以下、図面を参照しながら第1の実施形態に係るX線管装置について詳細に説明する。第1の実施形態では、X線管装置の基本的な概念を説明する。
図1、図2及び図3に示すように、X線管装置10は偏向電源105を備えている。X線管装置10は、X線管30と、磁気偏向部100と、他の偏向部としての偏向部70と、冷却器(クーラーユニット)3と、冷却液7と、を備えている。X線管30は、陽極ターゲット35と、陰極36と、真空外囲器31とを備えている。
陰極36は、電子ビームを放出する。陰極36には、陽極ターゲット35に対して相対的に負の電圧が印加される。陰極36の電子放出源36aには陰極36に印加される電圧及び電流が供給される。電子放出源36aは、平板状またはコイル状のフィラメント等で形成されている。ここでは陰極36は負の高電圧に設定されている。
陽極ターゲット35は、この陽極ターゲットの外面の一部に設けられたターゲット面35bを有している。ターゲット面35bには、陰極36から放射される電子ビームが第1方向d1から入射されることにより、第2方向d2に利用X線束を放出する焦点Fが形成される。この実施形態において、ターゲット面35bは平面である。陽極ターゲット35は、モリブデンなどの金属で形成されている。ターゲット面35bは、タングステンやタングステン合金など陽極ターゲット35より融点の高い金属で形成されている。陽極ターゲット35には、陰極36に対して相対的に正の電圧が印加される。ここでは陽極ターゲット35は接地電位(0V)に設定されている。
真空外囲器31は、陽極ターゲット35及び陰極36を収容している。真空外囲器31は、真空容器32、枠部110、X線放射窓33及び金属表面部34を有している。真空外囲器31の内部は真空状態である。真空容器32は、銅、ステンレス、アルミニウム等の金属、及びガラス、セラミクス等の絶縁物で形成されている。
枠部110は、非磁性の金属で枠状に形成されている。この実施形態において、枠部110は、銅で形成されている。枠部110を形成する材料としては、熱伝導性に優れ、かつ比較的安価な銅又は銅合金が好適である。枠部110は、利用X線束の軌道を取り囲んでいる。枠部110の一方の開口部は、真空容器32に気密に設けられている。
X線放射窓33は、枠部110に対して陽極ターゲット35の反対側に位置している。X線放射窓33は、枠部110の他方の開口部に気密に設けられている。X線放射窓33は利用X線束を透過させるものである。
この実施形態において、X線放射窓33は、ベリリウムで形成されている。X線放射窓33のX線透過方向の厚みは、0.1乃至2mmである。その他、X線放射窓33は、アルミニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、クロム鋼、鉄合金のうちの何れか1つを主成分として形成することも可能である。上記のように、X線放射窓33を形成する材料は、ベリリウムより安価な材料に代替可能である。
金属表面部34は、真空側のX線放射窓33の表面側を含む真空外囲器31の内側に設けられている。ここでは、金属表面部34は、接地電位(0V)に設定されている。
磁気偏向部100は、枠部110の外側に配置されている。磁気偏向部100は、焦点FからX線放射窓33に向かって放出される反跳電子を偏向させ枠部110の反跳電子捕捉壁120の内面に衝撃させる磁場Ha1をつくる。
磁気偏向部100は、2個の磁極101と、磁極101を接続したヨーク102と、ヨーク102に巻かれたコイル103とを有している。
この実施形態において、磁気偏向部100は、電磁石を利用しているが、これに限定されるものではなく永久磁石を利用するものであってもよい。磁気偏向部100は、磁場Ha1により反跳電子に作用するローレンツ力を利用するものである。
偏向電源105は、磁気偏向部100のコイル103に電流を供給するものである。磁気偏向部100及び偏向電源105は、偏向磁場発生ユニットを形成している。
冷却液7は、反跳電子捕捉壁120の外面に位置した冷却路を流れる。冷却液7には、反跳電子捕捉壁120が発生する熱の少なくとも一部が伝達される。この実施形態において、反跳電子捕捉壁120を壁の一部とする熱伝導性に優れた容器130が取り付けられ、冷却路は容器130の内部に形成されている。
冷却器3は、ホースなどの導管を介して容器130に連通されている。冷却器3は、容器130内の冷却液7を放熱及び循環させるものである。冷却器3は、ポンプ4及び熱交換器5を有している。ポンプ4は、容器130側から取り入れた冷却液7を熱交換器5に吐出し、容器130内の冷却液7を循環させる。熱交換器5は、供給される冷却液7を冷却する。
これにより、反跳電子が衝突する反跳電子捕捉壁120において発生する熱は、冷却液7を介して、X線管30の外部へ放出される。そして、反跳電子が衝突することにより反跳電子捕捉壁120に生じる熱の多くをX線管30の外部に放出できるものである。
偏向部70は、陰極36から放出される電子ビームを第1方向d1に偏向させる。このため、陰極36が第1方向d1と異なる第4方向d4に向けて電子ビームを放出する場合であっても、電子ビームを第1方向d1からターゲット面35bに入射させることができる。言い換えると、ターゲット面35bに対する陰極36の位置にかかわること無しに、電子ビームを第1方向d1からターゲット面35bに入射させることができる。
この実施形態において、偏向部70は、磁気偏向部であり、永久磁石を利用している。なお、偏向部70は電磁石を利用するものであってもよい。
偏向部70は、真空外囲器31の外側で、電子ビームの軌道を取り囲む位置に設けられている。偏向部70は、磁場Hb1により運動する電子に作用するローレンツ力を利用するものである。ここでは、偏向部70は、電子ビームを60°から90°近くまで偏向させている。
ここで、焦点Fが形成される位置のターゲット面35bに接する平面を第1平面S1とする。利用X線束の中心を通り、X線の進行方向に平行な方向を第2方向d2とする。焦点Fを通りターゲット面35bの上方を向き第1平面S1に垂直な方向を第3方向d3とする。第1方向d1及び第3方向d3を含む平面を第2平面S2とする。第2方向d2及び第3方向d3を含む平面を第3平面S3とする。
また、第1方向d1が第1平面S1からなす角度をαとする。第2方向d2が第1平面S1からなす角度をβとする。
第2平面S2及び第3平面S3が内側になす角度は、180°である。第1方向d1の第1平面S1への射影と、第2方向d2の第1平面S1への射影とは同じ向きである。
角度αは、0°より大きく40°より小さい範囲内の何れかである。なお、この実施形態において、角度αは、第4方向d4の向き及び磁場Hb1の大きさに依存している。角度βは、特に限定されるものではないが、例えば、5°乃至25°の範囲内に設定されている。この実施形態において、角度αは30°であり、角度βは15°である。
なお、この実施形態において、磁場Ha1及び磁場Hb1の向きは同一である。X線放射窓33側から枠部110に視点をおいた場合を仮定すると、磁場Ha1の向きは、第3平面S3(第2平面S2)に垂直である左向きである。X線放射窓33側から電子ビームの軌道に視点をおいた場合を仮定すると、磁場Hb1の向きは、第2平面S2(第3平面S3)に垂直である左向きである。
X線管30には、高電圧電源15が接続されている。高電圧電源15は、陰極36及び陽極ターゲット35間に高電圧を供給するためのものである。この実施形態において、高電圧電源15は、陰極36にのみ負の高電圧を供給する。
X線管30の陰極36及び陽極ターゲット35間に、管電圧Vが印加されている。陽極ターゲット35の電位をVA、陰極36の電位をVCとすると、管電圧Vは、VA−VCである。管電圧Vは、20kV乃至150kVである。
この実施形態において、高電圧電源15は、陰極36に−Vの電圧を供給している。陽極ターゲット35、及びX線放射窓33を含む真空外囲器31の金属部は接地されている(0V)。
陰極36の電位は、−Vに限定されるものではなく、−V乃至0Vの範囲内の何れかに設定されていればよい(−V≦VC≦0)。陽極ターゲット35の電位は、接地電位に限定されるものではなく、接地電位以上、+V以下の範囲内の何れかに設定されていればよい(0≦VA≦+V)。X線放射窓33を含む真空外囲器31の金属部は接地されていればよい。
このように構成されたX線管30では、例えば、陰極36に−100kV以上の負の高電圧を印加する。陽極ターゲット35及び真空外囲器31の金属部は接地されている。陰極36の電子放出源36aには、電流がさらに与えられる。
これにより陰極36から放出される電子ビームは、偏向部70により偏向され、陽極ターゲット35のターゲット面35bに入射される。そして、ターゲット面35bに形成される焦点FからX線が放射され、X線は、X線放射窓33を透過して外部へ放射される。
上記のように構成された第1の実施形態に係るX線管装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、磁気偏向部100と、冷却液7と、を備えている。X線管30は、陽極ターゲット35と、陰極36と、真空外囲器31とを備えている。陰極36は負の高電位に設定され、陽極ターゲット35と、X線放射窓33を含む真空外囲器31とは接地されている。
第4方向d4は、ターゲット面35bに垂直であるが、偏向部70による磁場Hb1の作用により、角度αを30°とし、第1方向d1から電子ビームをターゲット面35bに入射させることができる。ターゲット面35bに対して比較的浅い角度で電子ビームを入射させて焦点Fを形成させているため、X線放射窓33から放出されるX線出力を増大させることができる。角度αがより小さい程、より大きなX線出力が得られる。
第1方向d1の第1平面S1への射影と、第2方向d2の第1平面S1への射影とは同じ向きである。このため、X線放射窓33から放出されるX線出力を一層増大させることができる。
反跳電子は、入射電子があたかもターゲット面35bで鏡面反射する方向に最も多くなることから、焦点FからX線放射窓33に向かう方向に多くなるような角度分布をもって飛び出すことになる。ターゲット面35bの上方への反跳電子の散乱を低減できるため、焦点F近傍を含むターゲット面35bへの反跳電子の再衝突を抑制することができる。これにより、ターゲット面35b(焦点F)の温度上昇や、ターゲット面35bに引き起こされる荒れを抑制でき、放電の発生やX線の出力低下を抑制することができる。さらに、焦点F以外からのX線の放射を抑制できるため、X線画像の明瞭度の低下を抑制することができる。上記の効果は、角度αが0°より大きく60°より小さい範囲内の何れかである場合に得ることができる。
上記の効果をより高めるためには、角度αが0°より大きく40°より小さい範囲内の何れかであることがより好ましい。
第2平面S2及び第3平面S3が内側になす角度は、180°である。真空外囲器31は、枠部110を有している。磁気偏向部100は、磁場Ha1をつくることができる。反跳電子は焦点FからX線放射窓33に向かう方向に多くなるが、磁場Ha1により反跳電子を偏向することができるため反跳電子を枠部110の反跳電子捕捉壁120の内面に衝撃させることができる。
これにより、X線放射窓33への反跳電子の直撃を低減することができ、X線放射窓33の加熱を抑制することができる。X線放射窓33の温度上昇を確実に低減することができる。そして、X線放射窓33の破損を防止することができ、ひいては真空外囲器31の真空破壊を防止することができる。
反跳電子が反跳電子捕捉壁120の内面を衝撃することにより、反跳電子捕捉壁120に熱が発生するが、反跳電子捕捉壁120が発生する熱の少なくとも一部を冷却液7に伝達することができる。このため、反跳電子捕捉壁120(枠部110)の破損を防止することができ、ひいては真空外囲器31の真空破壊を防止することができる。
上記のことから、X線出力を増大させることができ、X線放射窓33への反跳電子の直撃を抑制することができるX線管装置を得ることができる。また、より頻繁にX線を放出させたり、より長時間に亘ってX線を連続的に放出させたりすることが可能となる。さらに、X線放射窓33の厚みを減少させたり、X線放射窓33を形成する材料を、より安価なアルミニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、クロム鋼、鉄合金のうちの何れか1つに代替したりすることが可能となる。
次に、上記第1の実施形態に係るX線管装置の偏向部70の変形例について説明する。偏向部70は、磁場Hb1を作用させたが、これに限定されるものではなく種々変形可能であり、陰極36から放出される電子ビームの向き(第4方向d4)に応じて1以上の磁場を作用させ、ターゲット面35bに第1方向d1から電子ビームを入射することができればよい。偏向部70は、磁場の替わりに電界を利用することにより、対応することも可能である。
次に、上記第1の実施形態に係るX線管装置のターゲット面35bの変形例について説明する。ターゲット面35bは、平面に限らず、円錐面であってもよい。ターゲット面35bが円錐面の場合とは、例えば、X線管30が回転陽極型のX線管であり、陽極ターゲット35が円盤状に形成され、ターゲット面35bが、陽極ターゲット35の一端面を形成している場合が挙げられる。
次に、上述した第1の実施形態に係るX線管装置の変形例であり、ターゲット面35b上を焦点Fを移動させる場合ついて説明する。
X線管装置は、焦点Fがターゲット面35b上を周期的に移動するように電子ビームを偏向させる他の偏向部をさらに備えていてもよい。上記他の偏向部は、偏向部70の磁場Hb1が作用する領域より陰極36に近い領域で、電子ビームを偏向させるものである。
例えば、図4及び図5に示すように、X線管装置10は、偏向電源85及び偏向電源制御部86をさらに備えている。X線管装置10は、他の偏向部としての偏向部80をさらに備えている。
偏向部80は、偏向部70の磁場Hb1が作用する領域より陰極36に近い領域で、電子ビームを偏向させるものである。偏向部80は、真空外囲器31の外側で、電子ビームの軌道を取り囲む位置に設けられている。偏向部80は、第4方向d4に向かう電子ビームに磁場Hb2を作用させ、偏向角θが得られるよう、上記電子ビームを偏向させるものである。
偏向電源85は偏向部80のコイルに電流を供給するものである。偏向電源制御部86は、偏向電源85が偏向部80に供給する電圧を制御するものである。偏向部80、偏向電源85及び偏向電源制御部86は、焦点位置移動用の偏向磁場発生ユニットを形成している。
偏向電源制御部86は、焦点Fが連続的又は間欠的に移動するよう偏向電源85が偏向部80に供給する電流を制御することができる。偏向部80は、制御された電流が供給されることにより、陰極36から放出される電子ビームを第3平面S3に沿った方向に偏向させ、焦点Fの位置を第3平面S3に沿ったターゲット面35b上で移動させることができる。言い換えると、偏向部80は、電子ビームをターゲット面35b上を周期的(連続的又は間欠的)に走査させることができる。
また、X線管装置をCT装置に搭載した場合、焦点位置を切り替えながらスキャンを行うことができるため、フライングフォーカス(焦点位置シフト)方式のCT装置に応用することができる。
さらに、電子ビームは、偏向部80によってターゲット面35bを十分速い速度で走査することにより、焦点F温度の上昇を軽減することができる。
角度αが90°付近(90°±20°)の場合、焦点Fの位置を移動させるため、電子ビームの偏向角θを比較的大きくする必要がある。このため、偏向電源85は偏向部80に比較的大きい電流を供給する必要がある。この場合、電子ビームをエネルギ効率よく偏向できるX線管装置を実現することができない。
これに対し、角度αが0°より大きく40°より小さい範囲内の何れかである場合、角度αを90°付近とした場合に比べ、焦点Fを同じ距離だけ移動させるための電子ビームの偏向角θを小さくすることができる。すなわち、偏向電源85が偏向部80に供給する電流を小さくすることができるため、電子ビームをエネルギ効率よく偏向することができる。
次に、第2の実施形態に係るX線管装置について説明する。この実施形態において、X線管は回転陽極型のCT用のX線管であり、以下、回転陽極型のCT用のX線管を備えたCT用のX線管装置について説明する。この実施形態において、上記第1の実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図6及び図7に示すように、X線管装置10は、ハウジング20と、ハウジング20内に収納されたX線管30と、ハウジング20の内部に充填され、X線管30及びハウジング20間を満たす冷却液7と、回転駆動装置としてのステータコイル910と、偏向部70と、偏向部80と、焦点位置補正部90と、磁気偏向部100とを備えている。
ハウジング20は、ハウジング本体20aと、蓋部20bとを有している。ハウジング本体20aは、開口端の外縁側に形成された枠状の溝部を有している。ハウジング本体20aの開口端の外縁側は、蓋部20bに対向し接触している。ハウジング本体20a及び蓋部20bは図示しない締め具により締め付けられている。ハウジング本体20a及び蓋部20b間の隙間は、上記溝部に設けられた枠状のOリングにより液密にシールされている。上記Oリングは、ハウジング20外部への冷却液7の漏れを防止する機能を有している。
ハウジング20は、X線を透過しハウジング20外部に放射するX線放射口24を有している。ハウジング20は、ハウジング本体20aの内面に固定された支持部材22及び支持部材23を有している。
支持部材22には真空外囲器31が固定されるため、支持部材22は真空外囲器31(X線管30)を支持するものである。支持部材22は、環状に形成され、開口部22oを有している。支持部材23にはステータコイル910が固定されるため、支持部材23はステータコイル910を支持するものである。支持部材23は、環状に形成され、開口部23oを有している。開口部22o、23oは、冷却液7の流路を形成している。
X線管30は、真空外囲器31を備えている。真空外囲器31は、支持部材26と、金属で形成された真空容器32と、支持部材40と、絶縁部材50とを備えている。この実施形態において、絶縁部材50は、高電圧絶縁部材で形成されている。支持部材40には陽極ターゲット35が間接的に取り付けられ、絶縁部材50には陰極36が間接的に取り付けられている。陰極36は、陽極ターゲット35に電子ビームを放射するものである。陽極ターゲット35及び陰極36は、真空外囲器31に収納されている。真空外囲器31の内部は真空状態である。
枠部110は、非磁性の金属で枠状に形成されている。この実施形態において、枠部110は、銅で形成されている。銅以外の材料としては、例えば、銅合金、グリッドコップ、モリブデン、モリブデン合金、銅タン(スポンジ構造のタングステン材に銅を含浸させた材料)を挙げることができる。枠部110は、利用X線束の軌道を取り囲んでいる。枠部110の一方の開口部は、真空容器32に気密に設けられている。
図3、図6及び図7に示すように、枠部110は、第3平面S3に直交する方向に長軸を、第2方向d2に直交し第3平面S3に平行な方向に短軸をそれぞれ持っている。この実施形態において、短軸は、X線管30の管軸に平行である。枠部110は、長軸に沿った方向に対向した第1側壁111及び第2側壁112、並びに短軸に沿った方向に対向した天井壁113及び底壁114をそれぞれ有している。この実施形態において、枠部110は矩形枠状に形成されているため、第1側壁111、第2側壁112、天井壁113及び底壁114は、それぞれ平板状に形成されている。
この実施形態において、反跳電子は、天井壁113の内面を衝撃するため、反跳電子捕捉壁120は天井壁113で形成されている。
反跳電子捕捉壁120の内面は、凹凸面である。凹凸面は、反跳電子捕捉壁120の表面に形成された複数の突出部で形成されている。複数の突出部は、第3平面S3に沿った方向に並べられ、第3平面S3に垂直な方向に延出して形成されている。
焦点Fから飛び出した反跳電子の半分は反跳電子捕捉壁120で捕捉され、残りの半分は反跳電子捕捉壁120で反射される。しかしながら、反跳電子捕捉壁120は凹凸面を有しているため、多重反射により、反跳電子の残りの半分も凹凸面で、より多く捕捉することができる。
X線放射窓33は、枠部110に対して陽極ターゲット35の反対側に位置している。X線放射窓33は、第3平面S3に直交する方向に長軸を持つ矩形の平板状に形成されている。X線放射窓33は、枠部110の他方の開口部に気密に設けられている。X線放射窓33は、利用X線束を透過させる位置に配置されている。ここでは、X線放射窓33は、ベリリウムで形成されている。
金属表面部34は、真空側のX線放射窓33の表面側を含む真空容器32の内側に設けられ、接地電位に設定される。
陽極ターゲット35は、円盤状に形成されている。陽極ターゲット35は、モリブデンなどの金属で形成されている。陽極ターゲット35は、この陽極ターゲットの外面の一部に設けられたターゲット層35aを有している。ターゲット層35aには、陰極36から放射される電子ビームが第1方向d1から衝突されることにより第2方向d2に利用X線束を放出する焦点Fが形成される。ターゲット層35aは、モリブデン、モリブデン合金、タングステン合金等の金属で形成されている。ターゲット層35aはターゲット面35bを有している。ターゲット面35bは円錐面である。陽極ターゲット35は、回転軸A(管軸)を中心に回転可能である。
この実施形態において、陽極ターゲット35は接地電位に設定される。陽極ターゲット35が焦点Fから放出する利用X線束の形状はファンビーム形状であり、利用X線束は、第2方向d2に直交し第3平面S3に平行な方向の長さが第3平面S3に直交する方向の長さより短い。
真空容器32の内側には、集束電極9が位置している。集束電極9は、電子ビームを集束するものである。集束電極9は、陰極36から焦点Fに向かう電子ビームの軌道を取り囲む円形の開口を有している。集束電極9は、例えば、真空容器32により固定されている。集束電極9は、真空容器32との電気絶縁性を保持するように設けられ、少なくとも金属表面部34との電気絶縁性を保持するように設けられている。なお、集束電極9は、陰極支持部材37に取り付けられていてもよい。集束電極9には、調整された負の高電圧が供給される。
真空容器32の内側には、加速電極8が位置している。加速電極8は、陰極36及び集束電極9から焦点Fに向かう電子ビームの軌道を取り囲む円形の開口を有している。加速電極8は、電子ビームを加速させてターゲット面35bに入射させるものである。加速電極8は真空容器32に取り付けられ、加速電極8の電位は真空容器32及び陽極ターゲット35と同電位(接地電位)に固定されている。
図6に示すように、X線管30は、ロータ920、軸受け930、固定体1及び回転体2を備えている。軸受け930は、固定体1及び回転体2間に設けられている。固定体1は一端が閉塞された円筒状に形成され、支持部材40に固定されている。固定体1は回転体2を回転可能に支持する。回転体2は筒状に形成され、固定体1及び陽極ターゲット35と同軸的に設けられている。回転体2の外面にロータ920が取り付けられている。回転体2及び陽極ターゲット35は、継手部35cを介して接合されている。回転体2は、陽極ターゲット35とともに回転可能に設けられている。
陽極ターゲット35の回転軸は、焦点Fに対してX線放射窓33の反対側に位置している。なお、この実施形態において、焦点Fは、上記回転軸を中心とする陽極ターゲット35の回転方向に対して直交した長軸を有している。
支持部材40は、真空外囲器31の一部を形成している。支持部材40は、筒部46と、筒部46の一端側に位置した底部47とが一体となって形成されている。筒部46の他端は、真空容器32に気密に接合されている。筒部46は、非磁性の金属(導体)で形成されている。
支持部材26は、円環状に形成され、真空容器32に気密に接続されている。支持部材26は絶縁部材50に接着されている。支持部材26は、蓋部20b(ハウジング20)の開口に対向している。なお、支持部材26と対向した側の蓋部20bには円環状の溝部が形成されている。支持部材26及び蓋部20b間の隙間は、上記溝部に設けられた円環状のOリングによりシールされている。上記Oリングは、支持部材26及び蓋部20b間の隙間から外部への冷却液7の漏れを防止する機能を有している。
絶縁部材50は、支持部材26に気密に取り付けられ、真空外囲器31の一部を形成している。絶縁部材50は、ハウジング20の外部に露出した外部端面50Sを有している。この実施形態において、外部端面50Sは平面である。
陰極36には陰極支持部材37が接続されている。
絶縁部材50の内部には電圧供給端子54が設けられている。電圧供給端子54は、外部端面50Sを貫通している。電圧供給端子54は、陰極支持部材37の内部を通って陰極36に接続されている。この実施形態において、電圧供給端子54は高電圧供給端子である。電圧供給端子54は、陰極36に負の高電圧を印加するともに陰極36の電子放出源36aに電圧及び電流を供給するものである。
ケーブル502は、ハウジング20の開口部に設けられた絶縁部材20eにより固定されている。ケーブル502は、支持部材40に電気的に接続されている。ケーブル502は、支持部材40等を介して真空容器32(真空外囲器31)を接地電位に設定する他、陽極ターゲット35などを接地電位に設定するものである。
高電圧コネクタ200は、有底筒状のハウジング201と、ハウジング201内にその先端が挿入されたケーブル202と、ハウジング201内に充填され、ケーブル202の端子をハウジング201の開口部側に向けて固定するエポキシ樹脂材製の固定部203と、この固定部203と絶縁部材50の外部端面50Sとの間に挿入されたシリコーン樹脂材製のシリコーンプレート204とを備えている。この実施形態において、ケーブル202は高電圧ケーブルである。固定部203は、電気絶縁材である。
この実施形態において、高電圧コネクタ200の電気絶縁材としての固定部203は、絶縁部材50の外部端面50Sに間接的に密着されている。なお、固定部203は、外部端面50Sに直接密着されていても良い。高電圧コネクタ200は、電圧供給端子54に高電圧を与えるものである。
このように構成されたX線管装置10では、次のように用いられる。高電圧コネクタ200をハウジング20に取り付ける際に、シリコーンプレート204が、それぞれ固定部203と、絶縁部材50の外部端面50Sとに密着するように押圧する。
X線遮蔽部としてのX線遮蔽キャップ400は、高電圧コネクタ200を覆うようにハウジング20に着脱可能に取り付けられている。X線遮蔽キャップ400は、X線不透過材を含む材料で形成されている。
冷却液7は、ハウジング20内に充填され、X線管30及びハウジング20間を満たしている。このため、反跳電子捕捉壁120の外面に位置するように、ハウジング20内に冷却液7の流れる冷却路を形成することができる。冷却液7としては、絶縁油又は水系冷却液を用いることができる。ここでは、冷却液7として水系冷却液を用いている。
この実施形態において、冷却液7の流れる冷却路は、固定体1の内部にも形成されている。固定体1の内部には、管部41が位置している。管部41は、固定体1の内面に間隔を置いて設けられている。管部41の一端部は、固定体1(真空外囲器31)の外部に延出している。固定体1及び管部41は、これらの間に冷却液7を導入するための導入路を形成している。管部41は、この内部に、冷却液7を排出するための排出路を形成している。
ハウジング20には、冷却液7の導入口20i及び排出口20oが形成されている。導入口20iは、反跳電子捕捉壁120に対向して位置している。排出口20oは、ホース42を介して管部41に連通されている。
ハウジング20の外部には、図2に示した冷却器3が設けられ、ハウジング20の導入口20i及び排出口20oに連結されている。このため、冷却液7は、導入口20iからハウジング20内に導入され、排出口20oからハウジング20外に排出される。
この実施形態において、冷却液7は、ハウジング20内に導入された後に固定体1内に導入されるが、これに限らず、固定体1内に導入された後にハウジング20内に導入され、反跳電子捕捉壁120の外面側を流れるようにガイドされてもよい。
冷却液7は、導入口20iから反跳電子捕捉壁120の外面に噴出される。冷却液7は、反跳電子捕捉壁120の外面に垂直な方向に噴出される。反跳電子が衝撃され、熱を発生する反跳電子捕捉壁120の外面に衝突噴流を作用させることができるため、反跳電子捕捉壁120を冷却し易くすることができる。
図3及び図6に示すように、陰極36は、第4方向d4に電子ビームを放出する。この実施形態において、第4方向d4は管軸に沿った方向である。
偏向部70は、電磁石を利用している。偏向部70のコイルには、図示しない偏向電源から電流が供給される。偏向部70は電子ビームに磁場Hb1を作用させ、電子ビームをターゲット面35bに第1方向d1から入射させる。角度αは、0°より大きく40°より小さい範囲内の何れかである。X線放射窓33側から偏向部70に視点をおいた場合を仮定すると、磁場Hb1の向きは、第2平面S2に垂直である左向きである。
図6に示すように、偏向部80は、電磁石を利用している。偏向部80は、図4に示した偏向電源85及び偏向電源制御部86とともに、焦点位置移動用及び焦点位置微調整用の偏向磁場発生ユニットを形成している。
偏向部80は、偏向部70の磁場Hb1が作用する領域より陰極36に近い領域で、電子ビームを偏向させるものである。偏向部80は、真空外囲器31の外側で、電子ビームの軌道を取り囲む位置に設けられている。偏向部80は、第1平面S1に平行であり、第2平面S2に垂直な方向に磁場Hb2を作用させるものである。
焦点位置移動用として機能する偏向部80は、焦点Fがターゲット面35b上を第3平面S3に沿った方向において周期的に移動するように電子ビームを偏向させるものである。
焦点位置補正部90は、真空容器32の外側で、電子ビームの軌道を取り囲む位置に設けられている。焦点位置補正部90は、偏向部70の磁場Hb1が作用する領域より陰極36に近い領域に、磁場Hb3を発生させる。磁場Hb3の向きは、磁場Hb2に直交し、第4方向d4に交差する方向である。ここでは、磁場Hb3の向きは、第4方向d4にも直交する方向である。
焦点位置移動用として機能する焦点位置補正部90は、焦点Fがターゲット面35b上を第2平面S2に直交する方向において周期的に移動するように電子ビームを偏向させるものである。
図示しないが、X線管装置は、焦点位置補正部90に電流を供給する偏向電源と、偏向電源が焦点位置補正部90に供給する電流を制御する偏向電源制御部とをさらに備えている。焦点位置補正部90、偏向電源及び偏向電源制御部は、焦点位置移動用の他の偏向磁場発生ユニットを形成している。
図3、図6及び図7に示すように、磁気偏向部100は、枠部110の外側に配置され、底壁114に対向している。磁気偏向部100は、焦点FからX線放射窓33に向かって放出される反跳電子を偏向させ枠部110の反跳電子捕捉壁120の内面に衝撃させる磁場Ha1をつくる。
磁気偏向部100は、2個の磁極101と、磁極101を接続したヨーク102と、ヨーク102に巻かれたコイル103とを有している。磁気偏向部100は、図2に示した偏向電源105とともに偏向磁場発生ユニットを形成している。
X線放射窓33側から枠部110に視点をおいた場合を仮定すると、磁場Ha1の向きは、第3平面S3に垂直である左向きである。この実施形態において、上記左向きは、第2側壁112から第1側壁111に向かう方向であると言い換えることができる。
このように構成されたX線管装置10では、ステータコイル910に所定の電流を印加することでロータ920が回転し、陽極ターゲット35が回転する。次に、高電圧コネクタ200に所定の高電圧を印加する。
ケーブル502を介し、真空外囲器31、固定体1、軸受け930、回転体2、継手部35c、及び陽極ターゲット35は接地電位に設定される。高電圧コネクタ200に印加された高電圧は、電圧供給端子54を介して陰極36に与えられる。陰極36の電位は、−Vに設定される。陽極ターゲット35は、0Vに設定される。
これにより、陰極36から放出された電子ビームは、磁場Hb1により偏向され、陽極ターゲット35のターゲット面35bに入射され、ターゲット面35bに焦点Fが形成される。焦点Fの位置は、磁場Hb2により補正することが可能である。そして、焦点Fは、磁場Hb2、Hb3により、ターゲット面35b上を周期的に移動する。焦点Fから放射される利用X線束は、X線放射窓33及びX線放射口24を透過して外部へ放射される。
上記のように構成された第2の実施形態に係るX線管装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、磁気偏向部100と、冷却液7と、を備えている。X線管30は、陽極ターゲット35と、陰極36と、真空外囲器31とを備えている。陰極36は負の高電位に設定され、陽極ターゲット35と、X線放射窓33を含む真空外囲器31とは接地されている。
偏向部70による磁場Hb1の作用により、角度αを0°より大きく40°より小さい範囲内とし、第1方向d1から電子ビームをターゲット面35bに入射させることができる。第2平面S2及び第3平面S3が内側になす角度は、180°である。第1方向d1の第1平面S1への射影と、第2方向d2の第1平面S1への射影とは同じ向きである。 焦点FからX線放射窓33に向かう反跳電子は、磁気偏向部100による磁場Ha1の作用により偏向され、枠部110の反跳電子捕捉壁120の内面に衝撃される。反跳電子捕捉壁120の外面は、冷却液7により冷却される。
このため、第2の実施形態に係るX線管装置は、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
偏向部70は電子ビームに磁場Hb1を作用させることができるため、陰極36を管軸に沿った方向に立たせた状態にして配置することができる。このため、陰極36を第1平面S1に概ね平行となるように寝かせた状態にして配置する場合に比べて、管軸に直交した方向のX線管30のサイズをよりコンパクトにすることができる。
偏向部80及び焦点位置補正部90は、電子ビームをターゲット面35b上を周期的(連続的又は間欠的)に走査させることができる。X線管装置をCT装置に搭載した場合、焦点位置を切り替えながらスキャンを行うことができるため、フライングフォーカス方式のCT装置に応用することができる。また、電子ビームは、偏向部80及び焦点位置補正部90によってターゲット面35bを十分速い速度で走査されるため、焦点F温度の上昇を軽減することができる。
冷却液7として、熱伝達率が最も高い、水を主成分とする水系冷却液を用いることができる。このため、冷却液7は、反跳電子捕捉壁120、ステータコイル910、磁気偏向部100、偏向部70、80、及び焦点位置補正部90に生じる熱などを最も有効に奪うことができる。また、水系冷却液は、絶縁油に比べて、比熱が大きい(絶縁油の約2倍)ため、冷却液7の温度上昇が低く抑えられる。また、水系冷却液の核沸騰領域で冷却する場合、さらに高い冷却性能を得ることもできる。
支持部材40は冷却液7に接するため、陽極ターゲット35からの熱を効果的に冷却液7に放散することができる。支持部材26は冷却液7に接するため、陰極36から絶縁部材50に伝わった熱を効果的に冷却液7に放散でき、絶縁部材50に接続された高電圧コネクタ200の温度を低くでき、長期にわたって高電圧コネクタ200の絶縁性を確保することができる。
上記のことから、X線出力を増大させることができ、X線放射窓33への反跳電子の直撃を抑制することができるX線管装置を得ることができる。また、より頻繁にX線を放出させたり、より長時間に亘ってX線を連続的に放出させたりすることが可能となる。
次に、第3の実施形態に係るX線管装置について説明する。この実施形態において、X線管は回転陽極型のCT用X線管であり、以下、回転陽極型のCT用X線管を備えたCT用X線管装置について説明する。この実施形態において、上述した実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
第3の実施形態に係るX線管装置は、図8及び図9に示す通りであり、X線管装置の構成は、上述した実施形態を参照することにより、図8及び図9より大まかに了解できるものである。次に、第2の実施形態に係るX線管装置との相違点について説明する。
図8及び図9に示すように、ハウジング20は、X線管30やステータコイル910などを収容するため、図示しない複数の分割部で形成されている。X線管30やステータコイル910などを収容した後に複数の分割部を液密にシールすることにより、ハウジング20が形成されている。
排出口20oは、偏向部70の付近に位置している。
固定体1は、円柱状に形成され、ケーブル502に電気的に接続されている。
ハウジング20内には、冷却液7で満たされる空間と、他の冷却液6で満たされる空間とが隔離されている。ここでは、冷却液7は水系冷却液であり、冷却液6は絶縁油である。
この実施形態において、上記2つの区間を隔離するため、枠状のOリングを介して真空容器32(X線管30)を支持部材22にねじ止めされている。ここでは、Oリングは、支持部材22に形成された溝部に設けられている。ハウジング20内部において、冷却液6で満たされる空間にはゴムベローズ21が設けられ、冷却液6の圧力調整が行われている。
上記のように構成された第3の実施形態に係るX線管装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、磁気偏向部100と、冷却液7と、を備えている。X線管30は、陽極ターゲット35と、陰極36と、真空外囲器31とを備えている。陰極36は負の高電位に設定され、陽極ターゲット35と、X線放射窓33を含む真空外囲器31とは接地されている。
偏向部70による磁場Hb1の作用により、角度αを0°より大きく40°より小さい範囲内とし、第1方向d1から電子ビームをターゲット面35bに入射させることができる。第2平面S2及び第3平面S3が内側になす角度は、180°である。第1方向d1の第1平面S1への射影と、第2方向d2の第1平面S1への射影とは同じ向きである。
焦点FからX線放射窓33に向かう反跳電子は、磁気偏向部100による磁場Ha1の作用により偏向され、枠部110の反跳電子捕捉壁120の内面に衝撃される。反跳電子捕捉壁120の外面は、冷却液7により冷却される。
このため、第3の実施形態に係るX線管装置は、上記第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
X線管装置10は、冷却液6及び冷却液7の2種類の冷却液を同時に利用することができる。ステータコイル910及びステータコイル910への通電系統(図示せず)は冷却液6の絶縁油に浸っているため、モールド等の特別の対策をすることなく、電気絶縁性を確保することができる。
上記のことから、X線出力を増大させることができ、X線放射窓33への反跳電子の直撃を抑制することができるX線管装置を得ることができる。また、より頻繁にX線を放出させたり、より長時間に亘ってX線を連続的に放出させたりすることが可能となる。
次に、第4の実施形態に係るX線管装置について説明する。この実施形態において、X線管は回転陽極型のCT用X線管であり、以下、回転陽極型のCT用X線管を備えたCT用X線管装置について説明する。この実施形態において、上述した実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
第4の実施形態に係るX線管装置は、図10乃至図13に示す通りであり、X線管装置の構成は、上述した実施形態を参照することにより、図10乃至図13より大まかに了解できるものである。次に、第2の実施形態に係るX線管装置との相違点について説明する。
図10乃至図13に示すように、磁気偏向部100は、枠部110の外側に配置され、底壁114、第1側壁111、及び第2側壁112に対向している。磁気偏向部100は、焦点FからX線放射窓33に向かって放出される反跳電子を偏向させ枠部110の反跳電子捕捉壁120の内面に衝撃させる磁場Ha1、Ha2、Ha3をつくる。
磁気偏向部100は、2個の磁極101aと、磁極101aを接続したヨーク102aと、ヨーク102aに巻かれたコイル103aとを有し、底壁114に対向した1つ目の電磁石により、磁場Ha1をつくる。
磁気偏向部100は、2個の磁極101bと、磁極101bを接続したヨーク102bと、ヨーク102bに巻かれたコイル103bとを有し、第1側壁111に対向した2つ目の電磁石により、磁場Ha2をつくる。
磁気偏向部100は、2個の磁極101cと、磁極101cを接続したヨーク102cと、ヨーク102cに巻かれたコイル103cとを有し、第2側壁112に対向した3つ目の電磁石により、磁場Ha3をつくる。
磁気偏向部100のコイル103a、103b、103cには、図2に示した偏向電源105から電流が供給される。磁気偏向部100は、図2に示した偏向電源105とともに偏向磁場発生ユニットを形成している。
X線放射窓33側から枠部110に視点をおいた場合を仮定すると、枠部110の中央領域に作用される磁場Ha1の向きは、第3平面S3に垂直である左向きである。この実施形態において、上記左向きは、第2側壁112から第1側壁111に向かう方向であると言い換えることができる。枠部110の中央領域においては、磁場Ha1の作用により、反跳電子は天井壁113の内面を衝撃するため、反跳電子捕捉壁120は天井壁113で形成されている。
X線放射窓33側から枠部110に視点をおいた場合を仮定すると、第1側壁111近傍である枠部110の左側領域に作用される磁場Ha2の向きは、枠部110の短軸に沿った下向きである。この実施形態において、上記下向きは、天井壁113から底壁114に向かう方向であると言い換えることができる。枠部110の左側領域においては、磁場Ha2の作用により、反跳電子は第1側壁111の内面を衝撃するため、反跳電子捕捉壁120は第1側壁111でも形成されている。
X線放射窓33側から枠部110に視点をおいた場合を仮定すると、第2側壁112近傍である枠部110の右側領域に作用される磁場Ha3の向きは、枠部110の短軸に沿った上向きである。この実施形態において、上記上向きは、底壁114から天井壁113に向かう方向であると言い換えることができる。枠部110の右側領域においては、磁場Ha3の作用により、反跳電子は第2側壁112の内面を衝撃するため、反跳電子捕捉壁120は第2側壁112でも形成されている。
この実施形態において、天井壁113の内面だけでなく、第1側壁111の内面及び第2側壁112の内面も複数の突出部で形成された凹凸面である。第1側壁111及び第2側壁112の複数の突出部は、天井壁113の複数の突出部が並ぶ方向に同様に並べられ、天井壁113及び底壁114が対向する方向に延出して形成されている。
第1側壁111、第2側壁112及び天井壁113の外面は何れも反跳電子捕捉壁120であり冷却液7に接しているため、第1側壁111、第2側壁112及び天井壁113に生じる熱を冷却液7に伝達することができる。特に、天井壁113の外面には衝突噴流を作用させることができるため、天井壁113を冷却し易くすることができる。
上記のように構成された第4の実施形態に係るX線管装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、磁気偏向部100と、冷却液7と、を備えている。X線管30は、陽極ターゲット35と、陰極36と、真空外囲器31とを備えている。陰極36は負の高電位に設定され、陽極ターゲット35と、X線放射窓33を含む真空外囲器31とは接地されている。
偏向部70による磁場Hb1の作用により、角度αを0°より大きく40°より小さい範囲内とし、第1方向d1から電子ビームをターゲット面35bに入射させることができる。第2平面S2及び第3平面S3が内側になす角度は、180°である。第1方向d1の第1平面S1への射影と、第2方向d2の第1平面S1への射影とは同じ向きである。
焦点FからX線放射窓33に向かう反跳電子は、磁気偏向部100による磁場Ha1、Ha2、Ha3の作用により偏向され、枠部110の第1側壁111、第2側壁112及び天井壁113の内面に衝撃される。第1側壁111、第2側壁112及び天井壁113の外面は、冷却液7により冷却される。
このため、第4の実施形態に係るX線管装置は、上記第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、枠部110の左側領域及び右側領域においても、より多くの反跳電子を反跳電子捕捉壁120に衝撃させることができる。そして、反跳電子の衝突個所を天井壁113にだけでなく第1側壁111及び第2側壁112にも分散することができるため、天井壁113に生じる熱的な悪影響を低減することができる。
上記のことから、X線出力を増大させることができ、X線放射窓33への反跳電子の直撃を抑制することができるX線管装置を得ることができる。また、より頻繁にX線を放出させたり、より長時間に亘ってX線を連続的に放出させたりすることが可能となる。
次に、第5の実施形態に係るX線管装置について説明する。この実施形態において、X線管は回転陽極型のX線管であり、以下、回転陽極型のX線管を備えた回転陽極型のX線管装置について説明する。この実施形態において、上述した実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
第5の実施形態に係るX線管装置は、図14乃至図16に示す通りであり、X線管装置の構成は、上述した実施形態を参照することにより、図14乃至図16より大まかに了解できるものである。次に、第2の実施形態に係るX線管装置との相違点について説明する。
図14乃至図16に示すように、磁気偏向部100は、枠部110の外側に配置され、底壁114及び天井壁113に対向している。磁気偏向部100は、焦点FからX線放射窓33に向かって放出される反跳電子を偏向させ枠部110の反跳電子捕捉壁120の内面に衝撃させる磁場Ha1、Ha4をつくる。
磁気偏向部100は、2個の磁極101aと、磁極101aを接続したヨーク102aと、ヨーク102aに巻かれたコイル103aとを有し、底壁114に対向した1つ目の電磁石により、磁場Ha1をつくる。
磁気偏向部100は、2個の磁極101dと、磁極101dを接続したヨーク102dと、ヨーク102dに巻かれたコイル103dとを有し、天井壁113に対向した2つ目の電磁石により、磁場Ha4をつくる。
磁気偏向部100のコイル103a、103dには、図2に示した偏向電源105から電流が供給される。磁気偏向部100は、図2に示した偏向電源105とともに偏向磁場発生ユニットを形成している。枠部110の中央領域において、磁場Ha4の向きは、磁場Ha1の向きと同じである反跳電子捕捉壁120は天井壁113で形成されている。
磁気偏向部100は反跳電子捕捉壁120に対向して位置しているため、導入口20iは、磁気偏向部100から外れた枠部110に対向して位置している。この実施形態において、導入口20iは、第1側壁111に対向して位置している。
第1側壁111と対応した側の導入口20iの内部には、冷却液7のガイド部140が設けられている。ガイド部140は、磁気偏向部100及び枠部110間の隙間を冷却液7が流れ易くするように、冷却液7の流れをガイドするものである。これにより、反跳電子捕捉壁120を含む枠部110を冷却し易くすることができる。
陰極36は、第1方向d1に電子ビームを放出する。
X線管装置10は、上述した偏向部70、偏向部80、及び焦点位置補正部90無しに形成されている。
支持部材40は、高電圧絶縁部材で形成されている。支持部材40は、ハウジング20の外部に露出した外部端面40Sを有している。この実施形態において、外部端面40Sは平面である。
陽極ターゲット35は、円環状に形成されている。この実施の形態において、陽極ターゲット35には正の高電圧が印加される。
集束電極9は、陰極支持部材37に間接的に取り付けられている。
固定体1は、円柱状に形成され、支持部材40に固定されている。固定体1は回転体2を回転可能に支持する。固定体1は、陽極ターゲット35を貫通して形成されている。
加速電極8は固定体1に取り付けられ、加速電極8の電位は陽極ターゲット35と同電位に固定されている。
電圧供給端子44は、固定体1に接続され、外部端面40Sから突出するように設けられている。この実施形態において、電圧供給端子44は高電圧供給端子である。電圧供給端子44は、固定体1等を介して陽極ターゲット35に正の高電圧を供給するものである。
支持部材25は、円環状に形成され、支持部材40に接着されている。支持部材25はハウジング本体20a(ハウジング20)の開口に対向している。なお、支持部材25と対向した側のハウジング本体20aには円環状の溝部が形成されている。支持部材25及びハウジング本体20aの間の隙間は、上記溝部に設けられた円環状のOリングによりシールされている。上記Oリングは、支持部材25及びハウジング本体20a間の隙間から外部への冷却液7の漏れを防止する機能を有している。
高電圧コネクタ500は、有底筒状のハウジング501と、ハウジング501内にその先端が挿入されたケーブル502と、ハウジング501内に充填され、ケーブル502の端子502aをハウジング501の開口部側に向けて固定するエポキシ樹脂材製の固定部503と、この固定部503と底部47の外部端面40Sとの間に挿入されたシリコーン樹脂材製のシリコーンプレート504とを備えている。この実施形態において、ケーブル502は、高電圧ケーブルである。固定部503は、電気絶縁材である。
この実施形態において、高電圧コネクタ500の電気絶縁材としての固定部503は、底部47の外部端面40Sに間接的に密着されている。なお、固定部503は、外部端面40Sに直接密着されていても良い。高電圧コネクタ500は、電圧供給端子44に正の高電圧を与えるものである。
このように構成されたX線管装置10では、次のように用いられる。高電圧コネクタ500をハウジング20に取り付ける際に、シリコーンプレート504が、それぞれ固定部503と、支持部材40の外部端面40Sとに密着するように押圧する。
X線遮蔽部としてのX線遮蔽キャップ600は、高電圧コネクタ500を覆うようにハウジング20に着脱可能に取り付けられている。X線遮蔽キャップ600は、X線不透過材を含む材料で形成されている。
なお、陽極ターゲット35をモリブデンやモリブデン合金で形成した場合、陽極ターゲット35はX線を遮蔽することができる。この場合、X線管装置10にX線遮蔽キャップ600は設けなくとも良い。
冷却液7は、ハウジング20内に充填され、X線管30及びハウジング20間を満たしている。冷却液7としては、絶縁油又は水系冷却液を用いることができる。この実施形態において、冷却液7として水系冷却液を用いている。
高電圧コネクタ500に印加された高電圧は、電圧供給端子44、固定体1、軸受け930、回転体2及び継手部35cを介して陽極ターゲット35及び加速電極8に与えられる。高電圧コネクタ200に印加された高電圧は、電圧供給端子54を介して陰極36に与えられる。X線放射窓33を含む真空外囲器31は、接地されている。陰極36の電位は、−V/2に設定される。陽極ターゲット35の電位は、+V/2に設定される。
上記のように構成された第5の実施形態に係るX線管装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、磁気偏向部100と、冷却液7と、を備えている。X線管30は、陽極ターゲット35と、陰極36と、真空外囲器31とを備えている。陰極36は負の高電位に設定され、陽極ターゲット35は正の高電位に設定され、X線放射窓33を含む真空外囲器31は接地されている。
陰極36は、角度αを0°より大きく40°より小さい範囲内とし、第1方向d1に電子ビームを放出する。第2平面S2及び第3平面S3が内側になす角度は、180°である。第1方向d1の第1平面S1への射影と、第2方向d2の第1平面S1への射影とは同じ向きである。
焦点FからX線放射窓33に向かう反跳電子は、磁気偏向部100による磁場Ha1、Ha4の作用により偏向され、枠部110の天井壁113の内面に衝撃される。ガイド部140は冷却液7の流れをガイドするため、天井壁113の外面は冷却液7により冷却される。
このため、第5の実施形態に係るX線管装置は、上記第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
上記のことから、X線出力を増大させることができ、X線放射窓33への反跳電子の直撃を抑制することができるX線管装置を得ることができる。また、より頻繁にX線を放出させたり、より長時間に亘ってX線を連続的に放出させたりすることが可能となる。
次に、第6の実施形態に係るX線管装置について説明する。この実施形態において、X線管は回転陽極型のCT用X線管であり、以下、回転陽極型のCT用X線管を備えたCT用X線管装置について説明する。この実施形態において、上述した実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
第6の実施形態に係るX線管装置は、図17乃至図19に示す通りであり、X線管装置の構成は、上述した実施形態を参照することにより、図17乃至図19より大まかに了解できるものである。次に、第5の実施形態に係るX線管装置との相違点について説明する。
図17乃至図19に示すように、排出口20oは、磁気偏向部100から外れた枠部110に対向して位置している。この実施形態において、排出口20oは、第2側壁112に対向して位置している。
第2側壁112と対応した側の排出口20oの内部には、冷却液7のガイド部150が設けられている。ガイド部150は、磁気偏向部100及び枠部110間の隙間を冷却液7が流れ易くするように、冷却液7の流れをガイドするものである。これにより、反跳電子捕捉壁120を含む枠部110を冷却し易くすることができる。
上記のように構成された第6の実施形態に係るX線管装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、磁気偏向部100と、冷却液7と、を備えている。X線管30は、陽極ターゲット35と、陰極36と、真空外囲器31とを備えている。陰極36は負の高電位に設定され、陽極ターゲット35は正の高電位に設定され、X線放射窓33を含む真空外囲器31は接地されている。
陰極36は、角度αを0°より大きく40°より小さい範囲内とし、第1方向d1に電子ビームを放出する。第2平面S2及び第3平面S3が内側になす角度は、180°である。第1方向d1の第1平面S1への射影と、第2方向d2の第1平面S1への射影とは同じ向きである。
焦点FからX線放射窓33に向かう反跳電子は、磁気偏向部100による磁場Ha1、Ha4の作用により偏向され、枠部110の天井壁113の内面に衝撃される。ガイド部140、150は冷却液7の流れをガイドするため、天井壁113の外面は冷却液7により冷却される。
このため、第6の実施形態に係るX線管装置は、上記第5の実施形態と同様の効果を得ることができる。そして、上記第5の実施形態よりも、天井壁113の外面を一層冷却することができる。
上記のことから、X線出力を増大させることができ、X線放射窓33への反跳電子の直撃を抑制することができるX線管装置を得ることができる。また、より頻繁にX線を放出させたり、より長時間に亘ってX線を連続的に放出させたりすることが可能となる。
次に、第7の実施形態に係るX線管装置について説明する。この実施形態において、X線管は回転陽極型のCT用X線管であり、以下、回転陽極型のCT用X線管を備えたCT用X線管装置について説明する。この実施形態において、上述した実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
第7の実施形態に係るX線管装置は、図20及び図21に示す通りであり、X線管装置の構成は、上述した実施形態を参照することにより、図20及び図21より大まかに了解できるものである。次に、第6の実施形態に係るX線管装置との相違点について説明する。
図20及び図21に示すように、ハウジング20は、X線放射口窓24無しに形成され、替りに開口部20cが形成されている。ハウジング20が、冷却液7が流れる冷却路を内部に形成していることは言うまでもない。
X線管装置10は、閉塞機構160をさらに備えている。閉塞機構160は、X線放射窓33が開口部20cを通ってハウジング20の外部に露出した状態で、開口部20c及び真空外囲器31(枠部110)間を液密に閉塞するものである。閉塞機構160は、固定部材161と、Oリングとを有している。固定部材161は、筒部と、筒部の一端の外周に接続された枠部とが一体となって形成されている。
固定部材161の筒部の内周側には枠状(円環状)の溝部が形成されている。筒部の内周及び開口部20cは対向している。筒部の内周及び開口部20c間の隙間は、筒部の溝部設けられた枠状のOリングにより液密にシールされている。上記Oリングは、ハウジング20外部への冷却液7の漏れを防止する機能を有している。
ハウジング本体20a(ハウジング20)と対向した側において、固定部材161の枠部には、枠状の溝部が形成されている。枠部及びハウジング本体20a間の隙間は、枠部の溝部設けられた枠状のOリングにより液密にシールされている。上記Oリングは、ハウジング20外部への冷却液7の漏れを防止する機能を有している。
なお、固定部材161は、図示しない締め具により締め付けられている。例えば、固定部材161はハウジング本体20aにねじ止めされている。
上記のように構成された第7の実施形態に係るX線管装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、磁気偏向部100と、冷却液7と、を備えている。X線管30は、陽極ターゲット35と、陰極36と、真空外囲器31とを備えている。陰極36は負の高電位に設定され、陽極ターゲット35は正の高電位に設定され、X線放射窓33を含む真空外囲器31は接地されている。
陰極36は、角度αを0°より大きく40°より小さい範囲内とし、第1方向d1に電子ビームを放出する。第2平面S2及び第3平面S3が内側になす角度は、180°である。第1方向d1の第1平面S1への射影と、第2方向d2の第1平面S1への射影とは同じ向きである。
焦点FからX線放射窓33に向かう反跳電子は、磁気偏向部100による磁場Ha1、Ha4の作用により偏向され、枠部110の天井壁113の内面に衝撃される。ガイド部140、150は冷却液7の流れをガイドするため、天井壁113の外面は冷却液7により冷却される。
このため、第7の実施形態に係るX線管装置は、上記第6の実施形態と同様の効果を得ることができる。
X線放射窓33の過熱は防止されるため、X線放射窓33をハウジング20の外側に露出させ、X線放射窓33が冷却液7に浸漬されない構造とすることも可能となる。
このため、冷却液7が水系冷却液の場合には、水系冷却液に溶け出した金属がX線放射窓33に堆積してX線透過率を低下させる不具合や、水系冷却液中に発生した気泡がX線放射窓33の表面に集まってX線透過率を局部的に増加させたりすることによるX線画像異常、の発生を防止することができる。
冷却液7が絶縁油の場合には、X線放射窓33の表面への、絶縁油の炭化物や絶縁油に溶け出したX線遮蔽材料である鉛の堆積を防止することができるため、X線透過率を低下させる不具合の発生を防止できる。
上記のことから、X線出力を増大させることができ、X線放射窓33への反跳電子の直撃を抑制することができるX線管装置を得ることができる。また、より頻繁にX線を放出させたり、より長時間に亘ってX線を連続的に放出させたりすることが可能となる。
次に、第8の実施形態に係るX線管装置について説明する。この実施形態において、X線管は回転陽極型のCT用X線管であり、以下、回転陽極型のCT用X線管を備えたCT用X線管装置について説明する。この実施形態において、上述した実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
第8の実施形態に係るX線管装置は、図22乃至図24に示す通りであり、X線管装置の構成は、上述した実施形態を参照することにより、図22乃至図24より大まかに了解できるものである。次に、第2の実施形態に係るX線管装置との相違点について説明する。
図22乃至図24に示すように、2個の磁極101は、磁場Ha1を作用させる方向に対向している。磁極101は、第1側壁111及び第2側壁112に対向して位置していると言い換えることができる。磁極が対向していると言い換えることもできる。
反跳電子捕捉壁120の内面は傾斜している。この実施形態において、反跳電子捕捉壁120の内面は天井壁113の内面である。ここでは、天井壁113自体が傾斜している。詳しくは、X線放射窓33側より陽極ターゲット35側で底壁114から天井壁113までの距離が長くなるように、天井壁113の内面(天井壁113自体)が傾斜している。なお、天井壁113の傾斜に合わせて第1側壁111及び第2側壁112の形状が調整されることは言うまでもない。
導入口20iは、反跳電子捕捉壁120に対向して位置している。冷却液7は、導入口20iから反跳電子捕捉壁120の外面に噴出される。この実施形態において、反跳電子捕捉壁120(天井壁113)の傾斜に合わせて、導入口20iも傾斜させている。詳しくは、冷却液7が反跳電子捕捉壁120の外面に垂直な方向に噴出されるように導入口20iを傾斜させている。反跳電子が衝撃され、熱を発生する反跳電子捕捉壁120の外面に衝突噴流を作用させることができるため、反跳電子捕捉壁120を冷却し易くすることができる。
上記のように構成された第8の実施形態に係るX線管装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、磁気偏向部100と、冷却液7と、を備えている。X線管30は、陽極ターゲット35と、陰極36と、真空外囲器31とを備えている。陰極36は負の高電位に設定され、陽極ターゲット35、及びX線放射窓33を含む真空外囲器31は接地されている。
偏向部70による磁場Hb1の作用により、角度αを0°より大きく40°より小さい範囲内とし、第1方向d1から電子ビームをターゲット面35bに入射させることができる。第2平面S2及び第3平面S3が内側になす角度は、180°である。第1方向d1の第1平面S1への射影と、第2方向d2の第1平面S1への射影とは同じ向きである。
焦点FからX線放射窓33に向かう反跳電子は、磁気偏向部100による磁場Ha1の作用により偏向され、枠部110の反跳電子捕捉壁120の内面に衝撃される。反跳電子捕捉壁120の外面は、冷却液7により冷却される。
このため、第8の実施形態に係るX線管装置は、上記第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、この実施形態において、反跳電子捕捉壁120は傾斜しているため、反跳電子捕捉壁120で反射した反跳電子によるX線放射窓33への衝撃を一層低減することができる。また、反跳電子捕捉壁120は傾斜しているため、表面積が増え、そのため、反跳電子の衝撃により反跳電子捕捉壁120に生じる熱的な悪影響を低減することができる。
磁気偏向部100の磁極は対向しているため、枠部110の内部全域に磁場Ha1を作用させることができるため、より多くの反跳電子を反跳電子捕捉壁120の内面に衝撃させることができる。
上記のことから、X線出力を増大させることができ、X線放射窓33への反跳電子の直撃を抑制することができるX線管装置を得ることができる。また、より頻繁にX線を放出させたり、より長時間に亘ってX線を連続的に放出させたりすることが可能となる。
次に、第9の実施形態に係るX線管装置について説明する。この実施形態において、X線管は回転陽極型のCT用X線管であり、以下、回転陽極型のCT用X線管を備えたCT用X線管装置について説明する。この実施形態において、上述した実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
第9の実施形態に係るX線管装置は、図25乃至図27に示す通りであり、X線管装置の構成は、上述した実施形態を参照することにより、図25乃至図27より大まかに了解できるものである。次に、第8の実施形態に係るX線管装置との相違点について説明する。
図25乃至図27に示すように、磁極101は、底壁114と対向した側にテーパ面を有している。X線放射窓33側から磁気偏向部100に視点をおいた場合を仮定すると、左側の磁極101のテーパ面は右下がりであり、右側の磁極101のテーパ面は右上がりである。
上記のように構成された第9の実施形態に係るX線管装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、磁気偏向部100と、冷却液7と、を備えている。X線管30は、陽極ターゲット35と、陰極36と、真空外囲器31とを備えている。陰極36は負の高電位に設定され、陽極ターゲット35、及びX線放射窓33を含む真空外囲器31は接地されている。
偏向部70による磁場Hb1の作用により、角度αを0°より大きく40°より小さい範囲内とし、第1方向d1から電子ビームをターゲット面35bに入射させることができる。第2平面S2及び第3平面S3が内側になす角度は、180°である。第1方向d1の第1平面S1への射影と、第2方向d2の第1平面S1への射影とは同じ向きである。
焦点FからX線放射窓33に向かう反跳電子は、磁気偏向部100による磁場Ha1の作用により偏向され、枠部110の反跳電子捕捉壁120の内面に衝撃される。反跳電子捕捉壁120の外面は、冷却液7により冷却される。
このため、第9の実施形態に係るX線管装置は、上記第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、第8の実施形態と同様に、反跳電子捕捉壁120は傾斜しているため、X線放射窓33への反跳電子の衝撃を一層低減することができ、反跳電子捕捉壁120に生じる熱的悪影響を低減することができる。
磁極101はテーパ面を有しているため、上記第2の実施形態に比べて磁場Ha1を反跳電子により有効に作用させることができ、より多くの反跳電子を反跳電子捕捉壁120の内面に衝撃させることができる。
上記のことから、X線出力を増大させることができ、X線放射窓33への反跳電子の直撃を抑制することができるX線管装置を得ることができる。また、より頻繁にX線を放出させたり、より長時間に亘ってX線を連続的に放出させたりすることが可能となる。
次に、第10の実施形態に係るX線管装置について説明する。この実施形態において、X線管は回転陽極型のX線管であり、以下、回転陽極型のX線管を備えた回転陽極型のX線管装置について説明する。この実施形態において、上述した実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
第10の実施形態に係るX線管装置は、図28乃至図30に示す通りであり、X線管装置の構成は、上述した実施形態を参照することにより、図28乃至図30より大まかに了解できるものである。次に、第3の実施形態に係るX線管装置との相違点について説明する。
図28乃至図30に示すように、磁極101は、真空外囲器31(陽極ターゲット35)と対向した側にテーパ面を有している。第1方向d1が下方を示すようにX線放射窓33側から磁気偏向部100に視点をおいた場合を仮定すると、左側の磁極101のテーパ面は右上がりであり、右側の磁極101のテーパ面は右下がりである。磁気偏向部100のコイル103には、図示しない偏向電源105から電流が与えられる(図2)。なお、この実施形態において、磁極101と対向した第1側壁111及び第2側壁112もテーパ面を有している。
また、この実施形態において、磁気偏向部100は、磁場Ha1を陽極ターゲット35の表面に接する空間につくっている。そして、磁気偏向部100は、電子ビームを偏向させる磁場Ha1を陽極ターゲット35の表面(焦点)と、天井壁113との間の空間につくっている。
磁気偏向部100は、利用X線束の中央領域において、第3平面S3に直交する方向に磁場Ha1をつくっている。この実施形態において、磁気偏向部100は、第2側壁112から第1側壁111に向かう方向に磁場Ha1をつくっているが、これに限らず、第1側壁111から第2側壁112に向かう方向に磁場Ha1をつくってもよい。
偏向部70は、磁気偏向部である。偏向部70は、2個の磁極71と、磁極71を接続したヨーク72と、ヨーク72に巻かれたコイル73とを有している。コイル73に図示しない偏向電源から電流が供給されることにより、偏向部70は電子ビームに磁場Hb1を作用させる。
上記のように構成された第10の実施形態に係るX線管装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、磁気偏向部100と、冷却液7と、を備えている。X線管30は、陽極ターゲット35と、陰極36と、真空外囲器31とを備えている。陰極36は負の高電位に設定され、陽極ターゲット35、及びX線放射窓33を含む真空外囲器31は接地されている。
偏向部70による磁場Hb1の作用により、角度αを0°より大きく40°より小さい範囲内とし、第1方向d1から電子ビームをターゲット面35bに入射させることができる。第1方向d1の第1平面S1への射影と、第2方向d2の第1平面S1への射影とは同じ向きである。
焦点FからX線放射窓33に向かう反跳電子は、磁気偏向部100による磁場Ha1の作用により偏向され、枠部110の反跳電子捕捉壁120の内面に衝撃される。反跳電子捕捉壁120の外面は、冷却液7により冷却される。
このため、第10の実施形態に係るX線管装置は、上記第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、磁極101はテーパ面を有しているため、上記第3の実施形態に比べて磁場Ha1を反跳電子により有効に作用させることができ、より多くの反跳電子を反跳電子捕捉壁120の内面に衝撃させることができる。
上記のことから、X線出力を増大させることができ、X線放射窓33への反跳電子の直撃を抑制することができるX線管装置を得ることができる。また、より頻繁にX線を放出させたり、より長時間に亘ってX線を連続的に放出させたりすることが可能となる。
次に、第11の実施形態に係るX線管装置について説明する。この実施形態において、上記第10の実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。次に、上記第10の実施形態に係るX線管装置との相違点について説明する。
図31乃至図33に示すように、磁極101はテーパ面を有していない。第1側壁111及び第2側壁112は、X線放射窓33から焦点Fに向かって次第に近接するように設けられている。天井壁113及び底壁114は、X線放射窓33から焦点Fに向かって次第に幅が狭くなるように形成されている。
一対の磁極101は、第3平面S3に直行する方向に対向し、第1側壁111及び第2側壁112のそれぞれの外面に沿って設けられている。一対の磁極101は、X線放射窓33から焦点Fに向かって次第に近接するように設けられている。このため、磁気偏向部100は、X線放射窓33から焦点Fに向かって強度が次第に増大する磁場Ha1をつくっている。
磁気偏向部100は、利用X線束の中央領域において、第3平面S3に直交する方向に磁場Ha1をつくっている。この実施形態において、磁気偏向部100は、第2側壁112から第1側壁111に向かう方向に磁場Ha1をつくっているが、これに限らず、第1側壁111から第2側壁112に向かう方向に磁場Ha1をつくってもよい。
上記のように構成された第11の実施形態に係るX線管装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、磁気偏向部100と、冷却液7と、を備えている。X線管30は、陽極ターゲット35と、陰極36と、真空外囲器31とを備えている。陰極36は負の高電位に設定され、陽極ターゲット35、及びX線放射窓33を含む真空外囲器31は接地されている。
偏向部70による磁場Hb1の作用により、角度αを0°より大きく40°より小さい範囲内とし、第1方向d1から電子ビームをターゲット面35bに入射させることができる。第1方向d1の第1平面S1への射影と、第2方向d2の第1平面S1への射影とは同じ向きである。
焦点FからX線放射窓33に向かう反跳電子は、磁気偏向部100による磁場Ha1の作用により偏向され、枠部110の反跳電子捕捉壁120の内面に衝撃される。反跳電子捕捉壁120の外面は、冷却液7により冷却される。
このため、第11の実施形態に係るX線管装置は、上記第10の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、磁気偏向部100は、X線放射窓33から焦点Fに向かって強度が次第に増大する磁場Ha1をつくっているため、上記第3の実施形態に比べて磁場Ha1を反跳電子により有効に作用させることができ、より多くの反跳電子を反跳電子捕捉壁120の内面に衝撃させることができる。
上記のことから、X線出力を増大させることができ、X線放射窓33への反跳電子の直撃を抑制することができるX線管装置を得ることができる。また、より頻繁にX線を放出させたり、より長時間に亘ってX線を連続的に放出させたりすることが可能となる。
次に、第12の実施形態に係るX線管装置について説明する。この実施形態において、X線管は回転陽極型のX線管であり、以下、回転陽極型のX線管を備えた回転陽極型のX線管装置について説明する。この実施形態において、上述した実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
第12の実施形態に係るX線管装置は、図34乃至図36に示す通りであり、X線管装置の構成は、上述した実施形態を参照することにより、図34乃至図36より大まかに了解できるものである。次に、第5の実施形態に係るX線管装置との相違点について説明する。
図34乃至図36に示すように、X線管30とハウジング20との間の空間に冷却液6が充填されている。冷却液6に絶縁油を使用している。冷却液7は、天井壁113(反跳電子捕捉壁120)の外面側に位置した冷却路を流れる。冷却液7には、天井壁113に発生する熱の少なくとも一部が伝達される。この実施形態において、天井壁113を壁の一部とする熱伝導性に優れた容器130が取り付けられ、冷却路は容器130の内部に形成されている。
図示しないが、容器130には、ホースなどの導管を介して冷却器(3)が連通されている。冷却器は、容器130内の冷却液7を放熱及び循環させるものである。冷却器は、ポンプ(4)及び熱交換器(5)を有している。ポンプは、排出口20oを介して容器130側から取り入れた冷却液7を熱交換器に吐出し、導入口20iを介して容器130内に導入させ、容器130内の冷却液7を循環させる。熱交換器は、供給される冷却液7を冷却する。
反跳電子が天井壁113(反跳電子捕捉壁120)の内面を衝撃することにより、天井壁113に熱が発生するが、天井壁113に発生する熱の少なくとも一部は冷却液7に伝達され、冷却液7を介してX線管30の外部へ放出される。このため、真空容器32の破損を防止することができ、ひいては真空外囲器31の真空破壊を防止することができる。
磁極101は、真空外囲器31(陽極ターゲット35)と対向した側にテーパ面を有している。第1方向d1が下方を示すようにX線放射窓33側から磁気偏向部100に視点をおいた場合を仮定すると、左側の磁極101のテーパ面は右上がりであり、右側の磁極101のテーパ面は右下がりである。磁気偏向部100のコイル103には、図示しない偏向電源105から電流が与えられる(図2)。なお、この実施形態において、磁極101と対向した容器130の側壁もテーパ面を有している。
また、この実施形態において、磁気偏向部100は、磁場Ha1を陽極ターゲット35の表面に接する空間につくっている。そして、磁気偏向部100は、電子ビームを偏向させる磁場Ha1を陽極ターゲット35の表面(焦点)と、天井壁113との間の空間につくっている。
磁気偏向部100は、利用X線束の中央領域において、第3平面S3に直交する方向に磁場Ha1をつくっている。この実施形態において、磁気偏向部100は、第2側壁112から第1側壁111に向かう方向に磁場Ha1をつくっているが、これに限らず、第1側壁111から第2側壁112に向かう方向に磁場Ha1をつくってもよい。
上記のように構成された第12の実施形態に係るX線管装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、磁気偏向部100と、冷却液7と、を備えている。X線管30は、陽極ターゲット35と、陰極36と、真空外囲器31とを備えている。陰極36は負の高電位に設定され、陽極ターゲット35は正の高電位に設定され、X線放射窓33を含む真空外囲器31は接地されている。
陰極36は、角度αを0°より大きく40°より小さい範囲内とし、第1方向d1に電子ビームを放出する。第1方向d1の第1平面S1への射影と、第2方向d2の第1平面S1への射影とは同じ向きである。
焦点FからX線放射窓33に向かう反跳電子は、磁気偏向部100による磁場Ha1の作用により偏向され、枠部110の反跳電子捕捉壁120の内面に衝撃される。反跳電子捕捉壁120の外面は、容器130内の冷却液7により冷却される。
このため、第12の実施形態に係るX線管装置は、上記第5の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、磁極101はテーパ面を有しているため、上記第5の実施形態に比べて磁場Ha1を反跳電子により有効に作用させることができ、より多くの反跳電子を反跳電子捕捉壁120の内面に衝撃させることができる。
上記のことから、X線出力を増大させることができ、X線放射窓33への反跳電子の直撃を抑制することができるX線管装置を得ることができる。また、より頻繁にX線を放出させたり、より長時間に亘ってX線を連続的に放出させたりすることが可能となる。
次に、第13の実施形態に係るX線管装置について説明する。この実施形態において、上記第12の実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。次に、上記第12の実施形態に係るX線管装置との相違点について説明する。
図37に示すように、容器130の両側のテーパ状の側壁は、X線放射窓33から焦点Fに向かって次第に近接するように設けられている。
一対の磁極101は、容器130の両側の側壁のそれぞれのテーパ状の外面に沿って設けられている。一対の磁極101は、X線放射窓33から焦点Fに向かって次第に近接するように設けられている。このため、磁気偏向部100は、X線放射窓33から焦点Fに向かって強度が次第に増大する磁場Ha1をつくっている。
磁気偏向部100は、利用X線束の中央領域において、第3平面S3に直交する方向に磁場Ha1をつくっている。この実施形態において、磁気偏向部100は、第2側壁112から第1側壁111に向かう方向に磁場Ha1をつくっているが、これに限らず、第1側壁111から第2側壁112に向かう方向に磁場Ha1をつくってもよい。
上記のように構成された第13の実施形態に係るX線管装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、磁気偏向部100と、冷却液7と、を備えている。X線管30は、陽極ターゲット35と、陰極36と、真空外囲器31とを備えている。陰極36は負の高電位に設定され、陽極ターゲット35は正の高電位に設定され、X線放射窓33を含む真空外囲器31は接地されている。
陰極36は、角度αを0°より大きく40°より小さい範囲内とし、第1方向d1に電子ビームを放出する。第1方向d1の第1平面S1への射影と、第2方向d2の第1平面S1への射影とは同じ向きである。
焦点FからX線放射窓33に向かう反跳電子は、磁気偏向部100による磁場Ha1の作用により偏向され、枠部110の反跳電子捕捉壁120の内面に衝撃される。反跳電子捕捉壁120の外面は、冷却液7により冷却される。
このため、第13の実施形態に係るX線管装置は、上記第12の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、磁気偏向部100は、X線放射窓33から焦点Fに向かって強度が次第に増大する磁場Ha1をつくっているため、上記第5の実施形態に比べて磁場Ha1を反跳電子により有効に作用させることができ、より多くの反跳電子を反跳電子捕捉壁120の内面に衝撃させることができる。
上記のことから、X線出力を増大させることができ、X線放射窓33への反跳電子の直撃を抑制することができるX線管装置を得ることができる。また、より頻繁にX線を放出させたり、より長時間に亘ってX線を連続的に放出させたりすることが可能となる。
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。例えば、反跳電子捕捉壁120またはそれを含む枠部を冷却する冷却液のみ水または水系冷却液とし、それ以外の真空外囲器の周囲に絶縁油などの電気絶縁性の高い非水系冷却液を充満させることにより、低電圧や高電圧の電気絶縁を安価に実現することができる。
上述した実施形態ではCT用途のX線管装置で利用される場合を例に説明したため、枠部110の輪郭形状は、横に長い矩形状であったが、長円形状などであってもよく、また他の用途に合せて任意の形状、例えば円形であってもよい。例えば、枠部110は、利用X線束の軌道を取り囲むように設けられた複数の側壁を有していてもよい。この場合、磁気偏向部100は、焦点FからX線放射窓33に向かって放出される反跳電子を偏向させ複数の側壁の少なくとも1つである反跳電子捕捉壁の内面に衝撃させる磁場をつくる。
この発明は、上記X線管装置に限らず、固定陽極型X線管装置など各種X線管装置に適用することができる。