JP2013153723A - いなり寿司及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】シャリがこぼれ落ちづらい三角形状のいなり寿司であって、仕上がり外観に優れ、挿入したシャリ塊を包みこむ工程中に油揚げが破れにくく、かつ、成形作業工程が簡便で作業効率が向上する三角形状のいなり寿司及びその製造方法を提供する。
【解決手段】2つの斜辺部6cと底辺部6dを有する略三角形状の味付け油揚げ1の内部にシャリ塊5が挿入されているいなり寿司6であって、矩形状の味付け油揚げ1の隣り合う2辺が開口し、上皮層1aと下皮層1bに分離され袋状になっており、上皮層1aと下皮層1bが連なる側部1dを有する油揚げの、上皮層1aと下皮層1bとの間にシャリ塊5が挿入され、開口側の上皮層1aと下皮層1bが互いに折り重ねられ、上皮層1aと下皮層1bが連なる油揚げの側部1dが、2つの斜辺部6cとなり、上皮層1aと前記下皮層1bを互いに折り重ねた部分が底辺部6cなっている。
【選択図】図5

Description

本発明は、三角形状のいなり寿司及びその製造方法に関するものである。
従来、家庭で三角形状のいなり寿司を製造する場合は、略正方形の油揚げを対角線上に切断し、油揚げの形状を略直角二等辺三角形にした後、沸騰した湯などに油揚げを入れて油抜きをし、ザルなどに上げて湯きりする。湯切りした油揚げを鍋に入れ、更に醤油、砂糖、酒などの調味料を適量加えて煮込み、味付けする。味付油揚げは、冷ましてから汁気を軽く絞り、切断部分(略直角二等辺三角形の頂角に対する辺)を開口し、油揚げを袋状にし、その中にすし飯を挿入し、略直角二等辺三角形の鋭角部分同士の油揚げを折り込み、その折り込んだ部分を互いに重ね合わせるように包み込んでいるものが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
しかし、このような鍋で炊き込む製造方法によって、味付油揚げを製造した場合、鍋で煮込む際に、鍋の中で油揚げがくちゃくちゃになり、油揚げに皺が多く発生し、仕上がり外観が優れない。また油揚げが整列していないため、切断部分を開口し、すし飯を挿入する際、切断部分を探すのに手間がかかった。このような鍋で煮炊きする製造方法は、家庭で味付油揚げを製造する場合にはあまり問題とはならないが、業務用製品として大量生産し、かつ、優れた外観を要求されるものには不向きである。
そのため、従来から業務用の三角形状のいなり寿司を製造する場合、図9に示すように、略正方形の油揚げを対角線上に切断し、油揚げの形状を略直角二等辺三角形にした後、その切断後の油揚げを元の略正方形の形になるように合わせ、そのように合わせた油揚げを1枚或いは複数枚重ね、その状態をできるだけ崩さないように袋に入れる。そして、適宜の調味液を袋の中に充填し、袋内を適切な真空状態にして密封した後に加熱することによって、味を染み込ませると共に殺菌処理を行う。
すし飯の挿入は、手作業で挿入する場合もあるが、一般的にはすし飯の塊を挿入するシャリ詰め充填装置によって、略直角二等辺三角形の味付け油揚げの内側にすし飯の塊が挿入される。すし飯が挿入された状態の味付け油揚げは、図10に示すように、人間の手作業によって味付け油揚げの略直角二等辺三角形の鋭角部分同士を折り曲げ、その折り曲げた部分を互いに重ね合わせ、挿入されたすし飯を包み込むという工程を経て、略三角形状のいなり寿司が完成する。
このような方法で製造した味付け油揚げは、油揚げの上皮層と下皮層(いわゆる油揚げの腹と呼ばれる部分)に皺が出来づらく、かつ、整列した状態で調味液を染み込ませることが可能であるため、手作業ですし飯を挿入する場合、挿入口である開口部が整列しているため、開口部を探す面倒がない。
また、シャリ詰め充填装置によって、すし飯の塊を挿入する場合であっても、シャリ詰め充填装置に味付け油揚げの開口部を揃えてセットし易く、また、油揚げの上皮層と下皮層に皺が少ない為、開口部を開口するために、例えば上皮層を掴み冶具或いは吸盤等によって掴み或いは吸着し、開口部を開口するとき油揚げを掴み易い或いは吸着し易い。
このような、非特許文献1、図9及び図10に示す製造方法によって製造された三角形状のいなり寿司は、図10(5)に示すように、三角形状のいなり寿司の表面、裏面(略直角二等辺三角形の面)の、頂角の点から対辺に下した垂線(対称軸)を境に、略正方形の油揚げの上皮層と下皮層が表れる。また、略対称軸上には、元の正方形の油揚げの上皮層と下皮層が連なる側部(いわゆる油揚げの峰と呼ばれる部分)が位置することとなる。
また、油揚げの上下の皮層に破断を生ずることなく、正三角形のいなり寿司を自動的に製造できる装置として、特許文献1に記載のいなり寿司製造装置が開示されている。
このいなり寿司製造装置は、菱形の油揚げを斜断して得られた正三角形の油揚げの内部に圧縮空気を吹き込む装置と、油揚げの上下の皮層を各別に真空吸着し、上皮層の切断面寄り部分に引き上げ力を作用させて開口させ、内部に正三角形にぎりを押し込む装置である。
この装置によって製造された三角形状のいなり寿司は、正三角形の油揚げの内部に正三角形にぎりが押し込まれて成形されており、油揚げの開口部の折り込み、折り重ねという工程がなく、油揚げの開口部分にすし飯の塊がむき出しになっている。
特開平7−322841号公報
COOKPADホームページの草原うさぎのレシピ「和味ひとくちサイズの三角いなり」http://cookpad.com/recipe/1407839
ところで、いなり寿司に使用される略正方形の油揚げは、板状の豆腐を油で揚げることにより作られるため、比較的硬質の上皮層及び下皮層(いわゆる油揚げの腹と呼ばれる部分)と比較的脆い上皮層と下皮層に挟まれた海綿状の中間層、そして、その中間層の厚み分だけ、上皮層と下皮層が連なる側部(いわゆる油揚げの峰と呼ばれる部分)が四方に形成される。
上皮層と下皮層が連なる側部付近は、上皮層から下皮層にかけて略凸部状の形状となるが、上皮層と下皮層と同じく比較的硬質であり、かつ、略凸部状の形状が記憶されている。
また、図9に示すような工程によって製造される味付け油揚げは、複数枚の油揚げを重ねて袋の中に入れ、その袋内に調味液を充填し、袋内を適切な真空状態にして密封した後に加熱する(図1及び図4参照)。
側部に厚みのある油揚げを真空用の袋に詰め、その袋内を適切な真空状態にして密封することで、油揚げの側部に皺ができる。そして、その油揚げの側面に皺ができた状態で加熱するため皺が固定される。そして、加熱後も長時間真空状態の密封状態が維持されるため、さらに、油揚げの側面に皺ができることとなる。
ここで、皺が固定するとは、手で引っ張ったら皺が伸びる程度に皺になっている状態をいう。
また、図9に示すような工程によって製造される味付け油揚げの場合、略正方形の油揚げを対角線上に切断し、油揚げの形状を略直角二等辺三角形にした後、その切断後の油揚げを元の略正方形の形になるように合わせる。そして、そのように合わせた油揚げを複数枚積み重ね、その状態を保持したまま袋に入れ、適宜の調味料を袋に充填し、袋内を適切な真空にして密封し、加熱することによって、調味液を染み込ませている。
よって、図4に示すように積み重ねた油揚げの側部付近に調味液が多く行き渡ることとなり、側部の着色が濃くなる傾向がある。
また、糖等を含む調味液とタンパク質を含む油揚げを加熱することで、還元糖とアミノ化合物を加熱したときなどに見られる褐変反応(メイラード反応)が起こり、調味液が行き渡りやすい側部付近の着色が助長されることがある。
上記従来の非特許文献1に記載の製造方法及び図9及び図10に示す製造方法によって製造された三角形状のいなり寿司は、略直角二等辺三角形の形状となり、略直角二等辺三角形状の表面と裏面を有することとなる(図10(5))。その表裏面には、頂角の点から対辺に下した垂線(対称軸)を境に、略正方形の油揚げの上皮層と下皮層の面が表れることとなる。そして、その表裏面の対称軸付近には、元の正方形の油揚げの上皮層と下皮層が連なる側部が位置することとなる。
ところで、三角形状のいなり寿司の表裏面は需要者が購入時に最も注目する部分であり、この部分の仕上がり外観の如何によって、需要者がいなり寿司を美味しそうに感じるか否かの評価、また、いなり寿司の品質の良し悪しの評価に影響を及ぼす。
しかし、上記従来の製造方法によれば、いなり寿司の表裏面の中央部分に側部が位置することとなるため、需要者が購入時に最も注目する三角形状のいなり寿司の表裏面の略中央部に、側部と、上皮層及び下皮層との着色が異なることによる線状の模様ができ、皺も多く、また、上皮層から下皮層に連なる側部の形状が凸条の形状となって表れ、体裁が悪く、仕上がり外観の向上が求められていた。
また、非特許文献1、図9及び図10に示されている従来の三角形状のいなり寿司の場合、味付け油揚げにすし飯を挿入した後、挿入したシャリ塊を包み込むために油揚げの略直角二等辺三角形の鋭角部分、つまり、上皮層と下皮層が連なる油揚げの側部付近を、それぞれ広げながらシャリ塊を入れ折り曲げ、その折り曲げた部分を互いに重ね合わせている。
しかし、側部付近は、もともと厚みのある側部が、真空状態にされて密封されるので、潰されて皺ができた状態で加熱されることになる。そのため、側部の油揚げがダメージを受け不連続な状態になり、上皮層及び下皮層の連続面に比べて強度が弱くなる。その側部をそれぞれ広げながらシャリ塊を入れ折り曲げるとき、側部が破れる場合があった。
また、油揚げの上皮層と下皮層を折り曲げ、重ね合わせるとき、図10(1)(2)(3)に示すように、いなり寿司を90°回転させるように持ち替えて、重ね合わせ包み込む必要があった。
また、油揚げにシャリ塊をシャリ詰め充填装置によって充填する場合、通常、図10(1)(2)に示すように、俵状のシャリ塊が直角二等辺三角形状の味付け油揚げに充填される。そして、そのシャリ塊が充填された味付け油揚げを90°回転させるように持ち替えた後、充填された俵状シャリ塊を押し潰すようにして、三角形状のいなり寿司の形状に成形し(図10(2)(3)参照)、略直角二等辺三角形状の味付け油揚げの両鋭角部分(側部付近)を折り曲げ、その折り曲げた部分を互いに重ね合わせる必要があり、この成形作業は非常に手間がかかり、作業効率が悪かった。
さらに、特許文献1に記載の三角形状のいなり寿司の場合、油揚げの開口部を油揚げで包み込んでいないため、油揚げの開口部分にシャリの塊がむき出しになっており、いなり寿司を食する際に、シャリがこぼれ落ちるという問題があった。
そこで、シャリがこぼれ落ちづらい三角形状のいなり寿司であって、仕上がり外観に優れ、味付け油揚げの内部にシャリ塊を挿入した後、挿入したシャリ塊を包みこむ工程中に油揚げが破れにくく、かつ、成形作業工程が簡便で作業効率が向上する三角形状のいなり寿司及びその製造方法の提供を課題とする。
上記課題を解決すべく本発明では下記の手段を講じている。
(1)本発明のいなり寿司は、2つの斜辺部と底辺部を有する略三角形状のいなり寿司であって、矩形状の味付け油揚げの隣り合う2辺が開口し、上皮層と下皮層に分離され袋状になっており、前記上皮層と前記下皮層が連なる側面部を有する油揚げの、前記上皮層と前記下皮層との間にシャリ塊が挿入され、前記開口側の前記上皮層と前記下皮層が互いに折り重ねられ、前記上皮層と前記下皮層が連なる油揚げの側部が、前記2つの斜辺部となり、前記上皮層と前記下皮層を互いに折り重ねた部分が前記底辺部となっていることを特徴とする。
ここで、本発明に使用する油揚げは、板状の豆腐を油で揚げることにより作られたもので、いわゆる「腹」と呼ばれる比較的硬質の部分を「上皮層」と「下皮層」という。そして上皮層と下皮層に挟まれた比較的脆い海綿状の部分を「中間層」といい、いわゆる「峰」と呼ばれる、中間層の厚み分だけ、四方に形成される側面部の事を、上皮層と下皮層が連なる「側部」という。
本発明の三角形状のいなり寿司は、略正方形の味付け油揚げの隣り合う2辺に切り口を設け開口した油揚げに、シャリ塊を挿入することで、味付け油揚げの側部が、三角形状のいなり寿司の両斜辺部に位置し、三角形状のいなり寿司の表裏面がそれぞれ、上皮層又は下皮層のみによって構成される。
よって、三角形状の両斜辺部に、着色が異なり、皺が多く、側部の形状あとを有する部分が位置し、需要者が最も注目する三角形状のいなり寿司の表裏面は比較的着色の違いがなく、皺も少なく、形状あとのない部分が位置することで、仕上がり外観に優れる三角形状のいなり寿司となる。
また、上皮層と下皮層を互いに折り重ねた部分が略三角形状の底辺部となることで、内部に挿入されたシャリ塊が包み込まれ、いなり寿司を食するとき、シャリがこぼれ落ちづらくなる。
また、三角形状の表裏面にそれぞれ、上皮層と下皮層が位置し、その上皮層と下皮層を互いに折り重ねていなり寿司を包み込むこととなるため、従来の側部付近を、広げながら折り曲げ、その折り曲げた部分を互いに重ね合わせる場合と比べ、油揚げが破れにくく、かつ、成形作業工程が簡便となり、作業効率が向上した。
(2)前記矩形状の味付け油揚げの四方にある、上皮層と下皮層が連なる側部のうち、隣り合う側部に、前記上皮層面と前記下皮層面のそれぞれの層と略平行に切断刃を挿入し、前記矩形状の味付け油揚げの隣り合う2辺を開口させることができる。
上記のように油揚げの隣り合う2辺を開口させることによって、切断部は図2に示すように、側部の形状が残ったままであるため、油揚げの上皮層と下皮層の開口縁が、断面略L字状に中間層側に内巻き形状となる。その為、完成した三角形状のいなり寿司の上皮層と下皮層を互いに折り重ねたときに、開口縁がいなり寿司の表面に添うようになり体裁に優れる。また、上記のように隣り合う2辺を開口することで本実施形態を示す図5(2)と従来のいなり寿司を示す図10(4)とを比較してみても分かるように、本実施形態の場合、上皮層と下皮層の開口縁が、中間層側の内側に巻き込むように、互いに折り重なっているため、中間層の海綿状に見える豆腐の白い部分が外観から見えづらく、仕上がり外観が優れる。
なお、従来のいなり寿司(図5(2))の場合切断部が図8に示すように上皮層面と下皮層面に対して、略直角であるため、上皮層と下皮層を互いに折り重ねた場合、開口縁に切断部の切断面が表れやすくなる。よって、その切断面に表れる中間層の海綿状に見える豆腐の白い部分が外観から見えることとなり体裁が悪かった。
(3)前記矩形状の味付け油揚げの、前記上皮層から前記下皮層に向けて又は前記下皮層から前記上皮層に向けて、切断刃を前記上皮層と前記下皮層とを貫通させて、前記矩形状の味付け油揚げの隣り合う2辺を開口させることとすることができる。
複数枚重ねて、切断することが可能となり、袋詰めする際に切り口を揃えて積み重ねる作業工程が省け作業効率が向上する。
(4)2つの斜辺部と底辺部を有する略三角形状のいなり寿司の製造方法であって、矩形状の味付け油揚げの隣り合う2辺が開口し、上皮層と下皮層に分離され袋状になっており、前記上皮層と前記下皮層が連なる側部を有する油揚げの、前記上皮層と前記下皮層の間にシャリ塊を挿入した後、開口部の前記上皮層と前記下皮層を互いに折り重ね、前記上皮層と前記下皮層が連なる前記油揚げの側部が、前記2つの斜辺部となり、前記上皮層と前記下皮層を折り重ねた部分が底辺部となるように成形する、いなり寿司の製造方法。
上記製造方法によれば、図5に示すように、上皮層側と下皮層側をそれぞれお互い重ね合わせるだけでよいので、従来のように折り曲げるという作業も必要なく、油揚げが破れるといったことも従来に比べれば非常に少なくなった。
また、図5に示すように、味付け油揚げにシャリ塊を入れた状態から、いなり寿司を持ち替えずに容易に上皮層と下皮層をそれぞれお互い重ね合わせることが可能となり、簡便に仕上がり外観が優れるいなり寿司を成形することが可能となり、作業効率が向上した。
上記手段により、矩形状の味付け油揚げの隣り合う2辺を開口し袋状にした味付け油揚げを使用することで、着色が濃く、皺も多く、かつ、略凸条の形状あとが残った側部付近が、三角形状のいなり寿司の斜辺に位置し、三角形状のいなり寿司の表裏面がそれぞれ上皮層、下皮層のみによって構成されることで、着色の違いや、皺、形状あとが目立たず、仕上がり外観に優れる。また、挿入したシャリ塊を包み込むとき、上皮層と下皮層を互いに折り重ねることとなるため、油揚げが破れにくく、三角形状のいなり寿司を持ち替えずに折り重ねることが可能となり、成形作業工程が簡便で作業効率が向上する。
実施例1の油揚げの切断工程から加熱工程までの工程図である。 実施例1の切断工程によって切断された油揚げの断面図である。 実施例1の油揚げの切断方法の説明図である。 実施例1の加熱工程中の真空状態の袋内の断面図である。 実施例1のいなり寿司の成形工程である。 実施例2の油揚げの切断工程から加熱工程までの工程図である。 実施例3の油揚げの切断方法の説明図である。 実施例2の切断工程によって切断された油揚げの断面図である。 従来の油揚げの切断工程から加熱工程までの工程図である。 従来のいなり寿司の成形工程である。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
〔実施形態1〕
以下に三角形状のいなり寿司6の製造工程を説明する。
(油揚げ1について)
図1の工程図に示すように、本発明の実施形態1の三角形状のいなり寿司6に使用する油揚げ1は、上皮層1a、下皮層1bそれぞれの四辺が閉じた袋3状の略正方形の油揚げ1を使用する。なお、略正方形以外の矩形状の油揚げ1を使用することも可能であるが、略正方形の油揚げ1を使用すれば、略直角三角形状の体裁の良い三角形状のいなり寿司6ができるので好ましい。
ここで、本発明に使用する油揚げ1は、板状の豆腐を油で揚げることにより作られたもので、いわゆる「腹」と呼ばれる比較的硬質の部分を「上皮層1a」と「下皮層1b」という。そして上皮層1aと下皮層1bに挟まれた比較的脆い海綿状の部分を「中間層1c」といい、いわゆる「峰」と呼ばれる、中間層1cの厚み分だけ、四方に形成される側面部の事を、上皮層1aと下皮層1bが連なる「側部1d」という。
本実施形態の場合、略正方形の辺の長さが、三角形状のいなり寿司6の斜辺の長さとなるので、加熱処理によって、油揚げ1が縮むことを考慮して、適宜のサイズの略正方形の油揚げ1を使用する。
(開口部の切断工程について)
図1(1)に示すように適宜のサイズの略正方形の油揚げ1の四方にある、上皮層1aと下皮層1bが連なる側部1dのうち、隣り合う側部1dの上皮層1aと下皮層1bの略中央部に、前記上皮層1a面と前記下皮層1b面のそれぞれの層面と略平行に切断刃2を挿入し、前記矩形状の味付け油揚げ1の隣り合う2辺を開口させるための切り口を設ける。
上記のように油揚げ1の隣り合う2辺を開口させることによって、切断部は図2に示すように、側部1dの形状が記憶されたままになるので、油揚げ1の上皮層1aと下皮層1bの開口縁1eが、断面略L字状に中間層1c側に巻き込むような形状となる。その為、完成した三角形状のいなり寿司6の上皮層1aと下皮層1bを互いに折り重ねたときに、開口縁1eがいなり寿司6の表面6aに添うようになり体裁に優れる。また、上記のように隣り合う2辺を開口することで本実施形態を示す図5(2)と従来のいなり寿司6を示す図10(4)とを比較してみても分かるように、本実施形態の場合、上皮層1aと下皮層1bの開口縁1eが、中間層1c側に巻き込むように、互いに折り重なっているため、中間層1cの海綿状に見える豆腐の白い部分が外観から見えづらく、仕上がり外観が優れる。
なお、従来のいなり寿司6(図10(4))の場合切断部が図8に示すように上皮層1a面と下皮層1b面に対して、略直角であるため、上皮層1aと下皮層1bを互いに折り返した場合、開口縁1eに切断部の切断面2aが表れやすくなる。よって、その切断面2aに表れる中間層1cの海綿状に見える豆腐の白い部分が外観から見えることとなり体裁が悪かった。
切断方法は、略正方形状の油揚げ1を複数枚重ね、切断する側部1dを並べ順次切断刃2を挿入し切断すれば作業効率が向上する(図3)。また、油揚げ1一枚毎、剃刀、はさみ等の切断刃2によって切断しても良い。
(袋詰め工程について)
次に、真空用の袋3に切断後の略正方形状の油揚げ1を、上記切断した切り口を揃えて2枚から複数枚積み重ねて入れる(図1(4))。このように切り口を揃えて複数枚積み重ねていれば、後述する自動シャリ詰め充填装置にセットするときに容易にセットすることができる。
なお、油揚げを切断して重ね合わせるのは、1枚1枚切断して重ね合わせても、事前に複数枚を重ねてから切断してもよい。切断した油揚げを袋内へ挿入するのは、手作業で挿入しても、挿入機能を備えた機械で挿入するのもよく、油揚げの整列を乱すことなく挿入出来ればよい。
(調味液の充填工程について)
次に、真空用の袋3に、油揚げ1を味付けするための調味液4を充填し、油揚げ1に調味液4を浸潤させる(図1(5))。
調味液4は、水に醤油、砂糖、酒等など適宜の調味料を溶解させたものである。
(真空包装工程について)
次に、真空包装機などで袋3内を適正な真空状態とし、袋3開口部を熱シールして密封する(図1(6)、図4)。
(加熱工程について)
次に、上述した真空状態に密封された袋3を加熱する。この加熱によって、油揚げ1に調味液4を染み込ませると共に殺菌する。つまり、煮炊き工程と殺菌工程が行われる。
ところで、以上のように油揚げ1を複数枚積み重ねた状態で袋3に詰めた後、袋3内に調味液4を充填し、真空包装機などで袋内を適正な真空状態とし、袋開口部を熱シールして密封し、加熱した場合、図4に示すように積み重ねた油揚げ1の側部1d付近に調味液4が多く行き渡ることで、側部1dの着色が濃くなる傾向がある。
また、糖等を含む調味液4とタンパク質を含む油揚げ1を加熱することで、還元糖とアミノ化合物を加熱したときなどに見られる褐変反応(メイラード反応)が起こり、調味液4が行き渡りやすい、積み重ねた油揚げ1の側部1d付近の着色が助長される。
(シャリ塊の挿入工程について)
次に、油揚げ1に適宜の量のシャリ塊5を挿入する。油揚げ1は、上皮層1aと下皮層1bが海綿状の中間層1cを介して互いに繋がっているので、切り口側から徐々に中間層1cを剥離させ、油揚げ1を袋3状にする。
本実施例の油揚げ1は、略正方形状の油揚げ1の隣り合う2辺に切り口を設け、開口可能としているため、隣り合う2辺に切り口を有する角から、その垂線方向の対角線上まで上皮層1aと下皮層1bが開口可能となる。
そして、上皮層1aと下皮層1bを開口させ、いなり寿司6の頂角6e側にシャリ塊5を挿入する(図5(1))。シャリ塊5は、酢飯を俵状にしたものを挿入する。一般的にはシャリとは白米、酢飯の事を指すが、本発明でのシャリは、酢飯、白飯、赤飯、おこわ、炊き込みご飯、ちらし寿司、混ぜご飯等を含むものとする。
また、シャリ塊5の挿入工程は、シャリ詰め充填装置によって挿入することもできる。シャリ詰め充填装置によって挿入する場合、袋詰めの際に、切り口を揃えて複数枚積み重ねた状態になっているため、容易にシャリ詰め充填装置にセットすることが可能である。
(成形工程)
次に、シャリ塊5を挿入した味付け油揚げ1の隣り合う辺が開口可能となっている角付近の上皮層1aと下皮層1bを互いに折り重ねるようにして、シャリ塊5を包み込む(図5(1)(2))。
図10(5)に示すような従来の三角形状のいなり寿司6の場合、略正方形状の油揚げ1を対角線上に切断した略直角二等辺三角形の味付け油揚げ1にシャリ塊5を挿入し、三角形状のいなり寿司6の略直角二等辺三角形の鋭角部分を互いに折り曲げ、その折り曲げた部分を互いに重ね合わせシャリ塊5を包み込む。
つまり、上皮層1aと下皮層1bが連なる油揚げ1の側部1d付近を折り曲げ、その折り曲げた部分を互いに重ね合わせているが、側部1d付近は、もともと厚みのある側部1dが、真空状態にされて密封されたまま、加熱されることによって、潰され、皺ができるため、側部の油揚げがダメージを受け不連続な状態になり、上皮層1a及び下皮層1bの連続面に比べて強度が弱くなる。その側部をそれぞれ広げながらシャリ詰めし、折り曲げるとき、側部1dが破れる場合があった。
しかし、本発明の三角形状のいなり寿司6によれば、図5(3)に示すように、上皮層1a側と下皮層1b側をそれぞれお互い重ね合わせるだけで良いので、従来のように折り曲げるという作業も必要なく、油揚げ1が破れるといったことも従来に比べれば非常に少なくなった。
また、従来の油揚げ1を折り曲げ、重ね合わせるとき、図10(1)(2)(3)に示すように、いなり寿司6を90°回転させるように持ち替えて包み込んでいたため、作業が煩雑であった。この持ち替える作業は、特に大量生産する場合に作業効率が悪くなっていた。
しかし、本発明の場合、図5に示すように、味付け油揚げ1にシャリ塊5を入れた状態から、いなり寿司6を持ち替えずに容易に上皮層1aと下皮層1bをそれぞれお互い重ね合わせることが可能となり、簡便にいなり寿司6を成形することが可能となり、作業効率が向上した。
(いなり寿司について)
また、このような工程によって製造された三角形状のいなり寿司6は、略正方形の味付け油揚げ1の隣り合う2辺に切り口を設け開口した油揚げ1に、シャリ塊5を挿入することで、味付け油揚げ1の側部1dが、三角形状のいなり寿司6の両斜辺部6cに位置し、三角形状のいなり寿司6の表裏面6bがそれぞれ、上皮層1a又は下皮層1bのみによって構成される(図5(3))。
よって、三角形状の両斜辺部6cに、着色が濃く、皺が多く、形状跡を有する側部1dが位置し、需要者が最も注目する三角形状のいなり寿司6の表面6aと裏面6bは比較的着色の違いがなく、皺も少なく、形状跡のない上皮層1aと下皮層1bがそれぞれ位置する。つまり、従来のいなり寿司(図10(5))と異なり、本発明の実施例1のいなり寿司6の略二等辺三角形状の表面6aと裏面6bの対称軸6f付近に側部1dが位置しない。
よって、仕上がり外観に優れる三角形状のいなり寿司6となる。
〔実施形態2〕
実施形態2の基本的な工程等は実施形態1と同様であるが、本実施形態は以下の点で異なる。
図6の工程図に示すように、略正方形の油揚げ1の上皮層1aから下皮層1bに向けて又は下皮層1bから上皮層1aに向けて、切断刃2を、上皮層1aと下皮層1bとを貫通させ、十字状に切断し(図6(2))、隣り合う2辺が開口した油揚げ1とすることができる。
このように切断することで、一枚の油揚げ1から、隣り合う2辺が開口した油揚げ1が一度に4枚できることとなる。また、複数枚重ねて、切断することが可能となり、袋詰めする際に切り口を揃えて積み重ねる作業工程が省け作業効率が向上する。
〔実施形態3〕
実施形態3の基本的な工程等は実施形態1と同様であるが、本実施形態は以下の点で異なる。
図7に示すように、略正方形状の油揚げ1の隣り合う2辺の側部1d付近を、略L字状に、上皮層1aから下皮層1bに向けて又は下皮層1bから上皮層1aに向けて、切断刃2を、上皮層1aと下皮層1bとを貫通させることにより切断することで、隣り合う2辺が開口した油揚げ1とすることができる。
この場合も、複数枚重ねて切断することが可能であり、作業効率が向上する。また、実施形態2の場合、一枚の油揚げ1から4枚の隣り合う2辺が開口した油揚げ1ができるので、作業効率は上がるが、ある程度の大きさの油揚げ1が必要である。しかし、本実施形態によれば、三角形状のいなり寿司6の斜辺と略同一の長さを一辺とする略正方形の油揚げ1を使用することができる。
その他、本発明は上述した実施例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更、工程の順番の変更、一部省略等の変更が可能である。
1 油揚げ1
1a 上皮層1a
1b 下皮層1b
1d 側部1d
2 切断刃2
5 シャリ塊5
6 いなり寿司6
6c 斜辺部6c
6d 底辺部6d

Claims (4)

  1. 2つの斜辺部と底辺部を有する略三角形状のいなり寿司であって、
    矩形状の味付け油揚げの隣り合う2辺が開口し、上皮層と下皮層に分離され袋状になっており、前記上皮層と前記下皮層が連なる側部を有する油揚げの、前記上皮層と前記下皮層との間にシャリ塊が挿入され、
    前記開口側の前記上皮層と前記下皮層が互いに折り重ねられ、
    前記上皮層と前記下皮層が連なる油揚げの側部が、前記2つの斜辺部となり、前記上皮層と前記下皮層を互いに折り重ねた部分が前記底辺部となっているいなり寿司。
  2. 前記矩形状の油揚げの四方にある、上皮層と下皮層が連なる側部のうち、隣り合う側部に、前記上皮層と前記下皮層のそれぞれの層と略平行に切断刃を挿入し、前記矩形状の油揚げの隣り合う2辺を開口させている請求項1記載のいなり寿司。
  3. 前記矩形状の油揚げの、前記上皮層から前記下皮層に向けて又は前記下皮層から前記上皮層に向けて、切断刃を前記上皮層と前記下皮層とを貫通させて、前記矩形状の油揚げの隣り合う2辺を開口させている請求項1記載のいなり寿司。
  4. 2つの斜辺部と底辺部を有する略三角形状のいなり寿司の製造方法であって、
    矩形状の味付け油揚げの隣り合う2辺が開口し、上皮層と下皮層に分離され袋状になっており、前記上皮層と前記下皮層が連なる側部を有する油揚げの、前記上皮層と前記下皮層の間にシャリ塊を挿入した後、
    開口部の前記上皮層と前記下皮層を互いに折り重ね、
    前記上皮層と前記下皮層が連なる前記油揚げの側部が、前記2つの斜辺部となり、前記上皮層と前記下皮層を折り重ねた部分が底辺部となるように成形する、
    いなり寿司の製造方法。
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