JP2013136065A - 溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部 - Google Patents

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Abstract

【課題】建築構造物のボックス柱に好適な溶接組立四面箱形断面部材の角溶接用開先部を提供する。
【解決手段】溶接四面箱形断面部材の角部において隣り合うフランジプレートとウェブプレートを溶接するための溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部であって、前記開先部は前記溶接四面箱形断面部材の長手方向に直角な断面において、前記フランジプレートと、前記フランジプレートと間隙を設けて配置される前記ウェブプレートと、前記間隙の底部に配置される裏当て金を有し、前記フランジプレートは、少なくとも前記ウェブプレートに対向する部分に切欠き部を有し、前記切欠き部は当該切欠き部を溶接する際の前記フランジプレート側の初層溶接が前記裏当て金を溶融させない形状とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、建築構造物のボックス柱に好適な溶接組立四面箱形断面部材の角溶接用開先部に関する。
図13は建築分野においてボックス柱として用いられることが多い溶接組立四面箱形断面部材の断面形状を示し、フランジプレート1とウェブプレート2を箱形断面に組合わせ、「レ形」開先(図12(a))、「I形」開先(図12(b))、「V形」開先(図12(c))、もしくはそれらを組合わせた形状の「I+V形」開先(図12(d))(例えば、特許文献1)を設けた角部aを溶接接合して組立てられる。いずれの開先形状においても、フランジプレート1とウェブプレート2との間隙は底面に裏当て金4が取り付けられる。
「レ形」開先や、「I形」開先の場合、開先加工はウェブプレート2にのみ施されている。「V形」や「I+V形」開先(図12(d))においてもフランジプレート1はその角が一直線で切断される極簡易な開先加工が施される程度で、溶接組立四面箱形断面部材の角部において、裏当金4はフランジプレート1に対して直角に取り付けられていることが多い。
特開2007−313524号公報
ところで、鋼材に溶接を施すと、その溶接熱により接合される鋼材には熱影響部が形成され、この熱影響部では強度、靭性が劣化する。図9、10にCOガス溶接とサブマージアーク溶接(SAW)で590N/mm級鋼材(板厚40mm)と590N/mm級の溶接材料を用いて製作した溶接継手を対象として実施した熱影響部とDEPOのシャルピー衝撃試験結果(試験温度0℃)を示す。表1に使用した材料の機械的性質を示す。
COガス溶接とサブマージアーク溶接(SAW)は、それぞれ入熱は30、000J/cm、60、000J/cm程度となるよう管理し、パス間温度はともに150℃以下とした。
図11にシャルピー衝撃試験片の採取位置およびノッチ位置を示す。ノッチはサイドノッチとし、その中心が板厚の1/4の位置となるように採取した。
また、溶接初層隅部においては、一般に溶接金属の溶け込み不足などの欠陥が生じ易く、脆性破断の起点となりやすい。
図2(a)は溶接組立四面箱形断面部材におけるフランジプレート1とウェブプレート2の角部溶接部を説明する図で、溶接金属5の周囲には強度・靭性の劣化した熱影響部6が発生し、初層溶接部8が裏当て金8とフランジプレート1との僅かな隙間7の延長線上に位置する。図2(b)は角部溶接部が脆性破断する場合を模式的に示す図で、接合される梁などの部材から応力を受けて変形した場合、裏当金4とフランジプレート1の間の微小な隙間7の先端には局所的に応力が集中し、き裂が生じて、溶接熱影響部6において脆性破断が発生しやすい。
図12(a)〜(d)に示した開先の場合、隙間7の直近に溶接初層隅部8が位置し、さらに溶接金属5がフランジプレート1に沿って充填されるため、隙間7のほぼ延長線上に連続的に強度・靭性が劣化し、容易にき裂が発生・進展する熱影響部6が位置するため、角溶接部が破断する可能性が高い。
図7(a)〜(c)はこの現象を実証するために実施したFEM解析の説明図で、地震時の溶接組立四面箱形断面柱11の変形状態をモデル化したものである。図7(a)はFEM解析モデル、図7(b)は柱梁接合部9における変形状態を示す模式図、(c)は(a)(b)のa部拡大図である。溶接組立四面箱形断面柱11は590N/mm級鋼材を、梁材10は490N/mm級鋼材を、溶接組立四面箱形断面柱11の角溶接には590N/mm級の溶接材料を想定したものである。表2に使用した材料の機械的性質を示す。
解析では図7に示すとおり梁10の両端に荷重を作用させ、梁10の部材変形角が1/100radに達したときの塑性歪の発生状態を検証した。
図8はその解析結果であり、塑性歪コンター図を表し、色が濃いほど塑性歪が集中している、すなわちき裂が発生しやすいことを示している。図8より、裏当金4とフランジプレート1の間に生じた微小な隙間付近で歪が集中し、容易にき裂が発生し得ることが確認できる。
したがって、靭性や強度が劣化した熱影響部がこの間隙の直上に直線的に位置する場合は、生じたき裂が容易に進展し、溶接部全断面が破断することが想定される。
そこで、本発明は、上記問題点を解決する溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部を提供することを目的とする。
本発明の課題は、以下の手段で達成可能である。
1.溶接四面箱形断面部材の角部において隣り合うフランジプレートとウェブプレートを溶接するための溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部であって、前記開先部は前記溶接四面箱形断面部材の長手方向に直角な断面において、前記フランジプレートと、前記フランジプレートと間隙を設けて配置される前記ウェブプレートと、前記間隙の底部に配置される裏当て金を有し、前記フランジプレートは、少なくとも前記ウェブプレートに対向する部分に切欠き部を有し、前記切欠き部は当該切欠き部を溶接する際の前記フランジプレート側の初層溶接が前記裏当て金を溶融させない形状であることを特徴とする溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部。
2.前記切欠き部はフランジプレートを少なくとも2辺の直線で切欠き、前記辺のうち、前記裏当て金に繋がる辺の長さが他の辺より短い短辺で5mm以上10mm以下であることを特徴とする1に記載の溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部。
3.前記短辺とその他の辺の為す角度が、90°以上、120°以下であることを特徴とする1または2に記載の溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部。
4.前記辺が2辺で、長辺が前記ウェブプレートの板厚と同じ長さで、短辺が当該切欠き部を溶接する際の初層溶接が前記裏当て金を溶融させない長さを有する略矩形であることを特徴とする1乃至3記載の溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部。
5.1乃至4のいづれか一つに記載の溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部を溶接した溶接四面箱形断面部材。
本発明では、フランジプレートのウェジプレート側に段差のついた開先を設けることで、応力集中部位である裏当金とフランジプレートの間の微小な隙間と、溶接欠陥が生じ易い溶接初層隅部が近接しないため、隙間の先端からき裂が生じにくくなる。
隙間の先端よりき裂が発生したとしても、強度・靭性が劣化した熱影響部が間隔の延長線上には位置しなくなるため、き裂発生後の進展経路が複雑化し、き裂が進展し難くなり、角溶接部に早期破断が生じる危険性を低減することができ、産業上極めて有用である。
本発明の一実施形態に係る溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部を説明する図で(a)は溶接前、(b)は溶接後を示す図。 従来の溶接四面箱形断面部材の角溶接部を説明する図で(a)は溶接後、(b)は溶接部の破断状況を示す図。 (a)は本発明の他の実施例に係る溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部を示す図で(b)は(a)に示した角溶接用開先部の一部を変形した角溶接用開先部を示す図。 (a)は本発明の他の実施例に係る溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部を示す図で(b)は(a)に示した角溶接用開先部の一部を変形した角溶接用開先部を示す図。 本発明の他の実施例に係る溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部を示す図。 (a)は本発明の他の実施例に係る溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部を示す図で(b)は(a)に示した角溶接用開先部の一部を変形した角溶接用開先部を示す図。 本発明に係る溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部が課題とする現象を実証するために実施したFEM解析の説明図で、(a)はFEM解析モデル、(b)は柱梁接合部における変形状態を示す模式図、(c)は(a)(b)のa部拡大図。 図7のFEM解析モデルの解析結果を示す図。 COガス溶接で590N/mm級鋼材(板厚40mm)と590N/mm級の溶接材料を用いて製作した溶接継手を対象として実施した熱影響部とDEPOのシャルピー衝撃試験結果(試験温度0℃)を示す図。 サブマージアーク溶接で590N/mm級鋼材(板厚40mm)と590N/mm級の溶接材料を用いて製作した溶接継手を対象として実施した熱影響部とDEPOのシャルピー衝撃試験結果(試験温度0℃)を示す図。 図9、10のシャルピー衝撃試験の試験片採取位置とノッチ位置を示す図。 従来の角溶接部の開先形状を示す図で(a)はレ形開先、(b)はI形開先、(c)はV形開先、(d)はI+V形開先の場合を示す。 溶接組立四面箱形断面部材の断面形状を示す図。
本発明に係る溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部は、フランジプレートとウェブプレートを溶接した際に、裏当て金とフランジプレートとの隙間の延長線上に欠陥が発生しやすい初層溶接部や強度・靭性が低い溶接熱影響部が位置しない開先形状とすることを特徴とする。
図1は本発明の一実施形態に係る溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部を長手方向に直角な断面において示す図で、フランジプレートのウェブプレートに対向する部分の切欠き部として、溶接する際の初層溶接が裏当て金を溶融させない、略矩形の形状の切欠き部の場合を示す。
図1の(a)は溶接前、(b)は(a)に示した角溶接用開先部の溶接後を示し、これらの図において、1はフランジプレート、2はウェブプレート、3は開先空間、4は裏当て金、5は溶接金属、6は溶接熱影響部、7はフランジプレート1と裏当て金4との隙間、8は初層溶接部を示す。
図1(a)に示した開先部は溶接四面箱形断面部材の角部において隣り合うフランジプレート1とウェブプレート2を溶接するための角溶接用開先部であって、溶接四面箱形断面部材の長手方向に直角な断面において、フランジプレート1と、フランジプレート1と間隙を設けて配置されるウェブプレート2と、フランジプレート1と接し、前記間隙の底部からウェブプレート2に架けて配置される裏当て金4で構成される。
フランジプレート1は、ウェブプレート2に対向する部分に略矩形の切欠き部を有する。切欠き部は長辺3aの長さ1vがウェブプレート2の板厚と同じ長さで、裏当て金4に繋がる短辺3bの長さ1hを、少なくとも、当該切欠き部を溶接する際の初層溶接8が裏当て金4を溶融させない長さとする。
本発明に係る開先部において溶接金属5が充填される開先空間3は、長辺3aと短辺3bの略矩形の切欠き部と、フランジプレート1で裏当て金4が接する側面の延長線(図示しない)とウェジプレート2のフランジプレート1側の端面で囲まれる空間で構成される。
図1(b)は図1(a)に示した開先部の溶接後の状態を示し、角溶接では開先空間3の裏当て金4側の底面のフランジプレート1側とウェジプレート2側に初層溶接部8が形成されるが、本発明では、裏当て金4に繋がる短辺3bの長さ1hを、少なくとも、初層溶接が裏当て金4を溶融させない長さとするので、溶接欠陥が比較的発生しやす初層溶接部8および長辺3を溶接した際の溶接熱影響部6が隙間7の延長線上に位置しない。
本発明に係る溶接四面箱形断面部材では、梁からの応力が角溶接部に作用して隙間7の先端にき裂が発生しても、フランジプレート1に沿った溶接熱影響部6がき裂の延長線上にないので脆性破壊する危険性が低下する。
隙間7の直上には、隙間7と直交して溶接熱影響部6が位置するが、溶接金属5の靭性を改善したり、溶接熱影響部6が発生する裏当て金4、フランジプレート1に靭性の高い鋼材を用いてき裂伝播を防止すれば良い。
実構造物において角溶接部で脆性破壊する危険性を低下させる場合、図8において歪集中部位を熱影響部から離すには5mm以上離す必要があること、および、溶接部の開先を欠陥を生むことなく合理的に溶接で埋めるためには一般的にはルートギャップとしてレ形開先では7mm〜8mm程度、I形開先では大きくとも15mm程度であることを勘案し、短辺3bの長さ1hは5mm以上10mm以下が好ましく、更に好ましくは開先加工を容易とするため、長辺3aと短辺3bの為す角度Raを90°以上、120°以下とする。
本発明の他の実施例に係る溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部を図3〜図6に示す。これらの図において図1と同じものには同じ符号を付して示す。
図3はウェブプレート2でフランジプレート1に対向する辺を斜辺とした「レ形」開先の場合で、(a)は、フランジプレート1のウェブプレート2に対向する部分に略矩形の切欠き部を有する場合、(b)はフランジプレート1のウェブプレート2に対向する部分が2辺で切欠かれ、裏当て金4に繋がる短辺とその他の辺のなす角度Raが90°超えである場合を示す。
図4は、ウェブプレート2でフランジプレート1に対向する面をフランジプレート1と平行とした「I形」開先の場合で、(a)は、フランジプレート1のウェブプレート2に対向する部分に略矩形の切欠き部を有する場合、(b)はフランジプレート1と裏当て金4が接する面を対称軸として、ウェブプレート2の板厚長さを一辺とし、裏当て金4の一部を切り欠いた長さを他辺とする2辺からなり、両辺のなす角度Rbが90°超えの切り込み形状がフランジプレート1と裏当て金4が接する面を対称軸として、フランジプレート1側にも形成された「変形I形」場合を示す。フランジプレート1側で裏当て金4に繋がる辺とその他の辺がなす角度Raは角度Rbと等しい。
図5は、ウェブプレート2でフランジプレート1に対向する辺を斜辺とし、フランジプレート1と裏当て金4が接する面を対称軸として、フランジプレート1側にもウェブプレート2に対向する辺を斜辺とした「略V形」開先の場合を示す。
図6は、切欠き部を3辺で構成した「I+V形」の開先部を示し、(a)は図4(a)の開先部のスキンプレート側を外側に開く辺で切り欠いた場合、(b)は図4(b)の開先部のスキンプレート側を外側に開く辺で切り欠いた場合を示す。
以上の説明は、本発明に係る溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部の長手方向に直角な断面における開先形状について行ったもので、本発明に係る溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部は部材長手方向の任意の断面において当該開先形状を備えるものである。
1 フランジプレート
2 ウェブプレート
3 開先空間
4 裏当て金
5 溶接金属
6 溶接熱影響部
7 隙間
8 初層溶接部

Claims (5)

  1. 溶接四面箱形断面部材の角部において隣り合うフランジプレートとウェブプレートを溶接するための溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部であって、前記開先部は前記溶接四面箱形断面部材の長手方向に直角な断面において、前記フランジプレートと、前記フランジプレートと間隙を設けて配置される前記ウェブプレートと、前記間隙の底部に配置される裏当て金を有し、前記フランジプレートは、少なくとも前記ウェブプレートに対向する部分に切欠き部を有し、前記切欠き部は当該切欠き部を溶接する際の前記フランジプレート側の初層溶接が前記裏当て金を溶融させない形状であることを特徴とする溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部。
  2. 前記切欠き部はフランジプレートを少なくとも2辺の直線で切欠き、前記辺のうち、前記裏当て金に繋がる辺の長さが他の辺より短い短辺で5mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部。
  3. 前記短辺とその他の辺の為す角度が、90°以上、120°以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部。
  4. 前記辺が2辺で、長辺が前記ウェブプレートの板厚と同じ長さで、短辺が当該切欠き部を溶接する際の初層溶接が前記裏当て金を溶融させない長さを有する略矩形であることを特徴とする請求項1乃至3記載の溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部。
  5. 請求項1乃至4のいづれか一つに記載の溶接四面箱形断面部材の角溶接用開先部を溶接した溶接四面箱形断面部材。
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