JP2013127918A - 酸化物超電導線材とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、テープ状の基材の一方の面の上方に中間層と酸化物超電導層と保護層がこの順に積層されてテープ状の酸化物超電導積層体が構成され、該酸化物超電導積層体がその周囲を第1の金属テープを折り返して構成された第1の安定化層により囲まれ、該第1の安定化層がその周囲を第2の金属テープを折り返して構成された第2の安定化層により囲まれるとともに、前記酸化物超電導積層体とその周囲の第1の安定化層がそれらの間に充填された第1の低融点金属層により接合され、前記第1の安定化層と前記第2の安定化層がそれらの間に充填された第2の低融点金属層により接合されてなる。
【選択図】図1
Description
超電導層の全体を保護した従来構造として、以下の特許文献1に記載のように、寒剤がワイヤに浸透し、超電導特性を劣化させるのを防止する複合セラミック超電導テープであって、その外面を密封して囲む構造が知られている。この複合セラミック超電導テープでは、複合テープの周囲を取り囲むように金属テープを配置し、金属テープの端縁どうしを一部重ね合わせて溶接した構造にされている。
また、高温超電導線材を巻線する際に発生する高温超電導層を金属基板から引き剥がそうとする力に対抗する目的で密封構造を採用した高温超電導線材が以下の特許文献2に開示されている。特許文献2に記載の高温超電導線材は、上下に離間して配置したテープ状の安定化金属層の間にはんだに埋め込まれた状態のテープ状の高温超電導線材部品を配置した構造になっている。
このため、上述の特許文献1、2に示す如く溶接で接合した金属のテープで基板と高温超電導層を取り囲む構造、あるいは、2枚の金属テープの安定化層の間にはんだで埋め込まれた状態の高温超電導線材を配置した構造が有効であると思われる。
ところが、テープ状の酸化物超電導線材を2枚の金属テープで挟み込み、半田で固定する構造の場合、金属テープと酸化物超電導体の界面のはんだ密着性が問題となり、長尺の超電導線材の全長において、わずかでも隙間が生じているとその隙間部分から水分の浸入を許すおそれがある。
また、図4に示す構造の酸化物超電導導体106は、銅テープ105どうしが重なった部分で厚みが大幅に変わってしまうので、超電導コイルなどを構成する場合に巻胴に超電導導体106を巻回するにしても、1層巻きでは問題を生じないものの、多層巻きする場合に銅テープ105の重なり部分で巻き乱れが生じ易い問題がある。
テープ状の酸化物超電導積層体の外方に金属テープを折り返し構造とした第1の安定化層と第2の安定化層を2重に重ねるように低融点金属層を介し接合したので、酸化物超電導積層体を2重に覆った構造であって、水分が浸入し難い構造の酸化物超電導線材を提供できる。
第1の安定化層の折り返し部と第2の安定化層の折り返し部を酸化物超電導積層体の幅方向両側に別々に配置することで、水分が浸入しようとした場合に超電導特性に対し影響を及ぼすおそれの高い酸化物超電導積層体の両側面部分を確実に安定化層で覆うことができ、防水性能の優れた酸化物超電導線材を提供できる。
テープ状の酸化物超電導積層体を第1の安定化層と第2の安定化層で2重に覆い、第2の安定化層の開口端部を相互融着することで全周を安定化層で完全に覆った2重密閉構造の酸化物超電導線材を提供できる。
また、酸化物超電導線材の周面に半田層などの低融点金属層が露出していない構造とするならば、半田層を構成する標準電位が負となるスズや鉛などの金属が酸化物超電導線材の表面に存在しないので、隣接する金属同士の電位差に起因して生じるおそれの高い電食を生じない構造にできる。
本発明方法により、金属テープを折り返し構造とした第1の安定化層と第2の安定化層を2重に重ねて低融点金属層を介し接合した酸化物超電導線材を得ることができるので、酸化物超電導積層体を金属テープで2重に覆った構造であって、水分が浸入し難い構造の酸化物超電導線材を製造できる。
第1の安定化層の折り返し部と第2の安定化層の折り返し部を酸化物超電導積層体の幅方向両側に別々に配置することで、水分が浸入しようとする場合に超電導特性に対し影響を及ぼすおそれの高い酸化物超電導積層体の側面部分を確実に安定化層で覆うことができ、防水性能の優れた酸化物超電導線材を提供できる。
本発明により、テープ状の酸化物超電導積層体を第1の安定化層と第2の安定化層で2重に覆い、第2の安定化層の開口端部を相互融着することで全周を2重に完全に安定化層で覆った構造の酸化物超電導線材を提供できる。
酸化物超電導線材の周面に半田層などの低融点金属層が露出していない構造とするならば、半田層を構成する標準電位が負となるスズや鉛などの金属が表面に存在しないので、隣接する金属同士の電位差に起因して生じるおそれの高い電食を生じることがない。
図1は本発明に係る第1実施形態の酸化物超電導線材の一部を横断面とした斜視図であり、この実施形態の酸化物超電導線材Aは、内部に設けられたテープ状の酸化物超電導積層体1を銅などの導電性材料製の金属テープからなる第1の安定化層2Aと第2の安定化層2Bで覆って構成されている。
この例の酸化物超電導積層体1は、図2に示すようにテープ状の基材3の上方に、中間層4と酸化物超電導層5と保護層6をこの順に積層してなる。
前記基材3は、可撓性を有する超電導線材Aとするためにテープ状であることが好ましく、耐熱性の金属からなるものが好ましい。各種耐熱性金属の中でも、ニッケル合金からなることが好ましい。なかでも、市販品であれば、ハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)が好適である。基材3の厚さは、通常は、10〜500μmである。また、基材3として、ニッケル合金に集合組織を導入した配向Ni−W合金テープ基材等を適用することもできる。
下地層を設ける場合は、以下に説明する拡散防止層とベッド層の複層構造あるいは、これらのうちどちらか1層からなる構造とすることができる。
下地層として拡散防止層を設ける場合、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化アルミニウム(Al2O3、「アルミナ」とも呼ぶ)、あるいは、GZO(Gd2Zr2O7)等から構成される単層構造あるいは複層構造の層が望ましく、厚さは例えば10〜400nmである。
下地層としてベッド層を設ける場合、ベッド層は、耐熱性が高く、界面反応性を低減し、その上に配される膜の配向性を得るために用いる。このようなベッド層は、例えば、イットリア(Y2O3)などの希土類酸化物であり、より具体的には、Er2O3、CeO2、Dy2O3、Er2O3、Eu2O3、Ho2O3、La2O3等を例示することができ、これらの材料からなる単層構造あるいは複層構造を採用できる。ベッド層の厚さは例えば10〜100nmである。また、拡散防止層とベッド層の結晶性は特に問われないので、通常のスパッタ法等の成膜法により形成すれば良い。
配向層は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザー蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法(以下、IBAD法と略記する。)等の物理的蒸着法;化学気相成長法(CVD法);塗布熱分解法(MOD法);溶射等、酸化物薄膜を形成する公知の方法で積層できる。これらの方法の中でも特に、IBAD法で形成された前記金属酸化物層は、結晶配向性が高く、酸化物超電導層やキャップ層の結晶配向性を制御する効果が高い点で好ましい。IBAD法とは、蒸着時に、結晶の蒸着面に対して所定の角度でイオンビームを照射することにより、結晶軸を配向させる方法である。通常は、イオンビームとして、アルゴン(Ar)イオンビームを使用する。例えば、Gd2Zr2O7、MgO又はZrO2−Y2O3(YSZ)からなる配向層は、IBAD法における配向度を表す指標であるΔΦ(FWHM:半値全幅)の値を小さくできるため、特に好適である。
キャップ層の材質は、上記機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、好ましいものとして具体的には、CeO2、Y2O3、Al2O3、Gd2O3、Zr2O3、Ho2O3、Nd2O3等が例示できる。キャップ層の材質がCeO2である場合、キャップ層は、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいても良い。
キャップ層は、PLD法(パルスレーザ蒸着法)、スパッタリング法等で成膜することができる。PLD法によるCeO2層の成膜条件としては、基材温度約500〜1000℃、約0.6〜100Paの酸素ガス雰囲気中で成膜することができる。CeO2のキャップ層5の膜厚は、50nm以上であればよいが、十分な配向性を得るには100nm以上が好ましい。但し、厚すぎると結晶配向性が悪くなるので、50〜5000nmの範囲とすることができる。
このAg粒子の回り込み堆積が生じている場合、ニッケル合金からなるハステロイ製の基材3の裏面側と側面側に半田層7が密着する。なお、Ag粒子の回り込みによる堆積が無い場合はニッケル合金からなるハステロイ製の基材3に半田層7が満足に密着されなくなるおそれがある。
第1の安定化層2Aと半田層7についてより詳しく説明すると、第1の安定化層2Aは、第1の壁部2aと側壁2bと第2の壁部2cとからなる横断面略C字型(コ字型)に金属テープを折り曲げることで構成され、この第1の安定化層2Aによって酸化物超電導積層体1が覆われている。即ち、第1の壁部2aが基材3側を覆い、側壁2bが基材3の一側面と中間層4の一側面と酸化物超電導層5の一側面と保護層6の一側面を覆い、第2の壁部2cが保護層6を覆っている。半田層7において内部側被覆層7bは、酸化物超電導積層体1の全周面のうち、第1の安定化層2Aが覆っている分の全てを被覆するように設けられ、第1の安定化層2Aと酸化物超電導積層体1の間を埋めるように充填され、酸化物超電導積層体1に第1の安定化層2Aを接合している。
被覆層7bの厚さは2〜10μmの範囲、より好ましくは2〜4μmの範囲とすることができる。
被覆層7bの厚さが2μm未満では、半田不足による貼り合わせ不良のおそれがある。
逆に、10μmを超える厚さにすると、半田がはみ出して異物となるおそれがある。
また、図1に示す構造の酸化物超電導線材Aは、その全周を第2の安定化層2Bが覆った構造であり、外面に凹凸がないため、酸化物超電導線材Aをコイル巻き加工する場合、大きな段差を生じることがなく、コイル巻き加工時の巻き乱れを生じ難い特徴を有する。
図3(a)に示すように基材3と中間層4と酸化物超電導層5と保護層6を積層したテープ状の酸化物超電導積層体1を用意するとともに、両面に低融点金属の被覆層8を被覆した金属テープ9を用意する。
図3(a)に示すように被覆層8、8を備えた金属テープ9を幅方向中央側から2つ折りに折り曲げてその内側に酸化物超電導積層体1を挟み込む。図3(a)に示す例では便宜的に酸化物超電導積層体1の保護層6を下にして金属テープ9に挟み込む場合を例示しているが、酸化物超電導積層体1の保護層6を下に配置するか、上に配置するかは、いずれの向きでも良い。
なお、酸化物超電導積層体1の基材3をハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)で形成した場合、ハステロイは半田で接合し難い材料である。しかし、AgまたはAg合金からなる保護層6をDCスパッタ装置やRFスパッタ装置などの成膜装置により形成すると、成膜装置のチャンバの内部でテープ状の基材3を走行させながら成膜するので、基材3の両側面と基材3の裏面に対し保護層6の成膜粒子が回り込むことでこれらの面にも保護層6の構成元素粒子が若干堆積される。基材3に前述のAg粒子の回り込み堆積が生じる場合、半田による基材3と金属テープ9の密着性の良好な接合が可能となる。
なお、図3(c)に示す例では便宜的に酸化物超電導積層体1の保護層6を下にして金属テープ10に挟み込む場合を例示しているが、酸化物超電導積層体1の保護層6を下に配置するか、上に配置するかは、いずれの向きでも良い。
図3(d)に示すように第1の安定化層付きの酸化物超電導積層体1を金属テープ10で挟み込み、被覆層7a、7bの融点温度に加熱して酸化物超電導積層体1と金属テープ10を溶融した被覆層7bで接合すると酸化物超電導積層体1を折り曲げ構造の第1の安定化層2Aと第2の安定化層2Bで覆った構造とすることができる。
以上の工程を経ることで、図3(f)に示すように第1の安定化層2Aの全周を第2の安定化層2Bで覆った構造を得ることができ、図1に示す構造と同等の酸化物超電導線材Aを得ることができる。
このように構成すると、金属テープ9、10の開放端が酸化物超電導積層体1の同じ端部側となるが、前述した最終工程で行うレーザー溶接により、突出部10a、10aを溶融させて形成する閉塞部10cの形成が完全であるならば、酸化物超電導線材Aの防水性能に不足は生じない。
ただし、酸化物超電導線材Aが長尺の構造である場合、酸化物超電導線材Aの全長にわたり、均一のレーザー溶接を確実にできるか否かが不明な場合がある。この場合は、図3に示すように金属テープ9、10を互い違いの方向に折り曲げて酸化物超電導積層体1の両側面を安定化層2A、2Bの折り返し部でそれぞれ取り囲む構造とした方が、酸化物超電導積層体1の側面部分をより完全な密封構造とするために好ましい。
Claims (6)
- テープ状の基材の一方の面の上方に中間層と酸化物超電導層と保護層がこの順に積層されてテープ状の酸化物超電導積層体が構成され、
該酸化物超電導積層体がその周囲を第1の金属テープを折り返して構成された第1の安定化層により囲まれ、該第1の安定化層がその周囲を第2の金属テープを折り返して構成された第2の安定化層により囲まれるとともに、
前記酸化物超電導積層体とその周囲の第1の安定化層がそれらの間に充填された第1の低融点金属層により接合され、前記第1の安定化層と前記第2の安定化層がそれらの間に充填された第2の低融点金属層により接合されてなることを特徴とする酸化物超電導線材。 - 前記第1の金属テープを折り返して該第1の金属テープの幅方向一側に折り返し部を幅方向他側に開口部を形成して第1の安定化層が形成され、該第1の安定化層の折り返し部の内側に前記酸化物超電導積層体の幅方向一側側面を位置させて前記酸化物超電導積層体が前記第1の安定化層により覆われるとともに、
前記第2の金属テープを折り返して該第2の金属テープの幅方向一側に開口部を幅方向他側に折り返し部を形成して第2の安定化層が形成され、該第2の安定化層の折り返し部の内側に前記酸化物超電導積層体を内包した前記第1の安定化層の開口部を位置させて前記第1の安定化層が前記第2の安定化層により覆われたことを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導線材。 - 前記第2の安定化層の開口部が前記第1の安定化層の折り返し部分の外側で相互融着されて閉塞されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸化物超電導線材。
- テープ状の基材の一方の面の上方に中間層と酸化物超電導層と保護層がこの順に積層されたテープ状の酸化物超電導積層体を用意し、
この酸化物超電導積層体の外方に、第1の金属テープを折り返して該金属テープの幅方向一側に折り返し部を幅方向他側に開口部を形成した第1の安定化層を被せてこれらの間に配した第1の低融点金属層により接合し、
この後、前記第1の安定化層の外方に、第2の金属テープを折り返して該金属テープの幅方向一側に開口部を幅方向他側に折り返し部を形成した第2の安定化層を被せてこれらの間に配した第2の低融点金属層により接合することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。 - 前記酸化物超電導積層体の外方に前記第1の安定化層と第2の安定化層を被せる場合、前記第1の安定化層の折り返し部と第2の安定化層の折り返し部を前記酸化物超電導積層体の幅方向異なる側の端部側に配置することを特徴とする請求項4に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
- 前記第2の安定化層の開口端部を前記第1の安定化層の折り返し部分の外側で相互融着して一体化することを特徴とする請求項5に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
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