本実施の形態に係る回転電機について、図1から図24を用いて説明する。
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下に複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の特徴部分を適宜組合わせることは、当初から予定
されている。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る回転電機の概略構成を示す側断面図である。この図1に示すように、回転電機100は、回転中心線Oを中心に回転可能に支持された回転シャフト110と、この回転シャフト110に固設され、回転シャフト110と共に回転可能に設けられたロータ120と、このロータ120の周囲に設けられた環状のステータ140とを備えている。この回転電機100は、典型的には、ハイブリッド車両に搭載され、車輪を駆動する駆動源やエンジン等の動力によって電気を発電する発電機として機能する。さらには、電気自動車等にも搭載可能であり、車輪を駆動する駆動源としても利用される。
ロータ120は、複数の電磁鋼板等を積層して構成されたロータコア125と、ロータコア125に形成された磁石挿入孔126内に挿入された永久磁石123と、ロータコア125の軸方向の端面に設けられたエンドプレート122とを備えている。永久磁石123は、磁石挿入孔126内に充填された樹脂124によって固定されている。
ステータ140は、環状に形成されており、ロータ120の周囲を取り囲むように環状に形成されたステータコア141と、このステータコア141に装着されたU相コイル180U,V相コイル180V,W相コイル180Wとを備えている。このステータ140(ステータコア141)の軸方向端面177,178には、絶縁性のモールド樹脂172が形成されている。このモールド樹脂172は、たとえばBMC(Bulk Molding Compound)、エポキシ樹脂といった熱硬化性樹脂やPPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)などの熱可塑性樹脂等により構成されている。
図2は、回転中心線O方向から平面視したステータ140の平面図である。なお、この図2においては、モールド樹脂172が省略されている。
この図2に示すように、ステータコア141は、回転中心線Oを中心に環状に複数配列された分割ステータコア175を備えており、各分割ステータコア175には、それぞれ、U相コイル180U、V相コイル180V,W相コイル180Wのいずれかのコイルが装着されている。そして、ステータ140の周方向に沿って、U相コイル180U、V相コイル180V,W相コイル180Wが順次配列しており、各U相コイル180U同士、V相コイル180V同士、W相コイル180W同士は、それぞれ、間隔を隔て配置されている。
ここで、隣り合うU相コイル180U同士は、渡線154Uによって接続されており、V相コイル180V同士は、渡線154Vによって接続され、さらに、W相コイル180W同士は、渡線154Wによって接続されている。
そして、渡線154Uは、1つのU相コイル180U(180U1)の径方向内方側の端部から隣り合う他のU相コイル180U(180U2)に向かうにしたがって、ステータ140の径方向外方側に向けて変位し、他のU相コイル180Uの径方向外方側に接続されている。
また、同様に、渡線154Vも、1つのV相コイル180V(180V1)から隣り合うV相コイル180V(180V2)に向かうにしたがって、ステータ140の径方向外方側に向けて変位し、さらに、154Wも、1つのW相コイル180W(180W1)から他のW相コイル180W(180W2)に向かうに従って、径方向外方側に向けて変位する。
そして、たとえば、渡線154Uのうち、V相コイル180V1上に位置する部分は、渡線154Vよりも径方向外方側に位置する。さらに、W相コイル180W1が位置する部分では、渡線154Uの径方向内方側に、渡線154V,154Wが順次位置することになる。
ここで、ステータ140の径方向内方側に位置するW相コイル180W6の端部と、U相コイル180U6の端部と、V相コイル180V6の端部とをそれぞれ接続することで、中性点を構成する。さらに、ステータ140の径方向外方側に位置するU相コイル180U1の端部と、W相コイル180W1の端部と、V相コイル180V1の端部には、それぞれ、外部配線が接続される。なお、ステータ140の径方向内方側に位置するW相コイル180W6の端部と、U相コイル180U6の端部と、V相コイル180V6の端部とにそれぞれ外部配線を接続し、他方、ステータ140の径方向外方側に位置するU相コイル180U1の端部と、W相コイル180W1の端部と、V相コイル180V1の端部とを互いに接続して中性点を構成してもよい。
図3は、コイル180と、インシュレータ160とが装着された分割ステータコア175の斜視図である。この図3に示すように、各分割ステータコア175は、ステータ140の周方向延びるヨーク部176と、このヨーク部176から突出するステータティース171とを備えている。
そして、このステータティース171には、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂やLCP(液晶ポリマー)樹脂などから形成された絶縁性のインシュレータ160が装着されている。
このインシュレータ160は、ステータティース171を受入れ可能な筒状のティース受入部161と、このティース受入部161の端部に形成され、ヨーク部176の内周面に沿って延び、ヨーク部176の内周面に支持される張出部162とを備えている。ティース受入部161の周面のうち、回転中心線O方向に位置する軸方向端面には、回転中心線O方向に向けて突出する突出部163,164が形成されている。
このように形成されたインシュレータ160には、コイル180が装着されている。この図3中において、端部152に示されるように、コイル180は、延在方向に対して垂直な断面の形状が、方形形状とされたコイル線280を巻回することで構成されている。コイル180は、コイル線280を環状に巻回しつつ、積層することで形成された巻回部151を備えている。そして、コイル線の一方の端部152は、コイル線の積層方向に位置する巻回部151の径方向端面145に設けられており、回転中心線O方向に配列するコイル180の軸方向端面131より回転中心線O方向に突出するように延びている。なお、この端部152は、径方向端面145において、軸方向端面132側から軸方向端面131に向けて延びる引出部150の上端部に位置しており、軸方向端面131より上方に位置している。
そして、コイル線280の積層方向に配列する径方向端面のうち、端部152が位置する径方向端面145と反対側に位置する径方向端面135には、回転中心線O方向に向けて延び、軸方向端面131よりも上方に延びる引出部153が形成されている。そして、この引出部153の上端部には、渡線154が連設されている。さらに、この引出部153の先端部には、他のコイル180の端部152に接続される端部155が形成されている。
このように、各渡線154は、コイル180を形成するコイル線280の一部が延出することで構成されている。ここで、上記のようにコイル180を構成するコイル線は、具体的には、エッジワイズコイル(edgewise・coil)等の平角線が採用されており、断面形状が円形状の従来の一般的なコイル線よりも剛性が高いコイル線が採用されている。そして、コイル線280のうち、渡線154が位置する部分においては、回転中心線O方向の高さの方が、ステータ140の径方向の幅よりも長くなっている。
ここで、図4は、渡線154の端部155とコイル180の端部152との接合部900を示す斜視図である。
この図4に示すように、渡線154の終端部には、コイル180の接続部520と接合する接続部510が位置しており、この接続部520に対して、渡線154の先端部と反対側に隣り合う部分には、配線側応力緩和部500が形成されている。
この図4に示す例においては、配線側応力緩和部500は、渡線154の表面のうち、ステータ140の軸方向に配列する上面195および下面196のうち、一方の上面195に形成された凹部501によって規定されている。
この凹部501は、回転中心線O方向(ステータ140の中心軸方向)に延びており、渡線154の下面196から上面195側に向けて延びている。
これにより、凹部501に対して、渡線154の高さ方向に隣り合う部分に位置する底部541は、渡線154のうち、底部541に対して渡線154の延在方向に隣り合う部分の厚みよりも薄く形成されている。
このため、底部541が位置する部分の剛性は、渡線154のうち、底部541と隣り合う部分の剛性よりも小さくなっている。このため、たとえば、渡線154のうち、底部541が位置する部分は、他の部分よりも小さい力で変形可能となっている。
すなわち、この図4に示す例においては、渡線154のうち、コイル180の接続部520と接合する接続部510に対して、引出部153側から端部155側に向かう渡線154の延在方向後方側に隣り合う部分に、配線側応力緩和部500が形成されている。
そして、渡線154の接続部510とコイル線280の接続部520と接合された接合部900において渡線154の温度が上昇したときにおける接合部900について、図5を用いて説明する。
図5は、回転電機100の温度が上昇し、渡線154の温度が上昇したときの接合部900の平面図である。
この図5において、渡線154の温度が上昇し始めると、渡線154は熱膨張して渡線154の延在方向に延びる。この際、接合部900において、接続部510と接続部520は、溶接部530によって接合されており、渡線154内の熱応力が上昇する。
この際、渡線154は、ステータ140の径方向外方側に向けて張り出すように変形する。このため、接続部510およびその近傍においては、接続部510を接続部520から引き離すような力が生じる。
そして、所定の温度以上となると、渡線154のうち、配線側応力緩和部500が位置する部分がステータ140の径方向外方側に張り出すように屈曲し始める。
具体的には、底部541は、常温時から高温となると、ステータ140の径方向外方側に向けて変位すると共に、底部541は、ステータ140の径方向外方側に向けて膨出するように湾曲する。
このように底部541が変形することで、渡線154が常温から高温になると、底部541よりも引出部153側に位置する部分の長さが長くなることを許容することができる。このため、当該部分における内部応力を低減することができ、接続部510を接続部520から引き剥がす方向に接続部510に加えられる力は、低減され、接続部510と接続部520との接合状態を良好に維持することができる。
このように、渡線154の熱応力が、渡線154のうち、底部541およびその近傍を変形させることに消費されるため、接続部510と接続部520とを接合する溶接部530に亀裂が生じたり、溶接部530が破損することを抑制することができる。
このように、配線側応力緩和部500は、接続部510に対して引出部153側に位置しているため、渡線154のうち、配線側応力緩和部500より引出部153側に位置する部分における熱応力が配線側応力緩和部500によって緩和させることができ、接続部510と接続部520との接合を維持することができる。
さらに、この回転電機100が搭載される車両が極寒地等に置かれた場合には、回転電機100および渡線154の温度は、低温となる。
このように、渡線154の温度が低下すると、渡線154の長さは短くなるように変形しようとする一方で、接続部510が接続部520に接合されているため、渡線154内には、引っ張り力が生じる。そして、図5の破線に示すように、渡線154の温度が所定温度にまで下がると、底部541がステータ140の径方向内方側に変位すると共に、径方向内方側に張り出すように湾曲する。このように、底部541が変形することで、常温から低温になると、底部541より引出部153側に位置する部分は、ステータ140の径方向内方側に変位する。このため、常温から低温となると、渡線154のうち、配線側応力緩和部500より引出部153側に位置する部分の長さは短くなり、渡線154内の内部応力が低減され、接続部510と接続部520との接合部900に加えられる力も低減される。
すなわち、渡線154の温度が低温となり、渡線154内の内部応力が大きくなると、底部541が変形して、この内部応力の低減を図ることができ、渡線154の温度が高くなったり、低くなったとしても、接続部510と520の接合状態を良好に維持することができる。
図6は、接合部900の第1変形例を示す接合部900の斜視図である。この図6に示すように、配線側応力緩和部500は、渡線154のうち、接続部510に対して、154の先端部(先端面)と反対側に隣り合う部分に形成され、渡線154の延在方向に間隔を隔てて形成された複数の凹部502,503によって規定してもよい。
たとえば、この図6に示す例においては、渡線154の上面195に形成され、回転中心線O方向に向けて延びる凹部502と、この凹部502に対して接続部510と反対側に位置し、下面196に形成された凹部503とによって、配線側応力緩和部500が規定されている。
なお、この凹部502および凹部503は、ステータ140の径方向に渡線154を貫通している。そして、凹部502の底部542および凹部503の底部543は、渡線154のうち、底部542および底部543に対して隣り合う部分の厚み(上面195から下面196に向かう方向の厚み)よりも薄くなっている。
このように、複数の凹部によって配線側応力緩和部500を規定することで、渡線154の温度が高くなったり、低くなったとしても、渡線154のうち、配線側応力緩和部500が位置する部分が確実に変形し、接続部510と接続部520との接合状態を確実に確保することができる。
ここで、凹部502は、上面195側から下面196側に向けてのびており、凹部503は、上面195側から下面196側に向けて延びており、凹部502の延在方向と凹部503の延在方向とが反対方向となっている。
図7は、図6に示す接合部900において、渡線154の温度が上昇したときの接合部900の状態を示す平面図である。
この図7に示されるように、渡線154の温度が所定温度以上となると、図5に示す接合部900の例と同様に、渡線154のうち、底部542およびその近傍に位置する部分がステータ140の径方向外方側に向けて膨出する。
その一方で、渡線154のうち、底部543およびその近傍に位置する部分は、ステータ140の径方向内方側に向けて湾曲する。
このように配線側応力緩和部500が位置する部分で変形することで、配線側応力緩和部500に対して接続部510と反対側に位置する部分が、初期状態の位置から径方向に大きくずれることを抑制することができる。このため、この渡線154のうち、配線側応力緩和部500より引出部153側に位置する部分が変形したり、屈曲したりすることを抑制することができる。
ここで、渡線154の温度が上昇すると、渡線154のうち、凹部502の両隣に位置する部分は、凹部502から離れるにつれて、上方に傾斜するように変形し易い一方で、凹部503の両隣に位置する部分は、凹部503から離れるにつれて、下方に向けて傾斜するように変形し易くなっている。
このため、図6に示す接合部900においては、回転中心線O方向においても、渡線154のうち、接合部900に対して接続部510と反対側に位置する部分が、回転中心線O方向に大きくずれることを抑制することができる。
図8は、接合部900の第2変形例を示す配線側応力緩和部500の斜視図である。この図8に示す例においては、配線側応力緩和部500は、渡線154の一部を、渡線154の延在方向に対して交差する方向に張り出すように屈曲させた屈曲部507によって構成されている。
この屈曲部507は、接続部510に連設され、接続部510の端部から径方向外方に向けて屈曲する屈曲片部504と、この屈曲片部504の端部から径方向内方に向けて屈曲する屈曲片部505とを備えている。なお、渡線154のうち、屈曲片部505より、引出部153側に位置する部分は、上記図4と同様に、引出部153に向けて延びている。
図9は、図8に示す接合部900おいて、渡線154の温度が上昇したときの斜視図である。この図9に示すように、渡線154の温度が上昇すると、屈曲部507は、屈曲片部504と屈曲片部505との連設部分の屈曲角度が小さくなるように変形し、屈曲片部504と屈曲片部505とは互いに近接するように変形する。なお、このように、配線側応力緩和部500が変形することで、渡線154のうち、配線側応力緩和部500に対して、接続部510と反対側に位置する部分の長さが長くなることを許容することができ、渡線154内の熱応力を低減することができる。
これに伴い、接続部510が損傷等することを抑制することができ、接続部510と接続部520との接合状態を良好に維持することができる。
図10は、配線側応力緩和部500の第3変形例を示す斜視図である。この図10に示す例においては、配線側応力緩和部500は、渡線154の上面195から上面195に貫通する凹部506によって規定されており、この凹部506は、ステータ140の径方向内方に向けて開口している。
そして、この凹部506に対して、ステータ140の径方向外方側に位置する部分には、凹部506に対して渡線154の延在方向に隣り合う部分よりも、ステータ140の径方向の厚みが薄肉に形成された薄肉底部546が位置している。
このため、この薄肉底部546の剛性は、薄肉底部546に対して隣り合う部分の剛性よりも低く、薄肉底部546は容易に変形可能とされている。
図11は、図10に示された接合部900において、渡線154の温度が上昇したときの斜視図である。この図11において、渡線154の温度が上昇すると、渡線154は延在方向に延びようとする熱応力が生じる。ここで、接続部510は、接続部520に接合されているため、温度が所定温度以上となると、剛性の低い薄肉底部546が変形する。この際、薄肉底部546は、渡線154の延在方向の長さが短くなるように変形する。たとえば、この図11に示す例においては、薄肉底部546が、ステータ140の径方向外方側に膨出するように湾曲する。
このように変形することで、渡線154内の熱応力が低減され、接続部510と接続部520との接合状態を良好に維持することができる。
(実施の形態2)
図12から図19を用いて、本実施の形態2に係る回転電機について説明する。なお、図12から図19に示す構成において、上記図1から図11に示された構成と同一または相当する構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図12は、本発明の実施の形態2に係る回転電機100の接合部900の斜視図である。この図12に示されるように、コイル180の端部152には、コイル側応力緩和部550が形成されている。
この図12に示す例においては、コイル180を構成するコイル線280の端部152は、回転中心線O方向に向けてステータ140の軸方向端面177から突出している。そして、引出部150の上端部に、接続部510と接合する接続部520が位置している。
そして、このコイル180のうち接続部520に対して、接続部520に対して、端部152(引出部150)の突出方向と反対側に隣り合う部分にコイル側応力緩和部550が形成されている。つまり、コイル側応力緩和部550は、接続部520に対して、152の先端部(先端面)と反対側に位置している。
ここで、コイル側応力緩和部550は、端部152の表面のうち、ステータ140の周方向に配列する側面295および側面296のうち、一方の側面295に形成された凹部551によって規定されている。
この凹部551は、側面295側から側面296に向けて延びており、この凹部551に対して隣り合う部分には、底部561が位置している。この底部561は、この底部561に対して、端部152の突出方向に隣り合う部分の厚み(側面295から側面296に向かう方向の厚み)よりも、薄く形成されている。
そして、図13は、図12に示すように、端部152にコイル側応力緩和部550が形成された接合部900において、端部152の温度が上昇したときの正面図である。この図13において、端部152側のコイル線280の温度が上昇すると、接合部900にて、接続部520が固定されているため、コイル線280の熱応力が大きくなる。そして、所定の温度以上となると、底部561は、常温時における位置よりも、ステータ140の周方向であって、凹部551の開口部から底部561に向かう方向に変位すると共に、当該方向に向けて膨出するように変形する。なお、凹部551の開口部は、狭くなるように変形すると共に、凹部551の底壁部の長さは、長くなるように変形することで、底部561の変形が許容されている。
上記のように底部561が変形することで、底部561に対して、巻回部151側に位置する引出部150の長さは、長くなり、当該部分の応力を低減することができる。これにより、接続部520を接続部510から引き離そうとする接続部510に加えられる応力を低減することができ、接続部510と接続部520と接合状態を良好に維持することができる。
このように、引出部150に生じる熱応力は、底部561を変形させることに費やされて、低減されるため、接続部520と接続部510との接合状態を解しようとする力を低減することができ、接続部510と接続部520との接合状態を良好に維持させることができる。
ここで、コイル線280の温度が低下し、引出部150内に引っ張り力が生じた場合には、凹部551の開口部が開くように変形すると共に、底部561が側面295に向けて膨出するように湾曲する。これにより、引出部150のうち、凹部551の両隣に位置する部分の距離が広がる。
これにより、引出部150のうち、凹部551よりも巻回部151側に位置する部分の長さが低減され、引出部150内の内部応力を低減することができ、接続部510と接続部520との間との接合状態を良好に維持することができる。
図14は、本発明の実施の形態2の第1変形例を示す、接合部900の斜視図である。この図14に示すように、コイル側応力緩和部550は、複数の凹部によって規定されている。この図14に示す例においては、側面295に形成された凹部553と、凹部553に対して、端部152の突出方向と反対側に隣り合い、側面296に形成された凹部554とによって規定されている。
凹部553は、側面295から側面296側に向けて延びており、凹部554は、側面296から側面295側に向けて延びており、凹部553と凹部554とは、互いに反対方向に向けて延びている。そして、凹部553に対して隣り合う位置には、底部563が形成されており、凹部554に対して隣り合う位置には、底部564が形成されている。
ここで、底部563および底部564の厚みは、引出部150のうち、コイル側応力緩和部550と隣り合う部分の厚みよりも薄くなっている。このため、この図14に示す例のいても、コイル側応力緩和部550は、引出部150の他の部分よりも剛性が低くなるように形成されている。
図15は、図14に示された接合部900において、端部152の温度が上昇したときの正面図である。この図15に示すように、コイル線280のうち、端部152およびその近傍の温度が上昇すると、接続部520が接続部510に接合されているため、引出部150内の熱応力が上昇する。そして、所定の温度以上となると、底部563は、側面296から膨出するように張り出し、さらに、底部564も側面295から張り出すように張り出すように変形する。
ここで、凹部553の開口部および凹部554の開口部は、いずれも、常温時よりも小さくなるように変形し、各底部563および底部564の変形を許容している。上記のように、底部563および底部564が変形することで、引出部150内の熱応力を低減させることができ、接続部520と接続部510との接合状態を良好に維持させることができる。
ここで、コイル線280の温度が低温となると、凹部553および凹部554の各開口部は開くように変形する。これにより、接続部520と、コイル側応力緩和部550に対して、接続部520と反対側に位置する部分との間の距離が大きくなり、引出部150内の内部応力を低減することができる。これにより、接続部510が接続部520から剥離等することを抑制することができる。
図16は、本発明の実施の形態2の第3変形例を示す、接合部900の斜視図である。この図16に示す例においては、コイル側応力緩和部550は、引出部150のうち、ステータ140の径方向内方側に位置する主表面297に形成され、ステータ140の周方向に配列する側面295から側面296に貫通する凹部555によって規定されている。そして、この凹部555に対して、ステータ140の径方向外方側には、底部565が形成されている。この底部565の厚みは、底部565に対して、引出部150の延在方向に隣り合う部分よりも薄く形成されている。
図17は、図16に示す接合部900において、引出部150の温度が上昇したときの斜視図である。この図17に示すように、引出部150の温度が上昇すると、底部565は、主表面298から張り出すように湾曲する。これに伴い、引出部150のうち、凹部555を挟んで隣り合う部分が互いに近接する。これにより、引出部150内の熱応力が低減され、接続部520と接続部510との接合状態を良好に維持することができる。
ここで、コイル線280の温度が低温となると、接続部520が接続部510に接合されているため、引出部150内には引出部150を縮めるような内部応力が生じる。そして、所定の温度以下となると、凹部555の開口部が開くように変形する。これにより、接続部520と、凹部555に対して、接続部520と反対側に位置する部分との間の距離が大きくなるように変形する。
これにより、引出部150のち、凹部555よりも巻回部151側に位置する部分の長さが短くなり、引出部150内の内部応力を低減することができ、接続部520と接続部510との接合状態を良好に維持することができる。
図18は、本発明の実施の形態2の第4変形例を示す斜視図である。この図18に示すように、引出部150のうち、接続部520に対して、端部152の突出方向と反対側に隣り合う部分に、コイル側応力緩和部550が設けられており、このコイル側応力緩和部550は、屈曲部508によって構成されている。
屈曲部508は、主表面297からステータ140の径方向内方に向けて張り出すように屈曲しており、接続部520に連設された屈曲片部556と、この屈曲片部556に連設され、引出部150のうち、屈曲部508に対して下方に位置する部分に連設された屈曲片部557とを備えている。この屈曲部508の剛性は、この屈曲部508と隣り合う部分の剛性よりも低く、引出部150の延在方向に屈曲しやすくなっている。
図19は、図18に示された接合部900において、引出部150の温度が上昇したときの斜視図である。
この図19において、引出部150の温度が上昇すると、接続部520が接続部510に接合されていることから、引出部150内において、熱応力が上昇する。そして、所定の温度以上となると、屈曲片部556と屈曲片部557とが互いに近接するように変形し、屈曲部508がさらに外方に張り出すように変形する。
このように、屈曲部508が変形することで、引出部150のうち、屈曲部508に対して、隣り合う部分に位置する部分が互いに近接する。このように、引出部150および屈曲部508が変形することで、引出部150内の熱応力を低減することができる。これにより、接続部520と接続部510との接合状態を良好に維持することができる。
ここで、コイル線280の温度が低温となると、屈曲部508の屈曲片部556と屈曲片部557とが互いに離れるように、屈曲部508の開角が大きくなるように変形する。これにより、接続部520と、引出部150のうち、屈曲部508に対して接続部520と反対側に位置する部分とが互いに離れ、引出部150内の内部応力を低減することができ、接続部510と接続部520との接合状態を良好に維持することができる。
(実施の形態3)
図20を用いて、本発明の実施の形態3に係る回転電機について説明する。なお、図20において、上記図1から図19に示された構成と同一または相当する構成については、同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
図20は、本実施の形態3に係る回転電機の接合部900を示す斜視図である。なお、この図20においては、接合部900をステータ140の径方向外方側から見た斜視図である。この図20に示されるように、接続部510は、接続部520に対して、ステータ140の径方向内方側に配置されている。そして、接続部510のうち、ステータ140の径方向外方側に位置する部分と、接続部520のうち、ステータ140の径方向内方側に位置する部分とが接合されている。そして、接続部520と接続部510とが溶接部530によって接合されている。
ここで、接続部510と接続部520とを接合する際には、接続部520に対してステータ140の径方向内方側に接続部510を配置し、その後、レーザ溶接等で接続部510と接続部520とを接合する。この際、溶接熱によって渡線154の温度が上昇すると、渡線154は、ステータ140の径方向外方に向けて変位しようとする。この際、接続部510のステータ140の径方向外方側には、接続部520が配置されているため、接続部510は、接続部520の表面に圧着され、接続部510と接続部520との接合状態が高まり、接続部510と接続部520とを良好に接合することができる。
(実施の形態4)
図21は、本発明の実施の形態4に係る回転電機の接合部900の斜視図である。この図21に示されるように、渡線154の先端部に形成された接続部510は、引出部150の上端部の接続部520に対して、ステータ140の径方向内方側から接触している。すなわち、接続部510の表面のうち、ステータ140の径方向外方側の主表面と、接続部520の表面のうち、ステータ140の径方向内方側の主表面297とが接合されている。ここで、渡線154は、ステータ140の周方向に延びる周方向延在部610と、この周方向延在部610の先端部から回転中心線O方向に屈曲し、接続部520に沿って延びる接続部510とを備えている。
このように構成された接合部900において、コイル線280の温度が上昇し、渡線154および引出部150の温度が上昇すると、渡線154のうち、周方向延在部610が位置する部分は、接続部510が接続部520に接合されているため、ステータ140の径方向外方側に向けて変位しようとする。この際、周方向延在部610の先端部に連設された接続部510は、接続部520によって、支持される。
このため、周方向延在部610が径方向外方に向けて変形しようとすることで、接続部510と接続部520との接合が解除されることを抑制することができる。
ここで、接続部510は、引出部150の延在方向に沿って延びているため、接続部510および接続部520は、いずれも、温度が上昇することで、回転中心線O方向に延び、いずれも、同一方向に向けて延びようとする。このため、渡線154および引出部150の温度が高くなったとしても、接続部520と接続部510との接合部で、接続部520と接続部510とが剥離するような力が加わり難くなっており、接続部510と接続部520との接合状態を良好に維持することができる。
ここで、接続部510と周方向延在部610との連結部611は、接続部520の側面296と主表面297との稜線部に位置しており、接続部510が接続部520によって支持されている。このため、周方向延在部610が径方向外方に向けて変位しようとすると、渡線154は、連結部611にて容易に屈曲することができる。そして、接続部510と接続部520との接合状態を引き離そうとする力が、接続部510に働き難く、接続部510と接続部520との接合状態を良好に維持することができる。
さらに、渡線154および引出部150と温度が低温となった場合においても、接続部520は、回転中心線O方向に沿って縮むように変形し、さらに、接続部510も、回転中心線O方向に沿って縮むように変形する。このように、接続部510と接続部520との変位方向が一致しているので、渡線154および引出部150の温度が低温となった場合においても、接続部510と接続部520との接合状態を良好に維持することができる。なお、この図21に示す例においても、接続部510は、接続部520に対して、ステータ140の径方向内方側に配置されているので、上記実施の形態3に示す回転電機と同様に、接続部510と接続部520とを溶接する際に、接続部510と接続部520とを良好に接合することができる。
図22は、本発明に係る実施の形態4に係る回転電機の接合部の変形例を示す斜視図である。この図22に示すように、渡線154は、周方向に延びる周方向延在部610と、この周方向延在部610の先端部に連設され、回転中心線O方向に立ち上がる軸方向屈曲部620と、この軸方向屈曲部620の上端部に連設され、ステータ140の周方向に屈曲する周方向屈曲部621とを備えており、この周方向屈曲部621の端部に接続部520が位置している。
引出部150は、回転中心線O方向に延びる軸方向延在部575と、この軸方向延在部575の上端部に設けられ、ステータ140の周方向に屈曲する接続部510とを備えている。そして、接続部510のステータ140の径方向外方側の側面と、接続部520の径方向内方側の側面とが接合されている。
このように構成された接合部900において、コイル線280の温度が上昇すると、150の軸方向延在部575は、回転中心線O方向に向けて変位しようとする一方で、510は、ステータ140の周方向に沿って延びようとする。
その一方で、渡線154においても、周方向延在部610は、ステータ140の径方向外方に向けて変位しようとする一方で、軸方向屈曲部620は、軸方向延在部575と同様に回転中心線O方向に沿って延びる。さらに、接続部520は、接続部510と同様に、ステータ140の周方向に沿って延びようとする。
この結果、接続部520は、接続部510と同様に変位するため、コイル線280の温度が高温となっても、良好に接続部510と接続部520との接合状態を維持することができる。
また、同様に、コイル線280の温度が低温となっても、接続部510と接続部520とは、同様に変位するため、良好に接続部510と接続部520との接合状態を維持することができる。さらに、軸方向屈曲部620と周方向延在部610との接続部が屈曲することで、周方向延在部610が径方向外方側に変位することを許容することができ、渡線154内の熱応力を低減することができる。
(実施の形態5)
図23および図24を用いて、本発明の実施の形態5に係る回転電機について説明する。なお、上記図1から図22に示される構成と同一または相当する構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図23は、本発明の実施の形態5に係る回転電機の接合部を示す斜視図であり、この図23に示すように、接続部520と溶接部530とを挟持して固定する固定部材800を設けてもよい。この固定部材800によって、渡線154や引出部150の温度が変動しても、接続部510と接続部520との接合状態を良好に維持することができる。図24は、固定部材800の装着工程を示す平面図であり、この、図24に示すように、この固定部材800は、接続部520と接続部510とを接合した後、装着する。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。さらに、上記数値などは、例示であり、上記数値および範囲にかぎられない。