JP2016101696A - インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】記録ヘッドからインク受け部材に廃インクが直接排出される機構を採用しながらも、インク受け部材へのインクの堆積を抑制することができ、光学濃度及び耐ブリーディング性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット記録装置を提供する。【解決手段】水性インクセットと、インク受け部材に堆積した廃インクを掻き取る部材、及び、吐出口からインクを吸引する部材のいずれをも有さない回復ユニットと、を具備するインクジェット記録装置である。水性インクセットが、第1インク及び第2インクの組み合わせを有し、第1インクが、ホスホン酸型自己分散顔料を含有し、自己分散顔料の官能基導入量が、0.10mmol/g以上であり、第1インクの再分散粘度が、7mPa・s以下であり、第2インク中のリチウムイオンとナトリウムイオンの合計濃度が、0.050mol/L以上である。【選択図】図3

Description

本発明は、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録装置は、印刷コストが低く、電子写真方式の記録装置と比較すると使用電力の観点でも有利であるため、広く使用されている。インクジェット記録装置では、記録ヘッドの吐出口からインクを記録媒体に吐出することで画像を記録する。しかし、吐出口にインクなどが目詰まりしたり、液体成分の蒸発により流路内でインクが増粘したりすると、インクの正常な吐出が困難となる場合がある。インクの正常な吐出が困難になった場合には、記録ヘッドの吐出性能を回復するための回復操作が実施される。この回復操作は、一定時間ごとに実施されたり、記録動作の開始前や終了後などに実施されたりする。
従来、記録ヘッドの吐出口が形成された面(吐出口面)に対向する位置に配置されたキャップ内に、画像の記録に用いないインクを予備吐出させることによって回復操作を行っていた。また、吸引キャップを吐出口面に当接させ、吸引キャップに接続された吸引ポンプを動作させることにより負圧を発生させ、記録ヘッドから強制的にインクを排出させることによって回復操作を行う場合もあった。しかし、これら回復操作を行う場合には、ある程度の重量を有する吸引キャップや吸引ポンプなどの吸引部材をインクジェット記録装置内に設ける必要があった。また、これらの吸引部材を設置するためのスペースも必要となるため、記録装置のサイズが大型化する傾向にあった。
近年、省資源化などに対する意識の高まりにより、インクジェット記録装置の軽量化や小型化が要求されている。このような要求に対し、記録ヘッドの吐出性能を回復するために吐出口から排出され、画像の記録には用いられないインク(すなわち「廃インク」)の回収手段に着目した提案がなされている(特許文献1及び2)。
また、インクジェット記録方法では、様々な記録媒体に画像を記録することができる。そして、光沢紙などに写真画質の画像を記録するのに適したインクや、普通紙などに文書を記録するのに適したインクなど、その目的に応じた種々のインクが提案されている。近年、文字や図表を含むビジネス文章を普通紙などの記録媒体に印刷する際に、インクジェット記録方法が利用される頻度が格段に増加している。このような用途では、画像の光学濃度や耐ブリーディング性の向上が要求される。光学濃度が向上した画像を記録するには、自己分散顔料を色材として含有するインクを用いることが有利である。例えば、光学濃度に優れた画像を記録すべく、自己分散顔料及び塩を含有するインクが提案されている(特許文献3及び4)。
特開2003−231277号公報 特開2004−114686号公報 特開2006−089735号公報 特開2012−052095号公報
本発明者らの検討の結果、インクジェット記録装置を軽量化又は小型化すべく、キャップやポンプなどの吸引部材を省いた構成とした場合、予備吐出で排出されたインクがインク受け部材に堆積するという課題が生ずることがわかった。特に、特許文献3及び4で提案された自己分散顔料及び塩を含有するインクを用いると、インク中の液体成分が蒸発して顔料が急速に凝集するため、インク受け部材にインクが石筍状に堆積しやすい。この状態でさらに予備吐出すると、石筍状に堆積したインクが記録ヘッドに接触してしまい、記録ヘッドを搭載するキャリッジの動作に影響したり、吐出口が詰まったりすることがある。インク受け部材に堆積したインクを掻き取って除去又は平坦化する部材(掻き取り部材)を設けたインクジェット記録装置も知られていが、このような掻き取り部材を設けると、記録装置の軽量化や小型化の妨げとなる。
また、特許文献3及び4で提案された自己分散顔料及び特定の塩を含有するインクを用いることで、画像の光学濃度はある程度向上する。しかし、特許文献3及び4で提案されたインクを用いると、前述のようにインク受け部材にインクが堆積しやすいといった課題が生じやすい。また、記録される画像の耐ブリーディング性についてもさらなる改善の余地があった。
したがって、本発明の目的は、記録ヘッドからインク受け部材に廃インクが直接排出される機構を採用しながらも、インク受け部材へのインクの堆積を抑制することができるインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法を提供することにある。また、光学濃度及び耐ブリーディング性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、吐出口が設けられた記録ヘッドを有する記録ユニット;前記吐出口から吐出され、記録媒体に画像を記録するインクを含む水性インクセット;前記記録ヘッドの前記吐出口が設けられた面を覆う覆い部材を有する保護ユニット;予備吐出データに基づいて前記吐出口から排出された廃インクを他の部材を介さずに受容する、前記覆い部材とは別に設けられたインク受け部材を有し、かつ、前記インク受け部材に堆積した前記廃インクを掻き取る部材、及び、前記吐出口からインクを吸引する部材のいずれをも有さない回復ユニット;を具備するインクジェット記録装置であって、前記水性インクセットが、第1インク及び第2インクの組み合わせを有し、前記第1インクが、ホスホン酸基を含む官能基が粒子表面に結合している自己分散顔料を含有し、前記自己分散顔料の官能基導入量が、0.10mmol/g以上であり、以下に示す手順にしたがって測定される前記第1インクの再分散粘度が、7mPa・s以下であり、前記第2インクが、アニオン性染料、並びに、リチウムイオン及びナトリウムイオンの少なくとも一方を含有し、前記第2インク中のリチウムイオンとナトリウムイオンの合計濃度が、0.050mol/L以上であることを特徴とするインクジェット記録装置が提供される。
[再分散粘度の測定]:第1インク1.5gを、温度30℃、相対湿度10%の環境で15時間保存後、減少した質量分の第1インクを添加して、さらに2時間保存したものについて粘度を測定する。
本発明によれば、記録ヘッドからインク受け部材に廃インクが直接排出される機構を採用しながらも、インク受け部材へのインクの堆積を抑制することができるインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法を提供することができる。また、光学濃度及び耐ブリーディング性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法を提供することができる。
本発明のインクジェット記録装置を模式的に示す斜視図である。 記録ユニットの一例を模式的に示す部分斜視図である。 回復ユニットの一例を模式的に示す部分斜視図である。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。以下、水性インクセットのことを、単に「インクセット」と記載することがある。また、ホスホン酸基を含む官能基が粒子表面に結合した自己分散顔料のことを「ホスホン酸型自己分散顔料」と記載することがある。本発明において、各種の物性値は、特に断りのない限り25℃における値である。
軽量化又は小型化のために吸引部材を省いた構成のインクジェット記録装置では、他の部材を介さずに、記録ヘッドから直接インク受け部材に廃インクが大気圧下で排出される。キャップやポンプなどの吸引部材を利用しない場合、予備吐出により記録ヘッドから排出された廃インクを受容するインク受け部材は、従来の記録装置と比較して、より大気に開放された状態となる。この場合、インク受け部材に排出された廃インクから、液体成分は極めて急速に蒸発するため、堆積しない程度に広がる前に廃インクの流動性が損なわれてしまい、インクは石筍状に堆積する。これにより、インクジェット記録装置の動作やインクの吐出に影響が生ずることとなる。インク受け部材に堆積したインクを掻き取って除去又は平坦化するための部材を設けることも知られているが、このような部材を設けるとインクジェット記録装置の軽量化や小型化の妨げとなる。以上の通り、吸引部材やインクを掻き取る部材を省いて、インクジェット記録装置の軽量化や小型化を図ろうとすると、インクの堆積による課題を解決するのは困難である。そこで、本発明者らはインクの観点から種々の検討を行った。
インクの色材として用いられる顔料としては、自己分散顔料及び樹脂分散顔料を挙げることができる。樹脂分散顔料を含有するインクは、自己分散顔料を含有するインクに比して、液体成分が蒸発した場合であっても顔料の分散状態が安定に維持されやすく、インクの流動性が保たれやすい。しかし、樹脂分散顔料を利用して顔料の分散状態を安定に維持しようとすると、画像を記録する際に記録媒体上で顔料の凝集力が低下してしまい、画像の光学濃度が低下しやすくなる。
画像の耐ブリーディング性を向上させるためには、記録媒体上において顔料の凝集を促進させることが重要である。一方、インクの堆積を抑制するためには、水分が蒸発した際の顔料の凝集を緩和することが重要である。したがって、画像特性の向上と信頼性の向上とはトレードオフの関係にある。記録媒体上における顔料の凝集は、インクが記録媒体に付与された後の水分の蒸発や固液分離、さらには、官能基に含まれるホスホン酸基と記録媒体に填料などとして含まれるカルシウムとの相互作用によって促進される。一方、インクの堆積を抑制するには、カルシウムの存在を考慮する必要はなく、ある程度の水分が存在する状態における顔料の凝集が抑制されればよい。すなわち、これら2つの現象は、水分やカルシウムという観点からは、インクの状態が異なる場合における顔料の凝集の促進/緩和である。そこで、画像特性とインクの信頼性を両立させる手法について検討した。
ホスホン酸型自己分散顔料は水分蒸発などの環境要因を受けやすいため、廃インクが堆積しやすい。本発明者らは、検討の結果、記録ヘッドからインク受け部材に廃インクが直接排出されるインクジェット記録装置を用いた場合であっても、第1インクの再分散粘度が7mPa・s以下であればインクの堆積が抑制されることを見出した。第1インクの再分散粘度とは、第1インク1.5gを、温度30℃、相対湿度10%の環境で15時間保存後、減少した質量分の第1インクを添加して、さらに2時間保存したものについて測定される粘度をいう。この際、インクを入れる容器としては、シャーレなどの開放系のものを用いることができ、また、粘度は保存後のインクを撹拌してから測定することが好ましい。再分散粘度は、不要なインク(廃インク)が乾燥した後に、さらに不要なインクが排出される際のなじみやすさを示す指標となる物性値である。本発明者らは、第1インクの再分散粘度が7mPa・s以下であれば、インクの堆積が抑制されうることを見出した。第1インクの再分散粘度が7mPa・s超であると、インクの堆積が抑制されず、堆積した廃インクが記録ヘッドに付着してしまい、この付着物が記録媒体に付着して画像が汚れる場合がある。ホスホン酸型自己分散顔料は周囲の環境による影響を受けやすいため、他の自己分散顔料と比して再分散粘度が高まりやすい。例えば、ホスホン酸型自己分散顔料を含有するインクの場合、pH、粘度、水溶性有機溶剤の総含有量、樹脂の有無、金属塩(1価カチオンや多価カチオンの塩)の添加量などによって再分散粘度が変動する。このため、これらの種類や使用量を適宜に調整することで、第1インクの再分散粘度を7mPa・s以下とすることができる。例えば、水溶性有機溶剤、樹脂、金属塩などを使用する場合は、その含有量を減らすと、第1インクの再分散粘度が低くなりやすい。
記録される画像の耐ブリーディング性が向上する理由については以下のように推測される。前述の通り、ホスホン酸型自己分散顔料を含有するインクは、リチウムイオン又はナトリウムイオンを含有する場合に水分蒸発後の粘度変動が大きくなる。これは、カルボン酸型自己分散顔料やスルホン酸型自己分散顔料を含有するインクについてはあまり認められない傾向である。ホスホン酸型自己分散顔料はカチオンに対して非常に敏感であり、水分蒸発などの環境変化による影響を受けやすい。このため、水和力の強いリチウムイオンやナトリウムイオンなどのアルカリ金属イオンがホスホン酸型自己分散顔料の近傍に存在すると、顔料の分散状態を安定化させていた水分子が奪われる。このため、他のアルカリ金属イオンが存在する場合に比して、水分子が局所的に少なくなるので、顔料の凝集がより促進される。さらに、水分が蒸発すれば、インクの粘度変動はより顕著になる。
本発明のインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に用いるインクセットを構成する第2インクは、リチウムイオン及びナトリウムイオンの少なくとも一方を含有する。リチウムイオンやナトリウムイオンを含有する第2インクが第1インクと接触すると、リチウムイオンやナトリウムイオンの水和力により、第1インクから第2インクに向かって水分子が引き抜かれる。このため、第1インクのホスホン酸型自己分散顔料の凝集がより促進され、画像の耐ブリーディング性が向上する。また、ホスホン酸型自己分散顔料を含有するインクは環境要因により不安定化しやすいため、第2インクにリチウムイオン及びナトリウムイオンを含有させる。耐ブリーディング性を向上させるためには、第2インク中のリチウムイオン及びナトリウムイオンの合計濃度が0.050mol/L以上であることを要する。第2インク中のリチウムイオン及びナトリウムイオンの合計濃度が0.050mol/L未満であると、画像の耐ブリーディング性が向上しない。
また、本発明のインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に用いるインクセットを構成する第1インクに用いる自己分散顔料の官能基導入量は、0.10mmol/g以上であることが重要である。第1インク中の自己分散顔料の官能基導入量が0.10mmol/g未満であると、自己分散顔料の分散状態が不安定となりやすいという理由から、固着回復性が不十分となる。
<インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録装置は、記録ヘッドを有する記録ユニットと、インクを含む水性インクセットと、覆い部材を有する保護ユニットと、吐出口から排出された廃インクを他の部材を介さずに受容するインク受け部材を有する回復ユニットとを具備する。以下、本発明のインクジェット記録装置の構成及びインクジェット記録方法の詳細について図面を参照して説明する。
図1は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す斜視図である。本実施形態のインクジェット記録装置は、給紙ユニット101、搬送ユニット102、記録ユニット103、保護ユニット104、及び回復ユニット105を備える。給紙ユニット101は、記録媒体を記録装置の内部へ供給する。搬送ユニット102は、給紙ユニット101により供給された記録媒体を搬送する。
図2は、記録ユニットの一例を模式的に示す部分斜視図である。図2に示すように、記録ユニット103は、画像データに基づいて、搬送ユニット102(図1)により搬送された記録媒体に画像を記録する。記録ユニット103は、主走査方向に往復動作するキャリッジに搭載されたインクカートリッジ31を備え、インクカートリッジ31の底面には記録ヘッド32が設けられている。キャリッジの移動(主走査)に同期して行われる記録ヘッドによる記録動作と、記録媒体の所定ピッチごとの搬送(副走査)とを繰り返すことによって、記録媒体に画像が記録される。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式を挙げることができる。本発明においては、熱エネルギーを利用する方式を採用することが好ましい。
図1及び2に示すように、保護ユニット104は、記録ヘッド32に列状に設けられた吐出口33の目詰まりなどを抑制するために、記録を行わない際に記録ヘッドの吐出口が設けられた面(吐出口面34)を覆う。保護ユニット104は、記録ヘッド32に対応するようにキャップ41を備える。そして、記録を行わない際には、キャリッジによりインクカートリッジ31がキャップ41に対応する位置に移動され、吐出口面34にキャップ41を当接させて密閉空間を形成(キャッピング)する。これにより、インク中の液体成分の蒸発を抑制する。
図3は、回復ユニット105の一例を模式的に示す斜視図である。図1〜3に示すように、回復ユニット105は、記録ヘッド32の吐出性能を正常な状態に維持するために利用される。回復ユニット105は、記録ヘッド32の吐出口33から予備吐出データに基づいて排出された廃インクを受容するインク受け部材51を備える。インク受け部材51は、記録ヘッド32の吐出口33に対応するように設けられており、その上面は一部が開口した形状を有する。また、複数の部材(部品)をインク受け部材51の壁面や底面として利用して、インク受け部材51が構成されていてもよい。
吐出口面がキャップによってキャッピングされていない状態で、インクが吐出されない期間があると、吐出口にインクが目詰まりしたり、液体成分の蒸発により流路内でインクが増粘したりして、インクの正常な吐出が困難となる場合がある。これらの現象が生じた場合、記録ヘッドの吐出性能を回復してインクを正常に吐出できるようにするために、予備吐出データに基づいて記録ヘッドの吐出口からインクを排出する、いわゆる予備吐出が行われる。この予備吐出は、一定時間ごとに、又は記録動作の開始前や終了後などに実施され、記録ヘッドを搭載したキャリッジをインク受け部材に対応する位置に移動させて、インク受け部材の開口部に向けて行われる。
従来のインクジェット記録装置では、キャップを吐出口面に当接させ、キャップに接続された吸引ポンプを動作させることにより記録ヘッドから強制的にインクを排出させることによって回復操作を行っていた。または、インク受け部材に堆積したインクを掻き取る部材を設け、インクの堆積を抑制していた。しかし、吸引部材や掻き取る部材を設けると、その分の重量が増し、また、記録装置の大型化にもつながる。
本発明のインクジェット記録装置は、軽量化や小型化のために吸引部材やインクを掻き取る部材を省いた構成を有する。この場合、記録ヘッドの吐出口から予備吐出データに基づいて排出された廃インクは、吸引部材をはじめとした他の部材を介さずにインク受け部材に受容される。さらに、インク受け部材には堆積したインクを掻き取るための部材が設けられていないため、インクの堆積を別の手段で抑制する必要がある。このため、本発明においては、堆積が生じにくい、後述する特定のインクを含む水性インクセットを用いる。
インク受け部材におけるインクの堆積をより効果的に抑制するために、以下のような構成とすることもできる。例えば、インク受け部材の下部の少なくとも一部の側壁を欠くような形状として、記録装置本体内部に向かって廃インクを流出させることができる。また、インク受け部材を別の支持部材で保持して、底部を記録装置本体の内部の底面から離れた位置に設け、より効率よく廃インクを流出させるようにすることもできる。これらの場合、インク受け部材の底面は記録装置本体の外装カバー52(図3参照)と兼ねる構成とすることができる。
インク受け部材の底面は、インク吸収性を有しない材質で形成されていることが好ましい。インク吸収性を有しない材質の具体例としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ、アクリル、ABSなどの各種の樹脂材料を挙げることができる。多孔質や繊維などのインク吸収性を有する材質がインク受け部材の底面に敷き詰められていると、インク中の液体成分の拡散性が高まる一方で、固形分である顔料の移動が生じにくくなり、堆積を抑制する効果がやや弱まる。さらに、インク吸収性を有しない材質で形成されたインク受け部材の底面に廃インクが直接排出されるようにすることが好ましい。勿論、インク受け部材の底面の一部にはインク吸収体53(図3参照)を配置してもよい。但し、インク受け部材の底面の面積の半分以下程度、より好ましくは1/3以下程度のみにインク吸収体を配置することが好ましい。また、インクジェット記録装置の小型化と、インクの堆積抑制とを両立するために、インク受け部材に対応する位置に記録ヘッドが存在する場合における、吐出口面から外装カバーの底面までの距離を30mm以上36mm以下程度にすることが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法は、上記の本発明のインクジェット記録装置を利用する。すなわち、本発明のインクジェット記録方法は、記録工程、保護工程、及び予備吐出工程を有する。記録工程では、記録ヘッドの吐出口から水性インクセットに含まれるインクを吐出して記録媒体に画像を記録する。保護工程では、記録ヘッドの吐出口が設けられた面を覆い部材で覆う。また、予備吐出工程では、予備吐出データに基づいて吐出口から排出された廃インクを他の部材を介さずに、覆い部材とは別に設けられたインク受け部材に受容する。さらに、本発明のインクジェット記録方法は、インク受け部材に堆積した廃インクを掻き取る工程、及び、吐出口からインクを吸引する工程のいずれをも有さない。そして、本発明のインクジェット記録方法では、堆積が生じにくい、後述する特定のインクを含む水性インクセットを用いる。なお、本発明のインクジェット記録方法の上記以外の工程は、公知のインクジェット記録方法と同様のものとすればよい。
<インクセット>
本発明のインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に用いるインクセットは、第1インクと第2インクの組み合わせを有するインクジェット用の水性インクセットである。インクセットの形態としては、(i)各インクを独立に収容した複数のインクカートリッジのセット、(ii)各インクを独立に収容した複数のインク収容部を組み合わせて一体的に構成されたインクカートリッジ、などを挙げることができる。ただし、第1インク及び第2インクを組み合わせて用いることができるように構成されていれば、上記の(i)及び(ii)の形態に限られるものではない。また、インクセットには、第1インク及び第2インク以外のインクが含まれていてもよい。
(第1インク)
第1インクは、ホスホン酸基を含む官能基が粒子表面に結合している自己分散顔料を色材として含有する。また、第1インクの再分散粘度は7mPa・s以下である。顔料の種類としては、例えば、有機顔料や、カーボンブラックなどの無機顔料を挙げることができ、インクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。第1インクは、カーボンブラックを顔料として用いたブラックインクであることが好ましい。第1インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上15.00質量%以下であることが好ましく、1.00質量%以上10.00質量%以下であることがさらに好ましい。
[自己分散顔料]
第1インクに用いる顔料は、ホスホン酸基を含む官能基が粒子表面に結合しているホスホン酸型自己分散顔料である。自己分散顔料を色材として用いることにより、顔料をインク中に分散させるための分散剤の添加が不要となる、又は分散剤の添加量を少量とすることができる。
第1インク中において、ホスホン酸基−PO(O〔M1〕)2は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。すなわち、ホスホン酸基は、−PO32(酸型)、−PO3-1 +(一塩基塩)、及び−PO3 2-(M1 +2(二塩基塩)のいずれかの形態をとりうる。ここで、M1はそれぞれ独立に、アルカリ金属、アンモニウム、及び有機アンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である。本発明においては、M1はナトリウムイオン、カリウムイオン、及びアンモニウムイオンから選ばれるものが好ましい。すなわち、自己分散顔料の粒子表面に結合している官能基のカウンターイオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及びアンモニウムイオンの少なくとも1種を含むことが好ましい。但し、M1がリチウムイオンのみである場合、インク受け部材へのインクの堆積を高いレベルで抑制することが困難になることがある。
また、ホスホン酸型自己分散顔料は、その粒子表面に結合している官能基が2つのホスホン酸基を含むビホスホン酸型自己分散顔料であることが好ましい。粒子表面に結合している官能基が1つのホスホン酸基を含むモノホスホン酸型自己分散顔料を用いても、画像の光学濃度を向上させることは勿論可能である。但し、ビスホスホン酸型自己分散顔料を用いることで、より光学濃度が向上した画像を記録することができる。なお、粒子表面に結合している官能基が3つのホスホン酸基を含むトリホスホン酸型自己分散顔料を用いると、インクの保存安定性が不十分になる場合がある。
自己分散顔料の粒子表面に結合している官能基に含まれるホスホン酸基は、官能基の末端にあることが好ましい。すなわち、顔料の粒子表面とホスホン酸基の間に他の原子団が存在することが好ましい。他の原子団(−R−)としては、炭素原子数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基、フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基、アミド基、スルホニル基、アミノ基、イミノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基、及びこれらの基を組み合わせた基などを挙げることができる。また、他の原子団は、アルキレン基及びアリーレン基の少なくとも一方と、水素結合性を有する基(アミド基、スルホニル基、アミノ基、イミノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基)と、を含むことが好ましい。さらに、−C64−CONH−(ベンズアミド構造)が官能基に含まれることが好ましい。
自己分散顔料の粒子表面に結合している官能基が、−CQ(PO3〔M122で表される構造を含むことが好ましい。ここで、上記式中のQは、水素原子、R、OR、SR、又はNR2であり、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アシル基、アラルキル基、又はアリール基である。Rが炭素原子を含む基である場合、その基に含まれる炭素原子の数は1乃至18であることが好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基などを挙げることができる。アシル基としては、アセチル基、ベンゾイル基などを挙げることができる。アラルキル基としては、ベンジル基などを挙げることができる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などを挙げることができる。また、M1は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、及び有機アンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である。自己分散顔料の粒子表面に結合している官能基が、上記式中のQが水素原子である−CH(PO3〔M122で表される構造を含むことが特に好ましい。
[官能基導入量]
自己分散顔料の粒子表面に結合している官能基の導入量(官能基導入量)は、0.10mmol/g以上である。官能基導入量が0.10mmol/g未満であると、固着回復性が不十分となる。また、官能基導入量は0.33mmol/g以下であることが好ましい。0.33mmol/g超であると、画像の光学濃度及び耐ブリーディング性がやや低下する場合がある。なお、官能基導入量の単位は、顔料固形分1g当たりの官能基のミリモル数である。
カルボン酸基などのイオン性基が粒子表面に結合した従来の自己分散顔料(例えば、特許文献3で検討されているもの)を色材として用いる場合、官能基導入量をより高めることにより光学濃度の向上が図られていた。これは、官能基による立体障害の影響と、インク中の水溶性有機溶剤と親和性を有する顔料の粒子表面(官能基が結合していない部分)の面積を小さくすることにより、顔料に対して水溶性有機溶剤を溶媒和させにくくすることができるためである。これに対して、ホスホン酸型自己分散顔料の場合、官能基(ホスホン酸)基導入量が高すぎると安定化しすぎてしまい、記録媒体に填料などとして含まれるカルシウムとの反応性が弱まって期待した光学濃度が得られないことがある。
官能基導入量は、例えば、以下に示す手順にしたがって試料中のリンを定量することによって測定することができる。まず、測定対象である顔料(固形分)の含有量が0.03質量%程度になるように顔料分散液を純水で希釈してA液を調製する。また、顔料分散液を5℃、80,000rpm、15時間の条件で超遠心分離して採取した、ホスホン酸型自己分散顔料を除去した上澄みの液体を純水で80倍程度に希釈し、B液を調製する。ICP発光分光分析装置などを使用して調製したA液及びB液中のリンを定量し、A液及びB液中のリンの量の差分からホスホン酸基の量を求める。そして、「ホスホン酸基の量/n」(nは1つの官能基に含まれるホスホン酸基の数を示し、モノなら1、ビスなら2、トリスなら3となる)から、官能基導入量を算出することができる。官能基に含まれるホスホン酸基の数は、例えば、NMRなどにより構造解析することで知ることができる。なお、顔料分散液を用いて官能基導入量を測定する方法について説明したが、インクを用いても同様に測定することができる。また、官能基導入量の測定方法は上記に限られるものではない。
[塩]
第1インクは、1価のカチオンとアニオンとが結合して構成される塩を含有してもよい。1価のカチオンとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオンなどを挙げることができる。アルカリ金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのイオンを挙げることができる。有機アンモニウムイオンとしては、アンモニウムイオンの少なくとも1つの水素原子を有機基としたものを挙げることができる。また、アニオンとしては、Cl-、Br-、I-、ClO-、ClO2 -、ClO3 -、ClO4 -、NO2 -、NO3 -、SO4 2-、CO3 2-、HCO3 -、HCOO-、(COO-2、COOH(COO-)、CH3COO-、C24(COO-2、C65COO-、C64(COO-2、PO4 3-、HPO4 2-、及びH2PO4 -などを挙げることができる。インク中における塩の形態は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。このような塩を含有させることで、インクの信頼性と画像特性とを高いレベルで両立することができる。これらの塩は、第2インクに含有させてもよい。
1価のカチオンとアニオンとが結合して構成される塩としては、例えば、(M2)Cl、(M2)Br、(M2)I、(M2)ClO、(M2)ClO2、(M2)ClO3、(M2)ClO4、(M2)NO2、(M2)NO3、(M22SO4、(M22CO3、(M2)HCO3、HCOO(M2)、(COOM22、COOH(COOM2)、CH3COOM2、C24(COOM22、C65COOM2、C64(COOM22、(M23PO4、(M22HPO4、(M2)H2PO4を挙げることができる。M2は、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種である。第1インク中の「塩のアニオンの濃度×アニオンの価数」の値が、0.040mol/L以下であることが好ましい。0.04mol/L超であると、固着回復性がやや低下したり、インクの堆積を抑制する程度がやや低下したりする場合がある。「塩のアニオンの濃度×アニオンの価数」は、いわゆる規定度に相当する単位である。なお、インクに複数種の塩を含有させる場合には、各塩について「塩のアニオンの濃度×アニオンの価数」の値を求めて合計すればよい。なお、本発明のインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に用いるインクセットを構成するインク(第1インク)は水性インクである。このため、本発明における濃度の単位(mol/L)は、インクの比重を「1g/cm3」として算出している。
(第2インク)
第2インクは、アニオン性染料、並びに、リチウムイオン及びナトリウムイオンの少なくとも一方を含有する。また、第2インク中のリチウムイオンとナトリウムイオンの合計濃度は、0.050mol/L以上である。第2インクは、リチウムイオン及びナトリウムイオン以外の、その他の1価のカチオンを含有してもよい。その他の1価のカチオンとしては、カリウムイオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオンなどを挙げることができる。なお、本発明のインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に用いるインクセットを構成するインク(第2インク)は水性インクである。このため、本発明における濃度の単位(mol/L)は、インクの比重を「1g/cm3」として算出している。
第2インク中のリチウムイオンとナトリウムイオンの合計濃度は、0.200mol/L以下であることが好ましい。また、第2インク中の1価のカチオンの合計濃度は、0.400mol/L以下であることが好ましい。リチウムイオンとナトリウムイオンの合計濃度が0.200mol/L超である場合や、1価のカチオンの合計濃度が0.400mol/L超である場合には、高いレベルの固着回復性が得られない場合がある。第2インク中の1価のカチオンの合計濃度は、0.050mol/L以上であることが好ましい。
所望の種類及び濃度の1価のカチオンを第2インクに含有させるためには、例えば、アニオン性染料や塩などの成分を利用することができる。すなわち、1価のカチオンとして、アニオン性染料のカウンターイオンを第2インクに含有させることができる。アニオン性染料のカウンターイオンとしては、リチウム、ナトリウム、及びカリウムなどのアルカリ金属イオンや、アンモニウムイオンが好ましい。また、塩としては、1価のカチオンとアニオンとが結合して構成される塩を用いることが好ましい。
1価のカチオンの具体例としては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオンを挙げることができる。また、アニオンの具体例としては、Cl-、Br-、I-、ClO-、ClO2 -、ClO3 -、ClO4 -、NO2 -、NO3 -、SO4 2-、CO3 2-、HCO3 -、HCOO-、(COO-2、COOH(COO-)、CH3COO-、C24(COO-2、C65COO-、C64(COO-2、PO4 3-、HPO4 2-、及びH2PO4 -を挙げることができる。これらの1価のカチオン及びアニオンは、それぞれ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、第2インク中の1価のカチオンの少なくとも一部が、アニオン性染料のカウンターイオンであることが好ましい。
第2インクは、アニオン性染料を色材として含有する。アニオン性染料はインクジェット用のインクに一般的に使用可能な染料であればよい。アニオン性染料としては、アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、アントラピリドン、キサンテン、トリフェニルメタンなどの骨格を有するものを用いることが好ましい。また、アニオン性染料は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、第2インクとして、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、ブルー、又はグリーンなどの色相を有する有彩色のインク、すなわちカラーインクを用いることが好ましい。第2インク中のアニオン性染料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上10.00質量%以下であることが好ましく、1.00質量%以上6.00質量%以下であることがさらに好ましい。
第1インク中の自己分散顔料の含有量x(質量%)、及び、第2インク中のリチウムイオンとナトリウムイオンの合計濃度M(mol/L)が、下記式(1)の関係を満たすことが好ましい。xとMが下記式(1)の関係を満たすことで、記録される画像の耐ブリーディング性をさらに向上させることができる。「x/M」で表される値は、15以上であることが好ましい。
x/M≦65 ・・・(1)
(水性媒体)
本発明のインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に用いるインクセットを構成するインクには、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることが好ましい。水としては脱イオン水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、30.00質量%以上95.00質量%以下であることが好ましい。また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.00質量%以上50.00質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。本発明においては、グリセリンなどの多価アルコール、2−ピロリドンなどの含窒素化合物、及びトリエチレングリコールなどのアルキレングリコールを少なくとも用いることが好ましい。これらの水溶性有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、再分散粘度との関係から、第1インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、25.00質量%以下であることが好ましい。第1インク中の水溶性有機溶剤の含有量が25.00質量%超であると、インクの堆積が抑制される程度がやや低下する場合がある。また、第1インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、40.00質量%以上95.00質量%以下であることが好ましい。
(その他の添加剤)
本発明で用いるインクには、上記成分の他に、尿素やその誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの常温で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。本発明においては、トリメチロールプロパンを少なくとも用いることが好ましい。インク中の常温で固体の水溶性有機化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上20.00質量%以下であることが好ましく、3.00質量%以上10.00質量%以下であることがさらに好ましい。なお、尿素やその誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの常温で固体の水溶性有機化合物は、水溶性有機溶剤と同様にインクの再分散粘度を高めやすい。このため、水溶性有機溶剤の総含有量との関係から再分散粘度を調整する場合には、水溶性有機溶剤の含有量にこれらの固体の水溶性有機化合物の含有量を含めて考慮することが好ましい。また、インクには、必要に応じて、界面活性剤、樹脂、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、キレート剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。なかでも、ノニオン性の界面活性剤を用いることが好ましく、アセチレングリコール系界面活性剤やポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いることがさらに好ましい。
(インクの物性)
インクの25℃における粘度は、1.0mPa・s以上4.0mPa・s以下であることが好ましく、1.0mPa・s以上3.0mPa・s以下であることがさらに好ましい。また、インクの25℃における静的表面張力は、28mN/m以上45mN/m以下であることが好ましい。また、インクの25℃におけるpHは、5以上9以下であることが好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<顔料分散液の調製>
(顔料の官能基導入量)
測定対象である顔料(固形分)の含有量が0.03%程度になるように顔料分散液を純水で希釈してA液を調製した。また、顔料分散液を5℃、80,000rpm、15時間の条件で超遠心分離して採取した、ホスホン酸型自己分散顔料を除去した上澄みの液体を純水で80倍程度に希釈し、B液を調製した。ICP発光分光分析装置(商品名「SPS5100」、SIIナノテクノロジー製)を使用して調製したA液及びB液中のリンを定量した。そして、A液及びB液中のリンの量の差分からホスホン酸基の量を求め、1つの官能基に含まれるホスホン酸基の数で割ることで、顔料の粒子表面に結合した官能基の量(官能基導入量)を算出した。
(顔料分散液1)
アレンドロン酸塩34g(104mmol)、及び純水150mLを500mLのビーカーに入れ、濃水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを11に調整してアレンドロン酸塩を溶解させた。アレンドロン酸塩としては、((4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸の一ナトリウム塩(Zentiva製)を用いた。次いで、テトラヒドロフラン100mLに溶解させたニトロフェニルスルホニルクロライド25g(110mmol)を滴下した。滴下の際には、水酸化ナトリウム水溶液をさらに加えて液体のpHを10〜11に保った。滴下後、室温でさらに2時間撹拌した。真空中でテトラヒドロフランを蒸発させた後、pHを4に調整して固体を析出させた。4℃で一晩冷却後に固体をろ過し、純水で洗浄してから乾燥させて、(4−(4−アミノベンゼンスルホニルアミノ)−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸ナトリウムを得た。
カーボンブラック20g、(4−(4−アミノベンゼンスルホニルアミノ)−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸ナトリウム(処理剤)7mmol、硝酸20mmol、及び純水200mLを混合した。カーボンブラックとしては、比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100gのものを用いた。また、混合は、シルヴァーソン混合機を使用し、室温条件下、6,000rpmで実施した。30分後、少量の水に溶解させた20mmolの亜硝酸ナトリウムをゆっくり添加した。混合によって混合物の温度は60℃に達し、この状態で1時間反応させた。その後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて、混合物のpHを10に調整した。30分後、純水20mLを加え、スペクトラムメンブランを用いてダイアフィルトレーションを行った。イオン交換法によりカウンターイオンをナトリウムイオンからアンモニウムイオンに置換し、顔料の含有量が10.0%となるようにして分散液を得た。これにより、カウンターイオンがアンモニウムである((4−(4−アミノベンゼンスルホニルアミノ)−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸基が顔料の粒子表面に結合した自己分散顔料が水中に分散した顔料分散液1を得た。自己分散顔料の官能基導入量は0.26mmol/gであった。
(顔料分散液2)
イオン交換法により、カウンターイオンをナトリウムイオンからリチウムイオンに置換したこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の操作を行った。これにより、カウンターイオンがリチウムである(4−(4−アミノベンゼンスルホニルアミノ)−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸基が顔料の粒子表面に結合した自己分散顔料が水中に分散した顔料分散液2を得た。自己分散顔料の官能基導入量は0.26mmol/gであった。
(顔料分散液3)
イオン交換法によるカウンターイオンの交換を行わなかったこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の操作を行った。これにより、カウンターイオンがナトリウムである((4−(4−アミノベンゼンスルホニルアミノ)−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸基が顔料の粒子表面に結合した自己分散顔料が水中に分散した顔料分散液3を得た。自己分散顔料の官能基導入量は0.26mmol/gであった。
(顔料分散液4)
イオン交換法により、カウンターイオンをナトリウムイオンからカリウムイオンに置換したこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の操作を行った。これにより、カウンターイオンがカリウムである(4−(4−アミノベンゼンスルホニルアミノ)−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸基が顔料の粒子表面に結合した自己分散顔料が水中に分散した顔料分散液4を得た。自己分散顔料の官能基導入量は0.26mmol/gであった。
(顔料分散液5)
処理剤の種類を((4−アミノベンゾイルアミノ)−メタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸ナトリウム塩に変更した。このこと以外は、前述の顔料分散液1と同様にして、カウンターイオンがナトリウムである((4−アミノベンゾイルアミノ)−メタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸基が顔料の粒子表面に結合した自己分散顔料が水中に分散した顔料分散液5を得た。自己分散顔料の官能基導入量は0.26mmol/gであった。
(顔料分散液6)
商品名「CAB−O−JET400」(キャボット製)を顔料分散液6として用いた。この商品名「CAB−O−JET400」は、カウンターイオンがナトリウムであるビスホスホン酸基が顔料(カーボンブラック)の粒子表面に結合した自己分散顔料が水中に分散した顔料分散液である。自己分散顔料の官能基導入量は0.15mmol/gであった。
(顔料分散液7)
処理剤の使用量を1mmolに変更したこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の操作を行った。これにより、カウンターイオンがアンモニウムである(4−(4−アミノベンゼンスルホニルアミノ)−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸基が顔料の粒子表面に結合した自己分散顔料が水中に分散した顔料分散液7を得た。自己分散顔料の官能基導入量は0.10mmol/gであった。
(顔料分散液8)
処理剤の種類及び量を、4−アミノベンジルホスホン酸(シグマアルドリッチ製)7mmolに変更した。このこと以外は、前述の顔料分散液1と同様にして、カウンターイオンがナトリウムであるベンゼンホスホン酸基が顔料の粒子表面に結合した自己分散顔料が水中に分散した顔料分散液8を得た。自己分散顔料の官能基導入量は0.27mmol/gであった。
(顔料分散液9)
処理剤の使用量を9mmolに変更したこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の操作を行った。これにより、カウンターイオンがアンモニウムである(4−(4−アミノベンゼンスルホニルアミノ)−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸基が顔料の粒子表面に結合した自己分散顔料が水中に分散した顔料分散液9を得た。自己分散顔料の官能基導入量は0.33mmol/gであった。
(顔料分散液10)
処理剤の使用量を9mmolに変更したこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の操作を行った。これにより、カウンターイオンがアンモニウムである(4−(4−アミノベンゼンスルホニルアミノ)−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸基が顔料の粒子表面に結合した自己分散顔料が水中に分散した顔料分散液10を得た。自己分散顔料の官能基導入量は0.35mmol/gであった。
(顔料分散液11)
水5.5gに濃塩酸5gを溶かして得た溶液を5℃に冷却し、4−アミノフタル酸(処理剤)1.5gを加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れ、溶液を撹拌して温度を10℃以下に保ちながら、5℃の水9gに亜硝酸カリウム2.2gを溶かして得た溶液を加えた。15分間撹拌後、カーボンブラック(比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100gのもの)6g(固形分)を撹拌下で加えた。さらに15分間撹拌後、得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過し、粒子を十分に水冷してから110℃のオーブンで乾燥させた。得られた乾燥物に水を加え、顔料の含有量が10.0%となるようにして分散液を得た。これにより、カウンターイオンがナトリウムであるフタル酸基が顔料の粒子表面に結合した自己分散顔料が水中に分散した顔料分散液11を得た。自己分散顔料の官能基導入量は0.68mmol/gであった。なお、自己分散顔料の官能基導入量は、イオンメーター(DKK製)を使用して測定した顔料分散液11中のナトリウムイオン濃度から換算した。
(顔料分散液12)
処理剤の使用量を0.8mmolに変更したこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の操作を行った。これにより、カウンターイオンがアンモニウムである(4−(4−アミノベンゼンスルホニルアミノ)−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸基が顔料の粒子表面に結合した自己分散顔料が水中に分散した顔料分散液12を得た。自己分散顔料の官能基導入量は0.08mmol/gであった。
<第1インクの調製>
表1−1及び1−2の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズが2.5μmであるポリプロピレンフィルター(ポール製)にて加圧ろ過を行って各インクを調製した。表1−1及び1−2中の「サーフィノール465」は、エアープロダクツ製のアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物であり、エチレンオキサイド基の付加モル数が10の界面活性剤である。また、「NIKKOL BL−9EX」は、日光ケミカルズ製のポリオキシエチレンラウリルエーテルであり、グリフィン法により求められるHLB値が14.5、エチレンオキサイド基の付加モル数が9の界面活性剤である。また、表1−1及び1−2の下段には、各インクの顔料の含有量x(%)、水溶性有機溶剤の含有量、及び再分散粘度を示す。インクの再分散粘度は、粘度計(商品名「RE−85L」、東機産業製、使用ローター:1°34’×R24)を使用して測定し、7mPa・s以下の場合を「A」、7mPa・s超の場合を「B」とした。
Figure 2016101696
Figure 2016101696
<染料水溶液の調製>
表2に示す種類のアニオン性染料を水に溶解させた後、酸を加えて染料の結晶を析出させた。析出した結晶をろ過して分取し、遊離酸型の染料のケーキを得た。得られたケーキにイオン交換水及び適量のアルカリ水溶液(水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液)を添加して、染料のアニオン性基のカウンターイオンを塩型にして染料を水に溶解させた。これにより、染料の含有量が10.0%である各染料水溶液を調製した。
調製した各染料水溶液を、染料の含有量が0.04%になるように純水で希釈し、ICP発光分析装置(商品名「SPS5100」、SII製)を使用して各種の1価カチオン濃度を定量した。また、1価カチオンのうち、アンモニウムイオンの濃度は、イオンクロマトグラフ(商品名「DX320」、ダイオネクス製)を用いて測定した。そして、定量したカチオン濃度から、染料の含有量が5.00%である場合におけるカチオン濃度(mol/L)を算出した。
Figure 2016101696
<第2インクの調製>
表3−1及び3−2の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズが0.2μmであるミクロフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過を行って各インクを調製した。表3−1及び3−2中の「サーフィノール465」は、エアープロダクツ製のアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物であり、エチレンオキサイド基の付加モル数が10の界面活性剤である。表3−1及び3−2の下段には、各インクのLi+濃度、Na+濃度、その他の1価カチオン濃度、Li+濃度及びNa+濃度の合計濃度M、及び1価カチオンの合計濃度(いずれも単位はmol/L)を示す。なお、各種の1価カチオン濃度は、ICP発光分析装置(商品名「SPS5100」、SII製)を使用して測定した。また、1価カチオンのうち、アンモニウムイオンの濃度は、イオンクロマトグラフ(商品名「DX320」、ダイオネクス製)を用いて測定した。
Figure 2016101696
Figure 2016101696
<評価>
上記で得られた各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、表4の左側に示す構成のインクセットとした。表4には、x/Mの値も示す。そして、熱エネルギーによりインクを吐出する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置(商品名「PIXMA MG2420」、キヤノン製)のブラックインクのポジションに第1インク、カラーインクのポジションに第2インクをそれぞれセットした。なお、このインクジェット記録装置の解像度は600dpi×600dpiである。また、「記録デューティが100%」であることを以下のように定義する。ブラックインクについては、1/600インチ×1/600インチの単位領域に1滴当たりの質量が25ng±10%であるインク滴を1滴付与する条件を「記録デューティが100%」であると定義する。また、カラーインクについては、1/600インチ×1/600インチの単位領域に1滴あたりの質量が5.5ng±10%であるインク滴を2滴付与する条件を「記録デューティが100%」であると定義する。各評価結果を表4に示す。
(第1インクにより記録される画像の光学濃度)
第1インクを用いて、以下に示す4種の記録媒体(普通紙)に、記録デューティが100%であるベタ画像(2cm×2cm/1ライン)を記録した。
[記録媒体]
・Office Depot multipurpose bright white paper(Office DEPOT製)
・copy paper(staples製)、
・IQ premium(mondi製)、
・Bright White InkjetPaper(ヒューレッドパッカード製)
記録の1日後に、反射濃度計(商品名「マクベスRD−918」、マクベス製)を使用して4種の記録媒体に記録したベタ画像の光学濃度を測定してその平均値を算出した。そして、算出した平均値及び最高値から、以下に示す評価基準にしたがって画像の光学濃度を評価した。この評価においては、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。
A:最高値が1.62以上であり、かつ、平均値が1.40以上であった。
B:最高値が1.62未満であり、かつ、平均値が1.40以上であった。
C:平均値が1.40未満であった。
(耐ブリーディング性)
記録媒体(商品名「Canon Office」、キヤノン製)に、第1インクを用いて記録デューティが100%であるベタ画像(縦0.5mm×横2cm)を記録した。また、第2インクを用いて、第1インクで記録したベタ画像の左右に隣接して記録デューティが70%であるベタ画像(縦2mm×横2cm)を記録した。記録したベタ画像の境界部を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって耐ブリーディング性を評価した。この評価においては、「A」及びBを許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。
A:ブリーディングが生じていなかった。
B:ブリーディングがわずかに生じていた。
C:2色の画像の境界がわからないほどブリーディングが生じていた。
(第1インクの堆積抑制)
第1インクをシャーレにそれぞれ入れ、10%蒸発させた液体(濃縮インク)を調製した。図1〜3に示す構成の保護ユニット104及び回復ユニット105を有するインクジェット記録装置(商品名「PIXMA MG2420」、キヤノン製)に、調製した濃縮インクを充填したインクカートリッジ31をセットした。この装置では、回復ユニット105は支持部材により支持され、インク受け部材51の底部は記録装置本体の内部の底面から離れた位置に設けられている。また、インク受け部材51の底面は、記録装置本体の外装カバー52と兼ねる構成となっている。そして、廃インクはポリスチレンで形成された外装カバー52に直接付与され、インク受け部材51の底面の面積の1/3程度以下のみに繊維吸収体で形成されるインク吸収体53が配置されている。なお、インク受け部材51に対応する位置に記録ヘッド32が存在する場合における、吐出口面34から外装カバー52の底面までの距離は35.5mm程度に設定されている。
このインクジェット記録装置を使用して、温度30℃、相対湿度10%の条件下、A4サイズの記録媒体(商品名「PB PAPER」、キヤノン製)に記録デューティが7%であるベタ画像(19cm×26cm)を15分間隔で7,000枚記録した。なお、記録媒体1枚分のベタ画像の記録に先立ち、予備吐出データに基づいて0.21mg±10%のインクがインク受け部材に吐出(排出)される。さらに、記録ヘッドをクリーニングするために、記録媒体200枚分のベタ画像を記録した後に1回という頻度で、0.1g±30%のインクがインク受け部材に吐出(排出)される。そして、7,000枚の記録が終わった時点で、インク受け部の底面を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって第1インクの堆積抑制を評価した。この評価においては、「A」を許容できるレベル、「B」を許容できないレベルとした。なお、濃縮インクを用いたのは、インクの堆積抑制をより厳しい条件で評価するためである。
A:7,000枚記録後にインク受け部材の底面にインクは堆積していたが、画像への影響はなかった。
B:7,000枚記録後にインク受け部材の底面にインクが堆積し、画像への影響があった。
(固着回復性)
まず、インクジェット記録装置のノズルチェックパターンを、温度23℃、相対湿度50%の条件下で1枚の記録媒体(商品名「高品位専用紙HR−101」、キヤノン製)に記録した。次いで、インクジェット記録装置から取り外した記録ヘッドを、温度30℃、相対湿度10%の環境で5日間保存した。その後、記録ヘッドをインクジェット記録装置に取り付け、温度23℃、相対湿度50%の条件下で1枚の記録媒体にノズルチェックパターンを記録した。2枚目の記録媒体に記録したノズルチェックパターンを目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって固着回復性を評価した。この評価においては、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。
A:第1インク及び第2インクのいずれにも不吐出や吐出よれが生じていなかった。
B:第1インク及び第2インクのいずれかによれが生じていたが、画像の記録には問題がないレベルであった。
C:第1インク及び第2インクのいずれかによれが生じ、画像の記録に問題があるレベルであった。
Figure 2016101696

Claims (7)

  1. 吐出口が設けられた記録ヘッドを有する記録ユニット;
    前記吐出口から吐出され、記録媒体に画像を記録するインクを含む水性インクセット;
    前記記録ヘッドの前記吐出口が設けられた面を覆う覆い部材を有する保護ユニット;
    予備吐出データに基づいて前記吐出口から排出された廃インクを他の部材を介さずに受容する、前記覆い部材とは別に設けられたインク受け部材を有し、かつ、前記インク受け部材に堆積した前記廃インクを掻き取る部材、及び、前記吐出口からインクを吸引する部材のいずれをも有さない回復ユニット;を具備するインクジェット記録装置であって、
    前記水性インクセットが、第1インク及び第2インクの組み合わせを有し、
    前記第1インクが、ホスホン酸基を含む官能基が粒子表面に結合している自己分散顔料を含有し、
    前記自己分散顔料の官能基導入量が、0.10mmol/g以上であり、
    以下に示す手順にしたがって測定される前記第1インクの再分散粘度が、7mPa・s以下であり、
    前記第2インクが、アニオン性染料、並びに、リチウムイオン及びナトリウムイオンの少なくとも一方を含有し、
    前記第2インク中のリチウムイオンとナトリウムイオンの合計濃度が、0.050mol/L以上であることを特徴とするインクジェット記録装置。
    [再分散粘度の測定]:第1インク1.5gを、温度30℃、相対湿度10%の環境で15時間保存後、減少した質量分の第1インクを添加して、さらに2時間保存したものについて粘度を測定する。
  2. 前記第2インク中のリチウムイオンとナトリウムイオンの合計濃度が、0.200mol/L以下である請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記第2インク中の1価カチオンの合計濃度が、0.400mol/L以下である請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記自己分散顔料の粒子表面に結合している前記官能基が、2つのホスホン酸基を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記自己分散顔料の官能基導入量が、0.33mmol/g以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記第1インク中の前記自己分散顔料の含有量x(質量%)、及び、前記第2インク中のリチウムイオンとナトリウムイオンの合計濃度M(mol/L)が、下記式(1)の関係を満たす請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
    x/M≦65 ・・・(1)
  7. 記録ヘッドの吐出口から水性インクセットに含まれるインクを吐出して記録媒体に画像を記録する記録工程;
    前記記録ヘッドの前記吐出口が設けられた面を覆い部材で覆う保護工程;
    予備吐出データに基づいて前記吐出口から排出された廃インクを他の部材を介さずに、前記覆い部材とは別に設けられたインク受け部材に受容する予備吐出工程;を有し、かつ、
    前記インク受け部材に堆積した前記廃インクを掻き取る工程、及び、前記吐出口からインクを吸引する工程のいずれをも有さないインクジェット記録方法であって、
    前記水性インクセットが、第1インク及び第2インクの組み合わせを有し、
    前記第1インクが、ホスホン酸基を含む官能基が粒子表面に結合している自己分散顔料を含有し、
    前記自己分散顔料の官能基導入量が、0.10mmol/g以上であり、
    以下に示す手順にしたがって測定される前記第1インクの再分散粘度が、7mPa・s以下であり、
    前記第2インクが、アニオン性染料、並びに、リチウムイオン及びナトリウムイオンの少なくとも一方を含有し、
    前記第2インク中のリチウムイオンとナトリウムイオンの合計濃度が、0.050mol/L以上であることを特徴とするインクジェット記録方法。
    [再分散粘度の測定]:第1インク1.5gを、温度30℃、相対湿度10%の環境で15時間保存後、減少した質量分の第1インクを添加して、さらに2時間保存したものについて粘度を測定する。
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JP2019019220A (ja) * 2017-07-18 2019-02-07 セイコーエプソン株式会社 インクジェット記録用インクセット、インクジェット記録方法
JP2020075490A (ja) * 2018-10-04 2020-05-21 キヤノン株式会社 インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置

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