JP2013148144A - 車両用自動変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】構成の自由度が高い車両用自動変速機を提供する。
【解決手段】第1ブレーキB1は、後進ギヤ段を形成する場合には係合されるが、前進ギヤ段を形成する場合には解放される後進専用係合要素であることから、前進ギヤ段に係る変速に関与しない係合要素を設けることで、その係合要素を半係合させるスリップ制御等を実現するための構成が不要となり、油圧回路の構成を簡素化できる。すなわち、構成の自由度が高い車両用自動変速機10等を提供することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両用自動変速機に関し、特に、油圧回路等の構成の自由度を高めるための改良に関する。
複数の係合要素を備え、それら複数の係合要素の係合乃至解放の組み合わせにより複数の変速段を選択的に成立させる多段型の自動変速機が各種車両に広く用いられている。前記係合要素としては、油圧により係合乃至解放が切り替えられる油圧式摩擦係合装置等が用いられ、種々の構成が提案されている。例えば、特許文献1に記載された自動変速機は、3つの遊星歯車装置及び6つの係合要素を備え、それら6つの係合要素のうち何れか3つの要素の係合及び3つの要素の解放により第1速ギヤ段乃至第8速ギヤ段、及び後進ギヤ段の何れかが選択的に成立させられる。
特開2011−017373号公報 特開2011−033137号公報
しかし、前記従来の技術では、例えば、油圧式摩擦係合装置としての前記複数の係合要素を備えた構成において、それら係合要素の係合乃至解放を制御する油圧を発生させる油圧回路等における構成の自由度に制約があるという弊害があった。このような課題は、車両用自動変速機の改良を意図して本発明者等が鋭意研究を継続する過程において新たに見出したものである。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、構成の自由度が高い車両用自動変速機を提供することにある。
斯かる目的を達成するために、本第1発明の要旨とするところは、3つのシングルピニオン型遊星歯車装置及び複数の係合要素を備え、それら複数の係合要素のうち3つの係合要素を係合させ且つ3つの係合要素を解放させることにより複数のギヤ段を選択的に成立させる車両用自動変速機であって、前記複数の係合要素のうち1つの係合要素は、後進ギヤ段を形成する場合には係合されるが、前進ギヤ段を形成する場合には解放される後進専用係合要素であることを特徴とするものである。
このように、前記第1発明によれば、前記複数の係合要素のうち1つの係合要素は、後進ギヤ段を形成する場合には係合されるが、前進ギヤ段を形成する場合には解放される後進専用係合要素であることから、前進ギヤ段に係る変速に関与しない係合要素を設けることで、その係合要素を半係合させるスリップ制御等を実現するための構成が不要となり、油圧回路の構成を簡素化できる。すなわち、構成の自由度が高い車両用自動変速機を提供することができる。
前記第1発明に従属する本第2発明の要旨とするところは、前記後進専用係合要素は、噛合式の係合要素である。このようにすれば、係合要素の解放時における引き摺り損失を好適に抑制することができる。
前記第1発明乃至第2発明に従属する本第3発明の要旨とするところは、前記後進専用係合要素は、マニュアル機構に機械的に連結されたものであり、そのマニュアル機構の駆動に連動して係合乃至解放が切り替えられるように構成されたものである。このようにすれば、油圧回路の構成を更に簡素化できる。
前記第1発明、第2発明、第1発明に従属する第3発明、乃至第2発明に従属する第3発明に従属する本第4発明の要旨とするところは、前記複数の係合要素として、4つのクラッチ要素及び2つのブレーキ要素を備えたものである。このようにすれば、クラッチ要素よりもブレーキ要素を少なくすることで、係合要素の解放時における引き摺り損失を更に好適に抑制することができる。
前記第1発明に従属する第4発明、第2発明に従属する第4発明、第1発明に従属する第3発明に従属する第4発明、乃至第2発明に従属する第3発明に従属する第4発明に従属する本第5発明の要旨とするところは、何れもシングルピニオン型の第1遊星歯車装置、第2遊星歯車装置、及び第3遊星歯車装置と、相互に連結された前記第1遊星歯車装置のキャリア及び第3遊星歯車装置のキャリアと入力部材との間を選択的に連結させる第1クラッチ要素と、前記第1遊星歯車装置のリングギヤと前記第2遊星歯車装置のキャリアとの間を選択的に連結させる第2クラッチ要素と、前記第2遊星歯車装置のリングギヤと前記第3遊星歯車装置のサンギヤとの間を選択的に連結させる第3クラッチ要素と、前記第2遊星歯車装置のキャリアと前記第3遊星歯車装置のサンギヤとの間を選択的に連結させる第4クラッチ要素と、相互に連結された前記第1遊星歯車装置のキャリア及び第3遊星歯車装置のキャリアを非回転部材に対して選択的に連結させる第1ブレーキ要素と、前記第2遊星歯車装置のリングギヤを前記非回転部材に対して選択的に連結させる第2ブレーキ要素とを、備え、前記第2遊星歯車装置のサンギヤが前記入力部材に連結され、前記第1遊星歯車装置のサンギヤが前記非回転部材に連結され、前記第1遊星歯車装置のキャリアと前記第2遊星歯車装置のキャリアとが相互に連結され、前記第3遊星歯車装置のリングギヤが出力部材に連結されたものである。このようにすれば、構成の自由度が高い実用的な態様の車両用自動変速機を提供することができる。
本発明の一実施例である車両用自動変速機の構成を説明する骨子図である。 図1の自動変速機において複数の変速段を選択的に成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。 図1の自動変速機において、変速段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図である。 本発明の他の実施例である車両用自動変速機の構成を説明する骨子図である。 本発明の更に別の実施例である車両用自動変速機の構成を説明する骨子図である。
本発明の車両用自動変速機は、好適には、走行用の駆動力源としてのエンジンに連結されたトルクコンバータと駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた有段式の自動変速機である。前記係合要素は、好適には、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型クラッチ等の油圧式摩擦係合装置であり、油圧制御回路から供給される油圧に応じてその係合乃至解放が制御されるものである。前記係合要素は必ずしも湿式でなくともよく、乾式クラッチ或いは噛合クラッチ等も好適に適用される。
前記噛合式の係合要素は、好適には、係合(相対回転阻止)乃至解放(相対回転許容)の対象となる1対の部材それぞれに対応して、相互に係合させられる爪部を有する1対の係合部材を備え、油圧回路から供給される油圧に応じてそれら1対の係合部材が相対的に移動させられることで係合状態が切り替えられる噛合式係合装置(ドグクラッチ:dog clutch)である。好適には、例えばシリンダと、そのシリンダ内を往復可能に設けられたピストンと、そのピストンを前記爪部の係合を解放させる方向に付勢するスプリングとを、備え、油圧非供給時はそのスプリングの付勢力によりピストンが爪部の係合を解放させる方向に移動させられて解放される一方、油圧供給時にはスプリングの付勢力に抗してピストンが爪部を噛み合わせる方向に移動させられて係合させられる係合装置である。
前記後進専用係合要素は、好適には、前記自動変速機における非回転部材と、その非回転部材に対して相対回転可能に設けられた回転要素との間に設けられ、それら非回転部材及び回転要素を選択的に連結させるブレーキ要素である。前記後進専用係合要素は、好適には、前記非回転部材に対して相対回転可能に設けられた複数の回転要素相互間に設けられ、それら複数の回転要素を選択的に連結させるクラッチ要素である。
前記マニュアル機構は、好適には、運転席近傍に設けられたシフト操作装置におけるシフト切替操作に応じて駆動されるマニュアルシャフト、或いはそのマニュアルシャフトの駆動に応じて弁子位置が切り替えられるマニュアルバルブ等の構成であり、そのマニュアル機構において後進走行を成立させるための操作が行われた場合に前記後進専用係合要素が係合されるように構成されている。
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である車両用自動変速機10の構成を説明する骨子図である。以下の説明に用いる図面において、各部の寸法比等は必ずしも正確には描かれていない。図1に示すように、本実施例の自動変速機10は、例えばFF(前置エンジン前輪駆動)型車両等に好適に用いられる横置き用の装置であり、入力部材(入力回転要素)である入力軸12の回転を変速して出力部材(出力回転要素)である出力歯車14から出力する。この入力軸12は、トルクコンバータ20のタービン軸に連結されており、走行用の駆動力源であるエンジン16のクランク軸18から出力された駆動力が前記トルクコンバータ20を介して前記入力軸12に入力される。前記出力歯車14から出力された駆動力は、図示しない差動歯車装置及び車軸等を介して図示しない左右一対の駆動輪へ伝達される。前記自動変速機10は、中心線に対して略対称的に構成されており、図1においては中心線の下半分を省略して図示している。以下の各実施例についても同様である。
前記自動変速機10は、車体に取り付けられる非回転部材としてのハウジング28内において、例えば「0.675」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置22、例えば「0.675」程度の所定のギヤ比ρ2を有するシングルピニオン型の第2遊星歯車装置24、及び「0.340」程度の所定のギヤ比ρ3を有するシングルピニオン型の第3遊星歯車装置26を共通の中心軸上に備えて構成されている。このギヤ比ρ1〜ρ3は、各遊星歯車装置のサンギヤの歯数をZS、リングギヤの歯数をZRとした場合における歯数比すなわちZS/ZRである。図1に示すように、前記自動変速機10において、前記第1遊星歯車装置22、第2遊星歯車装置24、及び第3遊星歯車装置26は、前記エンジン16側から中心軸方向に前記第1遊星歯車装置22、第3遊星歯車装置26、第2遊星歯車装置24の順に配置されている。
前記第1遊星歯車装置22は、サンギヤS1、複数のピニオンギヤP1、それらピニオンギヤP1を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA1、ピニオンギヤP1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を回転要素(回転部材)として備えている。前記第2遊星歯車装置24は、サンギヤS2、複数のピニオンギヤP2、それらピニオンギヤP2を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA2、ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を回転要素として備えている。前記第3遊星歯車装置26は、サンギヤS3、複数のピニオンギヤP3、それらピニオンギヤP3を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA3、ピニオンギヤP3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を回転要素として備えている。
前記自動変速機10においては、前記第2遊星歯車装置24のサンギヤS2が入力部材である前記入力軸12に連結されている。前記第1遊星歯車装置22のサンギヤS1が非回転部材である前記ハウジング28に連結されている。前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1と前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2とが相互に連結されている。前記第3遊星歯車装置26のリングギヤR3が出力部材である前記出力歯車14に連結されている。
前記自動変速機10は、その自動変速機10において複数の変速段を選択的に成立させるための複数の係合要素として、4つのクラッチ要素及び2つのブレーキ要素を備えたものである。すなわち、第1クラッチ要素に対応する第1クラッチC1、第2クラッチ要素に対応する第2クラッチC2、第3クラッチ要素に対応する第3クラッチC3、第4クラッチ要素に対応する第4クラッチC4、第1ブレーキ要素に対応する第1ブレーキB1、及び第2ブレーキ要素に対応する第2ブレーキB2(以下、特に区別しない場合には、単にクラッチC及びブレーキBという)を備えている。これらのクラッチC及びブレーキBは、好適には、何れも従来の車両用自動変速機においてよく用いられている係合要素としての油圧式摩擦係合装置であって、例えば、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型クラッチ乃至ブレーキ等である。前記クラッチC及びブレーキBは、好適には、図示しない油圧回路に備えられたリニアソレノイド弁の励磁、非励磁や電流制御に応じて供給される油圧により係合状態が切り換えられるようになっている。
図1に示すように、前記自動変速機10においては、相互に連結された前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1及び第3遊星歯車装置26のキャリアCA3と入力部材である前記入力軸12との間に、それらキャリアCA1(CA3)及び入力軸12を選択的に連結させる第1クラッチC1が設けられている。前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1と前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2との間に、それらリングギヤR1及びキャリアCA2を選択的に連結させる第2クラッチC2が設けられている。前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2と前記第3遊星歯車装置26のサンギヤS3との間に、それらリングギヤR2及びサンギヤS3を選択的に連結させる第3クラッチC3が設けられている。前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2と前記第3遊星歯車装置26のサンギヤS3との間に、それらキャリアCA2及びサンギヤS3を選択的に連結させる第4クラッチC4が設けられている。相互に連結された前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1及び第3遊星歯車装置26のキャリアCA3と非回転部材である前記ハウジング28との間に、そのハウジング28に対して前記キャリアCA1(CA3)を選択的に連結(固定)させる第1ブレーキB1が設けられている。前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2と前記ハウジング28との間に、そのハウジング28に対して前記リングギヤR2を選択的に連結(固定)させる第2ブレーキB2が設けられている。
図2は、前記自動変速機10において複数の変速段を選択的に成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表であり、各変速段におけるギヤ比及び変速段間のギヤ比のステップを併せて示している。この図2の作動表は、前記自動変速機10において成立させられる各変速段と前記クラッチC及びブレーキBの作動状態との関係をまとめたものであり、「○」は係合、空欄は解放をそれぞれ表している。前記自動変速機10では、前記クラッチC及びブレーキBの係合乃至解放による、その自動変速機10に備えられた9つの回転要素である前記遊星歯車装置22、24、26のサンギヤS1、S2、S3、キャリアCA1、CA2、CA3、リングギヤR1、R2、R3の連結状態、及びそれらの回転要素の前記ハウジング28に対する連結状態の組み合わせに応じて、第1速ギヤ段「1st」〜第8速ギヤ段「8th」の8つの前進ギヤ段(前進変速段)、第1後進ギヤ段「Rev1」乃至第2後進ギヤ段「Rev2」の2つの後進ギヤ段(後進変速段)の何れかが成立させられる。
図2に示すように、前記自動変速機10においては、前記第2クラッチC2、第4クラッチC4、及び第2ブレーキB2の係合により変速比「5.395」の第1速ギヤ段「1st」が成立させられる。前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、及び第2ブレーキB2の係合により変速比「3.102」の第2速ギヤ段「2nd」が成立させられる。前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、及び第4クラッチC4の係合により変速比「2.174」の第3速ギヤ段「3rd」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、及び第3クラッチC3の係合により変速比「1.624」の第4速ギヤ段「4th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、及び第4クラッチC4の係合により変速比「1.298」の第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、及び第4クラッチC4の係合により変速比「1.000」の第6速ギヤ段「6th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第4クラッチC4、及び第2ブレーキB2の係合により変速比「0.831」の第7速ギヤ段「7th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、及び第2ブレーキB2の係合により変速比「0.746」の第8速ギヤ段「8th」が成立させられる。前記第4クラッチC4、第1ブレーキB1、及び第2ブレーキB2の係合により変速比「7.298(−7.298)」の第1後進ギヤ段「Rev1」が成立させられる。前記第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第1ブレーキB1の係合により変速比「2.941(−2.941)」の第2後進ギヤ段「Rev2」が成立させられる。前記クラッチC及びブレーキBが全て解放されることによりニュートラル状態が成立させられる。
すなわち、前記自動変速機10においては、その自動変速機10に備えられた6つの係合要素すなわち4つのクラッチ要素である前記第1クラッチC1〜第4クラッチC4及び2つのブレーキ要素である前記第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2のうち、何れか3つの要素が係合させられると共に、残り3つの要素が解放させられることにより、前記第1速ギヤ段「1st」〜第8速ギヤ段「8th」の8つの前進変速段、第1後進ギヤ段「Rev1」及び第2後進ギヤ段「Rev2」の2つの後進変速段の何れかが選択的に成立させられる。図2の最右欄に示すように、前記第1速ギヤ段「1st」〜第8速ギヤ段「8th」の8つの前進変速段において、各変速段間のギヤ比のステップ(変速段相互間の変速比の差)は、1.1〜1.8の範囲内とされており、変速ショックが小さい好適な変速が実現できる実用的なギヤ比が得られていることがわかる。
図2の係合表から明らかなように、前記自動変速機10における変速段の切り替え(単一変速)は、変速前に係合させられている3つの要素のうち何れか1つの要素が解放させられると共に、変速前に解放されている3つの要素のうち何れか1つの要素が係合させられることにより行われる。例えば、第1速ギヤ段から第2速ギヤ段への変速は、前記第4クラッチC4が解放させられると共に、前記第3クラッチC3が係合させられることにより行われる。すなわち、前記自動変速機10においては、少なくとも前進変速段においては、飛び変速を除く全ての変速段の切り替えに関して、1つの係合要素の掴み替えによる所謂クラッチ・トゥ・クラッチ変速が行われる。
図2の係合表から明らかなように、前記自動変速機10において、前記第1ブレーキB1は、後進ギヤ段である第1後進ギヤ段「Rev1」及び第2後進ギヤ段「Rev2」を形成する場合には係合されるが、前進ギヤ段である前記第1速ギヤ段「1st」〜第8速ギヤ段「8th」を形成する場合には解放される。換言すれば、前記自動変速機10において成立させられる複数のギヤ段である前記第1速ギヤ段「1st」〜第8速ギヤ段「8th」の8つの前進変速段、第1後進ギヤ段「Rev1」及び第2後進ギヤ段「Rev2」の2つの後進変速段のうち、後進変速段である第1後進ギヤ段「Rev1」及び第2後進ギヤ段「Rev2」を形成する場合にのみ係合させられる。すなわち、前記自動変速機10においては、前記第1ブレーキB1が後進専用係合要素に相当する。
図3は、前記自動変速機10において、変速段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、横軸方向において各遊星歯車装置22、24、26のギヤ比ρの相対関係を示し、縦軸方向において相対的回転速度を示す二次元座標である。下側の横線X1(遊星歯車装置相互間は破線で繋いでいる、X2について同様)は回転速度零を示している。上側の横線X2は回転速度「1.0」すなわち前記入力軸12の回転速度NINを示している。9本の縦線Y1〜Y9は、左から順にY1が第1回転要素である前記第1遊星歯車装置22のサンギヤS1、Y2が第2回転要素であるキャリアCA1、Y3が第3回転要素であるリングギヤR1、Y4が第4回転要素である前記第2遊星歯車装置24のサンギヤS2、Y5が第5回転要素であるキャリアCA2、Y6が第6回転要素であるリングギヤR2、Y7が第7回転要素である前記第3遊星歯車装置26のサンギヤS3、Y8が第8回転要素であるキャリアCA3、Y9が第9回転要素であるリングギヤR3それぞれの相対回転速度を示している。前記縦線Y1〜Y9の間隔は、前記遊星歯車装置22、24、26の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3に応じて定められている。すなわち、前記第1遊星歯車装置22における3つの回転要素に対応する縦線Y1〜Y3、前記第2遊星歯車装置24における3つの回転要素に対応する縦線Y4〜Y6、前記第3遊星歯車装置26における3つの回転要素に対応する縦線Y7〜Y9それぞれに関して、サンギヤSとキャリアCAとの間が1に対応するものとされ、キャリアCAとリングギヤRとの間がρに対応するものとされる。
図3の共線図を用いて表現すれば、前記自動変速機10において、第4回転要素であるサンギヤS2が入力部材である前記入力軸12に連結されている。第2回転要素であるキャリアCA1と第8回転要素であるキャリアCA3とが相互に連結されている。第1回転要素であるサンギヤS1が非回転部材である前記ハウジング28に連結されている。第9回転要素であるリングギヤR3が出力部材である前記出力歯車14に連結されている。相互に連結されたキャリアCA1及びCA3が第1クラッチC1を介して前記入力軸12に選択的に連結されると共に、第1ブレーキB1を介して前記ハウジング28に選択的に連結される。第3回転要素であるリングギヤR1が第2クラッチC2を介して第5回転要素であるキャリアCA2に選択的に連結される。第6回転要素であるリングギヤR2が第3クラッチC3を介して第7回転要素であるサンギヤS3と選択的に連結されると共に、第2ブレーキB2を介して前記ハウジング28に選択的に連結される。第5回転要素であるキャリアCA2が第4クラッチC4を介して第7回転要素であるサンギヤS3に選択的に連結される。
前述のように、各変速段の成立時における前記クラッチC及びブレーキBの係合乃至解放の組み合わせに応じて各回転要素の回転速度の相対関係が定まる。図3においては前記第1速ギヤ段「1st」に対応する関係を直線L1で、前記第2速ギヤ段「2nd」に対応する関係を直線L2で、前記第3速ギヤ段「3rd」に対応する関係を直線L3で、前記第4速ギヤ段「4th」に対応する関係を直線L4で、前記第5速ギヤ段「5th」に対応する関係を直線L5で、前記第6速ギヤ段「6th」に対応する関係を直線L6で、前記第7速ギヤ段「7th」に対応する関係を直線L7で、前記第8速ギヤ段「8th」に対応する関係を直線L8で、前記第1後進ギヤ段「Rev1」に対応する関係を直線LR1で、前記第2後進ギヤ段「Rev2」に対応する関係を直線LR2で、それぞれ示している。図3の共線図においては、前記自動変速機10において成立し得る全ての変速段に係る各回転要素の回転速度の相対関係を1つの図面で表すために、前記直線L1〜L8、LR1、LR2は前記遊星歯車装置22、24、26相互間においては必ずしも直線となっていないが、前記クラッチC及びブレーキBの係合に応じて各遊星歯車装置22、24、26における回転要素の回転速度が等しく表されることで、各変速段における前記自動変速機10の9つの回転要素の相対的な回転速度を余さず表している。以下の共線図の説明において同じである。
すなわち、図3の共線図においては、相互に連結された第2回転要素(CA1)及び第8回転要素(CA3)に対応する、縦線Y2で示される回転速度と縦線Y8で示される回転速度が全ての変速段に対応して等しくなっている。更に、前記クラッチCの係合により前記自動変速機10における9つの回転要素が選択的に連結され、相互に連結された回転要素相互の回転速度が等しくなっている。例えば、図2の係合表に示すように、第1速ギヤ段「1st」〜第5速ギヤ段「5th」においては、前記第2クラッチC2が係合されて第3回転要素(R1)及び第5回転要素(CA2)が相互に連結される。従って、第1速ギヤ段「1st」に対応する直線L1、第2速ギヤ段「2nd」に対応する直線L2、第3速ギヤ段「3rd」に対応する直線L3、第4速ギヤ段「4th」に対応する直線L4、及び第5速ギヤ段「5th」に対応する直線L5それぞれに関して、第3回転要素(R1)に対応する縦線Y3との交点、第5回転要素(CA2)に対応する縦線Y5との交点が縦線方向において等しくなっている。
図3に示すように、前記自動変速機10では、前記第2クラッチC2、第4クラッチC4、及び第2ブレーキB2が係合させられることにより定まる直線L1と、出力部材である前記出力歯車14に連結された前記リングギヤR3の回転速度を示す縦線Y9との交点で第1速ギヤ段「1st」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、及び第2ブレーキB2が係合させられることにより定まる直線L2と、縦線Y9との交点で第2速ギヤ段「2nd」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、及び第4クラッチC4が係合させられることにより定まる直線L3と、縦線Y9との交点で第3速ギヤ段「3rd」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、及び第3クラッチC3が係合させられることにより定まる直線L4と、縦線Y9との交点で第4速ギヤ段「4th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、及び第4クラッチC4が係合させられることにより定まる直線L5と、縦線Y9との交点で第5速ギヤ段「5th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、及び第4クラッチC4が係合させられることにより定まる直線L6と、縦線Y9との交点で第6速ギヤ段「6th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第4クラッチC4、及び第2ブレーキB2が係合させられることにより定まる直線L7と、縦線Y9との交点で第7速ギヤ段「7th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、及び第2ブレーキB2が係合させられることにより定まる直線L8と、縦線Y9との交点で第8速ギヤ段「8th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第4クラッチC4、第1ブレーキB1、及び第2ブレーキB2が係合させられることにより定まる直線LR1と、縦線Y9との交点で第1後進ギヤ段「Rev1」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第1ブレーキB1が係合させられることにより定まる直線LR2と、縦線Y9との交点で第2後進ギヤ段「Rev2」における前記出力歯車14の回転速度が示される。
続いて、本発明の他の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
図4は、本発明の他の実施例である車両用自動変速機30の構成を説明する骨子図である。この図4に示す自動変速機30においては、油圧式摩擦係合装置としての前記第1ブレーキB1の代替として、相互に連結された前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1及び第3遊星歯車装置26のキャリアCA3を、前記ハウジング28に対して選択的に連結(固定)させる後進専用係合要素として噛合式の第1ブレーキB1が設けられている。この第1ブレーキB1は、好適には、係合(相対回転阻止)乃至解放(相対回転許容)の対象となる1対の部材すなわち前記キャリアCA1(CA3)及びハウジング28それぞれに対応して、相互に係合させられる爪部を有する1対の係合部材を備え、油圧回路から供給される油圧に応じてそれら1対の係合部材が相対的に移動させられることで係合状態が切り替えられる噛合式係合装置(ドグクラッチ:dog clutch)である。前記第1ブレーキB1は、好適には、例えばシリンダと、そのシリンダ内を往復可能に設けられたピストンと、そのピストンを前記爪部の係合を解放させる方向に付勢するスプリングとを、備え、油圧非供給時はそのスプリングの付勢力によりピストンが爪部の係合を解放させる方向に移動させられて解放される一方、油圧供給時にはスプリングの付勢力に抗してピストンが爪部を噛み合わせる方向に移動させられて係合させられる常開型の係合装置である。或いは、油圧非供給時に係合させられるが、油圧供給時に解放される常閉型の係合装置であってもよい。
図5は、本発明の更に別の実施例である車両用自動変速機40の構成を説明する骨子図である。この図5に示す自動変速機40においては、後進専用係合要素としての前記第1ブレーキB1が、マニュアル機構としてのマニュアルバルブ42に機械的に連結されており、そのマニュアルバルブ42の駆動に連動して係合乃至解放が切り替えられるように構成されている。前記マニュアルバルブ42は、例えば、運転席近傍に設けられたシフト操作装置におけるシフト切替操作に応じて図示しないマニュアルシャフトが駆動されることによりその弁子位置が切り替えられるように構成されたものである。すなわち、前記第1ブレーキB1は、換言すれば、マニュアル機構としてのマニュアルシャフトに機械的に連結されたものであるとも言える。この機械的な連結は、ワイヤ機構等による物理的な連結であってもよいし、前記マニュアルバルブ42から前記第1ブレーキB1に対応するアクチュエータに直接油圧が供給されるように構成されたものであってもよい。前記第1ブレーキB1は、好適には、マニュアル機構において後進走行を成立させるための操作が行われた場合に係合されるように構成されている。例えば、前記シフト操作装置により後進走行を成立させるためのシフト切替操作が行われ、前記マニュアルシャフトの駆動により前記マニュアルバルブ42の弁子位置が後進走行に対応する位置に切り替えられる動作と連動して前記第1ブレーキB1が係合されるように構成される。斯かる構成において、第1ブレーキB1は油圧式摩擦係合装置であってもよいし、噛合式の係合装置であってもよい。或いは、バンド式の係合装置や、シフト操作装置が停車位置に切り替えられた際にマニュアルシャフトの駆動により係合(ロック)される所謂パーキングロック機構と同様の構成が前記キャリアCA1(CA3)とハウジング28との間に設けられたものであってもよい。
このように、前記第1〜第3実施例において、前記複数の係合要素であるクラッチC及びブレーキBのうち1つの係合要素である第1ブレーキB1は、後進ギヤ段を形成する場合には係合されるが、前進ギヤ段を形成する場合には解放される後進専用係合要素であることから、前進ギヤ段に係る変速に関与しない係合要素を設けることで、その係合要素を半係合させるスリップ制御等を実現するための構成が不要となり、油圧回路の構成を簡素化できる。すなわち、構成の自由度が高い車両用自動変速機10、30、40を提供することができる。
前記複数の係合要素として、4つのクラッチ要素である第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び2つのブレーキ要素である第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2を備えたものであるため、クラッチ要素よりもブレーキ要素を少なくすることで、係合要素の解放時における引き摺り損失を更に好適に抑制することができる。
何れもシングルピニオン型の第1遊星歯車装置22、第2遊星歯車装置24、及び第3遊星歯車装置26と、相互に連結された前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1及び第3遊星歯車装置26のキャリアCA3と入力部材である入力軸12との間を選択的に連結させる第1クラッチC1と、前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1と前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2との間を選択的に連結させる第2クラッチC2と、前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2と前記第3遊星歯車装置26のサンギヤS3との間を選択的に連結させる第3クラッチC3と、前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2と前記第3遊星歯車装置26のサンギヤS3との間を選択的に連結させる第4クラッチC4と、相互に連結された前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1及び第3遊星歯車装置26のキャリアCA3を非回転部材であるハウジング28に対して選択的に連結させる第1ブレーキB1と、前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2を前記ハウジング28に対して選択的に連結させる第2ブレーキB2とを、備え、前記第2遊星歯車装置24のサンギヤS2が前記入力軸12に連結され、前記第1遊星歯車装置22のサンギヤS1が前記ハウジング28に連結され、前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1と前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2とが相互に連結され、前記第3遊星歯車装置26のリングギヤR3が出力部材である出力歯車14に連結されたものであるため、構成の自由度が高い実用的な態様の車両用自動変速機10、30、40を提供することができる。
前記第2実施例の自動変速機30において、前記後進専用係合要素は、噛合式の係合要素としての第1ブレーキB1であるため、係合要素の解放時における引き摺り損失を好適に抑制することができる。
前記第3実施例の自動変速機40において、前記後進専用係合要素は、マニュアル機構としてのマニュアルバルブ42に機械的に連結されたものであり、そのマニュアルバルブ42の駆動に連動して係合乃至解放が切り替えられるように構成されたものであるため、油圧回路の構成を更に簡素化できる。
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
10、30、40:車両用自動変速機、12:入力軸(入力部材)、14:出力歯車(出力部材)、22:第1遊星歯車装置、24:第2遊星歯車装置、26:第3遊星歯車装置、28:ハウジング(非回転部材)、42:マニュアルバルブ(マニュアル機構)、B1:第1ブレーキ(第1ブレーキ要素、後進専用係合要素)、B2:第2ブレーキ(第2ブレーキ要素)、C1:第1クラッチ(第1クラッチ要素)、C2:第2クラッチ(第2クラッチ要素)、C3:第3クラッチ(第3クラッチ要素)、C4:第4クラッチ(第4クラッチ要素)、CA1、CA2、CA3:キャリア、R1、R2、R3:リングギヤ、S1、S2、S3:サンギヤ

Claims (5)

  1. 3つのシングルピニオン型遊星歯車装置及び複数の係合要素を備え、それら複数の係合要素のうち3つの係合要素を係合させ且つ3つの係合要素を解放させることにより複数のギヤ段を選択的に成立させる車両用自動変速機であって、
    前記複数の係合要素のうち1つの係合要素は、後進ギヤ段を形成する場合には係合されるが、前進ギヤ段を形成する場合には解放される後進専用係合要素であることを特徴とする車両用自動変速機。
  2. 前記後進専用係合要素は、噛合式の係合要素である請求項1に記載の車両用自動変速機。
  3. 前記後進専用係合要素は、マニュアル機構に機械的に連結されたものであり、該マニュアル機構の駆動に連動して係合乃至解放が切り替えられるように構成されたものである請求項1又は2に記載の車両用自動変速機。
  4. 前記複数の係合要素として、4つのクラッチ要素及び2つのブレーキ要素を備えたものである請求項1から3の何れか1項に記載の車両用自動変速機。
  5. 何れもシングルピニオン型の第1遊星歯車装置、第2遊星歯車装置、及び第3遊星歯車装置と、
    相互に連結された前記第1遊星歯車装置のキャリア及び第3遊星歯車装置のキャリアと入力部材との間を選択的に連結させる第1クラッチ要素と、
    前記第1遊星歯車装置のリングギヤと前記第2遊星歯車装置のキャリアとの間を選択的に連結させる第2クラッチ要素と、
    前記第2遊星歯車装置のリングギヤと前記第3遊星歯車装置のサンギヤとの間を選択的に連結させる第3クラッチ要素と、
    前記第2遊星歯車装置のキャリアと前記第3遊星歯車装置のサンギヤとの間を選択的に連結させる第4クラッチ要素と、
    相互に連結された前記第1遊星歯車装置のキャリア及び第3遊星歯車装置のキャリアを非回転部材に対して選択的に連結させる第1ブレーキ要素と、
    前記第2遊星歯車装置のリングギヤを前記非回転部材に対して選択的に連結させる第2ブレーキ要素と
    を、備え、
    前記第2遊星歯車装置のサンギヤが前記入力部材に連結され、
    前記第1遊星歯車装置のサンギヤが前記非回転部材に連結され、
    前記第1遊星歯車装置のキャリアと前記第2遊星歯車装置のキャリアとが相互に連結され、
    前記第3遊星歯車装置のリングギヤが出力部材に連結された
    ものである請求項4に記載の車両用自動変速機。
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