JP2019146747A - 歯科用インプラントの埋入方法 - Google Patents

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【課題】歯槽骨の埋入窩に埋入部をセルフタッピングで螺入する際に要する回転トルクを40Ncm未満に低減し得る歯科用インプラントの埋入方法を提供する。【解決手段】本実施形態のインプラント10のフィクスチャー11の埋入方法によると、フィクスチャー11のタッピンねじ12にオレイン酸を含有するオリーブオイル等の潤滑剤30が塗布された後、フィクスチャー11が歯槽骨の埋入窩にセルフタッピングで螺入される。これにより、埋入窩の内周壁とフィクスチャー11のタッピンねじ12のねじ山12aやねじ溝12bとの間に潤滑剤30が介在するため、両者間に生じ得る摩擦抵抗をこのような潤滑剤30が小さくする。したがって、フィクスチャー11に潤滑剤30が塗布されない場合に比べて、フィクスチャー11の埋入トルクを40Ncm未満に低減させることが可能になる。【選択図】図1

Description

本発明は、歯槽骨の埋入窩に埋入部がセルフタッピングで螺入される歯科用インプラントの埋入方法に関するものである。
歯槽骨の埋入窩にセルフタッピングで螺入される歯科用インプラントとして、例えば、下記特許文献1に開示されている「歯科用セルフタッピング式スクリュー型インプラントフィクスチャー」がある。この種のインプラントは、図4に示すように、典型的には3つのパーツにより構成されている。フィクスチャー91、アバットメント95および人工歯冠97である。フィクスチャー91はチタン製であり、その基端91bが歯槽骨2の固有歯槽骨の表面とほぼ同程度に位置するまで埋入窩7にセルフタップで埋入される。そのため、インプラント90のフィクスチャー91には、その先端91aに向けて先細り形状になるタッピンねじ92が形成されている。
セルフタッピングでは、タッピンねじ(雄ねじ)がねじ込まれることによりそれが自ら雌ねじを切って相手部材に螺合する。そのため、フィクスチャー91の埋入時、即ちタッピンねじ92が埋入窩7の内周壁7aに雌ねじを形成しながら歯槽骨2に螺合する際には、フィクスチャー91に相当量の回転トルクを加える必要がある。なお、図4において符号9は、歯肉または歯茎を指し示している。
特開2002−35012号公報(段落0010〜0012) 特開2015−188481号公報(段落0004)
しかしながら、特許文献1に開示されているように、フィクスチャーには、骨に対する接触面積を増加させる目的でタッピンねじの表面に粗面加工が施される場合がある。タッピンねじの表面が粗くなると、表面積が増えるとともに埋入窩の内周壁に対する摩擦抵抗も増加する。また、タッピンねじに形成されている切り刃の表面も粗面になり得ることから、タッピンねじの切削性能が低下する。そのため、このような粗面加工がタッピンねじに及ぶ場合には、フィクスチャーの埋入時に要する回転トルクの増加を招く。以下、フィクスチャー等を歯槽骨の埋入窩にセルフタッピングで螺入する際に要する回転トルクのことを単に「埋入トルク」という場合がある。
ところで、チタン製のフィクスチャーの埋入トルクは、上記特許文献2に開示されているように、通常、20Ncm〜30Ncmになるが、個人差等により100Ncm〜150Ncmになり得る。近年の研究により、40Ncm以上の埋入トルクは、初期段階のオッセオインテグレーションの確立に対しては逆効果になり得る点が指摘されている。オッセオインテグレーションは、チタンと骨が光学顕微鏡のレベルで直接的に一体化した状態になることである。
つまり、フィクスチャーが40Ncm以上のトルクで歯槽骨に埋入された場合には、フィクスチャーに吸収される辺縁骨が増加する可能性があることから、オッセオインテグレーションの獲得が難しくなり得る。したがって、フィクスチャーの埋入トルクは、初期段階のオッセオインテグレーションの確立においては40Ncm未満に抑えることが望ましい。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、歯槽骨の埋入窩に埋入部をセルフタッピングで螺入する際に要する回転トルク(埋入トルク)を40Ncm未満に低減し得る歯科用インプラントの埋入方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載された請求項1の技術的手段を採用する。この手段によると、歯科用インプラントの埋入部のタッピンねじに潤滑剤が塗布された後、埋入部が埋入窩にセルフタッピングで螺入される。または、歯槽骨の埋入窩に潤滑剤が注入された後、埋入部が埋入窩にセルフタッピングで螺入される。これにより、埋入窩(の内周壁)と埋入部のタッピンねじ(のねじ山やねじ溝)との間に潤滑剤が介在するため、両者間に生じ得る摩擦抵抗をこのような潤滑剤が小さくする。
また、特許請求の範囲に記載された請求項2の技術的手段を採用する。この手段によると、潤滑剤はオレイン酸含有オイルである。オレイン酸を大量に含むオイルとして、例えば、オリーブオイル、ハイオレイックタイプの紅花オイル、ハイオレイックタイプのヒマワリオイルがある(以下、これらのオイルを単に「オリーブオイル等」ともいう)。これにより、オレイン酸含有オイルは、埋入窩と埋入部のタッピンねじとの間に介在して埋入部の埋入トルクの低減に寄与した後においては、それに含まれるオレイン酸が、骨形成蛋白(BMP;Bone Morphogenetic Protein)の骨芽細胞への分化誘導作用を増強させ得る。また、オレイン酸は不飽和脂肪酸であることから、それ自体が酸化され難い。さらに、オレイン酸は高級脂肪酸(炭素元素数が6以上)であることから、オレイン酸含有オイルがオリーブオイル等である場合には、抗菌作用も有する。また、オリーブオイルがエクストラバージンオイルである場合には、ポリフェノールの含有量が他のオイルに比べて多いことから、オレイン酸含有オイルがエクストラバージンオリーブオイルである場合には、抗酸化作用も有する。
さらに、特許請求の範囲に記載された請求項3の技術的手段を採用する。この手段によると、潤滑剤は、ジグリセリンを主成分とするジェル状組成物である。ジェル状組成物は、一般的にオリーブオイル等に比べて粘度が高い。また、ジグリセリンを主成分とするジェル状組成物は、保湿剤として入手が容易である。これにより、タッピンねじに潤滑剤を塗布する場合には、潤滑剤であるジェル状組成物はオリーブオイルに比べてタッピンねじに保持され易く、また垂れ難いため潤滑剤の塗布量も管理し易い。つまり、潤滑剤はその粘度が相当程度に高い方が取り扱い易い。なお、埋入部の埋入トルクの低減度合いは、後述するようにオリーブオイルよりも劣るが、埋入トルクを40Ncm未満に低減させ得ることが本願発明者の実験により確認されている。
請求項1の発明では、埋入窩(の内周壁)と埋入部のタッピンねじ(のねじ山やねじ溝)との間に潤滑剤が介在するため、両者間に生じ得る摩擦抵抗を潤滑剤が小さくする。したがって、タッピンねじに潤滑剤が塗布されない場合や、埋入窩に潤滑剤が注入されない場合に比べて、埋入部の埋入トルクを40Ncm未満に低減させることが可能になる。
請求項2の発明では、潤滑剤であるオレイン酸含有オイルに含まれるオレイン酸が、骨形成蛋白(BMP;Bone Morphogenetic Protein)の骨芽細胞への分化誘導作用を増強させ得る。したがって、潤滑剤がオレイン酸含有オイルであることによって、埋入後の初期段階におけるオッセオインテグレーションの確立をより効果的に促進させることができる。オレイン酸含有オイルがオリーブオイル等である場合には抗菌作用も有するため、埋入窩と埋入部の間における細菌の増殖を抑制することができる。オレイン酸含有オイルがエクストラバージンオリーブオイルである場合には、抗酸化作用を有するポリフェノールを多量に含有する。そのため、酸化ストレスによる骨芽細胞や骨形成細胞等の細胞傷害を軽減することが可能になるので、埋入後の初期段階のオッセオインテグレーションの確立をさらに効果的に促進させることができる。
請求項3の発明では、タッピンねじに潤滑剤を塗布する場合には、潤滑剤であるジェル状組成物は、例えばオイルに比べてタッピンねじに保持され易く、また垂れ難いため潤滑剤の塗布量も管理し易い。また、ジグリセリンを主成分とするジェル状組成物の場合、タッピンねじの埋入トルクの低減度合いは、後述するようにオレイン酸含有オイルの一例であるオリーブオイルよりも劣るが、埋入トルクを40Ncm未満に低減させ得ることが本願発明者の実験により確認されている。したがって、入手も取り扱いも容易な保湿ジェルを潤滑剤に用いてもよい。
歯科用インプラントの構成例を示す説明図である。 ボーンフェイクブロックに形成される埋入窩の例を示す説明図である。 実験で計測したフィクスチャーの埋入状態のイメージを示す説明図である。 歯科用インプラントの構成例を歯槽骨の埋入窩に埋入された状態において示す説明図である。
以下、本発明に係る歯科用インプラントの埋入方法の実施形態について、図を参照して説明する。まず、本発明の歯科用インプラントの埋入方法を適用することが可能な歯科用インプラント(以下「インプラント」と省略する場合もある)10の構成例を、図1を参照して説明する。図1には、インプラント10の構成例を示す説明図が図示されている。
図1に示すように、インプラント10は、フィクスチャー11、アバットメント15、アバットメントねじ16および人工歯冠17により構成されている。インプラント10は、図4を参照して説明したように、歯槽骨2に固定される歯科用の補綴物である。
フィクスチャー11は、歯根の代替部材であり、インプラント体や人工歯根と呼ばれる場合もある。典型的には、チタンやチタンを主成分とするチタン合金により構成されている。フィクスチャー11は、円柱と円錐台を組み合わせた形状に形成されており、基端11bおよびその付近を除いて外周壁のほぼ大半に雄ねじが螺刻されている。
即ち、フィクスチャー11は、先端11aに向けて先細り形状になるタッピンねじ12(雄ねじ)が基端11b等以外に形成されている。基端11bには、アバットメント15のスリップジョイント15bを嵌入可能なテーパ穴11cが形成されている。また、このテーパ穴11cよりも先端11a側には、アバットメントねじ16の雄ねじ16aが螺合可能な雌ねじ穴11dが形成されている。なお、フィクスチャー11は、特許請求の範囲に記載の「埋入部」に相当し得るものである。
図示されていないが、基端11bの付近には、タッピンねじ12のねじ山やねじ溝よりも高さや深さが小さくピッチも狭いねじ山やねじ溝からなるマイクロスレッドが形成されている。このようなマイクロスレッドを基端11bの付近に形成することにより、フィクスチャー11と皮質骨の間におけるオッセオインテグレーションの確立を向上させたり、辺縁皮質骨に加わる物理的なストレスを軽減して骨吸収を最小限に抑えたりしている。
アバットメント15は、歯の土台として機能する部材であり、一端側に人工歯冠17を支持し得る支持部15aを備え、また他端側にスリップジョイント15bを備えている。また、アバットメント15の軸中心には、途中に縮径する段付き部を有する貫通穴15cが形成されている。支持部15aは、スリップジョイント15bから離れるに従って徐々に径が小さくなる円錐台形状に形成されている。アバットメント15は、例えば、チタンやジルコニア等により構成されている。
アバットメントねじ16は、アバットメント15の貫通穴15cに収容されてフィクスチャー11の雌ねじ穴11dに螺合可能な雄ねじ部16aを先端に有するボルトであり、例えば、チタンやセラミック等により構成されている。フィクスチャー11に取り付けられたアバットメント15の貫通穴15cにアバットメントねじ16を挿入してその雄ねじ部16aをフィクスチャー11の雌ねじ穴11dにねじ締結する。
これにより、アバットメントねじ16の締め付けが進むに従って、貫通穴15cの段付き部に係合するねじ頭がアバットメント15をフィクスチャー11側に加圧することにより、フィクスチャー11のテーパ穴11cにアバットメント15のスリップジョイント15bが楔のように嵌入して両者が強固に固定される。
人工歯冠17は、歯冠の代替部材であり、インプラントクラウンや上部構造と呼ばれる場合もある。例えば、ジルコニア等を主成分とするセラミックにより構成されている。人工歯冠17は、その凹部17aにアバットメント15の支持部15aに接着剤等を用いて固定されている。
このように構成されるインプラント10は、歯槽骨2の埋入窩7にフィクスチャー11がセルフタッピングで螺入されるが、その際にフィクスチャー11のタッピンねじ12やマイクロスレッドに潤滑剤30が塗布される。潤滑剤30は、例えば、オリーブオイルや保湿用ジェルである。図1において灰色の着色部分が潤滑剤30であるが、タッピンねじ12のほぼ全体に塗布されているため、同図ではその一部が図示されていることに注意されたい。なお、潤滑剤30は、少なくともタッピンねじ12の部分に塗布されていればよく、マイクロスレッドの部分を含めフィクスチャー11の他の部分にも塗布してもよい。つまり、フィクスチャー11の全体に潤滑剤30を塗布してもよい。
オリーブオイル(オリーブ油)は、オレイン酸含有オイルの一例であり、オリーブの果実から得られる植物油である。オレイン酸の含有率が高いものがよい。オレイン酸は、酸化され難い性質を持ち、また形成蛋白(BMP;Bone Morphogenetic Protein)の骨芽細胞への分化誘導作用を増強させ得る機能を有するからである。そのため、例えば、オレイン酸の含有率がオリーブオイルよりも高いハイオレイック(高オレイン酸)タイプの紅花オイル(紅花油)やヒマワリオイル(ヒマワリ油)を、オレイン酸含有オイルとして潤滑剤30に用いてもよい。
また、保湿用ジェルは、例えば、口腔用ジェルとして入手が容易なものであり、ジグリセリン(湿潤剤)を主成分として、溶剤としての精製水、粘結剤、防腐剤等が含まれるジェル状組成物である。このように保湿ジェルは、粘結剤を含有するため、オリーブオイルや紅花オイル等に比べて粘度が高い。そのため、フィクスチャー11のタッピンねじ12のねじ山12a同士の間(つまりねじ溝12b)に保持され易く垂れ難い。保湿用ジェルは、半流動体状(ゼリー状)になり得る程度の粘度を持つため、1回分の塗布量として、ひと塊を作り易く、スポイドやピペットを用いることなく量的な管理が可能である点で、液体状のオリーブオイル等に比べて取り扱い易い。
このようにタッピンねじ12等に塗布される潤滑剤30がフィクスチャー11の埋入トルクを低減させていることを確認するために本願発明者が行った実験について図2および図3を参照しながら説明する。図2には、ボーンフェイクブロック20(歯槽骨2の代替物)に形成される埋入窩27の例を示す説明図が図示されている。図3には、これから説明する各実験1〜3で計測したフィクスチャー11の埋入状態のイメージを示す説明図が図示されている。
ボーンフェイクブロック20は、インプラント埋入練習に用いられる樹脂製のトレーニングブロックであり、株式会社歯愛メディカルの骨質分類D3を使用した。骨質分類は、1999年にアメリカのCarl Mischが客観的な骨質診断として、CT値(単位HU)を利用した分類法である。骨質分類はD1〜D5まである。例えば、D1は1250HU以上、D2は850HU以上1250HU未満、D3は350HU以上850HU未満、D4は150HU以上350HU未満、D5は150HU未満である。なお、CT値は、CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影法)で得られる画像の白黒の濃淡値(画像濃度値)のことであり、水のCT値0HUを基準に空気のCT値を最低値-1000HUで表現する。
ボーンフェイクブロック20は、例えば、皮質骨相当部23と海面骨相当部25を備えている。ボーンフェイクブロック20に形成する埋入窩27は、例えば、コントラアングルハンドピース(歯科用ハンドピース)を用いて、ドリル径やドリルの種類を次のように矢印方向順に変更してドリリングした。
1.9mm → 2.5mm/3.1mm → 3.1mm/3.7mm → B3.7mm/4.2mm → V3.7mm
なお、上記のαmm/βmmは、先端側αと基端側βにおいて直径が異なる形成窩をドリリング可能なドリル径を意味している(図2(A)参照)。またドリル径の前に「B」の文字が付されているものは、皮質骨や皮質骨相当部23に形成窩(歯頭部27a)を設ける場合に用いられるドリルのものを意味している(図2(B)参照)。同様にドリル径の前に「V」の文字が付されているものは、海面骨や海面骨相当部25に形成窩を設ける場合に根尖部27cだけを穿つときに用られるドリルのものを意味している(図2(C)参照)。
今回の実験でフィクスチャー11を埋入した埋入窩27の内径は、図2(D)に示すように、歯頭部27aの範囲(符号γ)が4.2mm、歯頭部27a以外の範囲(符号β)が3.7mmにそれぞれ設定されている。なお、今回の実験では使用していないが、ドリル径の前に「A」の文字が付されるものとして、皮質骨や皮質骨相当部23が2mmを超える場合に用いられるものや、海面骨や海面骨相当部25のほぼ全体に形成窩を設ける場合に用いられる「X」の文字がドリル径の前に付されるもの等、様々なものがある。
このようにボーンフェイクブロック20に形成した埋入窩27に対し、直径4.2mm、全長13mmのフィクスチャー11(Dentsply IH社製、OsseoSpeed(登録商標) EV4.2S13mm)を埋入した。ボーンフェイクブロック20は所定場所に固定された状態で保持されている。なお、サンプル数は5である(サンプル1〜5)。
まず実験1においては、埋入に際しインプランター(W&H社製、Implantmed(登録商標))を使用し、(1)潤滑剤30を使用しない場合、(2)潤滑剤30に生理食塩水を使用した場合、(3)潤滑剤30に白色ワセリンを使用した場合、(4)潤滑剤30に保湿ジェルを使用した場合、(5)潤滑剤30にオリーブオイルを使用した場合、のそれぞれについて埋入トルク20Ncmでフィクスチャー11を埋入窩27にセルフタッピングで螺入し、フィクスチャー11の埋入深度(括弧内は突出量)を計測等した。実験1の結果は、次表1の通りである。
なお、実験で使用したフィクスチャー11は、その全長が13mmであることから、図3に示すように、埋入トルク20Ncmでは埋入することのできなかったフィクスチャー11の突出量(ボーンフェイクブロック20から出ているフィクスチャー11の未埋入部の長さ)Laを計測した後、全長(=La+Lb)から突出量Laを減算することにより埋入深度Lbを算出した。
また、実験2においては、歯科用インプラント手術向け微小トルク値測定器(京都機械工具株式会社製、newton-1(登録商標))を使用して、上記の直径4.2mm、全長13mmのフィクスチャー11が完全に埋入されるのに要する埋入トルクを計測した。実験2の結果は、次表2の通りである。
さらに、実験2により埋入されたフィクスチャー11を埋入窩27から取り出した後、フィクスチャー11のセルフタッピングにより埋入窩27に形成された雌ねじに対して、再度、フィクスチャー11を螺合させて同フィクスチャー11が完全に埋入されるために要する埋入トルク(再埋入トルク)を計測した(実験3)。実験3の結果は、次表3の通りである。なお、表4は、実験2の埋入トルクの計測値と実験3の再埋入トルクの計測値とを比較したものである(実験2→実験3)。
上記実験1では、サンプル1〜5の平均値として、フィクスチャー11の埋入深度(または突出量)は次に示す結果になった。
(1-1)潤滑剤30を使用しない場合: 埋入深度 8.36mm(突出量4.64mm)
(1-2)潤滑剤30に生理食塩水を使用した場合: 埋入深度 8.80mm(突出量4.20mm)
(1-3)潤滑剤30に白色ワセリンを使用した場合: 埋入深度11.92mm(突出量1.08mm)
(1-4)潤滑剤30に保湿ジェルを使用した場合: 埋入深度10.49mm(突出量2.51mm)
(1-5)潤滑剤30にオリーブオイルを使用した場合:埋入深度12.15mm(突出量0.85mm)
また上記実験2では、サンプル1〜5の平均値として、フィクスチャー11の埋入トルクは次に示す結果になった。
(2-1)潤滑剤30を使用しない場合: 埋入トルク52.06Ncm
(2-2)潤滑剤30に生理食塩水を使用した場合: 埋入トルク43.90Ncm
(2-3)潤滑剤30に白色ワセリンを使用した場合: 埋入トルク34.68Ncm
(2-4)潤滑剤30に保湿ジェルを使用した場合: 埋入トルク37.46Ncm
(2-5)潤滑剤30にオリーブオイルを使用した場合:埋入トルク29.22Ncm
さらに上記実験3では、サンプル1〜5の平均値として、フィクスチャー11の再埋入トルクは次に示す結果になった。
(3-1)潤滑剤30を使用しない場合: 再埋入トルク27.14Ncm
(3-2)潤滑剤30に生理食塩水を使用した場合: 再埋入トルク21.94Ncm
(3-3)潤滑剤30に白色ワセリンを使用した場合: 再埋入トルク16.14Ncm
(3-4)潤滑剤30に保湿ジェルを使用した場合: 再埋入トルク15.30Ncm
(3-5)潤滑剤30にオリーブオイルを使用した場合:再埋入トルク16.72Ncm
上記実験1〜3から、潤滑剤30を使用しない場合には、40Ncmを超えて50Ncm以上(52.06Ncm)に達しているフィクスチャー11の埋入トルクが、潤滑剤30にオリーブオイルを使用した場合には最も低減されて40Ncm未満(29.22Ncm)になることが確認された。また、潤滑剤30に保湿ジェルを使用した場合においても、潤滑剤30を使用しない場合の52.06Ncmに比べてフィクスチャー11の埋入トルクが14.6Ncm低減されて40Ncm未満(37.46Ncm)になることが確認された。なお、潤滑剤30に白色ワセリンを使用した場合には、潤滑剤30を使用しない場合に比べてフィクスチャー11の埋入トルクが17.38Ncm低減されて40Ncm未満(34.68Ncm)になることが確認された。また、潤滑剤30に生理食塩水を使用しても、埋入トルクは40Ncmを超える(43.90Ncm)ことが確認された。
以上説明したように、本実施形態のフィクスチャー11の埋入方法によると、フィクスチャー11のタッピンねじ12等にオリーブオイル等の潤滑剤30が塗布された後、フィクスチャー11が埋入窩7にセルフタッピングで螺入される。これにより、埋入窩7の内周壁7aとタッピンねじ12のねじ山12aやねじ溝12bとの間に潤滑剤30が介在するため、両者間に生じ得る摩擦抵抗をこのような潤滑剤30が小さくする。したがって、フィクスチャー11のタッピンねじ12に潤滑剤30が塗布されない場合に比べて、フィクスチャー11の埋入トルクを40Ncm未満に低減させることが可能になる。
なお、上述した実施形態においては、フィクスチャー11のタッピンねじ12等にオリーブオイル等の潤滑剤30を塗布する場合について説明したが、例えば、歯槽骨2の埋入窩7に潤滑剤30を注入してもよい。即ち、歯槽骨2の埋入窩7にオリーブオイルや保湿ジェル等の潤滑剤30が注入された後、フィクスチャー11が埋入窩7にセルフタッピングで螺入される。これにより、埋入窩7の内周壁7aとタッピンねじ12のねじ山12aやねじ溝12bとの間に潤滑剤30が介在するため、両者間に生じ得る摩擦抵抗をこのような潤滑剤30が小さくする。したがって、埋入窩7に潤滑剤30を注入した場合であっても、フィクスチャー11のタッピンねじ12に潤滑剤30が塗布されない場合に比べて、フィクスチャー11の埋入トルクを40Ncm未満に低減させることが可能になる。
また、潤滑剤30がオレイン酸含有オイル、例えばオリーブオイルである場合には、オリーブオイルにオレイン酸が大量に含まれていることから、埋入窩7とフィクスチャー11のタッピンねじ12の間にオリーブオイルが介在してフィクスチャー11の埋入トルクの低減に寄与した後においては、潤滑剤30であるオリーブオイルに含まれるオレイン酸が、骨形成蛋白(BMP;Bone Morphogenetic Protein)の骨芽細胞への分化誘導作用を増強させ得る。したがって、潤滑剤30がオリーブオイルであることによって、埋入後の初期段階におけるオッセオインテグレーションの確立をより効果的に促進させることができる。
オレイン酸は、不飽和脂肪酸であることからオレイン酸自体が酸化され難く、また炭素元素数が6以上の高級脂肪酸でもあることから、抗菌作用も有する。そのため、歯槽骨2の埋入窩7とフィクスチャー11の間において細菌の増殖を抑制することもできる。またオリーブオイルが、エクストラバージンオイル(エクストラバージンオリーブオイル)である場合には、抗酸化作用を有するポリフェノールを多量に含有する。そのため、酸化ストレスによる骨芽細胞や骨形成細胞等の細胞傷害を軽減することが可能になるので、埋入後の初期段階のオッセオインテグレーションの確立をさらに効果的に促進させることができる。
さらに、潤滑剤30がジグリセリンを主成分とするジェル状組成物である場合には、ジェル状組成物は一般的にオレイン酸含有オイル等のオイルに比べて粘度が高く、またジグリセリンを主成分とするジェル状組成物は保湿剤として入手が容易である。これにより、タッピンねじ12に潤滑剤30を塗布する場合には、潤滑剤30であるジェル状組成物はオリーブオイルに比べてタッピンねじ12に保持され易く、また垂れ難いため潤滑剤30の塗布量も管理し易いというメリットがある。なお、潤滑剤30がジグリセリンを主成分とするジェル状組成物である場合においても、埋入トルクを40Ncm未満に低減させ得ることが本願発明者の実験により確認されている。また、潤滑剤30は、ジグリセリン以外に、グリセリンやワセリン等を主成分とするジェル状組成物であってもよい。
また、上述した実施形態においては、インプラント10として、フィクスチャー11とアバットメント15が別個に構成される2ピースタイプのものを例示して説明したが、本発明の歯科用インプラントの埋入方法は、フィクスチャーとアバットメント等が一体に構成される1ピースタイプのインプラントにも適用することが可能である。1ピースタイプの場合には、フィクスチャーとアバットメント等を一体にしたもののうち、タッピンねじが形成される埋入部にオリーブオイルや保湿ジェル(ジグリセリン、グリセリンやワセリン等を主成分とするジェル状組成物)が塗布されて当該埋入部が埋入窩にセルフタッピングで螺入される。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、上述した具体例を様々に変形または変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。さらに、本明細書または図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つ。なお、[符号の説明]の欄における括弧内の記載は、上述した各実施形態で用いた用語と、特許請求の範囲に記載の用語との対応関係を明示し得るものである。
2…歯槽骨
7…埋入窩
9…歯肉
10…インプラント(歯科用インプラント)
11…フィクスチャー(埋入部)
12…タッピンねじ
15…アバットメント
16…アバットメントねじ
17…人工歯冠
20…ボーンフェイクブロック
23…皮質骨相当部
25…海面骨相当部
27…埋入窩
30…潤滑剤

Claims (3)

  1. 歯槽骨の埋入窩にセルフタッピングで螺入される埋入部を有する歯科用インプラントの埋入方法であって、
    前記埋入部のタッピンねじに潤滑剤が塗布された後、または前記埋入窩に前記潤滑剤が注入された後、前記埋入部が前記埋入窩にセルフタッピングで螺入されることを特徴とする歯科用インプラントの埋入方法。
  2. 前記潤滑剤は、オレイン酸含有オイルであることを特徴とする請求項1に記載の歯科用インプラントの埋入方法。
  3. 前記潤滑剤は、ジグリセリンを主成分とするジェル状組成物であることを特徴とする請求項1に記載の歯科用インプラントの埋入方法。
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