JP2013133074A - 制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】制動トルク制御実行判定部により制動トルク制御を実行すると判定されていると共に充電制限判定部により充電制限ありと判定されている場合に、入力部材の回転速度を、ゼロより高い目標回転速度に近付けるように第一回転電機を力行させると共に、係合装置の伝達トルクを、内燃機関が回転し始めるトルクである静止限界トルク未満となるように制御して、係合装置の伝達トルクにより出力部材に負トルクを出力させる制動トルク制御部を備える制御装置。
【選択図】図5
Description
前記車両用駆動装置における前記入力部材、前記出力部材、及び前記第一回転電機が、それぞれ前記差動歯車装置の異なる回転要素に駆動連結され、前記第二回転電機が、前記出力部材が駆動連結された回転要素に駆動連結され、前記内燃機関の回転が停止している状態で、前記出力部材に負トルクを出力させる制動要求があった場合に、制動トルク制御を実行すると判定する制動トルク制御実行判定部と、前記蓄電装置の充電状態を表す充電状態指標が予め定められた充電制限判定値以上である場合に充電制限ありと判定し、前記充電状態指標が前記充電制限判定値未満である場合に充電制限なしと判定する充電制限判定部と、前記制動トルク制御実行判定部により前記制動トルク制御を実行すると判定されていると共に前記充電制限判定部により充電制限なしと判定されている場合に、前記第二回転電機を発電させて、前記第二回転電機の発電トルクにより前記出力部材に負トルクを出力させ、前記制動トルク制御実行判定部により前記制動トルク制御を実行すると判定されていると共に前記充電制限判定部により充電制限ありと判定されている場合に、前記入力部材の回転速度を、ゼロより高い回転速度に設定された目標回転速度に近付けるように前記第一回転電機を力行させると共に、前記係合装置の伝達トルクを、前記内燃機関が回転し始めるトルクである静止限界トルク未満となるように制御して、前記係合装置の伝達トルクにより前記出力部材に負トルクを出力させる制動トルク制御部と、を備える点にある。
また、本願において「回転電機」とは、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
また、係合装置の伝達トルクは、係合部材の係合圧により定まるので、内燃機関に負トルクを出力させる場合に比べて負トルクの制御精度を向上させることができる。
従って、上記の特徴構成によれば、充電制限ありと判定されている場合においても、内燃機関を回転させない範囲内で係合装置を係合させて、車両の制動力の制御を精度良く行うことができる。
また、係合装置の発熱パワーが要求制動パワーに近づくように、入力部材の回転速度及び係合装置の伝達トルクが制御されるので、発熱パワーを要求制動パワーに精度良く近づけることができる。よって、第二回転電機の電力(パワー)、第一回転電機の電力(パワー)、及び係合装置の発熱パワーの合計である駆動力源出力パワーと、要求制動パワーと、を近づけることができる。これにより、駆動力源側から出力部材に出力されるトルクである駆動力源出力トルクを、要求制動トルクに近づけることができる。
本実施形態では、差動歯車装置PGは、サンギヤS、キャリヤCa、及びリングギヤRの3つの回転要素E1、E2、E3を有する遊星歯車装置PGとされている。そして、入力軸Iは、キャリヤCaに、サンギヤS及びリングギヤRを介することなく駆動連結されている。出力軸Oは、リングギヤRに、サンギヤS及びキャリヤCaを介することなく駆動連結されている。第一回転電機MG1は、サンギヤSに、リングギヤR及びキャリヤCaを介することなく駆動連結されている。第二回転電機MG2は、出力軸Oが駆動連結されたリングギヤRに、サンギヤS及びキャリヤCaを介することなく駆動連結されている。なお、入力軸Iは、係合装置CLを介してエンジンEに駆動連結され、出力軸Oは、車輪Wに駆動連結されている。なお、エンジンEが、本願における「内燃機関」であり、入力軸Iが、本願における「入力部材」であり、出力軸Oが、本願における「出力部材」であり、バッテリBT(図2参照)が、本願における「蓄電装置」である。
制動トルク制御実行判定部36は、エンジンEの回転が停止している状態で、出力軸Oに負トルクを出力させる制動要求があった場合に、制動トルク制御を実行すると判定する。
充電制限判定部37は、バッテリBTの充電状態を表す充電状態指標が予め定められた充電制限判定値以上である場合に充電制限ありと判定し、充電状態指標が充電制限判定値未満である場合に充電制限なしと判定する。
制動トルク制御部38は、制動トルク制御実行判定部36により制動トルク制御を実行すると判定されていると共に充電制限判定部37により充電制限なしと判定されている場合に、第二回転電機MG2を発電させて、第二回転電機MG2の発電トルクにより出力軸Oに負トルクを出力させる回生制動トルク制御を実行する。
一方、制動トルク制御部38は、制動トルク制御実行判定部36により制動トルク制御を実行すると判定されていると共に充電制限判定部37により充電制限ありと判定されている場合に、入力軸Iの回転速度Wiを、ゼロより高い回転速度に設定された目標回転速度Wioに近付けるように第一回転電機MG1を力行させると共に、係合装置CLの伝達トルクTclを、エンジンEが回転し始めるトルクである静止限界トルクTcr未満となるように制御して、係合装置CLの伝達トルクTclにより出力軸Oに負トルクを出力させる発熱制動トルク制御を実行する点に特徴を有している。
以下、本実施形態に係る車両用駆動装置1及び制御装置30について、詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る車両用駆動装置1の構成について説明する。図1に示すように、車両用駆動装置1は、エンジンE、第一回転電機MG1、及び第二回転電機MG2を駆動力源として利用して走行可能なハイブリッド車両用の駆動装置である。本例では、車両用駆動装置1は、いわゆる2モータスプリット方式のハイブリッド車両用の駆動装置として構成されている。
第二回転電機MG2は、非回転部材に固定された第二ステータSt2と、この第二ステータSt2の径方向内側に、回転自在に支持された第二ロータ軸RS2を備えた第二ロータRo2と、を有している。第二ロータ軸RS2は、第二回転電機出力ギヤ21と一体回転するように駆動連結されている。
回転電機MG1、MG2は、回転方向と同じ方向のトルクを出力している場合は、力行し、回転方向と反対方向のトルクを出力している場合は発電する。
摩擦係合要素は、その係合部材間の摩擦により、係合部材間でトルクを伝達する。摩擦係合要素の係合部材間に回転速度差(滑り)がある場合は、動摩擦により回転速度の大きい方の部材から小さい方の部材に伝達トルク容量の大きさのトルク(スリップトルク)が伝達される。摩擦係合要素の係合部材間に回転速度差(滑り)がない場合は、摩擦係合要素は、伝達トルク容量の大きさを上限として、静摩擦により摩擦係合要素の係合部材間に作用するトルクを伝達する。ここで、伝達トルク容量とは、摩擦係合要素が摩擦により伝達することができる最大のトルクの大きさである。伝達トルク容量の大きさは、摩擦係合要素の係合圧に比例して変化する。係合圧とは、入力側係合部材(摩擦板)と出力側係合部材(摩擦板)とを相互に押し付け合う圧力である。本実施形態では、係合圧は、サーボ機構が発生した力の大きさに比例して変化する。すなわち、本実施形態では、伝達トルク容量の大きさは、サーボ機構が発生した力の大きさに比例して変化する。
キャリヤCaは、サンギヤS及びキャリヤCaを介することなく、入力軸Iと一体回転するように駆動連結されている。キャリヤCa(第二回転要素E2)の回転速度は、入力軸Iの回転速度Wiに等しくなる。
また、第二回転電機出力ギヤ21は、カウンタドライブギヤ22とは周方向(第一カウンタギヤG1の周方向)の異なる位置で、第一カウンタギヤG1と噛み合っており、第二回転電機MG2は、第一カウンタギヤG1を介して、リングギヤRに駆動連結されている。また、出力軸Oは、第二カウンタギヤG2に噛み合うように配置されることで、リングギヤRに駆動連結されている。すなわち、本実施形態では、リングギヤRと第二回転電機MG2と出力軸Oとの間の回転速度の関係は、互いに比例関係にあり、その変速比(すなわち、回転速度比)は、間に介在する歯車の歯数に応じた値となる。
制御装置30は、CPU等の演算処理装置を中核部材として備えるとともに、当該演算処理装置からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(ランダム・アクセス・メモリ)や、演算処理装置からデータを読み出し可能に構成されたROM(リード・オンリ・メモリ)等の記憶装置等を有して構成されている。そして、制御装置30のROM等に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、図2に示すような制御装置30の各機能部31〜38が構成されている。また、各機能部31〜38は、互いにセンサの検出情報及び制御パラメータ等の各種情報を共有するとともに協調制御を行い、各機能部31〜38の機能が実現される。また、制御装置30は、エンジンEの制御を行うエンジン制御装置40と、通信可能に接続されている。
バッテリ充電状態検出センサSe6は、バッテリBTの充電状態を検出するためのセンサである。本実施形態では、バッテリ充電状態検出センサSe6は、バッテリ電圧を検出するための電圧センサ、バッテリ電流を検出するための電流センサ、及びバッテリ温度を検出するための温度センサなどから構成されたセンサである。
エンジン制御装置40は、エンジン制御部41を備えている。エンジン制御部41は、エンジンEの動作制御を行う機能部である。本実施形態では、エンジン制御部41は、制御装置30の車両制御部34からエンジン要求トルクが指令されている場合は、車両制御部34から指令されたエンジン要求トルクを出力トルク指令値に設定し、エンジンEが出力トルク指令値のトルクを出力するように制御するトルク制御を行う。また、エンジン制御部41は、車両制御部34からエンジンEへの燃料供給停止が指令されている場合は、エンジンEへの燃料供給を停止して、エンジンEを燃料供給停止状態に制御する。
制御装置30は、第一回転電機制御部31を備えている。第一回転電機制御部31は、第一回転電機MG1の動作制御を行う機能部である。本実施形態では、第一回転電機制御部31は、車両制御部34から指令された第一目標トルクTm1oが指令されている場合は、第一目標トルクTm1oをトルク指令値に設定し、第一回転電機MG1がトルク指令値のトルクを出力するようにトルク制御を行う。具体的には、第一回転電機制御部31は、第一インバータIN1が備える複数のスイッチング素子をオンオフ制御することにより、第一回転電機MG1の出力トルクを制御する。
制御装置30は、第二回転電機制御部32を備えている。第二回転電機制御部32は、第二回転電機MG2の動作制御を行う機能部である。本実施形態では、第二回転電機制御部32は、車両制御部34から指令された第二目標トルクTm2oが指令されている場合は、第二目標トルクTm2oをトルク指令値に設定し、第二回転電機MG2がトルク指令値のトルクを出力するようにトルク制御を行う。具体的には、第二回転電機制御部32は、第二インバータIN2が備える複数のスイッチング素子をオンオフ制御することにより、第二回転電機MG2の出力トルクを制御する。
制御装置30は、係合装置制御部33を備えている。係合装置制御部33は、係合装置CLの制御を行う機能部である。係合装置制御部33は、車両制御部34から指令された目標伝達トルク容量Tcpoに基づき、サーボ機構を制御することにより、係合装置CLの伝達トルク容量を制御する。本実施形態では、係合装置CLのサーボ機構は、サーボモータ機構とされており、車両制御部34は、目標伝達トルク容量Tcpoに基づき、サーボモータへの供給電力を算出して、サーボモータを駆動制御するように構成されている。
車両制御部34は、エンジンE、第一回転電機MG1、第二回転電機MG2、及び係合装置CL等に対して行われる各種トルク制御等を車両全体として統合する制御を行う機能部である。
本実施形態では、車両制御部34は、シフト位置が「回生増加レンジ」に変更されたと検出した場合に、車両の制動力を増加させる要求があったと判定して、負トルク側の車両要求トルクの大きさを増加させるように構成されている。
次に、制動トルク制御について説明する。
車両制御部34は、電動モードにおいて車両要求トルクがゼロ未満になり、車両の制動が要求された場合に、通常は、第二回転電機MG2に負トルクである発電トルクを出力させる。しかし、バッテリBTの充電状態が満充電状態に近い場合は充電電流が制限されるため、第二回転電機MG2に十分な大きさの発電トルクを出力させることができない場合がある。例えば、バッテリBTの充電状態が満充電状態に近い場合は、バッテリBT及び周辺回路を保護するために、バッテリBTに流れる充電電流を制限する必要があり、第一回転電機制御部31及び第二回転電機制御部32が回転電機MG1、MG2の発電を制限する場合がある。
制動トルク制御実行判定部36は、上記したように、エンジンEの回転が停止している状態で、出力軸Oに負トルクを出力させる制動要求があった場合に、制動トルク制御を実行すると判定する。
充電制限判定部37は、バッテリBTの充電状態を表す充電状態指標が予め定められた充電制限判定値以上である場合に充電制限ありと判定し、充電状態指標が充電制限判定値未満である場合に充電制限なしと判定する。
一方、制動トルク制御部38は、制動トルク制御実行判定部36により制動トルク制御を実行すると判定されていると共に充電制限判定部37により充電制限ありと判定されている場合に、入力軸Iの回転速度Wi(入力回転速度Wiとも称す)を、ゼロより高い回転速度に設定された目標回転速度Wio(入力目標回転速度Wioとも称す)に近付けるように第一回転電機MG1を力行させると共に、係合装置CLの伝達トルクTcl(絶対値)を、エンジンEが回転し始めるトルクである静止限界トルクTcr(絶対値)未満となるように制御して、係合装置CLの伝達トルクTclにより出力軸Oに負トルクを出力させる発熱制動トルク制御を実行する。なお、発熱制動トルク制御は、制動トルク制御部38に備えられた発熱制動トルク制御部42により実行される。
次に、発熱制動トルク制御を実行する場合における、パワーバランスに基づくトルク制御を説明する。ここでは、駆動系の伝達損失や回転電機の損失などの各種損失は無視した理想的なモデルで検討する。
<パワーバランス>
式(1)に示すように、係合装置CLの滑り摩擦による発熱パワーPcl、第一回転電機MG1の力行又は発電による電力(パワー)Pm1、及び第二回転電機MG2の力行又は発電による電力(パワー)Pm2の合計である駆動力源出力パワー(Pcl+Pm1+Pm2)と、要求されている制動パワーPbkと、が一致すれば、駆動力源側から出力軸Oに出力される駆動力源出力トルクToが、要求制動トルクTbkに一致する。
Pbk=Pcl+Pm1+Pm2 ・・・(1)
Tbk=To
ここで、式(2)に示すように、要求制動パワーPbkは、要求制動トルクTbkと出力軸Oの回転速度Wo(出力回転速度Woとも称す)との乗算値となる。係合装置CLの発熱パワーPclは、伝達トルクTclと係合部材間の回転速度差との乗算値となる。本実施形態では、エンジンE側の係合部材CLaの回転が停止しているため、係合部材間の回転速度差は、入力回転速度Wiに等しくなる。第一回転電機MG1のパワーPm1は、第一回転電機MG1の出力トルクTm1と第一回転電機MG1の回転速度Wm1(第一回転速度Wm1とも称す)との乗算値となる。第二回転電機MG2のパワーPm2は、第二回転電機MG2の出力トルクTm2と第二回転電機MG2の回転速度Wm2(第二回転速度Wm2とも称す)との乗算値となる。
Pbk=Tbk×Wo
Pcl=Tcl×Wi ・・・(2)
Pm1=Tm1×Wm1
Pm2=Tm2×Wm2
なお、式(1)のパワーバランスにおいて、動力伝達機構のフリクションロス、インバータのスイッチングロスなどを考慮するようにしてもよい。
発熱制動トルク制御を実行する場合は、バッテリBTの充電量SOCが、充電制限判定値以上であると判定されているので、バッテリBTの充電量SOCが増加しないように制御されることが望ましく、また、充電量SOCが、制動時に減少しないように制御されることが望ましい。そこで、本実施形態では、式(3)に示すように、発熱制動トルク制御を実行する場合は、バッテリBTの充電量SOCが変化しないように、第一回転電機MG1のパワーPm1と、第二回転電機MG2のパワーPm2との合計がゼロになるように制御される。
Pm1+Pm2=0 ・・・(3)
式(3)を式(1)に代入すると式(4)が得られる。すなわち、本実施形態では、伝達トルクTclと入力軸Iの回転速度Wiとの乗算値である係合装置CLの発熱パワーPclが、要求制動パワーPbkに一致するように制御される。
Pbk=Pcl ・・・(4)
Pbk=Tcl×Wi
<発熱制動トルク制御の開始時のパワー設定>
なお、発熱制動トルク制御の開始直後に、伝達トルクTcl及び入力回転速度Wiを急に変化させることは容易でないため、当該伝達トルクTclと入力回転速度Wiとの乗算値となる係合装置CLの発熱パワーPclを、要求制動トルクTbkまで急に変化させることとは容易でない。このため、発熱制動トルク制御の開始直後のテーリング処理中は、式(1)が成立するように、第二回転電機MG2のパワーPm2が制御される。
係合装置CLの発熱パワーPclは、式(2)に示したように、伝達トルクTclと入力回転速度Wiとの乗算値となる。
伝達トルクTcl(絶対値)は、エンジンEが回転しないように、静止限界トルクTcr(絶対値)未満となるように制限されるため(|Tcl|<|Tcr|)、伝達トルクTcl(絶対値)の増加が、静止限界トルクTcrにより制限される場合は、入力回転速度Wiを増加させる必要がある。
仮に、伝達トルクTcl(絶対値)を静止限界トルクTcr(絶対値)まで最大限に増加させた場合において、式(4)のパワーバランスを満たす入力回転速度Wiである下限回転速度Wilは、式(5)に示すように、要求制動パワーPbk(絶対値)を静止限界トルクTcr(絶対値)で除算した値になり、図8に示すように、要求制動パワーPbk(絶対値)に比例する。そして、入力回転速度Wiは、下限回転速度Wilより大きくなるように、図8に斜線のハッチングで示す領域に制御される。
Wil=|Pbk|/|Tcr| ・・・(5)
Wi>Wil
なお、要求制動パワーPbk及び発熱パワーPclは負の値になる。また、伝達トルクTclは、係合装置CLから出力軸O側に伝達する方向が正であるので、負の値になり、静止限界トルクTcrは、係合装置CLからエンジンEに伝達する方向が正であるので、正の値になる。
入力回転速度Wiを、入力目標回転速度Wioに制御するに際して、第三回転要素E3は、出力軸Oを介して車輪Wに駆動連結されており、車体のイナーシャが作用する。このため、第三回転要素E3の回転速度の変化は小さく、支点と仮定することができる。また、第二回転要素E2には、負の伝達トルクTclが伝達されている。よって、第一回転要素E1に駆動連結されている第一回転電機MG1の出力トルクを変化させることで、第三回転要素E3の支点回りに、入力回転速度Wi及び第一回転速度Wm1を変化させることができる。
よって、入力回転速度Wiが、入力目標回転速度Wioに近づくように、第一回転電機MG1の出力トルクを変化させる回転速度制御が実行される。
Tm1=λ/(1+λ)×|Tcl| ・・・(8)
なお、入力回転速度Wiが、入力目標回転速度Wioに近づくように、第一回転電機MG1の出力トルクTm1を変化させる回転速度制御を実行することによって、第一回転電機MG1の出力トルクTm1が、式(8)に示す伝達トルクTclの反力トルクに制御される。なお、入力回転速度Wiが変化している場合は、式(8)の右辺に、更に、イナーシャトルクが加算される。ここで、イナーシャトルクは、入力回転速度Wiの変化速度(回転加速度)に第一係合装置CL1の出力側係合部材CLb及び入力軸I等の第二回転要素E2と一体回転的に回転する回転部材のイナーシャを乗算した値となる。
以上で説明した発熱制動トルク制御の原理に基づいて、本実施形態に係わる発熱制動トルク制御部42が構成されている。すなわち、発熱制動トルク制御部42は、充電制限判定部37により充電制限ありと判定されている場合(発熱制動トルク制御を実行する場合)に、第一回転電機MG1の力行に要する電力に応じた電力を第二回転電機MG2に発電させる。また、発熱制動トルク制御部42は、係合装置CLの伝達トルクTclと入力回転速度Wiとを乗算して求めた発熱パワーPclが、要求制動トルクTbkと出力回転速度Woとを乗算して求めた要求制動パワーPbkに近づくように、入力回転速度Wi及び係合装置CLの伝達トルクTclを制御するように構成されている。なお、発熱制動トルク制御部42は、回生制動トルク制御及び発熱制動トルク制御を実行する際に、負トルクである要求制動トルクTbkを出力軸Oに出力させるように構成されている。
図5に示すブロック図に基づいて詳細に説明する。
発熱制動トルク制御部42は、ブロック54及び式(9)に示すように、要求制動トルクTbkと出力回転速度Woとを乗算して要求制動パワーPbkを算出する。
Pbk=Tbk×Wo ・・・(9)
そして、発熱制動トルク制御部42は、上記したように、発熱パワーPclが要求制動パワーPbkに近づくように、入力回転速度Wi及び伝達トルクTclを制御するように構成されている。
この際、上記のように、係合装置CLの伝達トルクTcl(絶対値)が、エンジンEが回転し始めるトルクである静止限界トルクTcr(絶対値)未満となるように制御される。本実施形態では、係合装置CLの目標伝達トルク容量Tcpoを算出する前に、入力軸Iの目標回転速度Wio(入力目標回転速度Wioとも称す)が決定される。よって、発熱制動トルク制御部42は、ブロック55及び式(10)に示すように、係合装置CLの発熱パワーPclが要求制動パワーPbkに近づくように、要求制動パワーPbk(絶対値)を入力目標回転速度Wioで除算した値を、係合装置CLの目標伝達トルク容量Tcpotとして算出するように構成されている。
Tcpot=|Pbk|/Wio ・・・(10)
ここで、入力目標回転速度Wioには、制御開始時のテーリング処理が行われる前の値Wiotが用いられる。
発熱制動トルク制御部42は、要求制動パワーPbkの絶対値を静止限界トルクTcrの絶対値で除算して求めた下限回転速度Wilより大きくなるように入力軸Iの目標回転速度Wioを設定して、入力回転速度Wiを制御するように構成されている。
本実施形態では、発熱制動トルク制御部42は、ブロック50に示すように、エンジンEの油温に基づいて、静止限界トルクTcrを算出するように構成されている。静止限界トルクTcrは、油温により変化するため、発熱制動トルク制御部42は、油温と静止限界トルクTcrとの関係が予め設定された特性マップを備えている。そして、発熱制動トルク制御部42は、特性マップを用い、油温に基づいて、静止限界トルクTcrを算出する。なお、静止限界トルクTcrには、変動幅などを考慮して、所定の安全率(例えば、1.2)が乗算された値が設定されてもよい。
発熱制動トルク制御部42は、ブロック51及び式(5)に示すように、要求制動パワーPbkの絶対値を静止限界トルクTcrの絶対値で除算した値を、下限回転速度Wilとして算出するように構成されている。
発熱制動トルク制御部42は、ブロック52に示すように、下限回転速度Wilより大きくなるように入力目標回転速度Wioを決定するように構成されている。
発熱制動トルク制御部42は、ブロック53、56に示すように、発熱制動トルク制御の実行開始後、入力目標回転速度Wio及び目標伝達トルク容量Tcpoを、開始前の入力回転速度Wis及び伝達トルク容量(ゼロ)から、開始後に発熱パワーPclが要求制動パワーPbkに近づくように設定された入力目標回転速度Wiot及び目標伝達トルク容量Tclotまで徐々に変化させるテーリング処理を実行するように構成されている。
本実施形態では、発熱制動トルク制御部42は、発熱制動トルク制御の実行開始後、ゼロから1.0まで徐々に増加するテーリングゲインKtlを用いて、式(11)に示すように、開始前の入力回転速度Wis及びゼロと、開始後の入力目標回転速度Wiot及び目標伝達トルク容量Tclotとの間をそれぞれ補間して、テーリング処理後の入力目標回転速度Wio及び目標伝達トルク容量Tcloを算出するように構成されている。
Wio=Ktl×Wiot+(1−Ktl)×Wis ・・・(11)
Tclo=Ktl×Tclot
発熱制動トルク制御部42は、ブロック58に示すように、入力軸Iの回転速度Wiが、入力軸Iの目標回転速度Wioに近づくように、第一回転電機MG1の目標トルクである第一目標トルクTm1oを変化させる第一回転速度制御を実行するように構成されている。
この第一回転速度制御により、発熱制動トルク制御部42は、第三回転要素E3を支点として、第二回転要素E2に伝達される伝達トルクTclと釣り合うような反力トルクを第一回転電機MG1に出力させて第一回転要素E1に伝達させることとなる。
発熱制動トルク制御部42は、上記のように、第一回転電機MG1の力行に要する電力に応じた電力を第二回転電機MG2に発電させるように構成されている。
本実施形態では、発熱制動トルク制御部42は、ブロック59に示すように、第一目標トルクTm1oに第一回転速度Wm1を乗算した値を、第一回転電機MG1のパワーPm1として算出するように構成されている。
また、発熱制動トルク制御部42は、ブロック60に示すように、目標伝達トルク容量Tcpotなどに基づいて算出した伝達トルクTclに入力回転速度Wiを乗算した値を、係合装置CLの発熱パワーPclとして算出するように構成されている。
そして、発熱制動トルク制御部42は、ブロック61に示すように、式(1)又は式(3)に示すパワーバランスの式に基づいて、第二回転電機MG2の目標パワーPm2oを算出するように構成されている。
Pm2o=−Pm1 ・・・(12)
一方、発電制動トルク制御の開始時のテーリング処理を実行している場合は、係合装置CLの発熱パワーPclが要求制動パワーPbkに一致していないので、式(13)に示すように、第二回転電機MG2の目標パワーPm2oは、要求制動パワーPbkから発熱パワーPcl及び第一回転電機MG1のパワーPm1を減算した値に設定される。
Pm2o=(Pbk−Pcl)−Pm1 ・・・(13)
なお、開始時のテーリング処理が終了した後においても、第二回転電機MG2の目標パワーPm2oは、テーリング処理中と同様に、式(13)に基づいて設定されるように構成されてもよい。
発熱制動トルク制御部42は、ブロック62に示すように、第二回転電機MG2の目標パワーPm2oを、第二回転電機MG2の回転速度Wm2で乗算した値を、第二目標トルクTm2oとして算出するように構成されている。
次に、制動発熱制動トルク制御部42実行される処理について、図6及び図7に示すタイムチャートの例を用いて説明する。
<図6の例>
図6に示す例は、時刻t11までの初期状態では、電動モードにおいて車両要求トルクが正トルクであり、力行トルク制御が実行されている。また、係合装置CLの目標伝達トルク容量Tcpoがゼロに設定されており、係合装置CLは解放状態である。第一回転電機MG1の回転速度Wm1がゼロに近づくように、第一回転電機MG1の出力トルクが制御されているが、係合装置CLが解放状態であるため、第一回転電機MG1の出力トルクはゼロに近づいている。
充電制限判定部37は、制動トルクの開始時(時刻t11)は、充電量SOCが充電制限判定値未満であるので、充電制限なしと判定している。
次に、図7に示すタイムチャートの例を説明する。
図7に示す例は、時刻t21までの初期状態では、電動モードにおいて車両要求トルクが正であり、力行トルク制御が実行されている。また、係合装置CLの目標伝達トルク容量Tcpoがゼロに設定されており、係合装置CLは解放状態である。本例では、入力軸Iの回転速度Wiがゼロに近づくように、第一回転電機MG1の出力トルクが制御されている。よって、第一回転電機MG1の回転速度Wm1が、初期状態では負の回転速度になっている。
充電制限判定部37は、制動トルクの開始時(時刻t21)は、充電量SOCが充電制限判定値未満であるので、充電制限なしと判定しており、図8の例と同様に回生制動トルク制御を実行する。回生制動トルク制御により充電量SOCが充電制限判定値以上になるまで増加すると、充電制限ありと判定され、発熱制動トルク制御が開始される(時刻t22)。
そして、制動トルク制御部38は、テーリング処理が終了すると、図6の例と同様に、通常の発熱制動トルク制御を実行する(時刻t23以降)。
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
1 :車両用駆動装置
30 :制御装置
31 :第一回転電機制御部
32 :第二回転電機制御部
33 :係合装置制御部
34 :車両制御部
35 :制動制御部
36 :制動トルク制御実行判定部
37 :充電制限判定部
38 :制動トルク制御部
40 :エンジン制御装置
41 :エンジン制御部
42 :発熱制動トルク制御部
43 :回生制動トルク制御部
BT :バッテリ(蓄電装置)
CL :係合装置
Ct :カウンタギヤ機構
DF :出力用差動歯車装置
E :エンジン(内燃機関)
E1 :第一回転要素
E2 :第二回転要素
E3 :第三回転要素
Eo :エンジン出力軸
I :入力軸(入力部材)
IN1 :第一インバータ
IN2 :第二インバータ
Ktl :テーリングゲイン
MG1 :第一回転電機
MG2 :第二回転電機
O :出力軸(出力部材)
PG :遊星歯車装置(差動歯車装置)
Pbk :要求制動パワー
Pcl :係合装置の発熱パワー
Pm1 :第一回転電機のパワー(電力)
Pm2 :第二回転電機のパワー(電力)
Pm2o :第二回転電機の目標パワー
R :リングギヤ
S :サンギヤ
Ca :キャリヤ
SOC :充電量
Se1 :エンジン回転速度センサ
Se2 :入力軸回転速度センサ
Se3 :第一回転電機回転速度センサ
Se4 :第二回転電機回転速度センサ
Se5 :アクセル開度検出センサ
Se6 :バッテリ充電状態検出センサ
Se7 :シフト位置センサ
Tbk :要求制動トルク
Tcl :係合装置の伝達トルク
Tclo :目標伝達トルク容量
Tclot:目標伝達トルク容量(テーリング処理前)
Tcpo :目標伝達トルク容量
Tcpot:目標伝達トルク容量(テーリング処理前)
Tcr :静止限界トルク
Tm1 :第一回転電機の出力トルク
Tm1o :第一回転電機の目標トルク(第一目標トルク)
Tm2 :第二回転電機の出力トルク
Tm2o :第二回転電機の目標トルク(第二目標トルク)
To :駆動力源出力トルク
W :車輪
Wi :入力軸の回転速度(入力回転速度)
Wil :下限回転速度
Wio :入力軸の目標回転速度(入力目標回転速度)
Wiot :入力軸の目標回転速度(テーリング処理前)
Wm1 :第一回転電機の回転速度(第一回転速度)
Wm2 :第二回転電機の回転速度(第二回転速度)
Wo :出力軸の回転速度(出力回転速度)
Wr :第三回転要素の回転速度
Claims (5)
- 係合装置と、当該係合装置を介して内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、前記第一回転電機及び前記第二回転電機が発電した電力により充電される蓄電装置と、少なくとも3つの回転要素を有する差動歯車装置と、を備えた車両用駆動装置を制御するための制御装置であって、
前記車両用駆動装置における前記入力部材、前記出力部材、及び前記第一回転電機が、それぞれ前記差動歯車装置の異なる回転要素に駆動連結され、
前記第二回転電機が、前記出力部材が駆動連結された回転要素に駆動連結され、
前記内燃機関の回転が停止している状態で、前記出力部材に負トルクを出力させる制動要求があった場合に、制動トルク制御を実行すると判定する制動トルク制御実行判定部と、
前記蓄電装置の充電状態を表す充電状態指標が予め定められた充電制限判定値以上である場合に充電制限ありと判定し、前記充電状態指標が前記充電制限判定値未満である場合に充電制限なしと判定する充電制限判定部と、
前記制動トルク制御実行判定部により前記制動トルク制御を実行すると判定されていると共に前記充電制限判定部により充電制限なしと判定されている場合に、前記第二回転電機を発電させて、前記第二回転電機の発電トルクにより前記出力部材に負トルクを出力させ、
前記制動トルク制御実行判定部により前記制動トルク制御を実行すると判定されていると共に前記充電制限判定部により充電制限ありと判定されている場合に、前記入力部材の回転速度を、ゼロより高い回転速度に設定された目標回転速度に近付けるように前記第一回転電機を力行させると共に、前記係合装置の伝達トルクを、前記内燃機関が回転し始めるトルクである静止限界トルク未満となるように制御して、前記係合装置の伝達トルクにより前記出力部材に負トルクを出力させる制動トルク制御部と、
を備える制御装置。 - 前記制動トルク制御は、負トルクである要求制動トルクを前記出力部材に出力させる制御であり、
前記制動トルク制御部は、前記充電制限判定部により充電制限ありと判定されている場合に、前記第一回転電機の力行に要する電力に応じた電力を前記第二回転電機に発電させ、前記係合装置の伝達トルクと前記入力部材の回転速度とを乗算して求めた発熱パワーが、前記要求制動トルクと前記出力部材の回転速度とを乗算して求めた要求制動パワーに近づくように、前記入力部材の回転速度及び前記係合装置の伝達トルクを制御する請求項1に記載の制御装置。 - 前記制動トルク制御は、負トルクである要求制動トルクを前記出力部材に出力させる制御であり、
前記制動トルク制御部は、前記充電制限ありの場合に、前記要求制動トルクと前記出力部材の回転速度とを乗算して求めた要求制動パワーの絶対値を前記静止限界トルクの絶対値で除算して求めた下限回転速度より大きくなるように前記入力部材の前記目標回転速度を設定する請求項1又は2に記載の制御装置。 - 前記制動トルク制御部は、前記下限回転速度が予め定められた初期回転速度未満である場合は、前記初期回転速度を前記入力部材の前記目標回転速度として設定し、前記下限回転速度が前記初期回転速度以上である場合は、前記下限回転速度より大きい回転速度を前記入力部材の前記目標回転速度として設定する請求項3に記載の制御装置。
- 前記制動トルク制御部は、前記充電制限判定部により充電制限ありと判定されている場合に、前記第一回転電機の力行に要する電力を、前記第二回転電機の回転速度で除算して求めたトルクに応じた発電トルクを、前記第二回転電機に出力させる請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置。
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