JP2013169283A - 医療用具の製造方法および医療用具 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡便なプロセスで、医療用具の末梢到達性および安全性を向上させることができる医療用具の製造方法を提供する。
【解決手段】基材に、親水性単量体から形成されるブロックと反応性官能基を有する単量体から形成されるブロックとを有するブロック共重合体を被覆し被覆層を形成する工程と、前記被覆層を、親水化剤によって親水化処理する工程と、を含む、医療用具の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、医療用具の製造方法および医療用具に関する。
血管、消化管、尿管、気管、胆管、その他の生体内の管腔あるいは組織中に挿入されるカテーテル、ガイドワイヤ等の医療用具は、組織への損傷を低減し、目的部位へ確実に到達させるために、表面潤滑性を有することが要求される。特に、近年では、末梢血管などの極細い管腔を対象とした精細かつ難易度の高い手技が増加傾向にあり、医療用具の末梢到達性を向上させるために、従来以上に優れた潤滑性を示すことが求められている。
医療用具の表面に潤滑性を付与する技術としては、従来、医療用具の基材にフッ素樹脂やポリエチレン等の低摩擦素材を用いる、基材表面にフッ素樹脂やシリコーン樹脂等の表面コーティングを施す、またはシリコーンオイル、オリーブオイル、グリセリン、キシロカインゼリー等を基材表面に塗布する等の方法が用いられている。しかし、これらの方法では摩擦抵抗の低下が十分でないだけでなく、コーティングや塗布材の剥離、溶出といった安全性や効果の持続性においても問題があった。そこで、医療用具の基材に表面処理を施し、その処理された基材表面に親水性高分子を化学的に固定する方法が提案されている。例えば、イソシアネートを用いて親水性ポリマーであるポリビニルピロリドンを基材表面にコーティングする方法(例えば、特許文献1参照)や親水性共重合体にイオン結合または共有結合により酸性多糖類を固定する方法(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
米国特許第4100309号明細書 特開平2−144070号公報
しかしながら、上記特許文献に記載の方法により得られた医療用具の表面は、湿潤時にある程度表面潤滑性を発現するものではあるが、末梢血管などの極細い管腔を対象とした治療に対してはその効果が十分とはいえない。また、複数のコーティング工程を必要とするために製造工程が煩雑である、反応性の高い未反応物質の残留により安全性が低下する、などの問題もある。
そこで、本発明は、簡便なプロセスで、医療用具の末梢到達性および安全性を向上させることができる医療用具の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究を積み重ねた。その結果、基材に対して、親水性単量体から形成されるブロックと反応性官能基を有する単量体から形成されるブロックとを有するブロック共重合体を被覆し被覆層を形成した後、該被覆層を親水化剤によって親水化処理することにより、上記課題が解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
1.基材に、親水性単量体から形成されるブロックと反応性官能基を有する単量体から形成されるブロックとを有するブロック共重合体を被覆し被覆層を形成する工程と、
前記被覆層を、親水化剤によって親水化処理する工程と、
を含む、医療用具の製造方法。
2.前記親水化処理する工程における処理温度が、前記ブロック共重合体のガラス転移点未満の温度である、上記1.に記載の医療用具の製造方法。
3.前記親水化処理する工程の処理時間が、10秒〜100分である、上記1.または2.に記載の医療用具の製造方法。
4.前記親水化剤は、アルコール化合物、アミン化合物、およびアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種である、上記1.〜3.のいずれか1つに記載の医療用具の製造方法。
5.前記被覆層を形成する工程は、前記ブロック共重合体のガラス転移点以上の温度で加熱することを含む、上記1.〜4.のいずれか1つに記載の医療用具の製造方法。
6.前記親水性単量体が、(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体、(メタ)アクリル酸およびその誘導体、ならびにビニルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種である、上記1.〜5.のいずれか1つに記載の医療用具の製造方法。
7.前記反応性官能基を有する単量体が、ヒドロキシ基を有する単量体、アミノ基を有する単量体、エポキシ基を有する単量体、カルボキシル基を有する単量体、酸クロリド基を有する単量体、アルデヒド基を有する単量体、イソシアネート基を有する単量体、イソチオシアネート基を有する単量体、および複素環を有する単量体からなる群より選択される少なくとも1種である、上記1.〜6.のいずれか1つに記載の医療用具の製造方法。
8.上記1.〜7.のいずれか1つに記載の製造方法により得られる医療用具。
本発明によれば、簡便なプロセスで、医療用具の末梢到達性および安全性を向上させることができる医療用具の製造方法が提供されうる。
表面潤滑性の評価に用いられた摩擦測定機を示す模式図である。
本発明は、基材に、親水性単量体から形成されるブロックと反応性官能基を有する単量体から形成されるブロックとを有するブロック共重合体を被覆し被覆層を形成する工程と、前記被覆層を、親水化剤によって親水化処理する工程と、を含む、医療用具の製造方法である。
以下、本発明の医療用具の製造方法を、工程順にさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は下記の形態に制限されるものではない。
[被覆層を形成する工程]
本工程では、基材にブロック共重合体を被覆し被覆層を形成する。
<基材>
本発明で用いられる基材としては、例えば、SUS304などの各種ステンレス鋼(SUS)、金、白金、銀、銅、ニッケル、コバルト、チタンおよびそれらの合金などの各種金属材料、各種セラミックス材料などの無機材料、金属−セラミックス複合体、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエーテルポリアミド樹脂、ポリエステルポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂(アリル樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、アミノ樹脂(ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、スチロール樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂(ケイ素樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂(AS樹脂)、形状記憶樹脂などの各種樹脂材料、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、さらには、これらのうちの2種類以上を組み合わせたもの(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド、積層体等)が挙げられる。使用用途であるカテーテル、ガイドワイヤ、留置針等の基材として最適な材料を適宜選択すればよい。これらの基材は、被覆されるブロック共重合体との親和性向上や共有結合形成を目的とした表面処理を施したものであってもよい。
<ブロック共重合体>
本発明に係るブロック共重合体は、親水性単量体と反応性官能基を有する単量体とを共重合することにより得ることができる。
(親水性単量体)
本発明で用いられる親水性単量体は、体液や水系溶媒中において潤滑性を発現すればいかなるものであってもよく、例えば、(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体、(メタ)アクリル酸およびその誘導体、ビニルピロリドン、糖、リン脂質を側鎖に有する単量体などを例示することができる。これら親水性単量体は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。好ましくは、アクリルアミドおよびその誘導体、(メタ)アクリル酸およびその誘導体、およびビニルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種である。
親水性単量体のより具体的な例としては、例えば、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、アクリル酸、メタアクリル酸、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルフォスフォリルコリン、2−メタクリロイルオキシエチル−D−グリコシド、2−メタクリロイルオキシエチル−D−マンノシド、ビニルピロリドン、ビニルメチルエーテルなどが挙げられる。
前記親水性単量体は、好ましくは、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、アクリル酸、メタアクリル酸、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートである。
(反応性官能基を有する単量体)
本発明で用いられる反応性官能基を有する単量体は、架橋反応可能あるいは基材との反応が可能な反応性官能基を有するものであれば、特に制限されないが、ヒドロキシ基を有する単量体、アミノ基を有する単量体、エポキシ基を有する単量体、カルボキシル基を有する単量体、酸クロリド基を有する単量体、アルデヒド基を有する単量体、イソシアネート基を有する単量体、イソチオシアネート基を有する単量体、および複素環を有する単量体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
反応性官能基を有する単量体のより具体的な例としては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、N−メチロールアクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基を有する単量体;アミノエチルビニルエーテル、アミノプロピルビニルエーテル、アミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基を有する単量体;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルビニルエーテル、グリシジルアリルエーテルなどのエポキシ基を有する単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸などのカルボキシル基を有する単量体;アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、マレイン酸ジクロリド、フマル酸ジクロリド、クロトン酸クロリド、イタコン酸ジクロリドなどの酸クロリド基を有する単量体;(メタ)アクリルオキシメチルプロペナール、(メタ)アクリルオキシエチルプロペナールなどのアルデヒド基を有する単量体;アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基を有する単量体;アリルイソチオシアネートなどのイソチオシアネート基を有する単量体;ビニルピリジン、ビニルイミダゾールなどの複素環を有する単量体等が挙げられる。
これら反応性官能基を有する単量体の中でも、容易に被覆層を形成させることができ、取り扱いも比較的容易であるエポキシ基を有する単量体が好ましい。エポキシ基を有する単量体を用いたブロック共重合体は、加熱操作等で架橋反応させる際の反応速度が穏やか(適当な速度)である。そのため、加熱操作等による反応性官能基同士の架橋反応の際に、すぐに反応してゲル化したり、固まって被覆層の架橋密度が上昇したりすることによる潤滑性の低下を抑制・制御することができ、取り扱い性が良好であるといえる。
前記ブロック共重合体は、ジブロック共重合体やトリブロック共重合体などが好適である。さらに好ましくは、親水性単量体から形成されるブロックと反応性官能基を有する単量体から形成されるブロックとを1つずつ有するジブロック共重合体である。
前記ブロック共重合体のガラス転移点は、20〜200℃であることが好ましく、25〜180℃であることがより好ましい。なお、ブロック共重合体のガラス転移点は、DSC法で測定した値を採用する。
ブロック共重合体の製造法(重合法)については、特に制限されるものではなく、例えば、ラジカル重合、イオン重合、配位重合、開環重合等、従来公知の重合方法を適用して製造することが可能である。
ブロック共重合体を基材に被覆する方法としては、公知の被覆方法が使用できる。例えば、被覆する基材の全体または一部をブロック共重合体の溶液、懸濁液または乳濁液に浸漬させた後、乾燥によって溶媒を除去することによって、医療用具を構成する基材表面にブロック共重合体からなる被覆層を形成することができる。また、ブロック共重合体の溶液、懸濁液または乳濁液を基材の表面に噴霧した後に乾燥、加熱処理を行ってもよい。この際、基材に上記反応性官能基と反応可能な官能基を有するものを使用して、基材表面とブロック共重合体とを反応させ、共有結合を形成させてもよい。また、基材に上記反応性官能基と反応可能な官能基を有するものを使用していない場合の被覆方法として、例えば、特許第3631781号明細書に、基材が膨潤率1〜100%で膨潤する溶媒を用いて、ブロック共重合体の溶液を作製し、該溶液に該基材を浸漬して膨潤させ、さらに該基材表面で該ブロック共重合体を架橋または高分子化させることによって、該基材表面と該ブロック共重合体との間に相互貫入網目構造を生成させる方法が開示されている。本発明においても、このような方法を用いて被覆すると、基材に上記反応性官能基と反応可能な官能基を有するものを使用していなくても、ブロック共重合体が医療用具の基材表面に強固に固定され、耐剥離性に優れた被覆層を得ることができるため好適である。
上記のようなブロック共重合体溶液中に基材を浸漬する方法に代えて、例えば、塗布・印刷法、スピンコート法、混合溶液含浸スポンジコート法など、従来公知の方法を適用して、ブロック共重合体を基材に被覆することができる。
以下では、ブロック共重合体溶液中に基材を浸漬し、該ブロック共重合体溶液を基材表面にコーティング(被覆)した後、乾燥、加熱処理を行うによって、被覆層を形成する形態を例にとり詳しく説明する。ただし、本発明がこの方法に何ら制限されるものでない。
ブロック共重合体を溶解するために用いられる溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルム、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ベンゼンなどを例示することができるが、これらに何ら制限されるものではない。これらは単独でも2種以上組み合わせても用いることができる。
被覆層を形成させる際に用いられるブロック共重合体溶液の濃度は、特に限定されない。所望の厚さに均一に被覆する観点からは、ブロック共重合体溶液中のブロック共重合体の濃度は、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは0.5〜25重量%、さらに好ましくは1〜20重量%である。この範囲であれば、生産性良く均一な被覆層を形成することができ、また、カテーテル、ガイドワイヤ、留置針等の医療用具の細く狭い内面にも素早く被覆することが可能となる。
本工程においては、ブロック共重合体溶液を基材表面にコーティング被覆した後、室温(25℃)で、30分〜3時間程度、乾燥を行って溶媒を除去してもよい。
また、本工程においては、乾燥後、前記ブロック共重合体のガラス転移点以上の温度に加熱すること(加熱処理)を含むことが好ましい。
ブロック共重合体は、加熱する過程において、親水性単量体から形成されるブロックと反応性単量体から形成されるブロックが凝集したドメインからなるミクロ層分離構造を形成すると考えられる。ブロック共重合体のガラス転移点以上の温度条件では、ブロック共重合体を構成する高分子鎖はゴム状態であるので、ミクロ相分離構造の形成が促進される。このような構造は、反応性官能基同士の架橋や被覆層の強度において良好な結果を与えるものと考えられる。なお、上記のメカニズムは推測によるものであり、本発明は上記メカニズムに何ら制限されるものではない。
ガラス転移点以上の温度で加熱する際の加熱温度は、特に制限されないが、ブロック共重合体のガラス転移点よりも5℃以上高い温度が好ましく、10℃以上高い温度がより好ましい。また、ガラス転移点以上の温度で加熱する際の加熱時間は、特に制限されないが、10分〜12時間が好ましく、30分〜8時間がより好ましい。なお、このブロック共重合体のガラス転移点以上の加熱は、一段階で行ってもよいし、加熱温度を変えながら多段階に分けて行ってもよい。この際、熱履歴(加熱回数)が少ないほうが、より好ましい。この理由は、熱履歴が少ないほうが、被覆層における反応性官能基を有する単量体から形成されるブロックの凝集が過度に進まないものと考えられる。これにより、被覆層表面の反応性官能基を有する単量体から形成されるブロックの凝集部分の厚みが薄くなり、後述の親水化剤による親水化処理により、親水性単量体から形成されるブロックが被覆層の表面により出やすくなり、その結果、最終的に得られる医療用具の摩擦抵抗が低下すると考えられ、好ましい。
加熱処理時の圧力条件は何ら制限されるものではなく、常圧(大気圧)下で行うことができるほか、加圧ないし減圧下で行ってもよい。また、ブロック共重合体中の反応性官能基がエポキシ基の場合、トリアルキルアミン系化合物やピリジン等の3級アミン系化合物などの反応触媒を、ブロック共重合体溶液に適時適量添加して用いてもよい。加熱手段(装置)としては、例えば、オーブン、ドライヤー、マイクロ波加熱装置などを利用することができる。
被覆層の厚さは、使用時の優れた表面潤滑性を永続的に発揮することができるだけの厚さを有していればよい。
なお、被覆層は、基材表面全体を覆うように形成されていてもよいが、湿潤時に潤滑性を有することが求められる表面部分のみに形成されていてもよい。
[被覆層を親水化剤によって親水化処理する工程]
本工程では、上記の工程で形成した被覆層を親水化剤により親水化処理する。
ブロック共重合体溶液を基材上に塗布した後の加熱処理はブロック共重合体のガラス転移点以上の温度で行われるため、被覆層の表面にはブロック共重合体の構成成分のうち、疎水性が高い反応性官能基を有する単量体から形成されるブロックが凝集して形成するドメイン(以下、単に疎水性ドメインとも称する)が多く凝集しやすい。ブロック共重合体や基材の種類、加熱温度や加熱時間によっては、被覆層の表面の疎水性ドメインの層が厚くなる場合がある。このような被覆層内へ水は浸透しにくく、医療用具の使用時において被覆層の膨潤に時間を要したり、被覆層が十分な潤滑性を発現できなかったりする場合がある。本工程では、被覆層を親水化剤で親水化処理することにより、被覆層の表面に親水性単量体から形成されるブロックが凝集して形成されるドメイン(以下、単に親水性ドメインとも称する)を多く存在させるようにする。これにより、被覆層の膨潤時間の短縮効果や潤滑性の向上効果をより効率的に得ることができる。したがって、本発明の製造方法により製造された医療用具は、末梢血管などの極細い管腔における末梢到達性に優れ、反応性の高い未反応物質の残留もほとんどないか全くなく、安全性に優れる。
前記親水化剤は、アルコール化合物、アミン化合物、およびアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。より具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール化合物、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン等のアミン化合物、およびアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。より好ましくはアルコール類であり、さらに好ましくはメタノールである。メタノールは、他のアルコールと比較して沸点が低く、乾燥しやすいためである。親水化剤として沸点の高い溶媒を用いる場合、ブロック共重合体のガラス転移点以上の温度で処理を行わないと、親水化剤を乾燥することができない場合がある。
親水化処理の方法は、特に制限されないが、例えば、被覆層が形成された医療用具を親水化剤に直接もしくは親水化剤の溶液中に浸漬させる、または親水化剤の蒸気中に曝した後、乾燥する方法が挙げられる。
親水化剤による処理時間(親水化剤と接触させる時間)は、10秒〜100分間であることが好ましく、30秒〜60分間であることがより好ましい。また、この際の温度(親水化剤と接触させる際の温度)は、室温(25℃)であることが好ましい。
その後の乾燥(親水化処理する工程における処理温度)は、ブロック共重合体のガラス転移点未満の温度で行うことが好ましい。より好ましくは、ガラス転移点よりも5℃以上低い温度であり、さらに好ましくはガラス転移点よりも10℃以上低い温度である。ガラス転移点未満の温度であれば、被覆層の表面に親水性ドメインが多く凝集している構造を維持することができるため、被覆層の膨潤時間の短縮効果や潤滑性の向上効果をより効率的に得ることができる。また、この際の処理時間は、5分〜5時間であることが好ましい。
こうして形成された被覆層は、患者の体温(30〜40℃)において吸水し、潤滑性を発現するものである。
[医療用具の用途]
本発明の製造方法により得られる医療用具の用途としては、体液や生理食塩水などの水系液体中において表面が潤滑性を有し、操作性の向上や組織粘膜の損傷の低減が可能となるものが挙げられる。具体的には、血管内で使用されるカテーテル、ガイドワイヤ、留置針等が挙げられるが、その他にも以下の医療用具が示される。
(a)胃管カテーテル、栄養カテーテル、経管栄養用チューブなどの経口もしくは経鼻的に消化器官内に挿入ないし留置されるカテーテル類。
(b)酸素カテーテル、酸素カヌラ、気管内チューブのチューブやカフ、気管切開チューブのチューブやカフ、気管内吸引カテーテルなどの経口または経鼻的に気道ないし気管内に挿入ないし留置されるカテーテル類。
(c)尿道カテーテル、導尿カテーテル、バルーンカテーテルのカテーテルやバルーンなどの尿道ないし尿管内に挿入ないし留置されるカテーテル類。
(d)吸引カテーテル、排液カテーテル、直腸カテーテルなどの各種体腔、臓器、組織内に挿入ないし留置されるカテーテル類。
(e)留置針、IVHカテーテル、サーモダイリューションカテーテル、血管造影用カテーテル、血管拡張用カテーテルおよびダイレーターあるいはイントロデューサーなどの血管内に挿入ないし留置されるカテーテル類、あるいは、これらのカテーテル用のガイドワイヤ、スタイレットなど。
(f)各種器官挿入用の検査器具や治療用具等。
(g)ステント類や人工血管、人工気管、人工気管支など。
(h)体外循環治療用の医療用具(人工肺、人工心臓、人工腎臓など)やその回路類。
本発明を、下記の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が、下記の実施例のみに制限されるわけではない。なお、ブロック共重合体のガラス転移点は、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minでのDSC法により測定した。
(実施例1)
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に、N,N−ジメチルアクリルアミドとグリシジルメタクリレートからなるジブロック共重合体(ガラス転移点:85℃)を加え、1時間攪拌して溶解させた。このブロック共重合体溶液の濃度は、7.5重量%とした。攪拌後の溶液に、ステンレス板(厚さ0.1mm×幅20mm×長さ100mm、株式会社ミスミ製)を浸漬し、直後に4.5mm/sの速さで引き上げてコーティングを施した。室温(25℃)にて1時間乾燥させた後、110℃で4時間、続いて120℃で3時間加熱し、ステンレス板表面にジブロック共重合体からなる被覆層を形成させた。このステンレス板をメタノールに室温(25℃)で5分間浸漬した後、オーブンで60℃、2時間の条件で加熱乾燥して、試料1を得た。
(実施例2)
メタノールへの浸漬時間を60分間としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、試料2を得た。
(実施例3)
被覆層を形成する際、室温(25℃)で1時間乾燥した後、120℃で3時間の乾燥のみを行ったこと以外は、実施例1と同様の方法により、試料3を得た。
(実施例4)
被覆層を形成する際、室温(25℃)で1時間乾燥した後、120℃で3時間の乾燥のみを行い、かつメタノールへの浸漬時間を60分間としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、試料4を得た。
(比較例1)
メタノールに浸漬しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法により、試料5を得た。
<表面潤滑性評価>
ステンレス板の表面潤滑性は、ハンディートライボマスターTypeTL201Ts(トリニティーラボ社製)による動摩擦抵抗測定により評価した。
すなわち、図1に示すように、各試料13を両面テープでガラス製のシャーレ12に固定し、蒸留水11を注いで被覆層を膨潤させた。重り15により、円形のSEBS(スチレン−エチレンブチレン−スチレン共重合体)ゴムシート(φ10mm、厚さ1mm)14に荷重200gf(1.96N)を印加し、滑り速度16.7mm/s、摺動距離20mm、摺動回数100回で動摩擦抵抗を測定した。また、測定終了後、目視にて被覆層の剥離の有無を確認した。剥離した試料を除いた動摩擦抵抗の平均値と標準偏差とを算出した結果を表1に示す。
Figure 2013169283
表1から明らかなように、本発明の製造方法によって得られた被覆層は、親水化剤による処理を施さない従来の被覆層と比較して、動摩擦抵抗が減少したことが明らかとなった。
また、実施例1および2と比較して、実施例3および4の動摩擦抵抗がより低下したことが分かった。この詳細な理由は不明であるが、実施例1および2と比べて、被覆層形成時における加熱の条件が緩くなった(熱履歴が少ない)ことで、被覆層におけるグリシジルメタクリレートから形成されるブロックの凝集が過度に進んでいないものと考えられる。その結果、被覆層表面のグリシジルメタクリレートから形成されるブロックの凝集部分の厚みが薄くなり、メタノールへの浸漬によりN,N−ジメチルアクリルアミドから形成されるブロックが被覆層の表面により出やすくなり、動摩擦抵抗が低下したものと考えられる。
上記のように、本発明の製造方法により得られる医療用具は、末梢血管などの極細い体腔を対象とした治療に有用である。
11 蒸留水、
12 シャーレ、
13 試料、
14 SEBSゴムシート、
15 重り。

Claims (8)

  1. 基材に、親水性単量体から形成されるブロックと反応性官能基を有する単量体から形成されるブロックとを有するブロック共重合体を被覆し被覆層を形成する工程と、
    前記被覆層を、親水化剤によって親水化処理する工程と、
    を含む、医療用具の製造方法。
  2. 前記親水化処理する工程における処理温度が、前記ブロック共重合体のガラス転移点未満の温度である、請求項1に記載の医療用具の製造方法。
  3. 前記親水化処理する工程の処理時間が10秒〜100分である、請求項1または2に記載の医療用具の製造方法。
  4. 前記親水化剤は、アルコール化合物、アミン化合物、およびアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用具の製造方法。
  5. 前記被覆層を形成する工程は、前記ブロック共重合体のガラス転移点以上の温度で加熱することを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療用具の製造方法。
  6. 前記親水性単量体が、(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体、(メタ)アクリル酸およびその誘導体、ならびにビニルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療用具の製造方法。
  7. 前記反応性官能基を有する単量体が、ヒドロキシ基を有する単量体、アミノ基を有する単量体、エポキシ基を有する単量体、カルボキシル基を有する単量体、酸クロリド基を有する単量体、アルデヒド基を有する単量体、イソシアネート基を有する単量体、イソチオシアネート基を有する単量体、および複素環を有する単量体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医療用具の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の医療用具の製造方法により得られる医療用具。
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