本発明の好適な一実施例であるコンピュータ断層撮影方法を、図1から図9を用いて説明する。
本実施例のコンピュータ断層撮影方法を説明する前に、このコンピュータ断層撮影方法に用いられるコンピュータ断層撮影システムを、図8及び図9を用いて説明する。コンピュータ断層撮影システム1は、X線源装置2、回転テーブル4、昇降テーブル5、回転テーブル上下動装置6、アレイ検出器9、制御装置10、X線源制御装置11、検出回路13、断層画像再構成装置14、断層画像情報処理装置15及び料金演算装置16を備えている。
X線源装置2はX線源3を有している。X線源装置2からのX線の出射及び停止はX線源制御装置11により制御される。鉛及びタングステン等の放射線遮へい材で制作されたプリコリメータ7がX線源装置2の前面に配置され、プリコリメータ7にはX線源3から放出されたX線がファンビーム状になるように開口部7Aが形成される。
アレイ検出器9は一列に配置された複数の放射線検出器9Aを有する。放射線検出器9Aの個数と同じ数のスリット8Aが形成されたコリメータ8が、プリコリメータ7と対向して配置される。各放射線検出器9Aは、コリメータ8の、プリコリメータ7に面する側とは反対側に配置され、コリメータ8の各スリット8Aに別々に向き合っている。
回転テーブル4、昇降テーブル5、回転テーブル上下動装置6は、プリコリメータ7とコリメータ8の間に配置される。回転テーブル4は、被検体20を載せるテーブルであり、テーブルを回転させる第1駆動装置(例えば、モータ)22を有する。平行に配置された一対のガイドレール23が、昇降テーブル5の上面に設けられて昇降テーブル5の長手方向に伸びている。昇降テーブル5の長手方向に移動する移動体24が、一対のガイドレール23上に移動可能に設けられる。移動体24には、移動体24をガイドレール23に沿って移動させる第2駆動装置(図示せず)(例えば、モータ)が設けられる。第1駆動装置22も移動体24に設けられる。回転テーブル上下動装置6は、昇降テーブル5と噛み合って上方に向かって伸びる4本の回転ネジ6Aを有する。これらの回転ネジ6Aは、第3駆動装置(図示せず)(例えば、モータ)によって回転される。制御装置10が、第1駆動装置22、第2駆動装置及び第3駆動装置のそれぞれの駆動開始及び駆動停止を制御する。
検出回路13は、各放射線検出器9Aに接続され、さらに、断層画像再構成装置14に接続される。断層画像情報処理装置15は断層画像再構成装置14に接続され、料金演算装置16が断層画像情報処理装置15に接続される。CAD装置21が断層画像情報処理装置15に接続される。記憶装置17及び表示装置19が、断層画像再構成装置14、断層画像情報処理装置15及び料金演算装置16にそれぞれ接続される。入力装置18が制御装置10及び断層画像情報処理装置15に接続される。制御装置10はX線源制御装置11に接続される。同期装置12がX線源制御装置11及び検出回路13に接続される。
制御装置10が開閉器25を介して電源26に接続される。図8に示されていないが、X線源装置2、X線源制御装置11、各放射線検出器9A、断層画像再構成装置14、断層画像情報処理装置15及び断層画像再構成装置14が、開閉器25に接続される。第1駆動装置22、第2駆動装置及び第3駆動装置がそれぞれ電源26に接続される。また、料金演算装置16も、他の開閉器を介して電源26に接続される。
コンピュータ断層撮影システム1を製造したメーカは、このコンピュータ断層撮影システム1を或るユーザに貸与し、このユーザが準備した場所にコンピュータ断層撮影システム1を設置する。ユーザ(依頼元)が、コンピュータ断層撮影システム1を用いて撮影して得られた或る被検体の断層画像の情報を用いた処理によりその被検体に関する新たな情報得ることを望む場合には、メーカから派遣されたオペレータがユーザの意向を確認してその新たな情報を得るための制御指令情報及び断層画像再構成の条件情報を決定する。オペレータは入力装置18から決定した制御指令情報及び断層画像再構成の条件情報を入力する。
ユーザが鋳造で作られた或る部品の欠陥情報を取得することを希望している場合を例に挙げて、本実施例のコンピュータ断層撮影方法を、図1に基づいて説明する。
オペレータは、まず、断層画像情報を得る被検体20を、回転テーブル4上に配置し、回転テーブル4に取り付ける。コンピュータ断層撮影システム1の起動に際して、オペレータは、料金演算装置16につながる開閉器を閉じ、その後に開閉器25を閉じる。電源26から開閉器25が閉じられると、電源26から料金演算装置16に電流が供給される。制御装置10にも電源26から電流が供給され、制御装置10の起動プログラムが立ち上がる。電源26からの電流は、開閉器25を閉じることによって、X線源装置2、X線源制御装置11、各放射線検出器9A、断層画像再構成装置14、及び断層画像情報処理装置15等にも供給される。
制御指令情報、断層画像再構成の条件情報及び断層画像情報の処理項目を入力する(ステップS1)。ユーザ(依頼元)が製造した製品である鋳造製部品の欠陥分析をしたいとの、ユーザからの申し入れを受けた、メーカから派遣されたオペレータは、ユーザと打ち合わせを行って、鋳造製部品の欠陥分析を行うためにコンピュータ断層撮影システム1に入力する制御指令情報(図2参照)及び断層画像再構成の条件情報(図3参照)を決定する。この制御指令情報は、撮影方式、スライスピッチ及び撮影範囲等を含んでいる。また、断層画像再構成の条件情報はピクセルサイズ及び画像サイズ等を含んでいる。
撮影方式には、(a)高精細な画像を得る撮影及び(b)短時間撮影がある。高精細な画像を得る撮影は、特開2000−9662号公報に記載された回転テーブル4の回転中心の位置をずらして被検体を載せた回転テーブルを回転させながら被検体の同じ横断面に対して再度X線を照射する撮影である。短時間撮影は、前述の特開2000−9662号公報に記載された撮影を行わず、被検体にX線を照射しながら、被検体を載せた回転テーブルの回転、及び回転テーブルを高さ方向に移動させる撮影方式である。ピクセルサイズは断層画像のピクセルの大きさである。スライスピッチは、断層画像間の距離であり、高さ方向における被検体の撮影間隔を示す。撮影範囲は、被検体に対する、X線照射開始高さ及びX線照射終了高さである。画像サイズは、被検体の水平断面における最終的な断層画像の領域の大きさを規定し、被検体の水平断面に基づいて決定される。
オペレータは、断層画像情報の処理項目である「鋳造製部品の欠陥分析」の情報、及びユーザとの打ち合わせで決定した、この欠陥分析を行うために必要な鋳造製部品(被検体)の断層画像を得るための制御指令情報(撮影方式、スライスピッチ及び撮影範囲の各情報)及び断層画像再構成の条件情報(ピクセルサイズ及び画像サイズの各情報)を、入力装置18に入力する。鋳造製部品の欠陥分析を行うためには高精細な画像を得るほうが良いので、撮影方式としては、(a)の「高精細な画像を得る撮影」が指定されている。入力された「鋳造製部品の欠陥分析」の情報は入力装置18から断層画像情報処理装置15に出力される。入力された制御指令情報は、入力装置18から制御装置10に伝えられ、制御装置10のメモリ(図示せず)に格納される。なお、回転テーブル4の回転角度ピッチは、制御装置10のメモリに予め格納されている。入力装置18に入力された断層画像再構成の条件情報は、断層画像再構成装置14に入力され、断層画像再構成装置14のメモリ(図示せず)に格納される。
被検体にX線を照射する(ステップS2)。鋳造製部品である被検体20が既に回転テーブル4上に設置されている。制御指令情報を入力した制御装置10は、まず、第3駆動開始指令を出力して第3駆動装置を駆動させる。第3駆動装置の駆動により、4本の回転ネジ6Aが回転して昇降テーブル24が上昇し、回転テーブル4に設置された被検体20も上昇する。昇降テーブル24及び回転テーブル4の上昇により被検体20のX線照射開始位置が制御指令情報に含まれる撮影範囲に規定されたX線照射開始高さまで上昇したとき、制御装置10は、第3駆動停止指令を第3駆動装置に出力し、第3駆動装置の駆動を停止して昇降テーブル24及び回転テーブル4の上昇を止める。この結果、被検体20のX線照射開始位置がプリコリメータ7の開口部7Aの中心に対向する。
撮影方式として一横断面で2回転の「高精細な画像を得る撮影」が指定されているので、本実施例では、特開2002−259834号公報に記載された被検体の一横断面に対して回転テーブル4の異なる複数の回転中心位置でそれぞれ回転テーブル4を回転させてX線を照射する撮影が行われる。具体的には、制御装置10が第2駆動開始指令を第2駆動装置に出力する。第2回転開始指令に基づいた第2駆動装置の駆動により、移動体24がガイドレール23に沿って移動し、一回転目の回転における回転テーブル4の回転の中心を、コリメータ8に設けたスリット8Aの角度ピッチを例えば1:7に内分する位置に合わせる。この回転中心の位置合わせが終了したとき、制御装置10は、第2駆動停止指令を第2駆動装置に出力し、第2駆動装置の駆動を停止して移動体24のガイドレール23に沿った移動を停止させる。さらに、制御装置10は、第1駆動装置22に対して第1駆動開始指令を出力して第1駆動装置22を駆動し回転テーブル4を回転させる。
制御装置10は、第1駆動開始指令を出力するとき、X線源制御装置11に対してX線照射開始指令を出力する。X線源制御装置11は、制御装置10からX線照射開始指令を入力したとき、X線源装置2にX線照射開始指令を出力する。X線源装置2はX線照射開始指令に基づいてX線源3からX線を放出する。このX線は、プリコリメータ7の開口部7Aを通過してファンビーム状になり、回転テーブル4とともに回転している被検体(本実施例では鋳造製部品)20に照射される。制御装置10は、記憶している回転テーブル4の回転角度ピッチに基づいて、回転テーブル4をその回転角度ピッチずつ回転させ、回転テーブル4を一回転させる。
被検体を透過したX線を検出する(ステップS3)。被検体20に照射されたX線は、被検体20を透過してコリメータ8に形成された各スリット8Aを通過してそれぞれのスリット8Aに対向して配置された各放射線検出器9Aに入射される。X線を入射したそれぞれの放射線検出器9Aは放射線検出信号を出力する。放射線検出信号を入力した検出回路13は、アナログ信号である放射線検出信号を増幅してデジタル信号に変換する。デジタル信号に変換された放射線検出信号は、断層画像再構成装置14に入力される。
同期装置12は、第1駆動装置22に設けられたエンコーダの出力信号を入力して回転テーブル4が回転角度ピッチだけ回転するたびにパルス信号を発生し、このパルス信号をX線源制御装置11及び検出回路13に出力する。このパルス信号はX線照射のトリガー信号となり、X線源制御装置11はパルス信号を入力するごとにX線源装置2にX線照射トリガー信号を出力し、X線源装置2はX線照射トリガー信号を入力するごとにX線源3から被検体20に向かってX線を放出する。また、同期装置12からで検出回路13に入力されたパルス信号は、放射線検出器9Aから出力された放射線検出信号を検出回路13に入力させるゲート信号となる。検出回路13は、同期装置12からパルス信号を入力するたびに、放射線検出器9Aからの放射線検出信号を入力する。同期装置12は、X線源3からのX線の放出と検出回路13への放射線検出信号の入力との同期をとっている。
回転テーブル4の回転中心をコリメータ8に設けたスリット8Aの角度ピッチを1:7に内分する位置に合わせた状態で回転テーブル4が一回転したとき、制御装置10は、第1駆動装置22に第1駆動停止指令を出力し、X線源制御装置11にX線照射停止指令を出力する。第1駆動停止指令により第1駆動装置22が停止して回転テーブル4の回転が停止され、X線源制御装置11からX線照射停止指令を入力したX線源装置2はX線源3からのX線の放出を停止する。その後、制御装置10が第2駆動開始指令を出力するので、第2駆動装置が駆動されて移動体24がガイドレール23に沿って移動され、回転テーブル4の回転中心が、コリメータ8に設けたスリット8Aの角度ピッチを例えば3:5に内分する位置に合わせられる。回転テーブル4の回転中心をその位置に位置合わせた後、制御装置10は、第1駆動装置22に対して、再び、第1駆動開始指令を出力し、X線源制御装置11に対してX線照射開始指令を出力する。これにより、スリット8Aの角度ピッチを例えば3:5に内分する位置で回転テーブル4が、制御装置10により、制御指令情報に含まれる回転角度ピッチずつ一回転される。X線源制御装置11からのX線照射停止指令を入力したX線源装置2はX線源3からX線を放出する。回転テーブル4の回転により回転される被検体20に対して、X線源3から放出されたX線が、前述したように照射される。被検体20を透過したX線も、各放射線検出器9Aで検出される。各放射線検出器9Aから出力されたそれぞれの放射線検出信号も、検出回路13で増幅されてデジタル信号に変換され、断層画像情報処理装置15に出力される。
被検体20のX線照射開始高さでの横断面に対して回転テーブル4の回転中心を異なる位置に合わせた状態でのそれぞれのX線照射による撮影が終了した後、制御装置10は、第1駆動装置22に第1駆動停止指令を出力するとともに、X線源制御装置11にX線照射停止指令を出力する。これにより、回転テーブル4の回転が停止し、X線源3からのX線の放出が停止する。
被検体20へのX線照射は、昇降テーブル5の昇降方向において、制御指令情報に含まれる、被検体20のX線照射開始高さからX線照射終了高さまでの範囲で制御指令情報に含まれるスライスピッチごとに、回転テーブル4の回転中心の位置を変えてそれぞれの位置で回転テーブル4を一回転させながら行われる。すなわち、制御装置10は、第3駆動開始指令を出力して第3駆動装置を駆動させ、昇降テーブル24が、X線照射開始高さから、X線照射開始高さよりも上方に位置するX線照射終了高さに向かって1つのスライスピッチの高さだけ上昇したとき、第3駆動停止指令を出力する。1つのスライスピッチの高さだけ上昇すると、被検体20のX線照射開始高さでの横断面から1番目の横断面で被検体20にX線を照射することになる。ちなみに、被検体20のX線照射終了高さでの横断面は、X線照射開始高さでの横断面からn番目の横断面である。nは、(X線照射終了高さ)/(スライスピッチ)であり、整数である。その1番目の横断面における被検体20へのX線照射は、前述したように、回転テーブル4の回転中心を例えば、2つの位置に合わせてそれぞれの位置で回転テーブル4を一回転させながら行われる。同様に、昇降テーブル5の上昇により回転テーブル4をスライスピッチずつ上昇させ、被検体20のX線照射開始高さからX線照射終了高さまでスライスピッチごとに、回転テーブル4の回転中心の位置を変えて回転テーブル4を回転させながら、回転テーブル4上の被検体20にX線を照射する。スライスピッチごとに被検体20を透過したX線が各放射線検出器9Aで検出され、各放射線検出器9Aから出力された各放射線検出信号が、検出回路13でデジタル信号に変換されて断層画像再構成装置14に入力される。断層画像再構成装置14に入力された、全ての放射線検出信号のデジタル信号が記憶装置17に格納されている。
被検体20のX線照射終了高さでの横断面に対して回転テーブル4の回転中心を2点目の位置に合わせた状態でのそれぞれのX線照射による撮影が終了した後、制御装置10は、第1駆動装置22に第1駆動停止指令を出力するとともに、X線源制御装置11にX線照射停止指令を出力する。これにより、回転テーブル4の回転が停止し、X線源3からのX線の放出が停止し、回転テーブル4上に設置された被検体20に対するX線撮影が終了する。
被検体の断層画像を再構成する(ステップS4)。断層画像再構成装置14は、入力装置18から入力された制御指令情報のうち画像サイズ、スライスピッチ及び撮影範囲の各情報に基づいて、再構成する断層画像の範囲及び枚数を特定する。断層画像再構成装置14は、記憶装置17に格納された放射線検出信号のデジタル信号を用いて、断層画像再構成の条件情報である、指定されたピクセルサイズ及び画像サイズの大きさで、〔1+{(X線照射終了高さ)−(X線照射開始高さ)}/(スライスピッチ)〕枚の断層画像を再構成し、再構成された各断層画像の情報を記憶装置17に格納する。再構成された断層画像の情報は、オペレータの要求に基づいて表示装置19に表示される。
断層画像情報を用いた処理を実行する(ステップS5)。断層画像情報を用いた処理は、断層画像情報処理装置15において行われる。本実施例では、「鋳造製部品の欠陥分析」の情報が入力装置18から断層画像情報処理装置15に入力されたので、断層画像情報処理装置15は、記憶装置17に格納されている画像情報処理プログラムのうち欠陥分析のプログラム(図5参照)を読み込む。図5は、解析項目、この解析項目の実施に必要な入力情報のカテゴリ、及びその解析項目の実施で得られた出力情報のカテゴリに含まれる各項目に対するポイントを示しているポイントリストである。
記憶装置17に格納されている画像情報処理プログラム(解析項目)としては、2次元表示(単独)、部材抽出処理、ヒストグラム、ポリゴンモデル化、異材混入、欠陥分析、CAD比較、振動分析、流体解析及びCAD変換等の各プログラムが存在する(図5参照)。
断層画像再構成装置14で再構成された各断層画像情報及び欠陥分析プログラムを用いて、断層画像情報処理装置15において行われる鋳造製部品の欠陥分析の処理を、図4を用いて詳細に説明する。
断層画像情報を読み込む(ステップS11)。鋳造製部品の断層画像情報が記憶装置17から読み込まれる。本実施例において、入力される断面画像情報は、三次元画像の構築に用いる複数の断層画像情報である。なお、図5において、入力情報のカテゴリ及び出力情報のカテゴリにそれぞれ記載された「一断面(2次元)」、「複数断面(2次元)」及び「多断面(2次元)」について説明する。一断面(2次元)は1つの横断面における2次元の断層画像の情報である。複数断面(2次元)は3次元画像を再構築する必要がない複数の横断面のそれぞれにおける2次元の断層画像の情報である。多断面(2次元)は3次元画像の再構築に用いる複数の横断面のそれぞれにおける2次元の断層画像の情報である。
欠陥識別しきい値を設定する(ステップS12)。オペレータが、欠陥識別しきい値を設定し、設定した各欠陥識別しきい値を入力装置18に入力する。欠陥識別しきい値は、被検体20を構成する材料に応じて決めることができる。本実施例では、被検体20が鋳造製品であるので、鋳造材の欠陥識別しきい値が設定される。これらの設定された欠陥識別しきい値は、断層画像情報処理装置15に入力され、記憶装置17に格納される。
欠陥抽出処理を実行する(ステップS13)。欠陥分析プログラムに含まれる欠陥抽出処理のプログラムを用いて、被検体20である鋳造製部品の内部に存在する欠陥の抽出処理を実行する。この抽出処理では、断層画像情報の各ピクセルの画素値が欠陥識別しきい値よりも小さいかが判定され、欠陥識別しきい値よりも小さい画素値を有するピクセルを抽出する。欠陥識別しきい値よりも小さい画素値を有する複数のピクセルで形成される領域が、空間的に閉じているとき、この領域を欠陥として処理する。断層画像情報を用いた鋳造品の内部の欠陥を抽出する処理の一例が、特開2006−329917号公報に記載されている。抽出された欠陥情報は記憶装置17に格納される。
欠陥表示のカラーマップの情報を設定する(ステップS14)。オペレータは、入力装置18に、ステップS13で抽出された欠陥を表示するときにおけるカラーマップの情報を入力する。このカラーマップ情報は、断層画像情報処理装置15に入力される。カラーマップ情報は、欠陥の大きさに応じて異なる色にすることが望ましい。欠陥画像情報を作成する(ステップS15)。ステップS13で抽出された欠陥の情報及びステップS14で入力されたカラーマップ情報を用いて、ユーザが指定した、色情報を含む三次元の欠陥画像情報を作成する。作成された色情報を含む三次元の欠陥画像情報は記憶装置17に格納される。
欠陥画像情報を表示装置に出力する(ステップS16)。色情報を含む三次元の欠陥画像情報が、断層画像情報処理装置15から表示装置19に出力され、表示装置19に表示される。欠陥画像情報をプリンタに出力する(ステップS17)。ステップS15で作成された色情報を含む三次元の欠陥画像情報が、カラープリンタ(図示せず)に出力され、用紙にプリントされる。欠陥画像情報をテキストで出力する(ステップS18)。ステップS15で作成された色情報を含む三次元の欠陥画像情報を用いて、オペレータの要求に応じて、欠陥の大きさ及び位置等の各情報を含むテキストを作成する。作成されたテキストデータは、表示装置19に表示され、プリンタでプリントすることもできる。欠陥抽出処理で作成した情報を保存する(ステップS19)。ステップS15で作成された欠陥画像情報及びステップS18で作成されたテキストデータは、記憶装置17に格納される。
ポイントを検索する(ステップS20)。ステップS20では、後述の「断層画像情報を用いた処理により依頼元への提供情報を得るために要する費用」の算出の根拠となるポイントの検索が行われる。このポイントは、図5に示されるように、入力情報のカテゴリごと、解析項目ごと、及び出力情報のカテゴリごとに予め付与されている。図5に示されたポイント情報は記憶装置17に格納されている。これらのポイントは、入力情報のカテゴリ、解析項目及び出力情報のカテゴリの各処理ごとに処理の難易度及び処理時間を考慮して付与されている。ステップS20において、前述のステップS11〜S19の各処理におけるポイントを、記憶装置17に記憶された、図5に示すポイント情報から検索する。
ステップS11における情報入力の処理では、鋳造製部品の断層画像情報が多断面(2次元)の状態で読み込まれるので、ポイントが「5」である。ステップS12の処理ではポイントが「0」である。ステップS13で実施される「鋳造製部品の欠陥分析」の処理では、解析項目に示された欠陥分析プログラムが使用されるため、ポイントは「5」である。ステップS14では、解析項目の疑似カラー表示のプログラムが使用されるため、ポイントは「2」となる。ステップS15では、出力画像である三次元の欠陥情報が作成されるため、ポイントが「10」となる。ステップS16の処理ではポイントが「0」であり、ステップS17の処理では、複数断面(2次元)の欠陥画像情報がプリンタに出力されるため、ポイントが「3」である。また、ステップS18の処理では、表形式データ(テキストデータ)が出力されるので、ポイントが「10」となる。ステップS19の処理ではポイントが「0」である。
ステップS20におけるポイントの検索処理で得られた、後述の「断層画像情報を用いた処理により依頼元への提供情報を得るために要する費用」の算出の根拠となるポイントの合計値は、「35」である。
以上の断層画像情報処理装置15における処理によって、鋳造製部品に対する断層画像情報を用いた欠陥分析の処理が終了する。
料金を算出する(ステップS6)。料金演算装置16は、(A)X線撮影のために回転テーブル4に設置した被検体20の移動及び回転のために要する費用、(B)X線を被検体20に照射するために要する費用及び(C)断層画像情報を用いた処理により依頼元への提供情報を得るために要する費用(断層画像情報を用いた処理によって加工された情報を得るために要した費用)をそれぞれ算出し、算出された3つの費用を合計して、被検体20の断層画像情報を用いた処理により得られた、ユーザ(依頼元)に提供する加工情報に対する料金を求める。
(A)のX線撮影のために回転テーブル4に設置した被検体20の移動及び回転のために要する費用は、開閉器25が閉じられて制御装置10への通電が開始された時点から被検体20のX線撮影が終了して開閉器25が開いた時点までの時間に時間当たりの単価を掛けて算出される。
具体的には、開閉器25が閉じられて開閉器25の閉信号が料金演算装置16に入力されたときに料金演算装置16に設けられた第1タイマーが作動し、開閉器25が開いて開閉器25の開信号が料金演算装置16に入力されたときにその第1タイマーが停止する。この第1タイマーは、開閉器25が閉じられて制御装置10に電流が供給されている時間(第1時間)、すなわち、被検体20の断層撮影のためにコンピュータ断層撮影システム1に通電している時間を計測する。料金演算装置16は、第1タイマーで計測された第1時間に時間当たりの単価を掛けて(A)のX線撮影のために回転テーブル4に設置した被検体20の移動及び回転のために要する費用を算出する。
(B)のX線を被検体20に照射するために要する費用は、X線源装置2から被検体20にX線を照射している時間に時間当たりの単価を掛けて算出される。具体的には、制御装置10がX線源制御装置11にX線照射開始指令を出力したときに、制御装置10に設けられた第2タイマーが作動し、制御装置10がX線源制御装置11にX線照射停止指令を出力したときに第2タイマーが停止する。X線照射開始指令を出力してX線照射停止指令を出力するまでの時間が第2タイマーで計測され、X線源装置2からX線が放出されている期間の第2時間情報が第2タイマーから料金演算装置16に伝えられる。第2タイマーで計測された第2時間の情報は、一回だけでなく、被検体20のX線照射開始高さからX線照射終了高さまでの範囲でスライスピッチごとに回転テーブル4の回転中心の位置を変えてそれぞれの位置で回転テーブル4を一回転させるときにX線が被検体20に照射されるたびに、料金演算装置16に伝えられる。これらの第2時間を合計することによって、被検体20のX線撮影において被検体20にX線を照射している時間が、料金演算装置16で算出される。
料金演算装置16は、第2時間の合計時間に時間当たりの単価を掛けて(B)の被検体20の断層画像情報を得るために要する費用を算出する。
(C)の断層画像情報を用いた処理により依頼元への提供情報(本例では、欠陥分析で得られた情報)を得るために要する費用、具体的には、断層画像情報を用いて行われた鋳造製部品の欠陥分析の情報を得るために要する費用は、断層画像情報処理装置15で実行される、断層画像情報を用いた処理を行う解析項目、この解析項目の実施に必要な、断層画像情報処理装置15への入力情報のカテゴリ(入力情報の容量及び形式等)、及びその解析項目の実施で得られた出力情報のカテゴリ(出力情報の容量及び形式等)のそれぞれに応じて算出される。前述した鋳造製部品の欠陥分析の処理では、ステップ20で検索されたポイント情報の合計値が、前述したように、「35」である。料金演算装置16は、ステップ20で検索されたポイント情報の合計値(鋳造製部品の欠陥分析の処理では「35」)にポイントあたりの単価を掛けて(C)の断層画像情報を用いた処理により依頼元への提供情報を得るために要する費用を算出する。
本実施例では、ステップS20におけるポイントの検索処理において、解析項目(例えば、鋳造製部品の欠陥分析)を実施する処理手順に含まれるステップの処理ごとに該当するポイント情報を記憶装置17から検索して読み出している。前述のポイント情報の合計値は、解析項目を実施する処理手順に含まれるステップの処理ごとに検索された各ポイント情報の合計値である。
料金演算装置16は、(A)、(B)及び(C)の各費用を合計して、被検体(鋳造製部品)20へのX線照射により得られた断層画像の情報を用いた「鋳造製部品の欠陥分析」に対する料金を算出する。
ユーザは、コンピュータ断層撮影システム1を貸与したメーカから、鋳造製部品の断層画像の情報、鋳造製部品の欠陥分析で得られた情報(依頼元への提供情報)、料金の情報を受け取り、そのメーカに対して請求された料金を支払う。
コンピュータ断層撮影システム1を用いて行った鋳造製部品の欠陥分析について説明したが、被検体の断層画像情報を用いた他の処理の例として、「CAD比較」の場合について説明する。「CAD比較」は、設計図面に基づいて製作された製品が設計図面通りに製作されたかを確認するための処理である。
「CAD比較」の処理を行うために必要な被検体の断層画像情報は、図8及び図9に示すコンピュータ断層撮影システム1によって得られる。設計図面に基づいて製作された或る製品を、被検体20としてコンピュータ断層撮影システム1の回転テーブル4の上に設置する。
「CAD比較」の処理を行う本実施例のコンピュータ断層撮影方法を、図1に基づいて説明する。
制御指令情報、断層画像再構成の条件情報及び断層画像情報の処理項目を入力する(ステップS1)。設計図面に基づいて製作したある製品が設計図面通りに製作されているかを確認したいとの、ユーザからの申し入れを受けた、メーカから派遣されたオペレータは、ユーザと打ち合わせを行って、CAD比較を行うためにコンピュータ断層撮影システム1に入力する制御指令情報を決定する。オペレータは、断層画像情報の処理項目である「CAD比較」の情報、及びユーザとの打ち合わせで決定した、このCAD比較を行うために必要な対象製品(被検体)の断層画像を得るための制御指令情報(撮影方式、スライスピッチ及び撮影範囲の各情報)及び断層画像再構成の条件情報(ピクセルサイズ及び画像サイズの各情報)を、入力装置18に入力する。「CAD比較」では、ユーザが撮影方式として(b)の短時間撮影を希望しため、撮影方式として「短時間撮影」を入力した。
被検体へのX線照射(ステップS2)を行う。撮影方式として「短時間撮影」を入力したので、「鋳造製部品の欠陥分析」の場合のように、被検体20の一つの横断面において回転テーブル4の回転中心の位置を変えて異なる回転中心の位置で回転テーブル4をそれぞれ一回転させることは行われず、被検体20の一つの横断面において回転テーブル4は一つの位置で一回転されるだけである。この回転する被検体20に対してX線が照射される。
被検体(前述のある製品)20のX線照射開始高さからX線照射終了高さまでの範囲で制御指令情報に含まれるスライスピッチごとに、回転テーブル上下動装置6により回転テーブル4を上昇させて回転テーブル4を一回転させ、回転される被検体20を透過したX線を各放射線検出器9Aで検出する(ステップS3)。鋳造製部品の欠陥分析の場合と同様に、被検体20の断層画像の再構成が行われる(ステップS4)。
断層画像情報を用いた処理を実行する(ステップS5)。本実施例では、「CAD比較」の情報が入力装置18から断層画像情報処理装置15に入力されたので、断層画像情報処理装置15は、記憶装置17に格納されている画像情報処理プログラムのうちCAD比較のプログラム(図5参照)を読み込む。
断層画像再構成装置14で再構成された各断層画像情報及びCAD比較プログラムを用いて、断層画像情報処理装置15において行われるCAD比較の処理を、図6を用いて詳細に説明する。
断層画像情報を読み込む(ステップS21)。或る部品の断層画像情報が記憶装置17から読み込まれる。しきい値を設定する(ステップS22)。オペレータが、製品の表面を検出するためのしきい値を断層画像のピクセルごとに設定し、設定された各しきい値が入力装置18に入力される。断層画像情報を用いたポリゴンモデルを作成する(ステップS23)。読み込んだ断層画像情報及び入力したしきい値に基づいて、製品の表面を抽出し、抽出した製品の表面に対してポリゴンモデルを作成する。
ポリゴンモデルのデータ及びCADデータを読み込む(ステップS24)。ステップS23において断層画像情報を用いて作成したポリゴンモデル(第1ポリゴンモデルと称する)のデータ、及びX線照射を行った製品のCADデータをCAD装置21から入力する。ポリゴンモデルとCADデータの位置合わせを行う(ステップS25)。入力した第1ポリゴンモデルのデータと入力したCADデータの位置合わせを行う。この位置合わせは、CADデータで表される製品の表面に対して作成したポリゴンモデル(第2ポリゴンモデルと称する)のデータを用いて行うことが望ましい。すなわち、第1ポリゴンモデルのデータと第2ポリゴンモデルのデータの位置合わせを行う。ポリゴンモデル(第1ポリゴンモデル)とCADデータの比較処理を行う(ステップS26)。CADデータ(第2ポリゴンモデル)を基準に、第1ポリゴンモデルの各ポリゴンに対して第2ポリゴンモデルの対応するポリゴンからのずれを算出する。
ずれ表示のカラーマップの情報を設定する(ステップS27)。オペレータは、入力装置18に、ステップS26で算出されたずれを表示するときにおけるカラーマップの情報を入力する。このカラーマップ情報は、断層画像情報処理装置15に入力される。カラーマップ情報は、CADデータに対する第1ポリゴンモデルのずれの大きさに応じて異なる色にすることが望ましい。比較処理結果の画像情報を作成する(ステップS28)。CADデータを用いて第2ポリゴンモデルの画像情報を作成し、さらに、ステップS26で算出されたずれの情報及びステップS27で入力されたカラーマップ情報を用いて、第1ポリゴンモデルの画像情報を作成する。第1ポリゴンモデルの画像情報及び第2ポリゴンモデルの画像情報は、三次元画像情報である。
画像情報を表示装置に出力する(ステップS29)。色情報を含む第1ポリゴンモデルの画像情報、及び第2ポリゴンモデルの画像情報が、断層画像情報処理装置15から表示装置19に出力され、表示装置19に表示される。ポリゴンモデルの画像情報だけでなく、ステップS26で算出したずれの値を併せて表示装置19に表示しても良い。ずれの情報をテキストで出力する(ステップS30)。ステップS28で作成された色情報を含む三次元の第1及び第2ポリゴンモデルの各画像情報を用いて、オペレータの要求に応じて、ずれの大きさ及びずれている位置等の各情報を含むテキストを作成する。作成されたテキストデータは、表示装置19に表示され、プリンタでプリントすることもできる。比較処理結果の情報を保存する(ステップS31)。ステップS26で算出したずれの値、及びステップS28で作成した各ポリゴンモデルの画像情報を記憶装置17に格納する。
以上の断層画像情報処理装置15における処理によって、製品に対する断層画像情報を用いたCAD比較の処理が終了する。
ポイントを検索する(ステップS32)。ステップS32では、前述の「断層画像情報を用いた処理により依頼元への提供情報を得るために要する費用」の算出の根拠となるポイントの検索が、ステップS20と同様に行われる。ステップS32において、前述のステップS21〜S31の各処理におけるポイントを、記憶装置17に記憶された、図5に示すポイント情報から検索する。
ステップS21における情報入力の処理では、CAD比較の対象となる部品の断層画像情報が多断面(2次元)の状態で読み込まれるので、ポイントが「5」である。ステップS22の処理ではポイントが「0」である。ステップS23で実施される「断層画像情報を用いたポリゴンモデルの作成」の処理では、解析項目に示されたポリゴンモデル化プログラムが使用されるため、ポイントは「3」である。ステップS24では、断層画像情報を用いて作成した第1ポリゴンモデルのデータ、及びX線照射を行った製品のCADデータのそれぞれが入力されるので、第1ポリゴンモデルのデータの入力に対するポイントが「7」で、及びCADデータの入力に対するポイントが「20」である。ステップS25の「ポリゴンモデルとCADデータの位置合わせ」の処理では、解析項目に示されたポリゴンモデルとCADデータの位置合わせのプログラムが使用されるため、ポイントが「10」である。ステップS26の「ポリゴンモデルとCADデータの比較処理」の処理では、解析項目に示されたCAD比較のプログラムが使用される関係上、ポイントが「5」である。ステップS27では、解析項目の疑似カラー表示のプログラムが使用されるため、ポイントは「2」となる。ステップS28では、出力画像である三次元の第1及び第2ポリゴンモデルの各画像情報が作成されるため、ポイントが「10」となる。ステップS29の処理ではポイントが「0」であり、ステップS30の処理では表形式データ(テキストデータ)が出力されるので、ポイントが「10」となる。ステップS31の処理ではポイントが「0」である。
ステップS32の検索処理で得られた、前述の「断層画像情報を用いた処理により依頼元への提供情報を得るために要する費用」の算出の根拠となるポイントの合計値は、「72」である。
CAD比較の処理に対する料金を算出する(ステップS6)。CAD比較の処理に対しても、前述の(A),(B)及び(C)の各費用が算出され、これらの費用に基づいてCAD比較の処理に対する料金が算出される。
(A)のX線撮影のために回転テーブル4に設置した被検体20を移動させるために要する費用が、前述の「鋳造製部品の欠陥分析」の場合と同様に、開閉器25が閉じられて制御装置10への通電が開始された時点から被検体20のX線撮影が終了して開閉器25が開いた時点までに経過した第1時間に時間当たりの単価を掛けて算出される。
(B)の被検体20の断層画像情報を得るために要する費用は、前述の「鋳造製部品の欠陥分析」の場合と同様に算出される。
(C)の断層画像情報を用いた処理により依頼元への提供情報を得るために要する費用、具体的には、断層画像情報を用いて行われたCAD比較の情報を得るために要する費用は、以下のように算出する。ステップS32で検索されたポイント情報の合計値(CAD比較の処理では「72」)にポイントあたりの単価を掛けて(C)の断層画像情報を用いた処理により依頼元への提供情報(本例では、CAD比較で得られた情報)を得るために要する費用が算出される。
さらに、料金演算装置16は、上記のように求められた(A)、(B)及び(C)の各費用を合計して、被検体(或る製品)20へのX線照射により得られた断層画像の情報を用いた「CAD比較」に対する料金を算出する。
ユーザは、コンピュータ断層撮影システム1を貸与したメーカから、CAD比較を行う或る製品の断層画像の情報、CAD比較で得られた情報(依頼元への提供情報)、料金の情報を受け取り、そのメーカに対して請求された料金を支払う。
コンピュータ断層撮影システム1を用いて行う、被検体の断層画像情報を用いた他の処理の例として、「鋳造製部品の欠陥分析及びその部品の振動解析」の場合について説明する。この例では、被検体の断層画像情報を用いた鋳造製部品の欠陥分析、及び欠陥分析を行った、欠陥が存在する鋳造製部品に対する振動解析を行う。鋳造製部品の欠陥分析及びその部品の振動解析の処理を行うために必要な被検体の断層画像情報は、図8及び図9に示すコンピュータ断層撮影システム1によって得られる。
制御指令情報、断層画像再構成の条件情報及び断層画像情報の処理項目を入力する(ステップS1)。鋳造製部品の欠陥分析を行って、さらに、この欠陥分析の結果を用いてその部品の振動解析を行いたいとの、ユーザからの申し入れを受けた、メーカから派遣されたオペレータは、ユーザと打ち合わせを行って、欠陥分析及び振動解析を行うためにコンピュータ断層撮影システム1に入力する制御指令情報を決定する。オペレータは、断層画像情報の処理項目である「欠陥分析及び振動解析」の情報、及びユーザとの打ち合わせで決定した、この欠陥分析及び振動解析を行うために必要な対象製品(被検体)の断層画像を得るための制御指令情報(撮影方式、スライスピッチ及び撮影範囲の各情報)及び断層画像再構成の条件情報(ピクセルサイズ及び画像サイズの各情報)を、入力装置18に入力する。「欠陥分析及び振動解析」では、ユーザが撮影方式として前述の「鋳造製部品の欠陥分析」と同様に(a)の高精細な画像を得る撮影を希望しため、撮影方式として「高精細な画像を得る撮影」を入力した。
被検体へのX線照射(ステップS2)を行う。撮影方式として「高精細な画像を得る撮影」を入力したので、「鋳造製部品の欠陥分析」と同様に、被検体20の一つの横断面において回転テーブル4の回転中心の位置を変えて異なる回転中心の位置で回転テーブル4がそれぞれ一回転される。この回転する被検体20に対してX線が照射される。回転される被検体20を透過したX線を各放射線検出器9Aで検出する(ステップS3)。前述の鋳造製部品の欠陥分析の場合と同様に、被検体20の断層画像の再構成が行われる(ステップS4)。
断層画像情報を用いた処理を実行する(ステップS5)。本実施例では、「欠陥分析及び振動解析」の情報が入力装置18から断層画像情報処理装置15に入力されたので、断層画像情報処理装置15は、記憶装置17に格納されている画像情報処理プログラムのうち欠陥分析、ポリゴンモデル化及び振動解析の各プログラム(図5参照)を読み込む。
断層画像再構成装置14で再構成された各断層画像情報及び欠陥分析、ポリゴンモデル化及び振動解析の各プログラムを用いて、断層画像情報処理装置15において行われる欠陥分析及び振動解析の処理を、図7を用いて詳細に説明する。
鋳造製部品の欠陥分析で行われたステップS11〜S16の各処理が順番に実行される。欠陥画像情報を用いたポリゴンモデルを作成する(ステップS35)。ステップS15で作成した欠陥画像情報及び入力したしきい値に基づいて、鋳造製部品の表面を抽出し、抽出した鋳造製部品の表面に対してポリゴンモデル(以下、第3ポリゴンモデルという)を作成する。ポリゴンモデルモデル情報を保存する(ステップS36)。ステップS35で作成した第3ポリゴンモデルモデルの情報を記憶装置17に格納する。以上の処理によって鋳造製部品の欠陥分析が終了する。
その後、ポリゴンモデル化のプログラムによるステップS37〜S40の各処理が実行される。断層画像情報を読み込む(ステップS37)。ステップS11と同様に、被検体20である鋳造製部品の断層画像情報が記憶装置17から読み込まれる。しきい値を設定する(ステップS38)。オペレータが、鋳造製部品の表面を検出するためのしきい値を断層画像のピクセルごとに設定し、設定された各しきい値が入力装置18に入力される。断層画像情報を用いたポリゴンモデルを作成する(ステップS39)。読み込んだ断層画像情報及び入力したしきい値に基づいて、鋳造製部品の表面を抽出し、抽出した鋳造製部品の表面に対してポリゴンモデル(以下、第4ポリゴンモデルという)を作成する。被検体のポリゴンモデルの情報を保存する(ステップS40)。ステップS39で作成した、被検体20である鋳造製部品の第4ポリゴンモデルの情報を記憶装置17に格納する。
ポリゴンモデル化のプログラムによる処理が終了した後、振動解析プログラムによるステップS41〜S45の各処理が実行される。
被検体のポリゴンモデルの情報を読み込む(ステップS41)。ステップS39で作成された、被検体20である鋳造製部品の第4ポリゴンモデル情報が記憶装置17から読み込まれる。欠陥画像情報のポリゴンモデルの情報を読み込む(ステップS42)。ステップS35で作成された、被検体20である鋳造製部品の第3ポリゴンモデルの情報が記憶装置17から読み込まれる。振動解析用の計算メッシュを作成する(ステップS43)。振動解析を行うその鋳造製部品に対する振動解析用の計算メッシュが作成される。振動解析を実行する(ステップS44)。ステップS13で実施された欠陥抽出処理の結果を反映し(例えば、この欠陥抽出処理で鋳造製品に欠陥が抽出された場合には抽出された欠陥の存在を反映)、振動解析プログラム及び作成された振動解析用の計算メッシュを用いて、被検体20である鋳造製部品に対する振動解析を実行する。振動解析結果の表示、出力及び保存を行う(ステップS45)。ステップS44の振動解析により得られた情報、及びステップS15で作成した欠陥画像情報を用いて、欠陥画像情報及び振動解析により得られた情報を含む鋳造製部品の3次元画像情報を作成する。この3次元の画像情報が表示装置19に表示される。さらに、振動解析により得られた情報を用いてテキストデータを作成し、このテキストデータをプリントアウトする。欠陥画像情報及び振動解析により得られた情報を含む鋳造製部品の3次元画像情報、及びテキストデータが記憶装置17に格納される。
ポイントを検索する(ステップS46)。ステップS46では、前述の「断層画像情報を用いた処理により依頼元への提供情報を得るために要する費用」の算出の根拠となるポイントの検索が、ステップS20と同様に行われる。ステップS46において、前述のステップS11〜S16及びS37〜S45の各処理におけるポイントを、記憶装置17に記憶された、図5に示すポイント情報から検索する。
欠陥分析及び振動解析において、ステップS11〜S16は図4に示す欠陥分析と同じポイントが検索される。すなわち、ステップS11における情報入力の処理でのポイントが「5」、ステップS12の処理でのポイントが「0」、ステップS13における「鋳造製部品の欠陥分析」の処理でのポイントは「5」、ステップS14でのポイントは「2」、ステップS15でのポイントが「10」、及びステップS16の処理でのポイントが「0」である。
ステップS35のポリゴンモデルの作成ではポイントが「3」である。ステップS36のポリゴンモデルの保存ではポイントが「0」である。ステップS37の情報入力の処理では、ステップS11と同じくポイントが「5」である。ステップS38の設定ではポイントが「0」となる。ステップS39におけるポリゴンモデルの作成ではポイントは「3」であり、ステップS40ではポイントが「0」になる。
さらに、振動解析の各処理におけるポイントについて述べる。ステップS41における被検体のポリゴンモデルの読み込みではポイントが「7」である。ステップS42における欠陥画像情報のポリゴンモデルの読み込みでも、ポイントが「7」となる。ステップS43及びS44が振動解析の処理に該当するので、ポイントは「10」である。ステップS45では、欠陥画像情報及び振動解析情報を含む鋳造製部品の3次元画像情報、及びキストデータがそれぞれ作成されているので、ポイントはそれぞれのポイント「10」を合計した「20」である。
ステップS46の検索処理で得られた、前述の「断層画像情報を用いた処理により依頼元への提供情報を得るために要する費用」の算出の根拠となるポイントの合計値は、「67」である。
鋳造製部品の欠陥分析及び振動解析の処理に対する料金を算出する(ステップS6)。この処理に対しても、前述の(A),(B)及び(C)の各費用が算出され、これらの費用に基づいてCAD比較の処理に対する料金が算出される。
(A)のX線撮影のために回転テーブル4に設置した被検体20を移動させるために要する費用が、前述の「鋳造製部品の欠陥分析」の場合と同様に、開閉器25が閉じられて制御装置10への通電が開始された時点から被検体20のX線撮影が終了して開閉器25が開いた時点までに経過した第1時間に時間当たりの単価を掛けて算出される。
(B)の被検体20の断層画像情報を得るために要する費用は、前述の「鋳造製部品の欠陥分析」の場合と同様に算出される。
(C)の断層画像情報を用いた処理により依頼元への提供情報を得るために要する費用、具体的には、断層画像情報を用いて行われた鋳造製部品の欠陥分析及び振動解析の情報を得るために要する費用は、以下のように算出する。ステップS46で検索されたポイント情報の合計値(鋳造製部品の欠陥分析及び振動解析の処理では「67」)にポイントあたりの単価を掛けて(C)の断層画像情報を用いた処理により依頼元への提供情報(本例では、鋳造製部品の欠陥分析及び振動解析で得られた情報)を得るために要する費用が算出される。
さらに、料金演算装置16は、上記のように求められた(A)、(B)及び(C)の各費用を合計して、被検体(鋳造製部品)20へのX線照射により得られた断層画像の情報を用いた「鋳造製部品の欠陥分析及び振動解析」に対する料金を算出する。
ユーザは、コンピュータ断層撮影システム1を貸与したメーカから、欠陥分析及び振動解析を行う鋳造部品の断層画像の情報、欠陥分析及び振動解析で得られた情報(依頼元への提供情報)、料金の情報を受け取り、そのメーカに対して請求された料金を支払う。
図5に示す、「鋳造製部品の欠陥分析」、「CAD比較」及び「振動解析」以外の解析項目の処理を行う場合においても、コンピュータ断層撮影システム1による断層画像情報、この断層画像情報を用いた解析項目の処理結果の情報、及びこの処理結果の情報を得るための料金を、「鋳造製部品の欠陥分析」、「CAD比較」及び「振動解析」と同様に得ることができる。
本実施例によれば、ユーザはコンピュータ断層撮影システム1に対する初期投資が不要になり、ユーザが望む情報、すなわち、コンピュータ断層撮影システム1を用いた被検体の断層画像情報及びこの断層画像情報を用いた処理によって加工された情報(例えば、解析結果の情報)を得ることができる。コンピュータ断層撮影システム1を製造するメーカは、コンピュータ断層撮影システム1をユーザに貸与するため、コンピュータ断層撮影システム1をユーザに使用してもらう機会が増えるので、コンピュータ断層撮影システム1の新たなマーケットを創造することができる。
被検体の断層画像情報及びこの断層画像情報を用いた処理によって加工された情報をユーザに提供する際に、これらの情報を得るために要した料金をユーザに対して請求する。この料金は、被検体の断層画像情報を再構成するために要した費用、及び断層画像情報を用いた処理によって加工された情報を得るために要した費用を含んでいる。
本実施例では、被検体の断層画像情報を再構成するために要した費用を、コンピュータ断層撮影システム1に通電している時間、及びX線を被検体に照射している時間に基づいて算出し、断層画像情報を用いた処理によって加工された情報を得るために要した費用を、解析項目に応じたポイント情報に基づいて算出しているので、ユーザに提供する、被検体の断層画像情報及び断層画像情報を用いた処理によって加工された情報に対する適切な料金をユーザに提示することができる。その解析項目の実施に必要な入力情報のカテゴリ、及びその解析項目の実施で得られた出力情報のカテゴリのそれぞれに応じたポイント情報を、解析項目に応じたポイント情報に加味して、断層画像情報を用いた処理によって加工された情報を得るために要した費用を算出しているので、この費用をより適切に算出することができる。
解析項目、この解析項目の実施に必要な入力情報のカテゴリ、及びその解析項目の実施で得られた出力情報のカテゴリのそれぞれに応じたポイントは、その解析項目を実施する処理手順に含まれるステップの処理ごとに該当するポイント情報を記憶装置17から検索するので、断層画像情報を用いた処理によって加工された情報に対する料金の算出に必要なポイント情報を適切に得ることができる。
或る製品(被検体)の断層画像情報を用いて1つの解析項目に関する処理を実施し、この処理よって得られた、断層画像情報の加工情報を用いて他の解析項目に関する処理を実施して他の加工情報を得た場合においても、前者の解析項目に対するポイント情報及び後者の解析項目に対する他のポイント情報を用いて、断層画像情報を用いた処理によって加工された情報に対する料金の算出することができる。
コンピュータ断層撮影システム1で得られた或る製品(被検体)の断層画像情報に対して、断層画像情報を用いた新たな加工情報を得たいとのニーズが創生され、図5に示されていない新たな解析項目のプログラムが開発された場合には、この新たに開発された解析項目のプログラムを記憶装置17に格納する。併せて、その新たに開発された解析項目に対して新たに決めたポイントが、この解析項目に対応させて記憶装置17に格納される。さらに、この解析項目の名称及びこの解析項目について決定したポイントが、解析項目、この解析項目の実施に必要な入力情報のカテゴリ、及びその解析項目の実施で得られた出力情報のカテゴリの各項目に対するポイントを示しているポイントリスト(図5参照)に付加される。その後、ある製品の断層画像情報、及びこの新たに追加した解析項目のプログラムを用いた処理が実行される場合には、この新たに追加した解析項目のポイント情報を用いて、断層画像情報を用いた処理によって加工された情報を得るために要した費用を算出することができる。