JP2013132618A - 有機性廃水の生物処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】下水の浄化処理に用いられる標準活性汚泥処理方法に、余剰汚泥の可溶化処理工程を組み入れた、余剰汚泥の減量化を達成した有機性廃水の生物処理方法において、処理水の悪化を生じさせないことは勿論、設備の拡大や処理の複雑化させることなく改善して、汚泥の処理にかかるコストがさらに低減された、より経済的で、地球環境保護の点からも有用な有機性廃水の生物処理方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも、最初沈殿槽と、活性汚泥処理槽と、最終沈殿槽とを用いて行う下水の処理を標準活性汚泥処理方法に、さらに最終沈殿槽で固液分離された余剰汚泥の一部又は全部を可溶化処理するための可溶化処理工程を設け、該可溶化処理工程で処理した汚泥を最初沈殿槽に戻し、上記最初沈殿槽で固液分離した初沈沈殿物を、可溶化処理されない余剰汚泥がある場合は該余剰汚泥とともに脱水処理することを特徴とする有機性廃水の生物処理方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、特に下水の浄化処理に有効な有機性廃水の生物処理方法に関し、更に詳しくは、標準活性汚泥法の改良であり、余剰汚泥を減量化するために行われている可溶化処理を利用することで、最終的に処理する必要がある汚泥の減量化をするとともに、最終処理物である汚泥ケーキの含水率を減少させることを可能にした実用価値の高い有機性廃水の生物処理方法に関する。
従来より、好気性微生物を含んだ活性汚泥によって有機性廃水を処理する活性汚泥方法は、浄化能力が高く、処理経費が比較的少なくて済む等の利点があることから、下水処理や産業廃水処理等において広く一般に行われている。
例えば、本発明が対象とする処理量が1万トン/日以上であるような大型の下水処理施設で行われている標準の活性汚泥法では、図3に示したように、まず、流入下水を最初沈殿槽に導入し、ここで夾雑物を沈殿させて固液分離し、最初沈殿物が除かれた被処理液を活性汚泥処理槽(曝気槽)へと送り、ここで活性汚泥処理をし、処理後に処理物を最終沈殿槽へと送って固液分離することで浄化した処理水を得ている。一方、固液分離された沈殿物は、その大半が曝気槽へと返送され、返送されなかった増加した汚泥は、余剰汚泥として最終沈殿槽から引き抜いて別途処理されている。図3に示したように、下水の浄化処理では、余剰汚泥の処理は、最初沈殿槽からの沈殿物(夾雑物)と余剰汚泥とを一緒にして脱水する等の汚泥処理が行われている。上記した処理を標準活性汚泥処理方法と呼ぶが、以下、該方法について具体的に説明する。
活性汚泥法では、曝気槽内で、有機性廃水を活性汚泥によって、BODで示される廃水中の有機汚濁成分を分解させて浄化処理した場合、分解したBODのうちの50〜70%は微生物の維持エネルギーとして消費されるが、残りの30〜50%は微生物の増殖に使用されるので活性汚泥の量は次第に増加していく。このため、一般的な標準活性汚泥処理方法では、図3に示したように、曝気槽で処理された廃水を最終沈殿槽へと導き、沈殿した活性汚泥の中から有機性廃水の浄化処理に必要な量だけ返送汚泥として曝気槽内へと戻し、それ以外の活性汚泥は余剰汚泥として取り除いている。この結果、多量の余剰汚泥が発生するが、この余剰汚泥は、生物難分解性物質等を含み、含水率が高いことに加え、粘性も高く、取り扱いにくい等の欠点があり、有機性廃水を活性汚泥法によって浄化処理する場合においては、余剰汚泥の処理が常に大きな問題となっている。
特に、余剰汚泥量は極めて多く、さらに、該余剰汚泥を、嫌気性消化処理する等して脱水機により濃縮したとしても、その含水率は85〜90%程度と高いため、これを焼却或いは産業廃棄物として処分する場合の処理コストが著しく嵩むという問題がある。下水処理においては、また、埋め立て処分場の確保の問題や汚泥焼却に伴うエネルギー消費の増加の問題等、地球規模の環境に及ぼす影響も看過できない。
このような従来技術の課題に対し、余剰汚泥を減量化する方法が種々提案されている。例えば、本発明者らは、既に、図1に示したように、活性汚泥を利用した有機性廃水の処理過程のいずれかの過程で、活性汚泥を構成している細菌の一部を、酸やアルカリ等で殺菌又は溶菌して処理過程中における活性汚泥の増殖を抑制する方法を提案している(特許文献1参照)。特許文献1に記載の方法によれば、最終段階で放出される処理水の水質を悪化させることなく、余剰汚泥の発生量を大幅に減量することができる。
特開2000−61488号公報
しかしながら、上記した特許文献1に記載の方法によれば、確かに余剰汚泥の発生量を大幅に減量することができ、極めて有用であるものの、実際の廃水に適用した場合、余剰汚泥の量をゼロにするまでには至っておらず、減量化できたとはいえ余剰汚泥の処理を必要としている。また、本発明者らが鋭意検討した結果、上記した標準活性汚泥処理方法に、余剰汚泥の可溶化処理工程を組み入れた方法では、原因は不明であるが、浄化処理の対象を、食品工場等の産業廃水としている場合と、下水とした場合とでは得られる余剰汚泥の脱水性が異なり、特に、下水を処理した場合では脱水性に劣る傾向があることがわかった。このため、下水を浄化処理した場合は、汚泥の脱水性の悪さから、脱水用薬剤をたくさん必要としたり、また、汚泥の脱水に要する時間がかかったり、或いは、より大きな脱水機が必要となるといった問題があった。さらに、上記した下水の浄化処理においては、余剰汚泥の処理に加えて最初沈殿槽からの沈殿物(夾雑物)を処理する必要もあり、本発明者らは、より経済的な処理を行うために、さらなる改善が必要であるとの認識をもつに至った。
従って、本発明の目的は、下水の浄化処理に用いられる標準活性汚泥処理方法に、余剰汚泥の可溶化処理工程を組み入れた、余剰汚泥の減量化を達成した有機性廃水の生物処理方法において、従来の可溶化処理工程を設けない方法に比較し、処理水の悪化を生じさせないことは勿論、設備の拡大や処理の複雑化させることなく改善して、汚泥の処理にかかるコストがさらに低減された、より経済的で、地球環境保護の点からも有用な有機性廃水の生物処理方法を提供することである。
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、下水の処理を、少なくとも、最初沈殿槽と、活性汚泥処理槽と、最終沈殿槽とを用いて行う標準活性汚泥処理方法に、さらに最終沈殿槽で固液分離された余剰汚泥の一部又は全部を可溶化処理するための可溶化処理工程を設け、該可溶化処理工程で処理した汚泥を最初沈殿槽に戻し、上記最初沈殿槽で固液分離した初沈沈殿物を、可溶化処理されない余剰汚泥がある場合は該余剰汚泥とともに脱水処理することを特徴とする有機性廃水の生物処理方法を提供する。
本発明の好ましい形態としては、前記可溶化処理工程で可溶化処理する汚泥量を、汚泥を可溶化処理しない標準活性汚泥処理方法を行った時の余剰汚泥量(kg−DrySS)に対して0.2〜4倍とすることが挙げられる。その他の好ましい形態としては、前記可溶化処理工程での処理を、酸を加えてpH4以下で行うか、或いは、アルカリを加えてpH10以上で行うことが挙げられる。また、前記可溶化処理工程で、例えば、硝酸、硫酸、塩酸のいずれか、これらのいずれかの酸と鉄および/またはアルミニウム等の金属との塩、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくともいずれかの酸を主体とする薬剤を用いることが挙げられる。また、前記可溶化処理工程で、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、アンモニアのいずれか、これらのアルカリとアルミニウムおよび/または亜鉛等の両性金属塩、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくともいずれかのアルカリを主体とする薬剤を用いることが挙げられる。
本発明によれば、下水の浄化処理に用いられる標準活性汚泥処理方法に、活性汚泥の可溶化処理工程を組み入れることで余剰汚泥の減量化を達成し、従来の方法に比較して処理水の悪化を生じさせないことは勿論、設備の拡大や処理フローを複雑化させることなく、最終的に処理が必要となる汚泥の含水率を大幅に低減することで、汚泥処理にかかるコストを大幅に低減することが可能な、より経済性に優れた、地球環境保護の点からも有用な有機性廃水の生物処理方法が提供される。
本発明の有機性廃水の生物処理方法の一例を示すフロー図である。 本発明の有機性廃水の生物処理方法の別の例を示すフロー図である。 従来の標準活性汚泥処理方法のフロー図である。 図3の従来の標準活性汚泥処理方法に、汚泥の可溶化処理を組み入れた従来の有機性廃水の生物処理方法のフロー図である。
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。先述したように、余剰汚泥を減量化する方法として、図3の標準活性汚泥処理方法に、余剰汚泥の一部又は全部を可溶化する可溶化処理工程を組み入れ、該処理工程で、活性汚泥を構成している細菌の一部を酸やアルカリによって殺菌又は溶菌する、図4に示した方法がある。そして、従来の方法では、可溶化処理により生物分解し易くなった汚泥を曝気槽に戻して、再度、生物分解することで余剰汚泥の減量化を達成している。しかし、本発明者らの検討によれば、特に、上記した方法によって下水の浄化処理をした場合、余剰汚泥の量を削減することができるものの、生じた余剰汚泥は、産業廃水の処理によって出る余剰汚泥に比べて、脱水性に極めて劣るものになることがわかった。余剰汚泥の脱水性の悪化は、そのまま、脱水、焼却、埋立等々の余剰汚泥処理にかかるコストが増大することを意味しており、脱水性を向上させることは、より経済的な処理が求められる廃水処理においては極めて重要である。そこで、本発明者らは、下水を浄化処理した場合に生じる余剰汚泥の脱水性を向上させることを目的として鋭意検討を行った。その結果、従来から余剰汚泥の減量化を目的として行われていると同様の方法で可溶化処理した汚泥を、曝気槽に戻すのではなく、最初沈殿槽に戻すことが、最終処理的に処理することが必要となる汚泥の脱水性の向上に極めて有効であることを見出して、本発明に至った。
標準活性汚泥処理方法における返送汚泥の一部を殺菌(可溶化)し、可溶化した汚泥を曝気槽に戻すことで余剰汚泥の発生量を削減する図4に示した方法は、実際の下水の浄化処理に適用され、実施されている。本発明者は、図4に示した方法を実施化し、検討していく過程で、広く行われている従来の標準活性汚泥処理方法の場合と比較し、格段に余剰汚泥の発生量を削減できるものの、次のような課題があることを認識した。まず、可溶化した汚泥がBODに変化するため、曝気槽のBOD負荷が高くなり、処理水質に悪影響を与えることが懸念される。そして、実際の下水の浄化処理を上記した従来の方法で継続して行った結果、次第に曝気槽内のMLSSが上昇する傾向があることがわかった。本発明者は、かかる現象が生じる理由について、可溶化した汚泥中の微生物の細胞壁等の難分解性SSが曝気槽内に蓄積した結果、次第にMLSSが上昇したものと考えている。MLSSの上昇が生じると、その原因と考えられる曝気槽内に蓄積した微生物の細胞壁等を排出する必要があるために、余剰汚泥の排出量が増え、また、曝気槽内の汚泥滞留時間(SRT)が短くなり、処理水質に影響を与えることがあり、結果的に、余剰汚泥の減量率を期待通りに高めることができない場合があることがわかった。
本発明の有機性廃水の生物処理方法では、最終沈殿槽で固液分離された余剰汚泥の一部又は全部を可溶化処理するための可溶化処理工程を設け、該可溶化処理工程で処理した汚泥を最初沈殿槽に戻すように構成したことを特徴とする。このようにすること以外は従来と同様の処理を行えばよい。通常、標準活性汚泥処理方法で最終的に汚泥処理することになる余剰汚泥は、最初沈殿槽で固液分離された沈殿物と一緒にして脱水処理して脱水ケーキにして処理されている。図4に示したように、最終沈殿槽で固液分離された余剰汚泥の一部を可溶化処理し、処理した汚泥を曝気槽に戻して処理した場合は、得られる脱水ケーキの含水率は、通常広く行われている図3に示した標準活性汚泥処理方法で処理した脱水ケーキの含水率と比べて低減する。後述するが、その理由は、最初沈殿槽で固液分離された沈殿物の含水率は余剰汚泥に比べて低く、これと一緒に処理される余剰汚泥の発生量が減少したためと考えられる。
本発明では、図1に示したように、最終沈殿槽で固液分離された余剰汚泥の一部又は全部を可溶化処理し、処理した汚泥を最初沈殿槽に戻して処理するが、このようにすることで、図4に示した方法で処理した場合と比べて、余剰汚泥の減量化率をより向上させることができ、さらに、得られる脱水ケーキの含水率の低減が顕著になる。詳細については後述するが、本発明の方法によれば、処理後に得られた脱水ケーキの含水率は、従来の、図4に示した余剰汚泥の可溶化処理を組み入れた活性汚泥処理方法で得られた脱水ケーキに比べて、少なくとも5%以上、低減できることを確認した。本発明者らは、その理由を、処理した返送汚泥を最初沈殿槽に戻すことで、汚泥を可溶化処理することで増加した返送汚泥中の難分解な微生物の細胞壁等が、最初沈殿槽に流入してくる下水中のSSと共に固液分離されてしまい、この結果、細胞壁等が曝気槽に流入しないため、従来の方法で生じていた、曝気槽のBOD負荷の上昇、MLSSの増加、SRTの低下が抑制でき、より良好な生物処理ができたことによると考えている。すなわち、良好な生物処理によって余剰汚泥の発生量をより低減したことで、脱水ケーキにおける最初沈殿槽で固液分離された沈殿物の比率が高くなるので、図4に示した従来の方法よりも更に含水率が低減された脱水ケーキが得られる。また、本発明の処理方法によれば、余剰汚泥の引き抜き量を極端に少なくでき、場合によっては余剰汚泥の発生量をゼロにすることも可能になると考えられる。
上記したように、本発明の有機性廃水の生物処理方法によれば、最終沈殿槽で固液分離された余剰汚泥の一部又は全部を可溶化(殺菌)処理し、かつ、可溶化処理した汚泥を最初沈殿槽に戻すことで、余剰汚泥の発生量をより削減でき、脱水ケーキの脱水性が大幅に改善され、この結果、汚泥処理にかかる下記に挙げるような種々の負荷が低減される。まず、本発明の方法で下水を生物処理すると、最終的に処理する汚泥の脱水速度が向上するため、脱水機の小型化や、脱水機の運転時間の短縮が可能になる。また、得られる脱水ケーキの含水率が低下するため、脱水ケーキ量が削減され、運搬や、焼却や埋立処分等のその後の処理にかかる費用を低減できる。脱水効果を向上させるために脱水機で使用する薬剤量を低減することが可能になるので、薬剤にかかる費用を低減できる。
本発明者らは、本発明の有機性廃水の生物処理方法によって上記した顕著な効果が得られる具体的な理由について、以下のように考えている。まず、余剰汚泥の一部又は全部を可溶化(殺菌)処理する可溶化工程を設けることで、余剰汚泥を構成している微生物の細胞壁が破壊され、これを最初沈殿槽に戻すと、最初沈殿槽に流入してくる下水と混合される際に、微生物の細胞質が下水中に効率よく溶出することとなり、この結果、微生物の体内液が残留することなく外部に出ることで、可溶化処理した汚泥を曝気槽へと戻す従来の図4に示した方法と比較した場合に、更に余剰汚泥の発生量は減量化される。この脱水性の悪い余剰汚泥の大幅な減量化を達成することで、最終的に、余剰汚泥に比べて格段に脱水性に優れる最初沈殿槽で固液分離された沈殿物と一緒にして脱水処理して脱水ケーキとした場合に、得られる脱水ケーキの含水率をより低下させることができ、脱水ケーキの脱水性が大幅に改善される。また、可溶化処理した汚泥を、最初沈殿槽に流入してくる下水と混合させた際に、微生物の体外を覆っている高分子物質が変成し、洗い流されることで、余剰汚泥の脱水時における凝集性がよくなり、この結果、薬剤量の削減と脱水速度が向上したものと考えられる。
本発明方法では、最終沈殿槽で固液分離された余剰汚泥の一部又は全部を可溶化処理するが、その際に行う可溶化処理の方法は、特に限定されず、例えば、下記に挙げる方法をいずれも用いることができる。例えば、硝酸、硫酸、塩酸のいずれか、これらのいずれかの酸と鉄および/またはアルミニウム等の金属との塩、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくともいずれかの酸を主体とする薬剤を用いて、余剰汚泥のpH4を以下にして可溶化処理を行うことが挙げられる。また、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、アンモニアのいずれか、これらのアルカリとアルミニウムおよび/または亜鉛等の両性金属塩、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくともいずれかのアルカリを主体とする薬剤を用いて、余剰汚泥のpH10以上にして可溶化処理を行うことが挙げられる。しかし、本発明方法はこれらの方法に限定されるものではなく、その他、下記に挙げるような汚泥の可溶化方法を用いることができ、更には、これらの方法を組み合わせて用いてもよい。例えば、余剰汚泥に、過酸化水素を添加してOHラジカルを発生させるフェントン酸化法による方法、オゾンを添加する方法、50℃以上に加温する方法、ミル、超音波、高圧噴流等、物理的な力で細胞壁を破壊する方法、酵素の添加或いは微生物の生成する酵素を利用する方法等を用いることができる。
本発明方法で行う可溶化処理する汚泥の量は、最終沈殿槽で固液分離された汚泥から、曝気槽へと戻される返送汚泥を除いた余剰汚泥の少なくとも一部であればよい。処理対象の下水に対して理想的な処理条件を選択できれば、余剰汚泥の全部を可溶化処理することで、余剰汚泥の発生量をゼロにすることも可能であるが、処理対象の下水の性状は、産業廃水よりも少ないものの変動があるので、常に余剰汚泥をゼロにすることは現実的ではない。しかし、本発明の方法によれば、標準活性汚泥処理方法と比べて、余剰汚泥の量を大きく削減でき、しかも、最終的に排出される汚泥ケーキの含水率を格段に低減させることができる。本発明者の検討によれば、効果的な余剰汚泥の減量化を達成するためには、可溶化処理する汚泥量を、汚泥を可溶化処理しない標準活性汚泥処理方法を行った時の余剰汚泥量(kg−DrySS)に対して0.2〜4倍、より好ましくは0.2〜2倍とすることが有効である。本発明者らの検討によれば、可溶化処理する被処理汚泥の量が0.2倍よりも少ないと、減量化の効果が十分に得られなくなる。一方、可溶化処理する被処理汚泥の量が4倍よりも多いと、通常の処理系における活性汚泥量が不足して処理水のCOD値が悪化することになる場合があるので好ましくない。
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の例示であって、本発明の限定を意図するものではない。
従来用いられている標準活性汚泥方法の試験装置を用い、下水に対して、それぞれ、下記の方法で63日間にわたって浄化処理を行った。具体的には、100Lの最初沈殿槽と、250Lの曝気槽と、200Lの最終沈殿槽とを有する試験装置を用いた。該試験装置は、さらに、余剰汚泥濃縮装置と、初沈汚泥濃縮装置と、余剰汚泥と初沈汚泥(初沈の沈殿物)とを合わせて脱水するための脱水装置を有する(図3参照)。この試験装置への下水の流入水量は、500L/日とした。実施例1、比較例1、比較例2では、それぞれ同一の下水を原水とし、基本的には上記した試験装置を用い、下記の処理フローでそれぞれ処理を行った。表1に、各フローの主要件をまとめて示した。
[実施例1]
実施例1では、図1に示したフローにしたがって処理した。すなわち、上記した試験装置に更に、余剰汚泥の一部を可溶化処理するための2Lの汚泥処理装置を設けたものを用い、該処理装置で余剰汚泥の一部を可溶化処理(殺菌処理)した後、得られた可溶化した汚泥を最初沈殿槽に戻すように構成した。可溶化処理は、可溶化処理するための処理装置に導入した余剰汚泥に、硫酸と硫酸第1鉄を固形物重量で1:1の比率で混合した溶液を加えて、汚泥のpHが3となるようにし、同時に過酸化水素を酸素換算で500mg/l添加して行った。本実施例における処理は、可溶化処理工程で可溶化処理する汚泥量を、比較例1で行った汚泥を可溶化処理しない標準活性汚泥処理方法を行った時の余剰汚泥量(kg−DrySS)に対して1.2倍としたものである。
[比較例1]
比較例1では、図3に示したフローにしたがって処理した。すなわち、上記した実施例1で用いた試験装置において、汚泥処理装置を設けない装置を用い、余剰汚泥の一部を可溶化処理しない以外は実施例1と同様にして下水処理を行った。
[比較例2]
比較例2では、図4に示したフローにしたがって処理した。すなわち、上記した実施例1で用いた試験装置と同様の返送汚泥処理装置を設け、該処理装置で余剰汚泥の一部を可溶化処理(殺菌処理)した後、得られた可溶化した汚泥を曝気槽に戻すように構成した。可溶化処理の条件は、実施例1と同様にした。
Figure 2013132618
[試験方法]
実施例1、比較例1、2では、上記した各フローで、それぞれ63日間にわたって連続して試験した。いずれの場合も、処理水量は0.5m3/日であり、この間の積算処理水量は30m3であった。最初沈殿槽および最終沈殿槽からの排泥は、1日1回手動で所定量を引き抜き、それぞれ汚泥濃度の測定を行い、排泥量を求め、それぞれ表2に示した。さらに、7日分の最初沈殿槽と最終沈殿槽の排泥汚泥を合わせて混合し、該混合汚泥を脱水機で脱水処理した。脱水処理に際しては、脱水助剤としてカチオン系の高分子凝集剤を注入して行った。その際の添加量は、目視判断によって、フロック径が整って、かつ、しっかりした凝集フロックのできる量をそれぞれ注入した。表2に、各フローにおける脱水助剤の添加量および添加率をまとめて示した。また、脱水機は、ベルトプレス型脱水機を用いた。そして、上記した混合汚泥1Lに、脱水助剤として上記した凝集剤をそれぞれに加えて凝集フロックを作った混合汚泥を脱水機のろ布上に静かに流下して脱水し、ろ布から剥離した脱水ケーキを採取して、含水率の測定を行った。得られた結果を、表2にまとめて示した。また、各フローでの処理後の処理水の水質について表3にまとめて示した。水質は、63日間にわたっての試験中、継続的に測定を行ったが、表3では、その間の平均値で示した。表3中に、処理した原水の性状と、曝気槽への流入水の性状についても合して示した。
Figure 2013132618
Figure 2013132618
[試験結果]
表2、3に示したように、曝気槽中のMLSSは、実施例1の処理と、比較例1の処理では、ほぼ同じ値で推移したが、可溶化処理した汚泥を曝気槽に戻して処理を行った比較例2の処理では、若干高い値となった。さらに、処理水についても、実施例1の処理と、比較例1の処理では、ほぼ同じで、しかも極めて良好な処理水質のものが得られることが確認された。しかし、比較例2の処理では、表2、3に示したように、これらの処理に比較して、処理水のSS、BODとも若干高い値となった。このように、余剰汚泥の減量化をするために、余剰汚泥の一部を可溶化処理した場合に、可溶化処理した汚泥を曝気槽に戻す比較例2で行った従来の方法では、汚泥の可溶化工程を設けない比較例1の標準活性汚泥処理方法と比較して、曝気槽中のMLSSの値が増加し、また、処理水の水質が若干低下することが確認された。これらのことは、従来の余剰汚泥の減量化のために従来行っている余剰汚泥の一部を可溶化して、可溶化処理した汚泥を曝気槽に戻して処理する方法における課題が、本発明方法によって改善されたことを示している。さらに、表3に示したように、実施例1の処理では、処理水中のリン分の量が比較例で処理した場合に比べて低減できることが確認され、リン分が最終的な処理汚泥へと移行するという新たな効果があることを確認した。
また、余剰汚泥の一部を可溶化することによって得られる余剰汚泥の減量化について、実施例1の処理と比較例2の処理とを比較した場合、表2に示した通り、63日間の積算量で比較した場合、余剰汚泥の発生量は、実施例1の処理では0.6kg−DS(Dry SS)であったのに対し、比較例2の処理では2.0kg−DSであり、減量化率においても優れた効果があることが確認された。なお、汚泥の可溶化処理を行わない比較例1の処理では、2.4kg−DSであり、曝気槽に可溶化処理した汚泥を返送した比較例2の処理の場合にも減量化の効果があるが、実施例1と比べると、減量化の効果において顕著な差があることがわかった。
さらに、表2に示したように、積算の初沈汚泥量と余剰汚泥量とを合算した混合汚泥量では、実施例1の処理では、可溶化処理した汚泥を最初沈殿槽に返送するため、初沈汚泥量が増加するので、余剰汚泥についての減量化ほどの差はないものの、この混合汚泥量においても、実施例1の処理では、比較例1、2の処理の場合に比べて、DSレベルでの汚泥発生量が少なくなった。また、最終の処理物である脱水ケーキで比べると、表2に示したように、実施例1の処理では、比較例1、2の処理と比べて、脱水ケーキの含水率が大幅に削減され、脱水性が向上したことがわかる。この効果も相まって、脱水ケーキ量では、実施例1の処理では、比較例1の標準活性汚泥処理方法による処理に比べて、69%脱水ケーキ量が少なくなり、比較例2の処理と比べても、30%少なくなった。
また、脱水助剤の添加率を比べた場合、実施例1の処理では、脱水性が良好であるにもかかわらず、比較例の処理の場合よりも脱水助剤の添加率が低くできることがわかった。また、汚泥に対する脱水助剤の添加量では、余剰汚泥のDS量が削減されていることと相まって、大幅に少なく、削減率で見ると、比較例1の処理に対して189%削減でき、比較例2の処理に対して70%削減された。なお、上記したように、実施例1では、可溶化処理を、汚泥に硫酸と硫酸第1鉄を固形物重量で1:1の比率で混合した溶液を加えて汚泥のpHが3となるようにし、同時に過酸化水素を酸素換算で500mg/l添加して行ったが、汚泥に、苛性ソーダとアルミン酸ソーダを固形物重量で2:1の比率で混合した溶液を加えて、汚泥のpHが11となるようにし、同時に過酸化水素を酸素換算で500mg/l添加して行ったこと以外、実施例1と同様にして下水処理を行ったところ、実施例1と同程度の、余剰汚泥の減量化、汚泥の脱水性の向上効果が得られた。
[参考検討例−1]
最初沈殿槽で固液分離された沈殿物(以下、「生汚泥」と呼ぶ)と、最終沈殿槽からの余剰汚泥とを混合して脱水ケーキとした場合に、得られる脱水ケーキの含水率は、両者の混合率によって変化する。表4に、その変化の程度を調べた結果を示した。表3に示した通常の標準活性汚泥処理方法で処理した場合、生汚泥と余剰汚泥の混合比は60:40であるので、表4に示したように、混合汚泥の含水率は80.6%となる。余剰汚泥のみの場合は87.8%であるので、混合汚泥とすることで含水率を低下させることができる。表4に示したように、例えば、余剰汚泥量を、通常の処理に比べて半分(50%減量)の20にできれば、混合汚泥の含水率は76.2%となり、余剰汚泥のみの場合に比べて含水率を11%以上低減でき、また、更なる余剰汚泥の量の低減に伴って混合汚泥の含水率をより低減できる。表4に示したように、余剰汚泥量をゼロにできれば、最終的な汚泥の処理対象は、余剰汚泥に比べて格段に脱水が容易な含水率が70%程度の生汚泥のみになる。
Figure 2013132618
表4の結果から、生汚泥と余剰汚泥とを混合して脱水ケーキとする場合に、余剰汚泥の減量化に伴って得られる、混合汚泥を乾燥してなる脱水ケーキにおける減量率と、余剰汚泥のDS減量率と、これらの合計である総合減量率を算出し、算出結果を表5に示した。先にも述べたように、表3に示した通常の標準活性汚泥処理方法で処理した場合、生汚泥と余剰汚泥の混合比は60:40であるが、算出結果は、その場合における混合汚泥の脱水ケーキ量を100とし、これを基準として求めた値である。表5に示したように、例えば、余剰汚泥量を30%低減できれば、通常の標準活性汚泥処理方法で処理した場合に比較して、最終的に処理する汚泥量を22%減量化できる。例えば、余剰汚泥量を半減(50%低減)できれば、通常の標準活性汚泥処理方法で処理した場合に比較して、最終的に処理する汚泥量を35%の減量化できる。本発明方法によれば、余剰汚泥をゼロにできる可能性があるが、その場合は、最終的に処理する汚泥量を60%以上の減量化できることになる。
表5に示した総合減量率(%)の算出方法を、余剰汚泥がゼロになり、最終的に処理する汚泥が生汚泥のみになった場合を例にとって、下記に説明する。
1.基準とする従来の処理の、生:余剰=60:40(質量比)の場合の含水率は80.6%である。
したがって、汚泥の脱水ケーキ量(例えば、kg)は、下記の通り515kgとなる。
(60+40)÷(1−0.806)=515
2.一方、余剰汚泥がゼロになった、生:余剰=60:0(質量比)の場合の含水率は69.8%である。
したがって、この時の脱水ケーキ量(例えば、kg)は、下記の通り199kgとなる。
(60+0)÷(1−0.698)=199
3.したがって、これらの値から算出される総合減量率は、下記の通り61.5%となる
(515−199)÷515×100=61.5%となる
Figure 2013132618

Claims (2)

  1. 下水の処理を、少なくとも、最初沈殿槽と、活性汚泥処理槽と、最終沈殿槽とを用いて行う標準活性汚泥処理方法に、さらに最終沈殿槽で固液分離された余剰汚泥の一部又は全部を可溶化処理するための可溶化処理工程を設け、該可溶化処理工程で処理した汚泥を最初沈殿槽に戻し、上記最初沈殿槽で固液分離した初沈沈殿物を、可溶化処理されない余剰汚泥がある場合は該余剰汚泥とともに脱水処理することを特徴とする有機性廃水の生物処理方法。
  2. 前記可溶化処理工程で可溶化処理する汚泥量を、汚泥を可溶化処理しない標準活性汚泥処理方法を行った時の余剰汚泥量(kg−DrySS)に対して0.2〜4倍とする請求項1に記載の有機性廃水の生物処理方法。
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