JP2019218448A - 水性インクの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】長期間保存した場合であっても、微生物の繁殖が有効に抑制されるとともに物性が安定に維持されるインクジェット用の水性インクの製造方法を提供する。【解決手段】インクジェット用の水性インクの製造方法である。顔料、及び界面活性剤を混合して混合物を得る工程と、得られた前記混合物、及びその他のインク成分を混合する工程と、を有し、顔料が、顔料の粒子表面に、(i)アニオン性基、及び、(ii)他の原子団とアニオン性基とが結合した基、からなる群より選択される官能基が結合した自己分散顔料であるとともに、官能基の密度が、0.10μmol/m2以上0.48μmol/m2以下であり、界面活性剤が、陽イオンとなりうる窒素原子が第2級アミン又は第3級アミンの構造を有するアミノ酸型界面活性剤である。【選択図】なし
Description
本発明は、水性インクの製造方法に関する。
インクジェット記録方法によれば、様々な記録媒体に画像を記録することが可能である。このため、インクジェット記録方法に用いるインクとして、写真画像を記録するのに適したインク、普通紙上にビジネス文書を記録するのに適したインクが数多く提案されている。
従前よりビジネス分野でのインクジェット記録のニーズが上昇している。オフィスで一般に使用されているコピー用紙などの普通紙には、自己分散顔料を含有するインクを用いることで発色性の高い画像を記録可能であることが知られている。
また、普通紙に記録する罫線などの高精細化に対応すべく、記録ヘッドの高密度化が進んでおり、それに伴い、インク流路やノズルを微細化する必要性が生じている。しかし、微細化したインク流路やノズルが閉塞する一因として、インク中で繁殖した微生物による異物の発生を挙げることができる。なかでも、水性インクは微生物が繁殖しやすい環境となる場合が多い。
インク中での微生物の繁殖を抑制するための技術については、これまでに数多く提案されている。例えば、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オンなどの防菌剤を含有するインクジェット用のインクが提案されている(特許文献1)。また、フェノール系化合物を防腐防黴剤として含有するインクジェット用の水性インクが提案されている(特許文献2)。
近年、主としてビジネス用途の記録装置として、大容量インクタンクを搭載したインクジェット記録装置が開発されている。このような大容量インクタンクの場合、より長期間保存した場合であっても微生物の繁殖が有効に抑制されることが必要となる。しかし、自己分散顔料を色材として用いたインクに特許文献1及び2で提案された防菌剤などの化合物を添加して長期間保存すると、微生物の繁殖を抑制する効果が低下する場合があった。本発明者らがその原因について検討したところ、これらの化合物が自己分散顔料に吸着してしまい、本来の効果が発揮されにくくなることが判明した。また、特許文献2で提案された化合物をインクに過剰に添加すると、インクの保存時に自己分散顔料の粒径が増大するなど、インク物性が低下しやすくなることも判明した。
さらに検討したところ、本発明者らは、特定構造を有するアミノ酸型界面活性剤を用いることで、自己分散顔料を色材として含有するインクを長期間保存した場合であっても微生物の繁殖を有効に抑制しうることを見出した。しかし、上記のアミノ酸型界面活性剤を単に用いるだけでは、保存後のインクの物性が低下しやすくなるといった新たな課題が生ずることが判明した。
したがって、本発明の目的は、長期間保存した場合であっても、微生物の繁殖が有効に抑制されるとともに物性が安定に維持されるインクジェット用の水性インクの製造方法を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、インクジェット用の水性インクの製造方法であって、顔料、及び界面活性剤を混合して混合物を得る工程と、得られた前記混合物、及びその他のインク成分を混合する工程と、を有し、前記顔料が、顔料の粒子表面に、(i)アニオン性基、及び、(ii)他の原子団とアニオン性基とが結合した基、からなる群より選択される官能基が結合した自己分散顔料であるとともに、前記官能基の密度が、0.10μmol/m2以上0.48μmol/m2以下であり、前記界面活性剤が、陽イオンとなりうる窒素原子が第2級アミン又は第3級アミンの構造を有するアミノ酸型界面活性剤であることを特徴とする水性インクの製造方法が提供される。
本発明によれば、長期間保存した場合であっても、微生物の繁殖が有効に抑制されるとともに物性が安定に維持されるインクジェット用の水性インクの製造方法を提供することができる。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。
本発明者らは、特定構造を有するアミノ酸型界面活性剤を用いて製造されるインクの特性についてさらに検討した。その結果、インクの製造方法、より具体的にはインクの構成成分を混合する順序が、長期間保存したインクの(i)微生物の繁殖抑制及び(ii)物性の安定化の両立に影響を及ぼすことを見出し、本発明を完成するに至った。
自己分散顔料とアミノ酸型界面活性剤を併用することで、インクを長期間保存した場合であっても微生物の繁殖を抑制することができる。アミノ酸型界面活性剤の分子構造中のカチオン性部位が、微生物の繁殖を抑制する効果を示す部位であると考えられる。そして、疎水部の長鎖アルキル基が顔料の粒子表面の疎水部に吸着するため、分子がある程度大きいことからカチオン性部位が露出し、微生物の繁殖を抑制する効果が維持されると考えられる。
さらに、本発明者らは、アミノ酸型界面活性剤と併用する自己分散顔料の官能基の密度と、インク性能との関係について検討した。その結果、官能基の密度が比較的高い自己分散顔料を用いると、長期間保存後のインクの物性が低下することが判明した。また、本発明者らは、インクの製造工程についても検討した。その結果、自己分散顔料とアミノ酸型界面活性剤を予め混合しておかないと、得られるインクの長期間保存後の物性が低下することがわかった。上記のような効果が得られるメカニズムについて、本発明者らは以下のように推測している。
本発明のインクの製造方法で用いる自己分散顔料の官能基の密度は、一般的なインクに用いられる通常の自己分散顔料の官能基の密度よりも低い。このため、官能基の密度が比較的低い自己分散顔料とアミノ酸型界面活性剤を混合すると、アミノ酸型界面活性剤が自己分散顔料に吸着する。アミノ酸型界面活性剤はイオン性基を有するため、自己分散顔料に吸着したアミノ酸型界面活性剤は顔料の保存安定性に寄与する。一方、官能基の密度が比較的高い自己分散顔料に対して、アミノ酸型界面活性剤は吸着しにくい。このため、官能基の密度が比較的高い自己分散顔料を用いると、自己分散顔料に吸着しない状態でインク中に存在するアミノ酸型界面活性剤がインク中の水を奪って顔料が凝集しやすくなり、インクの保存安定性が低下すると考えられる。
また、自己分散顔料をアミノ酸型界面活性剤と予め混合せず、水溶性有機溶剤などのその他のインク成分と先に混合してしまうと、自己分散顔料へのアミノ酸型界面活性剤の吸着が、その他のインク成分によって阻害されることとなる。このため、自己分散顔料に吸着していないアミノ酸型界面活性剤にインク中の水が奪われてしまい、顔料が凝集しやすくなってインクの保存安定性が低下すると考えられる。
本発明の水性インクの製造方法で用いる自己分散顔料は、官能基の密度が0.10μmol/m2以上0.48μmol/m2以下である、アニオン性基を有する自己分散顔料である。自己分散顔料の官能基の密度は、コロイド滴定により測定することができる。官能基の密度が上記の範囲内にある自己分散顔料はアミノ酸型界面活性剤を効率的に吸着するため、長期間保存した場合であっても、微生物の繁殖が有効に抑制されるとともに安定性が維持されたインクを製造することができる。自己分散顔料の官能基の密度が0.10μmol/m2未満であると、長期間保存後のインク中の顔料の分散状態を安定に維持することができず、インクの保存安定性を向上させることができない。一方、自己分散顔料の官能基の密度が0.48μmol/m2超であると、アミノ酸型界面活性剤が自己分散顔料に吸着しにくくなるため、顔料が凝集しやすくなってインクの保存安定性が低下する。
<インクの製造方法>
本発明のインクの製造方法は、インクジェット用の水性インクの製造方法である。そして、顔料、及び界面活性剤を混合して混合物を得る工程(以下、「工程(1)」とも記す)と、得られた混合物、及びその他のインク成分を混合する工程(以下、「工程(2)」とも記す)とを有する。以下、本発明のインクの製造方法の詳細について説明する。
本発明のインクの製造方法は、インクジェット用の水性インクの製造方法である。そして、顔料、及び界面活性剤を混合して混合物を得る工程(以下、「工程(1)」とも記す)と、得られた混合物、及びその他のインク成分を混合する工程(以下、「工程(2)」とも記す)とを有する。以下、本発明のインクの製造方法の詳細について説明する。
(工程(1))
工程(1)では、顔料と界面活性剤を混合して混合物を得る。本明細書における「混合」とは、撹拌などにより各成分を均一にする操作を意味する。顔料と界面活性剤を混合する際には、水を用いてもよい。勿論、工程(2)において、工程(1)で得た混合物と、その他のインク成分を混合する際に水を用いてもよい。また、その他のインク成分を混合して得た混合物に、別途混合して得た顔料と界面活性剤の混合物を添加して混合してもよい。さらに、その他のインク成分の一部を混合して得た混合物に、別途混合して得た顔料と界面活性剤の混合物を添加して混合した後、その他のインク成分の残部を添加して混合してもよい。顔料への界面活性剤の吸着を促進させるために、加温工程を設けてもよい。
工程(1)では、顔料と界面活性剤を混合して混合物を得る。本明細書における「混合」とは、撹拌などにより各成分を均一にする操作を意味する。顔料と界面活性剤を混合する際には、水を用いてもよい。勿論、工程(2)において、工程(1)で得た混合物と、その他のインク成分を混合する際に水を用いてもよい。また、その他のインク成分を混合して得た混合物に、別途混合して得た顔料と界面活性剤の混合物を添加して混合してもよい。さらに、その他のインク成分の一部を混合して得た混合物に、別途混合して得た顔料と界面活性剤の混合物を添加して混合した後、その他のインク成分の残部を添加して混合してもよい。顔料への界面活性剤の吸着を促進させるために、加温工程を設けてもよい。
[自己分散顔料]
顔料としては、自己分散顔料を用いる。自己分散顔料は、顔料の粒子表面に、(i)アニオン性基、及び、(ii)他の原子団とアニオン性基とが結合した基、からなる群より選択される官能基が結合したものである。自己分散顔料を色材として用いることにより、顔料をインク中に分散させるための分散剤の添加が不要となる、又は分散剤の添加量を少量とすることができる。自己分散顔料を分散させるための樹脂や界面活性剤などの分散剤を使用したり、樹脂で内包した自己分散顔料を使用したりする必要はない。
顔料としては、自己分散顔料を用いる。自己分散顔料は、顔料の粒子表面に、(i)アニオン性基、及び、(ii)他の原子団とアニオン性基とが結合した基、からなる群より選択される官能基が結合したものである。自己分散顔料を色材として用いることにより、顔料をインク中に分散させるための分散剤の添加が不要となる、又は分散剤の添加量を少量とすることができる。自己分散顔料を分散させるための樹脂や界面活性剤などの分散剤を使用したり、樹脂で内包した自己分散顔料を使用したりする必要はない。
アニオン性基としては、カルボン酸基(−COOM)、スルホン酸基(−SO3M)、及びホスホン酸基(−PO3M2)などを挙げることができる。Mは、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、及びカリウムなどを挙げることができる。有機アンモニウムとしては、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、及びトリエチルアミンなどの炭素数1以上3以下のモノ−、ジ−、又はトリ−アルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、及びトリイソプロパノールアミンなどの炭素数1以上4以下のモノ−、ジ−又はトリ−アルカノールアミン類などを挙げることができる。
他の原子団(−R−)としては、例えば、アルキレン基、アリーレン基、アミド基、スルホニル基、イミノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基、及びこれらの基を組み合わせた基などを挙げることができる。
アニオン性基はカルボン酸基であることが好ましい。また、官能基は、他の原子団に2以上のカルボン酸基が結合した基であることが好ましい。2以上のカルボン酸基が他の原子団に結合した官能基は、1のカルボン酸基のみが他の原子団に結合した官能基に比べて、官能基の密度が低い。このため、顔料の疎水部がより多く存在することとなり、アミノ酸型界面活性剤がより吸着しやすい。
自己分散顔料を構成する顔料種としては、カーボンブラック、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、イミダゾロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジンなどの有機顔料を挙げることができる。インクには、調色などの目的のために、顔料に加えてさらに有機顔料や染料などを含有させてもよい。
自己分散顔料の官能基の密度は、0.10μmol/m2以上0.48μmol/m2以下であり、好ましくは0.30μmol/m2以下である。官能基の密度が0.30μmol/m2以下の自己分散顔料を用いることで、自己分散顔料にアミノ酸型界面活性剤がより効率的に吸着し、インクの保存安定性をさらに高めることができる。
官能基の密度は、顔料の単位面積当たりの官能基のマイクロモル数で表す。自己分散顔料の官能基の密度は、以下に示すように測定することができる。まず、自己分散顔料の表面電荷量をコロイド滴定により測定する。また、NMRなどにより、自己分散顔料の官能基がアニオン性基であるか、他の原子団とアニオン性基とが結合した基であるか、を分析し、後者である場合は1の官能基に含まれるアニオン性基の数nを求める。自己分散顔料の官能基がアニオン性基である場合は、表面電荷量がそのまま官能基の密度となる。官能基が他の原子団とアニオン性基とが結合した基である場合は、表面電荷量を1の官能基に含まれるアニオン性基の数nで割った値が官能基の密度となる。なお、一般的に用いられる水性インクのpH域では、ホスホン酸基の解離数は「1」である。
自己分散顔料の使用量は、目的物であるインクの自己分散顔料の含有量に応じて適宜設定することができる。具体的には、自己分散顔料の使用量は、製造しようとするインク中の自己分散顔料の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.50質量%以上10.00質量%以下となる量とすることが好ましい。また、1.00質量%以上10.00質量%以下となる量とすることがさらに好ましい。
[アミノ酸型界面活性剤]
界面活性剤としては、アミノ酸型界面活性剤を用いる。アミノ酸型界面活性剤は、陽イオンとなりうる窒素原子が第2級アミン又は第3級アミンの構造を有する界面活性剤である。より具体的には、アミノ酸型界面活性剤は、親水部であるアミノ酸部分の他に、親水部に対して親水性が極端に低いことによって、当該化合物に界面活性能を持たせる疎水基(炭素数がある程度大きいアルキル鎖など)を有する化合物である。なかでも、アミノ酸型界面活性剤は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。アミノ酸型界面活性剤の分子量は、酸型(H型)としたときに、220以上700以下であることが好ましく、250以上500以下であることがさらに好ましい。
界面活性剤としては、アミノ酸型界面活性剤を用いる。アミノ酸型界面活性剤は、陽イオンとなりうる窒素原子が第2級アミン又は第3級アミンの構造を有する界面活性剤である。より具体的には、アミノ酸型界面活性剤は、親水部であるアミノ酸部分の他に、親水部に対して親水性が極端に低いことによって、当該化合物に界面活性能を持たせる疎水基(炭素数がある程度大きいアルキル鎖など)を有する化合物である。なかでも、アミノ酸型界面活性剤は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。アミノ酸型界面活性剤の分子量は、酸型(H型)としたときに、220以上700以下であることが好ましく、250以上500以下であることがさらに好ましい。
一般式(1)中、R1は、炭素数8乃至18のアルキル基を表す。Zは、(CO)p(NH(CH2)q)rを表し、pは0又は1の整数を表し、qは2又は3の整数を表し、rは1乃至3の整数を表す。R2は、水素原子、又は(CH2)s−X1を表し、sは1乃至3の整数を表す。R3は、(CH2)t−X2を表し、tは1乃至3の整数を表す。X1、及びX2は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、カルボン酸基、又はスルホン酸基を表す。但し、X1、及びX2の組み合わせが同時に水素原子及びヒドロキシ基となることはない。
R1は、炭素数8乃至18のアルキル基を表す。R1のアルキル基は、直鎖、及び分岐鎖のいずれであってもよいが、コンパクトな構造であり顔料に吸着しやすいため直鎖のアルキル基が好ましい。アルキル基としては、例えば、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基などの直鎖のアルキル基;2−エチルへキシル基などの分岐鎖のアルキル基を挙げることができる。R1は、炭素数8乃至16のアルキル基であることがさらに好ましい。R1が炭素数8乃至16のアルキル基であると、界面活性能を示しながらもコンパクトな構造であるため、顔料により効率よく吸着することができ、微生物の繁殖を抑制する効果が効率よく発揮される。
Zは、(CO)p(NH(CH2)q)rを表し、pは0又は1の整数を表し、qは2又は3の整数を表し、rは1乃至3の整数を表す。pが0である場合、一般式(1)中のR1がZを構成する窒素原子に結合していることを意味する。一般式(1)におけるpは1であることが好ましい。pが1である、すなわち、アミド基(−CONH−)が存在する場合、窒素原子がプラスに分極しやすいため、微生物の繁殖を抑制する効果が効率よく発揮されると考えられる。qは2であることが好ましい。rは1乃至3の整数であるが、0又は4以上であると以下の理由により微生物の繁殖を抑制する効果が若干弱まる場合がある。rが0であると、顔料に吸着するR1と陽イオンとなりうる窒素原子との距離が近すぎて、窒素原子が陽イオンとなった際に、分子の親疎水のバランスが親水寄りとなりやすい。すると、化合物が顔料から脱離しやすくなり、微生物の繁殖を抑制する効果が若干弱まる場合がある。一方、rが4以上であると、一般式(1)で表される化合物の分子が大きくなる。すると、陽イオンとなった窒素原子が、自身が吸着している顔料のアニオン性基とイオン反応を生じて、微生物の繁殖を抑制する効果が若干弱まる場合がある。
R2は、水素原子、又は(CH2)s−X1を表し、sは1乃至3の整数を表す。R3は、(CH2)t−X2を表し、tは1乃至3の整数を表す。X1、及びX2は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、カルボン酸基、又はスルホン酸基を表す。但し、X1、及びX2の組み合わせが同時に水素原子及びヒドロキシ基となることはない。R2は、水素原子、又はX1がヒドロキシ基又はカルボン酸基を表す−(CH2)s−X1であることが好ましい。なかでも、一般式(1)におけるR2が水素原子であることがさらに好ましい。R2が水素原子である場合、陽イオンとなる窒素原子が第2級アミンの構造を持ち、立体障害が少ないため、第3級アミンである場合と比べて塩基性が強くなる。このため、微生物の繁殖を抑制する効果が効率よく発揮される。R3のX2は、水素原子、ヒドロキシ基、カルボン酸基、又はスルホン酸基であることが好ましく、カルボン酸基であることがさらに好ましい。s及びtはそれぞれ独立に1乃至3の整数を表す。sやtが4以上であると、陽イオンとなりうる窒素原子とX1やX2との距離が遠くなりすぎて、これらが分子内でイオン反応を生じやすくなることがある。すると、微生物の繁殖を抑制する効果が若干弱まる場合がある。
一般式(1)で表される化合物は「アミノ酸型」の界面活性剤であり、アニオン性基が存在する必要がある。したがって、R2及びR3の少なくとも一方の末端はアニオン性基である。このため、X1、及びX2の組み合わせが同時に水素原子及びヒドロキシ基となることはない。より具体的には、X1、及びX2の組み合わせが、水素原子同士、ヒドロキシ基同士、一方が水素原子で他方がヒドロキシ基、となることはない。X1、及びX2におけるカルボン酸基及びスルホン酸基は、酸型(H型)であってもよく、塩型であってもよい。カルボン酸基などが塩型である場合(塩を形成する場合)のカウンターイオンとしては、アルカリ金属、アンモニウム、及び有機アンモニウムのカチオンを挙げることができる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、及びカリウムなどを挙げることができる。有機アンモニウムとしては、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、及びトリエチルアミンなどの炭素数1以上3以下のモノ−、ジ−、又はトリ−アルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、及びトリイソプロパノールアミンなどの炭素数1以上4以下のモノ−、ジ−又はトリ−アルカノールアミン類などを挙げることができる。
アミノ酸型界面活性剤の好適例を酸型(H型)として示すと、表1に示す化合物1乃至25を挙げることができる。勿論、本発明においては、先に述べた「アミノ酸型界面活性剤」の定義、好適には一般式(1)の構造及びその定義に包含されるものであれば、以下に示す化合物に限定されない。また、アミノ酸型界面活性剤のうちの1種を単独で使用することもできるし、2種以上を同時に使用することもできる。
アミノ酸型界面活性剤は、陽イオンとなりうる窒素原子が第2級アミンの構造を有するものであることが、微生物の繁殖をより有効に抑制することができるために好ましい。第2級アミンは立体障害が小さく、第3級アミンより塩基性が強い。このため、陽イオンとなりうる窒素原子が第2級アミンの構造を有するアミノ酸型界面活性剤を用いることで、微生物の繁殖をより有効に抑制可能なインクを製造することができる。
アミノ酸型界面活性剤の使用量は、目的物であるインクのアミノ酸型界面活性剤の含有量に応じて適宜設定することができる。具体的には、アミノ酸型界面活性剤の使用量は、製造しようとするインク中のアミノ酸型界面活性剤の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.10質量%以上20.00質量%以下となる量とすることが好ましい。また、1.00質量%以上10.00質量%以下となる量とすることがさらに好ましい。
アミノ酸型界面活性剤の使用量(質量部)は、顔料の使用量(質量部)に対する質量比率で、0.003倍以上0.500倍以下とすることが好ましい。アミノ酸型界面活性剤の使用量が、顔料の使用量に対する質量比率で0.003倍未満であると、インクを長期保存した場合における微生物の繁殖を抑制する効果や保存安定性がやや低下することがある。一方、アミノ酸型界面活性剤の使用量が、顔料の使用量に対する質量比率で0.500倍超であると、インクを長期保存した場合における保存安定性がやや低下することがある。
(工程(2))
工程(2)では、工程(1)で得られた混合物と、その他のインク成分とを混合する。これにより、目的とするインクを得ることができる。その他のインク成分は、工程(1)で用いる自己分散顔料及びアミノ酸型界面活性剤以外の、一般的なインクジェット用の水性インクを構成する成分である。その他のインク成分としては、水性媒体や、その他の添加剤などを挙げることができる。
工程(2)では、工程(1)で得られた混合物と、その他のインク成分とを混合する。これにより、目的とするインクを得ることができる。その他のインク成分は、工程(1)で用いる自己分散顔料及びアミノ酸型界面活性剤以外の、一般的なインクジェット用の水性インクを構成する成分である。その他のインク成分としては、水性媒体や、その他の添加剤などを挙げることができる。
[水性媒体]
製造しようとするインクは、水性媒体として少なくとも水を含有するインクジェット用の水性インクである。すなわち、インクの製造に用いる水性媒体は、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。水の使用量は、目的物であるインクの水の含有量に応じて適宜設定することができる。具体的には、水の使用量は、製造しようとするインク中の水の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、10.00質量%以上90.00質量%以下となる量とすることが好ましい。また、50.00質量%以上90.00質量%以下となる量とすることがさらに好ましい。
製造しようとするインクは、水性媒体として少なくとも水を含有するインクジェット用の水性インクである。すなわち、インクの製造に用いる水性媒体は、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。水の使用量は、目的物であるインクの水の含有量に応じて適宜設定することができる。具体的には、水の使用量は、製造しようとするインク中の水の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、10.00質量%以上90.00質量%以下となる量とすることが好ましい。また、50.00質量%以上90.00質量%以下となる量とすることがさらに好ましい。
水溶性有機溶剤は、水溶性であれば特に制限はなく、アルコール、多価アルコール、(ポリ)アルキレングリコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶媒、含硫黄極性溶媒などを用いることができる。水溶性有機溶剤の使用量は、製造しようとするインク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、3.00質量%以上50.00質量%以下となる量とすることが好ましい。
[その他の添加剤]
インクには、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有させることができる。さらに、インクには、必要に応じて、その他の界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び樹脂など、種々の添加剤を含有させてもよい。
インクには、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有させることができる。さらに、インクには、必要に応じて、その他の界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び樹脂など、種々の添加剤を含有させてもよい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<自己分散顔料の調製>
(顔料1の水分散液)
水5.5gに濃塩酸1.5gを溶かして得た溶液を5℃に冷却し、4−アミノフタル酸0.42gを加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れて10℃以下に冷却し、5℃の水9.0gに亜硝酸ナトリウム0.5gを溶かして得た溶液を加えた。15分間撹拌後、カーボンブラック(比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100g)6.0gを撹拌下で加え、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過し、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させて自己分散顔料を得た。適量の水を添加して顔料固形分の含有量を調整し、顔料1の水分散液を得た。顔料1の水分散液には、カーボンブラックの粒子表面にカウンターイオンがナトリウムであるフタル酸基(−C6H3−(COONa)2)が結合した自己分散顔料が含まれており、顔料の含有量は10.0%であった。
(顔料1の水分散液)
水5.5gに濃塩酸1.5gを溶かして得た溶液を5℃に冷却し、4−アミノフタル酸0.42gを加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れて10℃以下に冷却し、5℃の水9.0gに亜硝酸ナトリウム0.5gを溶かして得た溶液を加えた。15分間撹拌後、カーボンブラック(比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100g)6.0gを撹拌下で加え、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過し、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させて自己分散顔料を得た。適量の水を添加して顔料固形分の含有量を調整し、顔料1の水分散液を得た。顔料1の水分散液には、カーボンブラックの粒子表面にカウンターイオンがナトリウムであるフタル酸基(−C6H3−(COONa)2)が結合した自己分散顔料が含まれており、顔料の含有量は10.0%であった。
(顔料2、3、7、8の水分散液)
濃塩酸、4−アミノフタル酸、及び亜硝酸ナトリウムの使用量を変更したこと以外は、前述の顔料1の水分散液の調製と同様にして、顔料2、3、7、8の水分散液を得た。顔料2、3、7、8の水分散液には、カーボンブラックの粒子表面にカウンターイオンがナトリウムであるフタル酸基(−C6H3−(COONa)2)が結合した自己分散顔料が含まれており、顔料の含有量は10.0%であった。
濃塩酸、4−アミノフタル酸、及び亜硝酸ナトリウムの使用量を変更したこと以外は、前述の顔料1の水分散液の調製と同様にして、顔料2、3、7、8の水分散液を得た。顔料2、3、7、8の水分散液には、カーボンブラックの粒子表面にカウンターイオンがナトリウムであるフタル酸基(−C6H3−(COONa)2)が結合した自己分散顔料が含まれており、顔料の含有量は10.0%であった。
(顔料4の水分散液)
水5.5gに濃塩酸5.0gを溶かして得た溶液を5℃に冷却し、p−アミノ安息香酸1.55gを加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れて10℃以下に冷却し、5℃の水9.0gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かして得た溶液を加えた。15分間撹拌後、カーボンブラック(比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100g)4.8gを撹拌下で加え、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過し、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させて自己分散顔料を得た。適量の水を添加して顔料固形分の含有量を調整し、顔料4の水分散液を得た。顔料4の水分散液には、カーボンブラックの粒子表面にカウンターイオンがナトリウムである安息香酸基(−C6H4−COONa)が結合した自己分散顔料が含まれており、顔料の含有量は10.0%であった。
水5.5gに濃塩酸5.0gを溶かして得た溶液を5℃に冷却し、p−アミノ安息香酸1.55gを加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れて10℃以下に冷却し、5℃の水9.0gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かして得た溶液を加えた。15分間撹拌後、カーボンブラック(比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100g)4.8gを撹拌下で加え、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過し、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させて自己分散顔料を得た。適量の水を添加して顔料固形分の含有量を調整し、顔料4の水分散液を得た。顔料4の水分散液には、カーボンブラックの粒子表面にカウンターイオンがナトリウムである安息香酸基(−C6H4−COONa)が結合した自己分散顔料が含まれており、顔料の含有量は10.0%であった。
(顔料5の水分散液)
カーボンブラック40.0g、((4−アミノベンゾイルアミノ)−メタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸の一ナトリウム塩7.0mmol、硝酸20.0mmol、及び水200.0mLを混合した。カーボンブラックとしては、比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100gのものを用いた。そして、シルヴァーソン混合機を使用して、室温条件下、6,000rpmで混合した。30分混合して得た混合物に、少量の水に溶解させた亜硝酸ナトリウム20.0mmolをゆっくり添加した。亜硝酸ナトリウムの添加によって混合物の温度は60℃に達した。この状態で1時間反応させた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して混合物のpHを10に調整した。30分後、水20mLを加え、スペクトラムメンブランを用いてダイアフィルトレーションした。適量の水を添加して顔料固形分の含有量を調整し、顔料5の水分散液を得た。顔料5の水分散液には、カーボンブラックの粒子表面にカウンターイオンがナトリウムである((4−ベンゾイルアミノ)−メタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸基(−C6H4−CONH−CH(PO3Na2)2)が結合した自己分散顔料が含まれていた。顔料5の水分散液の顔料の含有量は、10.0%であった
カーボンブラック40.0g、((4−アミノベンゾイルアミノ)−メタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸の一ナトリウム塩7.0mmol、硝酸20.0mmol、及び水200.0mLを混合した。カーボンブラックとしては、比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100gのものを用いた。そして、シルヴァーソン混合機を使用して、室温条件下、6,000rpmで混合した。30分混合して得た混合物に、少量の水に溶解させた亜硝酸ナトリウム20.0mmolをゆっくり添加した。亜硝酸ナトリウムの添加によって混合物の温度は60℃に達した。この状態で1時間反応させた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して混合物のpHを10に調整した。30分後、水20mLを加え、スペクトラムメンブランを用いてダイアフィルトレーションした。適量の水を添加して顔料固形分の含有量を調整し、顔料5の水分散液を得た。顔料5の水分散液には、カーボンブラックの粒子表面にカウンターイオンがナトリウムである((4−ベンゾイルアミノ)−メタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸基(−C6H4−CONH−CH(PO3Na2)2)が結合した自己分散顔料が含まれていた。顔料5の水分散液の顔料の含有量は、10.0%であった
(顔料6の水分散液)
カーボンブラック(比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100g)15g、及びスルファニル酸4.0gが入った容器を70℃のウォーターバスに入れた。水74.32gに亜硝酸ナトリウム1.68gを溶かして得られた亜硝酸トリウム水溶液を撹拌下で加えてスラリーを得た。さらに塩酸を加えてスラリーのpHを2に調整し、70℃で1時間撹拌した。ろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過し、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させて自己分散顔料を得た。適量の水を添加して顔料固形分の含有量を調整し、顔料6の水分散液を得た。顔料6の水分散液には、カーボンブラックの粒子表面にカウンターイオンがナトリウムであるベンゼンスルホン酸基(−C6H4−SO3Na)が結合した自己分散顔料が含まれており、顔料の含有量は10.0%であった。
カーボンブラック(比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100g)15g、及びスルファニル酸4.0gが入った容器を70℃のウォーターバスに入れた。水74.32gに亜硝酸ナトリウム1.68gを溶かして得られた亜硝酸トリウム水溶液を撹拌下で加えてスラリーを得た。さらに塩酸を加えてスラリーのpHを2に調整し、70℃で1時間撹拌した。ろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過し、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させて自己分散顔料を得た。適量の水を添加して顔料固形分の含有量を調整し、顔料6の水分散液を得た。顔料6の水分散液には、カーボンブラックの粒子表面にカウンターイオンがナトリウムであるベンゼンスルホン酸基(−C6H4−SO3Na)が結合した自己分散顔料が含まれており、顔料の含有量は10.0%であった。
(官能基の密度)
自己分散顔料を含有する顔料1〜8の水分散液について、水分散液中の自己分散顔料の官能基の密度をコロイド滴定により測定した。具体的には、顔料の水分散液について、流動電位滴定ユニット(PCD−500)を搭載した電位差自動滴定装置(商品名「AT−510」、京都電子工業製)を用い、電位差滴定によりイオン性基の量を測定した。そして、1つの官能基に含まれるイオン性基の数で割ることで、官能基の密度を算出した。滴定試薬としては、メチルグリコールキトサンを用いた。結果を表2に示す。
自己分散顔料を含有する顔料1〜8の水分散液について、水分散液中の自己分散顔料の官能基の密度をコロイド滴定により測定した。具体的には、顔料の水分散液について、流動電位滴定ユニット(PCD−500)を搭載した電位差自動滴定装置(商品名「AT−510」、京都電子工業製)を用い、電位差滴定によりイオン性基の量を測定した。そして、1つの官能基に含まれるイオン性基の数で割ることで、官能基の密度を算出した。滴定試薬としては、メチルグリコールキトサンを用いた。結果を表2に示す。
<界面活性剤の準備>
インクの製造には、表1に示した化合物1〜19をナトリウム塩型としたものを用いた。また、比較例のインクには、以下の比較化合物1及び2のナトリウム塩、並びに比較化合物3を用いた。比較化合物1〜3及び「エマルミンL90S」は、いずれもアミノ酸型界面活性剤ではない。
インクの製造には、表1に示した化合物1〜19をナトリウム塩型としたものを用いた。また、比較例のインクには、以下の比較化合物1及び2のナトリウム塩、並びに比較化合物3を用いた。比較化合物1〜3及び「エマルミンL90S」は、いずれもアミノ酸型界面活性剤ではない。
・比較化合物1(ビシン)
HOC2H4−N((CH2)2OH)−CH2COOH
・比較化合物2(ラウリン酸アミドプロピルベタイン)
C11H23−CO−NH(CH2)3−N+(CH3)2−CH2COOH
・比較化合物3(ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド)
C11H23−CO−NH(CH2)3−N+(CH3)2−O-
・エマルミンL90S(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、三洋化成工業製)
HOC2H4−N((CH2)2OH)−CH2COOH
・比較化合物2(ラウリン酸アミドプロピルベタイン)
C11H23−CO−NH(CH2)3−N+(CH3)2−CH2COOH
・比較化合物3(ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド)
C11H23−CO−NH(CH2)3−N+(CH3)2−O-
・エマルミンL90S(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、三洋化成工業製)
<インクの製造>
表3に示す成分I〜IVを用いてインクを製造した。成分I〜IVの詳細を以下に示す。
・成分I:顔料の水分散液
・成分II:界面活性剤
・成分III:数平均分子量1,000のポリエチレングリコール
・成分IV:抗菌剤(商品名「プロキセルGXL(S)」、ロンザ製)
表3に示す成分I〜IVを用いてインクを製造した。成分I〜IVの詳細を以下に示す。
・成分I:顔料の水分散液
・成分II:界面活性剤
・成分III:数平均分子量1,000のポリエチレングリコール
・成分IV:抗菌剤(商品名「プロキセルGXL(S)」、ロンザ製)
具体的には、以下の手順X、Y、及びZのいずれかを実施した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、各インクを製造した。
・手順X:成分I及び成分IIを混合した後、それ以外の成分を添加して混合する。
・手順Y:成分I及び成分II以外の成分を混合した後、別途混合しておいた成分I及び成分IIを添加して混合する。
・手順Z:成分I、成分III、成分IV、及びイオン交換水を混合した後、成分IIを添加して混合する。
・手順X:成分I及び成分IIを混合した後、それ以外の成分を添加して混合する。
・手順Y:成分I及び成分II以外の成分を混合した後、別途混合しておいた成分I及び成分IIを添加して混合する。
・手順Z:成分I、成分III、成分IV、及びイオン交換水を混合した後、成分IIを添加して混合する。
<評価>
製造したインクにつき、以下に示す評価を行った。本発明においては、以下に示す各項目の評価基準で、「AA」、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表4に示す。
製造したインクにつき、以下に示す評価を行った。本発明においては、以下に示す各項目の評価基準で、「AA」、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表4に示す。
(抗菌性)
酵母であるカンジダアルビカンスをイオン交換水に懸濁させ、1mLあたりの菌数が108である菌液を調製した。一方、製造したインクを密閉容器に入れ、60℃で3ヶ月間保管した。保管後のインク30mLを滅菌した容器に入れるとともに、菌液0.3mLを添加した。十分に混和させた後、密閉して25℃で28日間保管した。その後、GPLPA培地を用いた混釈平板培養法(25℃4日間培養)により生菌数を計測し、以下の基準にしたがって抗菌性を評価した。
AA:試料の生菌数が10個/mL以下であった。
A:試料の生菌数が10個/mLを超えて100個/mL以下であった。
B:試料の生菌数が100個/mLを超えて1,000個/mL以下であった。
C:試料の生菌数が1,000個/mLを超えていた。
酵母であるカンジダアルビカンスをイオン交換水に懸濁させ、1mLあたりの菌数が108である菌液を調製した。一方、製造したインクを密閉容器に入れ、60℃で3ヶ月間保管した。保管後のインク30mLを滅菌した容器に入れるとともに、菌液0.3mLを添加した。十分に混和させた後、密閉して25℃で28日間保管した。その後、GPLPA培地を用いた混釈平板培養法(25℃4日間培養)により生菌数を計測し、以下の基準にしたがって抗菌性を評価した。
AA:試料の生菌数が10個/mL以下であった。
A:試料の生菌数が10個/mLを超えて100個/mL以下であった。
B:試料の生菌数が100個/mLを超えて1,000個/mL以下であった。
C:試料の生菌数が1,000個/mLを超えていた。
(保存安定性)
製造したインク中の顔料のD50を測定した後、インクを密閉容器に入れ、60℃で3ヶ月間保管した。その後、再びインク中の顔料のD50を測定した。顔料のD50は、動的光散乱法を利用した測定装置である粒度分析計(商品名「ナノトラックUPA150EX」、日機装製)を用いて測定した、体積基準の粒度分布の累積50%粒径である。粒径比=(保存後のD50)/(保存前のD50)の式より保存前後の顔料の粒径比を算出し、以下の基準にしたがって保存安定性を評価した。
A:粒径比が1.05未満であった。
B:粒径比が1.05以上1.10未満であった。
C:粒径比が1.10以上であった。
製造したインク中の顔料のD50を測定した後、インクを密閉容器に入れ、60℃で3ヶ月間保管した。その後、再びインク中の顔料のD50を測定した。顔料のD50は、動的光散乱法を利用した測定装置である粒度分析計(商品名「ナノトラックUPA150EX」、日機装製)を用いて測定した、体積基準の粒度分布の累積50%粒径である。粒径比=(保存後のD50)/(保存前のD50)の式より保存前後の顔料の粒径比を算出し、以下の基準にしたがって保存安定性を評価した。
A:粒径比が1.05未満であった。
B:粒径比が1.05以上1.10未満であった。
C:粒径比が1.10以上であった。
Claims (3)
- インクジェット用の水性インクの製造方法であって、
顔料、及び界面活性剤を混合して混合物を得る工程と、
得られた前記混合物、及びその他のインク成分を混合する工程と、を有し、
前記顔料が、顔料の粒子表面に、(i)アニオン性基、及び、(ii)他の原子団とアニオン性基とが結合した基、からなる群より選択される官能基が結合した自己分散顔料であるとともに、前記官能基の密度が、0.10μmol/m2以上0.48μmol/m2以下であり、
前記界面活性剤が、陽イオンとなりうる窒素原子が第2級アミン又は第3級アミンの構造を有するアミノ酸型界面活性剤であることを特徴とする水性インクの製造方法。 - 前記アミノ酸型界面活性剤の使用量(質量部)が、前記顔料の使用量(質量部)に対する質量比率で、0.003倍以上0.500倍以下である請求項1に記載の水性インクの製造方法。
- 前記アミノ酸型界面活性剤の前記窒素原子が、第2級アミンの構造を有する請求項1又は2に記載の水性インクの製造方法。
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