JP2013124270A - インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 多価金属の混入がある場合においても、インクの蒸発安定性と吐出安定性を維持しつつ、光学濃度に優れる画像を記録することができるインクジェット用のインクの提供。
【解決手段】 顔料、塩、多価金属、及び、クリプタンドを含有するインクジェット用のインクであって、前記顔料が、ホスホン酸基を少なくとも含む官能基が粒子表面に結合している自己分散顔料であり、前記塩は、特定の1価のカチオンと特定のアニオンとが結合して構成されるものであり、インク中の1価カチオン濃度が0.040mol/L以上であり、インク中の前記多価金属の含有量(ppm)が、インク全質量を基準として、5ppm以上であり、インク中の前記クリプタンドの含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることを特徴とするインク。
【選択図】 なし
【解決手段】 顔料、塩、多価金属、及び、クリプタンドを含有するインクジェット用のインクであって、前記顔料が、ホスホン酸基を少なくとも含む官能基が粒子表面に結合している自己分散顔料であり、前記塩は、特定の1価のカチオンと特定のアニオンとが結合して構成されるものであり、インク中の1価カチオン濃度が0.040mol/L以上であり、インク中の前記多価金属の含有量(ppm)が、インク全質量を基準として、5ppm以上であり、インク中の前記クリプタンドの含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることを特徴とするインク。
【選択図】 なし
Description
本発明は、インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法に用いるインクには、近年、記録した画像における光学濃度や堅牢性をより一層向上することが求められている。この要求に対して、例えば、自己分散顔料と特定の塩を含有することで、光学濃度及び文字品位を向上することができるインクに関する提案がある(特許文献1参照)。また、カルシウムとの反応性の指標を定めたカルシウム指数値に基づき、顔料表面に導入する基としてカルシウムとの反応性の高い官能基を選択した自己分散顔料を用いることで、光学濃度を向上することができるインクに関する提案がある(特許文献2参照)。
また、インクジェット記録方法では、インクに混入する不純物に起因する析出物によりインクの吐出不良が生じ、吐出安定性が低下することがある。このため、クラウンエーテルによりインクに混入する不純物を捕捉することに関する提案がある(特許文献3参照)。
しかしながら、例えば、特許文献2に記載の自己分散顔料を使用することで、さらなる光学濃度の向上が期待されるが、インクの浸透性が高い普通紙などの記録媒体における光学濃度は未だ十分なレベルとは言えない。また、この自己分散顔料は、カルシウムなどの多価金属との反応性が高い官能基が顔料表面に結合しているため、インクを構成する材料からインクに混入する多価金属と反応し、インクの蒸発安定性が得られなくなるという課題がある。さらに、本発明者らの検討の結果、特許文献2に記載の自己分散顔料と、特許文献1に記載の塩とをインクに含有させた場合、インクに混入したカルシウムによる蒸発安定性の低下が、特に顕著となることがわかった。
したがって、本発明の目的は、多価金属の混入がある場合においても、インクの蒸発安定性と吐出安定性を維持しつつ、光学濃度に優れる画像を記録することができるインクジェット用のインクを提供することにある。また、本発明の目的は、このようなインクを用いることで、インクの蒸発安定性と吐出安定性を維持しつつ、光学濃度に優れる画像を安定して記録できるインクカートリッジ及びインクジェット記録方法を提供することにある。
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明にかかるインクは、顔料、塩、多価金属、及び、クリプタンドを含有するインクジェット用のインクであって、前記顔料が、ホスホン酸基を少なくとも含む官能基が粒子表面に結合している自己分散顔料であり、前記塩は、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び、有機アンモニウムイオンからなる1価のカチオン群より選択される少なくとも1種のカチオンと、Cl−、Br−、I−、ClO−、ClO2 −、ClO3 −、ClO4 −、NO2 −、NO3 −、H2PO4 −、HCO3 −、HCOO−、CH3COO−、COOH(COO−)、C6H5COO−、CH3SO3 −、C6H5PO3 −、SO4 2−、CO3 2−、(COO−)2、C2H4(COO−)2、C6H4(COO−)2、HPO4 2−、PO4 3−、C6H5O7 3−、C6H3(COO−)3、及び、(CH2COO−)2NCH2CH2N(CH2COO−)2からなるアニオン群より選択される少なくとも1種のアニオンとが結合して構成されるものであり、インク中の1価カチオン濃度が0.040mol/L以上であり、インク中の前記多価金属の含有量(ppm)が、インク全質量を基準として、5ppm以上であり、インク中の前記クリプタンドの含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることを特徴とする。
本発明によれば、多価金属の混入がある場合においても、インクの蒸発安定性と吐出安定性を維持しつつ、光学濃度に優れる画像を記録することができるインクジェット用のインクを提供することができる。また、本発明の別の実施態様によれば、このようなインクを用いることで、インクの蒸発安定性と吐出安定性を維持しつつ、光学濃度に優れる画像を安定して記録できるインクカートリッジ及びインクジェット記録方法を提供することができる。
以下に、本発明の好ましい実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。なお、以下の記載で、インクジェット用のインクのことを、単にインクと省略して記載することがある。また、ホスホン酸基を有する顔料を「ホスホン酸型自己分散顔料」と記載することがある。
本発明者らの検討の結果、後述するインクの構成によって、インク中にある程度の多価金属が存在しても、インクの蒸発安定性と吐出安定性とを維持しつつ、画像の光学濃度の向上を達成できることを見出した。このような効果が得られる本発明のインクは、顔料、塩、多価金属、及び、クリプタンドを含有するインクジェット用のインクであって、前記顔料が、ホスホン酸基を少なくとも含む官能基が粒子表面に結合している自己分散顔料であり、前記塩は、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び、有機アンモニウムイオンからなる1価のカチオン群より選択される少なくとも1種のカチオンと、Cl−、Br−、I−、ClO−、ClO2 −、ClO3 −、ClO4 −、NO2 −、NO3 −、H2PO4 −、HCO3 −、HCOO−、CH3COO−、COOH(COO−)、C6H5COO−、CH3SO3 −、C6H5PO3 −、SO4 2−、CO3 2−、(COO−)2、C2H4(COO−)2、C6H4(COO−)2、HPO4 2−、PO4 3−、C6H5O7 3−、C6H3(COO−)3、及び、(CH2COO−)2NCH2CH2N(CH2COO−)2からなるアニオン群より選択される少なくとも1種のアニオンとが結合して構成されるものであり、インク中の1価カチオン濃度が0.040mol/L以上であり、インク中の前記多価金属の含有量(ppm)が、インク全質量を基準として、5ppm以上であり、インク中の前記クリプタンドの含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることを要する。
上述の特許文献1に記載されているように、自己分散顔料を含有するインクに塩を添加することで、得られる画像の光学濃度の向上が見込める。そして、この際に用いる色材として、ホスホン酸型自己分散顔料を選択することで、近年要求されるレベルを十分に満足する画像の光学濃度を得ることができる。本発明においては、上記レベルの画像の光学濃度を達成するためのしきい値として、インク中の1価カチオン濃度が0.040mol/L以上であるという下限を設けている。これよりも1価カチオン濃度が少ないと、画像の光学濃度を得ることができない。
本発明において使用する自己分散顔料は、ホスホン酸基を少なくとも含む官能基が顔料粒子表面に結合している。このホスホン酸基は、多価金属との反応性が高い官能基あり、先に述べたように画像の光学濃度の向上に寄与するが、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどの多価金属に対して非常に敏感である。これに対して、インクを構成する材料からのインクへの多価金属の混入は避けられず、本発明者らの検討によれば、このことが原因となってインクの蒸発安定性が低下するという問題がある。本発明者らがかかる課題を解決すべく検討を行った結果、多価金属を捕捉するクリプタンドをインク中に含有させることによって、インクの蒸発安定性及び吐出安定性と、画像の光学濃度と、を共に向上させることができることを見出して本発明に至った。
クリプタンドとは、その構造中に複数の環を有するかご状の化合物であり、特許文献3に記載されているクラウンエーテルなどの包接化合物に比べ、捕捉能が高いことが知られている。クラウンエーテルは平面的な分子構造を有し、対象物を2次元的に捕捉するのに対し、クリプタンドは複数の環で構成される分子構造を有し、対象物を3次元的に捕捉するために、このような捕捉能の差が生じる。なお、条件によっても異なるが、クリプタンドの捕捉能はクラウンエーテルに比べて数万倍以上になるといったことも報告されている。本発明では、クリプタンドの高い捕捉能に着目し、インクにクリプタンドを含有させることで、インク中に混入する多価金属を確実に捕捉し、インクの蒸発安定性及び吐出安定性と、画像の光学濃度と、を共に向上させることを目的としている。
さらに、本発明者らの検討によれば、クリプタンドを用いた場合でも、その含有量はある範囲である必要があることを見出した。すなわち、インク中のクリプタンドの含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることを要する。含有量が0.1質量%未満であると、多価金属イオンを捕捉しきれないため、インクの蒸発安定性が得られず、含有量が10.0質量%を超えると、インクの吐出安定性が得られない。
また、インク中の多価金属の含有量は5ppm以上であることを要する。本発明は、インク中に多価金属を意図的に含有させることを意図するものではなく、インク中に多価金属が存在することを前提とし、それにより生じる問題を解決するものであるため、インク中の多価金属の含有量の下限は5ppm以上であることを要する。
<インク>
以下、本発明のインクを構成する各成分やインクの物性について詳細に説明する。
以下、本発明のインクを構成する各成分やインクの物性について詳細に説明する。
(顔料)
顔料の種類としては、例えば、有機顔料や、カーボンブラックなどの無機顔料が挙げられ、インクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。また、調色などの目的のために、顔料に加えてさらに染料などを併用してもよい。本発明においては、顔料としてカーボンブラックを用いたブラックのインクとすることが特に好ましい。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下、さらには1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
顔料の種類としては、例えば、有機顔料や、カーボンブラックなどの無機顔料が挙げられ、インクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。また、調色などの目的のために、顔料に加えてさらに染料などを併用してもよい。本発明においては、顔料としてカーボンブラックを用いたブラックのインクとすることが特に好ましい。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下、さらには1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
本発明のインクに用いる顔料は、ホスホン酸基を少なくとも含む官能基が顔料粒子表面に結合している自己分散顔料である。このような自己分散顔料を用いることにより、顔料をインク中に分散するための分散剤の添加が不要となる、又は分散剤の添加量を少量とすることができる。
インク中において、ホスホン酸基−PO(O〔M1〕)2は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。つまり、ホスホン酸基は、−PO3H2(酸型)、−PO3H−M1 +(一塩基塩)、及び−PO3 2−(M1 +)2(二塩基塩)のいずれかの形態を取り得る。ここで、M1はそれぞれ独立に、アルカリ金属、アンモニウム、及び有機アンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である。本発明においては、1の官能基に2つのホスホン酸基が含まれていることが好ましい。モノホスホン酸型自己分散顔料を用いても、光学濃度を向上することは勿論可能であるが、ビスホスホン酸型自己分散顔料を用いることでインクの蒸発安定性をより向上することができる。なお、トリスホスホン酸型自己分散顔料を用いると、インクの保存安定性が十分に得られない場合があるので、あまり好ましくない。
また、ホスホン酸基が官能基の末端にあること、つまり、顔料の粒子表面とホスホン酸基の間に他の原子団が存在することが好ましい。前記他の原子団(−R−)としては、炭素原子数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基、フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基、アミド基、スルホン基、アミノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基が挙げられる。また、これらの基を組み合わせた基などが挙げられる。さらには、前記他の原子団が、前記アルキレン基及び前記アリーレン基の少なくとも一方と、水素結合性を有する基(アミド基、スルホニル基、アミノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基)と、を含むことが特に好ましい。
本発明においては、顔料の粒子表面に結合させる官能基に、−CQ(PO3〔M1〕2)2の構造が含まれていることがより好ましい。ここで、式中のQは、水素原子、R、OR、SR、及びNR2のいずれかであり、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アシル基、アラルキル基、及びアリール基のいずれかである。Rが炭素原子を含む基である場合、その基に含まれる炭素原子の数は1乃至18であることが好ましい。具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基など、アシル基としてはアセチル基、ベンゾイル基など、アラルキル基としてはベンジル基など、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基など、がそれぞれ挙げられる。また、M1は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、及び有機アンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である。本発明においては、前記Qが水素原子である、−CH(PO3〔M1〕2)2の構造を含む官能基を顔料の粒子表面に結合させることが特に好ましい。
〔官能基導入量〕
本発明においては、自己分散顔料の官能基導入量が、0.38mmol/g以下であることが好ましい。官能基導入量が0.38mmol/g以下であることで、クリプタンドを含有するインクの蒸発安定性を特に向上することができる。また、官能基導入量が低すぎるとインクの保存安定性がやや低下する場合があるため、官能基導入量が0.10mmol/g以上であることが好ましい。なお、官能基導入量の単位は、顔料固形分1g当たりの官能基のミリモル(mmol)数である。
本発明においては、自己分散顔料の官能基導入量が、0.38mmol/g以下であることが好ましい。官能基導入量が0.38mmol/g以下であることで、クリプタンドを含有するインクの蒸発安定性を特に向上することができる。また、官能基導入量が低すぎるとインクの保存安定性がやや低下する場合があるため、官能基導入量が0.10mmol/g以上であることが好ましい。なお、官能基導入量の単位は、顔料固形分1g当たりの官能基のミリモル(mmol)数である。
自己分散顔料の官能基導入量は、以下に示すようにしてリンを定量することで測定することができる。先ず、測定対象である顔料(固形分)の含有量が0.03質量%程度になるように、顔料分散液を純水で希釈してA液を調製する。また、5℃、80,000rpm、15時間の条件で顔料分散液を超遠心分離し、顔料を除去して採取した上澄み液を純水で80倍程度に希釈してB液を調製する。調製したA液及びB液について、ICP発光分光分析装置などを使用してそれぞれリンを定量する。A液とB液のリンの定量値の差分から「ホスホン酸基の量」を算出することができる。そして、自己分散顔料の官能基導入量は、「ホスホン酸基の量」/n(nは1つの官能基に含まれる「ホスホン酸基の数」を示す。モノなら「1」、ビスなら「2」、「トリス」なら3となる)により算出することができる。ここで、1つの官能基に含まれる「ホスホン酸基の数」が不明である場合には、NMRなどの分析方法によって官能基の構造を解析することで知ることができる。なお、以上の説明においては、顔料分散液を用いた測定方法について述べたが、インクを用いても同様に自己分散顔料の官能基導入量を測定することができる。勿論、自己分散顔料の官能基導入量の測定方法は、上記の方法に限られるものではない。
(アニオンと1価のカチオンとが結合して構成される塩)
本発明のインクはアニオンと1価のカチオンとが結合して構成される塩を含有する。そして、前記アニオンは、Cl−、Br−、I−、ClO−、ClO2 −、ClO3 −、ClO4 −、NO2 −、NO3 −、H2PO4 −、HCO3 −、HCOO−、CH3COO−、COOH(COO−)、C6H5COO−、CH3SO3 −、C6H5PO3 −、SO4 2−、CO3 2−、(COO−)2、C2H4(COO−)2、C6H4(COO−)2、HPO4 2−、PO4 3−、C6H5O7 3−、C6H3(COO−)3、及び、(CH2COO−)2NCH2CH2N(CH2COO−)2からなるアニオン群より選択される少なくとも1種である。また、前記1価のカチオンは、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種である。インク中における塩の形態は、その一部が解離した状態、又は全てが解離した状態のいずれの形態であってもよい。このような塩を使用することで、インクの浸透性が高い普通紙などの記録媒体における光学濃度を向上することができる。
本発明のインクはアニオンと1価のカチオンとが結合して構成される塩を含有する。そして、前記アニオンは、Cl−、Br−、I−、ClO−、ClO2 −、ClO3 −、ClO4 −、NO2 −、NO3 −、H2PO4 −、HCO3 −、HCOO−、CH3COO−、COOH(COO−)、C6H5COO−、CH3SO3 −、C6H5PO3 −、SO4 2−、CO3 2−、(COO−)2、C2H4(COO−)2、C6H4(COO−)2、HPO4 2−、PO4 3−、C6H5O7 3−、C6H3(COO−)3、及び、(CH2COO−)2NCH2CH2N(CH2COO−)2からなるアニオン群より選択される少なくとも1種である。また、前記1価のカチオンは、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種である。インク中における塩の形態は、その一部が解離した状態、又は全てが解離した状態のいずれの形態であってもよい。このような塩を使用することで、インクの浸透性が高い普通紙などの記録媒体における光学濃度を向上することができる。
塩の分子量によっても異なるが、インク中の塩の含有量(質量%)が、0.05質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。含有量が0.05質量%未満であると、浸透性の高い記録媒体において画像濃度が十分に得られない場合があり、2.0質量%超であると、インクの蒸発安定性が十分に得られない場合がある。
(1価カチオン濃度)
本発明においては、インク中の1価カチオン濃度が0.040mol/L以上であることを要する。1価カチオン濃度が0.040mol/L未満であると画像の光学濃度が得られない。一方、インク中のカチオン濃度が高すぎると、インクの蒸発安定性がやや低下する場合があるため、0.090mol/L以下であることが好ましい。なお、インク中の1価カチオンは主に、自己分散顔料の官能基に含まれるホスホン酸基のカウンターイオンや、上記塩を構成するカチオンとして存在する。
本発明においては、インク中の1価カチオン濃度が0.040mol/L以上であることを要する。1価カチオン濃度が0.040mol/L未満であると画像の光学濃度が得られない。一方、インク中のカチオン濃度が高すぎると、インクの蒸発安定性がやや低下する場合があるため、0.090mol/L以下であることが好ましい。なお、インク中の1価カチオンは主に、自己分散顔料の官能基に含まれるホスホン酸基のカウンターイオンや、上記塩を構成するカチオンとして存在する。
(多価金属)
本発明においては、インク中の多価金属の含有量が5ppm以上であることを要する。多価金属の具体例としては、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウム、亜鉛、銅、コバルト、スズなどが挙げられる。上述の通り、本発明においてはインク中の多価金属の含有量(ppm)が5ppm以上であることを要するが、その上限は50ppm以下であることが好ましい。これは、多価金属の含有量が50ppm超であると、多価金属を捕捉するために必要となるクリプタンドの含有量が増え、インクの吐出安定性がやや低下する場合があるためである。
本発明においては、インク中の多価金属の含有量が5ppm以上であることを要する。多価金属の具体例としては、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウム、亜鉛、銅、コバルト、スズなどが挙げられる。上述の通り、本発明においてはインク中の多価金属の含有量(ppm)が5ppm以上であることを要するが、その上限は50ppm以下であることが好ましい。これは、多価金属の含有量が50ppm超であると、多価金属を捕捉するために必要となるクリプタンドの含有量が増え、インクの吐出安定性がやや低下する場合があるためである。
(クリプタンド)
本発明のインクにはクリプタンドを含有させる。インク中のクリプタンドの含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることを要し、0.3質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。クリプタンドの具体例としては、クリプタンド[2.1.1]と呼ばれる4,7,13,18−テトラオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.5.5]イコサン、クリプタンド[2.2.2]と呼ばれる4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサンなどが挙げられる。
本発明のインクにはクリプタンドを含有させる。インク中のクリプタンドの含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることを要し、0.3質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。クリプタンドの具体例としては、クリプタンド[2.1.1]と呼ばれる4,7,13,18−テトラオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.5.5]イコサン、クリプタンド[2.2.2]と呼ばれる4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサンなどが挙げられる。
クリプタンドの捕捉能については、捕捉する側のクリプタンドと捕捉される対象物の大きさの関係から、最適なクリプタンドと多価金属の組み合わせが存在する。例えば、捕捉される多価金属がカルシウムである場合は、捕捉する側はクリプタンド[2.2.2.]の組み合わせであることが好ましい。また、捕捉される多価金属がマグネシウム及びアルミニウムの少なくとも一方である場合は、捕捉する側はクリプタンド[2.2.1]の組み合わせであることが好ましい。
(水性媒体)
本発明のインクには、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては脱イオン水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができ、1種又は2種以上をインクに含有させることができる。
本発明のインクには、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては脱イオン水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができ、1種又は2種以上をインクに含有させることができる。
(その他の添加剤)
本発明のインクには、上記成分の他に、尿素やその誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの常温で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。インク中の常温で固体の水溶性有機化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。また、必要に応じて、界面活性剤、樹脂、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、キレート剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
本発明のインクには、上記成分の他に、尿素やその誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの常温で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。インク中の常温で固体の水溶性有機化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。また、必要に応じて、界面活性剤、樹脂、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、キレート剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
本発明においては、例えば、アセチレングリコール系、フッ素系、シリコーン系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系などの界面活性剤をインクに含有させることが好ましい。インク中の界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.05質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。
(インクの物性)
本発明のインクは、25℃において、寿命時間50m秒における動的表面張力が40mN/m以上であることが好ましく、さらには45mN/m以上であることが好ましい。このような特性を満足することにより、記録媒体の表面上に顔料を特に効率よく存在させることができ、より高い光学濃度を得ることができる。本発明においては、インクの動的表面張力の測定には最大泡圧法を採用した。この方法では、測定対象の液体中に浸したプローブ(細管)の先端部分から押し出された気泡を放出するのに必要な最大圧力を測定して、表面張力を求める。また、本発明において、「寿命時間」とは、最大泡圧法測定においてプローブの先端部分から気泡が形成される際の、気泡が離れた後に新しい表面が形成されてから最大泡圧時(気泡の曲率半径とプローブ先端部分の半径が等しくなったとき)までの時間を意味する。
本発明のインクは、25℃において、寿命時間50m秒における動的表面張力が40mN/m以上であることが好ましく、さらには45mN/m以上であることが好ましい。このような特性を満足することにより、記録媒体の表面上に顔料を特に効率よく存在させることができ、より高い光学濃度を得ることができる。本発明においては、インクの動的表面張力の測定には最大泡圧法を採用した。この方法では、測定対象の液体中に浸したプローブ(細管)の先端部分から押し出された気泡を放出するのに必要な最大圧力を測定して、表面張力を求める。また、本発明において、「寿命時間」とは、最大泡圧法測定においてプローブの先端部分から気泡が形成される際の、気泡が離れた後に新しい表面が形成されてから最大泡圧時(気泡の曲率半径とプローブ先端部分の半径が等しくなったとき)までの時間を意味する。
本発明のインクが上述の動的表面張力の特性を満足するようにするためには、上記で挙げた界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを使用することが特に好ましい。さらには、使用するポリオキシエチレンアルキルエーテルは、グリフィン法により求められるHLB値が13以上20以下であり、アルキル基の炭素原子数が12以上20以下のものが特に好適である。そして、インク中のポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.05質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上1.0質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明においては、インクの25℃における静的表面張力が、28mN/m以上45mN/m以下であることが好ましい。また、インクの25℃におけるpHは、5以上9以下であることが好ましい。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、インク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクである。インクカートリッジの構造としては、インク収容部が、負圧によりインクを含浸した状態で保持する負圧発生部材を収容する負圧発生部材収容室と、負圧発生部材に含浸されない状態でインクを収容するインク収容室とで構成されるものが挙げられる。または、このようなインク収容室を持たず、インクの全量を負圧発生部材に含浸させた状態で保持する構成や、負圧発生部材を持たず、インクの全量を負圧発生部材に含浸されない状態で収容する構成のインク収容部としてもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、インク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクである。インクカートリッジの構造としては、インク収容部が、負圧によりインクを含浸した状態で保持する負圧発生部材を収容する負圧発生部材収容室と、負圧発生部材に含浸されない状態でインクを収容するインク収容室とで構成されるものが挙げられる。または、このようなインク収容室を持たず、インクの全量を負圧発生部材に含浸させた状態で保持する構成や、負圧発生部材を持たず、インクの全量を負圧発生部材に含浸されない状態で収容する構成のインク収容部としてもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出させて記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられ、本発明においては、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出させて記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられ、本発明においては、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
以下、実施例、比較例、及び、参考例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。なお、以下の記載で「部」及び「%」とあるものは、特に断らない限り質量基準である。
<顔料分散液の調製>
(顔料の官能基導入量の測定方法)
先ず、顔料の官能基導入量を測定する方法を説明する。測定対象であるホスホン酸型自己分散顔料の含有量が0.03%程度になるように、顔料分散液を純水で希釈してA液を調製した。また、5℃、80,000rpm、15時間の条件で顔料分散液を超遠心分離し、ホスホン酸型自己分散顔料を除去して採取した上澄み液を純水で80倍程度に希釈してB液を調製した。上記のようにして得た測定用試料のA液及びB液について、ICP発光分光分析装置(SPS5100;SIIナノテクノロジー製)を用いてリンの定量を行った。そして、得られたA液及びB液におけるリン量の差分からホスホン酸基の量を求め、1つの官能基に含まれるホスホン酸基の数で割ることで、顔料への官能基導入量を算出した。
(顔料の官能基導入量の測定方法)
先ず、顔料の官能基導入量を測定する方法を説明する。測定対象であるホスホン酸型自己分散顔料の含有量が0.03%程度になるように、顔料分散液を純水で希釈してA液を調製した。また、5℃、80,000rpm、15時間の条件で顔料分散液を超遠心分離し、ホスホン酸型自己分散顔料を除去して採取した上澄み液を純水で80倍程度に希釈してB液を調製した。上記のようにして得た測定用試料のA液及びB液について、ICP発光分光分析装置(SPS5100;SIIナノテクノロジー製)を用いてリンの定量を行った。そして、得られたA液及びB液におけるリン量の差分からホスホン酸基の量を求め、1つの官能基に含まれるホスホン酸基の数で割ることで、顔料への官能基導入量を算出した。
(顔料分散液A)
20g(固形分)のカーボンブラック、7mmolの((4−アミノベンゾイルアミノ)−メタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸の一ナトリウム塩(処理剤)、20mmolの硝酸、及び200mLの純水を混合した。この際、カーボンブラックには、ブラックパールズ880(キャボット製)を用い、混合は、シルヴァーソン混合機を用いて、室温で6,000rpmにて混合した。30分後、この混合物に少量の水に溶解させた20mmolの亜硝酸ナトリウムをゆっくり添加した。この混合によって混合物の温度は60℃に達し、この状態で1時間反応させた。その後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて、混合物のpHを10に調整した。30分後、20mLの純水を加え、スペクトラムメンブランを用いてダイアフィルトレーションを行い、その後、イオン交換法によりナトリウムイオンをアンモニウムイオンに置換して、顔料の含有量が10.0%となるようにして、分散液を得た。このようにして、顔料粒子の表面に、カウンターイオンがアンモニウムである((4−アミノベンゾイルアミノ)−メタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸基が結合している自己分散顔料が水中に分散された状態の顔料分散液Aを得た。官能基の導入量は0.28mmol/gであった。
20g(固形分)のカーボンブラック、7mmolの((4−アミノベンゾイルアミノ)−メタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸の一ナトリウム塩(処理剤)、20mmolの硝酸、及び200mLの純水を混合した。この際、カーボンブラックには、ブラックパールズ880(キャボット製)を用い、混合は、シルヴァーソン混合機を用いて、室温で6,000rpmにて混合した。30分後、この混合物に少量の水に溶解させた20mmolの亜硝酸ナトリウムをゆっくり添加した。この混合によって混合物の温度は60℃に達し、この状態で1時間反応させた。その後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて、混合物のpHを10に調整した。30分後、20mLの純水を加え、スペクトラムメンブランを用いてダイアフィルトレーションを行い、その後、イオン交換法によりナトリウムイオンをアンモニウムイオンに置換して、顔料の含有量が10.0%となるようにして、分散液を得た。このようにして、顔料粒子の表面に、カウンターイオンがアンモニウムである((4−アミノベンゾイルアミノ)−メタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸基が結合している自己分散顔料が水中に分散された状態の顔料分散液Aを得た。官能基の導入量は0.28mmol/gであった。
(顔料分散液B)
先の顔料分散液Aの調製において、用いた処理剤の量を7mmolから8mmolに変えた以外は同様にして、顔料分散液Bを得た。官能基の導入量は0.33mmol/gであった。
先の顔料分散液Aの調製において、用いた処理剤の量を7mmolから8mmolに変えた以外は同様にして、顔料分散液Bを得た。官能基の導入量は0.33mmol/gであった。
(顔料分散液C)
先の顔料分散液Aの調製において、用いた処理剤の量を7mmolから11mmolに変えた以外は同様にして、顔料分散液Cを得た。官能基の導入量は0.38mmol/gであった。
先の顔料分散液Aの調製において、用いた処理剤の量を7mmolから11mmolに変えた以外は同様にして、顔料分散液Cを得た。官能基の導入量は0.38mmol/gであった。
(顔料分散液D)
先の顔料分散液Aの調製において、用いた処理剤の量を7mmolから14mmolに変えた以外は同様にして、顔料分散液Dを得た。官能基の導入量は0.46mmol/gであった。
先の顔料分散液Aの調製において、用いた処理剤の量を7mmolから14mmolに変えた以外は同様にして、顔料分散液Dを得た。官能基の導入量は0.46mmol/gであった。
(顔料分散液E)
先の顔料分散液Aの調製において、用いた処理剤の種類を4−アミノベンジルホスホン酸(シグマアルドリッチ製)に変えた以外は同様にして、顔料分散液Eを得た。このようにして、顔料粒子の表面に、カウンターイオンがアンモニウムであるベンジルホスホン酸基が結合している自己分散顔料が水中に分散された状態の顔料分散液Eを得た。官能基の導入量は0.28mmol/gであった。
先の顔料分散液Aの調製において、用いた処理剤の種類を4−アミノベンジルホスホン酸(シグマアルドリッチ製)に変えた以外は同様にして、顔料分散液Eを得た。このようにして、顔料粒子の表面に、カウンターイオンがアンモニウムであるベンジルホスホン酸基が結合している自己分散顔料が水中に分散された状態の顔料分散液Eを得た。官能基の導入量は0.28mmol/gであった。
(顔料分散液F)
5.5gの水に5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で1.5gの4−アミノ−1,2−ベンゼンジカルボン酸(処理剤、東京化成工業製)を加えた。次に、この溶液の入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態とし、これに5℃の水9gに1.8gの亜硝酸カリウムを溶かした溶液を加えた。この溶液をさらに15分間撹拌後、6g(固形分)のカーボンブラック(ブラックパールズ880;キャボット製)を撹拌下で加えた。その後、さらに15分間撹拌した。得られたスラリーについてスペクトラムメンブランを用いてダイアフィルトレーションを行った後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させた。さらに、イオン交換法によりカリウムイオンをアンモニウムイオンに置換して、顔料の含有量が10.0%となるように純水を加えて分散させ分散液を得た。このようにして、顔料粒子の表面に、カウンターイオンがアンモニウムである4−アミノ−1,2−ベンゼンジカルボン酸基が結合している自己分散顔料が水中に分散された状態の顔料分散体Fを得た。官能基の導入量は、イオン交換法を行う前の分散液中のカリウムイオン濃度を、ICP発光分光分析装置(SPS5100;SIIナノテクノロジー製)を用いて測定し、得られたカリウムイオン濃度から換算して求めた。官能基の導入量は0.40mmol/gであった。
5.5gの水に5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で1.5gの4−アミノ−1,2−ベンゼンジカルボン酸(処理剤、東京化成工業製)を加えた。次に、この溶液の入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態とし、これに5℃の水9gに1.8gの亜硝酸カリウムを溶かした溶液を加えた。この溶液をさらに15分間撹拌後、6g(固形分)のカーボンブラック(ブラックパールズ880;キャボット製)を撹拌下で加えた。その後、さらに15分間撹拌した。得られたスラリーについてスペクトラムメンブランを用いてダイアフィルトレーションを行った後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させた。さらに、イオン交換法によりカリウムイオンをアンモニウムイオンに置換して、顔料の含有量が10.0%となるように純水を加えて分散させ分散液を得た。このようにして、顔料粒子の表面に、カウンターイオンがアンモニウムである4−アミノ−1,2−ベンゼンジカルボン酸基が結合している自己分散顔料が水中に分散された状態の顔料分散体Fを得た。官能基の導入量は、イオン交換法を行う前の分散液中のカリウムイオン濃度を、ICP発光分光分析装置(SPS5100;SIIナノテクノロジー製)を用いて測定し、得られたカリウムイオン濃度から換算して求めた。官能基の導入量は0.40mmol/gであった。
<インクの調製>
表1〜3に示す各成分(単位:%)を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズが2.5μmであるポリプロピレンフィルター(ポール製)にて加圧ろ過を行って、各インクを調製した。なお、表1中の「NIKKOL BL−9EX」は、日光ケミカルズ製のポリオキシエチレンラウリルエーテルであり、グリフィン法により求められるHLB値が13.6、エチレンオキサイド基の付加モル数が9の界面活性剤である。また、アセチレノールE100は、川研ファインケミカル製のアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物であり、エチレンオキサイド基の付加モル数が10の界面活性剤である。さらに、多価金属の硝酸塩は括弧内の数値の濃度となる多価金属の硝酸塩を含む水溶液を用いた。
表1〜3に示す各成分(単位:%)を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズが2.5μmであるポリプロピレンフィルター(ポール製)にて加圧ろ過を行って、各インクを調製した。なお、表1中の「NIKKOL BL−9EX」は、日光ケミカルズ製のポリオキシエチレンラウリルエーテルであり、グリフィン法により求められるHLB値が13.6、エチレンオキサイド基の付加モル数が9の界面活性剤である。また、アセチレノールE100は、川研ファインケミカル製のアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物であり、エチレンオキサイド基の付加モル数が10の界面活性剤である。さらに、多価金属の硝酸塩は括弧内の数値の濃度となる多価金属の硝酸塩を含む水溶液を用いた。
<インクの主特性の測定>
上記で得られた各インクについて、下記の各項目の測定を行った。結果を表4に示す。
上記で得られた各インクについて、下記の各項目の測定を行った。結果を表4に示す。
(インク中の1価カチオン濃度及び多価金属の含有量)
上記で得られたインク中の顔料(固形分)の含有量が吸光度換算で0.03%となるように純水を用いて希釈した液体について、ICP発光分光分析装置(SPS5100;SIIナノテクノロジー製)を用いて、インク中の金属イオン量を測定した。ICP発光分光分析により、価数に関わらずに金属イオンの種類と量を定量することができる。また、アンモニウムイオン(NH4 +)の濃度はICP発光分光分析装置では測定できないため、上記と同様の液体について、アンモニウム電極を接続したイオン/pH計(サーモ・エレクトロン製)を用いて測定した。このようにして得られた各種の値から、インク中の1価カチオン濃度及び多価金属の含有量を求めた。
上記で得られたインク中の顔料(固形分)の含有量が吸光度換算で0.03%となるように純水を用いて希釈した液体について、ICP発光分光分析装置(SPS5100;SIIナノテクノロジー製)を用いて、インク中の金属イオン量を測定した。ICP発光分光分析により、価数に関わらずに金属イオンの種類と量を定量することができる。また、アンモニウムイオン(NH4 +)の濃度はICP発光分光分析装置では測定できないため、上記と同様の液体について、アンモニウム電極を接続したイオン/pH計(サーモ・エレクトロン製)を用いて測定した。このようにして得られた各種の値から、インク中の1価カチオン濃度及び多価金属の含有量を求めた。
(インクの動的表面張力)
上記で得られた各インクについて、最大泡圧法を利用したBubble Pressure Tensiometer BP2 MK2(商品名、Kruss製)を用いて、25℃における動的表面張力を測定した。評価基準は以下の通りである
A:寿命時間50m秒における動的表面張力が47mN/m以上であった
B:寿命時間50m秒における動的表面張力が47mN/m未満であった。
上記で得られた各インクについて、最大泡圧法を利用したBubble Pressure Tensiometer BP2 MK2(商品名、Kruss製)を用いて、25℃における動的表面張力を測定した。評価基準は以下の通りである
A:寿命時間50m秒における動的表面張力が47mN/m以上であった
B:寿命時間50m秒における動的表面張力が47mN/m未満であった。
<インクの評価>
上記で得られた各インクについて、以下の各項目の評価を行った。結果を表4に示す。本発明においては、下記の各項目の評価基準でAA及びAを許容できるレベル、B及びCを許容できないレベルとした。
上記で得られた各インクについて、以下の各項目の評価を行った。結果を表4に示す。本発明においては、下記の各項目の評価基準でAA及びAを許容できるレベル、B及びCを許容できないレベルとした。
(光学濃度)
上記で得られた各インクを充填したインクカートリッジを、熱エネルギーによりインクを吐出する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置PIXUS MP480(商品名、キヤノン製)にセットした。なお、上記のインクジェット記録装置では、解像度が600dpi×600dpiであり、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、1滴当たりの質量が25ng±10%であるインク滴を1滴付与する条件を記録デューティが100%であると定義する。そして、次の3種の記録媒体(普通紙)に、記録デューティが100%であるベタ画像(2cm×2cm/1ライン)を記録した。記録媒体には、下記のものをそれぞれ用いた。すなわち、GF−500、Office Planner(以上、キヤノン製)、Xerox 4024 Premium Multipurpose White Paper(ゼロックス製)を用いた。記録の1日後に、反射濃度計Macbeth RD−918(商品名、マクベス製)を用いて、3種の記録媒体におけるベタ画像の光学濃度を測定し、その平均値と最低値により光学濃度の評価を行った。評価基準は以下の通りである
AA:平均値1.50以上、かつ、最低値1.40以上であった
A:平均値1.45以上1.50未満、かつ、最低値1.35以上1.40未満であった
B:平均値1.40以上1.45未満、かつ、最低値1.30以上1.35未満であった
C:平均値1.40未満、又は、最低値1.30未満であった。
上記で得られた各インクを充填したインクカートリッジを、熱エネルギーによりインクを吐出する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置PIXUS MP480(商品名、キヤノン製)にセットした。なお、上記のインクジェット記録装置では、解像度が600dpi×600dpiであり、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、1滴当たりの質量が25ng±10%であるインク滴を1滴付与する条件を記録デューティが100%であると定義する。そして、次の3種の記録媒体(普通紙)に、記録デューティが100%であるベタ画像(2cm×2cm/1ライン)を記録した。記録媒体には、下記のものをそれぞれ用いた。すなわち、GF−500、Office Planner(以上、キヤノン製)、Xerox 4024 Premium Multipurpose White Paper(ゼロックス製)を用いた。記録の1日後に、反射濃度計Macbeth RD−918(商品名、マクベス製)を用いて、3種の記録媒体におけるベタ画像の光学濃度を測定し、その平均値と最低値により光学濃度の評価を行った。評価基準は以下の通りである
AA:平均値1.50以上、かつ、最低値1.40以上であった
A:平均値1.45以上1.50未満、かつ、最低値1.35以上1.40未満であった
B:平均値1.40以上1.45未満、かつ、最低値1.30以上1.35未満であった
C:平均値1.40未満、又は、最低値1.30未満であった。
(蒸発安定性)
上記で得られた各インクをそれぞれ開放系の容器に入れ、温度60℃でインクを蒸発させ、初期の質量の85%になるまで各インクを濃縮、つまり、インクの質量の15%を蒸発させ、液体を得た。得られた各液体について、濃厚系粒度分布測定装置(FPAR−1000;大塚電子製)を用いて、顔料の平均粒子径を測定し、蒸発安定性の評価を行った。なお、上述の通り、蒸発率15%という数値は、物流時や使用時などの状況を考慮した場合に起こり得るインクの蒸発量に対しても十分に高い値であり、実際に想定される条件よりもより厳しいものである。したがって、このように厳しい条件において評価した蒸発安定性が十分であれば、インクが十分な蒸発安定性を有すると言える。評価基準は以下の通りである
AA:平均粒子径が120nm未満であった
A:平均粒子径が120nm以上300nm未満であった
B:平均粒子径が300nm以上500nm未満であった
C:平均粒子径が500nm以上であった。
上記で得られた各インクをそれぞれ開放系の容器に入れ、温度60℃でインクを蒸発させ、初期の質量の85%になるまで各インクを濃縮、つまり、インクの質量の15%を蒸発させ、液体を得た。得られた各液体について、濃厚系粒度分布測定装置(FPAR−1000;大塚電子製)を用いて、顔料の平均粒子径を測定し、蒸発安定性の評価を行った。なお、上述の通り、蒸発率15%という数値は、物流時や使用時などの状況を考慮した場合に起こり得るインクの蒸発量に対しても十分に高い値であり、実際に想定される条件よりもより厳しいものである。したがって、このように厳しい条件において評価した蒸発安定性が十分であれば、インクが十分な蒸発安定性を有すると言える。評価基準は以下の通りである
AA:平均粒子径が120nm未満であった
A:平均粒子径が120nm以上300nm未満であった
B:平均粒子径が300nm以上500nm未満であった
C:平均粒子径が500nm以上であった。
(吐出安定性)
光学濃度の評価で使用したものと同じインクジェット記録装置により、上記で得られた各インクを用いて、記録デューティが100%であるベタ画像(2×2cm/1ライン)を10枚記録した。得られた10枚目の記録物における画像の状態を目視で確認して、吐出安定性の評価を行った。評価基準は以下の通りである
AA:画像にかすれがなかった
A:画像に乱れが若干あったが、許容できるレベルであった
B:画像に乱れがあり、許容できないレベルであった
C:不吐出や画像の乱れがあった。
光学濃度の評価で使用したものと同じインクジェット記録装置により、上記で得られた各インクを用いて、記録デューティが100%であるベタ画像(2×2cm/1ライン)を10枚記録した。得られた10枚目の記録物における画像の状態を目視で確認して、吐出安定性の評価を行った。評価基準は以下の通りである
AA:画像にかすれがなかった
A:画像に乱れが若干あったが、許容できるレベルであった
B:画像に乱れがあり、許容できないレベルであった
C:不吐出や画像の乱れがあった。
上記実施例において使用したもの以外で、本発明で規定するアニオンの塩についても検討を行った。具体的には、実施例1における塩のアニオンを異なるものとした以外は上記と同様の評価を行った。その結果、いずれのアニオンの塩の場合も、実施例1とほぼ同等の結果が得られた。
Claims (8)
- 顔料、塩、多価金属、及び、クリプタンドを含有するインクジェット用のインクであって、
前記顔料が、ホスホン酸基を少なくとも含む官能基が粒子表面に結合している自己分散顔料であり、
前記塩は、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び、有機アンモニウムイオンからなる1価のカチオン群より選択される少なくとも1種のカチオンと、Cl−、Br−、I−、ClO−、ClO2 −、ClO3 −、ClO4 −、NO2 −、NO3 −、H2PO4 −、HCO3 −、HCOO−、CH3COO−、COOH(COO−)、C6H5COO−、CH3SO3 −、C6H5PO3 −、SO4 2−、CO3 2−、(COO−)2、C2H4(COO−)2、C6H4(COO−)2、HPO4 2−、PO4 3−、C6H5O7 3−、C6H3(COO−)3、及び、(CH2COO−)2NCH2CH2N(CH2COO−)2からなるアニオン群より選択される少なくとも1種のアニオンとが結合して構成されるものであり、
インク中の1価カチオン濃度が0.040mol/L以上であり、
インク中の前記多価金属の含有量(ppm)が、インク全質量を基準として、5ppm以上であり、
インク中の前記クリプタンドの含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることを特徴とするインク。 - 前記官能基が、2つのホスホン酸基を含む請求項1に記載のインク。
- 前記自己分散顔料における、官能基の導入量が0.38mmol/g以下である請求項1又は2に記載のインク。
- 前記多価金属と前記クリプタンドの組み合わせが、カルシウムとクリプタンド[2.2.2]である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインク。
- 前記多価金属と前記クリプタンドの組み合わせが、マグネシウム及びアルミニウムの少なくとも一方とクリプタンド[2.2.1]である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインク。
- インク中の前記クリプタンドの含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.3質量%以上2.0質量%以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインク。
- インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
前記インクが、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクカートリッジ。 - インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出させて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インクが、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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JP2017217907A (ja) * | 2016-06-01 | 2017-12-14 | キヤノン株式会社 | 液体吐出方法及びインクジェット記録装置 |
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2011
- 2011-12-13 JP JP2011272764A patent/JP2013124270A/ja active Pending
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