JP2013143344A - 酸化物超電導薄膜とその製造方法および酸化物超電導薄膜線材 - Google Patents

酸化物超電導薄膜とその製造方法および酸化物超電導薄膜線材 Download PDF

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Abstract

【課題】MOD法を用いて形成された酸化物超電導薄膜層を積層して、高い超電導特性を備えた酸化物超電導薄膜層を得ることができる技術を提供する。
【解決手段】塗布熱分解法を用いて、基材上にREBCO系酸化物超電導薄膜を形成する酸化物超電導薄膜の製造方法であって、基板上に、CeO層を最上層とする中間層を形成して基材を作製する基材作製工程と、基材上に、REおよびBa量が、REBCOの化学量論比(RE:Ba:Cu=1:2:3)よりも低い比率で調製された原料溶液を塗布、乾燥した後、仮焼熱処理、本焼熱処理を経て、第1層目のREBCO系酸化物超電導薄膜を形成し、第1層目のREBCO系酸化物超電導薄膜の上に、Cu量がREBCOの化学量論比よりも低い比率で調製された原料溶液を塗布、乾燥した後、仮焼熱処理、本焼熱処理を経て、第2層目のREBCO系酸化物超電導薄膜を形成する酸化物超電導薄膜の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、超電導特性に優れた酸化物超電導薄膜とその製造方法および前記酸化物超電導薄膜が設けられた酸化物超電導薄膜線材に関する。
液体窒素の温度で超電導性を有する高温超電導体の発見以来、ケーブル、限流器、マグネットなどの電力機器への応用を目指した高温超電導線材の開発が活発に行われている。中でも、基材上に酸化物超電導薄膜が形成された酸化物超電導薄膜線材が注目されている。
酸化物超電導薄膜線材の製造方法の1つに、塗布熱分解法(Metal Organic Deposition、略称:MOD法)がある(特許文献1)。
この方法は、Y(イットリウム)などのRE(希土類元素)およびBa(バリウム)、Cu(銅)の各有機金属化合物(金属塩)を溶媒に溶解して製造された原料溶液(MOD溶液)を基材に塗布して塗布膜を形成した後、例えば、500℃付近で仮焼熱処理して、有機金属化合物を熱分解させ、熱分解した有機成分を除去することにより酸化物超電導体の前駆体である仮焼膜を作製後、作製した仮焼膜をさらに高温(例えば750〜800℃付近)で本焼熱処理することにより結晶化を行って、REBaCu7−Xで表されるREBCO系の酸化物超電導薄膜層を形成させて酸化物超電導薄膜線材を製造するものであり、主に真空中で製造される気相法(蒸着法、スパッタ法、パルスレーザ蒸着法等)に比較して製造設備が簡単で済み、また大面積や複雑な形状への対応が容易である等の特徴を有しているため、広く用いられている。
そして、MOD溶液の塗布、仮焼熱処理、本焼熱処理を繰り返して、酸化物超電導薄膜層を積層することにより、酸化物超電導薄膜層をより厚膜化して、超電導特性(臨界電流密度Jcや臨界電流値Icなど)を高めることが行われている。
特開2007−165153号公報
しかしながら、このように積層して作製された酸化物超電導薄膜層において充分に高い超電導特性が得られない場合があった。
このため、MOD法を用いて形成された酸化物超電導薄膜層を積層して、高い超電導特性を備えた酸化物超電導薄膜層を得ることができる技術が望まれていた。
本発明者は、上記課題の解決について検討するに際し、先ず、従来のMOD法を用いて形成された酸化物超電導薄膜層(以下、「YBCO薄膜層」を例に挙げ説明する。)につき分析を行ったところ、図6に示すように、形成された酸化物超電導薄膜層にはYBCOの他に、Y211(YBaCu)やCu−Oが異相として析出しており、この異相の析出が、Jcを低下させ、Icの伸びを制限していることが分かった。
次に、本発明者は、これらの異相析出の原因について、種々の実験、検討を行い、その結果、MOD溶液の調製に原因があることが分かった。
即ち、従来のMOD法においては、酸化物超電導薄膜層における化学量論比に合わせて、Y(RE):Ba:Cu=1:2:3の組成となるように各有機金属化合物を秤量し、溶媒に溶解することによりMOD溶液を調製した後、配向金属基板上に形成された中間層の上に塗布し、仮焼熱処理、本焼熱処理を経て、YBCO超電導薄膜層を形成していた。
しかし、本焼熱処理の際、原料のBaの一部が、中間層の最表層として一般的に用いられている酸化セリウム(CeO)と反応して、図7に示すように中間層と超電導層の間にBaCeOが生成されるため、YBCO超電導薄膜層の形成に充分なBa量を確保することができず、余剰となったYやCuがY211やCu−Oの異相となって析出する。そして、これらの異相が、Jcを低下させるため、Icの伸びが制限されていた。
このようなBaCeOの生成に伴うBaの不足を補う手段として、本発明者は、まず、BaCeOの生成に見合う量だけBaの比率を過剰にしたMOD溶液を使用することを考えた。しかし、この場合には、YBCOがc軸配向しなくなることが分かった。これは、BaCeOの生成がYBCOのc軸配向を抑制したものと考えられ、BaCeOの生成自体を抑制する必要があることが分かった。
また、異相の析出状況を観察したところ、図6、7に示すように、Y211はYBCO層の内部に埋め込まれた状態で生成される一方、Cu−OはYBCO層の表面側に生成されることが分かった。
これらの知見に基づき、本発明者は、以下のようにMOD溶液を調製して、基材上にYBCO層を積層すればよいことに思い至り、本発明を完成するに到った。
即ち、まず、YおよびBaの比率が前記した化学量論比より低くなるように調製したMOD溶液を用いて第1層目のYBCO層を形成する。
このようにYの比率を化学量論比より低くする(Yプアー)ことにより、余剰のYを低減させY211の析出を抑制することができる。また、Baの比率を化学量論比より低くする(Baプアー)ことにより、CeOとの反応物であるBaCeOの生成を抑制することができる。
一方、Cu量については化学量論比通りにMOD溶液を調製しているため、Cuの比率が相対的に高くなり、第1層目のYBCO層の形成においてはCu−Oの析出を抑制することはできない。
次に、第1層目のYBCO層の上に、Cuの比率が前記した化学量論比より低くなるように調製したMOD溶液を用いて第2層目のYBCO層を形成する。
このように第2層目のYBCO層の形成において、Cuの比率を前記した化学量論比より低くする(Cuプアー)ことにより、仮焼熱処理および本焼熱処理に際して、第1層目のYBCO層表面に析出したCu−Oが吸収されて、Cu−Oの析出が抑制され、適正な化学量論比で第2層目のYBCO層が形成される。
本発明は、上記の知見に基づくものであり、請求項1に記載の発明は、
塗布熱分解法を用いて、基材上にREBCO系酸化物超電導薄膜を形成する酸化物超電導薄膜の製造方法であって、
基板上に、CeO層を最上層とする中間層を形成して前記基材を作製する基材作製工程と、
前記基材上に、REおよびBa量が、REBCOの化学量論比(RE:Ba:Cu=1:2:3)よりも低い比率で調製された原料溶液を塗布、乾燥した後、仮焼熱処理、本焼熱処理を経て、第1層目のREBCO系酸化物超電導薄膜を形成する第1酸化物超電導薄膜形成工程と、
前記第1層目のREBCO系酸化物超電導薄膜の上に、Cu量がREBCOの化学量論比よりも低い比率で調製された原料溶液を塗布、乾燥した後、仮焼熱処理、本焼熱処理を経て、第2層目のREBCO系酸化物超電導薄膜を形成する第2酸化物超電導薄膜形成工程と、
を備えていることを特徴とする酸化物超電導薄膜の製造方法である。
次に、本発明者は、前記した第1層目および第2層目のREBCO系酸化物超電導薄膜の形成におけるMOD溶液の好ましい比率につき検討を行った。その結果、第1層目のREBCO系酸化物超電導薄膜の形成に際してはRE:Ba:Cu=x:y:3(0.7≦x<1.0、1.5≦y<2.0)が好ましく、第2のREBCO系酸化物超電導薄膜の形成に際してはRE:Ba:Cu=1:2:z(2.5≦z<3.0)が好ましいことが分かった。また、RE211の生成を効果的に抑制するためには、REの化学量論比に対する低減比率をBaの低減比率よりも大きくすることがより好ましいことが分かった。
請求項2および請求項3に記載の発明は、上記の知見に基づくものであり、
請求項2に記載の発明は、
前記第1酸化物超電導薄膜形成工程に使用されるMOD溶液の組成が、RE:Ba:Cu=x:y:3(0.7≦x<1.0、1.5≦y<2.0)であり、
前記第2酸化物超電導薄膜形成工程に使用されるMOD溶液の組成が、RE:Ba:Cu=1:2:z(2.5≦z<3.0)である
ことを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法である。
そして、請求項3に記載の発明は、
前記第1酸化物超電導薄膜形成工程に使用されるMOD溶液におけるREの化学量論比に対する低減比率が、前記Baの化学量論比に対する低減比率よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法である。
前記製造方法におけるMOD法としては、第1酸化物超電導薄膜形成工程においては、原料溶液にフッ素を含む有機金属化合物を用いるTFA−MOD法、フッ素を含まない有機金属化合物を用いるFF−MOD法(フッ素フリーMOD法)のいずれを用いてもよいが、第2酸化物超電導薄膜形成工程においては、フッ素の強い酸性により第1層目の酸化物超電導薄膜が溶かされる恐れがあるため、FF−MOD法を用いることが好ましい。
即ち、請求項4に記載の発明は、
前記第2酸化物超電導薄膜形成工程において用いられる塗布熱分解法が、フッ素フリーMOD法であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法である。
そして、より厚膜の酸化物超電導薄膜とするためには、第2酸化物超電導薄膜形成工程に続いて、さらに第3層目以降のYBCO層を積層してもよい。なお、第3層目以降のYBCO層の形成においては、MOD法に限定されず、PLD法なども用いることができる。そして、MOD法の場合、MOD溶液としては化学量論比通りの原料組成のMOD溶液を用いることができる。
即ち、請求項5に記載の発明は、
前記第2酸化物超電導薄膜形成工程の後、さらに、1層または2層以上のREBCO層を積層することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法である。
そして、上記の方法により作製された酸化物超電導薄膜は、異相の析出が抑制されているためJcやIcが低下せず、超電導特性に優れた酸化物超電導薄膜線材を提供することができる。
即ち、請求項6に記載の発明は、
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法を用いて製造されていることを特徴とする酸化物超電導薄膜である。
また、請求項7に記載の発明は、
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法を用いて製造された酸化物超電導薄膜が設けられていることを特徴とする酸化物超電導薄膜線材である。
本発明によれば、MOD法を用いて形成された酸化物超電導薄膜層を積層して、高い超電導特性を備えた酸化物超電導薄膜層を得ることができ、さらに、超電導特性に優れた酸化物超電導薄膜線材を提供することができる。
第1層目の酸化物超電導薄膜の表面のSEM画像を示す図である。 第1層目の酸化物超電導薄膜の表面のX線回折(XRD)図である。 本発明の実施例における酸化物超電導薄膜の構成を説明する図である。 本発明の実施例における第1層目の酸化物超電導薄膜の評価結果を示す図である。 本発明の実施例における第2層目の酸化物超電導薄膜の評価結果を示す図である。 従来技術により製造された酸化物超電導薄膜の表面のSEM画像である。 異相析出のメカニズムを説明する図である。
以下、本発明を実施の形態に基づき、図面を用いて説明する。なお、以下においては、酸化物超電導薄膜としてYBCO系酸化物超電導薄膜を例に挙げて説明する。
本実施の形態に係る酸化物超電導薄膜は、以下の手順により製造される。
1.基材の作製
最初に、基板上に中間層が形成された基材を作製する。
(1)基板
基板としては、YSZ単結晶基板や2軸配向した配向金属基板が好ましく用いられ、前記配向金属基板としては、IBAD基板、Ni−W合金基板、SUS等をベース金属としたクラッドタイプの金属基板等が用いられる。
(2)中間層の形成
前記基板上に、より高いJcの酸化物超電導薄膜が得られるという観点から、CeO層を中間層として形成する。形成方法としては、RFスパッタ法やPLD法などの気相法が用いられる。なお、CeO層と基材との間に、CeO、酸化イットリウム(Y)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化マグネシウム(MgO)や、バリウムジルコネート(BaZrO)、アルミン酸ランタン(LaAlO)等の層を設けて、多層の中間層を形成させてもよく、一般的には3層構造の中間層が用いられる。
2.酸化物超電導薄膜の形成
次に、FF−MOD法を用いて、基材上に、第1層目の酸化物超電導薄膜および第2層目の酸化物超電導薄膜を順に形成する。
(1)第1層目の酸化物超電導薄膜の形成
最初に、基材上に第1層目の酸化物超電導薄膜を形成する。
(a)第1のMOD溶液の作製
Y、Ba、Cuのアセチルアセトナート塩などの有機金属化合物(金属塩)を、アルコールなどの溶媒に溶解して第1のMOD溶液を作製する。
この第1のMOD溶液は、YBCOの化学量論比(Y:Ba:Cu=1:2:3)よりも、YおよびBaの比率が低くなるように調製される。
具体的には、前記したように、Y:Ba:Cu=x:y:3(0.7≦x<1.0、1.5≦y<2.0)であることが好ましい。また、RE211の生成を効果的に抑制するためには、前記したように、Yの化学量論比に対する低減比率をBaの低減比率よりも大きくすることが好ましく、具体的には、Yの低減比率はBaの低減比率の2%増程度であることが好ましい。
(b)第1のMOD溶液の塗布、乾燥
基材の中間層上に、上記のように調製された第1のMOD溶液を塗布し、乾燥させて塗膜を形成させる。
(c)焼成(仮焼熱処理および本焼熱処理)
塗膜が形成された基材を、大気雰囲気下、500℃程度の温度で120分間加熱して仮焼熱処理を行った後、さらに、酸素濃度100ppmのアルゴン/酸素混合ガス雰囲気下、800℃程度の温度で90分間加熱して本焼熱処理を行う。これにより、基板上に第1層目の酸化物超電導薄膜が形成される。
このとき、MOD溶液のYの比率が低いため、Y211の析出が抑制される。また、Baの比率が低いため、中間層を形成するCeOとBaとの反応が抑制されて、BaCeOの生成が抑制される。その結果、余剰のCuから析出されたCu−Oが表面近くにある酸化物超電導薄膜が形成される。
なお、上記において、第1のMOD溶液の塗布と仮焼熱処理を繰り返した後、本焼熱処理を行って、第1層目の酸化物超電導薄膜の膜厚を厚くしてもよいが、厚過ぎると余剰のY、Cuの量が多くなるため好ましくない。好ましい厚さは0.05〜0.5μmである。
(2)第2層目の酸化物超電導薄膜の形成
次に、第1層目の酸化物超電導薄膜の上に第2層目の酸化物超電導薄膜を形成する。
(a)第2のMOD溶液の作製
前記と同様に、Y、Ba、Cuのアセチルアセトナート塩などの有機金属化合物(金属塩)を、アルコールなどの溶媒に溶解して第2のMOD溶液を作製する。
第2のMOD溶液は、前記したように、YBCOの化学量論比(Y:Ba:Cu=1:2:3)よりも、Cuの比率が低くなるように調製される。
具体的には、Y:Ba:Cu=1:2:z(2.5≦z<3.0)であることが好ましい。
(b)第2のMOD溶液の塗布、乾燥
第1層目の酸化物超電導薄膜の上に、上記のように調製された第2のMOD溶液を塗布し、乾燥させて塗膜を形成させる。
(c)焼成(仮焼熱処理および本焼熱処理)
その後、大気雰囲気下、500℃程度の温度で120分間加熱して仮焼熱処理を行った後、さらに、酸素濃度100ppmのアルゴン/酸素混合ガス雰囲気下、800℃程度の温度で90分間加熱して本焼熱処理を行う。これにより、第1層目の酸化物超電導薄膜の上に、第2層目の酸化物超電導薄膜が形成される。
このとき、上記の第1層目の酸化物超電導薄膜の形成において析出したCu−Oは、前記したように、仮焼熱処理および本焼熱処理の際、塗膜に吸収されて第2層目の酸化物超電導薄膜の形成に使用されるため、Cu−Oの析出が低減される。
なお、第1層目の酸化物超電導薄膜の形成の場合と同様に、第2のMOD溶液の塗布と仮焼熱処理を繰り返した後、本焼熱処理を行って、第2層目の酸化物超電導薄膜の膜厚を厚くしてもよいが、厚過ぎると、第2の酸化物超電導薄膜の形成に必要なCu−Oが不足して、余剰のYやBaが異相を生じる恐れがあるため、好ましくない。好ましい厚さは0.1〜0.5μmである。
以上のように、YBCOの化学量論比よりもYおよびBaの比率が低いMOD溶液を用いて第1層目の酸化物超電導薄膜を形成し、YBCOの化学量論比よりもCuの比率が低いMOD溶液を用いて第2層目の酸化物超電導薄膜を積層することにより、Y211やCu−Oの異相の析出が抑制された酸化物超電導薄膜を基材上に形成することができ、中間層を形成するCeOとの間でのBaCeOの生成が抑制されることとも相俟って、優れたJcの酸化物超電導薄膜を提供することができる。
なお、このようにして作製された酸化物超電導薄膜の上に、MOD法やPLD法を用いて、さらに酸化物超電導薄膜を積層してもよいことは前記した通りである。
[1]実施例1
本実施例は、第1層目の酸化物超電導薄膜の形成に際して、YBCOの化学量論比(Y:Ba:Cu=1:2:3)よりも、YおよびBaの比率が低くなるように調製されたMOD溶液を用いることにより、BaCeOの生成、およびY211の析出が抑制されることを確認した例である。
幅30mm、厚さ0.1μmのクラッド基板上に、RFスパッタ法を用いて、Y(100nm厚)/YSZ(400nm厚)/CeO(50nm厚)の3層からなる総厚550nmの中間層を形成することにより、基材を作製した。
この基材上に、(a)Y:Ba:Cu=0.95:2:3、(b)Y:Ba:Cu=0.95:1.94:3となるように調製したMOD溶液を塗布し、大気雰囲気下、500℃で120分間加熱して仮焼熱処理を行った後、さらに、酸素濃度100ppmのアルゴン/酸素混合ガス雰囲気下、800℃で90分間加熱して本焼熱処理を行うことにより、2種類の酸化物超電導薄膜(膜厚はいずれも0.15μm)を形成し、表面のSEM画像およびXRDによるX線回折図を得た。なお、(b)のMOD溶液の調製において、Yの化学量論比に対する低減比率は5%、Baの低減比率は3%として、Yの低減比率をBaの低減比率よりも大きくした。
得られたSEM画像を図1に、また得られたX線回折図を図2に示す。なお、各図に示す(a)、(b)は上記と対応している。
図1、図2より、(a)、(b)ともにY211が生成していないことが分かり、Yの比率が低い(Yプアー)MOD溶液を用いることにより、Y211の析出が抑制されることが確認できた。
また、図2より、(a)ではBaCeOが検出されているが(b)では強度が低く抑えられていることが分かり、Yの比率が低く(Yプアー)Baの比率が低い(Baプアー)MOD溶液を用いることにより、Y211の析出が抑制されるだけでなく、BaCeOの生成が抑制されることが確認できた。
また、図1より、(b)の方が(a)よりCu−Oの生成量が少ないことが分かるが、これは、MOD溶液におけるBaの比率を低くしたことにより、中間層のCeOとBaとの反応が抑制されてBaCeOの生成が抑制されることにより、余剰のCuが少なくなったものと思われる。
そして、(a)、(b)のIcを測定したところ、(a)は7A/cm、(b)は20A/cmであり、BaCeOの生成を抑制することにより、超電導特性が向上することが確認できた。
[2]実施例2、3
本実施例は、YおよびBaの比率が低いMOD溶液を用いて形成された第1層目の酸化物超電導薄膜の上に、Cuの比率が低いMOD溶液を用いて第2層目の酸化物超電導薄膜を形成することにより、Cu−Oの析出が抑制されることを確認した例である。
実施例1と同様な方法にてクラッド基板上へ中間層を形成した基材上に、Y:Ba:Cu=0.95:1.94:3となるように調製したMOD溶液を塗布し、大気雰囲気下、500℃で90分間加熱して仮焼熱処理を行った後、さらに、酸素濃度100ppmのアルゴン/酸素混合ガス雰囲気下、800℃で90分間加熱して本焼熱処理を行うことにより、膜厚0.15μmの第1層目の酸化物超電導薄膜を形成させた。
第1層目の酸化物超電導薄膜について、表面のSEM画像およびX線回折図を得た。結果を図4に示す。図4において、(a)はSEM画像であり、左図が500倍、右図が10000倍の画像である。また、(b)はX線回折図である。
図4(a)に見える白い斑点は析出したCu−Oであり、表面に多数のCu−Oが析出していることが分かる。また、図4(b)にはBaCeOのピークが認められず、BaCeOが生成していないことが分かる。
次に、第1層目の酸化物超電導薄膜の上に、(a)Y:Ba:Cu=1:2:3(比較例)、(b)Y:Ba:Cu=1:2:2.94(実施例2)、(c)Y:Ba:Cu=1:2:2.88(実施例3)となるように調製したMOD溶液を塗布し、大気雰囲気下、500℃で120分間加熱して仮焼熱処理を行った後(2−1層目)、再度、MOD溶液の塗布および仮焼熱処理を行って(2−2層目)、2つの仮焼膜を積層した。その後、積層された仮焼膜を酸素濃度100ppmのアルゴン/酸素混合ガス雰囲気下、800℃で90分間加熱して本焼熱処理を行うことにより、膜厚0.25μmの第2層目の酸化物超電導薄膜を形成し、総厚0.375μmの酸化物超電導薄膜が形成された酸化物超電導線材を得た(図3参照)。なお、(b)、(c)のMOD溶液の調製において、Cuの化学量論比に対する低減比率はそれぞれ、2%、4%である。
得られた第2層目の酸化物超電導薄膜のそれぞれにつき、表面のSEM画像を得た。結果を図5に示す。なお、図5に示す(a)〜(c)は図3と対応しており、それぞれ、左側は500倍、右側は5000倍の画像である。
図5より、比較例(a)、実施例2(b)、実施例3(c)のいずれも、図4に示した第1層目の酸化物超電導薄膜に比べて、Cu−Oの析出が低減していることが分かる。また、比較例(a)に比べて、実施例2(b)、実施例3(c)では、Cu−Oの析出がより少なく、第2層目の酸化物超電導薄膜の形成にCuの比率が低い(Cuプアー)MOD溶液を用いることにより、よりCu−Oの析出が少なくなることが分かる。さらに、実施例2(b)に比べて、実施例3(c)ではCu−Oの析出がより少ないことから、第2層目の酸化物超電導薄膜の形成に際しては、Cuの低減比率としては、実施例2の2%よりも実施例3の4%が好ましいことが分かる。
次に、各酸化物超電導線材の誘導Icを測定した。測定結果は、比較例では36A/cm、実施例2では38A/cm、実施例3では43A/cmであり、Cuの比率を化学量論比から4%低くした実施例3の場合、最もIcが向上することが確認できた。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。

Claims (7)

  1. 塗布熱分解法を用いて、基材上にREBCO系酸化物超電導薄膜を形成する酸化物超電導薄膜の製造方法であって、
    基板上に、CeO層を最上層とする中間層を形成して前記基材を作製する基材作製工程と、
    前記基材上に、REおよびBa量が、REBCOの化学量論比(RE:Ba:Cu=1:2:3)よりも低い比率で調製された原料溶液を塗布、乾燥した後、仮焼熱処理、本焼熱処理を経て、第1層目のREBCO系酸化物超電導薄膜を形成する第1酸化物超電導薄膜形成工程と、
    前記第1層目のREBCO系酸化物超電導薄膜の上に、Cu量がREBCOの化学量論比よりも低い比率で調製された原料溶液を塗布、乾燥した後、仮焼熱処理、本焼熱処理を経て、第2層目のREBCO系酸化物超電導薄膜を形成する第2酸化物超電導薄膜形成工程と、
    を備えていることを特徴とする酸化物超電導薄膜の製造方法。
  2. 前記第1酸化物超電導薄膜形成工程に使用されるMOD溶液の組成が、RE:Ba:Cu=x:y:3(0.7≦x<1.0、1.5≦y<2.0)であり、
    前記第2酸化物超電導薄膜形成工程に使用されるMOD溶液の組成が、RE:Ba:Cu=1:2:z(2.5≦z<3.0)である
    ことを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法。
  3. 前記第1酸化物超電導薄膜形成工程に使用されるMOD溶液におけるREの化学量論比に対する低減比率が、前記Baの化学量論比に対する低減比率よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法。
  4. 前記第2酸化物超電導薄膜形成工程において用いられる塗布熱分解法が、フッ素フリーMOD法であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法。
  5. 前記第2酸化物超電導薄膜形成工程の後、さらに、1層または2層以上のREBCO層を積層することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法を用いて製造されていることを特徴とする酸化物超電導薄膜。
  7. 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法を用いて製造された酸化物超電導薄膜が設けられていることを特徴とする酸化物超電導薄膜線材。
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