JP2013133516A - 耐高温3層ブレージングシート - Google Patents
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Abstract
【課題】高温で高強度であるとともに各種強酸に対する耐孔食性を両立できる3層ブレージングシートを提供する。
【解決手段】Mn:1.0〜1.8%、Si:0.3〜1.2%、Cu:0.1〜1.0%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる芯材と、芯材の一方の面に形成され、Zn:1.0〜5.0%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる犠牲材と、芯材の他方の面に形成され、Al-Si合金からなるろう材と、がクラッドされている3層ブレージングシート。
【選択図】なし
【解決手段】Mn:1.0〜1.8%、Si:0.3〜1.2%、Cu:0.1〜1.0%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる芯材と、芯材の一方の面に形成され、Zn:1.0〜5.0%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる犠牲材と、芯材の他方の面に形成され、Al-Si合金からなるろう材と、がクラッドされている3層ブレージングシート。
【選択図】なし
Description
本発明は、耐高温3層ブレージングシートに関し、特に強酸環境下での耐食性に優れるブレージングシートに関する。
ろう付処理によって構成される自動車用各種部材ではEGR(Exhaust Gas Recirculation:排気ガス再循環)クーラ用部材,CAC(Charged Air Cooler)用部材、マフラー部材など高温環境に曝されるとともに、内部が排ガス成分である強酸環境に曝されるケースが増加している。これら部材では排気ガスの濃縮水が部材内部に付着することになる。この排気濃縮水は塩酸や硝酸、硫酸などの各種強酸を含むために、各部材には高温での耐圧強度に加え、各種強酸環境下における耐食性も要求されるようになってきている。
例えば、従来のCAC用チューブ材としては、特許文献1に記載されているようにアルミニウム合金が用いられる。一般的にAl-Mn-Cu系合金からなる芯材の片面、あるいは両面にAl-Si系合金ろう材をクラッドしたアルミニウム合金が使用されている。Al-Si系ろう材は他部材との一体ろう付接合のために貼り合わされており、ろう付は通常不活性ガス雰囲気中でフッ化物系フラックスを用いて行なわれる。
従来のCAC用チューブ材では、芯材にCuを加えることにより、芯材-ろう材間で一定の電位差を確保することで、耐孔食性を向上させている。しかし、上記の排気ガス濃縮水のような各種強酸環境下での耐孔食性は十分でなく、ごく短期間で貫通孔が発生する可能性が考えられる。
そこで本発明は、各種強酸環境下で耐孔食性に優れるアルミ合金を検討し、高温での高強度と各種強酸に対する耐孔食性を両立できるブレージングシートを提供することを目的とする。
従来のCAC用チューブ材では、芯材にCuを加えることにより、芯材-ろう材間で一定の電位差を確保することで、耐孔食性を向上させている。しかし、上記の排気ガス濃縮水のような各種強酸環境下での耐孔食性は十分でなく、ごく短期間で貫通孔が発生する可能性が考えられる。
そこで本発明は、各種強酸環境下で耐孔食性に優れるアルミ合金を検討し、高温での高強度と各種強酸に対する耐孔食性を両立できるブレージングシートを提供することを目的とする。
本発明の強酸環境下での耐食性に優れる3層ブレージングシート(以下、単にブレージングシートということがある)は、以下の構成を備えている。
すなわち、Mn:1.0〜1.8%、Si:0.3〜1.2%、Cu:0.1〜0.8%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる芯材と、芯材の一方の面に形成され、Zn:1.0〜5.0%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる犠牲材と、芯材の他方の面に形成され、Al-Si合金からなるろう材と、がクラッドされている。
なお、本発明において、断りがない限り、元素の量は質量%である。
すなわち、Mn:1.0〜1.8%、Si:0.3〜1.2%、Cu:0.1〜0.8%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる芯材と、芯材の一方の面に形成され、Zn:1.0〜5.0%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる犠牲材と、芯材の他方の面に形成され、Al-Si合金からなるろう材と、がクラッドされている。
なお、本発明において、断りがない限り、元素の量は質量%である。
本発明のブレージングシートにおける芯材は、上記元素に加えて、Mg:0.1〜0.3%、Zr:0.05〜0.20%のうち1種または2種をさらに含有することが、強酸環境下での耐食性にとって望ましい。
本発明のブレージングシートにおいて、ろう付熱処理後の犠牲材の電位が芯材の電位より100-200mV卑であり、且つ、ろう付熱処理に引き続いて、200℃,10hの熱処理をさらに施した後に、犠牲材の電位が芯材の電位より100-200mV卑であることが、強酸環境下での耐食性にとって望ましい。
また、本発明のブレージングシートにおいて、ろう付熱処理後の芯材における結晶粒内と結晶粒界の電位差(粒内−粒界)が20mV未満であり、且つ、ろう付熱処理に引き続いて、200℃,10hの熱処理をさらに施した後に、芯材における結晶粒内と結晶粒界の電位差(粒内−粒界)が20mV未満であることが、強酸環境下での耐食性にとって望ましい。
また、本発明のブレージングシートにおいて、ろう付熱処理後の芯材における結晶粒内と結晶粒界の電位差(粒内−粒界)が20mV未満であり、且つ、ろう付熱処理に引き続いて、200℃,10hの熱処理をさらに施した後に、芯材における結晶粒内と結晶粒界の電位差(粒内−粒界)が20mV未満であることが、強酸環境下での耐食性にとって望ましい。
本発明によれば、高温で高強度であるとともに各種強酸に対する耐孔食性を両立できるブレージングシートが提供される。
以下、本発明のブレージングシートを詳細に説明する。
(1)芯材の成分
[Mn:1.0〜1.8%]
Mnはマトリックス中にAl-Mn-Si系の金属間化合物を微細に形成し、芯材の強度を高める効果がある。
しかし、Mn量が1.0%未満ではその効果が充分に発揮されず、1.8%を超えると鋳造性が劣り、また、鋳造時に巨大な金属間化合物を生成するためその後の圧延性が劣る。したがって、本発明の芯材のMn量は、1.0〜1.8%とする。なお、同様の理由から下限を1.15%、上限を1.75%とすることが望ましく、さらには下限を1.5%、上限を1.7%にすることがより望ましい。
(1)芯材の成分
[Mn:1.0〜1.8%]
Mnはマトリックス中にAl-Mn-Si系の金属間化合物を微細に形成し、芯材の強度を高める効果がある。
しかし、Mn量が1.0%未満ではその効果が充分に発揮されず、1.8%を超えると鋳造性が劣り、また、鋳造時に巨大な金属間化合物を生成するためその後の圧延性が劣る。したがって、本発明の芯材のMn量は、1.0〜1.8%とする。なお、同様の理由から下限を1.15%、上限を1.75%とすることが望ましく、さらには下限を1.5%、上限を1.7%にすることがより望ましい。
[Si:0.3〜1.2%]
Siはマトリックス中にAl-Mn-Si系の金属間化合物を微細に形成し、芯材の強度を高める効果がある。
しかし、Si量が0.3%未満ではその効果が充分に発揮されず、1.2%を超えると材料の融点が低下してろう付け性が劣る。したがって、本発明の芯材のSi量は、0.3〜1.2%とする。なお同様の理由から下限を0.4%、上限を1.2%とすることが望ましく、さらには下限を0.8%、上限を1.2%にすることがより望ましい。
Siはマトリックス中にAl-Mn-Si系の金属間化合物を微細に形成し、芯材の強度を高める効果がある。
しかし、Si量が0.3%未満ではその効果が充分に発揮されず、1.2%を超えると材料の融点が低下してろう付け性が劣る。したがって、本発明の芯材のSi量は、0.3〜1.2%とする。なお同様の理由から下限を0.4%、上限を1.2%とすることが望ましく、さらには下限を0.8%、上限を1.2%にすることがより望ましい。
[Cu:0.1〜1.0%]
Cuはマトリックス中に固溶し、材料の強度を高める効果や、芯材に添加した場合、芯材の電位を貴として犠牲材との電位差が大きくなるため、耐食性を向上させる効果がある。
しかし、Cu量が0.1%未満ではその効果が充分に発揮されず、1.0%を超えると材料の融点が低下するとともに、鋳造性が劣る。したがって、本発明の芯材のCu量は、0.1〜1.0%とする。なお、同様の理由により下限を0.2%、上限を0.5%とすることが望ましく、さらには、下限を0.2%、上限を0.40%とすることがより望ましい。
Cuはマトリックス中に固溶し、材料の強度を高める効果や、芯材に添加した場合、芯材の電位を貴として犠牲材との電位差が大きくなるため、耐食性を向上させる効果がある。
しかし、Cu量が0.1%未満ではその効果が充分に発揮されず、1.0%を超えると材料の融点が低下するとともに、鋳造性が劣る。したがって、本発明の芯材のCu量は、0.1〜1.0%とする。なお、同様の理由により下限を0.2%、上限を0.5%とすることが望ましく、さらには、下限を0.2%、上限を0.40%とすることがより望ましい。
以下のMg及びZrは本発明の芯材に含有させることが好ましい元素である。
[Mg:0.1〜0.3%]
Mgはマトリックス中に固溶し、材料の強度を高める効果や、芯材に添加した場合、芯材の電位を貴として犠牲材との電位差が大きくなるため、耐食性を向上させる効果がある。
しかし、Mg量が0.1%未満ではその効果が充分に発揮されず、0.3%を超えると材料の融点が低下しろう付け性を悪くする。したがって、本発明の芯材のMg量は、0.1〜0.3%とする。
[Mg:0.1〜0.3%]
Mgはマトリックス中に固溶し、材料の強度を高める効果や、芯材に添加した場合、芯材の電位を貴として犠牲材との電位差が大きくなるため、耐食性を向上させる効果がある。
しかし、Mg量が0.1%未満ではその効果が充分に発揮されず、0.3%を超えると材料の融点が低下しろう付け性を悪くする。したがって、本発明の芯材のMg量は、0.1〜0.3%とする。
[Zr:0.05〜0.20%]
Zrはマトリックス中に固溶し、材料の強度を高める効果がある。
しかし、Zr量が0.05%未満ではその効果が充分に発揮されず、0.20%を超えると鋳造性が劣り、また、鋳造時に巨大な金属間化合物を生成するためその後の圧延性が劣る。したがって、本発明の芯材のZr量は、0.05〜0.20%とする。
なお、芯材における上記元素以外は、Al及び不可避不純物である。
(2)犠牲材
[Zn:1.0〜5.0%]
Znは電位を卑にする作用があり、犠牲材に添加した場合、芯材との電位差が大きくなり、耐食性に有効な電位勾配ができることで、ブレージングシートの耐食性を向上させ、腐食減量を低減する効果がある。しかし、Zn量が1.0%未満ではその効果が充分に発揮されず、5.0%を超えると腐食速度が速くなり腐食減量が増加する。したがって、本発明の犠牲材のZn量は、1.0〜5.0%とする。なお、同様の理由により、下限を1.0%、上限を4.0%とすることが望ましく、さらには下限を1.5%、上限を3.5%とすることがより望ましい。
Zrはマトリックス中に固溶し、材料の強度を高める効果がある。
しかし、Zr量が0.05%未満ではその効果が充分に発揮されず、0.20%を超えると鋳造性が劣り、また、鋳造時に巨大な金属間化合物を生成するためその後の圧延性が劣る。したがって、本発明の芯材のZr量は、0.05〜0.20%とする。
なお、芯材における上記元素以外は、Al及び不可避不純物である。
(2)犠牲材
[Zn:1.0〜5.0%]
Znは電位を卑にする作用があり、犠牲材に添加した場合、芯材との電位差が大きくなり、耐食性に有効な電位勾配ができることで、ブレージングシートの耐食性を向上させ、腐食減量を低減する効果がある。しかし、Zn量が1.0%未満ではその効果が充分に発揮されず、5.0%を超えると腐食速度が速くなり腐食減量が増加する。したがって、本発明の犠牲材のZn量は、1.0〜5.0%とする。なお、同様の理由により、下限を1.0%、上限を4.0%とすることが望ましく、さらには下限を1.5%、上限を3.5%とすることがより望ましい。
(3)ろう材
本発明におけるろう材は、Al-Si合金(JIS 4045合金,4343合金を含む)からなる。このAl-Si合金としては、Siを5.0〜9.5%含有することが好ましい。Siが5.0%未満では含有量が少ないためにろう付け不良を招き、Siが9.5%を超えるとろう付け時に溶融してしまう。Siの好ましい量は5.5〜9.0%、より好ましい量は6.0〜8.0%である。
本発明におけるろう材は、Al-Si合金(JIS 4045合金,4343合金を含む)からなる。このAl-Si合金としては、Siを5.0〜9.5%含有することが好ましい。Siが5.0%未満では含有量が少ないためにろう付け不良を招き、Siが9.5%を超えるとろう付け時に溶融してしまう。Siの好ましい量は5.5〜9.0%、より好ましい量は6.0〜8.0%である。
(4)芯材と犠牲材の電位について
本発明者らの検討によると、ブレージングシートを構成する芯材と犠牲材の電位差を特定することにより、強酸環境下での耐食性に優れる。つまり、ろう付熱処理後の犠牲材の電位が芯材の電位より100〜200mV卑であり、且つ、ろう付熱処理に引き続いて、200℃,10h(10時間)の熱処理をさらに施した後の、犠牲材の電位が芯材の電位より100〜200mV卑であることが、強酸環境下での耐食性にとって望ましい。
ここで、ろう付け後の電位差を特定するのは、本発明のブレージングシートがろう付けに供されるからである。また、ろう付け後に施す200℃,10hの熱処理は以下の意味を有する。本発明が志向する各種自動車部材の使用温度が最大200℃位であること、実際の自動車でこの最高温度に晒されるのは数100時間であるものの、10時間以上この温度に保持されても電位への影響が小さいこと、に基づいて規定されている。
3層のブレージングシートにおける芯材の電位は、ろう付け後にろう材及び犠牲材をエッチングで溶かして、芯材面を露出させてから測定する。一方、犠牲材はブレージングシートの表面にもともと露出しているので、芯材のようなエッチングをすることなく測定できる。ただし、犠牲材と芯材の界面近傍はろう付加熱で互いに合金成分が拡散しあい、正確な電位が測れないので、界面からなるべく離れている犠牲材の表面で電位を測定する。これに対して芯材の場合は、板厚中央の電位を測定することになる。後述する実施例は、以上の手順に従って、芯材、犠牲材の電位を測定した。
本発明者らの検討によると、ブレージングシートを構成する芯材と犠牲材の電位差を特定することにより、強酸環境下での耐食性に優れる。つまり、ろう付熱処理後の犠牲材の電位が芯材の電位より100〜200mV卑であり、且つ、ろう付熱処理に引き続いて、200℃,10h(10時間)の熱処理をさらに施した後の、犠牲材の電位が芯材の電位より100〜200mV卑であることが、強酸環境下での耐食性にとって望ましい。
ここで、ろう付け後の電位差を特定するのは、本発明のブレージングシートがろう付けに供されるからである。また、ろう付け後に施す200℃,10hの熱処理は以下の意味を有する。本発明が志向する各種自動車部材の使用温度が最大200℃位であること、実際の自動車でこの最高温度に晒されるのは数100時間であるものの、10時間以上この温度に保持されても電位への影響が小さいこと、に基づいて規定されている。
3層のブレージングシートにおける芯材の電位は、ろう付け後にろう材及び犠牲材をエッチングで溶かして、芯材面を露出させてから測定する。一方、犠牲材はブレージングシートの表面にもともと露出しているので、芯材のようなエッチングをすることなく測定できる。ただし、犠牲材と芯材の界面近傍はろう付加熱で互いに合金成分が拡散しあい、正確な電位が測れないので、界面からなるべく離れている犠牲材の表面で電位を測定する。これに対して芯材の場合は、板厚中央の電位を測定することになる。後述する実施例は、以上の手順に従って、芯材、犠牲材の電位を測定した。
(5)芯材の結晶粒内と結晶粒界の電位について
本発明者らの検討によると、ブレージングシートを構成する芯材の結晶粒内と結晶粒界の電位差を特定することにより、強酸環境下での耐食性に優れる。つまり、ろう付熱処理後の前記芯材における結晶粒内と結晶粒界の電位差(粒内−粒界)が20mV未満であり、且つ、ろう付熱処理に引き続いて、230℃,10hの熱処理をさらに施した後に、芯材における結晶粒内と結晶粒界の電位差(粒内−粒界)が20mV未満であることが強酸環境下での耐食性にとって望ましい。粒内と粒界の電位差が20mV以上であると、電位的に卑な粒界が優先的に腐食する粒界腐食が発生し、比較的早期に貫通に至る。
結晶粒内および粒界の電位測定は、アノード分極曲線において、電流密度が増大するピーク電位が一点のみ現れた場合は「粒内電位=粒界電位」とし、二点現れた場合には、電位が卑なものを粒界電位、貴なものを粒内電位とした。
なお、「粒界」とは結晶粒界を含む幅±5μmの範囲とし、粒界から5μmを超えて離れた箇所を「粒内」と定義した。
本発明者らの検討によると、ブレージングシートを構成する芯材の結晶粒内と結晶粒界の電位差を特定することにより、強酸環境下での耐食性に優れる。つまり、ろう付熱処理後の前記芯材における結晶粒内と結晶粒界の電位差(粒内−粒界)が20mV未満であり、且つ、ろう付熱処理に引き続いて、230℃,10hの熱処理をさらに施した後に、芯材における結晶粒内と結晶粒界の電位差(粒内−粒界)が20mV未満であることが強酸環境下での耐食性にとって望ましい。粒内と粒界の電位差が20mV以上であると、電位的に卑な粒界が優先的に腐食する粒界腐食が発生し、比較的早期に貫通に至る。
結晶粒内および粒界の電位測定は、アノード分極曲線において、電流密度が増大するピーク電位が一点のみ現れた場合は「粒内電位=粒界電位」とし、二点現れた場合には、電位が卑なものを粒界電位、貴なものを粒内電位とした。
なお、「粒界」とは結晶粒界を含む幅±5μmの範囲とし、粒界から5μmを超えて離れた箇所を「粒内」と定義した。
本発明のブレージングシートは、犠牲材の側を内側にして使用される。外面の側のろう材は被接合体とのろう付接合に用いられる。
[実施例]
以上説明した本発明のブレージングシートの効果を確認するために行った具体的な例を説明する。
[材料の製造工程]
半連続鋳造により芯材用アルミニウム合金、犠牲材用アルミニウム合金、およびろう材用合金(JIS A4045合金)を鋳造した。なお、各合金の化学組成は表1に示されている通りである。
得られた芯材用合金、犠牲材用合金、およびろう材用合金は、いずれも500℃×6hr、の均質化処理を行なった。この均質化処理の条件は一例である。
均質化処理の後に、芯材用合金の一方の面に犠牲材用合金を、さらに他方の面にろう材用合金を組み合わせて熱間圧延し、クラッド材とした。
このクラッド材を所定の厚さまで冷間圧延を行った後、中間焼鈍を400℃で3hr行い、最終の冷間圧延により厚さ0.4mmのH14調質の3層ブレージングシート(試料)を作製した。クラッド材における各要素のクラッド率は、犠牲材:芯材:ろう材(厚さ)=15%:75%:10%である。ただし、このクラッド率はあくまで一例であり、犠牲材のクラッド率を17%や20%にしてもよい。また、中間焼鈍についても上記は一例であり、温度:200〜400℃、保持時間:1〜6hの範囲から選択することができる。
なお、表1の比較例2は、Mn量が多すぎるために、鋳造時に巨大晶が発生し、これが起点となって圧延時に破断が頻発し、健全なクラッド材を製造できなかった。
以上説明した本発明のブレージングシートの効果を確認するために行った具体的な例を説明する。
[材料の製造工程]
半連続鋳造により芯材用アルミニウム合金、犠牲材用アルミニウム合金、およびろう材用合金(JIS A4045合金)を鋳造した。なお、各合金の化学組成は表1に示されている通りである。
得られた芯材用合金、犠牲材用合金、およびろう材用合金は、いずれも500℃×6hr、の均質化処理を行なった。この均質化処理の条件は一例である。
均質化処理の後に、芯材用合金の一方の面に犠牲材用合金を、さらに他方の面にろう材用合金を組み合わせて熱間圧延し、クラッド材とした。
このクラッド材を所定の厚さまで冷間圧延を行った後、中間焼鈍を400℃で3hr行い、最終の冷間圧延により厚さ0.4mmのH14調質の3層ブレージングシート(試料)を作製した。クラッド材における各要素のクラッド率は、犠牲材:芯材:ろう材(厚さ)=15%:75%:10%である。ただし、このクラッド率はあくまで一例であり、犠牲材のクラッド率を17%や20%にしてもよい。また、中間焼鈍についても上記は一例であり、温度:200〜400℃、保持時間:1〜6hの範囲から選択することができる。
なお、表1の比較例2は、Mn量が多すぎるために、鋳造時に巨大晶が発生し、これが起点となって圧延時に破断が頻発し、健全なクラッド材を製造できなかった。
以上のようにして得た試料について、以下の評価を行った。
[電位(mV)]
芯材、犠牲材について以下の電位A〜Dを測定した。
電位A;ろう付後の芯材の電位
電位B;ろう付後の犠牲材の電位
電位C;ろう付後に、200℃で10h保持する熱処理を行った後の芯材の電位
電位D;ろう付後に、200℃で10h保持する熱処理を行った後の犠牲材の電位
電位E;ろう付後の芯材の粒内電位
電位F;ろう付後の芯材の粒界電位
電位G;ろう付後に、200℃で10h保持する熱処理を行った後の芯材の粒内電位
電位H;ろう付後に、200℃で10h保持する熱処理を行った後の芯材の粒界電位
測定方法;ろう付相当熱処理を行った後の各試料を用いて、アノード分極を実施。アノード分極には照合電極として飽和カロメル電極を用い、窒素ガスの吹き込みにより脱気した40℃の2.67%AlCl3溶液中で電位掃引速度0.5mV/sで測定。
[電位(mV)]
芯材、犠牲材について以下の電位A〜Dを測定した。
電位A;ろう付後の芯材の電位
電位B;ろう付後の犠牲材の電位
電位C;ろう付後に、200℃で10h保持する熱処理を行った後の芯材の電位
電位D;ろう付後に、200℃で10h保持する熱処理を行った後の犠牲材の電位
電位E;ろう付後の芯材の粒内電位
電位F;ろう付後の芯材の粒界電位
電位G;ろう付後に、200℃で10h保持する熱処理を行った後の芯材の粒内電位
電位H;ろう付後に、200℃で10h保持する熱処理を行った後の芯材の粒界電位
測定方法;ろう付相当熱処理を行った後の各試料を用いて、アノード分極を実施。アノード分極には照合電極として飽和カロメル電極を用い、窒素ガスの吹き込みにより脱気した40℃の2.67%AlCl3溶液中で電位掃引速度0.5mV/sで測定。
[強度]
ろう付相当熱処理を行った各試料(クラッド材)からJIS H 4000に基づいて引張試験片を作製し、これら試験片を用いて引張試験を行うことによりろう付後の強度(引張強さ)を得た。結果を表1に示す。
引張強さは、130MPa以上を○、130MPa未満を×と判断して結果を表1に示した
ろう付相当熱処理を行った各試料(クラッド材)からJIS H 4000に基づいて引張試験片を作製し、これら試験片を用いて引張試験を行うことによりろう付後の強度(引張強さ)を得た。結果を表1に示す。
引張強さは、130MPa以上を○、130MPa未満を×と判断して結果を表1に示した
[耐食性]
ろう付相当熱処理を行った各試料を用いて、各種強酸混合液(塩酸200ppm,硝酸200ppm,硫酸200ppm,酢酸200ppmの混合液)中での浸漬試験を実施した。強酸浸漬試験における評価は「腐食深さ」と「腐食減量」とした。結果を表1に示す。
腐食深さに関して、貫通寿命が浸漬試験100日以上である場合を「◎」、50日以上100日未満を「○」、25日以上50日未満を「△」、25日未満を「×」として評価した。
また、腐食減量に関して、腐食試験1日当たりの腐食減量が15mg/dm2未満のものを「◎」、15mg/dm2以上25mg/dm2未満のものを「○」、25mg/dm2以上30mg/dm2未満のものを「△」、30mg/dm2以上のものを「×」として評価した。
ろう付相当熱処理を行った各試料を用いて、各種強酸混合液(塩酸200ppm,硝酸200ppm,硫酸200ppm,酢酸200ppmの混合液)中での浸漬試験を実施した。強酸浸漬試験における評価は「腐食深さ」と「腐食減量」とした。結果を表1に示す。
腐食深さに関して、貫通寿命が浸漬試験100日以上である場合を「◎」、50日以上100日未満を「○」、25日以上50日未満を「△」、25日未満を「×」として評価した。
また、腐食減量に関して、腐食試験1日当たりの腐食減量が15mg/dm2未満のものを「◎」、15mg/dm2以上25mg/dm2未満のものを「○」、25mg/dm2以上30mg/dm2未満のものを「△」、30mg/dm2以上のものを「×」として評価した。
Claims (4)
- Mn:1.0〜1.8%、Si:0.3〜1.2%、Cu:0.1〜1.0%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる芯材と、
前記芯材の一方の面に形成され、Zn:1.0〜5.0%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる犠牲材と、
前記芯材の他方の面に形成され、Al-Si系合金からなるろう材と、
がクラッドされ、強酸環境下での耐食性に優れることを特徴とする3層ブレージングシート。 - 前記芯材は、Mg:0.1〜0.3%、Zr:0.05〜0.20%のうち1種または2種をさらに含有する、
請求項1に記載の強酸環境下での耐食性に優れる3層ブレージングシート。 - ろう付熱処理後の前記犠牲材の電位が前記芯材の電位より100-200mV卑であり、且つ、
ろう付熱処理に引き続いて、200℃,10hの熱処理をさらに施した後に、前記犠牲材の電位が前記芯材の電位より100-200mV卑である、
請求項1又は2に記載の強酸環境下での耐食性に優れる3層ブレージングシート。 - ろう付熱処理後の前記芯材における結晶粒内と結晶粒界の電位差(粒内−粒界)が20mV未満であり、且つ、ろう付熱処理に引き続いて、200℃,10hの熱処理をさらに施した後に、前記芯材における結晶粒内と結晶粒界の電位差(粒内−粒界)が20mV未満である、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の強酸環境下での耐食性に優れる3層ブレージングシート。
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JP2011285537A JP2013133516A (ja) | 2011-12-27 | 2011-12-27 | 耐高温3層ブレージングシート |
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- 2011-12-27 JP JP2011285537A patent/JP2013133516A/ja active Pending
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