<実施の形態>
(1.1.X線撮影装置の構成および機能)
図1は、この発明の実施の形態であるX線撮影装置100を示す概略斜視図である。X線撮影装置100は、パノラマX線断層撮影及び通常のX線CT撮影(Computed Tomography)等を実行して、投影データを収集する本体部1と、本体部1において収集した投影データを処理して、各種画像(CT画像、セファロ画像、パノラマ断層画像等)を生成する情報処理装置8とに大別される。
本体部1は、被験者等の被写体OBに向けてX線の束で構成されるX線を出射するX線発生部10と、X線発生部10から出射されたX線からなるX線ビームXBを検出するX線検出部20と、X線発生部10及びX線検出部20をそれぞれ支持する支持部300(旋回アーム30)と、支持部300を吊り下げ、支柱50に対して鉛直方向に昇降移動可能な支持フレーム40と、鉛直方向に延びる支柱50と本体制御部60とを備えている。
なお、図1およびその他の図には、必要に応じて左手系のXYZ直交座標系およびxyz直交座標系を付している。ここでは、旋回軸31の軸方向と平行な方向(ここでは、鉛直方向)を「Z軸方向」とし、このZ軸に交差する方向を「X軸方向」とし、さらにX軸方向およびZ軸方向に交差する方向を「Y軸方向」としている。X軸およびY軸方向は任意に定め得るが、ここでは、被写体OBである被検者がX線撮影装置100において位置決めされて支柱50に正対した時の被検者の左右の方向をX軸方向とし、被検者の前後の方向をY軸方向と定義する。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、本実施形態では互いに直交するものとする。また、以下において、Z軸方向を垂直方向、X軸方向とY軸方向の2次元で規定される平面上の方向を水平方向と呼ぶこともある。また、Z軸方向を高さ方向とすることもある。
また、xyz直交座標系は、旋回する旋回アーム30上に定義される三次元座標系である。ここでは、X線発生部10とX線検出部20とが対向する方向を「y軸方向」とし、y軸方向に直交する水平方向を「x軸方向」とし、これらxおよびy軸方向に直交する鉛直方向を「z軸方向」としている。本実施の形態においては、上記のZ軸方向は、z軸方向と向きが共通する同一方向となっている。また本実施の形態の旋回アーム30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を軸に回転する。したがって、xyz直交座標系は、XYZ直交座標系に対してZ軸(=z軸)周りに回転することとなる。
本実施の形態の図示の例では旋回軸31は鉛直方向に延びるが、水平方向を含む他の方向であってもよい。例えば、X線撮影装置100を、被検者が仰臥して載置される寝台型に構成する場合は、旋回軸31が水平方向に延びるように構成する。
また、本実施の形態においては、図1に示したように、被検者が支柱50に正対したときの右手方向を(+X)方向、背面方向を(+Y)方向、鉛直方向上向きを(+Z)方向としている。また、X線発生部10、X線検出部20を上から平面視したときにX線発生部10からX線検出部20へ向かう方向を(+y)方向、(+y)側に向いたときの右手?方向を(+x)方向、鉛直方向上向きを(+z)方向としている。
さらに、X、Y、Z、x、y、zを平面を定義するのに用いることもある。例えば、x方向とz方向に拡がる2次元平面をxz平面と称したりする。
X線発生部10およびX線検出部20は、旋回アーム30の両端部にそれぞれ吊り下げ固定されており、互いに対向するように支持されている。旋回アーム30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を介して、支持フレーム40に吊り下げ固定されている。
X線発生部10は、X線源であるX線管を有するX線発生器11を、図1では図示しないハウジングの内部に備えている。ハウジングは、支持部300に対してZ軸周りに回動可能に取り付けられている。この回動機能は、例えばセファロ撮影時などに利用される(後述する図2参照)。
X線検出部20は、被写体OBを透過したX線を検出するX線検出器21を備えている。X線検出器21はX線検出用基板22上に設けられ、2次元平面(ここでは、xz平面)に広がるように配置された複数のX線検出素子で構成されるイメージセンサを構成している。X線検出素子は、入射したX線の強度に応じた信号を外部に出力する。イメージセンサによって、X線検出部20に入射するX線の強度が、所要のフレームレートで、各画素がX線の強度に応じた画素値を持つフレーム画像データ(画像情報)として取得される。
X線検出器21としては、MOSセンサ、CMOSセンサが好適に利用できるが、いずれの電気的撮像センサであっても構わない。具体的には、CCDセンサ等のフラットパネルディテクタ(FPD)、その他の固体撮像素子など、様々なものを用いることができる。単一のX線検出器21をいずれのX線撮影にも用いて、X線検出器21に入射するX線ビームの形状に適合させて、読出し領域を変更させてもよい。いずれにしても、CT撮影には少なくともフレーム画像が得られる電気的撮像センサを用いるようにする。
本実施の形態では、支持部300が旋回軸31回りに旋回する旋回アーム30で構成され、X線発生部10とX線検出部20とが、略直方体状の旋回アーム30両端のそれぞれに取り付けられている。ただし、X線発生部10とX線検出部20とを支持する支持部300の構成は、これに限られるものではない。例えば円環状部分の中心を回転中心として回転する円環状部材によって、X線発生部10とX線検出部20とを対向させた状態で支持するようにしてもよい。
支持フレーム40は、鉛直方向に沿って延びるように立設された支柱50に係合している。支持フレーム40は、その構成部である上部フレーム41と下部フレーム42とが、支柱50に係合する側の反対側に突出しており、略U字状の構造を有している。
上部フレーム41には、旋回アーム30の上端部分が取り付けられている。このように旋回アーム30は、支持フレーム40の上部フレーム41に吊り下げされており、支持フレーム40が支柱50に沿って移動することによって、旋回アーム30が併せて上下に移動する。
下部フレーム42には、被写体OB(ここでは、人体の頭部)を左右から固定するロッドや、顎を固定するチンレスト等で構成される被写体固定部421が設けられている。旋回アーム30は、被写体OBの身長に合わせて支持フレーム40の昇降に従って昇降されて適当な位置に合わせられ、その状態で被写体OBが被写体固定部421に固定される。被写体固定部421は、図1に示した例では被写体OBの体軸が旋回軸31の軸方向と同じ方向またはほぼ同じ方向となるように被写体OBを固定する。
被写体固定部421を構成するものとして、他に、頭部を固定するヘッドホルダー、耳を固定するイヤーロッド、被検者が着座する椅子等様々な要素が考えられる。
図1に示すように、X線検出部20の内部には、本体部1の各構成の動作を制御する本体制御部60が備えられている。また、本体部1の各構成は、好ましくは防X線室70内に収容されている。この防X線室70の壁の外側には、本体制御部60からの制御に基づいて、各種情報を表示する液晶モニタ等で構成された表示部61と、本体制御部60に対して各種の命令入力を実現するためのボタン等で構成された操作パネル62とが取り付けられている。操作パネル62は、生体器官等の撮影領域の位置等を指定すること等にも用いられる。また、X線撮影には各種のモード(パノラマX線断層撮影、CT撮影、セファロ撮影など)があるが、操作パネル62の操作によって、モードの選択ができるようにすることも可能である。
情報処理装置8は、例えばコンピュータやワークステーション等で構成された情報処理本体部80を備えており、通信ケーブルによって本体部1との間で各種データを送受信することができる。ただし、本体部1と情報処理装置8との間で、無線的にデータのやり取りが行われてもよい。
情報処理本体部80には、例えば液晶モニタ等のディスプレイ装置からなる表示部81、および、キーボードやマウス等で構成される操作部82が接続されている。オペレータは、操作部82を介して情報処理装置8に対して各種指令を与えることができる。なお、表示部81は、タッチパネルで構成することも可能であり、この場合は、表示部81が操作部82の機能の一部または全部を備えることとなる。
図2は、X線撮影装置100に適用可能なセファロスタット43を示す正面図である。図2に示すように、セファロスタット43は、例えば、支柱50の途中から水平方向に延びるアーム501に取り付けられる。セファロスタット43には、頭部を定位置に固定する固定具431やセファロ撮影用のX線検出器432が備えられる。なお、セファロスタット43としては、特開2003−245277号公報に開示されているセファロスタットを含む種々のものを採用することができる。
図3は、本実施の形態のX線撮影装置100の駆動・制御構成を示すブロック図である。なお、図3において、本実施の形態の特徴に関連性が強い制御関係を有する部分を破線で示している。
図3に示したように、本体部1は、旋回用モータ60R、X軸モータ60X、Y軸モータ60Yとで構成される駆動部65を備えている。本実施の形態においては、駆動部65は、上部フレーム41に内蔵されている。X軸モータ60X、Y軸モータ60Yは、旋回軸31をそれぞれX軸方向、Y軸方向に水平移動させる。また、旋回用モータ60Rは、旋回アームを旋回軸31のZ軸周りに回転させる。
旋回可能な旋回軸31に旋回アーム30の本体を旋回不能に固定し、旋回軸31を旋回用モータ60Rで旋回駆動してもよいし、旋回不能な旋回軸31に対して旋回アームの本体を旋回可能に設け、旋回アーム30を旋回軸31に対して旋回駆動してもよい。後者の場合に旋回用モータ60Rを旋回アーム30内部に設けてもよい。また、旋回可能な旋回軸31に旋回アーム30の本体をさらに回動可能に設けるようにしてもよい。
つまり駆動部65は、所要位置に位置付けされた被写体OBに対して、旋回アーム30を相対的に水平移動または旋回移動させる。本実施の形態においては、駆動部65が旋回軸31を中心に支持部300(旋回アーム30)を被写体OB周りに旋回させる旋回機構を構成しており、X線発生器11とX線検出器21とが、頭部を含む被写体OBを挟んで互いに対向するように、支持部300を被写体OB周りに旋回させる機能を果たしている。
本体制御部60は、駆動部65を制御するプログラムPG1を含む各種制御プログラムを実行するCPU601と、ハードディスク等の固定ディスクで構成され、各種データやプログラムPG1を記憶する記憶部602と、ROM603と、RAM604とを、バスラインに接続したコンピュータとしての構成を有している。
CPU601は、記憶部602に記憶されたプログラムPG1をRAM604上で実行することによって、各種の撮影モードに合わせて、X線発生部10を制御するX線発生部制御部601a及びX線検出部20を制御するX線検出部制御部601bとして機能する。X線発生部制御部601aは、X線の照射X線量の制御も可能であり、X線照射制御部の機能も有する。さらに、X線発生部制御部601aはX線遮蔽部駆動部12Dを駆動してX線規制部12に対する後に詳述する第1〜第3のX線照射範囲規制処理を制御する。
また、CPU601は、駆動部65を駆動制御する駆動制御部601cとしても機能し、例えばX線発生部10、X線検出部20が各種撮影に応じた軌道で移動するように駆動制御する。
さらに、駆動制御部601cは被写体固定部駆動部421Dに制御信号を送ることにより、後述する被写体固定部421の高さ調整を、駆動制御部601cの制御下で被写体固定部駆動部421Dを介して行っている。
なお、本体制御部60を構成するCPU601と情報処理本体部80を構成するCPU801とは、総合的に制御系を構成している。
本体制御部60に接続された操作パネル62は、複数の操作ボタン等で構成されている。なお、操作パネル62に代わる、もしくは操作パネル62に併用される入力装置としては、操作ボタンのほか、キーボード、マウス、タッチペン等を採用することができる。また、音声による指令をマイク等で受け付けて認識するようにしてもよい。つまり、操作パネル62は操作手段の一例である。したがって、操作手段としては、操作者の操作を受け付けることができるのであればどのようなものでも構わない。また、表示部61をタッチパネルで構成することも可能であり、この場合、表示部61が操作パネル62の機能の一部または全部を備えることとなる。
表示部61には、本体部1の操作に必要な各種情報が文字や画像等で表示される。ただし、情報処理装置8の表示部81に表示されている表示内容を、表示部61にも表示されるようにしてもよい。また、表示部61に表示される文字や画像の上でマウス等によるポインタ操作等を通して本体部1に各種の指令ができるようにしてもよい。
調整部601dは、被写体OBの位置を特定し、該特定された被写体OBの位置に合わせて、X線発生器11およびX線検出器21の旋回時の軌道を調整する。被写体OBの位置の特定方法は、例えば、レーザービームを利用するものが考えられる。具体的には、X線発生部10に備えられた位置検出部17(ここでは、レーザー光源)からレーザービームを出射させ、該レーザービームが被検者の顔面の特徴的な位置に照射されるようにX線発生部10を移動させる。例えば唇の口角などの位置にレーザービームを照射するようにすれば、歯列の一部である犬歯などの位置をおおよそ特定することができる。これにより、被写体OBが持つ歯列の位置をおおよそ特定することができる。このようにして特定した位置情報に基づいて、X線発生器11およびX線検出器21の旋回軌道を調整する(シフトさせる)。これにより、X線発生器11,X線検出器21および被写体OBとの位置関係を適切に調整して、CT撮影やパノラマX線断層撮影等を行うことができる。
本体部1は、操作パネル62、あるいは情報処理装置8からの指令に従って、被写体OBの関心領域(生体器官、歯牙を含む骨、関節等)を、X線を用いて撮影する。また、本体部1は、各種指令や座標データ等を情報処理装置8から受信し、また、撮影して取得したX線の投影データを情報処理装置8に送信する。本実施の形態では、図3に示すように、X線発生部10内のX線発生器11から照射されるX線が、X線規制部12によって規制される被写体照射X線通過領域を介して得られるX線ビームXBを、被写体OBの感心領域Xrに局所的に照射している。そして、X線発生器11に対向するX線検出部20のX線検出器21にて入射するX線を検出し、情報処理装置8によってX線検出器21の検出結果に基づく画像処理が行われることによりCT撮影をはじめとする各種X線撮影を行うことができる。
情報処理本体部80は、各種プログラムを実行するCPU801と、ハードディスク等の固定ディスクで構成され、各種データやプログラムPG2を記憶する記憶部802とROM803と、RAM804とを、バスラインに接続した一般的なコンピュータとしての構成を有している。
CPU801は、記憶部802に記憶されたプログラムPG2をRAM804上で実行することによって、位置設定部801aおよび画像情報処理部801bとして機能する。位置設定部801aは、操作部82を介した操作入力に基づいて、CT撮影画像やパノラマ断層画像を生成する際の断層面の位置を設定する。また、画像情報処理部801bは、CT撮影やパノラマX線断層撮影時に取得されたフレーム画像データ等の画像信号に対して画像処理を行って、断層面の位置に対応したCT画像やパノラマ断層画像を生成する。CPU801が位置設定部801aおよび画像情報処理部801bとして機能することにより、情報処理装置8が画像処理装置として機能する。
なお、所定のネットワーク回線等を介して、本体制御部60または情報処理本体部80がプログラムPG1,PG2を取得するようにしてもよい。また、本体制御部60または情報処理本体部80が、可搬性のメディア(CD−ROM等)に保存されたプログラムPG1,PG2を、所定の読取装置にて読み取ることで取得するようにしてもよい。
本実施の形態では、オペレータ(操作者)により、操作パネル62または操作部82を介して、CT撮影領域が指定される。具体的には、生体の一部又は全体を表示する画面(イラストやパノラマ断層画像等)が表示部61または表示部81に表示され、オペレータが撮影したい領域を操作パネル62または操作部82を介して指定することで、撮影領域が指定される。なお、画面上に領域特定用の画面を表示することなく、操作パネル62もしくは操作部82から部位の名称の入力やコード入力等で直接部位の指定を行うようにしてもよい。別途、前述の位置検出部からレーザービームなどの可視光ビームを被検者に照射して位置付けをするようにしてもよい。
なお、操作パネル62にも制御部を設けて、本体制御部60の制御の一部を分担させてもよいし、操作パネル62に全面的に本体制御部60を設けるようにしてもよい。
(1.2.パノラマX線断層撮影とパノラマ断層画像の生成)
パノラマX線断層撮影時には、X線発生器11およびX線検出器21が、被写体OBの歯列を挟んで互いに対峙するように配置され、一体的に被写体OB周りに回転するように、X軸モータ60X、Y軸モータ60Y、および、旋回用モータ06Yが駆動される(図3参照)。また、X線発生器11から放射されたX線は、X線発生器11に対しX線出射方向側に設けられたX線規制部12を透過することによって、z軸方向に延びる細長状のX線細隙ビームに成形される。被写体OBを照射するX線細隙ビームは、X線規制部12によって不要なX線部分が遮断されたものである。好ましくはX線検出部20側のX線検出器21の直前にも図示しないX線規制部を設け、X線検出部20における不要な散乱X線を遮断するようにする。
なお、パノラマX線断層撮影においては、標準的な歯列弓(馬蹄形の曲線)が予め想定されている。この歯列弓に対してX線ビームXBがほぼ直交して入射するようにX線発生器11が移動する。
X線発生器11とX線検出器21は、旋回軸31のX軸モータ60XとY軸モータ60Yによる2次元移動の駆動と旋回用モータ60Rによる旋回アーム30の旋回軸31周りの旋回駆動の合成運動によって歯列弓を照射するX線細隙ビームがパノラマX線断層撮影中に包絡線を形成する軌跡をとるような軌道をとって移動する。
このようなX線発生器11の移動については、例えば、本願出願人に係る特開2009−131656号公報(例えば、図5)に開示されている。
X線検出器21では、所要のフレームレートで、入射するX線の強度の強度に応じた画素値をもつフレーム画像データとして収集され、記憶部802に保存される。収集されたフレーム画像データを用いて、画像情報処理部801bは、パノラマ断層画像を再構成する。詳細には、連続するフレーム画像上にて像の重複する部分を順次重ね合わせる処理(画素値を加算する処理(シフト加算処理))を、設定された断層面に沿って行う。これにより、単一のパノラマ断層画像が生成される。このシフト加算処理については、これまでにも種々提案されており、本願においてもこれらの技術を適宜適用することができる。また、画像情報処理部801bは、記憶部802に保存、収集されたフレーム画像データを用いて、CT撮影やセファロ撮影における画像処理も併せて行うことができる。
<X線規制部12>
(構成)
図4は本実施の形態のX線撮影装置100におけるX線発生部10の内部構成を示す斜視図である。同図に示すように、X線発生部10はX線発生器11とX線規制部12とから構成される。
X線規制部12はX線発生器11から照射したX線の照射範囲を規制するX線照射規制部として機能する。X線規制部12はX線発生部10においてX線発生器11のX線出射方向側に備えられる。
同図に示すように、X線発生器11から照射されるX線はX線規制部12を通過することにより、X線照射方向L1(y方向(X線検出部20の存在する方向))に向けて照射される。
以下、本実施の形態の特徴部となるX線規制部12の構成について説明する。X線規制部12は、枠体BSと枠体BS体内に収納された水平方向変位X線遮蔽板XK1と垂直方向変位X線遮蔽板XK2(第1及び第2のX線遮蔽部)とを主要構成部として有している。
枠体BSはX線発生器11の前方にX線発生器11に固定されて配置され、水平方向変位X線遮蔽板XK1と垂直方向変位X線遮蔽板XK2はそれぞれ枠体BSに対して後述するように変位可能となっている。
枠体BSの基板BS1の平坦部がX線発生器11の前面に固定され、基板BS1のx方向(左右方向)の一端からy方向(前方)に向けて端部BS2が突出し、他端からy方向(前方)に向けて端部BS3が突出し、基板BS1のz方向(上下方向)の一端、図示の例では上端からy方向(前方)に向けて端部BS4が突出している。
基板BS1のほぼ中央の、X線発生器11からX線が外部に射出されるX線射出孔が位置する箇所には開口OP1が設けられ、X線発生器11から照射されるX線を遮らないようになっている。
水平方向変位X線遮蔽板XK1の本体部はx方向が長手方向、z方向が短手方向となる横長矩形状の平面構造の本体部を有している。そして、その本体部内に各々が本体部を貫通して、各々がX線の通過を許容するX線通過領域(第1のX線通過領域)を規定する大照射野X線通過孔C1、X線スリットSL2、X線スリットSL1及び中照射野X線通過孔C2がx方向に沿って互いに離散して設けられる。水平方向変位X線遮蔽板XK1において、X線通過領域に対して、X線の通過を遮断する領域は遮蔽領域(第1の遮蔽領域)である。
大照射野X線通過孔C1は最も大きな領域で形成され、中照射野X線通過孔C2は大照射野X線通過孔C1に比べx方向の形成幅が短い領域で形成され、X線スリットSL1は中照射野X線通過孔C2に比べx方向の形成幅がより短い領域で形成され、X線スリットSL2は中照射野X線通過孔C2に比べx方向の形成幅がより短く、z方向の形成幅がX線スリットSL1より短い領域で形成される。
中照射野X線通過孔C2のz方向の形成幅と大照射野X線通過孔C1のz方向の形成幅は、いずれも適切にX線照射できる最大幅にそろえて一致させてもよいが、一方が他方より小さく設定されてもよい。
例えば、大照射野CT撮影をx方向に広いがz方向に狭い範囲で行うようにする場合は中照射野X線通過孔C2のz方向の形成幅より大照射野X線通過孔C1のz方向の形成幅を小さくし、中照射野CT撮影をさらにz方向にも狭い範囲で行うようにする場合は大照射野X線通過孔C1のz方向の形成幅より中照射野X線通過孔C2のz方向の形成幅を小さくする。
本実施の形態では、水平方向変位X線遮蔽板XK1における大照射野X線通過孔C1及び中照射野X線通過孔C2をCT撮影用、X線スリットSL1をパノラマX線断層撮影用、X線スリットSL2をセファロ撮影用に用いる。
水平方向変位X線遮蔽板XK1は本体部の下部(−z方向側)の一端にx方向にねじ孔が貫通する雌ねじ部H1、上部(+z方向側)の両端にx方向に貫通する貫通孔を内部に設けた被案内部材H2,H2が設けられ、雌ねじ部H1内に雄ねじで構成されてx方向に伸延する回転軸G1を嵌め合わせて貫通させ、被案内部材H2,H2それぞれ内に案内部材であるガイド軸G2を貫通させる。被案内部材H2,H2はガイド軸G2の長手方向に沿ってガイド軸G2に対して摺動可能である。回転軸G1はモータM1の回転軸に連結して設けられ、枠体BSの中央部まで延びて形成される。モータM1は枠体BSの端部BS2、BS3の一方、図示の例では端部BS2の内部側面に固定して設けられる。そして、ガイド軸G2の一端は枠体BSの一方の端部BS2内部側面に、他端は枠体BSの対向する端部BS3内部側面に固定して設けられる。
雌ねじ部H1、回転軸G1、被案内部材H2,H2、ガイド軸G2は、X線遮蔽部を、具体的には水平方向変位X線遮蔽板XK1を水平方向に変位させるX線遮蔽部水平方向変位機構を構成する。
回転軸G1はモータM1によって回転される。モータM1はX線遮蔽部駆動部12D(図3参照)を構成する機械的要素であり、前述したようにX線発生部制御部601a(図3参照)による制御信号に従い駆動する。
X線遮蔽部駆動部12Dを、モータM1とモータM1用モータドライバから構成し、X線発生部制御部601aからの制御信号を駆動信号に変換するようにしてもよい。
したがって、水平方向変位X線遮蔽板XK1はモータM1による回転軸G1の回転動作に従い、雌ねじ部H1をx方向に沿って回転方向に対応する方向(+x方向あるいは−x方向)に駆動することにより、水平方向変位X線遮蔽板XK1全体をx方向(水平方向)に沿って移動制御することができる。この際、被案内部材H2,H2内に貫通して設けられたガイド軸G2の存在により、水平方向変位X線遮蔽板XK1の移動時においてz方向やy方向への位置ズレを確実に抑制することができる。
水平方向変位X線遮蔽板XK1については、x方向への変位がX線の照射方向と交差する規制方向への変位となる。
その結果、X線発生部制御部601aの制御下で、X線発生器11から照射されるX線が大照射野X線通過孔C1、X線スリットSL2、X線スリットSL1及び中照射野X線通過孔C2のいずれかを通過可能な位置関係に、水平方向変位X線遮蔽板XK1を位置決めすることができる。すなわち、X線の照射経路上に、大照射野X線通過孔C1、X線スリットSL1、X線スリットSL2及び中照射野X線通過孔C2のいずれかを位置決めすることができる。
なお、水平方向変位X線遮蔽板XK1のz方向は固定されているが、大照射野X線通過孔C1、X線スリットSL2、X線スリットSL1及び中照射野X線通過孔C2は、それぞれによってX線規制部12を通過する被写体照射X線通過領域を形成する範囲で、z方向においてX線発生器11からのX線照射領域内に完全に含まれる位置にとどまるように予め位置設定されている。
一方、垂直方向変位X線遮蔽板XK2の本体部はz方向及びx方向の長さが同程度の略正方形状の平面構造の本体部を有しており、y方向に沿ってX線発生器11と水平方向変位X線遮蔽板XK1との間に設けられる。
そして、その本体部の中央部にX線の通過を許容するX線通過領域である小照射野X線通過孔C3(第2のX線通過領域)が設けられる。本実施の形態では、小照射野X線通過孔C3をCT撮影用に用いる。小照射野X線通過孔C3はx方向において大照射野X線通過孔C1と同程度の形成幅を有し、z方向(規制方向)において大照射野X線通過孔C1の半分程度の形成幅を有している。また、小照射野X線通過孔C3の下方向(−z方向)の周辺遮蔽領域P3は、z方向において大照射野X線通過孔C1の形成幅以上の形成幅を有している。
水平方向変位X線遮蔽板XK2において、X線通過領域に対して、X線の通過を遮断する領域は遮蔽領域(第2の遮蔽領域)である。
小照射野X線通過孔C3のx方向の形成幅と大照射野X線通過孔C1のx方向の形成幅は、いずれも適切にX線照射できる最大幅にそろえて一致させてもよいが、一方が他方より小さく設定されてもよい。その思想は中照射野X線通過孔C2のz方向の形成幅と大照射野X線通過孔C1のz方向の形成幅の設定に関して述べたと同様である。
垂直方向変位X線遮蔽板XK2は本体部の右部(+x方向側)の一端にz方向にねじ孔が貫通する雌ねじ部H3、左部(−x方向側)の上下両端にz方向に貫通する貫通孔を内部に設けた被案内部材H4,H4が設けられ、雌ねじ部H3内に雄ねじで構成されてz方向に伸延する回転軸G3を嵌め合わせて貫通させ、被案内部材H4,H4それぞれ内に案内部材であるガイド軸G4を貫通させる。被案内部材H4,H4はガイド軸G4の長手方向に沿ってガイド軸G4に対して摺動可能である。回転軸G3はモータM2の回転軸に連結して設けられ、枠体BSの中央部(水平方向変位X線遮蔽板XK1の上部)まで延びて形成される。モータM2は枠体BSの端部BS4内部上面に固定して設けられる。そして、ガイド軸G4の一端は枠体BSの端部BS4内部上面に固定して設けられる。ガイド軸G4の他端が枠体BSの底部に固定されるようにしてもよい。
雌ねじ部H3、回転軸G3、被案内部材H4,H4、ガイド軸G4は、X線遮蔽部を、具体的には垂直方向変位X線遮蔽板XK2を垂直方向に変位させるX線遮蔽部垂直方向変位機構を構成する。
X線遮蔽部水平方向変位機構、X線遮蔽部垂直方向変位機構はX線遮蔽部を変位させる第1と第2のX線遮蔽部変位機構である。
回転軸G3はモータM2によって回転される。モータM2はモータM1と同様、X線遮蔽部駆動部12D(図3参照)を構成する機械的要素であり、X線発生部制御部601aによる制御信号に従い駆動する。
X線遮蔽部駆動部12Dを、モータM2とモータM2用モータドライバから構成し、X線発生部制御部601aからの制御信号を駆動信号に変換するようにしてもよい。
したがって、垂直方向変位X線遮蔽板XK2はモータM2による回転軸G3の回転動作に従い、雌ねじ部H3をz方向に沿って回転方向に対応する方向(+z方向あるいは−z方向)に駆動することにより、垂直方向変位X線遮蔽板XK2全体をz方向に沿って移動制御することができる。この際、被案内部材H4,H4内に貫通して設けられたガイド軸G4の存在により、垂直方向変位X線遮蔽板XK2の移動時においてx方向やy方向への位置ズレを確実に抑制することができる。
垂直方向変位X線遮蔽板XK2については、z方向への変位がX線の照射方向と交差する規制方向への変位となる。
その結果、X線発生部制御部601aの制御下で、垂直方向変位X線遮蔽板XK2をz方向に沿って適宜移動させることができる。
このように、X線規制部12は、X線発生部制御部601aの制御下で、水平方向変位X線遮蔽板XK1のx方向の移動制御、垂直方向変位X線遮蔽板XK2のz方向の移動制御を組み合わせて、X線発生器11から照射されるX線のうち、X線規制部12を通過する被写体照射X線通過領域を形成するX線照射範囲規制処理(後述する第1〜第3のX線照射範囲規制処理)を実行することができる。
なお、垂直方向変位X線遮蔽板XK2のx方向は固定されているが、小照射野X線通過孔C3は、小照射野X線通過孔C3によって被写体照射X線通過領域を形成する範囲で、x方向においてX線発生器11からのX線照射領域内に完全に含まれる位置にとどまるように予め位置設定されている。
<大照射野CT撮影>
図5はX線規制部12のX線照射範囲規制処理(第2のX線照射範囲規制処理)による大照射野CT撮影の際におけるX線規制部12内の水平方向変位X線遮蔽板XK1及び垂直方向変位X線遮蔽板XK2のz方向における位置関係を示す説明図である。
同図に示すように、X線検出器21のX線検出面の中心位置21cはX線発生器11におけるX線の発生点であるX線の焦点Fよりもz方向に高い位置に配置され、いわゆる打上照射が行われる。このX線発生器11とX線検出器21とのz方向の位置関係は、図6〜図8で示す小照射野CT撮影(その1,その2)及びパノラマX線断層撮影時においても同様である。
同図(a) ,(b) に示すように、大照射野CT撮影の際、X線発生器11から照射されるX線が水平方向変位X線遮蔽板XK1の大照射野X線通過孔C1を通過可能な位置になるように、モータM1を駆動して水平方向変位X線遮蔽板XK1のx方向の位置設定を行う。すなわち、X線の照射経路上に水平方向変位X線遮蔽板XK1の大照射野X線通過孔C1が位置する位置関係になるように、水平方向変位X線遮蔽板XK1のx方向の位置設定を行う。
一方、同図(a),(b) に示すように、垂直方向変位X線遮蔽板XK2を上方(+z方向)に移動させ、X線発生器11の焦点FからのX線の照射経路から完全に逸脱する退避位置に設定する。すなわち、X線の照射経路上外に垂直方向変位X線遮蔽板XK2が位置するように、垂直方向変位X線遮蔽板XK2のz方向の位置設定を行う。したがって、X線の照射経路上において、水平方向変位X線遮蔽板XK1の大照射野X線通過孔C1と垂直方向変位X線遮蔽板XK2の小照射野X線通過孔C3の周辺遮蔽領域とのy方向から見た重ね合わせは生じない。
その結果、同図(a) に示すように、X線発生器11の焦点Fから照射されたX線がX線規制部12の水平方向変位X線遮蔽板XK1の大照射野X線通過孔C1をそのまま被写体照射X線通過領域として通過させて得られるコーンビームCB1を被写体OBの歯列弓DAの全体DAAに照射するX線照射範囲規制処理(第2のX線照射範囲規制処理)を実行して大照射野CT撮影を実現することができる。なお、被写体OBの歯列弓DAの略全体をX線撮影領域としてもよい。
なお、図5(a) ,(b) で示すx方向の位置関係における大照射野X線通過孔C1を中照射野X線通過孔C2に置き換えることにより、中照射野CT撮影を実現することができる。
<小照射野CT撮影(その1)>
図6はX線規制部12のX線照射範囲規制処理(第3のX線照射範囲規制処理)による小照射野CT撮影の際におけるX線規制部12内の水平方向変位X線遮蔽板XK1及び垂直方向変位X線遮蔽板XK2のx方向及びz方向における位置関係を示す説明図である。
同図(a) ,(b) に示すように、小照射野CT撮影の際、図5で示した大照射野CT撮影のときと同様、X線の照射経路上に水平方向変位X線遮蔽板XK1の大照射野X線通過孔C1が位置するように、水平方向変位X線遮蔽板XK1のx方向の位置設定を行う。
一方、同図(a),(b) に示すように、垂直方向変位X線遮蔽板XK2を図5に示した退避位置から下方(−z方向)の完全照射位置に移動させ、X線の照射経路上に垂直方向変位X線遮蔽板XK2の小照射野X線通過孔C3が位置し、かつ、y方向から見て小照射野X線通過孔C3が大照射野X線通過孔C1内に完全に含まれる位置関係になるように位置設定を行う。
したがって、水平方向変位X線遮蔽板XK1の大照射野X線通過孔C1と垂直方向変位X線遮蔽板XK2の小照射野X線通過孔C3とのy方向から見た重複領域は小照射野X線通過孔C3そのものとなる。
その結果、同図(a) に示すように、X線発生器11の焦点Fから照射されたX線がX線規制部12の垂直方向変位X線遮蔽板XK2の小照射野X線通過孔C3をそのまま被写体照射X線通過領域として通過させて得られるコーンビームCB2を被写体OBの上顎歯列DAUを選択的に照射するX線照射範囲規制処理(第3のX線照射範囲規制処理における狭形成幅X線通過領域全体利用処理)を実行して小照射野CT撮影を実現することができる。
小照射野X線通過孔C3の一部のみと大照射野X線通過孔C1の一部とが重なり合う領域を被写体照射X線通過領域としてもよい。この場合、X線の照射経路上、小照射野X線通過孔C3と大照射野X線通過孔C1との少なくとも一部とが重なり合う領域が被写体照射X線通過領域となる。
水平方向変位X線遮蔽板XK1がx方向に変位する余地を大きくとって、小照射野X線通過孔C3を通過するX線の照射経路から全く退避できるようにして、小照射野X線通過孔C3のみがX線発生器11から出射するX線を規制する状態で小照射野CT撮影を行うようにしてもよい。
このように、第3のX線照射範囲規制処理には、大照射野X線通過孔C1と小照射野X線通過孔C3の少なくとも一部を重ね合わせて重複領域を被写体照射X線通過領域とする処理も、小照射野X線通過孔C3のみを被写体照射X線通過領域とする処理も含まれる。
本実施の形態の小照射野CT撮影の例では、被写体OBの歯列弓DAの歯牙のうち、一部の歯牙が含まれる領域、特にz方向について一部の歯牙が含まれる領域のみがX線撮影領域となる。
なお、図5(a) ,(b) で示すx方向の位置関係から、X線の照射経路上において、図6(a) ,(b)に示す状態よりもさらに垂直方向変位X線遮蔽板XK2を下方に移動させることにより、コーンビームCB2を下顎歯列DALに選択的に照射する小照射野CT撮影を実現することができる。
<小照射野CT撮影(その2)>
図7はX線規制部12のX線照射範囲規制処理による小照射野CT撮影(その2)の際におけるX線規制部12内の水平方向変位X線遮蔽板XK1及び垂直方向変位X線遮蔽板XK2のx方向及びz方向における位置関係を示す説明図である。
(下顎歯列DAL撮影)
同図(a) ,(b) が下顎歯列DALに対する小照射野CT撮影を示している。同図(a) ,(b) に示すように、小照射野CT撮影の際(その2)、図5で示した大照射野CT撮影のときと同様、X線の照射経路上に水平方向変位X線遮蔽板XK1の大照射野X線通過孔C1が位置する位置関係になるように、水平方向変位X線遮蔽板XK1のx方向の位置設定を行う。
一方、同図(a),(b) に示すように、垂直方向変位X線遮蔽板XK2を図5に示した退避位置より下方(−z方向)でかつ図6で示した完全照射位置より上方(+z方向)に位置し、垂直方向変位X線遮蔽板XK2の小照射野X線通過孔C3下の周辺遮蔽領域P3によって大照射野X線通過孔C1を通過可能なX線の一部を遮蔽可能な位置に垂直方向変位X線遮蔽板XK2のz方向を位置設定する。
すなわち、水平方向変位X線遮蔽板XK1の大照射野X線通過孔C1の一部と垂直方向変位X線遮蔽板XK2の周辺遮蔽領域P3の一部とがy方向から見て重ね合う位置に、垂直方向変位X線遮蔽板XK2のz方向移動を行う。この状態において、水平方向変位X線遮蔽板XK1の大照射野X線通過孔C1と垂直方向変位X線遮蔽板XK2の小照射野X線通過孔C3とはy方向から見てX線の照射経路上全く重なり合わない。
したがって、水平方向変位X線遮蔽板XK1の大照射野X線通過孔C1のうち、垂直方向変位X線遮蔽板XK2の周辺遮蔽領域P3により遮蔽されなかった領域のみが被写体照射X線通過領域となる。
その結果、同図(a) に示すように、X線の照射経路上において、X線が垂直方向変位X線遮蔽板XK2の周辺遮蔽領域P3によって遮蔽されない範囲で大照射野X線通過孔C1を通過する領域を被写体照射X線通過領域としてコーンビームCB3が得られる。この際、コーンビームCB3が被写体OBの下顎歯列DALに対応した照射領域を形成するように設定することより、被写体OBの下顎歯列DALに選択的に照射するX線照射範囲規制処理(第1のX線照射範囲規制処理)を実行して小照射野CT撮影(その2)を実現することができる。
(上顎歯列DAU撮影)
同図(c) ,(d) が上顎歯列DAUに対する小照射野CT撮影を示している。同図(c) ,(d) に示すように、水平方向変位X線遮蔽板XK1と垂直方向変位X線遮蔽板XK2のx方向及びz方向の位置関係は、同図(a) ,(b) で示した位置関係と全く同一にして、コーンビームCB3を得る。
一方、被写体固定部421を下方(−z方向)に下降させることにより、被写体OBのX線発生器11の焦点Fに対する相対高さを低くして、コーンビームCB3が被写体OBの上顎歯列DAUに対応した照射領域を形成するように設定する。
その結果、同図(c) に示すように、X線の照射経路X上においてX線が垂直方向変位X線遮蔽板XK2の周辺遮蔽領域P3によって遮蔽されない範囲で大照射野X線通過孔C1を通過する領域を被写体照射X線通過領域として得られるコーンビームCB3が被写体OBの上顎歯列DAUを選択的に照射するX線照射範囲規制処理(第1のX線照射範囲規制処理)を実行して小照射野CT撮影(その2)を実現することができる。
本実施の形態の小照射野CT撮影の例では、被写体OBの歯列弓DAの歯牙のうち、一部の歯牙が含まれる領域、特にz方向について一部の歯牙が含まれる領域のみがX線撮影領域となる。
図示を略するが、水平方向変位X線遮蔽板XK1と、雌ねじ部H1、回転軸G1、被案内部材H2,H2、ガイド軸G2からなるX線遮蔽部水平方向変位機構一式を、さらに基板に載せ、当該基板全体をX線規制部12の本体に対してz方向に変位させる機構を設けてもよい。このように構成すれば、垂直方向変位X線遮蔽板XK2のz方向への変位に加え、水平方向変位X線遮蔽板XK1をz方向に変位でき、例えば照射方向の調整に利用できる。
水平方向変位X線遮蔽板XK1に対する垂直方向変位X線遮蔽板XK2のz方向の変位も、垂直方向変位X線遮蔽板XK2に対する水平方向変位X線遮蔽板XK1のz方向の変位も、水平方向変位X線遮蔽板XK1と垂直方向変位X線遮蔽板XK2のうち一方に対する他方の相対的な変位である。
同様に、図示を略するが、垂直方向変位X線遮蔽板XK2と、雌ねじ部H3、回転軸G3、被案内部材H2,H2、ガイド軸G2からなるX線遮蔽部垂直方向変位機構一式を、さらに基板に載せ、当該基板全体をX線規制部12の本体に対してx方向に変位させる機構を設けてもよい。このように構成すれば、水平方向変位X線遮蔽板XK1のx方向への変位に加え、垂直方向変位X線遮蔽板XK2をx方向に変位でき、例えば照射方向の調整に利用できる。
水平方向変位X線遮蔽板XK1に対する垂直方向変位X線遮蔽板XK2のx方向の変位も、垂直方向変位X線遮蔽板XK2に対する水平方向変位X線遮蔽板XK1のx方向の変位も、水平方向変位X線遮蔽板XK1と垂直方向変位X線遮蔽板XK2のうち一方に対する他方の相対的な変位である。
上述の説明において、「中照射野X線通過孔C2」、「小照射野X線通過孔C3」、という用語を用いているが、必ずしもC3が面積的にC2よりも小さくなければならないということはないので、これらの用語の呼称・概念を次のように代えて考えてもよい。
・中照射野X線通過孔C2を水平方向限定照射野X線通過孔C2(X線ビームの水平方向の広がりを大照射野X線通過孔C1よりも狭めるように規制するX線通過孔である。)に変更する。
・小照射野X線通過孔C3を垂直方向限定照射野X線通過孔C3(X線ビームの垂直方向の広がりを大照射野X線通過孔C1よりも狭めるように規制するX線通過孔である。)に変更する。
「中照射野CT撮影」、「小照射野CT撮影」の用語についても同様に次のように代えて考えてもよい。
・中照射野CT撮影を水平方向限定照射野CT撮影(水平方向の広がりを大照射野CT撮影よりも狭めたCT撮影である。)に変更する。
・小照射野CT撮影を垂直方向限定照射野CT撮影(垂直方向の広がりを大照射野CT撮影よりも狭めたCT撮影である。)に変更する。
上述の図7に示す例では、垂直方向変位X線遮蔽板XK2の小照射野X線通過孔C3下の周辺遮蔽領域P3によって大照射野X線通過孔C1を通過可能なX線の一部を遮蔽可能な位置に垂直方向変位X線遮蔽板XK2のz方向を位置設定しているが、大照射野X線通過孔C1に代えて、中照射野X線通過孔C2を用いてもよい。
すなわち、X線の照射経路上に水平方向変位X線遮蔽板XK1の中照射野X線通過孔C2が位置するように、水平方向変位X線遮蔽板XK1のx方向の位置設定を行い、中照射野X線通過孔C2の一部と垂直方向変位X線遮蔽板XK2の周辺遮蔽領域P3の一部とがy方向から見て重ね合う位置に、垂直方向変位X線遮蔽板XK2のz方向移動を行う。このようにして、さらに多様な被写体照射X線通過領域を設定することができる。
無論、図5(a),(b) に示すように、垂直方向変位X線遮蔽板XK2を上方(+z方向)に移動させ、X線発生器11の焦点FからのX線の照射経路から完全に逸脱する退避位置に移動させて、中照射野X線通過孔C2の全域を被写体照射X線通過領域とする中照射野CT撮影も可能である。
また、中照射野X線通過孔C2と小照射野X線通過孔C3とを重ね合わせ、両者が重なり合う領域を被写体照射X線通過領域とするCT撮影も可能である。この場合、中照射野X線通過孔C2と小照射野X線通過孔C3が重なり合うz方向の範囲内で小照射野X線通過孔C3の位置をz方向に移動調整することもできる。
このようにして、中照射野X線通過孔C2の全域を被写体照射X線通過領域とする中照射野CT撮影と、中照射野X線通過孔C2と小照射野X線通過孔C3が重なり合う領域を被写体照射X線通過領域とする小照射野CT撮影(その1)と、中照射野X線通過孔C2の一部と周辺遮蔽領域P3の一部の重ね合わせにより、周辺遮蔽領域P3によって遮蔽されない範囲で中照射野X線通過孔C2をX線が通過する領域を被写体照射X線通過領域とする小照射野CT撮影(その2)もさらに選択可能とすることができる。
<パノラマ撮影>
図8はX線規制部12のX線照射範囲規制処理によるパノラマ(X線断層)撮影の際におけるX線規制部12内の水平方向変位X線遮蔽板XK1及び垂直方向変位X線遮蔽板XK2のx方向及びz方向における位置関係を示す説明図である。
(下顎歯列DAL撮影)
同図(a) ,(b) が下顎歯列DALに対するパノラマ撮影を示している。同図(a) ,(b) に示すように、パノラマ撮影の際、X線の照射経路上に水平方向変位X線遮蔽板XK1のX線スリットSL1が位置するように、水平方向変位X線遮蔽板XK1のx方向の位置設定を行う。X線スリットSL1によって形成されるX線通過領域はスリット状領域である。
一方、同図(a),(b) に示すように、垂直方向変位X線遮蔽板XK2を図5に示した退避位置から下方(−z方向)に、図6で示した完全照射位置より上方の位置まで移動させ、垂直方向変位X線遮蔽板XK2の小照射野X線通過孔C3下の周辺遮蔽領域P3によってX線スリットSL1を通過可能なX線の一部を遮蔽可能な位置に設定する。
すなわち、水平方向変位X線遮蔽板XK1のX線スリットSL1の一部と垂直方向変位X線遮蔽板XK2の周辺遮蔽領域P3の一部とがy方向から見て重なり合う位置に、垂直方向変位X線遮蔽板XK2のz方向移動を行う。この状態では、水平方向変位X線遮蔽板XK1のX線スリットSL1と垂直方向変位X線遮蔽板XK2の小照射野X線通過孔C3とはy方向から見てX線の照射経路上全く重なり合わない。
したがって、水平方向変位X線遮蔽板XK1のX線スリットSL1のうち、垂直方向変位X線遮蔽板XK2の周辺遮蔽領域P3により遮蔽されなかった領域のみが被写体照射X線通過領域となる。
その結果、同図(a) に示すように、X線の照射経路上において、X線が垂直方向変位X線遮蔽板XK2の周辺遮蔽領域P3によって遮蔽されない範囲でX線スリットSL1を通過する領域を被写体照射X線通過領域としてX線細隙ビームXB1が得られる。この際、X線細隙ビームXB1が被写体OBの下顎歯列DALに対応した照射領域を形成するように設定することより、被写体OBの下顎歯列DALを選択的に照射するX線照射範囲規制処理(第1のX線照射範囲規制処理)を実行してパノラマ撮影を実現することができる。
(上顎歯列DAU撮影)
同図(c) ,(d) が上顎歯列DAUに対するパノラマ撮影を示している。同図(c) ,(d) に示すように、水平方向変位X線遮蔽板XK1と垂直方向変位X線遮蔽板XK2のx方向及びz方向の位置関係は、同図(a) ,(b) で示した位置関係と全く同一にして、X線細隙ビームXB1を得る。
一方、被写体固定部421を下方(−z方向)に下降させることにより、被写体OBのX線発生器11の焦点Fに対する相対高さを低くして、X線細隙ビームXB1が被写体OBの上顎歯列DAUに対応した照射領域を形成するように設定する。
その結果、同図(c) に示すように、X線の照射経路上においてX線が垂直方向変位X線遮蔽板XK2の周辺遮蔽領域P3によって遮蔽されない範囲でX線スリットSL1を通過する領域を被写体照射X線通過領域として得られるX線細隙ビームXB1を被写体OBの上顎歯列DAUを選択的に照射するX線照射範囲規制処理(第1のX線照射範囲規制処理)を実行してパノラマ撮影を実現することができる。
下顎歯列DALのパノラマ撮影、上顎歯列DAUのパノラマ撮影等は、被写体OBの歯列弓DAの歯牙のうち、一部の歯牙が含まれる領域、特にz方向について一部の歯牙が含まれる領域のみがX線撮影領域となる小照射野パノラマ撮影の例である。
図5(a) ,(b) に示す大照射野CT撮影と同じように、垂直方向変位X線遮蔽板XK2をX線発生器11の焦点FからのX線の照射経路から完全に逸脱する退避位置に設定し、すなわち、X線の照射経路外に垂直方向変位X線遮蔽板XK2が位置するように、垂直方向変位X線遮蔽板XK2のz方向の位置設定を行い、X線の照射経路上において、水平方向変位X線遮蔽板XK1のX線スリットSL1と垂直方向変位X線遮蔽板XK2の小照射野X線通過孔C3の周辺遮蔽領域とのy方向から見た重ね合わせが生じないようにして、歯列弓DAの歯列弓全体DAAまたは歯列弓DAの略全体のパノラマ撮影を行うこともできることはいうまでもない。なお、歯列弓全体DAAまたは歯列弓DAの略全体のパノラマ撮影は、大照射野パノラマ撮影の例である。
パノラマ撮影についても、スリットSL1の全域を被写体照射X線通過領域とする大照射野パノラマ撮影と、スリットSL1と小照射野X線通過孔C3が重なり合う領域を被写体照射X線通過領域とする小照射野パノラマ撮影(その1)と、スリットSL1一部と周辺遮蔽領域P3の一部の重ね合わせにより、周辺遮蔽領域P3によって遮蔽されない範囲でスリットSL1をX線が通過する領域を被写体照射X線通過領域とする小照射野パノラマ撮影(その2)もさらに選択可能とすることができる。
図示は略するが、大照射野セファロ撮影においては、図5(a) ,(b) に示す大照射野X線通過孔C1に代えて、X線発生器11から照射されるX線が水平方向変位X線遮蔽板XK1のスリットSL2を通過可能な位置になるように、モータM1を駆動して水平方向変位X線遮蔽板XK1のx方向の位置設定を行い、X線の照射経路上に水平方向変位X線遮蔽板XK1のスリットSL2が位置するように、水平方向変位X線遮蔽板XK1のx方向の位置設定を行う。
その一方、図5(a),(b) に示すように、垂直方向変位X線遮蔽板XK2を上方(+z方向)に移動させ、X線発生器11の焦点FからのX線の照射経路から完全に逸脱する退避位置に設定する。すなわち、X線の照射経路上外に垂直方向変位X線遮蔽板XK2が位置するように、垂直方向変位X線遮蔽板XK2のz方向の位置設定を行う。したがって、X線の照射経路上において、水平方向変位X線遮蔽板XK1のスリットSL2と垂直方向変位X線遮蔽板XK2の小照射野X線通過孔C3の周辺遮蔽領域とのy方向から見た重ね合わせは生じない。
小照射野セファロ撮影においては、垂直方向変位X線遮蔽板XK2を大照射野セファロ撮影におけるよりも下方(−z方向)に位置し、垂直方向変位X線遮蔽板XK2の小照射野X線通過孔C3下の周辺遮蔽領域P3によってスリットSL2を通過可能なX線の一部を遮蔽可能な位置に垂直方向変位X線遮蔽板XK2のz方向を位置設定する。
このようにして、大照射野セファロ撮影と小照射野セファロ撮影の切換を可能とし、例えば、大照射野セファロ撮影で頭部全体または頭部のほぼ全体のセファロ撮影を行い、小照射野セファロ撮影で頭部の上の部分をX線照射しないセファロ撮影を行うようにすることができる。
小照射野セファロ撮影で照射される範囲としては、例えば、セファロ撮影で測定する計測点を含む範囲のみX線照射するように、ナジオン位置の少し上の部分から下の範囲のみX線照射するようにして、ナジオン位置より少し上の部分から頭頂までの範囲はX線照射しないように設定することができる。無論、この範囲を体格等の条件にしたがって調整可能としてもよい。
<被写体固定部421による高さ調整機能>
図9は図7で示した小照射野CT撮影(その2)における被写体固定部421の高さ調整内容を模式的に示す説明図である。図9(a) は図7(a),(b) に対応し、図9(b) は図7(c) ,(d) に対応する。
まず、図9(a) で示す状態から図9(b) で示す状態における支持フレーム40及び被写体固定部421の状態変位について説明する。
図9(a) で示す状態では、コーンビームCB3が下顎歯列DALを照射している。下顎歯列DALの照射と上顎歯列DAUの照射に必要な領域は実質的に等しいため、旋回アーム30内に設けられたX線発生部11に対する水平方向変位X線遮蔽板XK1及び垂直方向変位X線遮蔽板XK2の位置関係をそのまま維持させて、図9(b) に示すように上顎歯列DAUの照射にも適用することができる。
すなわち、X線発生器11、X線遮蔽板XK1及びXK2の位置関係をそのままにして支持フレーム40を上昇させる。
その結果、上部フレーム41及び下部フレーム42が一体構成されてなる支持フレーム40は変位量D1で上昇する。変位量D1は、被写体OBのz方向の位置が固定されている場合、コーンビームCB3が上顎歯列DAU全体を照射可能な高さに設定される。
このとき、本実施の形態のX線撮影装置100では、被写体固定部421は下部フレーム42に設けられているため、被写体固定部421を下部フレーム42に対して動かさない以上、被写体固定部421も同図(a) の状態から変位量D1上昇する。したがって、このままでは、被写体OBの上顎歯列DAUにコーンビームCB3を照射することができない。
そこで、被写体固定部421の軸部分を変位量D2(=D1)分下降させる。すなわち、被写体固定部421を高さ方向における下部フレーム42の上昇量D1を打ち消す下降量D2で変位させ、同図(b) に示す状態においても、被写体固定部421における被写体保持部であるチンレスト部421Aの絶対高さを同図(a)の状態で維持させる。
したがって、被写体OBの絶対高さは同図(a) から(b) の状態変位によっても変化しない。その結果、同図(b) に示すように、被写体OBのz方向の絶対高さを変化させることなく、上顎歯列DAUにコーンビームCB3を照射することができる。
いうまでもないが、図9(b) に示す状態から図9(a)に示す状態にする場合、すなわち支持フレーム40を変位量D1で下降させる場合は、上記の逆である。支持フレーム40を変位量D1で下降させる分、被写体固定部421の軸部分を変位量D2(=D1)分上昇させる。
なお、図9で示した構成例では、支持フレーム40の昇降は、支持フレーム40と図示しないバランス用ウエイトを両端に固定するベルトをかけたプーリを昇降駆動モータ40Mにより回転駆動して行うことができる。昇降駆動モータ40Mの駆動は例えば操作手段62を操作者が操作することにより行うことができる。
バランス用ウエイト、バランス用ウエイトを両端に固定するベルト、ベルトをかけたプーリ、昇降駆動モータ40M等は支持部昇降機構として昇降部を構成する。
被写体固定部421の昇降は、図示しないアクチュエータで行う。このアクチュエータには、例えば図4に示す雌ねじ部H3、回転軸G3、モータM2と同様の1組の昇降機構を採用し、被写体固定部421の軸部分に雌ねじ部H3と同様の雌ねじ部を固定し、下部フレーム42内部に固定したモータM2と同様のモータで被写体固定部421の昇降駆動をする構成等が考えられる。
支持フレーム40の上昇と被写体固定部421の下降を同じ変位量で同期して行う方が、被写体OBが動くことなく、被写体OBのz方向の絶対高さの維持ができて便宜である。同様に、支持フレーム40の下降をする場合も、支持フレーム40の下降と被写体固定部421の上昇を同じ変位量で同期して行う方が便宜である。
図10は被写体固定部421におけるチンレスト部421Aの高さ調整の別の具体例を示す説明図である。図9では、被写体固定部421の昇降駆動をアクチュエータで行ったが、図10は被写体固定部421の高さ調整を手動でも行える例である。同図に示すように、下部フレーム42の表面から底面にかけて凹部状に設けられ、被写体固定軸421Jを受容可能なチンレスト受容部45の凸部45dに、被写体固定軸421Jの側面に設けた溝46a及び溝46bのうちいずれかに嵌合するように被写体固定軸421Jを回転しながら固定することにより、被写体固定部421を下部フレーム42の上部表面から立設させることができる。
図9(a) で示す下顎歯列DALの撮影時には溝46aに凸部45dを嵌合し、チンレスト部421aが下部フレーム42の表面から比較的高い位置h1になるように設定できる。一方、図9(b) で示す上顎歯列DAUの撮影時には溝46bに凸部45dを嵌合し、チンレスト部421aが下部フレーム42の表面から比較的低い位置h2になるように設定できる。この際、「h1−h2=D2=D1」を満足するように設定する。
図示の例では、凸部45dが嵌合の際に当接する溝46bの終端の高さが溝46aの終端の高さよりもD1=D2の量の分、高い位置に配置されている。
図10の例では、基本的には、これから撮影したい対象が上顎の歯なのか下顎の歯なのかによって操作者が凸部45dを溝46a、溝46bのいずれかに選択的に嵌合させつつチンレスト部421Aの高さ調整を行ってから、必要であれば被写体OBに対して支持フレーム40全体の高さ調整を行って頭部を位置付けする方法がとられる。
上顎の歯、下顎の歯の一方を撮影するべくチンレスト部421Aの高さ調整を行った後に他方の撮影に移行する場合は、チンレスト部421Aの高さを変える際に被写体OBが一旦顎を外すなどの動作をする必要があるが、低コストで構成可能である。
被写体固定部421の昇降を行う図示しないアクチュエータ、図10に示すチンレスト部421Aの高さ調整の機構等は被写体保持部昇降機構を構成する。
なお、図9及び図10は、図7で示す小照射野CT撮影(その2)の場合における被写体固定部421の高さ調整例を示したが、同様にして、図8で示したパノラマ撮影における被写体固定部421の高さ調整にも適用できる。
<本実施の形態の効果>
本実施の形態のX線撮影装置100によれば、X線の照射方向(y方向)と交差する規制方向(z方向)に、X線遮蔽板XK1及びXK2(第1及び第2のX線遮蔽部)のうち垂直方向変位X線遮蔽板XK2を水平方向変位X線遮蔽板XK1に対して相対的に変位させるy方向から見た重ね合わせを実行して、X線規制部12をX線が通過する被写体照射X線通過領域を規制するX線照射範囲規制処理を実現している。
そして、X線撮影装置100は、図7(図8)に示すように、垂直方向変位X線遮蔽板XK2の周辺遮蔽領域P3(第2のX線遮蔽領域)の一部と水平方向変位X線遮蔽板XK1の大照射野X線通過孔C1(第1のX線通過領域(他にX線スリットSL1,X線スリットSL2、中照射野X線通過孔C2))の一部とのy方向から見た重ね合わせによる第1のX線照射範囲規制処理を実行することができる。上記第1のX線照射範囲規制処理は、垂直方向変位X線遮蔽板XK2の小照射野X線通過孔C3(第2のX線通過領域)をX線の経路上全く用いることなく、小照射野X線通過孔C3の周辺に形成された周辺遮蔽領域P3の一部を大照射野X線通過孔C1の一部との重ね合わせ用に活用している。
このような、垂直方向変位X線遮蔽板XK2の周辺遮蔽領域P3を用いた第1のX線照射範囲規制処理を行うことにより、被写体照射X線通過領域の内容を変化させて多様な被写体照射X線通過領域を設定することにより、多様なX線照射範囲を実現することができる効果を奏する。
上記第1のX線照射範囲規制処理は、図6で示した小照射野CT撮影(その1)用の垂直方向変位X線遮蔽板XK2の周辺遮蔽領域P3を、図7及び図8で示した小照射野CT撮影(その2)及びパノラマ撮影時に遮蔽手段として用いることにより実現することができるため、比較的簡単な構成でX線撮影装置100を得ることができる。
さらに、図7及び図8で示した第1のX線照射範囲規制処理では、水平方向変位X線遮蔽板XK1の大照射野X線通過孔C1(X線スリットSL1)の上方の一部が、垂直方向変位X線遮蔽板XK2の周辺遮蔽領域P3により遮蔽される。
このため、X線規制部12のX線検出面の中心位置12cがX線発生器11における焦点Fよりもz方向に高く配置したパノラマX線撮影装置の打上照射の構成でX線撮影を行いながら、アーチファクトが生じる可能性が比較的高い、X線の照射経路の上方領域を効果的に遮蔽して、図7で示した小照射野CT撮影(その2)や小照射野パノラマ撮影(図8で示したパノラマ撮影)を行うことができる。
この効果は、例えば、同じ小照射野CT撮影において、図6で示した小照射野CT撮影(その1)におけるコーンビームCB2と、図7で示した小照射野CT撮影(その2)における示したコーンビームCB3との比較からも伺える。
さらに、実施の形態のX線撮影装置100によれば、上記第1のX線照射範囲規制処理に加え、図5で示した大照射野CT撮影時における第2のX線照射範囲規制処理及び図6で示した小照射野CT撮影(その1)時における第3のX線照射範囲規制処理を併せて実行可能であるため、より多様なX線照射範囲を実現することができる効果を奏する。
また、図5〜図7で示したように、コーンビームCB1〜CB3を用いた多様なX線CT撮影を実現することができる。
加えて、旋回アーム30の旋回が半回転から概ね1回転でCT撮影を完了することができ、短時間で撮影できるとともに、被写体OBである被験者の負担を少なくすることができる。
また、規制方向であるz方向において、水平方向変位X線遮蔽板XK1の大照射野X線通過孔C1と垂直方向変位X線遮蔽板XK2の小照射野X線通過孔C3との間における形成幅を変えることにより、より多様なX線照射範囲を実現することができる。
加えて、図5で示した第2のX線照射範囲規制処理による大照射野のX線撮影と、図6で示した第3のX線照射範囲規制処理の狭形成幅X線通過領域である、z方向に変位可能な小照射野X線通過孔C3の全体利用処理による小照射野のX線撮影とを選択的に行うことができる。
また、本実施の形態によれば、大照射野CT撮影、大照射野パノラマ撮影において歯列弓全体DAAを対象にしたX線撮影と、小照射野CT撮影、小照射野パノラマ撮影において歯列弓DAの一部を対象にしたX線撮影とが選択できるので、必要最小限のX線被曝量でX線撮影が可能である。
また、図8で示したパノラマ撮影用の第1のX線照射範囲規制処理を実行することにより、X線細隙ビームXB1を用いた多様なX線撮影を実現し、多様なパノラマ断層画像を得ることができる。
さらに、本実施の形態のX線撮影装置100において、図9及び図10で示したように、被写体固定部421は、高さ方向であるz方向における支持フレーム40(下部フレーム42)の昇降量を打ち消すように、被写体OBを保持する被写体保持部であるチンレスト部421Aの下部フレーム42の表面に対する高さを変位させることができる。
このため、図7及び図8の(a) と(b) に対する同各図(c) ,(d)で示す関係のように、下顎歯列DALから上顎歯列DAUに照射範囲を変更すべく被写体OBに対するX線照射位置を高さ方向に変化させても、常にチンレスト部421Aによる被写体OBの保持位置の高さ方向における絶対値を一定に保つことができる。
その結果、被写体固定部421のチンレスト部421Aにて保持される被写体OBとなる被験者の頭部等の配置を常に一定の絶対高さに保つことにより、被験者に負担をかけることなく、被写体OBに対する高さ方向におけるX線照射位置を変化させてX線撮影を行うことができる効果を奏する。
(その他)
上述した本実施の形態のX線規制部12では、水平方向変位X線遮蔽板XK1には大照射野X線通過孔C1、X線スリットSL1,SL2及び中照射野X線通過孔C2を設け、垂直方向変位X線遮蔽板XK2には小照射野X線通過孔C3を設け、多種類のX線撮影を実現可能にしている。
しかし、X線遮蔽板XK1及びXK2それぞれにCT撮影用の通過孔のみ設けCT撮影専用のX線規制部12を構成することも考えられる。同様に、X線遮蔽板XK1及びXK2それぞれパノラマ撮影用のスリットのみ設けパノラマ撮影専用のX線規制部12を構成することも考えられる。
なお、本実施の形態では、規制方向をz方向とし、垂直方向変位X線遮蔽板XK2の周辺遮蔽領域P3を用いて水平方向変位X線遮蔽板XK1の大照射野X線通過孔C1(X線スリットSL1)の一部を遮蔽して被写体照射X線通過領域を規制して上記第1のX線照射範囲規制処理を行ったが、水平方向変位X線遮蔽板XK1と垂直方向変位X線遮蔽板XK2との関係を逆にしても良い。
例えば、規制方向をx方向(X線の照射方向であるy方向と交差する方向)として、水平方向変位X線遮蔽板XK1の周辺遮蔽領域の一部を用いて、垂直方向変位X線遮蔽板XK2の小照射野X線通過孔C3の一部を遮蔽して被写体照射X線通過領域を規制する第1のX線照射範囲規制処理を行う態様も考えられる(この態様において、例えば、Z方向から見たCT撮影領域の径を任意に設定できる。旋回軸31がCT撮影領域の中心位置から外れた位置に来たとしても、駆動部65が、旋回軸31を旋回アーム30の軸周りの旋回に同期して移動させることで、X線発生器11とX線検出器21の旋回中心位置をCT撮影領域の中心位置に維持してCT撮影を実行するように制御する。)。
図7(図8)で示した第1のX線照射範囲規制処理では、水平方向変位X線遮蔽板XK1の大照射野X線通過孔C1(X線スリットSL1)と垂直方向変位X線遮蔽板XK2の小照射野X線通過孔C3とはy方向から見て全く重なり合わないようにしている。この重なり合わない関係は、X線発生器11のX線の照射経路上においてのみ満足すれば十分である。