JP2013133518A - Cu系溶浸用粉末 - Google Patents

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Abstract

【課題】Fe系基材に対して高い溶浸率を得られるCu系溶浸材を提供する。
【解決手段】Cu粉末とSi粉末とCu−Fe−Mn合金粉末とCu−Zn−Al合金粉末とが混合されてなる混合粉末で、この混合粉末(Cu系溶浸材)は、Fe 1.5〜5.5質量%、Mn 1.0〜2.5質量%、Zn 1.0〜2.0質量%、Al 0.01〜0.1質量%、Si 0.1〜0.6質量%、残部がCuからなる組成を有する。このCu系溶浸材は、Fe系基材への溶浸性に優れるため、基材の密度を高くし、機械的強度、硬さ等を改善する。
【選択図】なし

Description

本発明はFeまたはFe系混合粉末の成形体もしくは焼結体に溶浸するCu系混合粉末に関するものである。
Fe系合金の焼結部品の製造において機械部品を高密度化、高強度化、高靭性化するためにCu合金を溶浸する技術が確立されている。一般的に溶浸法では、気孔を有するFe系圧粉体もしくは焼結体の基材に、それよりも融点の低いCu合金の圧粉体(以下、「溶浸材」と呼ぶ)を接触させ加熱させる。溶融した溶浸材は毛細管現象によって基材に溶浸し、基材内部の気孔が溶浸したCuによって満たされ、気孔が減少することによって密度が上昇し焼結体の緻密性が向上する。さらには基材および溶浸材に含まれる成分が合金化反応することによって、焼結溶浸部品は機械的強度、硬さ、電気伝導性、耐食性、耐摩耗性といった特性が改善される。
一般的に溶浸材に要求される特性としては、高い溶浸率(基材にのせた溶浸材の重量に対する基材に浸透した溶浸材重量の比)であること、溶浸材の残留物(残滓)が基材に付着しない、もしくは付着しても容易に除去できること等の特性が要求される。
このような要求を満足させるべく、Feを2.0〜7.0質量%、Mnを1.0〜7.0質量%、Znを0.5〜5.0質量%、Alを0.03〜0.1質量%、Siを0.1〜2.0質量%、残部がCuからなる溶浸用粉末が提案されている(特許文献1)。上記に提案された溶浸材中のMn、Al、Siといった成分は、溶浸過程で酸化物を形成し残滓の一部となってFe系基材の表面に残り、溶浸しきれないCuのFe系基材への固着を防ぐ効果がある。しかしながら、これらの成分は含有量が多い場合、残滓の発生量が多くなるために溶浸率が低下するといった問題や、溶浸材の構成によっては発生する残滓がFe系基材表面に固着するといった問題が生じる。
特開昭55−141501号公報
本発明は、残滓の発生量が少なく残滓の剥離性に優れ、溶浸率の高い溶浸性に優れた溶浸材を提供することを課題とする。
本発明は、このような従来の問題点を解決することを目的としてなされたもので、溶浸材を構成する混合粉末および組成を種々検討した結果、本発明の溶浸用混合粉末を見出した。すなわち本発明の溶浸用粉末は、Cu粉末とSi粉末とCu−Fe−Mn合金粉末とCu−Zn−Al合金粉末を混合した粉末であり、かつFeを1.5〜5.5質量%、Mnを1.0〜2.5質量%、Znを1.0〜2.0質量%、Alを0.01〜0.1質量%、Siを0.1〜0.6質量%含み、残部がCuからなる組成であることを特徴とする。尚、本発明の溶浸用粉末は本質的に前記組成からなるが、微量の不可避不純物を含んでいても良い。ここで、不可避不純物とは、意図的に添加していないのに、各原料の製造工程等で不可避的に混入する不純物をいう。
又、本発明は、上記の特徴を有した溶浸用混合粉末において、前記Cu−Fe−Mn合金粉末中のFeの含有量が 3.0〜7.0質量%であり、Mnの含有量が 2.0〜5.0質量%であり、当該Cu−Fe−Mn合金粉末が前記混合粉末に25.0〜90.0質量%配合されていることを特徴とするものである。
又、本発明は、上記の特徴を有した溶浸用混合粉末において、前記Cu−Zn−Al合金粉末中のZnの含有量が 10.0〜40.0質量%であり、Alの含有量が 0.1〜3.0質量%であり、当該Cu−Zn−Al合金粉末が前記混合粉末に3.0〜15.0質量%配合されていることを特徴とするものでもある。
更に、本発明は、上記の特徴を有した溶浸用混合粉末において、成形の際の潤滑性を改善するための潤滑剤を0.1〜1.0質量%含有することを特徴とするものでもある。
本発明の溶浸材は高い溶浸率が得られるため、溶浸した焼結機械部品の高密度化および高強度化が実現できる。また溶浸後に発生する残滓の発生量が少なく、残滓の剥離性も良好であることから、生産性の向上にもつながる。
以下、本発明の溶浸材の組成範囲および溶浸材を構成する混合粉末の種類および配合比率を詳細に説明する。
本発明の溶浸材に含まれるFeはFe系基材と溶浸材との接触面の浸食防止を目的に添加される。一般的にFe−Cu系の溶浸は、包晶温度よりも高い1100℃〜1150℃の範囲で行われる。この溶浸温度におけるFeの飽和溶解度は約5質量%であり、Fe基材にCu単体を溶浸した場合は、基材中のFeが溶浸材へ溶融するために基材表面に浸食ピットや表面が荒れるといった現象が起こる。このような現象は、あらかじめ溶浸材にFeを添加することで未然に防止することができる。1.5質量%未満ではその浸食防止効果は少なくなる。またFeの含有量は多くなるほど溶浸材の融点が高くなるため、本発明の溶浸材のFe含有量は1.5〜5.5質量%に限定した。
Mn、Al、Siは溶浸後に溶浸体表面に酸化物を形成し、溶浸しきれないCuの基材への固着を防止する。しかしながらMn、Al、Siは添加量が多くなるほど残滓量が多くなり溶浸率を低下させ、また添加量が少ない場合は残滓剥離性の効果が少なくなることから、本発明の溶浸材ではMn添加量を1〜2.5質量%、Al添加量を0.01〜0.1質量%、Si添加量を0.1〜0.6質量%にそれぞれ限定した。
Znの添加は溶浸材の融点を下げる効果があり、さらには溶浸材と基材の濡れ性を改善する効果がある。Zn添加量が少ない場合はこれら上記の効果が少なくなる。また添加量が多くなると溶浸過程においてZnの蒸発量が多くなり溶浸材の歩留まりが低下する。また蒸発したZnは焼結炉を汚損する可能性があるため好ましくない。このようなことから本発明の溶浸材のZn添加量は1〜2質量%に限定した。
また本発明の溶浸材は、Cu−Fe−Mn合金粉末とCu−Zn−Al合金粉末とSi粉末とCu粉末の混合粉末であり、その配合比率はCu−Fe−Mn合金粉末が25.0〜90.0質量%、Cu−Zn−Al合金粉末が3.0〜15.0質量%であることが好ましく、Siは単一元素の粉末で0.1〜0.6質量%、残りがCuの単一元素である。
Cu−Fe−Mn合金粉末およびCu−Zn−Al合金粉末はアトマイズ法により作製される。Cu−Fe−Mn合金粉末中のFeは含有量が多くなるほど液相温度が高くなるためアトマイズ法の溶解工程での溶解温度を高くする必要がある。さらには溶浸後に溶浸体表面にFeが晶出し溶浸しきれないCuや酸化物を含む残滓と溶浸体を固着する要因となる。また含有量が少なすぎる場合はCu−Fe−Mn合金粉末の配合量が多くなり、その他の構成粉末を配合できなくなる。Cu−Fe−Mn合金粉末のFeの含有量は、好ましくは3.0〜7.0質量%である。Cu−Fe−Mn合金粉末中のMnは含有量が多くなるほど、アトマイズ時の溶湯の粘性が高くなるため製造が困難となる。また含有量が少なすぎる場合はCu−Fe−Mn合金粉末の配合量が多くなり、その他の構成粉末を配合できなくなる。Cu−Fe−Mn合金粉末中のMnの含有量は好ましくは2.0〜5.0質量%である。
Cu−Zn−Al合金粉末中のZnは含有量が多くなるほど合金の沸点が下がり、溶浸時のZnの蒸発量が多くなる。さらには溶浸炉を汚損する要因となることから、溶浸材に配合する合金粉末としては、なるべく含有量を少なくし配合量を多くすることが好ましい。しかしながら合金中のZnの含有量が少なすぎる場合は合金粉末の配合量が多くなりすぎるため、Cu−Zn−Al系合金粉末中のZnの含有量は、好ましくは10.0〜40.0質量%とした。本発明の溶浸材中のAlはCu−Zn−Al系合金粉末として配合される。アトマイズ法の溶解工程でZnは蒸発あるいは酸化物を形成(脱酸剤の効果)するために歩留まりが悪いが、Alの添加はアトマイズの溶解温度域でZnよりも優先的に酸化されるためZnの歩留まり改善には有効である。またAlの単一元素粉末は粉末表面酸化の進行が早く、酸化による発熱が大きいことから燃焼反応を起こしやすい。また粉塵爆発の危険性が高いことから合金粉末として配合することが好ましい。Cu−Zn−Al系合金粉末中のAlの含有量は、好ましくは0.1〜3.0質量%である。
本発明の溶浸材に含まれるSiの含有量は、0.1〜0.6質量%と比較的少ないため合金粉末として配合するよりも単一元素の粉末で配合した方が均一に分散して配合できるため好ましい。Siは溶浸時に酸化物を形成し、溶浸しきれないCuの基材への固着を防止する効果があり、単一元素で混合粉末中に均一に分散させることによりその効果が安定化する。
本発明の溶浸材に含まれるCu粉末は、例えばアトマイズ粉末、還元粉末、電解法など通常製造される粉末であれば、なんらその特性に影響を及ぼすものではない。
本発明の溶浸材に配合される粉末の粒子径は1〜300μmが好ましい。300μmを超えると混合した場合に成分偏析の原因となる。1μm未満となるとハンドリング性が悪くなり、また経済的にも高価となるため好ましくない。
本発明の溶浸材には成形の際に潤滑性改善を目的として潤滑剤が0.1〜1.0質量%添加される。潤滑剤の種類については特に規定されるものでは無く、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウム、金属セッケン、EBS系ワックスなどが使用できる。
一般的に用いられる溶浸法では、基材(Fe基圧粉体あるいは焼結体)と溶浸材(Cu基圧粉体)を接触させた状態とし還元雰囲気内で同時に両者を加熱する。大きく分けて、基材の焼結と溶浸を同時に行う一段溶浸法と基材をまず一次加熱することで予備焼結し、この焼結体に溶浸材を接触させ二次加熱することで溶浸を行う二段溶浸法がある。二段溶浸法は予備加熱の段階で粉末粒子間が強固に結合するため強固な骨格構造が得られるといった利点があるが、経済的に有利なため一般的には一段溶浸法が広く採用されている。本発明の溶浸材は、二段溶浸はもちろん一段溶浸法においても良好な溶浸特性が得られる。以下、本発明の溶浸材の実施例をより具体的に説明する。
本発明の溶浸材用粉末および配合する合金粉末の組成を表1に示す。
基材としては、Fe−1.5質量%Cu−1質量%Cの組成となるようにアトマイズFe粉末、電解Cu粉末、黒鉛粉末を混合し、さらにステアリン酸亜鉛を0.8質量%添加した混合粉末13.7gを巾12mm×長さ30mmの角柱状、密度6.3g/cm3の圧粉体となるように成形した。
(実施例1〜3および比較例1〜2)
溶浸材としてはアトマイズ法により製造されたCu−Fe−Mn粉末、Cu−Zn−Al粉末、粉砕法により製造されたSi粉末および電解法により製造されたCu粉末を表1に示す組成となるようにそれぞれ配合し、さらに潤滑剤としてのステアリン酸カルシウムを0.8質量%添加し混合粉末とした。この際、実施例1では、Cu−Fe−Mn粉末(Cu/Fe/Mn=Bal./4.0/2.7質量%)を37.5質量%、Cu−Zn−Al粉末(Cu/Zn/Al=Bal./20/0.2質量%)を5.0質量%配合し、実施例2では、Cu−Fe−Mn粉末(Cu/Fe/Mn=Bal./4.0/3.0質量%)を50質量%、Cu−Zn−Al粉末(Cu/Zn/Al=Bal./15/0.5質量%)を10質量%配合し、実施例3では、Cu−Fe−Mn粉末(Cu/Fe/Mn=Bal./7.0/3.2質量%)を78.6質量%、Cu−Zn−Al粉末(Cu/Zn/Al=Bal./20/1.0)を10質量%配合した。比較例1では、Cu−Fe−Mn粉末(Cu/Fe/Mn=Bal./4.0/4.0質量%)を12.5質量%、Cu−Zn−Al粉末(Cu/Zn/Al=Bal./20/2.0質量%)を2.5質量%配合し、比較例2では、Cu−Fe−Mn粉末(Cu/Fe/Mn=Bal./7.0/5.3質量%)を57質量%、Cu−Zn−Al粉末(Cu/Zn/Al=Bal./20/0.7質量%)を15.0質量%配合した。
これらの溶浸材は、基材の気孔に対し80体積%となる量の溶浸材を巾12mm×長さ30mm×厚さ1.5mmの板状に成形した。
圧粉体とした基材の上に溶浸材の圧粉体を乗せ一段溶浸した。溶浸条件としては550℃で30分間加熱し圧粉体中の潤滑剤を脱ロウし、その後1110℃で30分間加熱した。焼結炉内の雰囲気は水素対窒素が3対1の混合ガス雰囲気とした。得られた溶浸体の特性を併せて表1に示す。
(比較例3)
基材としては実施例1〜3と同様の方法で作成した圧粉体を使用する。溶浸材としては、表1に記載の組成の合金粉末をアトマイズ法により作成し、さらにステアリン酸カルシウムを0.8質量%添加して混合粉末とし実施例1〜3と同様の方法で圧粉体とした。これらの圧粉体を実施例1〜3と同様の方法で溶浸し、得られた溶浸体の特性を併せて表1に示す。
(比較例4)
基材としては、実施例1〜3と同様の方法で作成した圧粉体を使用する。溶浸材としては各単体元素粉末を表1に記載の組成となるように配合し、さらにステアリン酸カルシウムを0.8質量%添加して混合粉末とし実施例1〜3と同様の方法で圧粉体とした。これらの圧粉体を実施例1〜3と同様の方法で溶浸し、得られた溶浸体の特性を表1に示す。
Figure 2013133518
実施例1〜3に示すように本発明の溶浸用粉末はどの溶浸材も溶浸率94%以上と高い溶浸率が得られ、また基材表面に溶浸しきれなかったCuを含む残滓は溶浸直後の段階で溶浸体から剥離した状態であり、良好な剥離性が得られた。比較例1は溶浸後に酸化物として残滓となるMn、Zn、Siの含有量が少なく、溶浸しきれなかったCuが基材表面に固着した状態であり溶浸率は測定できなかった。比較例2は比較例1と逆にMn、Zn、Si の含有量が多く、残滓は基材から容易に剥離できるが、残滓の形成量が多いために溶浸率が83%と低くなった。
比較例3は実施例2と同じ成分であるが単一の合金粉末であり、溶浸後は残滓が基材表面に固着し溶浸率を測定できない状態となった。比較例4は実施例2と同じ成分であるが単体元素粉末の混合粉末である。溶浸後の残滓の剥離性は良好であったが、実施例1〜3に比べ溶浸率は低くなった。Fe系基材へのCu系溶浸材の溶浸性は、溶浸材の成分だけでは無く、粉末の構成を最適化することが重要である。
以上詳細に記した通り、本発明の溶浸材は溶浸率が高く、溶浸材の残滓の剥離性に優れる。従来の溶浸材よりも溶浸率が向上したことにより、溶浸材の使用量を低減することができるため経済的に優位となる。また本発明の溶浸材は、良好な残滓の剥離性を有しつつ従来使用されている溶浸材よりも高い溶浸率が得られることから、これまでに得られなかった溶浸体の特性を有することを可能にした。
本発明のCu系溶浸材はFe系基材への溶浸性に優れるため、基材の密度を高くし、機械的強度、硬さ等を改善する。将来的には機械的強度を要するあらゆる分野で適用される可能性がある。

Claims (4)

  1. Cu粉末とSi粉末とCu−Fe−Mn合金粉末とCu−Zn−Al合金粉末とが混合されてなる混合粉末であり、当該混合粉末が、Fe 1.5〜5.5質量%、Mn 1.0〜2.5質量%、Zn 1.0〜2.0質量%、Al 0.01〜0.1質量%、Si 0.1〜0.6質量%、残部がCuからなる組成を有することを特徴とする溶浸用混合粉末。
  2. 前記Cu−Fe−Mn合金粉末中のFeの含有量が 3.0〜7.0質量%であり、Mnの含有量が 2.0〜5.0質量%であり、当該Cu−Fe−Mn合金粉末が前記混合粉末に25.0〜90.0質量%配合されていることを特徴とする請求項1に記載の溶浸用混合粉末。
  3. 前記Cu−Zn−Al合金粉末中のZnの含有量が 10.0〜40.0質量%であり、Alの含有量が 0.1〜3.0質量%であり、当該Cu−Zn−Al合金粉末が前記混合粉末に3.0〜15.0質量%配合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶浸用混合粉末。
  4. 更に、成形の際の潤滑性を改善するための潤滑剤を0.1〜1.0質量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶浸用混合粉末。
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