JP2023005465A - 医療機器および医療機器の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】複雑な構成のブロックポリマーを必要とすることなく、潤滑性を有し、強靭で膨潤による体積変化が少なく、水中で溶解・流失することがない表層構造を備えた医療機器およびその製造方法を提供する。【解決手段】基材11と、基材11上に設けられた架橋ゲル層12と、架橋ゲル層12における基材11とは反対側に設けられた潤滑層13とを備えており、架橋ゲル層12が、カルボキシ基またはその塩を有するポリビニルアルコールの架橋物からなり、潤滑層13が、エポキシ基含有親水性ポリマーからなる医療機器1。【選択図】図1

Description

本発明は、主として生体内に挿入または配置されるのに適した医療機器およびその製造方法に関するものである。
ガイドワイヤ、ステント、カテーテルなどの生体内に挿入等される医療機器においては、それらが生体内で接触する血管等の生体組織が損傷することを防止するとともに、当該医療機器の操作性を向上させるために、生体組織に対して潤滑性を有することが必要とされる。
そのため、上記のような医療機器の表面には、親水性高分子等からなる潤滑層を形成することが行われている。親水性高分子としては、代表的には、ポリビニルアルコールが挙げられるが、この親水性高分子単体では、層構造が崩れ易いため、医療機器から脱離し易く、安全性の観点から問題がある。さらに、膨潤して体積が大きくなり易いため、医療機器の操作性の観点からも問題がある。
そこで、特許文献1は、医療デバイスの基材層上に、親水性部位と反応性官能基を有する疎水性部位とからなるブロック共重合体により形成された表面潤滑層を設けることを提案している。また、特許文献2は、埋め込み型医療デバイスの表面に、疎水性ポリマーブロックとその両側に配置された親水性ポリマーブロックとを含み、親水性ポリマーブロックの末端がホスホリルコリン部分によってキャッピングされている両親媒性トリブロックコポリマーをコーティングすることを提案している。
再表2014-162872号 特許第6066366号
しかしながら、特許文献1および2のいずれも、複雑な構成のブロックポリマーを必要とするものである。
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、複雑な構成のブロックポリマーを必要とすることなく、潤滑性を有し、強靭で膨潤による体積変化が少なく、水中で溶解・流失することがない表層構造を備えた医療機器およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、第1に本発明は、基材と、前記基材上に設けられた架橋ゲル層と、前記架橋ゲル層における前記基材とは反対側に設けられた潤滑層とを備えており、前記架橋ゲル層が、カルボキシ基またはその塩を有するポリビニルアルコールの架橋物からなり、前記潤滑層が、エポキシ基含有親水性ポリマーからなることを特徴とする医療機器を提供する(発明1)。
上記発明(発明1)において、前記ポリビニルアルコールの架橋物が、前記ポリビニルアルコールを化学架橋したものであることが好ましい(発明2)。
上記発明(発明2)において、前記ポリビニルアルコール同士がアセタール結合していることが好ましい(発明3)。
上記発明(発明1~3)において、前記エポキシ基含有親水性ポリマーは、アクリルアミド系モノマー、ベタイン系モノマー、アルコキシ基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ビニルスルホン酸、及びビニルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーに基づく重合単位を含むことが好ましい(発明4)。
上記発明(発明1~4)においては、生体内に挿入または配置される医療機器であることが好ましい(発明5)。
第2に本発明は、基材上にカルボキシ基またはその塩を有するポリビニルアルコールの塗膜を形成し、前記カルボキシ基またはその塩を残存させつつ、前記ポリビニルアルコールを架橋して架橋ゲル層とし、前記架橋ゲル層上にエポキシ基含有親水性ポリマーからなる潤滑層を形成して、前記ポリビニルアルコールのカルボキシ基またはその塩と、前記エポキシ基含有親水性ポリマーのエポキシ基とを反応させることを特徴とする医療機器の製造方法を提供する(発明6)。
上記発明(発明6)においては、前記ポリビニルアルコールを化学架橋して前記架橋ゲル層とすることが好ましい(発明7)。
上記発明(発明7)において、前記化学架橋は、多官能アルデヒド化合物によって前記ポリビニルアルコールをアセタール結合させるものであることが好ましい(発明8)。
本発明に係る医療機器の表層構造は、複雑な構成のブロックポリマーを必要とすることなく、潤滑性を有し、強靭で膨潤による体積変化が少ない。また、本発明に係る医療機器の製造方法によれば、複雑な構成のブロックポリマーを使用することなく、潤滑性を有し、強靭で膨潤による体積変化が少なく、水中で溶解・流失することがない表層構造を有する医療機器を製造することができる。
本発明の一実施形態に係る医療機器の模式断面図である。 試験例2で行った滑り耐久性試験の結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る医療機器の模式断面図を図1に示す。
図1に示すように、本実施形態に係る医療機器1は、基材11と、基材11上に設けられた架橋ゲル層12と、当該架橋ゲル層12における上記基材11とは反対側に設けられた潤滑層13とを備えている。上記架橋ゲル層12は、カルボキシ基またはその塩を有するポリビニルアルコールの架橋物からなり、上記潤滑層13は、エポキシ基含有親水性ポリマーからなる。
上記の構成を有する医療機器1における架橋ゲル層12は、ポリビニルアルコールの架橋物からなることで、強靭なものとなっており、生体内でも崩れ難い。そのため、基材11から脱離し難く、微粒子等の発生を抑制することができ、安全性が高い。また、上記架橋ゲル層12は、ポリビニルアルコールの架橋物からなることで、膨潤による体積変化が少なく、かつ、膨潤しても柔軟性に優れるため、医療機器1の操作性が妨げられない。例えば、医療機器1がガイドワイヤの場合、架橋ゲル層12が血管内で膨潤して体積が大きくなったり、硬くなったりすると、ガイドワイヤの動作が悪化し、操作性が低下するが、上記架橋ゲル層12では、そのような操作性の低下を防止することができる。
また、本実施形態に係る医療機器1における潤滑層13は、エポキシ基含有親水性ポリマーからなることで、生体内にて潤滑性に優れる。さらに、当該潤滑層13は、エポキシ基含有親水性ポリマーからなることで、当該エポキシ基と、上記架橋ゲル層12におけるポリビニルアルコールが有するカルボキシ基またはその塩とが反応し、化学結合する。その結果、強固な化学架橋ハイドロゲル層が構築され、潤滑層13は、架橋ゲル層12に強固に接着し、架橋ゲル層12から、ひいては基材11から脱離し難いものとなっている。なお、架橋ゲル層12と潤滑層13との界面には、ポリビニルアルコールのカルボキシ基またはその塩と、エポキシ基含有親水性ポリマーのエポキシ基との反応物が存在することが好ましい。
上記の構成を有する医療機器1においては、複雑な構成のブロックポリマーを必要とすることなく、生体内で崩れ難い強靭な表層構造を形成することができる。ただし、本発明は、複雑な構成のブロックポリマーを使用することを排除するものではない。
1.各要素
(1)医療機器
本実施形態に係る医療機器1の種類としては、生体組織に対して潤滑性が必要とされるものであれば特に限定されないが、通常は、生体内に挿入または配置される医療機器であることが好ましい。
本実施形態に係る医療機器1としては、例えば、ガイドワイヤ、カテーテル、留置針、ステント、バルーン、カニューレ、心肺バイパスサーキット、血管内在性モニタリングデバイス、組織パッチデバイス、血液ポンプ、ペースメーカー電極、ドラッグデリバリーデバイス、各種チューブ(血管造影用チューブ、気管内チューブ、栄養チューブ、泌尿器用チューブ、内視鏡用オーバーチューブ等)、人工血管、人工心臓弁、人工臓器などが挙げられる。
特に、本実施形態に係る医療機器1としては、体内に挿入して用いる長尺状医療機器が好適である。例えば、表面が金属製の長尺状医療機器や、表面がウレタン等の高分子材料製の長尺状医療機器を基材として用い、当該基材の表面に架橋ゲル層12を形成した長尺状医療機器が好適である。当該長尺状医療機器に係る特に好適な形態としては、ガイドワイヤおよびカテーテルが挙げられる。
上記カテーテルとしては特に限定されず、あらゆるカテーテルを使用することができ、例えば、ガイディングカテーテル、貫通カテーテル、マイクロカテーテル、バルーンカテーテル、ダイレータ等が挙げられる。また、上記ガイドワイヤとしても特に限定されず、あらゆるガイドワイヤを使用することができる。
上記長尺状医療機器のより具体的な構成例としては、以下の(a)~(e)に示すような種々の構成を採用可能である。
(a)線状のコアワイヤと、該コアワイヤの外周の少なくとも一部に設けられた被覆層と、該被覆層の表面に形成された上記架橋ゲル層及び潤滑層と、を備えるガイドワイヤ。
(b)線状のコアワイヤと、該コアワイヤの外周の少なくとも一部に線材が螺旋状に巻回されたコイル層と、該コイル層の表面に形成された上記架橋ゲル層及び潤滑層と、を備えるガイドワイヤ。
(c)線状のコアワイヤと、該コアワイヤの外周の少なくとも一部に線材が螺旋状に巻回されたコイル層と、該コイル層の外周に設けられた被覆層と、該被覆層の表面に形成された上記架橋ゲル層及び潤滑層と、を備えるガイドワイヤ。
(d)管状部材と、該管状部材の表面に形成された上記架橋ゲル層及び潤滑層と、を備えるカテーテル。
(e)管状部材と、該管状部材の片端に配置されたバルーンと、該バルーンの表面に形成された上記架橋ゲル層及び潤滑層と、を備えるカテーテル。
ただし、本実施形態に係る医療機器1は、上記した(a)~(e)とは異なる構成であってもよく、ガイドワイヤおよびカテーテル以外の医療機器としてもよく、医療機器の少なくとも一部の表面に、上記架橋ゲル層及び潤滑層を備えていればよい。
(2)基材
本実施形態における基材11の構造や形状は、医療機器1の種類に応じて適宜選択される。基材11を構成する材料も、医療機器1の種類に応じて適宜選択され、金属材料、高分子材料、セラミックス材料などが挙げられ、複数の種類の材料が組み合わされてもよい。
金属材料としては、医療機器、特に生体内に挿入または配置される医療機器に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、SUS302、SUS304、SUS316等のステンレス鋼;金、白金、チタン、ニッケル、クロム、コバルト、タングステン、それらの合金(例えば、ニッケル-チタン合金、ニッケル-クロム合金、白金-ニッケル合金、ニッケル-コバルト合金、コバルト-クロム合金等)などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合せて使用してもよい。
基材11を構成する材料が金属材料の場合、基材11において架橋ゲル層12が設けられる面には、架橋ゲル層12の密着性を高めるための処理を施してもよい。かかる処理としては、例えば、リン酸処理、エチレン-アクリル酸塗布処理、エポキシ接着剤塗布処理、オゾン・紫外線処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、火炎処理等が挙げられる。
高分子材料としては、医療機器、特に生体内に挿入または配置される医療機器に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、ポリアミド;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルサルフォン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合せて使用してもよい。
基材11を構成する材料が高分子材料の場合も、基材11において架橋ゲル層12が設けられる面には、架橋ゲル層12の密着性を高めるための処理を施してもよい。かかる処理としては、例えば、プライマー処理、酸化法、凹凸化法等が挙げられる。酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等が挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
(3)架橋ゲル層
本実施形態における架橋ゲル層12は、前述した通り、カルボキシ基またはその塩を有するポリビニルアルコールの架橋物からなる。カルボキシ基の塩(カルボン酸塩)としては、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が好ましく、中でもアルカリ金属塩が特に好ましく、ナトリウム塩がさらに好ましい。
本実施形態におけるポリビニルアルコールは、カルボキシ基またはその塩を、2モル%以上含有することが好ましく、特に3モル%以上含有することが好ましく、さらには4モル%以上含有することが好ましい。これにより、カルボキシ基またはその塩を有するポリビニルアルコールと、潤滑層13を構成するエポキシ基含有親水性ポリマーとが十分に反応し、潤滑層13を架橋ゲル層12に強固に接着させることができる。また、上記ポリビニルアルコールは、カルボキシ基またはその塩を、10モル%以下含有することが好ましく、特に8モル%以下含有することが好ましく、さらには6モル%以下含有することが好ましい。これにより、ポリビニルアルコールの水酸基を所定量残すことができ、良好な架橋物を形成することができる。
本実施形態におけるポリビニルアルコールは、ケン化度が90モル%以上であることが好ましく、特に96モル%以上であることが好ましく、さらには98モル%以上であることが好ましい。これにより、ポリビニルアルコールの水酸基を介して、良好な架橋物を形成することができる。上記ケン化度の上限値は特に限定されず、100モル%であってもよいが、通常は99モル%以下であることが好ましい。
本実施形態におけるカルボキシ基またはその塩を含有したポリビニルアルコールの数平均分子量(Mn)は、20,000以上であることが好ましく、特に40,000以上であることが好ましい。また、上記数平均分子量(Mn)は、1,000,000以下であることが好ましく、特に200,000以下であることが好ましい。最も好ましい数平均分子量(Mn)としては、100,000程度である。
本実施形態におけるポリビニルアルコールの架橋物は、ポリビニルアルコールを化学架橋したものであることが好ましい。物理架橋した架橋物であってもよいが、化学架橋した架橋物の方が、架橋ゲル層12が強靭なものとなり、生体内で崩れ難く、また、膨潤による体積変化も少ない。
上記ポリビニルアルコールの架橋物においては、ポリビニルアルコール同士がアセタール結合していることが好ましい。これにより、架橋ゲル層12がより強靭なものとなり、膨潤による体積変化もより少ないものとなる。
上記ポリビニルアルコールの架橋物においては、ポリビニルアルコールが多官能アルデヒド化合物によって架橋されていることが好ましい。多官能アルデヒド化合物によれば、ポリビニルアルコール同士のアセタール結合を良好に形成することができ、したがって、得られる架橋ゲル層12がより強靭なものとなり、膨潤による体積変化もより少ないものとなる。また、多官能アルデヒド化合物は、ポリビニルアルコールの水酸基と反応するが、カルボキシ基またはその塩とは反応しないため、ポリビニルアルコールが有するカルボキシ基またはその塩を残存させつつ、ポリビニルアルコールの水酸基のみを介して選択的に架橋することができる。
上記多官能アルデヒド化合物としては、1分子中に2個以上のアルデヒド基含有する化合物であれば特に限定されず、例えば、グルタルアルデヒド、グリオキサール、マロンジアルデヒド、アジピンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合せて使用してもよい。上記の中でも、生体安全性に優れたグルタルアルデヒドが特に好ましい。
架橋ゲル層12は、上述したカルボキシ基またはその塩を有するポリビニルアルコールとともに、カルボキシ基およびその塩のいずれも有しないポリビニルアルコールを含有することも好ましい。カルボキシ基およびその塩のいずれも有しないポリビニルアルコールも含有することにより、架橋ゲル層12が所望の強度を有し易いものとなり、より優れた耐久性を有する架橋ゲル層12を形成し易いものとなる。架橋ゲル層12が、カルボキシ基およびその塩のいずれも有しないポリビニルアルコールを含有する場合、当該ポリビニルアルコールは、カルボキシ基またはその塩を有するポリビニルアルコールとともに架橋物を形成していてもよく、あるいは、カルボキシ基またはその塩を有するポリビニルアルコールによって形成された架橋物に絡み付いた構造となっていてもよい。
架橋ゲル層12が、カルボキシ基およびその塩のいずれも有しないポリビニルアルコールを含有する場合、当該ポリビニルアルコールの、架橋ゲル層12中に存在する全ポリビニルアルコールに対する割合としては、5質量%以上であることが好ましく、特に10質量%以上であることが好ましく、さらには20質量%以上であることが好ましい。また、当該割合は、100質量%以下であることが好ましく、特に80質量%以下であることが好ましく、さらには60質量%以下であることが好ましい。上記割合がこれらの範囲であることで、架橋ゲル層12の耐久性がより向上するものとなる。
架橋ゲル層12の厚さは、下限値として、1μm以上であることが好ましく、特に1.5μm以上であることが好ましく、さらには2μm以上であることが好ましい。これにより、ハイドロゲルとしての機能を良好に発揮し、医療機器1に対して良好な潤滑性を付与することができる。また、架橋ゲル層12の厚さは、上限値として、8μm以下であることが好ましく、特に6μm以下であることが好ましく、さらには4μm以下であることが好ましい。これにより、架橋ゲル層12の膨潤による体積変化を、より少なく抑えることができる。
(4)潤滑層
本実施形態における潤滑層13は、前述した通り、エポキシ基含有親水性ポリマーからなる。
エポキシ基含有親水性ポリマーは、当該ポリマーを構成する重合単位として少なくとも1種の親水性モノマーを含むことが好ましい。当該親水性モノマーの例としては、ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー;カルボキシベタイン、ホスホベタイン、スルホベタイン等のベタイン系モノマー;メトキシポリエチレングリコールアクリレート等のアルコキシ基含有ポリエーテル(メタ)アクリレート、メトキシエチルアクリレート等のアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリレート;無水マレイン酸等の無水マレイン酸系モノマー;(メタ)アクリル酸、ビニルスルホン酸、ビニルピロリドン等が挙げられる。これらの中でも、上記親水性ポリマーは、アクリルアミド系モノマー、ベタイン系モノマー、アルコキシ基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ビニルスルホン酸、及びビニルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーに基づく重合単位を含むことが好ましい。
また、エポキシ基含有親水性ポリマーとしては、その基本骨格として、ポリアクリルアミド、グリシジルメタクリレート-ジメチルアクリルアミド共重合体等のアクリルアミド系ポリマー;メチルビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体等の無水マレイン酸系ポリマー;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリカルボキシベタイン、ポリホスホベタイン、ポリスルホベタイン等のベタイン系ポリマー;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルスルホン酸、及びそれらの誘導体などを備え、当該基本骨格に、エポキシ基を含有するモノマーを共重合させること等によってエポキシ基を導入してなる親水性ポリマーを使用することもできる。
上記の中でも、エポキシ基を導入し易く、また、優れた潤滑性を示す観点から、アクリルアミド系ポリマーが好ましく、特にジメチルアクリルアミドをモノマー構成単位とするアクリルアミド系ポリマーが好ましく、さらには、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルとジメチルアクリルアミドとの共重合体が好ましい。
本実施形態におけるエポキシ基含有親水性ポリマーは、該ポリマーを構成する全重合単位100モル%に対し、エポキシ基を、1モル%以上含有することが好ましく、特に2モル%以上含有することが好ましく、さらには4モル%以上含有することが好ましい。これにより、エポキシ基含有親水性ポリマーが、架橋ゲル層12中のポリビニルアルコールのカルボキシ基またはその塩と十分に反応し、潤滑層13を架橋ゲル層12に強固に接着させることができる。また、上記エポキシ基含有親水性ポリマーは、エポキシ基を、20モル%以下含有することが好ましく、特に15モル%以下含有することが好ましく、さらには10モル%以下含有することが好ましい。これにより、親水性ポリマーが有する親水性を妨げることなく、潤滑層13の潤滑性を良好に維持することができる。
本実施形態におけるエポキシ基含有親水性ポリマーの数平均分子量(Mn)は、20,000以上であることが好ましく、特に40,000以上であることが好ましい。また、上記数平均分子量(Mn)は、1,000,000以下であることが好ましく、特に200,000以下であることが好ましい。最も好ましい数平均分子量(Mn)としては、約100,000程度である。
潤滑層13の厚さは、下限値として、1μm以上であることが好ましく、特に1.5μm以上であることが好ましく、さらには2μm以上であることが好ましい。これにより、生体に対する潤滑性を十分に発揮することができる。また、潤滑層13の厚さは、上限値として、8μm以下であることが好ましく、特に6μm以下であることが好ましく、さらには4μm以下であることが好ましい。これにより、架橋ゲル層12中のポリビニルアルコールの架橋物と結合していない親水性ポリマーが潤滑層13から脱落することを良好に抑制することができる。
2.製造方法
本実施形態に係る医療機器1の好ましい一製造方法について説明する。
最初に、基材11上に、カルボキシ基またはその塩を有するポリビニルアルコールの塗膜を形成する。この塗膜は、例えば、カルボキシ基またはその塩を有するポリビニルアルコールの水溶液に基材を浸漬させ、一定の速度で引き抜く方法により基材11上に塗布するか、カルボキシ基またはその塩を有するポリビニルアルコールの水溶液に基材11を浸漬し、その後乾燥させることにより形成することができる。一定の速度で引き抜く塗布方法の場合、引き抜き速度を変えることで塗布膜厚を制御可能である。引き抜き速度を早くすれば膜厚は厚くなり、遅くすれば薄くなるため、各層毎に最適な引き抜き速度を設定することで任意の膜厚を塗布することができる。
次に、上記ポリビニルアルコールのカルボキシ基またはその塩を残存させつつ、上記ポリビニルアルコールを架橋して架橋ゲル層12とする。この架橋は、前述した通り化学架橋であることが好ましく、特に、多官能アルデヒド化合物による化学架橋であることが好ましい。多官能アルデヒド化合物による上記ポリビニルアルコールの化学架橋は、例えば、溶液の水素イオン指数(pH)を2より小さくした多官能アルデヒド化合物の溶液(好ましくは水溶液)に、上記ポリビニルアルコールの塗膜を形成した基材11を浸漬し、その後乾燥させることにより行うことができる。多官能アルデヒドは、酸性環境では常温で任意の水酸基と化学架橋が進行する。酸性化には任意の酸が利用できるが、酢酸、クエン酸、塩酸等が水溶性であるため好適に利用できる。
最後に、上記架橋ゲル層12上にエポキシ基含有親水性ポリマーからなる潤滑層13を形成し、上記ポリビニルアルコールのカルボキシ基またはその塩と、上記エポキシ基含有親水性ポリマーのエポキシ基とを反応させる。エポキシ基含有親水性ポリマーからなる潤滑層13の形成は、エポキシ基含有親水性ポリマーの水溶液を常法により架橋ゲル層12上に塗布するか、エポキシ基含有親水性ポリマーの水溶液に、架橋ゲル層12が形成された基材11を浸漬し、その後乾燥させることにより行うことができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、基材11と架橋ゲル層12との間には、他の層が設けられてもよい。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
1.ポリビニルアルコール塗膜の形成
カルボキシ基またはその塩を有するポリビニルアルコールとして、-COONa基を約4モル%、-OH基を約95モル%、-OCOCH基を約1モル%含有するポリビニルアルコール(ケン化度:約99モル%,数平均分子量(Mn):100,000)と、ポリビニルアルコール(ケン化度:約98%,数平均分子量(Mn):260,000,カルボキシ基およびその塩のいずれも有しない)とを重量比4:1の割合で混合して溶解させた水溶液(濃度:5質量%)を用意した。基材としてのSUS304で構成された金属製ガイドワイヤを、上記水溶液に浸漬させ、5mm/secの一定速度で引き抜くことにより、上記基材の表面に上記水溶液を塗布した。その後、70℃で60分間加熱して乾燥させ、ポリビニルアルコールの塗膜を形成した。
2.架橋ゲル層の形成
上記工程1で得られたポリビニルアルコール塗膜を有する基材を、濃度12.5質量%のグルタルアルデヒド水溶液(さらに、濃度1質量%のクエン酸を含む)に60分間浸漬した。その後、ポリビニルアルコール塗膜を有する基材を取り出して、70℃で60分間加熱して乾燥させ、上記ポリビニルアルコールを化学架橋してなる架橋ゲル層を形成した。この架橋ゲル層の厚さは、約1μmであった。
3.潤滑層の形成
エポキシ基含有親水性ポリマーとして、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4-HBAGE)とジメチルアクリルアミドとのランダム共重合体(4-HBAGEに由来するエポキシ基を有する,エポキシ基含有量:10モル%,数平均分子量(Mn):100,000)の水溶液(濃度:10質量%)を用意した。上記工程2で得た架橋ゲル層形成後の基材を、上記エポキシ基含有親水性ポリマーの水溶液を浸漬させ、10mm/secの一定速度で引き抜くことにより架橋ゲル層の露出面に上記水溶液を塗布した。その後、120℃で60分間加熱して乾燥させ、厚さ3.00μmの潤滑層を形成した。なお、この潤滑層の形成により、架橋ゲル層と潤滑層との界面において、架橋ゲル層中のポリビニルアルコールの-COONa基と、上記潤滑層中のエポキシ基含有親水性ポリマーのエポキシ基とが反応したと考えられる。このようにして、基材/架橋ゲル層/潤滑層の層構成からなる積層体を得た。
〔比較例1〕
ポリビニルアルコール(ケン化度:約98%,数平均分子量(Mn):260,000,カルボキシ基およびその塩のいずれも有しない)を溶解させた水溶液(濃度:5質量%)を用いて、厚さ2.95μmの潤滑層を形成した以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る、基材/架橋ゲル層/潤滑層の層構成からなる積層体を得た。なお、この比較例1に係る積層体では、架橋ゲル層を構成するポリビニルアルコールが、カルボキシ基およびその塩のいずれも有しないものであることにより、当該ポリビニルアルコールが化学架橋していないものとなっている。
〔比較例2〕
工程2を省略するとともに、潤滑層の厚さを2.25μmとした以外は実施例1と同様にして、比較例2に係る、基材/架橋ゲル層/潤滑層の層構成からなる積層体を得た。なお、この比較例2に係る積層体では、工程2を省略したことにより、架橋ゲル層中のポリビニルアルコールが化学架橋していないものとなっている。
〔試験例1〕(膨潤による体積変化の評価)
実施例および比較例で製造した積層体を、生理食塩水に20秒浸漬させた。そして、生理食塩水から取り出した後、潤滑層の膨潤による膜厚変化をレーザー顕微鏡により観測した
その結果、実施例1に係る積層体では、乾燥時3.00μmから膨潤時3.25μmであった。すなわち、生理食塩水に浸漬させたことにより、若干膨張したが、その差は僅かであることが明らかになった。
一方、比較例1及び比較例2に係る積層体では、整理食塩水に浸漬後に潤滑層が流失しており、潤滑層の厚さも観測することができなかった。これは、これらの例の潤滑層では、ゲル強度が弱く、生理食塩水中で溶解・拡散したためであると考えられる。
〔試験例2〕(滑り耐久性試験)
実施例および比較例で製造した積層体について、滑り耐久性試験を行った。具体的には、水中環境下において、積層体を、ウレタンローラ(ミスミ社製,製品名「AXFM-D25-L15-V8-N」)とステンレス鋼板(SUS304板、30×30mm)とで挟み、0.981Nの荷重をかけた状態で、積層体の一端を引き抜き、その際の抵抗値(gf)を、積層体に接続したロードセルを用いて測定した。そして、この一連の測定を、同一の積層体を使用して50回繰り返した。
図2には、上記測定の結果を示す。図2に示されるグラフでは、横軸が測定回数、縦軸が抵抗値(gf)となっている。グラフに示される通り、実施例1に係る積層体では、引き抜きを繰り返したとしても、初期から抵抗値があまり変化しないことがわかる。そのため、実施例1に係る積層体は、引き抜きを繰り返したとしても、潤滑層が良好に保持され、優れた潤滑性を発揮し続けることができることがわかる。
これに対し、カルボキシ基およびその塩を含有するポリビニルアルコールを添加していない比較例1、及び架橋剤であるグルタルアルデヒドを添加していない比較例2ではそれぞれ、引き抜きの繰り返しに伴い、抵抗値が増大している。そのため、比較例1および比較例2では、引き抜きの繰り返しに伴って、潤滑層が擦過により剥離し、それにより、潤滑性を保持できないことがわかる。
試験例1および2の結果から明らかなように、実施例で得られた積層体は、潤滑層の膨潤による体積変化が少なく、架橋ゲル層および潤滑層の流出が生じ難いものであった。さらに、実施例で得られた積層体は、繰り返し使用した場合であっても、優れた潤滑性を示した。
本発明に係る医療機器は、例えば、ガイドワイヤ、カテーテル、人口血管等として好適なものである。
1…医療機器
11…基材
12…架橋ゲル層
13…潤滑層

Claims (8)

  1. 基材と、
    前記基材上に設けられた架橋ゲル層と、
    前記架橋ゲル層における前記基材とは反対側に設けられた潤滑層と
    を備えており、
    前記架橋ゲル層が、カルボキシ基またはその塩を有するポリビニルアルコールの架橋物からなり、
    前記潤滑層が、エポキシ基含有親水性ポリマーからなる
    ことを特徴とする医療機器。
  2. 前記ポリビニルアルコールの架橋物が、前記ポリビニルアルコールを化学架橋したものであることを特徴とする請求項1に記載の医療機器。
  3. 前記ポリビニルアルコール同士がアセタール結合していることを特徴とする請求項2に記載の医療機器。
  4. 前記エポキシ基含有親水性ポリマーは、アクリルアミド系モノマー、ベタイン系モノマー、アルコキシ基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ビニルスルホン酸、及びビニルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーに基づく重合単位を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の医療機器。
  5. 生体内に挿入または配置される医療機器であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の医療機器。
  6. 基材上にカルボキシ基またはその塩を有するポリビニルアルコールの塗膜を形成し、
    前記カルボキシ基またはその塩を残存させつつ、前記ポリビニルアルコールを架橋して架橋ゲル層とし、
    前記架橋ゲル層上にエポキシ基含有親水性ポリマーからなる潤滑層を形成して、前記ポリビニルアルコールのカルボキシ基またはその塩と、前記エポキシ基含有親水性ポリマーのエポキシ基とを反応させる
    ことを特徴とする医療機器の製造方法。
  7. 前記ポリビニルアルコールを化学架橋して前記架橋ゲル層とすることを特徴とする請求項6に記載の医療機器の製造方法。
  8. 前記化学架橋は、多官能アルデヒド化合物によって前記ポリビニルアルコールをアセタール結合させるものであることを特徴とする請求項7に記載の医療機器の製造方法。
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