JP2013112713A - 水性プライマー用共重合体及び水性プライマー組成物 - Google Patents

水性プライマー用共重合体及び水性プライマー組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】
基材への浸透性が良く、密着性及び耐水性をバランスよく兼ね備えた水性プライマー用共重合体水性プライマー用組成物を提供する。
【解決手段】
酸価35〜100mgKOH/gの水溶性アクリル系樹脂(A)の存在下、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキル(メタ)アクリルエステル類を50モル%以上100モル%以下含有する疎水性モノマー(B)を乳化重合して得られるコア・シェル型アクリル系樹脂エマルションであり、(A)/(B)の質量比が65〜90/35〜10であることを特徴とする水性プライマー用重合体。
【選択図】 なし

Description

本発明は各種基材に適用可能な水性プライマー用共重合体及び水性プライマー組成物に関する。
例えば瓦、コンクリート、無機質建材及び旧(劣化)塗膜壁等の多孔質基材には、主として、基材表層の補強や目止めなどの目的として、基材の表面に樹脂塗膜を形成する処理が施される。その際に用いられるプライマーとしては、従来から溶剤系のプライマーが一般に汎用されていたが、近年、有機溶剤の使用規制が厳しくなり塗料の水性化が求められる中、水性のプライマーが要望されている。水性プライマーとしては、コア・シェル型ビニル系樹脂エマルションを含有する水性シーラーであり、該コア・シェル型ビニル系樹脂がシェル部を構成するモノマー成分として、分子末端に炭素数10以上のアルキル基を有する長鎖アクリル系モノマーを必須成分として含有する水性シーラー(特許文献1参照)、水媒体中に分散している疎水性樹脂粒子(A)を必須の樹脂成分とするとともに、該疎水性樹脂粒子(A)を含む全樹脂成分の20〜60重量%が高分子乳化剤(B)であって、該高分子乳化剤(B)は、(メタ)アクリル酸及びエステル類を必須として、スチレン含有量が50重量%以下であるモノマー成分を重合して得られたカルボキシル基含有モノマーであり、その全カルボキシル基のうち1モル%以上が多価金属で中和されているものであり、含まれる粒子の平均粒子径が50nm以下である、エマルション(特許文献2参照)が提案されている。
特開2003−119456号公報 特開2006−241427号公報
しかしながら、特許文献1、2は、ある程度の密着性を付与できるものの、特にケイ酸カルシウム板においては、十分な密着性が得られないことがあり、さらなる改善が望まれる。
ケイ酸カルシウム板は、脆弱な基材のため密着不良の原因は基材からの剥離が主に考えられる。そのため、基材への浸透性及び基材表面又は内部の補強性の改善が重要となる。溶剤系のプライマーは、溶剤で共重合体を十分溶かした可溶状態であり、溶剤と共重合体との親和性が強くなっている。そのため、溶剤系プライマーでは基材への浸透時に、溶剤の浸透が進むと同時に共重合体の浸透も進み、浸透性も良くなる。水性プライマーでは、主に水性分散剤が使用されている。この系では、水と共重合体との親和性は溶剤系に比べ強くないため、基材への浸透時に、水の浸透は進むが、同時に共重合体の浸透は進みにくく表面付近に留まってしまう傾向がある。結果として、溶剤系に比べ基材の補強性が改善されにくく、十分な密着性が得られない。水性プライマーの中には、水に溶解した水可溶型共重合体もある。この系では水との親和性は向上するため、基材への浸透性も向上する。さらに水溶性樹脂の親水基を増やすことで、親和性を向上させることができ、基材への浸透性も高くなる傾向にある。しかしながら、水可溶型共重合体では、基材への造膜性と補強性のバランスが取りにくく、造膜性を考慮した設計では、基材の補強性が不足し、密着性が低下する傾向にある。また、補強性を考慮すると造膜性が不足し、結果として、耐水性が低下する傾向にある。
そこで、基材への浸透性が良く、密着性及び耐水性をバランスよく兼ね備えた水性プライマー用共重合体が求められていた。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、水可溶型共重合体の浸透性を維持しながら、基材の補強性と基材への造膜性を上げることで、密着性及び耐水性をバランスよく兼ね備えた水性プライマー用共重合体及び水性プライマー組成物を得ることを目的とする。
即ち、本発明は、
(1)酸価35〜100mgKOH/gの水溶性アクリル系樹脂(A)の存在下、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキル(メタ)アクリルエステル類を50モル%以上100モル%以下含有する疎水性モノマー(B)を乳化重合して得られるコア・シェル型アクリル系樹脂エマルションであり、(A)/(B)の質量比が65〜90/35〜10であることを特徴とする水性プライマー用重合体、
(2)水溶性アクリル系樹脂(A)が酸価50〜80mgKOH/gである上記(1)の水性プライマー用重合体、
(3)上記(1)又は(2)の水性プライマー用重合体及び水を70〜100質量%とすることを特徴とする水性プライマー用組成物、
(4)上記(3)記載の水性プライマー用組成物にシランカップリング剤(C)を含有することを特徴とする水性プライマー用組成物、
を提供するものである。
各種基材、特に脆弱したケイ酸カルシウム板との密着性の向上、下地の影響の抑制等をする目的で塗布されるプライマー用途に密着性及び耐水性をバランスよく兼ね備えた水性プライマー用共重合体及び水性プライマー組成物を提供することができる。
本発明の詳細は以下の通りである。
本発明の水性プライマー用共重合体は、酸価35〜100mgKOH/gの水溶性アクリル系樹脂(A)の存在下、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキル(メタ)アクリルエステル類を50モル%以上100モル%以下含有する疎水性モノマー(B)を乳化重合して得られるコア・シェル型アクリル系樹脂エマルションであり、(A)/(B)の質量比が65〜90/35〜10であることを特徴とする水性プライマー用重合体である。
本発明における水溶性アクリル系樹脂(A)は、酸価35〜100mgKOH/gとなるように酸基を有する単量体と(メタ)アクリル酸エステルをラジカル共重合して得ることができ、必要に応じてその他の単量体を用いることもできる。
本発明における酸基を有する単量体は、酸基を有する単量体であればよく、例えば、(メタ)アクリル酸、けい皮酸、及びクロトン酸等の不飽和モノカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びムコン酸等の不飽和ジカルボン酸、アコニット酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、及び4−ペンテン−1,2,4−トリカルボン酸等の不飽和トリカルボン酸、1−ペンテン−1,1,4,4−テトラカルボン酸、4−ペンテン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、及び3−ヘキセン−1,1,6,6−テトラカルボン酸等の不飽和テトラカルボン酸等、カルボキシル基を有する単量体が好ましく、不飽和モノカルボン酸がより好ましく、(メタ)アクリル酸が最も好ましい。
本発明における(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルを意味する。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとして、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等を挙げることができる。
上記した酸基を有する単量体及び(メタ)アクリル酸エステルは1種もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
酸基を有する単量体と(メタ)アクリル酸エステルの使用量は、水溶性アクリル系樹脂(A)が酸価35〜100mgKOH/gとなればよいが、通常、酸基を有する単量体5〜20質量%、(メタ)アクリル酸エステル80〜95質量%である。
水溶性アクリル系樹脂(A)を得るには、酸基を有する単量体と(メタ)アクリル酸エステルを仕込み、溶剤を用い、重合開始剤により重合反応を開始し、80〜160℃の重合温度で、1〜9時間の重合反応を継続する方法を採用することができる。水溶性アクリル系樹脂(A)の重合反応は、単量体の全部を予め反応容器に仕込んで行うだけでなく、単量体の一部又は全部を滴下し、又は重合開始剤と単量体とを混合した混合液を滴下することにより行うことができる。
重合開始剤は、公知の重合開始剤が使用可能で、重合条件時に重合温度に応じて適当な分解温度あるいは10時間半減期温度を有する重合開始剤が選択使用されることが好ましい。重合開始剤の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリルに代表されるアゾ系開始剤、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーイソブチレート、ターシャリーブチルパー−2−エチルヘキサノエート、ターシャリーブチルパーピバレート、イソノナノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキセン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパー−2−エチルヘキサノエート等の各種過酸化物系開始剤等を挙げることができ、これらの1種もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、前記重合開始剤の使用量は任意であるが、通常、単量体総量に対して0.5〜10質量%であり、1〜6質量%が好ましい。
溶剤量は、水溶性アクリル系樹脂(A)の粘度及び均一性等を勘案して調整され、好ましくは、水溶性アクリル系樹脂(A)100質量部に対して50〜500質量部、さらに好ましくは75〜200質量部である。
使用可能な溶剤としては、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の水溶性多価アルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の水溶性ケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンで代表されるいわゆるBTXと略称されるものを含む芳香族環を有する芳香族系溶剤等を挙げられることができ、芳香族系溶剤以外の有機溶剤、例えば、プロピレングリコール系溶剤が好ましい。
上記のようにして得られる本発明における水溶性アクリル系樹脂(A)の酸価は、35〜100mgKOH/g、好ましくは50〜80mgKOH/gである。酸価が35mgKOH/g未満であるときは、得られる水性プライマー用共重合体の分散性が悪くなり、100mgKOH/gを超えると得られる水性プライマー用共重合体の粒子径が大きくなり、水性分散体としての影響が強くなり、基材への浸透性が低下し、密着性及び耐水性が低下するおそれがある。
本発明における酸価とは、樹脂1gを中和するのに必要なKOHのミリグラム(mg)数であり、mgKOH/gにて示す量である。
水溶性アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは5,000〜100,000であり、さらに好ましくは10,000〜50,000である。重量平均分子量が5,000未満であるときは、得られる水性プライマー用共重合体の基材への補強性が低下し、密着性が低下するおそれがある。100,000を超えると水性プライマー用共重合体の粘度が高くなるためハンドリング性が低下したり、均一な塗工ができなくなったりするおそれがある。
水溶性アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度は、特に制限されないが、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。水溶性アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度が50℃未満であると、得られる水性プライマー用共重合体の基材への補強性が低下し、密着性が低下するおそれがある。
本発明における水溶性アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg(℃))は、水溶性アクリル樹脂を形成するために用いたモノマー成分から、下記式(1)および式(2)によって算出することができる。
1/Tg(°K)=(W1/T1)+(W2/T2)+・・・+(Wn/Tn) (1)
Tg(℃)=Tg(°K)−273 (2)
(式(1)中、W1,W2、・・・Wnは(共)重合に使用されたモノマーのそれぞれの重量%であり、T1、T2、・・・TnはそれぞれのモノマーのホモポリマーのTg(°K)である。なお、T1、T2、・・・Tnで表されるモノマーのホモポリマーのTg(°K)は、Polymer Hand Book(Scond Edition,J.Brandup・E.H.Immergut 編)による値を用いればよい。)
本発明における疎水性モノマー(B)を構成するアルキル基の炭素数が1〜8であるアルキル(メタ)アクリルエステル類として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
疎水性モノマー(B)を構成するアルキル基の炭素数が1〜8である(メタ)アクリル酸エステルの配合量は、疎水モノマーの総量に対して50モル%以上100モル%以下であり、50モル%未満であると得られる水性プライマー用共重合体の基材への補強性が低下し、造膜性も悪くなることから、密着性または耐水性が低下する。
アルキル基の炭素数が1〜8である(メタ)アクリル酸エステル以外の疎水性モノマー(B)を構成することができるモノマーとしてアルキル基の炭素数が1〜8である(メタ)アクリル酸エステル以外の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン系単量体等を挙げることができ、これらは1種もしくは2種以上組み合わせて50モル%未満で用いることができる。
アルキル基の炭素数が1〜8である(メタ)アクリル酸エステル以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられ、スチレン系単量体としては(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
疎水性モノマー(B)の使用量は、水溶性アクリル系樹脂(A)の固形分と疎水性モノマー(B)との質量比が、(A)/(B)=65〜90/35〜10の範囲である。水溶性アクリル系樹脂(A)の質量比が65未満では、水性分散体としての影響が強くなり、基材への浸透性が低下し、基材への補強性が低下する。90を超える場合は、基材への造膜性と補強性のバランスが取りにくく、密着性または耐水性が低下する。
水溶性アクリル系樹脂(A)の存在下に乳化重合される前記疎水性モノマー(B)とともに、シランカップリング剤(C)を使用することができる。シランカップリング剤としては、ビニル基を含有するもの、エポキシ基を含有するものが使用できる。これらは、エマルションの固形分100質量部に対して、0.1〜4.0質量部の範囲で使用することができる。
ビニル基を含有するシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリプロポキシシラン及びγ−メタクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン等が挙げられる。
エポキシ基を含有するシランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロペニルオキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイミノオキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリイソプロペニルオキシシランとグリシドールとの付加物等が挙げられる。
上記したシランカップリング剤は1種もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
コア・シェル型アクリル系樹脂エマルションを調整するに際して、「水溶性アクリル系樹脂(A)の存在下に特定量の疎水性モノマー(B)を乳化重合する」方法として、反応容器に、水溶性アクリル系樹脂(A)と疎水性モノマー(B)と必要に応じて選択された他の共重合可能な単量体とを仕込み、重合開始剤により乳化重合を開始し、60〜95℃の重合温度で1〜9時間の乳化重合反応を行うことが望ましい。また、水溶性アクリル系樹脂(A)の仕込んである反応容器内に、疎水性モノマー(B)を順次滴下し、又は複数種の疎水性モノマー(B)を予め混合して成る混合液を滴下して重合する等の公知の重合方法を用いることもできる。
水溶性アクリル系樹脂(A)の存在下に特定量の疎水性モノマー(B)を乳化重合する場合の反応容器内に存在する水溶性アクリル系樹脂(A)は、この水溶性アクリル系樹脂(A)をアルカリ物質により水に溶解した態様になっているのが、好ましい。
水溶性アクリル系樹脂(A)の存在下に重合するにあたって、水に溶解されるために用いるアルカリ物質としては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、プロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、モルホリン等の揮発性のアルカリ物質、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の不揮発性のアルカリ物質を挙げることができ、1種もしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
アルカリ物質の添加量は、水溶性アクリル系樹脂(A)の全酸基に対して80〜150当量%となるように添加することが好ましい。
水溶性アクリル系樹脂(A)の存在下に重合するにあたって、好ましい態様とするために水溶性アクリル系樹脂(A)を溶解するのに用いる水の量は、水溶性アクリル系樹脂(A)の粘度や均一性等を勘案して調整するが、好ましくは、水溶性アクリル系樹脂(A)100質量部に対して200〜2000質量部、さらに好ましくは、250〜1000質量部である。
重合開始剤としては、水溶性重合開始剤又は油溶性重合開始剤が用いられる。これらの1種もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。水溶性重合開始剤としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等が挙げられる。油溶性重合開始剤としては、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化ジブチリル、過酸化ジアセチル、過酸化ジプロピオニル、クメンヒドロ過酸化物、ターシャリーブチル過酸化物等が挙げられる。なお、前記重合開始剤の使用量は任意であるが、単量体の全質量に対して通常0.05〜5質量%であり、概ね0.1〜3質量%が好ましい。また、これらの水溶性重合開始剤及び/又は油溶性重合開始剤と適当な還元剤、例えば、アスコルビン酸、亜硫酸塩類又はスルホキシレート類との組み合わせである、いわゆるレドックス開始剤を用いてもよい。
このように得られたコア・シェル型アクリル系樹脂エマルションは、水相中に分散する油相液滴の粒子径が、40nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがさらに好ましい。コア・シェル型アクリル系樹脂エマルションは、粘度が、5〜500mPa・sであることが好ましく、5〜200mPa・sであることがさらに好ましい。シェル型アクリル系樹脂エマルションは、pHが、7〜10であることが好ましく、8〜9であることがさらに好ましい。
本発明の水性プライマー組成物は、上記のようにして得られた水性プライマー用共重合体とその他の化合物との混合物であり、その他の化合物としては、シランカップリング剤(C)以外には、造膜助剤、消泡剤、顔料、増粘防止剤、pH調整剤、界面活性剤等を挙げることができる。
造膜助剤としては、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、ブチルセロソルブアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートなどが挙げられる。
消泡剤としては、エステル系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、鉱物系消泡剤、シリコン系消泡剤等が挙げられるが、シロキサン、シリコン樹脂等のシリコン系消泡剤が好ましい。
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられるが、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤が好ましい。
つぎに、本発明の実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。なお、各例中、部、%は特記しない限りすべて質量部、質量%である。
<水溶性アクリル系樹脂(A)の製造>
合成例1(A−1)
撹拌翼、温度計及び還流冷却器、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた3L四つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1,000gを入れ、窒素雰囲気下、攪拌を行いながら3L四つ口フラスコの内容物を145℃に加熱した。メタクリル酸60g、メタクリル酸メチル940g、及びジ−t−ブチルパーオキサイド30gよりなる混合物を滴下ロートから3時間かけて3L四つ口フラスコ内に滴下し、この滴下により重合反応を開始した。滴下終了後、3L四つ口フラスコの内容物を145℃に2時間保持した後、前記内容物からプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを除去することにより、酸価39mgKOH/gの淡黄色の固形物の重合体(A−1)を得た。得られた重合体(A−1)の重量平均分子量は12,000であった。
合成例2(A−2)〜5(A−5)及び比較例用合成例1(B−1)
表1に示されるように変更した以外は、合成例1と同様にして水溶性アクリル系樹脂(A−2)〜(A−5)及び(B−1)を得た。なお、表1では「水溶性アクリル樹脂(A)」を「共重合体(A)」と略記した。合成例2〜5、比較例用合成例1によって得られた共重合体(A−2)〜(A−5)及び(B−1)の固形物の酸価、重量平均分子量も表1に記載した。
Figure 2013112713
実施例1
攪拌、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた3L四つ口フラスコに、上記合成例2により合成した水溶性アクリル系樹脂(A−2)240g、水860g及びアクリル系樹脂(A−2)の全酸価に対して100当量%に相当する水酸化ナトリウムを溶解した水40gを入れ、3L四つ口フラスコの内容物を攪拌しながら、3L四つ口フラスコの内容物を80℃に昇温し、5時間80℃に保持することにより、3L四つ口フラスコの内容物は透明で均一な溶液になった。続いて、3L四つ口フラスコの透明溶液に窒素ガスを通しながら、前記透明溶液にアクリル酸n−ブチル60gを加え、3L四つ口フラスコの内容物の温度が50℃になるように調整した。その後、この3L四つ口フラスコの内容物に、過硫酸アンモニウム0.12g、及び亜硫酸ナトリウム0.06gを加えることにより、乳化重合を開始した。3L四つ口フラスコ内容物を3時間保持して乳化重合を継続した結果、水性プライマー用共重合体1を得た。得られた水性プライマー用共重合体1は、不揮発分25.5%、粘度10mPa・s(BM型粘度計、25℃)、含有される油相液滴の粒子径は15nm(マイクロトラックUPAで測定)であった。
実施例2〜11
実施例1における水溶性アクリル系樹脂(A−2)(表2においては「共重合体(A)の欄にA−2」と略記されている。)及び疎水性モノマー(B)等を表2に示されるように変更した以外は実施例1と同様にして、水性プライマー用共重合体2〜11を得た。得られた水性プライマー用共重合体の物性を表2に記載した。
実施例12
実施例1における水溶性アクリル系樹脂(A−2)(表2においては「共重合体(A)の欄にA−2」と略記されている。)と疎水モノマー(B)を表2に示されるように実施例1と同様にし、さらに、水性プライマー用共重合体の固形分100質量部に対してシランカップリング剤であるγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを2質量部添加し、水性プライマー用共重合体12を得た。
実施例13
実施例1における水溶性アクリル系樹脂(A−2)(表2においては「共重合体(A)の欄にA−2」と略記されている。)と疎水モノマー(B)を表2に示されるように変更した以外は実施例1と同様にし、さらに、水性プライマー用共重合体の固形分100質量部に対してシランカップリング剤であるγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを2質量部添加し、水性プライマー用共重合体13を得た。
比較例1
実施例1における水溶性アクリル系樹脂(A−2)(表2においては「共重合体(A)の欄にA−2」と略記されている。)と疎水モノマー(B)を表2に示されるように変更した以外は実施例1と同様にして、比較例用水性プライマー用共重合体1を得た。なお、質量比を(A−2)/(B)=50/50の範囲外で用いて、乳化重合を行った場合である。
比較例2
実施例1における水溶性アクリル系樹脂(A−2)(表2においては「共重合体(A)の欄にA−2」と略記されている。)を表2に示されるように変更した以外は実施例1と同様にして、比較例用水性プライマー用共重合体2を得た。比較例用水性プライマー用共重合体2は、疎水モノマー(B)であるアルキル基の炭素数が1〜8であるアルキル(メタ)アクリルエステル類を範囲外で用いて、乳化重合を行った場合である。
比較例3
実施例1における水溶性アクリル系樹脂(A−2)(表2においては「共重合体(A)の欄にA−2」と略記されている。)を表2に示されるように変更した以外は実施例1と同様にして、比較例用水性プライマー用共重合体3を得た。比較例用水性プライマー用共重合体3は、疎水モノマー(B)であるアルキル基の炭素数が1〜8の範囲外であるアルキル(メタ)アクリルエステル類を用いて、乳化重合を行った場合である。
比較例4
実施例1における水溶性アクリル系樹脂(A−2)(表2においては「共重合体(A)の欄にA−2」と略記されている。)を表2に示されるように変更した以外は実施例1と同様にして、比較例用水性プライマー用共重合体4を得た。比較例用4水性プライマー用共重合体は水溶性アクリル系樹脂の酸価が範囲外である(B−1)を用いて、乳化重合を行った場合である。
比較例5
攪拌、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた3L四つ口フラスコに、水37.5部、Newcol707SF 1.0部を加え、窒素置換後85℃まで昇温した。この中に過硫酸アンモニウム0.1部と下記コア組成物をエマルション化してなるプレエマルションの3.5%を添加し、添加20分後から前述のプレエマルションの残りを170分かけて滴下した。
(コア組成物)
水45.7部、スチレン10.0部 メタクリル酸メチル24.0部、アクリル酸n−ブチル35.3部、メタクリル酸0.7部 30%Newcol707SF 3.9部、過硫酸アンモニウム1.12部、滴下終了後1時間熟成してから、下記シェル組成物をエマルション化してなるプレエマルションを70分かけて滴下した。
(シェル組成物)
水19.6部、メタクリル酸メチル23.7部、アクリル酸n−ブチル3.0部、メタクリル酸ラウリル3.0部、メタクリル酸0.3部、30%Newcol707SF 1.7部、過硫酸アンモニウム0.06部、滴下終了30分経てから、過硫酸アンモニウム0.1部を水2部に溶解された溶液を30分かけて滴下し、さらに2時間85℃に保持した。その後25℃まで温度を下げ、アンモニア水にてpH7.6に調整し、不揮発分47.6%の比較例用水性プライマー用共重合体5を得た。比較例用5の水性プライマー用共重合体は、先行技術(特開2003−119456)の実施例に相当するものである。
Figure 2013112713
評価
実施例1〜13及び比較例1〜5で得られた水性プライマー用共重合体A−1〜A−13及びB−1〜B−5を固形分濃度が14.5質量%になるように水で希釈し、そこに界面活性剤(コータミンP−24:花王株式会社製)を0.5質量%になるように添加して、プライマー用組成物を調整した。このプライマー用組成物を塗工液として、ケイ酸カルシウム板(比重0.8:A&Aマテリアル製「ハイラック0.8軽質ケイカル」)に対して、それぞれ塗工量が120g/m2になるように刷毛塗布し、室温下で48時間放置して乾燥させた。その後、プライマー塗工面上に、アクリル系水性塗料(上塗り塗料)を塗工量が120g/m2になるように刷毛塗布し、室温下で48時間放置して充分に乾燥させた。つぎに、この塗装面を2mm×2mmの碁盤目状に区画分けして36個の微小区画をつくった。そして、その表面に粘着テープ(ニチバンセロハンテープ、幅24mm)を圧着したのち剥離して、基材側に残留した微小区画の数(残留区画数)を数えた。これによってプライマー層と上塗り塗料との常態密着性を評価した。
また、乾燥後、塗装面に区画分けを施す前に、試料を水中に3日間浸漬したのち、上記と同様にして耐水密着性(wet)を評価した。さらに、試料を水中に3日間浸漬したのち、室温下、48時間放置して乾燥させた。上記と同様にして耐水密着性(dry)を評価した。
上記各密着性試験の結果、各々について、残存区画数が32個以上のものを◎、24〜31個のものを○、15〜23個のものを△、14個以下のものを×とした。◎は非常に優れていることを、○は優れていることを、△は普通であることを、×は悪いことを示している。そして、これらの結果を表3に併せて示す。
Figure 2013112713
以上のように、本発明の水性プライマー用共重合体及び水性プライマー組成物は、無機基材、特にケイ酸カルシウム板への優れた浸透性と、充分な基材補強性及び防水性を備えている。したがって、従来の溶剤タイプのプライマーと同等以上に優れた効果を発揮する。

Claims (4)

  1. 酸価35〜100mgKOH/gの水溶性アクリル系樹脂(A)の存在下、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキル(メタ)アクリルエステル類を50モル%以上100モル%以下含有する疎水性モノマー(B)を乳化重合して得られるコア・シェル型アクリル系樹脂エマルションであり、(A)/(B)の質量比が65〜90/35〜10であることを特徴とする水性プライマー用重合体。
  2. 水溶性アクリル系樹脂(A)が酸価50〜80mgKOH/gである請求項1に記載の水性プライマー用重合体。
  3. 請求項1又は2に記載の水性プライマー用重合体及び水を70〜100質量%とすることを特徴とする水性プライマー用組成物。
  4. 請求項3に記載の水性プライマー用組成物にシランカップリング剤(C)を含有することを特徴とする水性プライマー用組成物。
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