JP2013150590A - セロビオースデヒドロゲナーゼ様グルコースデヒドロゲナーゼ - Google Patents

セロビオースデヒドロゲナーゼ様グルコースデヒドロゲナーゼ Download PDF

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Abstract

【課題】実用性の高いグルコース測定用酵素及びその用途を提供することを課題とする。
【解決手段】アスペルギルス・ニガー由来のセロビオースデヒドロゲナーゼ様タンパク質からなるグルコースデヒドロゲナーゼ及びそれを用いたフルコース測定法などが提供される。
【選択図】なし

Description

本発明はグルコースデヒドロゲナーゼに関する。詳しくは、アスペルギルス・ニガー(A.ニガー)由来のセロビオースデヒドロゲナーゼ様グルコースデヒドロゲナーゼ及びその用途等に関する。
糖尿病患者の自己血糖測定は極めて重要であり、血糖値を特異的且つ正確に測定できることが要求される。現在、グルコースオキシダーゼ(E.C.1.1.3.4)、NAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.47)、PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.5.2)(例えば特許文献1〜3を参照)、FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.99.10)(例えば特許文献4、5、6、非特許文献1〜4を参照)等の酸化還元酵素を利用した自己血糖測定器が頻用されている。
自己血糖測定に用いるグルコースオキシダーゼ(GO)やグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)は、血中グルコースを酸化する反応を触媒する。その際、基質結合ポケットに存在するFADやPQQ等の補酵素が還元されることになる。還元型補酵素と、遷移金属錯体や有機化合物(キノン化合物や酸化還元色素)等の電子メディエータの間で電子の授受が行われ、電子メディエータは還元型となる。この還元型電子メディエータが電極に作用する。これによって生ずる電流を検出することによって検体中の血糖値を測定する(電極法)。
自己血糖測定器に近年多く使用されている補酵素結合型のFAD依存性GOやFAD依存性GDHの場合、補酵素が酵素の比較的内部、即ち基質結合ポケットの奥に存在する。そのため、たとえ電子交換反応特性が良くても、補酵素に近づき難い構造の電子メディエータは補酵素周辺部位との親和性や距離が問題となり使用し難い。即ち、これら酵素は基質特異性は比較的優れているものの、電子メディエータ選択性は狭い。
糖尿病患者の血糖測定に適した、より正確な測定が可能な自己血糖測定器には、酵素反応を効率よく電極へ伝えるため、電子交換反応特性に優れた電子メディエータの使用が望まれる。しかし、電子交換反応特性の高い電子メディエータが、酵素の補酵素周辺部位に高い親和性を示すとは限らない。実際には、補酵素結合型のFAD依存性GOやFAD依存性GDHとの親和性等を考慮し、電子交換反応特性がそれほど優れていないものが使用されることも多い。即ち、電子交換反応特性の面からは最適とは言い難い電子メディエータが選択されることが多いという実情がある。
PQQ依存性GDHでは補酵素PQQが酵素の比較的表面に存在することから、電子メディエータが非常に近づき易い。よって様々な電子メディエータの使用が可能であり、電子交換反応特性の面で適した電子メディエータの選択が比較的容易となる。また、PQQ依存性GDHは電極と直接電子交換反応が可能であることも知られている。しかし、この酵素はマルトースを始めその他の糖にも作用するなど、自己血糖測定には適さない基質特異性を示す。即ち、この酵素は電子メディエータ選択性は広いものの、基質特異性の点で課題を残す。
先の例から、より正確な測定が可能な自己血糖測定器に用いる酵素には、基質特異性が高く、且つ酸化還元部位が酵素分子表面に存在することが望ましいといえる。FAD依存性GOやFAD依存性GDHのグルコース結合部位は、グルコースを認識するためにポケットのような構造をとることで高い基質特異性を示す。触媒反応に必要な補酵素であるFADは基質ポケットの奥に存在する。従って、電子交換反応特性から考えれば、補酵素は酵素分子表面にあることが望ましいが、FADにはそれが望めない。仮に別の部位にも酸化還元部位が存在すれば、電子交換反応特性にも優れたものとなる。
グルコースを基質とするものに限らなければ、例えばPQQとヘムを有するものや、FADとヘムを有するもの等、酸化還元部位を二つ有する酵素の報告がある。ヘムはシトクロムの構成成分であり、シトクロム表面に存在し、電子交換反応に寄与する。一方、グルコースに作用する酵素として、補酵素にシトクロム内ヘムとFADを有するブルクホルデリア・セパシア由来のGDHが知られている。FADとヘムの電子交換反応を介して、ヘムも電子メディエータとの電子交換反応に寄与できる。このヘムは分子表面に存在し、電子メディエータは非常に近づき易い。従って、様々な電子メディエータの使用が可能である。また、当該酵素は電極との直接電子交換反応が可能であることも知られている。ただし、ヘテロ3量体のサブユニット構造をとる酵素であるため、十分な活性を発現させることが困難であるとともに、マルトースにも反応するなど、自己血糖測定には不適な基質特異性を示す。このように、ブルクホルデリア・セパシア由来のGDHは実用上非常に大きな課題を抱える。
特開2000−350588号公報 特開2001−197888号公報 特開2001−346587号公報 国際公開第2004/058958号パンフレット 国際公開第2007/139013号パンフレット 特開2007−125047号公報 国際公開第2005/030807号パンフレット 国際公開第2010/126139号パンフレット 特開2008−35748号公報
Studies on the glucose dehydrogenase of Aspergillus oryzae. I. Induction of its synthesis by p-benzoquinone and hydroquinone, T.C. Bak, and R. Sato, Biochim. Biophys. Acta, 139, 265-276 (1967). Studies on the glucose dehydrogenase of Aspergillus oryzae. II. Purification and physical and chemical properties, T.C. Bak, Biochim. Biophys. Acta, 139, 277-293 (1967). Studies on the glucose dehydrogenase of Aspergillus oryzae. III. General enzymatic properties, T.C. Bak, Biochim. Biophys. Acta, 146, 317-327 (1967). Studies on the glucose dehydrogenase of Aspergillus oryzae. IV. Histidyl residue as an active site, T.C. Bak, and R. Sato, Biochim. Biophys. Acta, 146, 328-335 (1967). Gluconic Acid Forming Enzymes in Aspergillus niger , H. M. Muller, Zbl. Bakt. Abt. Bd, 132, 14-24 (1977)
そこで本発明は、実用性の高いグルコース測定用酵素及びその用途等を提供することを課題とする。
自己血糖測定等に利用される酵素には、基質特異性が高いことが要求される一方で、電子メディエータ選択性が広いことが望まれる(電子メディエータを省略する場合においては、電子メディエータを介さずに電極等との電子交換反応を行えることが望まれる)。このような要望に応えるためには、基質であるグルコースの結合する酸化還元部位に加えて、電子メディエータが作用するための或いは電極等が直接作用するための酸化還元部位が同一ペプチド鎖内に存在することが有利である。しかしながら、このような構造の天然型GDHの報告は無く、その探索は非常に難航した。
ところで、酸化還元酵素遺伝子とシトクロム遺伝子とを連結し、単一蛋白として発現させることによって、同一ペプチド鎖内に触媒部位(酸化還元部位)とシトクロム構造を持たせる方法が報告されている(例えば特許文献7、8を参照)。しかし、もともと2つの独立した蛋白を人工的に強引に連結させた、不自然且つ立体構造的にもアンバランスな融合であるため、FADとヘムとの位置関係等において、電子交換反応に適した構造を有しているとは言い難い。
研究を進める中で、ファネロケイト・クリソスポリウム由来のセロビオースデヒドロゲナーゼに注目した。当該酵素は同一ペプチド鎖内に触媒部位の他に酸化還元部位を有する。この酵素はFAD依存性のデヒドロゲナーゼであり、同一ペプチド鎖内にシトクロム構造を有しヘムを持つ。しかも電子伝達効率も良く、電極への直接電子移動も可能な酵素として知られている。しかしながら当該セロビオースデヒドロゲナーゼは基質特異性が非常に広く、セロビオース以外にも、ラクトースをはじめマルトースやキシロビオース、ガラクトースなどにも反応する。即ち、基質特異性が低いばかりか、グルコースに対する特異的反応性も認められない。とはいえ、構造的には注目に値するものであり、もしも、同様な構造を有し、グルコース特異的に作用する酵素を発見できれば、まさに目的に叶う。そこで、セロビオースデヒドロゲナーゼの遺伝子配列やアミノ酸配列のホモロジー検索を網羅的に実施することにした。その結果、非常に多くの糸状菌類が類似遺伝子を有することが判明した。しかしながら、検索でヒットした遺伝子から翻訳される蛋白のほぼ全てはセロビオースデヒドロゲナーゼとして同定されており、この方法ではグルコース特異的に作用する酵素を得ることは全く不可能とも思われた。ところが、詳細な検討の結果、本発明者らは、ヒットした中で1つの遺伝子のみが特徴的な配列を有することを発見した。即ち、A.ニガー由来のセロビオースデヒドロゲナーゼと同定されている配列の特に触媒部位付近において、他のセロビオースデヒドロゲナーゼと異なる特徴的な配列が存在することを見出した。この事実は、当該酵素の基質特異性が、他のセロビオースデヒドロゲナーゼと異なる可能性を期待させるものである。そこで、遺伝子情報に基づき当該酵素を実際に発現させ、その特性を確認した結果、データベース上の登録情報とは異なり、当該酵素がセロビオースデヒドロゲナーゼではなく、極めて実用性に優れたGDHであることが判明した。即ち、電子交換反応特性に優れたセロビオースデヒドロゲナーゼと構造的に類似したGDHを見出すことに成功した。このように、本発明者らの検討の結果、セロビオースデヒドロゲナーゼ様の構造(即ち、同一ペプチド鎖内にFAD結合ドメインとシトクロムドメイン)を有する実用性の高いGDHが同定された。一方で、実用性の高いGDHの生産菌として、A.ニガーが非常に適していることが判明した。分子内にFAD結合ドメインとシトクロムドメインを有することは、電子メディエータ選択性或いは電極等との直接電子交換反応に有利な構造となり、自己血糖測定に用いる酵素として非常に適する。例えば、従来のFAD依存性GDH等では親和性の問題から選択され難い疎水性メディエータの使用も可能になる。
以下に示す本発明はこれらの成果に基づく。尚、同一ペプチド鎖内にシトクロム構造も有する天然型GDHの報告は過去に無い。また、FAD依存性GDHの報告は多く、特にアスペルギルス属の多くはFAD依存性GDHを生産することが知られている(例えば特許文献9、非特許文献5を参照)。しかしながら、糸状菌由来のFAD依存性GDHに関する文献の中に、シトクロム構造も併せ持つ(即ち、補欠分子としてFAD以外にヘムも有する)酵素に関する記述は認められない。
[1]アスペルギルス・ニガー由来のセロビオースデヒドロゲナーゼ様タンパク質からなるグルコースデヒドロゲナーゼ。
[2]以下の特性を備える、[1]に記載のグルコースデヒドロゲナーゼ:
(1)作用: 電子受容体存在下でグルコースの水酸基を酸化してグルコノ−δ−ラクトンを生成する反応を触媒する;
(2)基質特異性: D−グルコース選択的に作用する;
(3)補欠分子: FADとヘムを有する;
(4)構造: モノマー構造である。
[3]以下の特性を更に備える、[2]に記載のグルコースデヒドロゲナーゼ:
(5)分子量: 約16万Da(ゲルろ過による)、約12万Da(SDS-PAGEによる);
(6)至適pH: 8付近;
(7)至適温度: 45℃付近;
(8)pH安定性: pH4〜7の範囲で安定;
(9)温度安定性: 40℃以下で安定。
[4]配列番号1〜4のいずれかのアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含む、[1]に記載のグルコースデヒドロゲナーゼ。
[5]配列番号1〜5のいずれかのアミノ酸配列からなる、[1]に記載のグルコースデヒドロゲナーゼ。
[6][1]〜[5]のいずれか一項に記載のグルコースデヒドロゲナーゼを含む、グルコース測定用組成物。
[7][1]〜[5]のいずれか一項に記載のグルコースデヒドロゲナーゼを含む、グルコース測定用試薬。
[8][7]に記載のグルコース測定用試薬を含む、グルコース測定用キット。
[9][1]〜[5]のいずれか一項に記載のグルコースデヒドロゲナーゼを用いて試料中のグルコースを測定することを特徴とする、グルコース測定法。
[10]以下のステップ(1)及び(2)を含む、グルコースデヒドロゲナーゼの製造方法:
(1)[1]〜[5]のいずれか一項に記載のグルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を保有する微生物を培養するステップ;
(2)培養後の培養液及び/又は菌体より、グルコースデヒドロゲナーゼを回収するステップ。
[11][1]〜[5]のいずれか一項に記載のグルコースデヒドロゲナーゼをコードするDNAを含む、グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子。
A.ニガー由来GDHのFAD結合ドメイン(GDH_FADdomain)とA.ニガー由来GO(1CF3A_PROTEIN)との配列比較(CLUSTAL 2.1を使用)。A.ニガー由来GOにおけるFAD結合位置に対応する位置を、A.ニガー由来GDHのFAD結合位置(#で示す位置)と推定した。 A.ニガー由来GDHのヘム結合ドメイン(AnigerGDH)とPhanerochaete chrysosporium由来のシトクロムc(1D7BA_CELLOBIOSE及び1D7CA_CELLOBIOSE)との配列比較(CLUSTAL 2.1を使用)。Phanerochaete chrysosporium由来のシトクロムcにおけるヘム結合位置に対応する位置を、A.ニガー由来GDHのヘム結合位置(#で示す位置)と推定した。 A.ニガー由来GDHの触媒部位(Query)とPhanerochaete chrysosporium由来セロビオースデヒドロゲナーゼの触媒部位(Subject)との比較。Phanerochaete chrysosporium由来セロビオースデヒドロゲナーゼにおける活性に重要な位置に対応する位置を、A.ニガー由来GDHの活性に重要な位置(E254、H676、M65、N724)と推定した。 A.ニガー由来GDHの推定アミノ酸配列(全長)と、公共のデータベースに登録されているA.ニガー由来セロビオースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列との比較。A.ニガー由来GDHの推定アミノ酸配列(nigerGDH。配列番号5)をNCBIデータベースに登録されたA.niger ATCC 1015株由来セロビオースデヒドロゲナーゼ(NCBI1015。配列番号23)、JGIデータベースに登録されたA.niger ATCC 1015株由来セロビオースデヒドロゲナーゼ(JGI1015。配列番号24)、及びNCBIデータベースに登録されたA.niger CBS 513.88株由来セロビオースデヒドロゲナーゼ(CBS513.88。配列番号25)と比較した。 A.ニガー由来GDHの至適pHを示すグラフ。 A.ニガー由来GDHの至適温度を示すグラフ。 A.ニガー由来GDHのpH安定性を示すグラフ。 A.ニガー由来GDHの温度安定性を示すグラフ。 SDS-PAGEの結果。サッカロマイセス・セレビジェを宿主として発現させたA.ニガー由来GDHをSDS-PAGEに供した。左側:ゲルろ過カラム(Sephacryl S-300 High Resolution)精製サンプル、右側:エンドグルカナーゼH処理後の精製サンプル。
1.用語
本明細書において用語「単離された」は「精製された」と交換可能に使用される。本発明の酵素(GDH)に関して使用する場合の「単離された」とは、本発明の酵素が天然材料に由来する場合、当該天然材料の中で当該酵素以外の成分を実質的に含まない(特に夾雑タンパク質を実質的に含まない)状態をいう。具体的には例えば、本発明の単離された酵素では、夾雑タンパク質の含有量は重量換算で全体の約20%未満、好ましくは約10%未満、更に好ましくは約5%未満、より一層好ましくは約1%未満である。尚、それと異なる意味を表すことが明らかでない限り、本明細書において単に「グルコースデヒドロゲナーゼ」と記載した場合は「単離された状態のグルコースデヒドロゲナーゼ」を意味する。グルコースデヒドロゲナーゼの略号GDHについても同様である。
2.GDH及びその生産菌
本発明の第1の局面はGDH及びその生産菌を提供する。本発明のGDH(以下、「本酵素」ともいう)は以下の特性を備える。まず、本酵素は次の反応、即ち、電子受容体存在下でグルコースの水酸基を酸化してグルコノ−δ−ラクトンを生成する反応を触媒する。一方、本酵素は基質特異性に優れ、D-グルコース選択的に作用する。例えば、本酵素のマルトースに対する反応性は極めて低い。また、D-ガラクトース、D-フルクトースなどに対する反応性も非常に低い。好ましい態様では、D-グルコースに対する反応性を100%としたときの、D-マルトースに対する反応性は1%以下又は実質的に認められない。D-ガラクトース及びD-フルクトースに対する反応性についても1%以下又は実質的に認められない。基質特異性に優れる本酵素は、様々な用途に適用可能であること、即ち汎用性が高いともいえる。尚、本酵素の反応性及び基質特異性は、後述の実施例に示す方法で測定・評価することができる。
本酵素の由来、即ち本酵素の生産菌はアスペルギルス・ニガー(A.ニガー)である。即ち、本酵素はA.ニガーに由来する。生産菌は野生株(天然からの分離株であって、遺伝子操作などの変異・改変処理が施されていないもの)であっても変異株であってもよい。尚、A.ニガー由来のGDH遺伝子を宿主微生物に導入して得られた形質転換体が産生するGDHもA.ニガー由来のGDHに該当する。
本酵素の生産菌の具体例を示すと、A.ニガーNBRC 6428株である。当該菌株はNRBCカルチャーコレクション(独立行政法人 製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部 生物遺伝資源部門、〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に保管された菌株であり、独立行政法人 製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部 生物遺伝資源部門(NBRC)より、所定の手続きを経ることによってその分譲を受けることができる。
本発明者らは、A.ニガーNBRC 6428株が産生するGDHについて、以下の通り、その分子量、至適pH、至適温度、pH安定性、温度安定性を明らかにした(詳細は後述の実施例の欄に記載する)。また、このGDHが分子内に補欠分子としてFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)とヘムを有すること、換言すれば、FAD結合ドメインとシトクロムドメインが連結されたモノマー構造を示すことを確認した。尚、当該GDHは、本来的に(即ち天然状態において)FAD結合ドメインとシトクロムドメイン(ヘム結合ドメイン)を有するものであり、この点において、酸化還元酵素遺伝子とシトクロム遺伝子とを連結し、単一蛋白として発現させることによって、同一ペプチド鎖内に触媒部位(酸化還元部位)とシトクロム構造を持たせたもの(例えば特許文献7、8を参照)と峻別される。
<A.ニガーNBRC 6428株由来GDHの特性>
(1)作用: 電子受容体存在下でグルコースの水酸基を酸化してグルコノ−δ−ラクトンを生成する反応を触媒する
(2)基質特異性: D−グルコースに特異的に反応するマルトースに対する反応性が低い
(3)補欠分子: FADとヘムを有する
(4)構造: モノマー構造である
(5)分子量: 約16万Da(ゲルろ過による)、約12万Da(SDS-PAGEによる);
(6)至適pH: 8付近;
(7)至適温度: 45℃付近;
(8)pH安定性: pH4〜7の範囲で安定;
(9)温度安定性: 40℃以下で安定。
約16万Daの分子量はゲルろ過で測定した値である。また、約12万Daの分子量はSDS-PAGEからの推定である。至適pHについては後述の実施例に示すように例えばMcllvaineバッファー中で測定した値であり、至適温度についても同様に例えばPIPES-NaOHバッファー(pH6.5)中で測定した値である。また、特定のpH条件の下、37℃で30分間処理したときに80%以上の活性を維持したとき、当該pH条件において「安定」であるということができる。同様に、特定の温度条件の下、適当な緩衝液中(例えばPIPES-NaOHバッファー、pH6.5)で20分間処理した後に90%以上の活性を維持するとき、当該温度条件において「安定」であるということができる。
一方、本発明者らの検討の結果、A.ニガーNBRC 6428株が産生するGDHの推定アミノ酸配列が決定された。そこで本発明の一態様では、GDHがアミノ酸配列で特定される。具体的には、本発明のGDHは配列番号1〜4のいずれかのアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を示すアミノ酸配列(以下、「等価アミノ酸配列」と呼ぶ)を含む。配列番号1のアミノ酸配列は、後述の実施例に示した方法によって酵母を宿主として発現させたGDHの配列であり、配列番号2のアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列のN末端の二つのアミノ酸(メチオニン-アスパラギン酸)が本来のアミノ酸であるアスパラギンに置き換わったものであり、配列番号3のアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列にC末端STDリッチ配列(セリン(S)、アスパラギン酸(D)及びスレオニン(T)に富む配列)が付加されたものであり、配列番号4のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列にC末端STDリッチ配列が付加されたものである。
配列番号1〜4のアミノ酸配列は、FAD結合ドメインとシトクロムドメイン(ヘム結合ドメイン)がリンカーによって連結された構造を有する。当該構造部分のアミノ酸配列は、A.ニガー由来のセロビオースデヒドロゲナーゼとして公共のデータベースに登録されている対応アミノ酸配列(上記構造部分に相当するアミノ酸配列)と一部において相違する。詳しくは、図4に示す通り、NCBI(National Center for Biotechnology Information)データベースに登録されたA.niger ATCC 1015株由来セロビオースデヒドロゲナーゼ(Accession No. EHA22215.1)との間では1アミノ酸の相違を認め、JGI(DOE Joint Genome Institute)データベースに登録されたA.niger ATCC 1015株由来セロビオースデヒドロゲナーゼ(Accession No. e_gw1.16.561.1)との間では1アミノ酸の相違を認め、NCBIデータベースに登録されたA.niger CBS 513.88株由来セロビオースデヒドロゲナーゼ(Accession No. XP_001402432.1)との間では2アミノ酸の相違を認める。
等価アミノ酸配列は、基準となるアミノ酸配列(本願においては配列番号1〜4のいずれかのアミノ酸配列)と同一(100%の同一性)であるもの、即ち配列番号1〜4のアミノ酸配列と、アミノ酸配列に一部の相違を認めるものの機能が同等であるものに大別できる。ここでの「アミノ酸配列に一部の相違」とは、典型的には、アミノ酸配列を構成する1〜数個のアミノ酸の欠失、置換、若しくは1〜数個のアミノ酸の付加、挿入、又はこれらの組合せによりアミノ酸配列に変異(変化)が生じていることをいう。また、ここでの「機能」とは、GDH活性、即ち、電子受容体存在下でグルコースの水酸基を酸化してグルコノ−δ−ラクトンを生成する反応を触媒する活性をいう。当該機能に実用上問題となる影響を与えない限り、アミノ酸配列が相違する位置は特に限定されず、また複数の位置で相違が生じていてもよい。好ましくは、GDH活性に必須でないアミノ酸残基における保存的アミノ酸置換によって当該相違が生じている。
ところで、上記の通り、本酵素は、補欠分子としてFADとヘムを有するGDHである。従って、本酵素がその機能ないし活性を発揮する上でFAD結合位置及びヘム結合位置が特に重要になるまた、触媒部位においても活性に重要なアミノ酸残基が存在する。従って、これらの位置においては、上記のごときアミノ酸の相違が生じていないことが好ましい。この点に関して、本酵素の推定FAD結合位置、推定ヘム結合位置及び触媒部位における重要なアミノ酸残基を図1〜3に示す。尚、上記の「保存的アミノ酸置換」とは、あるアミノ酸残基を、同様の性質の側鎖を有するアミノ酸残基に置換することをいう。アミノ酸残基はその側鎖によって塩基性側鎖(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)のように、いくつかのファミリーに分類されている。保存的アミノ酸置換は好ましくは、同一のファミリー内のアミノ酸残基間の置換である。
等価アミノ酸配列の別の例として、上記の基準となるアミノ酸配列にシグナルペプチド配列が付加された配列(例えば、配列番号3のアミノ酸配列にシグナルペプチド配列が付加された配列)を挙げることができる。
一般に、機能を維持する上で同一性は高い方が有利である。そこで、基準となるアミノ酸配列との間の同一性は、例えば90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、より一層好ましくは99%、最も好ましくは100%である。
等価アミノ酸配列からなるタンパク質(等価タンパク質)が、付加的な性質を有していてもよい。かかる性質として、例えば、配列番号1〜4に示すアミノ酸配列からなるタンパク質に比べて安定性に優れているという性質、低温及び/又は高温においてのみ異なる機能を発揮するという性質、至適pHが異なるという性質等が挙げられる。
ところで、二つのアミノ酸配列又は二つの核酸(以下、これらを含む用語として「二つの配列」を使用する)の同一性(%)は例えば以下の手順で決定することができる。まず、最適な比較ができるよう二つの配列を並べる(例えば、第一の配列にギャップを導入して第二の配列とのアライメントを最適化してもよい)。第一の配列の特定位置の分子(アミノ酸残基又はヌクレオチド)が、第二の配列における対応する位置の分子と同じであるとき、その位置の分子が同一であるといえる。二つの配列の同一性は、その二つの配列に共通する同一位置の数の関数であり(すなわち、同一性(%)=同一位置の数/位置の総数 × 100)、好ましくは、アライメントの最適化に要したギャップの数およびサイズも考慮に入れる。
二つの配列の比較及び同一性の決定は数学的アルゴリズムを用いて実現可能である。配列の比較に利用可能な数学的アルゴリズムの具体例としては、KarlinおよびAltschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68に記載され、KarlinおよびAltschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-77において改変されたアルゴリズムがあるが、これに限定されることはない。このようなアルゴリズムは、Altschulら (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10に記載のNBLASTプログラムおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。本発明の核酸分子に等価なヌクレオチド配列を得るには例えば、NBLASTプログラムでscore = 100、wordlength = 12としてBLASTヌクレオチド検索を行えばよい。本発明のポリペプチド分子に等価なアミノ酸配列を得るには例えば、XBLASTプログラムでscore = 50、wordlength = 3としてBLASTポリペプチド検索を行えばよい。比較のためのギャップアライメントを得るためには、Altschulら (1997) Amino Acids Research 25(17):3389-3402に記載のGapped BLASTが利用可能である。BLASTおよびGapped BLASTを利用する場合は、対応するプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。詳しくはhttp://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。配列の比較に利用可能な他の数学的アルゴリズムの例としては、MyersおよびMiller (1988) Comput Appl Biosci. 4:11-17に記載のアルゴリズムがある。このようなアルゴリズムは、例えばGENESTREAMネットワークサーバー(IGH Montpellier、フランス)またはISRECサーバーで利用可能なALIGNプログラムに組み込まれている。アミノ酸配列の比較にALIGNプログラムを利用する場合は例えば、PAM120残基質量表を使用し、ギャップ長ペナルティ=12、ギャップペナルティ=4とすることができる。
二つのアミノ酸配列の同一性を、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを用いて、Blossom 62マトリックスまたはPAM250マトリックスを使用し、ギャップ加重=12、10、8、6、又は4、ギャップ長加重=2、3、又は4として決定することができる。また、二つの核酸配列の相同度を、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで利用可能)のGAPプログラムを用いて、ギャップ加重=50、ギャップ長加重=3として決定することができる。
本酵素が、より大きいタンパク質(例えば融合タンパク質)の一部であってもよい。融合タンパク質において付加される配列としては、例えば、多重ヒスチジン残基のような精製に役立つ配列、組み換え生産の際の安定性を確保する付加配列等が挙げられる。
上記アミノ酸配列を有する本酵素は、遺伝子工学的手法によって容易に調製することができる。例えば、本酵素をコードするDNAで適当な宿主細胞(例えば大腸菌)を形質転換し、形質転換体内で発現されたタンパク質を回収することにより調製することができる。回収されたタンパク質は目的に応じて適宜精製される。このように組換えタンパク質として本酵素を得ることにすれば種々の修飾が可能である。例えば、本酵素をコードするDNAと他の適当なDNAとを同じベクターに挿入し、当該ベクターを用いて組換えタンパク質の生産を行えば、任意のペプチドないしタンパク質が連結された組換えタンパク質からなる本酵素を得ることができる。また、糖鎖及び/又は脂質の付加や、あるいはN末端若しくはC末端のプロセッシングが生ずるような修飾を施してもよい。以上のような修飾により、組換えタンパク質の抽出、精製の簡便化、又は生物学的機能の付加等が可能である。
3.GDH遺伝子
本発明は更に、本酵素をコードする遺伝子、即ち新規なGDH遺伝子を提供する。本発明の遺伝子は本酵素のアミノ酸配列をコードするDNAを含む。本発明の遺伝子を規定するDNAの具体例を配列番号6〜22に示す。これらの各配列の詳細は以下の通りである。
配列番号6のDNA:配列番号1に対応する配列であり、イントロン1(配列番号26)とイントロン2(配列番号27)を含む。
配列番号7のDNA:配列番号1に対応する配列であり、イントロン1を含むが、イントロン2を含まない。
配列番号8のDNA:配列番号1に対応する配列であり、イントロン1を含まず、イントロン2を含む。
配列番号9のDNA:配列番号1に対応する配列であり、イントロン1もイントロン2も含まない。
配列番号10のDNA:配列番号2に対応する配列であり、イントロン1とイントロン2を含む。
配列番号11のDNA:配列番号2に対応する配列であり、イントロン1を含むが、イントロン2を含まない。
配列番号12のDNA:配列番号2に対応する配列であり、イントロン1を含まず、イントロン2を含む。
配列番号13のDNA:配列番号2に対応する配列であり、イントロン1もイントロン2も含まない。
配列番号14のDNA:配列番号3に対応する配列であり、イントロン1とイントロン2を含む。
配列番号15のDNA:配列番号3に対応する配列であり、イントロン1を含むが、イントロン2を含まない。
配列番号16のDNA:配列番号3に対応する配列であり、イントロン1を含まず、イントロン2を含む。
配列番号17のDNA:配列番号3に対応する配列であり、イントロン1もイントロン2も含まない。
配列番号18のDNA:配列番号4に対応する配列であり、イントロン1とイントロン2を含む。
配列番号19のDNA:配列番号4に対応する配列であり、イントロン1を含むが、イントロン2を含まない。
配列番号20のDNA:配列番号4に対応する配列であり、イントロン1を含まず、イントロン2を含む。
配列番号21のDNA:配列番号4に対応する配列であり、イントロン1もイントロン2も含まない。
配列番号22のDNA:配列番号5に対応する配列であり、イントロン1とイントロン2を含む。
ところで、一般に、あるタンパク質をコードするDNAの一部に改変を施した場合において、改変後のDNAがコードするタンパク質が、改変前のDNAがコードするタンパク質と同等の機能を有することがある。即ちDNA配列の改変が、コードするタンパク質の機能に実質的に影響を与えず、コードするタンパク質の機能が改変前後において維持されることがある。そこで本発明は他の態様として、配列番号6〜22のいずれかで示される塩基配列と等価な塩基配列を含み、GDH活性をもつタンパク質をコードするDNA(以下、「等価DNA」ともいう)を提供する。ここでの「等価な塩基配列」とは、基準となる塩基配列(配列番号6〜22のいずれか)と一部で相違するが、当該相違によってそれがコードするタンパク質の機能(ここではGDH活性)が実質的な影響を受けていない塩基配列のことをいう。
等価DNAの具体例は、基準となる塩基配列で示される塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAである。ここでの「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。このようなストリンジェントな条件は当業者に公知であって例えばMolecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)やCurrent protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987)を参照して設定することができる。ストリンジェントな条件として例えば、ハイブリダイゼーション液(50%ホルムアミド、10×SSC(0.15M NaCl, 15mM sodium citrate, pH 7.0)、5×Denhardt溶液、1% SDS、10% デキストラン硫酸、10μg/mlの変性サケ精子DNA、50mMリン酸バッファー(pH7.5))を用いて約42℃〜約50℃でインキュベーションし、その後0.1×SSC、0.1% SDSを用いて約65℃〜約70℃で洗浄する条件を挙げることができる。更に好ましいストリンジェントな条件として例えば、ハイブリダイゼーション液として50%ホルムアミド、5×SSC(0.15M NaCl, 15mM sodium citrate, pH 7.0)、1×Denhardt溶液、1%SDS、10%デキストラン硫酸、10μg/mlの変性サケ精子DNA、50mMリン酸バッファー(pH7.5))を用いる条件を挙げることができる。
等価DNAの他の具体例として、基準となる塩基配列に対して1若しくは複数の塩基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含む塩基配列からなり、GDH活性をもつタンパク質をコードするDNAを挙げることができる。塩基の置換や欠失などは複数の部位に生じていてもよい。ここでの「複数」とは、当該DNAがコードするタンパク質の立体構造におけるアミノ酸残基の位置や種類によっても異なるが例えば2〜40塩基、好ましくは2〜20塩基、より好ましくは2〜10塩基である。以上のような等価DNAは例えば、制限酵素処理、エキソヌクレアーゼやDNAリガーゼ等による処理、位置指定突然変異導入法(Molecular Cloning, Third Edition, Chapter 13 ,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)やランダム突然変異導入法(Molecular Cloning, Third Edition, Chapter 13 ,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)による変異の導入などを利用して、塩基の置換、欠失、挿入、付加、及び/又は逆位を含むように基準となる塩基配列を有するDNAを改変することによって得ることができる。また、紫外線照射など他の方法によっても等価DNAを得ることができる。等価DNAの更に他の例として、SNP(一塩基多型)に代表される多型に起因して上記のごとき塩基の相違が認められるDNAを挙げることができる。
本発明の遺伝子は、本明細書又は添付の配列表が開示する配列情報を参考にし、標準的な遺伝子工学的手法、分子生物学的手法、生化学的手法などを用いることによって単離された状態に調製することができる。具体的には、適当な糸状菌類、酵母菌類のゲノムDNAライブラリー又はcDNAライブラリー、或は糸状菌類、酵母菌類の菌体内抽出液から、本発明の遺伝子に対して特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドプローブ・プライマーを適宜利用して調製することができる。オリゴヌクレオチドプローブ・プライマーは、市販の自動化DNA合成装置などを用いて容易に合成することができる。尚、本発明の遺伝子を調製するために用いるライブラリーの作製方法については、例えばMolecular Cloning, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkを参照できる。
4.GDHの製造法
本発明の更なる局面はGDHの製造法を提供する。本発明の製造法では、本酵素をコードする遺伝子を保有する微生物を培養するステップ(ステップ(1))及び培養後の培養液及び/又は菌体より、GDHを回収するステップ(ステップ(2))を行う。
ステップ(1)における遺伝子として、配列番号6〜22のいずれかの塩基配列を含むものを用いることができる。培養法及び培養条件は目的の酵素が生産されるものである限り特に限定されない。即ち、GDHが生産されることを条件として、使用する微生物の培養に適合した方法や培養条件を適宜設定できる。以下、培養条件として培地、培養温度及び培養時間を例示する。
培地としては、使用する微生物が生育可能な培地であれば、如何なるものでも良い。例えば、グルコース、シュクロース、ゲンチオビオース、可溶性デンプン、グリセリン、デキストリン、糖蜜、有機酸等の炭素源、更に硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、あるいは、ペプトン、酵母エキス、コーンスティープリカー、カゼイン加水分解物、ふすま、肉エキス等の窒素源、更にカリウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リン酸塩、マンガン塩、鉄塩、亜鉛塩等の無機塩を添加したものを用いることができる。使用する微生物の生育を促進するためにビタミン、アミノ酸などを培地に添加してもよい。培地のpHは例えば約3〜8、好ましくは約5〜7程度に調整し、培養温度は通常約10〜50℃、好ましくは約25〜35℃程度で、1〜15日間、好ましくは1〜4日間程度好気的条件下で培養する。培養法としては例えば振盪培養法、ジャー・ファーメンターによる好気的深部培養法が利用できる。
以上の条件で培養した後、培養液又は菌体よりGDHを回収する(ステップ(2))。培養液から回収する場合には、例えば培養上清をろ過(例えば珪藻土をろ過助剤としたろ過)、遠心処理等することによって不溶物を除去した後、限外ろ過膜による濃縮、硫安沈殿等の塩析、透析、各種クロマトグラフィーなどを適宜組み合わせて分離、精製を行うことにより目的の酵素を得ることができる。他方、菌体内から回収する場合には、例えば菌体を加圧処理、超音波処理などによって破砕した後、上記と同様に分離、精製を行うことにより目的の酵素を得ることができる。尚、ろ過、遠心処理などによって予め培養液から菌体を回収した後、上記一連の工程(菌体の破砕、分離、精製)を行ってもよい。尚、各精製工程では原則としてGDH活性を指標として分画を行い、次のステップへと進む。但し、予備試験などによって、適切な条件を既に設定可能な場合にはこの限りでない。
酵素の精製度は特に限定されないが、例えば比活性が5〜1000(U/mg)、好ましくは比活性が50〜500(U/mg)の状態に精製することができる。また、最終的な形態は液体状であっても固体状(粉体状を含む)であってもよい。
5.GDHの用途
本発明の更なる局面は本酵素の用途に関する。この局面ではまず、本酵素を含むグルコース測定用組成物が提供される。グルコース測定用組成物の形態は特に限定されない。例えば液状又は固体状(凍結品、凍結乾燥品など)で提供される。本発明のグルコース測定用組成物は、例えば、グルコース測定用試薬として、又はグルコース測定用試薬の有効成分として用いられる。一態様では、本発明のグルコース測定用組成物は電極に固定化されている。電極の材質は例えば金(Au)、カーボン(C)、白金(Pt)、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)である。本発明のグルコース測定用組成物が固定化された電極は、例えば、グルコースセンサとして利用可能である。このような固定化電極は常法で作製することができる。例えば、絶縁性基板の上にスクリーン印刷等の方法で作用極と対極を含む電極系(好ましくは参照極も含む)を形成し、当該電極系の上に本発明のグルコース測定用組成物を含む酵素反応層を形成する。典型的には、酵素反応層に電子メディエータも含有させる。
本発明はまた、本酵素を用いたグルコース測定法も提供する。本発明のグルコース測定法では、本酵素による酸化還元反応を利用して試料中のグルコース量を測定する。本発明は例えば血糖値の測定、食品(調味料や飲料など)中のグルコース濃度の測定などに利用される。また、発酵食品(例えば食酢)又は発酵飲料(例えばビールや酒)の製造工程において発酵度を調べるために本発明を利用してもよい。
上記の通り、本酵素はFADドメインとシトクロムドメインを有するものであり、電子メディエータ選択性或いは電極等との直接電子交換反応に有利な構造である。従って、親水性メディエータのみならず、疎水性メディエータを用いた測定系にも適する。また、電子メディエータを使用しない測定系を採用することも想定される。
本発明は更に、本発明のグルコース測定法を実施するためのキット(グルコース測定用キット)を提供する。本発明のキットは必須の構成要素として、上記グルコース測定用組成物を含む。グルコース測定用組成物は、例えば、グルコース測定用試薬、或いは、上記の如き固定化電極の形態でキットを構成する。本発明のキットは、反応用試薬、緩衝液、グルコース標準液、容器などを任意の要素として含む。尚、本発明のグルコース測定キットには通常、使用説明書が添付される。
(活性測定法)
グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)は、電子受容体存在下でグルコースの水酸基を酸化してグルコノ−δ−ラクトンを生成する反応を触媒する。GDH活性の検出は下記の反応系で行った。
Figure 2013150590
式中のPMSはPhenazine methosulfateを表し、NTBはNitrotetrazorium blueを表す。
反応(1)において、グルコースの酸化に伴って還元型PMSが生成し、更に反応(2)において還元型PMSによるNTBの還元により生成したDiformazanを570nmの波長で測定する。酵素活性(ユニット)は以下の計算式によって算出される。
Figure 2013150590
式中のVtは総液量を、Vsはサンプル量を、20.1はdiformazanの0.5μmoleあたりの吸光係数(cm2/0.5μmole)を、1.0は光路長(cm)を、dfは希釈倍数をそれぞれ表す。
0.5%(w/v)トリトンX-100を含む50mM PIPES-NaOH緩衝液pH6.5 2.6mL、1M D-グルコース溶液0.1mL、3mM PMS溶液0.2mL、及び6.6mM NTB溶液0.1mLを混合し、37℃で5分間保温後、上記培養ろ液0.1mLを添加し、反応を開始した。酵素反応の進行と共に570nmに吸収を持つDiformazanが生成される。1分間あたりの570nmにおける吸光度の増加を測定することによりGDH活性を測定した。
1.A.ニガーNBRC 6428株由来GDHの取得
(1)GDH遺伝子の取得
遺伝子データベースより、同一ペプチド鎖内に触媒部位の他に酸化還元部位を有する酵素として知られているファネロケイト・クリソスポリウム由来のセロビオースデヒドロゲナーゼと同様の機能構造を有する酵素遺伝子を探索した結果、セロビオースデヒドロゲナーゼと同定されている遺伝子が多数検出されたが、GDHと同定されている遺伝子は検出されなかった。しかし、それらの配列を詳細に解析した結果、セロビオースデヒドロゲナーゼと同定されていたA.ニガー由来の配列は、他の多数のセロビオースデヒドロゲナーゼと同定されていた配列と比較し、特に触媒部位付近に異なる配列があることを見出した。そこで、A.ニガー由来のセロビオースデヒドロゲナーゼと同定されていた遺伝子を以下の手順でpYES2プラスミド(インビトロジェン株式会社製)にクローニングし、S. cerevisiae Direct transformation Kit Wako(和光純薬工業製)を用いて、サッカロマイセス・セレビジェに形質転換した。
まず、予め大腸菌にクローニングしておいたA.ニガーNBRC 6428株のセロビオースデヒドロゲナーゼタンパク質の構造遺伝子を下記プライマーにて増幅してpYES2のKpnI及びXbaIサイトに導入した。尚、下記プライマーセットで増幅される核酸が含む構造遺伝子の配列を配列番号11に示す。当該構造遺伝子の発現産物(配列番号2)のN末端領域では開始アミノ酸に続いてアスパラギン酸が配置されることになる(本来の推定アミノ酸配列ではペプチド配列に続いてアスパラギンが存在する)。
<プライマー>
フォワード
CCTGGGTACCAAAATGGATGCCTACAACACCTCCG(配列番号28)
リバース
CGGTCTAGATTAAGAGGTGGCGCTGGTG(配列番号29)
上記処理後のpYES2を大腸菌(E.coli JM109)で増幅させた後、S.セレビジェの形質転換に用いた。形質転換は次の通り行った。まず、YPD培地にS.セレビジェ INV Sc1株をOD600=0.01になるように接種した。OD600=3.5〜5.0まで30℃で振盪培養した。以下は、S. cerevisiae Direct transformation Kit Wako(和光純薬工業株式会社)を使用して形質転換を実施した。
(2)菌株の培養
形質転換後のS.セレビジェの培養を、SCミニマルブロスマイナスウラシル培地(TEKNOVA製)を用いて行った。まず、当該液体培地50mLを300mL三角フラスコに分注し、121℃、0.12MPaで20分間殺菌後、形質転換後のS.セレビジェを接種し、30℃、200rpmで1日間培養した。培養終了後の培養液から遠心分離により菌体を回収し、その菌体破砕液をサンプルとして上記活性測定法に供し、GDH活性を確認した。
(3)GDHの精製
S.セレビジェの菌体破砕液を、遠心分離、限外ろ過濃縮後、陰イオン交換クロマトグラフィー及び疎水クロマトグラフィーに供した。その結果得られた精製酵素を以下の実験に使用した。
(4)アミノ酸配列の解析
精製酵素をサンプルとして、以下の方法でアミノ酸配列を解析した。
精製酵素サンプルを適当な濃度に希釈し、Super SepTM Ace 7.5% ゲル(和光純薬工業株式会社)を用いてSDS−PAGEを行った。次に、泳動したゲルをsequi-BlotTM PVDF Membrane for Plotein Sequencing (0.2μm)(Bio-Rad社製)に転写し、推定分子量付近のバンドを切り出して、島津サイエンス(京都)にN末端アミノ酸配列解析を依頼した。解析の結果、A.ニガーNBRC 6428株由来GDHの推定アミノ酸配列(全長配列。シグナルペプチドを含む)が決定された。当該推定アミノ酸配列を配列番号5に示す。尚、上記の形質転換体が発現するGDHはシグナル配列及びC末端STDリッチ配列を含まず、そのアミノ酸配列は配列番号1に示す通りとなる。
(5)公共のデータベースに登録されたA.ニガー由来セロビオースデヒドロゲナーゼとのホモロジー解析
(4)で得られた推定アミノ酸配列(配列番号5)と、A.ニガー由来セロビオースデヒドロゲナーゼとして公共のデータベースに登録されているアミノ酸配列とを比較した。比較対象として、NCBIデータベースに登録されたA.ニガー ATCC 1015株由来セロビオースデヒドロゲナーゼ(Accession No. EHA22215.1)、JGI(DOE Joint Genome Institute)データベースに登録されたA.ニガー ATCC 1015株由来セロビオースデヒドロゲナーゼ(Accession No. e_gw1.16.561.1)、及びNCBIデータベースに登録されたA.niger CBS 513.88株由来セロビオースデヒドロゲナーゼ(Accession No. XP_001402432.1)を用いた。比較結果を図4に示す。推定アミノ酸配列(nigerGDH)は、NCBIデータベースに登録されたA.ニガー ATCC 1015株由来セロビオースデヒドロゲナーゼ(NCBI1015。配列番号23)との間では、イントロンに対応する部分とC末端STDリッチ配列を別にして、1アミノ酸が相違する。また、JGIデータベースに登録されたA.ニガー ATCC 1015株由来セロビオースデヒドロゲナーゼ(JGI1015。配列番号24)との間では、イントロンに対応する部分を別にして、1アミノ酸が相違する。一方、NCBIデータベースに登録されたA.ニガー CBS 513.88株由来セロビオースデヒドロゲナーゼ(CBS513.88。配列番号25)との間では2アミノ酸が相違する。
2.A.ニガーNBRC 6428株由来GDHの特性
(1)基質特異性
0.5%(w/v)トリトンX-100を含む50mM PIPES-NaOHバッファーpH6.5 2.6mL、1M 基質(D-グルコース、マルトース、D-キシロース又はD-ガラクトース)溶液0.1mL、3mM PMS溶液0.2mL、及び6.6mM NTB溶液0.1mLを混合し、37℃で5分間保温後、酵素サンプル0.1mLを添加し、反応を開始した。酵素反応によって生成するDiformazanを570nmの吸光度で測定し、1分間当たりのDiformazanの生成量を測定することにより酵素活性を測定した。D-グルコースに対する活性を100%とした各基質に対する相対活性を算出した(表1)。その結果、マルトースやガラクトースには反応せず、血糖測定に適した性質を有していることを確認した。
Figure 2013150590
(2)至適pH
0.5%(w/v)トリトンX-100を含む100mM Mcllvaineバッファー(pH4.5、pH5.0、pH6.0、pH7.0、又はpH8.0に調整)2.6mL、1M D-グルコース溶液0.1mL、3mM PMS溶液0.2mL、及び6.6mM NTB溶液0.1mLを混合し、37℃で5分間保温後、酵素サンプル0.1mLを添加し、反応を開始した。酵素反応によって生成するDiformazanを570nmの吸光度で測定し、1分間当たりのDiformazanの生成量を測定することにより酵素活性を測定した。A.ニガー由来GDHの至適pHは8.0であった(図5)。
(3)至適温度
0.5%(w/v)トリトンX-100を含む50mM PIPES-NaOHバッファーpH6.5 2.6mL、1M D-グルコース溶液0.1mL、3mM PMS溶液0.2mL、及び6.6mM NTB溶液0.1mLを混合し、25、40、50、55又は60℃で5分間保温後、酵素サンプル0.1mLを添加し、25、40、50、55又は60℃で反応を開始した。酵素反応によって生成するDiformazanを570nmの吸光度で測定し、1分間当たりのDiformazanの生成量を測定することにより酵素活性を測定した。A.ニガー由来GDHの至適温度は約45℃であった(図6)。
(4)pH安定性
酵素サンプル80μLを0.1M酢酸バッファー(pH3、pH4)、0.1M Mcllvaineバッファー(pH5.0、pH6.0、pH7.0、pH8.0)、又は0.1M Na2CO3-NaHCO3バッファー(pH9.0)80μLで希釈し、各pHにおいて37℃で30分間処理した。各処理液を0.5M KH2PO4-NaOHバッファーpH6.5で適宜希釈し、上記の方法で酵素活性を測定した。その結果、A.ニガー由来GDHは、少なくともpH4.0〜7.0の範囲で80%以上の活性を維持しており、pH4.0〜7.0の範囲で安定であることが示された(図7)。
(5)温度安定性
酵素サンプル50μLを各指定温度(20、30、40、50、又は60℃)で20分間処理した。氷中で冷却後、上記の方法で酵素活性を測定した。コントロールとして、熱処理していない酵素サンプルの酵素活性も測定した。その結果、A.ニガー由来GDHは40℃以下で90%以上の活性を維持した。即ち、40℃以下で安定であることが示された(図8)。
(6)分子量
HPLC(ゲルろ過 東ソー製 TSK-GEL G3000SW カラムを使用)により分子量を測定した。その結果、A.ニガー由来GDHの分子量は約16万Daであった。
一方、ゲルろ過カラムで更に精製した酵素サンプルをSDS-PAGEに供したところ、120kDa付近に目的のタンパク質を検出した(図9左側)。エンドグリカナーゼHで処理後の酵素サンプルをアプライしたレーン(図9右側)では75〜80kDa付近(アミノ酸配列から推定される分子量に一致する)にバンドを認めた。
(7)作用機序
一般的なGO測定系(PO-4AA-phenor系)で酵素サンプルの活性を調べた。その結果、活性は認められず、酵素サンプル中の酵素がGOではなく、GDHであることが確認された。一方、透析により活性は低下せず、補酵素結合型のGDHであることを確認した。
(8)構造
そのアミノ酸配列から、本酵素はFAD結合ドメインとシトクロムドメイン(ヘム結合ドメイン)を有すると判断できたが、定法通り吸収スペクトル解析による確認も行った。その結果、FAD結合ドメインとシトクロムドメインの存在を確認できた。また、本酵素はCon-Aセファロースに強く吸着し、マンノースで溶出されることから、マンノースを含む糖鎖を含有する糖蛋白であることを確認した。
本発明のGDHは基質特異性が高く実用性に優れる。また同一部プチド鎖内にFAD結合ドメインとシトクロムドメイン(ヘム結合ドメイン)を有しており、電子交換反応に適した構造からなる。従って、電子メディエータの選択の幅が広がり、その使用に際して、電子交換反応特性の良い電子メディエータを選択可能となる。本発明のGDHは血糖値の測定や食品(調味料や飲料など)中のグルコース濃度の測定などに好適である。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
配列番号28、29:人工配列の説明:プライマー

Claims (11)

  1. アスペルギルス・ニガー由来のセロビオースデヒドロゲナーゼ様タンパク質からなるグルコースデヒドロゲナーゼ。
  2. 以下の特性を備える、請求項1に記載のグルコースデヒドロゲナーゼ:
    (1)作用: 電子受容体存在下でグルコースの水酸基を酸化してグルコノ−δ−ラクトンを生成する反応を触媒する;
    (2)基質特異性: D−グルコース選択的に作用する;
    (3)補欠分子: FADとヘムを有する;
    (4)構造: モノマー構造である。
  3. 以下の特性を更に備える、請求項2に記載のグルコースデヒドロゲナーゼ:
    (5)分子量: 約16万Da(ゲルろ過による)、約12万Da(SDS-PAGEによる);
    (6)至適pH: 8付近;
    (7)至適温度: 45℃付近;
    (8)pH安定性: pH4〜7の範囲で安定;
    (9)温度安定性: 40℃以下で安定。
  4. 配列番号1〜4のいずれかのアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のグルコースデヒドロゲナーゼ。
  5. 配列番号1〜5のいずれかのアミノ酸配列からなる、請求項1に記載のグルコースデヒドロゲナーゼ。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のグルコースデヒドロゲナーゼを含む、グルコース測定用組成物。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のグルコースデヒドロゲナーゼを含む、グルコース測定用試薬。
  8. 請求項7に記載のグルコース測定用試薬を含む、グルコース測定用キット。
  9. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のグルコースデヒドロゲナーゼを用いて試料中のグルコースを測定することを特徴とする、グルコース測定法。
  10. 以下のステップ(1)及び(2)を含む、グルコースデヒドロゲナーゼの製造方法:
    (1)請求項1〜5のいずれか一項に記載のグルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を保有する微生物を培養するステップ;
    (2)培養後の培養液及び/又は菌体より、グルコースデヒドロゲナーゼを回収するステップ。
  11. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のグルコースデヒドロゲナーゼをコードするDNAを含む、グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子。
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