JP2013146504A - 医療用具およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】表面潤滑層が凹凸構造を有し、優れた保水性を発揮する医療用具およびその製造方法を提供する。
【解決手段】基材層と、基材層の少なくとも一部を覆う反応性単量体を有する親水性重合体からなる表面潤滑層と、を備え、前記表面潤滑層に、凹部が複数形成されており、前記凹部の単位面積あたりの個数が1〜1×10個/mmであり、前記凹部の平均孔径が1〜500μmであり、前記凹部の平均深さRcが0.3〜5μmの範囲である医療用具。
【選択図】なし

Description

本発明は、表面潤滑層にうろこ状の凹凸構造を有する医療用具およびその製造方法に関する。
カテーテル・ガイドワイヤ等生体内に挿入される医療用具は、血管などの組織損傷を低減させ、かつ術者の操作性を向上させるため、優れた潤滑性を示すことが要求される。このため、潤滑性を有する親水性高分子を基材表面に被覆したガイドワイヤやカテーテルが開発され、実用化されている。
ここで、親水性高分子が潤滑性を発揮するには、高分子が水で膨潤している必要がある。しかし、生体内は必ずしもウェットな環境ばかりではない。例えばガイドワイヤが食道に挿入されるときの様にドライな環境下におかれた場合には、表面潤滑層が術中しだいに乾燥していき、操作が困難になるという問題が知られている。このような表面潤滑層の乾燥は、患者に苦痛および傷害を与える可能性がある。
そのため、表面潤滑層(親水性コーティング)は高い保水性を有していることが望ましい。表面潤滑層に高い保水性を付与する方法として、特許文献1には、基材の表面粗さを増加させることで、親水性コーティングと基材との接着を強固にし、保水性を改良した医療機器が開示されている。
また、ポリマー材料に凹凸を付与する方法としては、特許文献2に、シャーレ等の基板上に両親媒性ポリマーを含むポリマー溶液をキャストした後、溶液を蒸発させながら、高湿度雰囲気中の水分をキャスト液表面に結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させて得られるハニカム構造体が開示されている。当該ハニカム構造体は、表面が凹凸構造を有し、細胞を培養するにあたっての基材として提供されている。
特表2011−516230号公報 特開2001−157574号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、基材を変形させる必要があるため、適応できる医療機器の種類が制限されるという問題があった。
また、特許文献2に記載の両親媒性ポリマーを基材にコーティングし、かつ両親媒性ポリマー(ポリマー層)に凹凸構造を形成しようとすると、ポリマー層と基材との結合性が十分でないため、形成されたポリマー層が剥がれやすくなる。このため、使用するポリマーの選択に注意が必要である。
さらに、特許文献2には、表面の凹凸部が保水性を発揮することは検討されていなかった。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、表面潤滑層が凹凸構造を有し、優れた保水性(潤滑維持性)を発揮する医療用具およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、うろこ状の凹凸構造を有する表面潤滑層を簡便な手法で基材層に強固に固定化し、湿潤後、大気中においても優れた保水性(潤滑維持性)を発揮する医療用具およびその製造方法を提供することである。
上記目的を達成するための本発明は、(1)基材層と、基材層の少なくとも一部を覆う反応性単量体を有する親水性重合体からなる表面潤滑層と、を備え、前記表面潤滑層に、凹部が複数形成されており、前記凹部の単位面積あたりの個数が1〜1×10個/mmであり、前記凹部の平均孔径が1〜500μmであり、前記凹部の平均深さRcが0.3〜5μmの範囲である医療用具である。
また、上記目的を達成するための本発明は、(2)前記親水性重合体が、親水性単量体を少なくとも一つの構成単位とした親水性ドメインと、反応性単量体を少なくとも一つの構成単位とした反応性ドメインと、を有するブロック共重合体である、(1)に記載の医療用具である。
さらに、上記目的を達成するための本発明は、(3)前記反応性単量体がエポキシ基を有する単量体であることを特徴とする(1)または(2)に記載の医療用具である。
さらにまた、上記目的を達成するための本発明は、(4)反応性単量体を有する親水性重合体を溶媒に溶解して溶液Aを調製し、該溶液Aを基材層にコートした後、該溶媒を蒸発させながら、溶液Aと混和しない液滴Bを表面に付着させ、該液滴Bを鋳型として、該親水性重合体からなる表面潤滑層に凹部を形成することを有する、医療用具の製造方法である。
さらにまた、上記目的を達成するための本発明は、(5)液滴Bが水を主成分とする、上記(4)に記載の医療用具の製造方法である。
本発明は、表面潤滑層が凹凸構造を有し、優れた保水性を発揮する医療用具およびその製造方法を提供する。また、本発明の製造方法によれば、うろこ状の凹凸構造を有する表面潤滑層を簡便な手法で基材に強固に固定化し、湿潤後、大気中においても優れた保水性(潤滑維持性)を発揮する医療用具が提供される。
本発明の凹凸構造が形成された表面潤滑層を有する医療用具(以下、単に医療用具とも略記する)の実施形態の表面の積層構成を模式的に表した部分断面図である。 本実施形態の応用例として、表面の積層構成の異なる構成例を模式的に表した部分断面図である。 本発明の医療用具の凹凸構造が形成された表面潤滑層の電子顕微鏡写真である。 本実施形態の液滴Bを付着させるための装置の模式図である。 実施例で用いた保水性評価試験装置(摩擦測定機)の模式図である。 実施例1で得られた医療用具(サンプル)の表面潤滑層の保水性評価試験結果を示すグラフである。 比較例1で得られた医療用具(サンプル)の表面潤滑層の保水性評価試験結果を示すグラフである。
本発明は、基材層と、基材層の少なくとも一部を覆う反応性単量体を有する親水性重合体からなる表面潤滑層と、を備え、前記表面潤滑層に、凹部が複数形成されており、前記凹部の単位面積あたりの個数が1〜1×10個/mmであり、前記凹部の平均孔径が1〜500μmであり、前記凹部の平均深さRcが0.3〜5μmの範囲である医療用具に関する。
また、本発明は、反応性単量体を有する親水性重合体(以下、単に「親水性重合体」とも称する。)を溶媒に溶解して溶液Aを調製し、該溶液Aを基材層にコートした後、該溶媒を蒸発させながら、溶液Aと混和しない液滴Bを表面に付着させ、該液滴Bを鋳型として、該親水性重合体からなる表面潤滑層に凹部を形成することを有する、医療用具の製造方法に関する。本発明の製造方法によれば、反応性単量体を有する親水性重合体を含む溶液Aが、基材層にコートされた後、液滴Bが表面に付着され、溶液Aを構成する溶媒(以下、「溶媒A」と称する。)および液滴Bを蒸発させることで、液滴Bの形状に基づく、すなわち液滴Bを鋳型とする凹部が形成された表面潤滑層が得られる。この際、親水性重合体の反応性単量体部分が、基材層と結合するため、表面潤滑層は基材層に強固に固定化される。さらには、親水性重合体の反応性単量体部分は、隣接する反応性単量体と架橋し、架橋構造を形成させるため、表面潤滑層の強度を高めることができ、表面潤滑層は基材層に強固に固定化される。すなわち、本発明の製造方法で得られる医療用具は、親水性重合体の反応性単量体を介して、基材層と表面潤滑層とが強固に固定化でき、さらには、架橋構造を形成することで強固な表面潤滑層が形成される。ゆえに、本発明により形成された表面潤滑層は、基材表面からの溶出・剥離を効果的に抑制・防止できる。
さらに、本発明の製造方法により得られたうろこ状の凹凸構造を有する表面潤滑層は、凹部に保水することができるため、湿潤後、大気中においても優れた潤滑性を維持することができる。
図1Aは、本実施形態の凹凸構造が形成された表面潤滑層を有する医療用具(以下、単に「医療用具」ともいう)の表面の積層構成を模式的に表した部分断面図である。図1Bは、本実施形態の応用例として、表面の積層構成の異なる構成例を模式的に表した部分断面図である。図1Aおよび図1Bに示されるように、本実施形態の医療用具10では、基材層1と、基材層1の少なくとも一部を覆う(図中では、図面内の基材層の全体を被覆した例を示す)表面潤滑層2と、を備え、表面潤滑層2が反応性単量体を有する親水性重合体を反応させて架橋構造を形成することによって得られることを特徴とするものである。また、液滴Bを鋳型として、表面潤滑層の表面には凹部3が形成されている。
以下、本実施形態の医療用具の製造方法を順に説明する。
<医療用具の製造方法>
本実施形態では、「基材層に親水性重合体を含む溶液Aをコートする工程」と、「表面潤滑層に凹部を形成する工程」とに分けて述べる。
「基材層に親水性重合体を含む溶液Aをコートする工程」
本工程では、反応性単量体を有する親水性重合体を溶媒(溶媒A)に溶解し、得られた溶液Aを、基材層にコート(「コーティング」または「被覆」とも称する。)する。
(親水性重合体)
本実施形態で用いられる親水性重合体は、反応性単量体を有し、吸水して潤滑性を発現するのであれば、特に制限されないが、反応性単量体と親水性単量体を有するものが好ましい。親水性重合体が、反応性単量体を有することで、潤滑層に耐久性を持たせることができる。
ここで、反応性単量体とは、架橋反応等が可能な反応性官能基を有する単量体を意味する。反応性官能基は、特に制限されないが、エポキシ基、酸ハライド基、アルデヒド基、イソシアネート基、酸無水物基などの官能基でありうる。そして、反応性単量体としては、具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、グリシジルエーテル、メチルグリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基を分子内に有する単量体;(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリル酸ブロミド、(メタ)アクリル酸アイオダイドなどの酸ハライド基を分子内に有する単量体;(メタ)アクリルアルデヒド、グリオキザル、テレフタルアルデヒドなどのアルデヒド基を分子内に有する単量体;アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートまたは1,3,5−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどのイソシアネート基を分子内に有する単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の酸無水物基を分子内に有する単量体などを例示できる。これらのうち、反応性官能基を有する単量体としては、エポキシ基を有する単量体が好ましく、反応が熱等により促進され、取り扱いも比較的容易であるグリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートがより好ましい。これらの単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上用いる場合の重合体の形態は、ブロック共重合体でもよいしランダム共重合体でもよい。
親水性単量体としては、特に制限されないが、例えば、アクリルアミドやその誘導体、ビニルピロリドン、アクリル酸やメタクリル酸およびそれらの誘導体、ポリエチレングリコールアクリレートおよびその誘導体、糖やリン脂質を側鎖に有する単量体、無水マレイン酸などの水溶性の単量体などを例示できる。より具体的には、N−メチルアクリルアミド、N,N’−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N,N’−ジメチルアミノエチルアクリレート、ビニルピロリドン、2−メタクリロイルオキシエチルフォスフォリルコリン、2−メタクリロイルオキシエチル−D−グリコシド、2−メタクリロイルオキシエチル−D−マンノシド、ビニルメチルエーテル、ヒドロキシエチルメタクリレートなどを好適に例示できる。合成の容易性や操作性の観点から、好ましくは、N,N’−ジメチルアクリルアミド、N,N’−ジメチルアミノエチルアクリレートであり、より好ましくはN,N’−ジメチルアクリルアミドである。これらの親水性単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上用いる場合の重合体の形態は、ブロック共重合体でもよいしランダム共重合体でもよい。
良好な潤滑性を発現するためには、親水性重合体が、反応性単量体と親水性単量体とが共重合された架橋反応可能な反応性官能基を有する重合体であることが好ましく、反応性官能基を有する単量体から形成されるブロックと、親水性単量体から形成されるブロックとを有するブロック共重合体であることがより好ましい。こうしたブロック共重合体であると、表面潤滑層の強度や潤滑性において良好な結果が得られる。
また、本発明のより好ましい実施形態では、親水性重合体が、反応性単量体を少なくとも一つの構成単位とした反応性ドメインと、親水性単量体を少なくとも一つの構成単位とした親水性ドメインと、を有するブロック共重合体であり、さらに好ましくは、前記反応性単量体がエポキシ基を有する単量体である。反応性官能基であるエポキシ基が、基材層との反応に加えて、隣接するエポキシ基と反応することで、隣接する親水性重合体が架橋構造を形成させ、表面潤滑層の強度を高めることができる。
当該好ましい実施形態では、親水性重合体は、上述した反応性官能基を有する単量体のうちエポキシ基を有する単量体を構成単位とする反応性ドメインと、上述した親水性単量体を構成単位とする親水性ドメインとのブロック共重合体が例示される。
本実施形態の親水性重合体を共重合させる親水性重合体の製造法(重合法)については、特に制限されるものではなく、公知の重合方法が使用できるが、一般的には、重合開始剤を用いて単量体を重合させればよい。単量体成分(たとえば、反応性単量体、親水性単量体)の重合方法は、特に制限されず、例えば、溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行なうことができる。また、本実施形態の親水性重合体がブロック共重合体またはグラフト共重合体である場合には、例えば、リビング重合、マクロモノマーを用いた重合、高分子重合開始剤を用いた重合、重縮合などが例示できるが、特に限定されない。
親水性重合体が、反応性官能基(好ましくはエポキシ基)を有する単量体を構成単位とする反応性ドメインと、親水性単量体を構成単位とする親水性ドメインとの共重合体(好ましくはブロック共重合体)である場合の、反応性官能基を有する単量体と親水性単量体との組成は、特に制限されない。
本実施形態の親水性重合体(表面潤滑層)としては、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体、グリシジルメタクリレート−ジメチルアクリルアミド共重合体が好ましく、グリシジルメタクリレート−ジメチルアクリルアミド共重合体(特にブロック共重合体)がより好ましい。
(溶液A)
本実施形態で用いられる溶液Aを構成する溶媒Aは、液滴Bとは混和せず、親水性重合体を溶解できれば、特に制限されない。溶媒Aとしては、たとえば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系有機溶剤、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルイソブチルケトン等の非水溶性ケトン類、二硫化炭素等の溶媒が挙げられる。これらの中でも、疎水性であり、かつ後述の液滴Bとなる溶媒(溶媒B)に、取り扱いの容易な水を使用できるという観点から、クロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサンが好ましい。これらの溶媒は、単独で使用してもよいし、これらの溶媒を2種以上組み合わせた混合溶媒として使用してもよい。
(基材層)
本実施形態で用いられる基材層としては、いずれの材料から構成されてもよく、その材料は特に制限されない。具体的には、基材層1を構成(形成)する材料は、金属材料、高分子材料、およびガラスなどが挙げられる。ここで、基材層1は、基材層1全体(全部)が上記いずれかの材料で構成(形成)されても、または、図1Bに示されるように、上記いずれかの材料で構成(形成)された基材層コア部1aの表面に他の上記いずれかの材料を適当な方法で被覆(コーティング)して、表面層1bを構成(形成)した構造を有していてもよい。後者の場合の例としては、樹脂材料等で形成された基材層コア部1aの表面に金属材料が適当な方法(メッキ、金属蒸着、スパッタ等従来公知の方法)で被覆(コーティング)されて、表面層1bを形成してなるもの;金属材料やセラミックス材料等の硬い補強材料で形成された基材層コア部1aの表面に、金属材料等の補強材料に比して柔軟な高分子材料が適当な方法(浸漬(ディッピング)、噴霧(スプレー)、塗布・印刷等の従来公知の方法)で被覆(コーティング)あるいは基材層コア部1aの補強材料と表面層1bの高分子材料とが複合化(適当な反応処理)されて、表面層1bを形成してなるものなどが挙げられる。よって、基材層コア部1aが、異なる材料を多層に積層してなる多層構造体、あるいは医療用具の部分ごとに異なる材料で形成された部材を繋ぎ合わせた構造(複合体)などであってもよい。また、基材層コア部1aと表面層1bとの間に、さらに別のミドル層(図示せず)が形成されていてもよい。さらに、表面層1bに関しても異なる材料を多層に積層してなる多層構造体、あるいは医療用具の部分ごとに異なる材料で形成された部材を繋ぎ合わせた構造(複合体)などであってもよい。
上記基材層1を構成(形成)する材料のうち、金属材料としては、特に制限されるものではなく、カテーテル、ガイドワイヤ、留置針等の用途に一般的に使用される金属材料が使用される。具体的には、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS420J2、SUS630などの各種ステンレス鋼(SUS)、金、白金、銀、銅、ニッケル、コバルト、チタン、鉄、アルミニウム、スズあるいはニッケル−チタン(Ni−Ti)合金、ニッケル−コバルト(Ni−Co)合金、コバルト−クロム(Co−Cr)合金、亜鉛−タングステン(Zn−W)合金等の各種合金、金属−セラミックス複合体などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上記金属材料には、使用用途であるカテーテル、ガイドワイヤ、留置針等の基材として最適な金属材料を適宜選択すればよい。
また、上記基材層1を構成(形成)する材料のうち、高分子材料としては、特に制限されるものではなく、カテーテル、ガイドワイヤ、留置針等の用途に一般的に使用される高分子材料が使用される。具体的には、ポリアミド樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂(アリル樹脂)、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、アミノ樹脂(ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂)、ポリエステル樹脂、スチロール樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂(ケイ素樹脂)、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上記高分子材料には、使用用途であるカテーテル、ガイドワイヤ、留置針等の基材として最適な高分子材料を適宜選択すればよい。
また、上記基材層の形状は、特に制限されることはなく、シート状、線状(ワイヤ)、管状など使用態様により適宜選択される。
また、上記ミドル層(図示せず)に用いることができる材料としては、特に制限されるものではなく、基材層コア部1aと表面層1bとの結合機能を十分に発現し得る材料を適宜選択すればよい。例えば、上記基材層1の材料と同様の材料が使用できるが、これらに何ら限定されるものではない。
(コート方法)
溶液A中の親水性重合体の濃度は、特に制限されないが、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.05〜15質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。親水性重合体の濃度が上記範囲であれば、得られる表面潤滑層の力学強度が十分発揮される。また、1回のコーティングで所望の厚みの均一な表面潤滑層を容易に得ることができ、作業性(例えば、コーティングのしやすさ)、生産効率の点で好ましい。ただし、上記範囲を外れても、本発明の作用効果に影響を及ぼさない範囲であれば、十分に利用可能である。
溶液Aを基材層にコートする方法としては、特に制限されるものではなく、浸漬法(ディッピング法)、塗布・印刷法、噴霧法(スプレー法)、スピンコート法、混合溶液含浸スポンジコート法など、従来公知の方法を適用することができるが、本実施形態においては、浸漬法(ディッピング法)を用いるのが好ましい。
また、基材層の一部にのみ表面潤滑層を形成させる場合には、基材層の一部のみを溶液A中に浸漬して、該溶液Aを基材層の一部にコーティングすることで、基材層の所望の表面部位に、表面潤滑層を形成することができる。
基材層の一部のみを溶液A中に浸漬するのが困難な場合には、予め表面潤滑層を形成する必要のない基材層の表面部分を着脱(装脱着)可能な適当な部材や材料で保護(被覆等)した上で、基材層を溶液A中に浸漬して、該溶液Aを基材層にコートした後、表面潤滑層を形成する必要のない基材層の表面部分の保護部材(材料)を取り外し、その後、加熱操作等により反応させることで、基材層の所望の表面部位に表面潤滑層を形成することができる。ただし、本発明では、これらの形成法に何ら制限されるものではなく、従来公知の方法を適宜利用して、表面潤滑層を形成することができる。例えば、基材層の一部のみを混合溶液中に浸漬するのが困難な場合には、浸漬法に代えて、他のコーティング手法(例えば、医療用具の所定の表面部分に、溶液Aを、スプレー装置、バーコーター、ダイコーター、リバースコーター、コンマコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ドクターナイフなどの塗布装置を用いて、塗布する方法など)を適用してもよい。
「表面潤滑層に凹部を形成する工程」
本工程では、親水性重合体を含む溶液Aをコートした基材層に、溶液Aと混和しない液滴Bを表面に付着させ、その液滴Bを鋳型とした凹部を有する表面潤滑層を基材層表面に形成する。
ここで、表面潤滑層は、基材表面全体を覆うように形成されていてもよいが、湿潤時に表面が潤滑性を有することが求められる表面部分のみに形成されていてもよい。
(液滴B)
本実施形態で用いられる液滴Bとなる溶媒(溶媒B)は、溶液Aとは混和せず、溶液Aの表面に液滴として付着できれば特に制限されず、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール;塩酸、酢酸およびこれらの混合溶媒が挙げられる。これらのうち、水、メタノールが好ましい。さらに、本実施形態において、液滴Bが水を主成分とするのがより好ましく、水であることがさらに好ましい。液滴Bとなる溶媒(溶媒B)が水を主成分とする場合、溶媒B中の水の含有率は80質量%以上であることが好ましい。
(凹部の形成方法)
まず、基材層にコートされた溶媒Aを蒸発させながら、溶液Aと混和しない液滴Bを表面に付着させる。
溶媒Aを蒸発させながら、液滴Bを表面に付着させる方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、溶媒Bの蒸気中に暴露する、高湿度雰囲気下に暴露する、溶媒Bを噴霧する、などの公知の方法が挙げられる。例えば、溶媒Bの蒸気中に暴露する方法としては、溶媒Bの少なくとも一部が蒸発する温度(T℃)で加熱すればよい。このため、例えば、溶媒Bが水のときは、大気中または密閉した系において、容器に入れた溶媒B(水)を、好ましくは40〜100℃、より好ましくは60〜90℃で加温する。また、蒸気中に暴露する暴露時間は、好ましくは3〜180分、より好ましくは10〜60分である。当該方法によれば、溶媒Bが蒸発(気化)し、溶媒Bの蒸気として大気中または密閉した系(閉鎖空間)に拡散する。当該蒸気の存在する系内に、溶液Aをコートした基材層を存在させることで、溶液Aの表面で、溶媒Bの蒸気が一部液化(結露)し、溶液Aの表面上に液滴Bが付着する。
好ましい実施形態では、溶媒Bの入った容器上に、溶液Aをコートした基材層を配置する。当該形態では、溶液Aの表面へ液滴Bが付着しやすいため好ましい。具体的には、図3に示される装置20ように、空間11に、溶媒B 12が入った容器13を、プレート14の下部に配置する。プレート14上には、溶液Aをコートした基材層10aが配置される。プレート14としては、基材層10aを配置することができればその形態は特に制限されず、例えば、ステンレス板、金網、メッシュ、スチームプレート等が挙げられる。基材層10aの全体に液滴Bを付着するという点から、金網、メッシュ、スチームプレートのような穴の開いた板構造のものが好ましい。また、液滴Bを付着させる際に、基材層10aの上下を反転させたり、回転させたりするなどして、基材層10aの全体に均一に液滴Bを付着させる方法も好ましい。高湿度雰囲気下に暴露する方法としては、特に制限されないが、恒温恒湿槽に基材層を配置して液滴B(結露した水)を付着させる方法が挙げられる。恒温恒湿槽を使用する場合の条件としては、温度が好ましくは0〜100℃、より好ましくは5〜80℃、さらに好ましくは15〜30℃、湿度が好ましくは50〜95%である。湿度が50%未満の場合、基材上への結露が不十分になり、湿度が95%以上の場合、結露生成の制御が困難になるため、好ましくない。また、噴霧する方法としては、特に制限されないが、溶媒Bをスプレーで吹き付ける、蒸気または高湿度気体を吹き付ける、などが挙げられる。高湿度気体としては、溶液A表面に結露を生じることができる程度の湿度をもった気体であればよく、空気に限らず、窒素、アルゴンなどの不活性気体を用いてもよい。
本実施形態において、凹部(具体的には、うろこ状の凹凸構造)は、液滴Bを鋳型として形成される。そのため、液滴Bが、溶液A表面で、溶液Aと混和せず、分離して存在する。液滴Bが、溶液A上で、隣接する液滴Bと合体して、より大きな液滴Bを形成することで、表面潤滑層の表面の粗さは大きくなる。本実施形態では、液滴Bが成長しうる条件で、溶液Aの蒸発と液滴Bの付着を行い、うろこ状の凹凸構造を形成するのが好ましい。そのため、上記した方法のうち、蒸気中に暴露する方法が特に好ましい。
本実施形態において、基材層上に液滴Bを付着させた後に、溶媒A、液滴Bを蒸発させる。当該工程により、基材層上に、液滴Bを鋳型としたうろこ状の凹凸構造を有する表面潤滑層が得られる。
本実施形態において、溶媒A、液滴Bを蒸発(乾燥)させる際に、反応性単量体の反応性官能基(好ましくはエポキシ基)が、基材層と結合しうる。そのため、本実施形態により得られた表面潤滑層は、基材層と強固に固定化されている。さらに、反応性官能基(好ましくはエポキシ基)は、当該乾燥する工程の際に、隣接する反応性単量体の反応性官能基と架橋し、架橋構造を形成しうる。これにより、強度の優れた表面潤滑層が形成される。溶媒A、液滴Bを蒸発させる過程で、溶媒Aが優先的に揮発すると、コートされた表面潤滑層上に、溶媒Aに対して液滴Bの量が多く残存することとなる。その場合、液滴Bが蒸発する際に、表面潤滑層を破壊してしまうことがある。本実施形態では、液滴Bが表面潤滑層上に多く存在する場合においても、表面潤滑層が架橋構造を形成しているため、破壊されず、液滴Bを鋳型としたうろこ状凹凸構造を形成しうる。
そのため、溶媒A、液滴Bを蒸発(乾燥)させる方法としては、反応性官能基が基材層と結合し、また反応性官能基が架橋構造を形成する反応を進行(促進)し得るものであればよく、加熱処理を行うのが好ましい。
例えば、加熱処理温度(加熱炉などの加熱装置の設定温度)は、好ましくは40〜170℃、より好ましくは50〜150℃である。かような範囲であれば、所望の架橋反応が十分に促進され、短時間で所望の効果が得られうる。
加熱処理時間は、親水性重合体の架橋反応が促進し得る範囲であればよく、特に制限されるものではないが、好ましくは30分〜24時間、より好ましくは1〜10時間である。加熱時間が上記範囲であれば、架橋反応が効率的に進行し、未架橋の親水性重合体の量を少なくすることができ、表面潤滑性を長期間維持することが可能となる。また、製造コストの面でも有利である。
加熱処理時の圧力条件も何ら制限されるものではなく、常圧(大気圧)下で行うことができるほか、加圧ないし減圧下で行ってもよい。また、反応性単量体の反応性官能基がエポキシ基の場合、架橋反応を促進することができるように、トリアルキルアミン系化合物やピリジン等の3級アミン系化合物などの反応触媒を、親水性重合体を溶解する溶液Aに適時適量添加して用いてもよい。加熱手段(装置)としては、例えば、オーブン、ドライヤー、マイクロ波加熱装置などを利用することができる。
また、加熱処理以外にも親水性重合体の架橋反応を促進させる方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、光照射、紫外線(UV)照射、電子線照射、放射線照射、プラズマ照射など、従来公知の方法を適用することができる。
(表面潤滑層)
以上のようにして得られた表面潤滑層2は、うろこ状の凹凸構造を有する。
うろこ状の凹凸構造において、凹部の形状は特に制限されず、球形、ラグビーボール形、円盤形、不定形など、本発明の目的を損なわない範囲で任意の形状の凹部(凹凸構造)であってよい。本実施形態において、凹部の単位面積あたりの個数は、1〜1×10個/mm、好ましくは10〜1×10個/mm、より好ましくは25〜5×10個/mmである。また、凹部の平均孔径(個数平均孔径)は、1〜500μm、好ましくは10μm超〜500μm、より好ましくは15〜300μm、さらに好ましくは20〜150μmである。また、凹部の平均深さRc値は、0.3〜5μm、好ましくは0.5〜4μm、より好ましくは1.0〜2μmである。凹部の形状が、上記範囲内であれば、凹部の中に水を十分に保持することができるため、大気中に放置されても、保水性の効果が発揮される。なお、凹部の単位面積あたりの個数、凹部の平均孔径(個数平均孔径)、平均深さの測定方法は、特に制限されず、公知の測定方法がそのままあるいは適宜修飾を加えて適用できる。本明細書では、凹部の平均孔径(個数平均孔径)は、光学顕微鏡により観測される、1,000×1,400μmの視野に含まれる表面潤滑層表面の凹部の孔径を、ひとつずつ、それぞれ測定し、それらを相加平均した平均値を意味する。なお、凹部の孔径は、形成された凹部の一番長い孔径(長軸)を測定する。
また、凹部の単位面積あたりの個数は、上述の光学顕微鏡における視野に含まれる個数を測定し、それを単位面積あたりで割った値を意味する。また、凹部の平均深さは、レーザー顕微鏡を用いて、対物レンズ20倍で観察した際のRc値(粗さ曲線要素の平均高さ、ISO4287/1)を測定する。
また、本実施形態の医療用具を構成する表面潤滑層2の厚さとしては、特に制限されないが、表面潤滑層が基材層に強固に固定化され、かつ使用時の優れた表面潤滑性、および保水性(潤滑維持性)を発揮することができるだけの厚さを有することが好ましい。このような観点から、表面潤滑層の厚さ(未膨潤時の表面潤滑層の厚さ)は、0.1〜7μm、好ましくは0.5〜5μmの範囲とするのが望ましい。このような厚みであれば、均一な被膜を容易に形成でき、表面の潤滑性、および保水性(潤滑維持性)を十分発揮できる。よって、本発明の医療用具は、本発明の医療用具を生体内のドライな環境下におかれた場合であっても、表面潤滑性を維持し、また、表面潤滑層が強固に固定化されているため、医療用具と血管等の接触により表面潤滑層が剥離することがなく、表面潤滑性が維持される。
<医療用具>
このようにして表面潤滑層を形成させた後には、余剰の親水性重合体等を、適用な溶剤で洗浄し、表面潤滑層が直接基材層に強固に固定化されてなる、架橋構造体のみを残存させることも可能である。
こうして形成された表面潤滑層を構成する架橋構造体は、表面潤滑性および保水性(潤滑維持性)を発現するものである。
本発明の表面潤滑性および保水性を有する医療用具としては、上記実施形態のいずれにおいても、体液や生理食塩水などの水系液体と接触して用いる器具のことであり、水系液体から離脱した際に潤滑維持性を確実に発揮することが可能なものである。具体的には、血管内で使用されるガイドワイヤやカテーテル等が挙げられるが、その他にも以下の医療用具が示される。
(1)内視鏡用ガイドワイヤ、胃管挿入用ガイドワイヤ、胃管カテーテル、栄養カテーテル、経管栄養用チューブなどの経口もしくは経鼻的に消化器官内に挿入ないし留置されるガイドワイヤやカテーテル類。
(2)酸素カテーテル、酸素カヌラ、気管内チューブ、気管切開用ガイドワイヤ、気管切開チューブ、気管内吸引カテーテルなどの経口または経鼻的に気道ないし気管内に挿入ないし留置されるガイドワイヤやカテーテル類。
(3)尿道用ガイドワイヤ、尿道カテーテル、導尿カテーテル、尿道バルーンカテーテルのカテーテルやバルーンなどの尿道ないし尿管内に挿入ないし留置されるガイドワイヤやカテーテル類。
(4)吸引カテーテル、排液カテーテル、直腸カテーテルなどの各種体腔、臓器、組織内に挿入ないし留置されるカテーテル類、あるいは、これらのカテーテル用のガイドワイヤ。
(5)留置針、IVHカテーテル、サーモダイリューションカテーテル、血管造影用カテーテル、血管拡張用カテーテルおよびダイレーターあるいはイントロデューサーなどの血管内に挿入ないし留置されるカテーテル類、あるいは、これらのカテーテル用のガイドワイヤ、スタイレットなど。
(6)人工気管、人工気管支など。
(7)体外循環治療用の医療器(人工肺、人工心臓、人工腎臓など)やその回路類。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
<作製方法>
(実施例1)
ナイロンエラストマー(エムエスケー・ジャパン株式会社製、グリルアミドELG5660グレード)を定法により押出成形し、長さ100mm、外径0.88mm、内径0.76mmの単層チューブを作製した。
親水性ドメインとしてポリジメチルアクリルアミド(DMAA)を、反応性ドメインとしてポリグリシジルメタクリレート(GMA)を有するブロックコポリマー[p(DMAA−b−GMA)](DMAA:GMA(モル比)=12:1)を3.5重量%の割合で溶解したジクロロメタン溶液に上記単層チューブを浸漬し、前記溶液中から引き上げた。その後、得られた単層チューブを、外気の影響を受けない閉鎖空間に配置されたプレート上に静置し、プレートの下に配置した水を70℃で加熱し、水の湯気に30分間暴露させながら、ジクロロメタンを蒸発させた(図3参照)。その後、単層チューブを130℃のオーブン中で3時間乾燥させ、凸凹構造を持つ表面潤滑層(厚さ:3μm)を有する単層チューブを作製した。
(実施例2)
実施例1の単層チューブに代えて、ナイロンシート(縦10mm×横50mm×厚さ1mm)を用いて、実施例1と同様の操作で凸凹構造を持つ表面潤滑層を作製した。得られた構造体の表面の光学顕微鏡写真を図2に示す。観測された表面潤滑層の凹部の平均孔径は86μmだった。なお、平均孔径は、1,000×1,400μmの視野に含まれる表面潤滑層表面の凹部の孔径を、ひとつずつ、それぞれ光学顕微鏡によって測定し、それらを相加平均した平均値を用いている。
また、凹部の単位面積あたりの個数は、143個/mmだった。なお、個数は上述の光学顕微鏡における視野に含まれる凹部の個数を測定し、単位面積あたりで割って算出した。
また、凹部の平均深さRc値は、1.34μmだった。なお、平均深さは、レーザー顕微鏡を用いて、対物レンズ20倍で観察した際のRc値を用いている。
(比較例1)
実施例1の、閉鎖空間で70℃に加熱した水の湯気に30分間暴露させた操作に代えて、25℃の開放空間で30分間静置し、その他は実施例1と同様の操作で比較例1の単層チューブを作製した。
<保水性評価>
実施例1、比較例1で作製したチューブを用いて、保水性評価を行った。
図4に示すように、ガラスシャーレ31に両面テープを貼り付け、その接着面に、芯金に挿入したサンプル34(実施例1、比較例1で作製したチューブ)を固定した。シャーレ31中にPBSを満たし、1分間浸漬した後、PBSを除去した。その後、速やかに摩擦測定機30(トリニティーラボ社製、ハンディートライボマスターTL201)の試料台にセットし、重り33によりSUS製球状接触子32に荷重を印加して、以下の条件で、摺動抵抗値を測定した。
実施例1、比較例1で作製したチューブの保水性評価結果を、それぞれ、図5、図6に示す。比較例1では、試験開始直後から、表面潤滑層が乾いていくのに従い摺動抵抗値が上昇した。一方、実施例1では、摺動抵抗値が低い値で維持された。これは、実施例1のチューブは、表面潤滑層の凹部に水を保水(維持)することができるためと考えられる。
以上の結果より、本発明の実施例のように表面潤滑層に凸凹構造を作製することで、大気中においても潤滑性が長時間維持される親水性コーティング表面を製造できることがわかった。
1 基材層、
1a 基材層コア部、
1b 表面層、
2 表面潤滑層、
3 凹部、
10 医療用具、
10a 溶液Aをコートした基材層、
11 空間、
12 水、
13 容器、
14 プレート、
20 装置、
30 摩擦測定機、
31 シャーレ、
32 SUS製球状接触子、
33 重り、
34 サンプル。

Claims (5)

  1. 基材層と、
    基材層の少なくとも一部を覆う反応性単量体を有する親水性重合体からなる表面潤滑層と、を備え、
    前記表面潤滑層に、凹部が複数形成されており、
    前記凹部の単位面積あたりの個数が1〜1×10個/mmであり、
    前記凹部の平均孔径が1〜500μmであり、
    前記凹部の平均深さRcが0.3〜5μmの範囲である、医療用具。
  2. 前記親水性重合体が、親水性単量体を少なくとも一つの構成単位とした親水性ドメインと、反応性単量体を少なくとも一つの構成単位とした反応性ドメインと、を有するブロック共重合体である、請求項1に記載の医療用具。
  3. 前記反応性単量体がエポキシ基を有する単量体である、請求項1または2に記載の医療用具。
  4. 反応性単量体を有する親水性重合体を溶媒に溶解して溶液Aを調製し、該溶液Aを基材層にコートした後、該溶媒を蒸発させながら、溶液Aと混和しない液滴Bを表面に付着させ、該液滴Bを鋳型として、該親水性重合体からなる表面潤滑層に凹部を形成することを有する、医療用具の製造方法。
  5. 液滴Bが水を主成分とする、請求項4に記載の医療用具の製造方法。
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