線である作動基準直線129を基準としたときに、がんぎ車110がある側と反対側において、てんぷ120の回転中心120Aから遠ざかるにつれて、前記作動基準直線129からの距離が増加するように角度をなして配置されている。
片作動ばねの変形ばね部140Dの外し石接触部140Gに続く部分は、てんぷ120の回転中心120Aと、作動レバー130の回転中心130Aとを結ぶ直線である作動基準直線129に対して、角度DGをなすように構成される。この角度DGは、5度から45度の範囲内にあるのが好ましく、5度から30度の範囲内にあるのが一層好ましい。
従来のピボット型デテント脱進機、および、従来のスプリング型デテント脱進機においては、脱進機の重量が重くなる傾向にあった。また、てんぷが戻るときに、片作動ばねによる抵抗、及び、自由振動を妨げる区間を減少させる脱進機のレイアウトを取ろうとすると、構造上、脱進機の総厚が厚くなる傾向になっていた。また、従来のスプリング型デテント脱進機については、作動レバーが大きいために、いわゆる頭でっかちになり、重心位置が前のめりになる傾向になっていた。
これに対して、本発明のデテント脱進機において、片作動ばね支持アーム133の下面(すなわち、地板側の表面)と、片作動ばね140の下面(すなわち、地板側の表面)は、がんぎ車110の回転中心軸線110A、および、てんぷ120の回転中心軸線に対して垂直な1つの平面内に位置する部分を含むように構成されている。この構成により、薄型のデテント脱進機を実現することができる。
片作動ばね140は、例えば、ニッケル、りん青銅、ステンレス鋼などの弾性材料の板ばねで構成されるのがよい。片作動ばね140は、変形ばね部140Dと、外し石接触部140Gとを含む。片作動ばね140の変形ばね部140Dの横方向厚さの方向(撓みの方向)は、作動レバー130の回転中心軸線130Aに対して垂直な方向であるのが好ましい。片作動ばね140の変形ばね部140Dの横方向厚さTBは、例えば、0.03mmから0.3mmに形成するのがよい。作動レバー130の縦方向厚さTSは、例えば、0.05mmから0.5mmに形成するのがよい。縦方向厚さTSと横方向厚さTBとの比TS/TB(アスペクト比)が1から5程度になるように、片作動ばね140の変形ばね部140Dを構成することができる。
止め石132が、がんぎ車110に近づく方向に作動レバー130を回転させる力を作動レバー130に加えるための復帰ばね150が、作動レバー130に設けられる。例えば、復帰ばね150は、ニッケル、りん青銅、ステンレス鋼、エリンバー、コエリンバーなどの弾性材料の渦巻きばねで構成されるのがよい。或いは、復帰ばね150は、板ばね又は線ばねで構成してもよい。渦巻きばねで構成された復帰ばね150の外周端部は、作動レバー130に固定される。或いは、渦巻きばねで構成された復帰ばね150は、作動レバー130と一体に形成される。
一方、前記特許文献2に開示されているデテント脱進機においては、復帰ばねが存在せず、制止部材6の位置制御を小ローラ23と、第1フィンガ14と、第2フィンガ11で行っている。この従来のデテント脱進機では、復帰ばねを用いる制御と比較すると、てんぷの振り幅(振り角)に対する摺動による、てんぷの自由振動を阻害する区間(角度の範囲)が非常に大きく設定されている。したがって、この構造は、時計の計時精度上、不利であるものと考えられる。
また、従来のデテント脱進機では、構成部品点数が数点にわたる為、デテント脱進機の組立て誤差が生じて、デテント脱進機の完成品の精度ばらつき(重心位置、振り角、歩度などのばらつき)として影響を及ぼすおそれが大きかった。これに対して、本発明においては、デテント脱進機の構成部品点数を削減することができるので、デテント脱進機の完成品の精度を向上させることが可能である。
渦巻きばねで構成された復帰ばね150は、作動レバー130の窓部の中に配置することができる。渦巻きばねで構成された復帰ばね150の内周端部は、復帰ばね調整偏心ピン151に固定される。復帰ばね調整偏心ピン151は、止め石132ががんぎ車110に近づく方向に作動レバー130を回転させる力を作動レバー130に加えることができるような位置に配置される。復帰ばね150は、作動レバー130の回転中心130Aに対して、止め石支持アーム131および片作動ばね支持アーム133の反対側に位置するように配置されるのがよい。
図29を参照すると、復帰ばね150の初期位置を調整するための復帰ばね調整偏心ピン151は、地板170に対して回転可能なように設けられる。復帰ばね調整偏心ピン151は、偏心軸部151Fと、ヘッド部151Hと、固定部151Kとを含む。固定部151Kは地板170の固定孔に回転可能なように挿入される。偏心軸部151Fの偏心量は、例えば、0.1mmから2mm程度に設定することができる。ドライバ溝151Mがヘッド部151Hに設けられる。復帰ばね調整偏心ピン151の偏心軸部151Fを回転させることにより、復帰ばね150の内端部は、固定部151Kの中心軸線を基準として移動することができるように構成される。
図1から図3を参照すると、復帰ばね150は、がんぎ車の回転中心軸線110Aに対して垂直な平面内で、作動レバー130に力を加えるように構成されている。片作動ばね140と、復帰ばね150は、作動レバー130の回転中心130Aに対して対称方向の位置に配置されている。復帰ばね150が作動レバー130に力を加える方向は、作動レバー130の止め石132を設けた部分が、がんぎ車110に近づく方向に回転するような方向となるように構成されている。
従来のピボット型デテント脱進機では、渦巻き型戻しばねの組付け誤差による偏心や、渦巻き型戻しばね単品の偏心の影響から、渦巻き型戻しばねによる作動レバーのバランスを取る調整が難しかった。また、渦巻き型戻しばねの組付け誤差から生じる重心位置のばらつきや、作動レバー全体のバランス(重心位置)を補正するために、作動レバーのバランス調整を考慮した調整式バランサーを設定する必要が発生していた。このため、デテント脱進機が大型化していた。
また、前記特許文献2に開示されている脱進機においては、てんぷが1往復作動する間に(1ヘルツ振動の時計において、てんぷが2振動する間に)、2度の退却が生じている。この退却は、てんぷの慣性力を用いて、本来1つの方向に回転しようとする、がんぎ車を逆転させるものであって、てんぷに与えるストレスが大きいものである。
これに対して、本願発明においては、上記の構成を採用することにより、復帰ばね150が常に作動レバー130に力を加えるので、作動レバー130は、すぐに、図1に示す初期位置に戻ることができる。また、本発明のデテント脱進機においては、クラブツースレバー型脱進機における「引き」の作用に相当する初期位置に戻る力を復帰ばね150により作動レバー130に加えるので、従来のデテント脱進機と比較すると、外乱の影響を受けにくい特徴がある。
がんぎ車110は、がんぎ歯車109と、がんぎかな111とを含む。歯部112は、がんぎ歯車109の外周部に形成される。例えば、図1に示すように、15個の歯部112が、がんぎ歯車109の外周部に形成される。がんぎ車110は、地板170と輪列受(図示せず)に対して回転可能なようにムーブメントに組み込まれる。がんぎかな111の上軸部は、輪列受(図示せず)に対して回転可能なように支持される。がんぎかな111の下軸部は、地板170に対して回転可能なように支持される。
てんぷ120は、てん真114と、てん輪115と、大つば116と、ひげぜんまい(図示せず)とを含む。振り石122は、大つば116に固定される。てんぷ120は、地板170とてんぷ受(図示せず)に対して回転可能なようにムーブメントに組み込まれる。てん真114の上軸部は、てんぷ受(図示せず)に対して回転可能なように支持される。てん真114の下軸部は、地板170に対して回転可能なように支持される。
作動レバー130は、地板170と輪列受(図示せず)に対して回転可能なようにムーブメントに組み込まれる。作動レバー130の回転中心130Aには、作動レバー軸136が固定される。作動レバー軸136の上軸部は、輪列受(図示せず)に対して回転可能なように支持される。作動レバー軸136の下軸部は、地板170に対して回転可能なように支持される。或いは、作動レバー130は、地板170と作動レバー受(図示せず)に対して回転可能なようにムーブメントに組み込むこともできる。この構成では、作動レバー軸136の上軸部は、作動レバー受(図示せず)に対して回転可能なように支持される。作動レバー130の片作動ばね支持アーム133の先端には、ばね受部130Dが設けられる。片作動ばね140の外し石接触部140Gは、ばね受部130Dに接触可能なように配置される。
図1および図30を参照すると、作動レバー130の初期位置を調整するための調整偏心ピン161が地板170に回転可能なように設けられる。調整偏心ピン161は、偏心軸部161Fと、ヘッド部161Hと、固定部161Kとを含む。固定部161Kは地板170の固定孔に回転可能なように挿入される。偏心軸部161Fの偏心量は、例えば、0.1mmから2mm程度に設定することができる。ドライバ溝161Mがヘッド部161Hに設けられる。調整偏心ピン161の偏心軸部161Fは、作動レバー130の止め石支持アーム131の外側面部に接触するように配置される。調整偏心ピン161の偏心軸部161Fを回転させることにより、作動レバー130の初期位置を容易に調整することができる。
図29を参照すると、作動レバー130の初期位置を調整するための調整偏心ピン162を地板170に回転可能なように設けることもできる。調整偏心ピン162は、偏心軸部162Fと、ヘッド部162Hと、固定部162Kとを含む。固定部162Kは地板170の固定孔に回転可能なように挿入される。偏心軸部162Fの偏心量は、例えば、0.1mmから2mm程度に設定することができる。ドライバ溝162Mがヘッド部162Hに設けられる。調整偏心ピン162の偏心軸部162Fは、作動レバー130の片作動ばね支持アーム133の基部の側面に接触するように配置することができる。調整偏心ピン162の偏心軸部162Fを回転させることにより、作動レバー130の初期位置を容易に調整することができる。
図1、図3および図29を参照すると、片作動ばね140の外し石接触部140Gを片作動ばね支持アーム133に押し付けるための片作動ばね規制レバー141が作動レバー130に設けられる。片作動ばね規制レバー141は、規制レバー体142と、規制ピン143とを含む。規制レバー体142は、作動レバー軸136に固定することができる。規制ピン143は規制レバー体142に固定される。規制ピン143の側面部は、片作動ばね140の外し石接触部140Gを片作動ばね支持アーム133に押し付けるように、片作動ばね140の支点に近い部分の側面部に接触するように構成される。
図1を参照すると、変形例として、規制レバー体142B(仮想線で示す)は、作動レバー軸136とは異なる位置において、作動レバー130に固定することができる。規制レバー体142は、鍔付きピンなどによって固定によることもできるし、或いは、止めねじによって固定することもできる。この構成により、片作動ばね規制レバー141により、片作動ばね140を押す力を容易に調整することができる。
(2)作動レバーの構成:
(2・1)第1タイプ:
前述したように、図3を参照すると、第1タイプの作動レバー130の本体部130Hは、止め石支持アーム131と、片作動ばね140と、片作動ばね支持アーム133と、復帰ばね150とを有している。片作動ばね140および復帰ばね150は、作動レバー130と一体に形成される。片作動ばね140の外し石接触部140Gは、てんぷ120の回転中心120Aと、作動レバー130の回転中心130とを結ぶ直線である作動基準直線129に対して角度DGが5度から45度の範囲内にあるように形成される。片作動ばね支持アーム133の下面(すなわち、地板側の表面)と、片作動ばね140の下面(すなわち、地板側の表面)は、1つの平面内に位置するように構成される。片作動ばね140は、片作動ばね支持アーム133よりも作動基準直線129に近い位置に配置される。
止め石支持アーム131は、作動基準直線129からみて凸になるような1以上の曲線部を含む形状に形成される。片作動ばね支持アーム133は、作動基準直線129からみて凸になるような1以上の曲線部を含む形状に形成される。すなわち、止め石支持アームを片作動ばね支持アームの反対側に湾曲させるように構成している。片作動ばね140は、作動基準直線129からみて凸になるような1以上の曲線部を含む形状に形成される。
渦巻きばねで構成された復帰ばね150の外周端部は、作動レバー130に固定される。復帰ばね150は、止め石支持アーム131の基部と、片作動ばね支持アーム133の基部が一体となる部分に設けられた窓部の中に形成される。すなわち、復帰ばねは、作動レバーの回転中心に対して、止め石支持アームおよび片作動ばね支持アームの反対側に位置するように配置されている。
止め石支持アーム131の厚さと、片作動ばね140の厚さと、片作動ばね支持アーム133の厚さと、復帰ばね150の厚さは、全て同じ厚さとなるように作動レバー130は形成されるのがよい。止め石支持アーム131を構成する材料と、片作動ばね140を構成する材料と、片作動ばね支持アーム133を構成する材料と、復帰ばね150を構成する材料は、全て同じ材料となるように作動レバー130は形成されるのがよい。
従来のデテント脱進機においては、作動レバーの重心位置が作動レバーの支点にないことにより、作動レバーの慣性モーメントの増加を引き起こし、渦巻き型戻しばねの原位置復帰を遅らせる原因になる課題(問題点)があった。また、作動レバーの重心位置が作動レバーの支点にないことにより、デテント脱進機を縦姿勢にしたときに、重力の影響を受け、姿勢の違いで作動レバーの解除と渦巻き型戻しばねの原位置復帰の動作に差を生じさせていた。このため、特に縦姿勢の時に脱進機誤差に差が生じ、歩度の差(姿勢差)が大きくなる課題があった。
これに対して、本願発明においては、上記の構成を採用することにより、作動レバー130の重心位置を作動レバー130の支点に近づけることができ、また、作動レバー130の慣性モーメントを小さくすることができる。
なお、片作動ばね支持アーム133は、その先端部分が、作動基準直線のがんぎ車110のある側とは反対側において、てんぷの回転中心から遠ざかるにつれて作動基準直線からの距離が増加するように角度を成して構成されていればよく、片作動ばね支持アーム133の全体の形状はどのように形成されていても構わないが、上述したように曲線部を有していた方が望ましい。このように片作動ばね支持アーム133が曲線部を備えることにより、片作動ばね支持アーム133と止め石支持アーム131の干渉を確実に避けることができ、片作動ばね支持アーム133の先端部分から片作動ばねの支点までの距離を最短にすることができるとともに、作動レバー130の慣性モーメントを低減させることができる。
また、片作動ばね支持アーム133は、先端部分から根元部分に向うにつれて断面積が大きくなるように構成されるのが望ましい。これにより、片作動ばね支持アーム133は、先端部分が先細りであり、その重量が根元部分に比べて少ないため、片作動ばね支持アーム133の慣性モーメントを低減させることができる。また、片作動ばね支持アーム133の根元部分に応力が集中しても、片作動ばね支持アーム133の先端部よりも太く根元部分が形成されているため、片作動ばね支持アームの根元部分の破損を防ぐことができる。
(2・2)第2タイプ:
図4を参照すると、第2タイプの作動レバー130Bの本体部130HBは、止め石支持アーム131Bと、片作動ばね140と、片作動ばね支持アーム133と、復帰ばね150とを有している。止め石支持アーム131Bの厚さは、片作動ばね140の厚さよりも厚くなるように構成される。第2タイプの作動レバー130Bにおいて、他の構成は、前述した第1タイプの作動レバー130と同様である。この構成により、作動レバーの重心の位置を作動基準直線129上に配置するか、或いは、作動レバーの重心の位置を作動基準直線129の近くに配置することができる。
(2・3)第3タイプ:
図5を参照すると、第3タイプの作動レバー130Cの本体部130HCは、止め石支持アーム131と、片作動ばね140と、片作動ばね支持アーム133Cと、復帰ばね150とを有している。片作動ばね支持アーム133Cの一部は肉抜きされている。図示した例では、4箇所の肉抜き部133C1〜133C4が、片作動ばね支持アーム133Cに設けられている。片作動ばね支持アーム133Cに肉抜き部を設ける個数は、1個であってもよいし、複数であってもよい。第3タイプの作動レバー130Cにおいて、他の構成は、前述した第1タイプの作動レバー130と同様である。この構成により、作動レバーの重心の位置を作動基準直線129上に配置するか、或いは、作動レバーの重心の位置を作動基準直線129の近くに配置することができる。この構成により、作動レバーを軽量化することができ、作動レバーの慣性モーメントを小さくすることができる。
(2・4)第4タイプ:
図6を参照すると、第4タイプの作動レバー130Dの本体部130HDは、止め石支持アーム131Dと、片作動ばね140と、片作動ばね支持アーム133Dと、復帰ばね150とを有している。止め石支持アーム131Dの一部は肉抜きされ、かつ、片作動ばね支持アーム133Dの一部は肉抜きされている。図示した例では、3箇所の肉抜き部131D1〜131D3が止め石支持アーム131Bに設けられ、4箇所の肉抜き部133D1〜133D4が片作動ばね支持アーム133Dに設けられている。止め石支持アーム131Bに肉抜き部を設ける個数は、1個であってもよいし、複数であってもよい。片作動ばね支持アーム133Dに肉抜き部を設ける個数は、1個であってもよいし、複数であってもよい。第4タイプの作動レバー130Dにおいて、他の構成は、前述した第1タイプの作動レバー130と同様である。肉抜き部を設ける個数と肉抜き部を設ける位置を選定することにより、作動レバーの重心の位置を作動基準直線129上に配置するか、或いは、作動レバーの重心の位置を作動基準直線129の近くに配置することができる。この構成により、作動レバーを軽量化することができ、作動レバーの慣性モーメントを小さくすることができる。上述したように、本発明のデテント脱進機の好ましい構造においては、止め石支持アームの一部、および、片作動ばね支持アームの一部のうちの少なくとも一方を肉抜きするように構成することができる。
(2・5)第5タイプ:
図7を参照すると、第5タイプの作動レバー130Eの本体部130HEは、止め石支持アーム131Eと、片作動ばね140と、片作動ばね支持アーム133と、復帰ばね150とを有している。止め石132Eが止め石支持アーム131Eと一体に形成されている。この構成により、作動レバーと止め石の製造工程を削減することができる。
(2・6)第6タイプ:
図8を参照すると、第6タイプの作動レバー130Fの本体部130HFは、止め石支持アーム131Fと、片作動ばね140と、片作動ばね支持アーム133と、復帰ばね150とを有している。止め石支持アーム131Fの横幅は、片作動ばね140の横幅よりも大きくなるように構成される。第6タイプの作動レバー130Fにおいて、他の構成は、前述した第1タイプの作動レバー130と同様である。この構成により、作動レバーの重心の位置を作動基準直線129上に配置するか、或いは、作動レバーの重心の位置を作動基準直線129の近くに配置することができる。
(2・7)第7タイプ:
図9を参照すると、第7タイプの作動レバー130F2の本体部130HFは、止め石支持アーム131F2と、片作動ばね140と、片作動ばね支持アーム133と、復帰ばね150とを有している。止め石支持アーム131F2には、2個の幅広部131F3、131F4が形成されている。幅広部131F3、131F4の横幅は、片作動ばね140の横幅よりも大きくなるように構成される。幅広部を設ける数は1個であってもよいし、又は、複数であってもよい。第7タイプの作動レバー130F2において、他の構成は、前述した第1タイプの作動レバー130と同様である。この構成により、作動レバーの重心の位置を作動基準直線129上に配置するか、或いは、作動レバーの重心の位置を作動基準直線129の近くに配置することができる。
(2・8)第8タイプ:
図10を参照すると、第8タイプの作動レバー130Gの本体部130HGは、止め石支持アーム131と、片作動ばね140Gと、片作動ばね支持アーム133Gと、復帰ばね150とを有している。片作動ばね140Gは、直線状になるように構成される。片作動ばね支持アーム133Gは、直線状になるように構成される。第8タイプの作動レバー130Gにおいて、他の構成は、前述した第1タイプの作動レバー130と同様である。この構成により、片作動ばね140Gの撓み特性を安定させることができる。
(2・9)第9タイプ:
図11を参照すると、第9タイプの作動レバー130Jの本体部130HJは、止め石支持アーム131と、片作動ばね支持アーム133とを有している。本体部130HJと別個に形成された片作動ばね140は、その一方の端部が本体部130HJのスリットの中にレーザ溶接などの溶接加工により固定される。本体部130HJと別個に形成された復帰ばね150Jは、その一方の外端部が本体部130HJの上面にレーザ溶接などの溶接加工により固定される。第9タイプの作動レバー130Gにおいて、他の構成は、前述した第1タイプの作動レバー130と同様である。この構成により、本体部130HJを形成する材料の撓み特性よりも撓み特性が良い材料で片作動ばね140を形成することができる。また、この構成により、本体部130HJを形成する材料の撓み特性よりも撓み特性が良い材料で復帰ばね150Jを形成することができる。
(2・10)第10タイプ:
図12を参照すると、第10タイプの作動レバー130Kの本体部130HKは、止め石支持アーム131Kと、片作動ばね支持アーム133Kとを有している。本体部130HKと別個に形成された片作動ばね140Kは、その一方の端部が本体部130HKのスリットの中に、かしめ加工により固定される。本体部130HKと別個に形成された復帰ばね150Kは、その一方の外端部が本体部130HKのスリットの中に、かしめ加工により固定される。第10タイプの作動レバー130Kにおいて、他の構成は、前述した第1タイプの作動レバー130と同様である。この構成により、本体部130HKを形成する材料の撓み特性よりも撓み特性が良い材料で片作動ばね140Kを形成することができる。また、この構成により、本体部130HKを形成する材料の撓み特性よりも撓み特性が良い材料で復帰ばね150Kを形成することができる。
(2・11)第11タイプ:
図13を参照すると、第11タイプの作動レバー130Mの本体部130HMは、止め石支持アーム131と、片作動ばね支持アーム133と、片作動ばね140とを有している。本体部130HMと別個に形成された復帰ばね150Mは、その変形ばね部の先端部付近が本体部130HMを押すように配置される。復帰ばね150Mは、地板170に固定される。第11タイプの作動レバー130Mにおいて、他の構成は、前述した第1タイプの作動レバー130と同様である。この構成により、本体部130HKを形成する材料の撓み特性よりも撓み特性が良い材料で復帰ばね150Kを形成することができる。
(2・12)第12タイプ:
図14を参照すると、第12タイプの作動レバー130Nは、本体部130HNと、止め石支持アーム131と、片作動ばね支持アーム133Nとを有している。片作動ばね支持アーム133Nは、本体部130HNおよび止め石支持アーム131とは別個に形成される。本体部130HNと別個に形成された片作動ばね140Nは、その一方の端部が本体部130HNと、片作動ばね支持アーム133Nとの間に配置され、2本の横ねじ145N1、145N2により、本体部130HNと片作動ばね支持アーム133Nに対して固定される。本体部130HNと別個に形成された復帰ばね150Nは、その変形ばね部の先端部付近が本体部130HNを押すように配置される。復帰ばね150Nは、地板170に固定される。第12タイプの作動レバー130Nにおいて、他の構成は、前述した第1タイプの作動レバー130と同様である。この構成により、本体部130HNを形成する材料の撓み特性よりも撓み特性が良い材料で片作動ばね140Nを形成することができる。また、この構成により、本体部130HNを形成する材料の撓み特性よりも撓み特性が良い材料で復帰ばね150Nを形成することができる。
(2・13)第13タイプ:
図15を参照すると、第13タイプの作動レバー130Pは、本体部130HPと、止め石支持アーム131Pと、片作動ばね支持アーム133Pとを有している。止め石支持アーム131Pは、本体部130HPとは別個に形成される。片作動ばね支持アーム133Nは、本体部130HPとは別個に形成される。本体部130HNと別個に形成された片作動ばね140Pは、その一方の端部が本体部130HPと、片作動ばね支持アーム133Pとの間に配置され、2本の横ねじ145P1、145P2により、本体部130HPと片作動ばね支持アーム133Pに対して固定される。本体部130HNと別個に形成された復帰ばね150Nは、その変形ばね部の先端部付近が、本体部130HPと、止め石支持アーム131Pとの間に配置され、2本の横ねじ145P3、145P4により、本体部130HPと止め石支持アーム131Pに対して固定される。復帰ばね150Pのその変形ばね部の元部は、地板170に固定される。第13タイプの作動レバー130Pにおいて、他の構成は、前述した第1タイプの作動レバー130と同様である。この構成により、本体部130HPを形成する材料の撓み特性よりも撓み特性が良い材料で片作動ばね140Pを形成することができる。また、この構成により、本体部130HPを形成する材料の撓み特性よりも撓み特性が良い材料で復帰ばね150Pを形成することができる。
(3)作動レバーの製造方法:
次に、作動レバーを製造する方法の一例について説明する。
(3・1)作動レバーを作るための第一の製造工程:
図16(a)を参照すると、電鋳部品の製造のために用いる基板420を準備する(工程401)。基板420を構成する材料は、シリコン、ガラス、プラスチックなどである。エッチングの加工精度を考えると、シリコンが適している。基板420の大きさは、例えば、2インチ(約50mm)から8インチ(約200mm)の範囲の半導体製造に用いられる標準寸法であるのが好ましい。基板420の厚さは、基板420の大きさによって異なるが、例えば4インチシリコン基板の場合、300μmから625μmの厚さのものが用いられる。
図16(b)を参照すると、基板420の表面にフォトレジストをコートし、コートしたフォトレジストに必要形状を露光し、現像してマスク422をパターニングする(工程402)。マスク422は、フォトレジスト、SiO2 などの他の酸化膜、アルムニウム、クロムなどの金属膜で形成することができる。フォトレジスト以外の材料で構成したマスクを用いる場合、フォトレジストをマスクとして、フォトレジスト以外の材料をエッチングすることによりマスクを形成することができる。マスク422の厚さは、基板420とマスク422のエッチング時の選択比とエッチング深さによって決定される。例えば、基板420とマスク422の選択比が100対1のとき、基板420のエッチング深さ100μmに対する必要なマスク422の厚さは1μm以上である。好ましくは1.5μmから10μmの範囲とする。
図16(c)を参照すると、マスク422を有する基板420をDRIE(Deep RIE)によりエッチングし、基板420にエッチング穴420hを形成する(工程403)。
図16(d)を参照すると、基板420の表面からマスク422をリムーブする(工程404)。或いは、マスク422をリムーブしないで、マスク422の上に金属薄膜を形成し、電鋳加工のための表面導体化を行うこともできる。マスク422の上に形成する金属薄膜は、例えば、金、銀、銅、ニッケルなどで構成することができる。このような方法では、マスク422を構成する材料を選択することによって、電鋳部品を基板420の表面から取り外すときの犠牲層として用いることも可能である。このような犠牲層として用いることができる材料として、例えばフォトレジストに代表される樹脂材料が挙げられる。フォトレジストは有機溶媒、発煙硝酸等によって容易に除去することが可能である。
図16(e)を参照すると、基板420の表面と、エッチング穴420hの底面に、金、銀、銅、ニッケルなどの金属の導電膜424を付着させて、基板420の表面の導体化を行う(工程405)。金属の導電膜424の付着は、スパッタリング、蒸着、無電解めっきなどの方法により行うことができる。金属の導電膜424の膜厚は、数nm(不連続膜)から数μmの範囲であるのが好ましい。
図17(a)を参照すると、軸部品426を準備する。本発明の作動レバーにおいて、軸部品は、作動レバー軸136と、復帰ばね調整偏心ピン151である。軸部品426を構成する材料は、ガラス、セラミック、プラスチックなどの非導電性の材料を用いることができる。軸部品426をアルミニウムで構成する場合、軸部品426にアルマイト処理を行うのがよい。軸部品426を炭素鋼、ステンレス鋼などの金属で構成する場合、軸部品426に酸化膜を付加するのがよい。付加する酸化膜として、軸部品426を構成する金属の陽極酸化膜、SiO2などがあげられる。或いは、軸部品426を金属で構成する場合、軸部品426にテフロン(登録商標)などの合成樹脂をコーティングしてもよい。コーティングする材料は、前記テフロン(登録商標)のほか、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミドなどの非導電性樹脂があげられる。或いは、軸部品426を金属で構成する場合、軸部品426の電鋳金属を析出させない部分にレジストを付着させ、電鋳加工が終わったのち、レジストを剥離してもよい。
軸部品426は上軸部426aと、下軸部426bと、上軸部426aと下軸部426bとの間に位置するフランジ部426fとを含む。軸部品426の下軸部426bの先端を含む下軸部の部分を基板420のエッチング穴420hに挿入する(工程406)。この状態で、軸部品426のフランジ部426fの下面は、導電膜424から離れて配置されるのがよい。エッチング穴420hの内径は、下軸部426bを受け入れることができるように決められている。本発明の方法により、軸部品426をばらばらになっている本体部品に挿入するよりも作業を容易に行うことができる。また、本発明の方法では、軸部品426の下軸部426bを挿入すべき基板420のエッチング穴420hの位置が予め定められているので、軸部品426を挿入する工程を自動化するのが可能になる。さらに、本発明の方法では、例えば、外径が4インチ(約100mm)から8インチ(約200mm)であるような大きなウェハに軸部品426を挿入するので、軸部品426を挿入すべき部品の機械的強度が大きく、この部品が破損するおそれはほとんどない。
図17(b)を参照すると、基板420に厚膜レジストを堆積させ、堆積した厚膜レジストに必要形状を露光し、現像して外形形成用レジスト428をパターニングする(工程407)。外形形成用レジスト428の厚さは、電鋳加工すべき部品の本体の厚さより厚くなるように設定する。外形形成用レジスト428の厚さは、軸部品426のフランジ部426fの上面より厚くなるように形成されるのがよい。外形形成用レジスト428の厚さは、電鋳加工すべき部品の本体の厚さによって異なるけれども、100μmから数mmの範囲であるのが好ましい。本発明の方法では、前記工程406を行った後に前記工程407を行ってもよいし、或いは、これらの工程を行う順番を逆にして、前記工程407を行った後に前記工程406を行ってもよい。
図17(c)を参照すると、軸部品426を挿入した基板420に電鋳加工を行い、外形形成用レジスト428と軸部品426との間に電鋳金属部430を形成する(工程408)。
機械部品を形成する場合において、電鋳金属部430を形成する電鋳金属は、例えば、レバーなどの構造物に使用する場合、摺動性を考慮し、硬度が高いクロム、ニッケル、鉄、および、これらを含む合金で構成することができる。また、構造物の内面を硬度が高いクロム、ニッケル、鉄、およびこれらを含む合金で構成し、構造物の表面を硬度が低い錫、亜鉛、およびこれらを含む合金などで構成するように、特性が異なる二種以上の金属又は合金で電鋳金属部430を構成することができる。また、電鋳金属部430は、構造物の表面と内面で金属の組成が異なる合金などで構成することができる。
軸部品426のフランジ部426fは、電鋳金属部430の中に配置されるのがよい。フランジ部426fを電鋳金属部430の中に配置することにより、軸部品426と電鋳金属部430との間の接触面積を増やすことができ、軸部品426が電鋳金属部430から抜けるのを阻止するだけでなく、軸部品426が電鋳金属部430に対して回転するのを効果的に阻止することができる。すなわち、フランジ部426fは、軸部品426と一体に形成される電鋳金属部430の中に位置するように構成された、軸部品426の抜け、軸部品426の回転などを阻止するための輪郭形状を構成している。
次に、図18を参照して、電鋳加工の具体的な方法を説明する。図18(a)を参照すると、電鋳すべき金属材料により電鋳液を選ぶ必要があり、例えば、ニッケル電鋳加工ではスルファミン酸浴、ワット浴、硫酸浴などが用いられる。スルファミン酸浴を用いてニッケル電鋳を行う場合は、電鋳加工用の処理槽740の中にスルファミン酸ニッケル水和塩を主成分とするスルファミン酸浴電鋳液742を入れる。電鋳すべき金属材料からなる陽極電極744をスルファミン酸浴742の中に浸漬させる。例えば、陽極電極744は、電鋳すべき金属材料からなるボールを複数用意し、この金属ボールをチタン等で作った金属製のかごの中に入れることにより構成することができる。電鋳加工を行うべき電鋳型748をスルファミン酸浴742の中に浸漬させる。
図18(b)を参照すると、電鋳型748を電源760の陰極に接続し、陽極電極744を電源760の陽極に接続すると、陽極電極744を構成する金属がイオン化してスルファミン酸浴中を移動し、電鋳型748の型キャビティ748f上に金属として析出する。配管(図示せず)を介して弁(図示せず)を処理槽740に接続することができる。濾過用フィルタを配管に設け、処理槽740から排出されるスルファミン酸浴を濾過することができる。濾過されたスルファミン酸浴は、注入用配管(図示せず)から処理槽740の中に戻すことができる。
図17(d)を参照すると、基板420から外形形成用レジスト428をリムーブし、電鋳部品432を取り外す(工程409)。電鋳部品432は、軸部品426と、軸部品426に一体化された電鋳金属部430とを含む。軸部品426のフランジ部426fが電鋳金属部430の中に配置されるので、軸部品426が電鋳金属部430から分離するおそれがない。
なお、変形例として、作動レバーの本体部(止め石支持アーム、片作動ばね、片作動ばね支持アーム、復帰ばね)のみを電鋳加工により製造し、その後に、後工程として軸部品(作動レバー軸、および、復帰ばね調整偏心ピン)を固定することもできる。この方法を用いると、電鋳加工の工程を簡略化することが可能になる。
上記の電鋳部品の製造方法を用いると、電鋳加工により作製した電鋳金属部に他部品を打ち込む必要がなく、或いは、電鋳金属部に他部品を接着などにより取付ける必要がない。したがって、上記の電鋳部品の製造方法を用いることにより、金属部品と金属部品(軸など)を一体電鋳成形することができるし、また、金属部品と非導電性の部品(軸など)を一体電鋳成形することができる。すなわち、上記の電鋳部品の製造方法の製造方法を用いることにより、金属部品と金属部品、或いは、金属部品と非導電性の部品が一体電鋳成形されるので、後付け工程を用意することなしに、複数部品からなる機械部品を形成することができる。さらに、電鋳の加工条件を調整することにより、電鋳部品に生じる内部応力を調整することができ、非導電性の部品の取付け圧力をコントロールし、電鋳部品を破損させることなく強固に非導電性の部品を電鋳金属部に固定することができる。
さらに、電鋳金属部に固定すべき部品の固定部に、半径方向に凹凸する種々の輪郭形状を設けることができる。このような半径方向に凹凸する輪郭形状として、例えば、フランジ部、波状部、雄ねじ部、ローレット部、丸カット部、溝部などを挙げることができる。このような電鋳金属部に固定すべき部品に設けられた半径方向に凹凸する輪郭形状を、それぞれ、1つ、或いは、複数個、或いは、前記輪郭形状の何種類かを組み合わせて複数個、電鋳金属部に固定すべき部品の固定部に設けることにより、電鋳金属部に固定すべき部品が電鋳金属部から外れたり、電鋳金属部から抜けたり、電鋳金属部に対して滑ったりするのを確実かつ効果的に防止することができる。すなわち、半径方向に凹凸する輪郭形状を電鋳金属部の中に配置することにより、電鋳金属部に固定すべき部品と電鋳金属部との間の接触面積を増やすことができ、電鋳金属部に固定すべき部品が電鋳金属部から抜けるのを阻止するだけでなく、電鋳金属部に固定すべき部品が電鋳金属部に対して回転するのを効果的に阻止することができる。すなわち、電鋳金属部に固定すべき部品に設けられた半径方向に凹凸する輪郭形状は、電鋳金属部に固定すべき部品と一体に形成される電鋳金属部の中に位置するように構成された、電鋳金属部に固定すべき部品の抜け、電鋳金属部に固定すべき部品の回転などを阻止するための輪郭形状を構成している。
(3・2)作動レバーを作るための第二の製造工程:
本発明のデテント脱進機の実施形態において、止め石132は、作動レバー130と一体に形成することができる。以下に説明する第二の製造工程によって、止め石132は作動レバー130と一体に電鋳加工により形成することができる。
図34(a)を参照すると、電鋳部品の製造のために用いる基板501を準備する。基板501を構成する材料は、シリコン、ガラス、プラスチック、ステンレス鋼、アルミニウムなどである。基板501の大きさは、例えば、2インチ(約50mm)から8インチ(約200mm)である。基板501の厚さは、例えば、4インチシリコン基板の場合、300μmから625μmの厚さのものが用いられる。
基板501の表面に導電層502を堆積させ、導電層502の上にフォトレジスト503を堆積させる。導電層502の厚さは、数10nmから数μmの範囲であるのが好ましい。フォトレジスト503の厚さは、数μmから数mmの範囲である。フォトレジスト503の厚さは、作製する電鋳部品の1段目(すなわち、電鋳型511の1段目)の厚さとほぼ等しいのが好ましい。フォトマスク(図示せず)を用いて不溶部503aと、可溶部503bを形成する。導電層502を構成する材料は、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)などである。フォトレジスト503は、ネガ型であってもよいし、或いは、ポジ型であってもよい。フォトレジスト503は、エポキシ系の樹脂をベースとする化学増幅型のフォトレジストを用いるのが好ましい。
導電層502は、スパッタリング法で形成することもできるし、真空蒸着法で形成することもできる。フォトレジスト503を堆積させる方法は、スピンコートであってもよいし、ディップコートであってもよいし、スプレーコートであってもよいし、或いは、複数のシート状のフォトレジストフィルムを重ね合わせて形成してもよい。不溶部503aと、可溶部503bを形成するために、フォトマスク(図示せず)を通して紫外光を露光する。フォトレジスト503が化学増幅型であるときは、紫外光を露光した後、PEB(Post Exposure Bake)を行う。
図34(b)を参照すると、次に、フォトレジスト503の現像を行わずに、金属層505を堆積させる。金属層505の厚さは、数nmから数μmの範囲であるのが好ましい。フォトレジスト503がポジ型であり、電鋳型511の2段目以降の工程で不溶部503aに露光光が照射されるパターンの場合、金属層505の厚さは、数10nm以上であり、露光光が不溶部503aに照射さらない遮光性を有していればよい。金属層505の材料は、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)などである。金属層505を堆積させる方法は、スパッタリング法や真空蒸着法などの気相堆積法であってもよいし、或いは、無電解めっきなどのウエット法を用いてもよい。
図34(c)を参照すると、次に、金属層505の上にフォトレジスト506を堆積させ、不溶部506aと、可溶部506bを形成する。フォトレジスト506の厚さは、数μmから数mmの範囲であり、作製する電鋳部品の2段目(すなわち、電鋳型511の2段目)の厚さとほぼ等しいのが好ましい。フォトレジスト506は、ネガ型であってもよいし、或いは、ポジ型であってもよい。フォトレジスト506は、エポキシ系の樹脂をベースとする化学増幅型のフォトレジストを用いるのが好ましい。フォトレジスト506は、フォトレジスト503と同じものであってもよいし、フォトレジスト503と異なるものであってもよい。フォトレジスト506を堆積させる方法は、スピンコートであってもよいし、ディップコートであってもよいし、スプレーコートであってもよいし、或いは、複数のシート状のフォトレジストフィルムを重ね合わせて形成してもよい。不溶部506aと、可溶部506bを形成するために、フォトマスク(図示せず)を通して紫外光を露光する。フォトレジスト506が化学増幅型であるときは、紫外光を露光した後、PEB(Post Exposure Bake)を行う。
図34(c)を参照すると、次に、基板501を現像液の中に浸漬させて、フォトレジスト503およびフォトレジスト506を現像する。このとき、可溶部503b上の電極505は、リフトオフ加工によって除去され、不溶部503a上の電極505aが残り、電鋳型511を得ることができる。可溶部503b、可溶部506b、および、不要な電極505を除去するために、超音波振動を与えながら現像を行ってもよい。
図35を参照すると、電鋳液522が電鋳槽に満たされる。電鋳型511と電極523が電鋳液522の中に浸漬される。ニッケルを析出させる場合、電鋳液522としてスルファミン酸ニッケル水和塩を含む水溶液を使用する。ニッケルを析出させる場合、電極523の材料はニッケルである。電鋳型511の導電層502は、電源525に接続される。電源525の電圧によって、導電層502を通して電子が供給され、導電層502から金属が析出される。析出された金属は、基板501の厚さ方向に成長する。
図36(a)を参照すると、電鋳物530aが導電層502から析出される。このとき、電流は電極505aに流れないので、電鋳物530aは電極505a上に析出しない。
図36(b)を参照すると、電流は電極505aに流れないので、電鋳物530aは電極505a上に析出しない。電極505aと電鋳物530aが接触すると、電極505aに電流が流れて、電鋳物530aが電極505a上に析出する。
図36(c)を参照すると、所望の厚さまで電鋳物530aを電極505a上に析出させた後、研磨工程によって電鋳物530aの厚さを揃える。電鋳工程において、電鋳物530aの厚さを制御することが可能であるときは、研磨工程を行わなくてもよい。
図36(d)を参照すると、電鋳物530aを電鋳型511から取り出して電鋳部品530を得る。電鋳物530aを電鋳型511から取り出す工程は、不溶部503a、不溶部506aを有機溶剤で溶かすことによって行うこともできるし、或いは、基板501から分離する力を電鋳物530aに加えて、電鋳物530aを基板501から物理的に引き剥がすこともできる。導電層502および電極505aが電鋳物530aに付着しているときは、ウエットエッチングや研磨などにより、導電層502および電極505aを電鋳物530aから除去することができる。
以上説明した工程を適用することにより、電鋳型511の1段目に止め石132を形成し、電鋳型511の2段目に作動レバー130を形成することができる。すなわち、電鋳型511の1段目に止め石132を形成し、かつ、止め石支持アーム131と、片作動ばね140と、片作動ばね支持アーム133と、復帰ばね150とを電鋳型511の2段目に一体に形成することができる。或いは、電鋳型511の1段目に止め石132を形成し、かつ、止め石支持アーム131と、片作動ばね140と、片作動ばね支持アーム133とを電鋳型511の2段目に一体に形成することができる。以上説明した工程により、アスペクト比が1から5である片作動ばね140を作動レバー130に一体に形成することができる。
なお、上述した同様の製造方法により、止め石支持アーム131と、片作動ばね140と、片作動ばね支持アーム133と、復帰ばね150との少なくとも2つが同時に形成されていればよく、それらの全てが同時に形成されていなくてもよい。
(3・3)作動レバーを作るための第三の製造工程(ボッシュプロセス):
以下に説明する第三の製造工程によって、止め石支持アーム131と、片作動ばね140と、片作動ばね支持アーム133と、復帰ばね150との少なくとも2つを同時に形成することができる。図37を参照すると、第三の製造工程によって、基板620を用いて作動レバー630を形成することができる。
図37および図38を参照すると、片作動ばね640と、片作動ばね支持アーム633とのパターンが形成されたフォトマスク(図示せず)を用いて、フォトレジスト611に紫外線やX線等の露光光を照射し、片作動ばね640と、片作動ばね支持アーム633とにあたる部分のフォトレジスト611を硬化させる。そして、未硬化のフォトレジスト611の部分を除去し、エッチングパターンが完成する。
図38では、図37の線Z−Zに示す断面の部分において、片作動ばね640と、片作動ばね支持アーム633とに対応した位置のフォトレジスト611を2箇所表示している。本実施形態では、活性層610bに谷部615を連続形成しながらエッチングすることにより、片作動ばね640と、片作動ばね支持アーム633と形成する。以下、図39から図44を参照して、第三の製造工程を詳細に説明する。
図39は、一回目のSiエッチング工程を説明する図である。一回のSiエッチング工程で削るSiの厚みはT1とする。ここで、隣接するフォトレジスト611間には凹部614が形成される。また、フォトレジスト611の無い、Si面の露出している部分がエッチングされるが、等方性エッチングを行うことで、フォトレジスト611の下にある活性層610bの側面617も部分的にエッチングされ、谷部615が形成される。エッチングする厚みT1を制御することで、片作動ばね640と、片作動ばね支持アーム633とに対応する側面617の谷部615の半径R1を任意の大きさにできる。このようにして、一回の等方性エッチングにより一つの山部626mに相当する一つの谷部615が形成される。
図40は、保護膜を形成した図である。二回目のエッチングでフォトレジスト611の下にある活性層610bが図39の状態以上に削られないよう、一回目のエッチング面(凹部614)に保護膜619を形成する。保護膜619は、例えば、フッ化炭素などで形成されている。保護膜619は、C48ガスなどを用いてCVD法によりSiの表面に膜を形成する。
図41は、凹部614の底面621の保護膜619のみを除去した図である。凹部614の側面(側面617)の保護膜619を残し、底面621の保護膜619のみを除去して活性層610b(Si面)を露出させる。このように底面621の保護膜619のみを除去するには、例えば、SF6ガスを用いてエッチングを行うと、イオンが底面621の保護膜619に対して鉛直方向から衝突し、そのイオン衝撃により底面621の保護膜619のみが除去される。
図42は、二回目のSiエッチング工程を説明する図である。図39と同様に、Siの等方性エッチングを行う。すると、保護膜619が形成されていない底面621のSiが等方エッチングされる。この後、図40に示す工程から図42に示す工程を所定の回数行う。
図43は、Siエッチング、保護膜形成、底面の保護膜除去をBOX層(SiO2面)610cに到達するまで繰り返し行った図である。図39に示すSiエッチング工程、図40に示す保護膜形成工程、図41に示す保護膜除去工程を、基板610のBOX層610cに達するまで繰り返し行う。
図44は、保護膜619を全て除去した図である。保護膜619は、酸素プラズマアッシングによって除去する。活性層610bの側面617に形成された保護膜619を除去する。この保護膜619が除去された部分は、片作動ばね640と、片作動ばね支持アーム633とに対応する。
以上説明したように、第三の製造工程によって、片作動ばね640と、片作動ばね支持アーム633とを同時に形成することができる。すなわち、上記の第三の製造工程を適用することによって、デテント脱進機の構成部品である作動レバーを高い精度で効率的に製造することができる。
(3・4)作動レバーを作るための第四の製造工程(クライオプロセス):
以下に説明する第四の製造工程によって、止め石支持アーム631と、片作動ばね640と、片作動ばね支持アーム633と、復帰ばね650との少なくとも2つを同時に形成することができる。
具体的には、先ず、上述した図38に示すように、チャンバー内において、片作動ばね640と、片作動ばね支持アーム633とに対応した位置のフォトレジスト611を形成する。そして、チャンバー内を極低温(例えば、−193度)に設定した状態で、SF6ガスとO2とからなるエッチングガスをフォトレジスト611に照射する。
これにより、フォトレジスト611で覆われていない活性層610bの部分が直線状にエッチングされることになる(図示せず)。すなわち、上述した第三の製造工程では、活性層610bにおけるエッチング部分の側面において谷部615が連続して波状に形成されることになるが、第四の製造工程では、活性層610bにおけるエッチング部分の側面が直線状に形成される。上記の第四の製造工程を適用することによって、デテント脱進機の構成部品である作動レバーを高い精度で効率的に製造することができる。
(4)本発明のデテント脱進機の作動:
(4・1)作動その1:
図19を参照すると、てんぷ120が自由振動することにより、大つば116が矢印A1の方向(反時計回り方向)に回転する。
(4・2)作動その2:
図20を参照すると、大つば116に固定された外し石124が矢印A1の方向(反時計回り方向)に回転して、片作動ばね140の外し石接触部140Gに接触する。
(4・3)作動その3:
図21を参照すると、外し石124が矢印A1の方向(反時計回り方向)に回転し、片作動ばね140が、外し石124に押されて、ばね受突起部130Dを押す。すると、作動レバー130は、矢印A2の方向(時計回り方向)に回転する。がんぎ車110の歯部112の先端部は、止め石132の接触平面132Bの上を摺動する。
(4・4)作動その4:
図22を参照すると、作動レバー130が矢印A2の方向(時計回り方向)に回転する作動に伴い、作動レバー130の止め石支持アーム131は調整偏心ピン161から離れる。
(4・5)作動その5:
図23を参照すると、ぜんまいが巻き戻されるときの回転力により回転する表輪列により、がんぎ車110は回転され、がんぎ車110は駆動される。がんぎ車110が矢印A4の方向(時計回り方向)に回転することにより、がんぎ車110の歯部112の先端部は振り石122に接触し、てんぷ120に回転力を伝える。大つば116が矢印A1の方向(反時計回り方向)に所定の角度まで回転すると、外し石124は、片作動ばね140の外し石接触部140Gから離れる。
(4・6)作動その6:
図24を参照すると、復帰ばね150のばね力により、作動レバー130は、矢印A3の方向(反時計回り方向)に回転して、当初の位置に戻ろうとする。止め石132の接触平面132Bに接触していた、がんぎ車110の歯部112の先端部は止め石132から外れる(がんぎ車110は解除される)。復帰ばね150のばね力により、作動レバー130は、矢印A3の方向(反時計回り方向)に回転して、作動レバー130の止め石支持アーム131は調整偏心ピン161に向かって押し戻される。
(4・7)作動その7:
図25を参照すると、てんぷ120が矢印A1の方向(反時計回り方向)に自由振動することにより、がんぎ車110の次の歯部112の先端部は止め石132の接触平面132Bに落下する。復帰ばね150のばね力により、作動レバー130の止め石支持アーム131は調整偏心ピン161に接触する。
(4・8)作動その8:
図26を参照すると、てんぷ120が自由振動することにより、大つば116が矢印A5の方向(時計回り方向)に回転する。
(4・9)作動その9:
図27(a)を参照すると、大つば116に固定された外し石124が矢印A5の方向(時計回り方向)に回転して、片作動ばね140の外し石接触部140Gに接触する。外し石124が矢印A5の方向(時計回り方向)に回転し、片作動ばね140が、外し石124に押される。
図27(b)を参照すると、作動ばね140は、作動レバー130のばね受突起部130Dから離れる。したがって、作動レバー130が静止した状態で、片作動ばね140のみが、外し石124により矢印A6の方向(反時計回り方向)に押しだされる。
(4・10)作動その10:
図28を参照すると、大つば116が矢印A5の方向(時計回り方向)に所定の角度まで回転すると、外し石124は、片作動ばね140の外し石接触部140Gから離れる。すると、片作動ばね140は、当初の位置に戻り、てんぷ120は自由振動する。
(4・11)作動の繰り返し:
以下同様に、図19に示す状態から図28に示す状態に至る作動を繰り返すことができる。
(5)本発明のデテント脱進機を備えた機械式時計:
さらに、本発明は、機械式時計の動力源を構成するぜんまいと、前記ぜんまいが巻き戻されるときの回転力により回転する表輪列と、前記表輪列の回転を制御するための脱進機とを備えるように構成された機械式時計において、前記脱進機が、上記のデテント脱進機で構成されることを特徴としている。この構成により、薄型で調整が容易な機械式時計を実現することができる。また、本発明の機械式時計は、脱進機の力の伝達効率が良いので、ぜんまいを小さくすることができ、或いは、同じサイズの香箱を用いて長時間持続の時計を実現することができる。
図31を参照すると、本発明の機械式時計において、ムーブメント(時計の駆動部分を含む機械体)300は、ムーブメントの基板を構成する地板170を有する。ムーブメントの「3時方向」には、巻真310が配置されている。巻真110が、地板170の巻真案内穴に回転可能に組み込まれる。てんぷ120、がんぎ車110、作動レバー130を含むデテント脱進機と、四番車327、三番車326、二番車325、香箱車320を含む表輪列は、ムーブメント100の「表側」に配置される。おしどり、かんぬき、かんぬき押さえを含む切換装置(図示せず)は、ムーブメント300の「裏側」に配置される。さらに、香箱車320の上軸部を回転可能なように支持する香箱受(図示せず)と、三番車326の上軸部、四番車327の上軸部、がんぎ車110の上軸部を回転可能なように支持する輪列受(図示せず)と、作動レバー130の上軸部を回転可能なように支持する作動レバー受(図示せず)と、てんぷ120の上軸部を回転可能なように支持するてんぷ受(図示せず)とが、ムーブメント300の「表側」に配置される。
二番車325が、香箱車320の回転により回転するように構成される。二番車325は二番歯車と、二番かなとを含む。香箱歯車は二番かなと噛み合うように構成される。三番車326が二番車325の回転により回転するように構成される。三番車326は三番歯車と、三番かなとを含む。四番車327が、三番車326の回転により1分間に1回転するように構成される。四番車327は四番歯車と、四番かなとを含む。三番歯車は四番かなと噛み合うように構成される。四番車327の回転により、がんぎ車110は、作動レバー130に制御されながら回転するように構成される。がんぎ車110は、がんぎ歯車と、がんぎかなとを含む。四番歯車は、がんぎかなと噛み合うように構成される。分車329が、香箱車320の回転により回転するように構成される。香箱車320、二番車325、三番車326、四番車327、分車329は表輪列を構成する。
二番車325に取り付けられた筒かな329の回転に基づいて日の裏車340が回転するように構成される。日の裏車340の回転に基づいて筒車(図示せず)が回転するように構成される。二番車325の回転により、三番車326が回転するように構成される。三番車326の回転により、四番車327は1分間に1回転するように構成される。筒車は12時間に1回転するように構成される。スリップ機構が二番車325と筒かな329との間に設けられる。二番車325は1時間に1回転するように構成される。
本発明のデテント脱進機においては、てんぷのエネルギー損失を低減することができ、デテント脱進機を搭載した時計ムーブメントの薄型化を図ることができる。本発明のデテント脱進機においては、縦姿勢時において、姿勢の差による作動レバーの慣性モーメントの影響を小さくすることができる。したがって、本発明のデテント脱進機は、機械式の腕時計、マリンクロノメータ、機械式の置時計、機械式の壁掛け時計、大型の機械式の街頭時計、及び、本発明を搭載したトゥールビヨン脱進機及びそれを有する腕時計などに広く適用することができる。本発明のデテント脱進機を搭載した機械式時計は、ぜんまいを小さくすることができ、或いは、同じサイズの香箱を用いて長時間持続の時計を実現することができる。
100 デテント脱進機
110 がんぎ車
120 てんぷ
122 振り石
124 外し石
130 作動レバー
131 止め石支持アーム
132 止め石
133 片作動ばね支持アーム
140 片作動ばね
141 片作動ばね規制レバー
150 復帰ばね
162 復帰ばね調整偏心ピン
170 地板
300 ムーブメント(機械体)
320 香箱車
325 二番車
326 三番車
327 四番車

Claims (13)

  1. がんぎ車(110)と、がんぎ車(110)の歯部と接触可能な振り石(122)および外し石(124)を有するてんぷ(120)と、がんぎ車(110)の歯部と接触可能な止め石(132)を有する作動レバー(130)とを含む時計用のデテント脱進機(100)において、
    前記作動レバー(130)は、前記止め石(132)を支持する止め石支持アーム(131)と、前記外し石(124)と接触可能な部分を含む片作動ばね(140)と、前記片作動ばね(140)の先端にある外し石接触部(140G)の位置を定めるための片作動ばね支持アーム(133)とを有しており、
    前記作動レバー(130)は、前記止め石(132)が、前記がんぎ車(110)に近づく方向と、前記止め石(132)が、前記がんぎ車(110)から遠ざかる方向の2方向に回転可能なように構成されており、
    前記片作動ばね(140)は、前記てんぷ(120)の回転中心(120A)と、前記作動レバー(130)の回転中心(130A)とを結ぶ直線である作動基準直線(129)を基準としたときに、前記がんぎ車(110)がある側と反対側において、前記片作動ばね(140)の先端部分が、前記てんぷ(120)の回転中心(120A)から遠ざかるにつれて、前記作動基準直線(129)からの距離が増加するように角度をなして配置されており、
    前記片作動ばね(140)は、前記止め石支持アーム(131)と、前記片作動ばね支持アーム(133)との間に配置されている、
    ことを特徴とするデテント脱進機。
  2. 前記片作動ばね支持アーム(133)の下面と、前記片作動ばね(140)の下面は、デテント脱進機がんぎ車(110)の回転中心軸線(110A)、および、前記てんぷ(120)の回転中心軸線に対して垂直な1つの平面内に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のデテント脱進機。
  3. 前記片作動ばねの変形ばね部(140B)の前記外し石接触部(140G)に続く部分は、前記てんぷ(120)の回転中心(120A)と、前記作動基準直線(129)に対して、5度から45度の範囲内にある角度(DG)をなすように構成されることを特徴とする、請求項1に記載のデテント脱進機。
  4. 前記止め石支持アーム(131)は、前記作動基準直線(129)に対して、前記片作動ばね支持アーム(133)と反対の側に位置することを特徴とする、請求項1に記載のデテント脱進機。
  5. 前記止め石支持アーム(131)の幅は、前記片作動ばね支持アーム(133)の幅より大きく形成され、或いは、前記止め石支持アーム(131)の厚さは、前記片作動ばね支持アーム(133)の厚さより厚く形成されることを特徴とする、請求項1に記載のデテント脱進機。
  6. 前記止め石支持アーム(131)の幅は、前記片作動ばね支持アーム(133)より細く形成され、かつ、前記片作動ばね支持アーム(133)は肉抜きされた部分を含むことを特徴とする、請求項1に記載のデテント脱進機。
  7. 前記止め石支持アーム(131)、および、前記片作動ばね支持アーム(133)のうちの少なくとも一方は、前記作動レバー(130)の慣性モーメントを低減させるために、肉抜きされた部分を含むことを特徴とする、請求項1に記載のデテント脱進機。
  8. 前記片作動ばね支持アーム(133)は、前記作動基準直線(129)からみて凸になるような1以上の曲線部を含む形状に形成されることを特徴とする、請求項1に記載のデテント脱進機。
  9. 前記片作動ばね支持アーム(133)は、先端部分から根元部分に向うにつれて断面積が大きくなるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のデテント脱進機。
  10. 前記デテント脱進機は、さらに、前記止め石(132)が前記がんぎ車(110)に近づく方向に前記作動レバー(130)を回転させる力を前記作動レバー(130)に加えるための復帰ばね(150)を備え、
    前記復帰ばね(150)は、前記作動レバー(130)の回転中心(130A)に対して、前記止め石支持アーム(131)および前記片作動ばね支持アーム(133)の反対側に位置するように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のデテント脱進機。
  11. 前記デテント脱進機は、さらに、前記止め石(132)が前記がんぎ車(110)に近づく方向に前記作動レバー(130)を回転させる力を前記作動レバー(130)に加えるための復帰ばね(150)を備え、
    前記復帰ばね(150)の初期位置を調整するための復帰ばね調整偏心ピン(162)が設けられることを特徴とする、請求項1に記載のデテント脱進機。
  12. 前記片作動ばね(140)の外し石接触部(140G)を前記片作動ばね支持アーム(133)に押し付けるための片作動ばね規制レバー(141)が前記作動レバー(130)に設けられることを特徴とする、請求項1に記載のデテント脱進機。
  13. 機械式時計の動力源を構成するぜんまいと、前記ぜんまいが巻き戻されるときの回転力により回転する表輪列と、前記表輪列の回転を制御するための脱進機とを備えるように構成された機械式時計において、前記脱進機が、請求項1から12のいずれか1項に記載のデテント脱進機で構成されることを特徴とする機械式時計。
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