JP5813034B2 - 車両用自動変速機 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用自動変速機に関する。
従来の車両用自動変速機としては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来の車両用自動変速機は、ラビニョ・タイプの遊星歯車組と、1組のシングル・ピニオン・タイプの遊星歯車組と、2個のクラッチおよび3個のブレーキの油圧作動による摩擦締結要素と、を有し、前進6速後進1速を得るようにしている。
特開号2003−240068公報
しかしながら、上記従来の車両用自動変速機には、以下に説明するような問題がある。
上記従来の車両用自動変速機にあっては、レシオ・カバーレッジ(全変速比幅:前進1速のギヤ比を最高変速段のギヤ比で割った値)が6.1と小さい。このレシオ・カバーレッジをより拡大した値にしようとすると、その場合、適切な段間比(隣合う変速比間でのギヤ比間の比)が得られないといった問題がある。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、適切な段間比を確保しながら、より大きなレシオ・カバーレッジを得ることができるようにした車両用自動変速機を提供することにある。
この目的のため本発明による車両用自動変速機は、
入力軸と、
出力部材と、
静止部と、
第1回転要素、第2回転要素、および第3回転要素の3個の回転要素を有する第1遊星歯車組と、
第4回転要素、第5回転要素、第6回転要素、および第7回転要素の4個の回転要素を有する第2遊星歯車群と、
第1クラッチ、第2クラッチ、第1ブレーキ、第2ブレーキ、および第3ブレーキの5個の摩擦締結要素と、
を備え、
第1遊星歯車群の3個の回転要素を、共通速度線図上で第1遊星歯車群の歯数比に対応する間隔に応じて並べ、この並び順に第1要素、第2要素、第3要素とし、
第2遊星歯車組の4個の回転要素を、共通速度線図上で第2遊星歯車組の歯数比に対応する間隔に応じて並べ、この並び順に第4要素、第5要素、第6要素、第7要素とし、
入力軸を、第1要素に常時連結するとともに第1クラッチの締結により第5要素に連結可能とし、
出力部材を、第6要素に常時連結し、
第3要素を、第1ブレーキの締結により静止部に固定可能とするとともに、第2クラッチの締結により第4要素に連結可能とし、
第2要素を、第2ブレーキの締結により静止部に固定可能にするとともに、第7要素に常時連結し、
第5要素を第3ブレーキの締結により静止部に固定可能とした、
ことを特徴とする。
また、好ましくは、第2遊星歯車群が、ラビニョ・タイプの遊星歯車組である、
ことを特徴とする。
また、好ましくは、第1遊星歯車組が、ダブル・ピニオン・タイプの遊星歯車組である、
ことを特徴とする。
また、好ましくは、第1クラッチが、第4速、第5速、および第6速で締結し、
第2クラッチが、第1速、第3速、第6速、および後進で締結し、
第1ブレーキが、第2速、第3速、および第5速で締結し、
第2ブレーキが、第4速、および後進で締結し、
第3ブレーキが、第1速、および第2速で締結する、
ことを特徴とする。
また、好ましくは、第1要素が、第1遊星歯車組のサン・ギヤであり、
第2要素が、第1遊星歯車組のリング・ギヤであり、
第3要素が、第1遊星歯車組のピニオン・キャリヤであり、
第7要素が、第2遊星歯車群の第1サン・ギヤであり、
第5要素が、第2遊星歯車群のピニオン・キャリヤであり、
第6要素が、第2遊星歯車群のリング・ギヤであり、
第4要素が、第2遊星歯車群の第2サン・ギヤである、
ことを特徴とする。
本発明は、上記のように自動変速機を構成したので、適切な段間比を確保しながら、大きいレシオ・カバーレッジを得ることができ、その結果、低速段で大きな駆動力を得て発進・登坂性能を向上させることができるとともに、高速段でエンジン回転数を抑えてエンジン騒音の低減、および燃費の向上を図ることができる。
また、第2遊星歯車組をラビニョ・タイプの遊星歯車組としたので、コンパクトになって車両搭載性も向上させることができるとともに、部品点数を減少させて自動変速機の重量およびコストを下げることができ、る。
また、第1遊星歯車組をダブル・ピニオン・タイプの遊星歯車組にしたので、より好ましい段間比を確保しながら、大きいレシオ・カバーレッジを得ることができる。
また、第1クラッチ、第2クラッチ、および第1ブレーキ〜第3ブレーキを上記のように締結するようにしたので、5個の摩擦締結要素で前進6段および後進の変速段を得ることができる。
また、第1要素〜第7要素を上記のように構成したので、最適なギヤ比の自動変速機を得ることができる。
本発明の実施例1に係る車両用自動変速機のスケルトンを示す図である。 実施例1の車両用自動変速機で用いる摩擦締結要素の作動、各変速段でのギヤ比、レシオ・カバーレッジ、レバース/1速のギヤ比を示す作動表を表す図である。 実施例1の車両用自動変速機における前進第1速での共通速度線図である。 実施例1の車両用自動変速機における前進第2速での共通速度線図である。 実施例1の車両用自動変速機における前進第3速での共通速度線図である。 実施例1の車両用自動変速機における前進第4速での共通速度線図である。 実施例1の車両用自動変速機における前進第5速での共通速度線図である。 実施例1の車両用自動変速機における前進第6速での共通速度線図である。 実施例1の車両用自動変速機における後進での共通速度線図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
まず、実施例1の車両用自動変速機の全体構成を説明する。
この実施例1の車両用自動変速機は、エンジン前置き前輪駆動車やエンジン後置き後輪駆動車といった、いわゆるエンジン横置きタイプの車両に適用される。
図1に、実施例1の車両用自動変速機のスケルトンを示す。なお、図1では、中心軸(入力軸Iの中心軸を通る軸)から上半分のみを描いてあり、下半分は上半分と軸対称なので図示を省略している。
同図に示すように、実施例1の車両用自動変速機は、入力軸Iと、第1遊星歯車組1と、第2遊星歯車群2と、第1クラッチ3、第2クラッチ4の2個のクラッチ、および第1ブレーキ5、第2ブレーキ6、第3ブレーキ7の3個のブレーキとからなる油圧作動の摩擦締結要素と、自動変速機のケース(本発明の静止部に相当)8と、出力部材9と、を備えている。
入力軸Iは、図示しないエンジンに図示しないトルク・コンバータ等を介して連結可能であり、出力部材9は、入力軸Iと同軸に配置され、図示しない伝達歯車や差動歯車装置を介して駆動輪に連結されている。
第1遊星歯車組1は、ダブル・ピニオン・タイプの遊星歯車組であって、サン・ギヤ11と、この外周側に配置されるリング・ギヤ12と、サン・ギヤ11に噛み合うインナ・ピニオン13およびこのインナ・ピニオン13、リング・ギヤ12の両方に噛み合うアウタ・ピニオン14を回転自在に支持するピニオン・キャリヤ15の3個の回転要素を有する。
一方、第2遊星歯車群2は、いわゆるラビニョ・タイプの遊星歯車組であって、ダブル・ピニオン・タイプの遊星歯車組とシングル・ピニオン・タイプの遊星歯車組とから、これらのリング・ギヤ、ピニオンの一部、およびピニオン・キャリヤが共通化されて構成されたものである。
すなわち、第2遊星歯車群2は、第1サン・ギヤ21と、リング・ギヤ22と、ピニオン・キャリヤ25と、第2ピニオン26と、の4つの回転要素を有している。
より詳細には、第1サン・ギヤ21と、リング・ギヤ22と、第1サン・ギヤ21に噛み合うインナ・ピニオン23およびこれとリング・ギヤ22に噛み合うアウタ・ピニオン24を回転自在に支持するピニオン・キャリヤ25と、を有するダブル・ピニオン・タイプの遊星歯車組に、以下のシングル・ピニオン・タイプの遊星歯車組を組み合わせたものである。
シングル・ピニオン・タイプの遊星歯車組は、第2サン・ギヤ26と、これに噛み合うピニオン(ダブル・ピニオン・タイプの遊星歯車組のアウタ・ピニオン24と共通)を回転自在に支持するピニオン・キャリヤ25(ダブル・ピニオン・タイプの遊星歯車組のピニオン・キャリヤ25と共通)と、ピニオン24に噛み合うリング・ギヤ22(ダブル・ピニオン・タイプの遊星歯車組のリング・ギヤ22と共通)と、を有している。
そして、上記のようにダブル・ピニオン・タイプの遊星歯車組とシングル・ピニオン・タイプの遊星歯車組とを、ピニオン・キャリヤ25やリング・ギヤ22を共通化して組み合わせて、第2遊星歯車群2が構成される。
ここで、第1遊星歯車組1の歯数比α1(サン・ギヤ11の歯数/リング・ギヤ12の歯数)は、たとえば0.431に設定してある。
また、第2遊星歯車群2のダブル・ピニオン・タイプ側の遊星歯車組の歯数比α2(第1サン・ギヤ21の歯数/第1リング・ギヤ22の歯数)は、たとえば0.516、またそのシングル・ピニオン側の遊星歯車組の歯数比α3(第2サン・ギヤ26の歯数/第2リング・ギヤ22の歯数)は、たとえば0.488に設定してある。
第1遊星歯車組1および第2遊星歯車群2の上記各回転要素は、以下に説明するようにそれぞれ連結、連結可能、あるいは固定可能とされる。
まず、第1遊星歯車組1にあっては、サン・ギヤ11が入力軸Iに常時連結され、リング・ギヤ12が第2ブレーキ6の締結により自動変速機のケース8に固定可能にされるとともに第2遊星歯車群2の第1サン・ギヤ21に常時連結され、ピニオン・キャリヤ15が第1ブレーキ5の締結によりケース8に固定可能にされるとともに、第2クラッチ4の締結により第2サン・ギヤ26に連結可能にされる。
一方、第2遊星歯車群2にあっては、第1サン・ギヤ21が、上述のように、第1遊星歯車組1のリング・ギヤ12に常時連結され、第1リング・ギヤ22が出力部材9に常時連結され、ピニオン・キャリヤ25が第1クラッチ3の締結により入力軸Iに連結可能にされるとともに、第3ブレーキ7の締結によりケース8に固定可能である。
上記のように連結した実施例1の自動変速機における各摩擦締結要素の締結・解放を、図2の作動表に示してある。作動表は、この横方向には各速度段を第1速から第6速まで、および後進を表しており、縦方向には、各摩擦締結要素が並べられている。作動表中、〇印はその摩擦締結要素が締結状態にされることを、また空白はその摩擦締結要素が解放状態であることをそれぞれ示す。
なお、作動表の下方には、各変速段のギヤ比、自動変速機でのレシオ・カバーレッジR/C、およびリバース/1速のギヤ比間の比(Rev/1st)を記載してある。
また、上記各摩擦締結要素は、図示しないコントローラにより電子制御される図示しないコントロール・バルブからの圧油の供給や抜き取りにより、それらの締結、解放が制御される。これらのコントローラやコントロール・バルブの構成および作用はよく知られているので、ここではそれらの説明は省略する。
次に、各変速段における動力の伝達経路を、そのときの共通速度線図を用いて説明する。
ここで、共通速度線図とは、縦軸に各回転要素の回転速度を取り、横軸にこれら回転要素を第1遊星歯車組1の歯数比α1および第2遊星歯車群2の歯数比α2(ダブル・ピニオン・タイプの遊星歯車組側)、α3(シングル・ピニオン・タイプの遊星歯車組側)の大きさに応じて割り振った線図である。
すなわち、横軸上に、シングル・ピニオン・タイプの遊星歯車組の場合には、リング・ギヤ、ピニオン・キャリヤ、サン・ギヤ3個の回転要素の回転速度軸を、この順に(左右いずれの方向でもよい)、リング・ギヤおよびピニオン・キャリヤ間の大きさをこの遊星歯車組の歯数比αとした場合、ピニオン・キャリヤおよびサン・ギヤ間の大きさが1となる割合でそれぞれ離して配置したものである。
この場合、縦軸には、回転速度ゼロより上方にエンジンと同じ回転方向の回転速度をとり、回転速度ゼロより下方にエンジンと逆回転方向の回転速度をとるようにする。
共通速度線図にあっては、リング・ギヤ、ピニオン、サン・ギヤのそれぞれの噛み合い関係は歯と歯とが1対1で噛み合うリニアな関係となるので、各回転要素の回転速度を結ぶと直線関係となる。
また、各変速段の共通速度線図を示す図3〜図9にあっては、同図中、左側から右側に向けて第1遊星歯車組1、第2遊星歯車群2の順で配置されており、これらのサン・ギヤはS、ピニオン・キャリヤはC、リング・ギヤはRで表し、これらの添え字1、2、3はそれぞれが所属する遊星歯車組を表す。
すなわち、速度軸は、第1遊星歯車組1ではサン・ギヤ11(本発明の第1要素)の回転速度軸がS1に相当し、ピニオン・キャリヤ15(本発明の第3要素)の回転速度軸がC1に相当し、リング・ギヤ12(本発明の第2要素)の回転速度軸がR1に相当する。
また、第2遊星歯車群2では、第1サン・ギヤ21(本発明の第4要素)の回転速度軸がS2に相当し、リング・ギヤ22(本発明の第6要素)の回転速度軸がR2に相当し、ピニオン・キャリヤ25(本発明の第5要素)の回転速度軸がC2に相当し、第2サン・ギヤ26(本発明の第7要素)の回転速度軸がS3に相当する。
したがって、共通速度線図は、図3〜図9すべてにおいて、同図中、左側から右側に向けて第1遊星歯車組1のサン・ギヤ11の回転速度軸S1、リング・ギヤ12の回転速度軸R1、ピニオン・キャリヤ15の回転速度軸C1、第2遊星歯車群2の第1サン・ギヤ21の回転速度軸S2、リング・ギヤ22の回転速度軸R2、ピニオン・キャリヤ25の回転速度軸C2、第2サン・ギヤ26の回転速度軸S3の順に並ぶことになる。なお、図3〜図9の各共通速度線図において、入力は○で、また出力は△で表してある。入力軸Iの回転速度は、ギヤ比の計算を容易にするため、共通速度線図では1としてある。また、以下の各変速段でのギヤ比は、α1〜α3をそれぞれ上記のように0.431、0.516、0.488に設定した場合の値である。
まず、自動変速機がN(ニュートラル)位置やP(パーク)位置にあるときは、すべての摩擦締結要素には締結圧が供給されないため、第1遊星歯車組1および第2遊星歯車群2はすべてフリーの状態にあり、これらは動力を伝えない。この結果、エンジンからの動力は、出力部材9には伝わらない。
なお、エンジンが稼働している間は、いずれのセレクト位置にあっても、第1遊星歯車組1のサン・ギヤ11が入力軸Iに連結されてこれと同じ回転速度で回転している。
ドライバーが図示しないセレクト・レバーをD(ドライブ、すなわち前進走行)位置に移動させると、車両は発進する。この発進時では車速が低いので、まず、第1速が成立する。
すなわち、第1速では、第2クラッチ4および第3ブレーキ7が締結される。
したがって、図3に示すように、第1遊星歯車組1では、サン・ギヤ11が入力軸Iと同じ回転速度で回転し、ピニオン・キャリヤ15が第2クラッチ4の締結により第2遊星歯車群2の第2サン・ギヤ26に連結されてこれらが同じ回転速度で回転し、リング・ギヤ12が第2遊星歯車群2の第1サン・ギヤ21に常時連結されてこれらが同じ回転速度で回転する。
第2遊星歯車群2では、第1サン・ギヤ21が上述のように第1遊星歯車組1のリング・ギヤ12に常時連結されてこれらが同じ回転速度で回転し、ピニオン・キャリヤ25が第3ブレーキ7の締結によりケース8に固定されて回転速度が0となり、第2サン・ギヤ26が上述のように第2クラッチの締結により第1遊星歯車組1のピニオン・キャリヤ15に連結される。
したがって、第1遊星歯車組1では、サン・ギヤ11が入力軸Iと同じ回転速度で回転し、リング・ギヤ12が入力軸Iと同じ回転方向で減速回転し、ピニオン・キャリヤ15が入力軸Iの回転方向とは逆方向に減速回転する。
第2遊星歯車群2では、第1サン・ギヤ21が第1遊星歯車組1のリング・ギヤ12と同じ減速回転速度で回転し、ピニオン・キャリヤ25が回転速度0であり、第2サン・ギヤ26がエンジンの回転方向とは逆方向に減速回転速度で回転し、リング・ギヤ22が第1サン・ギヤ21よりさらに遅い減速回転速度で回転する。
この結果、リング・ギヤ22と一体の出力部材9は、エンジンと同じ回転方向に、減速回転速度である第1速(ギヤ比7.201)で回転する。
車速が上昇すると、コントローラが第2クラッチ4を解放するとともに第1ブレーキ5を締結することで、第1速から第2速にシフトする。このとき、第3ブレーキ7の締結は第1速のまま維持される。この状態での共通速度線図を図4に示す。
このとき、第1遊星歯車組1では、サン・ギヤ11が入力軸Iと同じ回転速度で回転し、ピニオン・キャリヤ15が第1ブレーキ5の締結によりケース8に固定されるので、これらを通る直線とリング・ギヤ12の回転速度軸R1との交点がリング・ギヤ12の回転速度となる。したがって、リング・ギヤ12はエンジンと同じ回転方向に第1速のときより早い減速回転速度で回転する。
第2遊星歯車群2では、第1サン・ギヤ21が第1遊星歯車組1のリング・ギヤ12と同じ減速回転速度で回転し、ピニオン・キャリヤ25が第3ブレーキ7の締結により回転速度が0であるので、これらを通る直線と他の回転要素の各回転速度軸S2、R2との交点が他の回転要素の回転速度となる。したがって、第2サン・ギヤ26がエンジンの回転方向とは逆方向に第1速のときより早い減速回転速度で回転し、リング・ギヤ22が第1速のときより早い減速回転速度で回転する。
この結果、2リング・ギヤ22と一体の出力部材9は、エンジンと同じ回転方向に第1速より早い減速回転速度である第2速(ギヤ比4.495)で回転する。
さらに車速が上昇して、コントローラが第3ブレーキ7を解放するとともに、第2クラッチ4を締結することで第2速から第3速にシフトする。このとき、第1ブレーキ5の締結は、第2速のまま維持される。この状態での共通速度線図を図5に示す。
このとき、第1遊星歯車組1では、第2速の場合と同じであり、サン・ギヤ11が入力軸Iと同じ回転速度で回転し、ピニオン・キャリヤ15が第1ブレーキ5の締結によりケース8に固定されて回転速度が0であるので、リング・ギヤ12はエンジンと同じ回転方向に第1速のときより早い減速回転する。
第2遊星歯車群2では、第1サン・ギヤ21が第1遊星歯車組1のリング・ギヤ12と同じ減速回転速度で回転し、第2サン・ギヤ26が第2クラッチ4および第1ブレーキ5の締結により回転速度0となるので、これらを通る直線と他の回転要素の各速度軸との交点が他の回転要素の回転速度となる。
すなわち、ピニオン・キャリヤ25は、第1遊星歯車組1のリング・ギヤ12、したがって第2サン・ギヤ26の回転速度より遅い減速回転速度で回転し、リング・ギヤ22は、ピニオン・キャリヤ25の回転速度と第2サン・ギヤ26の回転速度との間での減速回転速度で回転する。
この結果、リング・ギヤ22と一体の出力部材9は、エンジンと同じ回転方向に第2速より早い減速回転速度である第3速(ギヤ比3.033)で回転する。
さらに車速が上昇して、コントローラが第2クラッチ4および第1ブレーキ5を解放するとともに、第1クラッチ3および第2ブレーキ6を締結すると、自動変速機は第3速から第4速になる。この状態での共通速度線図を図6に示す。
このとき、第1遊星歯車組1では、サン・ギヤ11が入力軸Iと同じ回転速度で回転し、リング・ギヤ12が第2ブレーキ6でケース8に固定されて回転速度が0になるので、ピニオン・キャリヤ15はエンジンの回転方向とは逆方向に減速回転する。
第2遊星歯車群2では、第1サン・ギヤ21が第1遊星歯車組1のリング・ギヤ12と同じ減速回転速度で回転し、ピニオン・キャリヤ25が第1クラッチ3の締結により入力軸Iと同じ回転速度で回転するので、これらを通る直線と他の回転要素の回転速度軸S2、R2との交点が他の回転要素の回転速度となる。すなわち、第2サン・ギヤ26は、入力軸Iより早い回転速度で回転し、リング・ギヤ22は第1サン・ギヤ21より早い減速回転速度で回転する。
この結果、リング・ギヤ22と一体の出力部材9は、エンジンと同じ回転方向に第3速より早い減速回転速度である第4速(ギヤ比2.067)で回転する。
さらに車速が上昇して、コントローラが第2ブレーキ6を解除するとともに、第1ブレーキ5を締結することで第4速から第5速へシフトする。このとき、第1クラッチ3の締結は、第4速のまま維持される。この状態での共通速度線図を図7に示す。
このとき、第1遊星歯車組1は、第2速および第3速のときと同じ状態であり、サン・ギヤ11が入力軸Iと同じ回転速度で回転し、ピニオン・キャリヤ15が第1ブレーキ5の締結によりケース8に固定されて回転速度が0であるので、リング・ギヤ12はエンジンと同じ回転方向に第1速のときより早い減速回転速度で回転する。
第2遊星歯車群2では、第1サン・ギヤ21が第1遊星歯車組1のリング・ギヤ12と同じ減速回転速度で回転し、ピニオン・キャリヤ25が第1クラッチ3の締結により入力軸Iと同じ回転速度で回転するので、これらを通る直線と他の回転要素の速度軸との交点が他の回転要素の回転速度となる。すなわち、リング・ギヤ22は第1サン・ギヤ21より早い減速回転速度で回転し、第2サン・ギヤ26は、入力軸Iより早いが、第4速のときより遅い回転速度で回転する。
この結果、リング・ギヤ22と一体の出力部材9は、エンジンと同じ回転方向に第4速より早い減速回転速度である第5速(ギヤ比1.416)で回転する。
さらに車速が上昇して、コントローラが第1ブレーキ5を解放するとともに、第2クラッチ4を締結すると、自動変速機は第5速から第6速になる。このとき、第1クラッチ3の締結は、第4速および第5速のまま維持される。この状態での共通速度線図を図8に示す。
このとき、第1遊星歯車組1は、サン・ギヤ11が入力軸Iと同じ回転速度で回転し、ピニオン・キャリヤ15が第2クラッチ4の締結により第2遊星歯車群2の第2サン・ギヤ26と同じ回転速度で回転し、リング・ギヤ12が常時連結された 第2遊星歯車群2の第1サン・ギヤ21と同じ回転速度で回転する。
第2遊星歯車群2では、第1サン・ギヤ21が上述のように第1遊星歯車組1のリング・ギヤ12と同じ回転速度で回転し、ピニオン・キャリヤ25が第1クラッチ3の締結により入力軸Iと同じ回転速度で回転し、第2サン・ギヤ26が、上述のように、第1遊星歯車組1のピニオン・キャリヤ15と同じ回転速度で回転する。したがって、第1遊星歯車組1および第2遊星歯車群2は両方とも一体となって回転する。
この結果、リング・ギヤ22と一体の出力部材9も、エンジンと同じ回転方向に第5速より早く、入力軸Iと同じ回転速度である直結比(ギヤ比1.000)で回転する。
以上は、D位置におけるアップシフトの作動について説明したが、D位置におけるダウンシフトは、上記とは逆方向の作動になるが、各変速段での作動はいずれでも同じであるので、それらの説明は省略する。
次に、車両停止状態でドライバーがセレクト・レバーをR(リバース:後進)位置に移動させると、コントローラは、第2クラッチ4および第2ブレーキ6を締結する。この状態での共通速度線図を図9に示す。
このとき、第1遊星歯車組1は、第4速の場合と同じ状態となり、サン・ギヤ11が入力軸Iと同じ回転速度で回転し、リング・ギヤ12が第2ブレーキ6でケース8に固定されて回転速度が0であるので、ピニオン・キャリヤ15はエンジンの回転方向とは逆方向に減速回転速度で回転する。
第2遊星歯車群2では、第1サン・ギヤ21が第2ブレーキ5の締結により第1遊星歯車組1のリング・ギヤ12を介してケース8に固定されて回転速度0であり、第2サン・ギヤ21が第2クラッチ5の締結により第1遊星歯車組1のピニオン・キャリヤ15のエンジンの回転方向とは逆方向の減速回転速度で回転するので、これらを通る直線と他の回転要素の速度軸との交点が他の回転要素の回転速度となる。すなわち、リング・ギヤ22は、エンジンの回転方向とは逆方向に第2サン・ギヤ21の回転速度より遅い減速回転速度で回転し、ピニオン・キャリヤ25は、エンジンの回転方向とは逆方向にリング・ギヤ22の回転速度と第2サン・ギヤ26の回転速度との間の減速回転速度で回転する。
この結果、リング・ギヤ22と一体の出力部材9は、後進比(ギヤ比-5.615:-はエンジンの回転方向と逆方向を意味する)で回転し、車両を後進させる。
なお、この実施例1の自動変速機にあっては、レシオ・カバーレッジ(R/C値)が、7.201となって上記従来技術の自動変速機での6.1に比べてかなり大きくなり、この結果、低速段から高速段まで幅広いギヤ比が得られる。したがって、低速運転時に大きな駆動力を得て発進、登坂能力を向上させることができ、かつ高速運転時におけるエンジンの回転速度を抑えて、エンジン騒音の低減および燃費の低減が可能となる。
また、段間比は、第1速と第2速との間で1.602、第2速と第3速との間で1.482、第3速と第4速との間で1.467、第4速と第5速との間で1.460、第5速と第6速との間で1.416となって、適切な段間比を得ることができる。
また、リバース/1速のギヤ比間の比(Rev/1st)は0.780となって、発進時と後進時とにあって、アクセル・ペダルの踏込量に対する出力差がそれほど大きくならないので、ドライバーに違和感をもたせることがない。
以上説明したように、実施例1の自動変速機は、以下の効果を有する。
実施例1の自動変速機にあっては、第1遊星歯車組1にダブル・ピニオン・タイプの遊星歯車組を用い、第2遊星歯車群2にラビニョ・タイプの遊星歯車組を用いるとともに、2個のクラッチ3、4および3個のブレーキ5、6、7からなる5個の摩擦締結要素を備えるようにしたので、シングル・ピニオン・タイプの遊星歯車組だけの場合に比べて回転要素数や回転要素間を連結するメンバ数を少なくすることができる。したがって、自動変速機の軸方向の寸法が短くなってコンパクトになり、車両への搭載性が向上するとともに、その重量や製造コストも低減することができる。
また、ブレーキを3個にしてクラッチを2個に抑えたので、ブレーキがクラッチより安価であることから、自動変速機全体のコストを下げることが可能となる。
以上、本発明を上記実施例に基づき説明してきたが、本発明は上記実施例に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更等があった場合でも、本発明に含まれる。
たとえば、上記α1〜α3の値は、実施例の値に限られず、必要に応じて適宜変更してもよい。
また、本発明の自動変速機は、エンジン前置き前輪駆動車やエンジン後置き後輪駆動車に限られない。
I 入力軸
1 第1遊星歯車組
11 サン・ギヤ(第1要素)
12 リング・ギヤ(第2要素)
13 インナ・ピニオン
14 アウタ・ピニオン
15 ピニオン・キャリヤ(第3要素)
2 第2遊星歯車群
21 第1サン・ギヤ(第7要素)
22 リング・ギヤ(第6要素)
23 インナ・ピニオン
24 アウタ・ピニオン
25 ピニオン・キャリヤ(第5要素)
26 第2サン・ギヤ(第4要素)
3 第1クラッチ
4 第2クラッチ
5 第1ブレーキ
6 第2ブレーキ
7 第3ブレーキ
8 ケース(静止部)
9 出力部材

Claims (5)

  1. 入力軸と、
    出力部材と、
    静止部と、
    第1回転要素、第2回転要素、および第3回転要素の3個の回転要素を有する第1遊星歯車組と、
    第4回転要素、第5回転要素、第6回転要素、および第7回転要素の4個の回転要素を有する第2遊星歯車群と、
    第1クラッチ、第2クラッチ、第1ブレーキ、第2ブレーキ、および第3ブレーキの5個の摩擦締結要素と、
    を備え、
    第1遊星歯車群の3個の回転要素を、共通速度線図上で第1遊星歯車群の歯数比に対応する間隔に応じて並べ、この並び順に第1要素、第2要素、第3要素とし、
    第2遊星歯車組の4個の回転要素を、共通速度線図上で第2遊星歯車組の歯数比に対応する間隔に応じて並べ、この並び順に第4要素、第5要素、第6要素、第7要素とし、
    前記入力軸は、前記第1要素に常時連結するとともに前記第1クラッチの締結により前記第5要素に連結可能とし、
    前記出力部材は、前記第6要素に常時連結し、
    前記第3要素は、前記第1ブレーキの締結により前記静止部に固定可能とするとともに、前記第2クラッチの締結により前記第4要素に連結可能とし、
    前記第2要素は、前記第2ブレーキの締結により前記静止部に固定可能にするとともに、前記第7要素に常時連結し、
    前記第5要素は、前記第3ブレーキの締結により前記静止部に固定可能とした、
    ことを特徴とする車両用自動変速機。
  2. 請求項1に記載の車両用自動変速機において、
    前記第2遊星歯車群は、ラビニョ・タイプの遊星歯車組である、
    ことを特徴とする車両用自動変速機。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の車両用自動変速機において、
    第1遊星歯車組が、ダブル・ピニオン・タイプの遊星歯車組である、
    ことを特徴とする車両用自動変速機。
  4. 請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1項に記載の車両用自動変速機において、
    前記第1クラッチは、第4速、第5速、および第6速で締結し、
    前記第2クラッチは、第1速、第3速、第6速、および後進で締結し、
    前記第1ブレーキは、第2速、第3速、および第5速で締結し、
    前記第2ブレーキは、第4速、および後進で締結し、
    前記第3ブレーキは、第1速、および第2速で締結する、
    ことを特徴とする車両用自動変速機。
  5. 請求項1乃至請求項4のうちのいずれか1項に記載の車両用自動変速機において、
    前記第1遊星歯車群は、ダブル・ピニオン・タイプの遊星歯車組であり、
    前記第2遊星歯車組は、ラビニョ・タイプの遊星歯車組であり、
    前記第1要素は、前記第1遊星歯車組のサン・ギヤであり、
    前記第2要素は、前記第1遊星歯車組のリング・ギヤであり、
    前記第3要素は、前記第1遊星歯車組のピニオン・キャリヤであり、
    前記第7要素は、前記第2遊星歯車群の第1サン・ギヤであり、
    前記第5要素は、前記第2遊星歯車群のピニオン・キャリヤであり、
    前記第6要素は、前記第2遊星歯車群のリング・ギヤであり、
    前記第4要素は、前記第2遊星歯車群の第2サン・ギヤである、
    ことを特徴とする車両用自動変速機。
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